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インフルエンザについて

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インフルエンザについて
JCHO 宮崎江南病院・健康セミナー
日
2016年 12月21
インフルエンザについて
JCHO 宮崎江南病院 内科
田中 弦一
上気道(鼻腔・咽頭・喉頭)
咽頭は食物が通過し、耳管咽頭口は中耳につながっている。
上気道の一部は呼吸器以外(消化管・耳鼻領域)の役割も担っている。
インフルエンザ
influenza
インフルエンザの基礎知識
インフルエンザは、公衆衛生に優れた国においても毎年流行する疾患。
通常は安静を保っていれば、2〜3日で解熱し、その他の症状も次第に
軽快する疾患とされている。
しかし、その伝播力にともなう流行規模と健康被害の甚大さは、かぜ
症候群とは比較にならない。特に、罹患率が高い小児における脳症の合
併や、高齢者、基礎疾患を有する者、妊婦における肺炎や呼吸器障害の
合併は、時に生命予後に影響する。
インフルエンザは飛沫感染するとされ、その飛沫感染予防を日常で実
践することが非常に大事です。
インフルエンザウイルスとは
インフルエンザの原因となるインフルエンザウイルスは、オルソミクソ
ウイルス科のRNAウイルス。ウイルス粒子は直径100nm程度で、エンベロー
プを有し、アルコールによる消毒は有効。
内部構成タンパクであるヌクレオカプシドタンパク(NP)、マトリックス
タンパク(M1)の抗原性によって、A型,B型,C型 に分類される。
季節性インフルエンザの原因となるのは、主にA型とB型です。
インフルエンザウイルスは、表面に2種類のスパイク(棘状の構造)を
持つ。赤血球凝集素(ヘマグルチニン:HA)と、ノイラミニダーゼ(NA)で
ある。感染防御に関係するのは、HAとNAのスパイクに対する抗体で、特に
重要なのはHAに対する抗体、赤血球凝集阻止(HI)抗体である。
インフルエンザウイルスは、HAで咽喉や気管支の細胞のレセプターに結合
し、感染をおこす。レセプターはヒトと鳥で構造が異なるので、鳥インフ
ルエンザは原則としてヒトには感染しない。HAの作用を抑制するのがHI抗
体で、感染防御に最も関係する。HI抗体を人工的に作るのが、インフルエ
ンザワクチン接種である。
HA:赤血球凝集素
NA:ノイラミニダーゼ
インフルエンザウイルス生活環
インフルエンザ診療ガイド2013-14
インフルエンザウイルスの種類
・A型インフルエンザウイルスは、ヒト以外に鳥、ブタ、ウマ等に存在する。
B型はヒトにのみ存在する。
・A型インフルエンザはHAとNAの組み合わせで分類されるが、鳥インフルエ
ンザには、HAが抗原性により16種類(H1〜H16)、NAが9種類(N1〜9)ある。
鳥インフルエンザは、家禽に対する毒性で強毒と弱毒に分類されるが、
強毒株は H5 と H7 である。
・ヒトのインフルエンザにはHAが3種類(H1, H2, H3)、NAが2種類(N1, N2)。
1918年に世界的流行となったスペインかぜA(H1N1)、1958年のアジアか
ぜ
A(H2N2)、1968年の香港かぜA(H3N2)、2009年のA(H1N1)pdm09。
抗原変異と新型ウイルス
なぜ毎年流行する?
インフルエンザウイルスの表面にはHA、NAという2種類の突起(タンパク
質)があり、この抗原性がよく変わるため。
◆抗原連続変異(抗原ドリフト)・小変異
インフルエンザウイルスは突然変異を起こし、HAとNAの抗原性が、毎年、
少しずつ変化する。これを「抗原連続変異」という。例えば、香港かぜに
一度罹患した人でも、ウイルス抗原が変異するために、一生の間に何回も
香港かぜに罹患する。
インフルエンザワクチンは、前の年の流行ウイルスから作成するが、変
異が起きると効果が低下する。
抗原変異と新型ウイルス
◆抗原不連続変異(抗原シフト)
数十年に一度、鳥やブタのインフルエンザとヒトのインフルエンザが遺
伝的に交雑を起こし、HAが鳥やブタ由来であるウイルスが新たに出現する
ことがある。これを「抗原不連続変異」という。それまで流行していたイ
ンフルエンザウイルスで作成したワクチンは無効となる。ほとんどのヒト
が免疫を持たないために、大きな流行となる。
抗原変異と新型ウイルス
◆大流行(pandemic)
抗原不連続変異により、新型のA型インフルエンザウイルスが出現して、
世界的に大規模な流行を起こすことを言う。時には、鳥インフルエンザが
突然変異により直接ヒトに感染するようになり、新型インフルエンザが発
生することもある。
1918年:スペインかぜ(A/H1N1亜型)・・感染者6億人、
死者4000万人(日本人48万人)
1957年:アジアかぜ(A/H2N2亜型)・・・死者200万人(日本人5700人)
1968年:香港かぜ(A/H3N2亜型) ・・・死者100万人(日本人2000人)
2009年:インフルエンザ(H1N1)2009
季節性インフルエンザの流行パターン
インフルエンザの流行と終息
◆自然界におけるインフルエンザの伝播
・季節性インフルエンザは北半球では12月〜3月、南半球では4月〜9月の冬
季に流行する。
・熱帯・温帯地域である東南アジアでは年間を通じてインフルエンザの流
行
が確認されている。
・ここを起点としてヒトーヒト間で感染を繰り返しながら、公共交通機関
に
よって急速に拡大する。
◆日本における季節性インフルエンザの流行の推移
国立感染症研究所HPより
◆地域レベルでの伝播
季節性インフルエンザの罹患率は小児で高い。小児はインフルエンザに対
する基礎免疫が不十分なうえに、高い集団生活をおくっている。
・保育園・幼稚園、小中学校において小児ー小児への伝播は容易におこる。
感染児童の臨床経過
一冊まるごとインフルエンザの制御法
◆地域レベルでの伝播
感染した児童が家庭に戻ると、今度は同居する両親、祖父母といった成人や
高齢者に感染する。
・家庭内感染続発感染者は母親が一番多い。
地域におけるインフルエンザの伝播様式
インフルエンザの制御法
インフルエンザ流行株の変移
◆インフルエンザ流行株の変移
2006/07シーズン以前は、A型インフルエンザはA(H3N2)が主体であったが、
以降はA(H1N1)に入れ替わった。2009/10シーズンはA(H1N1)pdm09が流行株
のほぼ100%を占め、2010/11以降は、季節性インフルエンザとなった。
◆インフルエンザ流行株
2015/16年シーズンは、
流行の立ち上がりが遅く、
A(H1)pdm09亜型が流行の
大部分を占めた。
◆週別型別インフルエンザ分離・検出報告(2015/16&2016/17シーズン)
インフルエンザの臨床的特徴
インフルエンザの病態
インフルエンザでは、ウイルス局所感染における咽頭痛や咳といった局所症
状のみならず、頭痛、関節痛、筋肉痛、そして重症化すると呼吸不全や脳症
といった全身症状が出現する。
インフルエンザ自体の病原因子は判明しておらず、これらの症状は生体側の
炎症症状によるもと考えられる。
◆自然免疫と獲得免疫
インフルエンザの制御法
インフルエンザの症状
・インフルエンザは普通感冒にくらべ急速に発症し、全身症状も強い。
・普通感冒では上気道症状が先行するが、インフルエンザは全身症状に
続いて上気道症状がみられる。
・インフルエンザは流行性がある。
病気が見える④呼吸器
インフルエンザの症状
◆成 人
・成人では突然の高熱から始まり、咽頭痛、頭痛、関節痛、四肢痛、倦怠感
などの全身症状が強いのが特徴。
・2〜3日で解熱し、その頃より鼻漏・咳嗽などの呼吸器症状が目立ってくる。
・嘔吐・下痢などの胃腸症状はすくない。
・完全な回復まで1〜2週間を要する。
・発熱がない、微熱の患者も存在する。
・成人では香港かぜA(H3N2)が臨床的に重く、インフルエンザに関連した
死亡(超過死亡)の原因となる。ソ連型A(H1N1)、B型インフルエンザは
比較的軽症であり、超過死亡はほとんどみられない。
・A(H1N1)pdm09は一般に軽症であったが、健康成人でも重症のウイルス肺
炎
をおこすことがある。
インフルエンザの症状
◆高齢者、ハイリスク患者
・高齢者や、心臓・肺に基礎疾患を有するハイリスク患者では、細菌性肺炎
を合併することが多く、入院や死亡の重大な原因となる。
インフルエンザ対策としても、肺炎球菌ワクチン接種が重要。
・糖尿病、腎不全、肝不全の患者ではインフルエンザ罹患は基礎疾患を悪化
させ、やはり入院・死亡の原因となる。
インフルエンザの症状
◆小 児
・成人と同様の典型的なインフルエンザ症状を呈することが多い。
・1〜2日の潜伏期の後、発熱、咳嗽、頭痛、咽頭痛などの症状で発症し、
36〜48時間はウイルス排泄が持続し、5〜7日目にはウイルス複製は終了。
・低年齢の乳幼児になると、全身症状は目立たず呼吸器症状が中心になり、
RSウイルス感染や普通感冒との鑑別が困難になる。乳幼児では高熱、熱性
けいれん、気管支炎、脱水などにより冬季の重要な入院原因となる。
・A(H1N1)pdm09は低酸素血症を伴う気管支炎を起こすことが多い。
特に喘息児は注意を要する。
・A(H3N2),B型インフルエンザは臨床的
に同程度に重く、入院の原因になる。
・重症例でインフルエンザ脳症が問題。
◆重症化の問題・呼吸不全
A型インフルエンザの診断。食欲不振・脱水のため、入院。
オセルタミビルによる治療開始2日目に突然の呼吸不全。
インフルエンザの制御法
インフルエンザワクチン
インフルエンザワクチン株の選定
・日本では、インフルエンザウイルスの赤血球凝集素(hemagglutinin:HA)
蛋白を主成分とする「不活化インフルエンザHAワクチン」が用いられる。
・日本は、厚生労働省健康局の要請に応じて、国立感染症研究所が検討し、
これに基づいて厚生労働省が決定通知を行う。
・日本でのインフルエンザワクチンは、A(H1N1)、A(H3N2)、B(ビクトリア
系統株)、B(山形系統株)の4価ワクチン(2015/16シーズンから)。
・2010/11シーズンよりA(H1N1)型ウイルスに従来のソ連型に変わって、
A(H1N1)pdm09の株が採用されている。
国立感染症研究所によって選定された近年のインフルエンザワクチン株
インフルエンザ診療ガイド2014-15より
ワクチン接種
・日本では1960年代から、集団免疫による社会防衛を目的として学童集団
接
種を実施していたが有効性に疑問が強まり、1987年から保護者の意向に
よって接種を辞退することがみとめられ、1994年の予防接種法改正で、
任
意接種ワクチンに指定された(学童集団接種は中止)。
・ワクチン接種人数は減少し、接種率は67.9%(1979年)→17.8%(1992年)
ま
で低下した。
・その後は、欧米同様に、高齢者とハイリスク患者を中心にインフルエンザ
接種を推奨してきた。
・高齢者施設でのインフルエンザの流行、高齢者死亡の増加、小児における
脳症の増加の報道され、1999年には一時的なワクチン不足になった。
インフルエンザワクチン接種の年次推移
一冊まるごとインフルエンザの制御法
ワクチン接種
2001年の予防接種法の改正で、以下の方々は、インフルエンザにかかると
重症化しやすく、特に接種による便益が大きいと考えられるため、定期の予
防接種の対象となり、推奨されるようになった。
(1)65歳以上の方
(2)60~64歳で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活
を極度に制限される方(概ね、身体障害者障害程度等級1級に相当)
(3)60~64歳で、HIVによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど
不可能な方(概ね、身体障害者障害程度等級1級に相当)
学童集団接種とindirect protection
・学童集団接種が高齢者の超過死亡を低下させる効果があったことが報告。
学童集団接種が実施されていた1970〜1980年代の超過死亡を調査すると、
1990年代に比べて低く、集団接種の中止以降、インフルエンザ死亡者が
増
加していた。
・学童集団接種により、日本において毎年少なくとも1000名の高齢者のイ
ン
フルエンザ死亡が抑えられていたと報告された。
・2005年には学童集団接種は日本の幼児の死亡も抑えていたと報告された。
大半の死亡原因はインフルエンザ脳症と推測される。
学童集団接種による集団免疫により幼児も守られていた。
日米の超過死亡とワクチン生産量
インフルエンザ診療ガイド2013-14
学童集団接種とindirect protection
インフルエンザワクチンの有効性ついては個人の発症防止効果に加えて、
indirect protectionの理解をひろめることが重要である。
インフルエンザワクチンの接種をうけることは、被接種者自身を守るメ
リットだけでなく、その家族や周囲の人々、更には社会のハイリスク群を
守ることになる。
インフルエンザワクチンの有効性
・インフルエンザワクチンの有効率は、毎年のように調査が実施されている。
・調査方法に違いがあるために有効率はさまざまな値となる。
・インフルエンザをどのように診断するか
・インフルエンザワクチン効果の判定はなにか
(発病の有無、肺炎などの合併症の発病の有無、死亡率など)
・調査対象年齢は何歳までかなど
・インフルエンザワクチンは流行を予測してワクチンを作っているために、
その予想が外れた年は効果が低いことも知られている。
・健康成人ではおよそ50〜60%程度の発症を防ぐ効果があると考えらている。
AstellasのHPより改変
インフルエンザワクチンの有効性
「インフルエンザワクチンの有効率がおよそ60%」と説明すると多くの人
は「100人が予防接種を受けたら60人は発病しない」という意味に考える
かもしれませんが、インフルエンザワクチンの有効率の考え方は実はそう
ではない。
AstellasのHPより
・40人のインフルエンザワクチン未接種グループ・・1組
・40人のインフルエンザワクチン接種グループ ・・2組
→1組からその冬10人のインフルエンザ患者が発生
→2組からその冬 4人のインフルエンザ患者が発生
(インフルエンザ患者が6名少なくなった)
・この「10名から6人へらした」こと・・有効率60%という意味。
・もし予防接種を全員うけた2組からの患者発生 0人・・・有効率100%
2組からの患者発生10人・・・有効率 0%
(ワクチン未接種と一緒なので)
AstellasのHPより
◆高齢者
高齢者に対する接種は、予防接種法によるB類定期接種である。
・日本の不活化HAワクチンの有効率は、平成9-11年度の厚生科学研究報告
書、「インフルエンザワクチンの効果に関する研究」において、
評価指標を“死亡回避”とした場合80%以上、
“発病予防”とした場合34〜55%という結果。
インフルエンザ診療ガイド2013-14、
◆高齢者
・高齢者において、インフルエンザに関連した死亡防止効果は最大で80%、
入院防止効果は70%との報告があり、重症化防止効果がいわれて来た。
・高齢者(≧60歳)を対象とした唯一のランダム化試験では発病防止効果
58%と報告されているが、70歳以上での効果は明確ではない。
・65歳以上の高齢者を対象とした検証で、インフルエンザ関連肺炎の発症
を抑制する効果はみられないとの報告。
・高齢者のワクチン接種率が高い、米国、フランス、イタリア各国におい
ても高齢者の超過死亡が低下しない。
・・・最近では高い重症化防止効果があるかどうか疑問がでている。
インフルエンザ診療ガイド2013-14(2015-16)、インフルエンザの制御法
◆高齢者
・高齢者へのインフルエンザワクチン接種による免疫はあまり効果できな
いかもしれない。
・高齢者に接するヒトがワクチン接種を行うなどして、高齢者の社会的な
免疫(herd immunity)を強化するなどの間接的な予防法を考えなくては
いけない。
一冊まるごとインフルエンザの制御法
高齢者に対するインフルエンザワクチンの効果
高齢者へのインフルエンザワクチンの予防効果はあまり期待できないこ
とも考えられ、herd immunityなどの予防策が必要となる。
インフルエンザの制御法
インフルエンザワクチンの安全性
◆高齢者
高齢者への接種後48時間以内に発現した有害事象の解析。
・全身反応:37.5℃以上の発熱(0.5〜1.3%)、発疹(0〜0.6%)、
・局所反応:接種部位の発赤(8.8〜17.6%)、疼痛(1.3〜3.0%)、
腫脹(2.8〜6.6%)、
いずれも頻度や程度も軽微で、重篤なものは認めなかった。
◆小 児
小児でも同様に接種後48時間以内で観察が行われた。
・発熱:≧37.5℃(2.7〜4.6%),≧38.0℃(1.3〜2.8%),≧39.0℃(0.2〜
1.4%)
・局所反応:発赤(10.6〜18.9%)、硬結(7.6〜12.0%)、腫脹(6.6〜11.4%)
症状はいずれも軽微であった。
インフルエンザ診療ガイド2014-15
「鶏卵内での抗原変異」の問題
・2012-13シーズンのA香港型インフルエンザの流行で、ワクチン株と流行株
の抗原性が一致していたにもかかわらず、健康成人での発症防止効果が40〜
50%前後とかなり低かった。また、特に高齢者では、効果が0〜10%前後と
報告された。日本国内でも、このシーズンでほぼ全員がワクチン接種を受け
た高齢者施設で大規模なA香港型の院内流行が相次いだ。
インフルエンザ診療ガイド2014-15
2014-15シーズン
・2014-15シーズンの同じくA香港型インフルエンザの流行では、高齢者はも
とより、健康成人でも効果がみられなかった。
・2014-15シーズンで分離された流行株の抗原のサブクレードは、遺伝的に
ワクチン株が属するクレードからは系統樹上では明確に区別される。
・流行株とワクチン株での抗原性の違い、鶏卵内での抗原変異(鶏卵馴化に
よる抗原変異)で、ワクチンの有効性が低下したものと考えられた。
インフルエンザ診療ガイド2014-15, 2015-16
「鶏卵内での抗原変異」の問題
・以前、1990年代までは、A香港型インフルエンザは十分に効果あった。
・最近、A香港型ウイルスは鶏卵内での増殖が悪くなり、以前とは遺伝的に
異なる性質を持つようになっている。
・鶏卵内で培養すると、鶏卵内で増殖性の高いウイルスが選択され、結果的
に抗原性に変化をきたす。
・鶏卵内での抗原変異がワクチン効果低下の原因と考えられている。
→世界では鶏卵培養以外の新たなワクチン製造に向かっている。
インフルエンザ診療ガイド2015-16
インフルエンザの診断と治療法
インフルエンザの臨床診断
インフルエンザの診断は、インフルエンザか否か、合併症はないか(病態・
重症度はどうか)という2つのポイントがある。
・インフルエンザの迅速かつ確実な診断は、抗インフルエンザ薬の使用や
感染拡大防止策を適切に行うためには非常に重要。
・しかし、インフルエンザは毎年冬に流行するポピュラーな疾患であり、
必ずしも全例に病原体検査を行う必要はない。
インフルエンザ診療ガイド2015-16より
インフルエンザの臨床診断
「インフルエンザ様疾患(influenza like illness:ILI)」とは
インフルエンザウイルス感染の主要な症状である発熱や上気道症状を呈する
が、インフルエンザウイルスの感染が確認できない病態の総称。
感染症法における届け出基準での、ILIの定義は下記を全て満たす場合。
1.突然の発症
2.高熱(38℃以上)
3.上気道炎症状
4.全身倦怠感等の全身症状
成人や年長児で、流行期にこのような典型的な症状を呈した場合には、臨床
症状のみによる判断も比較的容易。
インフルエンザ診療ガイド2013-14より
インフルエンザの臨床診断
「インフルエンザ様疾患(influenza like illness:ILI)」
・ILIを呈する他の感染症が多い小児、
典型的な症状を呈さないことがある高齢者、
基礎疾患のある患者等では、他の疾患との鑑別は難しい。
・インフルエンザ患者との接触歴が明らかでない場合、
流行最盛期以外、
新型のような流行パターンと異なった状況では、更に判断難しい。
・症状からインフルエンザの型や亜型の鑑別することは困難。
インフルエンザ診療ガイド2013-14より
インフルエンザの検査診断
◆血清抗体検査とウイルスを直接検出する方法に分けられる。
確定診断方法は、従来のスタンダードであったペア血清による抗体価上昇と
ウイルス分離に加えて、最近はPCRやLAMP法などの遺伝子検出法など。
しかし、臨床の現場では、時間や手間がかかる確認検査を日常的に行い、
その結果を診療に反映させることは実際不可能である。
迅速な対応が求められる臨床における検査として、インフルエンザウイルス
抗原検出検査(いわゆる迅速診断キット)などが上げられる。
わが国において、迅速診断キットを実施し抗インフルエンザ薬を投与する
とうい診療の流れがスタンダードとなっている。
インフルエンザ診療ガイド2014-15より
インフルエンザウイルス抗原迅速検査(迅速診断キット)
迅速診断キットは広く行われ、抗ウイルス薬の適切な使用、他の検査の減少、
リスク予測、感染対策のスムーズな実施、流行調査等に貢献している。
臨床的特徴を心得ていれば、診断補助として有用性はきわめて高い。
・A型で感度は≧96%、
B型で≧86%、
・高い特異度>96%、
インフルエンザ診療ガイド2013-14、一冊まるごとインフルエンザの制御法より
インフルエンザウイルス迅速診断キット
迅速診断キット使用方法
検体は咽頭ぬぐい液より感度の高い、鼻腔ぬぐい液を採取する。
スワブを鼻腔ー耳孔を結ぶ線とほぼ並行に挿入し、抵抗を感じたところで止め、
ぬぐい液が浸透するまでおよそ10秒間そのまま待機したあと抜去する。
一冊まるごとインフルエンザの制御法より
インフルエンザウイルス迅速診断キット
迅速診断キットの感受性に影響する因子。
症状や患者背景がウイルス量に相関するためと考えられる。
一般に検出率が低くなりがちなのは、A型よりB型、小児より成人、鼻腔
検体より咽頭検体、発症6〜12時間ぐらいまでの病初期あるいは5日以降、
発熱の程度が低い場合、鼻汁が少ない場合、ワクチン接種者、検体採取
に不慣れな場合など。
インフルエンザ診療ガイド2013-14、一冊まるごとインフルエンザの制御法より
インフルエンザウイルス迅速診断キット
迅速診断キットによる検査結果はあくまでも診断の補助手段
であって、インフルエンザ診断にあたっては主治医の臨床経
験に伴う総合的判断を最優先する。
一冊まるごとインフルエンザの制御法より
抗インフルエンザ療法
わが国で抗インフルエンザ薬として使用可能なのは、M2タンパク阻害薬の
アマンタジン、ノイラミニダーゼ阻害剤のオセルタミビル、ザナミビル、
ラニナミビル、ペラミビル。
それぞれの作用は、M2タンパク阻害剤がウイルスをエンドソーム内で脱殻
される点、NAIsはノイラミニダーゼ活性が高まり出芽する点。
一冊まるごとインフルエンザの制御法より
臨床におけるNAIsの使い分け
1.治療薬として使用
アマンタジンは耐性が進み、しばらくは実用に適さない。
現時点での抗インフルエンザ療法の主役はノイラミニダーゼ阻害薬(NAIs)。
発症早期に治療を開始すると治療後のウイルス残存率が低く抑えられる。
一冊まるごとインフルエンザの制御法より
臨床におけるNAIsの使い分け
2.予防内服薬として使用。
アマンタジン・オセルタミビル・ザナミビル・ラニナビルがインフルエ
ンザ予防内服として適応がある。アマンタジンはA型のみ適応。
NAIsの予防内服は、ワクチン未接種者へのワクチンの代用といった考えの
安易な使用は厳に慎むべき。
ワクチン接種が禁忌であるハイリスクグループや、ハイリスクグループの
入院施設内でのアウトブレイク時など、適応を考慮する必要がある。
一冊まるごとインフルエンザの制御法より
1回20mgを
1日1回2日感
一冊まるごとインフルエンザの制御法より
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