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公共交通機関の利用を促進し都市環境問題の解決を目指す

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公共交通機関の利用を促進し都市環境問題の解決を目指す
公共交通機関の利用を促進し
都市環境問題の解決を目指す
植木和宏氏 ~ NPO 法人タウンモービルネットワーク北九州理事長 ~
Cool
Q
No.15
きっかけは
放置自転車対策
会社からレンタサイクルの社会実験を
提案し、それを実施する機会を得まし
た。実は、レンタサイクルの社会実験
今から 7、8 年前の事ですが、当時
というのは全国各地で同じような取組
はサラリーマンとして自転車やそれに
が頻繁に行われていたのですが、どこ
関連したシステムの営業をしていまし
の結果も評判は良いが単独の事業とし
北九州市には、市民の足として自動車
た。営業先のひとつだった JR から放
ては成り立たないというものでした。
や鉄道、モノレール、バスといった公
置自転車が社会問題となっていること
やはり、皆さんがレンタサイクルを使
共交通機関が整備されているが、温室
を聞き、なんとか改善できないものか
うときは、安ければ安いほど良いとい
効果ガス(CO2)削減をはじめとする
と考えたのが始まりです。それ以降、
うことになってしまうんですね。北九
都市環境問題を解決するためには、都
国内外の自転車問題を調べてみたとこ
州市の場合も、同じような結果が出ま
市交通の現状と課題を整理し、なんら
ろ、ヨーロッパでは既に自転車をシェ
した。その頃は自転車利用環境の整備
かの改善策を講じる必要がある。そ
アするシステムが構築されていて、環
は行政の役割だろうなどと考えていま
の対策として、自転車を都市の適正な
境に優しいモビリティを中心としたま
したが、なかなか受け皿が無く、行政
交通手段と位置付け、民間非営利セク
ちづくりが進んでいることを知りまし
が実施するというのも難しかったんで
ターの立場から経済産業省支援事業を
た。その時は漠然と、日本もこのよう
す。
活用し、活動を展開する『NPO 法人
なまちづくりが行われることで、放置
次に考えたのが民間団体の NPO で
タウンモービルネットワーク北九州』
自転車が減っていくだろうと漠然と感
した。事業を実施してくれそうな団
理事長の植木氏にお話しを伺った。
じました。
体を探すため、市内のかなりの団体を
平成 14 年頃は、北九州市はモノ
廻ってお願いしました。ただ、当時は
レールの利用客が伸び悩んでいるとい
事業を実施する NPO 自体の数が少な
う状況がありましたので「モノレール
かったんですね。それに、NPO が実
駅までの行き来を自転車で補えない
施する事業というのも介護事業や集合
か」という意図で、当時所属していた
住宅管理事業などに限られていまし
Cool Kyushu Project
59 Cool Kyushu Selection 2008
て、都市交通改善のような新しい事業
ました。そういうモデルは全国的に見
かったのですが、アルミ製 7 段変速
に自発的に取り組もうとする NPO は
ても少ないと思います。
折りたたみ電動式というものができあ
ありませんでした。それでついに自分
最大の問題点は門司港地区に多い
がり、非常に好評でした。当時は市販
“坂”でしたね。まず事業として目立
されていなかったため「何処で売って
つ必要がありましたので、他のレンタ
いるのか」といった問い合わせもかな
サイクルとの差別化ということで電動
りありました。余談ですが、その自転
アシスト付自転車(以下、電動自転車)
車は後に製品化されて、爆発的に売れ
を 100 台置くことを決めました。し
たようです。門司港のレンタサイクル
平成 15 年 11 月から門司港地区で
かし、門司には既製の電動自転車では
事業は、意外に利用が伸びて今では年
レンタサイクルを始めたのが最初の事
登れないような急坂がいくつかあった
間約 12,000 人に利用して頂き、電
業です。NPO を始めた当初は全国的
んですね。これは難題でしたので、す
動自転車の数も 200 台に増やしてお
な営業活動を行っていましたが、この
ぐに電動自転車メーカーに相談に行き
ります。都市交通に関連するその後の
年の 8 月に北九州市から「門司港地
ました。残念ながら、当時トップシェ
展開としては、『ちょこ乗り交通』と
区のサイクリングロードを整備したが
アのメーカーからは相手にしてもらえ
名付けて駐輪場事業やカーシェアリン
現状のままではレンタサイクルの利用
ませんでしたが、シェア第 2 位のメー
グ事業もレンタサイクル事業と併せて
が進まないから NPO で何とかならな
カーの社長と意気投合し、坂が多い地
実施するに至りました。
いか」といった問い合わせを受け、場
域にも対応した特注電動自転車の開発
所と建物は市が用意するという話を頂
も手掛けてもらえることになりまし
きました。お土産を売りながらとか、
た。
宿泊客に自転車を貸すのとは違います
レンタル初日はそういった工夫も功
ので、レンタサイクルに特化して利益
を奏して、多くの人が集まりました。
当 NPO が実施する事業には、もう
が出るようなシステム造りに力を入れ
特注の自転車は、開発期間も非常に短
一つエコポイント事業があります。エ
でやろうと思った訳です。
特注電気自動車でレンタサ
イクル事業を軌道へ
公共交通機関の利用促進を
図るエコポイント事業
電動アシスト付き自転車など 200 台のレンタサイク
ルを置く拠 点『JOYiNT 門司港』
(左上)/ JR 小
倉駅の公共連絡通路に設けられた駐輪場(左下)/
JR 小倉駅のコンコースに設置された
『Eco ロッカー』
を操作する植木理事長(右)
Cool Kyushu Selection 2008 60
コポイントというのは、省エネ商品・
めての試みだと思います。なお、会
機関等と連携を強化し、利用者が便利
サービスを利用したり、省エネ行動を
員数は現在 3,000 人で、平日は一日
だと思うようなサービスを更に拡充で
実施することにより市民がポイントを
200 人から 300 人の利用があります
きればと考えています。
貯め、ポイントに応じて商品・サービ
が、デパートなどが設置しているポイ
スを還元するというシステムです。
ントシステムと同じような仕組みです
エコポイントを知ったきっかけは経
ので、会員の皆様には違和感なく使っ
済産業省の補助金募集でして、平成
ていただいていると思います。
20 年 7 月から当 NPO も補助金(経
エコポイントシステムは新規に開発
今、積極的に進めている事業として
済産業省:平成 20 年度環境負荷低減
したもので、端末自体は『Eco ロッ
は、小倉駅横に新規オープンした『モ
国民運動支援地域振興事業費補助金)
カー』という多機能ロッカーに組み込
ビリティセンター』の整備があります。
を頂いて事業を開始いたしました。こ
まれています。ポイント付与以外にも
モビリティセンターというのは、小倉
れは公共交通機関の利用促進を目的と
ロッカーを使って環境負荷低減に繋が
駅とリンクした『ちょこ乗り交通』の
したもので、JR 小倉駅に来訪された
る様々なサービスを提供しています。
拠点のようなもので、エコポイントシ
方、すなわち公共交通機関を利用され
例えば、小倉駅の提携店舗で購入した
ステム(前出の経済産業省補助金を活
た方にエコポイントを付与するという
ものをロッカーに届けて貰える『買物
用しシステムを構築)と連携させ、環
事業です。エコポイントは小倉駅コン
ポーターサービス』や『クリーニング
境に優しいモビリティづくりに貢献で
コース内に設置された端末で自動的に
の受け渡し代行サービス』、『宅配便の
きる取組だと考えております。
付与される仕組みですが、このような
受取代行サービス』などがあります。
駐輪場整備などの計画は市にもある
エコポイントの自動付与は全国でも初
今後は、駅周辺の商業施設や公共交通
のですが、市に対しては「同じ駅前
事業の融合で環境に優しい
モビリティづくりを目指す
経 済産 業省の支 援で開 発した『Eco ロッ
カー』には、エコポイント付与機能などタ
ウンモビリティを融合する様々な機能が詰
まっている(右上)/『Eco ロッカー』に
組み込まれたレンタサイクルなどの鍵自動
貸し出し機能(右下)
61 Cool Kyushu Selection 2008
に駐輪場を作るにしても、自転車・バ
自転車に乗り換える方が効率が良いの
いサービスを開始するにも、会員数
イクだけでなく車も置け、なおかつレ
ではないでしょうか。その普及のため
を増やすにも原資が必要となります
ンタサイクルやカーシェアリング、電
に、利用者へのインセンティブとして
ので、周囲の理解を得るために最低 3
動カートなどのタウンモビリティが利
エコポイントがある訳です。モビリ
年は継続し実績を作ることが欠かせ
用できるといった総合的な拠点を作れ
ティセンターは今のところ 1 ヶ所で
ないというのが実感としてあります
ないか」と提案しまして、スケールは
すが、面的に拠点を整備し、乗り捨て
ね。当 NPO もやっと北九州での実績
小さいですがオープンに漕ぎ着けまし
が出来るようになれば、利便性が高ま
を解析するだけのものが揃い始めると
た。やはり環境に優しいと言いまして
り、利用者が増えていくと期待してい
いう感じです。また、当 NPO が実施
も、車も必要ですので、パークアンド
ます。
している事業が単純に儲かる話であれ
ライド的な機能を持たせて、ここを拠
今後は、こうした事業を北九州市で
ば、交通事業者も我々に任せず自分た
点に公共交通機関やレンタサイクルへ
拡大していくだけでなく福岡にも展開
ちで投資して実施するでしょうから、
の乗り換えを勧めていく必要もあると
したいと考えています。ただし、こう
NPO でなければ実施できないビジネス
思いますね。企業の方が営業廻りをす
した事業は、モビリティセンターやエ
モデルを構築し、都市交通環境の改善を
るにしても、都心部では小回りのきく
コポイントの活用も含めまして、新し
目指して邁進したいと思っております。
2009 年 2 月 24 日に新規 OPEN した、JR 小倉
駅前の
『小倉駅北口モビリティセンター』。カーシェ
アリングやレンタサイクルなどの機能が備わり、公
共交通機関から容易にアクセスできる。今後は、
駐車場機能との融合や他地域での拠点設置を計
画し、更に利用者の利便性を高める予定(上)/
『エコポイント』とタウンモビリティの融合は、環
境配慮行動への動機付けにも結びついている(下)
INFORMATION
NPO 法人タウンモービルネットワーク北九州
■所在地 北九州市小倉北区浅野1丁目2-39
■ T E L 093-531-2200
■ FA X 093-531-2210
■ U R L http://www.npo-ktmn.com
□見学可能(要問い合わせ)
Cool Kyushu Selection 2008 62
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