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同期機の基本特性

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同期機の基本特性
2009.4 H
11.三相同期機の特性試験
1.実験の目的
(1)同期機の基本的な測定回路を習得する。
(2)三相同期電動機の位相特性の測定を通じて,同期電動機の基本特性を学ぶ。
(3)三相同期発電機の負荷特性の測定を通じて,同期発電機の基本特性を学ぶ。
(4)いわゆる強電実験を通じて,安全管理について学ぶ。
2.実験内容・概要
(1)電気機器の分類と用途
電気機器の分類は,電気エネルギー変換機器 I の授業で学んだとおりであるが,今一度,ここで復
習事項としてまとめておく。
電気機器の動作原理などに基づき,電気機器を分類すると図 1 のように考えることができる。なお,
図中の I,II,III および①~④は以降の説明の都合上,便宜的につけた記号である。
図 1 に示すように,大別すると,電気機器は,I 磁界の作用により動作する電磁機器,II 電界の
作用により動作する静電機器,III
半導体を主体として作用する半導体応用機器に分類できる。「II
静電機器」は,電力系統においては電力用進相コンデンサ,および分子レベルでのマイクロモータな
どがある。「III
半導体応用機器」は交流から直流,直流から交流などといった電力変換を行うのに
主に使われている。
「I
電磁機器」は,いわゆる「動くもの」として発電機および電動機,および「動かないもの」
として変圧器に大別される。「動くもの」としては,回転タイプとリニアタイプとがあるが,ここで
は分類していない。「動くもの」は,主電源が直流であるのものを①直流機,交流であるものを交流
機と称する。交流機は②同期機と非同期機とに分けることができる。
非同期機は,電磁誘導作用で回転(もしくは,移動)する③誘導機および直流機と構造上類似して
整流子を有する④整流子機とに分けられる。③誘導機の多くは誘導電動機として用いられており,家
電機器の動力用などとして大変身近に多数用いられてきている。産業界も含めると,誘導電動機で消
費される電力は,国内全電力の約半分とも言われている。
同期発電機は,界磁の回転(もしくは,移動)速度に比例した周波数の電力を電機子巻線に発生す
る発電機である。現在,日本の電力の約 99 % は同期発電機で作られているといわれている。今後,
太陽光発電などの普及により,この比率は若干下がるものと考えられるが,当面は,電力発生源とし
て同期発電機が主流であると考えられている。
同期電動機および同期発電機については,電気エネルギー変換機器 II で学んだとおりであるが,
I 電磁機器
発電機
電動機
直流
① 直流機
交流
② 同期機
変圧器
II
静電機器
III
半導体応用機器
非同期機
③ 誘導機
④ 整流子機
コンデンサ
マイクロモータ
インバータ
コンバータ
整流回路
他
図 1 電気機器の分類例
11 - 1
以下,同期機について若干説明を記す。なお,電気エネルギー変換機器 II で用いた教科書の同期機
の部分を熟読しておくことも重要である。
(2)同期機の構造と主要部品の名称
同期機電動機は,空間的にずれて配置された巻線に多相交流を通ずることで回転磁界を発生させ,
この回転磁界の回転(もしくは,移動)速度(=これを同期速度という)と同じ速度で回転(もしく
は,移動)する電動機である。なお,回転磁界を発生させる部分を「電機子」,回転磁界にひきつけ
られて回転する部分を「界磁」と称する。(後述のように,界磁を固定し,電機子が回転するものも
ある。)
また,界磁に永久磁石もしくは巻線によって磁界を発生させておき,これを電機子巻線と相対的に
移動させることにより,電磁誘導作用により発電機としても作用することができる。
原理的に,電機子と界磁との吸引力を利用して電動機として動作させることができる。また,界磁
と電機子との相対運動により発電することができるので,同期機は,界磁を回転させる回転界磁形と,
電機子を回転させる回転電機子形とがある。いずれの場合にも,界磁もしくは電機子に電力を供給す
るためのブラシおよびスリップリングが必要となる。(回転界磁形の場合,直流用に+,-の 2 組,
回転電機子形の場合,三相なら 3 組のブラシとスリップリングとの組合せが必要)
今回の実験では,回転電機子形同期機を用いる。
図2
回転界磁形
図3
回転電機子形
(3)同期機の界磁部分による分類
同期電動機は,電機子巻線により生じる回転磁界に界磁を吸引させて回転させることができる。し
たがって,回転界磁形の場合,界磁には必ず時も磁界源を必要としない構造でものよいので,図 4
(a)のような鉄の塊状でも回転する。この原理の同期電動機をを「リラクタンスモータ」と称する。
リラクタンスモータより,電機子と界磁との吸引力を高めたい場合,界磁に磁界を生じる工夫をす
ればよいので,図 4(b)のように巻線により磁界を生じさせるもの(巻線形),および図 4(c)のよ
うに永久磁石(Permanent Magnet,PM)を埋め込んだもの(PM 形)などがある。
現在,省エネルギー化の観点から,家庭用を中心として小形のモータは PM 形同期電動機が圧倒的
に多くなってきた。しかし,大形になると磁石のサイズも大きくなるため,製造行程やコストの観点
から巻線形同期電動機しか製造されていないのが現状である。また,リラクタンスモータは原理的に
発電できないが,巻線形および PM 形は発電可能であるので,巻線形は大形発電機に,PM 形は小形
風力発電機などに用いられている。なお,電気自動車およびハイブリッド自動車では PM 形が主流と
なっており,走行中は電動機および発電機いずれの動作もできるようになっている。
但し,いずれの界磁を用いた同期電動機の場合であっても,始動トルクは無い。したがって,配電
11 - 2
N
N
S
N
S
S
(a)塊状鉄心
(b)巻線形
( c ) PM ( 永 久 磁 石 )
形
(リラクタンスモータ)
図 4 界磁の種類
系統に電機子巻線を直結して簡単に始動することはできないので,一般に,インバータなどを用いて,
電機子巻線に低い周波数で電圧を加えて,徐々に周波数を上げて加速する方法が必要となり,モータ
単体のコスト+インバータのコストが必要となる。なお,巻線形の場合,直流電源部を切り離して巻
線を短絡することにより誘導電動機として同期速度近辺まで加速させることができ,すばやく直流電
源に切り換えることで同期電動機として運転することができる。また,巻線形および PM 形では界磁
鉄心にかご形巻線を施すことにより誘導電動機として加速でき,インバータ無しでも同期電動機とし
て始動させることは可能である。
3.三相同期電動機の位相特性の測定
(a)概要:ある一定の負荷状態の同期電動機の界磁電流に対する特性を測定する。負荷を一定とし
て,同期電動機の界磁電流を変化させると,同期電動機内部の誘起電圧と端子電圧との関係か
ら,力率が変化する。その様子を測定することにより,同期電動機の位相特性を確認する。
(b)実験手順(概要):
※各自で整理し,まとめること。
1)図 5 のように結線する。
※ 太い線と細い線とを使い分ける!
※ 抵抗が2個直列につながっている場合は,ダイヤル式抵抗と摺動抵抗とを組み合わせる。
2)同期電動機を始動する:界磁巻線を抵抗に接続して誘導電動機として始動し,その後,界磁
巻線に電圧を加える。
3)直流発電機を負荷とする。以降,同期電動機の端子電圧 V および負荷電流 I L を一定とする。
4)同期電動機の界磁電流 I f を調整し,位相特性を測定する。
5)負荷を変えて,上記 3)の測定を行う。
(c)実験データの整理法:
1)測定と平行して,パソコンにデータを入力して,実験データを確認しながら実験を進める。
2)表の項目は以下の通り。
3)図 5 との対応は以下のとおり。
DPM より V , I , Wi , V1 の読み = V f
の読み = I L
, A1 の読み = I f
, A 2 の読み = I mf
4)グラフは,横軸を I f ,縦軸に I , Wi , Wo ,pf, η とする。
11 - 3
,
V3 の読み = V L
, A3
端子
電圧
V (V)
表 1 同期モータの試験結果
同期モータ側測定諸量
直流機側測定諸量
モータ
入力
界磁
界磁
負荷
負荷
界磁
Wi
電流
電圧
電流
電圧
電流
電流
If
I fL
I (A) (W) V f (V)
V L (V) I L (A)
(A)
(A)
Wo = VL × I L (W)
, pf =
Wi
3V I
× 100 (%)
,η
=
計 算
力率 効率
出力
η
pf
Wo
(W) (%) (%)
Wo
×100 (%)
Wi
(d)考察・課題
1)実験結果に対する考察をまとめなさい。
2)同期電動機の種類と用途を調べ,まとめなさい。
4.三相同期発電機の負荷特性の測定
(a)概要:負荷を変化させた場合の同期発電機の出力特性を測定する。負荷電流を変化させると端
子電圧が変動する。その様子を測定することにより,同期発電機の負荷特性を確認する。
(b)実験手順(概略):
※ 各自で整理し,まとめること。
1)図6のように結線する。
※ 太い線と細い線とを使い分ける!
※ 抵抗が2個直列につながっている場合は,ダイヤル式抵抗と摺動抵抗とを組み合わせる。
2)同期発電機の駆動機である直流電動機を始動する。直流電動機で同期発電機を定格回転数で
回転させ,同期発電機を励磁する。
※ 直流電動機の始動方法は「3.直流モータの基本特性」参照
3)負荷力率100%(R=1.0),遅れ80%( X L =0.8),進み80%( X C =0.8)の各々の場合に対して
以下の測定を行う。
4)負荷電流を調整し,出力特性を測定する。
※
周波数 f および界磁電流 I f を一定に保つ。
(c)実験データの整理法:
1)測定と平行して,パソコンにデータを入力して,実験データを確認しながら実験を進める。
2)データの整理方法は表 2 の通り。
3)表 2 と図 6 との対応は以下のとおり。
DPM より V , I , Wo ,f , V3 の読み = V f
A1 の読み = I m
, A 3 の読み = I f
, A 2 の読み = I mf
4)グラフは,横軸を I ,縦軸に V , Wo , Wi ,pf,ηとする。
(d)考察・課題
1)実験結果に対する考察をまとめなさい。
2)同期発電機の種類と用途を調べ,まとめなさい。
11 - 4
,
V1 の読み = Vm
,
表 2 同期発電機の試験結果
同期発電機側測定諸量
直流機側測定諸量
端子
電圧
V
(V)
負荷
電流
I
(A)
界磁
電圧
界磁
電流
Vf
If
(V)
(A)
出力
Wo
(W)
計
算
界磁
界磁損 入力 力率 総合
周波数
電流
効率
Wf
Wi
pf
f
I mf
Vm
Im
η
(Hz)
(W) (W) (%) (%)
(V) (A) (A)
直流
電圧
, Wi = Vm × I m (W), pf =
W f = V f × I f (W)
Wo
直流
電流
× 100 (%)
,η =
3V I
Wo
× 100 (%)
Wi + W f
5.実験レポートの内容
(1)目的
(2)同期電動機および同期発電機の動作原理(なぜ,回るのか?
なぜ発電するのか?)
(3)使用機器
(4)結線図(各自描くこと。)
(5)実験方法(各自で考えなさい。
)
(6)実験結果(表とグラフ)
(7)考察・課題
以上
11 - 5
U
AC
200V
SW1
SD
DPM
A
U
J
V
V
W
W
DC-G
Sy-M
+
A3
R4
VV33
K
-
H
J
SW3
+
K
A2
R5
R2
R1
SW2
A1
DC
100V
SW4
R6
R3
V1
+
DC
100V
-
-
SD:スライダック,DPM:ディジタル・パワーメータ
SW1 , SW3 , SW4 :分電盤の MCCB
図 5 同期電動機の試験回路
DC Amp.
+
3~60Hz 200V
DC Motor
A1
A2
A
SY Alternator
DPM
J
G
3~
M
V1
SW1
SW3
K
-
R1
J
H
V3
K
R2
A3
DC Amp.:直流電源
DC Motor:直流モータ
SY Alternator:同期発電機
DPM:デジタルパワーメータ
Z:総合負荷装置
R1:直流モータ用界磁抵抗器
R2:同期発電機用界磁抵抗器
SW1 , SW2 :分電盤の MCCB
SW3 :Z 内蔵スイッチ
SW2
DC 100V
図 6 同期発電機の試験回路
11 - 6
Z
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