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マウス局所リンパ節試験(LLNA)のための背景データ −陽性対照物質の
技術ノート マウス局所リンパ節試験(LLNA)のための背景データ −陽性対照物質の EC3,媒体の適性および供試動物 森村智美,関 剛幸,高岡 裕,太田 亮 Back ground data for the Local Lymph Node Assay (LLNA) - the EC3 of positive control article, the suitability of vehicles and the animal strain for the experiment Tomomi MORIMURA, Takayuki SEKI, Yutaka TAKAOKA, Ryo OHTA マウス局所リンパ節試験 (Local Lymph Node (DNCB,CAS No. 97- 00 -7)は,モルモットを Assay: LLNA) は,1986 年に Kimber ら によって 用いた皮膚感作性試験の陽性対照物質として使 提案された感作性試験法の一つであり,モルモッ 用されてきた歴史があり,秦野研究所では LLNA トを用いた皮膚感作性試験の代替法として開発 の陽性対照物質としても使用してきた.しかし, された.実験動物の 3R (Replacement: 動物実験 LLNA のガイドラインの多くが,中程度の感作性 の代替,Reduction: 動物数の削減,Refinement: 物質であるヘキシルシンナムアルデヒド (HCA, 苦痛を軽減する実験方法への改良)が問われる中, CAS No. 101 -86 - 0)を陽性対照物質の第一選択 LLNAは,1999年に米国の代替法バリデーショ としている.そこで,LLNA の陽性対照物質を ン省庁間調整委員会 (ICCVAM) ,食品医薬品局 HCA へ移行することを前提に,HCA の秦野研究 1) 2) (FDA) などで受け入れられ,その後,世界的に広 所における背景値を確認する試験を実施した. く認められるようになった.また, 試験方法のハー HCA (和光純薬工業,大阪)の投与濃度は TG モナイゼーションが進み,2002 年に経済協力開発 4296)に記載された EC 3 ( 後述)の許容範囲 4 . 4~ 機構 (OECD)でガイドライン化 (TG 429)され 3), 14 . 7 % を 基 に 5,10,25 w/v% と し た. 媒 体 も 2010 年には国際標準化機構 (ISO) のガイドライン TG 429 に従ってアセトン / オリブ油 (4: 1)混液 10993-10 にも取り入れられた.日本国内では, (AOO)を選択し,媒体対照群を含む 4 群構成と 4) LLNA は 2012 年 3 月に通知された医療機器の生物 学的安全性試験法ガイダンス に取り入れられた. 5) 近年の LLNA ガイドラインに対応するため, した.試験は 3 回繰り返し行った. 投与方法はTG 429に従い,各投与検体を動物の 左右耳介に25 µLずつ (1匹あたり50 µL) ,1日1回, 1) 標準的な陽性対照物質に対する反応を確認する 3日間連続投与した.投与の際,リングピンセット 試験 (陽性対照物質確認試験) ,2) 70%ジメチルス で耳介を広げ,マイクロピペットを用いて投与検 ルホキシド (70% DMSO) および50%エタノールの 体を塗布し,ドライヤー (冷風) で風乾した. 媒体としての適性を検討する試験 (媒体検討試験) , 試験には,8週齢のCBA/J 系雌マウス (CBA/J, 3) 2011年より国内販売が開始されたCBA/Caマウ SPF 動物,日本チャールス・リバー,神奈川)を スを用いた試験 (動物検討試験) を行い,LLNAのた 使用した.動物数は 1 群 5 匹とし,検疫馴化期間 めの背景データを収集したので報告する. 最終日の体重を基に体重別層化無作為抽出法に より群分けした.動物は,室温 21~25℃,湿度 材料および方法 40~75%,12 時間明暗周期に調節された飼育室内 1.陽性対照物質確認試験 (実験 1) で,床敷を敷いたケージ内に 1 群 (5 匹)ずつ収容 強い感作性物質であるジニトロクロロベンゼン し,固型飼料 (CE-2,日本クレア,東京) および飲 料水を自由摂取させて飼育した.なお,各試験は, 毒性部毒性学研究室 46 動物の愛護および管理に関する法律を遵守し,秦 技術ノート 野研究所動物実験委員会の承認を受けて実施し 算出した.EC3(SI が 3 を示す概算濃度)は線形 た. 補間法で算出した.すなわち,SI が 3 を上回る 全例の一般状態を動物飼育期間中毎日 1 回観察 直近の濃度点を a,その SI を b,下回る直近の濃 した.また,全例の体重を実験第 1 ( 感作投与開 度点を c,その SI を d とし,EC 3= c +[ (3-d) (b/ 始日)および第 6 日(屠殺,リンパ節摘出日)に測 d) ]×(a–c)の式に代入して EC 3 を算出した.な 定した. お,放射活性,放射活性の比リンパ節重量値およ 全例の放射活性を次の手順で個体別に求めた. びリンパ節重量については,パラメトリックな リン酸緩衝生理食塩液 (PBS,pH=7.4,三菱化学 Dunnett 型の片側検定により,媒体対照群と各濃 メディエンス,東京)で 2.96 MBq/mL に希釈し 度の HCA 投与群の平均値の差を検定した. たトリチウム標識チミジン液 (パーキンエルマー 2.媒体検討試験 (実験 2) ジャパン,神奈川)を,最終感作投与の 72 ± 2 時 ISO 10993 -10 では,感作性物質を用いるなど 間後 (実験第 6 日)に動物の尾静脈内に 0. 25 mL して, 媒体のバリデーションの実施を求めている. ずつ投与した.放射性化合物投与の 5 ± 0 . 75 時 このことから,既知の感作性物質を用いて媒体の 間後,動物を頸椎脱臼により安楽死させ,両耳介 適性を確認することにした. リンパ節を摘出した.摘出後,3 回目の試験では 1) 70 % DMSO リンパ節重量(左右計)を測定した.スライドグラ ジメチルスルホキシド (DMSO)は TG 429 およ スのフロスト部分を用い,摘出したリンパ節の細 び ISO 10993-10 に掲載されている媒体である. 胞を PBS 2 mL 中に単離し,細胞浮遊液(LNC) 100% DMSO は,媒体単独でも刺激性による反応 とした.LNC は,注射筒(23G の注射針付)に回 が生じ、放射活性が上昇することが知られている 収後,遠心管に移した.遠心分離 (190 × g,10 ため 7,8),秦野研究所では,日本薬局方注射用水 (注 分間,4℃)後に上清を吸引し,PBS を 2 mL 添加 射用水)で希釈して 70 vol% DMSO (70% DMSO) して攪拌する操作を 2 回繰り返して LNC を洗浄 とすることで,放射活性への影響がないことを確 した.その後,3 回目の遠心分離を行い,上清を 認している 9).今回は,この 70% DMSO を媒体検 吸引後,5 w/v% トリクロロ酢酸 (5 w/v% TCA) 討の対象とした.感作性物質として,DMSO に溶 を 3 mL 加えて LNC を攪拌した.攪拌後,LNC 解する HCA (5,10,25 w/v%)を選択し,媒体対 を冷蔵庫(2 ~8℃) 内にて 18 ± 1 時間静置した. 照群を含む 4 群構成で,試験を 3 回繰り返し行っ 静置後,遠心分離して上清を吸引し,5 w/v% た.比較のため,100% DMSO を媒体として媒体 TCA を 1 mL 加えて沈殿物を懸濁させた.この 対照群および 25 w/v% HCA 投与群の 2 群を設定し 懸濁液にシンチレーションカクテルを 10 mL 加 た試験を 1 回行った.なお,HCA は 100% DMSO えて混合して測定用の試料とした.同様にブラ に溶解したが,70% DMSO ではいずれの濃度で ンク 3 本を用意した.液体シンチレーションカウ も懸濁液となった.投与方法,使用動物,試験操 ンター (Tri-Carb 2910 TR,パーキンエルマー, 作,観察および測定は,実験 1 と同一条件で行っ Waltham, MA)を用いて 1 分間あたりの壊変数 たが,SI が中用量群よりも低用量群で高値となっ (DPM) を求めた.求めた各試料の DPM からブラ た 1 回目の試験については,最小二乗法により回 ンクの DPM の平均値を差し引き,各動物の放射 帰直線を求め,暫定的に EC3 を求めた.また,有 活性とした.リンパ節重量を測定した第 3 回目の 意差検定では 2 群構成の場合,F 検定を行い,等 試験では,放射活性をリンパ節重量で除して放射 分散の場合は Student のt検定,不等分散の場合 活性の比リンパ節重量値を求めた. には Aspin-Welch のt検定を行った.第 3 回目の ® 得られた放射活性については,各群の放射活性 試験および DMSO を媒体とした試験では 9 週齢の の平均値および標準偏差値を求めた.次いで,各 動物を使用した. 濃度の HCA 投与群の放射活性の平均値を媒体対 2) 50 % エタノール 照群の放射活性の平均値で除して SI(媒体対照群 エ タ ノ ー ル / 水 混 合 液 は,ISO 10993 シ リ ー の放射活性を 1 とした場合の放射活性の比率)を ズの試料の調製方法などを記したガイドライン 47 秦野研究所年報 Vol. 35. 2012 表 1 CBA/J マウスを用いた LLNA における HCA の EC3 確認試験 Item Test article Vehicle Age of animals at dosing (week) Initial body weight (g) Number of animals/Group Results Incorporated radioactivity 1) (dpm) SI 1 HCA AOO 8 21 . 6 ± 0 . 8 5 Repetition of the same study 2 HCA AOO 8 20 . 4 ± 1 . 4 5 106 ± 71 115 ± 14 319 ± 123 * 695 ± 172 ** 420 ± 125 578 ± 145 1342 ± 612 * 3537 ± 798 ** Dose (w/v%) 0 5 10 25 5 10 25 EC 3 (w/v%) 3 HCA AOO 8 21 . 5 ± 1 . 2 5 249 ± 144 297 ± 79 827 ± 414 2303 ± 1486 ** 1.1 3.0 6.6 1.4 3.2 8.4 1.2 3.3 9.2 10 . 0 9.4 9.3 Absolute organ weights of auricular lymph node (mg) 0 5 10 25 − − − − − − − − 5 . 1 ± 0 . 7 5 . 6 ± 0 . 9 6 . 7 ± 1 . 2 8 . 3 ± 1 . 7 ** Relative radioactivity 2) (dpm/mg) 0 5 10 25 − − − − − − − − 47 ± 24 53 ± 12 120 ± 58 265 ± 116 ** 平均±標準偏差 −,検査せず 1 ) 放射活性 (dpm) = (各動物の dpm) (ブランクの dpm の平均値) – 2 ) 比リンパ節重量値 (dpm/mg) = 放射活性 (dpm)/ 耳介リンパ節の実重量(mg) *, 媒体対照群に比べて有意に増加 (p<0.05) **, 媒体対照群に比べて有意に増加 (p<0.01) (ISO 10993-12)10)に記載されている抽出媒体の AOO を媒体として媒体対照群および 0. 25 w/v% 一つである.LLNAでは,エタノール/水混合液の PPD 投与群の 2 群を設定した試験を 1 回行った. 水の割合が高いほど皮膚への浸透性および付着性 なお,PPD はいずれの媒体にも溶解した.投与 が低下し,媒体としての適性が下がると考えられ 方法,使用動物,操作,観察および測定は,実験 る.このことから,使用する可能性のあるエタノー 1 と同一条件で行ったが,有意差検定については ル/水混合液のうち,最も濃度の低い50 vol%エタ 実験 2,1) 70% DMSO と同一条件で行った. ノール (50% エタノール) を媒体検討の対象とした. 3.動物検討試験 (実験 3) TG 429に示された感作性物質のうち,水に溶解す 試験には,8 週齢の CBA/Ca 系雌マウス (CBA/ るp-フ ェニレン ジ ア ミ ン (p-phenylenediamine: Ca,SPF 動物,日本エスエルシー,静岡)を使用 PPD,CAS No. 106 -50- 3)を選択した.群構成 した.感作性物質は, 実験 1 と同じ HCA を選択し, は媒体対照群を含む 4 群構成とした.PPD(和光 投与濃度も実験 1 と同じ 5,10,25 w/v% とした. 純薬工業)の投与濃度は,TG 429 に記載された また,媒体,投与方法,試験操作,観察および測 EC 3 の許容範囲 0.07~0. 16 % を基に 0 .05,0 . 1, 定についても,実験 1 と同一条件で行った. 0 .25 w/v% としたが,試験を 2 回繰り返して行っ た時点で,反応が低いことが分かったため,3 回 結果および考察 目の試験では,0. 1,0. 25,0 . 5 w/v% とした.比 1.陽性対照物質確認試験 (表 1) 較のため,TG 429 に示された PPD の媒体である 48 一般状態に変化は認められず,死亡例および切 技術ノート 表 2 - 1 CBA/J マウスを用いた LLNA における媒体(70% DMSO)の検討試験 Item Test article Vehicle Age of animals at dosing (week) Initial body weight (g) Number of animals/Group Results Incorporated radioactivity 1) (dpm) SI Repetition of the same study 1 2 3 HCA HCA HCA 70 % DMSO 70 % DMSO 70 % DMSO 8 8 9 21 . 3± 0 . 9 22 . 5± 1 . 0 22 . 0± 1 . 0 5 5 5 Comparative study HCA 100 % DMSO 9 21 . 5± 0 . 9 5 0 5 10 25 181± 56 785± 618 * 467± 182 1812± 111 ** 199± 120 482± 94 682± 227 1128± 309 ** 169± 39 421± 123 * 670± 176 ** 2124± 884 ** 388± 112 − − 3446± 862** 5 10 25 4.3 2.6 10 . 0 2.4 3.4 5.7 2.5 4.0 12 . 6 − − 8.9 7.0 8.0 6.7 − 0 5 10 25 4 . 8± 0 . 5 6 . 2± 0 . 7 * 6 . 7± 0 . 9 ** 8 . 7± 0 . 8 ** 4 . 8± 0 . 7 5 . 9± 0 . 4 6 . 0± 0 . 6 ** 6 . 8± 0 . 7 ** 5 . 2± 1 . 0 6 . 2± 0 . 5 ** 7 . 5± 1 . 4 ** 10 . 4± 1 . 3 ** 6 . 3± 1 . 0 − − 12 . 2± 2 . 1 ** 0 5 10 25 38± 13 121± 88 * 68± 19 211± 23 ** 40± 18 82± 17 112± 26 * 164± 38 ** 33± 9 76± 19 * 89± 13 ** 199± 63 ** 61± 12 − − 292± 95 ** Dose (w/v%) EC 3 (w/v%) Absolute organ weights of auricular lymph node (mg) Relative radioactivity 2) (dpm/mg) 平均±標準偏差 −,検査せず 1 ) 放射活性 (dpm) = (各動物の dpm) (ブランクの dpm の平均値) – 2 ) 比リンパ節重量値 (dpm/mg) = 放射活性 (dpm)/ 耳介リンパ節の実重量(mg) *, 媒体対照群に比べて有意に増加 (p<0.05) **, 媒体対照群に比べて有意に増加 (p<0.01) 迫屠殺例もなかった.体重が減少した個体は散見 あった. されたが,体重増加量は媒体対照群を含めて群間 SI は 2 回目および 3 回目では用量依存的に増 に差がなかった.リンパ節重量および放射活性の 加したが,1 回目は 10 w/v% HCA 投与群よりも 比リンパ節重量値は,1 回目の試験を除き HCA の 5 w/v% HCA 投与群で高値となった.EC 3 は,1 投与量の増加に伴って高値となる傾向にあった. 回 目 7 . 0 w/v%,2 回 目 8. 0 w/v%,3 回 目 6 . 7 w/ SIは各回とも用量依存的に増加し,EC3は,1 回目10.0 w/v%,2回目9.4 w/v%,3回目9.3 w/v% となった. v% となった. 70% DMSO 媒体時の HCA の EC3 は,3 回の試 験とも TG 429 の許容範囲内にあった.また,媒 3 回の試験の EC 3 は,いずれも TG 429 に示さ 体対照群の放射活性の平均値は,100% DMSO れた許容範囲(4.4~14. 7 %)内にあり,ばらつき (388 dpm)と 比 較 し て 70% DMSO の 方 が 低 値 も少なかった.この結果から LLNA の陽性対照 (169~199 dpm)となり,媒体単独でも放射活 物質として HCA を使用することに何ら問題はな 性が高値を示すという DMSO の欠点 7 , 8)が軽減 いと判断した. されていた.一方で 25 w/v% 投与群における SI 2.媒体検討試験 は 70% DMSO 媒 体 時 で 5 . 7 か ら 12 . 6 と な り, 1)70% DMSO(表 2 - 1) 100 % DMSO 媒体時の 8 . 9 と比較して明らかな 実験 1 同様,一般状態に変化はなく,体重増加 差 は な か っ た. ま た,AOO 媒 体 時 と 比 較 し て に群間の差はなかった.リンパ節重量等も同様に EC 3 は同等または低かった (毒性が高く検出され HCA の投与量の増加に伴って高値となる傾向に た) ことから,検出力に問題はなく,70% DMSO 49 秦野研究所年報 Vol. 35. 2012 表 2 - 2 CBA/J マウスを用いた LLNA における媒体(50% エタノール)の検討試験 Item Test article Vehicle Age of animals at dosing (week) Initial body weight (g) Number of animals/Group Results Incorporated radioactivity 1) (dpm) SI Dose (w/v%) Relative radioactivity 2) (dpm/mg) Comparative study PPD AOO 8 22 . 3± 0 . 8 5 0 0 . 05 0.1 0 . 25 0.5 92± 31 126± 56 121± 61 402± 248 ** − 143± 81 193± 85 276± 251 375± 152 * − 113± 60 − 248± 229 302± 133 1190± 655 ** 136± 60 3) − − 2236± 674** − 0 . 05 0.1 0 . 25 0.5 1.4 1.3 4.4 − 1.3 1.9 2.6 − − 2.2 2.7 10 . 5 − − 16 . 4 − 0 . 18 (> 0 . 25 ) 0 . 26 − 4 . 5± 0 . 6 5 . 0± 1 . 4 3 . 9± 1 . 4 6 . 0± 1 . 4 − 4 . 8± 0 . 7 5 . 4± 0 . 7 5 . 3± 1 . 3 6 . 4± 0 . 8 * − 5 . 1± 0 . 8 − 5 . 4± 1 . 0 6 . 1± 0 . 7 7 . 1± 1 . 3 ** 4 . 8± 0 . 4 3) − − 8 . 0± 0 . 7 ** − 29± 13 36± 13 49± 41 59± 24 − 23± 12 − 43± 32 50± 20 161± 63 ** 29± 17 3) − − 276± 59 ** − EC 3 (w/v%) Absolute organ weights of auricular lymph node (mg) Repetition of the same study 1 2 3 PPD PPD PPD 50 % Ethanol 50 % Ethanol 50 % Ethanol 8 8 8 21 . 3± 1 . 3 21 . 3± 1 . 0 22 . 2± 1 . 0 5 5 5 0 0 . 05 0.1 0 . 25 0.5 0 0 . 05 0.1 0 . 25 0.5 21± 8 25± 7 35± 26 67± 35 ** − 平均±標準偏差 −,検査せず 1)放射活性 (dpm) = (各動物の dpm) (ブランクの dpm の平均値) – 2)比リンパ節重量値 (dpm/mg) = 放射活性 (dpm)/ 耳介リンパ節の実重量(mg) 3)媒体対照群の 1 例でリンパ節の異常が認められたため、解析データから除外した。 *, 媒体対照群に比べて有意に増加 (p<0.05) **, 媒体対照群に比べて有意に増加 (p<0.01) は LLNA の媒体に適していると判断した.なお, 回目 0. 18 w/v%,3 回目 0 . 26 w/v% となった.2 AOO 媒体時よりも放射活性のばらつきが大きく, 回目は全ての群で SI が 3 を下回ったことから, SI が中用量群よりも低用量群で高値となる例が EC 3 算出できなかったが,SI が用量依存的であっ 認められ,投与検体が懸濁液であったことが一因 たことから,0 .25 w/v% 以上であると推定した. として考えられた.このことから,可能な限り懸 AOO 媒 体 時,0.25 w/v% PPD 投 与 群 の SI は 濁液となる媒体は避けるか,懸濁液を使用する場 16 . 4 となり,50%エタノールの SI が 2 .6 から 4 . 4 合は,充分に混和するよう留意した方が良いと考 であったことと比較して明らかに高い値を示し えられた. た. 2)50% エタノール (表 2 - 2) 50 % エタノールを媒体とした場合,各試験の 実験 1 同様,一般状態に変化はなく,体重増加 EC 3 は,TG 429 に示された PPD の EC 3 の許容 に群間の差はなかった.リンパ節重量等も同様に 範囲 0 . 07~0 .16 % よりも高い濃度となった (毒 HCA の投与量の増加に伴って高値となる傾向に 性が低く検出された) .各回の SI に差はなく,再 あった. 現性は問題ないと思われたが,EC 3 が許容範囲 SI は各回とも用量依存的に増加し,EC 3 は,1 50 を 僅 か に 上 回 っ た こ と,0. 25 w/v% PPD 投 与 技術ノート 表 3 LLNA における CBA/Ca マウスを用いた動物検討試験 Item Test article Vehicle Age of animals at dosing (week) Initial body weight (g) Number of animals/Group Results Incorporated radioactivity 1) (dpm) SI Dose (w/v%) 1 HCA AOO 8 19 . 4± 0 . 8 5 Repetition of the same study 2 3 HCA HCA AOO AOO 8 8 19 . 0± 1 . 0 17 . 9± 0 . 7 5 5 0 5 10 25 464± 105 961± 455 1336± 387 * 3879± 751 ** 5 10 25 2.1 2.9 8.4 1.4 3.8 14 . 4 2.4 3.9 9.7 10 . 3 8.3 7.0 EC 3 (w/v%) 287± 89 401± 149 1103± 482 4140± 1321 ** 557± 120 1317± 423 2173± 697 ** 5430± 1217 ** Absolute organ weights of auricular lymph node (mg) 0 5 10 25 5 . 2± 0 . 4 6 . 1± 0 . 5 7 . 0± 1 . 3 * 10 . 9± 1 . 5 ** 5 . 1± 0 . 6 5 . 9± 1 . 0 7 . 0± 0 . 6 12 . 1± 3 . 6 ** 5 . 3± 0 . 4 6 . 5± 0 . 9 7 . 7± 1 . 5 ** 10 . 1± 0 . 9 ** Relative radioactivity 2) (dpm/mg) 0 5 10 25 88± 15 154± 63 * 187± 23 ** 353± 35 ** 58± 19 66± 15 161± 74 * 346± 87 ** 106± 21 202± 50 * 276± 60 ** 534± 70 ** 平均±標準偏差 1 ) 放射活性 (dpm) = (各動物の dpm) (ブランクの dpm の平均値) – 2 ) 比リンパ節重量値 (dpm/mg) = 放射活性(dpm)/ 耳介リンパ節の実重量(mg) *, 媒体対照群に比べて有意に増加 (p<0 . 05) **, 媒体対照群に比べて有意に増加 (p<0 . 01) 群の SI は AOO 媒体時 (16 . 4)と比べて 50 % エタ 合,エタノールは 50% 以上の濃度で可能な限り ノール媒体時 (2 . 6~4. 4)に低かったことから, 高くした方が良いと推察される. 50 % エタノールはやや検出感度が低い媒体であ 3.動物検討試験 (表 3) ると推測された.ところで,LLNA の媒体を選択 実験 1 同様,一般状態に変化はなく,体重増加 する場合,投与可能な最大濃度が溶解または懸濁 に群間の差はなかった.リンパ節重量等も同様に できることが,重要となる.今回,EC 3 が許容 放射活性の上昇に伴って高値となる傾向にあっ 範囲を外れたがその差は投与濃度の公比 (約 2)の た.なお, 25 w/v% HCA 投与群では, 投与後数日, 範囲内であること,50 % エタノールは TG 429 お 両耳介周辺に投与検体と思われる油様の被毛の汚 よび ISO10993- 10 で許容されている水系媒体に れが散見された. 可溶化剤を添加する場合(やや検出感度が低いと SIは各回とも用量依存的に増加し,EC3は,1 の報告 あり)と比べると投与部位への付着性は 回目10.3 w/v%,2回目8.3 w/v%,3回目7.0 w/v% 良いことから,AOO や 70% DMSO を媒体とし となった. 7) て調製できない場合,やや感度が低いことを承知 CBA/Ca を用いて HCA の EC 3 を求めた結果, した上で 50% エタノールを選択することも可能 3 回とも TG 429 の EC 3 の許容範囲内にあった. と考えた.また,エタノールの割合が高いほど, また,EC3 は,CBA/J の場合 (表 1)と差はなく, 皮膚への浸透性および付着性が良いと考えられる 供試動物として問題ないと判断した.しかし,体 ことから,エタノール / 水混合液を媒体とする場 重や媒体対照群における放射活性などの背景値は 51 秦野研究所年報 Vol. 35. 2012 CBA/J と明らかに異なることから,単純にデー タを比較することは難しいと考えた. determination of sensitizing potential. Food Chem Toxicol. 1986; 24: 585 - 586 2) まとめ dermatitis potential of chemicals/compounds. 今回の結果から,LLNA 試験に用いるマウス は,CBA/J 以外に CBA/Ca も用いることが可能 と判断した.また,LLNA に用いる媒体は AOO ICCVAM 1999; NIH Publication No. 99- 4494 3) assay, 2002 4) る N,N- ジメチルホルムアミド(秦野研究所ではラ 10993 - 10 ), 2010 5) 学的安全性評価の基本的考え方について」 ,薬食機 発表),100 % エタノール,50 % 以上のエタノー 発 0301 第 20 号,2012 6) 験試料の溶解,変形等の問題が認められた場合は, assay, 2010 7) soluble materials in the murine local lymph node 討することにした. assay. Food Chem Toxicol. 2002; 40: 1719- 1725 8) 謝辞 Anzai T, Ullmann LG, Hayashi D, et al.: Effects of strain differences and vehicles on results of local 今回の試験にご協力頂いた稲田浩子,西垣嘉人, 青木聡子,安藤栄里子,松本亜紀の各氏に謝意を 表します. lymph node assays. Exp Anim. 2010; 59: 245-249 9) 金澤由基子,志田勝彦,森村智美ら : マウス Local lymph node assay(LLNA)における媒体選択 : 第 35 回日本トキシコロジー学会学術年会 2008 年 6 月 ; 東京 文献 52 R y a n C A , C r u s e L W , Sk in ne r R A , e t a l. : Examination of a vehicle for use with water 50 % 以上のエタノール / 水混合液を媒体として検 1) OECD guideline for the testing of chemicals, Test No. 429 : Skin sensitization: local lymph node ISO ガイドライン 4 , 10)に従った 2 溶媒抽出の際に は AOO お よ び 70 % DMSO を 第 1 選 択 と し, 試 厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管 理室 「医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物 ウリル硫酸ナトリウムを用いて反応を確認,未 ル / 水混合液の順に検討することにした.また, Biological evaluation of medical devices- Part 10: Tests for irritation and skin sensitization (ISO この 2 媒体で溶解が困難な場合は,医療機器の生 物学的安全性試験法ガイダンス 5)に例示されてい OECD guideline for the testing of chemicals, Test No. 429 : Skin sensitization: local lymph node を基本とし,AOO への溶解が困難な場合,第 2 選択として 70% DMSO を検討することにした. The murine local lymph node assay: A test method for assessing the allergic contact 10 ) Biological evaluation of medical devices- Part 12: Kimber I, Mitchell JA, Griffin AC: Development Sample preparation and reference materials (ISO of a murine local lymph node assay for the 10993- 12 ), 2012