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需要国へと変貌する東南アジアの LNG受入基地建設動向
需要国へと変貌する東南アジアの LNG受入基地建設動向 2015年12月17日 調査部 永井 一聡 1 東南アジアのエネルギー需要動向 ・東南アジア・・・伝統的なエネルギー資源生産地域 ・ブルネイ・・・1972年よりLNG輸出 ・インドネシア・・・1977年よりLNG輸出、 2000年代中盤までLNG輸出量世界第一位 世界最大の石炭輸出国 (2005年まで原油の純輸出国) ・マレーシア・・・1983年よりLNG輸出、 2014年のLNG輸出量は世界第二位 (2013年まで石油の純輸出国) 一方、 堅調な人口増加と急速な経済成長により、 エネルギー需要は大幅拡大、 今後はエネルギーの需要地域へ成長の見込み 2 地域別一次エネルギー消費とGDPの推移見通し 出所:IEA「World Energy Outlook 2015」 ※東南アジア・・・ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの10カ国 3 東南アジアのエネルギー需要動向 ○東南アジア※の一次エネルギー需要推移(2000年対2013年) 出所:IEA「SoutheastAsia Energy Outlook 2015」 ※東南アジア・・・ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの10カ国 ・2000年~2013年でエネルギー需要は1.5倍 ・エネルギー資源の域内振り向けが進む 4 東南アジア※の燃料種別消費見通し 出所:IEA「SoutheastAsia Energy Outlook 2015」 ※東南アジア・・・ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの10カ国 ・天然ガス消費量は2040年までに65%増加。 ・域内ガス需要の増加により、今後は天然ガスの純輸入地域へ。 5 東南アジア各国の天然ガス消費量推移 出所:IEA「Natural Gas Information 2015」 6 東南アジアにおけるLNG輸入の開始 ・経済成長に伴う域内ガス需要(発電・産業用)の増加 ・域内天然ガス生産量・埋蔵量の伸び悩み ・天然ガス生産地域と需要地域の離隔 ・島嶼部が多く、天然ガスパイプライン建設が困難 LNGによる天然ガス調達・供給へ ・2011年、タイが東南アジアで初のLNG輸入開始 ・インドネシア・マレーシアといった従来のLNG輸出国も、 長期売買契約に伴う供給(輸出)義務を抱えつつ、 LNG受入基地を建設 ・パイプラインや発電所といった中下流のインフラ整備も課題 7 世界のLNG輸入量に占めるアジアの割合 (万トン) タイ シンガポール マレーシア 2009 ‐ ‐ ‐ 2010 ‐ ‐ ‐ 2011 72 ‐ ‐ 2012 98 ‐ ‐ 2013 142 94 162 2014 133 185 176 出所:IGU 「LNG Industry」 データ 8 東南アジアのLNG基地建設状況 別添カラー資料1あり 出所:各種情報を元にJOGMEC作成 9 国別LNG基地建設状況~タイ~ ・アジアでは有数の石油・ガス生産国 ・国内ガス需要の増加に伴い、 1998年ミャンマーからのパイプラインガス輸入開始 ・2011年、Map Ta Phut LNG基地の操業を開始 出所:IEA「Natural Gas Information」のデータを基にJOGMEC作成 10 国別LNG基地建設状況~タイ~ ・Map Ta Phut LNG基地 東南アジア初のLNG受入基地 LNG受入能力:500万トン/年 (受入能力1000万トン/年への 拡張計画あり。(2017年建設 完了予定)) 出所:PTT LNGホームページ ・ミャンマーDawei経済特区におけるLNG受入基地建設計画 Shellおよびタイ企業(Italian‐Thai Development Public Company Ltd. 及びLNG Plus International Company Ltd.)の共同参画 ミャンマー国内およびタイへの天然ガス供給を計画 11 国別LNG基地建設状況~マレーシア~ ・世界第2位のLNG輸出国 (2014年のLNG輸出量約2500万トン) ・近年の天然ガス埋蔵量・生産量は伸び悩み ・国内ガス需要は増加、ただしLNG供給義務(輸出)を抱える ・ガス需要の中心はマレー半島である一方、 埋蔵量に余裕 があるのはボルネオ(カリマンタン)島沖合ガス田群 出所:Petronasプレゼンテーション資料 12 国別LNG基地建設状況~マレーシア~ ・2002年、マレー半島におけるパイプラインガス輸入開始 ・2013年、Melaka FSU(浮体式LNG貯蔵基地)による LNG輸入開始 出所:IEA「Natural Gas Information」のデータを基にJOGMEC作成 13 国別LNG基地建設状況~マレーシア~ ・Melaka FSU LNGタンカーを転用した浮体式LNG貯蔵基地 2013年操業開始 LNG受入能力380万トン/年 Petronas FLNGからのLNG供給も見込む ・マレー半島に2件、ボルネオ(カリマンタン) 島に1件のLNG受入基地建設計画あり 出所:Petronas 出所:Petronas Gas Melaka FSU 14 国別LNG基地建設状況~シンガポール~ ・2013年、Jurong Island LNG受入基地が操業開始 受入能力600万トン/年(2018年までに1125万トン/年に拡張、 将来的に1500万トン/年まで拡張する可能性あり) ・LNG貯蔵・再積み込みサービス、LNG燃料船への燃料供給サ ービスなどを視野に入れた戦略的LNG基地 ・アジア地域におけるLNGトレーディングハブを目指す ※シンガポールは2015年9月にSLInG (Singapore LNG Index Group)というLNG 価格指標グループを設立 出所:SLNGホームページ 15 国別LNG基地建設状況~インドネシア~ ・1970年代~2000年代中盤まで世界最大のLNG輸出国 ・国内需要の高まりにより、天然ガスを国内市場に振り向け (LNG長期契約数量の削減) ・2012年よりLNG国内供給を開始(現在国外からの輸入はない) ・潜在ガス需要と供給量のギャップをLNGで補填する計画 (2025年には年間3300万トンのLNG輸入が必要となる見通し) 出所:Pertamina 16 国別LNG基地建設状況~インドネシア~別添カラー資料2あり ・天然ガス需要の中心はスマトラ島、ジャワ島であり、 天然ガス埋蔵量に余裕がある東部地域との地理的な ギャップもあり。 出所:Pertamina 17 国別LNG基地建設状況~インドネシア~ ・2012年、Nusantara Regas FSRU(浮体式)の操業開始 2014年、Lampun FSRU操業開始 2015年、Arun 受入基地(液化基地より転換)操業開始 ⇒現在国内LNG供給を実施中(国外からの輸入はなし) ・ただし、Pertaminaは既に米Cheniereと、 Corpus CristiプロジェクトからのLNG長期売買契約(2018年 供給開始、計約150万トン)を締結するなど、 海外からのLNG調達計画を進める。 出所:Nusantara Regas 18 国別LNG基地建設状況~インドネシア~ ・スモールスケールLNG(小規模LNG供給)計画 島嶼部が多く、潜在需要が分散 →内向船によるLNGのブレークバルク事業 (発電所、パイプライン等の天然ガスインフラ整備も) 船舶や車両(採掘業含む)向けLNG燃料供給も視野 出所:Pertamina 19 国別LNG基地建設状況~フィリピン~ ・2001年にMalampayaガス田(オペレータ:Shell)生産開始 →事実上の天然ガス利用の始まりであり、 同ガス田への依存度は大 ・天然ガスは全量自国内生産・消費 ・2024年にMalampayaガス田のライセンス期限満了 →生産減退・インフラ整備も含め、2024年以降の供給が課題 出所:IEA「Natural Gas Information」 のデータを基にJOGMEC作成 フィリピンの天然ガス生産量推移 20 国別LNG基地建設状況~フィリピン~ ・現在Luzon島に少なくとも3件のLNG受入基地の建設計画 ・Pagbilao LNG受入基地(Energy World Corp.) 2016年早期に建設完了予定 ・Batangas FSRU(浮体式)(Shell) 2017年に操業開始予定 ・(名称未定)LNG受入基地(First Gen) 2016~2017年に建設開始予定 出所:フィリピンエネルギー省 プレゼンテーション資料 21 国別LNG基地建設状況~ベトナム~ ・天然ガス生産・需要の増加(現状ほぼ全量自給自足) ・PetroVietnamによる2件のLNG受入基地建設計画 (これまでも計画はあったものの進展は遅れている) ・Thi Vai LNG受入基地 2017年操業開始予定 ・Son My LNG受入基地 2019年操業開始予定 ベトナムの天然ガス生産量推移 出所:IEA「Natural Gas Information」 のデータを基にJOGMEC作成 22 まとめと今後の見通し ・急速な経済成長と人口増加により、 東南アジアのエネルギー需要は大きく伸びていく見通し。 ⇒中国やインドに続く巨大なエネルギー需要地域へ (伝統的なLNG輸出地域から、LNGの純輸入地域へ転換) 世界のエネルギー市場への影響力も拡大 一方、エネルギーインフラの整備は大きな課題。 天然ガスインフラはLNG受入基地を中心として 整備が進んでいく可能性が高い。 ・島嶼部が多いという地形的な要因から、 スモールスケールLNG(小規模供給)が進展していく可能性あり。 23 LNG市場拡大の観点から・・・ ・LNG受入基地の建設の増加 = LNG輸入国の増加 ⇒近年、新規LNGプロジェクトが続々と立ち上がってお り、 生産者側からのLNG市場拡大が進むとともに、 買主側からもLNG市場は拡大へ。 ・LNGは当面世界的に供給過多が見込まれる中、 上流プロジェクトへの投資の停滞を防ぎ 天然ガス・LNG産業界の持続的成長を支えるためにも、 天然ガス需要の発掘は重要。 (ただし、適切な価格水準を構築・維持していくことが必要) 24