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札幌市 広聴リポーター制度 札幌駅前通地下歩行空間における「にぎわい
札幌市 広聴リポーター制度 札幌駅前通地下歩行空間における「にぎわい」及び 「地下と地上の連携」に関する意識調査 北海道大学大学院 国際広報メディア・観光学院 特別演習グループ (齋藤尚文、杉江聡子、石塚暁弓、関素瑩、李亜妤、李遼雲) 2012 年 1 月 16 日(月)提出 目次 1 調査の概要.............................................................................................................................. 1 1.1 背景と目的 ....................................................................................................................... 1 1.2 概要.................................................................................................................................. 2 1.3 調査対象の属性................................................................................................................ 2 2 調査結果①:地下歩行空間の「にぎわい」への意識............................................................. 3 2.1 「にぎわい」の有無......................................................................................................... 3 2.2 「にぎわい」を感じる要素.............................................................................................. 5 2.3 エリア別の「にぎわい」意識 .......................................................................................... 7 2.4 「にぎわい」創出のために必要な施策............................................................................ 8 2.5 今後期待する「にぎわい」の要素 ................................................................................. 10 3 調査結果②:地上部との連携について ................................................................................ 13 3.1 地上へのアクセス性:認識と実態 ................................................................................. 13 3.2 地下歩行空間から地上へのアクセスを妨げているもの ................................................ 15 3.3 地下歩行空間の「にぎわい」を地上へ.......................................................................... 15 4 調査結果のまとめと提言 ...................................................................................................... 18 4.1 調査結果のまとめ .......................................................................................................... 18 4.2 今後の施策に向けた提言 ............................................................................................... 18 5 付録 ...................................................................................................................................... 20 5.1 自由記述欄コメント一覧 ............................................................................................... 20 5.2 アンケート調査票 .......................................................................................................... 21 1 調査の概要 1.1 背景と目的 平成 23 年 3 月 12 日(土) 、 「札幌駅前通地下歩行空間」が開通した。地下通路で札幌 駅から大通駅まで繋がることで、札幌市の中心部である札幌駅からすすきのまでが 1 つに 結ばれた。これにより、年間を通じて安全で快適な歩行空間が確保され、歩行者の増加によ る札幌市中心部全体の活性化、回遊性向上による地上と地下の一体化、市民の行動範囲の拡 大といった、 「にぎわい」の創出が期待されている。特に冬季の降雪量が多い札幌では、雨・ 風・雪をしのぐことができ、信号も無いことから、快適性を求めて利用する人が非常に多い (2011 年度札幌市調べ) 。同時に、単なる通路としてのみならず、写真や芸術作品等の展示 や、市民の文化・創作活動、物産展、企業の広報活動など、多様に活用されている。 しかし、地下歩行空間開通の影響で、駅前通(札幌駅~大通駅区間)全体の歩行者数が 2 倍になった一方、地上の歩行者は従来の 2 分の 1 に減少しており1、地上の過疎化が指摘さ れている。活性化や回遊性が地下部分に偏ってしまい、地下と地上との効果的な連携が課題 といえる。 このため、本調査では、大きく分けて 2 つのテーマを設定した。第一のテーマは、札幌 市が目的とする「都心のにぎわい」についてである。地下歩行空間の利用者が実感している 「にぎわい」とはどのような概念なのか、その構成要素は何か、を明確にすることで、地下 歩行空間のより効果的な運営、 ひいては札幌市中心部の活性化にとって効果的なアプローチ が考案できるのではないだろうか。 第二のテーマは、 地下と地上の連携に対する、 地下歩行空間利用者の認識についてである。 地下歩行空間の利用者は、地下と地上の連携についてどのように感じているのか、実際に地 上部分を歩行しているのか、地上の「にぎわい」を生み出すためにどのようなニーズがある のか、これらを直接、利用者に問うことで、地下と地上の連携に対する認識の現状を明らか にし、そこからの課題と解決方法についての示唆が得られると考える。 1 国土交通省北海道開発局プレスリリース「お知らせ:地下歩行空間開通後の利用状況をお知らせします」 http://www.sp.hkd.mlit.go.jp/press/pdf/11091202.pdf 1 1.2 概要 本調査は、2011 年 12 月 4 日(日)及び 5 日(月)の 2 日間にわたって札幌駅前通地 下歩行空間で行った実地調査である。札幌駅前通地下歩行空間の利用者に対し、 「地下歩行 空間のにぎわい」と「地下と地上の連携」を主要テーマに質問紙によるアンケート調査を行 った。有効回答数は 251 件(回収総数 253 件、うち無効回答 2 件)となった。 表 1 本調査の概要 調査対象 札幌駅前通地下歩行空間の利用者 調査方法 街頭アンケート調査 調査期間 2011.12.4(日) 11:00~15:00 及び 12.5(月) 11:00~16:00 の 2 日間 回答数 回答総数 253/有効回答 251(男性 112、女性 134、不明 5) 1.3 調査対象の属性 調査対象の属性は、性別、年齢、居住地、職業、地下歩行空間の利用頻度について調査し た。性別では、男女比については、ほぼ半数ずつであるが、女性がやや多い。年齢では、 20 代が 21.0%でやや多いものの、各年代ともに概ね同比率となった。居住地では、回答者 の約 4 分の 3 が札幌市内に居住しており、札幌市外(15.8%)も含めると全体の 9 割が道 内在住者で、道外在住者は 6.3%となった。職業では、会社員、公務員、自営業を合わせる と定職に就いている人の割合が 34%で最も多く約 3 分の 1 を占めた。 次いで学生(17.4%)、 無職(15.8%) 、家事専業(11.9%) 、パート等(9.5%)の順に多かった。地下歩行空間の 利用頻度については、初めての利用者も含め週 1 回未満がおよそ 44%、週 1~2 回が 24%、 週 3 回以上の利用者が 30%であり、おおよそこの 3 グループに区分できる。 居住地 年齢 性別 回答 無し 2.0% 19歳以下 0.4% 20~29歳 女性 53.4% 15.5% 40~49歳 道内 (札幌 市外) 15.8% 50~59歳 21.0% 60~69歳 14.7% 10.7% 70歳以上 10.7% 札幌 市内 75.5% 回答無し 職業 利用頻度 会社員 7.9% 週5日以上 7.5% 1.6% 公務員 3.6% 週3~4日 自営業 15.8% パート等 家事専業 25.7% 15.8% 3.6% 17.4% 回答無 し 2.4% 30~39歳 13.5% 13.5% 男性 44.7% 道外 6.3% 4.7% 9.5% 23.7% 無職 その他 週1~2日 週1日未満 37.2% 学生 14.2% 初めて 回答無し 回答無し 11.9% 図 1 調査対象の属性 [n=251] 2 2 調査結果① :地下歩行空間の「にぎわい」への意識 2.1 「にぎわい」の有無 第一のテーマに基づき、地下歩行空間への「にぎわい」について利用者の意識を調査した ところ、全体の約 8 割が地下歩行空間に何らかの「にぎわい」を感じていることが分かっ た。 「にぎわい」があるとの回答は、 「思う」 「どちらかといえば思う」を合わせておよそ 77% となった。 「にぎわい」がないとの回答は、「思わない」「どちらかといえば思わない」を合 わせて 11%となった(図 2) 。 1-1. 地下歩行空間には「にぎわい」があると思いますか。当てはまるものを選んで下さい(単数回答) 。 2.4% 8.9% 思う 12.1% どちらかといえば思う 37.2% どちらともいえない 39.3% どちらかといえば思わない 思わない 図 2 地下歩行空間の「にぎわい」の有無に対する回答 [n=247] また、回答者の属性によって「にぎわい」の感じ方にやや相違がみられた。男女別では男 性の方が「にぎわい」を感じている傾向にある(図 3)。 「思わない」の割合は男性の方が多 いが、全体からみると非常に少ない。男性は女性に比べると「思う」か「思わない」を明確 に選択している。 1-1. 地下歩行空間には「にぎわい」があると思いますか。当てはまるものを選んで下さい(単数回答) 。 男性(n=110) 41.8% 5.5% 38.2% 10.0% 4.5% 思う どちらかと言えば思う どちらとも言えない 女性(n=132) 33.3% 12.1% 39.4% 14.4% 0.8% どちらかと言えば思わない 思わない 0% 20% 40% 60% 80% 100% 図 3 地下歩行空間の「にぎわい」の有無に対する回答(男女別) 3 年齢別では 20 代~30 代、特に 30 代はあまり「にぎわい」を感じていないことがわかる (図 4) 。 1-1. 地下歩行空間には「にぎわい」があると思いますか。当てはまるものを選んで下さい(単数回答) 。 0% 10% 19歳以下(n=33) 20% 40% 50% 60% 42.4% 20~29歳(n=52) 11.1% 40~49歳(n=27) 25.9% 22.2% どちらかと言えば思う 7.4% 7.4% 3.7% 3.7% 48.6% 8.1% 41.7% 16.7% 58.8% 26.5% どちらとも言えない 100% 15.4% 1.9% 37.0% 38.9% 70歳以上(n=34) 90% 11.5% 33.3% 35.1% 60~69歳(n=36) 80% 3.0% 3.0% 3.0% 42.3% 48.1% 50~59歳(n=37) 70% 48.5% 28.8% 30~39歳(n=27) 思う 30% 8.1% 2.8% 8.8% 5.9% どちらかと言えば思わない 思わない 図 4 地下歩行空間の「にぎわい」の有無に対する回答(年代別) 職業別では、最も「にぎわい」を感じているのは学生で 93.1%だった2。逆に、最も「に ぎわい」を感じていない傾向にあるのはパートで、13.6%であった(図 5) 。 1-1. 地下歩行空間には「にぎわい」があると思いますか。当てはまるものを選んで下さい(単数回答) 。 0% 10% フルタイム勤務 (n=73) 家事専業 (n=29) 学生 (n=44) 30% 40% 50% 37.0% 自営業 (n=12) パート (n=22) 20% 60% 34.2% 50.0% 13.6% 70% 80% 13.7% 25.0% 45.5% 37.9% 90% 11.0% 4.1% 16.7% 8.3% 27.3% 37.9% 40.9% 100% 13.6% 13.8% 10.3% 52.3% 2.3% 2.3% 2.3% 無職 (n=39) 思う 43.6% .どちらかと言えば思う 35.9% どちらともいえない 12.8% どちらかと言えば思わない 図 5 地下歩行空間の「にぎわい」の有無に対する回答(職業別)3 2 3 「思う」 「どちらかといえば思う」の合計 図中「フルタイム勤務」は、会社員と公務員を合わせた数値とする 4 7.7% 思わない 利用頻度別では、地下歩行空間を日常的に利用している人(週 2 日以上)について言え ば、その利用頻度が多いほど「にぎわい」を感じている傾向にある。また、頻度は少ないが 時々訪れる人(週 1 日以下)も「にぎわい」を感じており、 ( 「にぎわい」があると) 「思う」 との回答が最も多かった(図 6) 。 1-1. 地下歩行空間には「にぎわい」があると思いますか。当てはまるものを選んで下さい(単数回答) 。 0% 10% 20% 週5日以上(n=40) 週3~4日(n=35) 週2~3日(n=59) 思う 40% 50% 60% 41.0% 70% 5.9% 42.4% 44.6% 31.6% どちらとも言えない どちらかと言えば思わない 2.6% 2.6% 6.8% 3.4% 8.7% 31.6% 100% 17.6% 20.3% 34.8% 26.3% 90% 5.1% 41.2% 27.1% どちらかと言えば思う 80% 48.7% 35.3% 週1日以下(n=94) 初めて(n=19) 30% 10.9% 1.1% 5.3% 5.3% 思わない 図 6 地下歩行空間の「にぎわい」の有無に対する回答(利用頻度別) 2.2 「にぎわい」を感じる要素 次に、一般的に利用者がどのようなことで「にぎわい」を感じているのか、その要因を 調査した。 「にぎわい」を感じる要素としては、 「通行人が多い(70.0%)」が最も多い(図 7) 。 次いで「イベント・催し物がある(42.8%)」、 「道が広い(40.4%)」、 「明るい(40.0%)」となり、 この 4 つが利用者にとっての「にぎわい」の主要な要素と認識されていることがわかった。 1-2. 地下歩行空間を歩いていて、どのようなことで「にぎわい」を感じますか(複数回答) 。 0% 通行人が多い イベント・催し物がある 道が広い 明るい 壁面の広告が多い 休んでいる人が多い 話し声がたくさん聞こえる 人が笑顔だ 音楽が聞こえる 買い物をしている人が多い お店の呼び込みがある 飲食している人が多い 店舗が多い 建物がカラフルである ネオンサインがある いろいろな国の言葉が聞こえる 道が狭い その他 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 70.0% 42.8% 40.4% 40.0% 19.2% 18.4% 16.8% 10.4% 9.2% 8.8% 6.8% 5.6% 5.6% 3.6% 2.8% 2.8% 2.0% 3.2% 図 7 「にぎわい」を感じる構成要素の割合 5 [n=250] 「にぎわい」を感じる要素についても、回答者の特性による違いがみられる。全体の回答 数のうち上位 7 項目についてみると、男女別では、 「通行人が多い」という最も主要な要素 に対する割合はほぼ同じである一方、女性は男性よりも「イベント・催し物がある」 「壁面 広告が多い」 「休んでいる人が多い」 「話し声がたくさん聞こえる」ことに「にぎわい」を感 じている(図 8) 。 1-2. 地下歩行空間を歩いていて、どのようなことで「にぎわい」を感じますか(複数回答) 。 71.8% 37.3% 38.2% 40.0% 男性(n=110) 通行人が多い 14.5% 9.1% 14.5% イベント・催し物がある 道が広い 明るい 71.2% 48.5% 42.4% 40.9% 女性(n=132) 壁面の広告が多い 休んでいる人が多い 23.5% 25.0% 19.7% 0% 20% 40% 話し声がたくさん聞こえる 60% 80% 100% 図 8 「にぎわい」を感じる構成要素の割合(男女別,図 7 の上位 7 項目) 年代別にみると、 「明るい」 「道が広い」といった施設・設備に関する要素に「にぎわい」 を感じている人の割合が多い年代は、10 代、40 代、そして 70 代であった(図 9) 。 一方、10 代と 60 代は、他の年代よりも「イベント・催し物(10 代:36.4%, 60 代:35.9%) 」 による「にぎわい」を感じていない傾向がある。 また、10 代に特徴的な点が、 「話し声(36.4%)」や「音楽(18.2%) 」といった、音に関 する要素に「にぎわい」を感じていることである。 1-2. 地下歩行空間を歩いていて、どのようなことで「にぎわい」を感じますか(複数回答) 。 図 9 「にぎわい」を感じる構成要素の割合(年代別) 6 職業別にみた時に特徴的な点は以下の通りである(図 10) 。パートは、「飲食している人 が多い」 、 「お店の呼び込みがある」に「にぎわい」を感じている。家事専業(主婦)は、 「人 が笑顔(だ) 」であることからの「にぎわい」意識が高かった。学生は「飲食している人が 多い」 、 「広告が多い」に加えて、 「音楽」や「話し声がたくさん聞こえる」といった、音に 関する要素に「にぎわい」を感じている。 居住地別と利用頻度別については、全体の傾向と異なる特徴は特に見られなかった。 1-2. 地下歩行空間を歩いていて、どのようなことで「にぎわい」を感じますか(複数回答) 。 図 10 「にぎわい」を感じる構成要素の割合(職業別4) 2.3 エリア別の「にぎわい」意識 都心の回遊性が変化したことを知る手がかりとして、利用者が各エリアの「にぎわい」に 以前よりも変化を感じているかどうかを調べた。その結果、以下の点が明らかになった。 地下歩行空間の開通後、利用者は明らかに以前よりも地下に「にぎわい」を感じているこ とがわかる(図 11) 。にぎわいを感じる上位 3 エリアは、 「札幌駅周辺(地下)」(41.5%)、 「札 幌駅~大通周辺(地下)」(40.2%)、 「大通周辺(地下)」(23.6%)とすべて地下であり、これらは 地下歩行空間の直接的な効果といえるだろう。 さらに、地下で接続された「大通~すすきの」及び「すすきの」エリアにも地下歩行空間 開通によって「にぎわい」が波及したと感じている利用者がいたことがわかった。 1-3. 地下歩行空間の開通後、以前よりも「にぎわい」があると思う場所はどこですか(複数回答) 。 0% 札幌駅周辺地上 札幌駅周辺地下 札幌駅~大通周辺地上 札幌駅~大通周辺地下 大通周辺地上 大通周辺地下 大通~すすきの周辺地上 大通~すすきの周辺地下 すすきの周辺地上 いずれも変化がない わからない 図 11 4 10% 20% 30% 40% 50% 14.6% 41.5% 10.2% 40.2% 7.3% 23.6% 5.7% 8.5% 3.3% 2.4% 15.4% エリア別の「にぎわい」意識:地上と地下の対比 図中「フルタイム勤務」は会社員と公務員を合わせた数値 7 [n=246] 2.4 「にぎわい」創出のために必要な施策 次に、 「にぎわい」を創出するために必要だと思う施策は何か、利用者へ質問した。その 結果(図 12) 、半数以上の人が「イベントの実施」(51.8%)を期待していることがわかった。 それに次いで、 「地上との連携」(42.2%)を必要だと感じている人が多い。3 割以上の回答者 が、 「癒しの場の提供」(41.4%)、 「飲食サービス」(34.7%)、 「創作活動を発表する場の提供」 (30.3%)を必要だと感じていることもわかった。 1-5. 地下歩行空間によって街の「にぎわい」を活性化するためには、どのようなことが必要だと思いま すか(複数回答) 。 イベントの実施 地上との連携 癒しの場の提供 飲食サービス 創造活動を発表する場の提供 地下歩行空間活用例のPR 観光情報の発信 子どもが参加する活動 市民が情報発信する場の提供 ユビキタス環境の整備 その他 51.8% 42.2% 41.4% 34.7% 30.3% 19.1% 18.7% 17.9% 13.9% 7.2% 3.6% 0% 図 12 10% 20% 30% 40% 50% 60% 「にぎわい」創出のために求める活動 [n=250] 男女別にみると、 「創造活動を発表する場の提供」 「イベントの実施」 「飲食サービス」 「観 光情報の発信」 「癒しの場の提供」について、女性の割合が多い(図 13) 。 「市民が情報発信 する場の提供」 「地下歩行空間活用例の PR」については、男性の割合がより大きい。 1-5. 地下歩行空間によって街の「にぎわい」を活性化するためには、どのようなことが必要だと思い ますか(複数回答) 。 0% 10% 20% 女性(n=133) 7.5% 4.5% 男性(n=112) 30% 18.8% 18.0% 16.5% 15.8% 40% 50% 54.1% 50.4% 47.4% 41.4% 33.8% 70% イベントの実施 癒しの場の提供 地上との連携 飲食サービス 創造活動(芸術・音楽・学術など) を発表する場の提供 地下歩行空間活用例のPR 33.9% 38.4% 27.7% 26.8% 20.5% 18.8% 22.3% 13.4% 8.0% 3.6% 図 13 60% 51.8% 子どもが参加する活動 観光情報の発信 市民が情報発信する場の提供 ユビキタス環境の整備 その他 「にぎわい」創出のために求める活動(男女別) 8 全体(図 12)の上位 5 項目について年齢別にみると(図 14) 、 「地上との連携」を回答し た利用者は 20 代、そして 40 代以上の中高年層がその多くを占めている。その一方で、10 代と 30 代では必要だと考えている利用者が比較的少なかった。 「イベントの実施」については、どの年代を見ても比較的割合が高いが、特に 20 代、40 代、50 代では最大となっている。 「飲食サービス」は、40 代以下で強く求められている。 「癒 しの場」と「創造活動発表の場」については、40 代のニーズが最も低かった。 1-5. 地下歩行空間によって街の「にぎわい」を活性化するためには、どのようなことが必要だと思い ますか(複数回答) 。 0% 10% 20% 30% 40% 50% 24.2% 60% 51.5% 54.5% 19歳以下(n=33) 48.5% 27.3% 49.1% 20~29歳(n=53) 45.3% 43.4% 32.1% 25.9% 51.9% 30~39歳(n=27) 48.1% 29.6% 48.1% 40~49歳(n=27) 22.2% 40.7% 29.6% 45.9% 50~59歳(n=37) 18.9% 地上との連携 59.3% 51.4% 38.5% 32.4% 11.8% イベントの実施 59.3% 51.3% 48.7% 17.9% 28.2% 70歳以上(n=34) 64.2% 43.2% 32.4% 60~69歳(n=39) 70% 44.1% 35.3% 35.3% 飲食サービス 癒しの場の提供 創造活動を発表する場の提供 図 14 「にぎわい」創出のために求める活動(年代別,図 12 の上位 5 項目について) 9 2.5 今後期待する「にぎわい」の要素 それでは、利用者のニーズを満足できるような活用方法を考えた場合、どのような要素を 含めることが効果的といえるだろうか。本調査では、今後どのような「にぎわい」の形を期 待するかについても質問した。2.2 では、現状として感じている「にぎわい」の主な要素が 「通行人が多い」 、 「イベント・催し物がある」 、 「道が広い」、 「明るい」であることがわかっ たが、これらと比較すると一致する項目もあるものの、いくつかの項目で相違が明らかにな った(図 15) 。 「イベント・催し物」では、現状の「にぎわい」要素として強く感じており、今後も求め るという肯定的な評価が高い(52.8%) 。また、 「明るい」(28.0%)、 「音楽が聞こえる」(25.6%)、 「買い物をしている人が多い」 (24.8%)、 「人が笑顔だ」 (22.4%)が今後の「にぎわい」の 要素として期待されている。一方、現状でもっとも「にぎわい」の要素と認知されていた「通 行人が多い」ことを今後も求める回答は少なかった(18.4%) 。 1-2. 地下歩行空間を歩いていて、どのようなことで「にぎわい」を感じますか(複数回答) 。 0% 通行人が多い イベント・催し物がある 道が広い 明るい 壁面の広告が多い 休んでいる人が多い 話し声がたくさん聞こえる 人が笑顔だ 音楽が聞こえる 買い物をしている人が多い お店の呼び込みがある 飲食している人が多い 店舗が多い 建物がカラフルである ネオンサインがある いろいろな国の言葉が聞こえる 道が狭い その他 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 70.0% 42.8% 40.4% 40.0% 19.2% 18.4% 16.8% 10.4% 9.2% 8.8% 6.8% 5.6% 5.6% 3.6% 2.8% 2.8% 2.0% 3.2% 1-4. 今後、地下歩行空間にはどのような「にぎわい」があればいいと思いますか(複数回答) 。 イベント・催し物がある 明るい 音楽が聞こえる 買い物をしている人が多い 人が笑顔だ 通行人が多い 休んでいる人が多い 壁面がカラフル 照明・ネオンサインがある k いろいろな国の言葉が聞こえる 飲食している人が多い 壁面の広告が多い 話し声がたくさん聞こえる その他 52.8% 28.0% 25.6% 24.8% 22.4% 18.4% 15.2% 13.6% 12.4% 11.2% 8.8% 8.4% 7.2% 4.0% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 図 15 「にぎわい」を感じる要素(上)と今後求める「にぎわい」の要素(下)の比較 [n=250] 10 また、今後どのような「にぎわい」があればいいと思うかについてのみ、男女別に比較し た。 「イベント・催し物」は男女ともに圧倒的に多く挙げられたが、女性では特に「明るい」 「音楽が聞こえる」に対するニーズが高く、男性は、全体の回答数の順位とは異なり、「買 い物をしている人が多い」ことを指摘する人が 2 番目に多かった(図 16) 。 1-4. 今後、地下歩行空間にはどのような「にぎわい」があればいいと思いますか(複数回答) 。 54.5% 25.9% 22.3% 26.8% 23.2% 17.9% 男性(n=112) イベント・催し物がある 明るい 音楽が聞こえる 56.0% 買い物をしている人が多い 34.3% 32.8% 27.6% 26.9% 22.4% 女性(n=134) 人が笑顔だ 通行人が多い 0% 図 16 10% 20% 30% 40% 50% 60% 今後地下歩行空間に求める「にぎわい」の要素(全体の上位 6 項目について) 年代別では、 「イベント・催し物」はいずれの年齢層でも期待が高いものの、10 代ではあ まり期待していないことがわかった(21.2%) 。20 代~50 代までは、 「買い物」に対するニ ーズが高い。 「音楽」に対するニーズは 10 代(27.3%) 、20 代(45.3%)に集中している。 「明るさ」については、30 代~60 代で高かった。10 代は「通行人が多い」ことを選んだ 人が少なかった(6.1%) (図 17) 。 11 1-4. 今後、地下歩行空間にはどのような「にぎわい」があればいいと思いますか(複数回答) 。 44.1% 20.6% 11.8% 8.8% 26.5% 23.5% 70歳以上(n=34) 60~69歳(n=39) 15.4% 23.1% 23.1% 18.9% 50~59歳(n=37) 18.5% 40~49歳(n=27) 35.1% 30~39歳(n=27) 19歳以下(n=33) 12.1% 6.1% 0% 10% 20% 明るい 音楽が聞こえる 買い物をしている人が多い 51.9% 29.6% 人が笑顔だ 37.0% 通行人が多い 56.6% 24.5% 15.1% 66.7% 33.3% 25.9% 22.2% 20~29歳(n=53) イベント・催し物がある 29.6% 14.8% 22.2% 18.5% 64.9% 29.7% 16.2% 16.2% 図 17 61.5% 33.3% 25.6% 32.1% 24.5% 45.3% 21.2% 27.3% 27.3% 24.2% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 今後地下歩行空間に求める「にぎわい」の要素(年代別,全体の上位 6 項目について) 12 3 調査結果②:地上部との連携について 本調査のもうひとつのテーマは、都心の地下空間が充実しつつある中で、地上とのつなが りをどのように創り出すことができるのかということである。前章では、地下歩行空間にお ける「にぎわい」を分析した。札幌駅前通区間の歩行者が増えただけでなく、歩行空間利用 者の多くが実際に「にぎわい」を感じており、その効果は大通地下エリアやすすきのエリア にも波及していることがわかった。一方で、地下歩行空間開通の「副作用」として、空間の 地上部が閑散としていることも問題視されている5。降雪地である札幌では、地下通路によ るスムーズな移動が大きなメリットであるため、 特に冬季には地下へ人が集中することは当 然と言える。しかし、都心全体の「にぎわい」創出のためには、一年を通じて地上と地下と が断絶された状態にならないようにすることが肝要である。そこで本章では、「地下と地上 との連携」に焦点を当てて調査し、利用者の認識を把握しようと試みた。 3.1 地上へのアクセス性:認識と実態 全体の傾向としては、地下歩行空間から地上の店舗施設へ行きやすくなったとの回答は 179 人(71.3%)で、 「そう思わない」 、 「どちらともいえない」を合わせた 72 人(28.6%)を大き く上回っている(図 18 左)。 2-1. 地下歩行空間が開通してから、地下歩行空間 を通って地上の店舗施設へ行きやすくなったと思い ますか(単数回答) 。 どちらと もいえな い 14.3% 行きやす くなった と思わな い 14.3% 2-2. 地下歩行空間が開通してから、地下歩行空間 を通って地上の店舗施設へ行くようになりましたか (単数回答)。 行かない 33.9% 行きやす くなった と思う 71.3% 行くよう になった 66.1% 図 18 地下歩行空間開通後の地上へのアクセス改善の実感(左)および実際の利用頻度(右)についての回答 [n=251] 年代別にみると、年代が上がるにつれて「行きやすくなった」と思う割合が下がる傾向が 見られる(図 19)。また、利用頻度の高い利用者は、より行きやすくなったと感じているこ とから、都心部を日常的に利用している人(週 2 日以上)ほど地下歩行空間の利便性を享 受している(図 20) 。 日常的に利用している人(週 2 日以上)は、地下歩行空間経由での地上へのアクセスに 対して、 「行きやすくなった」とプラスの評価をしており、実際に「行くようになった」割 合も大きい(81.6%) (図 21) 。この点では、地下歩行空間が本来の機能を効果的に発揮し ているといえる。地下歩行空間の「にぎわい」の要素について、利用者は、 「通行人の多さ」 が「にぎわい」の主要な要素だと回答していた(図 7) 。地下歩行空間の開通前に地上にあ 5 「現代かわら版 札幌駅周辺 幌市内) 変わる街並み(上) 」 『北海道新聞』, 2011 年 10 月 27 日朝刊, 地方(札 13 った「にぎわい」が減ったというのは、地上の交通量が地下へ移動したことで視覚的な「に ぎわい」が感じられなくなったということであり、一見、地下歩行空間開通の影響で地上の 利用者が減少したことが一体感のある「にぎわい」を妨げているように見える。しかし回答 者の約 3 人に 2 人は地下歩行空間を通って地上の店舗施設へ行くようになっており(図 18) 、 地下歩行空間では地上との往来がある程度実現しているといえるだろう。 つまりもともと日 常的に地上の店舗施設を利用していた利用者は「地上へ行かなくなった」のではなく、「地 下を通って地上の目的地へアクセスするようになった」といえる。 2-1. 地下歩行空間が開通してから、地下歩行空間を通って地上の店舗施設へ行きやすくなったと思いま すか(単数回答) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 19歳以下(n=33) 87.9% 20~29歳(n=53) 12.1% 75.5% 30~39歳(n=27) 11.3% 13.2% 63.0% 40~49歳(n=27) 22.2% 74.1% 50~59歳(n=37) 14.8% 11.1% 75.7% 60~69歳(n=39) 13.5% 10.8% 64.1% 70歳以上(n=34) 行きやすくなったと思う 行きやすくなったと思わない どちらともいえない 14.8% 23.1% 58.8% 17.6% 12.8% 23.5% 図 19 地下歩行空間開通後の地上へのアクセス改善の実感(年代別) 2-1. 地下歩行空間が開通してから、地下歩行空間を通って地上の店舗施設へ行きやすくなったと思いま すか(単数回答) 。 初めて(n=19) 63.2% 15.8% 週1日以下(n=94) 69.1% 週1~2日(n=59) 69.5% 週3~4日(n=35) 71.4% 21.1% 17.0% 13.8% 11.9% 思う 18.6% 思わない 週5日以上(n=40) 17.1% 85.0% 0% 11.4% どちらとも言えない 7.5% 7.5% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 図 20 地下歩行空間開通後の地上へのアクセス改善の実感(利用頻度別) 行きやすくなったと思う(n=179) 81.6% どちらとも言えない(n=36) 18.4% 38.9% 思わない(n=36) 61.1% 16.7% 0% 10% 83.3% 20% 30% 行くようなった 40% 50% 60% 70% 80% 行かない 図 21 地下から地上へのアクセス改善の実感と実際の利用度 14 90% 100% 3.2 地下歩行空間から地上へのアクセスを妨げているもの 一方で、利用者の約3人に1人は地下歩行空間から地上へは行かないと回答しているが、 地上との往来を妨げているものは何か。図 22 は「行かない」と回答した人の理由である。 もっとも多かった回答は「地上の店舗に行く目的がないから」(30.8%)であった。 「わざわ ざ上がるのが面倒だから」(23.1%)や「地上よりも地下の店舗施設のほうが行きやすいから」 (16.9%)にもわかるように、地上の店舗そのものの有用性や魅力が課題である。次いで「ど こに何があるかわからないから」(24.6%)から、利用者が地上の店舗施設の内容や位置関係 を知るための方策が必要といえるだろう。 2-3. 2-2 で「行かない」と回答した方にお伺いします。それはなぜですか。もっとも当てはまるものを 1つ選んでください(単数回答) 。 地上の店舗施設へ行く目的がないから 30.8% どこに何があるかわからないから 24.6% わざわざ上がるのが面倒だから 23.1% 地上よりも地下の店舗施設のほうが行きやすいから 16.9% 地上よりも地下の店舗施設のほうがニーズに合う… 4.6% 地上の店舗施設への行き方がわからないから 4.6% その他 6.2% 0% 10% 20% 30% 40% 図 22 地下歩行空間から地上へ行かない理由 [n=65] 3.3 地下歩行空間の「にぎわい」を地上へ 地下歩行空間の「にぎわい」を地上へ波及させるため、最後の設問では利用者へ具体的な 方策を提示し調査した(図 23) 。その結果、 「案内表示をわかりやすくする」(55.4%)を筆頭 に、 「地上の周辺地図を増やす」(41.8%)、 「地上の店舗施設のポスター・看板を増やす」(24.7%) など、視覚情報に関する選択肢に回答が集中した。また、この設問でも「地上の店舗施設の 魅力を高める」 (33.1%)ことへのニーズが高く現れた。 一方、 「出口を増やす」(21.5%)、 「エレベーターを増やす」(18.7%)といった施設・設備面 に対する工夫は比較的重視されていない。改修を伴う大規模な設備の改善よりも、まずは地 下歩行空間の出口と地上との位置関係を示すことや、地上にどのような店舗・施設があるの かといった利用者の認知度を高める工夫が求められている。 15 2-4.地下歩行空間と地上部分を連携させて一体感のある「にぎわい」を創出するために、どのような工夫 が必要だと思いますか(複数回答可)。 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 案内表示をわかりやすくする 55.4% 地上の周辺地図を示す 地上の店舗施設の魅力を高める 41.8% 33.1% 地上の店舗施設のポスター・看板を増やす 24.7% 出口を増やす 21.5% エレベーターを増やす 地上の店舗施設のデジタルサイネージを増やす 18.7% 10.0% 多言語化する英・中・韓など 8.0% 音声ガイドを行う 6.8% その他 3.6% 2.0% 特にない 図 23 地下と地上の「にぎわい」連携のための工夫に対する回答 [n=251] 利用頻度別では、頻度が低いほど視覚的情報を求める傾向が高いものの、 「店舗施設のポ スター・看板」には利用頻度が高い人から回答が多く集まった(図 24) 。 70.0% 60.0% 50.0% 47.5% 20.0% 10.0% 37.3% 37.3% 40.0% 37.1% 28.6% 25.0% 30.0% 25.0% 22.5% 52.5% 51.4% 40.0% 30.0% 63.2% 61.7% 60.0% 14.3% 8.6% 25.4% 16.9% 43.6% 42.1% 31.9% 24.5% 21.3% 20.2% 26.3% 26.3% 15.8% 18.6% 10.5% 0.0% 週5日以上(n=40) 週3~4日(n=35) 週1~2日(n=59) 週1日以下(n=94) 初めて(n=19) 案内表示をわかりやすくする エレベーターを増やす 出口を増やす 地上の店舗施設の魅力を高める 地上の周辺地図を示す 地上の店舗施設のポスター・看板を増やす 図 24 地下と地上の「にぎわい」連携のための工夫に対する回答(利用頻度別) 16 また、図 23 でも示されたように「地上の店舗施設の魅力を高める」(33.1%)も回答を集 めたが、職業別にみると、学生(38.6%)やフルタイム勤務者(36.5%)にこれを指摘した 人が多かった(図 25)。 図 25 地下と地上の「にぎわい」連携のための工夫に対する回答(職業別6) さらに、地下歩行空間の「にぎわい」の活性化のために「地上との連携」が必要と認識し ていた利用者(n=106) (図 12 参照)が必要としている工夫を調べた(図 26)。 地下の「にぎわい」活性化のために「地上との連携」が必要であると認識していた利用者 は、地上の「にぎわい」創出の方策に対する意識も高い。中でも「案内表示をわかりやすく する」(66.0%)、 「地上の店舗施設の魅力を高める」(45.3%)ことを、 「地上との連携」の必要 性を感じない回答者よりも積極的に求めている。 0% 20% 40% 案内表示をわかりやすくする 47.6% 20.8% 17.2% 25.5% 18.6% エレベーターを増やす 出口を増やす 45.3% 地上の店舗施設の魅力 飲食サービス 24.1% 9.4% 4.8% 43.4% 40.7% 子どもが参加する活動 観光情報の発信 癒しの場の提供 市民が情報発信する場の提供 創造活動を発表する場の提供 その他 60% 21.4% 4.8% 29.2% 12.3% 6.9% 14.2% 0.9% 2.8% 1.9% 4.8% 「地上との連携」を選択 (n=106) 選択せず (n=145) 図 26 地下と地上の「にぎわい」連携に関心の高い利用者の回答 6 図中「フルタイム勤務」は会社員と公務員の合計 17 80% 66.0% 4 調査結果のまとめと提言 4.1 調査結果のまとめ 本調査からわかった結果は以下の通りである。 <地下歩行空間の「にぎわい」意識について> ・利用者の 8 割が地下歩行空間に「にぎわい」を感じており、利用頻度の高い人ほど「に ぎわい」を感じる傾向にある。男性よりも女性、20~30 代の若者、パート従業員とい った人々比較的「にぎわい」を感じていないことがわかった。 ・歩行者の多さや、イベント等の催し物が、主な「にぎわい」を構成している。また、イ ベントの実施は今後も積極的に求められている。 ・地下歩行空間の開通は、大通やすすきの地区にも新たな「にぎわい」を生みだした。 ・都心をより一体的に活性化するためには、地上との連携が不可欠だと考える利用者が多 い。また女性の多くがリラックス・スペース(癒しの場)を、30 代以下の若者は飲食 サービスを求めている。 <地下歩行空間と地上部との連携について> ・地下歩行空間が開通してから、多くの人が地下歩行空間を通って地上へ行きやすくなっ たと感じており、実際に地上へ行くようになっている。かつて地上を通行していた人 の移動習慣が変化し、地下歩行空間を使って地上の目的地へ行くようになったと考え られる。地上と地下との回遊は実現しており、地下歩行空間の本来の機能は効果的に 発揮されているといえる。 ・地下歩行空間では多くの人が「通行人の多さ」によって「にぎわい」を感じているとい う今回の調査結果から、地上では歩行者の減少が「にぎわい」の減少に影響していると 推測できる。 ・ 「地上との連携」が必要であるとの声は全体として多く、現在の「にぎわい」は地下歩 行空間に集中しているとの認識が利用者にあるといえる。連携のために、地上店舗の 魅力向上の他、地下歩行空間内の案内表示を改善することが求められている。 4.2 今後の施策に向けた提言 調査結果に基づき、今後の施策方針に向けた提言は以下の通りである。 (1) 「音楽」 「癒し」 「飲食サービス」を盛り込んだイベント・催し物の開催に期待 現状では利用者の全体の 76.6%(189 人)が地下歩行空間に何らかのにぎわいを感じてお り、通行人の多さやイベント・催し物の存在は高く認知されていることが調査でわかった。 利用者の半数は「イベント・催し物」を積極的に支持しており、今後も継続的・発展的に行 うことで、地下歩行空間の「顔」として位置づけられるだろう。 また、 「にぎわい」演出の新たな方法として、 「音楽が聞こえる」「癒しの場の提供」への ニーズが高かったことを活かし、地下歩行空間での音楽の放送や、飲食サービスを伴う休憩 所など、簡易リラックス・スペースを設置することも有効であろう。 18 (2)20~30 代の若い女性、パート主婦などをターゲットに更なる調査を 一方で、にぎわいを感じていない人が全体の 11.3%(28 人)おり、課題もある。にぎわ いをあまり感じていないのは「女性」、「20~30 代の若い世代」、「パート」といった属性を 持つ利用者であり、 ビジネスパーソンや高齢者に比べて購買力や消費意識が高い層であると 予想される。これらの層を対象に、より具体的な調査を行い、ターゲットを明確に打ち出し たイベント・催し物を企画するなどの方策も可能だろう。 (3)地図・案内標識など視覚的な手法で地上情報を明示 ただし、地下歩行空間を通って地上へ行くことがない利用者が 3 割以上いた事実は無視 できない。主な理由は、 「地上へ行く目的がない」であったが、そのうち 2 割の利用者が、 「どこに何があるかわからない」と回答している。また、多くの利用者が、案内標識の不十 分さを指摘している。地上への導線を確保するために、認知度向上や心理面での「面倒さ」 の障壁を取り除く工夫が、地上と地下の一体的な「にぎわい」創出の鍵となるだろう。 たとえば、案内・標識などの設備面の工夫による知覚的な情報提供が考えられる。案内・ 標識の種類は、 「①空間の案内図」 「②周辺地図(地上地下)」 「③地上店舗の看板、広告」な どが挙げられる。 調査中にも、 数名の利用者に札幌グランドホテルへの行き方を尋ねられた。 グランドホテルに最も近い出入口には「札幌グランドホテル」の表示があるが、それ以外の 個所には目に付く案内版が設置されておらず、利用者が地上施設の位置を知っていることが 前提とされている印象を受けた。利用頻度が週に 1 日以下、月数回、年に数回という歩行 者や観光客のためにも、わかりやすい地図や案内を充実させる必要があるだろう。 エレベーターや出口を増やすといった大規模な改修は早急には必要ない。 まずは地下と地 上がどこでどのように繋がっているのか、地上のどこに何の建物や店舗・施設などがあるの か、を明示し、利用者の注意を地上に向けてはどうか。 (4)地上本来の「にぎわい」回復のカギは「目的創出」にあり その他にも、 「地上の店舗施設の魅力」を高める必要性が多く挙げられたことから、地上 の店舗が量・質の面から市民のニーズに十分に応えていない可能性が指摘できる。地上の店 舗自身が、地下利用者に「地上に上がりたい」と思わせる目的を創出するため、魅力向上に 努める必要がある。また、札幌駅前通まちづくり株式会社、商工会議所などの関連団体・機 関と地上店舗が協力し、 周辺地区の地下で回遊性の高い場所や店舗種別などを具体的に調べ、 利用者のニーズをとらえるとともに、地下歩行空間を利用した積極的な広告宣伝活動をさら に促してはどうだろうか。地下歩行空間には、今回の調査でも求められていた「飲食サービ ス」を常設することが難しく、利用者のニーズを満足させる条件が十分ではない。これを補 うためにも、地上にある飲食店の広告や案内看板を、 「憩いの空間」や地下歩行空間の出入 口付近に設置し、地上への誘導を促進することで、 「都心部全体の活性化」に貢献できると 考えられる。景観(見た目)や利便性(歩きやすさ)を重視することは重要であり、利用者 がそれに同意していることも事実である。しかし、札幌市中心部の経済活動をけん引する役 割を果たすには、雨・雪をしのげる便利な地下歩道としてだけの利用価値よりも、地上店舗 などの民営企業側の工夫も推進・サポートすること、そのための枠組み作りを進めることを 提案する。 19 5 付録 5.1 自由記述欄コメント一覧(原文をそのまま記載) 問 1-2 ちょっと暗くてもエコでよい 少し暗め 光の使い方がおだやかで自然を感じられる、チカチカしない 頭が多い 区別してください(人の流れ)人のすれ違い エスカレーター(ステップの奥行きが 11cm) 問 1-4 催し物ちょっと高いので、お安くなると買いやすくなる。 店が増えてほしい。 地域の宣伝 テナントがもっとあれば すごい 歩く以外の方法があると良い(うごく歩道等) にぎわいとうるさいはイコールではないので、気を付けてほしい。 おみせが多い たばこのむ場所 問 1-5 朝あつい 若者、育児中の人の楽しむ場 店を増やす ライブ デザインに力を入れるべき ある程度、往復する人がぶつからない交通整理のような機能 (これ以上のにぎわいは不要なので)無し 問 2-3 通過するだけ もともと行く習慣が無い 問 2-4 全上記を調和させてほしい 今のままでいい 地下は地下の演出だけでいい エスカレーターを増やす(2 人) どんな言葉でも訳せるパソコンを置く 20