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(発電水力調査(流量資料整備に関する調査))

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(発電水力調査(流量資料整備に関する調査))
平成 25 年度
中小水力開発促進指導事業基礎調査
(発電水力調査(流量資料整備に関する調査))
報
告
書
平成 26 年 3 月
一般財団法人 新エネルギー財団
(経済産業省 資源エネルギー庁 委託調査)
目
第1章
調査概要
次
······················································· 1-1
1.1
調査目的
························································ 1-1
1.2
調査内容
························································· 1-2
1.3
調査期間
························································· 1-2
1.4
調査実施体制
第2章
···················································· 1-3
流量資料の整備期間と流量測定方法に関する調査、検討
2.1
概要
2.2
文献調査
2.3
流量資料の整備期間に関する調査、検討
·············· 2-1
····························································· 2-1
························································· 2-2
····························· 2-5
2.3.1 流量資料の整備期間についての規定に関する調査
·················· 2-5
2.3.2 流量資料の整備期間による経済性への影響に関する検討
2.4
流量測定方法に関する調査、検討
············ 2-9
··································· 2-30
2.4.1 流量測定方法についての規定に関する調査
························· 2-30
2.4.2 測定回数の合理化に関する検討 ····································· 2-36
第3章
流量算定方法に関する検討、調査
·································· 3-1
3.1
概要
····························································· 3-1
3.2
数値シミュレーションの適用に関する検討
··························· 3-2
3.2.1 検討方法························································· 3-2
3.2.2 数値シミュレーション及び発電電力量計算の結果
3.3
流量算定方法に関するその他の調査
··················· 3-6
································· 3-28
3.3.1 各種流量データの利用に関する調査 ································· 3-28
3.3.2 数値シミュレーション手法に関する情報収集
第4章
······················· 3-32
至近年の小水力発電計画の流量資料に関する事例調査
4.1
概要
4.2
事例調査
················ 4-1
····························································· 4-1
························································· 4-1
第1章
1.1
調査概要
調査目的
水力発電は、過去 100 年以上に亘って開発されてきた電源であり、現在では火力、原子
力発電に主役を交代したものの、依然として、発電設備(kW)の構成比率で約 2 割、発電
電力量(kWh)で約 1 割を担っている。非化石エネルギーである水力発電は、クリーンな純
国産エネルギーであり、地球温暖化やエネルギーセキュリティの観点から重要な電源であ
る。また、太陽光、風力など他の再生可能エネルギーと比較して、負荷追従性、系統安定
性において極めて優れた特性も有している。
平成 23 年 3 月に発生した東日本大震災および福島第一原子力発電所の事故を契機として、
我が国のエネルギー政策の見直しが行われる中で、再生可能エネルギーの位置付けはます
ます重要なものとなっている。水力発電は、安定的な優れたエネルギー電源として、引き
続き重要な役割を担うことが求められている。
このような状況下で水力開発の現状をみると、未開発水力地点はますます小規模、奥地
化しており、経済性、自然・社会環境の制約等の面で開発が困難化している状況にあるこ
とから、これらの課題を解決しながら水力開発を推進していくために、課題の一つに挙げ
られている流量資料の整備方法の簡素化を図っていく必要がある。
水力開発においては、これまで 10 年間分の流量資料を整備しているが、新たに流量測定
方法を簡素、合理化し、整備期間を短縮化、指定測水所以外の流量データを利用する、あ
るいは、実測により得られる流量データの一部を数値シミュレーションによって補完する
ことで実測期間の短縮化が可能となれば、流量測定や流量資料の整備の費用の削減、さら
には、水力開発工程の短縮、効率化を図ることが可能となる。本調査は、このような観点
から、流量資料の整備方法の簡素化を図り、水力発電の開発促進に資することを目的とし
て行った。
1-1
1.2
調査内容
調査内容は、以下に示すとおり。
(1)流量資料の整備期間と流量測定方法に関する調査、検討
(2)流量算定方法に関する検討、調査
(3)至近年の小水力発電計画の流量資料に関する事例調査
1.3
調査期間
調査期間は、表 1.3.1 に示すとおり。
表 1.3.1 調査期間
平成25年
(2013年)
項 目
4月
5月
6月
7月
平成26年
(2014年)
8月
9月
第1回
9/10
▼
10月
11月
12月
第2回
12/16
▼
1月
2月
3月
第3回
3/10
▼
(1)流量資料の整備期間と流量測定
方法に関する調査、検討
(2)流量算定方法に関す検討、調査
調 査
(3)至近年の小水力発電計画の流量
資料に関する事例調査
(4)報告書作成
技術検討委員会
1-2
1.4
調査実施体制
本調査は、経済産業省資源エネルギー庁からの受託事業として、
(財)新エネルギー財団
が実施した。調査の実施にあたっては、有識者(水力発電の計画、調査の専門家、数値シ
ミュレーションの専門家、流量測定の専門家等)からなる「流量資料整備に関する技術検
討委員会」を組織し、業務の実施内容に関する指導、助言を得た。調査実施体制は、図 1.4.1
に示すとおりである。また、流量資料整備に関する技術検討委員会のメンバーは、表 1.4.1
に示すとおりである。
経済産業省 資源エネルギー庁
委 託
報告
委嘱
流量資料整備に関する技術検討委員会
(財)新エネルギー財団 水力地熱本部
指導・助言
情報収集・資料整理補助
委 託
数値シミュレーション
・コンサルタント会社
・数値シミュレーション計算会社
図 1.4.1 調査実施体制
1-3
表 1.4.1 流量資料整備に関する技術検討委員会名簿
区 分
氏 名
専 門
所 属 , 役 職
委員長
藤 野 浩 一
水力全般
社団法人 電力土木技術協会
顧 問
委 員
青 木 良 一
水力全般
山形県企業局
参事(兼)再生可能エネルギー活用推進室長
委 員
有 賀 亮
流量測定
株式会社 東設土木コンサルタント
水文環境部長
委 員
豊 田 康 嗣 数値シミュレーション
一般財団法人 電力中央研究所
地球工学研究所 流体科学領域 上席研究員
委 員
平 井 修 一
水力全般
大口自家発電施設者懇話会
水力発電委員会 委 員
(電気化学工業株式会社 エンジニアリング統括部
電力部長)
委 員
村 上 利 一
水力全般
中部電力株式会社
発電本部 土木建築部 開発・技術グループ
課 長
委 員
谷 中 保 男 水力全般
水力発電事業懇話会
事務局長
(東京発電株式会社 取締役技監)
1-4
第2章
2.1
流量資料の整備期間と流量測定方法に関する調査、検討
概要
流量資料の整備期間と流量測定方法に関しては、平成 24 年度の調査の中で、発電水力調査の分
野における現状把握と課題整理がなされている。今回、平成 24 年度調査の結果を踏まえ、発電水
力調査以外の分野において、流量資料の整備期間や流量測定方法がどのように扱われているかを
調査し、発電計画の精度を確保したうえでより簡素化された方法を見出すべく、以下の調査、検
討を行った。
・文献調査
・流量資料の整備期間に関する調査、検討
・流量資料の整備期間についての規定に関する調査
・流量資料の整備期間による経済性への影響に関する検討
・流量測定方法に関する調査、検討
・流量測定方法についての規定に関する調査
・測定回数の合理化に関する検討
2-1
2.2
文献調査
平成 24 年度の調査では、電気事業法(昭和 39 年 7 月 11 日法律第 170 号)
、発電水力流量測定
規則(昭和 40 年 6 月 15 日)
、同規則の解釈(平成 11 年 4 月 1 日 11 資公部第 101 号)
、及び関連
文献を参照し、発電水力調査関係に必要な流量資料整備に関して、整備期間と測定方法について
現状と課題の整理がなされている。
一方、水力開発にあたっては、河川法 23 条に基づく水利使用の許可等申請においても流量資料
が必要となるため、今回、国土交通省に関連する文献を中心に流量資料整備に関する調査を行っ
た。図 2.2.1 に河川法を中心とした文献の体系図を示す。
2-2
(1) 河川法
国土調査法
・昭和39年7月10日法律第167号
(最終改正)
・平成25年11月22日法律第76号
・昭和26年6月1日法律第180号
(最終改正)
・平成25年6月14日法律第44号
(2) 河川法施行令
国土調査法施行令
・昭和40年2月11日政令第14号
(最終改正)
・平成25年12月6日政令第333号
気象業務法
・昭和27年6月20日法律第165号
(最終改正)
・平成25年5月31日法律第23号
・気象、水象等の観測は、国土交通省令
で定める方法で実施
・昭和27年3月31日政令第59号
(最終改正)
・平成25年6月14日政令第184号
・国の機関が行う基本調査、土地分類調査又は
水調査(気象、陸水の流量等の調査)を規定
(3) 河川法施行規則
法律・施行令等
・昭和40年3月13日建設省令第7号
(最終改正)
・平成25年12月11日国土交通省令第98号
(4) 水文観測業務規程
(7) 河川砂防技術基準(計画編)
(7) 河川砂防技術基準(調査編)
国土交通省 河川局発行
・昭和33年 制定
・平成16年3月30日改定 国河情第13号
国土交通省 水管理・国土保全局発行
・昭和33年 制定
・平成24年6月改定
・基本計画編と施設配置等計画編に分かれて、
河川整備計画等基本理念と河道計画他施設
の配置等に関する事項を記載
・水文観測を行う為の技術的な事項を記載
・関連する通知、手引、マニュアル等との関係を
整理し、関連通知等として記載
(6) 平成14年度版 水文観測
国土交通省 河川局 監修
独立行政法人土木研究所 編著
・昭和37年 初版出版
・平成14年 第4版出版
(8) 既設砂防堰堤を活用した
小水力発電ガイドライン(案)
国土交通省 砂防部保全課
・平成22年2月発行
・砂防施設を活用した小水力発電事例の
紹介、および実施にあたって必要な手続
き・留意事項等をまとめたもの
・昭和41年6月1日 事務次官通達
(改定)平成14年4月22日 国河環第6号
国土交通事務次官通達
(5) 水文観測業務規程細則
(改定)平成14年4月22日 国河環第7号
河川局長通達
(10)小水力発電を河川区域内に
設置する場合のガイドブック(案)
※以前の名称は「小水力発電を行うため
の水利使用の許可申請ガイドブック」
国土交通省 水管理・国土保全局
・平成25年3月発行
・小水力発電を新たに計画するにあたり、申
請に必要な書類の作り方や申請書の記入
例、必要な図面の例等を示したもの
・水文観測業務の実施に必要な
事項(細則)を定めたもの
規程・技術基準等
・水文観測業務を実施するための
実務的なマニュアルと参考技術資料
・具体的な観測の実施方法(細部)を
記載
(9)小水力発電を行うための水利
使用の登録申請ガイドブック※
国土交通省 水管理・国土保全局
・水文観測業務の実施に関する
基本的事項を定めたもの
・水文観測資料の整理、保管方法を
基準化
・河川区域内に小水力発電施設を設置す
る際の基本事項、設計上遵守すべき事
項について記載
(11)水力発電水利審査
マニュアル(案)第二版
国土交通省 水管理・国土保全局
水政課・河川環境課
・河川法第23条に基づく水力発電の水利使
用許可の審査における基本的な事項をまと
めたもの
図 2.2.1 河川法を中心とした文献の体系図
2-3
(12)小水力発電設置のための
手引きVer.2
国土交通省 水管理・国土保全局
・小水力発電に関する水利使用手続の簡
素化・円滑化の内容や様々な小水力発
電の設置事例等をまとめたもの
ガイドブック・手引き等
海外における流量測定方法の動向を調査するために、以下の文献も参照した。
【WMO(世界気象機関)関係】
・Manual on Stream Gauging VolumeⅠ- Fieldwork
―――――――――
文献①
―――――――――――
文献②
(流量測定マニュアル)
・Guide to Hydrological Practices VolumeⅠ
Hydrology – From Measurement to Hydrological Information
(具体的に観測方法を説明)
【ISO(国際標準化機構)関係】
・ISO 748: 2007(E)
―――――――――――――――――――――
文献③
Hydrometry – Measurement of liquid flow in open channels using current meters or floats
【その他】
・Guide on How to Develop a Small Hydropower Plant ―――――――― 文献④
(小水力発電開発ガイド)
・河川流量観測の国際基準
―――――――――――――――――――――
文献⑤
中尾忠彦、河川流量観測の新時代,第3巻,2012 年
http://www.pu-toyama.ac.jp/EE/tebakari/newQobs/storagev03/01_nakao.pdf
・感潮区域における流量観測手法について
――――――――――――――
文献⑥
- 石狩大橋地点でのリアルタイム流量観測 平成 22 年度国土交通省国土技術検討会
http://www.mlit.go.jp/chosahokoku/h22giken/program/kadai/pdf/innovation/inno1-02.p
df
2-4
2.3
2.3.1
流量資料の整備期間に関する調査、検討
流量資料の整備期間についての規定に関する調査
発電計画に必要な流量資料の整備期間については、これまで慣例的に 10 年間以上の流量資料が
必要とされてきたが、電気事業法関連の文献において、整備期間に関する規定はなされていない。
(平成 24 年度調査報告書参照)一方で、河川法 23 条に基づく水利使用許可申請においても、同
様に 10 年間以上の流量資料が必要とされているため、本調査では、前述の図 2.2.1 に示す文献の
中で、流量資料の整備期間に関する記載事項について整理した。表 2.3.1 にその結果を示す。
図 2.2.1 中の法律・施行令等及び規程・技術基準等においては、流量資料の整備期間に関する
記載はない。ガイドブック・手引き等の中で、 (11)水力発電水利審査マニュアル(案)第二版にお
いては、最近 10 年間の実測資料の整理を原則としつつも、10 年間に満たない場合には、当該地
点と近傍の測水地点データとの相関を確認したうえで、流域換算等により算出してよいとしてい
る。また、(9)小水力発電を行うための水利使用の登録申請ガイドブック、 (12)小水力発電設置
のための手引き Ver.2 においては、既設ダムの維持流量や慣行水利に基づく従属発電を行う場合、
10 年間分の流量資料が無い場合の措置として、少なくとも 1 年間計測することで足りる等の緩和
策が講じられている。
水利使用手続きに関する近年の動向として、
「登録制」
、
「1,000kW 未満の水利使用」といった簡
素化した手続きが導入されており、詳細について取りまとめたものを表 2.3.2 に示す。
登録制については、(1)河川法の第 23 条に 2 項から 4 項が追加されたもので、これに伴い(2)
河川法施行令、(3)河川法施行規則、(9)小水力発電を行うための水利使用の登録申請ガイドブッ
ク、 (12)小水力発電設置のための手引き Ver.2 において、その取扱いが記載されている。対象は
農業用水やダムの維持流量等を利用して行う従属発電であり、水利使用許可申請より簡便な登録
申請が適用できるようになっている。
1,000kW 未満の水利使用については、(2)河川法施行令、(9)小水力発電を行うための水利使用
の登録申請ガイドブック、(11)水力発電水利審査マニュアル(案)第二版、(12)小水力発電設置の
ための手引き Ver.2 においてその取扱いが記載されており、従来、一級河川における水利使用許
可者が国土交通大臣であったものを、該当する出力の発電所については、知事又は政令市長とす
ることで、より簡素化が図られている。
2-5
表 2.3.1(1) 流量資料整備期間についての調査結果(河川法関連文書)
文書名
日付
(1) 河川法
発行箇所
【最終改正】
昭和 39 年 7 月 10 日
平成 25 年 11 月 22 日
法律第 167 号
法律 76 号
(2) 河川法施行令
各文書での流量資料整備期間に関する記載内容
河川法第 23 条「流水の占用の許可」に関する規定において、流量資料整備期間についての記載はない。
【最終改正】
施行令第 48 条に、流水の占用においての「河川管理者への届出」に関する規定があるが、流量資料整備期間についての記載はな
昭和 40 年 2 月 11 日
平成 25 年 12 月 6 日
い。
政令第 14 号
政令第 333 号
(3) 河川法施行規則
【最終改正】
備考(URL)
国土交通省
施行規則第 11 条に「水利使用の許可の申請」に関する規定があるが、流量資料整備期間についての記載はない。
昭和 40 年 3 月 13 日
平成 25 年 12 月 11 日
但し、水力発電水利審査マニュアル(案)第二版(平成 25 年 4 月)における、施行規則第 11 条「2 前項の申請書には、次に掲げ
建設省令第 7 号
国土交通省令第 98 号
る図書を添付しなければならない。
」の「ハ 河川の流量と申請に係る取水量及び関係河川使用者の取水量との関係を明らかにする
計算」に添付を求める資料の標準例(水力発電新規許可)として、以下の記載がある。
・取水口地点における基準渇水流量、豊水流量の確認のため、取水口地点における過去 10 ヶ年程度の流況資料(取水口地点の
流況資料がない場合は、流況資料に代わるもの)
(4) 水文観測業務規程
平成 14 年 4 月 22 日
(5) 水文観測業務規程
平成 14 年 4 月 22 日
細則
河川及びその流域並びに地下水に関する水文観測業務について観測資料の整理・保管方法等を定めているが、流量資料整備期間に
国土交通事務次官通達
ついての記載はない。
国河環第 7 号
水文観測業務規程第 26 条に基づき、水文観測業務の実施に必要な事項を定めているが、流量資料整備期間についての記載はない。 http://www1.river.go.jp/k
itei_saisoku.pdf
国土交通省河川局長通達
【第 4 回改訂版発行】 (社)全日本建設技術協会
(6) 水文観測
(平成 14 年度版)
(7) 河川砂防技術基準
平成 14 年 9 月
国土交通省河川局 監修
(独)土木研究所 編著
(計画編)
国土交通省河川局
水文観測の具体的な実施方法が記載されているが、流量資料整備期間についての記載はない。
【計画編】
「第 2 章河川計画 第 3 節河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する基本的な事項」において、水利流量の
(計画編)
平成 16 年 3 月改定
設定について記載されているが、流量資料整備期間についての記載はない。
(調査編)
(調査編)
【調査編】
「第 2 章水文・水理観測 第 4 節流量観測」において流量観測を実施するために必要な技術的事項を定めているが、流量
平成 24 年 6 月改定
資料整備期間についての記載はない。
(8) 既 設 砂 防 堰 堤 を 活
平成 22 年 2 月
用した小水力発電ガ
国土交通省
流量資料整備期間についての記載はないが、砂防堰堤地点の流量として利用できる観測データがない場合の、地方別の流量の推定
砂防部保全課
方法が記載されている。
国土交通省
6 書類の作り方
水管理・国土保全局
発電所の使用水量と理論水力の算出方法
イドライン(案)
(9) 小 水 力 発 電 を 行 う
平成 25 年 12 月
ための水利使用の登
録申請ガイドブック
http://www1.river.go.jp/k
itei_sosoku.pdf
国河環第 6 号
※
①全量通過地点の流量
http://www.mlit.go.jp/riv
er/shishin_guideline/giju
tsu/gijutsukijunn/index2.
html
http://www.mlit.go.jp/riv
er/sabo/seisaku/sabo_sho
sui.pdf
http://www.mlit.go.jp/riv
er/riyou/syosuiryoku/tou
roku_guide1.pdf
〇常時流量
・ 従属元の水利使用者から最近の 10 年間分の取水量報告を入手し常時流量を求める。
(以下、中略)
なお、従属元の水利使用者の保存期間等の都合で、10 年分のデータが用意できない場合には、データが存在する期間の平均と
※以前の名称は「小水力発電
を行うための水利使用の
する。
許可申請ガイドブック」
慣行水利権を利用した従属発電を行う場合の計測方法
②流量計測期間
慣行水利権の取水地点において、10 年間の取水量データを必ずしも必要とせず、少なくとも1年間取水量を計測することで足
りる。
(10) 小水力発電を河川
区域内に設置する場
平成 25 年 3 月
国土交通省
流量資料整備期間についての記載はない。
水管理・国土保全局
合のガイドブック
(案)
2-6
http://www.mlit.go.jp/riv
er/riyou/syosuiryoku/pdf/
130305_shousuiryoku_g
uide.pdf
表 2.3.1(2) 流量資料整備期間についての調査結果(河川法関連文書)
文書名
(11) 水力発電水利審査
日付
平成 25 年 4 月
発行箇所
各文書での流量資料整備期間に関する記載内容
国土交通省
第二節 水収支計算 第二項 水収支計算フロー
マニュアル(案)
水管理・国土保全局
①河川流量資料整理
第二版
水政課・河川環境課
・ 基準渇水流量を算定するため、少なくとも最近 10 ヶ年分の実測資料を各地点(ダム地点・取水地点・基準地点)において整理
備考(URL)
http://www.mlit.go.jp/riv
er/shishin_guideline/suir
isinsa/pdf/manual.pdf
することを原則とする。
・ 流量資料が 10 年以上ある場合は、なるべく長期間の資料を整理することが望ましい。
・ 10 年間の実測資料がない場合や取水地点での実測資料が無い場合は取水地点と近傍観測所等のデータとの相関関係等(流量相
関、流出解析、流域換算)から算出されたデータを根拠とすることが可能である。また、やむを得ず近傍観測所等が保有する
データが 10 年間分に満たない場合には、その保有するデータを算出根拠とすることが可能である。その場合、相関関係等の妥
当性を確認する必要がある。
第三節 必要水量の算出(発電用水) 3.水力発電使用水量の算出フロー
①流況資料の整理
・ 流況資料は、原則として、過去 10 ヶ年の取水口地点における河川流量を整理し、豊平低渇流量を求める。
・ 10 年間の実測資料がない場合や取水地点での実測資料が無い場合は取水地点と近傍観測所等のデータとの相関関係等(流量相
関、流出解析、流域換算)から算出されたデータを根拠とすることが可能である。また、やむを得ず近傍観測所等が保有する
データが 10 年間分に満たない場合には、その保有するデータを算出根拠とすることが可能である。
(12) 小水力発電設置の
ための手引き Ver.2
平成 25 年 12 月
国土交通省
2.小水力発電の水利使用手続の簡素化・円滑化
水管理・国土保全局
(4)慣行水利権に係る小水力発電の水利使用手続きの簡素化
○慣行水利権と従属関係が確認できる場合における小水力発電のための水利使用手続きの簡素化について
①慣行水利権に基づく取水量について
①-2
計測期間について
10 年間の取水量データは必ずしも必要でなく、①-1の地点(慣行水利権の取水地点)において、少なくとも1年間計測する
ことで足りる。
○慣行水利権と従属関係が確認できない場合における小水力発電のための水利使用手続きの簡素化について
①-2
計測期間について
10 年間の取水量データは必ずしも必要でなく、①-1の地点(河川からの取水地点)において、少なくとも1年間計測するこ
とで足りる。
①-3
河川流量のデータについて
取水地点付近において河川管理者が調査した河川流量データの調査結果を添付書類として活用できる。 取水地点付近におい
て河川管理者等が調査した河川流量データがない場合であっても、取水地点を含む流域と地形、地質、降雨量などが類似してい
る近傍の流域(流域が重なる場合を含む。)の他の観測所等の河川流量データをもとに水利使用状況から自然流量を算出した上
で流域比換算により算出した河川流量データを根拠とすることができる。
(5)その他の手続の簡素化等について
○水力発電の水利使用許可申請について
河川流量データの流域比換算について、上記と同様の記載がある。
2-7
http://www.mlit.go.jp/riv
er/riyou/syosuiryoku/syo
usuiryoku_tebiki2.pdf
表 2.3.2 流量資料整備についての規制緩和に関する調査結果(河川法関連文書)
文書名
日付
(1) 河川法
昭和 39 年 7 月 10 日
法律第 167 号
(2) 河川法施行令
昭和 40 年 2 月 11 日
政令第 14 号
【最終改正】
平成 25 年 11 月 22 日
法律 76 号
【最終改正】
平成 25 年 12 月 6 日
政令第 333 号
(3) 河川法施行規則
昭和 40 年 3 月 13 日
建設省令第 7 号
(8) 既 設 砂 防 堰 堤 を 活
用した小水力発電ガ
イドライン(案)
(9) 小 水 力 発 電 を 行 う
ための水利使用の登録
申請ガイドブック※
【最終改正】
平成 25 年 12 月 11 日
国土交通省令第 98 号
平成 22 年 2 月
平成 25 年 12 月
発行箇所
法改正により、以下の項目が追記された。
・第 23 条の 2(流水の占用の登録)
・第 23 条の 3(登録の実施)
国土交通省
国土交通省
砂防部保全
課
国土交通省
水管理・国
土保全局
※以前の名称は「小水力発電
を行うための水利使用の
許可申請ガイドブック」
(10) 小水力発電を河川区
平成 25 年 3 月
域内に設置する場合
のガイドブック(案)
(11) 水力発電水利審査
マニュアル(案)
第二版
平成 25 年 4 月
登録制に関する記載
国土交通省
水管理・国
土保全局
国土交通省
水管理・国
土保全局
水政課・河
川環境課
準特定水利使用に関する記載
記載なし。
・第 23 条の 4(登録の拒否)
以下の項で水利使用の登録に関する記載がある。
・第 6 条2 (水利台帳)
・第 14 条の 2(流水の占用の許可を受けた水利使用のために取水した流水に類する流水)
・第 14 条の 3(登録事項) [次項※1参照]
以下の項で水利使用の登録に関する記載がある。
・第 11 条の 2(流水の占用の登録等の申請)
・第 11 条の 3(登録の抹消)
記載なし。
第 20 条の 2(関係都道府県知事の意見を聴かな
ければならない一級河川の管理)の項で準特定
水利使用に関する記載(出力が最大二百キロワ
ット以上の発電のためにするもの)がある。
記載なし。
2 小水力発電を行うために必要な手続
流水の利用が登録で足りる場合について以下のとおり記載
・農業用水や水道用水など既に許可を得ている流水を利用して発電を行う場合
・ダム等から放流される維持流量等を利用して発電を行う場合
4 登録申請の準備
・他の水利使用に従属して、発電を行う場合やダム等から放流される維持流量等を利用して、新たに減水区間を
生じさせることなく発電を行う場合には、河川環境等に新たな影響を与えないことから登録で足りることとさ
れており、申請は許可よりも簡素化された書類で行うことができる。
・従属発電、および登録制の対象となるダム等の放流水について説明 [次項※2参照]
7 登録後の留意点
・存続期間の考え方
従属発電の存続期間は、原則、従属元水利使用の許可期間と合わせることとなる。また、慣行水利権に従属
する発電の場合の存続期間は、慣行水利権の計測期間に応じた期間となる。ただし、従属元水利使用の同意の
期間が許可期間より短い場合は、当該同意の期間となる。
記載なし。
5 登録申請の方法
平成 25 年 4 月 1 日より、一級河川指定区間
における 1,000kW 未満の発電については都道
府県知事等が許可を行うことが可能となっ
た。
記載なし。
記載なし。
第一節 許可にあたっての基本的な考え方
第二項 水利使用の区分及び手続等
【発電のための水利使用区分】
記載なし。
区分
一級河川
指定区間
特定
水利使用
最大出力
1,000kW 以
上
準特定
水利使用
最大出力
200kW 以上
1,000kW 未満
その他
最大出力
200W 未満
※ただし、従属発電に係る水利使用区分については、
従属元の水利使用区分に従う。
(12) 小 水 力 発 電 設 置
のための手引き
Ver.2
平成 25 年 12 月
国土交通省
水管理・国
土保全局
2-8
2.小水力発電の水利使用手続の簡素化・円滑化
(3) 小水力発電に係る許可手続の簡素化
(平成 25 年 4 月)
小水力発電(1,000kW 未満)のためにする水利
使用について、水利使用区分を見直した。
(河
川法施行令改正)
<一級河川指定区間>
従前
発電水利使
用の許可権
者
小水力発電
2.小水力発電の水利使用手続の簡素化・円滑化
(1) 従属発電について登録制を導入(平成 25 年 12 月)
登録制の対象となる従属発電
① 既に許可を受けた農業用水等を利用して行う発電(慣行水利権の流水を利用した従属発電についても、期別の
取水量が明確であり、従属関係が確認できる場合は、登録制の対象となる。
)
② ダム又は堰から次の場合に放流される流水を利用して行う発電(魚道その他の魚類の通路となる施設を流下するも
のを除く。)
・河川の流水の正常な機能を維持するために必要なとき
・洪水調節容量を確保するために必要なとき
・許可を受けた水利使用(発電以外のためにするものに限る。
)のために必要なとき
(4)慣行水利権に係る小水力発電の水利使用手続きの簡素化
○慣行水利権と従属関係が確認できる場合
②登録の対象となる流水の占用に係る権利の存続期間について
原則、取水量の計測期間と同期間となる(最長 10 年)
。なお、登録後において引き続き慣行水利権に基づく取水
量を計測している場合は、次回の登録申請にあたり、原則、当初の存続期間に新たな計測期間を合算した期間が
存続期間となる。
○慣行水利権と従属関係が確認できない場合
②許可期間について
原則、河川流量の計測期間と同期間となる(最長 10 年)
。なお、許可後において引き続き河川流量を計測してい
る場合は、次回の許可申請にあたり、原則、当初の許可期間に新たな計測期間を合算した許可期間となる。
1,000kW 以上
特定水利使用
1,000kW 未満
200kW 以上
準特定水利使
用
200kW 未満
その他
政令改正後
発電水利使用の
許可権者
国交大臣
知事又は政令市
長
国交大臣
[整備局長認可必
要]
知事又は政令市
長
[整備局長認可不
要]
2.3.2
流量資料の整備期間による経済性への影響に関する検討
(1)目的
発電水力調査における流量資料の整備期間については、これまで慣例的に 10 年間以上とされ
てきた。電気事業法、河川法及び関係省令においては、整備期間に関する規定はないものの、
国土交通省が公表するマニュアルにおいて、原則として 10 年間の流量資料を整理する旨が記載
されている。ただし、やむを得ずデータが 10 年間分に満たない場合の取り扱いについても記載
されている。
(平成 24 年度調査報告書及び本書 2.3.1 参照)
このことを踏まえて本項では、流量資料の整備期間が経済性評価に及ぼす影響について、統
計的な手法を用いて検討を行った。
(2)検討方法
長期間の数値の変化傾向を把握する方法として用いられる「移動平均法」を利用して、実測
流量、降水量、発電電力量についてデータ整理を行い検討した。検討対象地点については、平
成 24 年度の調査の中で、2 指定測水所を対象として同様の検討がなされているため、平成 24
年度と異なる 2 地域を選出し、地域毎に 2 指定測水所地点、計 4 指定測水所地点を抽出した。
検討対象期間については、得られた 4 指定測水所の実測流量データの期間を踏まえ、1989 年か
ら 2012 年(24 年間)とした。なお、降水量のデータについては、対象とした指定測水所の近
傍にあるアメダス気象観測所の中で、実測流量と最もよい相関を示した観測所のものを用いた。
【検討対象地点及び検討対象期間】
・X 地域:X-1 測水所地点(CA=31.5 ㎞ 2)、X-2 測水所地点(CA=128.2 ㎞ 2)
1989 年~2012 年(24 年間)
・Y 地域:Y-1 測水所(CA=43.2 ㎞ 2)、Y-2 測水所(CA=110.8 ㎞ 2)
1989 年~2012 年(24 年間)
【移動平均法について】
時系列データ(一般的には時系列に限らず系列データ)を平滑化する手法である。金融(特
にテクニカル分析)分野をはじめ、気象、水象などの計測分野で使われる。平均をとる期間
を徐々にずらしていく平均法であり、観測データを一定の期間のデータ(N 個)の平均値に
置き換えて変動を平滑化することで,経年的なトレンドを把握する方法である。なお、本検
討では、平均をとる期間(移動平均年数)を 1 年、3 年、5 年、10 年、19 年と変えていくこ
とで、連続したデータ(流量、降水量、発電電力量)の抽出年数の長短と、抽出する年数に
よってその平均値がどのように変化するかを把握するために、本手法を用いた。
2-9
【変動係数について】
標準偏差はデータの分布のばらつきをみる一つの尺度であるが、2つの集団のばらつきの
程度を比較する場合は、必ずしも有効な分析であるとは限らない。個々のデータの値が大き
い(=平均値が大きい)集団のほうが、標準偏差が大きくなる可能性が高いからである。こ
うした場合、標準偏差をそれぞれの平均値で割ることで、集団の規模を考慮したうえで比較
を行うことが有効である。標準偏差(σ)を平均値(m)で割ったものを変動係数(CV)という。
変動係数(CV)=σ/m 分散
ただし、σ:標準偏差、m:平均値、xi:個別データ、N:個別データの個数
(3)検討結果
1)実測流量及び降水量の整理と発電電力量の算出
実測流量及び降水量について、得られたデータをもとに年間の総量を算出し、経年変化が確
認できるよう整理を行った。また、発電電力量について、測水所地点毎にモデル発電所の諸元
を設定し、年間の発電電力量を算出した。
実測流量(以下、
「年間河川総流量」と言いかえる)と降水量データの整理の結果を図 2.3.1、
図 2.3.3、図 2.3.5、及び図 2.3.7 に示す。また、地点毎のモデル発電所の諸元を表 2.3.3~表
2.3.6 に、算出した発電電力量を表 2.3.7 示す。
2)年間河川総流量、降水量及び発電電力量の関係
年間河川総流量、降水量及び発電電力量のそれぞれの値について、平均値に対する偏差を測
水所地点毎に、図 2.3.2、図 2.3.4、図 2.3.6 及び図 2.3.8 に示す。
全体的に、発電電力量の偏差が最も大きく、次いで年間河川総流量、降水量の順となってお
り、特に渇水年(期)において、この傾向は強いことが分かる。
2-10
900
3,600
年間河川総流量
※m3/s-D:量を表す単位、86,400m3 と同値
年間降水量
800
3,200
700
2,800
600
2,400
500
2,000
400
1,600
300
1,200
200
800
100
400
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
0
1989年
0
年間降水量(mm)
年間河川総流量(m3/s-D)
※
図 2.3.1 年間河川総流量と年間降水量の経時変化(X-1 測水所地点)
100%
80%
年間河川総流量
年間降水量(アメダス花園)
発電電力量
※平均値に対する偏差:(当該年の値/平均値-1)×100
60%
40%
20%
0%
-20%
-40%
-60%
-80%
図 2.3.2 年間河川総流量、降水量、及び発電電力量の偏差(X-1 測水所地点)
2-11
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
-100%
1989年
平均値に対する偏差
※
2-12
図 2.3.4 年間河川総流量、降水量、及び発電電力量の偏差(X-2 測水所地点)
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
1989年
500
0
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
80%
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
1989年
平均値に対する偏差
年間河川総流量(m3/s-D)
2,000
2,400
1,500
1,800
1,000
1,200
年間降水量(mm)
2,500
3,000
年間河川総流量
年間降水量
600
0
図 2.3.3 年間河川総流量と年間降水量の経時変化(X-2 測水所地点)
100%
年間河川総流量
年間降水量(アメダス大能)
発電電力量
60%
40%
20%
0%
-20%
-40%
-60%
-80%
-100%
2-13
0
図 2.3.6 年間河川総流量、降水量、及び発電電力量の偏差(Y-1 測水所地点)
2012年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1,600
4,000
1,400
3,500
1,200
3,000
1,000
2,500
800
2,000
600
1,500
400
1,000
200
500
年間降水量(mm)
年間降水量
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
80%
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
1989年
年間河川総流量(m3/s-D)
1,800
1992年
1991年
1990年
1989年
平均値に対する偏差
2,000
5,000
年間河川総流量
4,500
0
図 2.3.5 年間河川総流量と年間降水量の経時変化(Y-1 測水所地点)
100%
年間河川総流量
年間降水量(アメダス湯ヶ島)
発電電力量
60%
40%
20%
0%
-20%
-40%
-60%
-80%
-100%
2-14
4,000
4,000
3,500
3,500
3,000
3,000
2,500
2,500
2,000
2,000
1,500
1,500
1,000
1,000
500
0
図 2.3.8 年間河川総流量、降水量、及び発電電力量の偏差(Y-2 測水所地点)
年間降水量(mm)
年間降水量
2012年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
年間河川総流量
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
1989年
年間河川総流量(m3/s-D)
4,500
2006年
80%
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
1989年
平均値に対する偏差
5,000
5,000
4,500
500
0
図 2.3.7 年間河川総流量と年間降水量の経時変化(Y-2 測水所地点)
100%
年間河川総流量
年間降水量(アメダス湯ヶ島)
発電電力量
60%
40%
20%
0%
-20%
-40%
-60%
-80%
-100%
表 2.3.3
X-1 測水所地点モデル発電所諸元
備考
(表中手引き:
水力発電計画工事費積算の手引き 平成25年3月)
計画諸元
項目
X-1測水所地点
1.測水所
24年間(1989年~2012年)
2.流量資料の期間
流量
2
資料 3.流域面積(km )
実測流量
31.5
4.平均河川流量(m3/s)
1.33
3
0.16
0.5m3/s/100km2で仮定:H24年度検討条件と同等
・最大(Qmax)
1.97
50日流量で設定:「中小水力発電ガイドブック」より
・最小(Qmin)
0.59
Qmax × 30%:「手引き」より
70.00
H24年度検討条件と同等
1.40
総落差×2% :H24年度検討条件と同等
0.361
損失水頭÷Qmax^2 :H24年度検討条件と同等
5.維持流量(m /s)
6.使用水量(m3/s)
7.落差(m)
・総落差
発電 ・損失水頭
計画
・損失水頭係数(α)
68.60
・有効落差
フランシス水車
8.水車形式
9.水車・発電機合成効率(Qmax時)
0.823
10.最大出力(kW)
1,100
11.年間可能発電電力量(MWh)
4,233
豊水量
(95日)
35日流量
5.0
「手引き」にある水車形式選定図より選定
「手引き」より算定(下図参照)
渇水量
(355日)
低水量
(275日)
平水量
(185日)
100%
流量設備利用率
流量(m3/s)
3.0
0.568
2.0
60%
40%
1.97
流量設備利用率(%)
80%
4.0
20%
1.0
50
河川流況
0.0
0
50
100
150
200
日数(日)
250
300
0%
350
水車・発電機合成効率
95
90
85
合成効率 (%)
80
75
70
65
60
55
50
45
40
0
10
20
30
40
50
60
70
使用水量比 (%)
2-15
80
90
100
110
120
表 2.3.4
X-2 測水所地点モデル発電所諸元
項目
備考
(表中手引き:
水力発電計画工事費積算の手引き 平成25年3月)
計画諸元
X-2測水所地点
1.測水所
24年間(1989年~2012年)
2.流量資料の期間
流量
2
資料 3.流域面積(km )
実測流量
128.2
4.平均河川流量(m3/s)
3.59
3
0.64
0.5m3/s/100km2で仮定:H24年度検討条件と同等
・最大(Qmax)
4.99
50日流量で設定:「中小水力発電ガイドブック」より
・最小(Qmin)
1.50
Qmax × 30%:「手引き」より
70.00
H24年度検討条件と同等
1.40
総落差×2% :H24年度検討条件と同等
0.056
損失水頭÷Qmax^2 :H24年度検討条件と同等
5.維持流量(m /s)
6.使用水量(m3/s)
7.落差(m)
・総落差
発電 ・損失水頭
計画
・損失水頭係数(α)
68.60
・有効落差
フランシス水車
8.水車形式
9.水車・発電機合成効率(Qmax時)
0.845
10.最大出力(kW)
2,800
11.年間可能発電電力量(MWh)
10,773
豊水量
(95日)
35日流量
10.0
「手引き」にある水車形式選定図より選定
「手引き」より算定(下図参照)
平水量
(185日)
渇水量
(355日)
低水量
(275日)
100%
9.0
8.0
80%
流量設備利用率
6.0
0.583
5.0
60%
4.99
40%
4.0
3.0
流量設備利用率(%)
流量(m3/s)
7.0
20%
2.0
1.0
河川流況
50
0%
0.0
0
50
100
150
200
日数(日)
250
300
350
水車・発電機合成効率
95
90
85
合成効率 (%)
80
75
70
65
60
55
50
45
40
0
10
20
30
40
50
60
70
使用水量比 (%)
2-16
80
90
100
110
120
表 2.3.5
Y-1 測水所地点モデル発電所諸元
項目
備考
(表中手引き:
水力発電計画工事費積算の手引き 平成25年3月)
計画諸元
Y-1測水所地点
1.測水所
24年間(1989年~2012年)
2.流量資料の期間
流量
2
資料 3.流域面積(km )
実測流量
43.2
4.平均河川流量(m3/s)
2.52
3
0.22
0.5m3/s/100km2で仮定:H24年度検討条件と同等
・最大(Qmax)
3.80
50日流量で設定:「中小水力発電ガイドブック」より
・最小(Qmin)
1.14
Qmax × 30%:「手引き」より
70.00
H24年度検討条件と同等
1.40
総落差×2% :H24年度検討条件と同等
0.097
損失水頭÷Qmax^2 :H24年度検討条件と同等
5.維持流量(m /s)
6.使用水量(m3/s)
7.落差(m)
・総落差
発電 ・損失水頭
計画
・損失水頭係数(α)
68.60
フランシス水車
8.水車形式
9.水車・発電機合成効率(Qmax時)
0.839
10.最大出力(kW)
2,100
11.年間可能発電電力量(MWh)
6,931
豊水量
(95日)
35日流量
5.0
「手引き」にある水車形式選定図より選定
「手引き」より算定(下図参照)
平水量
(185日)
渇水量
(355日)
低水量
(275日)
流量設備利用率
4.0
100%
80%
3.80
60%
流量(m3/s)
3.0
0.497
2.0
40%
1.0
20%
流量設備利用率(%)
・有効落差
河川流況
50
0%
0.0
0
50
100
150
200
日数(日)
250
300
350
水車・発電機合成効率
95
90
85
合成効率 (%)
80
75
70
65
60
55
50
45
40
0
10
20
30
40
50
60
70
使用水量比 (%)
2-17
80
90
100
110
120
表 2.3.6
Y-2 測水所地点モデル発電所諸元
項目
備考
(表中手引き:
水力発電計画工事費積算の手引き 平成25年3月)
計画諸元
Y-2測水所地点
1.測水所
24年間(1989年~2012年)
2.流量資料の期間
流量
2
資料 3.流域面積(km )
実測流量
110.8
4.平均河川流量(m3/s)
9.15
3
0.55
0.5m3/s/100km2で仮定:H24年度検討条件と同等
・最大(Qmax)
12.75
50日流量で設定:「中小水力発電ガイドブック」より
・最小(Qmin)
3.83
Qmax × 30%:「手引き」より
70.00
H24年度検討条件と同等
1.40
総落差×2% :H24年度検討条件と同等
0.009
損失水頭÷Qmax^2 :H24年度検討条件と同等
5.維持流量(m /s)
6.使用水量(m3/s)
7.落差(m)
・総落差
発電 ・損失水頭
計画
・損失水頭係数(α)
68.60
・有効落差
フランシス水車
8.水車形式
9.水車・発電機合成効率(Qmax時)
0.852
10.最大出力(kW)
7,300
11.年間可能発電電力量(MWh)
27,629
豊水量
(95日)
35日流量
20.0
「手引き」にある水車形式選定図より選定
「手引き」より算定(下図参照)
平水量
(185日)
渇水量
(355日)
低水量
(275日)
100%
18.0
流量設備利用率
16.0
80%
12.75
流量(m3/s)
12.0
60%
0.555
10.0
40%
8.0
6.0
流量設備利用率(%)
14.0
20%
4.0
2.0
河川流況
50
0.0
0%
0
50
100
150
200
日数(日)
250
300
350
水車・発電機合成効率
95
90
85
合成効率 (%)
80
75
70
65
60
55
50
45
40
0
10
20
30
40
50
60
70
使用水量比 (%)
2-18
80
90
100
110
120
表 2.3.7 発電電力量算出結果
1989
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
X-1測水所地点
6,351
5,332
6,114
5,876
4,980
4,509
3,347
536
1,859
5,130
5,232
4,978
2,961
2,128
2,314
1,749
2,584
5,334
5,121
4,778
4,213
5,525
5,536
5,093
発電電力量(MWh/年)
X-2測水所地点 Y-1測水所地点 Y-2測水所地点
16,302
8,550
45,623
12,957
8,249
41,195
16,576
7,830
38,371
11,262
7,405
33,182
11,770
7,601
30,287
11,400
2,600
12,746
9,220
4,138
15,387
1,976
2,584
11,302
4,321
3,452
11,695
13,061
9,740
36,901
13,703
6,732
25,325
12,202
8,660
23,316
7,302
8,485
25,148
6,260
5,133
22,821
10,186
9,276
33,461
6,279
8,753
29,209
7,927
5,544
18,883
11,265
6,649
22,433
12,533
5,928
25,233
10,058
5,474
31,449
10,775
7,260
36,667
14,088
8,676
35,016
13,163
9,547
27,001
13,974
8,089
30,443
2-19
3)移動平均値及び変動係数計算結果
前項でのデータ整理結果をもとに、年間河川総流量、年間降水量、発電電力量のそれぞれに
ついて移動平均値を計算した。さらに、移動平均年毎に得られた移動平均値の変動係数を計算
し、これらの計算結果から、移動平均年数(本検討では、
「連続したデータの抽出年数」と同義
と解釈できる。
)と、当該年数で抽出されたデータのばらつき具合(変動係数)の関係について
検討した。地点毎の計算結果を図 2.3.9~図 2.3.24 に示す。また、年間河川総流量と発電電力
量については、地点による特徴が比較しやすいよう、図 2.3.25、図 2.3.26 にそれぞれ改めて
整理した。
X 地域の計算結果から、年間河川総流量、年間降水量、発電電力量ともに、移動平均年毎の
変動係数は 8 年付近に変曲点が見られる。
(図 2.3.12、図 2.3.16)
Y 地域の計算結果から、年間河川総流量、年間降水量では、移動平均年の増加に伴なう変動
係数の減少は明らかであるが、明確な変曲点は見られない。また、発電電力量では、X 地域の
計算結果に比べると明確ではないものの、10 年前後付近に変曲点が見られる。(図 2.3.20、図
2.3.24)
各測水所の発電電力量について、移動平均年数 5 年及び 10 年の変動係数は、X-1 測水所地点
で 0.24 及び 0.12、X-2 測水所地点で 0.18 及び 0.09、Y-1 測水所地点で 0.18 及び 0.09、Y-2
測水所地点で 0.20 及び 0.09 である。
(図 2.3.26)
上述の結果より、以下を考察した。
・年間河川総流量、年間降水量、発電電力量の経年的な傾向は、地域毎(水系毎)に特徴が
あると考えられる。
・4 測水所地点の検討結果からではあるが、発電電力量の変動係数でみると、5 年程度の流量
資料があれば変動係数は 0.20 程度、10 年程度の流量資料があれば変動係数は 0.10 程度と
なることが分かった。
【参考:平成 24 年度調査の結果】
同様の検討を 2 測水所地点で行った結果、発電電力量の変動係数でみると、5 年程度の流
量資料があれば変動係数は 0.12 程度、10 年程度の流量資料があれば変動係数は 0.07 程度
であった。
2-20
2-21
500
2000
1500
単年
移動平均5年
移動平均8年
移動平均10年
移動平均12年
移動平均15年
移動平均19年
0
図 2.3.10 年間降水量の単年平均並びに移動平均(X-1 測水所地点)
2010年
2009年
2012年
2500
2012年
3000
2011年
図 2.3.9 年間河川総流量の単年平均並びに移動平均(X-1 測水所地点)
2011年
2010年
1000
2009年
100
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
1989年
200
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
1989年
年間降水量(mm)
3
年間河川総流量(m /s-D)
800
700
600
500
400
300
単年
移動平均5年
移動平均8年
移動平均10年
移動平均12年
移動平均15年
移動平均19年
0
7000
6000
年間発電電力量(MWh)
5000
4000
3000
単年
2000
移動平均5年
移動平均8年
移動平均10年
移動平均12年
1000
移動平均15年
移動平均19年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
1989年
0
図 2.3.11 年間発電電力量の単年平均並びに移動平均(X-1 測水所地点)
0.40
年間降水量
年間河川総流量
発電電力量
0.35
0.30
変動係数
0.25
0.20
0.15
0.10
0.05
0.00
0
2
4
6
8
10
移動平均年
12
14
16
18
20
図 2.3.12 移動平均年で見る河川総流量、降水量、発電電力量の変動係数(X-1 測水所地点)
2-22
2-23
500
2000
1500
単年
移動平均5年
移動平均8年
移動平均10年
移動平均12年
移動平均15年
移動平均19年
0
図 2.3.14 年間降水量の単年平均並びに移動平均(X-2 測水所地点)
2010年
2012年
2500
2012年
3000
2011年
図 2.3.13 年間河川総流量の単年平均並びに移動平均(X-2 測水所地点)
2011年
2010年
1000
2009年
200
2009年
400
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
1989年
600
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
1989年
年間降水量(mm)
3
年間河川総流量(m /s-D)
2000
1800
1600
1400
1200
1000
800
単年
移動平均5年
移動平均8年
移動平均10年
移動平均12年
移動平均15年
移動平均19年
0
18000
16000
14000
年間発電電力量(MWh)
12000
10000
8000
単年
6000
移動平均5年
移動平均8年
4000
移動平均10年
移動平均12年
移動平均15年
2000
移動平均19年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
1989年
0
図 2.3.15 年間発電電力量の単年平均並びに移動平均(X-2 測水所地点)
0.40
年間降水量
年間河川総流量
発電電力量
0.35
0.30
変動係数
0.25
0.20
0.15
0.10
0.05
0.00
0
2
4
6
8
10
移動平均年
12
14
16
18
20
図 2.3.16 移動平均年で見る河川総流量、降水量、発電電力量の変動係数(X-2 測水所地点)
2-24
2-25
1000
3000
2500
2000
単年
移動平均5年
移動平均8年
移動平均10年
移動平均12年
移動平均15年
移動平均19年
500
0
図 2.3.18 年間降水量の単年平均並びに移動平均(Y-1 測水所地点)
2010年
2009年
2012年
3500
2012年
4000
2011年
図 2.3.17 年間河川総流量の単年平均並びに移動平均(Y-1 測水所地点)
2011年
2010年
1500
2009年
200
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
1989年
400
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
1989年
年間降水量(mm)
3
年間河川総流量(m /s-D)
1400
1200
1000
800
600
単年
移動平均5年
移動平均8年
移動平均10年
移動平均12年
移動平均15年
移動平均19年
0
10000
9000
8000
年間発電電力量(MWh)
7000
6000
5000
4000
単年
移動平均5年
3000
移動平均8年
移動平均10年
2000
移動平均12年
移動平均15年
1000
移動平均19年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
1989年
0
図 2.3.19 年間発電電力量の単年平均並びに移動平均(Y-1 測水所地点)
0.40
年間降水量
年間河川総流量
発電電力量
0.35
0.30
変動係数
0.25
0.20
0.15
0.10
0.05
0.00
0
2
4
6
8
10
移動平均年
12
14
16
18
20
図 2.3.20 移動平均年で見る河川総流量、降水量、発電電力量の変動係数(Y-1 測水所地点)
2-26
2-27
1000
3000
2500
2000
単年
移動平均5年
移動平均8年
移動平均10年
移動平均12年
移動平均15年
移動平均19年
500
0
図 2.3.22 年間降水量の単年平均並びに移動平均(Y-2 測水所地点)
2010年
2012年
3500
2012年
4000
2011年
図 2.3.21 年間河川総流量の単年平均並びに移動平均(Y-2 測水所地点)
2011年
2010年
1500
2009年
500
2009年
1000
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
1989年
1500
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
1989年
年間降水量(mm)
3
年間河川総流量(m /s-D)
5000
4500
4000
3500
3000
2500
2000
単年
移動平均5年
移動平均8年
移動平均10年
移動平均12年
移動平均15年
移動平均19年
0
50000
45000
40000
年間発電電力量(MWh)
35000
30000
25000
20000
単年
移動平均5年
15000
移動平均8年
移動平均10年
10000
移動平均12年
移動平均15年
5000
移動平均19年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
1989年
0
図 2.3.23 年間発電電力量の単年平均並びに移動平均(Y-2 測水所地点)
0.40
年間降水量
年間河川総流量
発電電力量
0.35
0.30
変動係数
0.25
0.20
0.15
0.10
0.05
0.00
0
2
4
6
8
10
移動平均年
12
14
16
18
20
図 2.3.24 移動平均年で見る河川総流量、降水量、発電電力量の変動係数(Y-2 測水所地点)
2-28
0.40
年間河川総流量
0.35
X-1測水所地点
X-2測水所地点
Y-1測水所地点
Y-2測水所地点
0.30
変動係数
0.25
0.20
0.15
0.10
0.05
0.00
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
移動平均年
図 2.3.25 移動平均年で見る年間河川総流量の変動係数(4 測水所地点分)
0.40
発電電力量
0.35
X-1測水所地点
X-2測水所地点
Y-1測水所地点
Y-2測水所地点
0.30
変動係数
0.25
0.20
0.15
0.10
0.05
0.00
0
2
4
6
8
10
12
14
16
移動平均年
図 2.3.26 移動平均年で見る発電電力量の変動係数(4 測水所地点分)
2-29
18
20
2.4
流量測定方法に関する調査、検討
2.4.1
流量測定方法についての規定に関する調査
(1)発電水力調査関係規定と国土交通省関係規定の比較
平成 24 年度調査では、
「発電水力流量調査の手引き(2001 年版)
」を参照し、その中で示さ
れている電気事業法第 102 条にもとづく「発電水力流量測定規則」
、
「発電水力流量測定規則の
解釈(以下、規則の解釈)
」
、及び「発電水力流量調査マニュアル」から、発電水力調査におけ
る流量測定方法に関する規定などを整理した。
一方、国土交通省においては、所管する河川にて災害防止、資源の適正利用、環境保全の観
点から、水位及び流量を含む諸量の測定がなされており、今回の調査では、前述の図 2.2.1 中
の「(4)水文観測業務規程」
、
「(5)水文観測業務規程細則」
、
「(6)平成 14 年度版 水文観測」、
「(7)河川砂防技術基準(調査編)
」を参照し、国土交通省関係の流量測定方法に関する規定な
どについて整理した。
表 2.4.1 に、
「(7)河川砂防技術基準(調査編)
」から引用した、主要な流量観測手法の種類
を示す。また、表 2.4.2 に、国土交通省関係と発電水力調査関係の流量測定方法について比較
した結果を示す。両者で規定などが大きく異なる項目は、以下の3項目であった。
1)水位測定機器故障時の対処方法
【発電水力調査関係】
水位標により、毎日 6 時と 18 時に測定を行うよう努める。
(規則の解釈 第 6 条)
【国土交通省関係】
センサーの器械的な故障が確認されたときは、原則として欠測とする。(水文観測業務規程
細則第 22 条、および水文観測データ品質照査要領第 10 条)
2)流速測定の頻度
【発電水力調査関係】
自然河川においては、測定を毎月 3 回以上行う。ただし、流量測定を行おうとする月と同じ
月において過去 10 年間に河床変動が認められない場合にあっては、当該月の流量測定を 1
回以上とすることができる。
(規則の解釈
第 2 条)
【国土交通省関係】
低水流量観測は、年間 36 回以上実施することを標準とする。
(河川砂防技術基準(調査編)
第 2 章 4.4.2 項)
2-30
3)流速測定の方法と流量の算定方法
【発電水力調査関係】
規則の解釈第 3 条及び第 4 条で、流速計測法と表面流測法による流量の測定について規定さ
れている。また、発電水力流量調査マニュアルの中で、流速の測定機器に関して主として回
転式が記載され、電磁式、電波式、超音波式も記載されている。
【国土交通省関係】
流速計測法と表面流速法に加えて、平成 24 年度に概要調査を行った ADCP 計測法等について
も記載されている。
(表 2.4.1 及び表 2.4.2 参照)
(2)ADCP 計測法
ADCP(Acoustic Doppler Current Profiler、超音波ドップラー流向流速計)による流量測定に
関しては、測定の原理、特徴などを ADCP の概要として平成 24 年度の調査報告書で記載してい
る。
(平成 24 年度報告書 2.1.3 項参照)
今年度は国土交通省関係の規定を調査したが、ADCP 計測法については、河川砂防技術基準(調
査編)第 2 章 4.7 項 舟に搭載した ADCP(超音波ドップラー流向流速計)による流速計測法 の中
で、
「流量の算出は、低水路、高水敷に分けて算出するとともに、それぞれ直接計測部と観測不
可能領域での補完部の流量も更に分けて算出しておくことを標準とする。
」と規定し、具体的な
流量の算出手順も明示している。
(表 2.4.2 ③流量の算定 参照)
なお、ADCP 計測法については、
(独)土木研究所が作成している「流量観測の高度化マニュ
アル(高水流量観測編)Ver1」
(http://www.icharm.pwri.go.jp/ryukan/manual_1.0.pdf)の中
で、洪水時における測定方法として、従来の浮子測法等と比べて安全かつ簡易なものとして、
曳航船に搭載して測定する方法等が記載されている。
2-31
表 2.4.1 主要な流量観測手法の種類(河川砂防技術基準(調査編)第 2 章 4.2.1 項)
2-32
表 2.4.2 流量測定方法(国土交通省関係と発電水力調査関係の比較)
国 土 交 通 省 関 係
項 目
測定頻度
記録方法
①
水
位
測
定
測定精度
測定範囲
測定機器
故障時の
対処方法
測定頻度
測定精度
②
流
速
測
定
測定方法
③
流
量
の
算
定
算定方法
④
そ
の
他
再測定、
河床変動
について
発 電 水 力 調 査 関 係
(太字)水文観測業務規程、同細則、および照査要領
(細字)河川砂防技術基準(調査編)
(青字)水文観測(平成14年度版)
・低水時には毎正時、高水時には10分以下の間隔で連続測定を実施することを標準とする。
(第2章 水文・水理観測 第4節流量観測 4.4観測 4.4.2観測回数)
・水位観測は自記水位計による観測を標準とし、必要に応じて水位標による観測によって補完する。
(第2章 水文・水理観測 第3節水位観測 3.3水位観測の方法)
・水位の最小読み取り単位は1/100mを原則とする。
(第2章水文・水理観測 第3節水位観測 3.5水位観測所が備えるべき設備 3.5.2自記水位計)
・以下に示す水位の範囲を計測できるように設置することを標準とする。(第2章 水文・水理観測 第3節水位観測 3.5水位観測所が備えるべき設備)
計測下限:自記水位計については、既往の最低水位より0.5m以上低い水位
計測上限:自記水位計に関しての記載なし
(自記水位計の代替となる測定方法に関する記載なし。)
・水位計の異常が確認された場合は、次の各号により観測データを補正する。
(水文観測データ品質照査要領 第4章 照査の方法 第10条 観測器械の異常)
イ センサーの器械的な故障が確認されたときは、原則として欠測とする。
ロ テレメータあるいは自記水位計の観測値と量水標の読み値に一定の誤差を生じていると認められるときは、観測値を量水標の読み値を基に
修正する。(以下省略)
・低水流量観測は、年間36回以上実施することを標準とする。
(第2章 水文・水理観測 第4節流量観測 4.4観測 4.4.2観測回数)
【流速計測法】
・少なくとも毎年1回、流速計が必要とする精度を確保しているかを確認するための検定(係数試験)又はそれに準じる精度検証を行い、計測に使用する。
・流速センサが必要とする精度は、河川流量観測の目的を踏まえ、測定対象とする流速範囲において、少なくとも5%以内を確保しなければならない。
(第2章 水文・水理観測 第4節流量観測 4.4観測 4.4.4流速計の検定)
【表面流測法】
・助走区間(浮子投下位置から第一見通断面までの区間)を30m以上とるようにする。
・流下距離は、原則として50m以上とするが、目安として(最大流速×10~15秒)m程度あればよい。
(第4章 流量観測 4.4浮子による流量観測)
・流速計又は浮子の観測等による流速に流水の流下断面積を乗じた値又はダム越流量若しくは放流量によって計算する。(規程 第12条 観測の方法)
【流速計測法】
・流速測点は、流速測線上鉛直方向に水深の2割、8割の位置の流速を測定する2点法を採用することを標準とする。
なお、水深50cm未満の場合は、2割水深において流速計感部が水面上に出る可能性があるため、水深6割における
1点法を採用している事例もある。
(第2章 水文・水理観測 第4節流量観測 4.5可搬式流速計による流速計測法 4.5.3測定回数、測線と測点(標準法))
・測線配置は、横断方向の水面幅に対し、原則として等間隔になるように選定する。横断面の形状や流速分布により
等間隔にすることが、適当でない場合には、河状等に応じて部分的に、測線間隔を密にする。
測線は表4・3・3に定める間隔を基準とする。各点の1回の測定時間は少なくとも20秒以上とし、2回繰り返す。
(第4章 流量観測 4.3可搬式流速計による流量観測(流量計測法)4.3.5観測方法)
流速計の種類(第4章 流量観測 4.3可搬式流速計による流量観測(流量計測法)4.3.3流速計)
①回転軸が流れに平行な回転式流速計(森式、広井式、オット式、三映式流速計等)
②回転軸が流れに垂直な回転式流速計(プライス流速計)
③可搬式電磁流速計
【表面流測法】
・流速測線は、第1横断面と第2横断面の間で流れに沿うように設けるものと
し、測線間隔については、第1横断面の水面幅に応じて、表2-4-4に示す測
線数以上を確保しなければならない。
(第2章 水文・水理観測 第4節流量観測 4.6浮子による流速計測法(浮子測法) 4.6.3流速測線)
・原則として棒浮子を使用し、予め決められた二断面間を浮子が流れるのに要した時間を測定して浮子の流下速度を求め、これに係数を乗じて区分断面図
の平均流速を決定する。(第4章 流量観測 4.4浮子による流量観測 4.4.5観測方法)
【ADCPによる流速計測法】
・ドップラー効果を利用して、河道断面内の3次元的な流速分布を計測する。超音波ドップラー流向流速計(ADCP)を搭載した舟を、水面上で横断方向に
移動させながら観測することにより、河川流水断面内の流速分布と断面積を同時に計測できる。
(第2章 水文・水理観測 第4節流量観測 4.7舟に搭載したADCP(超音波ドップラー流向流速計)による流速計測法 4.7.1総説)
【流速計測法】
・流量は、横断の各区分断面積にその面積を代表する平均流速を乗じて、各区分断面の流量とし、これを全断面について合計して求める。
(第4章 流量観測 4.3可搬式流速計による流量観測(流量計測法) 4.3.6観測の実施)
【表面流測法】
・流量計算に用いる断面積は、各見通断面の横断測量から求める。(第4章 流量観測 4.4浮子による流量観測 4.4.8流量計算)
①流量計算に用いる断面は、高水前後の横断測量の結果から求められる高水前及び高水後の全断面積を比較して、いずれか大きい方の断面を用いる。
②各区分断面の平均断面積は第一及び第二断面においてそれぞれ区分される断面の相対応する断面積の平均とする。
③各対応する区分断面の面積を計算する場合の水位は各回の観測の始めと終わりの水位の平均をとり、区分断面は台形としてその面積を計算し、全断面
積はそれらの和をとる。
【ADCPによる流速計測法】
・流量の算出は低水路、高水敷を分けて算出するとともに、それぞれ直接計測部と観測不可能領域での補完部の流量も更に分けて算出しておくことを標準
とする。(第2章 水文・水理観測 第4節流量観測 4.7舟に搭載したADCP(超音波ドップラー流向流速計)による流速計測法 4.7.3流量の算出)
1) 各セル(流速分布計測単位)の流速に各セルの面積を乗じて各セルにおける流量を算出する。
2) 各セルの流量を合計し、横断計測における各細分化区分断面ごとの計測部流量を算出する。
3) 観測不可能領域の流量については、直接計測部より得られる鉛直方向若しくは横断方向の流速分布を適切に活用しながら補完するものとする。
4) 各細分化区分断面の流量及び観測不可能領域の全合計値を全断面流量として算出する
5) 全断面平均流速の算出は、全断面流量を全断面積で除して算出する。
・既存の水位流量曲線から10%以上離れている場合、再度観測する前に原因を究明する。
水位断面積曲線を用いて確認し、プロットした点が既存の水位断面積曲線からかけ離れていれば、河床変動が原因であると推定される。
(第4章 流量観測 4.3可搬式流速計による流量観測(流量計測法) 4.3.6観測の実施)
2-33
発電水力流量調査の手引き(2001年版)
発電水力流量測定規則、同解釈、および発電水力流量マニュアル
・1時間ごとに測定(規則 第3条)
・自記水位計による測定(規則の解釈 第6条)
・1㎝以下まで測定、水位計設置時に水位標による水位との整合を確認
(規則の解釈 第6条)
・過去の最高水位から最低水位まで測定(規則の解釈 第6条)
・水位標により毎日6時と18時に測定を行うよう努める(規則の解釈 第6条)
(水位が著しく高い場合は、少なくとも1時間をこえない時間ごと)
・毎月3回以上の測定(規則の解釈 第2条)
(過去10年間の河床変動が認められない月は、1回以上)
【流速計測法】(規則の解釈 第3条)
・1年以内に係数試験を行った流量計を使用し精度を確保
試験速度0.10m/s未満:誤差2.5%以下 又は、
試験速度0.10m/s以上:誤差1.5%以下
【表面流測法】(規則の解釈 第4条)
・浮子投下設備は、浮子流下区間から上流へ10メートル以上離れた場所に設置する
・浮子流下区間の長さは、水面幅(水面幅が30メートル未満の場合は、30メート
ル)以上とし、区間の上流端及び下流端に流心に直角な見通し線を設けること。
【流速計測法】(規則の解釈 第3条)
・流水の状況により、以下のいずれかの方法で測定し、各流速側線ごとの平均流速
を算定。
精密法、簡単法(3点法、2点法、1点法)、表面法
・測定は、水面幅及び流水の状況に応じ4メートル以下の適切な間隔とし、
40秒以上行う。
・精密2点法で測定の場合は測線数11測線以上、測定時間30秒以上とする。
測定機器:回転式(バケット式、プロペラ式、スクリュー式)、電磁式
電波式、超音波式(以上、細字部はマニュアル 第2節 流速計)
【表面流測法】(規則の解釈 第4条)
・浮子は、水面幅及び流水の状況を考慮して、流心と平行な区分毎に投下し、
上流の見通し線を通過して下流の見通し線に至るまでの流下時間を測定する。
【ADCPによる流速計測方法】
(マニュアル 第2節1項流速計の分類 の、電波式、超音波式 各々の説明に、
「ドップラー効果の原理を用いたもの」とある。ただし、ADCPの記載はない。)
【流速計測法】(規則の解釈 第3条)
・各流速測線ごとの平均流速と、その測線を含む部分断面積との積を全て
合計し、流量を算定。
【表面流測法】(規則の解釈 第4条)
・各区分ごとの平均流下速度と、その部分断面積との積を全て合計する。
【ADCPによる流速計測方法】
(記載なし)
(再測定および河床変動に関する記載なし。)
(3)海外における流量測定方法に関する動向
前述の 2.2 項に示した文献①~文献⑥に基づいて、主に海外における流量測定方法に関する
動向を、流速計測法、ADCP 計測法、浮子測法の 3 つの測定方法の観点で整理した。その結果を
表 2.4.3 に示す。
流速計測法、浮子測法については、国内で行われている測定方法と大差ない結果であった。
また、ADCP 計測法については、WMO(世界気象機関)に関連する文献によれば、フィールド試
験を行った結果、従来方法と比較して誤差が平均で 5%以内であることや、また、ISO(国際標
準化機構)では ADCP 計測法に関する規格化が進められていることが分かった。なお、測定器機
技術の進歩により、小規模な浅い河川においても適用できる技術開発の動きもあるが、USGS(米
国地質調査所)のガイドラインなどによれば、主に大陸河川における測定方法として位置付け
られている。
2-34
表 2.4.3 海外における流量測定に関する動向
流量測定方法
(1) 流速計測法
事例、測定精度、適用範囲等に関する記載
【流速観測について】
・観測箇所の選定において理想的な条件は、流速分布曲線が規則的であり、流速 0.15m/s 以上、河床が規則的で安定している、水深 30cm 以上、水生物の成長がない等である(文献②)
。
・一般に2測線の間隔は河川幅の 1/20 を超えないこと、各区分の流量は全体流量の 10%以上とならないことを規定(文献②)
。
・流速は 30 秒以上の時間をかけて複数点で観測することとし、流速の周期的な変化が見られる場合は技術規則(WMO-No.49)に応じて測定時間をさらに長くする(文献②)
。
・測定は通常、20~25 の測線数において各測線で2点の測定が行われており、95%信頼限界における標準的な測定誤差は 5%程度である(文献②)
。
【水深方向の平均流速について】
・<米国地質調査所 USGS の流量観測マニュアル(1983 年版)>や<WMO>の新版マニュアルに引用されている、典型的な水深方向の流速分布とされている図から平均流速を 1.0 として換
算すると、2 割水深の流速と 8 割水深の流速の平均値は、1.020 となり 2%程度の誤差で平均流速を求められることになる。同様に 6 割水深の流速も 1.020 となり 2%程度の誤差で平均流速を
求められる(文献⑤)
。
(2) ADCP 測法
【WMO(世界気象機関)における記載内容】
・2つのメーカーの ADCP を用いたフィールド試験を実施したところ、プライス流速計や測水所水位により算出した流量に対し、平均で 5%以内の測定結果となった(文献①)
。
・ADCP 流量測定の不確実さに関して有用な研究はまだないが、流速計による計測や水位-流量の関係から得られる流量と比較した研究結果から、ADCP は許容できる精度を有していることを
示している(文献①)
。
・ADCP 測法は今日、信頼性の高い流量測定方法となっているが、国際標準として認められた方法はまだない(文献①)
。
・様々な条件下で ADCP 測法による流量測定を行ったところ、31 地点中 25 地点で従来方法に対しての誤差は 5%以内であり、残り 6 地点は 5%を超過したが、最大でも 7.6%であった。ADCP
測法に生じる誤差要因としては、河床変動、水温、塩分濃度、ボートのスピード等がある(文献①)
。
・近年、機器技術が大きく変化しており、小さく浅い河川にも適用できるようになっている(文献②)
。
【USGS(米国地質調査所)でのガイドライン】
・USGS は計測データの品質管理手法、計測手法のガイドラインを提案しているが、これらの手法は主に大陸河川における計測手法であるとしている(文献⑥)
。
【ISO(国際標準化機構)での規格化】
・開水路流量計測に関する国際規格(ISO)では、ADCP 観測の規格化が進められており、今後、機器の性能管理や観測手法の標準化、精度管理の規準など、流量観測技術の高度化に向けた議
論が求められている(文献⑥)
。
(3) 浮子測法
【更正係数について】
・表面流速を平均流速に変換するための更正係数は一般に 0.85 が用いられている。棒浮子の更正係数は横断面や棒の長さ、流速分布に応じ 0.85~1.00 まで変化する(文献①)
。
・ISO では表面浮子の更正係数は 0.84 から 0.90 であり、水路が滑らかであれば大きく、粗ければ小さいが、状況によってはこの範囲を外れることもある(文献③、文献⑤)
。
【測定方法について】
・浮子の流下時間は 20 秒以上を標準とするが、規模の小さな流速の速い流れでは、より短い時間をとる場合もある。測線の数は3以上とる必要があり、可能であれば5以上とするべきである
(文献①)
。
【測定精度について】
・測定精度は条件が良ければ±10%以内であるが、風の影響があると誤差が最大 25%にもなりうる(文献①)
。
・浮子測定の精度は補正係数の範囲に依存する(文献④)
。
2-35
2.4.2
測定回数の合理化に関する検討
(1)測定回数と水位流量曲線
発電水力調査における流量の測定回数については、指定測水所の流量測定方法を定めた「発
電水力流量測定規則の解釈」第2条において、
「自然河川においては、測定は毎月3回以上行う。
ただし、流量測定を行おうとする月と同じ月において過去 10 年間に河床変動が認められない場
合にあっては、当該月の流量測定を 1 回以上とすることができる。
」と規定されている。
(前述
2.4.1 項参照)
この規定をベースに、精度が保たれることを前提とした測定回数の削減(合理化)を検討す
る場合、これまでの測水業務の経験、実績から、以下の点が考慮できると考えられる。
(技術検
討委員会委員からの指摘)
・実測に基づき水位流量曲線(以下、H-Q)を作成する上で、特に河床変動が少ない箇所では低
水位部に実測点が集中する傾向があり、回数を削減できる余地がある。
・冬期渇水期等の流況安定時において、河川工事等の人為的な原因により河床変動が発生した
場合でも、当該月はその後 10 年間は毎月3回の流量測定を行わなければならない。
・信頼度が高い H-Q が既に確立されている場合においても、過去に河床変動が発生した月には
3 回の流量測定を行わなければならない。
以上のことから、ここでは、河床変動が少ない箇所で流況安定時や H-Q が確立されている場
合において、流量の測定回数を減らすことが可能かどうかの検討を行うこととした。
検討にあたっては、
“合理的な水位流量曲線”とは何かを定義する必要がある。許容される誤
差の範囲にある H-Q とも言えるが、数値などで明確に示すことが難しいため、ここでは概念的
に捉えることとし、技術検討委員会委員の意見も踏まえた結果を、図 2.4.1 に示す。
10 日流量(暫定)
②外挿範囲
→高水位時の実測点
→河川断面特性(マニング式等)を活用
①高い精度が必要な流況範囲
→十分な実測点数、適切な分布が必要
図 2.4.1 合理的な水位流量曲線(H-Q)
2-36
(2)検討方法
前項(1)で記述したように、本検討は、河床変動が少ない箇所で、流況安定時や H-Q が確立
されている場合において、流量の測定回数を減らすことに関して検討を行った。具体的には、
測定回数の合理化案(一例)
(以下、合理化案)を作成し、実河川で流量測定を行い既に H-Q
を作成している指定測水所の実績データを利用して、合理化案適用のシミュレーションを行い、
実績と比較することで合理化案の実用性について検討した。シミュレーションは、合理化案に
従い不要な測定分については実測しなかったものとして実績データから機械的(※注)に取り除き
(間引きし)
、H-Q 設定には使用しない方法で実施した。
検討の対象とした測水所は、
“河床変動が少ない”条件を考慮して、前述の 2.3.2 項の検討に
おいて選定した 4 つの指定測水所地点のうち、流域面積の小さい下記 2 地点を選定した。検討
対象期間は、河床変動の有無や H-Q の設定状況等を考慮しながら、以下の 3 年間とした。
(注:月 3 回の実績データを 1 回にする場合、上旬値のみ採用し、中、下旬の 2 値は取り除く。
)
【検討対象地点及び検討対象期間】
・X 地域:X-1 測水所(CA=31.5 ㎞ 2)
2010 年~2012 年(3 年間)
・Y 地域:Y-1 測水所(CA=43.2 ㎞ 2)
2010 年~2012 年(3 年間)
図 2.4.1 の“合理的な H-Q”を作成するために考案した測定回数の合理化案を表 2.4.4 に示
す。
表 2.4.4 測定回数の合理化案(一例)
適用条件
時期
測定回数
測定の要点
1
・H-Qが確立※1
されている
通年
毎月 1 回以上
河床変動及びH-Q変化を確認、管理する
ための測定.
2
・H-Qが未確立※1
(河床変動後等)
・H-Qが未設定
(新規地点等)
上記 1、2 いずれの
場合にも適用
流況
安定期※2
流況
変動期※2
高水位時
毎月 1 回以上
毎月 3 回以上
1 出水につき
1 回以上
・H-Qを設定、確立するための測定.
・H-Qが再変化する前に、H-Q確立に
必要な実測流量を迅速に測定.
・流況安定期は、流況変化が小さいため毎
月1回以上とする.
・流況変動期は、流況変化が大きいため毎
月3回以上とする.
・H-Qが確立した時点で流量測定回数を
毎月1回以上とする.
※1 H-Q の確立とは、図 2.4.1 の“合理的な H-Q”の条件を満足している状態をいう。
※2 本案における、流況安定期は 1 月、2 月、12 月、流況変動期はそれ以外の月とする。
(地域特性、例えば、積雪の有無などにより変更される)
2-37
(3)検討結果
図 2.4.2~図 2.4.4 に、X-1 測水所地点において合理化案を適用した場合の、実測データ、水
位流量曲線(H-Q)を示した。
それぞれ図中、黒丸(●)は合理化案適用後も採用した実測データを、白丸(○)は、取り
除いた(間引きした)実測データを示す。また、それぞれ図中には、黒丸(●)により設定さ
れた水位流量曲線(H-Q)を、H-Q ①、H-Q ②、及び H-Q ③の 3 種類示しているが、これらは合
理化案を適用する以前、すなわち、実績の H-Q とほとんど同一の曲線である。
(図では、煩雑と
なるため実績 H-Q は省略した。
)
なお、検討に使用した X-1 測水所地点での実績実測データを、表 2.4.5~表 2.4.7 に示す。
検討の結果を表 2.4.8 に示すが、X-1 測水所地点の場合、
“間引き”した実測回数は 3 ケ年合
計で 35 回、これは実測測定回数の合計 84 回の 41.8%に相当する。合理化案を適用した場合、
これだけの測定回数が削減できることを意味する。Y-1 測水所地点についても同様に、32.7%に
相当する結果が得られた。
以上のことから、2 測水所地点での至近 3 ケ年の結果のみではあるが、今回考案した測定回
数の合理化案を適用した場合、従来と同程度の H-Q 精度を確保したうえで測定回数を 30~40%
程度削減できることが分かった。
X-1 測水所地点
2010 年
●
合理化案に基づき、採用したデータ
:計 13 回
◯
合理化案に基づき、間引きしたデータ:計 16 回
H-Q ①
10 日流量
図 2.4.2 合理化案を適用した検討(X-1 測水所地点
2-38
2010 年)
X-1 測水所地点
2011 年
●
合理化案に基づき、採用したデータ
:計 13 回
◯
合理化案に基づき、間引きしたデータ:計 14 回
H-Q ①
H-Q ②
10 日流量
図 2.4.3 合理化(案)を適用した検討(X-1 測水所地点
X-1 測水所地点
2011 年)
2012 年
●
合理化案に基づき、採用したデータ
:計 23 回
◯
合理化案に基づき、間引きしたデータ:計
5回
H-Q ②
H-Q ③
10 日流量
図 2.4.4 合理化(案)を適用した検討(X-1 測水所地点
2-39
2012 年)
表 2.4.5 検討に用いた実測データ(X-1 測水所地点
年
2010年
測定番号
測定日
1
2010/1/8
2
2010/2/1
3
2010/3/1
4
2010/3/8
5 2010/3/24
6
2010/4/2
7
2010/4/7
8 2010/4/21
9
2010/5/6
10
2010/6/3
11 2010/6/18
12 2010/6/25
13
2010/7/1
14
2010/7/7
15 2010/7/23
16
2010/8/4
17 2010/8/18
18 2010/8/27
19
2010/9/2
20 2010/9/13
21 2010/9/22
22 2010/9/28
23 2010/9/28
24 2010/9/28
25 2010/10/4
26 2010/10/14
27 2010/10/25
28 2010/11/4
29 2010/12/2
計
-
3
水位(m) 流量(m /s)
0.45
0.42
0.46
0.45
0.43
0.59
0.51
0.49
0.53
0.50
0.50
0.48
0.67
0.55
0.50
0.54
0.47
0.45
0.43
0.44
0.45
1.09
1.00
0.95
0.54
0.54
0.52
0.57
0.47
-
1.04
0.85
1.05
1.01
0.85
1.90
1.38
1.21
1.52
1.31
1.29
1.20
2.96
1.61
1.24
1.61
1.12
1.04
0.93
0.96
1.00
8.47
7.28
6.56
1.66
1.58
1.46
1.81
1.09
-
採用したデータ ●
間引きしたデータ ◯
●
●
●
◯
◯
●
◯
◯
●
●
◯
◯
●
◯
◯
●
◯
◯
●
◯
◯
◯
◯
●
●
◯
◯
●
●
●13回、◯16回
表 2.4.6 検討に用いた実測データ(X-1 測水所地点
年
2011年
測定番号
測定日
1 2011/1/11
2
2011/2/2
3
2011/3/1
4
2011/4/4
5 2011/4/14
6 2011/4/20
7
2011/5/9
8
2011/6/2
9 2011/6/20
10 2011/6/27
11
2011/7/1
12 2011/7/14
13 2011/7/25
14
2011/8/2
15 2011/8/17
16 2011/8/30
17
2011/9/6
18 2011/9/22
19 2011/9/22
20 2011/9/22
21 2011/9/27
22 2011/9/29
23 2011/10/3
24 2011/10/11
25 2011/10/24
26 2011/11/2
27 2011/12/2
計
-
採用したデータ ●
水位(m) 流量(m3/s)
間引きしたデータ ◯
0.51
1.30
●
0.45
0.96
●
0.49
1.23
●
0.47
1.10
●
0.49
1.24
◯
0.49
1.20
◯
0.47
1.13
●
0.50
1.29
●
0.46
1.09
◯
0.46
1.01
◯
0.44
0.97
●
0.41
0.76
◯
0.47
1.15
◯
0.48
1.13
●
0.45
1.02
◯
0.47
1.07
◯
0.68
2.96
●
1.08
8.26
◯
1.00
7.38
◯
0.92
6.01
●
0.67
2.90
◯
0.66
2.72
◯
0.61
2.07
●
0.62
2.18
◯
0.60
1.87
◯
0.56
1.51
●
0.51
1.18
●
●13回、◯14回
2-40
2010 年)
備 考
高水位時データ
2011 年)
備 考
高水位時データ
河床変動確認
表 2.4.7 検討に用いた実測データ(X-1 測水所地点
年
2012年
測定番号
測定日
1 2012/1/10
2
2012/2/2
3
2012/3/5
4
2012/4/5
5 2012/4/12
6 2012/4/24
7 2012/5/14
8
2012/6/1
9 2012/6/14
10 2012/6/20
11 2012/6/20
12 2012/6/20
13 2012/6/20
14 2012/6/25
15
2012/7/2
16 2012/7/12
17 2012/7/24
18
2012/8/2
19 2012/8/17
20 2012/8/27
21
2012/9/3
22 2012/9/10
23 2012/9/24
24 2012/10/1
25 2012/10/11
26 2012/10/11
27 2012/11/1
28 2012/12/3
計
-
2012 年)
採用したデータ ●
水位(m) 流量(m3/s)
間引きしたデータ ◯
0.47
0.89
●
0.44
0.77
●
0.61
2.00
●
0.52
1.18
●
0.51
1.11
●
0.49
0.99
●
0.63
2.25
●
0.60
1.87
●
0.58
1.78
●
0.98
13.4
◯
0.91
12.3
◯
0.87
11.3
◯
0.82
10.3
●
0.41
3.97
●
0.30
2.51
●
0.27
2.15
●
0.23
1.78
●
0.17
1.44
●
0.14
1.27
●
0.08
0.97
●
0.10
1.03
●
0.06
0.83
●
0.12
1.13
●
0.26
2
●
0.12
1.09
◯
0.07
0.87
◯
0.08
0.9
●
0.07
0.85
●
●23回、◯5回
備 考
高水位時データ、河床変動確認
H-Q確立
表 2.4.8 測定回数の合理化検討結果
X-1 測水所地点
年
実測測
定回数
採用回数
Y-1 測水所地点
間引き
回数
間引率
H-Q
本数
実測測
定回数
採用回数
間引き
回数
間引率
H-Q
本数
2010
29 回
13 回
16 回
55.2%
1本
36 回
22 回
14 回
38.9%
2本
2011
27 回
13 回
14 回
51.9%
2本
36 回
19 回
17 回
47.2%
2本
2012
28 回
23 回
5回
17.9%
2本
32 回
29 回
3回
9.4%
4本
計
84 回
49 回
35 回
-
104 回
70 回
34 回
28.0 回
16.3 回
11.7 回
-
34.7 回
23.3 回
11.3 回
平均
41.8%
2-41
-
-
32.7%
-
第3章
3.1
流量算定方法に関する検討、調査
概要
これまで発電計画に主に用いられてきた流量算定方法は、「水力計画地点流量算定マニュアル
(通商産業省資源エネルギー庁、新エネルギー財団
流量資料から流域面積比換算により算定する方法
の相関、回帰式から算定する方法
平成 3 年 3 月)
」に基づき、①既存の測水所
②簡易な実測流量と既存の測水所流量資料と
が用いられてきた。これらの方法による場合、流域面積比換
算や相関確認のために、計画地点の直近、近傍、あるいは近隣のいずれかの測水所の流量資料が
必要となるため、測水所を持たない開発事業者にとっては、計画地点での長期の実測が必要とな
り、開発に要する期間及びコストの面で大きな負担となっていた。
(平成 24 年度調査報告書参照)
今回、平成 24 年度調査の結果も踏まえ、流量算定方法に関して、上記の負担を軽減する観点か
ら、以下の検討、調査を行った。
・数値シミュレーションの適用に関する検討
・流量算定方法に関するその他の調査
・各種流量データの利用に関する調査
・数値シミュレーション手法に関する情報収集
3-1
3.2
数値シミュレーションの適用に関する検討
3.2.1
検討方法
(1)目的
降水量データ等を基に流量を推定する数値シミュレーションによる流量算定方法については、
平成 24 年度の調査の中で、今後の水力開発が期待される小流域地点を対象として適用の可能性
を探ってきた。今回、平成 24 年度の調査と異なる地域における指定測水所地点を対象として、
平成 24 年度調査と同様に、HYDREEMS を用いた数値シミュレーションを行い適用の可能性を検
討した。具体的には、実測流量に基づくパラメータスタディ対象年の長短と対象年の豊水や渇
水等の特性が、シミュレーション解析流量の解析精度に与える影響を検討した。また、対象地
点毎にモデル発電計画による発電電力量を計算し、解析流量による発電の経済性への影響を検
討した。
(2)検討対象地点
本検討の対象地点として、まず前述の 2.3.2 項の検討において選定した 4 つの指定測水所地
点を候補地点とし、数値シミュレーションの検討を適正に行うためあらかじめ現地調査を行い、
測水所地点上流域で大規模な取水等がないことを確認した。そのうえで、X 地域と Y 地域にお
いて、比較的流域面積の小さい以下の 2 地点を検討対象地点として選定した。表 3.2.1 に検討
対象地点における流況表を示す。
【検討対象地点及び検討対象期間】
・X 地域:X-1 測水所(CA=31.5 ㎞ 2)
2
・Y 地域:Y-1 測水所(CA=43.2 ㎞ )
1989 年 1 月 1 日~2011 年 12 月 31 日(23 年間)
1989 年 1 月 1 日~2011 年 12 月 31 日(23 年間)
表 3.2.1 検討対象地点の流況表(23 年間平均)
流量
最大
35 日
95 日流量
(m3/s)
流量
流量
(豊水量) (平水量)
X-1 測水所地点
10.16
2.22
1.47
1.04
0.91
Y-1 測水所地点
32.97
4.58
2.65
1.71
1.37
185 日流量
3-2
235 日流量
355 日流量
最少
平均
流量
流量
0.59
0.50
1.33
0.67
0.61
2.52
(低水量) (渇水量)
(3)検討方法
1)パラメータスタディ対象年とシミュレーション解析流量の解析精度の検討
検討対象全期間 23 年間のうち、
限られた年数の実測流量しか利用できない場合※1 を想定し、
指定した年(「パラメータスタディ対象年」
)の実測流量のみでパラメータスタディを行った。
暫定基準(0.9≦年間可能使用水量比※2≦1.1)を満足するパラメータを設定した後、全 23 年間
の解析流量をシミュレーションにより算出した。
検討ケースとしては、まず、解析パターン(図 3.2.2 参照)を設定した。パターンA、B、
B’は、パラメータスタディ対象年数が、それぞれ1年、3年、5年である。各解析パターン
には、最少流量年、最多流量年、平均流量年(または、期)の3ケースが含まれる。従って、
検討ケースは、全部で9ケース×2測水所地点である。
※1 限られた年数、例えば 1 年間だけ流量を実測し、残る期間は雨量データからシミュレーシ
ョン解析流量を算出し、必要な期間の流量資料を整備するイメージ。
※2 年間可能使用水量比:
本検討では、流況曲線において、50 日流量以下の流量の総和を年間可能使用水量(図 3.2.1
参照)と定義し、解析流量から算出される年間可能使用水量を、実測流量から算出される
年間可能使用水量で除した値を年間可能使用水量比とした。以下、この章では年間可能使
用水量比を「使用水量比」と記し、実測流量に対する解析流量の合致度を示す指標として
扱っている。
図 3.2.1 年間可能使用水量概念図
3-3
1989年1月1日
(平成元年)
凡例
2011年12月31日
(平成23年)
対象期間(23年)
平均流量年1年
パラメータスタディ対象年
パラメータ固定解析年
最多流量年1年
A
最少流量年1年
平均流量期3年
多流量期3年
B
少流量期3年
平均流量期5年
多流量期5年
B'
少流量期5年
図 3.2.2 解析パターン
図 3.2.2 中のパラメータスタディ対象年(期)については、前述の図 2.3.1 及び図 2.3.5 を
参照し、対象地点毎に年間河川総流量の経時変化を確認したうえで、下記のとおり選定した。
【パラメータスタディ対象年(期)
】
X-1 測水所地点:
パターン A 少流量年:1996 年,平均流量年:2008 年,多流量年:1991 年
パターン B 少流量期:1995~1997 年,平均流量期:2007~2009 年,多流量期:1989 年~1991 年
パターン B’少流量期:1994~1998 年,平均流量期:2005~2009 年,多流量期:1989 年~1993 年
Y-1 測水所地点:
パターン A 少流量年:1994 年,平均流量年:2009 年,多流量年:2011 年
パターン B 少流量期:1994~1996 年,平均流量期:2007~2009 年,多流量期:2009 年~2011 年
パターン B’少流量期:1993~1997 年,平均流量期:2005~2009 年,多流量期:2007 年~2011 年
3-4
図 3.2.3 に本検討における数値シミュレーションのフローを示す。
(1)~(5)の手順で数値
シミュレーションを行い、23 年間平均の使用水量比を算出し、実測流量に対する解析流量の合
致度を評価した。
図 3.2.3 パラメータ設定とシミュレーション
3-5
2)モデル発電計画による発電電力量の比較と経済性への影響の検討
平成 24 年度調査と同様、モデル発電所の諸元を設定し、実測流量およびシミュレーション解
析流量に対応する発電電力量を計算した。さらに、年間可能使用水量比と年間可能発電電力量
比※3 の関係などを整理し、発電の経済性への影響を検討した。
※3 年間可能発電電力量比:
解析流量に対応して計算した発電電力量を、実測流量に対応して計算した発電電力量で除
した値を年間可能発電電力量比とした。以下、この章では年間可能発電電力量比を「電力
量比」と記し、解析流量による発電の経済性への影響を示す指標として扱っている。
3.2.2
数値シミュレーション及び発電電力量計算の結果
前項で記述したように、数値シミュレーションによる解析流量の実測流量に対する合致度は、
「使用水量比」で検討し、解析流量による発電の経済性への影響については、
「電力量比」で検討
した。
数値シミュレーション及び発電電力量計算の結果について、X-1 測水所地点に関するものを表
3.2.2~表 3.2.4 及び図 3.2.4~図 3.2.18 に、Y-1 測水所地点に関するものを表 3.2.5~表 3.2.7
及び図 3.2.19~図 3.2.34 に示す。
(1)数値シミュレーションの結果
1)X-1 測水所地点
23 年間平均の使用水量比は、解析パターン毎に、パターン A で 0.90~1.19、パターン B で
0.95~1.11、パターン B’で 0.95~1.11 となった。パターン B’については、図 3.2.3 中に示
すパラメータスタディを行った際に、パターン B で設定したパラメータを用いて対象となる 5
年間の計算を行った結果、使用水量比の暫定基準(0.9≦使用水量比≦1.1)を満足した。この
ため、結果的にパターン B と B’の解析結果は同じものとなった。
単年の結果でみると、1996 年、2003 年、2004 年等の渇水年において、他の年と比較して大
きめの使用水量比となる傾向が見られる。
(表 3.2.2、表 3.2.3、表 3.2.4、図-3.2.4、図 3.2.6、
図 3.2.8、図 3.2.15 参照)
23 年間平均の流況曲線で、パターン A とパターン B を比較すると、全体的にパターン B の方
が実測値をもとにした流況曲線により近似していると言える。
(図 3.2.10~図 3.2.14)
3-6
2)Y-1 測水所地点
Y-1 測水所地点の検討を進めるにあたっては、前述の図 3.2.3 に示す入力雨量の見直しが必
要となった。図 3.2.19 に入力雨量の見直し検討に用いたデータを示す。本検討の初期の段階で
入力雨量は、3 つの近傍観測所の降水量データ(アメダス)をティーセン分割して作成したも
のを用いていたが、パラメータスタディの結果、植生タンク高(図 3.2.2 参照)を極めてゼロ
に近い値に設定しないと、使用水量比による暫定基準を満足しないことが分かった。植生タン
ク高を極めてゼロに近い値に設定した場合、物理的に意味のある解析にならないと判断し、こ
こで、入力雨量の見直しを検討した。2006 年以降の RAP(レーダーアメダス)のデータを参照
して入力雨量を再検討した結果、RAP と近傍観測所①の年間降水量が近似することが確認され
たため、入力雨量を近傍観測所①のデータのみとして、改めてシミュレーションを行うことと
した。
以下、入力雨量見直し後に行った数値シミュレーションの結果について記す。
23 年間平均の使用水量比は、解析パターン毎に、パターン A で 0.97~1.23、パターン B で
0.97~1.10、パターン B’で 0.99 となった。単年の結果でみると、1996 年等の渇水年において、
他の年と比較して大きめの使用水量比となる傾向が見られる。
(表 3.2.5、表 3.2.6、表 3.2.7、
図 3.2.20、図 3.2.22、図 3.2.24、図 3.2.31 参照)
23 年間平均の流況曲線でみると、パターン A とパターン B を比較すると、全体的にパターン
B の方が実測値をもとにした流況曲線により近似していると言える。パターン B とパターン B’
の比較でも、同様のことが言える。
(図 3.2.26~図 3.2.30 参照)
3)考察
【結果の総括】
数値シミュレーションによる方法を実際どのように適用していくかを考慮に入れながら 2 つ
の対象測水所の検討を行った結果、解析パターン A、B、B’を通して、23 年間平均の使用水量
比でみて、0.90~1.23 という結果が得られた。なお、渇水年単年の結果でみれば、他の年と比
較して大きめの使用水量比になる傾向があった。また、パラメータスタディの対象年(期)を
少流量年(期)とした場合全体的に少なめの流量を、多流量年(期)とした場合全体的に多め
の流量を算出する傾向もあるが、パラメータスタディを行う対象年が 1 年に限られた場合(パ
ターン A)で、かつ多流量年、少流量年と極端な年であったとしても、23 年間を通した結果で
みると、ある程度の精度を確保していると言える。
パラメータスタディの対象期間が 1、3、5 年と長くなるにしたがい、23 年間平均の使用水量
比でみると、少流量年(期)
、平均流量年(期)
、多流量年(期)の値は、次第に 1.0 に近づく
傾向が見られた。また、23 年間平均の流況曲線でみると、同じく対象期間が長くなるにしたが
い、より実測値の流況曲線に近似していく傾向にある。これらの傾向は、対象期間を 1 年(パ
ターン A)から 3 年(パターン B)に変えた場合がより顕著であった。
3-7
【3 年間分の実測流量資料の有効活用】
例えば、X-1 測水所地点にて 3 年間かけて流量を実測したとする。得られる 3 年間分の流量
資料は、変動係数 0.21 をもってバラつく可能性がある。(2.3.2 項、図 2.3.12 参照)ただし、
ここで対象とした流量は年間河川総流量であり洪水流量も含まれる。対象となる流量を、洪水
流量等を除いた 50 日流量以下の流量とした場合、変動係数は 0.18 となる。
(表 3.2.7 参照)
一方、この 3 年間分の流量資料をもとに、数値シミュレーションを用いて 23 年間分の流量解
析を行った場合(解析パターン B 相当)
、実測した 3 年間の流量の多少に係らず、23 年間の平
均ベースでみれば、0.95~1.11 の比でもって、使用水量を算出できると考えられる。
(表 3.2.3
参照)
このことは、短期間(例えば 3 年間)の実測流量を用いて発電計画を行う場合、実測流量そ
のものと数値シミュレーションで補完した流量データを併用することで、より変動リスクの小
さい流量データを得ることが可能であり、得られた流量データが発電計画へ適用できる可能性
があると言える。
【数値シミュレーションの留意点】
今回の数値シミュレーションでは、植生タンク高と地下タンク流出係数に関係する 2 種類の
パラメータに限定してスタディを行ったが、非積雪地域で、100 ㎞ 2 以下の比較的小さい流域を
対象とした、流況曲線上で 50 日流量程度以下の合致度向上を目的とするのであれば、この方法
は十分に合理的であると言える。
また、より精度の高い解析流量を得るという観点では、パラメータスタディをさらに充実さ
せることが重要である。例えば、使用水量比が 1 に近い値を示した場合でも、解析流況曲線が、
実測流況曲線に対して、少し回転した(言い換えれば、流況曲線の中程で交差する)場合もあ
り得る。このような場合には、必ずしも精度の高い解析流量が得られたとは言い難い。したが
って、パラメータスタディ対象年の使用水量比だけではなく、流況曲線の近似性も考慮してパ
ラメータを設定すべきと考えられる。
【数値シミュレーションに必要な基礎データの信頼性向上】
数値シミュレーションに必要な基礎データという点では、信頼性の高い雨量データを準備す
ることが重要である。今回、Y-1 測水所地点の検討においては、RAP(レーダーアメダス)のデ
ータを参照しながら、隣接流域にある気象観測所の雨量データの妥当性を検証し、これを入力
雨量としたが、実運用を考慮した場合には流量と同様、対象地点で実際に雨量の観測を行い、
公開されている雨量データ(アメダス)との関連性を確認することが望ましい。また同様に、
パラメータスタディに使用する実測流量についても、高い精度で測定されたものでなければな
らない。
3-8
【今後の展開について】
平成 24 年度、平成 25 年度と対象地域を広げて、地点数を増やしながら、小流域地点への数
値シミュレーションを行った結果、ある一定の適用性が確認された。しかしながら、これまで
の検討においては積雪地域の地点は含まれておらず、今後、積雪地域を対象とした場合には、
積雪、融雪等が反映できるよう、より高度なシミュレーションシステムが必要になると考えら
れる。
(2)発電電力量計算の結果
1)X-1 測水所地点
23 年間平均の電力量比は、解析パターン毎に、パターン A で 0.86~1.21、パターン B で 0.94
~1.14、パターン B’で 0.94~1.14 となった。単年の結果でみると、1996 年、2003 年、2004
年等の渇水年において、他の年と比較して大きめの電力量比となる傾向が見られる。
(表 3.2.2、
表 3.2.3、表 3.2.4、図 3.2.5、図 3.2.7、図 3.2.9、図 3.2.16)
2)Y-1 測水所地点
23 年間平均の電力量比は、解析パターン毎に、パターン A で 1.04~1.35、パターン B で 1.03
~1.19、パターン B’で 1.03 となった。単年の結果でみると、1996 年等の渇水年において、他
の年と比較して大きめの電力量比となる傾向が見られる。
(表 3.2.5、表 3.2.6、表 3.2.7、図
3.2.21、図 2.2.23、図 3.2.25、図 3.2.32)
3)考察
実測流量及び解析流量をもとに発電電力量を計算し、2 つの対象測水所の検討を行った結果、
解析パターン A、B、B’で得られた解析流量をもとにした 23 年間平均の電力量比でみて、0.86
~1.35 という結果が得られた。電力量比は使用水量比と比較して、経年的な推移でみれば、多
少大きな幅を持ちつつも、類似した値と言える。なお、渇水年では、電力量比が使用水量比に
対して大きな値となる傾向がある。
例)X-1 測水所地点:1996 年、2004 年、Y-1 測水所地点:1994 年、1996 年
また、電力量計算にあたっては、最小使用流量以下では発電しないよう計算しているため、
実測流量値による計算結果と解析流量値による計算結果では、年間で発電機が稼働する日数も
異なる結果となり、電力量比が大きめに出ている年については、その影響がより顕著に出てい
る。
3-9
表 3.2.2 数値シミュレーション結果(X-1 測水所地点 パターン A)
水沼測水所 パターンA
赤枠はパラメータスタディ対象年の年間可能使用水量比
A-少流量年(1996年)
A-平均流量年(2008年)
A-多流量年(1991年)
年間可能
年間可能 相関係数※ 年間可能
年間可能
相関係数
年間可能
年間可能
相関係数
評価指標
使用水量比 発電電力量比 (参考)
使用水量比 発電電力量比
(参考)
使用水量比 発電電力量比 (参考)
1989
0.84
0.78
0.77
1.01
0.94
0.81
1.09
1.06
0.80
1990
0.86
0.74
0.67
1.02
0.92
0.69
1.10
1.02
0.73
1991
0.80
0.91
0.61
0.87
0.88
0.75
0.96
0.99
0.71
1992
0.84
0.73
0.51
0.94
0.84
0.78
1.06
0.95
0.79
1993
0.88
0.91
0.74
1.03
1.06
0.78
1.13
1.21
0.76
1994
0.87
0.85
0.72
0.96
0.86
0.82
1.08
1.05
0.78
1995
0.88
0.83
0.70
1.11
1.21
0.79
1.29
1.35
0.79
1996
1.03
1.55
0.76
1.37
3.25
0.82
1.70
4.96
0.81
1997
0.93
0.88
0.71
1.20
1.43
0.77
1.39
1.67
0.78
1998
0.96
1.03
0.63
1.19
1.21
0.76
1.26
1.34
0.72
1999
0.76
0.60
0.81
0.92
0.78
0.86
1.02
0.89
0.85
2000
0.77
0.64
0.80
0.97
0.86
0.89
1.10
1.00
0.89
2001
1.08
1.23
0.81
1.27
1.40
0.88
1.42
1.70
0.86
2002
1.03
1.22
0.90
1.24
1.62
0.93
1.42
2.00
0.93
2003
1.32
1.60
0.58
1.58
1.93
0.75
1.73
2.19
0.73
2004
1.21
1.40
0.78
1.44
1.74
0.90
1.67
2.20
0.88
2005
1.09
1.14
0.82
1.23
1.45
0.85
1.33
1.62
0.84
2006
0.77
0.77
0.63
0.95
0.99
0.73
1.07
1.11
0.70
2007
0.70
0.50
0.84
0.79
0.63
0.89
0.89
0.79
0.87
2008
0.77
0.68
0.67
1.01
0.97
0.79
1.11
1.12
0.77
2009
0.94
0.90
0.75
1.14
1.11
0.85
1.25
1.22
0.85
2010
0.98
0.88
0.60
1.20
1.05
0.85
1.33
1.14
0.85
2011
0.97
0.95
0.61
1.15
1.03
0.80
1.25
1.16
0.74
23年平均値
0.90
0.86
0.68
1.07
1.05
0.76
1.19
1.21
0.75
※相関係数は、暦日対応の実測流量と解析流量の相関係数。
パラスタ期間
図 3.2.4 年間可能使用水量比(X-1 測水所地点 パターン A)
図 3.2.5 年間可能発電電力量比(X-1 測水所地点 パターン A)
3-10
表 3.2.3 数値シミュレーション結果(X-1 測水所地点 パターン B)
水沼測水所 パターンB
パラスタ期間
評価指標
1989
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
23年平均値
赤枠はパラメータスタディ対象期間の年間可能使用水量比
B-少流量期(1995~1997年)
B-平均流量期(2007~2009年)
B-多流量期(1989~1991年)
年間可能
年間可能
相関係数
年間可能
年間可能
相関係数
年間可能
年間可能
相関係数
使用水量比 発電電力量比 (参考)
使用水量比 発電電力量比
(参考)
使用水量比 発電電力量比 (参考)
0.93
0.90
0.75
1.05
1.02
0.74 3年平均 1.05
1.02
0.74
0.91
0.80
0.67
1.05
0.96
0.67 1.02
1.05
0.96
0.67
0.85
0.96
0.61
0.96
1.08
0.60
0.96
1.08
0.60
0.87
0.78
0.51
0.99
0.91
0.48
0.99
0.91
0.48
0.93
0.97
0.74
1.07
1.17
0.74
1.07
1.17
0.74
0.91
0.92
0.72
1.04
1.11
0.70
1.04
1.11
0.70
3年平均 0.95
0.91
0.70
1.15
1.18
0.69
1.15
1.18
0.69
1.02
1.17
2.20
0.76
1.53
4.16
0.76
1.53
4.16
0.76
1.01
1.03
0.71
1.26
1.47
0.70
1.26
1.47
0.70
1.01
1.09
0.62
1.13
1.24
0.59
1.13
1.24
0.59
0.79
0.64
0.80
0.92
0.77
0.78
0.92
0.77
0.78
0.83
0.71
0.80
0.99
0.87
0.78
0.99
0.87
0.78
1.14
1.32
0.81
1.31
1.61
0.79
1.31
1.61
0.79
1.10
1.38
0.90
1.32
1.85
0.88
1.32
1.85
0.88
1.40
1.72
0.57
1.64
2.04
0.56
1.64
2.04
0.56
1.31
1.59
0.77
1.56
2.13
0.73
1.56
2.13
0.73
1.15
1.24
0.82
1.33
1.60
0.81
1.33
1.60
0.81
0.82
0.85
0.63
0.96
1.01
0.61
0.96
1.01
0.61
0.76
0.57
0.84 3年平均 0.90
0.80
0.82
0.90
0.80
0.82
0.82
0.77
0.66 0.99
0.97
0.97
0.65
0.97
0.97
0.65
0.99
0.97
0.75
1.14
1.12
0.74
1.14
1.12
0.74
1.03
0.93
0.59
1.17
1.07
0.58
1.17
1.07
0.58
1.02
0.99
0.60
1.16
1.13
0.57
1.16
1.13
0.57
0.95
0.94
0.68
1.11
1.14
0.66
1.11
1.14
0.66
図 3.2.6 年間可能使用水量比(X-1 測水所地点 パターン B)
図 3.2.7 年間可能発電電力量比(X-1 測水所地点 パターン B)
3-11
表 3.2.4 数値シミュレーション結果(X-1 測水所地点 パターン B’)
赤枠はパラメータスタディ対象期間の年間可能使用水量比
水沼測水所 パターンB'
パラスタ期間
評価指標
1989
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
23年平均値
B'-少流量期(1994~1998年)
B'-平均流量期(2005~2009年)
B'-多流量期(1989~1993年)
年間可能
年間可能
相関係数
年間可能
年間可能
相関係数
年間可能
年間可能
相関係数
使用水量比 発電電力量比
(参考)
使用水量比 発電電力量比
(参考)
使用水量比 発電電力量比 (参考)
0.93
0.90
0.75
1.05
1.02
0.74 5年平均 1.05
1.02
0.74
0.91
0.80
0.67
1.05
0.96
0.67 1.02
1.05
0.96
0.67
0.85
0.96
0.61
0.96
1.08
0.60
0.96
1.08
0.60
0.87
0.78
0.51
0.99
0.91
0.48
0.99
0.91
0.48
0.93
0.97
0.74
1.07
1.17
0.74
1.07
1.17
0.74
5年平均 0.91
0.92
0.72
1.04
1.11
0.70
1.04
1.11
0.70
0.99
0.95
0.91
0.70
1.15
1.18
0.69
1.15
1.18
0.69
1.17
2.20
0.76
1.53
4.16
0.76
1.53
4.16
0.76
1.01
1.03
0.71
1.26
1.47
0.70
1.26
1.47
0.70
1.01
1.09
0.62
1.13
1.24
0.59
1.13
1.24
0.59
0.79
0.64
0.80
0.92
0.77
0.78
0.92
0.77
0.78
0.83
0.71
0.80
0.99
0.87
0.78
0.99
0.87
0.78
1.14
1.32
0.81
1.31
1.61
0.79
1.31
1.61
0.79
1.10
1.38
0.90
1.32
1.85
0.88
1.32
1.85
0.88
1.40
1.72
0.57
1.64
2.04
0.56
1.64
2.04
0.56
1.31
1.59
0.77
1.56
2.13
0.73
1.56
2.13
0.73
1.15
1.24
0.82 5年平均 1.33
1.60
0.81
1.33
1.60
0.81
0.82
0.85
0.63 1.03
0.96
1.01
0.61
0.96
1.01
0.61
0.76
0.57
0.84
0.90
0.80
0.82
0.90
0.80
0.82
0.82
0.77
0.66
0.97
0.97
0.65
0.97
0.97
0.65
0.99
0.97
0.75
1.14
1.12
0.74
1.14
1.12
0.74
1.03
0.93
0.59
1.17
1.07
0.58
1.17
1.07
0.58
1.02
0.99
0.60
1.16
1.13
0.57
1.16
1.13
0.57
0.95
0.94
0.68
1.11
1.14
0.66
1.11
1.14
0.66
図 3.2.8 年間可能使用水量比(X-1 測水所地点 パターン B’)
図 3.2.9 年間可能発電電力量比(X-1 測水所地点 パターン B’)
3-12
図 3.2.10 23 年間平均流況曲線(X-1 測水所地点 パターン A)
3-13
図 3.2.11 23 年間平均流況曲線(X-1 測水所地点 パターン B)
図 3.2.12 23 年間平均流況曲線(X-1 測水所地点 パターン A、B 比較)
3-14
図 3.2.13 23 年間平均流況曲線(X-1 測水所地点 パターン B’)
図 3.2.14 23 年間平均流況曲線(X-1 測水所地点 パターン B、B’比較)
3-15
図 3.2.15 23 年間平均年間可能使用水量比(X-1 測水所地点 パターン A、B、B’比較)
図 3.2.16 23 年間平均年間可能発電電力量比(X-1 測水所地点 パターン A、B、B’比較)
3-16
図 3.2.17 ハイドログラフ(X-1 測水所地点 パターン A 2008 年)
図 3.2.18 ハイドログラフ(X-1 測水所地点 パターン B 2008 年)
3-17
図 3.2.19 Y-1 測水所地点における入力雨量
3-18
表 3.2.5 数値シミュレーション結果(Y-1 測水所地点 パターン A)
赤枠はパラメータスタディ対象年の年間可能使用水量比
仁科川測水所 パターンA
パラスタ期間
評価指標
1989
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
23年平均値
A-少流量年(1994年)
年間可能
年間可能
相関係数
使用水量比
発電電力量比 (参考)
1.07
1.13
0.90
1.01
1.10
0.80
1.05
1.21
0.88
1.14
1.26
0.75
0.94
1.00
0.91
1.05
1.29
0.75
1.08
1.18
0.92
1.12
1.28
0.85
0.80
0.66
0.83
1.08
1.23
0.70
0.94
0.94
0.88
0.72
0.68
0.85
0.83
0.81
0.93
1.10
1.22
0.75
0.95
0.98
0.95
0.93
1.03
0.86
1.14
1.33
0.91
0.86
0.93
0.77
0.97
1.00
0.94
1.18
1.34
0.70
0.87
0.94
0.79
0.97
1.06
0.76
0.81
0.81
0.90
0.97
1.04
0.83
A-平均流量年(2009年)
年間可能
年間可能
相関係数
使用水量比 発電電力量比
(参考)
1.22
1.27
0.89
1.16
1.23
0.81
1.17
1.26
0.90
1.25
1.35
0.76
1.07
1.16
0.92
1.21
1.82
0.74
1.25
1.45
0.90
1.36
1.97
0.85
0.93
1.02
0.85
1.23
1.27
0.71
1.04
1.02
0.88
0.83
0.81
0.85
0.94
0.96
0.94
1.24
1.37
0.79
1.08
1.09
0.96
1.04
1.11
0.87
1.22
1.39
0.90
1.02
1.17
0.77
1.07
1.12
0.95
1.31
1.47
0.70
1.02
1.18
0.80
1.08
1.14
0.74
0.92
0.91
0.89
1.10
1.19
0.83
A-多流量年(2011年)
年間可能
年間可能
相関係数
使用水量比 発電電力量比
(参考)
1.33
1.37
0.88
1.29
1.38
0.81
1.29
1.41
0.90
1.38
1.49
0.76
1.19
1.32
0.91
1.44
2.36
0.73
1.40
1.66
0.89
1.55
2.45
0.85
1.10
1.30
0.84
1.33
1.36
0.71
1.18
1.20
0.88
0.94
0.94
0.84
1.03
1.06
0.94
1.41
1.63
0.79
1.20
1.23
0.96
1.16
1.25
0.87
1.34
1.57
0.89
1.16
1.40
0.78
1.18
1.32
0.95
1.43
1.67
0.69
1.15
1.35
0.81
1.20
1.24
0.75
1.02
1.03
0.89
1.23
1.35
0.83
図 3.2.20 年間可能使用水量比(Y-1 測水所地点 パターン A)
図 3.2.21 年間可能発電電力量比(Y-1 測水所地点 パターン A)
3-19
表 3.2.6 数値シミュレーション結果(Y-1 測水所地点 パターン B)
赤枠はパラメータスタディ対象期間の年間可能使用水量比
仁科川測水所 パターンB
B-少流量期(1994~1996年)
B-平均流量期(2007~2009年)
B-多流量期(2009~2011年)
年間可能
年間可能
相関係数
年間可能
年間可能
相関係数
年間可能
年間可能
相関係数
評価指標
使用水量比
発電電力量比 (参考)
使用水量比 発電電力量比
(参考)
使用水量比 発電電力量比
(参考)
1989
1.07
1.13
0.90
1.12
1.17
0.90
1.22
1.27
0.89
1990
1.01
1.10
0.80
1.04
1.08
0.80
1.16
1.23
0.81
1991
1.05
1.21
0.88
1.06
1.12
0.90
1.17
1.26
0.90
1992
1.14
1.26
0.75
1.13
1.19
0.76
1.25
1.35
0.76
1993
0.94
1.00
0.91
0.96
0.98
0.92
1.07
1.16
0.92
3年平均
1994
1.05
1.29
0.75
1.03
1.43
0.75
1.21
1.82
0.74
1.08
1995
1.08
1.18
0.92
1.11
1.29
0.91
1.25
1.45
0.90
1996
1.12
1.28
0.85
1.17
1.53
0.85
1.36
1.97
0.85
1997
0.80
0.66
0.83
0.78
0.81
0.85
0.93
1.02
0.85
1998
1.08
1.23
0.70
1.14
1.18
0.71
1.23
1.27
0.71
1999
0.94
0.94
0.88
0.93
0.90
0.89
1.04
1.02
0.88
2000
0.72
0.68
0.85
0.73
0.68
0.86
0.83
0.81
0.85
2001
0.83
0.81
0.93
0.84
0.84
0.94
0.94
0.96
0.94
2002
1.10
1.22
0.75
1.10
1.15
0.79
1.24
1.37
0.79
2003
0.95
0.98
0.95
0.97
0.96
0.95
1.08
1.09
0.96
2004
0.93
1.03
0.86
0.93
0.95
0.87
1.04
1.11
0.87
2005
1.14
1.33
0.91
1.10
1.21
0.91
1.22
1.39
0.90
2006
0.86
0.93
0.77
0.87
0.96
0.77
1.02
1.17
0.77
2007
0.97
1.00
0.94 3年平均 0.96
0.94
0.95
1.07
1.12
0.95
2008
1.18
1.34
0.70 0.99
1.17
1.29
0.70
1.31
1.47
0.70
2009
0.87
0.94
0.79
0.89
0.98
0.79 3年平均 1.02
1.18
0.80
2010
0.97
1.06
0.76
0.97
1.02
0.75 1.00
1.08
1.14
0.74
2011
0.81
0.81
0.90
0.84
0.81
0.90
0.92
0.91
0.89
23年平均値
0.97
1.04
0.83
0.99
1.03
0.83
1.10
1.19
0.83
パラスタ期間
図 3.2.22 年間可能使用水量比(Y-1 測水所地点 パターン B)
図 3.2.23 年間可能発電電力量比(Y-1 測水所地点 パターン B)
3-20
表 3.2.7 数値シミュレーション結果(Y-1 測水所地点 パターン B’)
赤枠はパラメータスタディ対象年の年間可能使用水量比
仁科川測水所 パターンB'
パラスタ期間
評価指標
1989
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
23年平均値
B'-少流量期(1993~1997年)
B'-平均流量期(2005~2009年)
B'-多流量期(2007~2011年)
年間可能
年間可能
相関係数
年間可能
年間可能
相関係数
年間可能
年間可能
相関係数
使用水量比
発電電力量比 (参考)
使用水量比 発電電力量比
(参考)
使用水量比 発電電力量比
(参考)
1.12
1.17
0.90
1.12
1.17
0.90
1.12
1.17
0.90
1.04
1.08
0.80
1.04
1.08
0.80
1.04
1.08
0.80
1.06
1.12
0.88
1.06
1.12
0.90
1.06
1.12
0.90
1.13
1.19
0.75
1.13
1.19
0.76
1.13
1.19
0.76
5年平均 0.96
0.98
0.91
0.96
0.98
0.92
0.96
0.98
0.92
1.00
1.03
1.43
0.75
1.03
1.43
0.75
1.03
1.43
0.75
1.11
1.29
0.92
1.11
1.29
0.91
1.11
1.29
0.91
1.17
1.53
0.85
1.17
1.53
0.85
1.17
1.53
0.85
0.78
0.81
0.83
0.78
0.81
0.85
0.78
0.81
0.85
1.14
1.18
0.70
1.14
1.18
0.71
1.14
1.18
0.71
0.93
0.90
0.88
0.93
0.90
0.89
0.93
0.90
0.89
0.73
0.68
0.85
0.73
0.68
0.86
0.73
0.68
0.86
0.84
0.84
0.93
0.84
0.84
0.94
0.84
0.84
0.94
1.10
1.15
0.75
1.10
1.15
0.79
1.10
1.15
0.79
0.97
0.96
0.95
0.97
0.96
0.95
0.97
0.96
0.95
0.93
0.95
0.86
0.93
0.95
0.87
0.93
0.95
0.87
1.10
1.21
0.91 5年平均 1.10
1.21
0.91
1.10
1.21
0.91
0.87
0.96
0.77 0.99
0.87
0.96
0.77
0.87
0.96
0.77
0.96
0.94
0.94
0.96
0.94
0.95 5年平均 0.96
0.94
0.95
1.17
1.29
0.70
1.17
1.29
0.70 0.96
1.17
1.29
0.70
0.89
0.98
0.79
0.89
0.98
0.79
0.89
0.98
0.79
0.97
1.02
0.76
0.97
1.02
0.75
0.97
1.02
0.75
0.84
0.81
0.90
0.84
0.81
0.90
0.84
0.81
0.90
0.99
1.03
0.83
0.99
1.03
0.83
0.99
1.03
0.83
図 3.2.24 年間可能使用水量比(Y-1 測水所地点 パターン B’)
図 3.2.25 年間可能発電電力量比(Y-1 測水所地点 パターン B’)
3-21
図 3.2.26 23 年間平均流況曲線(Y-1 測水所地点 パターン A)
3-22
図 3.2.27 23 年間平均流況曲線(Y-1 測水所地点 パターン B)
図 3.2.28 23 年間平均流況曲線(Y-1 測水所地点 パターン A、B 比較)
3-23
図 3.2.29 23 年間平均流況曲線(Y-1 測水所地点 パターン B’)
図 3.2.30 23 年間平均流況曲線(Y-1 測水所地点 パターン B、B’比較)
3-24
図 3.2.31 23 年間平均年間可能使用水量比(Y-1 測水所地点 パターン A、B、B’比較)
図 3.2.32 23 年間平均年間可能発電電力量比(Y-1 測水所地点 パターン A、B、B’比較)
3-25
図 3.2.33
ハイドログラフ(Y-1 測水所地点 パターン A 2009 年)
図 3.2.34 ハイドログラフ(Y-1 測水所地点 パターン B 2009 年)
3-26
表 3.2.8
1989年
1990年
1991年
1992年
1993年
1994年
1995年
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
平均値
変動係数
X-1 測水所地点における河川流量と変動係数
年間河川総流量(m3/s-D)
単年流量
連続3年間の平均流量
691
529
741
654
534
602
584
620
518
545
434
512
207
386
294
311
586
362
586
489
494
555
389
490
342
408
326
352
290
319
352
323
653
432
514
506
519
562
442
492
526
496
540
503
550
539
485
475
0.28
0.21
3-27
50日流量以下の河川流量(m3/s-D)
単年流量
連続3年間の平均流量
536
477
528
514
511
506
461
500
437
470
384
427
200
341
280
288
473
318
485
413
460
473
354
433
320
378
315
330
272
302
330
306
497
366
466
431
459
474
415
447
489
455
489
464
498
492
422
415
0.22
0.18
3.3
流量算定方法に関するその他の調査
3.3.1
各種流量データの利用に関する調査
(1)目的
本調査は、一般に公開されている各種流量データが、発電計画に活用できないかという観点
で行った。平成 24 年度の調査では、国土交通省が所管している水文水質データベース及びダム
諸量データベースに関する概要調査がなされており、今回はその結果を踏まえ、データ公開さ
れている観測所の地点数が多い水文水質データベースの活用について調査した。
(2)調査方法
本調査の対象地点については、水文水質データベースで流量資料が公開されている観測所地
点と、前述の 2.3.2 項の検討において対象とした指定測水所地点が、同一水系で上下流の位置
関係にある 2 つの組合せを選出した。そして、両者の流量データを 100 ㎞ 2 あたりで流量換算
し、ハイドログラフと流況曲線を作成して比較した。なお、比較対象とした期間は、1989 年か
ら 2012 年の間で、両者においてデータ欠測のない期間とした。
【調査対象地点及び対象期間】
・X 地域:X-2 測水所地点(CA=128.2 ㎞ 2)と H 観測所(CA=188.0 ㎞ 2)の比較
1989~1991 年、1999 年、2002 年、2008~2009 年、2012 年(8 年間)
・Y 地域:Y-2 測水所地点(CA=110.8 ㎞ 2)と O 観測所(CA=322.0 ㎞ 2)の比較
1989~1998 年、2000 年~2002 年、2006~2008 年、2010~2011 年(18 年間)
(3)調査結果
1)X-2 測水所地点と H 観測所地点の比較
X-2 測水所地点と H 観測所地点の比流量(CA=100km2)の比較を、図 3.3.1 及び図 3.3.2 に示
す。例示した 2009 年のハイドログラフで見ると、下流側に位置する H 観測所地点の流量が全体
的に少ない。特に、4 月から 9 月にかけては、他の時期に対してその傾向が強い。なお、2009
年のデータによる相関係数は 0.880 と良好な値となった。
8 年間平均の流況曲線で見ると、日数が少ないところでは、H 観測所地点が比較的多い流量で、
60 日流量付近を境に両者は逆転し、日数が多くなるにつれその差は大きくなっている。
2)Y-2 測水所地点と O 観測所地点の比較
Y-2 測水所地点と O 観測所地点の比流量(CA=100km2)の比較を、図 3.3.3 及び図 3.3.4 に示
す。例示した 2011 年のハイドログラフで見ると、下流側に位置する O 測水所地点の流量が全体
的に少ない。4 月から 9 月にかけては、前述の 1)ほどではないが、他の時期に対してその傾向
が強い。なお、2011 年のデータによる相関係数は 0.967 と極めて良好な値となった。
3-28
18 年平均の流況曲線で見ると、全日数において、O 観測所地点の流量が小さく、日数が多く
なるにしたがって両者の差は次第に小さくなっている。
3)考察
今回の 2 地域での比較の結果として、同一水系の下流側地点の比流量は、上流側地点に比べ
て概ね少ない傾向を示した。この傾向は、4 月~9 月において強く表れているが、この時期には、
上下流両地点間での農業用の慣行水利等の水運用の影響もあると考えられる。
Y-2 測水所地点と O 観測所地点の比較で示したように、ハイドログラフの合致度がよく、相
関係数も非常に高い。また、流況曲線においても、曲線の類似性が確認できるような場合には、
このような流量データを発電水力調査に適用することも可能であると思われる。
3-29
相関係数:0.880(2009 年)
図 3.3.1 ハイドログラフにおける X-2 測水所地点と H 観測所地点の流量の比較の一例(2009 年)
図 3.3.2
8 年間平均の流況曲線における X-2 測水所地点と H 観測所地点の流量の比較
3-30
相関係数:0.967(2011 年)
図 3.3.3 ハイドログラフにおける Y-2 測水所地点と O 観測所地点の流量の比較の一例(2011 年)
図 3.3.4
18 年間平均の流況曲線における Y-2 測水所地点と O 観測所地点の流量の比較
3-31
3.3.2
数値シミュレーション手法に関する情報収集
(1)目的
前述の 3.2 項において、数値シミュレーションによる流量算定方法の適用性を検討した。こ
の中で、数値シミュレーションシステムの中でも、分布型物理型モデルの代表として HYDREEMS
を用いて検討したが、本項では、HYDREEMS 以外の数値シミュレーション手法の現状について情
報収集を行った結果を示す。
(2)調査方法
本調査では、HYDREEMS と同様に分布型物理型モデルである WEP(Water and Energy transfer
Processes)モデルを調査の対象とした。WEP モデルは、独立行政法人土木研究所・科学技術振
興事業団及び賈仰文が著作権を有するフリーソフトウェアで、分布物理型の水循環定量化モデ
ルである。もともと、土地利用が複雑な中小都市河川流域の水循環の実態を解析し、そのモデ
ル解析を通して、将来の変化を把握すると共に、水循環系の回復を図る対策の効果を明らかに
することを目的として構築されたものである。
(出典: 土木研究所・流域スケール水循環と物質
循環に関する研究情報サイト)
この WEP モデルを使用して、将来の流域全体の渇水時の流況予測と対策、あるいは水利用へ
の影響分析などの調査計画業務を行っているという情報があり、山間部小流域(50 ㎞ 2 程度)
での流出解析モデルとしての利用の可能性について、WEP モデルの取り扱い実績を持つ都内の
大手建設コンサルタントに聞き取り調査を行った。
(3)調査結果
WEP モデルについて聞き取り調査を行った結果は以下のとおり。
1)従来の解析手法との比較
表 3.3.1 に WEP モデルと従来の解析手法との比較を示す。
表 3.3.1
WEP モデルと従来の解析手法との比較
集中型モデル
(貯留関数法、タンクモデル等)
WEPモデル
計算の対象
流出量
流出量、浸透量、蒸発量
流域分割
主観的に設定した地点毎に分割する必要
対象流域を機械的に1kmメッシュで分割す
がある。
る他には、流域分割を行わない。
実測流量を再現しうるような定数を、試
定数は、土地利用、土壌、表層地質により
行錯誤(トライアル計算)により設定す
客観的に求まり、その後実測流量を再現し
る必要がある。
うるように微調整する。
再現性は、洪水時(貯留関数法)もしく
洪水時と低水時の双方の再現性を確保し
は低水時(タンクモデル)のどちらかに
ている。
(やや低水時を重視している印象)
流域定数
流出量の再現性
重点を置いて確保している。
3-32
2)入力データの設定方法
WEP モデルの解析メッシュの大きさは 1km 前後で設定可能。(参考:前述 3.2 項の検討では、
HYDREEMS の解析メッシュを 250m に設定した。
)
表 3.3.2 に入力データの設定方法について記す。
表 3.3.2 入力データ等の設定方法
モデル
項目
気象データ(降雨、風速、日
照時間、気温、相対密度)
①蒸発散
モデル
土地利用データ
植生データ
土壌層の浸透係数
②地表流・
地下水流出
モデル
帯水層の厚さ
(地下5層の厚さ)
各地下層の透水係数
各地下層の貯留係数
③河道流
モデル
地表標高
設定方法
対象流域内のアメダス観測所気象データ
国土数値情報 土地利用100mメッシュを使用して、1kmメッ
シュ内の割合を設定
植生の「葉面積指数」「植生高」
「植生の季節変化」等は、
(独)土木研究所の資料を参考に設定。
参考文献「実務者のための地下水モデリング」を参考に、
実測と計算流量の整合より調整。
参考文献「日本の地下水」より、対象流域の各層の厚さを
設定。
参考文献「実務者のための地下水モデリング」より1次設
定値を決定し、実測と計算流量の整合より調整。
参考文献「日本の地下水」より、1次設定値を決定し、実
測と計算流量の整合より調整。
数値地図50mメッシュ標高を使用して、1kmメッシュの平均
地盤高を設定。
3)その他
上記 1)
、2)以外に個別に質問を行い、回答を得たものについて以下に記す。
【WEP モデル利用に関する手続き等】
①(Q: WEP モデルの利用方法は。
)土木研究所(以下「土研」
)と使用許諾契約を交わし、年間
に数千円程度の使用料を支払えばソースプログラムと使用マニュアルが得られる。
②(Q: 水力の新規参入者が WEP モデルを利用することを想定した場合、使用マニュアルに従え
ば利用することは可能か。
)土研から提供されるプログラムは、WEP モデルから成る解析エン
ジン本体部分で、解析に必要な気象や地形データを個別に取込む必要がある。我々は独自の
GIS データの活用と取込むためのプログラムを別途作成し、作業を効率的に進めているが、
このような作業をゼロから始めるのは難しいだろう。
③(Q: 新規参入者が WEP モデルを用いた解析業務を依頼してきた場合、対応は可能か。また、
それは同業他社でも可能か。
)対応可能である。土研へのプログラムの使用許諾手続きはどち
らが行ってもよいと思う。また、同業の建設コンサルであれば、WEP モデルを使用するため
3-33
のノウハウを持っていると思うので対応可能であると思う。なお、WEP モデルによる解析結
果について、報告書の抜粋等を土研に提出する必要がある。
【山間部小流域への適用】
①(Q: 小水力開発で対象となる山間部への適用はどうか。
)我々の解析事例からみて山間地河
川流域でも適用は可能だと思う。ただ、これまで我々が解析の対象とした流域は数千 km2 の
規模である。
②(Q: HYDREEMS は、地下水流や蒸散過程にタンクモデルを採用しているが、WEP モデルはどう
か。
)物理定数を既往のものから与えて、運動方程式を解くというもの。
③(Q: 各種パラメータの設定、調整と実流量の再現性に関する評価指標は。
)誤差の指標とし
て、ボリューム(総量)誤差、波形(パターン)誤差、ピーク誤差を考え、解析の目的に応
じた指標を参照することにしている。これら指標の基準となるべき値はないため、我々は、
誤差±10%を目安としている。
④(Q: HYDREEMS の場合、50km2 程度の小流域での解析精度を確保するために、メッシュの間隔
を 250m まで狭めた。WEP モデルの場合、メッシュ間隔を任意に設定することは。
)可能であ
るが、メッシュを狭めるとメッシュ間の流速変動が大きくなることで計算結果が不安定にな
る可能性がある。メッシュを狭めるケースでは、運動方程式を解くモデルよりタンクを用い
たモデルの方が向いているかもしれない。
3-34
第4章
4.1
至近年の小水力発電計画の流量資料に関する事例調査
概要
河道及びその他(ダム、湧水、農業用水、水道用水等)の地点において、至近年に開発された
発電所の事例調査を行い、流量資料の整備期間、流量算定方法等を整理した。
また、前述 2.3.1 項で示したとおり、水利使用の手続きについては簡素化の動向もあるため、
該当事例に関する情報もあわせて調査した。
4.2
事例調査
(1)調査方法
本調査は、開発事業者に対する聞き取りにより実施した。聞き取りした項目は以下のとおり。
【事例調査聞き取り項目】
1.
事例の特徴
2.
業者名/所在地
3.
実施段階
4.
発電所の諸元など
5.
他目的施設との係わりの有無
6.
許認可手続き
7.
流量資料
8.
その他特記事項
(2)調査結果
表 4.2.1 に本調査の結果を示す。
4-1
表 4.2.1 至近年の小水力発電計画の流量資料に関する事例調査結果
事例② 猪苗代小水力発電所
事例③ A発電所(仮称)
・既「許可水利権」を利用した従属発電所
・既設砂防ダム利用発電所
・実測+近傍指定測水所 流量相関から流量資料を整備 ・従属元水利使用者による流量資料を使用
・「慣行水利権」を利用した従属発電所
・市町村による流量資料+実測流量資料
山梨県企業局 / 山梨県
株式会社 中川水力 / 福島県
山梨県企業局 / 山梨県
山形県企業局 / 山形県
山梨県企業局 / 山梨県
工事中 (平成25年10月着工)
工事中 (平成25年6月着工)
計画(許認可手続準備)中
平成26年4月着工予定
平成22年4月運転開始
富士川水系大城川
阿賀野川水系長瀬川
富士川水系塩川
最上川水系金山川(一級河川)
-
10 kW
420 kW
80 kW
項 目
1.事例の特徴
事例① 大城川発電所
2.事業者/所在地
3.実施段階
事例④ 神室発電所
・既設ダムの利水・河川維持の為の放流水利用発電所
・既設ダム管理用流量資料を使用
事例⑤ 若彦トンネル湧水発電所
・トンネル湧水利用発電所
・トンネル坑口実測流量に基づき流量資料を整備
4.発電所の諸元など
①河川名
②発電所出力
49 kW
3
③最大使用水量
④有効落差
⑤水車の種類(型式)
⑥発電機の種類(型式)
⑦自家発・売電の別
730 kW
260 kW
3
3
3
3
0.56 m /s
2.75 m /s
1.00 m /s
1.00 m /s
1.40 m /s
0.21 m3/s
13 m
34.75 m
33.97 m
2m
38.3 m
52 m
インラインプロペラ水車
横軸フランシス水車
横軸フランシス水車
(未定)
横軸フランシス水車
横軸単輪単流渦巻型フランシス水車
同期発電機
横軸3相誘導発電機
横軸3相同期発電機
(未定)
横軸三相交流誘導発電機
横軸3相誘導発電機
売電
売電
売電
売電
売電
(予定)
有
(予定)
(予定)
有
(FIT申請予定)
FIT認定
(FIT申請予定)
(FIT申請予定)
H21年度地域エネルギー等導入促進対策補助金
1/2補助
有
有
有
有
有
「有」の場合、
①施設の名称
山梨県大城川砂防ダム
猪苗代町土地改良区 土田下堰(はにたしもぜき)用水路
(灌漑用堰及び水路)
山形県神室ダム(平成5年完成)、
および最上広域水道事業
水路等共同施設(トンネル湧水排水路と
発電用水圧管路を兼用)
②施設の目的
砂防
農業用水
農業用水
治水・上水(下記注)・河川維持
道路
「農業用水」の場合、
③農業の水利使用
-
許可水利
慣行水利
(注) 「山形県最上広域水道事業」
-
④従属運転/非完全従属
-
完全従属である
完全従属である
(注) 従属運転
-
(不要)
平成26年1月
(不要)
平成26年3月(届出済・受理処理中)
第1回 平成20年10月
第2回 平成21年7月
-
-
-
-
-
平成25年6月 許可申請
平成25年6月 許可申請 / (登録申請中)
(登録申請予定)
平成26年2月 登録申請
(河川法適用外)
平成25年10月 許可
平成25年11月 許可 / (平成26年4月 登録予定)
-
(未処分)
-
⑧補助金・FIT認定の有無
「有」の場合、その内容
5.他目的施設との係わりの有無
6.許認可手続き
1) 電事法(48条 工事計画の届出)
①届出・受理年月
②特記事項
2) 河川法(23条 流水占用の許可・登録)
①申請年月
②処分(許可・登録)年月
③根拠法、処分権者等
④その他特記事項
河川法第23条、第24条、第26条第1項 県知事
-
河川法第23条
河川法第23条の2 県知事
許可期限:平成26年3月31日
登録開始:平成26年4月1日
河川法第23条の2、第24条、第26条第1項
-
最上広域水道事業(山形県企業局)の水利使用(変更)
に関する第24条、第26条第1項申請も同時に手続中。
-
7.流量資料
①使用した流量資料
②流量資料の期間、種類
③運開後の測水義務、方法等
8.その他特記事項
近傍の指定測水所10年分流量資料と計画区域内で新た 従属元水利使用の取水量等関連施設の流量資料を使
に実測した流量資料1年分を使用した。
用した。
流量相関による換算方法により、計画地点の10年分の 測水者は、猪苗代町土地改良区
流量資料を算出した。
10年、日平均流量
発電設備予定地点で新たに実測した流量(平成21年10 既設神室ダム(山形県管理)の流入量、放流量などダム 実測したトンネル湧水流量:平成18年3月から平成21年9
月から実測中)を使用する。
管理用流量データを使用し、発電計画の10年分の流量 月まで、若彦道路トンネル河口湖側坑口付近に設けた
農業用水(従属元水利使用)施設が河川から取水する地 資料を算出した。
流量観測施設(注:四角堰での水位を自記記録)におい
点での流量資料については、既往の資料(平成22年2月
てトンネル湧水量を実測した。
~10月)に加えて、平成25年11月から流量を観測中。
5年、日平均流量
毎日の取水量を測定し、年ごとにその結果を取りまとめ 取水データは、P-Q曲線から使用水量を算出する。
て、翌年の1月31日までに河川管理者に報告する。
従属元水利使用の流量は、P-Hにて流量測定している
取水管理として、発電出力からP-Q換算で発電使用水
量を算定することとしているが、過取水防止のため水路
に水位検知器を設置し、検知器が作動した場合発電所
を停止する機構を設けた。
-
4-2
1年、日平均流量
10年、日平均流量
3.5年、日平均流量
(未処分)
(未処分)
-
(未処分)
-
-
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