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2015/04/03「ベトナム:新投資法(1)」「タイ:外国

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2015/04/03「ベトナム:新投資法(1)」「タイ:外国
April 3, 2015
1.
2015 年 7 月 1 日施行、ベトナムの新投資法のポイント(1)
2.
タイ:外国人事業法の正しい理解(2)
3.
インドにおける Goods and Services Tax(GST)の概要
4.
経済・産業トピックス
1. 2015 年 7 月 1 日施行、ベトナムの新投資法のポイント(1)
1.
はじめに
ベトナムにおいて新しい投資法(67/2014/QH13。以下「新投資法」といいます。)が、2014 年 11 月
26 日に公布されました。改正の形式ではなく、新投資法の施行に伴い現行の投資法である 59/2005/QH11
(2005 年 11 月 29 日公布、2006 年 7 月 1 日より施行。以下「現投資法」といいます。)が失効し、新投資
法に置き換わることとなります。
新投資法は 2015 年 7 月 1 日から施行されます(新投資法第 76 条)。条文数としては、現投資法が全 89
条あるのに対し、新投資法では全 76 条となっています。
同時期に新企業法も施行されますが、投資法と企業法の改正について「法により禁止されていない限り
あらゆる事業が認められるべきという精神」に基づくとされており、新投資法においてもこのような精神
を体現するため、投資禁止分野・制限付投資分野の明記や手続の明確化・簡素化など、現投資法からの重
要な変更点も多くなっています。なお、今後、より詳細については政令・通達で規制されることになりま
す。
本稿では、3 回に分けて、新投資法の重要なポイントを解説したいと思います。
2.
投資禁止分野及び制限付投資分野の明記
(1)投資禁止分野(新投資法第 6 条)
まず、投資禁止分野については、現投資法下では 51 分野であったのが、新投資法において 6 分野に
限定され、大幅に削減されています。
すなわち、現投資法では、投資禁止分野として以下の 4 つのプロジェクトの種類が記載されており、
さらにその詳細が下位の法令(2006 年 9 月 22 日付 Decree108/ND-CP 等の個別法令)で定めるという
形式を取っています(現投資法第 30 条)。
1
・ ベトナムの国防、治安及び公共利益に損害を与える投資プロジェクト
・ ベトナムの歴史遺跡、文化、習慣及び道徳に損害を与える投資プロジェクト
・ 国民の健康又は資源・環境破壊を及ぼす投資プロジェクト
・ ベトナムへ持ち込む有害廃棄物の処理プロジェクト、又は国際条約で禁止される有害化学物質
の生産、使用
これに対して、新投資法では、投資禁止分野の詳細を新投資法自体に記載して法律上明確化すると
ともに、分野を 6 つにまで絞りました(新投資法第 6 条・別表 1~3)
。また、禁止分野以外については
投資できることを明記しています(新投資法第 5 条)。
・ 別表 1 記載の麻薬に関する事業
・ 別表 2 記載の化学物質・鉱物に関する事業
・ 「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約別表第 1 」記載の一定の野生
動物、動物標本;新投資法別表 3 記載の希少な野生動物、動物標本に関する事業
など
(2)条件付投資分野(新投資法第 7 条)
次に、投資に条件が課される条件付投資分野についてです。現投資法では、その施行細則である政
令(108/ND-CP)の付属文書その他の下位法令まで見る必要がありましたが、新投資法においては法
律上明記されるようになっています。
また、現投資法では、386 分野(現投資法第 29 条・施行細則付属文書 C 等)が条件付分野とされて
おり、内国投資家と外国投資家の共通の条件付投資分野に加え、外国投資家のみに適用される条件付
分野もありました。しかし、新投資法においては、国防、国家の治安、社会秩序、安全、社会道徳、
市民の健康を理由として、内国投資家・外国投資家を問わずに一定の条件を満たした場合にのみ認め
られる分野として 267 分野が明記され(新投資法第 7 条・付属文書 4)、条件付投資分野の数自体も削
減されています。
これらに該当するプロジェクトについての具体的な対象分野と外資比率等の条件は、法令・国会常
務委員会・政令・条約により定められ、各省や地方人民委員会等が定めることはできません(新投資
法第 7 条第 3 項)。具体的な条件等については今後の規定を注視する必要があり、また、これまで大き
な課題であった認可審査の期間が実際どの程度になるかについても規定・運用を待つ必要があります。
3.
投資優遇
(1)投資優遇分野・地域(新投資法第 16 条)
投資優遇分野については、13 項目に分けられて列挙されています(新投資法第 16 条第 1 項)。この
ような投資優遇分野についても、一定の分野が追加され、また既存の分野も現投資法よりも詳細に記
載されています(現投資法第 27 条)。例えば、ハイテク補助工業製品、付加価値 30%以上の製品の生
産、省エネルギー製品、人民信用基金等は、現投資法では規定されていなかったものです。
投資優遇地域としては以下の地域が規定されています(第 16 条第 2 項)。これは現投資法第 28 条と同
2
様です。
a) 経済・社会状況が困難な地域、経済・社会状況が特別困難な地域
b) 工業団地、輸出加工区、ハイテクパーク、経済区
(2)それ以外の投資優遇対象(新投資法第 15 条)
また、投資優遇分野・地域への投資プロジェクに加え、新投資法では以下の分野についても投資優
遇措置の対象となることとされ、現投資法にはなかった枠組みを追加しています(新投資法第 15 条)。
a)
6 兆 VND(※約 335 億円)以上の資本規模の投資プロジェクトで、投資登録証明書の発給を
受けた日又は投資方針の決定日から 3 年以内に少なくとも 6 兆 VND を支出するもの
b) 農村地域において 500 人以上の労働者を使用するプロジェクト
c) ハイテク企業、科学技術企業及び科学技術組織
(3)投資優遇の内容・手続(新投資法第 16 条、第 17 条等)
投資優遇措置としては、①一定の期限又は投資プロジェクトの期間全体についての企業所得税の減
免、②固定資産を設置するための輸入商品、並びに原料、物資及び部品に対する輸入税免除、③地代、
土地使用料、土地使用税の減免を規定しています(新投資法第 15 条第 1 項)。現投資法と枠組みは同
様ですが、どのような優遇があるかについて整理して記載されており、わかりやすい規定となってい
ます。
優遇措置の内容及び優遇措置を受ける根拠・条件は、投資登録証明書に記載されます(投資登録証
明書(IRC)は、現在の投資証明書(IC)に代わる概念です)。もっとも、投資登録証明書が不要な投
資プロジェクトについては投資登録証明書が発給されません(新投資法第 17 条)。
なお、新投資法下の法令において、投資優遇措置が現投資法下のものより有利である場合、残りの
優遇措置期間中、新たな優遇措置を享受できるとされています。逆に、不利になる場合には、現投資
法の優遇措置が継続されます。もっとも、国防、社会秩序、市民の健康、環境保護等を理由とする優
遇措置の変更の場合には、現投資法の優遇措置の継続はできず、代わりに実損害を課税所得から控除、
投資家の活動目的の変更又は投資家の損害回復の支援をすることによる救済を与えるものとしていま
す。この場合、救済に関する法令が出てから 3 年以内に請求が必要とされているので注意が必要です
(投資法第 13 条)。
次回は、投資登録証明書の取得等、主に外国投資家の投資に関連する手続について説明します。
記事提供:弁護士法人キャスト
弁護士
工藤
拓人
(2015 年 3 月 23 日作成)
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2. タイ:外国人事業法の正しい理解(2)
(前回レポートは以下 URL をクリックして本文をご参照下さい。)
http://www.bk.mufg.jp/report/insasean/AW20150320.pdf
概要
外国人事業法における規制業種リストの「リスト 3」に属する規制業種(商品売買やサービス提供)を外
国人のステータスで行いたい場合には、他の例外規定を適用できない限り、同法に基づく外国人事業許可
を取得する必要があります。今回は、前半で同事業許可を取得するための条件および手続きを概説します。
後半では、タイの外国人事業法は、資本の半分以上が外資である会社(外国人)がタイ国内で商品売買や
サービスを行うことを禁じている意味をマクロ的に解説しました。知らないうちに外国人事業法違反とな
っているケースがありますが、なぜ違反してしまうのでしょうか。この解説を見れば理解していただける
と思います。
1.外国人事業法で規制されている事業「リスト 3」の事業許可
外国人事業法で規制されている事業は「リスト 1」「リスト 2」および「リスト 3」に分けられていま
す。「リスト 1」の業種は完全にタイ人によって守られるべき業種、「リスト 2」の業種は、内閣(閣議)
の承認に基づく商務大臣の許可を取得した場合に外国人(資本の半分以上が外資の法人)が従事すること
が認められる業種、「リスト 3」の業種は、外国人事業委員会の承認に基づく商務省事業開発局長の事業
許可(外国人事業許可、後述)を取得した場合に外国人が従事することが認められる業種です(外国人事
業法上の「外国人」の定義は前回レポート参照)。
「リスト 2」と「リスト 3」の業種に関する事業許可を「外国人事業許可」(FOREIGN BUSINESS
LICENSE:FBL)と呼びます。今回は、この外国人事業許可に関する解説をしたいと思います。ただし「リ
スト 2」の業種は、武器やタイ伝統工芸製造販売、農林水産業、鉱業など通常外資企業が行う業種ではな
く、かつてこれらに関して外国人事業許可が申請されたことはないようですから、今回の解説は「リスト
3」の業種に関する事業許可に限定します。
(1)「リスト 3」の業種に関する外国人事業許可とは
外国人が従事できない「リスト 3」の業種は、外資企業にとって重要な「タイ国内における商品の
小売り(注 1)、卸売り(注 2)、サービス業」です。
(注 1.2)「小売り」「卸売り」双方に「資本 1 億バーツ」の例外規定があり、別々の取り扱いとな
るため、両者の区別が重要なポイントになることがあります。「小売り」とは「商品を最終消費者に
販売する業態」であり、「卸売り」とは「商品を購買した顧客がさらにその商品を他の卸売業者や小
売業者、最終消費者に転売する業態」です。なお、ある製造業者に原材料を販売する場合には卸売り
に分類され、同じ製造業者に製造工程で使用する工具や機器を販売する場合には小売りに分類されま
す。
4
外国人のステータスで「タイ国内における商品の小売り、卸売り、サービス業」に従事したい場合
には、他の例外を適用できない限り、外国人事業許可、すなわち外国人事業法第 8 条に基づく「外国
人事業委員会の承認に基づく商務省事業開発局長の事業許可」を取得しなければなりません。
「タイ国内における商品の小売り、卸売り、サービス業」に関する外国人事業許可は、どんな事業
に関しても取得できるわけではなく、地場産業に悪影響がないと判断できる場合にのみ取得できます。
具体的には、外国人事業許可を取得できる事業は、以下の三つの条件を満たす必要があります。
①
取り扱う商品またはサービスを特定できること
②
顧客を特定できること
③
地場産業と直接競合しないこと
これらの条件を満たす事業の例としては以下の事業が挙げられます。
・ 関係会社に対する管理サービス(会計、法務、マーケティング、研修など)
・ 関係会社に対する金銭の融資、不動産の賃貸
・ 関係会社に対する物品の販売
・ 従業員に対する金銭貸し付け、社内販売
・ 製造製品の修理サービス
・ 機械設備製造会社の製品に限定した据え付け、修理、保全サービス
・ タイで製造していない精密機械、医療設備の輸入販売
・ タイで製造していないハイテク製品の輸入販売
・ 一般に「駐在員事務所」(REPRESENTATIVE OFFICE)と呼ばれる事業活動
・ 一般に「地域統括事務所」(REGIONAL OFFICE)と呼ばれる事業活動
・ タイの政府機関との契約に基づく建設工事プロジェクト
(2)事業許可条件と事業許可申請手続き
[事業許可条件]
外国人事業法は、外国人が外国人事業許可を取得するための事業許可条件として、以下の条件を規
定しています。
①
申請書で示される 3 年間の事業収支計画における「年間平均支出額」の 25%か 300 万バーツの
いずれか大きい金額以上の最低資本が投資(増資)されなければならない。
②
当該最低資本は、外国人が外貨でタイ国内に持ち込まなければならない。
③
当該最低資本は、事業許可取得後 3 カ月以内にその 25%以上、2 年以内に 50%以上、3 年以内
に 100%がタイ国内に持ち込まれなければならない。
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[事業許可申請手続き]
外国人事業許可申請手続きは、おおむね以下のような手続きの流れとなります。所要日数は、提出
書類や情報に誤りがなければ、通常 4 カ月程度です。
① 商務省事業開発局外国人事業課による申請書・添付資料チェック
↓
② 同課による申請書の受理
↓
同課の審査係による審査
↓
③ 外国人事業小委員会による審査
↓
④ 外国人事業委員会の最終審査
↓
⑤ 外国人事業許可証の交付
なお、外国人事業許可申請に必要な資料や情報は、おおむね以下の通りです。
・ 申請書式
・ 会社登記簿謄本、株主リスト
・ 会社代表者のパスポート
・ 会社所在地図
・ すでに何らかの外国人事業許可を取得している場合その事業許可証
・ 直近 3 年間の財務諸表、法人税申告書と領収書
・ 申請する事業内容に関する説明書(申請者名、事業内容、商品/サービスの価格設定ポリシー、
契約に基づく場合契約書、所定書式での資本構成・財務状況・市場、既存事業の内容、技術移転、
計画、雇用計画、タイへの影響、関係会社への商品販売・サービス提供である場合の関係会社
リストなど)
・ その他必要と認められて提出を要求された資料や情報
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2.外国人事業法の位置づけ
タイで資本の半分以上が外資の会社を設立した場合、外国人事業法の理解が最も重要となることを強調
してきましたが、それでもその重要性を完全には理解されなかったかもしれません。知らないうちに外国
人事業法を違反してしまうのはなぜでしょうか。外国人が商品を仕入れ販売すること、少しでもサービス
を提供することが禁止されているということは、日本では考えられません。今現在行っている事業に問題
があっても気付かなかったり、また、同じ事業を継続することは引き継ぎ者にとって当たり前のことだか
らでしょう。
今回は、外国人事業法の総集編として、外国人事業法の各論を排除し、外国人事業法の位置付けをマク
ロ的に見て、皆さんの脳裏に焼き付けたいと思います。
(1)外国人事業法の位置付け
[民商法典]
民商法典は、株式会社の設立や運営に関して規定しています。外資規制に関する規定は一切あり
ません。会社の登記事項としては、会社の形態(株式会社など)、会社の機関(株主総会、取締役、
取締役会)、会社住所、会社目的、株主と資本などがあります。
[外国人事業法]
外国人事業法は、資本の半分以上が外資の会社を外国人と定義し、外国人に対して商業(商品の
小売り、卸売り)およびサービス業に従事することを禁じています。つまり、登記事項のうち、会
社目的(活動)、株主、資本は外資規制の対象です。
資本の半分以上が外資の会社は、会社全体に外国人事業法上の外資規制が及ぶことに注意しなけ
ればなりません。
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[投資奨励法]
投資奨励法は、政府の経済政策に従い設定した奨励方針に基づき、特定の事業(奨励事業)に対
して特典(恩典)を与えることによって奨励し、投資を誘発することを目的としています。
投資奨励法に基づき設置されるタイ投資委員会(Board of Investment:BOI)は、事業の種類、
立地、資本など奨励条件を設定して、事業ごとに特典を付与しています。この BOI の奨励条件は、
会社の会社目的、会社住所、株主と資本に影響を与えます。
BOI が付与する特典には、法人税の減免、関税の減免、労働許可・VISA への便宜、土地所有の
許可および外国人事業法による外資規制の解除があります。特に外国人事業法との関係においては
「BOI が奨励するのは会社そのものではなく、各事業である」ということがポイントです。BOI は
奨励事業に関する外国人事業法上の外資規制を解除する権限を持っていますが、会社全体の外資規
制は解除できないのです。
(2)要注意事例
勘違いを起こしやすい事例を紹介しましょう。
会社 X は、国際調達事務所(International Procurement Office:IPO)事業について BOI から奨励
を認可され、外資 100%で設立された会社である。
会社 X は、自動車部品を輸入、あるいはタイ国内で仕入れ、自動車部品製造会社に販売している。
会社 X は、順調に売り上げを伸ばしているが、駐在員が 3 代目になった時点で会社の事業を見直して
みると、以下の業態となっていた。
① 原則的に倉庫で在庫を保管しているが、在庫として保管しない部品、通関後、港から顧客に直送
している部品が次第に多くなっている。
② 部品製造に必要な金型や工具も輸入し、販売するようになっている。
③ 一部の部品をタイ国内のディストリビューターを通じて顧客に販売している。
④ 時には、仲介手数料として本社や他社からコミッションを受けることがある。
このような状態になってしまうことは、簡単に理解できると思います。
BOI は IPO 事業に関してのみ外国人事業法の外資規制を解除しています。では、IPO 事業とはいっ
たい何でしょうか。IPO とは「製造業密着型原材料在庫商社」です。
すなわち、
① 製造業者にしか販売できません。
② 原材料しか販売できません。
③ 在庫を保管して販売しなければなりません。
④ コミッションを受け取ることはできません。
多くの会社が IPO 事業のみを行うことを前提として、外資 100%の会社を設立しますが、初代駐在
8
員から 2、3 代目へと事業が引き継がれていくうちに「わが社(会社全体)が BOI からの奨励を受け、
商社活動ができる」と勘違いしてしまうのです。繰り返しになりますが、外国人事業法の規制は会社
全体に及びます。投資奨励法に基づく外資規制の解除は、奨励事業に対してのみ認められます。です
から、奨励事業の範囲をよく理解しないと、いつの間にか違法状態になってしまいます。
規制事業に従事した場合、3 年以下の禁錮、または 10 万バーツから 100 万バーツの罰金、または併
科、という刑事罰が規定されています。これが外国人事業法上のリスクです。
記事提供:MOTHER BRAIN(Thailand)CO,LTD.
Managing Director 川島
伸
(2015 年 1 月 5 日/2015 年 2 月 2 日作成)
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3. インドにおける Goods and Services Tax(GST)の概要
本稿では、2016 年 4 月に導入される Goods and Services Tax(GST)の概要と、自動車業界、物流業界、
小売業界などの各業界に与える影響について解説する。
インドにおける GST の導入により、製造業、サービス業、小売業において、間接税の相殺によるメリ
ットの享受が可能となる。GST は、実質的には各段階での付加価値のみに対する課税であり、各段階の
サプライヤーは、物品やサービスの受領時に支払った GST の、物品およびサービスの供給時の GST との
相殺が可能である。このため最終消費者は、各段階での GST の相殺の結果として、サプライチェーンの
最後の取引業者への GST のみを負担する。
インド中央政府は間接税を GST に統合し、州政府と中央政府による課税を合理化する。これまでの中
央付加価値税(CENVAT)、州付加価値税(State VAT)においては、支払い時点で支払済の税の相殺が
限定的であった。中央政府と州政府が生産、製造、販売において課している税金では、税額控除の制度に
おいては一部しか相殺ができない。これらの税は「Tax on Tax(二重課税)」を通じて製品やサービスの
コストに加えられるため、最終消費者が負担しなければならない。
GST の導入によって、中央政府と州政府の主要な税金は GST に集約され中央売上税が廃止されるため、
最終的な税負担は軽減されるだろう。透明性のある一貫した相殺が認められるようになれば、租税範囲が
広がり、納税義務順守の向上につながると思われる。それによって歳入が増えれば、産業や貿易、農業と
いった一般的な取引業者の税負担は軽減されるかもしれない。
GST への主要な税金の一本化、製品およびサービスへの完全で包括的な間接税の相殺、中央売上税の
撤廃は、インド国内で生産される物品とサービスのコストを軽減することになるだろう。これは、国際的
な市場においてインドの物品とサービスの競争力を向上させ、インド輸出量の増加につながる。インド全
土における画一的な税率と手続きは、コンプライアンスのコスト低減にも大いに役立つと思われる。
各州および連邦直轄地(以下「州」とする)における付加価値税(VAT)規制に記載されている現在
の適用基準は州によって異なる。VAT 規制の下での物品への適用基準は、多くの州では 50 万ルピーであ
り、北東部の州および特定の州ではより低い基準が適用されており、州を越えた統一的な GST の税率が
望ましいとされる。関連委員会によれば、全ての州における物品とサービスに対して年間総売上高 100
万ルピーという基準が、これまで低い基準が適用されていた州(特に北東部地域や特定の州)への補償と
ともに適用されるかもしれないという。
州政府は、小規模の取引業者や産業に配慮しつつ、当局による監督の重複を避けるため、中央政府によ
る GST に関しては、物品への適用基準を 1,500 万ルピーで維持し、サービスへの適用基準については適
切な高い水準で設置される必要があると考えた。適用基準の引き上げは、小規模な取引業者の利益を保護
することになる。小規模な取引業者、中小企業のための複合したスキームも GST の下で検討されている。
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GST は、小規模の取引業者や産業の利益を保護することを目的としている。
GST の産業へのインパクト
GST は、州を越えた物品の移動を容易にし、市場の統一性につながる。これにより、企業の取引コス
トが低減されることが期待できる。
特定の産業への影響の要点は下記の通りである。
Direct-to-Home(DTH)産業:DTH 産業は、GST 導入によって税金が軽減されることはほとんどな
いが、間接的に恩恵を受ける可能性がある。ケーブル業界での脱税は、事業者による料金の引き上げ
を困難にさせるだろう。しかしこれに伴い DTH 事業者は価格を引き上げることができるかもしれない。
消費財業界:GST の税率は、ほとんどの日用消費財(Fast Moving Consumer Goods:FMCG)事業者
にとって中立といえる。しかし FMCG 事業者は、倉庫の低コスト化やより効率的なサプライチェーン
計画と在庫削減により、恩恵を受けるだろう。広範な成長への注力が FMCG 産業の利益につながると
思われる。
自動車業界:GST の税率が、現在の VAT 税率と物品税率より低くなるため、大型スポーツ用多目的
車(SUV)と自動車に対する関税が軽減される。GST の下ではトラクターも低い税率となる。
映画業界:GST の導入により娯楽税の低下につながる。映画会社は利益率が約 200~300 ベーシス上が
るものと予想している。
製薬業界:現在、医薬品においては 4.12%の物品税が課せられているが、医薬品有効成分(Active
Pharmaceuticals Ingredients:API)にはおおむね 8.24%課税されている。最終製品に対して原材料に
適用される税率が相違するため、医薬品の輸出に従事しない製造業者にとって異なる CENVAT クレ
ジットが累積する。物品税/CENVAT クレジットに関する法令は、こうしたクレジットの累積に関す
る還付のメカニズムが構築されていない。GST が物品やサービスの両方に対して単一の税率を有する
と仮定した場合、クレジットの累積は業界だけの問題ではなくなると考えられる。
通信業界:GST におけるサービス税の上昇は消費者に賦課される。
小売業界:小売業界もまた GST 導入により恩恵を受けるだろう。GST 導入は州を越えた物品の自由な
流通を促進する。商品移動過程の前の州で支払われた税金はインプットクレジットとして扱われ企業
に税負担はないため、小売業者がインド全土に進出することが容易になる。商品移動は効率的になり、
顧客への販売価格低下につながることが見込まれる。
不動産業界:GST によって税金が一本化された結果、消費者が支払う物品やサービスの価格への税金
が大幅に下がることが見込まれる。これは諸外国からの資金流入を増加させ、さまざまな物品やサー
ビスの需要を創出する。中でも住宅は選好される資産の一つであり、需要は増加することが予想され
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る。
現在、住宅部門には重い税が課されている。購入時における税金のクレジットは、不動産に関して
だけではなく、不動産購入時においても認められていない。GST が導入されると、不動産事業におけ
る建設に必要な物品やサービス受領時の税金にも関連するため、税負担は軽減されるだろう。
契約書の作成や合意の取り付けなど、複数の印紙税が課され、顧客への費用が増加することとなる。
印紙税の費用はかなりの金額である。また地方政府によって固定資産税が徴収される。このため、不
動産業界にとって GST のベネフィットは、他の業界よりも感じられにくいだろう。
輸送と物流業界:巨大な倉庫の需要が増加し、物流業界に利益をもたらすことが見込まれる。また
トラックの利用も増加することが予想される。現在、インドの 29 のそれぞれの州で境界を越えて移動
する物品に対し、異なる税率によって課税されている。その結果、州を越える貨物輸送には複数回の
課税が行われる。さらに州境の検閲所において、州当局が貨物を検査し関連する税金などの徴収を行
うため、長い時間がかかる。
州境の検閲所では、平均 5~7 時間のトラックの遅延が生じている。こうした時間のロスを他の遅延
と合わせると、トラックの総移動時間の 60%を占めるという。道路を利用した貨物輸送は、インド全
体の輸送の 65%を占めており、物流の専門家は GST が極めて重要であるとの見方をしている。出荷に
おける高い変動性と予測不可能性により、適切な在庫量より高い量が必要で、さらに物流費用が高く
なることから、インドの物流コストは世界標準の 2~3 倍ほどになっている。
世界銀行の予測によると、路上の障害物、通行料などによる遅延を半減させることで、20~30%程
度の輸送頻度の減少、30~40%の流通コストの削減が見込まれるという。これにより、インドの主要
な製造業の純売り上げを 3~4%押し上げることにつながる。
計画中の GST システムは、販売時点での単一税のため、約 15 の州政府および中央政府の税金や関
税と置き換えることが検討されている。インドで運用されている複雑な税制度、在庫や物流センター
の設置を含むロジスティクスに関する決定は、効率的な運営よりも、中央売上税や State VAT の税率
に基づき行われている。税金の最適化と管理は、制度の運用と物流の効率性を考慮している。
e コマース:GST の拡大は、e コマース業界における物流の問題を単純化する可能性がある。企業は
調達、流通、倉庫戦略に存在する抜け道を見つけ、税負担を最小限にすることが考えられるため、制
度を変化させていくことが必要である。
GST は、カルナタカ州税務当局により脱税の疑いを掛けられた、ある e コマース企業(以下「X 社」
とする)のような事例に対応する場合に役立つだろう。
X 社と X 社のウェブサイトを通じて販売を行っている売り手がベンガルル(旧バンガロール)郊外
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にある X 社の倉庫施設におけるオペレーションに対して VAT を支払っていなかったことにつき、同
州税務当局は疑問を提起した。しかし、この争点は X 社と税務当局の解釈の違いによるものといえ、e
コマース業界に関する明確な法律が制定されていれば状況は異なっていたかもしれない。
X 社は、購入者と販売者のためにプラットホームを提供する方式で運営している(X 社自身は、直
接的には販売していない)。なぜなら、販売税や State VAT が適用されるのを回避し、サービス税のみ
が適用されるようにするためだ(X 社は販売者から販売促進に関する手数料を受領している)。
一方、X 社の倉庫施設に商品を保管している販売者は「ビジネス上の追加の事業場所」としており、
State VAT の規制に違反している状態だ。同州税務当局は X 社に対し、ベンガルルの倉庫から商品を
販売することを中止するよう命じた。その過程の中で、同州税務当局は 100 社ほどの販売者のライセ
ンスを無効化した。結果的に X 社は、ベンガルル倉庫の商品の注文を何件もキャンセルすることにな
り、多くの損失を受けた。
*********************************************
留意事項
1. 当レポートは公に入手可能なデータに基づいて作成されています。データの裏付けが限られる場合には、それを分析し
ています。
2. さまざまなソースから情報を収集する上では細心の注意を払っていますが、情報の内容が公表されなかったり、秘匿あ
るいは誤って指示された場合には、損失やダメージ、その他の結果について、弊社が責任を負うものではありません。
記事提供:Corporate Catalyst (India) Pvt Ltd
(2015 年 3 月 11 日作成)
13
4.
経済・産業トピックス
経済
【タイ】国境エリアの経済特区における最優遇 13 業種を選定
国境エリアの 5 つの経済特区の位置
3 月 16 日、国家経済社会開発庁のアーコム長官は、
タイ政府主導で進められている国境エリアの 5 つの経
済特区(※)に立地する業種のうち、最も優遇される
13 業種を発表した。
※北部ターク県、中部サケオ県、中部トラート県、東北部
ムクダハン県、南部ソンクラー県の経済特区
最優遇の対象となる 13 業種は「①農業・漁業・農
漁業関連産業、②セラミックス、③繊維・衣服・皮革、
④家具、⑤宝石・装飾品、⑥医療器具、⑦自動車・機
械・同部品、⑧電気電子、⑨プラスチック、⑩製薬、
⑪物流、⑫工業団地の開発、⑬観光関連」である。
優遇措置の詳細は、別途発表される予定。プラユッ
ト首相は、先に、法人税の 8 年間の免除、電気・水な
どのインフラ整備コストに対する恩典が与えられる
予定であると発言している。
また、プラユット首相は、アセアン諸国の市場統合
と交通インフラ整備の効果を享受できるように、国境
エリアの経済特区開発を推進するための政策委員会
を設置するように指示を出している。
【インドネシア】ジョコ大統領来日
日系企業による半製品、製品輸出拡大に期待を示す
インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、大統領就任後、初めて来日し、3 月 23 日に安倍首相と会
談した。24 日には、東京都内のホテルで行われたインドネシア・ビジネス・フォーラムにおいて、1,000
名を超える出席者に、インドネシア政府としては、原材料を輸出したいのではない、半製品、製品輸出に
力を輸出したいと、付加価値の高い製品輸出拡大に向けた希望を述べた。
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【インドネシア】ルピア安に対応し、経済対策を発表
3 月 16 日、インドネシア政府は、17 年ぶりのルピア安進行を受けて、経済対策を発表した。貿易収支・
経常収支を改善する為に、輸出を行う企業に対する税制優遇を行うもの。製品の 30%以上を輸出する企
業に対してタックスアローアンス(=所得税の優遇措置)を拡大する。4 月から実施される予定。
今回発表された経済対策は以下の 7 項目。詳細は今後、明らかにされる予定。
・タックスアローアンスの拡大
・造船業、農業品加工業への付加価値税(VAT)関連のインセンティブ
・反ダンピング関税、セーフガードの導入
・30 カ国・地域からのインドネシアへの訪問者に対するビザ免除
・軽油へのバイオ燃料の混合比率を 10%から 15%に引き上げ
・石炭、石油・天然ガス、パームオイル輸出時の L/C 使用義務化
・再保険業界の再編
産業
【インド】電子商取引市場拡大
インド・インターネット携帯電話協会(Internet and Mobile Association of India=IAMAI)のレポートに
よると、インドの電子商取引市場は、2010 年以降、年率 35%拡大している。
インドの電子商取引市場の規模は、2013 年の 5,330 億 1,000 万ルピーから、2014 年には 8,152 億 5,000 万
ルピーに拡大した。2015 年には、さらに 33%拡大し、1 兆ルピー(約)に達する見込みである。
これまで、電子商取引市場のうち、旅行(Online Travel)が最大の市場であったが、オンライン小売が
急速に伸びており、2016 年には、旅行と同規模になると見られる。オンライン小売のうち 50%がキャッシ
ュオンデリバリー形態で占められていると推定されている。
(経済・産業トピックスの出所)各国政府・業界団体発表、各種報道
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(編集・発行) 三菱東京 UFJ 銀行 国際業務部
(照会先) 北村 広明
(e-mail): [email protected]
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