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Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ

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Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
Oracle Active Data Guard Far Sync:
いかなる距離でもデータ損失ゼロ
Oracle Maximum Availability Architectureのベスト・プラクティス
Oracleホワイト・ペーパー | 2014年8月
目次
はじめに .......................................................................................................................................................1
Oracle Data Guardによるデータ損失ゼロの保護 .................................................................................2
Active Data Guard Far Sync ......................................................................................................................2
Far Syncデプロイメント・アーキテクチャの例 ...................................................................................4
Far Sync構成のベスト・プラクティス....................................................................................................7
Far Syncの構成(具体例と停止時のシナリオ) ...................................................................................9
Far Syncデプロイメントのトポロジの選択 ........................................................................................ 16
Data Guard Fast Sync .............................................................................................................................. 16
Data Guard REDO転送圧縮 .................................................................................................................... 17
Oracle Data Guard REDO転送圧縮........................................................................................................ 18
結論............................................................................................................................................................. 18
付録A:シングル・インスタンスFar SyncのOracle RACへの変換 ................................................. 20
付録B:Far Sync Broker構成の作成 ..................................................................................................... 21
付録C:Oracle Netの構成....................................................................................................................... 24
Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
はじめに
Oracle Active Data Guardは、ミッション・クリティカルなOracle Databaseのシングル・ポイント障
害を排除できるもっとも包括的なソリューションです。このソリューションは、本番データベース
の同期された物理レプリカを1つ以上の遠隔地に保持することによって、もっとも単純かつ経済的
な方法でデータの損失と停止時間の発生を防ぎます。何らかの理由で本番データベースが使用でき
なくなると、アプリケーションが、迅速に(また一部の構成では透過的に)、同期されているレプ
リカにフェイルオーバーされ、サービスがリストアされます。
また、Oracle Active Data Guardは、レポート作成アプリケーション、非定型の問合せ、およびデー
タ抽出の、本番データベースの読取り専用のコピーへのオフロードを可能にすることにより、コス
トのかかる無駄な冗長性を排除します。Oracle Active Data Guardには、Oracle Databaseとの緊密な
統合と、リアルタイム・データ保護および可用性への十分な特化により、他のデータ保護ソリュー
ションに見られるような妥協点がありません。
Oracle Data Guardは、何らかの理由で本番データベースがリカバリできなくなったとしても、デー
タ損失ゼロの保護と、サービスのほぼ即時のリストアの両方を提供できる、唯一のOracle Database
レプリケーション・ソリューションです。これは、Oracle Data Guardの同期REDO転送と、スタン
バイ・データベースでのレプリケーションに対応した適用プロセスの組み合わせを用いることで達
成されています。
ところが、プライマリ・データベースとレプリカ・データベースの間の距離が大きい場合、同期レ
プリケーション・メソッドがデータベースのパフォーマンスに与える影響により、データ損失ゼロ
の保護を実装することが実用的ではなくなることがあります。エンタープライズの多くは、データ
ベースのパフォーマンスに影響を与えるよりは、データ保護に関しては妥協して非同期レプリケー
ションを実装し、リカバリ不能な停止によって生じるさまざまなレベルのデータ損失を受け入れて
います。
Oracle Database 12cの新機能であるOracle Active Data Guard Far Syncは、データ損失ゼロの保護を
プライマリ・データベースから任意の距離にあるレプリカ・データベースへと拡張することにより、
妥協点をなくします。Oracle Active Data Guard Far Syncは、他のデータベース間の距離が離れたデ
ータ保護ソリューションや可用性ソリューションと比べ、費用と複雑さを最小限に抑えながらデー
タ損失ゼロの保護を実現します。このホワイト・ペーパーでは、いかなる距離でもデータ損失ゼロ
の保護を達成するための、Oracle Maximum Availability Architecture(Oracle MAA)のベスト・プ
ラクティス、そしてActive Data Guard Far Syncの実装を成功させるために有用な運用情報について
説明します。
1 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
Oracle Data Guardによるデータ損失ゼロの保護
データ損失ゼロの保護を実現するには、本番データベース(プライマリ)と、データ保護および可用
性のために使用するレプリカ(リモート宛先のスタンバイ・データベース)との間での同期通信が必
要です。Oracle Data GuardまたはOracle Active Data Guardを使用するもっとも普及しているデータ損
失ゼロの構成では、同期REDO転送(SYNC)によるMaximum Availability保護モードを使用しています。
SYNC転送と、Oracle Data Guard適用サービスによるOracleトランザクション・セマンティクスの高
度な認識との結合により、プライマリ・データベースに計画外停止が発生しても、データ損失ゼロ
が保証されます。ユーザーがプライマリ・データベースでトランザクションをコミットすると、Or
acleによりREDOレコードが生成され、ローカルのオンライン・ログ・ファイルにREDOレコードが
書き込まれます。Oracle Data Guardの転送サービスは、プライマリ・データベースのログ・バッフ
ァ(システム・グローバル領域内で割り当てられているメモリ)からスタンバイ・データベースへ
と同じREDOを同時に直接送信し、スタンバイ・データベースはスタンバイREDOログ・ファイルに
REDOを書き込みます。SYNC転送では、プライマリ・データベースがローカル・ログ・ファイルと
リモート・ログ・ファイルの両方の書込みが完了するのを待ってから、コミットの成功を伝える信
号をアプリケーションに送信する必要があります。ただし、プライマリ・データベースとスタンバ
イ・データベースとの間の距離が大きくなるにしたがい、リモート・ログ・ファイルの書込み通知
に必要な総ラウンドトリップ時間がデータベースのパフォーマンスに大きな影響を及ぼす水準に達
して、データ損失ゼロの保護のサポートが現実的ではなくなるおそれがあります。
Oracle Database 12c以前では、広域ネットワーク(WAN)においてデータ損失ゼロの保護を実現す
るには、2個のスタンバイ・データベースを使用するOracle Data Guard構成を導入することが唯一
のソリューションでした。1つ目のスタンバイ・データベースは、プライマリ・データベースから
の距離が、ラウンドトリップに要するネットワーク待機時間が同期通信において実用的な距離に置
かれます。2つ目のスタンバイ・データベースは、リモートの場所にデプロイされ、非同期通信(A
SYNC)を使用します。リモートの場所におけるスタンバイ・データベースへのデータ損失ゼロの
フェイルオーバーは、2段階のプロセスになっており、ローカルのスタンバイ・データベースにデ
ータ損失ゼロのフェイルオーバーを実行した後、本番データベースが稼働することになるリモート
のスタンバイ・データベースに対してデータ損失ゼロのスイッチオーバー(計画イベント)が実行
されますこのソリューションには多くの利点がありますが、リモートの場所に対するデータ損失ゼ
ロのフェイルオーバーだけを目的としている場合、2つ目のスタンバイ・データベースによって生
じるコストや複雑さの増加分は、その目的に見合わないおそれがあります。
Active Data Guard Far Sync
Oracle Database 12cに新たに追加されたOracle Active Data Guard Far Syncは、2つ目のスタンバイ・
データベースを用意したり、複雑な運用をしたりしなくても、リモートのスタンバイ・データベー
スへのデータ損失ゼロのフェイルオーバーを可能にします。Oracle Active Data Guard Far Syncは、
Far Syncインスタンスをデプロイすることによりこのフェイルオーバーを可能にします。Far Syncイ
ンスタンスとは、制御ファイル、spfile、パスワード・ファイル、スタンバイ・ログ・ファイルを保
持し、データベース・ファイルやオンラインREDOログのない軽量なOracleインスタンスのことで、
SYNC転送のため、プライマリ・データベースから許容可能な範囲内に配置されます。Far Syncイン
スタンスは、SYNC転送によってプライマリからREDOを受信すると、ただちにそのREDOを最大29
個のリモート・スタンバイ・データベースへASYNC転送で送信します(図1を参照)。Far Syncイン
2 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
スタンスは、新しいOracle Database Backup、LoggingおよびRecovery Appliance 1にREDOを転送す
0F
ることもできます。
Data Guard構成におけるFar Syncインスタンスの存在は、スイッチオーバー時やフェイルオーバー
時のオペレーションに透過的で、管理者はいかなるData Guard構成でも同じコマンドを使用します。
Far Syncは、広域ネットワーク(WAN)に対するデータ損失ゼロのフェイルオーバーを実行するた
めに新たに何かを学んだり、追加の手順が必要になったりすることはありません。
Far Syncインスタンスは、以下のタスクのいずれかについて、オーバーヘッドのプライマリをオフ
ロードします。
» リモートのスタンバイ・データベースが受信するアーカイブ・ログ内のギャップ解決(例:後述
のネットワーク停止またはスタンバイ・データベースの停止)
» 複数のスタンバイ・データベースを持つ構成でのREDO転送のオーバーヘッドプライマリがFar Sy
ncインスタンスに送信した後は、Far Syncインスタンスが複数の宛先への送信を担当します。
» Far Syncインスタンスはオフホストのネットワーク圧縮を実行することもでき、プライマリ・デ
ータベースのパフォーマンスに影響を与えずに、WANの帯域幅を節約します。
軽量で透過的なオペレーションのFar Syncインスタンスは、WAN向けのデータ損失ゼロの保護によ
り、これまでのマルチスタンバイ・ソリューションから大幅に改善されています。Far Syncインス
タンスでは、ユーザー・データ・ファイル、メディア・リカバリ、Oracle Databaseライセンスは不
要です。Far Syncに必要なのは、スタンバイREDOログ・ファイル用の十分なディスク容量、そして
生じる可能性のあるギャップ解決のためアーカイブREDOログを保持することだけです。Far Syncイ
ンスタンスはごくわずかなSGAフットプリント(本番システムよりもはるかに小さい)しか必要と
せず、消費するCPUは1個未満(REDO転送圧縮も実行する場合は除く)です。
図1:Active Data Guard Far Syncのアーキテクチャ
Far Syncにより、データ損失ゼロの保護を実装したいユーザーにとって、ディザスタ・リカバリ・
サイトの場所の柔軟性が向上しています。すでにData Guard同期転送をデプロイしたユーザーであ
っても、現行のスタンバイ・データベースよりもプライマリ・データベースに距離を近づけてFar S
yncインスタンスを構成することにはメリットがあり、本番データベースに与えるパフォーマンス
上の影響を抑えることができます。
1
http://www.oracle.com/us/corporate/features/database-backup-logging-recovery-appliance/index.html
3 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
Far Syncは、現在非同期転送を使用しているユーザーにも恩恵をもたらします。Far Syncを使用して
データ損失ゼロの保護にアップグレードすると、非同期構成でのフェイルオーバーの発生後にデー
タ損失の調整を行う必要があるという、不確実性と管理負担がなくなります。Far Syncは、データ
を損失せずに停止を解決できる見込みがある場合に、フェイルオーバーを延期する傾向をなくすこ
とで、可用性を高めることができます。Far Syncによりデータ損失ゼロが保証されるため、停止の
原因となった問題を解決している間に、ただちにフェイルオーバーが実行され、すばやくサービス
が再開されます。ASYNC構成におけるプライマリも、ギャップ解決にともなうオーバーヘッドのオ
フロード、複数のスタンバイ・データベースのサービス、そしてREDO転送の圧縮という、前述し
たものと同様のメリットが得られます。
ほぼすべてのケースにおいて、Far Syncは、ネットワーク帯域幅の消費を減らすと同時にパフォーマン
ス上の影響を最小限に抑える、最高水準のデータ保護を達成するための理想的なソリューションです。
Active Data GuardのライセンスにはFar Syncの使用権が含まれています。Far Syncインスタンスから
のREDOを受信するプライマリ・データベースおよびいかなるスタンバイ・データベースも、Active
Data Guardのライセンスがなければなりません。Active Data Guardライセンスには、独立したOracl
e Databaseライセンスがなくても、シングル・インスタンス(Oracle RAC以外)にFar Syncインス
タンスをデプロイする権利も含まれています。ただし、Far SyncをOracle RACにデプロイする場合
は、独立したOracle RACライセンスが必要です。
Far Syncデプロイメント・アーキテクチャの例
Far Syncの一般的なユースケースをいくつか紹介します。
ケース1:Far Syncインスタンスを使用するシンプルな構成
このケースは、プライマリ・データベースが単一のFar Syncインスタンスを使用して、データ損失ゼ
ロのフェイルオーバーをリモートのスタンバイ・データベースに拡張するというもっとも基本的な使
用例です(図2を参照)。Far Syncインスタンスは、サイト障害の影響を受けないようプライマリ・デ
ータベースとは切り離された場所でありながら、メトロ・エリアの距離内(ネットワークRTTが5ms以
下(パフォーマンス・テストの基準によって異なる))にデプロイされるのが理想的です。プライマ
リ・データベースと切り離された場所にデプロイできない場合であっても、同じデータセンター内に
Far Syncインスタンスをデプロイすることで、サイト全体の障害には至らない場合の、あらゆるリカ
バリ不能な停止においてデータ損失ゼロのフェイルオーバーを使用可能にするという利点があります。
図2:ASYNC代替宛先のあるシンプルなFar Sync
4 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
図2のようなシンプルなユースケースでは、プライマリ・データベースの代替宛先として定義した
リモートのスタンバイ・データベースとともに構成した、単一のFar Syncインスタンスのみ存在し
ます。こうした構成のため、Far Syncインスタンスが停止するようなことがあっても、Data Guard
は直接リモートの宛先に対し、自動的に非同期転送を使用してデータ損失ほぼゼロの保護を維持で
きます。Data Guardは、Far Syncインスタンスが修復されて再接続されると、自動的に構成をデー
タ損失ゼロの保護に戻します。
ケース2:Far Sync HA
ケース2は、ケース1の例に2つ目のFar Syncインスタンスを1つ目のFar Syncインスタンスの代替宛
先として追加したものです(図3を参照)。Data Guardは、データ損失ゼロの保護の中断が最小限
となるよう、一方のFar Syncインスタンスからもう一方のFar Syncインスタンスへと自動的に切り替
えます。このコンテキストにおけるFar SyncインスタンスのHAとは、データ損失ゼロの保護を維持
する能力のことを指します。Far Syncインスタンスが停止しても、プライマリ・データベースやス
タンバイ・データベースの可用性には一切影響ありません。
図3:データ損失ゼロの保護のためのHA構成
図には示していませんが、HA構成としては、Oracle RACにFar Syncをデプロイすると代替として効
果的です(この場合はOracle RACのライセンスが必要です)。Oracle RACは、Far Syncの停止中、
データ損失ゼロの保護レベルから外れるときでもその時間をゼロまたは最小限に抑えることができ
ます。詳細については、この後のセクションで取り上げます。
ケース3:ロール移行にともなうデータ損失ゼロの保護
ケース3は、ケース1とケース2を土台としており、リモートのスタンバイ・データベースからメト
ロの距離内にFar Syncインスタンスを追加する構成です(図4を参照)。リモート側のFar Syncイン
スタンスは、スタンバイ・データベースがスタンバイのロールの間はアイドル状態です。アイドル
状態のFar Syncインスタンスは、スタンバイ・データベースがプライマリ・データベースに移行し、
新しいスタンバイ・データベース(元のプライマリ・データベース)に対するデータ損失ゼロのフ
ェイルオーバーを有効にするときにアクティブ状態になります。元のプライマリ・データベースか
ら見てローカルのFar Syncインスタンスは、そのプライマリ・データベースがスタンバイのロール
の間は非アクティブ状態です。
5 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
図4:ロール移行にともなうデータ損失ゼロの保護
ケース4:リーダー・ファーム
Far Syncは、最大30か所のリモート宛先をサポートします。そのためFar Syncは、読取りパフォーマ
ンスのスケーラビリティを容易に拡張できるようアクティブなスタンバイ・データベースを複数持
つActive Data Guard構成、すなわちリーダー・ファームをサポートする上で非常に有用です。この
例では、リーダー・ファームは、プライマリ・データベースからはリモートの場所に構成されてい
ます(図5を参照)。プライマリ・データベースが、リモート宛先にあるFar SyncインスタンスにW
AN経由で1回送信すると、Far Syncは、リーダー・ファーム内のすべてのアクティブなデータベー
スに対し、REDOをローカルに配布します。
図5:リーダー・ファーム(1回の送信で多数に配布)
上述の例は、リーダー・ファームを構成する1つの方法でしかありません。たとえば、プライマリ・
データベースにもディザスタ・リカバリ用のスタンバイ・データベースを用意することもできます。
スイッチオーバーまたはフェイルオーバーの後、新しいプライマリ・データベースはFar Syncインス
タンスへのREDO送信を自動的に再開します。ディザスタ・リカバリ用のスタンバイ・データベース
は、リーダー・ファームと同じ場所に配置することも可能です。プライマリ・データベースは、デ
ィザスタ・リカバリ用のスタンバイ・データベースに1回送信でき、スタンバイ・データベースはリ
ーダー・ファームへの配布のため、Far SyncインスタンスにREDOをカスケード送信できます。
6 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
ケース5:クラウド・デプロイメント(Far Sync Hub)
Far Syncは非常に軽量なプロセスです。単一の物理サーバーが複数のFar Syncインスタンスをサポー
トでき、それぞれのFar Syncインスタンスがリモート宛先へのデータ損失ゼロのフェイルオーバー
を行います。図6の例は、プライマリ・データベースがFar Sync Hubとして動作する単一の物理マシ
ンに送信する様子を示しています。Far Sync Hubとは、単一の物理マシン上の複数のFar Syncインス
タンスのことを指します。プライマリ・データベースとFar Sync Hubは、クラウド内でリモートに
デプロイされるスタンバイ・データベースとともにオンプレミスです。このような構成(プライマ
リとスタンバイのデータベース・ホストおよびFar Syncホスト)に含まれるすべてのシステムは、D
ata Guard構成(My Oracle Support Note 413484.1を参照)での互換性の確保のため、通常の要件を
満たしていなければなりません。
図6:クラウド・デプロイメント
Far Sync構成のベスト・プラクティス
Far Syncインスタンスは、SYNC転送向けに構成された、Data Guard/Active Data Guardのアーカイ
ブ先と同じように機能します。このことは、ラウンドトリップのネットワーク待機時間に影響する、
光の速度についての物理学的法則はどうやっても変わらないことを意味します。つまり、プライマ
リ・データベースのパフォーマンスは依然として、プライマリ・データベースとFar Syncインスタ
ンスをつなぐネットワークのラウンドトリップ時間に影響されるということです。ただし、Far Syn
cは、Far Syncインスタンスをプライマリ・データベースからメトロの距離に配置しながら、Far Syn
cインスタンスが数百、あるいは数千マイルも離れた場所に置かれるリモートのスタンバイ・デー
タベースとのすべての通信を扱えるようにすることで、長距離におけるデータ損失ゼロという柔軟
性の高いオプションを可能にしています。このため、プライマリ・データベースとFar Syncインス
タンスが両方同時に停止するような、地理的に広いエリアに影響する障害の場合を除き、あらゆる
ケースでデータ損失ゼロのフェイルオーバーが可能です。
必要となる構成上のベスト・プラクティスはごくわずかです。ほとんどは、SYNCのREDO転送先に
適用されるものと同じです。具体的なベスト・プラクティスは次のとおりです。
» プライマリ・データベースとFar Syncインスタンスとの間のネットワークが以下の条件を満たし
ている必要があります。
7 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
» プライマリ・データベースの応答時間とスループットに与える影響が、ビジネスの要件か
ら外れない程度にラウンドトリップ待機時間が短いこと。与える影響の度合いはアプリケ
ーションごとに大きく異なるため、検証のためのテストが必要です。一般に、ラウンドト
リップ待機時間が5ms未満の場合、デプロイメント成功の確率がより高くなりますが、こ
の待機時間より長い場合でも成功するデプロイメントもあります。
» ネットワークを共有する他のトラフィックに加え、ピーク時のREDOの通信量に対応でき
る帯域幅をプライマリ・データベースとFar Syncインスタンスとの間に提供すること。RE
DO転送圧縮は、ネットワーク帯域幅の要件を低減するのに使用できます。
» ネットワーク・コンポーネントの障害にも耐えられる冗長ネットワーク・リンクの保有が
理想的。
» TCPの送受信バッファ・サイズを帯域幅遅延積の3倍に設定するなど、標準的なData Guardネッ
トワークのベスト・プラクティスを採用。詳細については、Data Guardネットワーク転送のMA
Aプラクティスを参照してください。 2
1F
» Far SyncインスタンスのスタンバイREDOログ(SRL)は、他のアクティビティのIOPSに対応でき
る能力を持つと同時に、ピーク・アクティビティの間にプライマリ・データベース上のLGWRプ
ロセスのI/Oを上回る、十分なIOPS(秒あたりの書込み)能力を持つストレージ上に置いてくだ
さい。これは検討すべき重要事項です。例:
» Far Syncインスタンスのディスクがプライマリ・データベースのそれよりパフォーマンス
が低い場合、REDOの受信後ただちにリモートの宛先に転送できない可能性があり、アー
カイブ・ログのギャップが生じるおそれがあります。
» たとえば、スタンバイ・データベースに対する計画的なメンテナンスやネットワーク停止
によって生じた、REDOのギャップを解決するシナリオでは、その時点のトランザクショ
ンのREDOに加え、ギャップ解決のための追加のIOリクエストが発生します。
» Far Syncインスタンスのディスク・パフォーマンスが低いと、プライマリ・データベース
への通知に遅延が発生し、プライマリとスタンバイとの間の総ラウンドトリップ時間が増
加し、アプリケーションの応答時間に影響が生じます。この影響は、プライマリ・データ
ベースとFar Syncインスタンスとの間にFast Sync(詳細についてはこのペーパーの「Data
Guard Fast Sync」を参照)を使用することでなくすことができます。
» Far SyncインスタンスのスタンバイREDOログ(SRL)は、標準MAAベスト・プラクティスにした
がって、各スレッドにつき、REDOログのグループ数をプライマリに1を足した数にします。
» 代替Far SyncのSRLは、代替Far Syncがアクティブ化している場合、できるだけ早くSYNC転送と
データ損失ゼロの保護に戻れるよう、使用前に手動でクリアします。
» パフォーマンス・テストにより、小規模なFar SyncインスタンスのSGAは、Far Syncインスタンスお
よびプライマリ・データベースのどちらのパフォーマンスにも影響を及ぼさないことが分かってい
ます。MAAでは、Far Syncが機能するための必要最小限のSGAを構成することを推奨しています。
» SGAをできるだけ小さくするため、インスタンス・ケージング 3を使用します。テスト中CPU_
2F
COUNTを減らしても、Far Syncインスタンスのパフォーマンスに影響はありませんでした。
2
http://docs.oracle.com/cd/E11882_01/server.112/e10803/config_dg.htm#HABPT5284
3
http://docs.oracle.com/database/121/ADMIN/dbrm.htm#ADMIN13333
8 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
» MAAテストでは、Linuxにおいて、SGAが300(300MB)、CPU_COUNT=1の設定でFar Sync
には十分であることが明らかになっています。(CPU_COUNT=1 SGA_TARGET=300M)
» Far SyncインスタンスにおけるOracle RMAN ARCHIVELOGの削除ポリシーを‘SHIPPED TO STANDBY’ま
たは’APPLIED ON STANDBY’に設定し、Far Syncインスタンスのディスク領域を自動的に管理します。
プライマリおよびスタンバイについて適切なバックアップ計画が立てられている場合は、Far Syncイ
ンスタンスにおけるアーカイブ・ログのバックアップは必要ありません。
» プライマリ・データベースとスタンバイ・データベースの両方に対し、ロールの移行が行われた後
にデータ損失ゼロの保護が維持されるよう、Far Syncインスタンスを構成します。スタンバイ・デー
タベースからメトロの距離内にデプロイされるFar Syncインスタンスは、スタンバイ・データベース
がプライマリに変わるまではアイドル状態です。
» Data Guard Broker構成の場合、ターゲットのスタンバイ・サイトから保護モードを強制でき
る場合を除き、Maximum Availabilityの間はスイッチオーバー(計画されたロール移行)が発
生しません。スタンバイ・データベースに自身のFar Syncインスタンスが存在しない場合、ロ
ールが入れ替わった後、元のプライマリ・データベースにASYNCを送信するよう、スタンバ
イ・データベースを構成する必要があります。こうすることで、プライマリ・データベース
の保護モードがMaximum AvailabilityからMaximum Performanceに最初に下がったときを除き、
スイッチオーバーが発生しないようにすることができます。
» Data Guard 12cの新機能であるFar Syncにより、ネットワーク待機時間やFar Syncインスタンス・ハー
ドウェアのI/O速度によって異なりますが、SYNCと比較して、プライマリ・データベースのパフォ
ーマンスが4%~12%向上しています。詳細については、「Data Guard Fast Sync」セクションを参照
してください。
» CPU、I/Oおよびネットワークの要件が満たされている場合、仮想マシンにFar Syncインスタンスを
配置しても、物理ハードウェア構成と比べてパフォーマンスに差が出ることはありません。
Far Syncの構成(具体例と停止時のシナリオ)
Maximum Availabilityモードで実行されているFar Syncインスタンスが停止しても、プライマリ・デ
ータベースがエラー通知を受信している間、一時的な中断を除きプライマリ・データベースの可用
性に影響が及ぶことはありません。プライマリ・データベースは、通知を受信した後、データベー
ス・トランザクションの処理を再開します。net_timeout(ユーザー設定可能なData Guardパラメ
ータ。デフォルト値は30秒)のしきい値が経過するまでの間に障害通知を一時停止する一定の障害
条件はありますが、ほとんどの場合、通知はただちに完了します。これは、Maximum Availability
モードを使用する、どのData Guard構成でも標準的なオペレーションです。Data Guardの自己修復
メカニズムは、切断の原因となった問題が解決すると、スタンバイ・データベースに自動的に再接
続し、再同期します。同様の自動メカニズムは、Far Syncにもあてはまります。
Far SyncのコンテキストにおけるHAは、Far Sync停止直後のプライマリ・データベースの停止、ま
たはその逆のシナリオなど、二重障害のシナリオが発生した場合に、データ損失の可能性をゼロま
たは最小限にする能力のことを指しています。このコンテキストでのHAは複数の方法で達成できま
す。それぞれの方法にはトレードオフと検討事項があります。この後のセクションで詳しく取り上
げます。列挙したオプションを組み合わせることも可能です。
9 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
注:Far Syncインスタンスの作成については、『Oracle Data Guard概要および管理』のセクション5.
1を参照してください。 4
3F
代替宛先としてターミナル・スタンバイを使用するHA
Far Syncの停止時にデータ保護を維持するもっともシンプルな方法は、図2に示したアーキテクチャ
のように、ターミナル・スタンバイ(最終的なフェイルオーバー・ターゲット)を直接参照する代
替のLOG_ARCHIVE_DEST_Nを作成することです。リモート宛先への非同期転送(ASYNC)は、WA
Nのネットワーク待機時間によるパフォーマンス上の影響を避けるためには、もっとも可能性の高
い選択です。ASYNCは、データ損失ほぼゼロの保護(データ損失発生の状況が1秒未満)が可能で
すが、スタンバイ・データベースからの確認を待たないため、データ損失ゼロを保証することはで
きません。Far Syncの停止中、REDO転送は自動的に代替宛先にフェイルオーバーします。Far Sync
インスタンスが修復され、オペレーションが再開すると、転送は自動的にFar Syncインスタンスに
戻り、データ損失ゼロの保護がリストアされます。
ターミナル・スタンバイ(計画されたロール移行)へのスイッチオーバー時は、この構成の保護モー
ドをMaximum Performanceに下げて、ロール移行のターゲットにこのモードを適用できるようにしな
ければなりません。保護モードおよび転送方法の変更は、停止時間ゼロの動的オペレーションです。
この方法の特徴は次のとおりです。
» 管理すべきFar SyncハードウェアまたはFar Syncインスタンスの追加がありません。
» Far Syncインスタンスの停止は、データ損失ゼロの保護ではなくなります。Far Syncインスタン
スがオペレーションを再開可能になり、同期通信が再確立され、そしてスタンバイ・データベー
スが完全に同期されるまでの間、ASYNC転送となり、データ保護レベルはUNSYNCHRONIZEDに
低下します。
この例における関連の構成パラメータは以下のとおりです。
» プライマリ(primary):
4
http://docs.oracle.com/database/121/SBYDB/create_fs.htm#SBYDB5416
10 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
» プライマリFar Sync “A”(farsync)
» スタンバイ(standby):
上記のパラメータは、SQL*Plusによって設定する場合にこの構成に関連するものであり、構成の詳
細すべてが読者に分かりやすくなるよう提供されています。ただし、Oracleでは、Data Guard Brok
erを使用したFar Syncを構成する、よりシンプルな方法を推奨しています。Data Guard Brokerを使
用したFar Syncの構成手順については、付録Cを参照してください。
Oracle RDBMS Version 12.1の場合、「代替の」Far Sync構成について、ノードの停止後に確実に同
期に戻るよう、構成内のすべてのインスタンスでパラメータ"_redo_transport_stall_time”を60に設
定してください。
代替のFar Syncインスタンスを使用するHA
Far Sync停止時にデータ保護を維持するより強力な方法は、代替の宛先として2つ目のFar Syncイン
スタンスをデプロイすることです(図3を参照)。前の例とは異なり、1つ目のFar Syncインスタン
スが修復されている間、データ保護レベルがMaximum Performance(ASYNC)に低下するのを代
替Far Syncインスタンスが回避します。
図7は、この例のアクティブなFar Syncインスタンスが停止し、Far Syncインスタンスを実行してい
たサーバーはそのまま稼働している場合、停止中に起きる内容を示しています。
» プライマリ・データベースが代替のFar Syncインスタンスに接続している間、3~4秒の短い間ア
プリケーションが中断します。
» この障害状態では、エラーがただちにプライマリ・データベースに返され、net_timeout
を回避します。中断時間は、パラメータの設定((max_failure-1)×再オープン)+4秒で
計算できます。
» もっとも大きいデータ損失は、構成の再同期が完了する前にプライマリ・データベースに影響す
る2度目の停止が発生した場合において、プライマリ・データベースが代替のFar Syncインスタ
ンスに再接続し、構成が再同期している間に生成されるREDOの量の関数で表されます。
11 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
図7 - 2つ目のFar Syncインスタンスを代替宛先として使用する場合のFar Syncインスタンスの停止
プライマリのFar Syncインスタンスが実行されているサーバーに負荷がかかるような障害の状況で
は、動きが多少異なります。アプリケーションの中断時間は、追加のnet_timeoutの秒数分長くな
り、再同期の完了前に必要となる追加の処理が原因で、2度目の停止がプライマリ・データベース
に影響を及ぼした場合、データ損失の可能性が高まります。
このユースケースも、計画的に実施したロール移行時に、別の方向にデータ損失ゼロのフェイルオ
ーバーが可能となるよう、リモートのスタンバイ・データベースからメトロの距離内に、Far Sync
インスタンスを対称的に構成することを想定しています(このペーパーの前のセクション「ロール
移行にともなうデータ損失ゼロの保護」を参照)。
この方法の特徴は次のとおりです。
» Far Syncインスタンスが修復され、サービスに復帰する前に、プライマリ・データベースに影響
する2つ目の停止が発生した場合のデータ損失の可能性が低減します。
» スタンバイ・データベースをプライマリのロールに切り替える(元のプライマリはデータ損失ゼ
ロフェイルオーバーのターゲットとなる)ロールの移行(計画されたスイッチオーバー)の後も
データ損失ゼロの保護を維持できる対称的な構成です。12.1以降では、代替宛先を持つSQL*Plus
構成は、初期ログ・アーカイブの宛先に、その宛先が利用可能になると自動的にフォールバック
します。Data Guard Broker構成内では、‘redoroutes’プロパティのFALLBACKキーワードを使用し
てこの動作を有効にします。 5
4F
この例における関連の構成パラメータは次のとおりです。
5
http://docs.oracle.com/database/121/DGBKR/dbresource.htm#DGBKR3852
12 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
» プライマリ(primary):
» プライマリFar Sync “A”(prifarsyncA)
» Far Sync “B” (prifarsyncB)
» スタンバイ(standby):
» スタンバイFar Sync “A”(sbfarsyncA)
» スタンバイFar Sync “B”(sbfarsyncB)
13 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
上記のパラメータは、SQL*Plusによって設定する場合にこの構成に関連するものであり、構成の詳
細すべてが読者に分かりやすくなるよう提供されています。ただし、Oracleでは、Data Guard Brok
erを使用したFar Syncを構成する、よりシンプルな方法を推奨しています。Data Guard Brokerを使
用したFar Syncの構成手順については、付録Cを参照してください。
Oracle RDBMS Version 12.1の場合、「代替の」Far Sync構成について、ノードの停止後に確実に同
期に戻るよう、構成内のすべてのインスタンスでパラメータ"_redo_transport_stall_time”を60に設
定してください。
Oracle Real Application Cluster(Oracle RAC)を使用したFar Sync
Far Syncインスタンスは、Oracle RACクラスタに配置することもできます。この構成では、他のサ
ーバーがHAのため自動フェイルオーバーを提供している間、Far Syncは一度に1台のサーバーでの
みアクティブとなります。シングル・インスタンスのFar SyncをOracle RAC Far Syncに変換する手順
については、「付録A」を参照してください。
この方法の特徴は次のとおりです。
» Far Syncインスタンスに障害が発生してもアプリケーションの中断が最小限。
» Far Syncインスタンスの障害発生後、もっとも速くデータ損失ゼロの保護を再開。
» このソリューションだけでクラスタの障害に対応するわけではなく、クラスタが利用できなくなっ
た場合、データ保護を維持するには代替宛先の構成が依然として必要です。
Oracle RACクラスタにおけるFar Syncインスタンスの障害
図8は、すべてのOracle RACノードが機能していて、REDOを受信するFar Syncインスタンスに障害
が発生した場合の、アプリケーション・スループットとデータ保護に及ぶ影響を示しています。
図8 - Far Syncインスタンスの障害(すべてのOracle RACノードが機能している場合)
14 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
このユースケースでは、アクティブなFar Syncインスタンスに障害が発生すると、Oracle RACはた
だちに停止を検出し、存続しているOracle RACノードのうちの1つ(代替宛先を定義しておく必要
はありません)ですでに実行されているFar Syncインスタンスに対し、自動的にREDO転送をフェイ
ルオーバーします。インスタンスのフェイルオーバー中、エラー通知の確認と処理を行うため1秒
に満たない、アプリケーションのごく短い中断があります(このエラー状態にはnet_timeoutは適
用されません)。この構成は、クラスタの1つのノードから次のノードへの移行が完了するまで保
護レベルはMaximum Availabilityのままで、データ損失ゼロの保護を維持します。クラスタの共有
ストレージにある既存のSRLに新たなFar Syncインスタンスがアクセスできるため、再転送の必要は
ありません。高速な検出と中断のないデータ損失ゼロの保護は、Oracle RACを使用してFar Syncイ
ンスタンスをホストする本質的な利点です。
Oracle RACクラスタにおけるノード(サーバー)の障害
図9は、Oracle RACノードの障害時、すなわちアクティブなFar Syncインスタンスが実行されている
サーバーが停止した場合の影響を示しています。ノードに障害が発生すると、Data Guardのnet_ti
meoutと同じ長さの短い中断が発生し、アプリケーションのスループットに1つ目の落ち込みが生
じます。そして、2回目の中断は、Data GuardのREDO転送のため、存続しているノードとの接続を
再確立している間に発生します。ノードの障害によりData Guardが再同期状態に入るため、このケ
ースではデータ損失の可能性がより高くなります。新しい接続が確立されると、Data Guardはすば
やくプライマリとスタンバイを再同期し、データ損失ゼロの保護レベルに構成を復帰させます。構
成の再同期にかかる時間は、存続しているインスタンスに転送する必要のあるREDOの量によって
大きく変化します(図9の「REDOの送信」)。
図9 - Oracle RACノード(サーバー)の障害時
Oracle RACのユースケースにおける構成の詳細は、付録Aに示す単一インスタンスのFar Syncを変換
する追加の手順を除けば、「代替宛先としてターミナル・スタンバイを使用するHA」の1つ目の例
と同じです。さらに、Oracle RACクラスタ全体に障害が発生した場合、データを保護するため、元
の例と同じようにリモートのスタンバイ・データベースを代替宛先として定義することもできます。
15 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
Oracle RDBMS Version 12.1の場合、「代替の」Far Sync構成について、ノードの停止後に確実に同
期に戻るよう、構成内のすべてのインスタンスでパラメータ"_redo_transport_stall_time”を60に設
定してください。
Far Syncデプロイメントのトポロジの選択
Far Sync HAの構成はすべて、REDOの受信と送信については同じように動作します。どの構成を選
択するかは、さまざまな障害シナリオにおいて、二重障害が発生した場合のデータ損失へのアプリ
ケーション耐性や構成ごとに異なる中断時間に対するアプリケーション耐性を基準に決定する必要
があります。
» Oracle RAC Far Syncは、中断を最小眼に抑えながら、最高の保護を提供します。Oracle RAC Far S
yncもOracle RACライセンスが必要です。非常にクリティカルなアプリケーションには、Oracle R
AC Far Syncインスタンスのペアが適しています。それぞれのインスタンスをもう一方の代替とな
るよう構成し、別々の場所にデプロイします。これにより、もっとも堅牢なHAとデータ保護が
確立されます(インスタンス、ノード、クラスタ、サイトの停止時)。
» 非Oracle RAC環境における代替Far Syncインスタンスの場合、一方のFar Syncインスタンスから
もう一方のFar Syncインスタンスに転送を移行している間、2つ目の停止がプライマリ・データ
ベースに影響を及ぼすと、アプリケーションの中断がわずかに長くなり、データ損失の可能性も
わずかに高くなります。このオプションでは、Oracle RACライセンスは必要ありません。
データ保護がクリティカルな要素でありつつ、コストも重要な検討事項となるアプリケーション
では、Far Syncインスタンスが配置されたシングル・ノードのペアをデプロイし、それぞれをも
う一方の代替とするのがベストです。
» 代替宛先としてターミナル・スタンバイを使用するには、Far Syncインスタンスの停止解決に要
する時間の間、その構成が非同期モードで実行されることを受容する必要があります。
この方法の利点は、デプロイまたは管理するハードウェアやソフトウェアを追加しなくても済む
ことです。アプリケーションが、Far Syncインスタンス停止時にデータ損失の可能性が高まるの
を許容でき、低コストであることがおもな検討事項となる場合は、ASYNC REDO転送を使用する
代替の場所としてターミナル・スタンバイを構成するのがベストです。
» Far Syncハブは、単一の物理ホスト上に置かれた複数のData Guard構成のそれぞれのFar Syncイ
ンスタンスを効率的に統合する方法です。
データ損失ゼロのサービス・レベル・カテゴリが含まれるクラウド・デプロイメントでは、Far S
yncハブをデプロイすることで、単一の物理マシンまたは単一のクラスタに置かれた複数のデー
タ損失ゼロ構成のFar Syncインスタンスを効率的に統合できます。
Data Guard Fast Sync
Fast Syncは、Oracle Database 12cから提供される、新たなData Guard機能です。Far Syncでは、宛
先パラメータのNOAFFIRMを使用できます。このパラメータは、スタンバイREDOログ・ファイルへ
の書込み完了を待たずに、スタンバイにおけるREDOの受信確認を行うよう指定します。Fast Sync
16 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
は、ラウンドトリップ時間全体からリモートのI/Oをなくすことで、SYNC構成におけるアプリケー
ションの応答時間を向上させることができます。Fast Syncは、スタンバイ時のI/Oパフォーマンス
における不安定さや急激な変動によるアプリケーション応答時間への影響をなくします。Fast Sync
は、プライマリと任意のSYNC宛先(Far Syncインスタンスまたはスタンバイ・データベース)との
間の距離を拡大でき、地理的により広い範囲での保護が可能です。
Fast Syncは、Oracle Database Enterprise Editionのどのライセンスにも含まれているData Guardの機
能です。Fast Syncの使用に、Active Data Guardのライセンスは必要ありません。
Oracle Exadataでのパフォーマンス・テストによると、Fast Syncを構成した場合、プライマリ・デー
タベースのスループットが4%向上しています(図10を参照)。フラッシュログを使用するExadataシ
ステムのI/Oが元々高速であるため、パフォーマンス向上の度合いが控えめになっています。I/Oが低
速なシステムにデプロイされるプライマリ・データベースの方が、パフォーマンス面でのメリット
がより大きくなります。たとえば、仮想マシンとNASストレージ上のFast Syncインスタンスについて
行ったパフォーマンス・テストでは、Fast Syncを使用することでプライマリ・データベースのスル
ープットが12%向上しています。これは、仮想マシンの例では、Far SyncインスタンスのディスクI/O
がラウンドトリップ時間全体の中でより大きな割合を占めていることによるものです。
図10 - パフォーマンスの比較(FASTSYNCとSYNC)
Data Guard REDO転送圧縮
REDO転送圧縮(RTC)はCPUを大幅に消費する可能性があります。そのため、REDO転送圧縮をFar
Syncインスタンスにオフロードして、プライマリ・データベース・ホスト上のCPUサイクルを節約
することが有益です。
これまでのMAAテストによると、アクティブな処理時にRTCを有効にすると、各ASYNC転送プロセ
スのCPU使用率が、1個のCPUにつき最大80%に増加する場合がありました。Oracle RACプライマリ
では、リモート宛先ごとに、REDOスレッド1つにつき1つのASYNC転送プロセスが割り当てられま
す。Far Syncインスタンス上でのREDO転送圧縮の使用は、Far Syncインスタンスが常駐するサーバ
ーのサイジングにとって重要な要素です。
所定のワークロードにおける圧縮率を見積もるには、ソース(Far Sync)インスタンス上でlog_arc
17 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
hive_trace=4を設定してtt0nプロセス・トレース・ファイルを監視し、次の例のような出力を確認
します。
RTC:このI/Oの圧縮率は80%
RTC:実際の圧縮バイト数99
さらには、次に示すようなUNIXの'sar'コマンドを使用し、圧縮を有効にする前後で比較して、Far S
yncインスタンスのネットワーク・インタフェース(おそらくeth0)が使用する帯域幅の節約量を
確認できます。
sar -n DEV <seconds> <# samples>
Active Data GuardおよびData Guardには、REDO転送圧縮を実行するためのライセンスは含まれて
いません。圧縮されたREDOを受信するプライマリ・データベースおよびすべてのスタンバイ・デ
ータベースに、Oracle Advanced Compression Option(Oracle ACO)のライセンスが必要です。Fa
r Syncインスタンスについては、プライマリ・データベースとスタンバイ・データベースにOracle A
COの適切なライセンスがあれば、別途Oracle ACOのライセンスは必要ありません。
Oracle Data Guard REDO転送圧縮
REDO転送の暗号化を行うケースでは、プライマリ・データベースとFar Syncとの間はもちろん、Fa
r Syncとターミナル・スタンバイとの間の暗号化も有効にしなければなりません。これは、Far Sync
インスタンスのところで切断されると、REDOが暗号化されなくなるためです。
Oracle Database 11g Release 2以降、ネットワーク暗号化(ネイティブのネットワーク暗号化および
SSL/TLS)および厳密認証サービス(Kerberos、PKI、およびRADIUS)は、Oracle Advanced Securit
y Optionの一部としてではなく、これらをサポートするOracleデータベース全リリースのすべての
ライセンス・エディションで利用できます。転送暗号化の有効に関する詳細については、「My Ora
cle Support Note 749947.1」を参照してください。
結論
Oracle Database 12cの新機能であるOracle Active Data Guard Far Syncは、データ損失ゼロの保護を
プライマリ・データベースから任意の距離にあるレプリカ・データベースへと拡張することにより、
妥協点をなくします。Oracle Active Data Guard Far Syncは、他のデータベース間の距離が離れたデ
ータ保護ソリューションや可用性ソリューションと比べ、費用と複雑さを最小限に抑えながらデー
タ損失ゼロの保護を実現します。Data Guard構成におけるFar Syncインスタンスの存在は、スイッ
チオーバー時またはフェイルオーバー時のオペレーションにとって透過的で、管理者はどのData G
uard構成でも同じコマンドを使用できます。Far Syncは、新たに学んだり、手順を追加したりしな
くても、WANを経由したデータ損失ゼロのフェイルオーバーを実行できます。
Far Syncインスタンスは、リモート・スタンバイ・データベースが受信するアーカイブ・ログのギ
ャップを解決する、プライマリのオーバーヘッド(例:後に続くネットワーク・データベースやス
18 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
タンバイ・データベースの停止)をオフロードし、プライマリ・データベースのパフォーマンスに
影響を与えず(オフホスト圧縮)にREDO転送圧縮を実行してWANの帯域幅を節約できます。
Far Syncは、長距離経由でのデータ損失ゼロの保護と可用性を求めるエンタープライズにアピール
する特徴を備えています。Far Syncは、パフォーマンス面の不安からデータ損失ゼロの保護を真剣
に検討したことのないユーザーにもメリットがあります。Far Syncによるデータ保護のアップグレ
ードにより、非同期レプリケーション・ストラテジを現在利用しているユーザーは、フェイルオー
バー発生後のデータの整合性確保における不確実性や管理上の負担をなくすことができます。オフ
ホストのREDO転送圧縮を実装することで、ネットワーク帯域幅を節約し、コストを削減できます。
19 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
付録A:シングル・インスタンスFar SyncのOracle RACへの変換
シングル・ノードのFar Syncインスタンスを使用するOracle Data Guard環境の作成と構成の詳細に
ついては、『Oracle Data Guard概要および管理』 6を参照してください。
5F
シングル・インスタンスFar SyncをOracle RACに変換するには:
1) Create a pfile from spfile and add the following parameters to convert the single instance far
sync to RAC:
2) 新規のpfileで1つのインスタンスを起動します。
3) spfile=’+DATA/farsync/spfilefarsync.ora’ from pfile=’far_sync.pfile’;を作成します。
4) パスワード・ファイルをクラスタ内の共有場所(Oracle ASMディスクグループ)にコピーし
ます。
5) Far SyncをCRSに登録します。
例:
6) 各Oracle RACインスタンスが使用されるよう、Far Syncのスキャン・リスナーを使用するす
べてのサイトについてtnsnames.oraのエントリに適宜変更を加えます。
6
http://docs.oracle.com/database/121/SBYDB/create_fs.htam#SBYDB5416
20 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
付録B:Far Sync Broker構成の作成
この例は、プライマリと代替のFar Syncが配置されたプライマリ・データベース、およびプライマ
リと代替のFar Syncが配置されたターミナル・スタンバイ・データベースを持つOracle Data Guard
Brokerを構成する手順です。
Oracle Data Guard Brokerを構成する方法の詳細については、Oracleのドキュメント 7を参照してくださ
6F
い。
7
http://docs.oracle.com/database/121/DGBKR/toc.htm
21 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
22 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
23 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
付録C:Oracle Netの構成
Far Syncの構成には、サイトの種類に応じて以下の例に示すようなtnsnames.oraのエントリが最小
限必要です。ただし、すべてのサイトに対し、すべての要素についてエントリを単純に作成する方
が簡単な場合もあります。
Oracle RACを含むサイトの場合、すべてのノードでTNSエントリが同じでなければなりません。Ora
cle RACサイトを参照するエントリについては、HOSTにスキャン・リスナーを使用します。
プライマリ・サイト:TNSエントリ - プライマリ、スタンバイ、すべてのプライマリFar Syncイン
スタンス(Oracle RAC Far Syncについてはスキャン・リスナーを使用)
各プライマリFar Syncサイト:TNSエントリ - プライマリ、スタンバイ
スタンバイ・サイト:TNSエントリ - プライマリ、スタンバイ、すべてのスタンバイFar Syncイン
スタンス(Oracle RAC Far Syncについてはスキャン・リスナーを使用)
各スタンバイFar Syncサイト:TNSエントリ - プライマリ、スタンバイ
Oracle RACサイトを参照するエントリ:
24 | Oracle Active Data Guard Far Sync:いかなる距離でもデータ損失ゼロ
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