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結果報告書 貸付金に関する財務事務について

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結果報告書 貸付金に関する財務事務について
平成18年度
包括外部監査の結果報告書
貸付金に関する財務事務について
新潟県包括外部監査人
滝
上
由
行
包括外部監査の結果報告書目次
第1章
1
2
3
4
5
6
7
8
9
監査の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
監査の種類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
選定した特定の事件(テーマ)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
監査の対象機関・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
監査の対象年度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
事件を選定した理由・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
監査の着眼点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
監査の主な手続・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
監査の実施期間及び補助者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
利害関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
第2章
1
2
3
4
監査対象の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
貸付金制度の意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
貸付金決算額の推移及び全国比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
部局別貸付金残高・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
監査対象部局別貸付金一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
第3章 監査の結果と意見(各論)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
【産業労働観光部】
〔一 般 会 計〕
1 新潟県中小企業制度融資・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
2 企業立地促進資金貸付金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35
3 県営工業団地造成事業貸付金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44
4 中条中核工業団地造成事業貸付金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63
5 物流拠点構築事業用地取得貸付金······························· 76
6 産業労働観光部以外の部局による新潟県土地開発公社への貸付
6-1美咲町土地購入に対する貸付金【総務管理部 管財課】 ・・・・・・・・・ 85
6-2佐渡空港整備事業用地等の先行取得に関する貸付金【港湾空港
交通局空港課】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92
6-3道路事業用地取得資金貸付金【土木部 用地・土地利用課】 ・・・・ 100
7 新潟県勤労者生活安定資金貸付金······························ 103
8 育児・介護休業等貸付金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 108
9 工業用水道事業貸付金········································ 113
10 新潟県地域改善対策職業訓練受講資金等貸付金·················· 114
11 株式会社新潟ふるさと村経営改善資金貸付金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 116
12 新潟県観光施設改善資金貸付金································ 125
13 新潟県人工降雪機整備資金貸付金······························ 128
〔特 別 会 計〕
1 新潟県中小企業高度化資金貸付金制度·························· 131
2 小規模企業者等設備資金貸付事業貸付金、同設備貸与事業貸付金 ·· 145
【県民生活・環境部】
〔一 般 会 計〕
1 新潟県環境保全資金貸付金···································· 164
2 環境保全事業団貸付金········································ 168
3 新潟県廃棄物処理施設等整備資金貸付金························ 180
4 新潟県中越大震災復興基金貸付金······························ 183
〔特 別 会 計〕
1 災害援護資金貸付金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 196
【福祉保健部】
〔一 般 会 計〕
1 地域改善対策貸付金·········································· 197
2 介護福祉士等修学資金貸付金·································· 207
3 看護職員修学資金貸付金······································ 211
4 介護保険財政安定化基金貸付制度······························ 215
5 福祉のまちづくり施設整備資金融資・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 223
6 理学療法士等修学資金貸与制度································ 227
7 病院事業貸付金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 230
〔特 別 会 計〕
1 母子・寡婦福祉資金貸付金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 237
【農林水産部】
〔一 般 会 計〕
1 社団法人新潟県農林公社事業資金貸付金························ 253
2 農業経営改善促進資金貸付金·································· 272
3 新潟県農業大学校修学資金貸付金······························ 275
4 新潟県漁業振興資金貸付金···································· 276
5 造林用苗木購入資金貸付金···································· 279
〔特 別 会 計〕
1 農業改良資金貸付金·········································· 280
2 就農支援資金貸付金·········································· 287
3 林業・木材産業改善資金貸付金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 292
4 新潟県木材産業等高度化推進資金貸付金························ 297
5 林業就業促進資金貸付金······································ 300
6 沿岸漁業改善資金貸付金······································ 302
【港湾空港交通局】
〔一 般 会 計〕
1 東港臨海用地造成事業貸付金·································· 305
第4章
1
2
3
4
5
監査の結果と意見(総論)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 311
貸付金原資の有効利用について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 311
預託金の算定方法について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 318
違約金の調定について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 323
震災復興支援制度について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 326
貸付金の開示方法について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 329
第1章
1
監査の概要
監査の種類
地方自治法第 252 条の 37 第1項及び第2項に基づく包括外部監査
2
選定した特定の事件(テーマ)
貸付金に関する財務事務について
3
監査の対象機関
所管する貸付金の規模が大きい部局を監査対象とした。さらに、その部局からの借入
金等の規模が大きい公営企業、財政的援助団体等も監査対象に含めた。
(1)新潟県
県民生活・環境部
福祉保健部
産業労働観光部
震災復興支援課、環境対策課、廃棄物対策課、防災局危機管
理防災課
福祉保健課、医薬国保課、高齢福祉保健課、障害福祉課、児
童家庭課
産業振興課、商業振興課、産業立地課、観光振興課、労政雇
用課、職業能力開発課
農林水産部
経営普及課、水産課、林政課、治山課
病院局
総務課
企業局
総務課、企業誘致推進課
(2)財政的援助団体等
財団法人
新潟県環境保全事業団
新潟県土地開発公社
財団法人
にいがた産業創造機構
株式会社
新潟ふるさと村
社団法人
新潟県農林公社
新潟県信用保証協会
財団法人
新潟県中越大震災復興基金
なお、新潟県土地開発公社への貸付内容を詳細に検討するため、また、一般会計と公
営企業会計との貸借関係を網羅的に検討するために、以下の部署も監査対象に追加した。
4
総務管理部
管財課
土木部
用地・土地利用課
港湾空港交通局
空港課、東港開発課
監査の対象年度
平成 17 年度の執行分
但し、必要に応じて他の年度についても監査の対象年度とした。
1
5
事件を選定した理由
新潟県の貸付金残高は、平成 15 年度までは8百億円前後を推移していたが、平成 16
年度に中越大震災復興基金貸付金3千億円が実行されたため、同年度末において約3千
8百億円まで膨らんでおり、平成 17 年度末においてもほぼ同様な残高となっている。貸
付金は、補助金と比べた場合、特定の事業等を育成又は助成する等公益上必要と認めら
れた場合に資金提供する点では類似しているが、一定額を貸付け、その償還を経て多数
の事業者等に繰り返し資金を供給する点で特徴があるといえる。新潟県内における景気
が回復傾向を見せる中、過去に経済活性化のために実行した貸付の滞留状況や貸付金の
実効性については、県民の関心は高い。厳しい財政状況下、公益上必要な対象に必要額
の資金が貸付けられ、それらの効果も含め適切に管理することは重要なことと考えられ
る。
以上の理由から、「貸付金に関する財務事務について」を監査テーマとして選定した。
6
監査の着眼点
(ⅰ)貸付手続は法令及び要綱等に従って適正に行われているか。
(ⅱ)担保等の設定は妥当か。
(ⅲ)貸付金の回収手続は適正に行われているか。
(ⅳ)延滞債権についての管理及び徴収手続は適正に行われているか。
(ⅴ)返済免除、履行期間の延長などは規定の定めるところによりなされているか。
(ⅵ)貸付金残高及び延滞債権に係る開示は適切か。
(ⅶ)効率性、経済性及び有効性の観点から見直すべきものはないか。
7
監査の主な手続
(ⅰ)関連部署に貸付審査、管理及び保全等の手続についてヒアリングを行う。
(ⅱ)貸付金管理に係る基準・マニュアルが整備されているかどうか確認する。
(ⅲ)関係証憑類を閲覧・照合する。
(ⅳ)延滞している貸付金の状況を把握する。
(ⅴ)大口貸付先である公営企業、財政的援助団体等における運用状況を把握し、その適
切性や有効性について検討する。
2
8 監査の実施期間及び補助者
(1)監査の実施期間
平成 18 年7月 13 日から平成 19 年1月 19 日まで
(2)補助者
9
公認会計士
清水
涼子
公認会計士
田中
一弘
公認会計士
相澤
久子
公認会計士
齋藤
祐暢
公認会計士
細川
達也
公認会計士
小林
大造
コンサルタント
石村
英雄
利害関係
包括外部監査の対象とした事件について、地方自治法第 252 条の 29 の規定により記載
すべき利害関係はない。
注:本報告書の金額表示について
本報告書に含まれている表の内訳金額については、端数処理の関係で合計金額と
一致しない場合がある。また、文中に数値を引用した場合にも端数処理の関係で金
額が一致しない場合がある。
3
第2章 監査対象の概要
1 貸付金制度の意義
地方公共団体の貸付金は、民間住宅建設資金、母子福祉資金及び工業振興機械類購入
資金等さまざまな政策目的を果たすために、法令又は条例等により、市町村、公益法人、
その他の個人等に一般に低利で資金を融通するものである。一方、地方公営企業法第 17
条の2、第 18 条の2では、地方公営企業の経営に伴う収入をもって充てることが適当で
ない経費等を負担するため、或いはそれ以外の場合についても地方公共団体の一般会計
又は他の特別会計から地方公営企業の特別会計に貸し付けを行うことができると規定さ
れている。
2 貸付金決算額の推移及び全国比較
(1)最近5年間の推移
新潟県(以下、「県」という。)における平成 12 年度から平成 17 年度までの貸付金額
及び貸付金残高は以下のように推移している。
(単位:千円)
年度
貸付金額
前年度比
年度末残高
前年度比
平成12年度
104,092,796
-
96,257,602
-
平成13年度
104,537,031
100.4
90,822,678
94.4
平成14年度
112,533,983
107.6
86,364,770
95.1
平成15年度
110,607,447
98.3
76,191,884
88.2
平成16年度
415,025,259
375.2
372,867,285
489.4
平成17年度
114,711,153
27.6
377,782,927
101.3
(出典:「地方財政状況調査」表の「投資及び出資金、貸付金の状況 その2貸付金の状況」から作成)
貸付金残高は減少傾向にあったが、平成 16 年度に財団法人新潟県中越大震災復興基金
に対する貸付金3千億円が実行されたため、残高は急増した。平成 17 年度もさらに返済
額を超えて新規貸付が行われたため、残高は増加している。
また、基金からも貸付が行われており、この推移は以下のとおりである。
(単位:千円)
年度
内
年度末残高
土地基金
訳
産業振興貸付基金
平成12年度
13,461,939
12,655,702
806,237
平成13年度
14,525,623
13,954,905
570,718
平成14年度
14,528,700
14,202,376
326,324
平成15年度
13,840,285
13,623,863
216,422
平成16年度
13,535,618
13,386,497
149,121
平成17年度
13,371,933
13,270,046
101,887
4
(2)全国比較
平成 16 年度の地方財政状況調査の都道府県別内訳は以下のようになっている。
表 2-1 貸付金の状況(都道府県別内訳)
(単位:百万円)
区分
H15 年度末
H16 年度歳
残高
出決算額
貸付金総額
回収元金
貸付先別内訳
公社・協
地方開発
地方公営
会等
事業団
企業
市町村
その他
年度内
H16 年度末
残高
貸付期間別内訳
年度超
回収
新潟
87,501
415,025
4,671
-
32,508
6,044
371,800
108,973
306,051
118,337
384,177
平均
143,426
83,539
11,702
26
2,175
1,496
68,139
65,892
17,647
80,830
145,837
北海道
157,320
256,837
63,448
-
3,708
-
189,679
243,631
13,205
256,199
156,204
青森
67,142
71,014
3,292
1,240
1,800
-
64,682
67,952
3,062
74,346
63,770
岩手
58,525
66,227
8,710
-
8,800
-
48,716
64,121
2,106
69,329
57,703
宮城
61,413
51,039
4,130
-
634
1,140
45,134
46,458
4,581
52,022
60,299
秋田
66,085
77,453
6,228
-
3,937
3,386
63,902
70,169
7,284
74,821
68,673
山形
64,147
63,586
4,307
-
500
2,675
56,103
58,939
4,646
65,779
61,434
福島
56,719
61,491
918
-
27
50
60,495
58,971
2,520
62,323
55,816
茨城
183,685
81,482
9,066
-
1,616
2,405
68,392
67,437
14,045
74,698
191,344
栃木
25,785
117,494
2,200
-
430
-
114,863
116,102
1,391
118,605
24,433
群馬
38,500
108,688
3,464
-
-
2,287
102,936
105,313
3,374
109,114
37,957
埼玉
113,091
42,062
3,390
-
-
6,000
32,671
33,299
8,763
50,563
104,542
千葉
171,271
129,814
33,340
-
-
1,757
94,716
88,180
41,634
106,869
190,535
東京
1,866,470
233,562
39,766
-
-
-
193,796
27,869
205,693
266,023
1,833,113
神奈川
141,092
8,478
-
-
-
3,600
4,878
332
8,146
17,474
131,341
富山
55,606
39,522
4,236
-
5,297
-
29,989
35,448
4,074
38,616
56,393
石川
64,527
22,172
3,229
-
2,200
2,500
14,243
17,212
4,960
22,681
63,952
福井
57,871
30,920
9,774
-
622
52
20,471
29,465
1,455
34,375
48,429
山梨
98,394
18,229
8,000
-
-
2,273
7,955
9,910
8,318
21,835
94,723
長野
46,191
71,643
3,825
-
-
577
67,239
69,263
2,379
83,217
34,425
岐阜
81,016
51,849
1,032
-
854
366
49,595
48,621
3,228
57,441
75,286
静岡
142,677
9,135
896
-
-
2,900
5,337
1,626
7,508
21,214
130,280
愛知
306,825
225,206
29,152
-
3,824
1,400
190,828
200,001
25,204
224,982
306,831
三重
63,350
24,796
4,134
-
800
2,083
17,778
20,042
4,753
28,783
59,143
滋賀
86,965
38,003
9,104
-
-
1,170
27,729
34,043
3,959
38,125
85,564
5
区分
H15 年度末
H16 年度歳
残高
出決算額
貸付金総額
回収元金
貸付先別内訳
公社・協
地方開発
地方公営
会等
事業団
企業
H16 年度末
残高
貸付期間別内訳
市町村
その他
年度内
年度超
回収
京都
45,606
66,016
432
-
-
113
65,470
63,193
2,823
76,710
34,325
大阪
328,936
386,545
65,834
-
3,990
3,682
313,039
363,748
22,797
400,405
312,468
兵庫
807,640
338,650
52,441
-
-
1,378
284,830
333,023
5,626
365,458
780,654
奈良
34,171
6,716
2,191
-
-
876
3,648
4,067
2,649
7,188
32,948
和歌山
80,820
39,307
782
-
72
1,257
37,195
35,261
4,046
41,683
78,204
鳥取
51,864
40,843
6,680
-
68
-
34,095
39,115
1,728
42,442
49,975
島根
89,828
61,169
6,217
-
623
6,483
47,844
51,448
9,720
57,956
91,741
岡山
64,403
95,914
85,959
-
-
167
9,787
88,022
7,891
119,558
40,627
広島
105,116
35,706
11,975
-
-
6
23,724
27,396
8,309
32,725
107,629
山口
66,571
79,986
8,168
-
703
-
71,114
76,219
3,766
80,608
65,890
徳島
66,448
49,390
520
-
2,170
2,080
44,618
45,720
3,669
54,306
61,165
香川
57,050
45,490
813
-
101
2,386
42,188
42,161
3,328
52,688
49,650
愛媛
39,093
62,033
2,579
-
11,214
1,403
46,836
47,366
14,666
59,547
41,414
高知
32,576
23,718
13,456
-
6,608
770
2,882
20,005
3,712
24,672
41,234
福岡
210,463
91,026
7,066
-
7,630
-
76,329
81,095
9,930
94,791
203,369
佐賀
29,079
15,621
-
-
-
400
15,221
13,589
2,032
16,410
28,643
長崎
60,329
38,790
5,700
-
868
634
31,588
30,021
8,768
34,585
61,881
熊本
191,979
31,622
498
-
-
1,253
29,871
23,568
8,054
33,519
189,915
大分
52,725
33,975
9,785
-
600
1,800
21,789
29,940
4,034
37,101
49,548
宮崎
44,699
45,817
6,094
-
-
1,351
38,371
41,778
4,039
46,898
42,237
鹿児島
72,064
7,345
2,486
-
-
1,594
3,264
4,128
3,217
14,213
63,895
沖縄
53,387
14,893
-
-
-
-
14,893
12,649
2,244
17,754
50,527
(出典:平成 16 年度地方財政統計年報(総務省)から抜粋)
(注)新潟県の場合は、上記地方財政統計年報には美咲町土地購入に対する新潟県土地開発公社への貸
付金が含まれていないため、平成 15 年度末残高、及び平成 16 年度末残高の各欄に 11,310 百万円
を加算している。
なお、平均は 47 都道府県の合計額を 47 で割ったもの。
県の特徴としては、上述のように震災関連の理由で残高が膨らんでいることのほか、
地方公営事業や市町村に対する貸付金が多いことが挙げられる。とりわけ地方公営事業
に対する貸付金は全国一位となっている。また、年度内回収の貸付金総額も単純平均額
を大幅に上回っている。
3
部局別貸付金残高
監査に当たっては所管する貸付金の規模が大きい部局を監査対象とした。さらに、そ
の部局からの借入金等の規模が大きい公営企業、財政的援助団体等も監査対象に含めた。
平成 17 年度の部局別貸付(預託)金残高は以下のとおりである。その結果、網かけを付
6
した部局について監査対象とした。この他、新潟県土地開発公社に対する貸付は複数の
部局が行っており、貸付内容を詳細に検討するため個別に下記3課を監査対象に加える
とともに、一般会計と公営企業会計との貸借関係を網羅的に検討するため港湾空港交通
局の東港開発課を監査対象に加えた。
表 2-2 部局別貸付残高一覧表(平成 17 年度末)
(単位:千円)
部
局
一般会計
特別会計
合
計
割
合
総 務 管 理 部
14,252,494
15,741,200
29,993,694
7.9%
県民生活・環境部
301,522,650
307,035
301,829,685
79.9%
福 祉 保 健 部
2,068,473
1,019,677
3,088,150
0.8%
産業労働観光部
4,083,087
20,100,518
24,183,605
6.4%
農 林 水 産 部
12,529,335
1,812,625
14,341,960
3.8%
部
127,255
-
127,255
0.0%
港湾空港交通局
1,803,789
-
1,803,789
0.5%
教
庁
2,175,153
-
2,175,153
0.6%
部
239,636
-
239,636
0.1%
338,801,872
38,981,055
377,782,927
100.0%
土
警
木
育
察
本
合
計
※上記以外に新潟県土地開発公社への貸付先として監査
対象とした部局課及び新潟県土地開発公社貸付金残高
総務管理部管財課
11,310,000
3.0%
土木部用地・土地
47,255
0.0%
233,790
0.1%
11,591,045
3.1%
利用課
港湾空港交通局空
港課
合 計
(注)港湾空港交通局東港開発課の貸付金の平成 17 年度末の貸付残高はゼロとなっている。
4
監査対象部局別貸付金一覧
「3
部局別貸付金残高」により選択した部局の所管する貸付金のうち、表 2-3 で示
す平成 17 年度に残高があるか或いは新規貸付(預託)が行われているものを監査の対象
とした。
監査対象となった貸付金は次のとおりである。
7
表 2-3 平成 17 年度貸付額及び期末残高
(単位:千円)
部局等
会計
一般
産業労働
観光部
貸付金名
貸付(預託)先
支出額
地方産業育成資金貸付金
経営安定資金貸付金
地域産業対策資金貸付金
中心市街地活性化対策資金
貸付金
中小企業関連倒産防止資金
貸付金
中小企業設備改善資金貸付金
フロンティア企業支援資金
貸付金
同和地区中小企業振興資金
貸付金
中小企業緊急経営支援資金
貸付金
(金融機関)
同上
同上
2,683,443
7,212,300
29,100
-
-
-
同上
800
-
同上
301,400
-
同上
661,000
-
同上
124,300
-
同上
1,000
-
同上
11,308,000
-
中小企業創業支援資金貸付金
中小企業金融円滑化対策資金
貸付金
売掛債権活用資金貸付金
セーフティネット資金貸付金
商店街緊急支援資金貸付金
平成 16 年大規模災害対策資金
貸付金
企業立地促進資金貸付金
同上
232,500
-
同上
93,300
-
同上
同上
同上
57,200
27,108,000
33,400
-
-
-
同上
4,085,200
-
-
101,887
23,488,928
2,173,807
3,438,313
-
-
1,673,155
50,000
8,635
-
-
-
134,007
-
230
1,000,000
-
7,380
-
県営工業団地造成事業貸付金
中条中核工業団地貸付金
新潟県土地開発公社事業資金
貸付金(FAZ 用地取得資金)
勤労者生活安定資金貸付金
育児、介護休業等貸付金
工業用水道事業貸付金
地域改善対策職業訓練受講
資金等貸付金
株式会社新潟ふるさと村経営
安定資金貸付金
観光施設改善資金貸付金
中小企業支
援資金貸付
事業
同上
工業用地造成
事業会計
新潟県土地
開発公社
新潟県土地
開発公社
(対象者)
(対象者)
工業用水道
事業会計
(対象者)
株式会社
新潟ふるさと村
(対象者)
期末残高
人工降雪機整備資金貸付金
(対象者)
17,360
-
中小企業高度化資金貸付金
(対象者)
1,442,739
17,114,698
(対象者)
270,510
1,485,149
(対象者)
114,040
1,500,671
小規模企業等設備資金貸付
事業貸付金
小規模企業等設備貸与事業
8
部局等
会計
貸付金名
貸付(預託)先
新潟県環境保全資金貸付金
(対象者)
6,098
-
新潟県環境保全事業団貸付金
(対象者)
-
1,522,650
(対象者)
201,432
-
-
300,000,000
-
307,035
1,864
-
廃棄物処理施設等整備資金
県民生活
一般
・環境部
貸付金
新潟県中越大震災復興基金
貸付金
災害救助
事業
一般
福祉保健部
支出額
期末残高
財団法人
新潟県中越大震
災復興基金
災害援護資金貸付金
(対象者)
地域改善対策貸付金
(金融機関)
介護福祉士等修学資金貸付金
(対象者)
3,024
107,508
看護職員修学資金貸付金
(対象者)
29,028
782,933
財政安定化基金貸付金
(市町村)
739,952
1,176,591
1,849
-
-
1,440
福祉のまちづくり条例適合
施設融資
理学療法士等修学資金貸付金
病院事業貸付金
(金融機関)
(対象者)
病院事業会計
5,000,000
母子寡婦福
祉資金貸付
母子・寡婦福祉資金貸付金
(対象者)
新潟県農林公社事業資金
社団法人
133,463
1,019,677
474,515
12,497,622
(対象者)
35,075
-
(対象者)
8,544
31,712
漁業振興資金貸付金
(対象者)
88,400
-
造林用苗木購入資金
(対象者)
14,256
-
農業改良資金貸付金
(対象者)
21,859
425,383
(対象者)
71,269
566,839
(対象者)
33,001
226,471
(対象者)
320,760
320,760
林業就業促進資金貸付金
(対象者)
-
10,916
沿岸漁業改善資金貸付金
(対象者)
29,230
262,256
事業
貸付金
新潟県農林公社
農業経営改善促進資金貸付金
一般
新潟県農業大学校修学資金
貸付金
農業改良資
金貸付事業
就農支援資金貸付金(就農施
設等)
農林水産部
林業・木材産業改善資金
貸付金
林業振興資
金貸付事業
木材産業等高度化推進資金
貸付金
沿岸漁業改
善資金貸付
事業
9
部局等
会計
新潟県土地
開発公社関
連
(総務管理部)
(土木部)
一般
(港湾空港交
通局)
港湾空港交
通局
一般
貸付金名
貸付(預託)先
新潟県土地開発公社貸付金
新潟県土地
(美咲町地区用地取得事業)
開発公社
新潟県土地開発公社貸付金
新潟県土地
(佐渡空港用地先行取得事業)
開発公社
新潟県土地開発公社貸付金
新潟県土地
(道路用地取得事業)
開発公社
東港臨海用地造成事業貸付金
新潟東港臨海用
地造成事業会計
支出額
期末残高
-
11,310,000
206
233,790
-
47,255
6,100,000
-
(出典:「財産に関する調書」を基に作成。なお、貸付残高は期日が到来していない残高。)
10
第3章 監査の結果と意見(各論)
【産業労働観光部】 〔一般会計〕
1 新潟県中小企業制度融資
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
県は、中小企業者の事業活動に必要な資金の円滑化を図り、その近代化と経営基盤の
確立や経営の健全化等に資するため、中小企業制度融資(以下、「制度融資」という。)
を実施している。
この制度融資は、金融機関の資金調達コストの一部を県が負担する等により、資金調
達力の弱い中小企業が低金利で金融機関から資金を借り入れることを可能にするもので
あり、具体的には、以下の二つの仕組みが一体として運用されることにより実施されて
いる。
(ア)中小企業者への融資は民間金融機関が実行するが、その融資原資の一部として県資
金を金融機関へ預託。
これにより、金融機関の資金調達コストの一部を県が負担することとなり金融機関に
よる低利融資が可能となる。
(イ)金融機関の貸出リスクを軽減するため、原則として新潟県信用保証協会(以下、「県
保証協会」という。)が信用保証を行う。
これに際して、保証協会の積極的な保証承諾を支援するため、県は県保証協会の代位
弁済に対して一定の割合で損失補償を実施している。
なお、制度融資を利用できるのは、
「中小企業信用保険法」第2条第1項第1号及び第
1号の2に規定する中小企業者及び事業協同組合等であるが、融資限度額、融資利率、
融資期間等の融資条件については、制度ごとに設定されている。
(中小企業者の範囲)
原則として、県内で1年以上継続して同一事業を営むもので、下記のいずれかに該当
する法人又は個人。
表 3-1-1 中小企業者の範囲
業種区分
資本金又は出資金
従業員
製造業等
3 億円以下
300 人以下
卸売業
1 億円以下
100 人以下
小売業
5,000 万円以下
50 人以下
サービス業
5,000 万円以下
100 人以下
11
(注1)遊興娯楽業、金融業および農林水産業などは除く。
(注2)「中小企業創業支援資金」については、営業実績のない創業予定者も可。
(注3)これらの他、ソフトウェア業等の政令で定められた業種については個別に範囲を規定。
表 3-1-2 平成 17 年度における制度内容
制
度
名
資金使途
融資限度額
利率
(千円)
(%)
融資期間
運転
5年
地方産業育成資金
1.95
10,000
設備
7年
運転
5年
40,000
設備
7年
(組合60,000)
売掛債権活用資金
運転
1年
30,000
1.90
中小企業設備改善資金
設備
7年
50,000
1.90
運転
5年
設備
20,000
2.00
7年
運転
5年
50,000
設備
7年
(注1)
店舗新展開枠
設備
7年
50,000
労働時間短縮設備枠
設備
7年
50,000
運転
7年
30,000
設備
7年
(注2)
連鎖倒産防止枠
運転
7年
30,000
企業再生枠
運転
9年
50,000
運転
5年
30,000
設備
7年
(注3)
運転
5年
8,000
設備
7年
(注4)
経営安定資金
2.15
中小企業創業支援資金
フロンテ
新技術・新事業等展開枠
ィア企業
支援資金
セーフテ
1.90
経営支援枠
ィネット
資金
1.90
商店街緊急支援資金
同和地区中小企業振興資金
平成16年大規模災
運転
10年
設備
2.15
1.70
(特認200,000)
(注1)事業実績が 6 ヶ月未満のものは 20,000 千円。
(注2)新潟県中小企業再生支援協議会の支援による再生計画策定分は 50,000 千円。
(注3)うち運転資金 15,000 千円。
(注4)うち運転資金 5,000 千円。
イ
1.90
70,000
地震対応枠
害対策資金
(保証なし2.45)
根拠法令等
新潟県中小企業経営安定資金融資要網等
12
②
制度の仕組み・手続
制度の仕組み・手続は下記の図のとおりである。
図 3-1-1 制度の仕組み・手続
融資申込
④
融資実行
中小企業者
①
融資実行額・残高報告
②
金融機関
保証申込
包括信用保険契約
県保証協会
③
保証承諾
預託
損失補償契約
中小企業金融公庫
県
中小企業者より金融機関に制度融資の申込があると、金融機関で要件審査のうえ保証
協会に保証申込を行う。
県保証協会が保証審査のうえ、金融機関に対して保証承諾(信用保証委託契約)を行
うと、融資が実行される。
県は、金融機関よりの報告に基づき預託金を計算し、決済用預金(無利子)により金
融機関に預託を行う。
県保証協会は、代位弁済による保証損失に備えるため中小企業金融公庫との間で、信
用保険契約を締結しており、代位弁済が発生した場合には保険の種類により元本金額の
70%または 80%の保険金を受領する。
加えて、県保証協会は、県との間で損失補償契約を締結しており、上記の保険金で補
填されない部分の 50%(貸倒リスクの高い特別融資は 80%又は 100%)の補償を受ける。
なお、代位弁済後に求償権の行使により県保証協会が回収した金額は、負担割合に応
じて県及び中小企業金融公庫に返納される。
③
ア
貸付金の実績
金融機関による制度融資残高の推移
制度融資残高の推移は以下のとおりである。
県では、平成 16 年大規模災害対策資金貸付が実施されているため残高のピーク
は平成 16 年度となっているが、これを除くとセーフティネット資金貸付が導入された平
成 15 年度がピークであり、それ以降は減少に転じている。
13
セーフティネット資金貸付とは、「長期的な景気の低迷、取引先の倒産、災害等の影響
をうける中小企業者の経営の安定を図るとともに、売上の減少等業況悪化を来たしてい
るが、中長期的には業況が回復し発展することが見込まれる中小企業者の経営の健全化
に資する資金を融資する」制度であり、特に「企業再生枠」は、既往の県制度融資の借
換えにより資金繰りの緩和を図り、かつ新規融資分も含めることが出来る制度である。
この結果、平成 15 年度では全体としては増加しているが、「中小企業緊急経営支援資
金」、「中小企業金融円滑化対策資金」等は大幅に減少している。
表 3-1-3 金融機関による制度融資残高の推移
(単位:千円)
H13
H14
H15
H16
H17
地方産業育成資金
11,131,878
11,466,141
12,139,284
13,727,685
14,606,758
経営安定資金
14,915,204
20,823,415
22,266,123
27,148,660
31,798,242
286,247
39,414
101,954,423
106,645,849
57,170,444
34,049,475
19,366,275
地域産業対策資金
1,632,360
942,020
334,196
151,801
66,840
地場産業振興資金
15,147
-
-
-
-
組合共同事業対策資金
18,000
11,500
5,500
-
-
中心市街地活性化対策資金
40,411
28,367
7,070
中小企業経済変動対策特別資金
中小企業緊急経営支援資金
下請中小企業経営合理化資金
中小企業関連倒産防止資金
売掛債権活用資金
8,400
2,098,127
中小企業国際化対策資金
中小企業金融円滑化対策資金
中小企業創業支援資金
フロンテ
新技術・
ィア企業
新事業等展開枠
支援資金
店舗新展開枠
労働時間短縮設備枠
-
-
4,790
-
-
2,510
-
2,077,507
1,384,562
1,044,996
728,834
345,790
191,792
250,225
310,040
2,945,962
2,148,899
1,528,722
1,432,382
1,616,584
7,679
3,683
4,892,287
3,110,541
413,061
-
中小企業設備改善資金
-
-
-
-
-
1,206,626
361,761
126,498
557,432
625,077
698,007
838,822
718,273
586,032
313,026
255,642
152,778
183,089
136,539
74,986
44,464
30,390
62,749
28,818
2,280
-
-
セ-フテ
経営支援枠
-
-
8,813,310
13,721,129
17,623,860
ィネット
連鎖倒産防止枠
-
-
410,459
574,758
583,901
企業再生枠
-
-
52,261,586
60,083,178
57,952,545
-
-
92,856
88,681
58,944
10,502
6,880
2,672
資金
商店街緊急支援資金
同和地区中小企業振興資金
23,226
14,562
平成16年大規模
水害対応枠
-
-
-
1,650,483
1,462,463
災害対策資金
地震対応枠
-
-
-
6,312,023
10,511,534
141,346,523
148,966,509
158,838,401
161,607,020
157,840,490
合
計
14
イ
預託金残高の推移
県から金融機関への預託金残高の推移は以下のとおりである。なお、年度末には全額
引き上げているため、各年度の2月末残高の推移を記載している。
表 3-1-4 預託金残高の推移
(単位:千円)
H13
H14
H15
H16
H17
地方産業育成資金
3,105,450
2,856,508
2,803,346
2,773,902
2,683,443
経営安定資金
3,226,900
4,569,000
5,690,900
6,454,500
7,212,300
408,300
91,900
14,600
40,766,500
43,801,500
地域産業対策資金
564,500
457,800
地場産業振興資金
18,100
3,200
3,800
2,400
1,500
800
11,000
7,100
5,000
1,300
1,600
1,300
522,100
726,500
592,000
410,700
301,400
94,000
43,900
57,400
57,200
-
-
-
-
中小企業経済変動対策特別資金
中小企業緊急経営支援資金
組合共同事業対策資金
中心市街地活性化対策資金
下請中小企業経営合理化資金
中小企業関連倒産防止資金
売掛債権活用資金
-
小規模企業設備改善資金
中小企業設備改善資金
500
-
-
34,241,700
19,387,900
11,308,000
178,300
60,900
29,100
-
-
-
-
-
800
-
1,250,000
970,800
763,500
5,900
2,500
1,200
1,350,300
939,200
619,800
274,500
93,300
99,300
135,300
172,800
185,600
232,500
387,700
291,400
257,600
175,000
107,200
106,700
83,000
52,900
29,700
17,100
労働時間短縮設備枠
41,800
25,400
12,100
1,000
セーフテ
経営支援枠
-
-
2,519,100
4,930,200
5,829,200
ィネット
連鎖倒産防止枠
-
-
116,300
184,800
179,000
企業再生枠
-
-
7,293,600
20,368,500
21,099,800
-
-
38,600
36,000
33,400
2,300
1,700
1,000
中小企業国際化対策資金
中小企業金融円滑化対策資金
中小企業創業支援資金
フロンテ
新技術・新事業等展開
ィア企業
枠
支援資金
店舗新展開枠
資金
商店街緊急支援資金
同和地区中小企業振興資金
5,700
3,700
599,100
-
-
661,000
-
-
平成16年大規模
水害対応枠
-
-
-
611,300
544,500
災害対策資金
地震対応枠
-
-
-
1,237,700
3,540,700
51,876,150
55,062,508
55,421,046
57,782,502
53,930,943
計
15
ウ
預託金の計算方法と実質預託率
県は、金融機関の貸付実績の報告に基づいて、その一定割合を預託金として決済用預
金として預け入れている。これは、金融機関が中小企業者へ貸し出す資金の一部を県が
預託することによって、金融機関が中小企業者へ低利で貸し出したとしても、実質的に
は通常の融資と変わらない運用利回りを上げることができるよう配慮されたものである。
県では、制度融資毎に中小企業者への貸出金利を政策的に定め、預託率を調整するこ
とによって金融機関の実収利回りを基準とする実効金利に近付けることとしているが、
実際には金融機関との契約であり、また全金融機関統一の預託割合としていることから
実収利回りが実効金利を上回ることが多いようである。
なお、預託金の計算方法は以下の通りである。
預託金額=(前期末融資残高×90%+新規実行額)×負担割合
前期末融資残高に 90%を乗じるのは、年度中の貸付金返済額を見込んでいるためであ
る。
エ
予算との関係
平成 17 年度の制度融資の当初予算時における新規枠と貸付実績額の割合(消化率)は
以下のとおりである。
表 3-1-5 新規貸付枠の消化率
(単位:千円、%)
新規枠予算
貸付実績額
新規枠消化率
地方産業育成資金
10,050,000
8,054,194
80.1
経営安定資金
18,000,000
16,493,160
91.6
500,000
1,747,681
349.5
中小企業設備改善資金
2,000,000
713,870
35.7
中小企業創業支援資金
1,000,000
418,700
41.9
新技術・新事業等展開枠
850,000
14,000
1.6
店舗新展開枠
300,000
-
-
労働時間短縮設備枠
150,000
-
-
売掛債権活用資金
フロンティア企業支援資金
経営支援枠
11,000,000
7,043,660
64.0
連鎖倒産防止枠
1,800,000
100,485
5.6
企業再生枠
14,000,000
8,919,732
63.7
商店街緊急支援資金
500,000
12,170
2.4
同和地区中小企業振興資金
20,000
セーフティネット資金
平成16年大規模災害対策資金
地震対応枠
計
16
-
-
15,000,000
4,971,910
33.1
75,170,000
48,489,562
64.5
上記のうち、消化率の低いフロンティア企業支援資金の労働時間短縮設備枠及び商店
街緊急支援資金は平成 17 年度をもって廃止され、平成 18 年度からはフロンティア企業
支援資金の商店街活性化支援枠(店舗新展開枠から名称変更。)に統合されている。
また、フロンティア企業支援資金の新技術・新事業等展開枠は平成 18 年度では、中小
企業設備改善資金を吸収して存続している。
なお、売掛債権活用資金の消化率が 349.5%となっているが、これは売掛債権を担保に
する短期の貸付であり、回転が速いためである。
オ
県保証協会の代位弁済額の推移と県の損失補償額の推移
県保証協会の代位弁済額(県制度融資分のみ)
、県の損失補償額及び損失補償後の保証
協会よりの返納額の推移は次のとおりである。
表 3-1-6 県保証協会の代位弁済額と県の損失補償額の推移
(単位:千円)
県保証協会の
損失補償後に県へ
県の損失補償額
代位弁済額
返納された金額
平成8年度
432,578
27,708
16,208
平成9年度
683,490
40,674
11,670
平成10年度
963,788
72,528
12,606
平成11年度
1,566,274
105,504
11,608
平成12年度
3,344,251
258,543
16,507
平成13年度
3,808,861
611,504
21,037
平成14年度
3,762,733
693,081
38,499
平成15年度
3,126,748
584,158
41,767
平成16年度
2,767,381
461,755
67,816
平成17年度
1,945,683
535,577
72,052
10年間合計
22,401,787
3,391,032
309,770
17
各年度の損失補償額は、県と県保証協会の間で締結される損失補償契約に従い、以下
の算定式により計算されている。
損失補償額=(代位弁済額-中小企業金融公庫からの保険金-求償権先からの回収額)
×
所定の損失補填率(通常 50%、貸倒リスクの高い特別融資は 80%ま
たは 100%)
また、その支払は、原則として代位弁済発生年度の翌年度でなされるものとされてい
るが、例外的に損失補償額の一部を翌年度以降に繰延べている事例もある。
具体的には、県の損失補填率が 100%である中小企業緊急経営支援資金(平成 10 年度
貸付分。)の平成 14 年度から平成 16 年度の代位弁済にかかる損失補償額は、その発生年
度の翌年度でその 80%相当額を支払い、残りの 20%部分はさらにその翌々年度で支払う
こととなっている。
県保証協会の代位弁済額と県の損失補償額の関係を見てみると、共に平成 11 年度以降
で急激に増加しているが、上記のとおり損失補償額の支払が翌年度になっているため、
そのピークは代位弁済額が平成 13 年度、損失補償額は平成 14 年度となっている。
また、平成 14 年度以降、代位弁済額は毎年減少しているのに対して、損失補償額は平
成 17 年度で増加している。
これは、平成 14 年度に発生した代位弁済額に対する損失補償額のうち、例外的に繰延
べられた損失補償額 126,990 千円が平成 17 年度で支払われているためである。
なお、平成 15 年度代位弁済発生額のうち、平成 18 年度支払分が 80,589 千円、平成 16
年度発生額のうち、平成 19 年度年度支払予定分が 50,452 千円ある。ただし、実際支払
金額は支払時点までに回収された部分を控除して決定されるため若干の減額が見込まれ
る。
制度融資に係る県のリスクは、この県保証協会への損失補償のみといえるが、過去 10
年間で総額 3,391,032 千円の支出がなされている。
損失補償額は、県保証協会の代位弁済額に応じて支払われるものであり県保証協会の
リスク管理体制に大きく依存しているといえる。
加えて、県は県保証協会へ、総額 4,114,955 千円(うち 2,140,955 千円は国からの補
助金分)を基本財産として出捐しているため、次に県保証協会の概要を説明する。
18
④
ア
新潟県信用保証協会の概要
設立目的
県保証協会は、信用保証協会法に基づき設立された法人であり、中小企業者等のため
に信用保証の業務を行い、もってこれらの者に対する金融の円滑化を図ることを目的と
している。
イ
設立年月日
昭和 24 年4月 28 日
ウ
基本財産(平成 18 年3月 31 日現在)
(単位:千円、%)
金額
潟
県
4,114,955
15.2
市
町
村
1,384,688
5.1
金融機関
43,500
0.2
そ
71,069
0.3
計
5,614,212
20.7
基
出
新
捐
基
金
本
の
他
金
財
産
負
担
金(金融機関他)
2,174,624
8.0
基
金
計
7,788,836
28.7
602,608
2.2
金
18,763,279
69.1
基本財産合計
27,154,723
100.0
金 融 安 定 化 特 別 基 金
基
構成比
金
準
備
県の出捐金(国からの補助金分 2,140,955 千円を含む。)の基本財産に占める割合は
15.2%であり、県を通じ国より拠出された金融安定化特別基金を含めると 17.4%となる。
エ
人員及び組織
(ア)役職員数
(平成 18 年 3 月 31 日現在)
理
事
16 名(12 名)
監
事
職
2名(2名)
員
116 名
(注)非常勤の役員数をカッコ内に内数で記載。
19
計
134 名(14 名)
(イ)組織図
総務課
会長
総務部
経理課
専務理事
長岡支店
企画調整課
常務理事
県央支店
理事
保証総括課
業務部
保証監理課
保証第一課
上越支店
保証第二課
佐渡支店
管理総括課
管理部
管理課
20
オ
主な業務内容
信用補完制度のもとで、中小企業者が銀行その他の金融機関から資金の貸付、手形の
割引、社債(私募債)の引受などを受けることによって生ずる債務の保証を行うこと。
信用補完制度とは、①信用保証協会が金融機関に対して、中小企業者の債務を保証す
る「信用保証」機能と、②これを国が出資する中小企業金融公庫によって再保険される
「信用保険」機能が、連結した制度であり、これを図に表すと次のようになる。
図 3-1-2 信用補完制度の概略
中小企業者
融
資
返
済
金融機関
預
保証申込
信用保証協会
代位弁済
負 担 金
融
保険契約
資
監 督
託
求償債務返
保証承諾
監督・出捐
監 督
政
府
出 資
中小企業金融公庫
21
地方公共団体
カ
平成 17 年度財務状況
県保証協会が作成している事業報告書によれば、平成 17 年度の収支計算書及び貸借対
照表は次のとおりである。
(ア)収支計算書(平成 17 年4月1日から平成 18 年3月 31 日まで)
(単位:千円)
科
目
一
般
うち金融安定化特別会計
経常収入
5,591,762
156,153
保証料
5,013,442
140,949
442,851
-
1,930
39
損害金
94,011
3,965
雑収入等
39,526
11,198
経常支出
3,747,981
154,116
業務費
1,389,271
106,521
信用保険料
2,347,636
47,595
11,073
-
1,843,780
2,036
10,948,143
1,170,748
776,314
83,159
3,227,932
125,932
775,724
69,967
6,168,082
891,688
5,486,871
-
681,210
-
89
-
11,000,920
1,252,320
求償権償却
7,364,766
1,119,725
責任準備金繰入
3,135,609
75,509
478,831
57,085
その他支出等
21,712
-
経常外収支差額
△ 52,776
△ 81,571
79,535
-
1,870,539
△ 79,535
有価証券利息・配当金
延滞保証料
雑支出等
経常収支差額
経常外収入
償却求償権回収金
責任準備金戻入
求償権償却準備金戻入
求償権補てん金戻入
保険金
損失補償補てん金
その他収入
経常外支出
求償権償却準備金繰入
金融安定化特別基金取崩額
当期収支差額
22
(イ)貸借対照表(平成 18 年3月 31 日現在)
(単位:千円)
借
方
科目
貸
金額
現金及び預け金
有価証券
科目
基本財産
27,154,723
39,485,993
基金
7,788,835
金融安定化特別基金
702,443
基金準備金
5,572,584
保証債務見返
金額
7,637,909
動産・不動産
損失補償金見返
方
516,905,785
602,608
18,763,279
制度改革促進基金
84,033
求償権
1,855,303
収支差額変動準備金
8,159,718
雑勘定
1,616,901
責任準備金
3,135,609
1,186,863
求償権償却準備金
未経過保険料
478,831
未収利息
107,598
退職給与引当金
1,255,897
厚生基金
243,989
損失補償金
5,572,584
その他
78,450
保証債務
516,905,785
雑勘定
11,029,738
未経過保証料
10,357,950
仮受金
532,953
保険納付金
119,734
その他
合計
573,776,921
19,099
合計
573,776,921
(ウ)財務状況の全国平均との比較
保
証
債
務
基
本
財
産
求償権-求償権償却準備金
基
本
財
全協会合計(注)
21倍
12.90%
県保証協会
19倍
5.07%
産
(注)全国 52 信用保証協会の合計値であり、中小企業金融公庫及び全国信用保証協会連合会作成の「業
務要覧(平成 18 年)
」に記載されているデータに基づいている。以下、同じ。
基本財産に対する保証債務の割合についてみると、全協会合計が 21 倍に対して県保証
協会は 19 倍であり、低い値となっている。
財務健全性の面からは低い方が望ましいものと考えられるが、
「中小企業者等の金融の
円滑化を図る。」という保証協会の目的、経営の安定化等を考慮しなければならないため、
「何倍以上、何倍以下が適正か」といった一般的な指標はない。
23
県保証協会は定款において保証債務の最高限度は基本財産の 60 倍と定められており、
かつ全国平均より倍率が低いため、保証余力は大きいものと考えられる。
また、求償権から求償権償却準備金を控除した額の基本財産に対する割合は、仮に求
償権が回収不能となった場合に基本財産に与える影響度合いを示すものであるが、全協
会合計が 12.90%であるのにたいして、県保証協会は 5.07%である。
この割合が小さいほど基本財産に与えるダメージが小さいことを示している。
表 3-1-7 県保証協会の経費率の状況
(単位:%)
経常支出の経常収
保証平均
入に対する割合
料率
経
経常支出
保
証
料
経常収入
保証債務平残
経
費
保証債務平残
費
人
件
率
費
保証債務平残
物
件
費
保証債務平残
全協会合計
66.98
1.08
0.30
0.19
0.10
県保証協会
67.03
0.96
0.27
0.19
0.08
次に、収支の状況を見ると、経常支出の経常収入に対する割合は全協会合計が 66.98%、
県保証協会が 67.03%であり平均的な値といえる。
また、経営の効率性を示す経費率も、全協会合計のそれとほぼ同等であり、保証平均
料率は若干低くなっている。
24
キ
過去5年間の保証状況
県保証協会(県制度保証とその他の保証に分けて表示。)と全協会合計(全国 52 信用
保証協会の合計)の過去 5 年間の保証状況は、次のとおりである。
表 3-1-8 保証承諾の状況
件数(件)
県制度保証
金額(千円)
件数(件)
その他の保証
金額(千円)
平成13年度
平成14年度
平成15年度
平成16年度
平成17年度
4,696
6,160
6,436
5,422
4,986
46,055,617
62,959,011
85,803,416
55,267,397
45,170,931
18,320
17,007
17,094
16,975
14,251
154,528,563
153,898,685
158,264,738
170,641,344
138,721,717
23,016
23,167
23,530
22,397
19,237
200,584,180
216,857,696
244,068,154
225,908,741
183,892,648
県保証協会
件数(件)
合計
金額(千円)
県制度保証の
件数(%)
20.4
26.6
27.4
24.2
25.9
割合
金額(%)
23.0
29.0
35.2
24.5
24.6
件数(件)
1,301,184
1,320,510
1,382,701
1,229,488
1,140,009
金額(百万円)
13,225,842
14,042,696
15,196,461
13,162,929
12,980,235
全協会合計
全協会合計に
件数(%)
1.8
1.8
1.7
1.8
1.7
占める割合
金額(%)
1.5
1.5
1.6
1.7
1.4
保証承諾は、全国的に、セーフティネット資金貸付が導入された平成 15 年をピークと
して 16 年度、17 年度と減少傾向にある。
なお、県保証協会のうち「その他の保証」が平成 16 年度で大幅に増加しているのは、
平成 16 年 11 月に無担保かつ第三者保証を必要としない無担保当座貸越根保証制度が創
設されたためである。
25
表 3-1-9 保証債務残高の状況
件数(件)
県制度保証
金額(千円)
件数(件)
その他の保証
金額(千円)
平成13年度
平成14年度
平成15年度
平成16年度
平成17年度
18,125
19,989
19,388
20,599
20,728
136,646,694
143,774,058
154,775,774
158,116,823
153,978,235
65,575
59,462
51,002
48,145
43,918
476,608,517
414,444,984
365,033,398
374,909,737
362,927,550
83,700
79,451
70,390
68,744
64,646
613,255,211
558,219,042
519,809,172
533,026,560
516,905,785
県保証協会
件数(件)
合計
金額(千円)
県制度保証の
件数(%)
21.7
25.2
27.5
30.0
32.1
割合
金額(%)
22.3
25.8
29.8
29.7
29.8
件数(件)
4,565,987
4,386,362
3,944,998
3,737,942
3,489,022
金額(百万円)
37,011,995
33,188,496
31,102,201
29,743,347
28,796,430
全協会合計
全協会合計に
件数(%)
1.8
1.8
1.8
1.8
1.9
占める割合
金額(%)
1.7
1.7
1.7
1.8
1.8
保証債務残高合計では、全協会合計に占める割合が金額ベースで 1.7%から 1.8%への
若干の上昇傾向であるのに対して、県保証協会合計に占める県制度保証の割合は、平成
13 年度の 22.3%から平成 17 年度は 29.8%へと急激に上昇している。
これは、セーフティネット資金貸付及び平成 16 年大規模災害対策資金貸付の影響によ
り、県制度保証の割合が大きくなってきていることを示している。
表 3-1-10 代位弁済額の推移
平成13年度
件数(件)
県制度保証
金額(千円)
件数(件)
その他の保証
金額(千円)
平成14年度
平成15年度
平成16年度
平成17年度
384
403
362
306
246
3,808,861
3,762,733
3,126,748
2,767,381
1,945,683
1,444
1,361
1,138
771
554
14,721,817
12,911,614
9,985,674
6,793,941
4,763,165
1,828
1,764
1,500
1,077
800
18,530,678
16,674,347
13,112,422
9,561,322
6,708,848
県保証協会
件数(件)
合計
金額(千円)
県制度保証の
件数(%)
21.0
22.8
24.1
28.4
30.8
割合
金額(%)
20.6
22.6
23.8
28.9
29.0
件数(件)
126,194
138,488
119,930
97,422
80,368
1,234,966
1,260,357
1,021,650
827,913
687,192
全協会合計
金額(百万円)
全協会合計に
件数
1.4
1.3
1.3
1.1
1.0
占める割合
金額
1.5
1.3
1.3
1.2
1.0
26
表 3-1-11 代位弁済率の推移
(単位:%)
代位弁済率
平成13年度
平成14年度
平成15年度
平成16年度
平成17年度
件数
2.21
2.11
1.84
1.53
1.19
金額
2.76
2.68
2.09
1.77
1.25
件数
2.10
2.18
2.06
1.56
1.20
金額
2.85
2.90
2.56
1.84
1.29
県保証協会
件数
2.13
2.16
2.00
1.55
1.20
合計
金額
2.86
2.88
2.46
1.85
1.29
件数
2.73
3.09
2.88
2.54
2.22
金額
3.17
3.65
3.22
2.74
2.38
県制度保証
その他の保証
全協会合計
(注)代位弁済率は、代位弁済(件数、金額)の保証債務平均残高(同左)に対する割合であり、県保
証協会合計(金額)及び全協会合計(金額)は、それぞれの公表数値を使用しているが、それら
以外は保証債務残高の期首・期末の単純平均を用いて計算した数値である。
代位弁済については、金額、率ともに平成 14 年度以降減少傾向にある。
代位弁済率は、県保証協会合計でも全協会合計より1ポイント以上も低い水準であり、
県制度保証に限れば、更に低い値を示している。
(2)実施した手続
県と県保証協会において次の手続を実施した。
(ⅰ)県における手続
・県の施策目的合致性、有効性、効率性及び県の負担する財政支出やリスクの内容の
開示状況について検討した。
・施策目的合致性及び有効性については、当初予算の消化率という観点から検討し、
効率性については現状の預託金方式の効果の検討及び代替方式との比較検討を行っ
た。
・財政支出やリスク内容の開示状況については、県の県保証協会への損失補償等につ
いての開示の内容が十分であるかどうかについて検討した。
(ⅱ)県保証協会における手続
上述のとおり、制度融資に係る県のリスクは、県保証協会への損失補償のみと言える。
その損失補償額は、県保証協会の代位弁済額に応じて支払われるものであり、県保証
協会のリスク管理体制に大きく依存している。
27
このため、県保証協会の業務内容を把握し、リスク管理上、最も重要と考えられる保
証申込から保証承諾の過程、さらには代位弁済に至る手続等の妥当性について監査する
ことにした。
監査の対象としたのは、県保証協会が平成 17 年度において代位弁済を実行した制度融
資に係るもの 246 件の中から、任意に抽出した 20 件であり、それぞれについて当初の保
証申込から保証承諾、代位弁済までの資料を査閲し、手続上の不備等がないか、また代
位弁済に至った経緯の内容等を検討した。
なお、県保証協会の保証申込から保証承諾、代位弁済に係る手続の概要は以下のとお
りである。
ア
保証申込と保証承諾(信用調査と審査)
県保証協会は、中小企業者等より保証申込があると、主として経営者の人的信用、企
業に内在する将来性、発展性、返済能力等にポイントをおいた信用調査を行うが、小口
のものや定型化したものは書面審査が中心で、新規、大口(残高2億超)等は実地調査
を原則としている。
こうして信用調査の結果により保証の諾否について審査が行われるが、大口等のもの
は、常勤役員会に諮られて決定されている。
審査の結果、保証承諾を決定した場合には金融機関あてに「信用保証書」が発行され、
これを受けて金融機関から申込み中小企業者等に対して資金が融資される。
また、県保証協会では、原則として申込の前に金融機関と県保証協会の事前相談を必
要としており、このため保証承諾割合(保証承諾の保証申込に対する割合)は、全協会
合計が件数、金額共に 90%台前半なのに対し、県保証協会は、ほぼ 100%となっている
(次表参照)
。
表 3-1-12 平成 17 年度における保証申込と保証承諾の関係
保証申込
保証承諾
保証承諾割合
件数(件)
金額(百万円)
件数(件)
金額(百万円)
件数(%)
金額(%)
全協会合計
1,203,361
14,195,824
1,140,009
12,980,235
94.73
91.43
県保証協会
19,291
185,154
19,237
183,893
99.72
99.31
イ
代位弁済
融資された事業資金は、金融機関との約定通り償還されることとなるが、以下のよう
な償還不能にいたる事故等が生じた場合には、金融機関から事故報告を受け、一定の期
間(最長でも 158 日以内)に所定の手続を実施した上、償還不能になった元金・利息等
を全額、県保証協会が金融機関に支払う。
28
この代位弁済が行われると、県保証協会は金融機関に代って中小企業者等の債権者と
なり、以後その中小企業者等から返済をうけることとなる(求償権の発生、回収)。
(償還不能にいたる事故等)
(ⅰ)支払の停止または破産、民事再生手続開始、会社更生手続開始、会社整理開始、も
しくは特別清算開始の申立があったとき。
(ⅱ)手形交換所の取引停止処分を受けたとき。
(ⅲ)債務者または保証人の預金その他の当該金融機関に対する債権について、仮差押ま
たは差押の命令、通知が発送されたとき。
(ⅳ)住所変更の届出を怠るなど、債務者の責めに帰すべき事由によって、当該金融機関
に債務者の所在が不明となったとき。
(ⅴ)担保の目的物について差押または競売手続の開始があったとき。
(ⅵ)手形交換所で第1回の不渡が発生したとき。
(ⅶ)約定弁済期日に、信用保証付債務(利息を含む)の一部でも履行しなかったとき(2
ヶ月以内に完済が見込まれるものを除く)ただし、毎月割賦の場合は2ヶ月以上履
行遅滞(利息を含む)が生じたとき(毎月以外の分割履行については1回以上の元
本または利息の履行遅滞)。
(ⅷ)罹災、休業、廃業、取引先の倒産等によって、債務の履行が困難と予測されるとき。
(ⅸ)信用保証条件担保の価値が火災等により減少し、担保の差換、追加ができないとき。
(ⅹ)割引手形の買戻し、または担保手形の差換ができないとき。
(ⅺ)その他病気、死亡、刑事上の訴追等によって債務の履行が困難と予想されるとき。
(3)監査の結果と意見
① 意見
【意見①】制度融資の当初予算の消化率について
平成 17 年度における制度融資の当初予算における新規枠に対する消化率の詳細は、
「(1)③
エ
予算との関係」に記載のとおりであるが、全体としては 64.5%である。
この値が「高いか低いか」はその目的及び制度設計から、簡単には判断できない。
すなわち、消化率が低いからといっても政策的配慮から予算化しなければならないも
のもあるためである。
特に、「フロンティア企業支援資金」に見られるように新技術・新事業の育成は産業の
活性化、雇用の創出等のために全国的に推進されているところであり、この予算化は県
としての取り組みの意思表明といった面もある。
また、中小企業者等のニーズがあってこその制度融資であり、必要の無いものを押し
付けるわけにもいかない。
29
したがって、制度融資においては、中小企業者等が今、本当に必要としている制度を
タイムリーに用意する取り組みが必要である。
この点、県では毎年、取扱金融機関、商工会議所等からヒアリングを行い制度の新設、
改廃等に役立てているとのことである。
さらなるニーズの把握、利用の促進といった観点からは、現在、「県内に本店、または
支店のある地方銀行等」に限られている取扱金融機関に、県内に支店のある都市銀行等
も加えるといったことも検討の余地があるし、さらには制度融資の実績を適切に開示す
ることにより、広く県民から意見を求めることも考えられる。
【意見②】現状の預託金方式について
県は制度融資における中小企業者支援の方策のため、金融機関に貸付資金を預託する
ことによって金利優遇を金融機関に要請している。この金利優遇の方法としては、預託
金方式によるほか、金融機関が預託金相当額を自己調達するコストを現金で金融機関に
交付する調達コスト補給方式が存在する。このいずれを取っても中小企業者の受けるメ
リットは同一であることを考えると、いずれが県にとって有利かモニタリングする必要
があると考える。県では、予算編成時にコスト比較を試算しているが、その試算方法は
規定化されているものではなく、試行錯誤の段階にある。
一般的には、制度融資資金の調達コストとして、県が調達するためのコストが金融機
関が調達するためのコストを下回れば預託金方式が、逆に上回れば調達コスト補給方式
が有利と考えられるが、金融機関の調達コストは個別の金融機関ごとに異なるし、実際
の調達コストを把握することは困難である。平成 17 年度における予算編成時の試算結果
によれば預託金方式が有利とのことであった。しかし、昨今の経済情勢を考えると、平
成 18 年7月には日本銀行の短期金利の誘導目標金利が 0.25%に引き上げられ、長期的に
は金利が上昇していく局面も予想される。さらに、夕張市の財政破綻等地方公共団体に
対する見方も厳しさを増すなか、場合によっては県の資金調達コストが上昇する可能性
も否定できない。そのような要因が県に対してマイナスに働けば、常に預託金方式が有
利とは限らない。このいずれを採用するかによって、県の負担も変化することから、試
算結果及びそのいずれを採用するかという意思決定は重要であると考える。従って、試
算結果及び預託金方式と調達コスト補給方式のいずれを選択するかについて、書面によ
る決裁を取得するなど、意思決定の過程を文書化しておくことが望まれる。
【意見③】預託金の計算方法について
県は預託金額を計算するために、前期末残高に貸付金の返済額を 10%程度と見込んで
90%を乗じた金額を基礎として用いている。そこでこの 90%という数値が適正水準であ
るか否かを検証するため、平成 16 年度末と平成 17 年度末の貸付金残高の単純平均から
あるべき預託金額の算定を試みるとともに、県の預託金額の平均残高と比較を行った。
30
表 3-1-13 預託額分析
(単位:千円)
平均貸付残高
預託率
必要預託額
預託平均残高
差異
地方産業育成資金
14,167,222
1/6
2,361,203
2,683,443
322,240
経営安定資金
29,473,451
1/5
5,894,690
5,604,950
△289,740
中小企業緊急経営支援資金
26,707,875
1.1/3
9,792,887
11,308,000
1,515,113
地域産業対策資金
109,321
1/5
21,864
29,100
7,236
中心市街地活性化対策資金
3,650
1/5
730
800
70
中小企業関連倒産防止資金
886,915
2.6/8
288,247
301,283
13,036
売掛債権活用資金
280,133
1/5
56,026
28,200
△27,826
2.5/7
544,458
517,817
△26,641
中小企業設備改善資金
1,524,483
中小企業金融円滑化対策資金
244,130
1/3
81,376
93,267
11,891
中小企業創業支援資金
768,415
1/4
192,103
187,725
△4,378
204,210
1.3/2.9
91,542
101,517
9,975
37,427
1.3/2.9
16,777
17,100
323
新技術・
フロンティア
新事業等展開枠
企業支援資金
店舗新展開枠
経営支援枠
15,672,495
1.1/3
5,746,581
4,962,850
△783,731
579,330
2.6/8
188,282
170,558
△17,724
59,017,862
1.1/3
21,639,882
20,251,433
△1,388,449
商店街緊急支援資金
73,813
1.1/3
27,064
29,917
2,853
同和地区中小企業振興資金
4,776
1/5
955
1,000
45
セーフティ
連鎖倒産
ネット資金
防止枠
企業再生枠
H16 年大規模
水害対応枠
1,556,473
1.1/3
570,706
542,733
△27,973
災害対策資金
地震対応枠
8,411,779
1.1/3
3,084,318
2,613,250
△471,068
50,599,691
49,444,943
△1,154,748
計
159,723,755
上記の結果、試算ベースではあるが、1,154,748 千円の預託金が過小であったと判断さ
れる。過小となった理由であるが、預託時期が新規融資実行後の後払いであることや、
3月末は預託を引き上げることから 1 月から3月に実行された新規融資については預託
が生じないことなどが挙げられる。この傾向は、平成 17 年度において取り扱いが多かっ
たセーフティネット資金や災害対策資金において顕著である。一方、中小企業緊急経営
支援資金など既に新規貸付を終了している制度の預託額は過大である。これは前期末元
本の回収による減少額が県仮定の 10%より大きいことが考えられる。制度融資の中で代
表的な返済期間5年と7年について表に示すと以下の通りとなる。
31
表 3-1-14 貸付後経過年数と元金減少割合(試算)
5年
貸付後
経過年数
期末残高
7年
減少率
平残減少率
-
-
期末残高
減少率
平残減少率
-
-
融資実行時
100
1年目
80
20%
10%
85
14%
7%
2年目
60
25%
13%
71
17%
8%
3年目
40
33%
17%
57
20%
10%
4年目
20
50%
25%
42
25%
13%
100%
50%
28
33%
17%
14
50%
25%
100%
50%
5年目
-
6年目
-
-
-
7年目
-
-
-
100
-
上記に見るとおり、貸付実行年度からの経過年数によって貸金の元金部分の減少率は
大きく異なることから、県が現在使用している一律 90%という設定率については、個別
に計算した年間平残もしくは月次貸金残高の加重平均を用いるなど工夫されたい。
【意見④】損失補償等の開示状況について
平成 17 年度において、県は県保証協会に対して総額 535,577 千円の損失補償を行って
いる。
この損失補償は、制度融資に係る県の唯一のリスク負担といえ、これを適切に開示し
なければ、県民は制度融資の費用対効果ひいては制度融資自体の現状、さらには方向性
を判断することが出来ない。
しかしながら現状では、その予算額・決算額のみが「中小企業融資促進対策費」とい
った事業名で公表されているにすぎず、その計算方法、支払時期等は開示されていない。
また、予算額・決算額はともに、原則として前年度に県保証協会が代位弁済した金額
をベースとして計算、支出されているため、それは前年度の代位弁済額に対応した損失
補償額を示している。
最終的な損失補償額は、支払月の前月までに回収された金額を控除して決定されるた
め、各年度末では確定債務ではない。
したがって、情報の適時開示の観点からは、県保証協会が年度中に代位弁済した金額、
それに対する県の損失補償予定額及びその支払時期を公表することが望ましい。
以上が損失補償に関する開示の問題であるが、これを含め制度融資の実績に関する開
示は、全般的に不足していると思われる。
32
制度融資の有効性、効率性は、それが数値化できないといった難しさを抱えているた
め、各年度における金融機関による融資実行額、融資残高(県保証協会の保証債務残高)、
県保証協会の代位弁済額、県の損失補償予定額等を、積極的に公表することが望ましい。
【意見⑤】県保証協会と金融機関の責任分担について
保証後一切の返済がなく、保証額全額を代位弁済している事案が2件あった。
2件は共に、県制度融資「平成 16 年大規模災害対策資金(地震対応枠)
」(据置期間 2
年)に係るものであるが、1件は 20,000 千円、融資後4ヶ月、もう1件は 30,000 千円、
融資後2ヶ月で事故が発生している。
県保証協会によれば、2件とも、営業不振等により資金繰りに難のある企業であった
が、中越大震災以前からの保証先であり、メインバンクの支援体制があった。地震災害
により直接、間接の被害に対応した資金需要が生じ、引き続きメインバンクの支援体制
がうかがえ、今回の資金導入効果により経営の維持が見込まれることから、保証承諾し
たが、災害による売り上げ減が予想以上であったため、破綻したとのことである。
したがって、上記2件の個別事案をもって、その審査体制自体に問題があるとは言え
ないが、災害対応という緊急性及び制度融資の目的を考慮しても、融資後数ヶ月で破綻
している点で、審査が充分であったか疑問が残る。
特に、メインバンクの支援体制が判断材料の一つとされているが、支援が確実である
ならば数ヶ月での破綻はありえないはずである。
制度融資では金融機関は損害を被ることがないため、安易な融資審査、保証申込がな
される可能性も排除できない。このため、県保証協会としては、保証案件に事故が多い
金融機関に対しては改善を求めていくことも必要であると考える。
なお、これに関連して以下のような提言があり、今後の信用保証協会と金融機関の責
任分担のあり方について参考となるところである。
平成 17 年6月に、中小企業政策審議会基本政策部会により「信用補完制度のあり方に
関する取りまとめ」が作成されており、その中で、「信用保証協会と金融機関の責任分担
の必要性」として、現在の 100%保証ではなく、金融機関に一部の責任を負担させる制度
(部分保証制度又は負担金方式)が提言されている。
部分保証制度とは金融機関が行う融資額の一定割合を保証する制度であり、負担金方
式については、大別して、代位弁済額の一定割合(部分保証制度における保証割れ部分
に相当する割合)を金融機関が負担する方式と、保証利用額(当該金融機関の債務平均
残高)の一定割合を負担する方式がある。
各国でも広く導入されており、金融機関も適切な債権管理を要する部分保証制度が適
当であるとされているが、中小企業者の、特に零細企業の資金調達に与える影響を懸念
33
する金融機関、保証協会、中小企業団体等の声を踏まえ、当面は、部分保証制度と負担
金方式との選択制が適当であるとされている。
また、制度の分かり易さや利用者間の公平性の観点からは、保証協会と金融機関との
適切な責任分担を図る制度は、原則として、全ての保証制度に一律に導入されることが
望ましいが、中小企業金融における信用補完制度の重要性に鑑み、その導入の対象とな
る保証制度や時期等については、柔軟に検討することが望まれるとされている。
このため、地方自治体の制度融資については、これを対象とすべきか否か、また対象
とした場合の導入時期等について検討されているところであり、この検討結果が注目さ
れるところである。
34
2 企業立地促進資金貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
本制度は、発電用施設の周辺地域等で工場等を新設する企業に対して必要な資金の一
部を貸し付けることにより、企業立地を促進し、安定的な雇用を増大させることを目的
としている。
イ
根拠法令等
(ア)電源立地地域対策交付金
本貸付金は国の電源立地地域対策交付金(正確には平成 15 年に電源立地地域対策交付
金として統合される前の電源立地特別交付金)を財源としている。これは発電用施設周
辺地域整備法第7条等に基づき交付されるものであり、発電用施設の周辺地域において
公共用施設の整備や住民生活の利便性向上、産業振興に寄与する事業に対して交付金を
交付することで、発電用施設の設置・運転に関する地元の理解促進を図るものである。
また、電源立地地域対策交付金交付規則第3条第7号で、企業導入・産業活性化措置
に要する経費として「事業地域に立地する企業に対する設備(土地及び建物を含む。)の
取得等に要する費用に充てるための資金の貸付に係る事業」が交付金の対象となること
が定められている。
(イ)産業振興貸付基金
県は昭和 57 年度から交付金の一部とその利子を積み立てて産業振興貸付基金(以下、
「基金」という。)を造成している(産業振興貸付基金条例
以下、「条例」という。)。
(ウ)企業立地促進資金貸付要綱
基金造成と同時に、企業立地促進資金貸付要綱(以下、「要綱」という。)を施行し、
貸付制度を開始している。
②
ア
制度の仕組み
貸付対象者
発電用施設の周辺地域及びこれに隣接する市町村で知事が特に必要であると認める市
町村の区域の住民が通常通勤することができる地域(以下、「事業地域」という。)内で
工場等を新設する企業(条例第1条、要綱第3条)であって、当該事業地域内において
設備(土地及び建物を含む。)を取得することによって発電用施設の周辺地域等の住民を
一定数以上新規に雇用する予定のある企業(条例第3条)とされている。
発電用施設とは一定規模以上の原子力発電施設や水力発電施設、地熱発電施設等を指
し(発電用施設周辺地域整備法第2条)、佐渡と粟島を除く県内全域が事業地域に該当す
る。
35
対象区域の住民の必要雇用数は新規雇用数全体の規模で区分され、例えば、新規雇用
数5~24 人の場合はそのうち5人以上が対象区域の住民である必要がある(要綱第3条)。
イ
貸付条件
表 3-1-15
項
目
資金使途
貸付金額
貸付利率
返済期間
償還方法
担保・保証人
貸
付
条
件
貸付条件
・工場建設のための用地の取得及び造成(1年以内に工場建設着手するもの)の資金
・工場建設の資金
・工場建設に伴う付属施設及び機械設備等の設置の資金
・限度額2億円(知事が認めた場合は5億円)、100 万円単位
・年率 1.9%固定
・10 年以内(据置期間2年以内を含む)
・元金均等月賦償還
・金融機関が定める
(出典:要綱第4条、第5条)
ウ
貸付業務の流れ
貸付を受けようとする企業は、知事に対して立地計画を提出して認定を受ける必要が
ある。計画が認定されると金融機関を通じて貸付が実行されることになる。県はその原
資として基金(国からの交付金を積み立てたもの)を取り崩して金融機関に預託金を預
託する。企業は工場の完成時や事業開始時にそれぞれ県に報告することになる。
図 3-1-3 企業立地促進資金貸付金業務フロー
貸付対象者(企業)
借入
申込
償還
貸付
立地計画
認定申請
金融機関
貸付決
定通知
預託
審査・認
定通知
施設等設置完
了届、事業開始
報告
預託金
償還
貸付実
行報告
積立
県(一般会計)
県(産業振興貸付基金)
取崩し
交付金
国
36
エ
預託金
県から金融機関への預託金は立地計画の認定及び貸付の決定がなされるごとに預託さ
れる(決済性預金で無利子)。金融機関は預託額の2倍以上の額を協調融資することにな
っているため、預託額は企業への貸付額の3分の1以下である。
金融機関からの預託金の償還は9月に行われ、当該年度の貸付金元金返済予定額のう
ち預託金相当額が一括償還される。ただし、貸付金返済の最終年度分の預託金は4月に
償還される。また、貸付金の繰上償還に対応してその都度預託金も償還される。
オ
審査、担保・保証人
県は立地計画の審査・認定を行うが、貸付決定の審査は金融機関が行う。また、担保・
保証人の設定についても金融機関が定めており、県は貸倒れのリスクを負わない形であ
る。
③
ア
貸付金の実績
金融機関から企業への貸付
昭和 57 年度~平成 17 年度の新規貸付の累計は 182 件、
20,705,000 千円である(次表)
。
昭和 62 年度~平成6年度には毎年 10~25 件、10 億円以上の貸付が見られたが、最近は
ほとんど貸付実績がなく、平成 11 年度以降の7年間でわずか2件、220,000 千円にとど
まっている。担当課では、景気低迷により企業の設備投資が抑制されてきたことと、低
い市中金利が続き、本貸付制度の優位性がなくなったことが背景にあると分析している。
なお、平成 17 年度末の貸付金残高は 218,638 千円である。
イ
県から金融機関への預託金
金融機関への預託額の累計は 5,751,300 千円、償還額の累計は 5,649,413 千円であり、
平成 17 年度末現在の預託金残高は 101,887 千円である(次表)
。貸付実績と同様に、昭
和 63 年度~平成2年度や平成5年度の預託額は年間6億円を超えていたが、最近、新規
の預託はほとんどなくなり、平成 11 年以降では平成 13 年度の 50,000 千円と平成 16 年
度の 23,000 千円のみである。
ウ
基金積み立て
県は預託金の原資として、昭和 57 年度から平成4年度まで 11 年間にわたり、1~5
億円ずつ交付金を積み立て、利子を含めて合計 3,514,171 千円の積み立てが行われてい
る(次表)。ただし、平成5年度以降、貸付実績を勘案して新規の交付金積み立ては行わ
れていない。
37
平成 17 年度末の基金残高は、預託金 101,887 千円、現金 3,412,284 千円、合計 3,514,171
千円である。
表 3-1-16
企業立地促進資金貸付金の実績
(単位:千円)
項目
基金造成費(純増)
年度
交付金
積立額
預託金
償還額
利子積立額
(県→金融
機関)
(金融機関
→県)
S57
100,000
-
50,000
-
50,000
50,000
1
S58
100,000
1,273
115,500
-
165,500
35,773
4
350,000
S59
200,000
1,898
227,900
389
393,011
10,160
10
800,000
S60
200,000
1,952
215,900
17,579
591,332
13,792
10
864,000
S61
250,000
1,138
189,900
51,417
729,815
126,447
8
760,000
S62
250,000
3,900
293,750
84,296
939,269
170,893
12
1,175,000
S63
350,000
3,921
600,000
149,195
1,390,073
74,009
23
(3)
2,400,000
H1
400,000
10,170
600,000
134,890
1,855,183
19,069
20
(5)
2,400,000
H2
500,000
19,084
663,750
201,825
2,317,108
76,229
25
(2)
2,655,000
H3
500,000
26,560
395,000
218,078
2,494,030
425,867
13
(3)
1,580,000
H4
500,000
16,659
365,000
295,413
2,563,617
872,939
11
(5)
1,460,000
H5
-
20,922
719,300
496,494
2,789,423
671,055
15
(7)
2,160,000
H6
-
14,761
523,100
483,645
2,825,878
646,361
12
(5)
1,571,000
H7
-
7,511
266,400
831,722
2,260,555
1,219,194
5
(3)
800,000
H8
-
7,153
49,900
671,375
1,639,080
1,847,823
2
H9
-
8,931
346,300
441,598
1,543,782
1,952,052
7
H10
-
8,382
56,600
294,038
1,306,344
2,197,873
2
170,000
H11
-
3,031
-
288,557
1,017,786
2,489,461
0
-
H12
-
2,742
-
211,549
806,237
2,703,752
0
-
H13
-
960
50,000
285,520
570,718
2,940,231
1
150,000
H14
-
615
-
244,394
326,324
3,185,240
0
-
H15
-
653
-
109,902
216,422
3,295,795
0
-
H16
-
940
23,000
67,301
172,121
3,341,036
1
70,000
H17
-
1,014
-
70,234
101,887
3,412,284
0
-
累計
3,350,000
164,171
5,751,300
5,649,413
101,887
3,412,284
182
(出典:県資料)
38
当年度基金残高
預託金
現金
貸付状況(金融機関→企業)
件数
(うち特認)
(1)
貸付金
150,000
150,000
(4)
(38)
1,040,000
20,705,000
(2)実施した手続
次の手続を実施した。
(ⅰ)貸付制度の趣旨や仕組みについて県の担当者から説明を受けた。
(ⅱ)国の交付金の根拠法令や、貸付金の根拠となる県の要綱を確認した。
(ⅲ)貸付及び預託の実績を確認した。
(ⅳ)平成 17 年度の預託金償還及び利子収入手続きに係る書類の一部(預託金償還通知写
し、請求書、調定決議書、支出負担行為・支出命令決議書等)を閲覧した。
(ⅴ)平成 17 年度に金融機関から提出された貸付金の報告を閲覧した。
(ⅵ)平成 18 年度の新規貸付・預託の手続を1件確認した(平成 17 年度は貸付実績がな
いため)。
(3)監査の結果と意見
① 指摘事項
【指摘事項①】繰上償還に係る県への報告の遅れについて
要綱第 14 条によると、資金の貸付を受けた企業が繰上償還をする場合、20 日前までに
繰上償還認定申請書を金融機関経由で知事に提出し、審査を受け、認定されなければな
らないとされている。そして、貸付金の繰上償還に伴い、県は金融機関に対して預託金
の繰上償還を求めなければならない。
しかし、平成 18 年1月 31 日に金融機関に対して繰上償還(完済)された1件につい
ては、県の審査及び認定を受けないまま償還が実行されていた。県が繰上償還の事実を
把握したのは、金融機関から平成 17 年度末の状況が報告された5月末であり、6月6日
付の通知によってようやく預託金の繰上償還を請求するに至っている(償還日は6月 30
日)。しかも県への報告が遅れたケースは今回だけではなく、次表のように繰り返されて
いるようである。
本貸付制度の預託金は、金融機関と企業の間で貸付や償還が行われるごとに出し入れ
が行われており、他の預託制度に比べ、金融機関に預託金が利用されないまま置かれて
いる状況は発生しにくい。しかし、その運用がうまく行かずに預託金の償還が遅れると、
その分、機会費用が嵩み、他の用途への資金の有効活用を阻害することにもつながる。
要綱の規定に従って繰上償還の事務が適正に行われるよう、改めて対象金融機関への
周知徹底が必要である。
39
表 3-1-17 繰上償還について県への報告が遅れたケース
1
平成5年10月7日
県への報告
報告日
平成6年10月5日
2
平成6年1月20日
平成6年2月16日
47
平成6年3月28日
3
平成6年1月31日
平成6年9月14日
246
4
平成6年1月31日
平成7年12月12日
700
5
平成6年2月10日
平成6年3月24日
62
6
平成12年10月26日
事前報告なし
7
平成13年3月30日
事前報告なし
8
平成13年12月20日
平成14年5月13日
9
平成14年5月8日
10
11
金融機関への
繰上償還日
No
遅延日数
383
預託金返済
返済日
遅延日数
平成6年10月31日
389
該当預託金
残高(円)
215,834
67
7,937,500
平成6年10月31日
273
14,069,500
平成8年2月29日
759
5,720,000
平成6年3月28日
46
16,660,000
-
平成13年6月5日
222
34,712,000
-
平成13年6月5日
67
11,560,000
164
平成14年5月23日
154
6,000,000
平成14年5月8日
20
平成14年5月23日
15
23,931,000
平成18年1月31日
平成18年5月30日
139
平成18年6月30日
150
13,014,000
平成18年3月7日
平成18年3月1日
14
平成18年4月28日
52
16,200,000
2,194
150,019,834
計
1,775
-
(出典:県資料より作成)
(注1)本表は平成 18 年5月 30 日起案の No.10 の預託金返還に係る決裁文書に記載されていた情報に基
づいて作成しており、各案件の書類を実際に確認したわけではない。特に文書の保存年限の制約
により No.1~7については県としても事実関係が確認できないとのことである。
(注2)県への報告の遅延日数は、金融機関への繰上償還日の 20 日前の翌日から起算した報告日までの日
数。預託金返済の遅延日数は金融機関への繰上償還日の翌日から起算した返済日までの日数。
【指摘事項②】誤った償還計画による預託金の償還不足について
平成 13 年8月末に 150,000 千円を貸し付けたケースについて、平成 17 年度になって
預託金の償還不足が発見された。原因は、金融機関から企業への実際の貸付では据置期
間が設定されていないにも関わらず、金融機関から県への預託金の償還については据置
期間を前提として計画されていたためである。
次表で、誤って認識されていた預託金の償還計画(平成 17 年9月まで実績)と貸付金
の償還に合わせた本来あるべき預託金の償還とを比較した。本来あるべき償還計画は据
置期間がないため、預託金の償還も早めに進み、実績よりも残高が減っていたはずであ
る。平成 17 年9月の定期償還を終了した時点で、11,224 千円の償還不足である。
県は、平成 17 年 11 月 15 日に課内の決裁をとり、11 月末に不足分の償還を収納してい
る。平成 18 年度以降は本来あるべき償還計画に沿って預託金の償還が行われる予定であ
る。
毎年5月頃、各金融機関から県に契約ごとの前年度末貸付残高や預託残高が報告され
てくる。県としては、その報告内容と、県が認識していた償還計画や償還実績とを照合
すれば、償還不足はすぐにわかるはずである。平成 13 年度~平成 16 年度の期間中、少
なくとも4回の報告・チェックの機会があるにも関わらず、償還不足が判明しなかった
ということは、金融機関からの報告内容を確認していなかったと言われても仕方ない状
況である。
預託金の償還不足は当該年度に収納すべき歳入を事務手続きのミスで逸していること
になり、今後、このようなことが生じないように適正な事務処理をすべきである。
40
表 3-1-18 預託金償還不足が発見されたケースの償還計画
(単位:千円)
本来あるべき償還計画
貸付金(=実績)
預託金(≠実績)
元金償還
額
-
誤って認識されていた償還計画
貸付金(≠実績)
預託金(=実績)
預託残高
差額
(償還不足)
150,000
-
50,000
元金償還
額
-
150,000
-
50,000
0
H13
9,058
140,942
3,020
46,980
-
150,000
-
50,000
3,020
H14
15,528
125,414
5,176
41,804
-
150,000
-
50,000
8,196
H15
15,528
109,886
5,176
36,628
-
150,000
-
50,000
13,372
H16
15,528
94,358
5,176
31,452
18,750
131,250
6,250
43,750
12,298
H17
15,528
78,830
5,176
26,276
18,750
112,500
6,250
37,500
11,224
H18
15,528
63,302
5,176
21,100
18,750
93,750
6,250
31,250
10,150
H19
15,528
47,774
5,176
15,924
18,750
75,000
6,250
25,000
9,076
H20
15,528
32,246
5,176
10,748
18,750
56,250
6,250
18,750
8,002
H21
15,528
16,718
5,176
5,572
18,750
37,500
6,250
12,500
6,928
H22
15,528
1,190
5,176
396
18,750
18,750
6,250
6,250
5,854
H23
1,190
-
396
-
18,750
-
6,250
-
150,000
-
50,000
-
150,000
-
50,000
-
年度
(H13.8.31)
計
貸付残高
償還額
預託残高
貸付残高
償還額
預託残高
(出典:県資料より作成)
(注)表中の(=実績)(≠実績)は平成 17 年9月までの実績との関係を示す。
②
意見
【意見①】貸付制度の利用促進及び基金の有効活用について
平成 17 年度末の基金残高は、預託金残高 101,887 千円を含めて、3,514,171 千円であ
る。平成5年度以降、電源立地地域対策交付金による新規の積み立てを行っておらず、
また、最近の貸付実績の低迷状況をみると、当面は 35 億円程度の基金残高が維持される
と予想される。
次図は 35 億円の基金規模がどの程度の貸付に対応できるかをシミュレーションしたも
のである。これによると、毎年6億円の預託を続けた場合、預託分を除く基金残高(現
金)は最少で2億円まで減少することを示し、毎年7億円の預託の場合、3.5 億円ほど基
金が不足することを示している。したがって、年6億円程度の預託に対応した基金規模
と言え、企業への貸付金に換算すると年 18 億円程度の貸付が可能となる基金規模を有し
ていることになる。1件あたり限度額2億円で計算すると、毎年9件程度の新規貸付件
数である。
毎年5~7億円程度の預託を行っていた昭和 63 年度から平成6年度までの状況が継続
していれば、現状の基金規模も過大とは言えないが、平成 10 年度以降預託額は年平均1
億円に達しておらず、現状の実績を前提にすると、余裕資金分を考慮したとしても 20 億
円程度は過大な基金規模である。平成 18 年度においては4月~11 月に2件 3.6 億円の貸
付実績が見られるなど、今後、景気回復や金利上昇等を背景として貸付実績が回復する
可能性もあるが、当面の間は、基金規模と貸付実績の乖離が続くものと思われる。
41
0
-
基金規模に見合う利用の促進を図るとともに、場合によっては基金の取り崩し等を含
めて基金規模の見直しを検討する必要がある。
図 3-1-4 年預託額と最少基金残高(現金)のシミュレーション結果
3,000
2,950
2,500
2,400
最 2,000
少
1,500
基
金 1,000
残
500
高
1,850
1,300
750
(
200
0
-500100
)
百
万
円
-1,000
-1,500
200
H8~H17
平均預託額
52 百万円
300
400
500
600
700-350 800
S61~H7
平均預託額
461 百万円
900
1,000
-900
-1,450
-2,000
-2,000
年預託額(百万円)
(注1)毎年度当初に同額の新規預託を行い、据置期間2年で預託年度を含めて 10 年間で償還するものと
した。いずれも年度末の状態であり、期中の資金不足等は勘案していない。
(注2)当初の基金残高は 3,500 百万円とした(預託残高を含まない現金のみ。以下同様)。毎年同額を新
規貸付すると基金残高は減少するが、9年目以降新規預託額と償還額がバランスして基金残高が
一定となる。その一定額を最少基金残高とした。基金の利子積み立ては考慮していない。
ア
利用促進策
利用促進策としては、貸付条件の緩和と情報提供方法の見直しが考えられる。
貸付条件については、平成 17 年2月 28 日の文部科学省及び資源エネルギー庁の通達
で貸付対象者や貸付限度額、貸付期間などが定められているように、国の方針に沿った
内容で設定しており、県が独自に設定できる部分は対象区域住民の必要雇用数や貸付利
率など一部条件に限られる。しかも最近の実績や他県の状況をみると、それらの条件を
緩和したとしても必ずしも貸付実績の増加につながるとは言えない。
ただし、情報提供の方法については工夫の余地がある。現状では、県のホームページ
やパンフレット「にいがた企業立地ガイド」の中で本貸付制度が紹介されているが、現
状の情報提供の仕方だけでは潜在的なニーズをうまく捕捉できていない可能性もある。
企業や金融機関に対する制度説明会やアンケート調査など、情報提供の方法と対象、頻
度を見直し、従来とは異なる形でニーズの掘り起こしを行ってみることも必要である。
42
そのような試みを行って初めて、本当にニーズがないのか、貸付条件の見直しで実績
が増えるのか、長期的な見通しとしてはどうかといった点について、より適切に判断で
きるものと思われる。
イ
基金の見直し
地方自治法第 241 条第3項では、「
(略)特定の目的のために財産を取得し、又は資金
を積み立てるための基金を設けた場合においては、当該目的のためでなければこれを処
分することができない。」とされている。そして条例第1条では、「発電用施設の周辺地
域及びこれに隣接する市町村で知事が特に必要であると認める市町村の区域の住民が通
常通勤することができる地域内に立地する企業に対する設備の取得に要する費用に充て
るための資金の貸付に係る事業を行うため、新潟県産業振興貸付基金を設置する。」と設
置目的が定められている。
したがって、基金の使途は対象地域内の新規立地企業に対する貸付金に限定されてお
り、原則として他の目的に流用することはできない。一方、設置目的終了による基金の
廃止も容易ではない。県の企業誘致は今後も重要な施策として継続されると考えられ、
たとえ数年間実績がほとんどない状況が続いたとしても、それをもって単純に貸付制度
や基金の目的が終了したとの判断はできない。また、県の担当課によると、電源立地地
域対策交付金の基金への充当額については国にも報告してあり、県の判断で本貸付制度
以外の目的に使えないとのことである。
ただし、前述のように現状の実績からすると当面は基金が有効に活用されない状況が
続く可能性があり、何らかの活用策を模索すべきである。例えば、県の一般財源をもと
に代替的な貸付制度を立ち上げ、本貸付制度及び基金を廃止することや、貸付制度や基
金はそのままにして、基金の一部を電源立地地域対策交付金の対象とされている他の事
業にも使えるようにすることなどである。県の貴重な基金が有効に活用されるように、
同様の課題を抱える他県とも共同して研究し、国への働きかけも行っていく必要がある。
43
3 県営工業団地造成事業貸付金
(1)概要
① 目的
企業局が行う工業用地造成事業は、企業債により造成費用の資金調達をしており、企
業債の償還原資は各産業団地の分譲代金となる。企業債の償還期間の設定は、基本的に
10 年とされているが、現状では企業債の償還期間と産業団地の分譲実績に大幅な乖離が
発生している状況である。このため、工業用地造成事業会計(特別会計)においては企
業債の償還原資不足の状態に陥っている。県営工業団地造成事業貸付金は、この資金不
足を解消することを目的として一般会計より貸付が行われているものである。
②
工業用地造成事業会計の概要
企業局の工業用地造成事業会計では、南部・中部・東部の3地区の産業団地の造成及
び分譲を行っている。南部・中部・東部の産業団地自体は、県営産業団地に技術先端型、
高付加価値型の優良企業を誘致し、産業集積や産業構造の高度化及び地域の活性化と人
口の定住化を図ることを目的としている。
南部・中部・東部の3地区の産業団地の造成工事は、既に終了しており、今後は企業
誘致活動(分譲のための活動)が工業用地造成事業会計の主な業務となる。
③
貸付内容等
県の一般会計から工業用地造成事業会計への貸付金は無利子で行われている。貸付金
としては長期と短期の貸付金が存在しており、貸付の内容等は以下のとおりである。
表 3-1-19 平成 17 年度における工業用地造成事業会計への貸付の状況
項
目
貸付日
内
容
等
平成 17 年 4 月 21 日(短期貸付金
20,579,817 千円)
平成 18 年 3 月 31 日(短期貸付金
2,909,111 千円)
平成7年より変動なし(長期貸付金
資金使途
工業用地造成事業会計に係る造成事業費等に充てるため
工業用地造成事業会計に係る企業債償還金等に充てるため
貸付金額
計
貸付利率
貸付期間
2,173,807 千円)
23,488,928 千円
2,173,807 千円
25,662,735 千円
(短期貸付金)
(長期貸付金)
無利子貸付
短期貸付金
単年度内での返済が前提
長期貸付金
返済期限が設定されていない
(出典:支出負担行為兼支出命令決議書等より作成)
44
平成7年度までは、工業用地造成事業会計に対して一般会計より長期貸付金として貸
付が行われていたが、平成8年度以降は短期貸付金として貸付けが行われている。併せ
て、出納整理期間中に当年度の短期貸付金により、前年度の短期貸付金の返済原資とす
る方法により会計処理が行われているため、各年度の短期貸付金残高はゼロとなる。平
成 18 年3月末時点においても、短期貸付金の残高はゼロの状態となり、最終的な決算額
は長期貸付金の 2,173 百万円が県営工業団地造成事業貸付金の残高となる。しかし、実
質的な貸付金残高は短期貸付金 23,488,928 千円と長期貸付金 2,173,807 千円の合計
25,662,735 千円となっている。
(2)各産業団地別の状況
南部・中部・東部の 3 地区の産業団地それぞれの概要は以下のとおりである。
表 3-1-20 各産業団地の概況
団地名
項目
新潟県南部産業団地
新潟県中部産業団地
新潟県東部産業団地
地域
上越地域
中越地域
下越地域
所在地
上越市
見附市
阿賀野市
総面積
118.6ha
86.2ha
126.5ha
90.7ha
67.2ha
100.0ha
産業用地
利便施設
0.5ha
1.2ha
0.8ha
道路・水路
12.2ha
9.2ha
13.9ha
公園・緑地
7.8ha
2.6ha
6.4ha
調整池
7.4ha
6.0ha
5.4ha
基本構想・基本計画
平成3~4年度
平成5~6年度
平成5~6年度
基本設計
平成4~5年度
平成6~7年度
平成6年度
用地買収
平成5年度
平成8年度
平成7~13年度
先行造成区域
実施設計
第1期
平成5~6年度
第2期
平成9年度
平成8~9年度
平成8年度
後期造成区域
平成13~15年度
第1期
造成工事
先行造成区域
平成5~7年度(46.9ha)
第2期
平成8~11年度
平成9~11年度(71.7ha)
面積
分譲状況(注)
面積
170,239㎡
面積
13件
企業数等
分譲済割合 24.9%
分譲済割合
企業数等
29件
分譲済割合34.9%
リース
後期造成区域
平成13~15年度
318,269㎡
企業数等
平成11~13年度
面積
-
14,070㎡
企業数
(注)分譲状況は平成 18 年3月末現在の状況を記載している。
45
2件
面積
15,313㎡
3件
1.5%
5,268㎡
(3)スキーム図
県営工業団地造成事業貸付金に関する資金の流れ等について概略を示すと、図 3-1-5
のとおりである。
図 3-1-5 工業用地造成事業会計に関するスキーム図
県費
金融機関等
一 般 会 計
返済
電気事業会計
貸付
(注2)
償還
返済
貸付
(注1)
企業債引受
県営工業団地
造成事業貸付金
短期貸付返済
工業用地造成事業会計(特別会計)
造成工事 維持管理
購入代金
リース 料
誘致
売却
賃貸
南部
産業団地
中部
産業団地
東部
産業団地
工場建設
一般企業
資金等の流れ
部分的な資金の流れ
業務等の流れ又は関連
(注1)電気事業会計から工業用地造成事業会計への貸付は、リース方式で契約した場合に売却代金相当
額の貸付が実行される。なお、電気事業会計との間においては事業期間に貸付と返済が行われる
一時借入金も発生している。
46
(注2)一般会計との間においては、事業期間内に貸付と返済が行われる一時借入金も発生している。
(4)各産業団地別の概況
① 新潟県南部産業団地
ア 事業地区全景
イ
事業地区へのアクセス
47
ウ
事業地区の区画図
(注)平成 18 年5月現在の状況(県HPより)
表 3-1-21 分譲開始後の売却推移等
項目
年度
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
合計
分譲用地面積
未分譲用地
分譲済割合
立地
企業数
2
9
5
5
3
1
0
0
3
0
1
29
分譲面積(㎡)
14,223
80,779
85,769
44,162
21,605
7,402
165
0
31,164
0
33,000
318,269
912,000
593,731
34.9%
(注)分譲面積中には進出企業の追加分譲分も含んでいる。
48
分譲金額(千円)
270,242
1,534,780
1,629,612
839,079
410,503
140,633
3,135
0
592,124
0
452,100
5,872,208
新潟県南部産業団地(以下、「南部産業団地」という。)は3団地で最も早く分譲を開
始しているものの、過去 11 年間の分譲による売却実績は全体に対して 34.9%に留まって
いる。
エ
分譲価格の推移等
県では平成 17 年 10 月において地価動向等を勘案して不動産鑑定士による鑑定評価の
結果に基づき分譲価格の見直しを下記の通り行っている。この結果、従来の分譲価格よ
り 27.9%の値下げを行ったことになる。これにより平成 17 年 10 月現在の未分譲用地の
売却代金相当額に与える影響は 3,323 百万円の減少となる。
表 3-1-22 分譲価格の比較
旧分譲価格(設定時期)
分譲単価
分譲金額(注 2)
現在の分譲価格(注 1)
下落率又は下落金額
19,000 円/㎡(H7/5)
13,700 円/㎡
△27.9%
11,913 百万円
8,590 百万円
△3,323 百万円
(注1)平成 17 年6月1日時点における不動産鑑定評価額である。
(注2)未分譲用地全体を販売した場合の金額を記載している。
オ
平成 18 年度の分譲状況
南部産業団地については、平成 18 年4月~12 月までの期間において、5社に対する分
譲実績が確認されている(売却面積 13,128.72 ㎡ 売却金額 152,463 千円)。この結果、
南部産業団地の分譲済割合は 36.3%となる。
近年殆ど売却実績がなかったが、景気回復と分譲価格引下げ効果により、売却が進行
したものと推定される。
49
②
ア
新潟県中部産業団地
事業地区全景
イ
事業地区へのアクセス
50
ウ
事業地区の区画図
(注)平成 18 年5月現在の状況(県HPより)
表 3-1-23 分譲開始後の売却推移等
項目
年度
H13
H14
H15
H16
H17
合計
分譲用地面積
未分譲用地
分譲済割合
立地
企業数
4
2
2
1
4
13
分譲面積(㎡)
分譲金額(千円)
69,421
14,503
23,295
1,862
61,158
170,239
684,000
513,761
24.9%
1,631,399
340,818
547,431
43,756
1,036,079
3,599,483
(注)分譲面積中には進出企業の追加分譲分も含まれている。
新潟県中部産業団地(以下、「中部産業団地」という。)は売却開始から5年間が経過
しており、売却実績は全体の 24.9%という状況である。3団地の中では比較的売却がス
ムーズに進行している団地ではあるものの、売却開始から5年が経過しても4分の1の
売却が終了したに過ぎない状況である。
51
エ
分譲価格の推移等
県では平成 17 年 10 月において地価動向等を勘案して不動産鑑定士による鑑定評価の
結果に基づき分譲価格の見直しを下記の通り行っている。この結果、従来の分譲価格よ
り 28.5%の値下げを行ったことになる。これにより平成 17 年 10 月現在の未分譲用地の
売却代金相当額に与える影響は 3,853 百万円の減少となる。
表 3-1-24 分譲価格の比較
旧分譲価格(設定時期)
分譲単価
現在の分譲価格(注 1)
下落率又は下落金額
23,500 円/㎡(H10/6)
16,800 円/㎡
△28.5%
13,513 百万円
9,660 百万円
△3,853 百万円
分譲金額(注 2)
(注1)平成 17 年6月1日時点における不動産鑑定評価額である。
(注2)未分譲用地全体を販売した場合の金額を記載している。
オ
平成 18 年度の分譲状況
中部産業団地については、平成 18 年4月~12 月までの期間において、13 社(うち1
社は追加取得)に対する分譲実績が確認されている(売却面積 204,875.74 ㎡ 売却金額
3,427,461 千円)。この結果、中部産業団地の分譲済割合は 54.8%と大幅に進捗している。
分譲開始から年間の販売件数は5件に満たないレベルであったが、中部産業団地は北
陸自動車道中之島見附 IC に近いという立地条件にも恵まれ、景気回復と分譲価格引下げ
効果もあって、売却が大幅に進行したものと推定される。
③
ア
新潟県東部産業団地
事業地区全景
52
イ
事業地区へのアクセス
53
ウ
事業地区の区画図
(注)平成 18 年5月現在の状況(県HPより)
表 3-1-25 分譲開始後の売却推移等
項目
年度
H15
H16
H17
合計
分譲用地面積
未分譲用地
分譲済割合
立地
企業数
1
1
1
3
分譲面積(㎡)
935
13,138
1,240
15,313
1,008,000
992,687
1.5%
分譲金額(千円)
18,515
219,406
14,257
252,178
新潟県東部産業団地(以下、「東部産業団地」という。)については、分譲開始時期が
3地区の産業団地の中では最も遅く、分譲済割合も 1.5%と低迷している状況である。
エ
分譲価格の推移等
県では平成 17 年 10 月において地価動向等を勘案して不動産鑑定士による鑑定評価の
結果に基づき分譲価格の見直しを下記の通り行っている。この結果、従来の分譲価格よ
り 31.1%の値下げを行ったことになり、これにより平成 17 年 10 月現在の未分譲用地全
体を販売した場合の売却代金に与える影響は 5,169 百万円の減少となる。
54
表 3-1-26 分譲価格の比較
旧分譲価格(設定時期)
分譲単価
現在の分譲価格(注 1)
下落率又は下落金額
16,700 円/㎡(H13/7)
11,500 円/㎡
△31.1%
16,600 百万円
11,431 百万円
△5,169 百万円
分譲金額(注 2)
(注1)平成 17 年6月1日時点における不動産鑑定評価額である。
(注2)未分譲用地全体を販売した場合の金額を記載している。
オ
平成 18 年度の分譲状況
東部産業団地については、平成 18 年4月~12 月までの期間において、1社に対する分
譲実績が確認されている(売却面積 10,000.01 ㎡ 売却金額 115,000 千円)。この結果、
東部産業団地の分譲済割合は 2.5%となる。
東部産業団地は磐越自動車道安田 IC に近いものの、南部産業団地のように同一地域に
大規模な港や工業集積がある地域ではなく、中部産業団地のように首都圏へのアクセス
に恵まれている訳でもない。現在までの分譲済割合を考慮しても、売却に困難を伴う団
地であることが想定される。
(5)県営工業団地造成事業貸付金の推移
南部・中部・東部産業団地に関する県営工業団地造成事業貸付金及びその他の資金調
達の状況等は下記の通りである。
表 3-1-27 工業用地造成事業会計に関する資金調達の状況
(単位:千円)
年度
H4
H5
H6
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
計
償還額又は
償還予定額
-
0
0
1,412,509
1,397,355
1,637,575
1,784,484
2,033,465
4,086,466
4,097,164
3,296,607
4,509,428
4,008,754
4,042,914
4,994,601
2,391,738
1,463,492
960,795
657,893
463,921
632,267
355,562
44,227,000
支払利息
-
198,777
433,341
539,655
519,285
851,670
869,812
848,599
795,512
675,221
579,200
492,261
402,227
302,272
210,434
103,282
60,182
36,851
24,042
16,402
11,273
4,513
7,974,823
企業債残高
-
9,165,000
11,505,000
11,911,490
25,518,134
28,353,559
29,383,075
29,785,609
27,392,142
24,079,978
22,845,371
19,971,942
15,963,188
11,920,274
6,925,672
4,533,934
3,070,441
2,109,645
1,451,751
987,830
355,562
0
短期借入金残
高(一般会計)
-
-
-
-
174,951
193,279
832,890
2,497,414
6,674,958
9,651,484
13,040,361
17,092,002
20,799,223
23,488,928
長期借入金残高
(一般会計)
272,893
884,029
1,683,300
2,173,807
2,173,807
2,173,807
2,173,807
2,173,807
2,173,807
2,173,807
2,173,807
2,173,807
2,173,807
2,173,807
(注)上記の借入金額には一時借入金として処理されているものを含んでいる。
55
長期借入金残高
(電気事業会計)
-
-
-
-
-
-
-
165,075
132,060
99,045
66,030
311,008
439,156
523,820
実質借入金残高
272,893
10,049,029
13,188,300
14,085,297
27,866,892
30,720,645
32,389,772
34,621,905
36,372,967
36,004,314
38,125,569
39,548,760
39,375,374
38,106,829
図 3-1-6 企業債残高と県営工業団地造成事業貸付金等の関係
企業債残高(百万円)
償還額及び支払利息(百万円)
平成 18 年度に償還の
6,000
35,000
ピークを迎える
償還額
30,000
支払利息
5,000
企業債残高
県営工業団地造成
4,000
25,000
事業貸付金等
20,000
3,000
15,000
2,000
10,000
1,000
5,000
0
0
H5
H6
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
上記のとおり、事業開始当初は企業債で造成資金を調達している。企業債の償還期間
(基本的に 10 年)で売却が進行すれば、一般会計からの借入金等は基本的には発生する
ことなく事業終了を迎えることになるが、分譲が長期化している現状においては、上記
のとおり、企業債が一般会計からの借入金等に置き換わっている状況であることが明ら
かである。
一般会計からの借入金等については、基本的に無利子借入(電気事業会計からの借入
金については 0.1%の利息が発生している。)であるが、県の財政状態は公債に大きく依
存している状態であるため、間接的に公債の利息相当額のコスト(機会費用)が発生し
ていることが想定される。平成 18 年3月 31 日現在の公債残高に関する加重平均利率は
1.9%であるが、当該利率を用いて一般会計からの借入金等にかかる間接的なコスト(機
会費用)は、平成 17 年度末の残高を基準に算出すると単年度で 718 百万円にのぼる。
既述のとおり、平成 18 年度においては分譲価格の引下げ等により分譲の売却状況に改
善が見られるが、企業債の償還ピークも同時に迎えるため、売却収入が上回らないかぎ
り一般会計からの借入金等の増加は避けられないと思われる。
56
(6)実施した手続
(ⅰ)南部・中部・東部の3地区の産業団地の概要について担当課から説明を受けた。
(ⅱ)工業用地造成事業会計(特別会計)に対する一般会計からの貸付金の経緯について
担当課から説明を受けた。
(ⅲ)企業債の償還データ、一般会計及び電気事業会計からの貸付金残高推移データ等を
確認した。
(ⅳ)平成 17 年度の一般会計からの貸付金に関する支出命令決議書など、貸付に係る文書
を閲覧した。
(ⅴ)南部・中部・東部産業団地の基本構想・基本計画について閲覧した。
(ⅵ)分譲実績や分譲価格見直しに関する資料を閲覧した。
(ⅶ)産業団地に対する進出意向調査の結果を入手し、内容を確認した。
(7)監査の結果と意見
① 意見
【意見①】借入金の調達方法について
一般会計より工業用地造成事業会計に対する貸付金のうち、平成8年度より行ってい
る短期貸付金については、出納整理期間中に当年度の短期貸付金を返済原資として、前
年度の短期貸付金を返済する方法により会計処理が行われている。当該処理によると各
年度末において短期貸付金は返済されたことになり、一般会計側の短期貸付金残高が残
らないことになるが、実質的には長期的な貸付金としての機能を果たしている。
一方、特別会計である工業用地造成事業会計においては、一般会計とは異なり、出納
整理期間がないため、決算書上では長期借入金として認識されている。
この処理は、一般会計の期末時点における短期貸付金の残高が認識しにくいため、巨
額の資金投入の状況が外部からは見えにくい状態となり、問題に対する認識を遅らせる
可能性がある。また、財政破綻に追い込まれた北海道夕張市において、一時借入金を利
用した会計間の不透明な処理が問題視されているところであり、一般会計と工業用地造
成事業会計との間で行われている処理は、不透明な処理という点で夕張市と類似の問題
を含んでいるとも考えられ、早急に改善が必要である。
なお、この点について、平成 18 年9月 25 日の新聞報道において、このような処理を
都道府県の一般会計と企業会計間で行っているのは県のみであり、現行の手法を取りや
めることを前提に、見直しの検討が開始されたことが公表されている。
【意見②】分譲価格引下げによる損失の影響額について
現在の分譲価格にて短期間に全て売却が完了した場合に想定される損失額についてシ
ミュレーションをした結果は以下のとおりである。
57
【シミュレーションを実施する上での前提条件】
・現状の販売価格で単年度中に全て売却されたと仮定している。
・企業債は償還予定通りの償還を予定している。
・販売に係る事務費等は計算を簡略化するために考慮外とする。
表 3-1-28 現状の損失推定額
未分譲面積(㎡)
分譲価格(円/㎡)
金
額(千円)
南部産業団地
593,731
13,700
8,134,115
中部産業団地
513,761
16,800
8,631,185
東部産業団地
992,687
11,500
11,415,901
合
計
28,181,200
平成17年度現在の実質借入額(表3‐1‐27より)
損
失
推
定
額
38,106,829
△9,925,629
上記の通り、現在の分譲価格で即座に全て売却され、かつ、販売に係る諸経費を考慮
外としても推定される損失額は 99 億円を超過する結果となる。次の【意見③】のシミュ
レーションにもあるとおり、売却に長期間を要すれば更に損失は拡大することが想定さ
れるが、既に現時点ですべて売却できたとしてもこれだけの損失が発生するという厳し
い現状を正しく認識する必要がある。
なお、現在の状況から判断する限り、相当額の損失発生は不可避と考えられるため、
損失補填の方法について検討を行う必要がある。
【意見③】分譲促進の方策の必要性について
県としては南部・中部・東部産業団地について、不動産鑑定士による鑑定評価を実施
し、平成 17 年 10 月において、分譲価格の見直しを行い(値下げを実施)販売を行って
いる。景気回復による影響もあると想定されるが、平成 18 年度においては前記の通り、
大きく分譲実績を伸ばしている。しかし、既に販売不振が長期にわたっており、その間
に発生していたと想定される一般会計からの借入金に関する利息相当額(いわゆる機会
費用)は巨額になっていることが想定される。分譲価格等の見直しを行うに当っては、
このような機会費用も考慮して検討する必要があると考える。
以上をふまえて、平成 17 年度末現在において残存する分譲用地を今後 10 年間で売却
した場合と 20 年間で売却した場合について、一定の前提条件をおいた上で、機会費用を
含んだ損失発生見込額をシミュレーションした結果は以下の通りである。
【シミュレーションを実施する上での前提条件】
・機会費用としての利息相当額を計算する利率については平成 18 年3月 31 日現在の
公債残高を基に加重平均した利率 1.9%を使用している。
58
・産業団地の分譲は設定した年限について平均的に売却されるものと仮定している。
・産業団地の地価については年間 0.9%の地価下落が発生すると仮定している。これは
県の過去 20 年間(一定の景気変動を反映させるために 20 年とした。)の地価変動率
を単純平均したものである。
・営業費用については、過去5年間の単純平均値 76,815 千円と仮定している。
・機会費用としての利息相当額を算出するにあたっては、一定時点の残高(表 3-1-29
及び表 3-1-30 の貸付金残高推定額)を基準として計算を行っている。
・シミュレーションの計算を簡略化するため、現在価値での比較は行わない。
表 3-1-29 今後 10 年で売却するケース
(単位:千円)
項目
年度
企業債償還額
(利息含)
売却見込額
営業費用
貸付金残高
利息相当額
見込額
推定額(注 1)
(機会費用)
H17
25,662,735
H18
5,205,036
2,818,119
76,815
28,126,466
534,402
H19
2,495,021
2,792,756
76,815
27,905,546
530,205
H20
1,523,674
2,767,621
76,815
26,738,414
508,029
H21
997,647
2,742,713
76,815
25,070,163
476,333
H22
681,936
2,718,028
76,815
23,110,886
439,106
H23
480,324
2,693,566
76,815
20,974,459
398,514
H24
643,540
2,669,324
76,815
19,025,490
361,484
H25
合
2,645,300
76,815
16,817,081
319,524
H26
-
360,076
2,621,492
76,815
14,272,404
271,175
H27
-
2,597,899
76,815
11,751,320
223,275
27,066,824
768,156
計
12,387,258
4,062,052
(注1)平成 18 年度を例に取ると、平成 17 年度の一般会計からの貸付額 25,662,735 千円(県営工業団地
造成事業貸付金残高+一般会計からの長期貸付金残高)+企業債償還額 5,205,036 千円-売却見
込額 2,818,119 千円+営業費用見込 76,815 千円=28,126,466 千円と計算されている。
59
表 3-1-30 今後 20 年で売却するケース
(単位:千円)
項目
年度
企業債償還額
(利息含)
売却見込額
営業費用
貸付金残高
利息相当額
見込額
推定額
(機会費用)
H17
合
25,662,735
H18
5,205,036
1,409,059
76,815
29,535,526
561,175
H19
2,495,021
1,396,378
76,815
30,710,984
583,508
H20
1,523,674
1,383,810
76,815
30,927,663
587,625
H21
997,647
1,371,356
76,815
30,630,769
581,984
H22
681,936
1,359,014
76,815
30,030,506
570,579
H23
480,324
1,346,783
76,815
29,240,862
555,576
H24
643,540
1,334,662
76,815
28,626,556
543,904
H25
360,076
1,322,650
76,815
27,740,797
527,075
H26
-
1,310,746
76,815
26,506,866
503,630
H27
-
1,298,949
76,815
25,284,732
480,409
H28
-
1,287,259
76,815
24,074,289
457,411
H29
-
1,275,673
76,815
22,875,430
434,633
H30
-
1,264,192
76,815
21,688,053
412,073
H31
-
1,252,815
76,815
20,512,054
389,729
H32
-
1,241,539
76,815
19,347,329
367,599
H33
-
1,230,365
76,815
18,193,779
345,681
H34
-
1,219,292
76,815
17,051,302
323,974
H35
-
1,208,318
76,815
15,919,799
302,476
H36
-
1,197,444
76,815
14,799,170
281,184
H37
-
1,186,667
76,815
13,689,319
260,097
25,896,981
1,536,312
計
12,387,258
9,070,330
上記のとおり 10 年間で売却のシミュレーションをした場合に残存する貸付金残高は、
回収不能となり損失として顕在化する可能性がある金額として 117 億円を超過し、機会
費用としての利息相当額も 40 億円を超過することになる。一方、20 年間で売却のシミュ
レーションをした場合には回収不能となり損失として顕在化する可能性がある金額とし
て 136 億円を超過し、機会費用としての利息相当額も 90 億円を超過することになる。こ
れらの結果からみても分譲期間が長期化するほど損失見込額(機会費用を含んだコスト)
が増加するリスクが高いことが判る。
シミュレーションの結果のみで判断するならば、何の策も講じずに 20 年間かけて売却
するのであれば、69 億円分(10 年と 20 年の損失見込額の差額)分譲地の販売価格を値
下げして売却しても結果として発生する損失は同額ということになる。また、早期に売
却を終了することは、実際に企業が当該産業団地に進出することになるため、そのこと
によるプラスの経済効果(雇用の創出、法人税や固定資産税等の税収増加、衣食住に関
60
する商業的な経済効果等々)も発現することになる(今回のシミュレーションでは測定
が困難であるため考慮していない)
。一方、マイナスの経済効果も発現することは想定(交
通量増加による環境への負荷等)されるが、一般的にはプラスの経済効果の方が大きい
と想定される。
このような経済効果についても考慮するならば、単純なシミュレーション結果よりも
更に低い価格での売却であったとしても、早期売却の方が有利となる可能性もある。
また、県においては依然として地価の下落傾向が継続している。東京などの都心部で
は一部地価上昇となっている地域もあるが、地方の地価動向は依然として不透明であり、
更に下落する可能性も十分にあると考えられる。このような地価下落リスク(もちろん
地価上昇する可能性もあるが)を考えても、極力早期の売却を可能とする分譲価格の再
設定を含めた分譲促進の方策を検討し、今後の事業を遂行することが必要であると考え
る。
なお、早期に売却を図るために分譲価格の再引き下げを行う際には、引下げにともな
う損失額の増と売却に長期間を要した場合との損失発生推定額のバランスを考慮して見
直しを行う必要がある。
【意見④】分譲価格の適時の見直しについて
南部・中部・東部産業団地については、それぞれ基本構想・基本計画が検討され、事
業実施が行われており、事業開始当初の判断過程について問題はないと考えるが、その
後の経済環境の変化や、分譲期間の長期化に対する県の対応は必ずしも適時適切であっ
たとは言い難い。図 3-1-7 の平成8年度からの県内の地価変動率推移データを見ても当
初取得した時点の価格から時価が大きく乖離していることより、何らかの対応が必要で
あったと考えられる。
61
図 3-1-7 県内地価変動率推移
図3‐1‐7 県内地価変動率推移
2.0
0.0
-2.0
-4.0
-6.0
-8.0
-10.0
-12.0
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
全国全用途
-2.5
-1.6
-2.2
-3.6
-3.6
-4.1
-5.0
-5.6
-5.2
-4.2
-2.4
県内全用途
-0.3
-0.5
-1.3
-1.8
-1.9
-3.8
-5.0
-6.8
-6.2
-5.4
-3.6
県内工業地
0.2
0.2
0.0
-0.4
-0.8
-2.2
-5.2
-10.4
-8.5
-6.9
-5.6
県内準工業地
0.3
0.0
-0.9
-1.1
-1.9
-4.2
-6.0
-10.4
-9.6
-7.6
-5.5
一方、
「(4)各産業団地別の概況」に記載のとおり、各産業団地において分譲開始後、
分譲価格の見直しが行われたのは平成 17 年 10 月である。公平性の観点から公募価格を
頻繁に変更することは難しい側面もあることは理解できる。
さらに、工業団地造成事業の原価を前提に価格設定せざるを得ないのも事実であるが、
【意見③】のシミュレーションのとおり、分譲期間が長期化するほど県が負担する管理
費等や無利子貸付金の機会費用が膨らむ可能性もある。
このようなことを考えれば、もっと早期に分譲価格の見直しを行うべきであったと考
えられる。今後の産業団地の分譲にあたっては、【意見③】に記載したとおり、極力早期
の売却を可能とする分譲価格の再設定を含めた分譲促進の方策を検討し、今後の事業を
遂行することが必要であると同時に、分譲促進の方策の実施後についても分譲価格を硬
直的なものとして取り扱うのではなく、分譲価格の見直しを適宜検討する必要があると
考える。
62
4 中条中核工業団地造成事業貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
本貸付金は、胎内市(旧中条町)において県と独立行政法人中小企業基盤整備機構(旧
地域振興整備公団。以下、「機構」という。)が共同で進めてきた新潟中条中核工業団地
造成事業(以下、「工業団地造成事業」という。)の資金を、県の事業を代行する新潟県
土地開発公社(以下、「公社」という。)に貸し付けたものである。
イ
根拠法令等
平成4年に機構と県、公社が工業団地造成に係る共同事業基本協定を締結し、また、
県から機構に対し、公有地の拡大の推進に関する法律に基づく工業団地造成を要請して
いる。
ウ
工業団地造成事業の概要と経緯
(ア)事業概要
次表のように機構と県の持分比率は2:1であり、公社が用地買収、機構がその他の
業務を行っている。事業地区は2つの地区に分かれており、合計 94.4ha である。そのう
ち工場用地面積は 76ha であり、平成 18 年8月時点で分譲済みは 5.6ha、分譲率 7.4%で
ある。
表 3-1-31 事業概要
項
目
事業概要
事業主体
・機構と県の共同事業。ただし、県の業務は公社が代行
共同事業の持分割合
・機構 2/3、県 1/3
造成地の所有名義
・機構 2/3、公社 1/3 の共有名義
・用地買収は公社、その他の業務は機構
業務区分
(県・公社持分業務も用地買収以外は機構に委託)
事業地区
・胎内市鴻の巣地区、同笹口浜地区。空中写真及び区画図は次図参照。
地区名
総面積
工場用地面積
分譲済面積
分譲可能面積
分譲率
鴻の巣
62.0ha
55.1ha
5.6ha
49.5ha
10.2%
笹口浜
32.4ha
20.9ha
0ha
20.9ha
-
計
94.4ha
76.0ha
5.6ha
70.4ha
7.4%
事業面積
分譲価格
・10,340 円/㎡~15,280 円/㎡。平均 13,579 円/㎡。
(出典:県資料より作成(平成 18 年8月時点)
)
63
図 3-1-8 事業地区の空中写真
(出典:県資料)
図 3-1-9 事業地区の区画図
(出典:県資料)
(イ)事業経緯
平成4年に県が機構に要請して事業が始まっている。平成4~5年度で用地買収、平
成5~9年度で土地造成が行われ、平成9年7月には分譲が開始されている。それ以来、
9年以上の期間、分譲を継続しているが、前述のように平成 18 年8月までに 7.4%が分
譲されているにすぎない。
64
表 3-1-32 事業経緯
年
事業経緯
(12 月)
県が機構に対して事業申請
⇒機構が事業採択
H4
用地買収
⇒機構・県・公社の間で基本協定締結
H5
(2月)
機構・公社の間で共同事業委託協定締結
H6
(3月)
用地買収完了
H7
(8月)
予約分譲開始
(3月)
造成工事完了
(7月)
公募開始
土地造成、関連公共事業
H8
H9
分譲継続
H10~
(出典:県資料より作成)
②
ア
制度の仕組み
貸付金の経緯
(ア)平成4~13 年
工業団地造成事業における事業執行の基本方針(平成4年 11 月5日)に基づき、工業
団地造成資金は、公社が県の債務保証により民間金融機関から調達していた(県の貸付
金なし)。
(イ)平成 14 年以降
平成 12 年度の包括外部監査の指摘(完成土地に振替後も借入金利息等を土地の取得原
価に参入)を契機として公社の資金調達方法を見直し、利息負担軽減のために県からの
無利子貸付で資金調達することに変更した。ここで取り上げている貸付金は平成 14 年度
以降のものである。
イ
貸付契約
県から公社への貸付金は無利子で貸付期間は1年間である。平成 17 年度の貸付金額は
3,438,313 千円である。
表 3-1-33 平成 17 年度における県と公社の貸付契約の概要
項 目
契約日
資金使途
貸付金額
貸付利率
貸付期間
契約内容等
平成 17 年 4 月 1 日
新潟中条中核工業団地事業に要する資金
3,438,313 千円
無利子
平成 17 年 4 月 1 日~平成 18 年 3 月 31 日
(出典:新潟中条中核工業団地貸付金貸付契約書より作成)
65
ウ
貸付業務の流れ
造成事業資金の貸付金は土地を売却できるとその分だけ県に償還されることになるが、
分譲が進まないため毎年度同様の貸付契約を締結し、借り換えを行っている状況である
(図 3-1-10)。具体的には、公社は当年度の県からの貸付金で前年度の貸付金を償還し、
県は4月から5月末までの出納整理期間に前年度分の貸付が償還された形となっている
(財源は県自身の当年度貸付金)。したがって、公社では年度末残高が生じるが、県では
いったん年度末に残高がゼロとなる。
図 3-1-10 工業団地造成事業貸付金の貸付業務フロー
造成土地購入者
(年度中)
土地売買契約
代金
支払
公社
(当年度当初)
(当年度当初)
前年度分
(当年度当初)
貸付契約
償還
当年度分
貸付
(当年度末)
売却分
償還
(次年度当初)
(次年度当初)
貸付契約
次年度分
貸付
県(一般会計)
年度の帰属期間の違い
公社
当年度
県
次年度
前年度(出納整理期間)
当年度
(出納整理期間)
次年度
(出典:県資料等より作成)
(注1)県の事業部分だけであり、機構との関係は示されていない。
(注2)図下部は公社と県の年度の帰属期間の認識の違いを示したものである。
66
(次年度当初)
当年度分
償還
エ
新潟県土地開発公社
公社の概要は次のとおりである。
表 3-1-34 公社の概要
名称
所在地
代表者
資本金
新潟県土地開発公社
設立年
昭和 48 年 3 月 31 日
理事長 伊藤 博司
30,000 千円
県出資率
100%
昭和 39 年 9 月財団法人新潟県開発公社を設立。昭和 48 年 3 月公有地拡大推進法の趣旨に
則り、公有地の積極的な拡大を図り、その有効かつ適切な利用によって地域の秩序ある整備
を図るため、新潟県土地開発公社として組織変更し、同年 4 月から事業開始。
1) 次の土地の取得、処分を行うこと。
・都市計画区域内で届出等に係る土地
・道路、公園、緑地その他の公共施設の用に供する土地
・公営企業の用に供する土地
2) 住宅用地の造成事業その他土地の造成に係る公営企業に相当する事業を行うこと。
3) 国、地方公共団体その他公共的団体の委託に基づき、土地の取得のあっせん、調査、測
量その他これらに類する業務を行うこと。
新潟市新光町15番地2
沿革及び
設立目的
事業内容
(出典:県及び公社資料より作成)
③
貸付金の実績
平成 14 年度の貸付金額は 3,483,425 千円であり、その後、減額されたのは平成 17 年
度のみである。平成 16 年度に2件土地が売却されたため、その分が控除されたためであ
る。平成 18 年の7月に1件分譲があり、平成 19 年度の貸付金額も若干減額となる見込
みである。
表 3-1-35 貸付金額及び分譲実績の推移
(単位:千円)
年度
貸付
金額
対前年
増減額
分譲件数
分譲面積
H9
H10
H11-H13
H14
H15
H16
H17
H18
計
-
-
-
3,483,425
3,483,425
3,483,425
3,438,313
3,438,313
-
-
-
-
-
-
-
△45,112
-
-
3件
2.8ha
1件
1.1ha
-
-
-
-
-
-
2件
1.2ha
-
-
1件
0.5ha
7件
5.6ha
(出典:県資料より作成)
(注)分譲件数・面積は H9 以降の 7 件が実績全体である。また H18 は4月~8月の実績。
(2)実施した手続
県と公社において次の手続を実施した。
(ⅰ)県における手続
・工業団地造成事業の概要及び県からの貸付金の経緯について担当課から説明を受け
た。
・機構・県・公社の間の共同事業基本協定、事業実施の基本方針など、造成事業及び
貸付の根拠となる文書を閲覧した。
・平成 17 年度の県と公社の間の貸付契約書や支出命令決議書など、貸付に係る文書を
67
閲覧した。
・分譲実績や分譲価格見直しに関する資料を閲覧した。
・工業団地に対する進出意向調査の結果を入手し、内容を確認した。
(ⅱ)公社における手続
・公社及び工業団地造成事業の概要について説明を受けた。
・平成3~4年当時の県から公社への依頼文書や、公社の事業計画を閲覧した。
・公社の決算書や借入金台帳などで、県からの借入金のデータを確認した。
・平成 17 年度の支出命令や納入通知書など、県からの借り入れ及び償還に係る文書を
閲覧した。
(3)監査の結果と意見
① 指摘事項
【指摘事項①】不動産鑑定等業務の委託料の扱いについて
工業団地造成事業申請前の平成3年度に、県が公社に不動産鑑定と物件等調査の業務
を委託している。県は同年度に 8,509 千円の委託料を支出し業務は終了しているが、公
社は当該委託業務の経費を造成土地の原価に算入するとともに、県からの借入金残高
8,509 千円を計上している。この残高は平成 17 年度末まで動きはなく、毎年度同額であ
る。県では、公社の借入金に対応する貸付債権は認識されておらず、同一の取引に対し
て両者がお互いに整合しない会計処理をしたことになる。このままでは、公社の借入金
は今後も償還の機会がなく、実体を伴わない状態が続くことになる。適正化のために何
らかの修正を早急に行う必要がある。
例えば、当時の委託契約書をみると、前文で「(前略)不動産鑑定等費用を中核工業団
地造成事業に精算対象とするため(中略)委託契約を締結する。」と契約のねらいが記さ
れている。また、同契約書第9条で「乙(公社)は、新潟中条中核工業団地造成事業が
終了したときは、甲(県)乙協議の上、委託料相当額を甲に納付するものとする。」(カ
ッコ内は包括外部監査人が付与)とされている。不動産鑑定等は工業団地造成事業の一
環の業務であるため、その経費は造成土地の売却収入で賄うべきであり、いったん支払
った委託料相当分は事業終了時に返してもらうということであろう。実質的には、県が
公社に業務を依頼するとともに、その資金を貸し付ける契約と読み替えることもできる。
この場合、公社の会計処理に合わせて、県が新たに貸付金残高を認識する必要がある。
また、現在、県から公社への貸付金額は、公社の完成土地の資産残高から委託料相当額
8,509 千円を控除して計算されているが、控除しない方法で行うことになる。
一方、平成3年度の不動産鑑定等の業務は、平成4年度の機構による事業採択前のも
のであり、工業団地造成事業の一環で行われたとは言えないという判断もある。県から
公社への委託業務は県が委託料を支払った時点で完了し、債権債務は発生していないと
68
する考え方である。この場合、県はそのままで、公社で修正処理をする必要が出てくる。
完成土地と県からの借入金残高の両方から委託料相当額 8,509 千円を落とすなどの処理
を行うことになる。
②
意見
【意見①】現時点の損失額の試算について
現在の公募価格にて短期間に全て売却が完了した場合に想定される損失額についてシ
ミュレーションをした結果は以下のとおりである。
【シミュレーションを実施する上での前提条件】
・現状の公募価格で単年度中に全て売却されたと仮定している。
・販売に係る事務費等は計算を簡略化するために考慮外とする。
表 3-1-36 現状の損失推定額
未分譲面積(㎡)
中条中核工業団地
平均公募単価(円/㎡)
708,697
中小機構持分分(2/3)
13,579
売却価額(千円)
9,623,379
△ 6,415、586
合
計
平成17年度現在の一般会計借入額
損
失
推
定
額
3,207,793
3,438,313
△230,520
上記の通り、現在の公募価格で即座に全て売却され、かつ、販売に係る諸経費を考慮
外としても推定される損失額は 230 百万円を超過する結果となる。次の【意見②】のシ
ミュレーションにもあるとおり、売却に長期間を要すれば更に損失は拡大することが想
定されるが、既に現時点ですべて売却できたとしてもこれだけの損失が発生するという
厳しい現状を正しく認識する必要がある。
なお、現在の状況から判断する限り、相当額の損失発生は不可避と考えられるため、
損失補填の方法について検討を行う必要がある。
【意見②】分譲促進策の必要性について
中条中核工業団地については、不動産鑑定士による鑑定評価額を参考に平成 18 年1月
に分譲価格の改定を実施している。改定前の平均公募単価 18,430 円/㎡から改定後の平
均公募単価 13,579 円/㎡へと大幅に値下げを行っている。この改定は機構の方針として、
10 年間で売却を完了するという方針のもと実施されたものであるが、改定後売却が成立
したのは 1 件(売却面積 4,943.52 ㎡(0.5ha)
、売却金額 67,479 千円)のみという状況
である。現状の公募価格は、概ね不動産鑑定評価額に近似しているものの、売却が難航
している状況にある。
一方、平成 13 年までは公社が民間金融機関から調達していた事業資金について、平成
69
14 年度より金利軽減を図るために県の一般会計からの無利子貸付に切り替えられている。
県の財政状態は公債に大きく依存している状態であるため、一般会計の無利子貸付には、
間接的に公債の利息相当額のコスト(機会費用)が発生していることが想定される。
以上をふまえて、平成 17 年度末現在において残存する分譲用地を今後 10 年間で売却
した場合と 20 年間で売却した場合について、一定の前提条件をおいた上で、機会費用を
含んだ損失発生見込額をシミュレーションした結果は以下の通りである。
【シミュレーションを実施する上での前提条件】
・機会費用としての利息相当額を計算する利率については平成 18 年3月 31 日現在の
公債残高を基に加重平均した利率 1.9%を使用している。
・工業団地の分譲は設定した年限について平均的に売却されるものと仮定している。
・工業団地の地価については年間 0.9%の地価下落が発生すると仮定している。これは
県の過去 20 年間(一定の景気変動を反映させるために 20 年とした。)の地価変動率
を単純平均したものである。
・営業費用については、維持管理費については過去 5 年、それ以外の経費については
過去2年間の単純平均値 13,919 千円と仮定している。(維持管理費以外の経費につ
いては、平成 15 年に経費の見直しが行われ、大幅に減少しているため、実勢に合わ
せて過去2年の平均とした。)
・機会費用としての利息相当額を算出するにあたっては、一定時点の残高(表の一般
会計からの借入金残高)を基準として計算を行っている。
・シミュレーションの計算を簡略化するため、現在価値での比較は行わない。
表 3-1-37 今後 10 年で売却するケース
(単位:千円)
項目
年度
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
H26
H27
合計
一般会計からの
貸付額推定
3,438,313
3,438,313
3,131,453
2,827,480
2,526,368
2,228,092
1,932,625
1,639,943
1,350,020
1,062,832
778,354
売却代金見込
営業費用見込
320,779
317,892
315,031
312,195
309,386
306,601
303,842
301,107
298,397
一般会計からの
貸付金残高推定
13,919
13,919
13,919
13,919
13,919
13,919
13,919
13,919
13,919
3,131,453
2,827,480
2,526,368
2,228,092
1,932,625
1,639,943
1,350,020
1,062,832
778,354
295,712
13,919
496,561
3,080,946
139,195
70
機会費用
59,497
53,722
48,001
42,333
36,719
31,158
25,650
20,193
14,788
9,434
341,500
表 3-1-38 今後 20 年で売却するケース
(単位:千円)
項目
年度
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
H26
H27
H28
H29
H30
H31
H32
H33
H34
H35
H36
H37
一般会計からの
貸付額推定
3,438,313
3,438,313
3,291,842
3,146,816
3,003,220
2,861,041
2,720,268
2,580,886
2,442,885
2,306,250
2,170,971
2,037,034
1,904,428
1,773,141
1,643,161
1,514,476
1,387,074
1,260,944
1,136,075
1,012,454
890,072
合計
売却代金見込
営業費用見込
160,389
158,946
157,515
156,097
154,693
153,300
151,921
150,553
149,198
147,856
146,525
145,206
143,899
142,604
141,321
140,049
138,788
137,539
136,301
一般会計からの
貸付金残高推定
13,919
13,919
13,919
13,919
13,919
13,919
13,919
13,919
13,919
13,919
13,919
13,919
13,919
13,919
13,919
13,919
13,919
13,919
13,919
3,291,842
3,146,816
3,003,220
2,861,041
2,720,268
2,580,886
2,442,885
2,306,250
2,170,971
2,037,034
1,904,428
1,773,141
1,643,161
1,514,476
1,387,074
1,260,944
1,136,075
1,012,454
890,072
135,075
13,919
768,916
2,947,786
278,390
機会費用
62,545
59,789
57,061
54,359
51,685
49,036
46,414
43,818
41,248
38,703
36,184
33,689
31,220
28,775
26,354
23,957
21,585
19,236
16,911
14,609
757,187
上記のとおり 10 年間で売却のシミュレーションをした場合に残存する貸付金残高は、
回収不能となり損失として顕在化する可能性がある金額として 496 百万円、機会費用と
しての利息相当額は 341 百万円という結果になる。一方、20 年間で売却のシミュレーシ
ョンをした場合には回収不能となり損失として顕在化する可能性がある金額として 768
百万円、機会費用としての利息相当額は 757 百万円という結果となる。これらの結果か
らみても分譲期間が長期化するほど損失見込額(機会費用を含んだコスト)が増加する
リスクが高いことが判る。
シミュレーションの結果のみで判断するならば、何の策も講じずに 20 年間かけて売却
するのであれば、688 百万円分(10 年と 20 年の損失見込額の差額、工業団地全体での影
響額で考えると 2,064 百万円となる。)分譲地の販売価格を値下げ(値下げ後の平均分譲
単価は 10,666 円/㎡となる。)して売却しても結果として発生する損失は同額ということ
になる。
また、早期に売却を終了することは、実際に企業が当該産業団地に進出することにな
るため、そのことによるプラスの経済効果(雇用の創出、法人税や固定資産税等の税収
増加、衣食住に関する商業的な経済効果等々)も発現することになる(今回のシミュレ
71
ーションでは測定が困難であるため考慮していない)。一方、マイナスの経済効果も発現
することは想定(交通量増加による環境への負荷等)されるが、一般的にはプラスの経
済効果の方が大きいと想定される。
このような経済効果についても考慮するならば、単純なシミュレーション結果よりも
更に低い価格での売却であったとしても、早期売却の方が有利となる可能性もある。
また、県においては依然として地価の下落傾向が継続しており、今後の地価動向は依
然として不透明であるため、更に地価が下落する可能性も十分にあると考えられる。こ
のような地価下落リスク(もちろん地価上昇する可能性もあるが)を考えても、極力早
期の売却を可能とする分譲価格の再設定を含めた分譲促進の方策(詳細は【意見③】、
【意
見④】参照)を検討し、今後の事業を遂行することが必要である
【意見③】分譲価格の適時の見直しについて
平均公募単価の設定は次表のとおりであるが、公募開始の平成9年当時は 18,430 円/
㎡であり、その設定で維持されてきている。平成 18 年1月にようやく改定され、13,579
円/㎡となっている。
一方、次図は工業団地造成地の近くにある地点の公示地価の推移と公募価格等を比較
したグラフである。公示地価は平成 12~14 年をピークとして下がり続けており、平成 18
年はピーク時の 70~86%程度に低下している。
工業団地造成地は公示地価の地点とは中心市街地からの距離や利用現況などが異なる
ため単純に比較できず、公募価格の設定が高いかどうかは判断できないが、少なくとも
公示地価等の趨勢にあわせて公募価格が変更されてこなかったことは事実であろう。ま
た、機構による当該工業団地造成地に係る鑑定評価がなされているが、それと比較して
も平成 15~17 年公募価格は1~3割程度高い設定である。
確かに、公平性の観点から公募価格を頻繁に変更することは難しい。また、最近の分
譲に際しては相対で価格が交渉されてきたとのことであり、平成 16 年の分譲実績の単価
は平均公募価格の7割程度である(表 3-1-39)
。しかし、企業が当該工業団地に関心を示
すかどうかは、まずはパンフレット等で提示される公募価格であると思われる。
さらに、工業団地造成事業の原価を前提に価格設定せざるを得ないのも事実であるが、
前述のシミュレーションによると、分譲期間が長引くほど県が負担する管理費等や無利
子貸付金の機会費用が膨らむ可能性もある。県民の負担を軽減するためにも、県として
独自にシミュレーションを行い、需要の動向や地価の趨勢に合わせた適時で柔軟な公募
価格の設定について、機構と協議していくことが望まれる。
72
表 3-1-39 年度別平均分譲単価等の推移
(単位:千円)
年度
総売却額(千円)
うち公社分売却額
(千円)
分譲件数
分譲面積(㎡)
分譲単価(円/㎡)
平均公募単価(円/㎡)
分譲単価/平均公募
単価×100
H9
519,407
H10
190,791
H16
158,035
H18
67,479
計
935,712
173,135
63,597
52,678
22,493
311,904
3件
28,336.37
18,330
18,430
1件
10,408.68
18,330
18,430
2件
12,194.34
12,960
18,430
1件
4,943.52
13,650
13,579
7件
55,882.91
16,744
-
99.5%
99.5%
70.3%
-
100.5%
(出典:県資料より作成)
(注)分譲面積は総売却額に対応する全体の面積。また、平均公募価格は区画によって公募単価が異なる
ため、H9~H17 の期間でも売却によって多少変動がある。さらに、区画による単価の違いや相対で
の値引き等のため、分譲単価/平均公募単価は 100%ではない。
図 3-1-11 工業団地造成地に係る地価及び公募単価、売却単価の推移
45,000
公示地価(胎内1)
39,700
40,000
公示地価(胎内2)
35,000
鑑定評価額
31,400
30,000
27,800
円 25,000
/
㎡ 20,000
27,200
15,000
10,000
5,000
平均公募単価
売却実績単価
18,430
工
業
団
地
18,330
造
成
事
業
用
地
買
収
採
択
完
了
18,330
16,700
12,960
分
譲
開
貸
付
開
始
始
13,579
13,000
0
H4
H5
H6
H7
H8
H9
H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18
(出典:県資料及び国土交通省のホームページのデータベースよりデータを入手して作成)
(注1)公示地価は工業団地造成地に近い次の2地点を取り上げた。
・胎内1:胎内市本郷町 435 番3、地積 368 ㎡、利用現況
住宅、一種住居地域
・胎内2:胎内市若松町 1550 番 123、地積 206 ㎡、利用現況
住宅、一種低層住居専用地域
(注2)鑑定評価額は機構によるもの。
(注3)平均公募価格は工業団地造成地の公募価格の設定を平均したもの。
(注4)売却実績単価は、H9、H10、H16 の売却額を面積で除したもの。
73
【意見④】分譲促進方策の検討における留意点について
中条中核工業団地造成事業は、前述の県営工業団地造成事業とは異なり、いくつかの
特徴を有している。分譲促進策の検討においても、その特徴を十分に踏まえる必要があ
る。
ア
県の主体的な取組の推進
中条中核工業団地造成事業は機構と県、公社、胎内市といった複数の主体が関わって
おり、それぞれ誘致活動を実施している(公社を除く)。
分譲促進策の検討に当たっては、県は3分の1の持分を有する事業主体であり、さら
に、持分相当の事業費(売却による損失、無利子貸付金の機会費用等)及び管理費を負
担することになるため、積極的に分譲促進策の検討に取り組む必要がある。特に県内の
工業団地全体の供給及び分譲については県の産業政策とも関係するところであり、そう
した観点からも当該工業団地の分譲を進める必要がある。
イ
機構における事業推進の期限
機構は平成 16 年7月1日に地域振興整備公団が改編されて発足しているが、その根拠
法である独立行政法人中小企業基盤整備機構法附則第5条第1項及び同法施行令附則第
2条第1項では、旧地域振興整備公団が行っていた工業再配置等業務は平成 26 年3月 31
日まで行うことができるとされている。平成 16 年7月~平成 21 年3月を期間とする機
構の中期目標には、中条のような工業団地等に関して次のような目標が掲げられている。
「地域振興整備公団が整備した中小企業基盤整備機構法附則第5条及び附則第6条第
3項に掲げる産業用地の分譲業務等については、中小企業基盤整備機構法施行令附則第
2条第1項及び第5条第1項に定められた期間で終了するため、当該期間で完売するた
めに必要な総合的な分譲促進策を策定し、着実に実施する。また、中期目標期間終了後
の未利用面積が中期目標開始時点に比べおおむね半減していることを目標とする。」(機
構の中期目標より抜粋。下線は包括外部監査人が付与)
すなわち、平成 26 年度で分譲業務等が終了するため、それまでにすべて分譲すべく分
譲促進策を策定することと、平成 21 年度までには未分譲用地の半分を分譲するというこ
とである。
県としても、こうした機構側の事情を踏まえながら、平成 26 年度までの事業の完了を
目指すべきであると考える。したがって、分譲促進策の検討においてはこれらの期間的
な制約を十分踏まえたものとする必要がある。
74
【意見⑤】単年度貸付契約の見直しについて
現在、県は公社に対して単年度ごとの貸付を行っている。しかし、出納整理期間を利
用して翌年度の貸付金に転換しているだけであり、実質的には長期の貸付金である。決
算では貸付金の残高が残らないなど、実態が正確に反映されず透明性に欠ける。また、
分譲が進まず、長期的な事業となっているにも関わらず、その資金を短期の貸付で手当
てするという発想自体民間の感覚からはずれている。
現在の単年度の貸付契約については見直しを行うことが望ましい。
例えば、既述の【意見④】で提案している分譲促進策の設定期間に沿って、長期の貸
付契約とすることも考えられる。そこでの償還は分譲実績に応じて行うことになるが、
実質的には既存の方法と変わりない。これによって貸付債権の実態が正確に示され、契
約期間も意味のあるものとなる。また、契約事務の負担軽減にもなると思われる。
75
5 物流拠点構築事業用地取得貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
平成 14 年度、県が公社に対して、新潟東港地区における物流拠点構築事業用地の先行
取得を依頼し、その資金を県が公社に貸し付けたものであり、県による用地の再取得及
び貸付金償還期限は平成 19 年3月 31 日である。
イ
根拠法令等
(ア)公有地拡大推進法
公社による用地の先行取得は、公有地の拡大の推進に関する法律(以下、「公有地拡大
推進法」という。)及び県と公社の間で締結された物流拠点構築事業に伴う用地の先行取
得に関する契約(以下、「先行取得契約」という。)に基づいて行われ、また、新潟県土
地開発公社事業資金貸付契約(以下、「貸付契約」という。)によって貸付が実行されて
いる。
(イ)輸入促進地域
当該用地の使途とされている物流拠点構築事業は、輸入促進地域(以下、
「FAZ(Foreign
Access Zone)」という。
)の計画に沿ったものであり、その根拠法は、輸入の促進及び対
内投資事業の円滑化に関する臨時措置法(以下、「FAZ 法」という。)である。
FAZ 法は我が国の貿易不均衡の是正と投資の円滑化を図るために、1992 年、通産、運
輸、農林、自治の4省によって制定されたものである。港湾・空港及びその周辺地域に
設定された FAZ において、輸入促進に関する施設の整備や各種事業・活動を支援し、輸
入関連機能の集積を図ろうとしたものである。なお、平成 18 年5月に FAZ 法は廃止され
ている。
県の FAZ 計画の概要は次のとおりである。今回対象とした県の貸付金で取得された用
地は、FAZ 計画のうち第2期基盤施設の整備を目的としたものである。
76
表 3-1-40 新潟 FAZ 計画の概要
項
目
概
要
「日本海大交流時代」の国際物流拠点化に向けて、新潟港及び新潟空港の国際インフ
目
的
ラや高速交通網の結節点等のポテンシャルを活かしながら、国際物流拠点の整備を促
進し、貿易の拡大による県内産業の活性化を図る。
FAZ 指定
第1期
基盤施設
新潟 FAZ 計画は平成 8 年 3 月 27 日に国の承認を受け、新潟港地域(新潟市、旧豊
栄市、聖籠町)が FAZ に指定された。
「定温くん蒸施設」(事業地は図 3-1-12 参照)平成 10 年 4 月供用開始
・くん蒸庫:県整備、規模 210 ㎡、青酸・臭化メチルくん蒸、定温機能等
・定温庫:第三セクター整備、規模 1,500 ㎡、臭化メチルくん蒸、定温機能等
「新潟国際物流センター(仮称)」
第2期基盤施設
(事業地は図 3-1-12 参照)
開業時期:未定(参画企業募集中)
(貸付金対象
施設概要:総合保税地域制度を活用した輸入貨物の荷捌き、保管、加工等のできる高
用地)
度物流施設
(出典:県パンフレット等より作成。なお、平成 16 年度当時の概要であり、現時点の計画内容でない。
)
図 3-1-12 新潟 FAZ の位置図
第1期
基盤施設
第2期基盤
施設予定地
(貸付金対
象用地)
(出典:県資料)
77
②
ア
制度の仕組み
先行取得契約
県と公社が締結した先行取得契約の主な内容は次のとおりである。
表 3-1-41 先行取得契約の概要
項 目
契約日
事業用地
公社の業務
内容
用地の再取得
用地の引渡し
契約内容等
平成 14 年 10 月 18 日
・ 所在地:笹山土地区画整理事業地内(旧豊栄市)、位置は前図参照
・ 規 模:55,575.1 ㎡
・ 平成 14 年度における事業用地の取得
・ 事業用地取得の付帯業務(補償金額算定、用地交渉、契約締結、登記等)
・ 事業対償地の取得
県は次の経費の合計金額 1,743,328,000 円の範囲内で平成 18 年度に用地を再取得
・ 公社の事業用地取得に要する用地費、補償費
・ 事業用地の管理に要する経費
・ 事業用地の取得に要する事務費
・ 借入金の利子
公社は平成 19 年 3 月 31 日までに土地を県に引き渡す
(出典:物流拠点構築事業に伴う用地の先行取得に関する契約書より作成)
イ
貸付契約
県から公社への貸付は3回に分けて実施されており、それぞれの貸付契約書の記載内
容は次のとおりである。
表 3-1-42 貸付契約の概要
項 目
契約日
資金使途
貸付金額
貸付利率
貸付期間
契約内容等
平成 15 年 3 月 24 日
平成 15 年 3 月 27 日
物流拠点構築事業のための土地取得資金
1,503,619 千円
155,327 千円
14,208 千円
合計 1,673,155 千円
無利子
平成 15 年 2 月 7 日~
平成 15 年 3 月 31 日~
平成 15 年 4 月 30 日~
平成 19 年 3 月 31 日
平成 19 年 3 月 31 日
平成 19 年 3 月 31 日
平成 15 年 1 月 30 日
(出典:新潟県土地開発公社事業資金貸付契約書より作成)
ウ
貸付業務の流れ
次図のように、県と公社の先行取得契約及び貸付契約に基づき、土地基金から資金を
借り入れ、公社に貸付を行っている。公社はそれをもとに地権者から土地を買い取り、
代金を支払っている。用地の再取得及び貸付金の償還は平成 18 年度末が期限であるが、
報告書作成時点では実施されるかどうか未定である。
78
図 3-1-13 物流拠点構築事業用地取得貸付金の貸付業務フロー
地権者
H14
土地売買
契約
H14
土地
引渡
H14
支払
公社
H14
先行取得
契約
H14
貸付
契約
H18
用地
再取得
予定
H14
貸付
H18
経費
支払
予定
H18
貸付金
償還
予定
H14 借入
県(一般会計)
(注)
:契約等、
:土地、
:資金
県(土地基金)
H18 償還
予定
(出典:県資料等より作成)
③
ア
貸付金の実績
貸付金残高
「②イ
貸付契約」で整理したように、県から公社への貸付金額は 1,673,155 千円で
ある。それ以降、追加貸付や償還はなく、平成 17 年度末の残高も同額である。
イ
土地基金残高
平成 17 年度決算の財産に関する調書によると、土地基金全体の残高は 24,996,970 千
円である(次表)。物流拠点構築事業用地取得貸付金の残高 1,673,155 千円は土地基金残
高全体の 6.7%、土地基金のうち貸付金残高の 12.6%を占めている。
表 3-1-43 土地基金残高
(単位:千円)
区
現
貸
土
分
金
付 金
地
計
平成 16 年度末
9,714,976
13,386,497
1,892,555
24,994,028
(出典:財産に関する調書)
79
平成 17 年度増減
119,393
△116,451
-
2,942
平成 17 年度末
9,834,369
13,270,046
1,892,555
24,996,970
(2)実施した手続
県と公社において次の手続を実施した。
(ⅰ)県における手続
・公社への貸付の概要及び FAZ 事業の沿革・現状について担当課から説明を受けた。
・平成 14 年度の先行取得契約書、貸付契約書、支出負担行為決議書、支出命令決議書
等の書類を閲覧した。
・平成 14 年度の土地基金からの借入れに係る書類(貸付決定書等)を閲覧した。
・平成 18 年度の用地再取得の見込みについて担当課から説明を受けた。
(ⅱ)公社における手続
・本貸付金に係る公社の業務や償還方針等について説明を受けた。
(3)監査の結果と意見
① 指摘事項
【指摘事項①】取得面積の根拠及び取得後の具体的な利用計画の不明確さについて
県から公社に対して当該貸付金を実行したことが妥当であったかについて判断するた
め、以下のように FAZ 計画と用地取得の関連性、先行取得の時期・対象地の妥当性、そ
してその用地に係る具体的な利用計画の明確さについて検討した。
その結果、少なくとも取得面積の根拠及び取得後の具体的な利用計画については不明
確である。今後、他の部門を含めて同様のことが起きないように、用地取得を行う際に
は、その前提として具体的な利用計画を明らかにしておく必要がある。
ア
FAZ 計画と用地取得の関連性
今回の貸付金の発端は新潟 FAZ の指定にある。FAZ 法は 80 年代から 90 年代にかけての
わが国の貿易摩擦が背景にあり、輸入を促進させようとする目的で制定されたものであ
るが、近年はその必要性も低下してきていた。平成 18 年 1 月の国の輸入・対内投資法政
策評価研究会報告書においても「法制定当時に比べ、わが国の貿易黒字に対する国際的
な懸念の声も低下し、製品輸入比率も高まる中、同法による輸入促進策の政策的な意義
は低下」と評価され、同年5月に FAZ 法は廃止されている(表 3-1-44)
。
新潟 FAZ 計画は平成8年3月に承認されている。FAZ 法制定の趣旨や、全国の主要な港
湾・空港を抱える地域で FAZ 指定に向けて動いていたこと(平成 12 年度までに全国で 22
ヶ所承認・同意)、あるいは FAZ 指定により地域への経済効果も期待されていたことなど
から、特定重要港湾(中核国際港湾)の新潟港周辺で FAZ 計画が推進されたことは自然
な流れであったと推測される。
ただし、国として FAZ 法の意義が薄れてきただけでなく、新潟としても FAZ 計画を取
80
り巻く状況は厳しかったようである。平成 15 年1月 14 日の普通会計決算審査特別委員
会の会議録をみると、当時 FAZ 担当である国際経済課長の次のような答弁が見られる。
「(前略)今年度の予算で、笹山地区で国際物流センターの予定地の土地開発公社によ
る先行取得を予定してございます。昨年度も企業の誘致に鋭意努めてまいりましたし、
それから国際物流センターに対する気運の醸成、周知を兼ねましてセミナー等を開催し、
現地の見学会等も行ったところでございますけれども、御存じのような景気の動向の中
で、いま一つ企業の明確な参画の意志を頂いていないという現状の中で、計画の FAZ 施
設そのものの建設という段階には至っていないというのが現状でございます。(中略)今
後のこの構想の見通しでございますけれども、輸入そのものに焦点を当てました FAZ 施
設というものが、今後の東港の物流機能の向上の上で必要な機能であるというふうには
考えてございますが、FAZ の場合ですと、輸入に限定した施設ということになっておりま
すので、東港全体と見通しますと輸入だけで物流をさばききれるというふうには考えら
れませんので、それも含めまして、いわゆる国内物流も視野に入れた形で物流企業の招
致というものに今後鋭意努めていきたいと考えております。」(下線は包括外部監査人が
付与)
また、その2年半前の平成 12 年8月の知事査定結果メモ(担当課保管)でも、すでに
FAZ とその他の物流拠点整備を平行して進める方針が示されており、事業用地 5.5ha のう
ち FAZ 用地は 3.5ha で、残りの 2.0ha は将来の物流基地の発展を考慮したものとされて
いる。
表 3-1-44 FAZ と用地先行取得に係る年表
年
FAZ 関連
用地取得関連
(7月)輸入の促進及び対内投資事業の円滑化に関
H4
-
する臨時措置法(FAZ 法)施行
-
H5
H6
-
(3月)新潟 FAZ 基本計画調査
-
-
H7
-
(3月)新潟 FAZ 計画を国が承認
H8
(5月)株式会社新潟国際貿易ターミナル(FAZ 施
-
設の整備・管理運営等を行う第三セクター)設立
-
H9
-
(4月)定温くん蒸施設(第1期基盤施設)供用開
H10
H11
H12
-
始
-
-
(4月)新潟県輸入促進地域における基盤整備の促
(11 月)笹山土地区画整理事業認可(組合施行)
、施
進に関する条例(不動産取得税減免)施行
行開始
81
年
H13
FAZ 関連
用地取得関連
(3月)新潟 FAZ 計画変更(国の同意)
-
(4月)笹山土地区画整理事業仮換地
H14
-
H15
-
H16
-
-
H17
-
笹山土地区画整理事業完了
(10 月)県と公社が先行取得契約締結
(1~3 月)公社が地権者から土地取得、県と公社が
貸付契約締結
(5月)FAZ 法廃止
H18
(7月)新潟県輸入促進地域における基盤整備の促
-
進に関する条例廃止
(3月)県による用地再取得及び経費支払い、並び
H19
-
に公社からの貸付金償還(予定)
(出典:県、公社等の資料より作成)
当時、既に企業のニーズも踏まえ FAZ 計画推進の困難性が認識されており、また、県
の長期総合計画で東港周辺における総合的な物流拠点の形成が掲げられていたこともあ
り、国内物流を含めて幅広く物流企業を誘致する方向性が FAZ 計画と同時並行で推進さ
れようとしている。それに対して事業用地については、形式上 FAZ 計画の第2期基盤施
設である国際物流センターの予定地として先行取得されており、実質的な施策の動向と
の関連性が見えにくい状況である。将来的な物流基地としての発展性も考慮した用地取
得であれば、その趣旨を示しておくべきであった。
イ
先行取得の時期・対象地の妥当性
一般的に、土地開発公社は地方公共団体よりも機動的に動けるため、必要な時期に必
要な規模の用地を迅速に取得することが可能であり、地価の上昇局面では用地取得費を
抑制する効果も期待できる。
次図で、今回先行取得した用地に近い地点の公示地価の推移を整理した。平成 10 年~
12 年ごろにピークを迎え、以降、下降している。平成 18 年時点の地価はピーク時から
47%~62%程度、用地を先行取得した平成 15 年からでも 67%~72%に下がっている。結
果論ではあるが、先行取得の時期を遅らせるほど、用地取得費を軽減できた計算になる。
担当課によると、東港周辺にはコンテナターミナルに近接した立地で FAZ 用地に適し
た県有地はなく、笹山土地区画整理事業によって用地を確保する方法をとっている。具
体的には、県が FAZ 施設用地を設けることを前提に同土地区画整理事業が行われたため、
事業を円滑に進める必要があり、平成 14 年4月の同事業の仮換地に合わせてすぐに用地
を先行取得したとのことである。
82
当該土地区画整理事業の認可前の時期にその後の地価の動向が予測できたとは言い難
い面もあり、FAZ 計画を前提とした場合、先行取得の時期及び対象地については一定の合
理性が認められる。
図 3-1-14 先行取得用地に近い地点の公示地価の推移
70,000
66,000
新潟100
60,000
51,000
50,000
H15 公社の先
行取得単価
新潟10-10
円
/
㎡
30,250 円/㎡
40,000
30,300
新潟10-1
30,000
31,500
第
20,000
10,000
一
区
新
期
画
24,000
F
潟
基
整
先
A
F
盤
理
行
19,000
Z
A
施
事
取
貸
償
法
施
Z
承
設
開
業
認
得
契
付
契
還
予
行
認
設
可
約
約
定
0
H2
H3
H4
H5
H6
H7
H8
H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18
(出典:国土交通省のホームページのデータベースよりデータを入手して作成)
(注)各地点の概要は次のとおり。
新潟 100
:新潟市木崎字尾山 2229 番 13(先行取得用地から約 3km)
地積 235 ㎡、利用現況 住宅、一種住居地域
新潟 10-10:新潟市内島見字浦潟 2504 番9外(先行取得用地から約 2.5km)
地積 580 ㎡、利用現況 事務所、市街化調整区域
新潟 10-1:新潟市島見町字前谷内 5027 番1(先行取得用地から約1km)
地積 428 ㎡、利用現況 住宅、市街化調整区域
ウ
具体的な利用計画の明確さ
本来であれば、用地取得の前提として次図のような検討が必要である。必要な物流機
能や想定される物流の量と内容、物流関係企業の参加意向等を踏まえて、施設の規模や
構成、土地利用が検討され、その上で必要な用地の規模や形状が決まってくるはずであ
る。
83
図 3-1-15 用地取得までに想定される一般的な検討事項例
1.ニーズ、需要の把握
物流施設の事業環境の把握、物流需要の予測、企業進出意向等の把
握等
2.事業計画(用地の利
用計画)の検討
3.事業成立性の検討
施設計画(機能、規模、構成、土地利用)
、事業実施計画(体制、ス
ケジュール等)
、運営計画等
事業計画に基づくフィージビリティ・スタディ(事業成立可能性調
査)の実施、及びその結果による事業計画の修正・見直し
4.用地取得
事業計画(用地の利用計画)に基づく、用地の取得
担当課からは、国の承認を受けた新潟 FAZ 計画(変更を含む)、新潟 FAZ の概要を紹介
したパンフレット、当初の FAZ 計画の基礎となった新潟 FAZ 基本計画調査報告書、先行
取得用地 5.5ha の面積の根拠となったと思われる愛媛 FAZ のパンフレット、あるいは前
述した平成 12 年8月の知事査定結果メモなど、手元に保持されている資料が提示された
が、FAZ 計画の基本的な方針や事業の参考情報ではあっても、用地の取得や利用の前提と
なる事業計画ではない。新潟 FAZ 基本計画調査報告書では事業収支シミュレーションま
で行われており、内容は唯一事業計画に近いものであるが、今回の先行取得用地 5.5ha
の前提となった計画ではない。
当時、用地を先行取得する際に具体的な事業計画が十分検討されていたかどうかにつ
いて、疑問が生じる状況であり、結果として、取得面積の妥当性についても判断できな
い。
なお、県としてはこれから用地を再取得して利用しようという段階にあると思われる
が、その具体的な方針が決まっていない。現在、新たな活用策について検討中とのこと
であるが、今後、早い時期に方向性を示すべきである。
84
6 産業労働観光部以外の部局による新潟県土地開発公社への貸付
6-1 美咲町土地購入に対する貸付金【総務管理部 管財課】
(1)概要
① 目的
本貸付金は、公共・公用施設用地として美咲町の土地(5.6ha)を、公社に先行取得さ
せる目的で、県の一般会計より貸付けたものである。
②
経緯
美咲町の土地についての取得及び購入資金の貸付等に関する経緯の概要は以下のとお
りである。
表 3-1-45 年表
年月
概
要
等
東洋瓦斯化学が 25.4ha の工場跡地を以下の四社に売却。
所 有 者 名
平成 2 年 7 月
持
分
鹿島建設㈱
40%
三井不動産㈱
40%
三井物産㈱
10%
帝石不動産㈱
10%
(注)上記 4 社で共同事業体を組成している。
平成 3 年 6 月
にいがた 21 戦略プロジェクトにおいて、国際交流センター(仮称)の整備を計画
平成 4 年 1 月
共同事業体が当該地区の開発計画として「網川原地区再開発計画」を作成
平成 4 年 3 月
平成 4 年 4 月
平成 4 年 6 月
平成 5 年 1 月
平成 5 年 2 月
平成 5 年 3 月
「網川原地区再開発地区計画」が市都市計画審議会を経て都市計画地方審議会で承認さ
れ告示(全体面積 25.4ha)
国際交流センターなどの国際交流の拠点施設設置を予定して、当時の県知事より共同事
業体に対して、3.1ha の用地取得希望を文書にて依頼
県が取得申込地(3.1ha)に隣接する土地(2.5ha)の追加取得を希望し、共同事業体に
対して土地利用計画の見直しを依頼
共同事業体との間で土地取得価格 1 ㎡当たり 201,000 円にて合意
国際交流センターなどが万代島再開発地区へ移行
全体で約 5.6ha を全て造成地で引受をしたい旨、県より共同事業体に申し入れ
定例会総務文教委員会にて平成 5 年度予算に計上されていた当該貸付金の使途につい
て質問
85
年月
概
要
等
共同事業体と公社との間で不動産売買契約を締結
平成 5 年 8 月
(取得面積 56,314.66 ㎡
取得価格 11,310,000 千円)
8 月末に県から公社への貸付と公社から共同事業体への土地代金の支払
定例会連合委員会にて土地利用計画の検討委員会を設置すべきとの意見提案(当時の県
平成 8 年 7 月
知事より、万代島をはじめ多くのプロジェクトを抱えている中で、利用計画を検討する
のは無理、長い目で有効利用を考えたいとの答弁)
平成 17 年 4 月
平成 18 年 8 月
平成 18 年 11 月
③
現知事の定例記者会見において庁内プロジェクトチームにより 1 年間かけて検討する
意向が公表
県は貸付金の返済について、美咲町の土地の代物弁済により受けることを内容とする所
有権移転契約を公社との間で締結、これにより美咲町の土地は県有地をなる
当該地を当初予定した官公庁施設の整備ではなく民間への売却を含めた新たな活用方
法の検討を開始した旨を公表し、美咲町県有地開発可能性調査を開始
貸付契約等
県の一般会計から公社への貸付金は無利子で行われている。平成 17 年度の貸付金の契
約内容等は以下のとおりである。
表 3-1-46 平成 17 年度における公社への貸付の状況
項
目
契約日
資金使途
貸付金額
貸付利率
貸付期間
内
容
等
平成 17 年 4 月 1 日(貸付当初の契約日は平成 5 年 8 月 24 日)
美咲町土地取得資金
11,310,000 千円
無利子貸付
平成 17 年 4 月 1 日~平成 18 年 3 月 31 日
(但し、貸付当初の返済期日を変更契約書により毎年延長)
(出典:貸付契約書及び貸付変更契約書等より作成)
美咲町の土地購入資金として県より公社に平成5年度に実行された貸付金は、貸付時
の契約書では返済期日が平成8年3月 31 日とされているが、その後、3年ごとに(平成
17 年度からは毎年)変更契約書の締結により返済期日の延長が行われている。
平成 18 年8月 31 日に貸付金の代物弁済による返済が行われており、これにより美咲
町の土地は県有地となっている。
86
④
アクセス
図 3-1-16 アクセスマップ
87
⑤
地区図
図 3-1-17 美咲町地区図
88
(2)スキーム図
図 3-1-18 美咲町土地購入に対する貸付金のスキーム図
県
美咲町土地購入
土地基金
に対する貸付金
貸付
【取得当時の所有者】
鹿島建設株
三井不動産㈱
三井物産㈱
帝石不動産㈱
一般会計
返済
(※1)
貸付
購入
(平成 5 年当時)
①
公社
②
美咲町土地
③(注 1)
資金の流れ
資金の関連
所有権の関係(○数字は所有の順序を示している)
(注1)平成 18 年3月末現在においては所有権は公社が保有(上記②)
、平成 18 年8月末に美咲町の土地
を借入に対する代物弁済という形で県へ所有権移転(上記③)している。
これにより県からの公社への貸付金は消滅している。
(3)美咲町の土地に関する時価情報
美咲町の土地については、従前より遊休となっており、また抱える含み損失も巨額と
なっていることから問題となっているところである。県は平成 17 年度において平成 16
年度地価動向調査(平成 17 年1月1日現在)の結果を基に美咲町の土地が抱える含み損
失を独自に測定しており、その結果は以下のとおりである。
89
表 3-1-47 美咲町土地時価情報等
項
目
内
容
等
美咲町土地取得価格
11,310,000 千円
取得面積
56,314.66 ㎡
平成 16 年度地価動向調査
・
基準日
・
基準地点
・
㎡単価
平成 17 年 1 月 1 日
新潟市新光町 15 番5
90,000 円
地価動向調査補正後の㎡単価(時価相当)
81,884 円/㎡
美咲町土地時価相当額(推定)
4,611,269 千円
美咲町土地含み損失(推定)
6,698,730 千円
上記のとおり、現在美咲町の土地が抱えていると想定される含み損失は約 67 億円に達
している。平成 18 年 11 月3日の新聞報道にもあるが、現在県は民間への売却も視野に
いれた美咲町県有地開発可能性調査を行っている状況である。
(4)実施した手続
県と公社において次の手続を実施した。
(ⅰ)県(総務管理部管財課)における手続
・公社に先行取得を依頼した経緯について説明を受けた。
・公社に先行取得を依頼した時点の貸付金に関する契約関係書類を閲覧した。
・公社が先行取得したときの不動産売買契約書について閲覧した。
・平成 18 年8月 31 日に行われた代物弁済に関する書類を閲覧した。
(ⅱ)公社における手続
・美咲町土地購入に関する貸付金の概要について説明を受けた。
・平成 17 年度における貸付金に関する契約関係書類を閲覧した。
・美咲町土地購入時の公社の事業計画について閲覧した。
(5)監査の結果と意見
① 指摘事項
【指摘事項①】書類の整備保存について
「(1)②経緯」に記載しているとおり、美咲町の土地の取得に関する交渉が開始され
た当初は 31,000 ㎡の取得予定であったが、平成4年6月に最終的な取得面積の 56,000
㎡の取得に変更されている。このことについて、県の担当者より口頭による説明は受け
たものの、当時、なぜ 31,000 ㎡から 56,000 ㎡へと取得予定面積の増加が必要であった
90
のかについて、経緯が判明する資料が残されていないとのことであった。
この変更により、取得に要する費用が約 62 億円から 113 億円に増加することになるが、
このような大幅な取得面積の増加変更にも関わらず、検討過程が明確となる資料が整
備・保存されていないのは問題である(従って、検討過程が明確となる資料の作成自体
がされていたかどうかも不明である)。
取得のための資金額や使用目的等に軽微な変更があった場合にまで、詳細な検討資料
が必要とは考えないが、美咲町のケースのように取得に要する費用が大幅に増額となる
ケースなどについては、なぜ変更する必要があるのかについて検討過程が明確となるよ
うに、検討した事項や関連文書の保存に十分に留意する必要があり、今後、このような
重要な意思決定の変更が行われる場合、変更に至る経緯及び理由を示す書類を調製する
とともに、その保存期間を明確にしておく必要がある。
②
意見
【意見①】美咲町土地の今後について
「(1)概要
②経緯」に記載しているとおり、美咲町の土地を先行取得するにあたり、
当初は国際交流センターなどの国際交流の拠点施設設置を予定して土地の取得に関する
交渉が進められていたが、平成5年1月に国際交流センターなどの計画が万代島再開発
地区へ移行されている。その後、平成5年8月に美咲町の土地に関する不動産売買契約
を締結することになるが、その間、美咲町の土地の使途が不明確なまま先行取得が行わ
れ、結果として遊休地となってしまっているのが実状である。
美咲町の土地については都市計画の一環で開発が進められてきた経緯があり、県の都
合だけで取得を取りやめることは困難であったことが想定される。また、バブル経済期
のように地価が上昇を続けていた局面においては、先行取得についても一定の意義があ
ったと考えられ、取得したこと自体を否定するものではないが、取得することとなった
以上は有効な利用方法について、早急に検討をすべきであったはずである。一方、平成
8年7月の定例会連合委員会にて「土地利用計画の検討委員会を設置すべき」との意見
提案がなされている経緯もあり、県の対応が適時適切であったとは言い難い。
美咲町の土地については取得してから 12 年間が経過しており、現在想定される損失は
約 67 億円に達している。一方、無利子貸付を行うことにより発生していることが想定さ
れる機会費用(公社への無利子貸付に対する利息相当額)や遊休地としておくことの経
済的損失等も相当額に達していることが想定される。これ以上の経済的な損失の発生を
極力少なくする方法を検討することだけではなく、県民が享受する便益の向上に繋がる
活用方法も視野に入れた検討を行うことが必要であると考える。
91
6-2 佐渡空港整備事業用地等の先行取得に関する貸付金【港湾空港交通局
空港課】
(1)概要
① 目的
本貸付金は、佐渡空港整備事業用地等の先行取得及び維持管理を行わせる目的のため、
県の一般会計より公社に貸付けたものである。
②
経緯
現在の佐渡空港は昭和 33 年 10 月に飛行場が完成し、翌年8月に就航開始されて以来、
50 年近い歳月が経過している。佐渡空港の滑走路は全長 890 メートル、幅 25 メートルで
あり、9人乗りのアイランダーが定期便として就航しているほか、他県から小型機やヘ
リコプターが飛来している。この全長 890 メートルの滑走路では、19 人乗りクラスの機
材の就航までが限度であり、従って、現空港による佐渡の活性化には限界があると考え
られている。そこで、県では佐渡の暮らしを活性化し、地域の振興をはかるためには大
都市直行便を実現する必要があると考えている。例えば、羽田空港では小型機の乗り入
れを制限しているため、乗り入れを実現するためには最低でも 60 人乗り以上の機材の離
着陸ができる空港整備が必要であり、そのために平成4年7月に佐渡空港拡張整備計画
(以下、「整備計画」という。)を立案し、事業化を目指している。
図 3-1-19 佐渡空港のイメージ図
(出典:県港湾空港交通局ウェブサイト
URL:http://www.pref.niigata.jp/kowankuko/gateway/04kuko/sadoseibi.html より転載)
92
表 3-1-48 現空港と整備計画の比較
現空港
佐渡空港拡張整備計画
種別
第3種空港
第3種空港
着陸帯
長さ 1,010m×幅 60m
長さ 2,120m×幅 150m
滑走路
長さ 890m×幅 25m
長さ 2,000m×幅 45m
エプロン
面積 2,160 ㎡
面積 27,000 ㎡
全体面積
148,100 ㎡
約 570,000 ㎡
対象機材
アイランダー(9人乗)
B737 等(小型ジェット機)
県では、この佐渡空港拡張整備による大都市直行便の実現の成果により以下のような
効果を見込んでいる。
(ⅰ)大都市との直結による利便性の向上
(ⅱ)観光客の増大(市場拡大・通年観光)
(ⅲ)農水産物の販路拡大
(ⅳ)企業誘致の可能性の創出
(ⅴ)雇用の創出
(ⅵ)若者の島内定着チャンス増大
2006 年 11 月現在、この整備計画は、空港の整備予定地の地権者全員の同意が得られず
停滞している。整備計画を事業化するためには、整備予定地の手当て、すなわち地権者
全員の同意が必要であり、県費を直接投入することができないため、先に述べたような
公社による先行取得といった手法が用いられている。
③
残高の推移
平成 17 年度末現在の公社への貸付金額は 233,789 千円であり、貸付金の実施年度別金
額及び監査手続の対象とした金額は以下の通りである(平成 17 年度新規貸付及び過去の
土地の先行取得に関する貸付を監査対象とした)。
93
表 3-1-49 佐渡空港整備事業にかかる貸付金の実施年度別金額
(単位:千円)
貸付年度
新規貸付金額
うち監査対象金額
H8
33,179
33,179
H9
35,774
35,774
H10
34,355
33,699
H11
120,385
119,261
H12
1,978
-
H13
1,978
-
H14
1,979
-
H15
1,976
-
H16
1,976
-
H17
206
206
合計
233,789
222,119
(注)貸付年度は契約年度ではなく、資金交付年度を意味している。
(2)佐渡空港検討委員会とそれに伴って実施されたアンケート調査
県は、佐渡地域の魅力ある地域づくりに向けて佐渡空港が果たすべき役割や、現在の
佐渡空港の利活用を含めた空港のあり方について検討するため、外部有識者を中心とし
た佐渡空港検討委員会を平成 17 年9月に設置し議論を行ってきた。この議論の中で佐渡
市民、佐渡島内事業所及び旅行者に対するアンケートが実施され、アンケートの空港整
備の可否に関する質問結果の概要は次の通りであった。
アンケート対象者は、無作為に抽出された佐渡市民 6,000 名(有効回答 2,434 人:回
答率 40.6%)
、同じく無作為に抽出された佐渡島内事業所 400 社(有効回答 221 社:回答
率 55.3%)、旅行者(回答数 291 人)である。その結果によれば、佐渡市民の概ね6割が
2,000 メートルの滑走路が必要と考え、不必要と考える約 16%を大きく上回った。必要
と考える主な理由は、大都市圏との時間短縮がトップで、以下観光客の増加、佐渡の特
産品が新鮮なまま輸送でき、産業の発展が期待できると続いている。不必要と考える理
由については航空需要(利用客)が見込めないという意見がトップであった。
また、佐渡の事業所を対象に行った同じアンケートでは、回答者の4分の3にあたる
回答者は 2,000 メートル滑走路が佐渡の将来には必要と考え、その理由は佐渡市民と同
じ利便性・観光客の増加・輸送の便が改善されることによる産業の発展の順番であった。
旅行者については、仮に飛行機が飛んだ場合の料金設定に対するアンケートであるた
め、記載は省略する。
上記のように、アンケート結果によれば、佐渡市民、島内事業所は佐渡空港拡張に対
94
して肯定的である。
このようなアンケート結果や委員会の議論を経て、同委員会は平成 18 年3月に「佐渡
空港の活性化に向けて」を報告した。この答申によれば、以下のような事柄が取り上げ
られている。
ア
滑走路長 890 メートルの現空港による活性化には限界あり
現空港での機材は最大で 19 人乗りクラスであり、60 人乗り以下の小型機規制を行って
いる羽田空港への乗り入れが不可能であることや、通常 30~40 人を対象に企画される旅
行商品の誘致が困難なことが挙げられ、貨物輸送についてもまとまった量の輸送が困難
であることから、現空港による活性化には限界があると判断された。
イ
佐渡島民の多くが大都市直行便を希望
アンケート結果によれば、6割~7割の回答者が 2,000 メートル滑走路が必要と回答
し、そのうちの8割、すなわち回答者全体の5割の人がその理由として、大都市との直
行便による時間短縮、利便性の向上を挙げている。
ウ
大都市への直行便実現に向けて課題の存在
(ア)航空会社の就航同意
路線開設に向け事前に航空会社からの就航同意を得ることが課題である。航空会社か
ら就航同意を得るためには他の空港で行われた航空会社への搭乗率保証や運賃助成など
による利用者確保に向けた支援策の実施が必要である。就航同意が得られない場合には、
実現には困難が伴うが、地元を拠点とする航空会社設立の検討も必要である。
また、現在、羽田の発着枠には余裕がなく、2009 年に拡張が実現した後に発着枠を確
保することになるが、簡単に確保できる保証はないと報告されている。
(イ)空港の運営コスト
空港の運営についても、主な収入が着陸料しか見込めない。従って、効率的な経営を
行ったとしても現在より増加すると思われる運営コストを県と佐渡市でどのように担っ
ていくのかという課題があると報告されている。
(ウ)観光資源の再構築や積極的な情報発信
佐渡観光客の入込数は、平成3年の 121 万人をピークに年々減少している。今後、大
都市との直行便の利用者となりうる佐渡への観光客を増加させていくためには、島内の
観光資源の再構築や二次交通の整備等、さらにはリピーターを呼ぶことのできるおもて
なしの絶え間ない実践と情報発信など、観光需要の堀り起こしに向けた取り組みを行っ
95
ていく必要があると報告されている。
なお、直近 10 年間の佐渡観光客入込数は以下の通りであり、逓減している。平成 17
年度は回復しているが、平成 16 年度は中越大震災の影響もあって大きく入込数が減少し
たことから、今後入込数が回復に向かうかどうかは不透明と言わざるを得ない。平成4
年において立案した計画では航空旅客以外の旅客入込数が増加すると見込んでいた状況
からすると、計画立案時とは大きく乖離している状況を指摘しなければならない。
表 3-1-50 佐渡観光客入込数の推移
(単位:千人)
県内客
県外客
合計
H8年度
301
712
1,013
H9年度
301
649
950
H10 年度
289
623
912
H11 年度
296
610
906
H12 年度
283
570
853
H13 年度
277
551
828
H14 年度
269
510
779
H15 年度
268
468
736
H16 年度
252
406
658
H17 年度
264
407
671
表 3-1-51 平成4年実施年間航空旅客需要予測値
(単位:千人)
平成 12 年度
佐渡~東京
平成 17 年度
平成 22 年度
191
217
244
71
85
101
194
226
262
456
528
607
その他入込数
1,511
1,676
1,854
入込数合計
1,967
2,204
2,461
~名古屋
~大阪
航空旅客需要合計
(注)その他入込数は、入込数合計から航空旅客需要合計を差し引くことによって監査人が推計した。
96
(3)実施した手続
県と公社において次の手続を実施した。
(ⅰ)県(港湾空港交通局空港課)における手続
・整備計画の概要について説明を受けた。
・公社の先行取得を依頼した経緯について説明を受けた。
・表 3-1-49 に示した「監査対象金額」の貸付金について関連する契約書類を閲覧した
(期限延長しているものについては、変更に係る契約書類の閲覧を含む)。
・公社が先行取得した不動産の売買契約書を閲覧した。
(ⅱ)公社における手続
・佐渡空港整備事業用地等の先行取得に関する貸付金の概要について説明を受けた。
(4)監査の結果と意見
① 意見
【意見①】土地先行取得の危険性について
県は、これまで述べてきたように整備予定地の地権者の同意を得るために交渉を行っ
ている段階であり、交渉の過程で先行取得した土地も存在する。一番早く取得したもの
は平成8年であり既に 10 年経過している。このことは、土地という不動産を長期間保有
するということであり、地価の変動というリスクを負担するという問題を抱えることに
なる。
参考として、最初に先行取得を行った平成8年から平成 18 年までの県の住宅地の平均
変動率の推移を地価調査に基づいて集計した結果と平成8年を1とした場合の公示価格
の推移を示す。
97
図 3-1-20 新潟県の住宅地地価の変動率
1%
1.1
0%
1
-1%
0.9
-2%
0.8
平均変動率
累積変動率
-3%
0.7
-4%
0.6
-5%
0.5
-6%
0.4
H9
H10
H11
(出典:平成 18 年度
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
新潟県地価調査のあらまし)
上記によると、平成8年を1とした場合の平成 18 年時の地価は 0.76 となっている。
県の先行取得時の価格は移転補償金等も含んでいると考えられるため、単純に比較する
ことには異論もあろうが、仮に県の取得価格を当時の時価とした場合に、それぞれの土
地取得時期を考慮して時価の変動率から試算すると 53 百万円程度の含み損が発生してい
ると見込まれる。これは先行取得による追加費用であり、避けられた負担であったと考
えられる。先行取得を行う際にこのような地価変動のリスクが考慮されていたかは不明
であるが、先行取得はリスクの高いものであり、仮にこれを行うとしても慎重な判断が
必要である。
【意見②】先行取得時における経済合理性検証の実施について
整備計画は、整備予定地の地権者全員の同意が得られていないことから事業化されて
いない現況にある。平成4年において、事業化に先立った調査が行われ、航空旅客の需
要がどの程度あるのか、その需要に見合った空港はどの程度の規模なのか検討を行って
いる。
当時の計画に従った試算によれば建設費だけで 150 億円を超える事業費が見込まれて
いる。このうち、佐渡空港の場合は国庫から 80%の補助を受けることができる。しかし、
20%負担としても県は 30 億円を超える支出が見込まれる。佐渡空港の拡張整備によって
98
多くのメリットがあることは理解できるが、その経済効果がどの程度であって、投資額
に見合うものであるかどうかは試算されていない。さらに、空港供用後の維持管理費が
どの程度掛かるかの試算もされていない。
県の主張によれば、「空港整備事業の費用対効果分析マニュアル Ver.4」(平成 18 年
3月
国土交通省航空局)に従って、新規事業採択時点でビーバイシー分析(費用対効
果分析)を行い、事業化の可否を最終決定するとのことであった。
しかしながら、形式的には事業化されていないものかもしれないが、この整備計画に
ついては、既に貸付金として県費が支出され、公社を通じて事業用地を先行取得してい
る。このように、貸付金による先行取得を行うケースであっても、県費が投入されるも
のであるから、まず投資判断があるべきであり、今後このような事業を行うにあたって
は、事前の投資判断が必要であると考える。
99
6-3 道路事業用地取得資金貸付金【土木部
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
用地・土地利用課】
県が公社に対して道路事業用地の先行取得を要請し、その取得資金を県が公社に貸し
付けるものである。
イ
根拠法令等
公社による用地の先行取得は公有地の拡大の推進に関する法律を根拠とし、具体的に
は県と公社が先行取得契約を締結するとともに、資金貸付契約に基づき貸付を実行して
いる。
②
ア
制度の仕組み
貸付業務の流れ
資金の流れは県の一般会計が土地基金から借り入れ、それを公社に貸し付ける。公社
はその資金で地権者から用地を取得し、県に引き渡すことになる。基本的な流れは、「5
物流拠点構築事業用地取得貸付金」の貸付業務フローと同様である。
イ
先行取得契約
平成 17 年度末で残高のある貸付金は、平成 14~15 年度の泉町羽黒線都市計画道路用
地に係る先行取得契約に基づくものである。そのうち平成 15 年度の契約内容は次のとお
りである。公社は平成 15 年度に事業用地を取得し、県はそれを4年間にわたって再取得
していくものとなっている。
表 3-1-52 平成 15 年度の先行取得契約の概要
項
目
内
契約日
・平成 15 年 9 月 24 日
目
・都市計画道路事業
的
容
泉町羽黒線工事に必要な用地の先行取得
・平成 15 年度に事業用地を県の名義で取得すること
業務内容
・事業用地取得に必要な補償金額の算定、用地交渉、契約の締結、登記及び補償金の支
払並びにこれらに付帯する業務
・事業対償用地の取得業務
用地の再取得
用地の引渡
・県は公社の先行取得用地を平成 16 年度以降4年度で各年度の予算措置に応じて取得
・公社は各年度の支払限度額に対応する土地を県に引き渡す。
(出典:泉町羽黒線都市計画道路事業に伴う用地の先行取得に関する契約書より作成)
100
ウ
貸付契約
前表の先行取得契約に基づき、2回に分けて貸付契約が締結されている。その内容は次
のとおりであり、4年後の平成 19 年度末が償還期限となっている。
表 3-1-53 平成 15 年度先行取得契約に基づく貸付契約の概要
項
目
内
容
契約日
・平成 15 年 10 月 27 日
目
・泉町羽黒町線都市計画道路事業の土地を取得する業務資金
的
・平成 15 年 12 月 15 日
貸付金額
ここでの記載省略
貸付期間
・平成 15 年 10 月 31 日~平成 19 年 10 月 31 日
・平成 15 年 12 月 26 日~平成 19 年 10 月 31 日
貸付利率
・無利子
・無利子
(出典:新潟県土地開発公社事業資金貸付契約書より作成)
③
貸付金の実績
次表のように、平成 13 年度から平成 15 年度の3年間で 1,637 百万円の貸付が実行さ
れ、平成 16 年度末までに 1,473 百万円が償還されている。平成 17 年度の償還額は 116
百万円で、年度末の残高は 47 百万円となっている。平成 16 年度以降、新規の貸付は行
われていない。
表 3-1-54 道路事業用地取得資金貸付金の実績(H17 償還に係るもののみ)
(単位:千円)
貸付年度別対象事業
H13
H14
H16までの
貸付額
償還済額
H16末残高
H17償還額
H17末残高
住吉上館線地方特定道路整備
189,149
147,793
41,356
41,356
-
柳島信濃坂線地方特定道路整備
199,795
173,000
26,795
26,795
-
その他道路・街路
283,543
283,543
計
672,487
604,337
68,151
68,151
-
住吉上館線地方特定道路整備
70,490
55,207
15,284
15,284
-
泉町羽黒町線都市計画道路
44,622
20,496
24,126
18,767
その他道路・街路
591,999
591,999
-
-
計
707,111
667,701
39,410
34,050
5,360
87,433
31,288
56,146
14,250
41,896
170,036
170,036
-
-
-
257,469
201,324
56,146
14,250
41,896
1,637,068
1,473,361
163,706
116,451
47,255
泉町羽黒町線都市計画道路
H15
当初
その他街路
計
合計
(出典:県及び公社の資料より作成)
101
-
-
-
5,360
-
(2)実施した手続
県と公社において次の手続を実施した。
(ⅰ)県(用地・土地利用課)における手続
・平成 17 年度の公社からの償還に係る調定決議書や土地基金への支出命令決議書、土
地基金側の調定決議書等の文書を閲覧した。
・公社による先行取得に関する県の方針等について担当課から説明を受けた。
(ⅱ)公社における手続
・県からの借入金の概要及び実績に関する資料を閲覧するとともに、その内容につい
て説明を受けた。
・平成 14~15 年度の泉町羽黒町線都市計画道路に係る先行取得契約書及び貸付契約書
を確認した(平成 17 年度に残高のあるもののみ)。
・また、同貸付金について、平成 14~15 年度の借入に係る収入調定書などの文書、及
び平成 17 年度の償還に係る支出決議書等の文書を閲覧した。また、それらと借入金
台帳を照合した。
(3)監査の結果と意見
実施した手続の範囲内においては、特に指摘すべき事項は見られなかった。
[補足事項]
新潟県土地開発公社への貸付は、本報告書の「4
中条中核工業団地造成事業貸付金」
から「6-3 道路事業用地取得資金貸付金【土木部
用地・土地利用課】のほか、警察
本部の村上警察署建設事業貸付金も平成 17 年度末に残高がある。他の貸付金と同様に公
社にて概要を把握したところ、監査対象となる平成 17 年度には貸付金の償還等の動きは
なかった。また、当初の契約よりも用地の再取得が1年間遅れたものの、既に平成 18 年
4月に県が用地を再取得し、公社から貸付金が全額償還されていた。警察署用地として
の目的が明確であることもあり、特に問題はないものと判断されたので、警察本部を監
査対象から除いている。
102
7 新潟県勤労者生活安定資金貸付金
(1)概要
① 目的
新潟県労働金庫(以下、
「労働金庫」という)が行う勤労者生活資金融資事業の原資を
貸付けることにより、勤労者向けの生活資金融資制度の充実強化と適正な管理運営を行
い、県内の中小企業従事者及び中越大震災の被災者の生活安定の増進に貢献することを
目的としている。
当該融資事業は、中小企業従事者と中越大震災の被災者に区分して融資内容・条件が
設定されている。
②
根拠法令等
新潟県勤労者生活安定資金貸付金要綱
新潟県勤労者生活安定資金貸付金取扱要領
③
予算額(平成 17 年度)
50,000 千円
(中小企業従事者向け 25,000 千円、中越大震災の被災者向け 25,000 千円)
④
貸付の概要
表 3-1-55 貸付の概要一覧
貸付先
労働金庫
年度の期首に勤労者生活安定資金貸付金の原資として県から労働金庫に
貸付を行う
貸付方法
労働金庫においては県からの貸付金を原資として、その2倍の額(平成
17 年度であれば 100,000 千円)を限度として融資を行う(⑤制度のスキ
ーム図を参照)
貸付金額
50,000 千円(平成 17 年度)
貸付利率
無利息
償還期間・方法
財源
債権保全等
遅延利息
1 年間(平成 16 年 4 月 1 日~平成 17 年 3 月 31 日)
年度末一括償還
県 100%(一般財源)
特になし
特に規定されていない
労働金庫における融資の分類は以下のとおりである
分
その他
類
融
中小企業従事者向け
中越地震被災者向け
103
資
名
称
くらしのローン
災害ローン
震災ローン
震災離職者ローン
図 3-1-21 制度のスキーム図
県 費
新潟県(一般会計)
貸付
返済
労 働 金 庫
貸付
返済
代位弁済
保証料
利用者
利用者
利用者
保証
保 証 機 関(注)
(注)(社)日本労働者信用基金協会又は(財)新潟県労働者信用基金協会
(2)貸付の状況
① 過去5年間の貸付金推移(県→労働金庫)
表 3-1-56 過去5年間の貸付金推移表
(単位:千円)
年
融資名
くらしのローン
災害ローン
震災ローン(注 1)
震災離職者ローン(注 1)
離職者生活ローン(注 2)
合
計
度
H13
70,000
10,000
-
-
5,000
85,000
H14
47,500
2,500
-
-
-
50,000
H15
47,500
2,500
-
-
-
50,000
H16
H17
25,000
25,000
25,000
25,000
-
50,000
-
50,000
(注1)平成 16 年 10 月の中越大震災後に新設されている。平成 16 年度当初は、くらしのローン 47,500
千円、災害ローン 2,500 千円の貸付であったが、予算の見直しにより、災害ローン、震災ローン
及び震災離職者ローンを一体として 25,000 千円の貸付に変更されている。
(注2)離職者生活ローンは平成 13 年度で廃止されている。
104
②
貸付金に係る収入未済額
該当事項なし。
③
労働金庫における融資状況(利用率の低下について)
近年労働金庫における当該制度の利用率が年々減少する傾向にある。労働金庫におけ
る融資状況は以下のとおりである。
表 3-1-57 労働金庫における融資状況推移
(単位:千円)
種
別
H13
H14
H15
H16
くらしのローン
51
37
32
15
新規貸付
震災ローン
-
-
-
2
(件数)
合
計
51
37
32
17
くらしのローン
34,740
28,120
18,800
10,730
新規貸付
震災ローン
-
-
-
1,700
(金額)
合
計
34,740
28,120
18,800
12,430
くらしのローン
80,237
64,142
49,077
35,830
年度末残高
震災ローン
-
-
-
1,669
(金額)
合
計
80,237
64,142
49,077
37,499
県からの借入金(原資)
85,000
50,000
50,000
50,000
貸付枠…(B)
(注)
165,000
100,000
100,000
100,000
利用割合…(A)/(B)
48.6%
64.1%
49.1%
37.5%
(注)平成 13 年のみ県からの貸付原資と労働金庫の融資枠が同額となる離職者
ローンの枠が 5,000 千円含まれている。
H17
6
3
9
4,140
2,280
6,420
24,234
2,685
26,919
50,000
100,000
26.9%
図 3-1-22 貸付残高と新規貸付件数推移
貸付残高と新規貸付件数推移
(件数)
(千円)
60
90,000
貸付金残高
80,000
新規貸付件数
70,000
50
40
60,000
50,000
30
40,000
20
30,000
20,000
10
10,000
0
0
H13
H14
H15
105
H16
H17
④
労働金庫独自の商品との競合について
③で記載しているとおり、年々新規貸付件数及び貸付金残高が減少する傾向にある。
この原因は、従来の主な貸付が中小企業従事者向けの「くらしのローン」で、利用目的
が自動車購入資金であったが、近年は労働金庫自体のマイカーローンや市中銀行のマイ
カーローンの金利が低下したことにより、競合状態となっていることがあげられる。
以下には平成 17 年度に行われたローンの利用状況調査のデータ及び労働金庫の商品
(マイカーローン)の金利を掲載した。
表 3-1-58 自動車購入資金利用割合と金利比較
(単位:件,%)
年
度
項 目
くらしのローン
新規貸付件数…(A)
H12
自動車購入資金利用…(B)
H13
H14
H15
H16
48
51
37
32
17
25
20
9
1
2
比率…(B)/(A)
52.1
39.2
24.3
3.1
11.8
くらしのローン金利…(ⅰ)
3.30
3.10
3.00
3.00
3.00
マイカーローン金利…(ⅱ)
3.02
2.95
2.90
2.90
2.70
△0.28
△0.15
△0.10
△0.10
△0.30
差異…(ⅱ)-(ⅰ)
上記のとおり、近年は継続して労働金庫独自の商品であるマイカーローンの金利の方
が有利な状態が継続していたことから、自動車購入資金としてのくらしのローンの利用
が減少し、結果としてくらしのローン自体の利用が減少していることが伺える。
(3)実施した手続
(ⅰ)貸付制度の趣旨や仕組みについて県の担当者から説明を受けた。
(ⅱ)貸付制度の根拠となる貸付金要綱を確認した。
(ⅲ)平成 17 年度の貸付に係る事務手続書類を確認した。
(ⅳ)平成 17 年度の労働金庫ディスクロージャー誌を閲覧した。
(ⅴ)過去 10 年間の貸付実績の推移データを入手した。
(4)監査の結果と意見
① 意見
【意見①】貸付金原資の余剰について
県では労働金庫が融資する原資として、融資枠の 50%を貸付けることとしているが、次
のとおり労働金庫における融資残高と県から労働金庫への貸付金には相当程度の乖離が
発生している状況である。
106
図 3-1-23 労働金庫の融資枠と貸付金残高の比較
労働金庫の融資枠と残高比較
(千円)
180,000
貸付金残高(労働金庫)
貸付枠
160,000
140,000
120,000
100,000
80,000
60,000
40,000
20,000
0
H13
H14
H15
H16
H17
当該貸付金は、勤労者の生活安定資金貸付の原資を提供するものである。しかし、既
述のとおり、労働金庫自体の商品等との競合を主な要因として、年々利用実績が減少し
ており、特に近年は県の貸付金の一部しか労働金庫の融資原資として使われていない状
況にある。このことは、結果として融資原資としての貸付金に余剰が発生している状況
を示唆しており、平成 17 年度の貸付金残高を考えれば必要貸付金額は 13,459 千円程度
となる(よって、36,541 千円程度が余剰貸付となる)。県全体での資金効率を考えれば、
過去の実績等を十分勘案して必要となる貸付を行うことが県の財政運営効率化のために
も必要である。
また、現状の労働金庫の融資残高推移や労働金庫独自の商品との競合状況を見る限り、
制度の存続自体も含めて検討する必要があると考える。
なお、県としても、このような状況を踏まえて、抜本的な制度の見直しを検討してい
るところでもある。
107
8 育児・介護休業等貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
本制度は、育児休業又は介護休業を取得する労働者、若しくは育児、介護のために勤
務時間の時間短縮制度(以下、「時短制度」という。)を利用する労働者に対し、休業中
又は時短制度利用期間中の生活費等の資金を低利融資することにより、積極的な休業の
取得と時短制度の利用を促進させ、もって労働者福祉の向上、雇用の継続を図ることを
目的としている。
イ
経緯
平成5年度から開始された制度であり、平成 13 年度から介護休業部分が加わり、現在
の内容となっている。
ウ
根拠法令等
県単独の制度であり、新潟県育児、介護休業等貸付金要綱(以下、「貸付金要綱」とい
う。)が根拠となる。
②
ア
制度の仕組み
貸付対象者
貸付金の対象者は次の条件に該当する者である。
(ⅰ)県内に居住又は勤務する者
(ⅱ)同一勤務先に1年以上勤務する者
(ⅲ)次のいずれかに該当する者
・1歳に満たない子を養育するため、育児休業を取得する者
・要介護者を介護するため、1ヶ月以上介護休業を取得する者
・育児又は介護のために時短制度を利用する者(ただし、育児の場合は子が3歳に達
するまで)
108
イ
貸付条件
表 3-1-59 貸付条件
項目
貸付条件
資金使途
・育児又は介護休業中、若しくは時短制度利用期間中の生活費等
貸付金額
・10 万円以上 100 万円以内(1万円単位)
貸付利率
・県と金庫が協議の上、別途定める。H17 は 1.7%固定
返済期間
・6年以内(据置期間最長1年を含む)
償還方法
・元利均等毎月償還(ボーナス併用も可)
債務保証
・組織労働者は社団法人日本労働者信用基金協会、未組織労働者は財団法人新潟県労働
者信用基金協会の保証を付す。保証料は労働金庫の負担。
(出典:新潟県育児、介護休業等貸付金要綱)
ウ
貸付業務の流れ
図 3-1-24 のように、県から新潟県労働金庫に預託し、労働金庫はそれを原資(県と労
働金庫が2分の1ずつ)として貸付対象者に貸付を行う仕組みとなっている。労働金庫
は対象者からの申込みを受け付けると、自ら審査して貸付を実行し、また、償還を受け
ることになる。
図 3-1-24 育児、介護休業等貸付金業務フロー
⑦債務保証
貸付対象者(労働者)
③借入
申込み
⑤貸付
決定
⑨償還
⑧貸付
④審査
⑥保証料
新潟県労働金庫
①
預託
契約
⑩貸付状
況報告
②
預託
(社)日本労働者信用基金協会
(財)新潟県労働者信用基金協会
⑪預託金
償還
県(一般会計)
エ
預託金
預託金は年度末にいったん全額引き上げて、4月1日に改めて当該年度9月末の貸付
金予定残高分の預託金を預託する。あとは四半期ごとの新規貸付実績に基づいて追加預
109
託している。預託の種類は平成 17 年度から決済用預金となり、預託金利も次表のように
無利子となっている。
表 3-1-60 育児、介護休業等貸付金の貸付利率と預託利率
(単位:%)
H13
H14
H15
H16
H17
貸付利率
1.8
1.8
1.8
1.7
1.7
預託利率
0.07
0.01
0.001
0.001
0.0
(出典:県資料より作成)
オ
債務保証
貸付対象者は借り入れに際して(社)日本労働者信用基金協会等の債務保証を受けて
おり(保証料は労働金庫負担)、県は貸倒れのリスクを負わない形となっている。
③
ア
貸付金の実績
新規貸付、貸付残高の推移
平成 12 年度を除いて、毎年5~10 件、3,000~10,000 千円程度の新規貸付となってお
り、平成 17 年度末残高は 15,536 千円である。なお、いずれも育児休業であり、介護休
業を目的とする実績はない。
表 3-1-61 育児、介護休業等貸付金の実績
(単位:千円)
年度
H8
新規貸付件数
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
8
11
6
8
27
10
7
5
10
8
新規貸付額
7,100
8,750
5,300
7,300
22,280
8,100
5,900
3,300
9,640
5,700
貸付残高
不明
不明
不明
不明
不明
25,289
20,062
14,157
15,979
15,536
預託決算額
12,287
10,690
10,678
10,113
10,584
16,317
16,097
12,942
9,288
8,635
預託予算額
36,000
36,000
30,000
30,000
30,000
40,000
30,000
20,000
20,000
20,000
(出典:県資料より作成)
イ
預託額の推移
また、預託額は、20,000~40,000 千円の予算に対して 10,000~16,000 千円程度の決算
額で推移し、
平成 16 年度の決算額から 10,000 千円を下回っている。平成 17 年度は 20,000
千円の予算に対して 8,635 千円の実績である。
(2)実施した手続
(ⅰ)貸付制度の趣旨や仕組みについて県の担当者から説明を受けた。
(ⅱ)貸付制度の根拠となる貸付金要綱を閲覧した。
110
(ⅲ)平成 17 年度の預託に係る事務手続書類(預託契約書、支出負担行為・支出命令決議
書、請求書、収入調定・収入決議書等)を閲覧した。
(ⅳ)平成 17 年度に労働金庫から提出された貸付状況報告書等を閲覧した。
(ⅴ)貸付及び預託の実績を確認した。
(3)監査の結果と意見
① 意見
【意見①】貸付制度の見直しに向けた留意点について
最近の新規貸付実績は、前述のように年5~10 件、3,000~10,000 千円程度にとどま
っている。例えば、平成 17 年の県内出生数 18,779 人を母集団と仮定した場合、貸付金
の新規利用実績8件(平成 17 年度)は 0.04%にすぎない。また、県内の要介護(要支援)
認定者数 88,543 人(平成 16 年度)に対して、本貸付金の利用はこれまでゼロである。
県が入手している他県の実績を見ても利用は低調であり、むしろ県の実績は多い部類
に入る(県の貸付利率は極端に低いわけではない)。貸付制度の廃止を含めて、見直しを
検討している県も見られるようである。
また、全国の労働金庫では、少子化対策の一環として平成 18 年度に「ろうきん育児支
援ローン」を新設している。次表のように県の育児、介護休業等貸付金とほぼ同様の内
容となっており(貸付利率は県より 0.2 ポイント低い)、現状では同じ労働金庫が類似し
た2つの貸付制度を利用者に提示していることになる。
表 3-1-62 育児、介護休業等貸付金と、労働金庫新制度「ろうきん育児支援ローン」の比較
項目
融資対象者
育児、介護休業等貸付金
ろうきん育児支援ローン
・県内に居住又は勤務し、同一勤務先に1
・育児期間中(妊娠~小学校入学前)の子
年以上勤務する者で、育児休業・介護休業
がいる勤労者(育児休業者含む)
取得者あるいは育児・介護のための時短制
度利用者
資金使途
融資限度額
・育児・介護休業中、若しくは時短制度利
・育児期間中の子育て費用
用期間中の生活費等
・育児休業中の生活資金の補填
・10 万円以上 100 万円以内
・100 万円
融資金利
・1.7%固定(H18)
・1.5%固定
融資期間
・6年以内(据置期間含む)
・5年以内(据置期間含む)
据置期間
・1年以内
・育児休業中のみ可
・日本労働者信用基金協会、新潟県労働者
・日本労働者信用基金協会
保
証
信用基金協会
・平成 18 年 7 月 14 日に新設され、平成 19
備
考
-
年9月末まで取扱(融資枠5億円)
。その後
は実績等を勘案して検討。
(出典:県資料より作成)
このような状況を踏まえて、県は抜本的な制度の見直しを検討している。
111
その際には、利率引き下げ等の条件緩和や PR 方法の見直しによる利用促進の可能性、
あるいは福祉関係の貸付金など他の制度での代替可能性などだけではなく、本制度の本
来の目的を再認識し、その達成に向けた中長期的な視点からの検討も提案したい。
貸付金要綱第1条の目的では、積極的な休業の取得と時短制度の利用促進が掲げられ
ている。今後、労働者福祉や雇用継続、あるいは少子化対策等の面から見ても育児休業
の取得は促進されるべきであり、また、介護休業についても高齢社会の進展に伴って潜
在的な需要はますます拡大するはずである。いずれもこれまでの実績の有無に関わらず、
今後、県が推進すべき政策の一つと考えられる。
平成 18 年7月に策定された「新潟県「夢おこし」政策プラン」においても、共同参画
社会の実現の指標の一つとして育児休業取得率が設定され、次表のような目標が掲げら
れている。担当は県民生活・環境部であり、部門は異なるが、本貸付制度も同じ政策目
標の達成に寄与できる制度である。
関連する政策目標を達成するための施策体系において、本貸付制度がどのような位置
づけにあり、今後、どのような役割を果たすことができるのかを十分見据えた上で、貸
付制度の見直しを行う必要がある。
表 3-1-63 「新潟県「夢おこし」政策プラン」における育児休業取得率の現状と目標
性別
平成 17 年度
平成 22 年度
男性
0.7%
3%程度
女性
81.4%
85%程度
育児休業取得率
(注)男性の目標値は育児のために取得した年次有給休暇を含める。
112
9 工業用水道事業貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
栃尾の工業用水道建設費用に係る財源の一部として起債していた債券の償還(借換)
として、一般財源より貸付を行ったものであり、相手方は県企業局である。
②
契約関係
県は、平成2年度において、2度に分けて合計 558,612 千円の無利子貸付を行い、平
成3年度より平成 22 年度まで均等返済を行うこととされている。平成 17 年度現在、滞
留はなく、また、平成 16 年度には 5,645 千円の繰上償還があり、残高は 134,007 千円と
なっている。
(2)実施した手続
(ⅰ)事務の合規性
貸付事務の合規性を検証するため、以下の書類を閲覧した。なお、貸付時における契
約書は、県財務規則第 37 条第1項第3号の規定により作成が省略されていた。
・平成2年度の貸付における起案書
・新潟県企業管理者(当時)からの借入れに関する依頼書
・契約条件を定めた書類
また、平成 17 年度に実施された回収事務の合規性を検討するため、調定決議書及び収
納済通知書の一致を確かめた。
(ⅱ)新潟県監査委員による決算審査意見書を受けて
新潟県監査委員は、平成 17 年度に実施した新潟県工業用水道事業会計の決算審査にお
ける審査の意見として、次のような記載を行っている。
平成 17 年度の工業用水道事業全体の純利益には、
「栃尾工業用水道の帳簿外債権計上
に伴う特別利益約1億円が含まれている」とし、「栃尾工業用水道においては、日常管理
委託費用の大幅な削減を行ったが、新規の需要見込みはなお極めて厳しい状況」と指摘
している。
そのため、貸付金の回収可能性の判断について県の見解を糺したところ、企業局に貸
し付けているものであり、回収に問題はないとの回答を得、また、企業局が開示してい
る工業用水道事業会計の決算書において回収可能性を検討した。
(3)監査の結果及び意見
実施した手続の範囲内においては、特に指摘すべき事項は見られなかった。
113
10 新潟県地域改善対策職業訓練受講資金等貸付金
(1)概要
① 目的
地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律に規定される対象地
域に居住する同和関係者で経済的な理由により公共職業能力開発施設における職業訓練
の受講が困難なものに対する入校準備及び受講を容易にするために貸付を行うことを目
的とした制度である。
当該制度については平成8年度において廃止されており、現在は貸付金の債権管理及
び返還事務が行われている。当該制度に替わる制度として平成9年度以降は一般対策で
ある技能者育成資金貸付(雇用・能力開発機構)にて対応が行われている。
②
根拠法令等
地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律
職業能力開発促進法
新潟県地域改善対策職業訓練受講資金等貸付条例(平成8年度廃止)
新潟県地域改善対策職業訓練受講資金等貸付条例施行規則(平成8年度廃止)
地域改善対策職業訓練受講資金等貸付要領(平成8年度廃止)
③
貸付の概要
表 3-1-64 貸付の概要
県内の対象地域に居住する同和関係者又はその子弟であって、低所得世帯に属し、
経済的な理由により公共職業能力開発施設の行う次のいずれかの職業訓練を受講
する者
貸付対象者
・
専修訓練課程の普通職業訓練
・
普通課程の普通職業訓練
・
短期課程(職業に必要な相当程度の技能及びこれに関する知識を習得さ
せるためのものに限る)の普通職業訓練のうち、職業能力開発促進法施
行規則別表第 4 に定めるところにより行われるものその他訓練期間が 2
ヶ月以上で、かつ、訓練時間が 150 時間以上のもの又は自動車運転科に
係るもの
・
専門課程の高度職業訓練
職業訓練受講資金等貸付申請書を申請者の居住する対象地域の属する市町村の長
貸付方法
又は当該地域を管轄する福祉事務所若しくは公共職業安定所の長を経由して提出
させ、貸付対象者の選考及び決定を知事が行う。
受講資金又は支度金の貸付限度額
貸付金額
貸付利率
償還期間・方法
・
受講資金
19,000 円(月額)
・
支度金
22,660 円(一時金)
無利息
受講終了後 20 年間元金均等年賦
114
県 1/3 国 2/3
財源
特になし
債権保全等
年 10.95%
遅延利息
返還が著しく困難であると認められる場合(条件は下記参照)には、申請により
貸付金額の 5/20 を限度として返還を免除することが可能。
その他
免除の経済的条件(次のいずれかに該当)
・
市町村民税所得割非課税世帯
・
全収入が生活保護基準の 1.5 倍の範囲内
(2)貸付の状況
表 3-1-65 貸付実績
項
目
金
額
等
備
貸付件数
1件
貸付金額
460 千円
平成 17 年 3 月末残高
230 千円
返還免除額
230 千円
考
制度存続期間中 1 件のみ
平成 6 年度
241 千円
平成 7 年度
219 千円
平成 8 年度及び 13 年度に返還免除
が行われている。
(3)実施した手続
(ⅰ)制度の概要について、県の担当者より説明を受けた。
(ⅱ)根拠法令等に関する資料を入手し閲覧した。
(ⅲ)平成 17 年度の貸付金残高データを入手した。
(ⅳ)返還免除に関する規定及び現状について説明を受けた。
(4)監査の結果と意見
債権管理及び返還事務の事務手続については規則等に基づいて行われており、実施し
た手続の範囲内においては、特に指摘すべき事項は見られなかった。
115
11 株式会社新潟ふるさと村経営改善資金貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
株式会社新潟ふるさと村の経営安定を図ること。
イ
経緯
株式会社新潟ふるさと村は県と共同で「新潟ふるさと村」を建設・運営する目的で昭
和 63 年に設立された第三セクター(出資比率:県 30%、市町村 20%、民間 50%)であ
る。
「新潟ふるさと村」は、県を象徴する観光拠点施設として、県の観光と物産の振興を
図るとともに“ふるさと”に対する県民意識の高揚を通じて地域の活性化を一層推進す
ることを目的として、平成3年7月に新潟市山田に開設された施設であり、アピール館
とバザール館とで構成されている。
アピール館は「県の歴史、文化、観光情報の総合紹介施設」であり、その管理・運営
は社団法人新潟県観光協会が行っており、バザール館は「県特産品の販売と代表的味覚
の提供施設」として株式会社新潟ふるさと村が管理・運営している。
現在、施設の土地・建物は県の所有となっているが、「新潟ふるさと村」の土地・建物
の一部は当初、株式会社新潟ふるさと村が所有していた。
その後、株式会社新潟ふるさと村の経営が悪化し、平成6年1月にその支援策として
県が、株式会社新潟ふるさと村の保有する土地・建物を取得している。
これと同時期に県は、1,000,000 千円の無利子の貸付を行い、現在に至っている。
なお、株式会社新潟ふるさと村への貸付は契約上、期間を1年とする単年度の貸付で
あり、各年度末での残高は無いが、同額の貸付・回収が繰り返されており、平成6年以
降、平成 17 年度まで金額に変動はない。
②
ア
制度の仕組み
スキーム
株式会社新潟ふるさと村への貸付は上述のとおり単年度の貸付であり以下の方法で貸
付・回収が行われている。
(ⅰ)年度当初貸付、年度末回収。
(ⅱ)年度末に株式会社新潟ふるさと村が民間金融機関より借入れ、同日県へ返済。
(ⅲ)翌年度当初に県よりの貸付を受けて民間金融機関へ返済。
イ
契約関係
無利子の貸付であり、保証人及び担保は徴求していない。
116
③
ア
貸付金の実績
残高の推移
年度末では貸付残高はない。
イ
予算との関係
平成6年以降、毎年度定額の 1,000,000 千円で予算化し支出。
④
ア
株式会社新潟ふるさと村の概要
設立年月日:昭和 63 年7月 28 日
イ
資
ウ
業務の内容:
本
金:300,000 千円(県 30%、市町村 20%、民間 50%)
下記の事業を、県より土地・建物(バザール館)を使用許可されて実施している。
(ⅰ)県の農産物、畜産物、水産物並びにそれらの加工食品等の販売及び宣伝事業
(ⅱ)県の民芸品、工芸品、観光土産品等の販売及び宣伝事業
(ⅲ)県の広域観光に関する情報の収集、宣伝及び案内事業
(ⅳ)各種セレモニー、パーティー、会議、催事等の企画、設営、管理、運営の請負事業
など
エ
人員及び組織(平成 18 年3月 31 日現在)
役員
総務部
企画部
販売部
料理部
合計
11 名(8 名)
6名
5名
14 名
14 名
50 名(8 名)
(注)非常勤の役員数をカッコ内に内数で記載。上記のほか、臨時従業員・パート 44 名が在籍。
オ
財務状況
財務の状況は、次のとおりである。
117
表 3-1-66 過去5年間の業績の推移
(単位:千円)
科目
平成13年度
平成14年度
平成15年度
平成16年度
平成17年度
営業売上
1,192,603
1,145,870
1,098,161
994,219
1,067,750
営業原価
680,108
657,396
618,888
568,378
608,594
営業差益
512,494
488,474
479,272
425,841
459,156
営業費用
496,155
474,758
459,515
436,757
438,616
営業利益
16,339
13,715
19,756
△ 10,915
20,539
営業外収益
6,450
10,710
14,319
7,748
9,613
営業外費用
13,807
13,277
14,427
16,020
15,701
経常利益
8,982
11,148
19,648
△ 19,188
14,451
当期利益
8,402
9,255
15,758
△ 19,718
13,775
(単位:千人)
入館者数
1,749
1,757
1,744
1,711
1,767
表 3-1-67 貸借対照表(平成 17 年度末)
平成18年3月31日現在
(単位:千円)
資産の部
科目
流動資産
負債・資本の部
金額
科目
金額
292,200
流動負債
111,423
208,256
買掛金
56,020
売掛金
36,354
未払金
17,865
棚卸資産
44,186
預り金
29,400
その他
3,403
その他
8,137
固定資産
147,536
固定負債
1,030,140
現金・預金
(有形固定資産)
建物
その他
(無形固定資産)
電話加入権
その他
(投資等)
保険積立金他
資産合計
(125,774)
長期借入金
長期預り保証金
106,582
19,192
(12,830)
負債合計
1,000,000
30,140
1,141,564
資本金
300,000
欠損金
△ 1,001,826
873
11,956
(8,931)
8,931
439,737
資本合計
負債・資本合計
(注)一部、科目を集約して表示している。
118
△ 701,826
439,737
(2)実施した手続
株式会社新潟ふるさと村の財政状態及び経営の状況を分析し、貸付金の回収可能性に
ついて検討した。
また、県の貸付方法の妥当性についても検討した。
(3)監査の結果と意見
「(1)④ オ
財務状況」に記載のとおり、株式会社新潟ふるさと村は、中越大震災
等の自然災害の影響により赤字を計上した平成 16 年度を除けば、毎年1千万円前後の純
利益を計上している。
県が支援を開始した平成6年前後の赤字体質からは脱却し、一定の経営改善努力もう
かがわれるが、平成 17 年度末で 701,826 千円の債務超過の状態にあり、依然として財務
内容は厳しい状況にある。
また、借入金(県の貸付金)の返済能力は、各年度のキャッシュ・フローによるため、
その状況を見てみると次のとおりとなっている。
表 3-1-68 キャッシュ・フローの状況
(単位:千円)
区
分
金
額
税引前当期純利益
14,305
減価償却費
18,870
無形固定資産償却
12,192
売上債権減少(△増加)
△20,837
棚卸資産減少(△増加)
△7,728
仕入債務増加(△減少)
18,618
その他
6,112
営業活動によるキャッシュ・フロー
41,532
投資活動によるキャッシュ・フロー
△ 3,742
財務活動によるキャッシュ・フロー
-
現金及び現金同等物の増加額
37,790
現金及び現金同等物の期首残高
170,466
現金及び現金同等物の期末残高
208,256
119
「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、主たる営業活動によって、どの程度の資
金を獲得したかを示すものであり、平成 17 年度では 41,532 千円の収入超過となってい
る。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、有形固定資産の取得に充てられた金額で
ある。
また、「財務活動によるキャッシュ・フロー」は資金の調達又は返済の状況を示すもの
であるが、年度中に同額の借入・返済が行われているためゼロとなっている。
この結果、平成 17 年度では、現金及び現金同等物(預金)が 37,790 千円増加してい
る。
仮に平成 17 年度の営業キャッシュ・フローが継続し、それを全て借入金の返済に充て
たとしても、完済までには 24 年(1,000,000 千円÷41,532 千円/年=24.07 年)の期間を
要する状況である。
実際には設備の更新も必要であろうし、法人税等の税金の発生などもあるため、更に
長期間を要するものと考えられる。
以上より、株式会社新潟ふるさと村への県の貸付金については、その回収に懸念があ
ると言わざるを得ない。
早期の回収を図るためには、株式会社新潟ふるさと村の抜本的な経営(収益)改善が
必要であり、それに関連して気付いた点及び県の貸付方法についての意見は以下のとお
りである。
①
意見
【意見①】部門別損益について
平成 17 年度の営業収入の内訳は以下のとおりとなっている。
表 3-1-69 部門別営業収入
(単位:千円)
区
分
金額
直営店売上
988,952
(うち、物品販売売上)
(661,572)
(うち、飲食料売上)
(327,379)
管理運営料
35,134
その他売上
43,664
合
計
1,067,750
物品販売売上は、物産品等の売上であり、飲食料売上は直営飲食店(計6店舗)の売
上である。
120
管理運営料は、入居テナントの売上に連動する手数料収入であり、その他売上は、イ
ベント開催時の出店先売上にかかる手数料収入等である。
これに対して営業利益は 20,539 千円であり、仮に管理運営料とその他売上の合計
78,798 千円がなければ、58,259 千円の大幅な営業損失となる。
管理運営料収入及びその他売上に対応する費用がどれだけあるのか把握できないため、
一概には言えないが、直営店の営業損益は赤字である可能性が高い。
この点、株式会社新潟ふるさと村では物品売上原価、飲食材料費等は把握しているが、
部門別の営業損益計算は実施されていない。
このため、限られた時間と資料からではあるが、概ねの部門別損益計算を行ってみた。
一般的に部門別の営業損益計算は以下のように行う。
(ⅰ)部門別売上の把握。
(ⅱ)部門別売上に対応する原価、人件費等の直接費用の把握。
(ⅲ)役員報酬、管理部門の人件費等の共通費用の把握。
(ⅳ)(ⅲ)の共通費用を一定の基準で各部門に配賦。
これに従い、
「物品販売」、
「飲食料売上」、
「その他」の三部門に分けて計算してみると、
共通費用配賦前では、全ての部門で黒字であるが、共通費用を配賦すると、「物品販売」
「飲食料売上」は赤字となり、
「その他売上」の利益をもって黒字化している状況である。
現状の共通費用の大きさに比して、
「物品販売」及び「飲食料売上」は収益力が小さい
ことを示している。
表 3-1-70 部門別損益の試算結果
(単位:千円)
物品販売売上
売
上
飲食料売上
その他売上
合計
高
661,572
327,379
78,798
1,067,750
売上原価
462,357
136,073
10,163
608,594
直接人件費
53,195
81,031
0
134,227
その他経費
47,171
69,028
0
116,199
562,724
286,134
10,163
859,021
共通費配賦前利益
98,848
41,245
68,635
208,729
共
共通人件費
54,781
27,108
6,524
88,415
通
固定的経費
61,819
30,591
7,363
99,773
費
共通費計
116,600
57,700
13,888
188,189
△ 17,752
△ 16,454
54,747
20,539
直
接
費
直接費計
営
業
利
益
(注)「その他売上」に対応する直接費は、関連が明らかなもののみを記載している。
共通費は売上高を基準として各部門に配賦している。
121
直接費用の把握方法及び共通費用の配賦基準を何にするかによって、部門損益は大き
く変わってくるが、いずれにせよ共通費用の負担がかなり大きいものと考えられる。
全体としては共通費用を回収し、若干ではあるが利益を計上しているため、問題ない
ようにも考えられるが、県の貸付金の早期回収という観点からは、可能な限り多くの営
業利益(営業キャッシュ・フロー)が必要である。
そのためには正確な部門別損益計算(店舗別を含む。)を行い、各部門の売上高、粗利
率、人件費率等の妥当性を検討し、より収益力のある体制に改善する必要がある。
さらに共通費用は、その内容を検討して可能な限り削減すべきである。
参考までに、中小企業庁公表の「中小企業の財務指標」
(概要)
(平成 16 年1月~12 月
決算期データ)の指標を用いて、営業利益のシミュレーションを行うと次のとおりとな
る。
表 3-1-71 シミュレーション結果
(単位:千円)
物品販売売上
財務指標(注1)
売上高
実績(注2)
661,572
差異
661,572
売上総利益
27.1%
179,286
30.1%
199,215
19,929
販売費・一般管理費
26.1%
172,670
32.8%
216,967
44,297
うち人件費
13.2%
87,327
16.3%
107,977
20,650
1.0%
6,615
-2.7%
△ 17,752
△ 24,367
営業利益
飲食料売上
財務指標(注1)
売上高
実績(注2)
327,379
差異
327,379
売上総利益
65.1%
213,124
58.4%
191,306
△ 21,818
販売費・一般管理費
64.1%
209,850
63.5%
207,760
△ 2,090
うち人件費
34.8%
113,928
33.0%
108,140
△ 5,788
1.0%
3,273
-5.0%
△ 16,454
△ 19,727
営業利益
(注1)平成 17 年度の売上金額に財務指標の比率を乗じて算出している。
なお、物品販売売上は「小売業(売上高 5 億円超)」、飲食料売上は「飲食・宿泊業(売上
高1億円超、5億円以下)」の数値を使用している。
(注2)上記の部門別損益計算の数値を使用している。
122
【意見②】資金計画、経営改善計画及び借入金の返済計画について
株式会社新潟ふるさと村では、現在、資金計画が作成されておらず、営業に必要な資
金残高は把握されていない。
平成 18 年3月 31 現在では、「現金及び預金」が 208,256 千円あるが、このうちどのく
らいが余剰資金となっているのか定かではない。
借入金(県の貸付金)の早期返済のためには、資金計画を作成し、余剰となっている
部分は県に返済すべきである。
なお、中小企業庁公表の「中小企業の財務指標」
(概要)
(平成 16 年1月~12 月決算期
データ)によれば、短期の支払能力を示す当座比率(注)は以下のとおりであり、株式
会社新潟ふるさと村の当座比率は高いといえる。
表 3-1-72 当座比率の比較
(単位:%)
当座比率
「小売業(売上高5億円超)」
70.9
「飲食・宿泊業(売上高1億円超、5億円以下)」
46.4
株式会社新潟ふるさと村(平成17年度末)
219.5
(注)当座比率=(現金・預金+受取手形+売掛金+有価証券)/流動負債×100(%)
仮に当座比率の高い方の「小売業(売上高 5 億円超)」の比率及び株式会社新潟ふるさ
と村の平成 17 年度末の流動負債等を用いて現金・預金残高を試算すると以下のとおりと
なる。
流動負債 111,423 千円×当座比率 70.9%-売掛金残高 36,354 千円=42,644 千円
さらに、現在、経営改善計画及び借入金返済計画も作成されていない。
目標の設定がなければ経営改善は望めないため、早期に経営改善計画を作成するとと
もに、それに基づいた今後の借入金返済可能額の算定、返済計画の作成が必要である。
【意見③】県の貸付方法について
県の株式会社新潟ふるさと村への貸付は契約上期間を1年とする単年度の貸付である
が、当初の平成6年から平成 17 年度まで同額の貸付・回収が繰り返されており、実質的
には長期の貸付金である。
県によると、単年度貸付については、無利子・無担保貸付という事情を踏まえ、単年
度ごとの貸付で毎年必ず一度返済し、議会の議案として提出することで経営状態がわか
るという効果も見込んで行ってきたとのことであるが、年度末では貸付残高が残らない
ため、会計上、長期かつ固定化している実態が反映されていないという問題もある。
123
貸付金の実態を正確に示し、かつ契約によって定期的な回収を図るという観点から、
意見②に記載のとおり、株式会社新潟ふるさと村に返済計画を作成させ、それに基づい
た長期の貸付金契約とするのが望ましい。
124
12 新潟県観光施設改善資金貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
観光施設の改善に要する資金の融資を行うことにより、観光施設の整備を促進し、も
って県の観光の振興を図ること。
イ
根拠法令等
新潟県観光施設改善資金融資要綱
②
ア
制度の仕組み
スキーム
図 3-1-25 制度の仕組み・手続
①融資意見書
①融資認定申請
県
⑤融資実行報告
手
⑥事業完了届け
関
⑦預託
金 融 機
借
②融資認定通知
②融資認定通知
③融資申込み
④融資実行
融資対象者は、県内において2年以上引き続き同種の観光事業を行っている者又は季
節旅館の経営を行っている者で普通旅館を経営するために観光施設の整備を行おうとす
る者であり、金融機関の融資意見書を添えて県に融資認定申請を行う。
県は認定基準に基づき審査のうえ、対象者及び金融機関に認定通知を行い、対象者が
金融機関に融資申込みを行うと、融資が実行される。
県は、金融機関よりの報告に基づき預託金を計算し、決済用預金(無利子)により金
融機関に預託をおこなう。
なお、融資対象事業費は、以下の観光施設(風俗関連営業に係る施設を除く。)の整備
に要する資金(用地取得費を除く。
)である。
(ⅰ)宿泊施設(季節旅館を除くホテル、旅館等の施設及び一定の付属設備)
125
(ⅱ)宿泊施設の付帯施設(駐車場、スポーツ施設等)
(ⅲ)スキー場施設(リフト、ゲレンデ、駐車場、食堂及び売店)及び圧雪車
(ⅳ)舟遊施設(遊覧船、モーターボート等及び発着施設)
(ⅴ)休憩施設(ドライブイン、レストハウス等)
(ⅵ)従業員宿舎及びその付帯施設
(ⅶ)その他知事が適当と認める施設
イ
契約関係
(ⅰ)融 資 額: 対象事業費の 10 分の8以内の額とし、70,000 千円を限度とする。
(ⅱ)償還期間:
7年以内(据置期間2年以内を含む。
)
(ⅲ)融資利率:
保証協会及び基金協会の保証付のもの
③
ア
年利 1.9%(保証なし 2.4%)
貸付金の実績
貸付金残高の推移
表 3-1-73 貸付金残高の推移
(単位:千円)
件
数
金
額
平成13年度
11
160,901
平成14年度
5
65,182
平成15年度
4
54,303
平成16年度
2
23,385
平成17年度
2
16,617
平成 13 年度以降では、新規貸付は平成 15 年度の1件、13,000 千円のみである。
イ
預託金の計算方法及び予算との関係
預託金は、「前年度3月1日貸付残高」と「当年度3月1日予定残高」の単純平均に預
託率を乗じて計算し、年度当初に預託している。
平成 17 年度の預託金当初予算は、65,240 千円であったが、予定されていた新規2件の
実行がなかったため、2月の補正で、融資残高に対応した 7,380 千円に減額されている。
(2)実施した手続
平成 17 年度末残高である2件について、融資認定申請から融資実行、預託までの関係
書類を閲覧し、手続上の不備等がないか検討した。
126
(3)監査の結果と意見
① 意見
【意見①】関係書類の保管状況について
2件のうち1件は、関係書類が全く保管されていなかった。
平成 12 年度貸付分であり、県文書規程(以下、
「規程」という。) 第 45 条(3)第
3種文書であるとの判断により、保存年限(5年)を経過したために廃棄されたとのこ
とである。
預託契約自体は継続中であるので規程に捉われることなく、関係書類は償還期限が終
了するまで保存すべきである。
【意見②】制度のあり方について
上述のとおり平成 13 年度以降の新規貸付は1件のみであり、平成 16、17 年度と実績
がない。
この点、県は、利用者のニーズに応じて融資対象事業費を追加する等の見直しを行っ
ているとのことであるが、観光施設の改善は集客力の向上のためには欠かせないものの、
事業者にとっては多大な資金負担を覚悟しなくてはならないものであり、また、その回
収には長期間を要するのが一般的である。
この点に関して、当制度では、償還期間が一律7年以内となっており、県の中小企業
制度融資(設備資金)と同一ないし短くなっている。観光施設の改善における上記の現
状及び特徴を考慮し、一律に7年以内とするのではなく、対象設備に応じて柔軟に償還
期間を設定する等の見直しが望まれる。
127
13 新潟県人工降雪機整備資金貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
県内のスキー場において人工降雪機を整備しようとする索道事業者等に対し、必要な
資金を融資することにより、スキー観光の振興を図ること。
イ
根拠法令等
新潟県人工降雪機整備資金融資要綱
②
ア
制度の仕組み
スキーム
図 3-1-26 制度の仕組み・手続
④承認通知
③意見書
⑦融資実行報告
⑧預託
関
手
⑨事業完了届け
金 融 機
②意見書依頼
県
借
①融資認定申請
⑤融資申込み
⑥融資実行
融資対象者は、鉄道事業法(昭和 61 年法律第 92 条)第 32 条の規定による索道事業の
許可を受けたもの(市町村は除く)又はその者が構成員の全部若しくは一部となってい
るスキー場の管理団体(自ら人工雪の製造及び管理を行うものに限る)である。
対象者より融資の認定申請があると、県は金融機関に対し融資の適否についての意見
を求め、その意見及び認定基準に基づき審査を行う。
融資を適当と認めた場合は、申請者に承認通知を行い、申請者がそれを添えて融資の
申込みを行うことにより、金融機関が融資を実行する。
県は、金融機関よりの報告に基づき預託金を計算し、決済用預金(無利子)により金
融機関に預託を行う。
なお、対象事業費は、人工降雪機及びその付帯施設(人工降雪機の稼働に必要な貯水・
取水・冷却・製氷施設、水及び氷の搬送施設、人工降雪機の格納施設等をいう。
)の整備
128
に要する資金(土地購入費、補償費及び事務費並びにこれらに準ずる経費並びに整備事
業のための試験に要する経費を除く。)である。
イ
契約関係
(ⅰ)対象事業費の額 :100,000 千円以上。
(ⅱ)融
資
額
:対象事業費の 10 分の8以内の額とし、融資実行期間を通じて
400,000 千円を限度とする。
(ⅲ)融資実行期間
:原則として2年度以内。
(ⅳ)償 還 期 間
:15 年以内(据置期間1年以内を含む。)
(ⅴ)融 資 利 率
:融資利率は、保証協会の信用保証の有無に応じて、県と取扱金
融機関が協議して定める。
③
ア
貸付金の実績
残高の推移
表 3-1-74 残高の推移
(単位:千円)
件
数
金
額
平成13年度
1
105,648
平成14年度
1
87,792
平成15年度
1
69,936
平成16年度
1
52,080
平成17年度
1
34,224
平成 13 年度以降では新規貸付はなく、残高は平成5年に実行された1件のみである。
イ
預託金の計算方法及び予算との関係
預託金は、「前年度3月1日貸付残高」と「当年度3月1日予定残高」の単純平均に預
託率を乗じて計算し、年度当初に預託している。
平成 17 年度の預託金当初予算は、残高に対応した 17,360 千円であり、実績と一致し
ている。
(2)実施した手続
平成 17 年度末残高である1件について、融資認定申請から融資実行、預託までの関係
書類を閲覧し、手続上の不備等がないか検討した。
129
(3)監査の結果と意見
① 意見
【意見①】制度のあり方について
上述のとおり平成6年度以降の新規の貸付はない。県は、こうした背景について、人
工降雪機が非常に高額であり、またスキー場入込客も減少傾向にあることを挙げている。
ところで、現在、対象事業費が「人工降雪機の整備」に限定されているが、制度の目
的は県内の「スキー観光の振興を図ること」である。このため、人工降雪機に対象事業
費限定せず、県内のスキー場を活性化すべく、スキー場関係者の真のニーズにあった制
度に改定していくことも考えられる。
130
【産業労働観光部】 〔特別会計〕
1 新潟県中小企業高度化資金貸付金制度
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
県内の中小企業者の事業の共同化、工場及び店舗の集団化その他中小企業構造の高度
化並びに県内の中小企業者が行う新商品、新技術又は新たな役務の開発、企業化、需要
の開拓その他の新たな事業の開拓を促進するために必要な資金の貸付けを行うものであ
る。
これは、貸付の実行による資金面の援助のみならず、融資決定までの過程において行
われる計画の診断の実施や、それらの診断結果に対応した措置を中小企業者等が行う必
要がある。このような専門家による経営に関するアドバイスにより、中小企業者等の経
営の向上が期待されている。
イ
根拠法令等
新潟県高度化資金貸付金(以下、「高度化資金」という。)は、以下の規則・要領に基
づき特別会計にて運営されている。
新潟県中小企業高度化資金等助成規則
新潟県中小企業高度化資金貸付事務処理要領
②
ア
制度の仕組み
高度化資金の概要
平成 17 年度における県の高度化資金に関する概要は次の通りである。
131
表 3-1-75 高度化資金の概要
・新潟県中小企業高度化資金等助成規則第2条第1項に定める中小企業
貸付の対象者
者(独立行政法人中小企業基盤整備機構法第2条第1項の「中小企業
者」に準じている)
予算額(平成 17 年度)
1,512,511 千円
貸付実績額(平成 17 年度)
1,442,739 千円
貸付金残高(平成 17 年度末)
17,606,939 千円
貸付け対象施設
土地、建物、構築物、設備
貸付期間・・・20 年間以内(うち据置期間3年以内)
返済方法・・・元金均等払い
貸付条件(平成 17 年度)
貸付金利・・・0.8%の固定金利(ただし、特定の要件を満たしたもの
については無利子)
対象施設が土地又は建物・・・第1順位の抵当権を設定
対象施設が設備・・・・・・・譲渡担保を設定
債権保全
保証人・・・・・・・・・・・連帯保証人を設定
損害保険の付保・・・・・・・第1順位の質権を設定
その他
遅延損害金 10.75%
(注)予算額及び貸付実行額については平成 16 年度繰越予算額を含めて記載している。
なお、平成 17 年度においては、以下の種類の高度化事業に対して融資が実行された。
表 3-1-76 平成 17 年度実施の高度化事業の種類
事業名称
事業の概要
市街地等などに散在する工場や店舗などを、生産性や効率性の向上、異業種との
集団化事業
連携又は公害・騒音問題の解決等のため、工業団地やショッピングタウンを作り、
集団移転を行う事業を支援する制度。
商店街や工場などが集積している区域で、建物の建て替えなど区域全体を整備す
集積区域整備事業
る事業を支援する制度。
店舗が集まりショッピングセンターなどを、工場を集約化し共同工場などを整備
施設集約化
する事業を支援する制度。
一社では導入が難しい設備を組合で購入し、各組合員企業に買取予約付きでリー
設備リース
スする事業を支援する制度。
高度化資金は、中小企業者等が形成した組合等が行う共同化、集団化、協業化事業や
第三セクターなどが行う中小企業者を支援する事業など政策性の高いものを対象とした
132
制度である。貸付条件も、貸付期間が最長 20 年と長期に渡り、貸付利息も低く抑えた制
度設計となっている。さらに、県において平成 17 年度に実行された融資のように、災害
復旧貸付等特定の要件を満たすものについては無利子となるなど優遇される。融資実行
前には、事業計画の診断を通じたコンサルティングの実施により、過大な投資を防止す
るだけでなく、事業を円滑に実施できるような対策が講じられ、中小企業者等の事業運
営に資することが期待されている。
イ
仕組み
新潟県中小企業高度化資金貸付金(以下、「高度化資金」という。)の貸付方式にはA
方式とB方式がある。この仕組みを図示すると次の通りである。
図 3-1-27 貸付方式の概要
<A 方式>
資金の交付
独立行政法人
(所要資金の 100 分の 54)
中小企業基盤整備機構
償
還
資金の償還
中小企業者
新潟県
貸金の交付
(所要資金の 100 分の 80)
資金の交付
<B 方式>
(所要資金の 100 分の 26)
償
資金の交付
新潟県
還
資金の償還
中小企業者
貸金の交付
(所要資金の 100 分 80)
(注)貸金もしくは資金の交付割合は普通貸付のケースである。
133
独立行政法人
中小企業基盤整備機構
A方式とは、県内で事業が行われる中小企業者等の高度化事業に対して、独立行政法
人中小企業基盤整備機構(以下、「機構」という。)が県に必要な資金の一部を貸付け、
県の財源を付加して中小企業者へ融資するものである。機構と県の資金の負担割合は貸
付金の種類によって異なるが、普通貸付と呼ばれる貸付制度を例にとると、中小企業者
からの申し出を受けた県は、所定の事業評価、審査の結果融資可能と判断した場合には、
中小企業者が実施する事業の所要資金の 54%を機構から借入れ、県が 26%の資金を上乗
せして、所要資金の 80%を融資するものである。
B方式とは事業が2県以上にまたがる高度化事業について採用される方式であり、A
方式とは逆に、県が機構に必要な資金の一部を貸付け、機構の財源を付加して中小企業
者へ融資するものである。その資金の負担割合については、普通貸付を例にとると、県
は所要資金の 26%を機構に貸付け、機構は自己の負担分を上乗せして所要資金の 80%を
中小企業者に貸し付ける方式である。
③
関係機関との契約関係
高度化資金は、県と機構の協調融資であり、A方式においては県は機構より資金を借
り受ける金銭消費貸借契約を締結することになり、B方式においては県が機構に資金を
貸し付ける金銭消費貸借契約を締結することになる。この協調融資におけるそれぞれが
負担する金額の割合は、高度化資金対象事業により異なるが、返済期日等の貸付条件は
中小企業者との金銭消費貸借契約と同一条件によっている。実際には、中小企業者から
の償還金・利息の入金があった場合には資金の交付割合によって県と機構の間で資金が
やりとりされるが、滞留等が発生した場合には県と機構の資金の流れも滞ることになる。
その後の延滞金が回収された場合においても、県と機構はその資金の交付割合によって
それぞれに配分される。
④
審査制度
高度化資金のA方式について、中小企業者の申し出から実際に融資され、完済される
までの業務フローをおおまかに示すと次のようになる。
134
図 3-1-28 審査制度フロー
借受組合等
事
前
協
議
施 設 設 置 計 画 書
事 業 実 施 計 画 書
診
断
申
込
独立行政法人
県
書
事
前
中小企業基盤整備機構
指
制度要件・方針確認
借
入
希
診
診断意見に対する
対応報告
契
約
・
発
注
導
望
計画概要ヒアリング
断
注1
診
断
意
見
注2
借
入
申
請
注3
着
工
許
可
貸
付
決
定
貸 付 対 象 の 査 定
貸
付
申
請
貸
付
決
定
注4
中
間
検
査
注5
設 置 完 了 報 告 書
貸
付
金
請
求
貸 付 金 交 付 請 求
金 銭 消 費 貸 借
金 銭 消 費 貸 借
資
金
交
付
完
了
検
査
注6
資
金
交
付
抵当権・質権設定
支 払 完 了 報 告
実
償
績
報
注8
告
還
注7
償
還
135
(注1)中小企業者等から診断申込を受けた場合には、提出された事業計画書に基づいて当該高度化事業
の妥当性について財団法人にいがた産業創造機構や中小企業診断士等の専門家による診断を実施
する。
(注2)専門家の診断結果に基づいて、事業計画等に対する診断意見と呼ばれる指導を中小企業者等に実
施し、中小企業者等は診断意見に対応した措置を行なう。
(注3)県は、中小企業者の対応策を審査し、事業として適当と認めた場合には機構に借入申請を行い、
機構の認定を得る。
(注4)中小企業者等より提出を受けた貸付申請書をチェックし、貸付相当と認めた場合に貸付決定を行
う。
(注5)中小企業者等より提出を受けた設置完了報告書に基づいて、対象設備の設置状況を確かめる。
(注6)県は、中小企業者等との間で金銭消費貸借契約を締結し、公正証書により作成する。
(注7)支払完了報告を受けて、事業費の支払状況及び資産としての計上を確かめる。
(注8)年度毎に組合の状況報告及び決算書の提出を受け、貸付先の状況を把握し、必要に応じて事後の
アドバイスや条件変更の妥当性の審査に役立てる。
(2)貸付金の実行額及び残高の推移
高度化資金の各年度末残高は、次に見るとおり、平成9年度末の 49,401,922 千円をピ
ークに一貫して減少傾向を辿っている。この原因として、高度化資金の新規貸付の減少
と既存の利用者による繰上償還という点が考えられる。新規利用額の減少については、
高度化事業の対象となる新規事業の減少及び市中金利の低下に伴う高度化資金の貸付金
利の優位性が薄れたこと、並びに高度化資金の事業実施計画を原則として貸付実行の
前々期に提出しなければならず、貸付実行までに一定の時間が必要とされる点がその理
由として考えられている。また、原則として高度化利用組合の役員全員の連帯保証が求
められるなど負担の重さも要因と考えられる
一方の既存の利用者による繰上償還の増加については、民間金融機関の貸付金利の低
下により、高度化資金の金利面での優位性が薄れたために、借換に伴う繰上償還が行わ
れたことが理由と考えられている。
高度化資金の年度末貸付残高の推移とA方式・B方式の別は次のとおりである。なお、
A方式については中小企業者等に対する貸付金額総額を記載し、機構負担分を含めてい
る。一方で、B方式は県の機構に対する貸付金残高を記載し、機構負担分を含めていな
い。
136
表 3-1-77 高度化資金の残高推移
(単位:千円)
年度
A方式
B方式
合計
H8
44,580,424
696,220
45,276,644
H9
48,715,724
686,198
49,401,922
H10
46,327,609
680,381
47,007,990
H11
42,807,675
656,329
43,464,004
H12
39,285,953
654,489
39,940,442
H13
33,373,200
601,098
33,974,298
H14
29,931,099
584,000
30,515,099
H15
23,639,072
358,088
23,997,160
H16
21,533,999
331,673
21,865,672
H17
17,291,930
315,009
17,606,939
(出典:県作成資料)
(3)延滞債権及び条件変更契約について
県が実施しているA方式について、債権残高に対する延滞先への債権残高及び条件変
更先への債権残高の推移は以下の通りである。
表 3-1-78 延滞債権と条件変更債権の推移
(単位:千円、%)
年度
債権残高
延滞先残高
割合
条件変更先残高
割合
H13
33,373,200
168,807
0.5
4,807,350
14.4
H14
29,931,099
164,800
0.6
6,167,696
20.6
H15
23,639,072
822,205
3.5
6,598,165
27.9
H16
21,533,999
770,276
3.6
6,262,758
29.1
H17
17,291,930
738,715
4.3
6,103,238
35.3
上記のとおり、延滞先残高及び条件変更先残高の比率は上昇している。延滞先残高に
ついては平成 15 年度に、条件変更先残高については平成 14 年度及び平成 15 年度に大き
な債権金額を有する貸付先がそれぞれの区分に該当することとなったからである。この
他、高度化資金債権残高自体が減少していることが相対的に延滞先残高と条件変更先残
高の割合上昇の一因となっている。
県が平成 17 年度末に延滞債権として識別しているA方式による貸付先8件について、
県が保管している管理資料の閲覧及びヒアリングを行った。
県が保有している管理資料によれば、平成 18 年3月末時点で認識しているA方式の延
滞発生からの管理期間の分布は次のとおりである。
137
表 3-1-79 年齢別延滞債権
延滞発生から平成 17 年度末までの管理期間
5年以内
件数(件)
債権残高(千円)
5年超 10 年以内
H17 年度
合計
回収額
10 年超
5
1
2
8
647,123
13,142
78,450
738,715
36,219
(注)債権金額には延滞先に対して保有する債権残高を示し、償還期限未到来分を含めている。
これらの延滞債権の貸付先のうち、5年超の3件はすべてが事業を既に廃止しており、
連帯保証人から小額の回収を行っている。平成 17 年度の回収額についてみると元本の残
高に対して1%に満たない状況にあり、延滞違約金の利率が年 10.75%であることを合わ
せると回収期間が長期に渡ることが想定される。
また、平成 17 年度末における条件変更を行っている貸付先は 11 件となっている。新
潟県中小企業高度化資金貸付事務処理要領(以下、「要領」という。)第 21 条によれば、
「健全な経営に努めながらも、特別の事情により貸付金の償還が著しく困難な借主」は、
「貸付条件の変更を申請することができる」ものとされている。この貸付条件変更を行
うには、約定通りの利払いが行われていることが条件である。
(4)債権の保全状況
県は平成 17 年3月 31 日に新潟県中小企業高度化資金債権保全基準を制定した。これ
は、新潟県中小企業高度化資金等助成規則及び要領を補完する目的で制定したものであ
る。これらの基準によれば、県の債権保全の概要は以下のとおりである。
・高度化資金貸付金の対象となった施設に設定する抵当権は、単独第一位とする。
・高度化資金貸付金の対象となった施設が設備である場合には、譲渡担保を設定する。
・高度化資金貸付金の対象となった施設が土地又は建物で金融機関が協調融資を行っ
ている場合には、当該金融機関の同順位設定について個別に判断する。
・担保余力の評価は、資産の種類毎に以下の評価額に掛け目を乗じて算定し、優先債
権がある場合にはこれを控除して求める。なお、評価額については記載番号が若い
方のものを優先して用いる。
・保証人については、高度化資金貸付金の申請人が組合等であるときはその組合の全
役員、組合員であるときは当該組合員が属する組合及び2名以上の保証を求める。
なお、抵当権や譲渡担保等物的担保に関する担保資産の評価額・掛け目は次の通りで
ある。
138
表 3-1-80 担保評価額と掛け目(抜粋)
担保種類
土地
建物
設備
評価額
①
裁判所による最低売却価額
②
不動産鑑定士による鑑定評価額
③
取得額(対象施設の場合で貸付時)
④
固定資産税評価額÷0.7
⑤
公示価格
⑥
標準価格
⑦
路線価÷0.8
①
裁判所による最低売却価額
②
不動産鑑定士による鑑定評価額
③
取得額(対象施設の場合で貸付時)
④
固定資産税評価額÷0.7
掛け目
100%
90%
100%
80%
取得額(対象施設の場合で貸付時)
60%
(出典:新潟県中小企業高度化資金債権保全基準より作成)
このように、県は債権保全の一つの手法として物的担保を採用しているのであるが、
貸付先として問題となっている延滞債権について、平成 18 年3月末時点の残債権額と県
が行った直近の担保評価額の比較を行った。その結果は、次のとおりであった。
表 3-1-81 延滞債権残高の担保による保全状況
(件)
貸付残高の保全が物的担保によって不十分なもの
貸付残高より担保評
価額が上回るもの
3
貸付残高より担保評価額
担保物件が処分等により
が下回るもの
ないもの(注)
5
2
3
合計
8
(注)担保評価額が優先債権に満たず、ゼロ評価しているもの1件を含めている。
上記表のとおり延滞債権8件のうち、5件が担保不足という状況にあり、過半数を超
えている。延滞という状況にまでなってしまった債権については担保によって保全しき
れていない状況を示している。
次いで、貸付条件変更を行った高度化事業について、平成 17 年度末の融資残高と県が
行った担保評価額について比較を行った。その結果は、次のとおりである。
139
表 3-1-82 貸付条件変更先債権の担保による保全状況
(件)
貸付残高より担保評価額が上回るもの
貸付残高より担保評価額が下回るもの
7
3
合計
10
(注)「繊維関係設備共同廃棄事業高度化」に係るものを除いている。
延滞債権や条件変更を行った融資については、時間の経過につれて建物の担保価値が
下落する一方で債権金額が減少しないといった事象も担保割れの状況の一因と考えられ
る。
(5)実施した手続
(ⅰ)平成 17 年度に実施した貸付に関する審査・契約書類を閲覧した。
(ⅱ)平成 17 年度末において延滞が発生している貸付先について、その経緯について説明
を受けるとともに、平成 17 年度中の入金状況を確かめた。
(ⅲ)平成 17 年度末において、貸付条件変更先となっている貸付先について、関連する契
約書類を閲覧するとともに、貸付条件変更となった経緯について説明を受け、平成
17 年度中の入金状況を確かめた。
(6)監査の結果及び意見
① 指摘事項
【指摘事項①】審査書類の記載不備について
平成 17 年度に実行したA方式4事業、B方式1事業に対する貸付について、以下の関
連書類を閲覧するとともに必要に応じて担当者にヒアリングを実施し、合規性の検討を
行った。
なお、B方式については中小企業者との折衝・審査等は機構が行っているため、以下
の記載は、特に指定するものを除きA方式による貸付に関するものである。
・施設設置計画書
・事業実施計画書
・診断申込書
・診断意見に関する書類
・診断意見に対する報告書
・借入申請書(県が機構から行う借入に伴うもの)
・着工の許可を証する書類
・貸付申請書(組合等中小企業者が県から行う借入に伴うもの)
・整備完了報告書
140
・中間検査の結果に関する書類
・金銭消費貸借契約書
・支払完了報告書
・実績報告に関する書類
先に挙げた書類を閲覧した結果、診断申込書の徴収漏れや施設設置計画書が保管され
ていない事例があった。これは、災害復旧に関連する事業については、被災者の負担軽
減及び早期支援を図るため要領に定める書面の提出を省略したものである。
なお、上記のほか、支払完了報告書の日付記載漏れが認められた。支払完了報告書そ
れ自体は審査・契約関係に影響を及ぼさないものであるが、通信文書に日付を記載して
おくことは一般的な事柄と考えられるため、徹底の必要がある。
【指摘事項②】貸付条件変更申請時期の遅れについて
県が把握している貸付条件変更先 11 件のうち、
未回収元本があるものすべてについて、
貸付条件変更に係る申請状況、県における決議書、機構からの承認に関する状況等書類
を閲覧し、合規性を検討した。
その結果、貸付条件変更申請書の提出期限は、要領第 21 条第1項により、約定償還日
の2か月前までに申請することになっているが、この期限を超過しているものが5件あ
った。平成 17 年度に貸付条件変更申請書を提出した事業は9件であるため、その過半数
が期限超過の状況にある。ただし、この提出日が期限を超過している5件について貸付
条件変更の可否のための診断は約定償還日の2ヶ月前までに行われ、県として貸付条件
変更という中小企業者等の意図は把握できていたのであるが、期限内の貸付条件変更申
請書が受理されることが望まれる。
②
意見
【意見①】審査状況における事業外収入の取扱について
監査手続の対象とした高度化融資のうち、個別の審査において次のような事案があっ
た。
県等が作成した診断報告書によれば、本業における償還余力がなく、同居者の給与収
入といった事業外収入を返済財源として見込まなければ、高度化資金の回収は極めて困
難と判断されるものであったが、貸付が実行された。
県では、他の貸付と同様に本人からの計画書等を受けて診断、担保等の確認、機構か
らの貸付決定を経て、事業収入のほかに、事業外収入等も含め総合的に判断しているの
であるが、私共は、高度化資金は、中小企業者が行う高度化事業について有利な条件で
融資することにより中小企業者を支援する制度であると認識している。つまり、高度化
資金の場合、事業そのものに対する融資という性質が強いため、対象事業から生じる収
141
入によって回収されることが原則であると考える。このような観点から、当初の事業計
画段階から事業外収入を見込むことは、かえって利用者の生活資金を損なうことにもつ
ながりかねない。したがって、事業外収入を償還の原資に見込むような事業については、
慎重に対応すべきと考える。
【意見②】延滞債権化の防止策について
延滞債権の貸付先については、5年超の3件すべてについて、既に事業が廃止されて
いることから、連帯保証人による小額の償還を受けている状況にある。県では、債務者
や連帯保証人への訪問や担保資産の強制執行手続等の様々な手続きを行っている。この
ように、延滞債権の管理については、融資先のみならず保証人の状況把握や折衝や機構
との折衝・調整といった手間がかかったり、弁護士に対する報酬が発生したり、相当な
費用が発生しているはずである。一方の回収額については、僅少となっている案件も存
在することから、案件によっては発生した費用が回収額を上回っている可能性は否定で
きない。
つまり、貸金が延滞債権になってしまうと元金が回収されないことのほか、上記のよ
うな事務コストが発生してしまう。従って、貸付実行時の審査の厳格化や債権保全活動
はもちろんのこと、貸付先が延滞先にならないよう経営悪化の兆候を早期に発見し、事
前に経営改善への指導を行っていくことが重要と考えられている。県では、従来、貸付
条件変更先はもちろん正常償還先に対しても、利用者への訪問や年次報告により利用者
の状況把握、診断等を実施し、懸念先の早期発見に努めるほか、必要に応じて外部コン
サルティング業者によるアドバイスの実施など幅広い経営立て直しのための支援策を実
施している。
高度化資金の利用者が比較的小規模な中小企業者等であることを考慮すると、経営環
境が急速に変化することは稀ではないと考えられる。共同店舗のテナントの月次売上を
徴収するなど現在の県の取組は評価するが、財務報告の入手が年1回の年度報告のみの
ものもあり、いかにも少ないように考える。月次決算書や半期決算書等の情報をタイム
リーに入手することを検討されたい。
【意見③】審査における外部指標の積極的な活用について
貸付条件変更を行っている融資先について状況を調査したところ、以下のように一度
目の返済時期から貸付条件変更を行っている事例があった。
県が融資を実行したある高度化事業(A事業)については、事業計画時より近隣に競
合する商業施設の出店が計画されていて、建設当初よりテナント誘致に苦戦し、集客力
の面からも不安視されていた。この高度化事業開始後、先の商業施設と競合することに
なり、収益環境が厳しく、テナントの退店や倒産による空き店舗発生による収益減によ
142
り、返済財源が確保できなかったものである。その後も貸付条件変更を毎年行なってい
ることから回収が長期に亘ることが懸念される。
また、ある商業施設を対象とした高度化事業(B事業)では、開店直後より事業計画
の半分程度の売上しか計上できず、不振が続いているものがあった。そのため、商業施
設内における空き店舗が発生し、テナントからの賦課金収入減少により、返済財源の確
保が困難になった結果、据置期間経過後の第一回目の返済期日から貸付条件変更を行っ
たものであり、A事業と同様に回収が長期に亘ることが懸念される。
A、B両事業とも県では診断を行い、貸付を実行したが、貸付後の状況の変化が診断
の想定以上であったことなどから、事業計画の売上見込を大幅に下回る実績になったと
考えられる。
上記以外のケースでも、貸付条件変更を行っている高度化事業は苦戦している状況に
あり、回収の長期化が懸念される事例がいくつか存在し、商業施設のみならず工業施設
に関する事業も含まれているが、この数年間は商業施設に対する高度化事業の方が貸付
条件変更時の債権金額が多額になる傾向がある。オーバーストアと言われるような激し
い競争環境が影響しているものと推測される。
このように、商業施設について苦戦している事例が目立つが、その大半は売上不足に
起因する賦課金や賃料の不足である。事業計画における売上予測は、立地や施設、テナ
ントの状況、商圏の変化、競合施設の有無等により大きな影響があると考えられ、将来
予測を伴う困難なものである。しかし、その予測を誤ることによって事業が苦戦するよ
うなことになれば、利用者、県ともに大きな負担を強いられることから、事業計画の審
査の重要性は高い。ところで、新規出店等のリスクを折り込んだ指標として既存店売上
高の推移などが経済指標として公表されているものがある。審査に当たっては、これま
で行ってきた審査内容の他に、このような外部指標の動きを折り込んだ売上計画となっ
ているかなど、より潜在的なリスクに基づいた分析に基づく審査項目の追加も必要と考
える。
【意見④】年賦償還の見直しについて
高度化資金は、据置期間経過後の年賦償還となっている。この年賦償還という方法は、
回収に懸念がない場合は問題とならず、また、償還回数が少ないことから事務処理上の
簡便性が得られる。しかし、延滞等が発生した場合には月賦償還を採用していた場合と
比較してその延滞金額が多額になると想定される。【意見②】で述べた中小企業者の状況
の適時把握の観点からも、年賦償還よりも月賦償還の方が中小企業者の情報を得やすい
制度と考える。なお、機構の制度設計上、回収方法は年賦償還か半年賦償還になってい
143
ることから、月賦償還による回収方法を採用することは現状は不可能である。この点に
ついては、機構に対して、月賦償還方式の採用について働きかけていくことを検討され
たい。
【意見⑤】担保評価について
県は、表 3-1-80 に示したとおり、不動産の担保価値の評価指針としていくつかの指標
を示している。裁判所による最低売却価格は、実際に競売の申立を行わないと不明であ
るし、不動産鑑定を取得するにも費用がかかるため、固定資産税評価額を参考に時価を
推定することが多いと考えられる。通常、土地や建物等の不動産については個性があり、
換金可能性は個別の物件によってバラツキがある。さらに、処分の方法も競売によるこ
とが多いと考えられることから、その売却価額は通常の時価よりも低い価格となる可能
性が高い。また、固定資産税評価額を参考に建物の評価額を参考にする場合には、固定
資産税評価額が再建築価額をベースに算定されることや、築年数による減価が往々にし
て時価の下落ほどには進まないといった指摘もあり、建物の評価額は土地のそれと比較
して信頼性が低いと考えることが適当である。
また、延滞債権の中には担保を処分しても評価額に見合った処分価格を得られず、保
証人から小額を回収しているケースも見られる。担保処分前であっても、延滞債権・貸
付条件変更先それぞれにおいて、担保評価額が債権残高を下回るケースも存在する。貸
付条件変更先についても融資期間中に貸付金額全額の回収が困難と考えられる事業も存
在することから、担保評価は慎重を期すことが必要と考える。
県が採用する掛け目は、土地については 90%、建物については 80%を使用している。
類似する事例として、金融庁が公表している金融検査マニュアルを例にとれば、掛け目
は土地・建物共に評価額の 70%以下とされている。県においても、事例の情報収集を行
い、保守的な水準の掛け目を検討されたい。
144
2 小規模企業者等設備資金貸付事業貸付金、同設備貸与事業貸付金
(1)概要
ここでは、次の2つの貸付金を取り上げる。
・小規模企業者等設備資金貸付事業貸付金(以下、「設備資金貸付」という。)
・小規模企業者等設備貸与事業貸付金(以下、
「設備貸与」という。)
ただし、現在は上記2つの制度に引き継がれたため制度自体は終了しているものの、
債権管理等の事務が残っているため、次の3つの貸付制度についても監査対象とし、併
せてここで概要を記述した。
・中小企業設備近代化資金貸付金(以下、「近代化資金」という。)
・中小企業設備合理化資金貸付金(以下、「合理化資金」という。)
・県単中小企業設備貸与資金貸付金(以下、「県単設備貸与」という。
)
①
制度の趣旨
昭和 31 年に中小企業近代化資金等助成法が制定され、その第1条で「中小企業者の設
備の近代化に必要な資金の貸付けを行なう都道府県に対し、国が必要な助成を行なうこ
と等により、中小企業の近代化の促進に寄与することを目的とする」としている。
以降、中小企業者あるいは小規模企業者の設備投資に対する類似の貸付制度が次表の
ように設置、廃止、継承されている。昭和 31 年に創設された近代化資金は平成 12 年度
からスタートした設備資金貸付に継承されている。また、近代化資金の対象とならない
業種や設備をカバーする目的で昭和 38 年に設置された合理化資金は昭和 58 年の県単設
備貸与の創設に伴い終了している。その県単設備貸与も他制度で同様の範囲をカバーさ
れることなどから平成 14 年度に終了している。現在は、小規模企業者等設備導入資金助
成法(以下、「助成法」という。)に基づく設備資金貸付と設備貸与の2制度が稼動して
いる状況にある。
表 3-1-83 中小企業向け貸付制度の沿革
制度名
S35(1960)
S45(1970)
S55(1980)
H2(1990)
H12(2000)
近代化資金
合理化資金
県単設備貸与
設備資金貸付
設備貸与(割賦)
設備貸与(リース)
(注)
:制度の開始と終了。
:制度の開始と継続中。
なお、具体的な事業開始年度及び事業終了年度は表 3-1-84 参照。
(出典:県資料より作成)
145
:制度の継承
それぞれの制度の概要は次表のとおりである。貸付主体としては、以前は県が直接貸
付を行う場合と中小企業振興公社(現 財団法人にいがた産業創造機構(以下、「NICO」
という。))が行う場合があったが、平成 12 年度からは、現在稼動している設備資金貸付
と設備貸与のいずれも NICO が貸付主体である。この場合、県の貸付は NICO に対して行
われる。NICO から企業者への貸付方法としては、設備資金を貸し付ける場合と、設備を
割賦販売・リースする場合に分けられる。また、貸付資金の財源としては、設備資金貸
付では県と国が半分ずつ負担し、設備貸与では NICO が半分負担し、残りを県と国が折半
する形となっている。
表 3-1-84 中小企業向け貸付制度の概要
目的
根拠
法令
等
近代化資金
合理化資金
県単設備貸与
中小企業者の設備の近代 中小企業者の施設・設 中小企業者又は創業者の
化に必要な資金の貸付
備の合理化に要する資 創業及び経営基盤強化に
金の貸付(近代化資金 必 要 な 設 備 導 入 を 促 進
の対象外の業種、設備 し、中小企業者又は創業
者の発展に寄与
を対象)
中小企業近代化資金等助 中小企業設備合理化資 県単中小企業設備貸与資
成法、中小企業設備近代 金等貸付規則
金貸付要綱
化資金貸付規則
昭和 58 年度~
昭和 38 年度~
昭和 58 年度(県単設備 平成 14 年度
貸与へ継承)
(設備貸与へ継承)
設備資金貸付
設備貸与
小規模企業者等の創業及び経営基
盤の強化に必要な設備の導入を促
進し、小規模企業者等の発展に寄
与
小規模企業者等設備導入資金助成
法、小規模企業者等設備導入資金
貸付金交付要綱
(割賦)
昭和 46 年度~
平成 12 年度~
(リース)
平成元年度~
事業
期間
昭和 31 年度~
平成 11 年度
(設備資金貸付へ継承)
貸付
主体
県(S60~中小企業振興
県
公社が窓口)
中小企業振興公社
(現 NICO)
NICO
貸付
資金貸付
資金貸付
割賦販売
資金貸付
財源
県 1/2、国 1/2
県
県 1/2、NICO1/2
県 1/2、国 1/2
割賦販売・
リース
県 1/4、国 1/4、
NICO1/2
(出典:中小企業設備近代化資金等貸付規則等の県資料、及び NICO の県単独設備貸与事業業務方法書、設
備資金貸付事業業務方法書、設備貸与事業業務方法書等より作成)
②
ア
制度の仕組み
貸付対象者
いずれの貸付制度においても県内に工場や事業所を有する企業者を対象としているが、
近代化資金から県単設備貸与までは中小企業(従業員 300 人以下など)全体をカバーし
ていたが、現在稼動している設備資金貸付や設備貸与では基本的に従業員 20 人以下の小
規模企業者に限定されている。
146
表 3-1-85 中小企業向け貸付制度の貸付対象者
貸
付
対
象
者
近代化資金
合理化資金
県単設備貸与
県内に工場・事業場を有
する中小企業者(下欄参
照)。
県内に工場・事
業所を有する
組合又は中小
企業者(下欄参
照)で輸出産業
等重要産業に
携わっている
者など
県内に事業所・工場を有する中小企
業者又は創業者(下欄参照)で、次
の要件を備えている者。
・賦払割賦料の返済が確実
・同一年度内で設備資金貸付及び設
備貸与を受けていない
・不適当な業種ではない
○中小企業者
・(工業、運送業等)資本金
1 億円以下、従業員 300
人以下
・(鉱業)資本金 1 億円以
下、従業員 1000 人以下
・(小売業、サービス業)資本
金 1 千万円以下、従業員
50 人以下
・(卸売業)資本金 3 千万
円以下、従業員 100 人以
下
○中小企業者
同左
○中小企業者
・(製造業、建設業、運送業等)資本金
3 億円以下、従業員 20~300 人
・(サービス業)資本金 5 千万円以下、従
業員 5~100 人
・(小売業)資本金 5 千万円以下、
従業員 5~50 人
・(卸売業)資本金 1 億円以下、従
業員 20~100 人
○創業者
事業開始前又は事業開始後 1 年
以内の場合、商工会議所等の経営指
導を 6 ケ月以前から受けていること
設備資金貸付、
設備貸与(割賦・リース)
県内に事業所・工場を有する小規
模企業者等又は創業者(下欄参
照)で、次の要件を備えている者。
・金融機関からの資金調達が困難
・貸付金の償還、割賦料・リース料
の支払が確実
・設備資金貸付と設備貸与を合わ
せて上限額の 100%を上回らない
・不適当な業種ではない
○小規模企業者等
・小規模企業者は従業員 20 人(商
業・サービス業は 5 人)以下
・それ以外の中小企業者で従業員
50 人以下、金融機関借入残高 3
億円以下、最近3ヵ年決算平均経
常利益 3,500 万円以下、大企業か
らの出資 1/3 以下
○創業者
同左
(出典:中小企業設備近代化資金等貸付規則等の県資料、及び NICO の県単独設備貸与事業業務方法書、設
備資金貸付事業業務方法書、設備貸与事業業務方法書等より作成)
イ
貸付条件
表 3-1-86 で中小企業向け貸付制度の貸付条件を比較した。そのうち、設備資金貸付と
設備貸与について確認すると、資金使途については、創業者はその事業に必要な設備又
はプログラムとだけ記載されているが、小規模企業者等の場合は設備やプログラムの導
入によって一定の付加価値の増加が見込まれることが条件に加わっている。
設備資金貸付の貸付金額は設備価格の2分の1までであり、50 万円から 4,000 万円の
範囲に限定されている。設備貸与の限度額は 100 万円から 6,000 万円の範囲内である。
また、設備資金貸付は無利子であり、設備貸与の割賦損料率や月額リース料率は表のよ
うに定められている。
償還期間はどちらも7年以内であるが、償還方法は設備資金貸付が半年賦、設備貸与
の割賦が月賦又は半年賦(基本的には月賦)、リースが月賦である。また、連帯保証人な
ども必要となってくる。
147
表 3-1-86 中小企業向け貸付制度の貸付条件
資金使途
貸付金額
近代化資金
合理化資金
県単設備貸与
中小企業の近
代化に著しく
寄与すると認
められる設備、
プログラム使
用権
設備等価格の
1/2 以内
組合共同施設
(組合員の共
同事業関係)、
企業合理化設
備、産地合理化
設備など
設備等価格の
2/3 以内など
創業者の事業
あるいは小規
模企業者等の
経営基盤強化
に必要な設備
やプログラム
-
-
利用限度額
貸付利率
無利子
4.8%、5.0%
5年以内(据置 5 ~ 7 年 以 内
期間 1 年含む) ( 据 置 期 間 1
年含む)
均等年賦
均等償還
償還期間
償還方法
担保・保証人
等
担保又は連帯
保証人
連帯保証人
(割賦販売)
100~6,000
万円
(割賦損料率)
2.6%(最終年
度)
7年以内(据置
期間 1 年以内
含む)
年賦又は半年
賦、月賦返済
連帯保証人及
び保証金
設備貸与
割賦
リース
・創業者の事業に必要な設備又はプログラム
・小規模企業者等の経営基盤強化に必要な設備又は
プログラムであって、付加価値額が 5 年間で 10%、
4 年間で 8%、3 年間で 6%以上の向上が見込まれる
もの
設備資金貸付
設備価格の 1/2
以内
50~4,000 万円
無利子
7年以内
半年賦返済
連帯保証人又
は不動産担保
(割賦販売)
(リース)
100~6,000 万円
( 割 賦 損 料
率)2.4%固定
7年以内
(据置期間 1 年
以内含む)
月賦又は半年
賦返済
連帯保証人及
び保証金
(月額リース料率)
設備の耐用年
数 で 1.387 ~
2.985%
設備の法定耐
用年数により 3
~7 年以内
月賦返済
連帯保証人
(出典:中小企業設備近代化資金等貸付規則等の県資料、及び NICO のパンフレット、県単独設備貸与事業
業務方法書、設備資金貸付事業業務方法書、設備貸与事業業務方法書等より作成)
ウ
県から NICO への貸付条件(設備資金貸付・設備貸与)
設備資金貸付及び設備貸与の資金として県から NICO に貸付が行われる。貸付条件は次
表のとおりである。貸付利率は無利子であり、償還期間は据置期間2年を含む8年であ
る。NICO から小規模企業者等への貸付金の償還期間7年以内よりも1年長く設定されて
いる。
表 3-1-87 県から NICO への貸付条件
項
目
資金使途
貸付金額
貸付利率
償還期間
償還方法
条 件
・NICO が設備資金貸付事業により貸し付ける資金
・NICO が設備貸与事業による設備の譲渡若しくはプログラム使用権の提供に要する資金
・設備資金貸付事業では当該事業の貸付金額に相当する額以内。
・設備貸与事業では当該事業の貸与金額の2分の1に相当する額以内。
・無利子
・8年(据置期間2年含む)
・均等年賦
(出典:小規模企業者等設備導入資金貸付金交付要綱より作成)
148
エ
貸付業務の流れ(設備資金貸付・設備貸与、次図参照)
(ア)県から NICO への貸付
県では、設備資金貸付及び設備貸与の資金を中小企業支援資金貸付事業特別会計で経
理している。
特別会計では国と一般会計の資金をもとに NICO に対して貸付を行っている。
小規模企業者等設備整備導入資金貸付金交付要綱(以下、「交付要綱」という。)によ
ると、貸付の前提として毎年度 NICO は県に事業計画書を提出する必要がある。その上で
NICO から県に年間の貸付金の交付申請を行い、県はその内容を審査し、交付決定を行う。
NICO は四半期ごとの小規模企業等への貸付実績に基づき、貸付金の交付請求を県に行い、
県が NICO に貸付金を交付することになる。
図 3-1-29 設備資金貸付、設備貸与の業務フロー
貸付対象者(小規模企業者等、創業者)
償還
貸付
貸付
審査
委員会
審査
割賦・
リース
設備資金貸付
割賦料・リース
料徴収
借入
(NICO 負担分)
設備貸与
(財)にいがた産業創造機構(NICO)
中小企業金融公庫
返済
損失補償契約
貸付
償還
繰入
県(一般会計)
県(中小企業支援資金貸付事業特別会計)
繰出
(県単設備貸与償還金)
貸付
国
(出典:県資料より作成)
149
(イ)NICO から小規模企業者等、創業者への貸付・貸与
a
設備資金貸付
小規模企業者等から貸付金の申し込みがあると、NICO は調査を行うとともに、貸付審
査委員会に意見を求める(NICO の設備資金貸付事業業務方法書より。以下同)。そして
NICO の理事長は貸付審査委員会の報告に基づき貸付の決定を行い、借主との間で貸付契
約を締結する。申込人は対象設備の設置を完了した時、及び対象設備の購入代金の支払
いを完了した時は NICO に報告する必要があり、それに対して NICO は検査を行う。
b
設備貸与
設備資金貸付と同様に、小規模企業者等から貸与の申し込みがあると、NICO は調査を
行うとともに、貸付審査委員会に意見を求める(NICO の設備貸与事業業務方法書より。
以下同)。NICO は貸付審査委員会の報告に基づき貸与の決定を行って、借主との間で貸与
契約を締結し、申込人に設備を貸与する。
オ
損失補償契約
毎年度、NICO から小規模企業者等への貸付実績に応じて、その 10 分の1の金額を限度
として NICO の損失を県が補償する契約を締結している。
カ
NICO の概要
NICO は助成法第 14 条に規定されている貸与機関として、設備資金貸付事業と設備貸与
事業を行っている。NICO の概要は次のとおりである。
昭和 46 年に NICO の前身の財団法人新潟県中小企業振興公社が設立されている。平成
15 年に財団法人新潟県生活文化創造産業振興協会、平成 16 年に財団法人信濃川テクノポ
リス開発機構、平成 17 年に社団法人新潟県産業貿易振興協会とそれぞれ合併し、現在の
NICO となっている。
150
表 3-1-88 NICO の概要
名称
所在地
代表者
基本財産
設立目的
事業内容
財団法人 にいがた産業創造機構
新潟市万代島5番1号
設立年
昭和 46 年4月1日
理事長 泉田 裕彦
258,972 千円
県出捐率
100%
新潟県において、新規創業や新分野進出等の企業の経営革新及び次代をリードする産業の創
出を促進させるとともに、中小企業の設備近代化の促進及び経営管理の改善並びに下請中小
企業及び中小商業の振興並びに、県産品の販路拡大に関する事業等による農林水産業及び地
場産業の育成を図り、もって新潟県の産業の活性化及び中小企業の発展に寄与すること。
1)中小企業者の経営に係る相談、助言等の総合的支援に関する事業、
2)経営革新及び創業の支援に関する事業、3)商品開発及び販路開拓の支援に関する事業、
4)産業分野における人材の育成に関する事業、5)中小企業の国際展開の支援に関する事業、
6)産学官連携による技術開発及び産業振興に関する事業、
7)新産業創出のための科学技術の振興に関する事業、
8)中小企業者の事業の用に供する設備等の譲渡及び貸付並びに資金貸付に関する事業、
9)下請取引の紹介あっせん及び取引に関する苦情又は紛争処理に関する事業、
10)中小企業の振興に関する調査研究、情報の収集、提供及び IT 高度人材育成等情報化支援
に関する事業、
11)中心市街地商業の活性化に関する事業、
12)新産業創出のための投資及び債務保証に関する事業
13)中小企業に関する地方公共団体、独立行政法人中小企業基盤整備機構等からの受託事業
14)県産品の普及及び宣伝に関する事業、15)県産品の開発及び育成の支援に関する事業、
16)県産品の販路拡大、開発及び育成に係る情報の収集及び提供に関する事業、
17)県産品の販路拡大、開発及び育成に係る調査研究に関する事業、
18)首都圏における地域情報の発信に関する事業
19)県産品(酒類を含む。)の展示及び販売に関する事業
(注)表中の下線の事業が設備資金貸付及び設備貸与
(出典:県資料及び NICO 寄付行為より作成)
③
ア
貸付金の実績
県からの貸付実績
表 3-1-89 及び図 3-1-30 で、最近 10 年間の県からの新規貸付、償還、年度末残高等を
整理した。なお、近代化資金と合理化資金は中小企業等への直接の貸付であるが、県単
設備貸与や設備資金貸付、設備貸与は NICO に対する貸付実績である。また、既述のとお
り、近代化資金、合理化資金及び県単設備貸与は既に制度が終了しているため、現在は
債権回収が行われているのみである。
平成 17 年度の新規貸付は設備資金貸付が 270,510 千円、設備貸与が 114,040 千円で、
合計 384,550 千円である。一方、償還額は合計 414,711 千円であり、平成 17 年度末残高
は 3,030,125 千円である。
151
表 3-1-89 県貸付金の実績
(単位:千円)
H8
近代化資金
(対企業)
合理化資金
(対企業)
県単設備貸与
(対NICO)
設備資金貸付
(対NICO)
設備貸与
(対NICO)
計
H10
H11
H12
貸付
償還
欠損処分
824,900
1,153,863
-
609,500
1,066,256
-
370,000
987,093
-
250,800
842,133
-
671,305
-
残高
貸付
償還
欠損処分
残高
貸付
償還
3,420,294
2,963,538
2,346,445
1,755,112
1,083,807
787
-
59,580
310,000
416,874
193
-
59,387
260,000
370,494
147
-
59,240
200,000
446,913
370
-
58,870
165,987
294,049
769
-
58,101
196,909
227,977
残高
貸付
償還
1,266,907
1,156,413
909,500
781,438
750,370
412,300
-
580,000
521,725
480,000
594,965
389,000
512,343
178,360
504,566
412,300
416,791
497,636
残高
貸付
償還
残高
1,873,121
1,758,156
1,634,812
1,308,607
1,227,762
貸付
1,714,900
1,349,500
959,000
595,147
1,026,000
償還
2,093,249
2,031,908
1,946,496
1,641,118
1,397,687
欠損処分
残高
-
6,619,902
-
5,937,494
-
4,949,997
-
3,904,027
3,532,340
H14
H15
496,864
-
301,281
23,305
148,049
21,799
60,495
-
-
残高
貸付
償還
欠損処分
残高
貸付
586,943
262,357
92,509
32,014
31,428
789
12,404
44,908
129,136
728
5,175
39,005
119,248
270
23,784
14,951
121
1,760
13,070
192
償還
212,562
159,567
142,988
120,126
79,876
残高
貸付
償還
666,944
286,350
5,741
626,625
234,320
24,786
483,638
228,565
65,783
363,512
424,160
117,304
283,635
270,510
157,442
残高
貸付
償還
692,909
227,046
392,047
902,443
305,002
238,063
1,065,225
365,811
226,452
1,372,081
169,714
159,163
1,485,149
114,040
176,615
残高
1,062,761
1,129,700
1,269,060
1,279,610
1,217,035
貸付
642,532
658,570
594,376
593,874
384,550
償還
1,108,003
724,425
583,542
457,209
414,711
12,404
28,480
45,583
1,760
残高
3,054,465
(出典:県資料)
2,960,130
2,925,383
3,060,287
合理化資金
(対企業)
県単設備貸与
(対NICO)
設備資金貸付
(対NICO)
設備貸与
(対NICO)
貸付
償還
欠損処分
欠損処分
152
H16
-
H13
近代化資金
(対企業)
計
H9
H17
586
-
12,878
-
3,030,125
図 3-1-30 県貸付金の残高推移
7,000
百
万
円 6,000
近代化資金
合理化資金
県単設備貸与
5,000
設備資金貸付
設備貸与
4,000
計
3,000
2,000
1,000
0
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
(出典:県資料より作成)
イ
NICO からの貸付実績
県単設備貸与(現在は制度終了)と設備資金貸付、設備貸与は NICO が企業に貸付を行
っている。各年度の新規貸付については、前表の県から NICO への貸付額と連動している。
設備資金貸付は県貸付金と同額が小規模企業者等に貸し付けられている。県単設備貸与
と設備貸与については半分を NICO が負担しているため、県貸付額の2倍が小規模企業者
等への貸与設備価格となる。ただし、NICO では出納整理期間がないなど、県とは債権計
上の基準が異なるため、決算額ベースでは NICO と県の金額が必ずしも整合していない。
また、NICO から企業への貸付金と県貸付金は償還期間などが異なるため、各年度の償
還額や貸付金残高も一致しない。県貸付金の方が償還期間が長いため、同額の新規貸付
でもその後の年償還額は NICO 貸付金よりも小さくなる。
NICO から企業に対する貸与・貸付等の過去5年間の推移は以下の通りである。
153
表 3-1-90 NICO 実施の設備貸与・設備資金貸付推移
(単位:千円)
年
科
度
H13
H14
H15
H16
H17
997,052
857,281
982,760
907,100
733,194
4,590
1,775
1,910
1,163
972
リース資産
(注2)・・・②
1,233,297
1,280,799
1,233,607
1,070,205
889,061
県借入金
1,062,761
1,124,698
1,269,059
1,279,610
1,217,035
197,112
155,027
145,524
135,768
124,062
1,059,808
928,291
691,122
487,458
297,395
2,394
1,980
1,783
522
352
県借入金
666,944
626,625
483,637
363,511
283,635
割賦設備保証金
(注3)
178,326
145,145
119,896
90,586
81,423
設備資金貸付金・・④
610,292
703,357
789,949
1,025,825
1,042,590
県借入金
目
割賦残高・・・①
未収割賦損料(注1)
設備
貸与
割賦設備保証金(注
3)
割賦残高・・・③
県単
貸与
設備
資金
合計
未収割賦損料(注1)
692,909
902,443
1,065,225
1,372,080
1,485,148
貸与・貸付等合計
(①+②+③+④)
3,900,450
3,769,730
3,697,439
3,490,590
2,962,241
県借入金合計
2,422,614
2,653,766
2,817,922
3,015,202
2,985,819
(注1)発生主義による経過勘定項目である。
(注2)リースについては未収のリース料残高が把握されていないため、リース資産残高を記載している。
(注3)割賦による場合には設備額の 10%を保証金として受領している。
④
ア
不良債権の状況
県が管理する不良債権
県が貸付主体であった近代化資金及び合理化資金について、当時に発生した不良債権
額であり、現在は回収事務のみを県が行っている。現在、県が管理している不良債権(平
成 18 年3月 31 日現在)は以下のとおりである。
表 3-1-91 不良債権(県管理分)
(単位:千円)
種別
項目
元
金
利
子
違
約
金
合
計
近代化資金
31,427
-
19,921
51,349
合理化資金
12,878
3,326
933
17,138
44,306
3,326
20,855
68,487
合
計
154
イ
NICO が管理する延滞債権等及び管理債権等
(ア)延滞債権等
現在、NICO において管理されている延滞債権及び条件変更債権(平成 18 年 3 月 31 日
現在)は、次のとおりである。
表 3-1-92 延滞債権及び条件変更債権(NICO 管理分)
(単位:千円)
種別
項目
延滞債権(注 1)
設備貸与
条件変更債権(注 2)
合
計
28,878
22,312
51,191
県単設備貸与
-
-
-
設備資金貸付
1,260
8,330
9,590
合計
30,138
30,642
60,781
(注1)NICO では延滞債権として認識するのは、支払期日が経過したもののみであるが上記の数値は延滞
が発生している取引先に対する債権残高を記載している。
(注2)条件変更債権とは、当初の返済予定を変更(返済条件を緩和)した債権である。NICO の決算書上
は条件変更が行われていても変更後の支払条件とおりに返済が行われていれば通常債権としての
取扱となる。
(イ)管理債権及び償却債権
現在 NICO において管理されている管理債権及び償却債権は、以下のとおりである。
表 3-1-93 管理債権及び償却債権(NICO 管理分)
(単位:千円)
種別
項目
管理債権
償却債権(注 1)
合
計
設備貸与
232,133
59,315
291,449
県単設備貸与
129,664
32,652
162,317
設備資金貸付
-
-
-
361,798
91,968
453,767
合計
(注1)償却債権とは回収不能として貸倒損失処理した債権額であり、償却時の債権額よりその後の回収
金額を控除した金額を記載している。
上記の管理債権の多くは、一定の回収は行われているものの、回収に非常に長期の期
間を要するものが多く、回収が困難と思われる債権も多く含まれており、実質的な不良
債権である。償却債権は過去において回収不能と判断し、貸倒損失処理を行ったもので
あり、管理債権との合計額 453 百万円は、当該制度を実施するために必要となる社会的
なコストとしての位置づけであると理解することが出来る。
155
(2)実施した手続
県と NICO において次の手続を実施した。
(ⅰ)県における手続
・制度の概要や根拠法令等に関する資料を閲覧するとともに担当課から説明を受けた。
・貸付業務の全体の流れについて担当課から説明を受けた。
・県からの貸付実績についてデータを入手し、確認した。
・平成 17 年度の交付申請から実績報告まで、県貸付金に係る書類を閲覧した。
・中小企業支援資金貸付事業特別会計の決算データを確認した。
・割賦損料率の設定について担当課から説明を受けた。
・不良債権に関する回収事務等に関する資料を閲覧し、管理状況を確認した。
(ⅱ)NICO における手続
・貸付や貸与の根拠となる業務方法書等を閲覧するとともに、貸付業務の流れについ
て説明を受けた。
・平成 17 年度の資金貸付 29 件、設備貸与(割賦)12 件、同(リース)8件のうち、
金額の大きいものを2件ずつ合計6件抽出した(貸付・貸与台帳)。6件それぞれに
ついて、申し込みや調査、契約等に係る書類を閲覧し、手続きの適正性を確認した。
・不良債権、延滞債権及び条件変更債権について回収事務等に関する資料を閲覧し、
管理状況を確認した。
・設備貸与(リース)分について、リース資産に関する台帳を閲覧し、管理状況を確
認した。
(3)監査の結果と意見
① 指摘事項
【指摘事項①】NICO から県への報告の適正化について
NICO から県への定期的な報告としては、四半期ごとの貸付金支払状況報告書と年度終
了後の事業実績報告書が求められている(交付要綱第 17 条、貸付契約書第6条)。
平成 17 年度の報告をみると、四半期ごとに報告書(名称は貸付金支払状況報告書では
なく、事業実績報告書となっている)は提出されているが、年度終了後の事業実績報告
書は提出されていない。四半期ごとの報告書に年度当初からの累計の件数や金額も掲載
されているため第4四半期の報告書で年間の実績を把握することは可能であるが、例え
ば「平成 18 年1月1日から平成 18 年3月 31 日までの期間における標記の事項について
下記のとおり報告いたします。」と表示されているように、様式としては年度の実績報告
とは言えない。第4四半期の報告と年間の事業実績報告を兼ねるのであれば、それがわ
かるような様式を使用すべきである。
また、平成 17 年度において第3四半期までに報告された実績が、その後の減額(△230
156
千円)や取り下げ(△14,950 千円)により、第4四半期の報告書では累計の件数や金額
が修正されている。しかし、その修正の経緯等が報告書に記録されていないため、第三
者にとって第3四半期までの報告と第4四半期報告の不整合の理由がわからない状況に
ある。
県は NICO からの貸付・貸与決定の報告のみに基づいて貸付金を支払うこととなってお
り、県の支出の根拠資料として年間及び四半期の事業実績報告書は重要である。交付要
綱等に基づいて適正な報告がなされるように、県が NICO を指導する必要があり、また県
自身も第三者からみて貸付金額の根拠が把握できるように記録しておくべきである。
【指摘事項②】NICO における設備導入効果に係る審査について
NICO の設備資金貸付及び設備貸与の業務方法書では、小規模企業者等(創業者は除く。
以下同様)の対象設備について次表のような要件が付されている。すなわち、当該設備
を導入することにより、付加価値額が一定程度向上することが見込まれるものでないと
資金貸付及び設備貸与の対象にならないのである。これは、NICO 独自の要件ではなく、
国の告示(平成 12 年3月 31 日通産省告示第 172 号)で定められているものである。
表 3-1-94 小規模企業者等の対象設備に係る付加価値要件
設備導入による付加価値額(又は従業員一人当たり付加価値額)の見込増加率
3年間
4年間
5年間
従業員 20 人以下(商業、サー
ビス業は5人以下)の事業者
従業員 50 人以下で一定の要件
を満たす事業者
6%
8%
10%
9%
12%
15%
(出典:NICO の設備資金貸付事業業務方法書、設備貸与事業業務方法書より作成)
そこで、平成 17 年度における新規の設備資金貸付と設備貸与(割賦、リース)の案件
のうち、一部について借入申込書や調査書、財務分析表などの調査・審査書類を確認し
たところ、付加価値の見込みに関する記載が見られなかった。現状の調査・審査資料で
は、過去3年間の財務分析等は一通り行われているが、それをもとに付加価値あるいは
設備導入効果をどう判断したかが第三者にはわからない。
NICO の説明では、かつては企業から申し込みがあると、付加価値計算表を作成して検
討していたが、最近は作成していないとのことである(その理由は不明)。貸付審査委員
会でも審査項目として入っておらず、付加価値の見込みについて検討されないまま貸付
あるいは貸与が決定されているようである。
付加価値額の一般的な計算方法としては次のようなものがあるが、当該設備資金貸付
や設備貸与の案内パンフレットでは「付加価値=営業利益+人件費+減価償却費」と説
明されている。
157
(付加価値の一般的な計算方法例)
(ⅰ)控除法(中小企業庁方式):付加価値=生産高-(直接材料費+買入部品費+外注加
工費+間接材料費)
(ⅱ)加算法(日銀方式):付加価値=経常利益+人件費+金融費用+賃借料+租税公課+
減価償却費
確かに、付加価値は単純な生産高や利益ではないため、設備導入により3年後~5年
後どれだけ増加するかを予測することは容易ではない。しかも設備導入により見込まれ
る効果は必ずしも付加価値だけで評価できるものではなく、定性的なものも含めて総合
的に判断する必要がある。
ただし、どのような方法をとるにしても、助成法の目的にも記されている「小規模企
業者等の経営基盤の強化に必要な設備」に該当するかどうかの調査及び審査は不可欠で
ある。そのための指標の一つとして付加価値の見込増加率が設定されているのであり、
それについて検討し、その結果を記録しておくべきである。必要に応じて他の指標や定
性的な表現を組み合わせるなどの工夫により、付加価値も単なる要件をクリアするため
の数値設定にとどまらず、経営基盤強化に必要な設備かどうかを判断する有用な指標に
なると思われる。また、貸付・貸与時に付加価値の見込み(目標)を設定することで、
申込者に対して導入設備の有効利用を促すともに、実績値と比較することで、本制度運
用上の改善にもつながるものと考えられる。
制度の趣旨を踏まえ、適切に事務処理をする必要がある。
【指摘事項③】NICO における貸付審査委員会の機能・運営の適正化について
設備資金貸付事業業務方法書第 10 条・第 11 条、及び設備貸与事業業務方法書第 34 条・
第 35 条において、貸付(貸与)対象者の選定の際には貸付審査委員会に意見を求め、そ
の報告に基づいて NICO の理事長が貸付(貸与)決定を行うとされている。
具体的には、NICO は企業から申し込みがあると、提出された書類の確認や企業情報の
入手、企業訪問などを行うとともに、財務分析表や簡易財務診断報告書、調査書を作成
する。そして、NICO 内部の審査を経て、貸付審査委員会に諮られることになる。
そこで、貸付審査委員会で提示される審査資料を確認したところ、調査表と財務分析
表であるが、1件2ページ程度に企業の概要、財務データなどがまとめられ、最後に審
査結果として貸付決定、条件付決定などに丸印を付ける様式が使用されている。従業員
数や金融機関からの借入金残高など、基本的で定量的な要件を満たしているかどうかの
審査はこれで可能であるが、対象設備の導入効果や貸倒リスクなどに関する定性的な情
報や NICO の調査結果については十分に記載されているとは言えない。しかも貸付審査委
員会の議事録が作成されていないため、どういう点を審査ポイントとし、どういう議論
がなされたかなどの審査過程については文書で残されていない。例えば、債務超過とな
っている企業のケースでは、改善しつつあるため貸付決定と簡単に記されているが、具
158
体的にはどういう状況であり、どう改善する見込みがあるのかといった内容は、事後的
に第三者が確認することができない。
貸付審査委員会は県や NICO、金融機関関係者の8名(平成 17 年度)で構成され、次の
項目について総合的に審査を行うものとされている(NICO の貸付審査委員会要綱より)。
(ⅰ)申込設備の当該事業に対する効用度
(ⅱ)企業の健全性
(ⅲ)申請人の信用状況及び償還能力
(ⅳ)その他、貸与及び貸付に必要な事項
(ⅰ)については、指摘事項②の「設備導入効果に係る審査について」で記述したと
おり、小規模企業者等の経営基盤の強化に必要な設備かどうかの重要な判断であり、付
加価値額の増加率だけでなく、総合的な検討が必要となる。
また、(ⅱ)と(ⅲ)については、助成法施行規則第1条で、「一般の金融機関から当
該資金又は当該設備の設置若しくは当該プログラム使用権の取得に要する資金の融通を
受けることが困難であり、かつ、当該資金の償還又は当該譲渡し若しくは貸付け若しく
は提供の対価の支払の見込みが確実と認められる者」を貸付・貸与の対象と定められて
いる。すなわち一般の金融機関からの資金の借り入れが困難で、かつ借入金の償還や割
賦損料・リース料の支払いが確実であるという、ある意味で相反するような要件を同時
に満たすことが求められる。
いずれも制度の趣旨を踏まえつつ、政策面及び経営面から高度な判断を要するため、
貸付審査委員会の役割は重要である。限られた時間の中で効率的に審査するための工夫
は必要であるが、これらの審査を適切に行えるように、NICO は貸付審査委員会に対して
必要な情報を十分に提示すべきであり、また、その審査の過程は議事録として記録すべ
きである。これによって貸付審査委員会に対し、これまで以上に実効性のある審査を期
待することができると考える。また、県にとって貸付・貸与制度の有効性の向上及び損
失補償契約に基づく追加的な財政負担の軽減のためには、貸付審査制度の適正化は重要
な課題の一つであり、必要に応じて NICO を指導する必要がある。
【指摘事項④】NICO における設備の利用状況調査及び報告について
設備貸与事業業務方法書によると、NICO は貸与を受けた者に対して、毎年、当該設備
の利用状況を調査し、6月末日までに知事に報告するものとしている(業務方法書第 40
条)。NICO と企業の間の設備割賦販売契約書や設備リース契約書においても、設備の利用
状況並びに NICO が求めた事業の経理状況、経営の状況等に関する事項について年1回、
報告しなければならないと定められている。
設備資金貸付事業業務方法書では利用状況調査に係る直接的な規定はないが、設備資
金貸付に係る金銭消費貸借契約証書においては設備貸与と同様の条文があり、企業に年
1回、利用状況等の報告を義務付けている。
159
利用状況の調査及び報告の実施について NICO に確認したところ、過去、設備貸与・設
備資金貸付を行った企業に対して利用状況調査のはがきアンケートを実施しており、そ
の結果を県にも報告しているとのことである(表 3-1-95 参照)。
表 3-1-95 平成 18 年度設備貸与・設備資金貸付利用状況調査の概要
項 目
実施時期
実施方法
調査項目
対象企業
回答状況
内 容
平成 18 年 6 月 10 日~6 月 30 日
郵送配布郵送回収(はがき)
・貸与設備の稼働状況(高い、普通、低い)
・投資効果(売上増加、作業効率向上、外注費削減、コストダウン、品質・精度向上等)
・売上高の推移(増加、横ばい、減少)
・今後の投資計画(設備名、価格、導入時期、調達先)
・今後の利用(利用したい、利用したくない、わからない)
・改善点等の意見
H12~H17 の設備貸与・設備資金貸付利用企業で貸付残高のある 335 社(設備貸与 182
社、設備資金貸付 153 社)
88 社、回答率 26.3%
(出典:NICO 資料より作成)
しかし、業務方法書や契約書が求めているのは、貸付・貸与を受けた企業の義務とし
て年1回 NICO に報告することである。現状の方法では任意の報告となり、回答企業は4
社のうち1社にすぎない。残りの4分の3の企業は契約書の規定に反している。
本来、資金貸付や貸与の対象となった設備がどういう状況であるかを定期的に確認す
ることは貸付・貸与の実施主体としては当然である。導入した設備が予定どおり稼働し
ていないと、貸付資金の償還や割賦損料・リース料の支払いにも支障が出る可能性があ
る。また、政策的にも設備導入の効果がどの程度出ており、具体的に経営基盤の強化に
結びついているかどうかを確認することが重要であり、その状況を県に報告する必要が
ある。
実際、平成 18 年度調査結果では設備の稼働状況が低いと回答している企業が3%あり、
個別に確認及び指導等の対応を行うことが必要な企業も出てきているため、利用状況調
査は軽視できない。今後、NICO は利用状況調査及び報告の重要性を認識し、全対象事業
者から必ず報告させるべきであり、県も NICO からの報告を要求すべきである。
【指摘事項⑤】NICO における顧客マスターデータ管理について
NICO における設備貸与のリース料回収業務において、NICO 側の過失により6ヶ月の延
滞債権が発生(借り手である企業側からの申し出により延滞している事実が確認されて
いる。)していることが確認された。確認されたケースは、契約当初の顧客企業が企業買
収されたことにより、買収した企業へと契約情報(支払先の変更)の変更を行う必要が
あったが、この処理が失念されていたことによって発生したものである。また、その後
半年間もの間、当該事項が発見されなかったのは、入力担当者は既に入力を行ったつも
160
りであったこと、当初の契約情報が企業買収により支払先変更となるため、自動引落の
無効処理は行われていたため、通常は自動引き落としされない場合、銀行側からの書類
にて確認が可能であるが、銀行側からの書類上も自動引落未了分としての報告が行われ
ていなかった。
今回のケースにおける根本的な原因は、顧客企業のマスターデータ変更について、担
当者任せになっており、入力担当者以外の上席者によるモニタリングが行われていない
ことにある。また、マスターデータ変更に関する申請書類等も規定のフォームが存在し
ていないのが現状である。
今後はマスターデータ変更に関する変更申請用紙の規定フォームを作成するとともに、
担当者以外の上席者によるモニタリング(書類の承認、変更入力の確認等)を行うこと
が適正である。
【指摘事項⑥】NICO における設備貸与(リース)の資産管理について
NICO におけるリース資産の管理台帳と決算書上のリース資産残高が相違していること
が確認された。NICO においてはエクセルを利用して各年度別に台帳を作成しているもの
の、リース契約を構成する資産ごとに作成する方法ではなく、リース契約ごとの合計金
額で台帳が作成されているため、リース契約を構成する資産の一部を除却した場合、現
状のままの台帳では適切に処理できないことが原因である。確認された事案ではリース
契約を構成する資産の一部を除却したものの、台帳上は全て除却した形となっている。
一方で、決算書上は一部除却の数値が正確に把握できないことから除却が反映されてい
ないことによるものであった。
リースによる設備貸与の場合、県及び国合わせて2分の1の財源が NICO に対して貸付
けられ、事業が行われている。また、リース業において資産管理業務は、事業の根幹を
なす最も重要な業務の一つである。
今後は、リース資産に関する台帳の作成方法をリース契約ごとの総合計金額ではなく、
リース契約を構成する資産ごとに枝番を設けるなどの方法により作成することが適正で
ある。
161
【指摘事項⑦】NICO における貸倒引当金の会計方針に関する開示について
NICO の決算書において記載されている貸倒引当金に関する会計方針と実際の貸倒引当
金の計上は次のように相違している。
表 3-1-96 貸倒引当金の計上方法
種別
項目
決算書上の
会計方針
実際の計算
通常債権
債権残額(注 1)
の2%
債権残額(注 1)×
貸倒実績率(注 3)
条件変更債権
-
延滞債権
不良債権
債権残額(注 2)の 50%
債権残額(注 2)×貸倒実績率(注 3)×2
①設備貸与
債権残額(注 2)×50%(注 4)
②設備資金
貸倒引当金設定なし
(発生した場合は県負担)
(注1)貸与料の合計額から支払済貸与料+保証金残高+延滞債権額を控除した金額。
(注2)貸与料の合計額から支払済貸与料+保証金残高を控除した金額。
(注3)過去3年間の不良債権発生率の平均値(但し、H14 以前の貸与については平均値の2分の1(保
険金による充当があるため)とする。)
(注4)保険金による充当がない契約については 100%
以上のように、実際の貸倒引当金の計上方法と情報開示されている貸倒引当金の計上
方法は相違しているため、実態に合わせて情報開示を行うことが適正である。
【指摘事項⑧】NICO における貸倒引当金の設定について
NICO において管理債権(不良債権及び延滞債権等)としての管理が行われているもの
のなかに、債権回収の条件変更が平成 11 年度より毎年繰り返されているものがある。条
件変更は1年間のサイクルで行われており、変更された後の最終月に当初の年間支払額
と変更後の最終月までの累計額の差額を支払うように条件変更がなされているため、現
実的には条件変更を繰り返さない限り、延滞となることは明らかな債権である。このよ
うな方法を用いたとしても、一定期間内に返済される目処が立っていれば別だが、確認
されたケースでは債権残高が 30 百万円を超過しており、会社の財政状態も債務超過とい
う状態である。このような債権については個別に貸倒引当金の設定を検討することが適
正である。なお、現在は通常債権の貸倒実績率の2倍に相当する貸倒引当金が計上され
ているが、それでも実績率は 2.14%と非常に低い率となっている。
②
意見
【意見①】NICO における違約金計上のタイミングについて
NICO においては、県の違約金計上方法とは違い、延滞債権としての認識が行われてか
ら一定期間経過しても回収に目処が立たない場合、その時点で違約金を計算して計上を
行っている。しかし、違約金計上までの期間がまちまちとなっており、今回確認を行っ
162
た債権の中には、延滞債権となってから違約金計上までに、3 年以上経過している債権も
確認された。NICO においては滞留債権の管理に関する規定が設けられておらず、上記の
ような違約金の取扱についても、担当者の判断に依存しているのが実状である。一律に
滞留債権となってから違約金計上を行うまでの期間を規定することが必要とは考えない
が、少なくとも担当者任せにするのではなく、一定期間経過後に回収可能性の検討を行
うことを社内規定等により規定しておくことが望ましい。
【意見②】NICO における設備資金貸付に関する回収方法について
現在設備資金貸付の回収は、半年賦払いとされている。この方法による場合、貸付先
企業の財政状態が健全であり、回収に全く問題がない場合は問題とならならいが、一旦
滞留が発生すれば、その時点で6ヶ月分の回収予定債権が滞留することになる。また、
半年賦払いの方が月賦払いの場合に比して、滞留金額が多額となる可能性が高いと想定
される。設備資金貸付については、回収不能となった場合、一定の限度額までは全額県
負担となるため、県としても月賦払いとするように制度の見直しを行うことが必要であ
ると考える。
163
【県民生活・環境部】 〔一般会計〕
1 新潟県環境保全資金貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
本貸付制度は、県内の中小企業者等が公害の防止・除去又は環境への負荷の低減のた
めの施設改善、工場・事業場の移転を行う場合や低公害車の導入を行う場合などに必要
な資金を取扱金融機関が低利で融資するものである。県は、この貸付が行われた場合に
取扱金融機関に対して、当該貸付資金の2分の1を預託することにより低利融資を支援
している。
②
制度の仕組み
本制度は県環境保全資金貸付要綱で定められており、概要は以下のとおりである。ま
た、この貸付制度においては損失補償等の県のリスクはない。
表 3-2-1 環境保全資金融資制度の概要
以下の条件を充たす中小企業者(注)である法人及び個人
融 資 対 象 者
① 県内に工場又は事業場を有する者
② 貸付金の償還能力を有する者
③ 県税を完納している者
④ その他取扱金融機関の定める条件に適合している者
(注)中小企業者の範囲は省略
以下の条件を充たす上記以外の個人(アスベスト除去の場合のみ)
① 県内に住宅を有する者
② 上記の②~④に同じ
融資限度額
施設改善
事業場の移転
利率
2,000万円
3,000万円
(必要経費の
(必要経費の
4/5以内)
1/2以内)
省エネ施設
低公害車の導入
2,000万円
(必要経費の4/5以内)
アスベスト除去
2,500万円
(必要経費の
4/5以内)
年利率2.4%
新潟県信用保証協会の債務保証付きの場合は1.9%
償還期間
③
元金均等
元金均等
元金均等月賦8年以内
月賦6年以内
月賦8年以内
(うち据置期間1年以内)
(うち据置期間1年
(うち据置期間1年
以内)
以内)
制度の利用実績
平成 17 年度は、新規貸付はなく、預託金支出は当初予算 71,000 千円に対して実績は
6,098 千円であった。
なお、最近 10 年程度の貸付金残高は以下のように減少している。
164
表 3-2-2 貸付金額の推移
(単位:千円)
H9
H10
H11
475,109
270,716
140,470
H12
H13
H14
H15
H16
86,449
65,975
43,269
18,569
12,197
H17
832
図 3-2-1 過去 10 年間の貸付実績の推移
(単位:千円)
500,000
450,000
400,000
350,000
300,000
貸付金額
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
(2)実施した手続
平成 17 年度の金融機関との預託覚書を調べ、適正な額が預託されているかどうかを検
討した。また、制度の利用状況を調べた。
(3)監査の結果及び意見
① 意見
【意見①】貸付金の償還実績の把握について
県は、新規貸付金の実行については、金融機関から「貸付報告書」により報告を受ける。
また、年度末には貸付金残高を銀行に照会し、翌年度の必要な預託額を把握している。
県は当初の計画に基づく貸付金別の約定償還予定表を作成しているが、年度中の返済実
績については網羅的には把握していない。一部の金融機関から償還があった際の通知が
あるのみである。県は、銀行から月次の償還実績に係る報告を入手することにより償還
履歴を記録し、年度末の残高を把握することが管理上望ましい。
165
【意見②】制度の存在意義について
平成 17 年度の本貸付制度に係る貸付金及び預託金の残高の推移は、以下のように、既
存の貸付金の繰上返済がある一方で新規貸付の実行はゼロであった。県の預託金支出の
平成 17 年度予算は、当初通常分のみで 71 百万円(2月補正で 21 百万円に減額)であっ
たが、平成 17 年度 12 月にアスベスト枠1億円が新設された。しかし、実績は通常分が
6百万円にとどまり、アスベスト枠の使用はゼロであった。
表 3-2-3 平成 17 年度における貸付金額及び預託金の残高の推移
(単位:千円)
期首
増加
減少
残高
貸付金
12,197
-
11,365
832
預託金
-
6,098
6,098
-
県では、このような低利用の原因を調査中とのことであるが、推定される理由として
は、従来型の公害防止施設の建設等が一巡したことと、近時の低金利情勢により本貸付
制度のメリットが薄れたためとしている。
一方、アスベスト等近時問題となっている有害物質除去工事については、中小企業及
び個人住宅においては今後着工が本格化することが想定されるとともに、金利情勢も相
俟って需要が伸びる可能性もあるとしている。
県としては、中小企業及び個人のこれらの需要を的確に把握する必要があるととも
に、それらの需要に対応する県の貸付制度が利用者にとって使い勝手のよいものとなっ
ているかどうか再度検討する必要がある。例えば、産業労働観光部の所管する一般の制
度融資もほぼ同じニーズに適用できる制度である。また、公害防止施設という点では、
廃棄物対策課の廃棄物処理施設等整備資金貸付金制度との境界が必ずしも明確ではな
い。環境保全資金融資制度は、それらと異なり、認可等の規制行政と窓口が同じである
ことから、ワンストップでサービス提供が可能であることをメリットとして挙げている
が、このように類似の制度が複数あることがかえって利用者にわかりにくくなっている
可能性がある。
また、これらの制度すべての利用状況が低迷している実態を見れば、2.4%という制度
金融と同じ利率がすでに現状の金利情勢にはあまり見合わないものとなっている可能性
もある。
いずれにしても環境保全施設の導入という政策目的を有効に達成していくためには、
制度利用を増加させる必要があり、そのためには類似制度と窓口を一本化し、利用者の
立場に立った最適な制度の紹介を行う仕組みを構築するとともに、さらなる知名度の向
上と需要の掘り起こし等を行うことが必要である。
166
【意見③】預託制度の改善について
県は預託金として、毎年4月に前年度末の貸付金残高の2分の1を金融機関に預け入
れる。預託金残高は、当年度中新規に貸付があったときのみ増額する必要がある。一方、
返済方法は月賦が原則であり、毎月残高が減少していくにも拘らず、預託金を減少させ
ることはしていない。新規貸付時には、少なくとも他の貸付金の減少分を加味して預託
額を算定すべきと思われるが、新規貸付金に対応する額だけ増加させている。
貸付金残高の増減に預託金残高を逐一連動させるのは煩雑であると思われるが、他の
預託方式による制度融資等で採られている方法等を参考に、四半期毎に預託額を調整す
るなど、年度中の平均的な貸付残高に対応した預託金の残高が提供されるように金融機
関と調整することが望まれる。
167
2 環境保全事業団貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
財団法人新潟県環境保全事業団(以下、「事業団」という。)は、平成4年 10 月に、
県の出資比率3分の1、市町村・関係団体の出資比率3分の2により設立された団体で
ある。事業団は、産業廃棄物の処理(当該処理施設の建設を含む)及び環境保全のため
の啓発等に関する事業を行い、新潟県の快適で住み良い生活環境の確保並びに産業経済
の健全な発展に寄与することを目的としている。県は、事業団の廃棄物処理場の建設資
金を融資している。
②
制度の仕組み
県の貸付金は、事業費と管理費相当額に分かれる。
県は、事業費として平成6年3月から平成 11 年3月までの間に 2,557,000 千円を、ま
た、管理費として平成4年 11 月から平成 11 年3月までの間に 586,000 千円を融資して
いる。貸付金利は、貸付時の資金運用部資金金利の3分の1という優遇金利に固定され
ている。これらは4年据え置き後元金均等で平成 23 年度までに返済される予定となって
いる。
③
「エコパークいずもざき」の現状
事業団の所有する「エコパークいずもざき」は、管理型廃棄物最終処理場である。施
設建設は、平成9年4月に着工、平成 11 年3月に完成し、同年4月から事業を開始した。
その後、平成 16 年3月に最終処分場第二期工事が完成し、それに伴う浸出水処理施設増
設工事の完了により、計画した施設建設がすべて完了した。
「エコパークいずもざき」の施設の概要は以下のとおりである。
表 3-2-4 「エコパークいずもざき」の施設の概要
施設の総面積
586,335 ㎡
焼却施設(ロータリーキルン+ストーカー炉)
〃
(汚泥乾燥炉)
50t/日(24 時間)
28t/日(24 時間)
破砕施設
28t/日(7 時間)
管理型最終処分場
1,484,000 ㎥
浸出水処理施設
560 ㎥/日
浸出水調整池
14,000 ㎥
上記処分場の埋立容量の推移は以下のとおりであり、平成 17 年度末においては、約 50
%程度受入が終了している。
168
表 3-2-5 「エコパークいずもざき」の埋立量及び残余容量の推移
(単位:㎥)
年度
年度当初残余容量
11
年度埋立量
1,484,000
年度末残余容量
76,464
1,407,536
12
117,876
1,289,660
13
154,102
1,135,558
14
84,916
1,050,642
15
106,886
943,756
16
97,026
846,730
17
92,195
754,535
県及び事業団は、将来的には最終処分場を上越及び下越にも建設することを目指して
いる。
④
貸付金の実績
平成 17 年度は、償還のみ行われた。
表 3-2-6 貸付金の償還額及び残高
(単位:千円)
期首残高
償還額
期末残高
事業費
1,514,417
255,760
1,258,657
管理費
322,612
58,620
263,992
1,837,030
314,380
1,522,649
合計
(2)実施した手続
(ⅰ)契約書を閲覧し、償還予定表と照合するとともに、平成 17 年度の償還について調定
決議書及び収納済通知書と突合した。
(ⅱ)事業団の長期経営計画(平成 18 年3月)及び最近の財務諸表等を調べ、貸付金の回
収可能性を検討した。
(3)監査の結果と意見
① 意見-貸付金の回収可能性について-
事業団の長期経営計画及び最近の財務諸表等の調査の結果、現時点では、県から事業
団への貸付金の回収可能性について懸念を生じさせるような事項は見当たらなかった。
169
但し、事業団の長期経営計画及び財務諸表においては、処分場の埋立終了後の維持管
理費用の見積りが重要な要素となっている。県からの貸付金は平成 23 年度までに返済が
完了する予定であるが、維持管理費用はそれ以降に発生する。つまり、県としては、貸
付金の回収可能性のみならず、埋立終了時点において事業団が必要な維持管理費用見積
額が確保できるよう指導していくことが必要となる。事業団側において、この見積りが
適正に行われ、平成 17 年度末時点で必要十分な額が引当られているかどうかについて決
算書を調べたところ、以下のような事実が見られた。
処分場設置者は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和 45 年法律第 137 号
以下、
「廃棄物処理法」という。)第8条の5第1項(第 15 条の2の3において準用する場合
を含む。)の規定により、最終処分場における埋立処分の終了後に必要な維持管理を適正
に行うため、埋立処分の終了までの間に、埋立処分の終了後から施設の廃止に至るまで
の間の維持管理に必要な費用(以下、「維持管理に必要な費用」を「維持管理費用」とい
う。)を維持管理積立金として積み立てることとされている。
また、毎年度の積立金の額については、処分場設置者が都道府県知事(廃棄物処理法
施行令で定める市にあっては市長。以下同じ。)に毎年提出することとされている年次
報告書に記載される維持管理費用の額を基に、都道府県知事が算定し処分場設置者に対
して通知することとされている。
事業団は、決算書上、以下のように引当金・準備金とそれに対応する積立金を計上し
ている。
表 3-2-7 事業団が計上している積立金と引当金等
(単位:千円)
項目
区分
勘定科目
法定積立金相当額
資産
任意積立金・引当金相当額
負債
資産
負債
特定災害防止
特定災害防止
処分場維持管理
処分場維持管理
準備金積立金(A1)
準備金(A2)
積立金(B1)
引当金(B2)
H16年度末
197,693
197,693
350,000
350,000
繰入
240,973
240,973
350,035
180,000
-
-
49
-
438,666
438,666
699,986
530,000
独立行政法人環境保全
租税特別措置法上
再生機構に預託(法定)
の準備金
取り崩し
H17年度末
(備考)
国債で運用
税務上損金に算入
されない引当金
A1は、廃棄物処理法第 15 条の2の3において準用する第8条の5で定められている
積立金である。また、A2は、租税特別措置法上の準備金であり、法定積立金であるA
1の額を限度に無税で計上することができるものである。
B2は、A1・A2とは別に、維持管理費用のうちA1・A2の額を超える部分を引
当するものであり、B1はそれを積立金として計上するものである。
170
この取扱いについて、事業団は以下のように説明している。「法定積立金(A1)は、
埋立終了後の維持管理に用途が限定され、それ以前の取り戻しができないため、確実に
発生する維持管理費について計上することとしている。また、任意の積立金は、発生の
恐れがある額を事業運営の安全性、保守性の観点から積み立てるものである。」
なお、B1とB2の額が相違しているのは、期末日前までに引当金の額を超えて、積
立金として国債に預け入れてしまったからとのことである。
ア
長期経営計画
事業団は、平成 18 年3月に長期経営計画を策定した。その中で、事業団は埋立期間終
了後の維持管理費を 2,280 百万円と見積もっている。長期経営計画では、これを手持現
金(繰越金)1,340,000 千円と最終処分準備金(法定積立金)940,000 千円との合計で賄
うこととしている。
表 3-2-8 長期経営計画における維持管理費用の見積額
(単位:千円)
維持管理等
必要額
焼却施設解体費用
400,000
業者見積もりによる
浸出水処理費用(1~5 年目)
500,000
100,000×5 年
同上
(6 年目以降)
1,380,000
計
2,280,000
手持ち現金
1,340,000
(内訳)
最終処分準備金
69,000(注1)×20 年
940,000
(注1)事業団策定の上越地区廃棄物処理施設整備基本計画報告書 P.111②ハに、浸出水処理施設運転費
について、「浸出水は埋立完了後5年程度で水質が安定してくるものと仮定し、・・・6年目以降
は埋立中の1/2の運転費を計上する」とされていることにより、浸出水処理費用のうち施設維
持管理費を2分の1としたもの。
イ
維持管理積立金(準備金積立金)
事業団は、A1(=A2)の金額の算定を以下のように行い、県知事に報告し、維持
管理積立金を独立行政法人環境保全再生機構に預託している。また、同額の準備金を無
税で積み立てている。これらの算定は以下のようになされている。
171
表 3-2-9 維持管理積立金の積立額
(単位:千円)
浸出水処理費用(1~5 年目)
維持管理等必要
同上
(6 年目以降)
500,000
1,380,000
100,000×5 年
69,000 ( 注 1 ) × 20
年
額
小計(A)
1,880,000
A×1/2
940,000
平成 16 年度末残高
197,693
平成 17 年度積立額
240,973
積立金残高
(注2)
940 百万円×84/180
平成 17 年度末残高
438,666
(注3)
(埋立期間 15 年のうち
経過 7 年分)
(注1)事業団策定の上越地区廃棄物処理施設整備基本計画報告書 P.111②ハに、浸出水処理施設運転費
について、「浸出水は埋立完了後5年程度で水質が安定してくるものと仮定し、・・・6年目以降
は埋立中の1/2の運転費を計上する」とされていることにより、浸出水処理費用のうち施設維
持管理費を2分の1としたもの。
(注2)埋立完了後の表面覆土と緑化等及び排水処理により浸透水量と浸出水量の減少、従って使用する
薬品量及び光熱水量の減額が見込まれるとして、浸出水処理費用全体に2分の1を乗じている。
(注3)準備金は、積立金の範囲内で計上することができるとされており、事業団では同額を計上してい
る。
ウ
決算書上の引当金
事業団は、決算書上、埋立後に必要な維持管理費用を以下のように見積もっている。
表 3-2-10 決算書上の維持管理費用の見積額
(単位:千円)
項目
費用内訳
金額
焼却施設解体費用
維持管理等必要額
維持管理引当金
400,000
浸出水処理費用
2,500,000
合計(A)
2,900,000
法定積立金(B)
△940,000
差引(A)-(B)
1,960,000
平成 16 年度末残高
繰入額
平成 17 年度繰入額
備考
業者見積り
100,000×25 年
(表 3-2-6 参照)
350,000
180,000
(1,960,000-350,000)/
(10-1)年=178,888,888
平成 17 年度末残高
172
530,000
すなわち、A2とB2を合算してこの必要額となるように処分場維持管理引当金を計
上している。
ア~ウまでの相違点を一覧にすると次のとおりである。
表 3-2-11 ア~ウの相違点
ア
長期経営計画
イ
法定積立
ウ
(租税特別措置法適用)
焼却施設解体・撤去
400,000 千円
-
決算書
(引当金+準備金)
400,000 千円
費用
100,000 千円/年。但し、
浸出水処理費用
このうち維持管理費用
このうち維持管理費用
は 6 年目以降 1/2。こ
は 6 年目以降 1/2
見積り維持管理費用
100,000 千円/年。但し、
100,000 千円/年
れらの総額の 1/2。
2,280,000 千円
940,000 千円
2,900,000 千円
【意見①】見積りの首尾一貫性について
ア
長期経営計画と決算書との不整合について
事業団は、長期経営計画(平成 18 年3月)を策定し、その中で、計画期間終了後の維
持管理費を 2,280 百万円と見積っている。また、これらは、手持現金(繰越金)1,340 百
万円と維持管理積立金 940 百万円との合計で賄うこととされている。
これが事業団としての平成 18 年3月時点の正式な見積りであるため、この見積りを平
成 17 年度決算書の引当金(準備金を含む。以下、同じ)の額に反映させるべきであった。
しかし、上述のように、平成 17 年度の決算書においては、将来の埋立終了後発生が予想
される解体費用及び維持管理の支出に備えるため、合計 2,900 百万円を想定した引当金
が計上されている。これでは、事業団としての将来の費用の見積りが首尾一貫していな
いこととなる。県としては、事業団が合理的に見積った維持管理費用を長期経営計画及
び決算書における引当金の計上に首尾一貫して適用するよう指導すべきである。
イ
特定災害防止準備金と維持管理引当金
埋立終了後の維持管理費用についての事業団の正式な見積りは、上述のように 2,280
百万円である。現在、これに備えて、特定災害防止準備金と維持管理引当金の2つが計
上されているが、会計上は、前者についても引当金の要件を充たす限り、引当金として
一本化して表示することが望ましい。しかし、平成 17 年度の決算書には、このような準
備金と引当金との関係が必ずしも明確に開示されているわけではない。従って、正式な
173
見積りである 2,280 百万円を基礎に必要十分な引当がなされていることについて事業団
が決算書上で説明するよう県は指導する必要がある。
なお、これらの準備金及び引当金は平成 16 年度に初めて計上された。本来は、費用の
性質上、埋立開始時(平成 11 年度)から埋立量に比例するか、それに準じて埋立期間で
按分して計上することが適当であったと考えられる。平成 16 年度以降、過年度繰入不足
額も考慮して繰入額が計上されているが、決算書上、過年度の引当金不足額の処理方法
について開示することが望ましい。
【意見②】長期経営計画の定期的な見直しの必要性について
将来の維持管理費の見積りに当たって考慮すべき要因は以下に記述するようにさまざ
まあり、現時点の事業団の見積りが過大或いは過小であると一概に判断できない状況に
ある。
ア
埋立後の維持管理費の見積り
長期経営計画における埋立完了後必要経費は、供用が開始された平成 11 年から平成 14
年度までの実績を用いて算定されている。供用開始直後の状況と、5年経過後の状況と
では乖離が発生していることも推測されることから、直近の実績を基礎に見積りを再度
検証していく必要がある。
イ
環境省から示された指針
維持管理費用の算定については、これまでガイドラインがなく、処分場設置者の申請
額又は特定災害防止準備金制度における最終処分場災害防止費用の見積額における種別
単価の上限値にならって算出された額が利用されているのが実態であった。しかし、平
成 18 年4月に環境省から「最終処分場維持管理積立金に係る維持管理費用算定ガイドラ
イン」(以下、「ガイドライン」という。)が公表されたため、県は特定産業廃棄物最終
処分場の設置者に対して、これを参考にするよう通知を行っている。
(ア)維持管理費用
ガイドラインで示された費用の構成と、平成 17 年度の事業団の見積りとの間には以下
のような相違がある。
174
表 3-2-12 ガイドラインで示された方法と事業団の方法の比較
(単位:千円)
ガイドラインで示された費用と算定方法
事業団
維持管理費用の見積りに
埋立終了時に要する費用
含めていない。
(以下は試算
の結果)
最終覆土単価(円/㎥)× 覆土量(㎥)+
最終覆土費用
171,137
キャッピングシート等費用(円)
法面保護工費用
植栽費用
法面保護工事費単価(円/㎡)×
施工面積(㎡)
20,090
植栽工事費単価(円/㎡)× 施工面積(㎡)
雨水排水設備工事費単価(円/m.)×
雨水排水設備費用
18,360
敷設延長(m.)
ガス抜き設備費用
ガス抜き管設備費用+通気口設備費用
計
4,104
213,691
終了~廃止
要員数(人)×
年間人件費(円/人年)×
人件費
維持管理年数(年)
施設/機器の点検
年間点検委託費(円/年)× 維持管理年数(年)
費用
「埋立終了後の維持管理
施設/機器の補修
隔年補修費(円/年)の合計額
費用
費」として見積りに含められ
ている(表 3-2-10 参照)。
浸出液処理設備運
水道光熱費、薬品費、その他
転管理費用
水質検査等モニタ
リング費用
保有水等水質モニタリング、処理水質モニタリン
グ、地下水水質モニタリング、その他
その他の必要年間費用(円/年)×
その他諸費用
維持管理年数(年)
廃止時に要する費用
管理事務所等の撤
去費用
廃止時の施設(管理事務所等)撤去費用(円)+
その他必要な費用
焼却施設解体撤去費用1
407,400 千円を含めている。
平成 17 年度においてはこのようなガイドラインが示されていなかったため、表 3-2-12
で示すように、事業団は埋立終了時に要する覆土費用等を維持管理費用の見積りには含
めず埋立期間中の経費として支出を予定していた2。今般ガイドラインが公表されたこと
1
2
ガイドラインからは、焼却施設の解体・撤去費用を含めるべきかどうか明確ではない。
長期経営計画で示されている。現在の事業団の試算によると、合計約 213,691 千円と見積もられる。
175
により、県としては、事業団がこれらのうち埋立終了時の最終覆土費用について平成 18
年度以降の見積りに含め埋立期間等を基礎として維持管理積立金を積み立てるよう指導
する必要がある。
(イ)維持管理期間
ガイドライン参考資料6では、「平成 13 年度廃棄物最終処分場における埋立物の安定
化に関する調査報告書」
(平成 14 年3月、(財)廃棄物研究財団)の安定化の達成目標に
達するまでの年数(埋立終了年数)を算出した近似式を示している。
「エコパークいずもざき」に近似する主要廃棄物が焼却灰と不燃物の混合である施設
の場合、以下のような年数が示されている。
表 3-2-13 近似施設の安定化達成年数と「エコパークいずもざき」の目標値
「エコパークいずもざき」の
10mg./L 以下の安定化達成年数
処理目標値
BOD
5~7 年
20mg./L
COD
15~48 年
-
5 年~41 年
30mg./L
全窒素
事業団は、全窒素の 10mg./L 以下への安定化達成年数が5~41 年、その倍程度の濃度
達成にはその半分の年数がかかるとして、41 年を2で除し、25 年(
(12+41)÷2=26.5)
という維持管理期間を導いている。
上述の調査報告書で5~41 年としたのは、2つしかない処理場実績が5年と 41 年であ
ったためである。このように過去の実績が少ないため、このタイプの処理場の安定化達
成年数の目安はあまりにも幅広いものとなっている。今後は、その後に安定化を達成し
た類似の施設の実績をもとに維持管理期間の見積りも変更していく必要がある。
ウ
料金収入の見積り
(ア)処理料金の設定
長期経営計画では、平成 25 年の埋め立て完了時までに料金値上げを2回見積もってい
る。しかし、事業団は、昨今の経済情勢からなるべく料金を据え置くことを目指してい
る。料金据え置きの場合のシミュレーションによれば、埋立終了時に僅か 33 百万円しか
残らず、埋立完了時の維持管理費用 2,280 百万円は留保できないことになる。
因みに、以下のような民間企業の料金体系と比較した場合、「エコパークいずもざき」
は料金が高めといえ、さらに料金値下げをも検討する余地もあるといえる。料金体系を
下げた場合は、埋立終了時において必要十分な剰余金が確保できなくなるおそれが出て
くるため、事業団としてはいっそうの経営効率化等に迫られることになる。
176
表 3-2-14 事業団と民間業者との産業廃棄物価格比較(平成 17 年度)
(単位:円)
民間業者(A)(注 1)
事業団(B)(注 1)
処理実績(注 2)
燃え殻
26,000
35,000
1.34
煤塵
26,000
37,000
1.42
鉱さい
18,000
15,000
0.83
2.9%
23,000
21,000
0.91
10.4%
(B)/(A)
20.7%
汚泥
(無機性汚泥)
(注1)処理料金のほか、消費税と産業廃棄物税がかかる。
(注2)「エコパークいずもざき」の平成 17 年までの処理実績(金額)の割合
(イ)処分量の減少
長期経営計画においては、事業団は平成 17 年度以降の年度別搬入量を平成 16 年度県
産業廃棄物実態調査報告書及び第二次県廃棄物処理計画で予測された将来の県内処分量
を基礎に、「エコパークいずもざき」の産業廃棄物、一般廃棄物別の県内シェアにより推
計している。
しかし、廃棄物の有効活用等が予想以上に進んだことから、平成 17 年度時点の実績は
以下のように計画を下回っている。
表 3-2-15 産業廃棄物の埋立処分量の将来予測値と実績比較
(単位:千t)
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
H26
319
303
287
276
265
255
243
231
226
220
215
205
県の埋立処
分量の将来
予測値(A)
実績(B)
276
251
245
(B)/ (A)
0.86
0.82
0.85
(注)なお、一般廃棄物については、乖離は少ない。
県は、事業団が、直近の実績を基礎に、埋立後の維持管理費用や料金収入の見積りを
適正に改訂していくよう指導する必要がある。
②
意見-廃棄物特別会計から一般会計への繰出金-
一般会計では、主として以下のような事業を実施している。
(ⅰ)環境保全の啓発に関する事業
(ⅱ)地球環境保全対策に関する事業
177
廃棄物特別会計から一般会計に繰出されている金額は以下のとおりである。
表 3-2-16 一般会計への繰出金額の推移
(単位:千円)
平成 15 年度
一般会計への繰出金
H16 年度
H17 年度
38,190
47,057
58,000
当期収支尻
113,060
△196,523
△142,109
次年度繰越金
670,306
473,782
331,673
当期正味財産増減額
260,142
△680,130
△591,815
期末正味財産合計額
3,237,946
2,557,816
1,966,001
(参考)廃棄物処理事業特別会計
平成 17 年度の繰出金 58,000 千円は以下のように、管理費や公益事業の不足分に充当
されている。
表 3-2-17 平成 17 年度一般会計への繰出金額
(単位:千円)
一般会計の事業費で補助金収入等で賄えないもの
管理費
46,537
固定資産取得支出
1,089
公益事業
6,070
特定預金支出
167
収支差額
4,137
合計
58,000
【意見③】一般会計への繰出金について
廃棄物処理事業特別会計から一般会計への繰出金は年々増加している。これらは、主
として一般会計の管理費(理事長、専務理事、総務課5名の人件費を含む)と、公益事
業の事業費のうち補助金収入等で賄えない額を補填するのに充当されている。
一方、廃棄物処理事業特別会計においては、処理場維持管理積立金の積立等を原因と
して、年々収支計算書上の次年度繰越金は減少してきている。また、当期正味財産もこ
の2年間減少している。
事業団によれば公益事業に充当することについては十分な理解が得られているとのこ
とであるが、事業団がそもそも民間企業の補完として廃棄物処理事業に参入した経緯か
ら考えると、事業団の剰余金の使途は県の公益的な政策判断よりも、民間業者としての
事業団の判断が優先されるべきものと考えられる。
178
県としては、これらの点を踏まえて一般会計への繰出基準を定めるよう指導すること
が望まれる。
③
意見-今後の処分場建設計画について-
【意見④】上越・下越地域の処分場建設計画について
第二次新潟県廃棄物処理計画(平成 18 年3月)では、県内の産業廃棄物最終処分場の
残余容量が大幅に減少する状況を踏まえ、県では必要な処理能力を確保するため、公共
関与の処理施設を上・中・下越に整備することが必要とされている。
これに基づいて、事業団は平成 22 年完成を目指して上越地区に処分場を建設するため
の調査を開始したが、周辺住民の理解が得られず、現時点では凍結されている。またこ
のための上越地区廃棄物処理施設建設特別会計が設けられたが、平成 17 年度では活動が
休止しており、先行経費のため 53,486 千円の欠損を抱えている。なお、廃棄物特別会計
はこの会計に対して 88 百万円貸付を行っている。
廃棄物処理事業の事業性にマイナスの影響を与えるのは2つの要素がある。ひとつ
は、排出事業者の減量化努力やリサイクルの促進等により、最終処分すべき廃棄物の量
そのものが計画量を下回ることであり、もうひとつは、委託料金が県外も含め他の最終
処分場と比較して高いため、廃棄物が搬入されないことである。
県及び事業団は、県内の廃棄物の減量化及び再資源化を進め、地球環境保全を促進し
ていく使命を負っている。それにも拘らず、事業性確保のためには、廃棄物の量を確保
せざるを得ない。これらを同時に達成しようとする場合は、相反する目的を追求するこ
とにもなり、また、後者の立場においては民間企業と完全に競合することになる。
それにも拘らず、県が事業団による処理場建設を推進する場合には、民業圧迫の恐れ
が生じないよう以下の点において留意することが必要となろう。すなわち、県は、廃棄
物処理業が本来民間業者が行うべき事業であることを踏まえて、県内で発生する産業廃
棄物の適正な処理のために確保すべき最終処分場の必要量を算出し、民間による処理施
設の整備の見通しを勘案しつつ、必要最小限の規模で適切な建設時期に建設を行う必要
がある。
179
3 新潟県廃棄物処理施設等整備資金貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
本制度は、平成5年度に創設された制度で、中小企業者が廃棄物処理施設等を整備す
る場合に、その資金の一部を有利な条件で貸付けることにより、廃棄物の適正処理及び
リサイクル体制の整備を円滑に推進することを目的としている。
県は、取扱金融機関が、「新潟県廃棄物処理施設等整備資金貸付要綱」
(以下、「要綱」
という。)の定めるところにより中小企業者等に対して資金を貸し付ける場合、予算の
範囲内において、当該取扱金融機関に当該資金の2分の1に相当する額を預託する。
②
制度の仕組み
上述の要綱で具体的な要件や手続きが定められている。貸付の対象となる資産は、以
下の3つに分類される。
(ⅰ)産業廃棄処理施設(収集運搬車両、保管・積替・中継施設、中間処理施設、埋立処
分場)
(ⅱ)産業廃棄物再生利用処理施設整備資金(保管・積替・中継施設、中間処理施設、産
業廃棄物の性状を分析できる機器)
(ⅲ)登録廃棄物再生事業者施設(保管、運搬、梱包、選別、加工、裁断)
貸付条件は以下のとおりである。
貸付利率は、平成 18 年4月1日現在、原則として県の制度融資と同じ 2.4%であるが、
新潟県信用保証協会の保証付の場合は、年 1.9%である。貸付限度額は、施設別に定めら
れており、最高額でも 50 百万円である。
③
貸付期間
8年以内
据置期間
1年以内
償還方法
元金均等月賦償還
制度の利用実績
平成 17 年度は新規貸付がなく、預託金支出は、当初予算 300,391 千円に対し、実績
201,432 千円であった。
なお、過去 10 年間の貸付残高の推移は以下のとおりである。
表 3-2-18 廃棄物処理施設等等整備資金貸付制度の利用実績
(単位:千円)
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
814,485
717,514
607,355
524,326
488,002
503,934
443,607
402,868
180
H17
311,154
図 3-2-2 過去 10 年間の貸付金の推移
(単位:千円)
900,000
800,000
700,000
600,000
500,000
貸付金額
400,000
300,000
200,000
100,000
0
H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17
(2)実施した手続
平成 17 年度の金融機関との預託覚書を調べ、適正な額が預託されているかどうかを検
討した。また、制度の利用状況を調べた。
(3)監査の結果及び意見
① 意見
【意見①】貸付金の償還実績の把握について
県は、年度末には貸付金残高を銀行に照会し、翌年度に必要な預託額を把握している。
県は約定償還予定表を有しておらず、金融機関を通じて償還があった事実を網羅的に把
握していない。県としては、管理上、償還予定表を入手するとともに、銀行からの月次
の償還実績に係る報告を入手することにより償還履歴を記録し、年度末の残高を把握す
ることが管理上望ましい。
【意見②】制度の低利用について
上述のように、平成5年に制度が開始して以来、毎年新規の申込があったが、平成 17
年度は新規貸付金はゼロであった。この要因として、県は廃棄物処理施設の整備が進ん
だこと、景気低迷により資金需要が落ちたこと、低金利情勢の中で魅力が薄れたことを
挙げている。しかし、景気が回復に向かっていることから、今後は資金需要が増えるこ
とを見込んで金融機関の融資審査担当に対してチラシを配る等して知名度の向上に努め
ているとのことである。
181
この融資制度も、「1環境保全資金融資制度」と同様、産業労働観光部の所管する制度
融資等と競合するが、設置基準の認定等規制行政と一体として、利用者にワンストップ
でサービスを提供できるメリットがあるとしている。しかし、このことがどの程度貸付
金の利用促進に寄与しているのか不明であり、また、このように類似の制度が複数ある
ことが利用者にとってわかりにくいものとなっている可能性がある。
いずれにしても廃棄物の適正処理・リサイクル体制の整備という政策目的を有効に達
成していくためには、制度利用を増加させる必要があり、そのためには類似制度と窓口
を一本化する等、利用者の立場に立った最適な制度の紹介を行う仕組みを構築するとと
もに、さらなる知名度の向上と需要の掘り起こし等を行うことが必要である。
【意見③】預託金制度について
県は預託金として、毎年4月に前年度末の貸付金残高の2分の1を金融機関に預け入
れる。新規貸付金が実行された場合は、金融機関から「貸付報告書」により報告を受ける。
この場合は、預託金を増額するよう金融機関から要請される。一方、返済方法は月賦が
原則であり、毎月残高が減少していくにも拘らず、預託金を減少させることはしていな
い。新規貸付時には、少なくとも他の貸付金の減少分を加味すべきと思われるが、新規
貸付金に対応する額だけ増加させている。
貸付金残高の増減に預託金残高を逐一連動させるのは煩雑であると思われるが、他の
預託方式による制度融資等で採られている方法等を参考に、預託残高を四半期毎に調整
する等して、年度中の平均的な貸付残高に対応した預託金の残高が提供されるように金
融機関と調整することが望まれる。
182
4 新潟県中越大震災復興基金貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
財団法人新潟県中越大震災復興基金(以下、「基金」という。)は、新潟県中越大震災
からの早期復興のための各種取組を補完し、被災者の救済及び自立支援並びに被災地域
の総合的な復興対策を安定的かつ機動的に進めることにより、災害により疲弊した被災
地域を魅力ある地域に再生させることを目的として、平成 17 年3月1日に設立された。
県は、基金が被災者等への支援を実施するための財源を確保するための原資として、
下記の「② ア スキーム」により、平成 17 年3月 31 日から平成 27 年3月 31 日まで
の 10 年間、無利子で 300,000,000 千円を貸し付けた。
②
ア
制度の仕組み
スキーム
県は、基金に対して 5,000,000 千円の出資を行うとともに、下記に示したスキームに
より貸付を行っている。
図 3-2-3 スキーム図
起債許可
②無利子貸付
(交付税措置)
県
復興基金
③譲渡代金
③貸付債権
運用益(2%)
国
④利払い
譲渡
①貸付(2%)
銀行
(貸付債権)
これは、指名債権譲渡方式の仕組みを利用した貸付である。まず、県が復興基金に貸
付けるための資金を銀行から利率2%で借りる(①)。県は銀行から調達した資金を復興
基金に無利子で貸付ける(②)。復興基金は、県が借り入れた資金で、銀行が保有する県
に対する貸付債権を購入する(③)
。その結果、復興基金は県に対する貸付債権を有する
ことになり銀行の貸付利子2%がそのまま基金に移転する(④)。
このスキームは、雲仙岳災害対策基金(平成8年~13 年)及び阪神・淡路大震災復興
基金で用いられた。
イ
契約関係
基金と県及び金融機関の間には、以下の契約が存在する。
183
表 3-2-19 契約関係一覧
(県と金融機関)
(単位:千円)
契約名
契約日
金額
金銭消費貸借契約
H17.3.31
100,000,000
金銭消費貸借契約
H17.3.31
100,000,000
H17.3.31
100,000,000
契約者
債権者:第四銀行
復興基金への転貸資金
債務者:新潟県
債権者:北越銀行
復興基金への転貸資金
債務者:新潟県
債権者:大光銀行
金銭消費貸借契約
内容
復興基金への転貸資金
債務者:新潟県
(県と復興基金)
契約名
契約日
金額
H17.3.22
300,000,000
財団法人新潟県中越大
震災復興基金貸付契約
契約者
内容
債権者:新潟県
復興基金事業実施のた
債務者:復興基金
めの経費の原資
(復興基金と金融機関)
契約名
契約日
金額
貸付債権譲渡契約
H17.3.31
100,000,000
H17.3.31
100,000,000
H17.3.31
100,000,000
貸付債権譲渡契約
貸付債権譲渡契約
③
契約者
内容
債権譲渡者:第四銀行
第四銀行が保有する県
債権譲受者:復興基金
への貸付債権の譲渡
債権譲渡者:北越銀行
北越銀行が保有する県
債権譲受者:復興基金
への貸付債権の譲渡
債権譲渡者:大光銀行
大光銀行が保有する県
債権譲受者:復興基金
への貸付債権の譲渡
貸付金の実績
平成 16 年度に 300,000,000 千円の貸付が実行されて以来、残高に変化はない。基金は、
上記のスキームにより、2%相当の果実を利用して復興事業に充てている。
④
基金事業の推進
基金は、県の震災復興計画と連携し、10 年間で総額 60,000,000 千円の支援策を講じる
こととしている。これに当たって、基金では被災者及び被災地域のニーズを把握するた
め、事業内容についての提案を公募し、迅速に実施すべきと思われる事業メニューを順
次追加してきた。平成 18 年8月末時点で、78 の支援事業が決定され、それらの想定事業
費は 24,220,000 千円3となっている。
3
平成 18 年 11 月末時点では 83 支援事業、想定事業費 24,926,000 千円。
184
決定した事業については財団のホームページに掲載するとともに、平成 18 年2月に
は、その時点の事業を「事業メニューのご案内」にまとめ、県或いは市町村を通じて配
布している。また、「使い勝手が悪い」との指摘に対応して、県と市町村との二重審査体
制を改め、市町村に移管できる事業については移管するとともに、同年 10 月からイラス
トを多く使ったカラーチラシを頒布し、基金事業の紹介・周知に努めている。しかし、
「分かりにくい」
、
「手続きが煩雑」といった声が聞かれ、
新聞報道4によれば、依然として、
被災者への浸透には至っていないとのことである。
平成 17 年度の事業費は、借入も合わせて当初予算 18,000,000 千円を確保したが、そ
の後の利用状況が思わしくなかったため、平成 18 年2月に 3,033,000 千円へと減額補正
を行い、最終的には 2,719,030 千円(当初予算比 15.1%、補正予算比 89.6%)の決算と
なった。
(2)実施した手続
平成 17 年度事業報告上、金額の大きい9事業を選び、さらにその中の金額の大きい補
助金を1或いは2件選択して、交付申請から補助実績確定までの手続を検証した。この
手続を実施した対象は以下のとおりである。
表 3-2-20 サンプリングの対象とした平成 17 年度事業メニュー
(単位:千円)
事業メニュー
事業内容
総件数
助成金額
仮設住宅設置市町村の応急仮設住宅管理推進
協議会等に対し、共同利用施設の維持管理費
応急仮設住宅維持管理等
などを補助することにより、被災者の自立復
7
297,146
9
272,431
317
267,805
167
102,571
興を支援するもの
市町村が実施する一時的な雇用機会の創出を
被災地域緊急雇用創出
行う事業に要する経費の一部を補助し、被災
者の就労を支援するもの
越後杉を使用して住宅を再建する方に対し
越後杉で家づくり復興支援
て、その要する経費の一部を補助することに
より、住宅再建を支援するもの
多雪地域において雪国特有の住様式で住宅を
再建される方に対して、その要する経費の一
雪国住まいづくり支援
部を補助することにより、住宅再建を支援す
るもの
4
新潟日報記事(平成 18 年 10 月 4 日)記事より引用。
185
事業メニュー
事業内容
総件数
助成金額
県産瓦を使用して住宅を再建する方に対し
県産瓦使用屋根復旧支援
て、その要する経費の一部を補助することに
258
143,236
138
142,336
63
204,190
1,260
242,929
21
323,912
より、住宅再建を支援するもの
事業用建物が全半壊した中小企業者に対する
平成 16 年大規模災害対策
資金特別保証料負担金
県制度融資の「平成 16 年大規模災害対策資
金(地震対応枠)」の保証料を補助し、経営の
安定化を目指すもの
事業再開・継続のために事業所の解体撤去を
行う中小企業者に対して、その要する経費の
事業所解体撤去支援
一部を補助することにより、事業の再開を支
援するもの
小規模農地等の復旧や、被災により失われた
水田の地力を回復させるための経費の一部を
手づくり田直し等支援
補助することにより、経営の再建を支援する
もの
風評被害を払拭し県内観光産業を地震の影響
から回復させるため、イベント等を行う観光
観光復興キャンペーン推進
団体等に対しその要する経費の一部を補助
し、観光復興を支援するもの
(出典:平成 17 年度事業報告書)
(3)監査の結果及び意見
① 意見
【意見①】会計期間について
財団法人の会計期間は、3月1日から2月末日である。これは、財団法人の設立日が
平成 17 年3月1日であったことによる。しかし、これが通常の地方公共団体の会計期間
(4月1日から3月 31 日)と一致していないことから、市町村に対する補助金交付の手
続が煩雑となっている。例えば、補助対象が、地方公共団体が第三者に対して行う委託
事業であった場合、委託契約期間は通常地方公共団体の会計期間と一致したものとなる
のに対して、財団法人にとっては2期間にまたがるため、補助金に係る手続は2回行う
必要が出てくる。これは市町村に事務的な負担をもたらすものと考えられる。このため、
会計期間のずれによる現在の負担の状況や今後の支援事業内容等を勘案して、財団法人
の会計期間を4月1日から3月末日までに変更することを検討することが望ましい。
186
【意見②】事業メニューの記載について
ア
事業実施期間
会計期間の問題は意見①で記載したとおりであるが、「事業メニューのご案内」 (平成
18 年2月
以下、
「事業メニュー」という。)上の記載にも留意が必要である。例えば、
年度別に補助金額が異なる場合であっても、事業メニュー 上は、単に「平成 16 年度○○
円、平成 17 年度以降○○円 」 と記載されている。読み手にとっては必ずしもこれらが
財団法人の年度を意味していることが容易には分からない。少なくとも利用者に対する
頒布物には、財団法人を基準とした記載方法ではなく、適用期間が明確に分かるような
記載方法とする必要がある。
イ
事業メニューの記載誤り
事業メニューには以下のような記載誤りが見られた。利用者にとって誤解を招かない
ようこれらを訂正する必要がある。
例①
「応急仮設住宅維持管理等」のうち家財置場用倉庫等借り上げ費
(略)
2.2人以上世帯(上限月額
10,000 円)
(ア)月額 5,000 円まで全額
(イ)月額 5,000 円を超える部分は 10,000 円を限度として当該金額の月額 1/2 助成
(略)
(下線部は、正しくは 15,000 円。
)
例②
雪国住まいづくり支援事業
区分
A
融雪式
補助対象経費
屋根融雪装置施設(構造)のために要する全体工事費及び一般住宅より増
加する建築工事費
B
落雪式
次の工事費のうち該当するものの合計
1.一般住宅(カラー鉄板)と落雪式住宅(ステンレス鋼版、フッ素樹脂
鋼板等の滑雪性能のある金属板)との屋根工事費の差額
2.屋根強制落雪施設(構造)に要する全体工事費
3.落雪した雪を消雪パイプ又は、融雪池を設置してボイラー等で加熱し
た温水で溶かす装置に要する全体工事費
4.一般住宅と高床式との基礎工事費の差額
C
耐雪式
一般住宅と耐雪式の住宅との建築工事費の差額
(下線部は、削除するのが正しい。)
187
【意見③】申請時及び精算時の書類の不備について
手続を迅速化するため、申請から精算に至るプロセスにおいて、書類中の不要な欄は
省略するとともに、真に審査に必要な事項は明確に記載することを求める必要がある。
ア
補助実績報告書の記載について
仮設住宅に係る維持管理費は、原則として利用者が負担することとなっているが、基
金は共同利用施設の維持管理費を補助することとなっている。
ちなみに、応急住宅対策に係る県と市の役割分担は以下のようになっている。
県の責務
市町村の責務
・
応急仮設住宅を設置し避難者に供与する。
・
県から委任を受け市町村が実施する応急修理
ともに、応急住宅対策に関する被災者の希望を
の事務を補助する。
把握する。
・
県営住宅の空家を仮住宅として提供する。
・
民間住宅の空家情報等を提供する。
・
・
被災した住宅、宅地の被害状況等を調査すると
応急仮設住宅の建設地を選定し、県の行う応急
仮設住宅の供与に協力する。
・
県から委任を受けて応急修理事務を実施する。
・
市町村営住宅の空家を仮住宅として提供する。
維持管理費に含まれる費用には、仮設住宅入居者の家財置場用倉庫等借上費が含まれ
る。精算時の補助金実績報告書を調べたところ、実支出額欄に正しい金額が記載されて
いない例が見られた。
借り上げ内訳
補助基準額
補助金額(A と B を比
(B)
較して少ない数)
世帯主氏名等
相手方
期間
実支出額(A)
①
(略)
14ヶ月
75,000
207,500
207,500
②
(略)
15ヶ月
10,000
179,000
179,000
実支出額(A)は、①、②それぞれ 440,000 円、283,500 円であった。補助金額欄は適
正な金額が記載されているため結果的には適正な補助金が交付されたが、補助金の額の
確定時に提出される資料については正確な数値を記載するよう指導することが望まれ
る。
イ
決裁書への記入
補助金の交付決定及び額の確定の際の決裁書に、決裁日の日付が記載されていないも
のが散見された(「手づくり田直し等支援」でサンプリング対象とした補助金についても
188
同様)。決裁書にはそのほか、収受、起案、処理期限、施行の日付欄があるが、収受の日
付欄については殆ど使用されていなかった。また、交付申請書上、申請額を鉛筆で訂正
している例が見られた。
事務処理手続を簡素化する必要があるのであれば、書式も簡素化し必要な欄のみを設
けることが望まれる。また、修正を行うのであれば、修正を行った者が分かるように押
印するとともに修正理由、修正日等を鉛筆以外で明記することが望ましい。
ウ
無職証明書
被災地域緊急雇用創出事業の要件のひとつである「失業者」であることを証明するため
に、市町村長が発行した無職証明書を補助実績報告書に添付させている。 この証明書の
日付を調べたところ、事業開始日で統一している事業もあるが、以下のような例も見ら
れた。
補助事業開始日
無職証明書の日付(事業開始日以外)
水難防止・野外活動支援事業
平成18年7月20日
3月30日、7月19日、(平成10年)1月1日
地域資源映像ライブラリ構築事業
平成18年9月1日
6月30日、7月1日、7月3日
平成 10 年1月1日付無職証明書を添付していたのはなんらかの間違いと思われるが、
可能な限り事業開始日に近い日付の証明を添付するように指導することが望ましい。
エ
勤務表等について
被災地域緊急雇用創出事業は市町村が行う事業であるため、審査機能は県にある。県
に提出された補助金精算報告書に事業者が実際に記録した勤務表が添付される場合があ
るが、補助対象のプロジェクトとは関係のない日付や人物が同時に記載されている勤務
表が添付されているものが見られた。この場合、当該プロジェクトに従事した人物や期
間が明確に分かるように印を付けるなど記載方法を改善する必要がある。また、罹災証
明書と失業者との姓が異なっている場合、本人であることの確認をしたのであれば、そ
の旨の記録を残すなどの工夫が望まれる。
オ
契約期間
委託契約期間を超えた業務に対して委託費が支払われているケース(登山道環境整備
事業)や変更契約書に変更後の仕様書に従った変更後の契約期間が明記されなかった例
も見られた(交通誘導等警備委託事業)。なお、前者については、監査の指摘に伴い変更
契約書が作成された。緊急且つ多くの件数を短期間に処理する必要があったことは理解
できるが、公平性のため、不正受給を避けるための必要最低限の審査は必要であること
から、今後は留意されたい。
189
【意見④】被災者住宅支援対策事業の利用状況及び効果について
基金は、創設以来、被災者の一日も早い生活再建、特に住宅再建に向けた支援策を重
点的に実施してきた。基金はこれらの支援策を継続するとともに、平成 18 年6月の基金
理事会において、今後の基金の事業化の方向性について、住宅再建から生業再建とコミ
ュニティ再建等へシフトしていく時期であるとの認識が示され、同年 7 月の理事会で集
落再生としての集会所や神社等の修繕費補助や生業再建としての錦鯉・家畜の購入費補
助が加わるとともに、従来の被災住宅の修繕費補助の要件緩和も図られた。
一方、平成 18 年8月末時点で、応急仮設住宅には依然として 1,877 世帯(6,042 人)
が入居しており、平成 17 年3月末の入居者(2,935 世帯、9,649 人)と比較しても順調
に解消しているとはいえない状況である5。仮設住宅入居期限が到来する平成 18 年 12 月
以降も約 740 世帯が入居期限の延長を希望しているとのことである。
基金が被災者住宅支援対策事業として掲げる事業は、以下の 16 である。
表 3-2-21 被災者住宅支援対策事業一覧(平成 18 年 8 月末)
(単位:千円)
事業名
①
申請累計額(A)(注 1)
想定事業費(B)
達成率(A)/(B)
被災者住宅復興資金利子補給
(後払い方式)
①’
同上(低利融資方式)
②
高齢者・障害者向け住宅整備支
援
96,978
1,324,000
7.3%
2,379
1,667,000
0.1%
13,287
50,000
26.6%
③
雪国住まいづくり支援
586,072
1,971,000
29.7%
④
被災宅地復旧工事
122,102
562,000
21.7%
⑤
県産瓦使用屋根復旧支援
317,686
385,000
82.5%
⑥
越後杉で家づくり復興支援
416,604
1,215,000
34.3%
⑦
被災宅地復旧調査
35,178
54,000
65.1%
⑧
住宅債務(二重ローン)償還特
0
206,000
-
別支援
⑨
住宅再建総合相談窓口設置(注 2)
0
28,000
-
⑩
高齢者ハウス整備・運営(注 2)
0
264,000
-
⑪
公営住宅入居支援(注 2)
86
112,000
0.1%
⑫
民間賃貸住宅入居支援(注 2)
0
133,000
-
5
平成 18 年8月末時点においても、長岡市(旧山古志村の一部)については、避難指示が解除されていな
い。
190
事業名
⑬
親族等住宅同居支援(注 2)
⑭
中山間地型復興住宅支援(注 2)
⑮
申請累計額(A)(注 1)
達成率(A)/(B)
0
604,000
-
0
170,000
-
0
0
-
0
480,000
-
1,590,372
9,225,000
(注3)17.2%
高齢者を融資対象とするための
支援
⑯
想定事業費(B)
緊急不動産活用型融資制度(リ
バースモーゲージ)
合計
(注1)8月 31 日までの申請ベース。
(注2)平成 18 年2月に事業化されたもの。
(注3)平成 18 年 11 月末時点では 23.3%。
表 3-2-21 に掲げる事業のうち、
「⑤県産瓦使用屋根復旧支援」は、県産の瓦を使用し、
耐震性施工工法により屋根の復旧等を行う場合、県産瓦の材料費及び耐震工事の標準的
な施工代金の一部を屋根の施工業者に補助するものである。また「⑥越後杉で家づくり
復興支援」は、県産材を使用するために標準工法と比較して必要な割り増し額相当を補
助するものであり、これらは産業振興的な色彩が強い。また、「③雪国住まいづくり復興
支援」は雪下ろしの労力等を削減し住み良さを向上させる仕様の屋根の追加コストのた
めの補助であり、住宅再建を直接促進するものではない。これらの事業の想定事業費は
全被災者住宅支援対策事業の約4割という重要な割合を占めており6、この点は特徴的で
あるといえる。
直接支援するものとしては、「①被災者住宅復興資金利子補給(後払い方式)(低利融
資方式)」のほか、「⑫民間賃貸住宅入居支援」等がある。利子補給(①)の平成 17 年度
の事業実績は 64 百万円、平成 18 年2月に事業化された民間賃貸住宅入居支援の申請も
8月末までに 27 件あったとのことである。
しかし、これらの施策の利用者は余りに少ないと思われ、施策がどの程度仮設住宅の
解消に寄与したのかについても不明である。
県は、仮設住宅の維持管理については市町村に委託しており、その入退居の状況につ
いては月次に報告を受けているものの、その退居の理由については把握していない。今
後、県は、仮設住宅入居の解消原因やその他の実態調査を通じて、基金の住宅再建事業
の効果がどの程度上がっているのか把握することが必要と思われる。このような実態調
査の結果を踏まえてより効果のある事業内容にすることが望まれる。
6
平成 18 年 8 月末現在。
191
【意見⑤】観光復興キャンペーン推進事業の観光復興の効果の把握について
観光復興キャンペーン推進事業は、経済的波及効果及び誘客効果が認められるものを
要件としている。具体的には、誘客人数(日帰客、宿泊客別)に目標値を掲げさせ、そ
れに対する達成度で補助金の交付割合が決定される。
表 3-2-22 事例
事業名
①観光復興キャンペ
補助金額
推定経済効果
35 百万円
4,715 百万円
目標
達成度の把握
日帰り客
県内主要観光地の平成 15 年
ーン推進事業(米・
14,475 人増
度入込数(半年分として1
酒・肴キャンペー
宿泊客 130,348
/2)に 0.858を乗じた数値と
ン)
人増7
平成 17 年度下半期宿泊見込
み数を比較して達成として
いる。
②にいがた観光復興
115 百万円
5,693 百万円
キャンペーン事業
日帰り客
入湯税利用者と動態調査に
280 千人増
よる人数との比を利用して
宿泊客 120 千人
県外からの観光客を推定し、
増
平成 16 年度との比較によっ
て達成としている。
以上の2件はいずれも達成率 100%として、申請額全額が承認され交付された例であ
る。それぞれの目標の達成度は異なったデータや方法で把握されているが、両者が達成
したとしているのは実質的には平成 17 年度の観光客数の増加である点では同じである
上、個々の事業と成果として示された観光客の増加との因果関係はあまりにも曖昧であ
る。
本事業が成果指標を用いていることについては評価できるが、上述のように貢献度が
検証できない指標のみを用いて補助率を決定するのは望ましくはない。
上述のように県内全体の観光客の増加等という大きな指標以外にも、個々の事業に即
した指標(実施したキャンペーンの利用者やイベント参加者等)も考慮するなどして、
震災復興に寄与した効果を総合的に判断することが必要と思われる。
【意見⑥】基金の有効利用について
基金の平成 17 年度事業費実績は「(1)④基金事業の推進」で記述のとおりである。
平成 18 年度事業費予算は、基金発足時は 12,000,000 千円としていたが、平成 18 年度事
7
8
交付申請書上は明記されていないが、平成 15 年度実績に対比した増加人数を記載したものと推定される。
平成 18 年豪雪の影響を勘案して 0.85 倍している。
192
業計画策定時に、10,111,000 千円に改訂された。しかし、平成 18 年8月 31 日時点の申
請状況は 3,213,789 千円(平成 17 年度分を除く)9となっており、予算を下回る見込みで
ある。
区分別に見た申請額累計の全事業期間に亘る予算に占める割合は以下のとおりであ
る。なお、事業期間 10 年間の基金運用果実は、合計 60,000,000 千円となる。
表 3-2-23 想定事業費と申請累計額との比較(平成 18 年 8 月 31 日現在)
(単位:千円)
区
分
申請累計額(A)
想定事業費(B)
割合 ((A)/(B)x100)
(%)
被災者生活支援対策事業
897,367
5,594,000
16.0
雇
業
624,612
1,072,000
58.2
被災者住宅支援対策事業
1,491,015
9,225,000
16.1
業
890,600
3,184,000
28.0
農林水 産 業対策事業
1,216,131
3,784,000
32.1
業
791,993
1,147,000
69.0
化
21,101
214,000
9.8
計
5,932,819
24,220,000
(注)24.4
産
観
用
業
光
教
育
対
策
対
策
対
策
・
事
事
事
文
合
(注)平成 18 年 11 月末時点では 28.8%。
ところで、基金が事業化に当たって一つの参考とした阪神・淡路大震災復興基金は創
立後 10 年目を迎えた。この基金の設立目的は、「阪神・淡路大震災からの早期復興のた
めの各般の取組を補完し、被災者の救済及び自立支援並びに被災地域の総合的な復興対
策を長期、安定的、機動的に進め、災害により疲弊した被災地域を魅力ある地域に再生
させること」とされている。震災後 10 年目の平成 17 年 11 月 15 日には、全体執行見込
額 365,200 百万円のうち、98%に当たる約 358,000 百万円の申請がなされ、さらに平成
16 年度末までにそのうちの約 348,700 百万円(95.5%:全体執行見込額比)が被災者の
方等へすでに支給されたとのことである10。
阪神・淡路大震災と中越大震災を単純に比較することはできないが、震災直後から 10
年間にわたって利用された阪神・淡路大震災復興基金事業の利用状況の推移は参考にな
るものと思われる。
因みに阪神・淡路大震災復興基金事業の類型別に見た支援実績は以下のとおりであ
る。
9
平成 18 年 11 月末時点では 4,472,545 千円。
「創造的復興をめざして-復興基金 10 年の歩み」
(平成 18 年3月
金)。表 3-2-24 もこれから作成。
10
193
財団法人
阪神・淡路大震災復興基
表 3-2-24 阪神・淡路大震災復興基金事業の実績
(単位:百万円)
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
住宅対策
515
2,838
15,742
23,650
19,568
19,614
9,743
6,588
4,376
3,287
産業対策
7,294
11,253
10,074
6,830
4,918
3,975
3,099
1,629
1,371
1,250
生活対策
1,947
2,846
13,253
122,235
20,598
9,657
1,886
2,307
1,941
1,650
教育対策
1,290
819
577
374
200
126
65
50
48
55
その他
38
131
380
296
356
490
1,138
237
171
1,479
合計
11,084
17,887
40,026
153,385
45,640
33,862
15,931
10,811
7,907
7,721
図 3-2-4 阪神・淡路大震災復興基金事業の実績
(単位:百万円)
140,000
120,000
100,000
住宅対策
産業対策
生活対策
教育対策
その他
80,000
60,000
40,000
20,000
0
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
阪神・淡路大震災復興基金事業では、生活支援対策や住宅支援対策に係る事業費が震
災後4年目をピークとしていることに着目される。
生活対策では、被災者生活再建支援法の成立に伴い、被災者自立支援金制度が震災後
3年目の平成9年に創設されたことにより、利用額が格段に増加した。この制度は、恒
194
久住宅移行後の生きがいのある生活の再建を支援するために一定の要件を充たす被災世
帯に対し支援金を給付するものである。
また、住宅対策では、被災者住宅購入・再建支援補助(利子補給)に加え、震災3年
目の平成9年度から開始された高齢者住宅再建支援の利用が増加した。
阪神・淡路大震災復興基金については、当初、災害対策基金事業(特別会計)におい
ては被災者に対する直接給付が多いのに比べて、基金事業では、間接的に被災者の生活
支援を行う方針が徹底されているという批判があったという。
しかし、その後、このように、支援金給付事業の導入が利用拡大の一つの契機となっ
たことが伺えるが、その普及についてはボランティアグループの貢献が大きく、彼らの
活躍により基金事業の情報伝達が行われ、また彼ら自身が被災者とのコーディネータ役
をも果たしたという11。
中越大震災の場合も震災後3年目を迎えたが、被災者の生活復興や住宅再建は今後一
層進められるものと思われる。基金の寄付行為では「自立再建」を基本としている。確
かに私有財産の造成に対して支援を行うことについては限度があるため、どの程度直接
補助を行っていくのかについては政策判断に委ねられる事項である。
県としては、既存事業の有効性に着目しながら、さらに適切な事業を追加していくよ
う基金と連携を図って進める必要がある。このようにして資金の有効活用を図るととも
に、積極的に普及促進活動を行うことが望まれる。
11
新潟日報記事(平成 18 年 10 月 4 日)より引用。
195
【県民生活・環境部】 〔特別会計〕
1 災害援護資金貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
県は、災害弔慰金の支給等に関する法律第 10 条第1項の規定により、災害弔慰金の支
給等に関する法律施行令第3条に規定する災害により被害を受けた世帯の世帯主に災害
援護資金を貸し付ける市町村の災害援護資金貸付事業に対し、それに要する財源に相当
する金額を貸し付ける。
②
制度の仕組み
事業の実施主体は市町村であり、貸付原資の負担は国3分の2、都道府県・指定都市
3分の1である。
県の融資先は市町村である。災害弔慰金の支給等に関する法律第 13 条に、都道府県の
貸付金の償還期間は 11 年と規定されており、基本的に市町村が延滞することはない。
③
残高
平成 18 年3月末残高は 307,035 千円である。平成 17 年度は償還のみとなっている。
(2)実施した手続
償還計画表を入手し、平成 16 年度の貸付について災害援護資金貸付金借用書と、平成
17 年度償還額を収納済通知書と照合した。
(3)結果
実施した手続の範囲内においては、特に指摘すべき事項は見られなかった。
196
【福祉保健部】 〔一般会計〕
1 地域改善対策貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
この貸付制度は、歴史的社会的背景により生活環境等の安定向上が阻害されている地域
のうち別に知事が指定する地域(以下「対象地域」という。)の環境の整備改善を図るた
め、対象地域に係る住宅の新築若しくは改修又は住宅の用に供する土地の取得について必
要な資金の貸付けを行い、もって公共の福祉に寄与することを目的として設けられた。
イ
根拠法令等
「地域改善対策貸付金」に関する関係法令等は、以下のものから構成されている。
地域改善対策貸付金制度に関する関係法令等
・新潟県住宅新築資金等貸付要綱
・新潟県住宅新築資金等貸付要領
②
ア
制度の仕組み
貸付金の種類
以下の3種類からなっている。
(ア)「住宅新築資金」
自ら居住する住宅を新築又は購入しようとする者に対し貸付ける資金。
(イ)「住宅改修資金」
老築化した住宅又は防災上、衛生上、若しくは居住性上劣悪な状態にある住宅で、その
改修により耐久性が増し、又は劣悪な状態が改善される見込みのあるものを改修しようと
する者に対し貸付ける資金。
(ウ)「宅地取得資金」
自ら居住する住宅の用に供するため、土地又は借地権の取得(当該土地又は借地権の目
的となっている土地の造成を含む。
)を行おうとする者に対し貸付ける資金。
イ
新規の貸付金について
平成2年度に設けられた期限付きの貸付金制度であるため、新規貸付は平成 13 年度で
終了した。ただし、平成 12 年度以降は新規貸付の申し込みはなかった。
ウ
県資金の取扱金融機関への預託
県は取扱金融機関との協議により決定した額を、取扱金融機関に預託している。預託期
間は毎年4月1日から翌年の3月 31 日までであり、年度末の残高はゼロとなる。
197
エ
「住宅新築資金」貸付事務の流れ(平成2年6月 20 日作成)
貸付事務の大まかな流れは下図のとおりである。政策的な貸付制度であるため、この貸
付金には以下のような特徴がある。
(ⅰ)借入申請は、対象市町村を経由して県に対して行う。
(ⅱ)返済能力の調査・審査は、県の社会福祉課(現
(ⅲ)建築関係の書類審査は、県の建築住宅課(現
福祉保健課)が行う。
都市局建築住宅課)が行う。
(ⅳ)契約毎に県が認めた連帯保証人を1名つける。
(ⅴ)原則として、貸付対象住宅又は貸付対象土地を貸付の目的に反して使用し、譲渡し、
交換し、又は担保に供してはならない(「新潟県住宅資金等貸付要綱」第 11)。
(ⅵ)一定の要件に該当するに至った場合、取扱金融機関は県へ当該貸付金を譲渡する。
図 3-3-1
区分
事 前 事 務
貸 付 事 務
借
入
者
適
格
者
申
請
対
象
市
町
村
受
理
建
築
住
宅
課
執
行
受
任
銀
行
社
会
福
祉
課
貸付事務の流れ
予
算
計
上
執
行
委
任
預
託
・
損
失
補
償
等
契
約
1
説
明
・
説
得
内
容
確
認
借
入
申
込
み
工
事
の
契
約
契
約
書
写
の
提
出
実
行
日
の
承
知
貸
付
実
行
日
の
決
定
実
行
日
の
通
知
貸
付
金
の
受
領
職
員
の
立
会
い
進
達
受
付
適
格
証
受
領
返
済
能
力
の
審
査
依
頼
審
査
適
格
者
決
定
適
格
証
交
付
借
用
書
の
受
領
返済能力の調査・審査
198
結
果
通
知
実
行
日
の
承
知
預
託
金
の
支
払
い
貸
付
の
実
行
預
託
金
の
受
領
オ
延滞発生後の事務の流れ(平成2年6月 20 日作成)
貸付金に延滞が発生した場合、事務の流れは下図のようになる。
図 3-3-2 延滞発生後の事務の流れ
延 滞 発 生 後 の 事 務
区分
借
入
者
返
済
で
き
ず
返
済
指
導
期
通限
知の
の利
受益
領喪
失
な
お
返
済
で
き
ず
債
権
譲
渡
通
知
資
金
繰
り
返
済
職
員
の
立
会
い
対
象
市
町
村
延
滞
の
通
知
引
落
不
能
銀
行
延
滞
の
承
知
社
会
福
祉
課
返
済
で
き
ず
職
員
の
立
会
い
督
促
延
滞
原
因
調
査
期限の利益喪失通知
債権の譲渡
5ヶ月経過
損失補償料の受領
損失補償料請求
の損
予失
算補
措償
置料
1ヶ月経過
請
求
書
受
理
1
損失補償料の支払い
預
託
金
返
還
預
託
金
受
領
債権受領
債
権
譲
渡
通
知
計新
画た
のな
樹返
立済
の被
権譲
利渡
行債
使権
回
収
督
促
の
・
面
回
接
収
指
の
導
た
め
借入者が取扱金融機関と締結した「金銭消費貸借証書」の「規定」には、以下の条項が
ある。
第3条(期限前の全額返済義務)
借主に次の各号の事由が一つでも生じた場合には、銀行から通知督促等がなくてもこの
債務全額について当然期限の利益を失い、直ちにこの債務全額を返済するものとします。
(省
⑤
略)
新潟県が、借主が新潟県住宅新築資金等貸付要綱第8に定める事項に該当すると認め
たとき。
第 12 条(債権譲渡)
1.借主は、銀行が将来この契約に基づく債権を新潟県に譲渡することについてはこれを
承諾するものとします。
2.借主は、第1項により債権が譲渡された後も新潟県の定める方法により新潟県へ債務
を返済するものとします。
199
県が取扱金融機関と締結した「契約書」には、以下の条項がある。甲は「新潟県」、乙
は「取扱金融機関」、丙は「借入者」を意味する。
(損失の補償)
第4条
乙は、次の各号の一つに該当したときは、甲に対し甲が損失の補償を実行する日
までの貸付元金、利子及び遅延損害金の合計額を損失として補償請求できるものとする。
(1)甲が要綱第9及び要領第 11 により、丙に対し償還の猶予又は免除を認めたとき。
(2)丙が貸付金の割賦弁済を6回以上滞り、又は償還期限を経過しても乙に対し貸付元
金、利子及び遅延損害金を完済しない場合。
(債権の譲渡)
第9条
乙は甲から損失補償金の支払を受けたときは、直ちに損失補償に係る債権を甲に
譲渡するものとし、譲渡後直ちに乙は丙に債権譲渡通知を配達証明付内容証明郵便により
発送するものとする。
「新潟県住宅資金等貸付要綱」には、以下の規定がある。
第8
期限前償還
1.知事は、借受人が次の各号の一つに該当するときは、借受人に対し償還期限前に貸付
金の全部又は一部の償還を指示し、取扱金融機関に対しその内容を連絡するものとす
る。
(1)貸付金を貸付の目的以外に使用したとき。
(2)貸付金の償還を怠ったとき。
(3)第 10 又は第 11 の規定に違反したとき。
(4)虚偽の申請その他不正な手段により資金の貸付けを受けたとき。
(以下省略)
第9
償還の猶予又は免除
(以下省略)
第 10
住宅の建築義務
宅地取得資金の借受人は、その貸付けを受けた日から起算して2年以内に貸付対象土地
において自ら居住する住宅の建設に着手しなければならない(以下省略)。
第 11
処分の制限
借受人は、貸付金の償還前において、貸付対象住宅又は貸付対象土地を貸付の目的に反
して使用し、譲渡し、交換し、又は担保に供してはならない。ただし、特別の事情がある
ものとして知事が承認したときは、この限りではない。
200
③
貸付金の実績等
貸付金残高の推移及び取扱金融機関への預託額の推移は次の通りである。
表 3-3-1 貸付金算高の推移(契約件数:計7件)
(単位:千円)
貸付金残高
平成14年
3月31日
37,459
平成15年
3月31日
35,880
平成16年
3月31日
34,282
平成17年
3月31日
32,631
平成18年
3月31日
31,245
表 3-3-2 取扱金融機関への預託額の推移
(単位:千円)
平成13年度
平成14年度
平成15年度
平成16年度
平成17年度
預託額
2,227
2,140
2,050
1,958
1,864
預託割合
(県:銀行)
2 : 33
2 : 33
2 : 33
2 : 33
2 : 33
(注)預託額は、前年度末の貸付金残高に預託割合を掛けて算出。
(2)実施した手続
(ⅰ)取扱金融機関から県が譲渡を受けた債権
平成 18 年3月末現在、取扱金融機関から県が譲渡を受けた債権が2件(契約書ベース)
ある。これらについて、貸付制度の目的、
「新潟県住宅新築資金等貸付要綱」、「新潟県住
宅新築資金等貸付要領」
、事務のフロー等を閲覧し、適宜担当者にヒアリングを行い、主
に以下の状況について調査した。
・貸付時の審査
・県と取扱金融機関との間で締結した「契約書」の記載内容
・借入者と取扱金融機関との間で締結した「金銭消費貸借証書」の記載内容
・取扱金融機関から県が債権譲渡を受けた時の手続関係
・新たな返済計画の内容及び返済状況
・融資対象物件(土地及び住宅)の状況
・借入者本人への督促状況
・連帯保証人の状況
(ⅱ)預託金方式により銀行が融資している貸付金(契約ベースで7件)
返済状況を分析し、関係者へ適宜以下に係る質問等を行った。
・貸付時の審査
・融資対象物件への担保設定の有無
・返済状況
・滞納状況
201
(ⅲ)預託金
預託金の計算根拠、預託期間などについて、関係証憑等を閲覧して確認した。また、計
上額についても計算確認を実施した。
(3)監査の結果と意見
① 指摘事項
【指摘事項①】取扱金融機関から譲渡を受けた貸付金について
借入者と取扱金融機関との間で締結した「金銭消費貸借証書」の規定第 12 条、県と取
扱金融機関との間で締結した「契約書」第9条に従い、
「住宅新築資金」1件、
「宅地取得
資金」1件については、取扱金融機関から県に債権譲渡された。この債権については、以
下の貸付要綱及び貸付要領違反が見られる。
(ⅰ)貸付対象の土地・建物への担保設定
「新潟県住宅新築資金等貸付要綱」第 11 条に、「借入者は、貸付金の償還前において、
貸付対象住宅又は貸付対象土地を貸付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸与し、
又は担保に供してはならない。ただし、特別の事情があるものとして知事が承認したとき
は、この限りではない。
」と規定されている。
県が取扱金融機関から引き取った債権に係る土地・建物は借入者の事業に関して担保に
供せられており、結果として競売に付され、第三者の手に渡ってしまっている。知事承認
はなされていなかった。
この件に関し、県の担当部署(福祉保健課)に他の貸付対象土地・建物に係る知事承認
の有無を確認依頼したところ、知事承認の行われているケースはないとの回答であった。
(ⅱ)「新潟県住宅新築資金等貸付要領」(以下、「要領」)に違反した建物に対する貸付
県が取扱い金融機関から引き取った債権は、要領に違反した建物に対する貸付であった。
すなわち要領において同居親族人数と建物床面積の上限との関係を定めているが、上限面
積を超えた建物に対する貸付であった。始末書を入手したか否かについては記録がなく、
確認できなかった。
(ⅲ)借入者の所在把握
県が取扱金融機関から引き取った債権の借入者の所在が把握できておらず、現在、借入
者の父親が窓口となって返済の話し合いに応じている。
借入者と取扱金融機関との間で締結した「金銭消費貸借証書」の「規定」第 10 条(届
出事項)には、「氏名、住所、印鑑、電話番号その他銀行に届出た事項に変更があったと
き・・・銀行に書面で届出る・・・。」と規定されている。県が債権を買取った時点での
202
「届出事項」の引継ぎ状況について担当者に確認したところ、手元の資料では確認できな
かったとの回答であった。
「新潟県住宅新築資金等貸付要領」の第 12(第 12 号様式)においても、借入者の住所
等に変更があった場合には届出ることが規定されているが、実施されていない。
借入者は所在が不明であり、借入者の父親を通じて、借入者の所在を確認しようと努力
しているが実現していない。
今後は要領第 12 に基づく手続をとるようにするとともに、借入申込み時に勤務してい
た会社に協力を求めるなどにより、個人情報保護の観点も加味しながら借入者の所在を確
認する努力をする必要がある。
【指摘事項②】預託金方式による貸付金について
平成 18 年3月末現在、預託金方式による取扱金融機関からの貸付金が7件ある。
県の担当者を通して確認したところ、うち5件については「新潟県住宅資金等貸付要綱」
第 11 に反して、知事の承認を得ずに貸付対象となった住宅及び土地に抵当権が設定され
ていた。
当該5件については、要綱第 11 に基づく手続をとる必要がある。
②
意見
【意見①】取扱金融機関から譲渡を受けた貸付金について
ア
貸付時の審査
「新潟県住宅新築資金等貸付制度について」の「返済能力の判定基準」によれば、「処
分可能月収入額が、住宅貸付金の月返済額と生活保護基準額(平均月額)の合計額を超え
る場合、償還確実な者として取扱う。」とされている。これに基づき、以下のような審査
が行われていた。
(ⅰ)処分可能月収入額の判定は、審査時点における同居家族全員の収入をもって判定し
ており、その後の同居家族の増減や、収入の変動は加味されていなかった。
(ⅱ)審査時点における借入者の住宅資金等以外の他からの借入金等は、審査対象とされ
ていなかった。
(ⅲ)県が取扱金融機関から債権を譲渡されたケースでは、融資対象となった土地と新築
住宅が競売に付されたが、この原因となった倒産会社の状況(財務諸表、役員、担
保等)は審査対象とされていなかった。
土地、建物の所有権を考えた場合、借入者本人の返済能力で判定すべきであったと考え
られる。また、住宅資金等以外の他の借入金等の状況も当然審査対象に加えるべきであっ
たと考えられる。仮に今後同様の貸付制度を設ける場合には、返済不能の事態に陥った場
合に県が公金を投入して処理することになることを踏まえた「審査基準」を策定する必要
203
があると考えられる。
イ
取扱金融機関から譲渡を受けた貸付金の会計処理
県は、返済の滞っていた下記債権を取扱金融機関より譲渡を受けた(「1(1)②
オ
延滞発生後の事務の流れ」参照)。
表 3-3-3 取扱金融機関からの債権譲受額
(単位:千円)
取扱金融機関から
借入者への貸付日
取扱貸金融機関
から県への譲渡日
宅地取得資金貸付金
H4.3.31
住宅新築資金貸付金
H6.3.14
合
未償還元金
相当額
遅延損害金
相当額
H10.3.31
4,298
575
4,874
H10.3.31
8,236
1,069
9,306
12,534
1,645
14,180
計
合
計
県は、この債権を一旦歳出(社会福祉指導費の補償・補填及び賠償金)で処理し、借入
関係者と返済計画を話し合い、宅地取得資金貸付金は 216 回、住宅新築貸付金は 240 回に
分納することとした。
平成 11 年4月から毎月、県が返済期日に合わせて調定し、納付書を借入者本人の家族
を通じて本人宛(借入前の旧住所)に送付しているが、平成 12 年2月の収納を最後に、
その後の収納実績がない。平成 18 年3月 31 日現在、調定済未納額(遅延損害金を含む)
は下表のようになっている。
表 3-3-4 調定済未納額
(単位:千円)
A
B
C=A-B
D
E=C-D
債権総額
未調定額
差引:調定済額
納入額
差引:調定済未納額
14,180
5,893
8,287
209
8,077
取扱金融機関に支払った額 14,180 千円(未償還元金及び遅延損害金)については、平
成9年度の2月議会で増額予算が議決されている。
このような会計処理を選択したのは、「新潟県会計関係例規通知集」(平成 11 年7月付
け新潟県出納局)の「1
歳入科目」
「13
諸収入」
「4
貸付金収入」は、県以外の者に
直接貸付けている資金の償還にかかるものであるため、債権が銀行から県に譲渡されても
制度の考え方は変わらないと考えたことによる。結果、納付額は「8
雑入」として整理
されている。
しかしながら、以下の理由から、貸付債権としての会計処理をすべきものと考えられる。
(ⅰ)県と取扱金融機関との間で締結した「契約書」第9条、及び借入者と取扱金融機関
204
との間で締結した「金銭消費貸借証書」の「規定」第 12 条において、「債権の譲渡」
と明記されている。
(ⅱ)県が取扱金融機関から債権を譲渡されたことに伴い、取扱金融機関は当該借入者へ
の債権は消滅している。また、県は取扱金融機関から預託金の返還も受けている。
すなわち、県は借入者に直接貸付けている当事者になっている。
ウ
連帯保証人に対する督促
県と取扱金融機関との間で締結した、損失が生じた場合の補償に係る「契約書」
(平成
4年3月 19 日)第 10 条によれば、連帯保証人は「新潟県が認めた者」とされている。す
なわち、連帯保証人の要件は県で定める取扱いとなっている。
他の貸付金制度では連帯保証人について要件を定めているが、現状、連帯保証人に対す
る明確な規程・方針はない。
連帯保証人は現状、現役を引退し高齢となっている。今後は連帯保証人についての要件
強化、債権回収に向けての代替案の策定等の検討を行うべきである。
エ
延滞債権の督促ルール
取扱金融機関から県に譲渡された債権について、平成 18 年3月 31 日現在、調定済未納
額が 172 件、8,077 千円ある。
県と取扱金融機関との間で締結した、損失が生じた場合の補償に係る「契約書」
(平成
4年3月 19 日)第5条には、具体的な督促方法が規定されている。
一方、取扱金融機関から県に債権が譲渡された後の督促方法については、「新潟県住宅
新築資金等貸付制度について」の「4
延滞発生後の県の対応」に以下のように記載され
ている。
(1)延滞発生原因の調査と返済指導
(2)返済が不可能な場合の措置
①
連帯保証人への請求
②
取扱金融機関への損失補償料の支払
③
取扱金融機関の貸付債権を取得
しかしながら、現在、連帯保証人への督促及び請求は全く行われていない。
なお、遅延損害金相当額の借入者本人への請求は、県が受けた損失を借入者に補填させ
る意味合いのものであり、利息を徴することはできない。また、遅延が生じた場合の遅延
利息は、条例に定めがないため徴収できない。
債権回収のために訪問している担当者は、現金取扱員ではないため、現金を訪問先で回
収することはできない。効率的かつ実効性のある回収方法を、関係課等の意見を踏まえな
がら検討すべきである。
205
【意見②】預託金方式による貸付金について
県の担当者に確認したところ、取扱金融機関からの延滞通知は平成 18 年 11 月末現在届
いていないとの回答を得た。しかしながら、
「新潟県住宅資金等貸付要綱」第 11 に反して
貸付対象となった住宅及び土地に抵当権を設定していた事実もあることから、返済状況に
ついては十分留意していく必要がある。
206
2 介護福祉士等修学資金貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
この貸付制度は、県内における介護福祉士及び社会福祉士(以下「介護福祉士等」とい
う。)の養成施設等に在籍する者で、将来県内において介護福祉士等の業務に従事しよう
とするものに対し、予算の範囲内において修学資金を貸与することにより、介護福祉士等
の養成及び確保を図ることを目的とする。
イ
根拠法令等
「介護福祉士等修学資金貸付金」制度に関する関係法令等は、以下のものから構成され
ている。
介護福祉士等修学資金貸付金制度に関する関係法令等
・新潟県介護福祉士等修学資金貸与条例
・新潟県介護福祉士等修学資金貸与条例施行規則
・新潟県介護福祉士等修学資金の手引
②
ア
制度の仕組み
貸与額
一般貸与:月額 18,000 円
特別貸与:月額 36,000 円
イ
貸与対象者
修学資金の貸与は、以下の要件のいずれにも該当する者に対して行う。
(ⅰ)県内に住所を有する者
(ⅱ)県内に所在する養成施設等に在学している者
(ⅲ)養成施設等を卒業後県内において介護福祉士等の業務に従事しようとする者
(ⅳ)学業成績が優秀である者
(ⅴ)経済的理由により修学が困難であると認められる者
(ⅵ)同種の修学資金の貸与を受けていない者
ウ
貸与期間
原則として、貸与を受ける者の在学する養成施設等の正規の就業年限内。
207
③
ア
貸付金の実績
貸付金残高の推移
県内における介護福祉士等の確保に一定の目途がついたことから、平成 16 年度以降の
新規貸与は行っていない。平成 18 年度の貸与者は、大学4年在学者1名のみである。
養成施設等を卒業した日から1年を経過する日までに介護福祉士又は社会福祉士の資
格を有し、特定業務(「新潟県介護福祉士等修学資金貸与条例」第8条に定める業務)に
従事することになり、引き続き継続して特定業務に従事した期間が7年に達した場合など、
修学資金の免除要件に該当するに至った場合には、申請により返還が免除される。したが
って、下記表の過年度分は、卒業後免除前のものに対する貸付残高を示している。
表 3-3-5 貸付金残高の推移
(単位:千円)
貸付区分
前年度末残
高額(A)
当年度貸
与額(B)
調定額
(C)
収納額
(D)
元金収納
未済額(E)
返還
免除額(F)
当年度末
未調定債権残高
(A+B-C-F)
(平成11年度)
過年度分
当年度分
計
67,148
67,148
23,328
23,328
1,230
1,230
1,230
1,230
-
-
65,918
23,328
89,246
89,246
89,246
17,712
17,712
1,754
1,754
1,754
1,754
-
1,926
1,926
85,566
17,712
103,278
13,068
13,068
3,339
3,339
3,321
3,321
18
18
6,330
6,330
93,608
13,068
106,676
12,780
12,780
4,716
4,716
4,446
4,446
270
270
3,648
3,648
98,310
12,780
111,090
10,368
10,368
2,130
2,130
1,662
1,662
468
468
3,792
3,792
105,167
10,368
115,535
6,912
6,912
4,293
4,293
3,825
3,825
468
468
3,939
3,939
107,302
6,912
114,214
3,024
3,024
4,545
4,545
3,645
3,645
900
900
5,184
5,184
104,484
3,024
107,509
(平成12年度)
過年度分
当年度分
計
(平成13年度)
過年度分
103,278
当年度分
計
103,278
(平成14年度)
過年度分
106,676
当年度分
計
106,676
(平成15年度)
過年度分
111,090
当年度分
計
111,090
(平成16年度)
過年度分
115,535
当年度分
計
115,535
(平成17年度)
過年度分
114,214
当年度分
計
114,214
208
(2)実施した手続
(ⅰ)調定済未納額が逓増傾向にあるため、明細を入手して状況を確認した。また、合わ
せて延滞利息の請求について、県の考え方を確認した。
(ⅱ)財政課から入手した決算数値と貸付金の増減状況表とを突合した。結果、差異が認
められたため担当者に調査を依頼した。
(3)監査の結果と意見
① 指摘事項
【指摘事項①】財政課で作成した決算書等と担当課資料との不一致について
財政課から入手した決算数値と担当課で作成した貸付金の増減状況表とが不一致とな
っていた。原因は、過去の決算書作成時に担当課が作成した介護福祉士等修学資金の調定
額(収入を決議した額)が財政課で作成した決算書に適正に反映していなかったためであ
る。この誤りに気付かないまま、決算資料等が毎年更新されていた。
平成 17 年度の決算書等については正誤表を作成し対応するとともに、今後印刷する資
料からは正しい数値に差し替えることとした。また、定期監査を実施した監査委員事務局
へも説明し、監査資料の差し替えを依頼した。
修正内容は以下のとおりである。平成 16 年度までの決算額は既に確定済みのため、平
成 17 年度の決算年度中増減額で調整している。今後はこのようなことがないよう十分注
意し、関係部課間でチェックを確実に実施する体制にすることが望まれる。
財産に関する調書(平成 17 年度)の記載
(単位:千円)
誤
区分
(一般会計)
新潟県介護福祉士等修学資金貸付金
前年度末現在額
113,348
決算年度中増減額
△6,021
決算年度末現在額
107,327
正
区分
(一般会計)
新潟県介護福祉士等修学資金貸付金
前年度末現在額
113,348
209
決算年度中増減額
△5,839
決算年度末現在額
107,509
②
意見
【意見①】延滞金について
調定済未納額は、平成 17 年度末現在で4名分(納付書ベースで 32 件)、900 千円ある。
4名とも督促を行っており、うち1名については平成 18 年7月までに全額収納された。
「新潟県介護福祉士等修学資金貸与条例」第 12 条に、修学資金の貸与を受けた者は、
「返還すべき日の翌日から返還の日までの期間の日数に応じ、返還すべき額につき年
14.5%の割合を乗じて計算した遅延利息を払わなければならない。ただし、やむを得ない
事由があると知事が認めるときは、この限りではない。」と規定している。
「やむを得ない事由」の判断基準については特に明文化されておらず、滞納の理由が特
に悪質であると認められる場合を除き、担当者が滞納処理の決裁等の際に債務者の状況等
を福祉保健課長及び福祉保健部長に説明の上、延滞金を課さない了承を得ている。
このような取り扱いとしているのは、修学資金を返還する者の多くが、未就職者や無職
の者であり、滞納理由のほぼすべてが経済的困窮を理由としている。前述のとおり判断基
準が明文化されていないため、担当課・係の職員は債務者に対する財産調査や家屋への立
入調査を行う根拠、権限などもなく、明らかに返済する余裕がありながら不当に返済を拒
否しているということの確認が難しいため、本人の申し立てにのみ基づき「やむを得ない
事由」として判断しているのが現状である。
今後は条例に従い所定の手続きにより知事承認を得た上で、延滞金を課さない取扱いと
すべきである。
【意見②】債権管理について
債権管理に関しては各担当が事務を所掌しているため、以下のような問題点がある。
(ⅰ)債権回収のために訪問しても事務担当係員は現金取扱員ではないため、その場で現
金徴収できない。
(ⅱ)資金毎に担当が異なるため、債権者が広域にいながら少数で対応しなければならず、
出張費用を考慮すると費用対効果の面で効率が悪い。
(ⅲ)一事業だけでは債権の取扱件数が少ないことや、担当者の人事異動等の関係で、法
令やマニュアル以上の債権管理に関する専門能力や知識の蓄積に限界がある。
債権管理全般に係る組織のあり方や権限について、今後慎重な検討をすることが望まれ
る。
210
3 看護職員修学資金貸付金
(1)制度の概要
① 制度の趣旨
ア 目的
この貸付制度は、県内において保健師、助産師、看護師又は准看護師(以下、
「看護職
員」という。
)の業務(以下、「業務」という。)に従事する職員の充足に資するため、県
内の学校又は養成所に在学する者で将来県内において看護職員の業務に従事しようとす
るものに対し、毎年度予算の範囲内で貸与することを目的としている。
イ
根拠法令等
「看護職員修学資金貸付金」制度に関する関係法令等は、以下のものから構成されてい
る。
看護職員修学資金貸付金制度に関する関係法令等
・新潟県看護職員修学資金貸与条例
・新潟県看護職員修学資金貸与条例施行規則
・新潟県看護職員修学資金の手引(新規貸与者用)
・新潟県看護職員修学資金の手引(卒業者用)
・新潟県看護職員修学資金募集要項
・新潟県看護職員修学資金事務取扱要領
・看護職員修学資金事務注意事項
②
ア
制度の仕組み
貸与額
保健師、助産師、看護師(自治体立):月額 32,000 円
保健師、助産師、看護師(民間立)
: 月額 36,000 円
准看護師(民間立):
イ
月額 21,000 円
貸与対象者
県内の看護職員の学校養成所に在学し、卒業後は県内の特定医療施設等において看護職
員の業務に従事しようとする意思がある者。
ウ
貸与期間
貸与を受けた者(以下、
「修学生」という。)の在学する学校養成所の正規の就業年限以
内で、県の予算の範囲内で貸与する。
211
③
貸付金の実績
看護職員修学資金貸付金を受けた平成 18 年度卒業者の就職状況は、4割が特定医療施
設等(「新潟県看護職員修学資金貸与条例」第7条第2項に定める施設)で、残りの6割
が対象外施設となっている。政策的観点から、新規貸与者数は平成 16 年度 29 人、平成
17 年度 26 人、平成 18 年度 20 人と、年々減らしている。
代替する貸付制度には、日本学生支援機構奨学金、新潟県奨学金などがある。一部の修
学資金希望者はこれらの貸付制度を選択している。
学校養成所を卒業した日から1年以内に看護職員の免許を取得し、直ちに県内の指定す
る医療施設において看護職員として就業し、引き続き5年以上継続して業務に従事した場
合など、修学資金の免除要件に該当するに至った場合には申請により返還が免除される。
したがって、下記表の過年度貸与分は、卒業後免除前のものに対する貸付金残高を示して
いる。
表 3-3-6 貸付金残高の推移
(単位:千円)
貸付区分
前年度末
当年度
残高額(A) 貸与額(B)
調定額
(C)
収納額
(D)
元金収納
返還
未済額(E) 免除額(F)
当年度末
未調定債権残高
(A+B-C-F)
(平成11年度)
過年度貸与
当年度貸与
計
674,461
-
674,461
-
127,150
127,150
19,253
-
19,253
19,127
-
19,127
126
-
126
20,464
-
20,464
634,743
127,150
761,893
761,893
-
761,893
-
105,264
105,264
22,651
-
22,651
22,059
-
22,059
592
-
592
19,572
-
19,572
719,670
105,264
824,934
824,934
-
824,934
-
93,276
93,276
29,244
-
29,244
28,285
-
28,285
959
-
959
36,168
-
3,648
759,521
93,276
852,797
852,797
-
852,797
-
66,702
66,702
30,592
-
30,592
29,080
-
29,080
1,512
-
1,512
29,081
-
29,081
793,122
66,702
859,824
859,824
-
859,824
-
48,348
48,348
24,968
-
24,968
22,832
-
22,832
2,136
-
2,136
51,116
-
51,116
783,740
48,348
832,088
832,088
-
832,088
-
32,028
32,028
22,140
-
22,140
20,236
-
20,236
1,904
-
1,904
32,364
-
32,364
777,583
32,028
809,611
809,611
-
809,611
-
29,028
29,028
16,721
-
16,721
14,585
-
14,585
2,136
-
2,136
38,984
-
38,984
753,905
29,028
782,933
(平成12年度)
過年度貸与
当年度貸与
計
(平成13年度)
過年度貸与
当年度貸与
計
(平成14年度)
過年度貸与
当年度貸与
計
(平成15年度)
過年度貸与
当年度貸与
計
(平成16年度)
過年度貸与
当年度貸与
計
(平成17年度)
過年度貸与
当年度貸与
計
212
(2)実施した手続
(ⅰ)調定済未納額が逓増傾向にあるため、明細を入手して状況を確認した。また、合わ
せて延滞利息の請求について、県の考え方を確認した。
(ⅱ)財政課から入手した決算数値と貸付金の増減状況表とを突合した。結果、差異が認
められたため担当者に調査を依頼した。
(3)監査の結果と意見
① 指摘事項
【指摘事項①】財政課で作成した決算書等と担当課資料との不一致について
財政課から入手した決算数値と担当課で作成した貸付金の増減状況表とが不一致とな
っていた。原因は、過去の決算書作成時に担当課が作成した看護職員修学資金の調定額(収
入を決議した額)が財政課で作成した決算書に適正に反映していなかったためである。こ
の誤りに気付かないまま、決算資料等が毎年更新されていた。
また、平成 17 年度の看護職員修学資金の返還免除額について 4,000 千円の入力誤りが
あった(誤
34,984 千円
→
正
38,984 千円)。これについては適正に修正された。
決算書については正誤表を作成し対応するとともに、今後印刷する資料からは正しい数
値に差し替えることとした。また、定期監査を実施した監査委員事務局へも説明し、監査
資料の差し替えを依頼した。
修正内容は以下のとおりである。平成 16 年度までの決算額は既に確定済みのため、平
成 17 年度の決算年度中増減額で調整している。今後はこのようなことがないよう十分注
意し、関係部課間でチェックを確実に実施する体制にすることが望まれる。
財産に関する調書(平成 17 年度)の記載
(単位:千円)
誤
区分
(一般会計)
新潟県看護職員修学資金貸付金
前年度末現在額
805,987
決算年度中増減額
決算年度末現在額
△ 24,877
781,110
決算年度中増減額
決算年度末現在額
△ 23,054
782,933
正
区分
(一般会計)
新潟県看護職員修学資金貸付金
前年度末現在額
805,987
213
②
意見
【意見①】延滞金について
調定済未納額は、平成 17 年度末現在で 11 名分(納付書ベースで 102 件)
、2,136 千円
ある。11 名とも督促を行っており、うち4名については平成 18 年6月までに未納額が収
納された。
「新潟県看護職員修学資金貸与条例」第 12 条に、
「修学生は、正当な理由がなくて修学
資金を返還すべき日までにこれを返還しなかったときは、当該返還すべき日の翌日から返
還の日までの期間の日数に応じ、返還すべき額に年 14.5%の割合を乗じて計算した遅延利
息を払わなければならない。」と規定している。
「正当な理由」の判断基準については特に明文化されておらず、滞納の理由が特に悪質
であると認められる場合を除き、担当者が滞納処理の決裁等の際に債務者の状況等を福祉
保健課長及び福祉保健部長に説明の上、延滞金を課さない了承を得ている。
このような取り扱いとしているのは、修学資金を返還する者の多くが、未就職者や無職
の者であり、滞納理由のほぼすべてが経済的困窮を理由としている。前述のとおり判断根
拠が明文化されていないため、担当課・係の職員は債務者に対する財産調査や家屋への立
入調査を行う根拠、権限などもなく、明らかに返済する余裕がありながら不当に返済を拒
否しているということの確認が難しいため、本人の申し立てにのみ基づき「やむを得ない
事由」として判断しているというのが現状である。
今後は条例に従い所定の手続きにより知事承認を得た上で、延滞金を課さない取扱いと
すべきである。
【意見②】債権管理について
債権管理に関しては各担当が事務を所掌しているため、「2 (3)② 意見【意見②】
債権管理について」と同様の問題点がある。
債権管理全般に係る組織のあり方や権限について、今後慎重な検討をすることが望まれ
る。
214
4 介護保険財政安定化基金貸付制度
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
財政安定化基金は「介護保険法」第 147 条第1項の規定に基づき、介護保険の財政の安
定化に資する事業に必要な費用に充てるため設置されたものである。
すなわち、保険給付見込み額を上回る給付費増や介護保険料収納不足により、市町村の
介護保険事業特別会計に赤字が出ることとなる場合に、一般財源から財政補填をする必要
がないように、市町村に対して資金の貸付(及び交付)を行うものである。
財政安定化基金の貸付(及び交付)の対象は介護給付及び予防給付であり、市町村が条
例で支給限度額に独自に上乗せする部分並びに市町村特別給付及び保健福祉事業は対象
外である。
イ
根拠法令等
「介護保険財政安定化基金貸付制度」に関する関係法令等は、以下のものから構成され
ている。
介護保険財政安定化基金貸付制度に関する関係法令等
・介護保険法
・介護保険の国庫負担金の算定等に関する政令
・新潟県介護保険財政安定化基金条例
・新潟県介護保険財政安定化基金事務処理要綱
②
ア
制度の仕組み
介護保険財政安定化基金の設置主体
県(各都道府県)(原資は国、都道府県及び市町村が1/3ずつ負担)
イ
保険者
市町村及び特別区。保険者は介護保険に関する収入及び支出について特別会計を設ける。
ウ
貸付・交付事業
貸付は、「介護保険の国庫負担金の算定等に関する政令」第7条第4項の規定により算
定した額を限度として、その範囲内の額で行われる。具体的には、毎年、原則として保険
料収納不足及び給付費増による財政不足額に対して行われる。
ただし、事業運営期間(3年)の最終年度における財政不足額のうち、介護保険料収納
率低下による赤字部分の1/2は原則として交付される。当該交付額は貸付金から除かれ
る。
215
貸付金は下図のように、主として保険料収納の低下と給付費の増加によって生じる。
図 3-3-3 貸付金発生の仕組み
収納率低下
による赤字
収
入
支
出
交付
貸付
給付費増
による赤字
貸付
当初見込まれていた給付額
実 際 に 給 付 さ れ た 額
エ
貸与対象者
財政安定化基金の貸付は、「介護保険の国庫負担金の算定等に関する政令」第7条第1
項の要件を満たす市町村に対して行われる。
オ
償還方法
貸付は無利子で、貸付を受けた市町村は当該事業運営期間の借入総額を3で除して得た
金額を、次期事業運営期間(3年)の各年度において償還を行う(「新潟県介護保険財政
安定化基金事務処理要綱」第 16 条第1項)。
③
貸付金の実績
財政安定化基金の貸付金の実績は以下の通りである。
表 3-3-7 第 1 期事業運営期間における財政安定化基金の貸付状況
貸付実績額(新潟県)
全保険者数に占める貸付保険者数の割合(新潟県)
貸付を受けた保険者数(新潟県)
全保険者数 (新潟県)
全保険者数に占める貸付保険者数の割合(全国平均)
216
12年度
8,836
2.8%
3
108
2.7%
(単位:千円,%,団体)
13年度
14年度
第1期計
254,492 1,340,853
1,604,181
12.0%
28.7%
13
31
108
108
13.8%
25.7%
図 3-3-4 第 1 期事業運営期間における財政安定化基金の貸付状況
第1期貸付実績
1,500,000
35.0%
30.0%
25.0%
20.0%
15.0%
10.0%
5.0%
0.0%
1,000,000
(
貸
付
実
績
額
500,000
)
千
円
0
12年度
13年度
事業年度
貸付実績額(新潟県)
保険者数に占める貸付保
険者の割合(A)/(B)
全国平均
14年度
表 3-3-8 第 1 期事業運営期間の財政安定化基金貸付金の第2期事業運営期間における償還状況
15年度
534,743
各年度の償還額
16年度
534,719
17年度
534,719
(単位:千円)
合 計
1,604,181
表 3-3-9 第2期事業運営期間における財政安定化基金の貸付状況
貸付実績額(新潟県)
全保険者数に占める貸付保険者数の割合(新潟県)
貸付を受けた保険者数(新潟県)
保険者数 (新潟県)
保険者数に占める貸付保険者数の割合(全国平均)
15年度
196,214
14.0%
15
107
6.2%
16年度
248,989
21.0%
13
62
15.2%
(単位:千円,%,団体)
17年度
繰上償還
第2期計
739,952
△8,564 1,176,591
37.1%
13
△1
35
25.2%
-
図 3-3-5 第2期事業運営期間における財政安定化基金の貸付状況
第2期貸付実績
800,000
40.0%
700,000
35.0%
貸
付 600,000
実
500,000
績
額 400,000
30.0%
25.0%
(
20.0%
300,000
15.0%
)
千
円 200,000
10.0%
100,000
5.0%
0
0.0%
15年度
16年度
事業年度
17年度
217
貸付実績額(新潟県)
保険者数に占める貸付保険者
の割合(全国平均)(%)
保険者数に占める貸付保険者
の割合(新潟県)(%)
(2)実施した手続
制度の概要をヒアリングし、以下の手続を実施した。
(ⅰ)第1期事業運営期間及び第2期事業運営期間における貸付手続の確認
(ⅱ)第2期事業運営期間における第1期事業運営期間貸付金の償還状況の確認
(ⅲ)保険者の内、貸付を受けた保険者の状況の確認
(ⅳ)第1号被保険者(65 歳以上)の介護保険収納率の状況についての確認
(ⅴ)介護保険料の状況確認
(ⅵ)平成 17 年度指導監査結果に伴う報酬返還の状況確認
(ⅶ)基金の運用状況についての確認
(ⅷ)その他震災の影響、補助金実績等についての状況確認
(3)監査の結果と意見
① 意見
【意見①】保険者(市町村)及び介護(支援)サービス事業者に対する指導について
平成 16 年度における第1号被保険者(65 歳以上)の保険料の収納状況について、特別
徴収(年金からの天引き)及び普通徴収(口座振替、納付書による金融機関への納付)の
別に全国平均と比較すると以下のようになる。県の収納率は 47 都道府県中、上位のグル
ープに属している。
表 3-3-10 保険料の収納状況
特別徴収
調定額累計
(新潟県)
19,301,901
(全 国)
793,410,202
普通徴収
収
納
率
(単位:千円、%)
合 計
収
調定額累計
収納額累計
納
率
収納額累計
収納
率
調定額累計
収納額累計
19,301,901
100.0
3,208,440
3,026,826
94.3
22,510,341
22,328,727
99.2
793,410,535
100.0
175,647,137
158,403,793
90.2
969,057,342
951,814,323
98.2
県における中越大震災により災害減免を行った小千谷市、保険料収納率の低下や水害に
よる災害減免の影響があった三条市、及び低所得者割合の増加のあった上越市に対しては、
平成 17 年度に保険料の収納不足による交付が行われている。また、柏崎市に編入した西
山町、高柳町は、財政余力があることから平成 17 年度に貸付金の繰り上げ償還を行って
いる。
第3期における県の介護保険料加重平均月額は、全国平均より若干低いものの、第2期
と比べて 20.9%上昇している。小出町は第 1 期末で、財政安定化基金からの借入金 49,978
千円があったが、平成 16 年 11 月1日付けで魚沼市に引き継がれている。魚沼市の第3期
218
条例提出額(月額)は 3,600 円である。粟島浦村は平成 18 年 11 月現在、近隣市町村と合
併協議中である。
表 3-3-11 介護保険料の増加率
区 分
新潟県加重平均
全国加重平均
最高月額
最低月額
第2期(H15~17)
3,347
3,293
4,000 小出町
2,500 佐渡市
第3期(H18~20)
4,047
4,090
5,500 粟島浦村
3,200 津南町
差
額
700
797
1,500
700
(単位:円)
伸 び 率
20.9%
24.2%
37.5%
28.0%
県における第3期条例提出額(月額)は全市町村で第2期より増額しており、増額した
主な理由は、財政安定化基金からの借入金に対する償還、介護保険関係の準備基金の取崩、
第1号被保険者数の増加などである。
「第3期計画期間における保険料額の条例提出額(月額)
」は、県における第1号被保
険者(65 歳以上)が以下のように推移していくと予想している。
表 3-3-12 第1号被保険者数(見込)
第1号被保険者数(新潟県)
対前年増加率
一方、
(1)
「③
平成18年度
589,741
-
平成19年度
599,025
1.5%
(単位:人,%)
平成20年度
608,103
1.5%
貸付金の実績」のグラフに見るとおり、保険者(市町村)数に占める
貸付保険者数の割合が全国平均を上回る傾向にある。給付費が当初見込み額を上回る傾向
にあることが見て取れる。
平成 12 年4月から平成 18 年3月までの「指定取消等処分のあった介護保険事業所の年
度別内訳」
(厚生労働省)によれば、全国合計 408 件中、県は平成 13 年度の3件のみとな
っているが、
「平成 16 年度
介護給付適正化推進運動の取り組み状況(都道府県別)」を
みると、県は適正化事業を行っている保険者実施率が 47 都道府県中で 45 番目となってお
り、取り組みの遅れが見られる。
厚生労働省老健局介護保険課「介護保険事業状況報告の概要」(平成 18 年2月暫定版)
によれば、県における第1号被保険者に対する要介護(要支援)認定者割合は全国平均を
下回っているものの、第1号被保険者1人あたり保険給付費は全国平均を上回っている。
また、同資料(平成 18 年5月暫定版)によれば、第1号被保険者1人あたり在宅サービ
ス保険給付費は全国平均を下回っているものの、第1号被保険者1人あたり施設サービス
保険給付費は全国平均を上回っている。
介護形態、保険者(市町村)及び介護(支援)サービス事業者の実態を更に詳しく分析
し、「介護給付適正化推進運動」の趣旨に従った適切な指導を行うことにより、財政安定
化基金貸付金の増加及び第1号被保険者の保険料の増額を抑制させることが期待される。
219
【意見②】介護(支援)サービス事業者の不正・過誤請求と貸付金への影響について
厚生省老人保健福祉局長「介護保険施設等の指導監査について(通知)」(平成 12 年5
月 12 日)に基づいて平成 14 年度から 16 年度までを対象として行われた平成 17 年度指導
監査結果により、介護(支援)サービス事業者から返還された報酬は 98 件、34,676 千円
であった。
介護(支援)サービス事業者からの請求に関する業務は、保険者(市町村)から委託を
受けた国民健康保険団体連合会(以下、「国保連」という。
)が行っている。国保連では、
介護給付費審査委員会を設置して、介護(支援)サービス事業者からの介護給付請求書に
ついての審査・支払いを行っている。最終的に介護(支援)サービス事業者から返還され
た報酬 34,676 千円は、保険者(市町村)に返還されることになる。
平成 17 年度指導監査結果に伴う介護報酬の返還状況の内訳は、介護(支援)サービス
事業者が所在する市町村別には作成されていたが、サービスを利用した被保険者の住民票
がある市町村別には作成されていなかった。
市町村合併の影響もあり、返還に至った事実の発生時点と財政安定化基金からの借入年
度との関係を正確に把握することはできなかったが、報酬返還を行った介護(支援)サー
ビス事業者が所在する市町村と、当該市町村の平成 14 年度から平成 16 年度までの間にお
ける財政安定化基金からの借入の有無、及び平成 17 年度における財政安定化基金からの
借入額を一覧表として整理すると下表のようになる。
表 3-3-13 返還額
返還事業者の所在地
新潟市
長岡市
三条市
新発田市
小千谷市
十日町市
村上市
燕市
糸魚川市
妙高市
五泉市
上越市
阿賀野市
佐渡市
魚沼市
南魚沼市
胎内市
弥彦村
田上町
出雲崎町
荒川町
神林村
合 計
返還額
3,106
4,334
1,569
2,022
14
14
5
623
113
6,348
23
9,861
203
206
766
66
916
13
946
3,461
14
43
34,676
平成14年度~平成16年度の借入の有無
有り
有り
有り
無し
無し
無し
無し
無し
有り
無し
有り
有り
無し
無し
無し
無し
無し
有り
無し
無し
無し
無し
220
(単位:千円)
平成17年度借入額
400,000
124,000
8,841
45,111
24,000
122,000
9,000
7,000
739,952
サービス利用者は、住民票のある市町村もしくは近隣の市町村に所在する介護(支援)
サービス事業者を利用するケースが多いと推察されるものの、利用者の住民票がある市町
村別に介護報酬の返還内訳を作成すべきである。何故ならば、不正・過誤請求が行われな
かったならば、サービス利用者の住民票のある市町村の特別会計の財政安定化基金からの
借入金額がその分だけ少なくなっていたと考えられるからである。
指定居宅サービス事業者及び指定居宅介護支援事業者は都道府県知事が指定する(「介
護保険法」第 70 条第1項、第 79 条第1項)こととされているとともに、指導・監査(「介
護保険法」第4章第 23 条、第 24 条、第5章第 70 条以降)の権限も付与されていること
から、市町村と連携をとり、きめ細かな情報収集、分析等を行うことにより、適切な指導
監督を行っていくことが期待される。
担当者に確認したところ、平成 18 年度以降分からは、返還額に係るサービス利用者の
住民票所在地別明細を作成し状況把握に努め、適切な指導・管理に役立てていくとのこと
である。
221
図 3-3-6 改正後の介護保険制度の仕組み
(出典:介護保険制度改革の概要-介護保険法改正と介護報酬改訂-(厚生労働省))
222
5 福祉のまちづくり施設整備資金融資
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
まちを構成する建物、道路などを障害のある人たちが利用しやすくすることは、障害の
ある人の地域での自立生活を推進するための基礎であり「障害者にとってやさしいまちは、
全ての人にやさしいまちである。」との認識のもと、「新潟県福祉のまちづくり条例」(平
成8年3月 29 日新潟県条例第9号)が制定された。
この貸付制度は、「新潟県福祉のまちづくり条例」に基づいた民間の公共的施設の整備
に必要な資金の融資制度について定め、もって民間の公共的施設を高齢者、障害者等が安
全かつ快適に利用できるように配慮し、及び整備をすすめることにより「福祉のまちづく
り」を推進することを目的としている。
イ
根拠法令等
「福祉のまちづくり施設整備資金融資」に関する関係法令等は、以下のものから構成さ
れている。
福祉のまちづくり施設整備資金融資に関する関係法令等
・新潟県福祉のまちづくり条例
・新潟県福祉のまちづくり条例施行規則
・新潟県福祉のまちづくり施設整備資金融資要綱
②
ア
制度の仕組み
融資対象者
公共的施設を所有又は管理する民間事業者で、金融機関の貸付審査基準に適合した方。
(公共的施設)
小売店、百貨店、スーパーマーケット、食堂、レストラン、旅館、ホテル、理容所、美
容院、映画館、病院、診療所、レクリエーション施設、社会福祉施設等、多数の者の利用
に供する施設。29 種類の施設等が該当する。
イ
融資対象となる工事
(ア)新設
新潟県福祉のまちづくり条例の整備基準に適合するように、新築又は用途変更する工事。
(イ)改修
新潟県福祉のまちづくり条例の整備基準に適合するように、増築、改築、大規模な修繕、
大規模な模様替えをする工事。
223
(ウ)その他
改修にあたらない修繕・模様替えで、新潟県福祉のまちづくり条例の整備基準に定める
1以上の整備項目について同基準に適合させる工事。
ウ
融資金額
申請1件当たり 5,000 万円以内。
エ
融資利率
(ⅰ)改修及びその他
1.0%
(ⅱ)新設(中小企業者及びこれに準ずると知事が認めた者)
1.5%
(ⅲ)新設(中小企業者等以外)
2.0%
オ
県資金の取扱金融機関への預託
県は取扱金融機関との間で交わした「貸付金預託契約書」に従い、県資金を取扱金融機
関に預託している。
③
ア
貸付金の実績
貸付金残高の推移
この融資制度は平成8年 10 月1日から施行されている。毎事業年度末(3 月 31 日)現
在における貸付金残高は、下表の通りである。融資先のDとGは繰り上げ償還を行ってい
る。制度発足以来、融資実績は下表の8件のみである。返済の滞っている事例はない。
表 3-3-14 貸付金残高の推移
(単位:千円)
貸付年度
平成13年
平成14年
平成15年
平成16年
平成17年
平成18年
3月31日
3月31日
3月31日
3月31日
3月31日
3月31日
融資先
平成8年度
A
2,316
1,928
1,537
1,141
742
-
平成10年度
B
5,028
4,332
3,636
2,940
2,244
1,548
平成10年度
C
5,010
4,350
3,690
3,030
2,370
-
平成10年度
D
4,226
-
-
-
-
-
平成11年度
E
14,990
10,982
6,974
2,966
-
-
平成12年度
F
1,940
1,568
1,196
824
452
80
平成13年度
G
-
31,193
27,965
-
-
-
平成14年度
H
-
-
9,585
8,589
7,593
6,597
33,511
54,353
54,583
19,490
13,401
8,225
合
計
224
各年度の預託金額は、下表のように推移している。
表 3-3-15 預託金額の推移
(単位:千円)
平成13年度
預託金
イ
平成14年度
23,560
平成15年度
24,531
平成16年度
10,821
平成17年度
3,655
1,849
予算との関係
ここ数年、毎期の当初予算は 30,000 千円であった。30,000 千円を取扱金融機関に預託
することにより 50,000 千円の新規融資が可能となる。しかしながら、平成 15 年度から平
成 17 年度までの間、新規の融資実績はない。
(2)実施した手続
(ⅰ)平成 15 年度から平成 17 年度までの間、新規融資の実績がないことから、競合する
他の融資制度について調査した。
(ⅱ)整備基準への適合率の推移と融資実績との相関関係があるかどうかを調べた
(3)監査の結果と意見
① 結果
特に問題となる事項はなかった。
なお、競合する制度に関する調査結果は、以下のとおりである。
まず、市町村には、類似の融資制度がないため、競合することはない。競合する可能性
のある融資制度として、以下のようなものがある。
(ⅰ)独立行政法人福祉医療機構
医療貸付/福祉貸付制度
病院、診療所、薬局、社会福祉施設等を対象に新増設・設備購入時に低利融資を行う。
融資利率は年利 1.5%~である。
(ⅱ)国民生活金融公庫
普通/経営改善/特別貸付制度
中小企業者(金融・投機的事業を除く)に対して設備資金・運転資金を低利融資する。
利率は年利 1.4%~である。
(ⅲ)国民生活金融公庫
生活衛生貸付制度
店舗の建替え、増改築に対して低利で融資を行う。利率は年利 0.8%~である。
(ⅳ)中小企業金融公庫
中小企業貸付制度
設備資金に対し低利で融資を行う。利率は年利 1.7%~である。
次に、整備基準への適合率の推移と融資実績との関係については、以下のような結果と
225
なった。県においては、平成8年3月に「新潟県福祉のまちづくり条例」を制定し、病院、
デパート、銀行など多数の者の利用に供する施設の新設等をしようとする者は、高齢者、
障害者等が安全かつ快適に利用できるようにするための整備基準を遵守するものとして
いる。
このうち施設種別毎に定める一定規模以上の施設については、知事に対し整備計画の事
前協議を行わなければならない。事前協議の大部分は、市町村長に委譲している。
平成8年度から平成 17 年度までの県における事前協議件数と適合率の状況、及び「福
祉のまちづくり施設整備資金融資」の貸付実績を一覧表にすると、以下のようになる。
表 3-3-16 整備基準への適合率と融資実績の推移
(単位:件)
H8~H12計
a.
b.
c.
d.
事前協議件数
適合数件数
適合率(b/a)
貸付実績件数
1,784
1,170
65.6%
6
H13年度
H14年度
H15年度
H16年度
H17年度
328
206
62.8%
1
388
220
56.7%
1
355
176
49.6%
0
413
143
34.6%
0
345
101
29.3%
0
累
計
3,613
2,016
55.8%
8
適合率の基準は各都道府県の条例により異なるため、単純比較はできない。県は年々適
合率が下がってきている点について、経済的な要因や県民意識の低下などが相まっている
と分析している。
また、福祉のまちづくり施設整備資金融資制度による貸付実績と適合率の推移との相関
関係は、ほとんど認められなかった。
②
意見
【意見①】利用促進に向けた取り組みについて
県は、「福祉のまちづくり施設整備資金融資」をピンチ・ヒッター的役回りと位置付け
ている。すなわち、他の融資制度で対応しきれない部分についてこの制度を利用してもら
うことで、施設整備を推進することとしている。
融資対象となる工事は、建物全体のうち融資対象となる特定の工事部分だけである。
「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」により、県民の関心が今後
高まることが予想されることから、
「福祉のまちづくり施設整備資金融資」制度について
も県民が活用しやすいような制度に配慮するとともに、一層の周知努力をすることが望ま
れる。
226
6 理学療法士等修学資金貸与制度
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
昭和 49 年度から県内において、理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士(以下、
「理学
療法士等」という。)の業務(以下、
「業務」という。)に従事する職員の充足に資するた
め、学校又は養成施設(以下、
「養成施設」という。)に在籍する者で将来県内において業
務に従事しようとするものに対し、毎年度予算の範囲内で貸与を行うものである。
イ
根拠法令等
「理学療法士等修学資金貸与制度」に関する関係法令等は、以下のものから構成されて
いる。
理学療法士等修学資金貸与制度に関する関係法令等
・理学療法士、作業療法士及び言語聴覚士修学資金貸与条例
・理学療法士、作業療法士及び言語聴覚士修学資金貸与条例施行規則
・理学療法士、作業療法士及び言語聴覚士修学資金の手引
②
ア
制度の仕組み
貸与額
月額 30,000 円
イ
貸与対象
理学療法士、作業療法士及び言語聴覚士養成施設の学生
ウ
貸与期間
貸与決定の月から卒業の月まで
③
ア
貸付金の実績
貸付金残高の推移
平成4年度から貸与者数を8人から 12 人に増やすとともに、貸与月額を2万円から3
万円に引き上げた。また、平成5年度には、貸与者枠を 24 人に拡大した。
その後、県内養成施設の定員増や県内の従事者数の増加により、平成 12 年度以降、新
規貸与を中止し、継続者への貸与についても平成 14 年度をもって終了した。
返済の滞っている事例はない。貸与人数及び貸与金額の推移は以下のようになってい
る。
卒業後1年以内に免許を取得し、免許登録日から継続して3年間県内で業務に従事した
227
者は、申請により修学資金の返還が免除される。
平成 17 年度末現在、免除予定者1名分の貸付金残高のみが残っている。
表 3-3-17 融資件数の推移
(単位:人)
平成10年度
平成11年度
内、新規
内、新規
平成12年度
平成13年度
平成14年度
昭和49年度
からの累計
理学療法士
14
5
13
6
10
2
1
93
作業療法士
10
2
9
4
6
5
1
79
言語聴覚士
0
0
2
2
2
2
1
8
計
24
7
24
12
18
9
3
180
表 3-3-18 貸付金残高の推移
(単位:千円)
前年度末
貸付金残高
(A)
貸付額(B) 返還額(C)
不納欠損
処理額(D)
当年度末
返還
貸付金残高
免除額(F)
(A+B-C-F)
延滞額
(E)
平成13年度
40,560
3,030
1,650
-
-
7,200
34,740
平成14年度
34,740
1,080
840
-
-
10,440
24,540
平成15年度
24,540
-
1,740
-
-
6,840
15,960
平成16年度
15,960
-
1,540
-
-
8,180
6,240
平成17年度
6,240
-
720
-
-
4,080
1,440
(2)実施した手続
貸付手続が手引等に従い適正に実施されているかどうか、平成 17 年度末現在の免除予
定者1名分について関係資料を閲覧した。
(3)監査の結果と意見
① 指摘事項
【指摘事項①】連帯保証人に係る審査手続について
借入申請者は貸付決定時に誓約書(第3号様式)を県に提出するが、これには連帯保証
人2名の署名が必要とされている。また、修学資金の貸与終了時に借入者は借用証書を県
に提出するが、これにも連帯保証人2名の署名が必要とされている。
関係書類を閲覧したところ、誓約書(日付けなし)と、借用証書(平成 15 年4月)に
記載されている連帯保証人1名分の筆跡が不一致となっていた。
連帯保証人に関しては、
「理学療法士、作業療法士及び言語聴覚士修学資金貸与条例」
の第5条には、「修学資金の貸与を受けようとする者は、保証人2名を立てなければなら
228
ない」こと、及び「修学資金の貸与を受けようとする者が未成年である場合には保証人の
うち1人を法定代理人」とする旨の規定があるが、連帯保証人の審査基準等はない。
書類審査に際しては筆跡にも留意した厳正な対応が望まれる。
229
7 病院事業貸付金
(1)「病院事業貸付金」(病院事業会計における一般会計からの一時借入金)
の概要
① 制度の趣旨
ア 目的
「地方公営企業法」第 29 条(一時借入金)には以下の規定がある。
1
管理者は、予算内の支出をするため、一時の借入をすることができる。
2
前項の規定による借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。但し、資金不足のため償還
することができない場合においては、償還することができない金額を限度として、これを借り換える
ことができる。
3
前項但書の規定により借り換えた借入金は、一年以内に償還しなければならない。但し、借入金をも
ってこれを償還するようなことをしてはならない。
また、「地方公営企業法」の規定を受け、「新潟県病院局財務規程」(昭和 60 年3月 30
日付け新潟県病院局管理規程第5号)第 229 条には「病院局長は、予算内の支出に充てる
ため、一時借入れをすることができる。」と規定されている。
当貸付金は、上記規定に基づく一般会計からの病院事業会計への一時貸付金である。
イ
根拠法令等
病院事業会計における一般会計からの一時借入金制度に関する関係法令等は、以下のも
のから構成されている。
「病院事業貸付金」(病院局における一般会計からの一時借入金)に関する関係法令等
・「地方公営企業法」第29条
・「新潟県病院局財務規程」第229条
②
ア
制度の仕組み
一時借入金の借入限度額
「地方公営企業法施行令」第 18 条第4項により、一時の借入れの限度額は、予算で定
めなければならない。
平成 17 年度当初予算における借入限度額は 10,000,000 千円であった。
イ
貸与期間
「地方公営企業法」第 29 条第2項により、
「借入金は、当該事業年度内に償還しなけれ
ばならない。但し、資金不足のため償還することができない場合においては、償還するこ
とができない金額を限度として、これを借り換えることができる。」と規定されている。
230
③
ア
病院事業会計における一時借入金の実績
一般会計からの一時借入金の推移(平成 18 年5月 31 日現在)
病院局は公営企業会計のため、出納整理期間がない。一般会計の出納整理期間は翌会計
年度の5月 31 日までである。毎期出納整理期間の同日付で一時借入金の借り換えを行っ
ており、無利子の取り扱いとされている。
退職給与金の支払及び新発田病院・リウマチセンター建設費の前金払等の影響で、一時
借入金の残高が増加傾向にある。
表 3-3-19 病院事業会計における一般会計からの借入金残高の推移
(単位:千円)
年
度
年月日
一時借入額
返済額
一時借入金残高
平成12年度からの繰越額
平成13年度
平成14年度
平成15年度
平成16年度
平成17年度
平成18年度
5,750,000
H13.4.27
-
5,750,000
-
H13.4.27
3,000,000
-
3,000,000
H14.4.26
-
3,000,000
-
H14.4.26
2,000,000
-
2,000,000
H14.9.2
1,000,000
-
3,000,000
H15.4.25
-
3,000,000
-
H15.4.25
4,000,000
-
4,000,000
H16.4.23
-
4,000,000
-
H16.4.23
4,000,000
-
4,000,000
H17.4.22
-
4,000,000
-
H17.4.22
4,000,000
-
4,000,000
H17.12.9
1,000,000
-
5,000,000
H18.4.21
-
5,000,000
-
H18.4.21
5,000,000
-
5,000,000
231
イ
病院事業会計における電気事業会計からの一時借入金(平成 17 年度)
電気事業会計からの一時借入金については、期首・期末の残高はない。期中における借
入利率は年利 0.03%であった。
表 3-3-20 病院事業会計における電気事業会計からの借入額の推移
(単位:千円)
年
度
年月日
一時借入額
返済額
一時借入金残高
平成16年度からの繰越額
平成17年度
H17.12.28
1,000,000
-
1,000,000
H18.1.10
500,000
-
1,500,000
H18.3.22
-
1,500,000
-
平成18年度への繰越額
-
(2)実施した手続(病院事業会計の資金分析)
(ⅰ)期首及び期末の現金預金及び未収金残高の分析を行った。
(ⅱ)毎期、一般会計の出納整理期間中に同日付で一時借入金の借り換えが行われている
ことから、平成 16 年度及び平成 17 年度の病院事業会計決算書を基にキャッシュ・
フロー計算書を作成し、資金の動きを分析した。
(3)監査の結果と意見
① 結果
特に問題となるような事項はなかった。
なお、各分析の結果は以下のとおりである。
ア
現金預金及び未収金残高の分析結果
現金預金残高は下表のように現金、普通預金及び譲渡性預金に分けられる。譲渡性預金
の 520,000 千円は退職給与支払のための準備資金であり、運転資金には充当されていない。
232
表 3-3-21 現金預金残高
(単位:千円)
現
金
普通預金
譲渡性預金
合
計
H18.3.31
22,662
3,977,514
520,000
4,520,177
H17.3.31
24,188
2,279,809
520,000
2,823,997
△ 1,526
1,697,705
-
1,696,179
増
減
未収金残高は主に国民健康保険団体連合会及び社会保険診療報酬支払基金に対する診
療報酬請求額であり、請求から2ヶ月後に入金となる。資金繰り上、入金タイミングのズ
レの問題はあるが、期末の一時借入金の額に相当する入金確実な資金は確保されている。
表 3-3-22 未収金残高
(単位:千円)
未 収 金
H18.3.31
10,188,160
H17.3.31
10,028,697
増
イ
減
159,463
平成 17 年度キャッシュ・フロー計算書の作成による資金分析結果
平成 17 年度の税引前当期純損失は、一般会計からの繰入額(収益的収入)8,758,252
千円(参考1)受入後で 1,339,482 千円であり、減価償却費の自己金融効果 3,571,422 千
円等の影響により、営業活動によるキャッシュ・フローは 2,446,119 千円となっている。
投資活動によるキャッシュ・フローは、新発田病院等移転新築の建設費の影響により、
△12,081,503 千円となっている。
財務活動によるキャッシュ・フローは、一般会計からの一時借入金の増加額 1,000,000
千円、長期借入金・企業債の増加額 7,056,637 千円及び資本剰余金の増加額 3,274,926 千
円(参考2)により、11,331,563 千円となっている。
233
表 3-3-23 キャッシュ・フロー計算書(試算)
(単位:千円)
Ⅰ
営業活動によるキャッシュ・フロー
税引前当期純損失
△ 1,339,482
減価償却費
3,571,422
受取利息
△ 208
支払利息及び企業債取扱諸費
1,905,906
未収金減少(△増加)
△ 159,463
貯蔵品減少(△増加)
29,087
その他の流動資産減少(△増加)
△ 17,119
繰延勘定減少(△増加)
△ 452,053
未払金増加(△減少)
838,997
その他の流動負債増加(△減少)
7,400
その他の固定負債増加(△減少)
△ 32,670
小
計
4,351,817
利息の受取額
208
利息及び企業債取扱諸費の支払額
小
△ 1,905,906
計
△ 1,905,698
営業活動によるキャッシュ・フロー
Ⅱ
(A)
投資活動によるキャッシュ・フロー
有形固定資産の減少(△増加)
△ 12,089,447
その他の固定資産の減少(△増加)
7,943
投資活動によるキャッシュ・フロー
Ⅲ
2,446,119
△ 12,081,503
財務活動によるキャッシュ・フロー
一時借入金の増加(△減少)
1,000,000
長期借入金・企業債の増加(△減少)
7,056,637
資本剰余金の増加(△減少)
3,274,926
財務活動によるキャッシュ・フロー
11,331,563
Ⅳ
現預金残高の増加(△減少)
1,696,179
Ⅴ
期首現預金残高
2,823,997
Ⅵ
期末現預金残高
4,520,177
234
(B)
(単位:千円)
(参考1)平成17年度における一般会計から病院事業会計への繰入額(収益的収入)
地方公営企業法第17条の2第1項第1号
1,041,682
(救急医療経費 691,658千円、他)
地方公営企業法第17条の2第1項第2号
5,339,786
(不採算地区病院運営経費 773,325千円、特殊病院運営経費 1,488,606千円、
起債利息補てん金 1,515,034千円、他)
地方公営企業法第17条の3(補助金)
2,376,784
(共済組合負担金(追加費用)1,515,665千円、他)
収益的収入
計
8,758,252
(C)
繰入がなかった場合の営業活動によるキャッシュ・フロー = △ 6,312,132((A) - (C))
(単位:千円)
(参考2)平成17年度における資本剰余金増加額(資本的収入)
地方公営企業法第17条の2第1項第1号
444
地方公営企業法第17条の2第1項第2号
2,734,098
(起債元金償還財源負担金 1,253,250千円、建設改良等負担金 1,480,848千円)
地方公営企業法第17条の3(補助金)
資本的収入
5,547
計
2,740,089
その他の増加額
534,837
合
②
計
3,274,926
(B)
意見
【意見①】一般会計からの一時借入金について
病院局は一般会計及び電気事業会計からの一時借入金を、病院事業の運営にあたり必要
となる給与・手当・退職金等の給与費、材料費、その他の諸経費の運転資金不足、長期借
入金が入金されるまでの設備投資前払金のつなぎ資金などに充てている。
「(1)③ ア 病院事業会計における一般会計からの一時借入金の推移」に見るとおり、
出納整理期間中に行われている一般会計からの一時借入金の借り換えは、一般会計からの
一時借入金が実質的に長期化している実態を示しており、違法とは言えないが適切ではな
い。
平成 17 年度末における病院事業会計の収支状況は、平成 19 年度における単年度黒字化
を目標とした「中期収支計画」と大幅な乖離が生じており、病院局は平成 18 年度におい
て同「中期収支計画」の達成を断念している。
平成 17 年3月に県立病院改革検討会議が「県立病院改革検討会議報告書」を作成して
235
いるが、そうした病院改革を通して、固定化されている一時借入金の残高を長期的に減額
させる方向で見直すことが望まれる。
236
【福祉保健部】 〔特別会計〕
1 母子・寡婦福祉資金貸付金
(1)「母子・寡婦福祉資金貸付金」制度の概要
① 制度の趣旨
ア 目的
母子家庭及び寡婦の方の経済的な自立を支援するとともに、扶養している子供の福祉の
増進を図ることを目的としている。
イ
根拠法令等
「母子・寡婦福祉資金貸付金」に関する関係法令等は、以下のものから構成されている。
母子・寡婦福祉資金貸付金制度に関する関係法令等
・母子及び寡婦福祉法
・母子及び寡婦福祉法施行令
・新潟県特例児童扶養資金貸付金の償還の一部免除に関する条例
・新潟県母子及び寡婦福祉法施行細則
・新潟県母子寡婦福祉資金事務取扱要領
・新潟県母子寡婦福祉資金貸付審査基準
また、
「母子及び寡婦福祉法」第 36 条に従い「母子寡婦福祉資金貸付事業特別会計」が
設けられている。
ウ
国の施策との関係
母子家庭の増加に伴う児童扶養手当の増加が、国及び地方自治体の財政に大きな影響を
与えるに至っているが、一方で近年の経済情勢の変化などの影響により、母子家庭の母の
就業は困難な状況が続いている。
平成 14 年に「母子及び寡婦福祉法」等が改正され、従来の「児童扶養手当」中心の施
策が「就業・自立に向けた総合的な支援」へと転換した。児童扶養手当については、受給
期間が5年を超える場合、平成 20 年4月1日以降、一部支払が停止される取扱いとなっ
た。この一部支払停止の取扱いについては、母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律
案に対する付帯決議(衆議院(平成 14 年 11 月8日)
・参議院(平成 14 年 11 月 21 日)の
厚生労働委員会)に基づく政府の施策に留意する必要がある。
母子家庭の福祉を図ることを目的とする「母子家庭の母の就業の支援に関する特別措置
法」(平成十五年七月二十四日法律第百二十六号
以下、「特別措置法」という。)が平成
20 年3月 31 日までの時限立法として制定された。
「特別措置法」の第4条においては、
「政
府は、対象期間に係る母子及び寡婦福祉法第 16 条に規定する母子福祉資金貸付金の貸付
けについて、母子家庭の母の就業が促進されるように特別の配慮をして、同条に規定する
237
政令を定めなければならない。」と定めている。
「母子家庭及び寡婦等の生活の安定と向上のための措置に関する基本的な方針」
(平成
15 年厚生労働省告示第百二号
以下、「基本方針」という。
)も公表されているが、この
「基本方針」において母子家庭の母等の就業・自立へ向けて「就業支援」、
「子育て・生活
支援」、「養育費の確保の促進」、「経済的支援」を総合的に実施することとされている。
図 3-3-7 母子家庭への支援制度の概要
(出典:母子家庭の母に対する子育て・生活支援、就業支援、養育費の確保、経済的支援の実施体制 (厚
生労働省
社会・援護局
生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会
第22 回資料(平
成 17 年5月 27 日開催)
))
また、児童扶養手当における国庫負担割合の見直し等の措置を講ずる「国の補助金等の
整理及び合理化等に伴う児童手当法等の一部を改正する法律案」が国会に提出され、平成
18 年3月 31 日に成立し、平成 18 年4月1日から施行された。この法律をうけ、母子家
庭の自立に向けた総合的な支援に関する地方の役割等に鑑み、児童扶養手当の支給に要す
る費用の負担割合を、従来の国4分の3、都道府県等4分の1から、国3分の1、都道府
県等3分の2とされた。
県は上記の「基本方針」をうけ、平成 16 年度から平成 19 年度までの期間に係る「新潟
県母子家庭及び寡婦自立促進計画」
(以下、
「自立促進計画」という。)を策定し公表して
いる。「母子寡婦福祉資金貸付金」は「自立促進計画」の中で「経済的支援」の内訳項目
として位置付けられており、県は基本目標として「母子寡婦福祉資金貸付金に関する情報
提供及び適正な貸付業務の実施」を掲げている。
238
エ
県における児童扶養手当受給者数の推移
県における児童扶養手当受給者数は下表のように推移してきている。平成 20 年4月 1
日以降の児童扶養手当の減額支給開始に向けて、母子家庭の母等の自立支援策が講じられ
ることが期待される状況となっている。
表 3-3-24 新潟県における児童扶養手当受給者数の事由別状況(各年度3月末現在)
(単位:人)
生別母子世帯
年度
総数
死別
離婚
未婚
障害者
遺棄
その他
その他
平成12年度
10,033
9,112
6
75
670
41
41
88
平成13年度
10,830
9,834
8
69
730
38
49
102
平成14年度
11,791
10,708
10
59
815
37
44
118
平成15年度
12,535
11,414
4
60
842
37
36
142
平成16年度
13,140
11,938
6
62
877
32
37
188
平成17年度
13,601
12,366
10
62
903
31
34
195
②
ア
制度の仕組み
貸付金の種類等
「母子・寡婦福祉資金」には、以下の 13 種類がある(平成 18 年3月末現在)。
1.事業開始資金
6.就職支度資金
11.就学支度資金
2.事業継続資金
7.医療介護資金
12.結婚資金
3.修学資金
8.生活資金
13.特例児童扶養資金
4.技能習得資金
9.住宅資金
5.修業資金
10.転宅資金
貸付限度額、据置期間、償還期間、利率等の具体的内容については、
「母子及び寡婦福
祉法施行令」等に定められている。
イ
貸付事務・償還事務の流れ
貸付事務及び償還事務の流れは、次の図のようになっている。関係する市町村とは、
「地
方分権一括法に係る市町村への事務処理の協力について(依頼)」
(新潟県福祉保健部児童
家庭課長通知)に基づき連携を図っている。
239
図 3-3-8 母子・寡婦福祉資金貸付金
連
帯
保
証
人
~貸付事務の流れ~
⑤調査・審査
連
帯
借
主
⑤調査・審査
①相談
市
町
村
③助言
健
康
福
祉
環
境
部
等
②連携
④申込(申請書提出)
借
受
人
地
域
振
興
局
審
査 ⑥決定
会
⑦電算処理
貸付データ
作成
⑫電算処理
貸付確認
⑤調査・審査
⑩貸付決定通知書の交付
⑪借用書・同意書の提出
⑧貸付決定の報告
⑨貸付決定通知書の作成
⑬支払データ
児
童
家
庭
課
⑮支払案内書
⑯資金交付(指定口座へ入金)
図 3-3-9 母子・寡婦福祉資金貸付金
連
帯
保
証
人
⑭償還指導
連
帯
借
主
⑭償還指導
⑭償還指導
⑮完納通知書の送付
健
康
福
祉
環
境
部
~償還事務の流れ~
②電算処理
(調定一覧表)
(違約金調定一覧表)
⑫帳票送付
(納入状況一覧表)
(督促状発行リスト)
(催告状発行リスト)
(完納通知書)
(完納者リスト)
児
童
家
庭
課
情
報
政
策
課
⑨収納処理
⑩収納データ
⑧
収
納
デ
ー
借
受
人
地
域
振
興
局
⑭支出命令
出納局
等
タ
①調定
③納入通知書・口座振替通知書
⑪収納
消込
⑬督促状・催告状
④現金納入・口座振替
銀行・郵便局
⑤領収書
240
⑥収納済通知書
⑦収納済リスト
出
納
局
図 3-3-10 母子・寡婦福祉資金貸付金
電算処理(変更入力)
変更届・変更決定写し等送付
地域振興局 健康福祉環境部 等
(審査)
(決定)
変
更
決
定
通
知
書
変
更
届
・
変
更
申
請
書
借
受
人
変
更
決
定
通
知
書
変
更
届
・
変
更
申
請
書
連
帯
借
主
~各種変更事務の流れ~
帳票送付
変
更
決
定
通
知
書
変
更
届
・
変
更
申
請
書
連
帯
保
証
人
変更届・変更申請書
変更決定通知書
児
童
家
庭
課
(審査)
(決定)
ウ
貸付金の財源措置について
「母子・寡婦福祉資金貸付金」事業は、国と県との共同事業である。国庫借入金の額と
県の一般会計からの繰入金の額との割合は、過去、種々の変遷を経てきているが、昭和
43 年度以降の貸付原資の投入割合は国が3分の2、県が3分の1となっている。
なお、「母子及び寡婦福祉法」第 37 条第2項には下記の規定がある。
2
都道府県は、毎年度、当該年度の前々年度の特別会計の決算上の剰余金の額が、政令
で定める額を超えるときは、その超える額に第一号に掲げる金額の第二号に掲げる金
額に対する割合を乗じて得た額に相当する金額を、政令で定めるところにより国に償
還しなければならない。
一
当該年度の前々年度までの国からの借入金の総額(この項及び第四項の規定により国
に償還した金額を除く。
)
二
前号に掲げる額と当該都道府県が当該年度の前々年度までに福祉資金貸付金の財源と
して特別会計に繰り入れた金額の総額(第五項の規定により一般会計に繰り入れた金
額を除く。)との合計額
241
平成 17 年度決算において、
「母子寡婦福祉資金貸付事業特別会計」の剰余金が政令で定
める額(平成 17 年度の前々年度以前3年度の各年度における特別会計の決算上の母子寡
婦福祉資金貸付金の貸付合計額を3で除して得た額の2倍に相当する額)を超えたため、
県としては初めて平成 19 年度に貸付原資の一部を国及び県の一般会計へ返還する予定と
なっている。これは近年、貸付金の償還額が、貸付額を上回っている影響である(表 3-3-25
参照)。
表 3-3-25 収納額と貸付額との関係(新潟県:平成 13 年度~平成 17 年度)
(単位:千円)
平成13年度
平成14年度
平成15年度
平成16年度
平成17年度
収
納
額
176,824
169,772
168,662
177,103
174,976
貸
付
額
175,200
160,365
140,914
132,092
133,464
1,624
9,407
27,748
45,011
41,512
差
③
ア
引
貸付金の実績
新潟県における「母子・寡婦福祉資金貸付金」の貸付金残高推移
県における「母子・寡婦福祉資金貸付金」の調定済未納額を除く貸付金残高は、下図の
ように推移してきている。平成8年度には新潟市へ貸付債権の譲渡が行われている(「イ
新潟市への貸付債権の譲渡」参照)
。
図 3-3-11 「母子・寡婦福祉資金貸付金」残高(調定済未納額は除く)の推移(新潟県)
(千円)
1,600,000
1,400,000
1,200,000
1,000,000
800,000
合計
600,000
母子
400,000
寡婦
200,000
H16
H14
8
H12
H
6
242
H10
H
4
2
H
H
S63
S61
S59
S57
S55
S53
0
イ
新潟市への貸付債権の譲渡
母子・寡婦福祉資金貸付金事業は、都道府県、政令指定都市、中核市において実施する
取り扱いとなっている。平成8年4月1日付けで新潟市が中核市に指定されたため、「地
方自治法第 252 条の 19 第1項又は第 252 条の 22 第1項の規定による指定都市又は中核市
の指定があった場合における必要な事項を定める政令」(昭和 38 年政令第 11 号)第3条
及び第8条、
「中核市における母子及び寡婦福祉資金の貸付けに関する事務処理について」
(平成7年4月1日
児発第 370-2号
厚生労働省児童家庭局長通知)等の規定に従っ
て、県は関係する貸付債権を新潟市へ譲渡した。譲渡の概要は以下のとおりである。
(ア)債権譲渡の対象者
新潟市の中核市指定日(平成8年4月1日)現在において、現に新潟市の区域に住所(住
民登録)を有する者すべて。借受人死亡の場合は、連帯借受人があればその者、いない場
合は連帯保証人の住所で判断した。
(イ)債権譲渡の区分
(ⅰ)償還期間中のものについては、指定日現在の滞納額及び指定日以降に償還すべき額
(ⅱ)据置期間中のものについては、指定日以降に償還すべき額
(ⅲ)継続貸出中のものについては、指定日前日までの既貸出額に対応する償還すべき額
(ウ)債権総額、譲渡件数、県の拠出原資に対応する債権の譲渡価額
債権総額、譲渡件数、県の拠出原資に対応する債権の譲渡価額は表 3-3-26 のとおりで
ある。
表 3-3-26 債権総額、譲渡件数、県の拠出原資に対応する債権の譲渡価額
(単位:千円)
債権内訳
(A)
元金滞納分
構成比
県の債権放棄額
(B)
差引:県債権の譲渡価額
(C = A - B)
26,528
5.8%
18,795
7,733
元金未調定分
122,719
26.9%
20,813
101,906
元金
149,247
32.8%
39,608
109,639
子
4,676
1.0%
4,676
-
違約金
10,687
2.3%
10,687
-
164,610
36.1%
54,971
109,639
290,832
63.9%
455,442
100.0%
利
小計
県の債権金額
計
国の債権金額
債権金額
合計
243
(1,391件)
一般に普通地方公共団体が債権を放棄する場合は議会の議決が必要とされる。しかしこ
の事例は地方自治法第 252 条の 25 に基づく「地方自治法第 252 条の 19 第1項又は第 252
条の 22 第1項の規定により指定都市又は中核市の指定があった場合における必要な事項
を定める政令」の規定により、厚生労働大臣が財務大臣及び総務大臣と協議して譲渡価格
の決定(=債権放棄額の決定)が行われるため、議会の承認は要しない。
県は「母子及び寡婦福祉資金貸付金の債権譲渡に係る協議事項」により新潟市と債権放
棄額 54,971 千円について大臣協議前に合意している。
債権放棄額は、債権譲渡後に新潟市で負担する債権回収に要する事務コスト等を考慮し
たものであり、債務者本人に対する債権額を減額したものではない。
なお、平成 19 年4月1日付けで新潟市が政令指定都市となる関係で、県は新潟市へ中
核市指定後に編入合併した市町村等に関する貸付債権を譲渡することになっている。県の
債権放棄額も再度発生する見込みである。
ウ
「母子・寡婦福祉資金貸付金」の予算及び実績
県における平成 13 年度から平成 17 年度までに実行された母子・寡婦福祉資金貸付金の
推移は表 3-3-28 のとおりである。修学資金が最も多く利用されており、次いで就学支度
資金が利用されている。修学資金と就学支度資金の合計は、貸付額の9割以上を占めてい
る。
表 3-3-27 母子・寡婦福祉資金貸付金
各年 2 月補正後予算額の推移(新潟県)
(単位:件、千円)
資金名
平成13年度
件数
金額
平成14年度
件数
平成15年度
金額
件数
金額
平成16年度
件数
金額
平成17年度
件数
金額
事業開始
3
7,160
4
8,660
3
7,160
4
8,660
4
8,660
事業継続
3
4,260
2
3,857
2
2,840
3
4,260
3
4,260
383
271,932
399
285,084
418
294,000
422
295,680
420
315,120
3
1,350
3
1,350
3
1,350
17
9,360
17
9,360
16
7,924
12
5,700
16
8,100
17
8,800
17
8,800
就職支度
2
420
4
840
4
840
15
2,600
15
2,600
医療介護
3
810
4
1,080
3
810
3
930
6
2,620
生活
6
7,416
6
7,416
6
7,416
14
17,304
14
19,128
住宅
7
11,500
8
13,000
8
13,000
8
13,000
21
37,000
転宅
3
780
4
1,040
4
1,040
4
1,040
15
3,900
82
24,136
93
26,881
92
26,721
94
29,301
93
32,079
1
300
2
540
3
900
4
1,200
3
900
(特例)児童扶養
16
6,453
25
10,188
17
6,447
17
6,447
17
6,628
計
528
344,441
566
365,636
579
370,624
622
398,582
645
451,055
修学
技能習得
修業
就学支度
結婚
244
表 3-3-28 「母子・寡婦福祉資金」の貸付実績の推移(新潟県)
(単位:件、千円)
平成13年度
平成14年度
平成15年度
平成16年度
平成17年度
資金名
件数
金額
件数
金額
件数
金額
件数
金額
件数
金額
事業開始
0
-
0
-
0
-
0
-
0
-
事業継続
0
-
0
-
0
-
0
-
0
-
295
158,836
258
146,364
229
128,465
217
118,197
203
114,283
技能習得
2
462
2
756
1
420
1
420
2
460
修業
4
1,601
4
1,470
2
841
9
3,014
3
1,013
就職支度
0
-
2
562
2
420
1
100
3
960
医療介護
1
145
0
-
0
-
0
-
0
-
生活
1
206
6
1,047
6
1,942
3
1,233
2
1,046
住宅
2
2,900
1
1,500
0
-
0
-
2
3,500
転宅
1
114
0
-
2
395
0
-
0
-
42
10,936
33
8,366
35
8,431
38
9,128
35
12,202
結婚
0
-
1
300
0
-
0
-
0
-
(特例)児童扶養
0
-
0
-
0
-
0
-
0
-
348
175,200
307
160,365
277
140,914
269
132,092
250
133,464
修学
就学支度
計
表 3-3-29 「母子・寡婦福祉資金」の貸付実績の推移(全国集計)
(単位:件、千円)
資金名
事業開始
事業継続
平成13年度
件数
155
金額
334,336
平成14年度
件数
132
金額
274,977
平成15年度
件数
118
金額
241,972
平成16年度
件数
81
金額
183,436
平成17年度
件数
82
金額
185,486
104
112,042
83
102,448
64
73,438
46
46,666
35
40,075
39,486
17,858,646
39,560
18,284,715
39,567
18,440,251
40,083
18,883,918
38,446
18,494,074
技能習得
980
371,596
1,226
449,783
1,304
495,081
1,231
467,881
1,121
443,342
修業
989
428,113
1,094
456,719
1,124
475,034
1,119
458,924
1,056
430,214
就職支度
165
32,361
158
34,268
184
39,636
127
27,372
138
29,011
医療介護
95
14,850
101
23,524
87
16,229
68
13,772
66
13,668
1,515
621,299
1,913
707,498
2,069
816,225
1,783
777,012
1,509
763,783
修学
生活
住宅
177
180,174
131
116,131
118
109,961
128
125,214
67
58,306
転宅
1,389
318,022
1,551
411,850
1,568
364,910
1,198
276,447
1,037
236,651
11,370
2,743,465
11,808
2,811,411
12,883
3,376,482
12,240
3,633,722
11,690
3,833,521
42
12,540
47
35,688
43
11,778
23
6,820
15
4,400
167
26,573
496
48,177
477
36,411
129
11,199
70
6,479
56,634
23,054,017
58,300
23,757,189
59,606
24,497,408
58,256
24,912,383
55,332
24,539,010
就学支度
結婚
(特例)
児童扶養
計
245
エ
償還率の推移と未納額の状況
県における「母子・寡婦福祉資金貸付金」の償還率と未納額の推移は、表 3-3-30 のと
おりである。
表 3-3-30「母子・寡婦福祉資金貸付金」の償還率の推移(新潟県)
(金額単位:千円)
平成13年度
調
収
定
入
済
平成14年度
平成15年度
平成16年度
平成17年度
額
292,280
291,037
295,367
303,879
297,454
額
176,824
169,772
168,662
177,103
174,976
115,455
121,265
126,704
126,775
122,477
未
納
額
償
還
率
60.5%
58.3%
57.1%
58.3%
58.8%
調定済未納額を、
「母子福祉資金貸付金」の過年度分と現年度分、
「寡婦福祉資金貸付金」
の過年度分と現年度分に分解すると表 3-3-31 のようになる。
「母子福祉資金貸付金」の過
年度分に長期滞留債権が集中していることがわかる。
表 3-3-31「調定済未納額」の内訳(新潟県)
(金額単位:千円)
平成13年度
平成14年度
平成15年度
平成16年度
平成17年度
母子福祉資金
過年度分
87,117
93,359
99,821
101,591
97,354
現年度分
13,943
13,791
12,803
11,523
12,155
計
101,060
107,150
112,624
113,115
109,509
過年度分
12,984
12,594
12,848
12,546
11,948
現年度分
1,412
1,519
1,231
1,113
1,019
計
14,396
14,114
14,079
13,660
12,967
115,455
121,265
126,704
126,775
122,477
寡婦福祉資金
合
計
平成 17 年度末現在における調定済未納額について、貸付金の種類別に内訳を分解する
と下表のようになる。過年度の「母子福祉資金貸付金」に含まれる事業開始資金、事業継
続資金及び修学資金の延滞債権合計 80,541 千円が、未納額 122,477 千円の 65.8%を占め
ていることがわかる。
246
表 3-3-32 平成 17 年度末現在における「調定済未納額」の資金別内訳(新潟県)
(金額単位:千円)
貸付資金の種類
母子福祉資金
過年度分
現年度分
事業開始
23,086
801
事業継続
10,063
修学
寡婦福祉資金
合
現年度分
23,888
2,357
-
2,357
26,246
211
10,274
2,767
-
2,767
13,041
47,391
8,576
55,967
3,142
880
4,022
59,990
技能習得
1,481
128
1,609
40
4
44
1,653
修業
2,580
472
3,053
414
102
517
3,570
就職支度
815
292
1,107
-
-
-
1,107
医療介護
366
-
366
-
-
-
366
生活
2,642
209
2,851
-
-
-
2,851
住宅
3,036
233
3,269
3,153
-
3,153
6,423
転宅
534
120
654
-
-
-
654
5,280
1,072
6,353
41
9
51
6,404
-
-
-
30
22
52
52
75
37
112
-
-
-
112
97,354
12,155
109,509
11,948
1,019
12,967
122,477
結婚
(特例)児童扶養
計
計
計
過年度分
就学支度
計
県は平成 16 年度に償還対策として、下記2項目を重点実施項目に掲げて取り組んでい
る。
(ア)連帯借主・連帯保証人への償還指導の強化
以前は、連帯借主及び連帯保証人に対する償還指導は必要に応じて実施してきたが、平
成 16 年度からは、原則として対象者全員に年 2 回(催告状発送時期に合わせて6月と 12
月)、滞納状況及び償還協力について通知を発送している。
(イ)市町村との連携強化及び滞納者に対する債務意識の喚起
市町村及び滞納者本人(借主・連帯借主・連帯保証人)に対して、生活状況等に関する
調査票を送付し、回答を求めた。その結果、滞納者の債務意識が喚起されるとともに、滞
納者の状況に応じた適切な償還指導の実施に役立っている。
【調査票の主な項目】
(ⅰ)市町村用:収入、課税状況、負債、生活保護適用の有無、家族の状況、新住所
(ⅱ)滞納者用:収入、家族の状況、その他災害被害や疾病の有無など
上記取組みの結果、平成 17 年度の過年度未納額、未納件数及び償還率について、下表
のとおり改善がなされている。この取組みは平成 18 年度においても引続き実施されてい
る。
247
表 3-3-33 「母子福祉資金貸付金」の過年度調定済未納額の推移(新潟県)
(金額単位:千円)
平成14年度
平成15年度
平成16年度(A)
平成17年度(B)
増減(B-A)
事業開始
24,976
25,708
26,384
23,086
△ 3,297
事業継続
10,535
10,394
10,372
10,063
△ 309
修学
43,932
48,091
48,230
47,391
△ 839
技能習得
1,406
1,535
1,565
1,481
△ 84
修業
1,924
2,166
2,419
2,580
161
就職支度
399
480
670
815
145
医療介護
500
398
370
366
△ 4
生活
2,099
2,455
2,467
2,642
174
住宅
3,413
3,450
3,258
3,036
△ 221
転宅
290
501
478
534
55
3,615
4,372
5,068
5,280
211
266
266
266
-
△ 266
-
-
37
75
37
93,359
99,821
101,591
97,354
△ 4,237
就学支度
結婚
(特例)児童扶養
計
表 3-3-34 過年度調定済未納額、未納件数及び償還率の改善状況(新潟県)
(単位:千円、件)
平成16年度(A)
平成17年度(B)
増減(B-A)
101,591
97,354
△ 4,237
12,546
11,948
△ 598
114,138
109,302
△ 4,836
19,040
18,020
△ 1,020
母子福祉資金
調定済未納額
寡婦福祉資金
調定済未納額
母子・寡婦福祉資金
調定済未納額
調定済未納件数
償還率
計
9.9%
13.8%
(注)平成 17 年度の母子未納額には、還付未済額9千円を含む。
248
3.9%
県の償還率を関東甲信越の都県と比較すると、表 3-3-35 のようになる。県は全国平均
値を上回っている。
表 3-3-35 母子福祉資金償還率(%)の推移比較
(単位:%)
区
平成12年度
分
過年度
現年度
平成16年度
計
過年度
現年度
平成16年度 - 平成12年度
計
過年度
現年度
計
茨城県
14.1
89.3
67.6
10.9
89.4
61.0
△ 3.2
0.1
△ 6.6
栃木県
8.7
82.5
49.9
8.8
81.3
42.8
0.1
△ 1.2
△ 7.1
群馬県
9.4
87.2
55.2
7.5
86.5
49.7
△ 1.9
△ 0.7
△ 5.5
埼玉県
14.1
86.8
65.3
11.8
84.9
58.4
△ 2.3
△ 1.9
△ 6.9
千葉県
13.4
88.4
62.0
10.9
86.1
54.8
△ 2.5
△ 2.3
△ 7.2
東京都
6.1
63.8
28.2
9.3
63.2
27.8
3.2
△ 0.6
△ 0.4
神奈川県
5.4
80.5
39.4
5.3
77.9
31.9
△ 0.1
△ 2.6
△ 7.5
新潟県
14.1
91.2
60.7
9.8
92.9
58.8
△ 4.3
1.7
△ 1.9
山梨県
22.6
86.3
71.2
14.0
81.2
54.1
△ 8.6
△ 5.1
△ 17.1
長野県
28.3
92.6
79.9
8.3
89.6
64.6
△ 20.0
△ 3.0
△ 15.3
9.0
81.4
46.7
7.7
79.0
40.0
△ 1.3
△ 2.4
△ 6.7
全国平均
(出典:厚生労働省資料 「母子福祉資金償還率の推移」
これは「母子福祉資金」のみの集計であり 「寡婦福祉資金」
、
「母子及び寡婦貸付金全体」につい
ての情報提供はない。)
249
(2)実施した手続
(ⅰ)適宜質問等を行い、必要な資料の提示を依頼し、制度の概要を把握した。
(ⅱ)平成 18 年4月に行われた新規貸付 59 件の中から4件をサンプル抽出し、貸付金台
帳を閲覧した。
(ⅲ)担当者より滞留状況について概要をヒアリングし、必要と認めた資料の提供をお願
いした。また、支局から取り寄せた滞留している貸付金の台帳を3件閲覧した。
(ⅳ)新潟地域振興局新津支局へ実地調査を行い、以下のことを実施した。
・書類管理の状況について、適宜質問を行い、必要な資料等の提示を求め、サンプリン
グにより台帳等を閲覧した。
・貸付事務を行っているシステムについて、コンピュータの画面を見ながら説明を受け
た。
・変更事務の状況に関して、滞納状況一覧表を通査し担当者へ適宜質問の上、償還計画
を見直して返済が再開された事例1件、退学に伴い修学資金を返済することになった
事例1件について、個別の契約関係書類を閲覧した。
(3)監査の結果と意見
① 結果
事業開始資金、事業継続資金、医療介護資金、生活資金及び住宅資金の貸付申請につい
ては、必ず「貸付審査会」を開催して、貸付の適否を審査することとされている(「新潟
県母子寡婦福祉資金事務取扱要領」第3第7項(2))。「貸付審査会」の実施状況を確認
したところ、件数は少なかったものの「貸付審査会」が必要とされる貸付金に関して平成
17 年度に実施した「貸付審査会」の議事録が適切に整理保存されていた。
その他、特に問題となるような事項はなかった。
②
意見
【意見①】「事業開始資金」等のほとんど活用されていない貸付金について
「母子・寡婦福祉資金貸付金」の各年2月補正後予算額の平成 13 年度から平成 17 年度
までの内訳推移をみると、毎年最低1件は貸付を予定している。これは、この貸付制度の
目的に従って借入申請があった場合に貸付を行うことを予定しているためである。
ところで、
「母子・寡婦福祉資金貸付金」の新規貸付金の実績推移をみると、
「事業開始
資金」のほか「事業継続資金」及び「(特例)児童扶養資金」は平成 13 年度から平成 17
年度まで貸付実績がゼロである。県の担当者からのヒアリングによれば、融資相談者の事
業計画等が審査基準を満たしていないため、事業計画の見直し、自己資金の確保、助成金
制度など、融資以外の方法による見直しをアドバイスしているとのことである。
「母子・寡婦福祉資金の新規貸付(全国集計)の推移」をみると、
「事業開始資金貸付
250
金」、
「事業継続資金貸付金」及び「特例児童扶養資金貸付金」は毎期貸付実績がある。他
県の運用の仕方、成功事例等を研究し、この貸付制度を有効に活用することを前向きに検
討する余地があると考えられる。
【意見②】貸付事務に関する審査資料等の整理保存について
「母子寡婦福祉資金貸付金」に関する専用の文書管理規程はなく、県の「文書管理規程」
に従った整理保存が行われている。
「母子寡婦福祉資金貸付金」は「新潟県文書規程」(昭和 60 年3月 26 日
第2号)第 45 条第1項「(3)第3種文書
新潟県訓令
5年」
(別表第1(第 45 条関係)第3種文書
の(11)貸付金及び補助金に関する文書(重要なものを除く。))に該当する。ただし、第
45 条第2項により、
「前項の規定にかかわらず、法令等に保存期間の定めのある文書及び
時効が完成するまでの間証拠として保存する必要がある文書の保存年限は、それぞれ法令
等に定める期間又は時効期間による。」と定められている。
新潟地域振興局新津支局へ往査した際に、キャビネに保管されている貸付金のファイル
を5件閲覧したが、過去に組織改正や分掌事務の見直しが行われた影響で貸付ファイル毎
に保存されている書類の範囲が異なっていた。
また、返済が長期間滞っている「事業開始資金」に関する契約関係書類を1件閲覧した。
回収業務にかかる顛末は記録されていたが、当該貸付金に関する事業計画等の書類は保存
されていなかった。かなり以前に貸し付けたものであるため、組織改正や分掌事務の見直
しにより、どの時点で書類の引継ぎが行われなかったのか不明である。
県のルールに従って5年間保存するものの範囲と、「重要なもの」として5年を超えて
保存するものについて、運用ルールを定めることを検討すべきではないかと考えられる。
【意見③】調定済未納額に係る違約金について
「新潟県母子寡婦福祉資金事務取扱要領」第4章第2第1項(1)は、「知事は、元利
金償還金が収納された翌月に違約金の調定決議を行うものとし、納入通知書を借主等へ送
付し、健康福祉環境事務所長等へ「違約金調定者一覧表」を送付する。」と規定しており、
現状はこの規定に従った運用が行われているため、合規性の観点で問題はない。また、平
成 18 年3月末現在、元利金の調定済未納件数は 14,472 件、調定済未納額は 104,410 千円
であるが、これらに対応する違約金の額は収納額に延滞期間と年率 10.75%(「母子及び
寡婦福祉法施行令」第 17 条)を掛けて算出される。このオフ・バランスとなっている違約
金の額は、県の担当者が滞納者へ督促する際に伝えている額であり、当事者間においては
認識されている。
しかしながら、調定済未納額に係る違約金は、元利金が納入されるまで貸付金台帳に計
上されず、住民に対する情報開示も行われていないため、違約金に関する情報開示のあり
方について、全庁的な観点から検討する余地があるのではないかと考えられる。
251
【意見④】借主、連帯借主及び連帯保証人が全て行方不明となっている貸付金について
平成 17 年度末現在、借主、連帯借主及び連帯保証人が全て行方不明となっている貸付
金(借用証書ベース)は 20 件、7,292 千円ある。
行方不明者に係る処理について、
「14
回答集について」(昭和 54 年8月2日
(局)長宛
母子・寡婦福祉資金貸付制度等の運用上の疑義
児福第 20 号
各都道府県・指定都市民生主管部
厚生省児童家庭局母子福祉課長通知)には、以下のように記載されている。
(問 14)
償還金の時効について、その取扱いを指示されたい。
(答)
貸付けは私法上の法律行為であり、私法規定(「民法」)によって規律されるが、貸借契
約の当事者である地方公共団体の立場の公正を確保するため、「地方自治法」による規制
を受ける面もある。すなわち、
ア 「地方自治法」第 236 条第4項が適用され、地方公共団体の行う納入の通知(同法第
231 条参照)及び督促(同法施行令第 171 条参照)は絶対的時効中断の効力を有する
こと。
イ
同法第 236 条第2項にいう「法律に特別の定めのある場合」として、
「民法」第 145
条が適用され、当事者が時効を援用しない以上、時効による消滅の判断とすることは
できないとしているので、時効の援用を必要とする。
したがって、母子福祉資金償還金の時効については、
ア 時効完成の期間は 10 年間であること。
イ
前述の「地方自治法」の規定が適用できること。
を基本に、地方財務における一般の私法債権の場合と同じく取り扱うこととされたい。
(問 15)
貸付償還金の時効については、「民法」第 145 条の規定により、債務者による時効の援
用が必要とされているが、所在不明者の場合の取扱いを指示されたい。
(答)
債務者がその援用をする見込みがあるものとみなして取り扱ってさしつかえない。
なお、みなし消滅整理をする場合は、官公署の不在証明等の書類を作成しておく必要が
ある。
上記 20 件には、平成 17 年度末現在において時効完成期間である 10 年間の要件を満た
しているもの(関係者が死亡もしくは行方不明となっているもの)が4件、592 千円含ま
れている。県で検討の上、不納欠損処理等の処置をとる必要がある。
252
【農林水産部】 〔一般会計〕
1 社団法人新潟県農林公社事業資金貸付金
(1)経緯
社団法人新潟県農林公社(以下、「公社」という。)は、昭和 48 年より県下全域を対象
に分収造林事業を開始し、現在までに 28 市町村 747 団地約一万ヘクタールに及ぶ人工造
林の整備・管理を行ってきている。
分収林事業は植林から伐採、資金の回収までに 40 年~90 年の期間を要し、この間、事
業資金のほぼ全額を、国、県の補助金、農林漁業金融公庫(以下、「公庫」という。)や
県の借入に依存する仕組となっている。その結果、平成 18 年3月末現在、公庫からの借
入金は 119 億円、県からの借入金は 162 億円(未払利息含む)、合計 281 億円に達してい
る。また、年間の支出においては、公庫への支払利息が年間3億円を越す(平成 17 年度
実績)など、公社の経営に過重な負担を強いている。
また、外材輸入の増加による木材価格の低迷や林業経費の増嵩など、近年の林業経営
を取り巻く情勢は非常に厳しく、これまで長期借入金に依存して経営を展開してきた公
社の多額に及ぶ累積債務の償還が困難となることが危惧される状況となっている。
全国 42 の公社において同様な状況が存在し、各県知事が林業公社等の抜本的な経営改
善に向けて国への政策提言を行っている1が、国の積極的な関与は当面望めない状況にあ
る。
(2)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
昭和 47 年社団法人新潟県林業公社(平成9年4月財団法人新潟県農業公社等との統合
により、公社となる)発足時より、県は公社に対して必要な事業資金を貸し付け、その
資金により公社の円滑な運営を図り、もって森林資源の造成、水源のかん養及び県土の
保全を図り、農山村経済の振興に資することを目的として、貸付制度を制定した。
イ
根拠法令等
本貸付金は、社団法人新潟県農林公社事業資金貸付規則((昭和 47 年 11 月制定 平成
15 年最終改正)
以下、「規則」という。)に基づく貸付金である。
毎年、公社は貸付申請書に当該年度の収支予算書及び事業計画書並びに償還計画書を
添えて知事に提出し、それを受けて知事は審査を行い、適当と認めたときは貸付金の決
定を行うこととされている。決定を受けて一般会計より、貸付が実行される仕組となっ
ている。
1
平成 19 年度森林整備関係予算の拡充と森林整備法人の経営の安定に向けた提案書(平成 18 年8月)
253
償還に関しては、貸付金の償還計画書の作成が困難なため、これに替わるものとして
分期計画書を5年に一度提出し、それをもって代替している。
ウ
理念、歴史的背景等
昭和 40 年代における農山村は、労働力の流出、賃金の高騰、造林資金の不足等により
造林面積の伸びが少なく、農林家による造林の推進には限度があり、新たに計画的・集
団的・組織的造林の推進を可能にする公的資金による分収造林の実施が必要であるとい
う意見が高まっていた。そのような機運を受けて、県及び関係市町村が協議を行い、公
有林等整備の遅れている林野の造林を推進するとともに農山村地域住民の恒久的就業の
場を提供し、併せて国土保全、水資源のかん養を図ることを目的として昭和 47 年 11 月
1日社団法人新潟県林業公社が設立された。
昭和 48 年より分収造林事業を開始し、平成 18 年3月末の管理面積は 10,212 ヘクター
ルとなっている。
因みに、それまで県が分収造林を行っていたいわゆる「県行造林」は、本来、県の基
本財産の造成・模範林の造成を目的としたものであった。これに加えて、県財政の逼迫
等のため、県独自の財政資金によって造林規模を拡大することが困難であり、また、県
行造林に対しては公庫の融資の適用を受けられなかったという資金的制約もあった(県
では 50 年度から県行造林に対しても貸付が行われている)。現在は、県も新たな造林は
行っていない。
②
ア
分収林事業の仕組み
概要
分収林事業は分収造林事業と分収育林事業に大別される。
....
分収造林事業とは、一定の土地についての造林に関し、土地所有者と造林者(この場
合、公社)とが当事者となって行う契約であり、公社が造林者となり、植栽、保育管理
を行い、伐採時の収益を分け合うものである。公社が、造林、保育に必要な費用を支払
う義務を負い、土地の公租公課は土地所有者が負担している。分収方法は、伐採時に得
た収益2を分収割合3で分収することとしている。すなわち、収益は分収契約に基づき、公
社と土地所有者で分配する。
なお、平成 17 年度より、長期収支悪化のため新規の植林は中止となっている。
2
造林に係る収益は、造林木の売却代金から材積調査及び売払に要した経費(伐採、造材、運搬等)を差引
いた金額、または材積をもって分収する時(立木:りゅうぼく)は、分収する材積から材積調査及び分収
に要した経費を時価によって換算した材積を差引いた後の材積を収益とみなし、分収するものとしている。
3
分収割合とは、収益の按分割合を示し、平成9年度までは、公社6対土地所有者4で契約していたが、平
成 10 年度以降の新規契約から公社7対土地所有者3の契約に切り替えた。
254
.....
また、分収育林事業とは、手入れが行き届かない、又は遅れているスギの人工林(林
齢が 11 年生以上 20 年生程度以下)について公社が育林者となり、所有者に代わって間
伐等の保育管理を行い、伐採時の収益を分け合うものである。
いずれも、契約期間は当初 50 年間としていたが、平成 18 年度現在、90 年間の契約更
改を行っている。
イ
スキーム(業務フロー図)
図 3-4-1 造林契約(公社と土地所有者)の仕組
育林契約(公社と土地所有者)の仕組
(注)分収率は平成 10 年度以降のものである。
図 3-4-2 育林契約(公社と土地所有者)の仕組
(注)分収率は平成 10 年度以降のものである。
ウ
分収造林資金(補助金及び借入金等資金)の仕組
公社の事業を行う資金は、補助金と借入金とからなっている。伐期が到来した時に、
収益を分収割合で分け合い、公社取り分は公庫及び県への借入金償還に充てることとな
っている。以上のスキームを図で示すと次の通りとなる。
255
図 3-4-3 分収造林資金の仕組み
③
社団法人新潟県農林公社の概要
公社の概要は以下のとおりである。
人員の状況
役員 19 名
職員 29 名(うち、分収林事業関係職員6名)
社員の状況
新潟県他 34 市町村8団体
分収契約の状況
5013 件
747 団地
10,212 ヘクタール(平成 18 年 3 月末現在)
なお、全国には 38 都道府県に 42 公社があり、全国の公社の借入は 17 年度末で1兆円
を超えている。そのうち、5,457 億円は都道府県、4,162 億円は農林漁業金融公庫、残り
1,109 億円は市中金融機関等から借入れている。都道府県が損失補償契約を結んでおり、
公社には自主財源はないという点でもすべて同じ図式となっている。
256
④
貸付金の実行額及び残高の推移
県の貸付金は公社における県借入金であるが、県は公社の公庫の借入金に対する債務
保証をしていることから、県の貸付金については、それらも含めた公社の借入金全体に
ついて述べることとする。借入金残高は次の通りである。
表 3-4-1 平成 18 年3月末公社借入金残高
(単位:千円)
金額
備考
県借入金
12,497,622
事業費、一般管理費、公庫借入返済金からなる。
県借入金未払利息
3,749,670
平成 13 年度より計上
農林漁業金融公庫借入金
11,950,563
合計
28,197,856
⑤
公社の分収林に係る主な支出及び収入(実績・予定)
公社の分収林に係る主な支出及び収入(予定伐採収入及び借入金は除いている)は次
の通りである。
257
表 3-4-2 分収林事業に係る収支状況
(単位:千円)
支出
収入
公庫
年度
直接事業費
管理費
助成金・
その他
計
造林補助金
支払利息
その他
計
給与補助金
S47
5,003,676
249,349
330,942
67,575
5,651,544
2,309,909
-
67,452
2,377,361
10,808,063
609,066
2,480,534
76,606
13,974,270
4,418,667
48,545
128,477
4,595,691
10,698,018
929,570
3,961,860
26,979
15,616,428
6,211,301
120,642
279,597
6,611,542
2,508,498
330,943
1,553,001
-
4,392,442
1,582,075
56,460
4,606
1,643,141
29,018,256
2,118,929
8,326,338
171,161
39,634,686
14,521,954
225,648
480,133
15,227,737
(73%)
(5%)
(21%)
(1%)
(100%)
3,208,882
633,793
2,835,202
-
6,677,878
2,074,336
172,770
-
2,247,107
2,552,379
550,513
2,006,117
-
5,109,010
2,044,920
164,236
-
2,209,156
1,599,683
477,910
853,074
-
2,930,667
1,417,064
81,513
-
1,498,578
533,646
383,256
218,485
-
1,135,387
493,070
30,144
-
523,214
70,687
332,165
71,613
-
474,465
67,192
8,578
-
75,771
-
353,196
30,172
-
383,368
-
1,737
-
1,737
7,965,278
2,730,834
6,014,665
6,096,585
458,981
-
6,555,566
20,618,539
684,630
480,133
21,783,303
~56
S57
~H3
H4
~13
H14
~17
小計
(34年間)
H18
~27
H28
~37
H38
~47
H48
~57
H58
~67
H68
~95
小計
16,710,778
-
(78年間)
(48%)
(16%)
(36%)
(100%)
36,983,535
4,849,763
14,341,003
171,161
56,345,465
(66%)
(9%)
(25%)
(0%)
(100%)
合計
(注)上記表は、主な支出割合、公庫償還利息の割合等を示すために作成したものである。事業全体の長
期収支については表 3-4-6 長期収支シミュレーションの「平成 15 年3月第7分期計画」に記載して
いる。なお、平成 17 年度までは、原則実績数値であり、平成 18 年度以降は公社が平成 15 年3月に
作成した第7分期計画に拠っている。
258
⑥
金融機関と締結する契約内容
公社は公庫と 307 本の消費貸借契約を結んでおり、長期の契約は 45 年に亘るものもあ
る。その多くが 6.5%の高利率で契約されていたが、長伐期(45 年生から 80 年生以上)
を条件とした施業転換資金に契約更改することで、徐々に借換を行い、低利率のものと
なってきている。なお、公庫の借入には県の債務保証がなされている。
(2)実施した手続
貸付金の概要、分収林の趣旨等について公社職員に質問等を行い、また、第7分期計
画の基礎となる森林の時価評価の方法、売却時の方法等についても公社の提出した資料
の根拠となる数値の確認を行った。さらに、県の林政課担当者に県の森林状況等の概要、
立木(りゅうぼく)価額についての質問を行い、また、公社の状況及び全国の公社事業
についてのヒアリングを行った。
(3)監査の結果と意見
① 指摘事項
【指摘事項①】
長伐期への施業転換の議論が透明性に欠けることについて
公社は平成 15 年度にそれまでの森林の伐採時期を標準的な伐期(45 年~55 年)から
80 年伐期へと施業転換を行った。
公社によれば、これは、
(ⅰ)公庫の新しい資金制度である施業転換資金を利用するた
め(伐期を 80 年にし、以前に借入れた資金を借換えることにより、利息の低減を図るこ
とができる)、(ⅱ)伐期を延長することにより、より利用価値の高い木材生産が可能で
あるとの理由による。また、それと同時に県は、県の公社に対する貸付規則の改正を行
った。しかしながら、それは結果として公社の債務を更に先送りする結果ともなった。
ここで、公社への貸付規則の改正について整理しておきたい。
分収林事業を開始した昭和 47 年度、公社に対する県の規則第 81 号によれば、公社に
対して必要な事業資金を昭和 47 年度を初年度として、昭和 86 年度(2011 年)まで貸付
け(規則第2条)、昭和 87 年度を初年度として償還期限は昭和 91 年(2016 年)とするこ
と(同第3条)としていた。その後、昭和 63 年に 45 年以内の期間貸付け(第2条)、償
還期限は貸付の最終年度の翌年度から5年以内(同3条)と改正していたが、平成 15 年
5月に貸付期間を「45 年」を「80 年」に再び改正した。
259
表 3-4-3 貸付規則の改正
改正年度
昭和 47 年制定
貸付期間
貸付利率
償還期限
昭和 47 年~昭和 86 年(平成 23 年)
昭和 87 年(平成 24 年)~昭和
3%
91 年(平成 28 年)
貸付の最終年度の翌年度から5
昭和 63 年改正
平成 15 年改正
平成 15 年改正
45 年以内
3%
年以内
80 年以内
貸付の最終年度の翌年度から5
例えば平成 17 年貸付の場合
年以内
平成 17 年~平成 96 年
平成 97 年~平成 101 年
3%から 0.5%へ引下げ
公社は、昭和 40 年代の木材需要が高まった林業隆盛期に県の主導で設立され、経済林
としての目的を有して(材が利益をもたらすという意味で)分収林長期計画を立て、事
業を行ってきたが、近年輸入材やアルミなどの代替品が台頭し、当初の目論見が大幅に
狂ったといえる状況が続いている。
前述したように平成 15 年5月に規則の改正を行った。これは議会の承認を必要としな
いが、大きな施策転換であった。改正の内容は、県の公社に対する現行 45 年の貸付期間
を大幅に延長し 80 年以内(償還期限も含めると 85 年間)としたこと、それまでの貸付
利率年3%を年 0.5%に引下げたことである。これは、それまでの経済林としての価値に
重点を置いていた分収林事業を、森林がもつ公益性(後述)に着目し、大きく施策転換
をした分岐点であった。
県は改正理由として、
(ⅰ)公益的機能の持続的発揮に資する等のため、80 年を伐期と
する長伐期施業を導入すること、(ⅱ)公社分収林経営の安定化を図るためという2点を
挙げている。この施策自体は、後に述べるように全国の公社も導入しているところで解
り易く、妥当な施策であると考える。
しかしながら、公社の分収造林にはこれまで多額な補助金と貸付金が投入されている。
公社造林は県民の共有財産であるという認識を踏まえて、多額な公金を投入した結果を
わかりやすく県民に伝え、県民に施策転換の是非を問うという行政の果たすべき役割が
ある。一般に貸付規則の改正は、議会の承認を経ずに行うことができるとされているが、
この度の改正は、単に貸付規則の期間や利率を変更するだけでなく、その背後に将来の
財政支出のあり方を決める施策の変更を伴うものであり、現在の試算では県借入金の返
済不能が予測され(意見①参照:それは当初の分収林事業の長期計画の破綻を意味する
ものである)
、貸付金の返済財源に不確定要因を抱えたまま多額な債務を後世に繰延べる
結果をもたらすものであった。この間の議論が尽くされ、県民にその議論の内容が公開
されているかについては、平成 15 年6月(規則改正後)の定例会(県議会)において若
260
干触れられているものの、その背後にある問題の所在は明らかにされているとはいえな
い。責任の所在を明らかにしないまま、経済林としての機能から、公益性を前面に打ち
出す施策の大きな転換を行ったにも拘らず、その転換の経緯や今後のあり方についての
県民の意見を問うという行政の責任が果たされず、施策転換の透明性が確保されていな
い点で問題がある。
平成 13 年、国の「森林・林業基本法」はそれまでの基本政策「木材生産の量的拡大」
から、「森林の有する多面的機能を将来にわたって持続的に発揮させる」ことへと目的を
大きく転換した。その基本路線転換の下には、木材価格の下落、労務賃金の高騰による
林業採算性の悪化が長期に亘って続いているという情勢があった。国の施策の転換を受
けて、県の公社への指導も大きく影響を受けざるを得ない背景もあった。
しかしながら、分収林事業の施策転換時にそれまでの事業の総括及び新たな施策の県
民への理解を得るために幅広い広報活動を行い、その結果を受けて公社に対しその後の
適切な分収林事業改善指導を行うべきであった。
②
意見
【意見①】債務の累積防止について
事業の推進に伴って累増する公庫からの借入金残高に対する利子の支払及び今後急増
する元金償還のための資金調達はすべて県借入金に求めざるを得ず、財政の逼迫化傾向
の中で、県財政に大きな負担を課している。公庫からの借入がすべて県からの借入金に
振替えられているが、それが今後も大幅に増加されると予想され、その償還が現時点で
は困難と予想される。
公社借入金残高は表 3-4-4 の通りであり、合計約 28,197,856 千円に達している。これ
を時系列で詳しく見ると、ここ数年は公庫からの借入は抑えられているものの、公庫借
入の利息を公社が支払いその全額を県の借入金に振替えることとなっているため、県か
らの借入金残高が増加の一途を辿っている。
これを平成 17 年度でみると、県からの借入金の 65.5%が公庫への支払利息の支払に充
てられている状況である。
261
表 3-4-4 公社の借入金及び支払利息等推移表
(単位:千円)
平成12年
平成13年
平成14年
平成15年
平成16年
平成17年
借入金単
公庫
年
度
償
還
344,300
341,100
253,900
188,000
198,050
175,200
△103,754
△64,897
△94,448
△84,322
△118,826
△99,083
11,255,890
11,532,093
11,691,545
11,795,223
11,874,447
11,950,563
381,228
410,037
419,729
410,214
367,890
307,060
547,052
521,608
587,640
582,044
521,398
468,867
9,816,065
10,337,673
10,925,313
11,507,357
12,028,755
12,497,622
-
3,251,655
3,572,705
3,629,020
3,688,246
3,749,670
借 入 金
残
高
支払利息
借 入 金
単 年 度
県
借 入 金
残
高
未払利息
(注)県借入利息の未払額は平成 13 年度までは、計上されていなかった。
県借入金単年度の額は、当該年度不要残(返却額)を相殺した後の額である。
昭和 48 年~平成 17 年度までの公庫償還額(利息含む)は、10,052,148 千円である。
また、今後の公社の借入金の予定は次表の通りである。
表 3-4-5 平成 18 年度以降の借入金の推移予想
(単位:千円)
年度
公庫からの借入
公庫への償還
県からの借入
平成 18 年~平成 27 年
1,098,915
4,912,733
5,409,385
平成 28 年~平成 37 年
488,428
6,680,118
7,085,427
平成 38 年~平成 47 年
175,162
5,440,672
5,844,525
平成 48 年~平成 57 年
38,920
1,923,192
2,277,959
平成 58 年~平成 67 年
3,406
597,013
920,687
平成 68 年~平成 95 年
-
316,666
668,125
1,804,833
19,870,397
22,206,110
合計
262
このように、公庫からの借入がすべて県借入に振替えられることから、最終的には県
からの借入金は概ね 34,703,732 千円になると見込まれている。このうち 29,267,573 千
円が公庫への償還に充てられ、公庫への支払利息は 14,341,003 千円(第 7 分期計画)に
も上ると予想されている。
公社の事業は、すべての分収林の伐採が終了する平成 95 年度までの長期収支計画に基
づき、5年を1期とした長期経営計画を立てて実施されている。現在はその第7分期計
画途上である。公社は平成 14 年度に第7分期計画を策定し、それによると、長期収支は
約 6,293,698 千円の赤字となると予想され、県借入金の返済は困難が予想される。また、
その後の長伐期の計画をすべて織込み、また、公庫の借換もほぼ終了したことから公庫
の借入利率変更も加味し、平成 17 年度の木材価額を使って試算を行ったのが次の表であ
る。
試算Aでは、全面積を 80 年伐期に移行することによる材積の増加、利率の引下げによ
り赤字幅は減少し、2,805,305 千円の赤字となっている。また、試算Bでは同様の前提で、
県の低利貸付に係る機会費用(平成 17 年度平均資金調達率)を考慮した利率 1.9%で試
算すると 22,378,928 千円の赤字となる。また、試算C(参考)では県から無利子貸付を
受け機会費用を考慮せずに計算したものでこれによると、4,185,273 千円の黒字となる。
263
表 3-4-6 長期収支シミュレーション
(第7分期計画における前提を変動させた場合の試算)
(単位:千円)
H15年3月
参考
H17試算A
H17試算B
第7分期計画
収入
支出
S47~H17
H18~H95
計
H17試算C
伐採収入
62,706,661
20,750
70,192,835
70,213,585
70,213,585
70,213,585
補助金
20,618,539
14,521,954
6,096,585
20,618,539
20,618,539
20,618,539
助成金等
684,630
225,648
458,981
684,630
684,630
684,630
その他収入
480,133
480,133
0
480,133
480,133
480,133
計
84,489,965
15,248,487
76,748,401
91,996,889
91,996,889
91,996,889
直接事業費
36,983,535
29,018,256
7,965,278
36,983,535
36,983,535
36,983,535
一般管理費
4,849,763
2,118,929
3,470,315
5,589,244
5,589,244
5,589,244
分収交付金
24,853,167
79,492
27,763,617
27,843,109
27,843,109
27,843,109
支払利息(公庫)
14,341,003
8,326,338
5,215,413
13,541,752
13,541,752
13,541,752
支払利息(県)
9,585,032
25,439
10,647,951
10,673,391
30,247,014
3,682,811
171,161
171,161
0
171,161
171,161
171,161
90,783,664
39,739,618
55,062,576
94,802,195
114,375,818
87,811,615
△2,805,305
△22,378,928
4,185,273
その他支出
計
収支
△6,293,698
差額
80年生主伐
21,100円(55%)
80年生主伐:19,600円
45,55年生主伐
45年生間伐、60年生択伐時:17,200円
木材価額
同左
同左
(1㎥当り)
17,800円(45%)
(H17平均新潟県中丸太)
(H13平均新潟県中丸太)
前提
条件
主伐材積(千㎥)
6,393
7,258
同左
同左
生産費
8,653円
8,772円
8,772円
8,772円
公庫借入利率
平均約2.6%
同左
同左
施業転換資金:H19年~2.4%
H19年以降の造林資金:1.9%
S47~H14:.0%
S47~H14:3.0%
H15~:0.5%
H15~
0.5%
S47~H14:
S47~14:
3.0%
3.0%
H15~
H15~
1.9%
0%
県借入利率
分収比率
6対4
同左
(公社:土地所有者)
一部の新規契約については7対3
264
同左
造林から伐採までの期間が長期(80 年)に亘ることから、木材価額、生産費、借入利
率などに経営内容を大きく左右され、それらの要素の先行きが不透明であり、例えば、
現在の試算は、木材価額を 17,800 円(試算したときの相場価格)として 6,293,698 千円
の損失としているが、それを 15,500 円とした場合は約 21,023,295 千円の損失が見込ま
れ、逆に 22,500 円の価格になれば、9,614,008 千円の黒字が見込まれる試算となる。こ
のように外部環境で、公社の分収林事業の収支は大きくぶれるが、本格的に 80 年生の主
伐が開始される概ね平成 60 年以降についての試算であり、40 年以上後の話ではあるが、
後世に負担を残すことも有り得る。
また、将来に過重な財政負担が予想されるにも拘らず、長期的な視野にたった返済計
画及びそのための具体的取組みについてまだ十分な検討もなされていない。
前項で支払利息が増大していくことを示したが、公庫の利率が下がり、県の借入利率
が 0.5%となってもなお、長期に亘る貸借契約においては、支払利息が増大していくこと
となる。しかしながら、これは、公社の借入であっても、最終的には県が負わなければ
ならない債務であることから、債務をこれ以上増加させないような防止策が必要である。
そのためには、公庫の借入金を県が肩代わりすることや県貸付金の無利息化も選択肢と
して挙げられるところである。
【意見②】
検討委員会の設置・意見の募集について
公社貸付金の償還が危惧されたことを受けて、平成 15 年度に「農林公社森林整備事業
検討委員会(以下、「検討会」という。)」が設けられ、公社分収林経営の改善策等が検討
された。平成 16 年3月に対策が提言されたが(非公表)
、次に述べるようにまだ解決さ
れていない問題も多く、情報公開を進めながら、幅広く県民から意見を募る、また必要
に応じて第三者機関を設置して効果を検証することが望まれる。
ア
経営改善に向けたこれまでの公社の取組
開催された検討会の報告結果を受けて、県の指導により公社が行った対策は、次の通
りである。これらは全国の一部の公社ですでに行われている取組でもある。
265
表 3-4-7 経営改善に向けた取組
対応策
内容
1
新規造林の休止
2
長伐期施業の導入
債務累積を抑えるため、新規造林を 16 年度を最後に中止
土地所有者の了解を得ることを前提にほぼ全面的に長伐期へと
16 年度以降漸次移行。
生育状況や立地条件、土地所有者の同意の状況に応じて、標準
3
管理区分の設定
育成林、長期育成林、生育不良林、高度公益林に「管理区分」
し、森林の実態に応じて効率的に管理
4
施業コスト・人件費の削減
5
金利負担の軽減
公庫資金の借換、県貸付金利率を 3%→0.5%に引下げ
6
国への支援要請
国に対し、他県とも連携して積極的な支援措置を強く要請
イ
35 年生までの保育経費を 10%削減、公社人件費 10%カット他
今後解決すべき問題点
(ⅰ)債務の累積防止
(「【意見①】債務の累積防止について」参照)
(ⅱ)分収割合の変更の検討
(ⅲ)公社分収林事業の今後の財源の検討
(ⅳ)県行造林との一括管理の検討
(ⅴ)伐採時期の検討
(ⅵ)伐採跡地についてのビジョン
(ⅱ)分収割合の変更の検討について
補助金、借入金等を投下しているにもかかわらず、伐採収入は土地所有者との分収(利
益を単純に分け合う)であり、土地所有者には直接または間接の分収事業費の負担はな
い。一般的な投資の概念では、投資した額に見合う収益が分配されるが、分収林事業で
は、投資はすべて公社が担っている。その点でこれは他の県民との公平性を保てるのか
疑問であるが、これは私法での契約となっており、法律面で難しい問題を抱えているこ
とは事実である。
平成9年度以前の分収契約においては、公社と土地所有者との分収割合は6:4であ
った。しかしながら、これは事業開始当時の木材価額や経費等を基に決定されたもので
あり、その後の林業を取巻く情勢の変化により、公社財務内容の改善を図るため、土地
所有者の理解を得て、以前に契約された分収林割合の土地所有者分を低める方向で検討
すべきである。
(ⅲ)公社分収林事業の今後の財源の検討
近年、森林の持つ公益性が強く言われている。
(詳細は「表 3-4-9
森林の公益的機能」
を参照)今後も、県民も交えた幅広い層から意見を募り、検討会を開催して県民の財産
266
である森林育成の財源をどのように求めていくのかを、他の県の例(例えば神奈川県に
おける水源税、高知県における森林環境税、一部を環境林に移行を検討(かながわ森林
づくり公社:神奈川県)、他に電力会社のダムからの固定資産税を充てる(案))なども
参考にして、財源を見出していくことも検討課題と考える。
(ⅳ)県行造林との一括管理の検討
公社造林と県行造林については、森林管理という点では一致しており、公社の持つ人
的資源をさらに有効に活用すべく、2つの分収造林を公社で一括管理していくことも有
効な方法であると考える。2、3年ごとに異動のある県の担当者による管理ではなく、
長期に亘る森林の管理を行っていくことの出来る職員の管理の方が一般的にはきめ細か
い管理ができると考えられ、その点も検討に値すると思われる。
(ⅴ)伐採時期の検討
現在の分収契約では、各県の公社の伐採の時期に県内でも伐採が集中する恐れがあり、
その結果、木材市場の混乱や価格の下落が予想されることから柔軟に伐採できるよう伐
採時期の検討が必要と思われる。
(ⅵ)伐採跡地についてのビジョン
伐採した後は再造林を予定して植林がなされた訳であるが、木材価格の大幅な下落に
より再造林が厳しい状況下において、伐採した跡地にまた植林をするのか、または、抜
き切りをして裸地になるのを回避するのかは全くビジョンが示されていない。伐採跡地
についての合理的手法を議論すべきと考える。
【意見③】公社の存続及び森林の機能の活用について県民の理解を求めるべきことについて
県の森林資源は次の通りである。人工林面積は全国中位であるが、人工林率は 19%(県)
と全国(42%)に比して低く、天然林に恵まれた環境にある。県の人工林はほぼスギ林
である。
表 3-4-8 新潟県の森林
新潟県
森林面積
うち、民有林
864,001ヘクタール
森林面積
570,321 ヘクタール
(県土の 69%)全国 5 位
森林備蓄量
112,837 千㎥
森林備蓄量
人工林面積
163,861 ヘクタール
人工林面積
(人工林率
(出典:平成 17 年度
91,925 千㎥
141,105 ヘクタール
(人工林率
19%)
新潟県森林・林業の動き(県林政課作成)
)
267
25%)
また、人工林の林齢別面積は次の通りであり、公社造林はまだ保育途上である。
図 3-4-4 県の人工林の林齢別面積
ha(面積)
18,000
16,000
その他
公社造林
14,000
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
1~
5年
生
6~
10
年
生
11
~
15
年
生
16
~
20
年
生
21
~
25
年
生
26
~
30
年
生
31
~
35
年
生
36
~
40
年
生
41
~
45
年
生
46
~
50
年
生
51
~
55
年
生
56
~
60
年
生
61
~
65
年
生
66
~
70
年
生
71
年
生
以
上
0
林齢
県の木材需要は 74 万㎥であり、一方木材供給は 15 万㎥と需要量の 20%にすぎない(平
成 14 年度)。また、公社造林面積、木材価額と生産量の推移は次表の通りとなっている。
昭和 55 年のピーク時に 38,700 円/㎥を超えていた木材価額は、平成 17 年度には 12,400
円/㎥(全国)と3分の1程度の水準にまで落ち込んでいる。なお、県の場合は製材工
場の年間素材消費量が全国の半分程度と小規模で生産性が低いことなどから、価格は全
国より高めとなっている。
268
図 3-4-5 公社造林面積、木材価格、生産費(参考値)の推移
円
面積(ha)
45,000
公社造林面積
40,000
木材価格(全国)
35,000
生産費(参考値)
600
500
30,000
400
25,000
300
20,000
15,000
200
10,000
100
5,000
0
0
~S47
49
51
53
55
57
59
61
63
2
4
6
8
10
12
14
16
年
(注1)木材価格(全国):平成15年度・平成18年度森林・林業白書(農林水産省大臣官房統計部「木材
価格」スギ中丸太価格(径14~22㎝、長3.65~4.0m)
(注2)生産費:〔木材価格(全国)〕-〔山元立木価格(全国)〕で算出した参考値
〔山元立木価格(全国)〕は、上記森林・林業白書「山元立木価格」((財)日本不動産研究所
「山林素地及び山元立木価格調」)
(注3)公社造林面積:平成18年3月31日現在の管理面積(分収林及び分収育林)
また、森林の多面的機能について、一般的に表 3-4-9 に記載した事項が挙げられてい
る。
表 3-4-9 森林の公益的機能
分類
機能
具体例
①地球環境保全機能
地球温暖化の緩和
②土砂災害防止・土壌保全機能
土砂災害・自然災害防止
③水源涵養機能
水資源貯留・水質浄化
④快適環境形成機能
大気浄化、快適環境形成
憩いの森
保健・レクリエーション機能
療養、保養(森林浴など)
学習の森
文化機能
景観・風致、学習・教育、
野生の森
生物多様性保全機能
生物種保全、生態系保全
生産の森
物質生産機能
環境の森
木材、食料(キノコなど)、肥料、
飼料、観賞用植物
(出典:「地球環境・人間生活にかかわる農業及び林業の多面的機能の評価について」(平成 13 年 11 月
日本学術会議答申))
森林の持つ「公益的機能」の金額換算は次のとおりとされる。
269
表 3-4-10 「経済的機能」を除く森林の「公益的機能」の金額換算(年間)
(単位:億円/年)
機能
全国
新潟県
(内公社分)
水源涵養機能
298,454
15,631
182
表面侵食防止機能
282,565
9,607
112
表面崩壊防止機能
84,421
2,870
33
二酸化炭素吸収機能
12,391
421
5
化石燃料代替機能
2,261
56
1
保健・レクリエーション機能
22,546
767
9
-
29,352
342
合計
(出典:全国欄については表 3-4-9 と同じ。なお、答申の全国評価額は、機能によって評価額が異なる
との理由から合計額は記載されていない。新潟県分は全国評価額の算出と同様の方法で試算。
公社の試算は、県内の民有林と公社営林面積の比により算出している。いずれも県林政課作成
資料。)
公庫及び県の借入金が返済不能になれば公社の経営は破綻する。公社に代わって森林
の管理・経営は土地所有者が行うことが考えられるが、これを土地所有者に期待するこ
とは困難が予想され、育成途中の分収林の森林荒廃に繋がることが懸念される。森林に
は、経済的価値のみでなく、公益的機能など多面的な機能があり、この点が強調される
べきである。
また、公社を廃止し県行造林との統合を行う場合は、負債処理は一応解決となるが、
経営変更に伴う膨大な事務量と経費、公社に対する国の支援等を勘案すると得策とは言
い難い。また、長期にわたる分収契約期間中の相続、その他の権利関係等の複雑さの問
題を県が背負うことになる。また、補助事業の実施事業体としての有利性やこれまでに
培った森林育成技術の伝承も行われ難い。
これらの点を勘案すると、債務の増大を食い止め公社の徹底したコスト削減を図りな
がら公社を存続し、公社及び森林についての県民の理解を求めていくことが必要である。
公社の債務問題等の取組については、各県で対応が必ずしも一致はしていない。しか
しながら、経済貨幣価値及び財政状態を鑑みても公社廃止にはどの県も慎重である。ま
た、森林の放置はやむを得ずという意見は皆無といってよい。むしろ、森林の持つ公益
的機能に着目して森林を県民の財産として保全していこうという意見の方が圧倒的に多
いのが現状である。目的・事業の公益性や、活動が税金等で支えられる等の観点に着目
し、森林資源・環境問題について県民一般に対しわかりやすく説明する仕組を検討する
ことが望ましいと思われる。また、分収林地における森林ボランティア、各種体験イベ
ントを通じて県民の理解を醸成することも一考である。
戦後の荒廃した森林復興と木材需要の景気を見込んで造林された人工林資源は、全国
何れの県においても、林業を取巻く厳しい状況の中で荒廃の危機に直面している。
270
公社分収林はまだ保育途上であり、今後適切な管理をする必要がある。100 年スギを育
てたいという公社職員の思いは、かつて「越後スギ」を育てた先人の思いを引き継ぐも
のでもある。この技術を引継ぎ、木材という資源を守り育て森林の保全に今後も努めて
いくことが必要であり、また後世に対する責務であると考える。森林は資源としての経
済的機能だけでなく、公益的機能も備わっておりそれらの恩恵も多いのである。そして
それらを有効利用し、具体的なプランを県民に広く知らしめ賛同を得ることが行政の責
務であると考える。
271
2 農業経営改善促進資金貸付金
(1) 概要
① 制度の趣旨
ア 目的
効果的・安定的な経営体を目指して、農業経営基盤促進法等に基づく認定に係る農業
経営改善計画等を達成しようとする農業者に対して、短期運転資金を低利かつ円滑に融
通する。
イ
根拠法令等
農業経営基盤強化促進法
新潟県農業経営改善促進資金融通事業実施要綱等
②
ア
制度の仕組み
スキーム
図 3-4-6 スキーム図
農林漁業信用基金
国
出資金・利子補給
貸付
1/8
県農業信用基金協会
県
無利子貸付
預託
1/8
融資機関
融資:県信用基金協会の預託額
の4倍で協調融資
農
業
者
県は、農業者等の経営改善計画に必要な資金の8分の1を新潟県農業信用基金協会(以
下、「基金協会」という。)に預託する。基金協会は県と農林漁業信用基金から貸付けら
れた金額を融資機関に預託する。融資機関は農業者等に預託された額の4倍額を協調融
資する。
272
イ
貸付条件等
表 3-4-11 貸付条件の概要
概要
農業者であり、農業経営改善計画の認定を受け、簿記記帳を行っているなど、各種の
貸付対象者
要件を満たしている個人、法人。
貸付利率
変動金利
償還期間
1年
期日一括償還又は期日前償還
個人一般
極度額等の上
個人畜産・施設園芸
20,000 千円
限
法人一般
20,000 千円
法人畜産・施設園芸
80,000 千円
資金使途
③
ア
5,000 千円
種苗代、肥料代、飼料代、雇用労賃等経営改善計画の達成に必要な資金
貸付金の実績
残高の推移
表3-4-12 農業経営改善促進資金貸付金の推移
(単位:千円、%)
県の預託額 C
達成率
(融資枠)
(補正後予算)
(貸付金)
C/B×100
平成15年度
500,000
62,500
44,075
70.5
平成16年度
500,000
39,137
62.6
平成17年度
500,000
35,075
56.1
年度
目標額 A
県の預託目標額・当初予算 B
62,500
(50,000)
62,500
(注)新潟県農業信用基金協会の同貸付金に係る預託残高(平成 18 年3月末時点)は 197,000 千円であっ
た。
イ
予算との関係
まず、融資機関が借入農業者毎に月別経営収支、資金取引実績などを勘案して次年度
の各月末予定残高を算出し、これらを合計して融資機関の月別見込平均残高を算出し、
県に対し次年度の貸付目標額を提出する。県は各融資機関の目標額を合計し、プラスア
ルファをして貸付目標額を試算し、その目標額の8分の1を県の預託目標額とする。
(2)実施した手続
担当者に預託金の状況等について質問し、平成 15 年度~平成 17 年度の貸付金の状況
表を閲覧した。また、平成 17 年度末の預託金状況報告書を入手し査閲した。
273
(3)監査の結果と意見
① 意見
【意見①】協調融資の資金需要見積について
農業経営改善資金の融資の方法については、県は、経営改善促進資金の原資の8分の
1に相当する額を予算の範囲内で基金協会に貸付けるものとし、基金協会は当該原資に
独立行政法人農林漁業信用基金からの借入金を加え、融資機関に農林漁業信用基金から
借入れた利率で預託するものとし、更に融資機関は、この預託基金に自己資金を加え、
当該預託基金の4倍に相当する額の融資を行うものとする(新潟県農業経営改善促進資
金融通事業実施要綱(以下、「要綱」という。)第 14 条)と定められている。
しかしながら、実際には県の預託額の8倍が農業者に貸付られているかどうかは確認
できてはいない。平成 17 年度の預託額は 35,075 千円であるが、この8倍は 280,600 千
円となるが、実際の年度末残高は 197,000 千円であった。但し、これは年度末残高であ
り、期中に農業者に対し金融機関がいくら貸付けたかは県では把握していない。また、
予算は次のように策定されており、需要額調査は年々減少しながら、予算枠は変わらな
い予算取りがなされている状況である。
表 3-4-13 予算策定の方法
(単位:千円)
年度
②前年実績
③貸付目標額
④貸付目標額
(追加)
①+②
③×1.2 倍
①需要額調査
⑤予算融資枠
H14
336,500
41,500
378,000
453,600
500,000
H15
378,000
4,000
382,000
458,400
500,000
H16
281,600
52,500
334,100
400,920
500,000
H17
270,600
45,500
316,100
379,320
500,000
(注)需要額調査で金融機関からの次年度の需要を取りまとめ、その後需要額調査を提出しなかった金融
機関の前年度の第1回目の申込額を追加して目標額を定める。目標額に財政課ルールで定められた
安全率 1.2 を乗じて予算融資枠を決定する。
資金需要の見通しが甘い結果、予算と実績の乖離が高い結果となっているといわざる
を得ない。財政が逼迫している中での資金需要の見積の乖離は、資金が効率的に使われ
ていると言い難く、県は予算時にプラスアルファをしているが、プラスアルファの計算
方法を見直す必要があると考えられる。また、県は実際の貸付額と貸付目標額(極度額)
との乖離がないかについて調査等を行い、県の貸付額が過大又は過少となっていないか
検討すべきである。
274
3 新潟県農業大学校修学資金貸付金
(1)概要
① 制度
ア 目的
農業後継者及び農村地域の指導者の養成及び確保を目的として、新潟県農業大学在校
生で将来県内において就農しようとする者に対し貸与する資金である。また、卒業後1
月以内に就農し、3年間の就農期間が過ぎた者については、返還を免除する。
イ
根拠法令等
新潟県農業大学校修学資金貸与条例、同規則
②
貸付金の実績
表 3-4-14 過去 3 年間の貸付金推移
(単位:千円)
年度
貸与額
返還額
返還免除額
貸付残高
平成 15 年度
8,640
2,912
-
25,216
平成 16 年度
10,032
2,400
1,536
31,312
平成 17 年度
8,544
4,304
3,840
31,712
(2)実施した手続
(ⅰ)貸付金について担当者に質問し、資料の保管状況を閲覧した。
(ⅱ)延滞の有無を質問した。
(3)監査の結果と意見
実施した手続の範囲内においては、特に指摘すべき事項は見られなかった。
275
4 新潟県漁業振興資金貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
漁業協同組合(以下、「漁協」という)の合併等の阻害要因となっている漁協の抱える
累積欠損の解消を図り、漁協合併を促進し、漁協経営の基盤強化を図ること及び経済事
業を実施する漁協等の経営の安定化を図ることを目的とする。
イ
根拠法令等
新潟県漁業振興資金融資取扱要領
②
ア
制度の仕組み
スキーム
県は、漁業振興資金の原資として、新潟県信用漁業協同組合連合会(以下、「信漁連」
という。)に対し資金の預託を行う。信漁連は、県より貸付けられた原資の 1.5 倍の額を
協調融資する。
図 3-4-7 預託方式:直接預託(信漁連のみ)
県
預託
県の予算の 1.5
新潟県信用漁業協同組合連合会(信漁連)
倍を融資する。
合併促進資金
一般経営資金
漁業協同組合
イ
漁業協同組合
貸付条件等
資金の種類は、合併促進資金(合併を計画している漁協の経営基盤を立て直すために
必要な資金)及び一般経営資金(事業経営に必要な資金)である。融資期間は合併促進
資金は1年以内、一般経営資金は、預託金が信漁連に貸付けられた日から、年度の終わ
りまでの期間である。末端利率は、短期プライムレート並等であり、預託利率は、県の
定めた方式による。
276
③
ア
貸付金の実績
残高の推移
表 3-4-15 残高の推移
(単位:千円)
資金の種類/年度
平成 13 年度
平成 14 年度
平成 15 年度
平成 16 年度
平成 17 年度
合併促進資金
136,000
136,000
136,000
76,000
44,400
一般経営資金
84,000
84,000
84,000
40,000
44,000
合計
220,000
220,000
220,000
116,000
88,400
合併促進資金
235,000
130,000
60,000
64,600
53,500
一般経営資金
0
91,500
81,500
67,000
32,000
合計
235,000
221,500
141,500
131,600
85,500
差額
△15,000
△1,500
78,500
△15,600
2,900
県預託金
(A)
信漁連貸出金
(B)
(A)-(B)
なお、延滞金はなく、信漁連との貸付契約でありリスクはない。
イ
予算との関係
毎年の予算は「財政課提示ルール」により計算されている。
計算方式は次の通りである。
過去 3 年間の信漁連貸付実績を傾斜配分しその合計額に 1.2 倍を乗ずる。
具体的には、平成 17 年度予算は次の通りである。
平成 13 年度貸付実績
235,000×0.2=47,000
平成 14 年度貸付実績
221,500×0.3=66,450
平成 15 年度貸付実績
141,500×0.5=70,750
184,200 千円×1.2=221,040
合計
184,200 千円
221,000÷2.5=88,400
安全率として 0.2 倍を見込んでおり、結果として 1.2 倍を乗じ、信漁連が 1.5 倍を融
資すると見込んで 2.5 で割り返している。
なお、毎年この予算額が貸付として実行されるので、予算額=貸付額となっている。
(2)実施した手続
(ⅰ)貸付金取扱要領、平成 17 年度契約書を入手閲覧し、担当者に質問を行った。
(ⅱ)平成 17 年度支出負担行為兼支出命令決議書を一部閲覧し、正規の手続にしたがって
行われているかどうかを確認した。
(ⅲ)貸付金の実績推移表を入手し、質問を行った。合わせて、平成 17 年度の信漁連から
の報告書を一部閲覧した。
277
(3)監査の結果と意見
① 指摘事項
【指摘事項①】契約書の不備について
平成 17 年度の契約書を閲覧したところ、契約書に次の不備が認められた。
「第3条乙(信漁連)は平成 17 年4月1日以降預託金 44,400,000 円に自己資金
66,600,000 円以上を加えて、水産業協同組合に対し、その資金需要に応じ融資しなけれ
ばならない。
」とあるが、実態は、自己資金 66,600,000 円が上限であり、かつ常に必ず
この額を協調融資しなければならないという訳ではないことから、契約書の文言誤りで
あり、この雛形を使用して行ってきた契約書は本来的には作成し直す必要がある。「以上
を加えて」と、「上限である」ということは、金額的には非常に大きな違いである。具体
的には、111,000 千円以上を融資するのか、44,400 千円を融資するかの違いとなってく
る。しかしながら、これにペナルティの条文はないこと、県と信漁連に悪意がないこと
から、覚書等で双方が確認しておくことで足りると思われる。問題は、漫然と過去の契
約書を使用してきたことにある。監査人に指摘されるまで、誰も気付かずにきたという
点は、適格に行われるべき行政事務のチェック体制に甘い面があることを再度認識すべ
きと考える。
【指摘事項②】協調融資の規程違反について
現行の新潟県漁業振興資金融資取扱要領第5条では、「信漁連は、前条の規定により貸
付けられた原資の 1.5 倍の額を協調融資するものとする。
」とされているが、実際は上記
表のように平成 15 年及び平成 17 年度の貸付けは預託金以下となっており規定違反とい
える。また、必要額以上の預託金は年度末を待たずに返済してもらうように契約すべき
である。
②
意見
【意見①】予算設定方法及び同貸付金の見直しについて
財政課の示した予算の立て方に従った方法が実態と乖離していることから、現在行っ
ている予算計上額(資金需要額の見積)が非常に不効率な結果となっている。一律に財
政課提示ルールに従うのではなく、実際の資金需要の傾向を反映した予算策定のルール
を作成すべきである。また、合併促進資金も必要性が年々薄れてきているのではないか
と考えられ、一般経営資金の必要性も、漁協、信漁連などにアンケートをする等、県の
漁業にとって、貸付金方式がいいのか補助金(利子補給)方式が良いのか、また期間設
定の妥当性などについて根本的に検討すべきとも思われる。
278
5 造林用苗木購入資金貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
森林整備の遂行上必要な苗木の適正価格維持と需給調整を円滑に行うため、新潟県森
林組合連合会(以下、「県森連」という。)が新潟県山林種苗協同組合から購入する苗木
予約に必要な資金と苗木代金の早期決済に必要な資金を県森連に貸付けるものである。
イ
根拠法令等
新潟県造林用苗木購入資金貸付要綱
②
貸付金推移
表 3-4-16 過去3年の貸付金等の推移
(単位:千円)
年度
貸付金
返済額
残高
利率
平成 15 年度
23,787
23,787
-
0.001%
平成 16 年度
17,370
17,370
-
0.001%
平成 17 年度
14,256
14,256
-
0.001%
(2)実施した手続
(ⅰ)担当者に貸付金の状況について質問し、推移表を入手した。
(ⅱ)平成 17 年度の貸付金について、支出負担行為決議書及び契約書と突合した。
(3)監査の結果と意見
実施した手続の範囲内においては、特に指摘すべき事項は見られなかった。
279
【農林水産部】
〔特別会計〕
以下の特別会計からの貸付金はすべて制度資金である。制度資金とは、農業者、漁業
者、林業者が生産活動に必要な資金を、国や県が融資、または利子補助を行うものをい
う。広義には県独自の貸付金も含むが、ここでは、国が関与するものを制度資金と位置
づけている。制度資金は国が定めた法があり、そのスキームを受けて県貸付規則が制定
されている。
1 農業改良資金貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
先駆的、モデル的な農業経営の育成を図る観点から、「農業改良措置」(一例として、
新たな農業生産部門の経営の開始:トマトの露地栽培から施設栽培への転換)を導入す
るために必要な資金を無利子で融通する制度である。
イ
根拠法令等
農業改良資金助成法
新潟県農業改良資金貸付規則等
②
ア
制度の仕組み
スキーム
次の図のように、県が直接農業者等に貸付を行う「直貸方式」と融資機関(農業協同
組合(以下、
「農協」という。)、新潟県信用農業協同組合連合会(以下、
「信連」という。)
等)が農業者等に貸付を行う際に県が原資を供給する「転貸方式」の2通りがある。
(ア)県が原資を造成し、農業者等に直接融資を行うもの。
図 3-4-8 農業改良資金(直貸)
国からの補助金(2/3)
県費(1/3)
県(特別会計)
無利子貸付
農
280
業
者
等
(イ)民間融資機関に対して、県が貸付原資の全部を無利子で貸し付けることにより、農
業者等に無利子資金を融通するもの。
図 3-4-9 農業改良資金(転貸)
県費(1/3)
国からの補助金(2/3)
県(特別会計)
無利子貸付
農協、県信連、銀行、信用金庫、農林中央金庫
無利子貸付
認
定
就
農
者
なお、転貸方式は5年間 66 件のうち3件のみと、利用されていない状況である。
イ
貸付条件等
表 3-4-17 貸付条件の概要
概要
貸付対象者
認定農業者、認定就業者等
貸付利率
無利子
貸付期間
償還期間 12 年以内(うち、据置期間5年以内)
貸付限度額
融資率
農業者
18,000 千円
法人又は団体
50,000 千円
100%
認定農業者
認定農業者以外
資金使途
③
ア
80%
農機具等の改良、造成又は取得に必要な資金他
貸付金の実績
残高の推移
貸付金残高は表 3-4-18 のように、年々大幅に減少しており、平成 17 年度貸付額は
21,859 千円であった。また、貸付金残高は 425,383 千円と減少している。
平成 13 年度を 100(基準)とすると、平成 17 年度貸付金額は 18 となっており、同様
に貸付金残高ベースでは、25 となっている。
281
表 3-4-18 農業改良資金貸付金残高推移表
(単位:千円)
貸付年度
貸付額・債務者数
H13 年度
H14 年度
H15 年度
H16 年度
H17 年度
イ
減少指数
124,749
33 件
貸付金残高
減少指数
100
1,680,911
100
53
1,265,874
75
39
915,191
54
7
615,377
37
18
425,383
25
66,248
16 件
48,595
8件
9,016
3件
21,859
6件
予算との関係
予算との関係も表 3-4-19 のとおり補正で減額されてもなお半分も予算達成できない状
況である。
表 3-4-19 予算額と実行額
(単位:千円、%)
当初(A)
2月補正(B)
実行額(C)
(C)/(B)
H15年度
440,000
100,000
48,595
48.6
H16年度
300,000
50,000
9,016
18.0
H17年度
150,000
50,000
21,859
43.7
貸付需要が減少したのは、県の農業の担い手が減少傾向にあること、重要な生産物で
ある米の単価の下落等により、生産者が新規の投資を手控えていること、機械の共同利
用が促進されていること、近年の低金利状況により無利子の貸付需要の価値が相対的に
下がったことが挙げられる。しかしながら、補正予算を組んでもなおこの利用状況であ
ることから、国の施策はともかく本県でこの先進的な取組に係る貸付金が必要なのかど
うかが再度問われる必要があると考える。必要であるとしても予算との乖離が大きく県
の資金需要の見積が甘く非効率な資金運用と言わざるを得ない。
282
ウ
延滞債権の状況
平成 18 年3月末現在の延滞先は6件(1生産組合含む)、延滞額は 14,691 千円である。
そのうち、3件 1,414 千円については返済期日は遅れたものの、平成 18 年 10 月末現在
返済済み又は返済の目処がたっている。残り3件(1生産組合含む)13,277 千円は同月
現在返済未済であり、今後の返済の予定も未定である。
(2)実施した手続
(ⅰ)農業改良資金特別会計についての調書、資金別貸付残高実績、償還金の実績等調書
間の数値の整合性の状況を突合した。
(ⅱ)貸付金データ(システム)の5年分を閲覧し、質問を行った。
(ⅲ)貸付金についての調書を入手し、調書とシステム上のデータと照合した。平成 17 年
度貸付6件、合計 21,859 千円について、審査資料の中身を閲覧して数値の照合を行
った。
(ⅳ)滞留となっている貸付金について質問を行い、各業務についての状況を調査した。
(3)監査の結果と意見
① 指摘事項
【指摘事項①】資金管理の不適切な状況について
農業改良資金貸付金の延滞状況は「(1)③ ウ
延滞債権の状況」で示した通りであ
り、6件(1生産組合を含む)14,691 千円について延滞が発生していた。これらの延滞
債権の管理について次のとおり不適切な状況が認められたので改善が必要である。
(ⅰ)各延滞者について、個別ファイル管理がなされていない状況にあった。
貸付時の審査状況の調査表は、貸付時の年度で保管されていた(貸付が何本もあれば
その年度毎に)実態が認められるなど、ファイリングが不充分な状況にあったこと。ま
た、延滞者Aについては、貸付申請書及び審査書類が不明となっている。
ファイリングが不充分であると貸付者に対する情報が十分でなく、適切な管理が出来
ない結果となるため、民間の融資機関等では、延滞債権の管理については債務者の状況
を、融資時からその後の状況の変化を記入して個別の債務者毎にファイリングを行って
いる。県が直接に貸付を行うのであれば、民間の融資機関で行われているような、厳格
な管理と金融債権管理の知識が必要とされると思われる。
(ⅱ)延滞が発生してからの債務者の状況及び督促管理の実態についての資料が整備され
ておらず、部署担当者交代時に申し送り事項が不明確であり、延滞債権管理が不充
分な状況である。
283
(ⅲ)延滞が発生した後の事務取扱規程等が整備されておらず、担当者の意識により督促
の確認の状況に濃淡が認められること。なお、平成 14 年度に「農業改良資金のチェ
ックリスト」が作成されているが、審査状況のチェックリストとなっており、延滞
状況のチェックリストとしては機能していないと認められるので、回収及び延滞に
関するマニュアル(チェックリスト)も作成することが望ましい。
(ⅳ)延滞が発生した直後の延滞報告書、督促状の発行、調査結果の報告の手続きは怠り
なく行われているが、延滞後1年以上が経過したものについての延滞報告書、調査
結果報告書を農協へ逐次請求していないなど、業務怠りが認められる。
②
意見
【意見①】延滞者への延滞利息金についての通知がなされないこと等について
貸付規則 12 条により、高利な延滞利息が科せられているが、これが通知されないこと
により延滞者の不利益となる恐れがある。延滞が生じた貸付金については、貸付規則第
12 条により違約金が課せられるが、12.25%の高金利となっている。これは罰科金として
の国の制度に倣ったもので、やむを得ないと考えられるが、それにしても無利子貸付で
ありながら延滞となると、返済困難者にとってさらに困難な状況となるというのは、過
酷といえる。
違約金の請求時については、規則に特段の定めがないが、現在、延滞金の一部が入金
となった後に、当該(一部入金の貸付金につき)延滞貸付金についてのみ違約金が計算
され、別途借受者に違約金の請求がなされている。延滞金が入金となった後に知らされ
ること及び延滞金を支払っていない場合には、借受者にとって延滞した貸付金に対して
の違約金が幾らになっているのかが知らされず、返済の全体額が不明な状況にたたされ
ている。つまり、借受者にとって、違約金も含めたその時点の要返済額が知らされず、
返済計画を立てようにも立てにくい仕組となっている。
例えば、ある延滞債権を例にとって計算すると、返済期限平成 16 年4月 1,509 千円の
延滞金が発生しているが、その後の返済が全くないことから、平成 18 年3月末では、354
千円の違約金が発生しており、さらに同債務者に対して平成 16 年 11 月 9,024 千円の別
の貸付延滞金が発生しており、同違約金は 18 年3月現在 1,532 千円となっているが、合
計 1,886 千円の違約金は借受者に知らされていない。
違約金請求についての規定を整備し、借受者にとって不利な状況を招かないように債
務の状況を定期的に通知すべきである。
また、借受者の元金の返済については他の借受者との公平性を保つために弁済に対し
ては厳格に対処する必要があるが、違約金については、元金の弁済について長期分割し
てもなお困難な状況にあると判断された場合には、累積していく違約金の履行を求める
のは酷といえる。このような場合には、地方自治施行令 171 条の5(徴収停止)、同 171
284
条の7(免除)等を参考に違約金請求について、免除、又は一部停止などのルールを国
に要望するなどの検討が必要と思われる。
【意見②】「転貸方式」の採用について
農業改良資金貸付金については、先に述べたように、県が直接融資する「直貸方式」
と融資機関を通じて行う「転貸方式」とがあるが、現在はほとんどが「直貸方式」であ
る。貸付金の管理の煩雑さ、債権管理・回収の専門知識の必要性を加味すると、経済性・
効率性の観点から「転貸方式」を採用するのが望ましい。
「直貸方式」を採用していても、
農協及び信連に対し、支払事務、延滞払込についての延滞取立奨励金等の事務委託手数
料を支払っており、延滞の督促についても実質的に農協が行っていることから、実質は
「転貸」となんら異なることがないと考えられる。それならば、融資事務については民
間のプロに任せ、県はその資金を融資することとすれば足りる。なお、平成 16 年度の委
託手数料は 1,369 千円(うち延滞取立奨励金 29 千円)17 年度は 1,118 千円(うち延滞取
立奨励金 38 千円)である。
また、延滞債権の取扱いについても、明確な規定を整備すべきであるが、これについ
ては上記と同じである。
【意見③】特別会計の資金の効率的運用について
農業改良資金貸付金の平成 17 年度末の繰越金は約 1,050,000 千円と多額となっている。
この内、約 700,000 千円は国からの補助金であり、残り 350,000 千円は県の一般財源か
らの繰入金である。現在、貸付金の大幅な減少により貸付金の繰越金残高に占める割合
は 2%となっている。これについては、国の示した新しい施策「品目横断的経営安定対策」
により、今後農業者の借入が増加する見込みとしてプールするとしているが、予算の見
込みもここ3年ほど大きく外れていることから、国に返還すべきものは一度返還し、県
の財源に返すべきものは返し、資金需要を見定めて資金の効率的な運用をすべきである。
なお、平成 18 年 10 月 27 日現在、国への「品目横断的経営安定対策」加入申請状況は、
新潟県は認定農業者1名のみ(全国合計認定農業者 3,887 名、集落営農 395 件)となっ
ており、現在この貸付金の借入が増える状況になっているとは言い難い。
285
表 3-4-20 農業改良資金特別会計繰越金等内訳表
(単位:千円、%)
年度
貸付額(A)
特別会計の
貸付金の繰越残高に
繰越金残高(C)
占める割合(A)/(C)
返済額(B)
H14 年度
66,248
480,703
227,712
29
H15 年度
48,595
398,757
577,874
8
H16 年度
9,016
297,215
866,073
1
H17 年度
21,859
210,258
1,054,472
2
【意見④】農業改良普及員との連携について
農業改良資金が無利息で貸付けられているのは、「新たな農業部門の経営、農畜産物の
新たな生産、新たな販売方式の導入支援のため(農業改良資金助成法)」の融資であり、
リスクの高い取組みであるからといえる。県は、その取組みに対し単に融資をするだけ
でなく、審査時に審査意見に関与した農業普及指導員などを活用し、農業普及指導員が
貸付先を重点的にウオッチし経営指導を行うよう現在の仕組みを更に徹底活用し、延滞
先としないよう支援するなど、農業普及指導センター等とも緊密に連絡をとりサポート
していくのが望ましいと思われる。また、延滞者のその後の状況の連絡等も農協の報告
に頼るだけでなく、延滞等の状況の反省会を延滞者と行うなどサポートし、融資の有効
性を高める必要がある。
286
2 就農支援資金貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
国、県の就農促進方針に基づき、就農計画の認定を受けた青年及び中高年(認定就農
者)に対して無利子の就農支援資金を貸付け、青年農業者等の就農・定着の促進を図る。
イ
根拠法令等
青年等の就農促進のための資金の貸付等に関する特別措置法
新潟県就農支援資金貸付等要領等
社団法人新潟県農林公社就農支援資金貸付業務規程
②
ア
制度の仕組み
スキーム
民間融資機関に対して、県が貸付原資の全部を無利子で貸し付けることにより、農業
者等に無利子資金を融通するものであり、就農支援資金貸付金には次の3種類がある。
表 3-4-21 就農支援資金貸付金の概要
資金の種類
事業の内容
対象者
償還期間
貸付限度額
農業大学校等
就農にあたって技術、経
600 千円
年間
営方法を取得するため、
就農研修資金
認定就農者
研修教 育を 受 けるのに
必要な経費
等就農 にあ た っての準
先進農家等
(据置 4 年以内)
年間
1,800 千円
中高年 7 年以内
指導研修 2,000 千円
(据置 2 年以内)
就農先調査、住居の移転
就農準備資金
青年 12 年以内
2,000 千円
認定就農者
備資金
就農施設等
経営を 開始 す るのに必
12 年以内
青年 37,000 千円(28,000
要な施設の設置、機械、
(据置 5 年以内)
千円を超える部分は事
資材等 の購 入 に必要な
認定就農者
資金
業費の 1/2 以内)
資金( 土地 の 購入は除
中 高 年 27,000 千 円
く、経営開始次年度以降
(18,000 千円を超える部
は設備資金に限る)
分は事業費の 1/2 以内)
なお、県は就農支援施設等資金のみ取扱っており、その流れは以下のとおりである。
287
図 3-4-10 就農支援資金貸付金(県)のスキーム
国からの借入(2/3)
県費(1/3)
県(特別会計)
無利子貸付
農協、県信連、銀行、信用金庫、農林中央金庫
無利子貸付
認
定
就
農
者
この他に、新潟県青年農業者等育成センター(以下、
「育成センター」という。)では、
3種類すべての資金を扱っており、その流れは以下のとおりである。
図 3-4-11 就農支援貸付金(育成センター)のスキーム
国からの借入(2/3)
県費(1/3)
県(特別会計)
無利子貸付
新潟県青年農業者等育成センター
無利子貸付
認
③
ア
定
就
農
者
貸付金の実績
残高の推移
表 3-4-22 就農支援資金貸付金の推移(A+B)(全体)
(単位:千円、%)
年度
予算額
貸付額(件数)
貸付残高
達成率
平成15年度
130,000
92,146(3件)
430,747
70.9
平成16年度
130,000
82,598(7件)
502,950
63.5
平成17年度
130,000
71,269(7件)
566,839
54.8
288
表 3-4-23 県による就農施設等資金貸付金の推移(A)
(単位:千円、%)
年度
予算額
貸付額(件数)
貸付残高
達成率
平成15年度
80,000
42,146(2件)
58,547
52.7
平成16年度
80,000
82,598(7件)
130,750
103.2
平成17年度
80,000
71,269(7件)
194,639
89.1
表3-4-24 育成センター就農支援資金貸付金の推移(B)
(単位:千円、%)
年度
予算額
(センター予算額)
貸付額
貸付残高
達成率
平成15年度
132,971
47,225
277,788
35.5
平成16年度
160,578
38,364
294,638
23.9
平成17年度
110,154
17,545
289,564
15.9
なお、育成センターにおける県からの借入金は、平成7年度から平成 15 年度まで借入
れ、その後平成 18 年度から平成 36 年度までに償還する計画となっているため、平成 15
年度から平成 17 年度にかけての残高は、372,200 千円となっている。
表 3-4-25 育成センターにおける貸付金資金別内訳推移表
(単位:件、千円)
区分
就農研修資金
件数
就農準備資金
金額
件数
就農施設等資金
金額
件数
金額
平成15年度
38
43,560
0
0
1
3,665
平成16年度
34
34,339
1
1,600
1
2,425
平成17年度
21
17,545
0
0
0
0
就農研修資金のほとんどが、農業大学校への進学資金貸付及び農家への実地研修資金
である。2年以内に就農しない者には、就農しないことがわかった時点で返還する義務
が生じ、返還する者も年間数人程度いる。
(2)実施した手続
担当者に貸付金の状況について質問し、平成 15 年度から平成 17 年度の貸付金台帳(償
還予定表含む)を閲覧した。また、平成 17 年度の一部について審査資料を入手し査閲し
た。
289
(3)監査の結果と意見
① 意見
【意見①】育成センターのリスクについて
県から農業者等に対して貸付をする就農施設等貸付金は、融資機関を通じて転貸する
方式であり、融資機関において新潟県農業信用基金協会の保証を受けており、財務上の
リスクはない。しかし、育成センターから直接認定農業者等に貸付ける就農資金貸付金
は、現在のところ延滞債権はないが、育成センター自体が財務リスクを負っている。
新潟県の農家数は 108,090 戸数で、年々減少し続けており、平成7年度を 100 とする
と、総農家数は平成 16 年度で 84、主業農家数で 57、準主業農家数が 76 となっている。
また、農家人口は 389,290 人で前年比 3.2%減で減少し続けているが、高齢農業専従者(60
歳以上)が、農業専従者に占める割合は 59.1%と、前年より 0.6%上昇している。農業従
事者の高齢化は全国的に顕著であるが、新潟県は全国に比べて農業就業人口及び基幹的
農業従事者における高齢者率が高い(新潟県農業の動き(平成 18 年3月)新潟県より抜
粋)。
上記の統計から見るに、県の「新たな農業従事者の就業促進」は急務であり、Uター
ン者も含めた幅広い広報活動を行い、就農支援資金貸付金の実効が上がるようにする必
要があると思われる。また、その際に育成センターには財務基盤がないのであるから、
育成センターのリスクを見極め、どの程度を育成センターの負担限度とするのかなど、
県と育成センターの間で取決めておく必要もあると考えられる。
【意見②】余剰資金の回収について
県から育成センターへの新規貸付については、平成 15 年度以降行われていない。これ
は育成センターでの資金需要が、貸付金残高を上回ることがないためと考えられる。ま
た、育成センターの農業者に対する貸付金は年々減少しており、前年度の返済額と若干
の資金で資金需要に対応できると考えられる。同センターの平成 17 年度末借入金残高は
372,200 千円であり、平成 18 年度から平成 36 年度までに漸次返済されていく予定となっ
ている。平成 18 年度償還予定額は 3,385 千円であるが、育成センターでの預金残高は
82,636 千円となっている。平成 12 年度制度改正により、
「施設等資金」は県からも貸付
を行っており、同センターでの当該資金の需要は減少してきているのが現状である。
資金の効率的な運用の観点からいえば、今後の動向を見極め余剰資金については県へ
の返済を早めるなどの対策を検討する必要がある。
【意見③】制度資金の有効活用の促進と農業普及指導センターの活用について
平成 18 年7月の「農業経営基盤の強化の促進に関する基本方針」(新潟県)には、
「本
県が今後とも競争力と持続性を兼ね備えた総合食料供給県として発展するためには、平
290
成 19 年度から導入される品目横断的経営安定対策を踏まえた地域農業の核となる担い手
の確保・育成を最重要課題として捉え、地域の実情に即した組織化・法人化の推進や認
定農業者への農地利用集積を加速する取組を総合的に進めることにより、経営体への発
展と体質強化、及び地域農業の再編を図る必要がある」と明記されている。その意味で
就農支援資金貸付金の意義は高いと思われるが、実際の利用者はそれほど多くはなくし
かも減少している。これが制度の不便さ(公金であるため、タイムリーな資金需要でな
いとか、煩雑な手続が必要であるとか)であるのか、新潟県の特有な問題(例えば、米
作兼業農家が多いため、これ以上の投資をする必要がない、農業Uターン者が少ない等)
であるのか、判然としていない。減少の原因を確かめ、上記基本方針を進めるために制
度資金を有効に活用すべきである。また、農業改良資金貸付金で述べたように、県は単
に融資するだけでなく、農業普及指導員を活用し、互いに連携して新規農業担い手の育
成に注力すべきである。
291
3 林業・木材産業改善資金貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
林業従事者及び木材産業(木材製造業、木材卸売業又は木材市場業)従事者等が、そ
の経営の改善又は林業労働に係る労働災害の防止若しくは林業労働に従事する者の確保
を目的として行う先駆的な取り組みに対し、県が無利子で資金を貸付けるものである。
イ
根拠法令等
林業・木材産業改善資金助成法
新潟県林業・木材産業改善資金貸付規則等
②
ア
制度の仕組み
スキーム
「1
農業改良資金貸付金
②制度の仕組み」と同様のスキームであるため同項を参
照。
ただし、「転貸方式」は全く利用されていない。
イ
貸付条件等
表 3-4-26 貸付条件の概要
概要等
林業を営む個人、会社、団体、木材産業に属する事業を営む個人、会社、団体
貸付対象者
いずれも貸付資格の認定が必要である。
貸付利率
無利子
貸付期間
10~15 年以内(うち、据置期間3年以内)
貸付限度額
個人
15,000 千円
会社
30,000 千円
団体
50,000 千円
1,000 千円未満
連帯保証人
1人
1,000 千円以上 10,000 千円以内
2人
10,000 千円以上3人
資金使途
③
ア
施設の改良、造成及び取得に必要な資金、造林に必要な資金他
貸付金の実績
残高の推移
貸付金の残高の過去5年間の推移は次のとおりである。
292
表 3-4-27 貸付実績の推移
(単位:千円、先)
貸付額
H13 年度を 100 と
・債務者数
した指数
貸付年度
71,437
H13 年度
28 件
30,686
H14 年度
15 件
86,463
H15 年度
19 件
107,344
H16 年度
13 件
33,001
H17 年度
3件
H13 年度を 100 と
貸付金残高(注)
した指数
100
283,412
100
43
213,284
75
121
226,866
80
150
265,945
94
46
239,095
84
(注)期日到来分を含む。したがって、表 2-3、表 4-1 の残高と異なる。
イ
予算との関係
予算と実績額の関係は次のとおりであり、予算と実績の乖離が出ている状況となって
いる。
表 3-4-28 予算と実行額
(単位:千円、%)
当初(A)
④
2月補正(B)
実行額(C)
(C)/(A)又は(B)×100
H15年度
120,000
-
86,463
72.1%
H16年度
120,000
-
109,334
91.1%
H17年度
120,000
50,000
33,001
66.0%
延滞債権の状況
平成 18 年3月末現在、延滞先は6件、延滞額 12,624 千円であった。うち2件、596 千
円は平成 18 年 10 月末現在、返済済み又は返済の予定がある。回収が困難となっている
債権の貸付年度は平成6年度、10 年度、12 年度に集中している。ほとんどがきのこの生
産組合であり、現在生産を中止している者もあり、2件、9,973 千円については保証人か
らの返済も僅かながらあるものの、今後の回収は困難が予想される。
(2)実施した手続
(ⅰ)特別会計についての調書、資金別貸付残高実績、償還金の実績調書間の数値の整合
293
性の状況を突合した。
(ⅱ)貸付金データ(システム)の5年分を閲覧し、質問を行った。
(ⅲ)貸付金についての調書を入手し、調書とシステム上のデータと照合した。平成 17 年
度貸付3件合計 33,001 千円について、審査資料の中身を閲覧して数値の照合を行っ
た。
(ⅳ)滞留となっている貸付金について質問を行い、各業務についての状況を調査した。
(3)監査の結果と意見
① 指摘事項
【指摘事項①】資金管理の不適切な状況について
林業・木材産業改善資金貸付金の延滞状況は「(1)④ 延滞債権の状況」で示したと
おりである。6貸付金計 12,624 千円について延滞が発生していた。これらの延滞債権の
管理について次の通り不適切な状況が認められたので、今後改善が必要である。
(ⅰ)各貸与者について、個別ファイル管理がなされていない状況にあること。
貸付時の審査状況の調査表は、貸付時の年度で保管されており、また、その後の延滞
報告書や延滞状況の調査の資料などは単年度でファイルされている実態が認められるな
ど、ファイリングが不充分な状況にあったこと。
ファイリングが不充分であると債務者に対する情報が十分でなく適切な管理が出来な
い結果となるため、民間の融資機関等では、延滞債権の管理については債務者の状況を、
融資時からその後の状況の変化を記入して個別の債務者毎にファイリングを行っている。
県が直接に貸付を行うのであれば、民間の融資機関で行われているような、厳格な管理
と金融債権管理の知識が必要とされる。今回の監査で延滞者については必要な証憑等を
過去のファイルから集めて個別ファイリングを依頼し、延滞者についての情報をまとめ
たが、本来そのような管理は常になされているべきと思われる。
(ⅱ)延滞が発生してからの債務者の状況及び督促管理の実態についての資料が整備され
ておらず、部署担当者交代時に申し送り事項が不明確なこと。
県では、担当者の異動が2、3年交代で行われることから、債権管理については細か
い申し送り事項が必要であると思われるが、マニュアルその他の申し送り事項も整備さ
れていないことから、各書類の数値の整合性も検証時には不一致が認められるなど、事
務不備が認められた(最終的には、数値は一致した)。
(ⅲ)延滞が発生した後の事務取扱規程等が整備されておらず、担当者の意識により督促
の確認の状況に濃淡が認められることから、回収及び延滞に関するマニュアル(チ
ェックリスト)を作成するのが望ましい。
294
(ⅳ)延滞が発生した直後の延滞報告書、督促状の発行、調査結果の報告の手続きは怠り
なく行われているが、延滞後1年以上が経過したものについての延滞報告書、調査
結果報告書を逐次請求していないなどの怠りが認められること。
②
意見
【意見①】延滞者への延滞利息金についての通知がなされないことについて
貸付規則 15 条により、高利な延滞利息が科せられているが、これが通知されないこと
により延滞者の不利益となる恐れがある事項がある。延滞が生じた貸付金については、
12.25%の違約金が課せられることとなっている。これは罰科金としての国の制度に倣っ
たもので、やむを得ないと考えられるが、無利子貸付でありながら延滞となると、返済
困難者にとってさらに困難な状況となるというのは、過酷といえる。
違約金の請求時については、規則に特段の定めがないが、現在、延滞金の一部が入金
となった後に、当該(一部入金の貸付金につき)延滞貸付金について違約金が計算され、
別途借受者に違約金の請求がなされている。延滞金が入金となった後に知らされること
及び延滞金を支払っていない場合には、借受者にとって延滞した貸付金に対しての違約
金が幾らになっているのかが知らされず、返済の全体額が不明な状況にたたされている
など、借受者にとって、違約金も含めたその時点の要返済額が知らされず、返済計画を
立てにくい仕組となっている。
なお、18 年3月末の延滞先6件について、18 年3月末時点での延滞違約金を計算する
と 12,624 千円の延滞債権について、4,477 千円の延滞違約金が発生している。
違約金請求についての規定を整備し、借受者にとって不利な状況を招かないように債
務の状況を定期的に通知すべきである。
平成 11 年から延滞が発生し廃業を決定した債務者、及び平成 14 年から延滞が発生し、
平成 18 年に廃業・自己破産をした2債務者については、今後の回収可能性の検討、特に
違約金の支払の猶予又は一時停止などを検討する必要があると思われる。
借受者の元金の返済については他の借受者との公平性を保つために弁済に対しては厳
格に対処する必要があるが、違約金については、元金の弁済について長期分割してもな
お困難な状況にあると判断された場合には、累積していく違約金の履行を求めるのは酷
といえる。このような場合には、地方自治施行令 171 条の5(徴収停止)、同 171 条の7
(免除)等を参考に違約金請求について、免除、又は一部停止などのルールを国に要望
するなどの検討が必要と思われる。
【意見②】「転貸方式」採用について
林業・木材産業改善資金貸付金についても、「1農業改良資金貸付金」で述べたと同じ
事が言える。県が直接融資する「直貸方式」と融資機関を通じて行う「転貸方式」とが
295
あるが、貸付金の管理の煩雑さ、債権管理・回収の専門知識の必要性を加味すると、経
済性・効率性の観点から「転貸」方式を採用するのが望ましい。「直貸」方式を採用して
いても、森林組合に対し、支払事務、延滞払込についての延滞取立奨励金等の事務委託
手数料を支払っており(平成 16 年度 2,445 千円、17 年度 994 千円)、延滞の督促につい
ても実質的に森林組合が行っていることから、実質は「転貸」となんら異なることがな
い。それならば、融資事務については民間のプロに任せ、県はその資金を融資すること
とすれば足りると考えられる。
【意見③】特別会計の資金の効率的運用について
林業・木材産業改善資金貸付金の平成 17 年度末の繰越金は約 270,000 千円となってい
る。このうち約 180,000 千円は国からの補助金であり、残り 90,000 千円は県の一般財源
からの繰入金である。現在、貸付金の大幅な減少により貸付金の繰越金残高に占める割
合は 12%となっている。今後も 30,000~40,000 千円の返還金が見込まれることから、国
に返還すべきものは一度返還し、県の財源に返すべきものは返し、資金需要を見定めて
資金の効率的な運用をすべきである。
表 3-4-29 林業・木材産業改善資金貸付金特別会計内訳等
(単位:千円、%)
貸付額
返済額
(A)
(B)
年度
特別会計の
貸付金の繰越残高
繰越金残高
に占める割合
(C)
(A)/(C)
H15 年度
86,463
78,513
285,554
30
H16 年度
109,334
64,425
246,485
44
H17 年度
33,001
61,848
273,365
12
296
4 新潟県木材産業等高度化推進資金貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
木材の生産及び流通を円滑にすること、効率的・安定的な林業経営を育成することを
図ることを目的に、造林、育林、素材生産、製材、木材卸売等の事業を行う組合、会社、
個人に低利な融資を行う。
イ
根拠法令等
林業経営基盤の強化等の促進のための資金の融通に関する暫定措置法
新潟県木材産業等高度化推進資金制度運営要綱
②
ア
制度の仕組み
スキーム
県は、予算で定める範囲内において、指定金融機関に資金の預託を行う。指定金融機
関は、県より預託を受けた資金の額の3倍又は4倍に相当する額の資金を貸付対象者(借
受者)に対し貸付ける。また、借受者は新潟県に住所を有し、地域振興局等に「合理化
計画」の認定を受けることができるものでなければならない。
図 3-4-12 貸付金のスキーム図
国
出資
金融機関
農林漁業信用基金
利子補給
借入
貸付
新潟県
合理化計画の
津川地区振興事務所
認定、取消等
の報告
基金貸付額の 2 倍
原資供給
県が指定する金融機関
協調融資
原資の 3、4 倍
297
認定
合理化
取消
計画申請
借受者
イ
貸付条件等
県が行う木材産業等高度化推進資金貸付金には、新規市場開拓支援資金、高性能住宅
資材供給資金、素材生産合理化資金、製品流通合理化資金等があり、個々の制度により
異なる条件もあるが、主な貸付条件等の概要は次のとおりである。
表 3-4-30 貸付条件の概要
貸付対象者
合理化計画の認定を受けた森林組合、木材事業協同組合、
共同の事業体等
100,000 千円
貸付限度額
(特認により 200,000 千円まで増額)
貸付期間
貸付利率
③
ア
短期資金
1年以内
長期資金
5年以内
短期資金
1.4%
長期資金
1.6%
貸付金の実績
残高の推移
表 3-4-31 貸付金残高の推移
(単位:千円)
金融機関から業者等への貸付額
県から金融機関
年度
への預託額
期首残高
当期貸付額
当期償還額
期末残高
平成 13 年度
430,000
674,896
510,600
786,117
399,379
平成 14 年度
396,400
399,379
498,560
467,907
430,032
平成 15 年度
356,400
430,032
528,984
542,653
416,363
平成 16 年度
356,400
416,363
428,500
545,663
299,200
平成 17 年度
320,760
299,200
372,900
353,650
318,450
イ
予算との関係
表 3-4-32 貸付実績と予算の関係
(単位:千円、倍)
年度
合理化計画認定額
県予算
業者貸付実績
実績/予算
平成 15 年度
1,081,500
356,400
528,984
1.48 倍
平成 16 年度
1,044,500
356,400
428,500
1.20 倍
平成 17 年度
643,500
320,760
372,900
1.16 倍
298
県予算は、合理化計画認定額に基づいて行われるが、その後の業者貸付においては認
定計画通りの貸付が実行されないことがある。
(2)実施した手続
(ⅰ)貸付金の状況について担当者に質問し、推移表を入手した。
(ⅱ)平成 17 年度の貸付金について、支出負担行為兼支出命令決議書を閲覧し、一部につ
いて覚書を閲覧した。
(3)監査の結果と意見
① 指摘事項
【指摘事項①】資金の預託額の見積の合理性について
新潟県木材産業高度化推進資金制度運営要綱(以下、「要綱」という。)第2条第2項
によれば、「指定金融機関は、第1項の規程により預託を受けた資金の額の4倍又は3倍
(別表)に相当する額の資金を第4条(貸付対象者)に定める者に対し貸し付けるもの
とする。」とあり、預託金の予算措置の計算に合理性があれば、預託額の3倍又は4倍に
相当する額の貸付金が業者等に貸付けられている筈である。ところが、実際は表 3-4-32
にあるように平成 17 年度で約 1.16 倍が貸付けられているに過ぎない。そもそも同貸付
金に対する資金の運用については、
「林業経営基盤の強化等の促進のための資金の融通等
に関する暫定措置法の運用について(林野庁長官通知:最終改正平成 15 年 10 月1日)」
第7木材産業等高度化推進資金制度
3(2)にあるように、県から金融機関への資金
の供給は各種高度化推進資金の貸付に必要な4分の1又は3分の1と定められている。
法の趣旨に則れば、県の預託金の3倍又は4倍を協調融資するということであること
から、それ以上の負担をすることは原則として認められないと考えられる。
故に最終的に業者貸付の4分の1、又は3分の1となるよう必要最小限の預託額とし、
過大となった場合には県に返済するように指導すべきである。
299
5 林業就業促進資金貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
林業に新規就業しようとする者の就業の円滑化を図ることを目的として、新潟県労働
力確保支援センター(新潟県農林公社を指定。以下、「支援センター」という。)が県か
らの借入金を原資として認定事業主(雇用管理の改善と事業の合理化のための計画を作
り、知事の認定を受けた者)へ無利子で貸付ける。
イ
根拠法令等
林業労働力の確保の促進に関する法律(平成8年法律第 45 号)
林業就業促進資金貸付資金取扱規則
社団法人新潟県農林公社林業就業促進資金貸付規程
②
ア
制度の仕組み
スキーム
県は、支援センターに対し資金を貸付し、その造成資金を基に支援センターは、認定
事業主に対し必要な資金を無利子で貸付ける。資金の種類は、就業研修資金及び就業準
備資金である。
イ
貸付条件等
区分
資金の内容
償還期間
据置期間
運用
貸付限度額
認定事業主が新たに雇い入れる
林業労働者に対し必要な林業技
10 年以内
術等を実地に習得するための研
均等償還
就業研修資金
一般研修
4 年以内
月額 120 千円以内
研修教育施設
修資金を支給するに必要な資金
月額 50 千円以内
認定事業主が新たに雇い入れる
林業労働者に対し就業に必要な
10 年以内
移転その他事前の活動資金を支
均等償還
就業準備資金
給するに必要な資金
300
4 年以内
貸付限度額
1,200 千円以内
③
貸付金の推移
表 3-4-33 貸付金の推移
(単位:千円)
県→公社
金額
公社→事業者
金額
貸付金(平成 10 年~12 年)
18,000
貸付金(平成 10 年~15 年)
9,708
償還額(平成 14 年~17 年)
7,084
返済額(平成 14 年~17 年)
5,420
平成 17 年度貸付金残高
4,288
平成 17 年度貸付金残高
10,916
(注1)平成 13 年度より県からの借入金はなし。公社借入金は平成 22 年度で償還が終了する。
(注2)平成 16 年度より、公社から事業者への貸付もなし。公社への返還は平成 24 年度で終了する。
(2)実施した手続
(ⅰ)貸付金について担当者に質問し、貸付金の推移表を入手し閲覧した。
(ⅱ)貸付金のデータ保管状況等を閲覧し、延滞先の有無について質問した。
(3)監査の結果と意見
実施した手続の範囲内においては、特に指摘すべき事項は見られなかった。
301
6 沿岸漁業改善資金貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
沿岸漁業の改善のため、沿岸漁業者に無利子で経営改善、生活改善、青年漁業者養成
確保のための資金を貸付けることを目的とする。
イ
根拠法令等
沿岸漁業改善資金助成法
新潟県沿岸漁業改善資金貸付規則
②
ア
制度の仕組み
スキーム
「1
農業改良資金貸付金」と同様のスキームであるため同項を参照。
ただし、「直貸方式」のみである。
イ
貸付条件等
表 3-4-34 貸付条件の概要
概要等
貸付対象者
貸付利率
貸付対象者
貸付期間
貸付限度額
連帯保証人
資金使途
沿岸漁業従事者又はその組織する団体並びに会社(従業員数 20 人以下)
無利子
沿岸漁業従事者又はその組織する団体並びに会社(従業員数 20 人以下)
最長 10 年(うち、据置期間3年以内)
50,000 千円
500 千円以下
1人
500 千円超 1,000 千円以内
2人
1,000 千円超 5,000 千円以内
3人
5,000 千円超
4人
施設の改良、造成及び取得に必要な資金等
302
③
ア
貸付金の実績
残高の推移
表 3-4-35 沿岸漁業改善資金貸付金推移表
(単位:千円、%)
貸付額(件数)(A)
予算額(B)
(A)/(B)×100
貸付残高
平成 15 年度
78,185(8 件)
80,000
97
340,072
平成 16 年度
49,900(7 件)
55,000
91
311,265
平成 17 年度
29,230(10 件)
80,000
36
262,256
(注)延滞は発生していない。
(2)実施した手続
(ⅰ)各調書間の突合、特別会計についての調書、資金別貸付残高実績、償還金の実績調
書間の数値の整合性の状況を突合した。
(ⅱ)貸付金データ(システム)の5年分を閲覧し、質問を行った。
(ⅲ)貸付金についての調書を入手し、調書とシステム上のデータと照合した。平成 16 年
度貸付4件及び 17 年度貸付2件合計 60,500 千円について、貸付決定通知、報告の
中身を閲覧して数値の照合を行った。
(ⅳ)滞留となっている貸付金がないかどうかについて質問を行った。
(3)監査の結果と意見
① 意見
【意見①】特別会計の効率的な資金運用について
沿岸漁業従事者も高齢化が進み、新たな改善資金の需要は急速に減少してきている。
しかしながら、一定の需要は存在すると思われる。重油の高騰など、沿岸漁業を取り巻
く環境が一段と悪化する中、今後信漁連、漁業協同組合との連携をとりながら、きめ細
かな指導も必要と思われる。
また、特別会計の繰越金残高については、平成 17 年度末の繰越金は約 130,000 千円と
なっている。この内、約 90,000 千円は国からの補助金であり、残り 45,000 千円は県の
一般財源からの繰入金である。現在、貸付金の大幅な減少により貸付金の繰越金残高に
占める割合は 21%となっている。今後も数年間は 50,000 千円以上の返還金が見込まれる
ことから、繰越金の適正残高を検討し国に返還すべきものは一度返還し、県の財源に返
すべきものは返し、資金需要を見定めて資金の効率的な運用をすべきである。
303
表 3-4-36 特別会計の繰越金残高
(単位:千円、%)
特別会計の
年度
貸付額(A)
返済額(B)
繰越残高と
繰越金残高(C)
貸付金の割合
(A)/(C)
H15 年度
78,185
67,287
58,488
133%
H16 年度
49,900
78,707
87,295
57%
H17 年度
29,230
78,239
136,324
21%
304
【港湾空港交通局】 〔一般会計〕
1 東港臨海用地造成事業貸付金
(1)概要
① 制度の趣旨
ア 目的
東港臨海用地造成事業貸付金は、新潟東港臨海用地造成事業(以下、
「用造事業」とい
う。)に充てるために、一般会計から新潟県新潟東港臨海用地造成事業会計(以下、「用
造会計」という。)への貸付金である。用造会計は、新潟東港開発計画(以下、この章に
おいては「開発計画」という。)に基づいて行われる企業会計である。この開発計画は、
新潟西港からおよそ 16 キロメートル東側の地点に掘込式港湾を新設し、
背後地には石油、
鉄鋼の両産業を基幹産業として、機械金属、電力、造船、木材関連等の関連産業を配す
るコンビナートを形成することにより、雇用の創出と県民所得の増大を図ることを目的
として昭和 37 年度に策定され、以後数回の計画変更が行われている。平成 18 年度は、
平成 13 年3月に行われた計画改定に基づく計画期間の最終年度である。
図 3-5-1 東港俯瞰図
(出典:県東港開発課ウェブサイトより転載
URL:http://www.pref.niigata.jp/kowankuko/gateway/02higashiko/nep_youchi.htm)
305
②
ア
制度の仕組み
スキーム
用造事業は、開発計画の目的を達するために必要な用地の取得・造成を行い、東港へ
進出する企業への工業用地や港湾事業の公共用地を提供するものである。用造会計では
土地の売却収入や企業債による資金により事業を行っているが、収支不足を生じており、
それに対して県の一般会計から資金を貸付けている。
県の貸付金及び企業債の過去5年の推移は以下の通りである。
表 3-5-1 東港臨海用地造成事業貸付金等残高の推移
(単位:千円)
年度
一般会計貸付金
企業債
合
計
H13 年度末
5,300,000
2,803,000
8,103,000
H14 年度末
5,100,000
1,862,000
6,962,000
H15 年度末
5,600,000
1,134,000
6,734,000
H16 年度末
6,100,000
459,000
6,559,000
H17 年度末
6,100,000
94,000
6,194,000
県の一般会計貸付金は平成 13 年度の 5,300,000 千円から平成 17 年度の 6,100,000 千
円と増加傾向にあるが、用造会計が発行していた企業債の償還部分の一部を肩代わりし
ている形になっているからである。用造会計側からみると、一般会計からの借入金に企
業債残高を合算した借入総額でみると平成 13 年度の 8,103,000 千円から平成 17 年度の
6,194,000 千円と4分の1近く減少し、用地売却が進んでいることが伺える。
用造会計は企業会計を採用しており、平成 17 年度末における決算状況は次の通りであ
る。
306
③
ア
特別会計の状況
貸借対照表(平成 18 年3月 31 日現在)
(単位:千円)
借方
貸方
科目
金額
固定資産
無形固定資産
投資
科目
10,172
固定負債
6,205,117
172
企業債
94,000
他会計借入金
10,000
土地造成
年賦未収入金
流動資産
11,117
121,198,895
流動負債
133,024
11,117
未払金
117,849
590,053
その他
15,175
現金預金
456,553
未収入金
118,500
その他
6,100,000
年賦売却益引当金
121,210,012
未成土地
金額
15,000
原価見返勘定
112,254,602
負債合計
118,592,745
資本金
3,015,425
剰余金
202,067
資本剰余金
187,954
利益剰余金
14,113
資本合計
資産合計
イ
121,810,238
損益計算書(自
平成 17 年4月1日
3,217,493
負債資本合計
至
121,810,238
平成 18 年3月 31 日)
(単位:千円)
科目
金額
営業収益
367,087
土地売却収益
367,087
営業費用
367,087
土地売却原価
367,087
営業利益
0
経常利益
0
当年度純利益
0
用造会計の決算書のうちまず特徴的なものは、土地売却収益と同額を土地売却原価に
計上し、事業継続中の土地売却損益を識別しないことである。一方で総投資額を開示す
307
るために、用造会計で発生した一切の費用を未成土地として資産計上し、土地売却原価
については原価見返勘定という負債に計上している。一見して、これまでの土地売却に
よる損益は分からない。
なお、県からの借入金については固定負債の他会計借入金として整理されている。
一方で、平成 17 年度において進められている開発計画に基づく事業用地の処分状況は
用造会計の平成 17 年度の決算書によれば、以下の通りである。(全体計画面積対比のう
ち、工業用地及び公共用地の数値については監査人が算定した。)
表 3-5-2 事業用地の処分状況表
(単位:㎡)
区分
全
体
計
画
面
工業用地
積
A
得
総
面
積
B
処
分
総
面
積
C
未
処
分
面
積
C-A
全体計画面積対比
C/A
取得総面積対比
C/B
処分率%
取
9,055,000
公共用地
暫定処分用地
6,277,000
計
15,332,000
14,365,228
8,685,576
4,416,903
523
13,103,002
1,262,226
95.92
70.36
85.46
91.21
上記に見るとおり、工業用地についてはほぼ処分が終了しており、現在は、残る工業
用地の完売、用造会計保有の港湾事業用地等公共用地・代替地等の処理、残基盤整備の
事業化の推進が課題となっている。なお、県は工業用地の完売に向けて平成 17 年 10 月
17 日以降の売却価格について、実勢価格を基礎として1平方メートル辺り 25,000 円から
21,000 円に引き下げている。
一方の公共用地については、港湾事業用地や緑地等公共に資するための土地であり、
国への売却や県の他会計による取得や移管を前提としている。
④
損益シミュレーション
現在、県が行っている貸付金の回収はこれらの工業用地と公共用地の売却の成否によ
る。過去においては、県が工業用地の売却推進のために補助金を支出していた時期もあ
ったが、今後はこのような県の追加負担がないものとして以下のシミュレーションを行
った。なお、公共用地については有償譲渡が見込まれている面積について、過去の実績
308
売却単価を乗じることによってシミュレーションを行ったため、平成 17 年度末面積につ
いては「表 3-5-2 事業用地の処分状況表」とは一致しない。
表 3-5-3 売買損益シミュレーション
(単位:㎡、千円)
H17 年度末面積(A)
H17 年度末単価(B)
233,000
21
4,893,000
533,000
13.5
7,195,500
工業用地
(A)×(B)
公共用地
(有償譲渡分)
合計
12,088,500
原価
8,944,292
未回収額
余剰額
3,144,208
(注)1㎡辺り単価については工業用地については平成 18 年3月 31 日現在の売出価格を、公共用地に
ついては平成 17 年度の実績値を使用した。
このシミュレーションによれば、平成 17 年度末の価格で用地を処分できれば県の貸付
金は回収されるということとなる。
(2)実施した手続
平成 17 年度において実行された 61 億円の貸付について、貸付時において実施された
一般会計側の支出負担行為決議書、支出命令決議書、用造会計側の収入執行伺、収入調
定書、出納済通知書を閲覧し、実行の合規性を確かめるとともに、年度末返済時におけ
る一般会計側の調定決議書、収納済通知書、用造会計側の経費執行伺、支出決議書を閲
覧し、回収の合規性を確かめた。
(3)監査の結果と意見
① 意見
【意見①】資産の早期売却について
先に記載した損益シミュレーションに見る通り、現在の状況が続くのであれば特段の
事情がない限り、現在の県の貸付金の回収可能性はあると判断される。しかし、貸付金
それ自体の有効性の観点からは、売却が長引いた場合に発生する追加費用を考慮する必
要があると考える。平成 17 年度用造会計の決算数値によれば、資本的支出のうち、総係
費として 102,243 千円が支出され、土地の造成費用に計上されている。この中には土地
維持管理費等、経費的な性質が強いものも含まれている。さらに、県の貸付金 61 億円が
無利子となっていることから平成 17 年度末における県債の平均調達コストである 1.9%
309
を資本コストとみなして考えると 115,900 千円の機会費用が発生していると考えること
もできる。これらの費用は必ずしも土地の価値を高めるものとは考えられないため、用
造会計が1年間存続すると 218,143 千円が県民の負担となる。この追加負担部分を減少
させるためには、これまで県が積極的に行ってきた企業誘致による工業用地の売却促進
のほか、公共用地の処分に関連する部分が大きいと考えている。
そのため、県は残りの工業用地の売却を促進するとともに、関係する国及び県の部局
と協議調整を行い、公共用地の早期の処分を行うべきである。
【意見②】東港臨海用地造成事業貸付金の開示について
用造会計への貸付金は、一般会計から用造会計へ一時貸付金として処理し、その大部
分を翌事業年度の一時貸付金を原資として出納整理期間中に一般会計へと返済している。
したがって、県の平成 17 年度末の貸付金残高は存在しないこととして開示されている。
土地が売却されれば直ちに返済されることから一時貸付金として取り扱っているもので
はあるが、この貸付金の目的は、これまで見てきたように工業用地を中心とした造成費
用であることから長期貸付金であると考えるのが一般的である。その証拠に翌年度によ
る一時貸付が実施されなければその返済は不可能である。
県としては、より分かりやすい開示を目指すことが必要であり、その成果に期待した
い。
310
第4章 監査の結果と意見(総論)
1 貸付金原資の有効利用について
(1)当初予算に対する実績
今回、監査の対象とした貸付金(預託金方式を含む)1の平成 17 年度実行額と当初予算
額等を比較したところ、表 4-1 のような乖離が見られた。
表 4-1 各貸付制度の予算と実績(平成 17 年度)
(単位:千円)
貸付金名
貸付残高(注1)
実行額・預託額
地方産業育成資金貸付金
14,606,758
2,683,443
2,689,334
2,683,443
経営安定資金貸付金
31,798,242
7,212,300
8,413,187
7,212,300
66,840
29,100
33,234
29,100
2,510
800
863
800
728,834
301,400
307,571
301,400
1,616,584
661,000
1,083,030
661,000
152,778
107,200
461,575
107,200
30,390
17,100
137,844
17,100
-
-
70,605
-
2,672
1,000
6,620
1,000
19,366,275
11,308,000
10,198,375
11,308,000
838,822
232,500
372,532
232,500
地域産業対策資金貸付金
当初予算
補正後予算
中 心 市街 地活性 化 対策 資
金貸付金
中 小 企業 関連倒 産 防止 資
金貸付金
中 小 企業 設備改 善 資金 貸
付金
産業労働観光部
フ ロ ンテ ィア企 業 支援 資
金貸付金(新技術・新事業
等展開枠)
フ ロ ンテ ィア企 業 支援 資
金貸付金(店舗新展開枠)
フ ロ ンテ ィア企 業 支援 資
金貸付金(労働時間短縮設
備枠)
同 和 地区 中小企 業 振興 資
金貸付金
中 小 企業 緊急経 営 支援 資
金貸付金
中 小 企業 創業支 援 資金 貸
付金
1
表 4-1 には、平成 17 年度に県の貸付金残高があるか新規貸付(預託)が行われているもののほか、すで
に制度が廃止となっているがそれらと関連する貸付制度で最終利用者に対する貸付残高が残っているもの
を含めている。
311
貸付金名
貸付残高(注1)
実行額・預託額
当初予算
補正後予算
126,498
93,300
96,857
93,300
310,040
57,200
100,000
57,200
17,623,860
5,829,200
7,982,580
5,829,200
583,901
179,000
793,228
179,000
57,952,545
21,099,800
25,924,741
21,099,800
58,944
33,400
172,308
33,400
11,973,997
4,085,200
10,461,000
4,085,200
218,638
-
600,000
-
2,173,807
23,488,928
20,858,663
23,500,876
-
3,438,313
3,447,593
3,438,314
1,673,155
-
-
-
勤労者生活安定資金貸付金
26,919
50,000
50,000
50,000
育児、介護休業等貸付金
15,536
8,635
20,000
20,000
134,007
-
-
-
230
-
-
-
1,000,000
1,000,000
1,000,000
1,000,000
16,617
7,380
65,240
7,380
34,224
17,360
17,360
17,360
17,606,939
1,442,739
1,512,511
1,512,511
中 小 企業 金融円 滑 化対 策
資金貸付金
売掛債権活用資金貸付金
セ ー フテ ィネッ ト 資金 貸
付金(経営支援枠)
セ ー フテ ィネッ ト 資金 貸
付金(連鎖倒産防止枠)
セ ー フテ ィネッ ト 資金 貸
付金(企業再生枠)
商 店 街緊 急支援 資 金貸 付
金
平成16年大規模災害対策
資金貸付金
企業立地促進資金貸付金
県 営 工業 団地造 成 事業 貸
産業労働観光部
付金(工業用地造成事業会
計への貸付)
中 条 中核 工業団 地 貸付 金
(土地開発公社への貸付)
新 潟 県土 地開発 公 社事 業
資金貸付金(FAZ用地取得
資金)
工業用水道事業貸付金
地 域 改善 対策職 業 訓練 受
講資金等貸付金
新 潟 ふる さと村 経 営安 定
資金貸付金
観光施設改善資金貸付金
人 工 降雪 機整備 資 金貸 付
金
中 小 企業 高度化 事 業貸 付
金
312
貸付金名
貸付残高(注1)
実行額・預託額
31,427
-
-
-
12,878
-
-
-
297,395
-
-
-
1,042,590
270,510
600,000
600,000
(注2)1,622,255
114,040
400,000
400,000
832
6,098
71,099
121,099
-
-
-
(100,000)
1,522,650
-
-
-
311,153
201,432
300,391
226,436
300,000,000
-
-
-
災害援護資金貸付金
307,035
-
14,620
14,620
地域改善対策貸付金
31,245
1,864
1,864
1,864
107,508
3,024
3,024
3,024
782,933
29,028
35,928
29,124
1,176,591
739,952
905,707
761,446
8,225
1,849
30,000
1,849
1,440
-
-
-
-
5,000,000
5,000,000
5,000,000
1,019,677
133,463
435,145
451,055
中小企業近代化資金
当初予算
補正後予算
中 小 企業 合理化 資 金貸 付
産業労働観光部
金(S58廃止)
県 単 中小 企業設 備 貸与 事
業(S58廃止)
小 規 模企 業者等 設 備資 金
貸付事業貸付金
小 規 模企 業者等 設 備貸 与
事業
新 潟 県環 境保全 資 金貸 付
金
県民生活・環境部
(アスベスト枠)
新 潟 県環 境保全 事 業団 貸
付金
廃 棄 物処 理施設 等 整備 資
金貸付金
新 潟 県中 越大震 災 復興 基
金貸付金
介 護 福祉 士等修 学 資金 貸
付金
看護職員修学資金貸付金
福祉保健部
財政安定化基金貸付金
福 祉 のま ちづく り 条例 適
合施設融資
理 学 療法 士等修 学 資金 貸
付金
病 院 事業 貸付金 ( 一般 会
計)
母子・寡婦福祉資金貸付金
313
貸付金名
貸付残高(注1) 実行額・預託額
当初予算
補正後予算
新 潟 県農 林公社 事 業資 金
12,497,622
474,515
476,922
474,515
197,000
35,075
62,500
35,075
31,712
8,544
10,560
10,560
漁業振興資金貸付金
85,500
88,400
88,400
88,400
造林用苗木購入資金
-
14,256
14,256
14,256
農業改良資金貸付金
425,383
21,859
150,000
50,000
372,200
-
-
-
194,639
71,269
80,000
80,000
226,471
33,001
120,000
50,000
318,450
320,760
320,760
320,760
林業就業促進資金貸付金
10,916
-
-
-
沿岸漁業改善資金貸付金
262,256
29,230
64,000
64,000
11,310,000
-
-
-
233,790
206
209
209
47,255
-
-
-
-
6,100,000
6,200,000
6,200,000
515,229,590
97,082,673
112,262,236
98,475,676
貸付金
農 業 経営 改善促 進 資金 貸
付金
新 潟 県農 業大学 校 修学 資
金貸付金
農林水産部
就農支援資金貸付金(就農
研修:育成センター)
就農支援資金貸付金(就農
施設等)
林業・木材産業改善資金貸
付金
木 材 産業 等高度 化 推進 資
金貸付金
新 潟 県土 地開発 公 社貸 付
新潟県土地開発公社関連
金(美咲町地区用地取得事
業)
新 潟 県土 地開発 公 社貸 付
金(佐渡空港用地先行取得
事業)
新 潟 県土 地開発 公 社貸 付
金 ( 道路 用地取 得 事業 )
港湾空港
交通局
東 港 臨海 用地造 成 事業 貸
付金
合計
(注1)調定済未納額を除く。預託金方式の場合であっても最終利用者に対する貸付金額を記載している。
以下、同じ。県からの貸付金の場合は、表 2-3 と同様に、期日が到来していない残高。
(注2)割賦残高及びリース資産残高を記載。以下、同じ。
314
これらの実行額総額は、当初予算を 15,179,563 千円下回っている。なお、実行額が当
初予算より大幅に上回った県営工業団地造成事業(公営企業会計)貸付金を除くと、当
初予算として組まれた約 17,809,828 千円が使用されなかったこととなる。
県は、実績が当初予算を大幅に下回ると見込まれる場合は、補正予算で適正規模に減
額している。貸付金償還金等の特定財源を充当する預託金方式の場合は、当初予算と実
績が乖離しても予算編成上他の事業の財源を圧迫するなどの影響は実際には少ないと考
えられるが、事業規模に見合った資源(資金、人員等)の配分を行う上で、適正な見積
りを行うよう努めることが必要である。
(2)特別会計及び基金の利用状況
次に、貸付金の原資が特別会計或いは基金にある場合の平成 17 年度末における資金残
高のうち、貸付金で運用されている割合を算出した。
表 4-2 特別会計の資金残高と貸付金利用率(平成 17 年度末時点)
(単位:千円、%)
貸付金残高
中小企業支援資金貸付事業特別会計
特別会計(注)
利用率
20,637,064
21,716,541
95.0
3,030,125
-
-
17,606,939
-
-
307,035
307,035
100.0
1,019,677
1,335,605
76.3
農業改良資金貸付金
425,383
1,479,855
28.7
林業・木材産業改善資金貸付金
226,471
512,460
44.2
沿岸漁業改善資金貸付金
262,256
398,580
65.7
内訳
設備資金貸付・設備貸与
高度化資金
災害援護資金貸付金
母子・寡婦福祉資金貸付金
(注)特別会計繰越金+貸付金残高
表 4-3 基金の資金残高と貸付金利用率(平成 17 年度末時点)
(単位:千円、%)
貸付金・預託金残高
産業振興貸付基金
土地基金
介護保険財政安定化基金
基金残高(注)
利用率
101,887
3,514,171
2.9
13,270,046
24,996,970
53.0
1,176,591
4,667,877
25.2
(注)貸付金残高を含む
315
農業改良資金貸付金、林業・木材産業改善資金貸付金の平成 17 年度末残高はいずれも
特別会計にプールされた資金の 50%以内に留まり、沿岸漁業改善資金貸付金についても
65.7%と十分に活用されている状況とはいえない。また、平成 17 年度の新規貸付額の特
別会計繰越残高に対する割合についてもそれぞれ 2%、12%、21%となっている。中小企
業支援資金貸付事業特別会計の利用率は 95%と高いが、特別会計の規模そのものが縮小
している。
さらに、基金の利用率を見ると、産業振興貸付基金残高については僅か 2.9%に留まっ
ており、平成 17 年度の新規貸付額はゼロである。
このような県貸付制度の利用度低下の要因として、県は概ねこれまでの景気の低迷、
それによる金利低下に伴う県の制度金融利率を利用することのメリットが薄れたことを
挙げる。
例えば金融機関の中小企業向け設備資金の貸付残高を見ると、全体的に設備資金に対
する需要は漸減傾向にあるが、中小企業専門金融機関が行っている貸付は平成 11 年度以
降大きな減少はなくほぼ横ばいで推移している2。この要因は主として金利の優位性が中
小企業専門金融機関に移ったことよると思われるが、それ以外にも県の貸付制度の低利
用度の要因が存在するものと推測される。
県の貸付制度の利用度が低いその他の要因としては、以下のようなものが考えられる。
・貸付制度自体の知名度が低い。
・事務手続きが煩雑である。
・民間金融機関からも借り入れられる。
一方、県側の事情として、十分な経験や知識を有する職員が少ないことを原因とし
て、貸付先の新規開拓が十分に行われていない。
・貸付先との回収交渉や抵当権実行、保証人への強制執行等が十分な時間が掛けられ
ないため消極的にならざるを得ない。
といった事情がある。
現に、今回対象とした貸付制度においても、積極的に新規貸付先を開拓する努力が行
われておらないばかりか、融資した後は殆ど放置されているといっても良いものが見ら
れた。
県の関与する貸付制度は、利ざやの獲得が第一の目的ではないことは言うまでもなく、
貸付制度を通じて、一定の政策目的を達成することである。県が最低限の「広告」を行
い、申し込みを待っているだけでは政策目的を達成することは困難であろう。また、融
資した後のフォローが十分になされないのであれば、制度の有効性が判断できないばか
りか、資金を使ったことについて県民に対する説明責任を果たしていないことになる。
2
「独立行政法人中小企業基盤整備機構(旧・中小企業総合事業団)の実施する高度化事業に関する会計
検査の結果について」(平成 18 年 9 月 会計検査院)8-9 頁より引用。なお、この報告書では中小企業専
門金融機関を、民間機関では信用金庫・信用組合、政府系機関では、商工組合中央金庫、中小企業金融公
庫、国民生活金融公庫としている。
316
県が政策目的を達成するために、現在の貸付制度が依然として有効であるかどうかを、
過去の成果を評価することにより見直し、より有効な貸付制度に改善していくことが必
要である。
そのような努力を行った後、利用見込みのない資金については他の有効活用方法を見
出す努力を行うべきである。
また、一旦特別会計や基金に国の資金を繰り入れた場合は、将来の貸付金の拡大の可
能性を懸念して、容易に返還に踏み切れないのが県の立場である。また、国の資金を受
け入れている場合は、合わせて繰入れている県の一般財源を一般会計に戻すことが制限
されている場合が多い。しかし、可能な限り資金を融通し有効活用するための努力は行
うべきである。
例えば、産業振興貸付基金は、国から資金の交付を受けた多くの地方公共団体におい
ても十分に活用されていない。このような場合は、地方公共団体が連携をとり、同趣旨
の他の有効な用途に資金を回せることについて国に働きかける等の努力が必要である。
さらに、土地基金についても、基金残高の適正性を再検討する必要がある。もともと
基金には効率的な運用が求められているが、現状では償還による積み立てが行われてい
るだけであり、
「公用若しくは公共用に供する土地又は公共の利益のために取得する必要
のある土地をあらかじめ取得する」という設置目的はすでに薄れているものと思われる。
土地基金条例第5条及び第7条では以下のように定められている。
土地基金条例(抜粋)
(繰替運用)
第5条
知事は、財政上必要があると認めるときは、確実な繰戻しの方法、期間及び利率を定めて、基金
に属する現金を歳計現金に繰り替えて運用することができる。
(処分)
第7条
基金は、知事が特に必要があると認める場合に限り、一般会計歳入歳出予算の定めるところによ
り、これを処分することができる。
県は将来の土地購入計画を踏まえたうえで必要な基金残高を見積もり、それ以外の金
額については別途有効に活用することを検討することが望まれる。
317
2
預託金の算定方法について
預託方式による貸付制度においては、金融機関等と県とがそれぞれ財源を負担し協力
して推進する事業であり、事業計画についての審査や回収管理等の一定の責任を分担す
る。
契約の文言では、「金融機関は県の預託金額の○倍を融資することができる」となって
いる場合もあるが、この場合も含めて通常は一定の割合で資金負担を行う。
今回、監査の対象となった預託金方式による貸付制度において、預託金の額の算定方
法を調査したところ、以下のような方式が見られた。
表 4-4 預託金の算定方式(平成 17 年度)
(単位:千円、%)
貸付金名
貸付残高(A) 預託額(B)
預託すべき残高の算定方法及びその根拠
リスク(注1)
(年度末残高+新規枠-年度中償還額)×
地方産業育成
資金貸付金
14,606,758
2,683,443
一定の係数
なし
繰上償還の対応なし
前年度末残高×一定の係数×負担割合。新
経営安定資金
貸付金
31,798,242
7,212,300
規貸付については、5回に分けて負担割合
あり
分を追加預託。
地域産業対策
資金貸付金
66,840
29,100
同上
あり
2,510
800
同上
あり
728,834
301,400
同上
あり
1,616,584
661,000
経営安定資金と同じ
あり
152,778
107,200
同上
あり
中心市街地活
性化対策資金
貸付金
中小企業関連
倒産防止資金
貸付金
中小企業設備
改善資金貸付
金
フロンティア
企業支援資金
貸付金(新技
術・新事業等展
開枠)
318
貸付金名
貸付残高(A) 預託額(B)
預託すべき残高の算定方法及びその根拠
リスク(注1)
フロンティア
企業支援資金
(店舗新展開
30,390
17,100
同上
あり
-
-
同上
あり
2,672
1,000
同上
あり
枠)
フロンティア
企業支援資金
貸付金(労働時
間短縮設備枠)
同和地区中小
企業振興資金
貸付金
中小企業緊急
経営支援資金
前年度末残高×一定の係数×負担割合。新
19,366,275
11,308,000
貸付金
規貸付については、5 回に分けて負担割合
あり
分を追加預託。
中小企業創業
支援資金貸付
経営安定資金と同じ
あり
93,300
同上
あり
310,040
57,200
新規実行額×融資期間÷12×負担割合
あり
17,623,860
5,829,200
経営安定資金と同じ
あり
583,901
179,000
同上
あり
57,952,545
21,099,800
同上
あり
838,822
232,500
126,498
金
中小企業金融
円滑化対策資
金貸付金
売掛債権活用
資金貸付金
セーフティネ
ット資金貸付
金(経営支援
枠)
セーフティネ
ット資金貸付
金(連鎖倒産防
止枠)
セーフティネ
ット資金貸付
金(企業再生枠)
319
貸付金名
貸付残高(A) 預託額(B)
預託すべき残高の算定方法及びその根拠
リスク(注1)
商店街緊急支
援資金貸付金
58,944
33,400
同上
あり
11,973,997
4,085,200
同上
あり
平 成 16 年 大 規
模災害対策資
金貸付金
年度中随時、立地計画認定及び貸付決定通
知ごとにその額を預託(貸付額は預託額の
企業立地促進
資金貸付金
218,638
(注2)101,887
3倍以上)。償還は4月(最終年度のみ)と
なし
9月。随時繰上償還可能、その都度預託金
償還。担保・保証人は金融機関が設定。
従来からの経緯に基づく定額。H14に現在
の金額に変更。6月に労働金庫に一括預託
勤労者生活安
定資金貸付金
26,919
50,000
し、それ以外の追加や繰上償還なし。年度
なし
末に全額引上。契約書文言等は貸付となっ
ているが実態は預託である。
4/1前年度末貨付残高で預託。あとは四半期
ごとの貸付実績により預託。年度末に全額
育児、介護休業
等貸付金
15,536
8,635
引上。日本労働信用基金協会等の債務保証
なし
(保証料は労働金庫負担)があり県に貸倒
リスクなし。
「新潟県住宅新築資金等貸付要綱」に基づ
く毎年度の金融機関との協議(県2:銀行
33)
預託期間は銀行との契約に基づき4月1日
地域改善対策
貸付金
31,245
1,864
から3月31日まで。前年度末残高に2/35を
あり
乗じた金額を預託する。1年毎に返済する
ために、期中の償還等は考慮しない。制度
自体は廃止されたので、新規はない。県は
実質的なリスクを負う。
観光施設改善
資金貸付金
(前年度3月1日貸付残高+当年度3月1
16,617
7,380
なし
日予定残高)÷2×負担割合
320
貸付金名
貸付残高
預託額
人工降雪機整
備資金貸付金
預託すべき残高の算定方法及びその根拠
リスク(注1)
(前年度3月1日貸付残高+当年度3月1
なし
34,224
17,360
832
6,098
前年度末残高×1/2(覚書)
なし
311,153
201,432
前年度末残高×1/2(覚書)
なし
日予定残高)÷2×負担割合
新潟県環境保
全資金貸付金
廃棄物処理施
設等整備資金
貸付金
「新潟県福祉の街づくり施設整備資金融資
要綱」に基づく毎年度の金融機関との契約
福祉のまちづ
による。預託金残高は契約により協調倍率
くり条例適合
8,225
1,849
なし
が細かく決まっている。4、5、7、9、
施設融資
11、1月末日及び3月15日に預託金の再計
算を行う。
県は融資機関が貸付ける極度額の1/8を負
農業経営改善
担。しかし、貸付金は枠として捉えられて
促進資金貸付
197,000
35,075
なし
おり、県は実際の貸付状況を把握していな
金
い。
漁業振興資金
貸付金
予算額をそのまま執行している。本来は、
85,500
88,400
318,450
320,760
159,104,829
54,771,683
なし
県は1/2.5でよいはず。
木材産業等高
予算額をそのまま執行している。本来は、
度化推進資金
なし
県は1/4又は1/3でよいはず。
貸付金
合 計
(注1)最終的な利用者が延滞した場合に、県が損失補償する等財政負担のリスクがあるかどうか。
(注2)この預託金は年度末に返済されないため、平成 17 年度末残高を記入している。
(注3)貸付残高の表記については表 4-1 と同じ。
(1)定額を預託する取り決めとなっているもの
以下の貸付金については、従来のいきさつから県が定額を預託するものとなっている。
しかし、貸付の利用そのものが低迷しているため、預託金の残高が過大となっており、
貸付金残高が貸付可能額を大幅に下回る結果となっている。
321
表 4-5 勤労者生活安定資金貸付金残高及び預託額(平成 17 年度)
(単位:千円、%)
貸付金残高
勤労者生活安定資金貸付金
預託額
26,919
50,000
貸付可能額
100,000
利用率
26.9
(2)資金負担割合が取り決め等と異なるもの
漁業振興資金貸付金と木材産業等高度化推進資金貸付金については、県の預託金残高
よりも融資残高が少ない。これは、県は預託金として承認された予算額をそのまま預託
したためである。しかし、貸付要綱では預託金に関する資金負担割合がそれぞれ県と金
融機関が1対 1.5、1対2或いは1対3とされており、県の預託金残高が過大となってい
る。
(3)新規貸付金に対する増額を要求されるが、償還は加味されないもの
制度融資における預託金の残高は、前年度末残高に 0.9 を乗じて算出する。これは、
通常の融資期間が5年のため、当該年度の平均融資残高に近似させたものといえる。こ
の算式は初年度では概ね妥当であるが、その後においては預託金は過大となる可能性が
ある。
さらに、それ以外の預託金の残高は、期首残高を基礎に算出されており、月賦で償還
される条件となっている場合であっても約定返済のみならず、繰上げ償還も加味されて
いないことが多い。その場合、新規分は追加で預託金を請求されるが、その際に既存の
貸付金の残高の減少も考慮されていない。
監査対象とした貸付制度は多様な政策目的を達成するための手段であり、その政策目
的によって適切な預託金の算定方式も異なっているものと思われる。また事務処理の煩
雑さを考慮することも必要であろう。
しかし、不必要な資金を外部に無利子で寝かせておくことは、県にとってリスクはな
くても機会費用が発生するばかりか、他の用途における有効活用を阻害することにもな
りかねない。従って、超短期の貸付金以外は、少なくとも四半期程度の貸付実績に応じ
た預託金の調整を行うことが合理的である。また、要綱等で繰上償還に伴い預託金の返
還を請求できる場合は、すみやかに資金を回収するとともに、期間の徒過がないよう厳
密に金融機関に対応することが望まれる。
県は不必要な預託が県民にとってマイナスの経済効果をもたらすものとの認識を全庁
的に共有するとともに、現在の預託金額の算定方法が各制度の趣旨に沿って最適なもの
なのかどうか、必要十分な預託が行われるようになっているのかどうかを見直すことが
望まれる。
322
3
違約金の調定について
違約金(遅延損害金)とは、契約者が契約期間内に契約を履行しない場合に、契約に
定めるところにより、支払われる金銭のことである。違約金の調定時期は、その原因発
生の都度とされているが、各貸付制度における違約金の調定時期はさまざまである。
今回監査の対象とした貸付制度における違約金の調定時期は以下のとおりである。
表 4-6 違約金の調定時期等
(単位:千円)
貸付金名
貸付残高
未収違約金
違約金の調定時期
延滞元利金がすべて納入された時点(残高があ
っても延滞がなくなった)で、返済期日から元
中小企業高度
A
化事業貸付金
17,606,939
91,689
本返済が実現した日までの違約金を計上。但し、
一定の要件を充たす場合は、一部又は全部につ
いて徴収しない(調定しない)ことがある。
中小企業近代
B
化資金
31,427
19,921
12,878
933
Aと同じ。但し、利息なし。
中小企業合理
C
化資金貸付金
Aと同じ。
(S58廃止)
返還すべき日の翌日から返還の日までの日数に
介護福祉士等
応じ、返還すべき額に年14.5%の割合を乗じて
D
修学資金貸付
107,508
-
計算。しかし、これまで違約金を課したことは
金
ない。
返還すべき日の翌日から返還の日までの日数に
看護職員修学
E
資金貸付金
応じ、返還すべき額に年14.5%の割合を乗じて
782,933
-
計算。
しかし、これまで違約金を課したことはない。
延納した場合は、条例・事務処理要綱に従い、
財政安定化基
F
金貸付金
延納元利金につき、延納日数に応じ、年14.6%
1,176,591
-
の割合で計算した額。これまで延滞は発生して
いない。
323
貸付金名
貸付残高
未収違約金
違約金の調定時期
返還すべき日の翌日から返還の日までの期間の
理学療法士等
日数に応じ、返還すべき額に年14.5%の割合を
G
修学資金貸付
-
1,440
乗じて計算。
金
延滞はない。
元利金が納入された場合に、その額について契
母子・寡婦福祉
H
資金貸付金
1,019,677
18,066
約上の返済期日から実際の返済日までの違約金
を計上。
賦払金額の一部でも入金があれば、賦払金のう
農業改良資金
I
貸付金
425,383
-
ち延滞分全額につき入金日までの違約金を計
上。
林業・木材産業
J
改善資金貸付
226,471
2,220
同上
262,256
-
同上
金
沿岸漁業改善
K
資金貸付金
(注)貸付残高・未収違約金とも平成 17 年度末残高。未収違約金は調定済未納額。
(1)調定時期及び金額
調定時期については、賦払金額がすべて入金された時点でその賦払金に係る延滞日数
について調定を行っているケース(H)、賦払金額の一部でも入金があれば賦払金額のう
ち延滞額に係る延滞日数について調定を行っているケース(I、J、K)、延滞している
元本及び利息がすべて返済となり延滞が解消した時期に一括して行うケース(A、B、
C)の3つが見られた。
(2)違約金の対象日数
違約金の対象日数としては、当初契約上の返済期日から実際の返済日までの日数を計
算しており、この点は一致していた。
(3)違約金の調定手続
違約金の取り決めはあるものの、これまで全く調定してこなかった貸付制度があった
(D、E)。違約金の調定額は、取り決めに従って計算された違約金について、担当部署
が貸付金要領等に基づく徴収の有無及び徴収額を関係機関との協議を経て決定すること
324
により調定額を定めている場合もあれば、滞納の理由や債務者の状況等に応じて担当部
署で調定額を定めている場合もある。
上記のように、違約金の調定時期及び調定の有無については担当部署により異なる取
扱を行っている。契約に従って潜在的に発生している違約金請求権も、調定されるまで
はオフバランスであり、何らの開示の対象ともならない。違約金については貸付要領上、
担当部署に実質的に徴収するか否かの判断が委ねられているが、一旦収入未済に計上す
ると、その後の不納欠損処理に議会承認を必要とするなど厳格な手続が必要になること
を考えると、担当部署における判断は慎重且つ全庁的に首尾一貫したものである必要が
あるといえる。
本来、制度の性質に応じた特有の取扱を除けば、これらが不統一な方法で調定される
のは、公平性を欠くことになりかねず望ましいことではない。このような判断が県とし
て首尾一貫してなされ、その結果に係る情報が県庁内で共有されてきたかどうかについ
ては疑わしい。
県は、今後、違約金の算定や徴収について、債権の類型別等に指針を定めることによ
り、債権管理の強化に努める必要がある。
また、発生した違約金(調定済未納額及び契約等に従い発生しているが調定未了のも
のを含む)については、当事者間では認識されている場合であっても、元利金が納入さ
れるまで貸付金台帳に記録されず、県民に何ら情報開示されていない。これらについて
の情報開示のあり方については検討がなされ、違約金がいくら発生したのか、うち調定
された額はいくらか、さらにそのうち入金された額はいくらか等の情報を開示すること
を検討することが望ましい。
325
4
震災復興支援制度について
今回監査対象とした部局を中心に、財団法人
新潟県中越大震災復興基金の事業(以
下、「基金事業」という。)以外に、震災復興関係の支援制度を調査したところ、以下の
ような制度が存在することが分かった。
表 4-7 県の震災復興関係の支援制度
所管課
建築住
宅課
商業振
興課
労政雇
用課
貸付金名
A 災害被
災者住宅
再建資金
貸付金
B 平 成 16
年大規模
災害対策
資金(地震
対応枠)
C 勤労者
生活安定
資金貸付
金
制度の趣旨
新潟県中越大震災で被
災され、住宅金融公庫若
しくは民間金融機関の
融資を利用して住宅を
再建する方に対し、住宅
の建設・購入については
1,100万円、補修につい
ては590万円を超える貸
付部分について県が金
融機関に資金を預託し
て行う協調融資の方法
により低利の上乗せ融
資を行うもの
新潟県中越大震災によ
り被災した県内中小企
業者が取り扱い金融機
関から事業活動に必要
な資金の融資を受ける
際の負担を軽減し、もっ
てその経営の安定を図
ることを目的する貸付
制度。
新潟県と県労働金庫が
新潟県中越大震災で被
災した人々に生活に関
する資金を融資する制
度
(H18年度で終了)
金額
貸付金
(建設・購入)
500 ~ 8,000 千
円
期間
25年
以内
利率
H16
671
H17
5,934
H16
6,379
H17
4,972
1.9%
H16
1.7
1.8%
H17
2.2
1.3%
(H18.8)
(補修)500~
4,000千円
70,000千円
(特認200,000
千円)
10年
以内
5年
100 千 円 ~
1,000千円以内
以内
7年
以内
326
実績(百万円)
1.7%
表 4-8
表 4-7 の県制度と関係のある基金事業
関係する
基金事業
対象者
期間
対象融資額
県制度
以下の要件をすべて充たす方
・新潟県中越大震災により自ら居住していた
年収 8 百万円以
住宅(宅地を含む)に被害を受けた方で、県
D 被災者住宅
下の場合 1.9%
内において自らの居住を建設、購入又は補修
復興資金利子
5 年間
する方
補給
A
年収 8 百万円超
・市町村からり災証明の交付を受けている方
の場合 1.0%
・平成 20 年 3 月 31 日までに金融機関等と金
銭消費貸借契約を締結した方
0.4%
但し、事業用建
E 平成 16 年大
規模災害対策
資金特別利子
物が全半壊し
・県制度融資の平成 16 年大規模災害対策資
金(地震対応枠)融資を受けた中小企業者
5 年間
補給
た 方 0.4 % +
B
1.3%(1.3%に
ついては融資
額 7 千万円まで
の部分に限る)
このうち、Aは、基金事業D「被災者住宅復興資金利子補給」が利用できる民間金融
機関等の住宅ローンの融資額(建設・購入の場合 11,000 千円、補修の場合 5,900 千円)
を超えて借入を行った者に低利融資を行う制度である。
また、Bの貸付制度については、基金事業E「平成 16 年大規模災害対策資金特別利子
補給」が利用でき、さらに低利子で被災者が再建に取り組むことができる手当てがなさ
れている。
Cは、県と県労働金庫との協調による貸付制度であるが、殆ど利用されていない。こ
れについては、基金事業としては利子補給等の支援メニューは持っていない。
なお、震災復興事業ではない建築住宅課の「克雪すまいづくり支援事業」は、基金事
業である「雪国住まいづくり支援」事業とほぼ同じ事業であるが、利用者にとっては基
金事業のほうが有利であるため、建築住宅課では、被災者から問い合わせのあった際は、
基金事業の利用を勧めるなど連携を図っているとのことである(基金事業「雪国住まい
づくり」事業については第3章【県民生活・環境部】〔一般会計〕4
復興基金貸付金参照)。
327
新潟県中越大震災
表 4-9 克雪すまいづくり支援事業
貸付金名
制度の趣旨
多雪地域における克雪住宅
克 雪 す ま い の集団的整備を促進し、特
づ く り 支 援 に無雪化推進のため融雪住
宅への誘導を図り、誰もが
事業
(補助事業) 安心して暮らせる地域づく
りを進める
金額
期間
利率
補助金(県単)
融雪式440千円
その他330千円
-
-
(国交付金事業)
597千円
-
-
実績(百万円)
H16
112
H17
99
H16
1
H17
1
ところで、利用者がBと基金事業Eの利子補給制度を併用しようとする場合、Bにつ
いては貸付審査が必要なため金融機関が窓口となっているが、Eについては市町村が窓
口となっている。利用者がこれらの制度を同時に利用するためには、別の窓口で手続を
行う必要があり、ワンストップサービスを受けられる仕組みとはなっていない。但し、
情報の一元化はなるべく図っているとのことである。また、Aと基金事業Dの被災者住
宅復興資金利子補給は、県及び基金がそれぞれの政策判断により創設した制度であるた
め、併せて利用する場合は別の窓口で手続を行う必要がある。さらに、AとCの手続は、
金融機関が受付の窓口とはなっているものの、利用できる金融機関は必ずしも一本化さ
れていない現状にある。
BとEとのワンストップサービス化については、県は必ずしも利便性の向上につなが
らないと考えている。これらについては、市町村が行った利子補給額と二重給付でない
ことの確認等が必要であり、市町村受付のほうが事務処理が早いこと、金融機関を窓口
として一本化し市町村が確認を行う場合は金融機関に過大な負担を生じさせる等の理由
を挙げる。
以上のように、震災復興支援制度は基金事業以外にも3制度あり、それらの窓口は、
必ずしも一本化されておらず、潜在的な利用者のための利便性はあまり配慮されていな
いのが現実といえる。県としては、利用度の低い支援制度は廃止・統合等を行い、震災
復興期間においては利用者が一つの窓口を訪問すればすべての仕組みが分かるようにす
るなど、利用者にとってより分かりやすい制度作りを行うことが望まれる。さらに、関
連する制度を同時に利用する場合については、一つの窓口ですべての手続が完了できる
ワンストップサービス化についても引き続き検討することが望まれる。
328
5
貸付金の開示方法について
「第2章
2(2)全国比較」で記載したように、県においては一般会計と特別会計
(公営企業を含む)・財政援助団体との間で貸借が多く行われている。
平成 17 年度の一般会計と公営事業会計間の貸付金は表 4-10 のとおりである。
表 4-10 一般会計・公営企業会計間の貸借(注)
(単位:千円)
貸手側の年度
貸
借手
期間
手
一
般
会
計
借手側の年度
金額
開始年度
終了年度
開始年度
終了年度
病 院 事
H17.4.22-H18.4.21
4,000,000
H17 年度
H17 年度
H17 年度
H18 年度
業 会 計
H17.12.9-H18.4.21
1,000,000
H17 年度
H17 年度
H17 年度
H18 年度
工 業 用
H17.4.21-H18.4.21
20,579,817
H17 年度
H17 年度
H17 年度
H18 年度
H18.3.31-H18.4.21
2,909,111
H17 年度
H17 年度
H17 年度
H18 年度
H17.5.31-H18.5.31
6,100,000
H17 年度
H17 年度
H17 年度
H18 年度
H17.4.1-H17.5.31
5,000,000
H17 年度
H17 年度
H17 年度
H17 年度
H17.9.21-H17.11.4
5,000,000
H17 年度
H17 年度
H17 年度
H17 年度
H17.12.20-H18.3.31
5,000,000
H17 年度
H17 年度
H17 年度
H17 年度
地 造 成
事 業 会
計
新 潟 東
港 臨 海
用 地 造
成 事 業
会 計
電
気
一
般
会
計
事
病 院 事
H17.12.28-H18.3.22
1,000,000
H17 年度
H17 年度
H17 年度
H17 年度
業
業 会 計
H18.1.10-H18.3.22
500,000
H17 年度
H17 年度
H17 年度
H17 年度
会
工 業 用
H18.3.31-H23.3.31
252,483
H17 年度
H22 年度
H17 年度
H22 年度
計
地 造 成
H17 年度
H17 年度
H17 年度
H17 年度
事 業 会
H17.4.21-H18.3.31
(変動)
計
(注)このうち、一般会計から公営企業に対する貸付について監査対象としている。
は、一般会計では年度内貸付の扱いとなっているが、実際には期を跨る貸付金である。
なお、一時借入金限度額は、以下のように設定されている。
329
表 4-11 一時借入金限度額
(単位:百万円)
新潟東港臨海用地造成
一般会計
病院事業会計
工業用地造成事業会計
事業会計
H17
H18
H17
H18
10,000
10,000
H17
H18
H17
H18
限
度
250,000
250,000
5,000
6,000
7,100
6,800
額
表 4-12 財政援助団体との1年以内貸借(監査対象としたもの)
(単位:千円)
貸
貸手側の年度
借手
期間
借手側の年度
金額
手
開始年度
終了年度
開始年度
終了年度
一般会計
新潟県土地
開発公社(注 1)
H17.4.1-H18.3.31
3,438,313
H17 年度
H17 年度
H17 年度
H18 年度
H17.4.1-H18.3.31
1,000,000
H17 年度
H17 年度
H17 年度
H17 年度
株式会社
新潟ふるさと村
(注1)新潟中条中核工業団地貸付金
(注2)以上の2つは監査対象としている。
は、一般会計では年度内貸付の扱いとなっているが、実際
には期を跨る貸付金である。株式会社新潟ふるさと村は、年度末に民間金融機関より借入を行い、
同日県に返済、翌年度当初に県より貸付を受けて民間金融機関へ返済しているため、貸手側・借
手側とも同一年度内の貸借になっている。
なお、一般会計と特別会計(公営企業を除く)との間の貸借は、平成 17 年度では、県
有林事業特別会計との間で行われた1件(28 百万円)のみであるが、これは運転資金で、
同一年度内の収入で全額返済しており、年度を跨った貸付ではない。
平成 18 年、北海道夕張市において会計間の一時借入により赤字が表面化しないように
してきたことが明るみに出、財政再建団体を申請することが議決された。これを契機に
行われた北海道庁による調査によれば、道内の市町村には、当該年度一般会計からの貸
付金を元に、当該年度特別会計が前年度一般会計に償還するといった年度を跨る貸付・
償還が行われていることが判明した。この手法は結果として特別会計における実質的な
赤字を見えなくすることから、北海道としては改善が必要である旨助言を行ったことが
報道されている。
一般的に期間1年以内の貸付金は、県にとっては貸付先の状況に関係なく、年度内に
一旦資金を回収することができるため、貸倒リスクの軽減を図る等のメリットがあると
されている。しかし、県で行われている上述の短期貸付は、会計間及び財政援助団体と
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の間の貸借であり、実質的にはそのようなメリットはないばかりか、長期貸付金化して
いる実態を見えにくくしている。県民に対して県の各会計の財政状態を正確に伝えるた
めには、長期貸付金の実態を有するものについてはそのような開示を行う必要がある。
さらに、そのような貸付金が一般会計等の貸手側の財政運営の弾力性を失わせる結果に
なっていることから、これらを今後どのように解消していくのか検討することが望まれ
る。
以上
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