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SIについて
SI 単位系
てんそる
平成 28 年 2 月 5 日
1
SI とは
1789年に勃発したフランス革命以前ヨーロッパの度量衡は国王の身体の部分の寸法
に基づいたものが採用されていたが、フランス革命により王を失ったフランスにとって、
単位の設定方法は必然的に新しい方法を必要としたが、それは革命の求める合理性や普遍
性といったものから王のような特定の存在に依存しない、誰しもにとって普遍的な単位で
あることを目指し、一新されることとなった。
その結果有名なメートル法が完成した。メートル法は当時にしては極めて画期的で地球の
極から赤道までの距離を1000万分の1したものとなった。
この1000万というのもメートル法のこだわりで、メートル法はどこまでも十進法にこ
だわり、10倍の繰り返しや10分の1のくりかえしで基本単位を構成するということに
こだわった。
しかし10という数字は3で割れないことなど、必ずしもいい性質を有しているわけでは
なく、角度の単位グラードなどは普及せず廃れることになったり、水の単位体積あたりの
質量を基準とした重さの単位を作ろうとしたら1立方メートルでは大きすぎて日常的な単
位には使い勝手が悪く、一辺の長さを変更する時に10進法にこだわったために体積は1
000分の1ずつされるという、調整の悪さもあって、一辺10 cm では一リットルとな
るが、ここに入る水の質量は当時の質量の単位としては重いとみなされたが、さらに10
00分の1したら今度は軽すぎるという話になって、軽すぎる1立方センチメートルの水
の質量をグラム、1リットルの水の質量をキログラムにするという後味の悪い単位となっ
た。
しかし、時間の単位秒については旧来の考え方に基づいた単位で変更されなかった。
なぜかそれゆえ時間については12進法が維持されたのである。
その結果、メートル、キログラム、秒を基本とする単位が揃った。
全ての物理法則がこれらの単位に基づいて作られたわけではないが、物理法則を応用する
際にはこのような単位で得られた数値同士を結びつけるものとして考えるのが普通である。
1
それゆえに、これらの単位に基づいて物理法則が発見されたり、発見された法則に基づい
て新しい概念が登場する度に、つじつまが合うように単位を決定し、作ってきた。
たとえば、「力」という物理量があるが力は運動の第二法則によって質量と加速度の積に
比例するわけだが、比例するという以前にまだ力の単位を作っていないので決めなくては
いけない。
このとき、比例する係数は1として定めることで、新しい単位ニュートンが作られる。
つまり、1キログラムの物体を1メートル毎秒二乗の加速度で加速させる力を「1 ニュー
トン」とする、というように定義する。
物理法則はこのように時として新しい単位を生成する。したがって、われわれはそのよう
な一連の単位を「単位系」とよぶ。
SI とはメートル法を土台にして、実用上の利便性などを元に、7つの基本単位を構成して
それにもとづいて単位を構成したものである。
2
単位の定義の変更とその必要性
メートル法に基づいて単位が制定され、それに基づいて様々な道具が作られて、それに
基づいて技術革新が続いたが、実は単位の定義はこれによっていくどとなく変更されてき
た。その変更は当初は実質的な変化を伴い、「微妙に違う別の単位」の導入を伴うもので
あったが、ベースとしてはそれ以前の単位をできる限り維持しつつ、論理矛盾の解消や、
より精密で曖昧さの少ない単位を目指した変更が原則であった。
SI では自然定数にさまざまなものを押し付ける形で整備されているため、同じ量をあらわ
す別の単位の導入の必要性はなくなったといえるが、しかし再現性あるいは曖昧さ、技術
発展の不均衡などによる時代に伴う諸々の変化にたいおうして定義の変更を必要とするこ
とは往々にして生じうる。
3
現行 SI 定義について
現行 SI が定義されたのは小幅な修正を除けば 1960 年である。したがって、現行の単位
はこのときに制定された単位に基づいて議論されている。
時間 現行の SI では時間については自然現象依存である。といっても、地球や太陽といっ
た規模のものではなく、セシウム原子の放射する光の振動をみて、その振動回数があらか
じめ決められた回数になるまでの時間、ということで、たとえていうならば所定のルール
2
に基づいて作られたメトロノーム 1 をみて、それが10回振動したら1秒としよう、など
というような感じだ。もちろん「不整脈」ではないがそのような現象を起こしていたら終
わりだが、それらは他の定義や由来になった定義などに基づいてある程度の範囲ではそう
いうことはない、ということで選ばれた定義である。ただしもちろんながら誤差は存在し
ており、たとえば原子は運動があって、そのためにドップラー効果なども誤差要因になる。
誤差が少なくすることは非常に重要だが、現行ではこの定義が採用されており、今後新し
く定義しなおす場合には現行定義の範囲で想定される誤差の範囲内で一致するように定義
されることが見込まれ、「新秒」などを必要としないようになると考えられる。
長さ SI 単位系では相対性理論に置ける「光速度一定原理」は正しいものとし 2 、相対性
理論で要求されるローレンツ変換などで現れる c の定数性をもとに、秒と対応付けて定
義している。すなわち、1/299792458 秒間計りとり、その間に真空中を光が進んだ距離を
「メートル」として定義する。今までの古い定義でも1メートルは定義されていたわけだ
が誤差が存在していた。この誤差の範囲でこの数値を選定すれば正しいことが実験結果と
して得られたことから時間をベースにした定義に改められた。現行定義では光速度の数値
がこのようにして確定しているため、1メートルの「曖昧さ」は1秒の曖昧さに依存する。
光速度を定数として秒依存の単位となったため、長さは「時間に従属した」単位である。
すなわち
dx = c × dt
という関係性を用いて長さに持っていく。このときの c に 299792458 を採用する。
質量 現行定義では国際キログラム原器とよばれるものの質量を1キログラムとしてい
る。国際キログラム原器は表面の劣化や洗浄といった操作のために実際には経年変化が存
在し、それに伴う「誤差」が存在する。したがって、その誤差の範囲でキログラムの定義
は曖昧さが存在している。わかりやすい定義だが、実は存在する曖昧さを是正するため、
定義は変更予定である。現行では、このように自然法則と曖昧さのない数値によるもので
はなく、現象ないし外部から与えたもので、「秒とは独立した」単位である。
電流 現行の定義では電流は平行電流に対する力の法則とそこに付随される定数「真空の
透磁率」µ0 の値を決定づける形で定義される。すなわち、
「1 A なる電流を1メートル離
−7
れた間で平行に電流を流すと真空の透磁率が 4π × 10 になる」ように電流を計りとれ、
というものである。この法則は電流依存性が明示されているので任意の電流について定義
1
2
人工物依存ではない点は注意するべきだが
実際古い定義で光速度を定義した場合に既に確認されている。
3
を与えることができる。ただし、この文を読んで「という」という表現からも分かるよう
に、電流の「正体」はブラックボックスなものとして考えている。後述する 2018 年の定
義変更によって自然定数の値が変化し、「単位の変更」というかたちになることが予定さ
れている。ただし実用上はまったく変更を受けないと推定される。
すなわち、
µ0 I1 I2
4π r2
を用いて、µ0 の値を定めることで決定する。ただし F はニュートンを採用するため時間
と質量の二つに依存した単位である。
F =
温度 そもそもの問題として、温度をどう定義するかということをちゃんと考えないとい
けない。純熱力学的には温度を定義する際、熱力学第二法則を反映して理論で定義される。
それに準拠した形で温度の単位を設定するのが現行の SI での定義法であり、実際には二
温度熱機関の理論最高熱効率はその熱浴の温度によって記述されることが熱力学によって
知られている。理論最高熱効率を「実測」するのは必ずしも容易ではないが、原則として
これが温度を理論から実際に対応付けをさせる。このとき、基準となる熱浴について対応
する温度の数値を与えれば、他の任意の温度も、理論最高熱効率と同等のものを実測でき
さえすれば、一応、任意の温度に一つの数値づけができる。つまり、
η =1−
TL
TH
をもちいて、水の三重点について温度を 273.16 という数値をあたえておき、いずれかを高
温熱浴ないし低温熱浴に採用する。これがケルビンという温度の定義になる。もちろん、
他の数値を与えるという考え方もあり、それによって別の単位を生成することもできる。
物質量 その名のとおり物質の量を表す。どういうことかというと、原子や分子が何個あ
るか、という数値をちゃんと測ることは難しいわけですが、それと比例した数値を使うと
便利なことが多い。たとえていうなら「ダース」ないし「グロス」という単位あるいは一
定数を入れておくというルールを作った上で「一箱」みたいにして「束を作る」これをや
たらと大きな数だけ集めて、原子量ないし、分子量がそのまま g(グラム)になるだけの
「束」をつくるものを「モル」というように定義する。厳密な定義は 12C を選定して与え
る。この単位は物理理論の知識が必要というほどのものではなく、高校でも学ぶとおりで
たいしたものではない。
ただし、グラムが現れるため、「質量依存」である。
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光度 心理物理量である「光度」についても数値を与える手法としてカンデラなる単位が
定義されている。ただし私の専門ではないためこれについては差し控える。
4
2018 年 SI 改訂について
国際キログラム原器の廃止が今回の改定の最大のポイントである。と同時に、理論上現
れる、単位に依存した自然定数にたいして、逆に単位の大きさを決定づけるために定数の
値を定めるという方式を徹底している。
4.1
概要
旧 SI と比較して理論への信頼がより強固になり、理論に現れる自然定数を利用した定
義に変更される。最大のポイントは国際キログラム原器の廃止だが、電流の定義が電流の
正体を不問にして力学的な性質から定義していたものが今回の再定義によって電子電荷を
基準にした、より微細構造に起因した定義へと変更され、ないし、温度についてもボルツ
マン定数を利用したものにした。化学系にとっては特に問題になるだろう点がアボガドロ
数を定義値にしてしまい、本来の物質量の定義に本質的な質量単位と原子質量単位を結び
つける役割を失う。
したがって、要点は、理論定数を定義値にすること、電流が定義変更されること、物質量
が本質的に意味を改めること、である。特に後者にいくほど定義変更の問題点が大きいた
め、実際の改定時にはいくらか変更がなされる可能性もある。
4.2
定義の変更
新しい SI の定義では基本的には「秒依存」へ一元化する。
すなわち、国際キログラム原器に依存する、質量依存性を基本的な法則を用いて改善する。
具体的には、距離と時間とを光速度によって対応付ける
dx = cdt
によって長さを時間に結びつけさせ、エネルギーと質量の対応公式であるアインシュタイ
ンの式と光子が振動数にたいして持つエネルギーの関係式を連立させた
mc2 = E = hν
によって h(プランク定数)を介してキログラムを定義する方法へと移行する。
これが出きるのは、もちろんの前提として相対論ないし量子論における c と h の意義が曖
昧さなしに与えられると同時に、現行の定義すなわち国際キログラム原器の質量誤差が h
を同定する際の誤差の主因になるといった事情に基づいている。
それだけに止まらず、アンペアの定義で物理定数の値を定めて定義に採用していたが、よ
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り正確な値を実測可能にするために、電気素量の値を参照する方式に変更する。
今までの手法では真空の透磁率を与えており、採用する定数を変更することに伴い、のち
の測定で理論上「ズレた」単位に移行されることになりうるが、電気素量は電子の持つ電
荷であり、電荷の運動として電流を定義されるため、運動はすなわち幾何的な配置とその
時間変化をもって、それは長さと時間の情報を与えることで決定できるものであるから、
SI としては時間単位依存に一元化されている。
温度は理想気体の特性ないし統計力学的な温度との対応をとって、熱力学法則を用いて他
の系へ拡張する理論構造を生かし、ボルツマン定数の値を選定することとなった。
物質量はもともとの定義上、一定数をたばねたものであるから、実際に何個束ねているの
かがわかればじゅうぶんであり、その束ねた数「アボガドロ数」を最初から与えてしまう。
ここで注意が必要で、質量原器を廃止して物理定数を与えたことで質量を再定義したこと
で、質量は時間の単位の定義に依存する曖昧さを除いて一定値になってしまう。したがっ
て、質量の誤差は極めて小さくなる。一方でアボガドロ数は原子ないし分子の質量から質
量単位キログラムへ移行するだけの個数であるから、単位としては「質量依存」であった。
したがって、「アボガドロ数をあらかじめ与えてしまう」というのは「原子質量単位から
キログラムを定義する」ことになりうる。ここで問題が生じる。アボガドロ数の値のとり
かた次第ではこの手法に基づくキログラムの定義ともともとのキログラムの定義が「不一
致」となる可能性がある。
すなわち、理論としては、c、h、NA を同時に任意定数として与えることはできないので
ある。
しかし2018年改正ではアボガドロ数にたいして、それが今までどおりの、原子質量単
位と質量単位を結びつけるという定義を廃することになっている。これは改正時ないし改
正後の再改正の火種になる可能性が高いだろう。
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CGS 単位系
長さをセンチメートル、質量をグラム、時間を秒を単位とした単位系で、歴史的には長
く使われてきた単位系だが、電磁気を対応する際に、電磁気学の中に現れる自然定数は同
じ単位に依存する量でも多数存在し、それらの定数を極力1に揃えるなどしても全部を揃
えることはできないことや、選び方の多くが実用性に乏しいことなどからさまざまな定数
の選び方の流儀が生まれ、CGS から MKS に変更された時はそれは「SI への統一」であっ
たため、CGS 単位では複雑な電磁気単位の多数の流儀が利用されたが、MKS ではそれら
の多数の選び方の流儀はあまり普及せず、SI で採用された MKSA 型の流儀のみが普及し
た。
したがって、CGS では多数の電磁気単位を知っておくことが求められうる。
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5.1
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CGS の多数の電磁気単位
非 SI 単位
歴史的な理由を遡れば分かるように、SI 単位はフランス革命に源流を持つ。しかし人類
文明はそれ以前から「単位」を持っているため、SI でない単位は他にも実在し、それらは
完全消滅することなしに続いているが、多くは SI 単位と定数で結びつけられてしまってお
り、歴史慣習上の名前を冠しただけで、本来の意味をいくらか失ってしまった単位である。
6.1
尺貫法
日本の伝統的な単位である。日本の計量法では取引ないし証明では使用が禁止されてい
るが、慣習的に維持されている部門も存在する。
長さ まず「尺」という単位が原則で、これは歴史的には手を広げたときの親指の頭と中
指の頭の長さに由来するようで、尺という漢字の形がそれを意味しているらしい。
ただし、この定義は曖昧で、「公定尺」が定義されたものの、これも歴史的に継続して長
くなっていったようである。
基本的には尺を基準にして長さの単位が次のように作られたようで
1 里 = 36 町、1 町 = 60 間、1 間 = 6 尺、1 丈 = 10 尺、1 尺 = 10 寸
という単位の系統になっている。
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