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page230-458 - 新エネルギー・産業技術総合開発機構
図 2.2.6-7 に、流体解析にて求めた全圧の出口流路ミーン断面における分布を示す。 ψ 舌部 ψ ψ ψ 図 2.2.6-7 全圧分布(出口流路ミーン断面) 全圧については、舌部から下流にかけて圧力損失領域が伸びている。しかしスク ロール出口位置では(半径 9mm)分布がほぼ解消されて周方向にほぼ一様となって いる。静圧については、舌部近傍に舌部付近で若干の低下領域が見られるものの、 周方向にほぼ一様であり同心円に近い分布となっている。マッハ数についても、静 圧の場合と同様に周方向にほぼ一様な分布となった。 以上のようにスクロール内部流れ状態の把握を行った結果、顕著な流れ分布はみ られず大きな損失が発生する要因は無いことが確認された。 - 160 - ② バルブ絞り方式との比較 可変容量機構として最も構造が簡易である、タービン上流にバルブを設置して容 量調節する方式の場合との効率の比較を行った。 最大流量を定格流量の 120%と仮定し、本膨張タービンの 120%流量時のスクロ ール A/R をもつタービンをベースとして用いた。ベースとなるタービンの流量-圧 力特性から入口圧力を算出し、仕様入口圧力 0.81MPa との圧力差が全てバルブによ る圧損と仮定して、1次元解析により効率を計算した。 この結果、バルブ絞り方式では 50%流量時の効率は設計点効率に対してほぼ半 分となり著しく効率が低下する。しかし、本可変要領機構を使用することにより、 全圧損失も低く抑えることが可能であること、また定格流量の 50%以上の範囲で、 定格断熱効率に対し 90%以上であることを確認した。 この結果を図 2.2.6-8 に示す。 したがって、本可変容量機構は簡易型バルブ絞り方式に比べて、性能低下を大幅に 抑えることが可能であることが検証された。 タービン効率 η/ηdesign 1.1 1.0 0.9 0.8 低負荷運転時 の効率の向上 0.7 0.6 ■高温側可変容量タービン ◇バルブ絞り方式 0.5 0.4 0.3 0% 20% 40% 60% 80% 流量比[-] 100% 120% 140% 図 2.2.6-8 容量調節方式によるタービン効率比較(高温側可変タービン) - 161 - (b) 低温側可変容量膨張タービンの性能検討 高温側可変容量膨張タービンと同様な手法を用いて、低温側膨張タービンについ ても同様の比較を行った。その結果を図 2.2.6-9 に示す。 1.1 タービン効率η/ηdesign 1.0 0.9 0.8 低負荷運転時 の効率の向上 0.7 0.6 0.5 低温側可変容量タービン 0.4 バルブ絞り方式 0.3 0% 20% 40% 60% 80% 100% 120% 140% 流量比 図 2.2.6-9 容量調節方式によるタービン効率比較(低温側可変タービン) 高温側膨張タービンと同様に可変機構の使用により、全圧損失も低く抑えること が可能であること、また定格流量の 50%以上の範囲で、定格断熱効率に対し 95%以 上で動作することを確認した。 - 162 - (2) 膨張タービン用高負荷軸受技術 a.膨張タービン用軸受の高負荷化 ヘリウム用膨張タービンは極低温で数万から数十万 rpm という高速回転を要求 されるため通常の軸受は使用できない。特に軸受に普通に用いられている潤滑油は、 数 ppm ほどの極少量でもヘリウム中に混入すれば極低温部において固化し、重大な 事故を引き起こす原因となる。 このような理由からヘリウム用膨張タービンの軸受には、磁力を応用した磁気軸 受か、ヘリウムガスの圧力差を応用した気体軸受が用いられる。気体軸受は磁気軸 受に比べ外部電源や高度の制御を必要としないことから、高信頼化、小型化、高効 率化に有利と考え、フェーズⅠでも使用している。 上述の通り、運転中のタービンは軸受で保持され非接触で回転しているが、効率 向上のため、タービンと壁や軸受の隙間は小さいことが望ましい。実際、膨張ター ビンの隙間は通常数∼数十μm と非常に小さい。そのため急激な回転数変動がある とタービンの動揺を軸受が支えきれなくなり周囲と接触を引き起こすこととなり、 冷凍システムの信頼性を阻害する要因となっている。そこで一般のヘリウム冷凍シ ステムでは膨張タービンの回転数を変更することを避け、デュワなどをバッファと して用いていた。 フェーズⅡでは、発電機のような熱負荷変動がある場合でも冷凍システムの運転 を追従させることが可能となるよう、軸受がタービン回転数の変動を吸収し常に安 定した挙動を保つための,気体軸受の高負荷化の研究を実施した。 - 163 - ①70MW 級超電導発電機実証試験における冷凍システム運転の問題点 これまで、超電導発電機用冷凍システムの設計に際し、液化能力は発電機熱負荷 をカバーすることとし、デュワ貯液量は冷凍システムトリップ時のバックアップと して位置付けられていた。従って、発電機負荷変動に液化能力をタイムリーに追随 させることは考慮されていなかった。ところが、70MW 級超電導発電機の実証試験 中、試験という特殊事情もあり発電機の熱負荷はかなり大きく変動した。(表 2.2.6-3 及び図 2.2.6-10) 表 2.2.6-3 7 万 kW 級モデル機結合試験中の熱負荷(代表例) A A A A A A A A A A A A B B B C C C C C 試験日 発電機回転数 界磁電流 HFC出口流量 液化量換算 熱量換算 (rpm) (A) (l/min) (l/h) (W) 1997/10/17 熱負荷確認 6 0 888 76.2 55.2 発電機内温度6K前後 1997/12/1 突発短絡 500 0 932 80.0 58.0 発電機内液面保持 1997/12/1 突発短絡 3600 0 1370 117.5 85.2 1997/12/1 突発短絡 3600 815 1372 117.7 85.3 1997/12/2 ヒータークエンチ 3600 0 1440 123.6 89.6 1997/12/2 ヒータークエンチ 3600 500 1456 124.9 90.6 1997/12/2 ヒータークエンチ 3600 2000 1573 135.0 97.8 1997/12/4 ヒータ-クエンチ 500 0 809 69.4 50.3 発電機内液面保持 1997/12/5 待機運転 500 0 956 82.0 59.5 発電機内液面保持 1997/12/6 効率試験 3600 2300 1595 136.9 99.2 1997/12/9 バランス調整 6 0 785 67.4 48.8 発電機内5K前後 1997/12/11 ヒートラン 3600 1334 1376 118.1 85.6 1998/8/1 長期信頼性(DSS) 3600 2607 1195 102.5 74.3 1998/8/1 長期信頼性(DSS) 3600 2610 1207 103.6 75.1 1998/8/1 長期信頼性(DSS) 6 0 898 77.0 55.9 発電機内温度4.3K 1999/3/30 過大逆相 6 0 647 55.5 40.2 1999/3/30 3600 880 1455 124.8 90.5 1999/4/7 ヒートラン 6 0 535 45.9 33.3 発電機内温度12.7→7.1Kまで降下 1999/4/7 3600 2738 1410 121.0 87.7 1999/4/15 待機運転 6 0 425 36.5 26.4 発電機内温度20K付近 試験名 160.0 140.0 120.0 熱負荷(l/h) 発電機 高速ターニング 低速ターニング 100.0 A機 B機 C機 80.0 60.0 定格(3,600rpm) 40.0 20.0 0.0 1 10 100 発電機回転数 1000 10000 図 2.2.6-10 7万kW級モデル機実証試験結果 - 164 - このため試験中は熱負荷変動を見越してあらかじめ膨張タービン回転数を徐々 に変化させ(最大 1,500rpm/sec)それで対応できない変動にはデュワをバッファ として利用した。しかし前述の通り、デュワ貯液量は冷凍システムトリップ時のバ ックアップ用としてその容量が定められており、発電機負荷変動を吸収させること は想定されていない。従って、このような使用は、冷凍システムの信頼性を低下さ せるのみならず、発電機負荷変動分を吸収することを前提にデュワを設計すればそ の容量をさらに増大させることとなる。さらに発電機送液量をふやせば冷凍システ ムへの戻りガス量が減るため液化能力は低下し、逆に送液量を絞れば液化量が増大 するという冷凍システムの特性がある。これらのことはデュワやガス回収タンクの 大型化とそれに伴うコストアップにつながるだけでなく、デュワ大型化に伴う熱侵 入量の増大による効率低下を招くこととなる。 - 165 - ②軸受の高負荷化による効果 上記問題点を解決するためには、発電機の熱負荷変動に対応して冷凍システムの 液化能力をタイムリーに調節することが必要である。超電導発電機の短時間の負荷 変動に対応した冷凍機運転を実現するには、膨張タービン回転数の急速な変更が必 要であり、そのような急激な回転数変動による軸受荷重変化に耐えうる高負荷軸受 (高負荷スラスト軸受)の開発が不可欠である。高負荷軸受の開発により応答の早 い液化量調節が信頼性を損なうことなく可能となり、発電機定常運転中の負荷変動 に対するデュワ余裕分を見込む必要が無くなる。このように、軸受の高負荷化は冷 凍シス テム のコ ンパ クト化 ,高 効率 化, 高信頼 化に 必要 な技 術であ る。(図 2.2.6-11)さらに高負荷軸受を用いた膨張タービンは熱負荷変動が多い幅広い冷凍 サイクルに適応が可能であり、汎用性が高い技術である。 熱負荷/液化量 高負荷軸受開発の必要性 高負荷軸受 により迅速な 液化量調節 時間 発電機負荷に追従した液化量調 発電機負荷に追従した液化量調 節が可能.発電機定常運転中は 節が可能.発電機定常運転中は デュワ貯液量が変化しない デュワ貯液量が変化しない 冷凍機が対応できないため 冷凍機が対応できないため デュワをバッファとして使用 デュワをバッファとして使用 発電機熱負荷 冷凍機液化量 図 2.2.6-11 軸受高負荷化による効果 - 166 - b.高負荷化 フェーズⅡの開発目標を表 2.2.6-4 に、本研究開発の基本となるフェーズⅠで用 いられた超電導発電機モデル機実証試験用ヘリウム膨張タービンの基本構造図を 図 2.2.6-12 に示す。 表 2.2.6-4 フェーズⅡの開発目標 技術課題 個別自主目標 従来技術 回転数制御範囲 150,000∼300,000rpm 184,000∼230,000rpm 回転数変化率 15,000rpm/sec 1,500rpm/sec ブロワガス入口 ブロワ動翼 ブロワガス出口 回転計 スラスト軸受 ) ラジアル軸受 ノズル(静翼) タービン動翼 タービンガス入口 タービンガス入口 タービンガス出口 図 2.2.6-12 超電導発電機モデル機実証試験用 ヘリウム膨張タービンの基本構造 - 167 - 急速な回転数変動により、特にスラスト軸受には大きな負荷変動が発生する。そ のため従来技術では回転数制御範囲や回転数変化率に制限を与え、保護することに よりトラブルを未然に防止した。本研究開発では、回転数制御範囲を液化量比(定 格液化量=100%)で 40∼120%に広げ、その範囲での回転数変化を 10 秒程度で行 えることとし、回転数変化率を従来技術の 10 倍(5%/s)とした膨張タービンを実 現するため、その負荷変動に耐え得る高負荷軸受を開発することを目的とする。 - 168 - c.従来の軸受の問題点 膨張比 10 以上の高膨張比型の膨張タービンでは、タービン翼の入口出口の圧力 差で発生するスラスト荷重が大きくなり、その荷重を支えるためにスラスト軸受に は静圧型軸受を用いている。超電導発電機モデル機実証試験用ヘリウム膨張タービ ンでは、スラスト軸受として表 2.2.6-5 に示す静圧多数給気孔式円板カラー複合軸 受(両面対向配置)を用い、高膨張比および高スラスト荷重下での変動に耐えるよ うに設計した。この静圧型スラスト軸受は、負荷能力に優れているが、外部から高 圧のガスを供給し、スラストカラーと呼ばれる円盤に円周上に配置した給気孔から ガスを噴出することによって圧力を発生させ、荷重を支持する構造である。したが って、従来の静圧型スラスト軸受では以下の課題がある。 ・圧縮機風量の 2∼3%に相当するヘリウムガス給気が必要なため、その分システ ム効率が低下する。 ・ヘリウムガス給気のための配管、バルブ、計測器が必要となり、その分コスト増 となる。 ・給気ガスは常温ガスであるため、タービン内部の極低温部に漏れこむ可能性があ り、断熱効率低下の要因となる。 表 2.2.6-5 ヘリウム膨張タービン用スラスト軸受設計諸元 フェーズⅠ 7 万 kW 級超電導発電機用 項 目 高温側タービン 低温側タービン 軸受形式 静圧多数給気孔式円板カ ← ラー複合軸受(両面対向) 給気孔形状 自成絞り型 ← 軸受外径 [mm] φ32.0 ← 軸受内径 [mm] φ16.5 ← 給気孔ピッチ径 [mm] φ22.6 ← φ0.3×18/φ0.5×18 φ0.3×18/φ0.3×18 40 40 1.52/0.12 1.52/0.12 25 16 給気孔径[mm]×数 上/下 軸受隙間(上下) [10-3mm] 圧力(給気/排気) 負荷能力 [MPa] [kgf] 回転数 [rpm] 230,000 210,000 回転変化率 [rpm/s] 1,500 1,500 - 169 - d.ハイブリッド型スラスト軸受の開発 (a)動圧型軸受の負荷能力計算 前記問題点を解決する手段としては、動圧型スラスト軸受を用いる方法がある。 動圧型スラスト軸受は、軸受面(回転軸に設けたスラストカラー部とそれに相対す る固定部によって構成)にガスの粘性によって圧力を発生させるような形状の加工 を施したもので、その形状によって数種類が考案されている。本設計においては、 ポケットランド、スパイラルグルーブ、ヘリングボーン型について比較検討を行っ た。 計算の結果、負荷能力は現行タービンの軸受寸法(スラストカラー寸法:φ32mm ×φ16.5mm)で比較すると、どの形式の軸受でも 10kgf 未満となり、表 2.2.6-4 に示す現行静圧型に及ばない。また、静圧型は給気孔の径や数を変更すれば負荷能 力を現行軸受以上にすることは可能であるが、動圧型は軸受面の面積を増やさない 限り負荷能力を上げることはできず、動圧型のみでスラスト荷重を支持することは 困難であることが明らかとなった。 (b)ハイブリッド型軸受の負荷能力計算 ハイブリット型スラスト軸受は、静圧型と動圧型を組合せたものであるが、軸受 の負荷能力や弾性係数、減衰係数などの軸受特性に関しては静圧型の特性が基本と なる。 原則的には静圧型の軸受特性に動圧型の軸受特性がプラスされる。但し、負荷能 力は増加することは間違いないが、弾性係数、減衰係数により決定される安定性に ついては、設計に十分な考慮を行わないと安定性が悪化する可能性がある。静圧型 スラスト軸受の特性については既に分かっているため、動圧型スラスト軸受部分に つき詳細検討を実施した。 - 170 - ポケットランド、スパイラルグルーブ、ヘリングボーンの 3 種類の動圧型軸受を ハイブリッドとした場合の比較検討を行った。(表 2.2.6-6) 表 2.2.6-6 動圧型スラスト軸受の比較検討結果 (ハイブリット型スラスト軸受の適用について) 形式 ポケットランド スパイラルグルーブ 一般的な特長 検討結果 構造 最も簡単 加工 最も容易 ・設計、製作は最も容易 (溝加工) ・負荷能力を高く設計し ようとすると安定性を 損なう恐れ ・静圧給気孔の位置に制 限 負荷能力 やや低 安定性 やや低 構造 やや簡単 加工 容易 負荷能力 やや高 ヘリングボーン 安定性 高 構造 複雑 加工 やや難 負荷能力 高 安定性 高 形 状 ・設計、製作比較的容易 (エッチング) ・負荷能力と安定性の両 方を最適化可能(中間) ・静圧給気孔の位置に制 限はほとんどなし ・設計、製作は困難(エ ッチング) ・負荷能力と安定性の両 方を最適化可能(最も高 い) ・静圧給気孔の位置に若 干制限あり 負荷能力、安定性等の軸受性能に対し、大きな優劣が生じなかった。そこで、ハ イブリッド型スラスト軸受として適用した場合に、静圧型と動圧型それぞれに対し て最適設計が可能で、構造が比較的簡単、加工性に優れるスパイラルグルーブ型を 選定し、ハイブリッド型スラスト軸受に適用した場合の詳細検討を行った。特に静 圧型軸受の静圧給気孔の位置、径、数は負荷能力に最も影響するが、スパイラルグ ルーブ型はハイブリッドとした場合に静圧給気に対する制限がほとんどないため、 静圧型スラスト軸受の性能を損なうことなく、動圧型スラスト軸受の性能を加算す ることが可能であることも明らかとなった。 - 171 - 図 2.2.6-13 にタービン起動時(入口温度 80K)のスラスト荷重の計算結果を示 す。定格運転中(入口温度一定)は、150,000∼230,000rpm のスラスト荷重変動値が 大きいのが分かる。この図より、開発目標である回転数変化率 15,000rpm/sec で回 転数が 230,000 から 215,000rpm へ 1 秒で変化したときのスラスト荷重変化率を求 めると 4kg/sec 程度となる。 20 18 16 スラスト荷重 kg 14 12 10 8 6 4 2 0 0 50000 100000 150000 タービン回転数 rpm 200000 250000 図 2.2.6-13 タービン起動時(入口温度 80K)のスラスト荷重の計算結果 - 172 - 図 2.2.6-14 に現行静圧型スラスト軸受とハイブリッド型(スパイラルグルーブ) スラスト軸受の、下側スラスト軸受隙間変化を計算した結果を示す。 ハイブリット型を採用すれば、軸受隙間の変化率が約 40%程度に減少するととも に、弾性係数、減衰係数が約 30%向上し軸受安定性の面でも有利となることを明 らかにすることができた。 20 18 下側スラスト軸受隙間 μm 16 14 静圧型スラスト軸受 12 ハイブリッド型スラスト軸受 10 8 6 4 2 0 0 50000 100000 150000 タービン回転数 rpm 200000 250000 図 2.2.6-14 タービン起動時(入口温度 80K)のスラスト軸受隙間の計算結果 - 173 - e.ハイブリッド型スラスト軸受の設計 (a)設計するタービン仕様の検討 設計技術確立のため具体的なスラスト軸受の設計を行った。軸受は最も運転の厳 しい条件のタービン翼で行うこととした。 シミュレーションを行い、150l/h 級冷凍用膨張タービン翼の仕様を決定し翼の 設計を行った。タービン翼の設計では、翼の加工に留意しヘリウムガス入口の最小 翼高さを 0.7mm とした.表 2.2.6-7 に翼仕様の一例を示す。 表 2.2.6-7 タービン翼設計仕様例 膨張タービン 2 段 +ウェットタービン 液化量(l/h) 150 液化率(%) 12.46 COP 1.39 高温側タービン 低温側タービン ウェットタービン 圧力(MPa) 1.50/0.12 温度(K) 56.5/31.4 流量(g/s) 13.5 圧力(MPa) 1.50/0.12 温度(K) 22.0/11.7 流量(g/s) 14.0 圧力(MPa) 1.50/0.12 温度(K) 8.0/4.4 流量(g/s) 12.9 *数値は入口/出口 **タービン断熱効率70% - 174 - さらに表 2.2.6-8 に諸元例を、図 2.2.6-15 には設計した翼の一例を示す。 表 2.2.6-8 タービン諸元例 タービン 回転数 (rpm) 入口翼高さ 入口直径 (mm) (mm) 出口直径 (mm) 高温側 324089 0.793 24.176 13.733 低温側 276171 0.709 22.099 12.558 ウェット 296373 0.682 20.326 11.639 図 2.2.6-15 タービン翼の設計例(膨張タービン 2 段+ウェットタービン) 左:高温側タービン 中:低温側タービン 左:ウェットタービン - 175 - (b)軸受設計結果 前述のシミュレーション検討の結果、軸受に対する条件の厳しい高温側膨張ター ビンについてハイブリッド型高負荷スラスト軸受の設計を行った。表 2.2.6-9 に設 計した軸受の諸元を示す。これを基に回転変化率が高くても十分な負荷能力を持ち 信頼性を高く保てる高負荷軸受の設計を実施した。図 2.2.6-16 に設計した軸受を 示す。ここで確立した設計技術は今後、多様なタービン設計に生かすことが可能な ものである。 表 2.2.6-9 ハイブリッド型高負荷軸受設計諸元 項 目 軸受形式 軸受形式 吸気孔形状 静圧 吸気孔ピッチ径 部分 給気孔径×数 上/下 ハイブリッド型気体軸受 多数給気孔式円板カラー複合軸受(両面対向) 自成絞り型 φ22.6mm φ0.3mm×18 個/φ0.5mm×18 個 圧力(給気/排気) 1.52MPa/0.12MPa 軸受形式 スパイラルグルーブ型 形状 ポンプイン型 動圧 溝数 部分 溝深さ 18 20μm β 16° b1/b2 0.636 軸受外径 φ33.0mm 軸受内径 φ16.5mm 軸受隙間(上下) 40μm 負荷能力 40kgf 回転変化率 15,000rpm/s 図 2.2.6-16 ハイブリッド型高負荷軸受 - 176 - 上向き(右)、下向き(左) (3) 大容量化に適した高効率冷凍システム a.検討条件 (a)ヘリウム液化能力 発電機容量 :60 万 kW 級超電導発電機 回転子 :111l/h HTC : 9l/h 配管他 : 30l/h 計 :150l/h(ターニング時 100l/h) (b)液体ヘリウム供給条件 圧力 :1.2bar 温度 :4.42K 飽和 (c)戻りヘリウムガス条件 圧力 :1.2bar 温度 :313K b.高効率冷凍システム構成の検討 (a)冷凍方式 ヘリウムブレイトンサイクル式冷凍機を採用した。 本サイクルは、低温(80K 級)タービン駆動圧縮機 3 台とオイルフリー常温ターボ圧 縮機を組み合てヘリウムブレイトンサイクルを構成したものである。 (b)タービン駆動圧縮機 本圧縮機は常温圧縮機と組み合わされ、4 段で 0.12MPa から 0.8MPa まで昇圧す る。回転数は 120,000rpm を要求されるため、タービン駆動方式を採用する。 (c)常温圧縮機 4 段圧縮機の内、2 段目を担当し 0.18MPa から 0.383MPa まで昇圧する。また、本 圧縮機で昇圧されたヘリウムはタービン駆動圧縮機の駆動源としても用いられる。 (d)可変容量膨張タービン 本システムで用いられるタービンには全て可変容量機構を備え、発電機部分負荷 ならびに変動負荷運転に対応する。 - 177 - ここで、本オイルフリー冷凍システムのシステム構成図を図 2.2.6-17 に示す。 図 2.2.6-17 オイルフリー冷凍システム構成図 - 178 - 本オイルフリー冷凍システムの機器リストを表 2.2.6-10 に示す。 表 2.2.6-10 オイルフリーヘリウム冷凍システムの主要機器リスト 機器番号 機器名称 数量 設 C00 常温圧縮機 1 圧縮機ユニット 1式 CB03 1 真空容器 計 仕 様 ・形 式:ターボ式 ・入/出口圧力:0.18/0.38 MPa ・入口温度:309 K ・流 量:500 g/s ・形 式:横形円筒真空断熱式 ・設計圧力:0.2∼0 MPa ・設計温度:0∼40 ℃ タービン駆動発電制 3 動圧縮機 ・形 式:オイルフリーターボ圧縮機 圧縮機駆動用発電機制動 ヘリウム熱交換器 4 ・形 式:アルミプレートフィン コールドボックス 1式 ・液化能力:150l/h at 4.42 K(定格) CB02+ VB01 真空容器 1 ・形 式:円筒真空断熱式 ・設計圧力:0.2∼0 MPa ・設計温度:0∼40 ℃ 膨張タービン 3 ・形 式:ターボ式 ヘリウム熱交換器 5 ・形 式:アルミプレートフィン ST02 バッファタンク 1 ・形 式:縦形円筒式 ・容 量:約 50 m3 使用圧力:2.0 MPa (発電機内 He 容量を回収・圧力調整用) VP01 真空排気装置 1 油回転ポンプ メカニカルブースタポンプ 油拡散ポンプ - 179 - c.冷凍システムの運転範囲 各タービンの可変容量機構を用いることで、定格負荷 150 l/h に対し、約 30∼ 110%の負荷変動に対応できる広運転範囲の冷凍システムであることが確認できた。 その結果を図 2.2.6-18 に示す。 また、このときの送液効率(=(圧縮機動力)/(液化能力))は、2.0∼2.5kW/(l/h) となった。定格時では個別自主目標より若干悪いが、運転範囲全体を考えた場合、 ほぼ満足することが確認できた。その結果を図 2.2.6-19 に示す。 図 2.2.6-18 液化冷凍性能曲線 図 2.2.6-19 送液効率結果 - 180 - d. 信頼性評価 7万 kW 級モデル機実証試験において得られた冷凍システムの運転実績、運転時 間 10,000 時間を基にして、MTBF を用いてオイルフリー冷凍システム全体の信頼性、 連続運転時間を評価した。 信頼性評価の基本的な考え方は以下のとおりである。 冷凍システムを 4 ユニットに分け、それぞれの信頼度 Ri を求め、その積として全 体システムの信頼度 R=∑Ri を求める。 改良型冷凍システムはオイルフリーのため、制御機機を除いて冗長系を想定してい ない。 コールドボックスには膨張タービン用高負荷軸受等,フェーズⅡの成果を基にし た故障率の低減を考慮した。 制御機器は、故障が発生した場合に 24 時間で普及し元の状態に戻した場合の信 頼度を計算した。 信頼度の算出は、以下の式より求める。 機器単体のみの場合:R=exp(−t/MTBF) 冗長系をもつ場合:R=exp(−2t / (MTBF・μ)) ここで、μ=1/(修復時間)である。 前述の考え方を基に信頼度を評価し、運転時間を算出した。その結果を表 2.2.6-11 に示す。 表 2.2.6-11 改良したオイルフリー冷凍システムの運転時間 冗長系 修復時間 1/μ 圧縮機 無し コールドボックス 無し 極低温部 無し 制御機器 有り 24 システム 信頼度 MTBF 運転時間 R 1/λ t 80,000 10,000 R=exp(-λt) 0.882 60,000 10,000 R=exp(-λt) 0.846 50,000 10,000 R=exp(-λt) 0.819 2 30,000 10,000 R=exp(-λ t/μ 1.000 20,328 10,000 0.611 7 万 kW 級モデル機試験成果とオイルフリー化とそれに伴う冗長解消等により、 連続運転時間 20,000 時間の見通しを得た。 - 181 - (4)現用機からリプレース時の冷凍システム 現用発電機から超電導発電機にリプレース導入することを想定して平成 14 年度 に既設発電所をモデルケースとして、現地調査結果を実施した。その結果、メンテ ナンスエリア、メンテナンスクレーン高さ制限等がわかり、当初計画していた冷凍 システム構成(図 2.2.6-20 参照)では、リプレースすることが難しいことがわか った。そこで、将来の複数台設置時の設備の効率的な運用を考慮して冷凍システム の構成ならびに機器サイズの検討を行った。 タービン建屋(3F面) 超電導発電機 タービン建屋(1F面) ガスボンベ室 バルブ ボックス LHe貯槽 コールドボックス 主圧縮機用 真空容器 冷凍設備建屋 圧縮機建屋 ガスバック 常温圧縮機 精製装置 回収圧縮機 屋外 バッファ タンク 加温器 LN2貯槽 中圧タンク 図 2.2.6-20 フェーズⅡ当初の改良型冷凍システム構成図 - 182 - a.冷凍システム構成 フェーズⅠでの実証試験結果等から、本冷凍システムの構成機器の内、精製器等 一部の補機類に関しては、所内共通設備とし、また、クエンチ等の緊急時のヘリウ ム回収は非常に稀な事象として考え、回収系機器は設置しないこととした。この結 果、システムの小型化実現できる見通しを得ることができた。以下に、小型化のた めに再検討を実施した項目を示す。 LHe 貯槽の小型化、LHe 貯槽とバルブボックスの一体化 ガスバックの省略 精製装置の共有化 回収ガス圧縮機の省略 回収タンク容量の小型化 加温器の容量・能力の見直し 真空排気装置の共有 小型化した冷凍システム概略構成図を図 2.2.6-21 に示す。 タービン建屋(3F面) 超電導発電機 バルブボックス LHeデュワー コールドボックス 主圧縮機用 真空容器 タービン建屋(1F面) ガスボンベ室 バッファ タンク 常温圧縮機 精製装置 (仮設設置) 図 2.2.6-21 小型化した冷凍システム構成図 - 183 - b.コールドボックスのコンパクト化 既設タービン建家3Fにコールドボックス設置する場合には発電機メンテナン ス用天井クレーン(クレーン下 4m)の干渉が問題となる。このため、コールドボッ クスを横置き円筒型とすることにより高さ方向の干渉を考慮した。2 種類のコール ドボックスの外形図をそれぞれ図 2.2.6-22 および図 2.2.6-23 に示す。 HEX10 3200 B A A B B A HEX00 4420 I.D.2600 図 2.2.6-22 圧縮機ユニット概略図(CB03) 2710 A-A断面 B-B断面 Thermal Shield A C-C断面 B A C HEX01 B A C A B B C Liquid/Gas separator Φ650×L900 C B HEX02 A C Φ2100 A B A B T01 HEX03 A WT01 B T02 A A HEX04 B A A B B HEX05 A B B C 6240 図 2.2.6-23 コールドボックス概略図(VB01+CB02) - 184 - c.配置検討 前述の検討結果を基にして作成した配置計画図を図 2.2.6-24 に示す。 極低温一体型 C00:常温圧縮機 4.5m×2.0m×3.0H 天井クレーンによる 高さ制限 FL+4m ST02:バッファタンク Φ2.6m×10mH VB01+CB02:極低温一体型コールドボックス Φ2.1m×6.24mL CB03:コールドボックス3 Φ2.6m×4.42mL GL+13m CB03 CB02+ VB01 ST02 C00 機器増設スペース 道路 緑地スペース タービン建屋 3F 低圧段タービン 発電機ローター引き抜きエリア 発電機 通路 6300 CB01 機器メンテナンスエリア VB01 +CB02 制御盤等 10000 機器搬出 用ハッチ ヘリウム供給/戻り配管 タービン建屋 1F (3Fより) 搬入口 機械室(2) 8100 C00 機械室(1) ST02 7500 構内道路 緑地エリア グラウンド面 図 2.2.6-24 配置計画図 - 185 - (5)開発の波及効果 a.発電機熱負荷に対する対応 研究の結果,20 万 kW 級発電機の熱負荷は 57W、60 万 kW 級発電機の熱負荷は 139W であることが明らかとなった.熱負荷 57W は送液量に換算すると 86l/h, 同じく 139W は 210l/h に相当する.これに発電機までの配管熱負荷等を考慮すると冷凍システ ム規模はほぼ 100l/h 級,200l/h 級になる(1.2bar における換算 1.51(l/h)/W)と 考えられる.このような規模のオイルフリー冷凍システムの設計は本フェーズⅡの 研究成果の応用で十分に可能であり,そのときの送液効率は概略検討の結果ではあ るが,表 2.2.6-12 に示すようにターニングのような低負荷時においても在来冷凍 機の効率を上回る効率を得られる見通しを得ることができた. 表 2.2.6-12 冷凍機の液送効率 在来冷凍機 フェーズⅡ研究開発機 平均値 定格時効率 ターニング時効率 150l/h 級 2.8 2.0 2.5 100l/h 級 3.2 2.3 2.8 200l/h 級 2.6 1.8 2.3 単位:kW/(l/h) b.他の極低温機器への応用 本フェーズにおいて開発された冷凍システムは高信頼,高効率,負荷追従性に優 れる等の特徴を持つことから負荷変動(熱負荷変動)の多い電力機器へ応用するこ とでその特性が特に生かせるものとなる.対象としては,液化量で 100l/h 以上と なる SMES(超伝導電力貯蔵),超伝導変圧器,超伝導送電ケーブルなどであり,幅 広い応用の見通しを得ることができた. - 186 - c.エリクソンサイクル 研究開発と平行し,高圧化が可能な油潤滑式圧縮機と高負荷軸受を用いた更なる 高効率冷凍システムの開発を目指し冷凍システムの研究を行った.そこで、エリク ソンサイクルを採用することにした。エリクソンサイクルの特徴は,通常の冷凍機 より循環ガスを高圧化して、圧縮機を出た高圧ガスを全量断熱膨張させていくこと にある.エリクソンサイクルは理想サイクルであるカルノーサイクル(線図上で長 方形となる)に近づくことになり,高効率が期待できるものである.エリクソンサ イクルのフロー図を図 2.2.6-25 に示す。 エリクソンサイクルのメリットとして ・冷凍機内の循環ガスの高圧化が計れることにより効率向上が図れる ・高圧化により機器・配管の小型化が可能となる ・膨張機の数が同数なら熱交換器数及び熱進入量の減少が図れる 等を挙げることができる. シミュレーションの結果,エリクソンサイクルを用いることで ・液化率が向上し,液化量を増大させることが可能 ・圧縮動力の増大により液化効率は低下するので圧縮機等温効率の向上が必要 ・タービン膨張比が小さく高効率化・信頼性向上が見込める 等の知見を得ることができ,本研究成果の応用として小型,高効率冷凍システムの 新しい可能性を見出すことができた. T S 圧縮機 膨張機 熱交換器 エネルギの流れ 図 2.2.6-25 エリクソンサイクルのフロー図 - 187 - 2.3 設計技術の研究開発 2.3.1 超電導発電機に対する電力系統からの要求仕様 1)、2) 電力系統から超電導発電機に対する要求仕様は、次の 2 点から整理される。 ・電力系統に並列時に遭遇する可能性のある過酷条件に耐えること。これは超電 導発電機の設計に反映する。 ・電力系統の特性が現用機を導入する場合よりも同等以上となること。 このうち前者に相当する項目には、発電機の機械的耐力である過渡電磁トルク、 超電導巻線の温度余裕に関係する系統事故時の界磁電流変化、電機子巻線の絶縁 と必要な励磁制御に関係する負荷遮断時の電圧上昇があり、また後者に相当する 項目には過渡安定度、短絡容量がある。 これら要求仕様について定量的に検討するために、20 万 kW 級低速応型超電導 発電機の導入を想定する都市近郊発電所を調査し、解析検討用のモデル系統を作 成し解析により検討した。 (1) モデル系統と超電導発電機の電気的定数 20 万 kW 級低速応型超電導発電機の導入を想定する都市近郊発電所のモデル系 統を図 2.3.1-1 に示す。解析対象とする超電導発電機は、表 2.3.1-1 に示す初期 基本設計の 20 万 kW 級低速応型超電導発電機の電気的定数から図 2.3.1-2 に示す 解析用等価回路モデルの定数を算出した。表には現用発電機の電気的定数も合わ せて記載しているが、超電導発電機は Xd が現用機の約 1/3 と小さい。 BP/S IS/S 60 10 40 1001 1G j0.453 〔重_1.0083〕 20 1002 1004 1005 1007 0.01+j0.081 (j0.00) 0.014+j0.148 (j0.0033) 0.01+j0.065 (j0.0005) j0.453 〔重_1.0083〕 1006 1008 0.004+j0.05 (j0.0012) 150 1003 230 1022 j0.644 〔重_1.000〕 〔軽_1.000〕 0.0022+j0.04091 (j0.013) 250 240 1030 j0.167 〔重_0.9500〕 〔軽_1.0500〕 260 1033 1032 j0.04925 j0.00125 〔重_1.000〕 〔軽_1.000〕 j0.169 〔重_0.9500〕 〔軽_1.0500〕 100 主系統 140 1015 1009 1010 0.01+j0.086 (j0.00) 0.02+j0.21 (j0.0037) 1023 1012 0.01+j0.155 (j0.0021) 110 30 GS/S 130 1014 1031 0.014+j0.148 (j0.0014) 90 80 2G 120 50 1011 1013 0.01+j0.08 (j0.0017) 0.01+j0.1 (j0.001) 160 1016 0.0022+j0.04091 (j0.031) j0.641 〔重_1.000〕 〔軽_1.000〕 HS/S 1018 190 0.01+j0.09(j0.007) 3G j0.643 〔重_1.000〕 〔軽_1.000〕 1017 j0.453 0.01+j0.09(j0.012) 1019 170 180 j0.644 〔重_1.000〕 〔軽_1.000〕 1020 j0.642 〔重_1.000〕 〔軽_1.000〕 1021 CP/S 200 1026 220 1028 1G j0.644 〔重_1.000〕 〔軽_1.000〕 1024 0.026+j0.353 (j0.01) 1025 0.026+j0.353 (j0.01) R+jX(Y/2)[p.u] [ ]内はタップ値 0.0037+j0.079(j0.046) j0.278 〔重_1.0513〕 210 1027 1029 2G 0.0037+j0.079(j0.046) j0.278 〔重_1.0646〕 〔軽_1.0780〕 図 2.3.1-1 要求仕様検討用モデル系統 −188− (ベースは 1000MVA) 表 2.3.1-1 解析に用いた超電導発電機定数 60万kW級機 電気定数 直軸同期リアクタンス Xd pu 直軸過渡リアクタンス Xd' pu 0.41 0.44 0.44 Xd'' 直軸次々過渡リアクタンス Xd''' pu 0.31 0.35 0.33 pu 0.20 0.25 0.26 横軸同期リアクタンス Xq pu 0.60 0.60 0.60 横軸次過渡リアクタンス Xq'' pu 0.26 0.35 0.33 横軸次々過渡リアクタンス Xq''' pu 0.20 0.25 0.26 電機子漏れリアクタンス Xl pu 0.15 0.18 0.18 逆相リアクタンス X2 pu 0.20 0.26 0.26 直軸次過渡リアクタンス SCG-H SCG-B 0.60 20万kW級機 SCG-M SCG-A 0.60 0.60 直軸開路過渡時定数 Tdo' sec 50.9 26 48 直軸開路次過渡時定数 Tdo'' sec 0.19 0.149 0.139 直軸開路次々過渡時定数 Tdo''' sec 0.028 0.03 0.020 Tqo'' sec 0.52 0.335 0.278 横軸開路次々過渡時定数 Tqo''' sec 0.029 0.053 0.033 電機子時定数 0.26 0.544 0.308 横軸開路次過渡時定数 Ta sec 解析に使用した現用発電機定数 電気定数 20 万 kW 級機 60 万 kW 級機 pu 166.6 188.46 Xd’pu 31.5 32.2 Xd”pu 22.5 25.56 Xq pu 170.0 186.95 Xq”pu 22.5 25.3 Xl 18.6 19.5 Td’sec 0.75 1.095 Td”sec 0.015 0.02 Tq”sec 0.02 0.02 Ta 0.4 0.367 Xd pu sec −189− 0.00204 j0.15 j0.05625 j0.19203 j0.36751 5.5542e-5 j0.45 0.00204 j0.15 j0.45 0.01319 0.0033616 j0.05625 d軸 j0.08934 0.006946 q軸 0.003038 (1) SCG-A 機 0.0012191 j0.18 j0.084 j0.2016 j0.3269 1.1248e-4 j0.42 0.0012191 j0.18 j0.42 0.01273 j0.084 0.004522 d軸 j0.2016 0.007207 0.005587 q軸 (2) SCG-B 機 図 2.3.1-2 解析対象とした超電導発電機の等価回路モデルと定数 (表 2.3.1-1 の 60 万 kW 級機に対応) (2) モデル系統による要求仕様の検討 モデル系統を対象に、過渡電磁トルク、系統事故時の界磁電流変化、負荷遮断 時の電圧上昇(過励磁)、過渡安定度、短絡容量に関して、現用機と超電導発電機 を比較検討した。 a. 過渡電磁トルク 過渡電磁トルクに関する要求仕様は、超電導発電機が運転中に経験する可能性 のある最も過酷な送電線事故時の過渡電磁トルクに耐えることである。超電導発 電機の同期リアクタンスは現用機より小さい値で設計することができるが、一般 にリアクタンスの小さい発電機は安定度面では有利である反面、短絡電流が大き く、過渡電磁トルクも大きくなる傾向にある。従って、超電導発電機に対する電 力系統からの要求事項として、事故発生時の短絡強度に耐える必要がある。 −190− 系統運用サイドにおいて通常想定する最過酷事故は超高圧架空送電線路のうち 最も発電機に近い地点における三相短絡事故であるが、過渡トルクについては線 間短絡事故時が最大となる。 最も厳しい 2 相短絡事故のシミュレーションで得られた過渡電磁トルク最大瞬 時値は、表 2.3.1-2 のようになり、次々過渡リアクタンスの大小関係にほぼ対応 した過渡電磁トルクが発生する。B 発電所の 200MW 級発電機の電圧と電磁トルク を図 2.3.1-3 に示す。 同一発電機であっても導入系統や導入地点(発電所)が異なると過渡電磁トル クは異なるので、導入系統や導入地点を考慮した解析を行い、定量的に過渡電磁 トルク耐量を得ておく必要がある。 表 2.3.1-2 次々過渡(現用機では次過渡)リアクタンスと電磁トルクとの関係 対象機 Bp/s-1G Cp/s-1G リアクタンス 電磁トルク [pu] [pu] 0.225 4.75 現用機20万kW級 発電機種別 H機20万kW級 SCG-A 20 万 0.26 4.28 M機20万kW級 SCG-B 20 万 現用機60万kW級 0.22 4.71 0.2556 3.34 H機60万kW級 SCG-B 60 万 0.25 3.33 M機60万kW級 SCG-A 60 万 0.20 3.64 b. 界磁電流変化 界磁巻線に対する電力系統からの要求仕様は、発電機が系統と連系していると きに経験するもっとも過酷な界磁電流変動に対して超電導状態を安定に維持でき ることである。 界磁電流変動には、励磁制御による変動と、系統事故時に電機子電流が急激に 変化したときに電機子反作用によって誘導される変動がある。励磁制御による変 動は界磁巻線の時定数とゲイン、シーリング電圧によって決まる。低速応型超電 導発電機は励磁制御による界磁電流変化率を 0.1 [p.u./sec]と想定している。 これに対して系統事故時の界磁電流変化は、発電機の出力、系統事故の種類・地 点・事故継続時間によって変化し、過渡的に励磁制御による界磁電流変化率を上 回る可能性がある。超電導発電機は過酷な界磁電流変化に対してもクエンチせず に安定な運転を継続することが必要とされる。そこで、系統事故時の界磁巻線の 安定性を評価するためにモデル系統における最過酷条件を想定し界磁電流変動を シュミレーションした。 −191− 事故発生 1.5 0.5 0 0 0.05 0.1 0.15 0.2 -0.5 電磁トルク[pu] 高圧側相電圧[pu] 1 -1 -1.5 6 5 4 3 2 1 0 -1 0 -2 -3 -4 -5 ピーク値 0.05 0.1 0.15 0.2 0.15 0.2 0.15 0.2 時間[秒] 時間[秒] (1) 現用機 1.5 0.5 0 0 0.05 0.1 0.15 0.2 -0.5 電磁トルク[pu] 高圧側相電圧[pu] 1 -1 -1.5 6 5 4 3 2 1 0 -1 0 -2 -3 -4 -5 0.05 0.1 時間[秒] 時間[秒] (2) SCG-A 機 1.5 0.5 0 0 0.05 0.1 -0.5 -1 -1.5 0.15 0.2 電磁トルク[pu] 高圧側相電圧[pu] 1 6 5 4 3 2 1 0 -1 0 -2 -3 -4 -5 0.05 0.1 時間[秒] 時間[秒] (3) SCG-B 機 図 2.3.1-3 電圧と電磁トルクのシミュレーション (Bp/s-1G 200MVA 級機の場合) 超電導発電機は 60 万 kW 級 A 機あるいは B 機として、有効出力を定格として無 効出力を遅れ定格、零、進み定格とした 3 ケースを解析した。系統事故発生から 5秒間の発電機応答(界磁電流、端子電圧、界磁電圧)例を図 2.3.1-4 に示す。 界磁電流が大きい遅相定格力率運転で事故が発生した場合に、A 機は界磁電圧が 約 0.7 秒間上限値に達している。このため界磁電流は急速に増加し、過渡的な許 容最大値(定格出力時の 120%と想定)近くまで上昇し、その後、徐々に初期値 まで低下する。 −192− 解析ケースごとの最大界磁電流変化率、 、最大界磁電流などを表 2.3.1-3 に示す。 事故発生前の界磁電流と最大界磁電流は遅相定格力率運転時に大きく、最大界磁 電流変化率はあまり変化せず、過渡的な界磁電流の変動(最大値−初期値)は進 相定格力率運転時に大きい。界磁電流変化率は、励磁制御に伴う変動として想定 している 0.1 [p.u./sec]よりかなり大きいので、この界磁電流変化に対しても 界磁巻線が超電導状態を安定に維持できるか評価する必要がある。 表 2.3.1-3 発電機 A機 B機 系統事故時の界磁電流変動 最大界磁電 界磁電流 [p.u.] 発電機の 流変化率 無効出力 初期値 事故除去 最大値 最大値− [p.u.] [p.u./sec] 時 初期値 +0.436 1.373 1.484 1.595 0.222 1.107 0.0 1.138 1.250 1.388 0.250 1.117 -0.436 0.918 1.025 1.216 0.298 1.074 +0.436 1.373 1.482 1.654 0.281 1.092 0.0 1.137 1.246 1.464 0.327 1.089 -0.436 0.917 1.021 1.295 0.378 1.038 (注)発電機の有効出力はいずれも定格 0.9 [p.u.]である。 超電導機の出力:P=0.9、Q=0.436 [p.u.]、シーリング電圧±10 [p.u.] 図の上から、端子電圧、界磁電圧、界磁電流 図 2.3.1-4 系統事故時の発電機応答(モデル系統 C、Cp/s、SCG(A)) −193− c. 負荷遮断時の電圧上昇 超電導発電機の過励磁に関する要求仕様は、連続運転に関しては現用機が連続 運転しても実用上支障がない範囲(定格電圧の 105%)を許容すること、短時間 運転に関しては負荷遮断時の電圧上昇などによる過渡的な過励磁が起きても運転 に支障のないことである。 発電機の短時間の過励磁運転は、負荷遮断により運転中の発電機が電力系統か ら瞬時に切り離された場合に起こりうる。負荷遮断後の電圧上昇は、遮断直前の 発電機界磁電流が大きいほど高くなり、また、励磁制御が遅いほど高くなる。こ のため、界 磁電流 が 最大となる 遅相定 格 出力運転(P=0.9、Q=0.436、V=1.0 [p.u.])を想定し、励磁制御の速さをパラメータとして、負荷遮断時の発電機の 端子電圧(V)、回転速度(f)などをシミュレーションした。 シーリング電圧をパラメータとして負荷遮断後の最高端子電圧(V)と、このと きの回転速度(f)で除した過励磁(V/f)を求めた結果を図 2.3.1-5 に示す。これに よれば、励磁制御のシーリング電圧が高いほど過渡的な電圧上昇を抑制する効果 が強まるので負荷遮断後の電圧上昇が小さくなる。しかし、シーリング電圧が高 くなると励磁制御による界磁電流変化が早くなり、低速応励磁という超電導機の 想定を逸脱する。また、シーリング電圧を±20 [p.u.]以上としても電圧上昇抑 制効果は余り変わらず、超速応励磁の効果は小さい。 以上の結果から、過励磁(V/f)を 120[%]以内とするためには、この解析に 使用した励磁系モデルであれば、少なくともシーリング電圧±10 [p.u.]、ゲイ ン 100 [p.u.]程度以上の低速応励磁が必要である。 1.40 V V/f 端子電圧(V),過励磁(V/f)の最高 [p.u.] 1.35 端子電圧 1.30 1.25 V/F で 1.2pu 1.20 以下を目標 1.15 1.10 V/f 1.05 1.00 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 シーリング電圧 [p.u.] SCG(A)の場合 図 2.3.1-5 (シーリング電圧 0 の点は一定励磁の場合) 負荷遮断時の電圧上昇とシーリング電圧の関係(遅相定格運転) −194− d. 過渡安定度 過渡安定度に対する要求仕様は、もっとも過酷な条件の系統事故が発生しても 超電導発電機が安定運転を継続できることである。このもっとも過酷な系統事故 は、発電機高圧母線至近の送電線での 3 相地絡事故である。系統事故時に安定な 運転を継続できるか否かは、事故条件だけでなく発電機の運転出力によっても大 きく影響され、有効出力が大きいと主系統に対する位相が開き、無効出力が進相 になると内部電圧が低下し、発電機は脱調しやすくなる。 発電機の有効出力は定格として、無効出力をパラメータとして、モデル系統で 想定される最過酷な系統事故時に、超電導発電機あるいは現用発電機が安定運転 を継続できる事故継続時間を求めた。過渡安定限界となる事故継続時間を表 2.3.1-4 に示す。事故継続時間がこれより長いと発電機は脱調する。系統の事故 除去時間と最過酷事故発生時に安定運転を継続できる事故継続時間を超電導機と 現用機で比較すると、2 種類の超電導発電機は運転可能なすべての出力で、事故 除去時間までの事故継続に対して安定運転を継続できる。これに対して現用発電 機では進相運転領域では事故除去に必要な 0.1 秒まで事故が継続すると脱調する ので、進相運転を制限する必要がある。 表 2.3.1-4 発電機の種類、出力と過渡安定限界 発電機 発電機種類 安定限界とな 事故除去時 無効出力*1 る事故継続時 間との比較 [p.u.] 間[sec] *2 +0.436 SCG(A) 0.15 ○ SCG(B) 0.14 ○ 現用機 0.15 ○ +0.218 SCG(A) 0.14 ○ SCG(B) 0.13 ○ 現用機 0.14 ○ 0.0 SCG(A) 0.13 ○ SCG(B) 0.12 ○ 現用機 0.12 ○ -0.218 SCG(A) 0.12 ○ SCG(B) 0.11 ○ 現用機 0.09 × -0.436 SCG(A) 0.11 ○ SCG(B) 0.10 ○ 現用機 0.05 × (注1) 発電機の有効出力はいずれも 0.9 [p.u.]、端子電圧は 1.0 [p.u.]である。 符号は+:遅れ、−:進み、を示す。 (注 2)事故除去時間(0.1sec)との比較は、 安定限界が 0.1sec 以上のときに○、0.1sec 未満のときに×とした。 −195− e. 短絡容量 短絡容量に関する要求仕様は、発電機近傍に設置されている遮断器の遮断能力 を増強しないために、現用発電機の場合の短絡容量を上回らないことである。 短絡容量および遮断器通過電流は、系統事故発生後に発電機リアクタンスの変 化などにより時間の経過とともに減衰する。超電導発電機では事故直後には次々 過渡リアクタンス Xd’’’であり時間とともにリアクタンスが大きくなるが、現用 発電機では次過渡リアクタンス Xd”が最小である。事故を除去するための遮断 器開放は、事故点検出時間や遮断器動作時間を必要とするので、事故発生から数 十ミリ秒経過後である。また、短絡容量および遮断器通過電流を事故発生から同 一時間経過後に超電導機と現用機で比較するために、発電機リアクタンスはとも に Xd”で評価する。 超電導発電機の場合の短絡容量を現用機より小さくするためには、超電導機の Xd”が現用機より大きい必要がある。60 万 kW 級低速応型超電導発電機の第一次 設計値と、モデル系統の 60 万 kW 級現用発電機の Xd”は表 2.3.1-5 の値である。 2 種類の超電導発電機の Xd”はいずれも現用発電機より大きく、短絡容量に関す る要求仕様を満足している。 表 2.3.1-5 現用発電機 60 万 kW 級発電機の Xd” 超電導発電機 SCG-A SCG-B 25.425 28.5 35.0 (注)単位は自己容量基準の%値である。 (3) 超電導発電機に対する電力系統からの要求仕様のまとめ 要求仕様とこれの満足度合を、表 2.3.1-6 に示す。これによれば、初期基本設 計の超電導発電機は、短絡容量は現用発電機を下回り、過渡安定度に関してはす べての運転出力で要求仕様を満足している。とくに過渡安定度に関しては、現用 機では進相運転が制約されるが、超電導発電機では制約されない。つまり、超電 導発電機は電力系統の特性を改善している。 電力系統並列時に遭遇する過酷条件については、過渡電磁トルクは発電機高圧 母線至近端での二相短絡事故が最も大きく、ほぼ現用発電機並みの過渡電磁トル クに耐える必要があり、これに耐える多重円筒回転子の設計を行うことになる。 過励磁に関しては V/fで 120%以内とするためにはシーリング電圧±10[p.u.]程 度の励磁制御を付加する必要がある。界磁巻線に関しては、過励磁抑制に必要な シーリング電圧±10[p.u.]の励磁制御を付加した条件で、系統で想定する最過酷 事故時に発電機に発生する界磁電流変動を明らかとしたので、これを満足する超 電導界磁巻線の設計を行うことになる。 −196− 表 2.3.1-6 要求仕様の検討結果 項目 要求仕様 要求仕様の 満足度*1 電磁過渡 トルク 発電機高圧母線至近端での三相短絡故障および二相短 絡故障に耐えること 界磁巻線 定格出力・定格遅相力率で運転しているときに、上記の 系統故障が発生しても超電導を維持すること - 連続運転;現用機の連続運転可能範囲(定格電圧の 105%)を許容すること - 過励磁 - 短時間運転;定格出力・定格遅相力率で運転しているとき に負荷遮断されても運転に支障のないこと △*2 過渡安定度 発電機高圧母線至近の2回線送電線での1回線3相地絡 -開放(故障除去時間は154kV系で0.1秒、77kV系で 0.13秒)に対して安定運転できること △*3 短絡容量 現用発電機の場合の短絡容量を上回らないこと ○ (注1)要求仕様の満足度の記号は次の意味である。 ○:満足することを確認,△:条件付きで満足することを確認,-:超電導発電機の設計に反映 (注2)±10[pu]程度の励磁制御を行えば過励磁(V/f)を120%以内とできる。また、これを逸脱した場合には, 現用機と同様に警報を発生し,停止時に点検することで対処可能と考えられる。 (注3)定格出力での大幅な進相運転では過渡安定度の要求仕様を満足できないが,現用発電機より安定運 転できる範囲が広い 参考文献 1) 電力中央研究所:「平成 12 年度委託研究業務報告書 超電導発電機基盤技術 研究開発 設計技術の研究開発 超電導発電機の要求仕様と導入シナリオの 作成」、2001 年 3 月 2) 電力中央研究所:「平成 13 年度委託研究業務報告書 超電導発電機基盤技術 研究開発 設計技術の研究開発 超電導発電機の要求仕様と導入シナリオの 作成」、2002 年 3 月 −197− 2.3.2 高密度20万kW級超電導発電機の設計技術 本研究の目的は、フェーズⅠで開発した設計・製作技術に、今回研究開発した高 密度化基盤技術を加え、20万kW級機の出力密度を1.5倍に高密度化する設計技術を 確立することにある。 研究開発に当たっては、表2.3.2-1に示した基本計画の目標値に対応した「初期 基本設計」をプロジェクト当初に実施し、これをもとに2.1で示した「高密度化基 盤技術の研究開発」で開発すべき超電導導体や界磁巻線、電機子巻線導体、多重円 筒回転子等に要求される個別の要素技術を抽出し、この結果を反映して個別自主目 標値を設定し、要素モデルや部分モデル、さらには数値解析を通じて検証すべき項 目を明らかとし、これに沿った研究開発を実施した。表2.3.2-2に個別自主目標値 を示す。 さらに最終年度には、上記の「初期基本設計」をベースとして実施した「高密度 化基盤技術の研究開発」(2.1節に記載)や「大容量化基盤技術の研究開発」(2.2 節に記載)の成果を反映して「最終基本設計」を実施し、高密度化20万kW級機の最 終設計を実施した。加えて、磁性材(13%Ni鋼)を巻線取付軸に適用した場合や、 回転子表面などの冷却方式を変えた20万kW級機のオプション設計を実施した。 これらの成果により、高密度20万kW級超電導発電機の設計・製作技術が確立でき、 目標を達成することが出来た 表2.3.2-1 基本計画目標値 開発目標値 達成度 備考 フェーズⅠ技術 界磁巻線電流密度 80A/mm2 80A/mm2 60A/mm2 電機子巻線電流密度 140A/cm2 140A/cm2 110A/cm2 フェーズⅠ技術 に対し1.5倍 1.66倍 出力密度 - 198 - 表2.3.2-2 個別自主目標値 項目 界磁巻線 開発目標 導体 達成度 10,710A (5.0T) ○(103%) 臨界電流密度 3,900A (8.1T) ○(103%) 導体交流損失 3 ○** 200kW/m 以下 (100kW/m3以下) 巻線安定性 定格運転及び ○ フォーシング電流にてク エンチしないこと 至近端事故想定磁界変動 ○ 5T/sにてクエンチしない こと 冷却 すかせ巻にて冷却流路を ○ 確保すること 数日で冷却出来ること ○ 液体ヘリウムの温度が、安 ○ 定性に影響を与えぬこと 熱負荷を抑えた構造とす ○ ること 電機子 導体温度 130℃ (B種絶縁)以下 ○ 巻線 導体強度 突発短絡事故電磁力に耐 ○ えること 直線部支持強度 突発短絡事故電磁力に耐 ○ えること 端部支持強度 突発短絡事故電磁力に耐 ○ えること 振動 振動的に問題がないこと ○ 温度 温度的な問題がないこと ○ 多重円筒 常温・低温ダンパ・巻 突発短絡事故電磁力に耐 ○ 回転子 線取付軸・トルクチューブ強 えること 度 磁気遮蔽特性 界磁巻線への交流磁場遮 ○ 蔽を行うこと ** 平成13 年度導体:153kW/m3, 平成14 年度導体:64kW/m3、平成15 年度導体:67kW/m3の 評価結果を得、自主目標値を達成している。 - 199 - (1) 20万kW級機の基本設計 a. 基本構造 「超電導電力応用技術開発」にて開発済みのフェーズⅠ技術の基本構造に対し、 高密度化による体格の縮小化を考慮し設計を行った。表 2.3.2-3 に回転子、表 2.3.2-4 に電機子の基本構成を示した。また、図 2.3.2-1 に発電機の基本構成を示 した。 表 2.3.2-3 回転子の基本構成 20 万 kW 級機 フェーズⅠ技術 基本構成 非磁性多重円筒回転子 界 磁 巻 線 ・ 冷 却 ・NbTi/Cu/CuNi 三層構造素線 9 本 ・同左 回 転 子 構 成 超電導導体 同左 ・素線径 1.33mm の平角成形撚線 ・素線径 1.61mm 界磁巻線支持 ベッセルで支持 同左 侵入熱制御 真空断熱、トルクチューブ熱 同左 交換による侵入熱制御 ヘリウム液面制御 液体ヘリウム供給圧力による 同左 He 液面自動制御 トルク伝達 トルクチューブによるトルク 同左 伝達 熱収縮機構 フレキシブルディスクによる 二重軸受機構 熱収縮吸収 ダンパ ・カゴ型常温ダンパ ・単層低温ダンパ ・円筒常温ダンパ ・単層低温ダンパ 表 2.3.2-4 電機子の基本構成 20 万 kW 級機 フェーズⅠ技術 基本構成 空隙電機子巻線構造 同左 電 機 子 導体 二重転位電機子導体 同左 界磁巻線支持 FRP 絶縁ティースで支持 SUS ティースで支持 ティース支持 エンドフィンガ構造 同左 コア端部構成 テーパーコア 同左 冷却 水冷却 導体水冷却 磁気シールド水素冷却 - 200 - 9600 5500 1800 3300 φ 880 φ 2000 φ 3250 800 ヘリウム給排装置 軸受 2重軸受 磁気シールド 電機子巻線 テーパーコア 電機子巻線支持 トルクチューブ 巻線取付軸 超電導界磁巻線 常温ダンパ 低温ダンパ φ 6 20 ベッセル φ 30 0 80 φ8 ヘリウム槽 (回転子断面) 図 2.3.2-1 発電機基本構成 - 201 - b. 基本設計 表 2.3.2-5 に示す基本仕様に基づき基本設計を実施した。界磁巻線、電機子巻線 の高密度化を図った設計としている。「初期基本設計」の結果を踏まえた「高密度 化技術」の成果、裏付けをもとにした設計とすることが出来た。 表 2.3.2-6 に、フェーズⅠ技術と高密度化基本設計の比較結果を示した。表に示 される様に各々の設計ケースにおいて、出力密度で 1.5 倍の目標を達成することが 出来た。設計的には、初期の妥当性が確認できたこと、効率についても 99.33%と 個別自主目標とした 99.3%を満たした高効率の設計を実施できたことも特筆され る。 表 2.3.2-5 超電導発電機の基本仕様(定格負荷条件) フェーズⅠ技術 界磁巻線 電機子巻線 Xd 界磁電流 2600A 2 80A/mm2 電流密度 60A/mm 電機子電流 5000A 級 8699A 電流密度 110A/cm2 140A/cm2 0.6 0.6 99.29 99.3 0.1pu/s 0.1pu/s (pu) 効率 (%) 運用 3000A 20 万 kW 級機 (高密度化) 励磁速応度 - 202 - 表 2.3.2-6 フェーズⅠ技術と高密度化基本設計の比較 1.定格 容量 電圧 電流 MVA kV A 2.電気定数 同期リアクタンス pu 3.電機子巻線 導体電流密度 A/cm2 平均電流密度 A/cm2 電気装荷 A/cm 主磁束密度 T 電気・磁気装荷 A/cm・T 4.界磁巻線 定格出力時 界磁電流 A 導体電流密度 A/mm2 平均電流密度 A/mm2 最大磁束密度 T 励磁速応度 pu/s フォーシング時 最大界磁電流 pu 界磁電流 A 導体電流密度 A/mm2 最大磁束密度 T 電流変化率 pu/s 負荷率 % 5.発電機体格・重量 回転子外径 mm 固定子外径 mm 回転子長(胴部)mm 軸受スパン mm 磁気シールド長 mm 磁気シールド内径/外径 全長 mm 2 体格 πD L/4 m3 回転子重量 固定子重量 発電機重量 出力密度 MW/m3 6.発電機効率 D mm フェーズⅠ技 術(Xd=0.6) 初期 基本設計 最終 基本設計 (A) 最終 基本設計 (B) 223 18 7153 223 14.8 8699 ← 14.8 8699 ← 17 7153 0.6 ← ← ← 850 110 2100 0.64 1340 940 140 2660 0.86 2290 940 140 2660 0.86 2290 920 140 2380 0.80 1904 3000 140 61 4.0 0.1 2600 180 80 5.4 ← 2600 180 80 5.4 ← 3800 180 80 5.2 ← 1.2 3600 168 4.8 0.1 72 ← 3120 216 6.5 0.1 80 ← 3120 216 6.5 0.1 80 ← 4560 216 6.2 0.1 80 880 3250 5700 6400 3000 1390/2000 10300 9.4 26 118 144 880 3250 4400 5500 1800 1400/2000 9600 5.7 21 101 122 880 3250 4400 5500 1800 1400/2000 9600 5.7 21 101 122 890 3250 3550 5300 1800 -/2000 9600 5.7 20 115 135 21(1pu) 99.29 35(1.66pu) 99.33 35(1.66pu) 99.33 35(1.66pu) 99.32 - 203 - (2) 界磁巻線の特性評価 a. 界磁巻線の基本構成 表 2.3.2-7 に界磁巻線の諸元を、図 2.3.2-2 に巻線取付軸のスロット部の構成を 示した。スロット断面は、加工特性も配慮しストレートとし、この中に界磁巻線導 体をフラットワイズ巻きする巻線方法を採用とした。巻線部の回転子外径側(図 2.3.2-2 中の上側)には、液体ヘリウム流路を確保する機能も合わせ持つスペーサ をはめ込んでいる。巻線の両サイドには、楔のスペーサを挿入することにより、絶 縁の機能とテンション及び面圧を付加する機能を有する構成とした。この構成でス ロット内の平均電流密度は、基本計画目標値の 80A/mm2 を設計値としている。 表 2.3.2-7 フェーズⅠ技術 (Xd=0.6) 20 万 kW 級機 MVA 223 223 kV 18 14.8 A 7153 8699 定格界磁電流 A 3000 2600 フォーシング時 最大電流 A 3600 3120 スロット数 20 20 発電機 出力 定格 電圧 電機子電流 界磁 巻線 20 万 kW 級機界磁巻線諸元 スロット形状 鞍型 鞍型 導体電流密度 140A/mm 180A/mm2 巻線電流密度 60A/mm2 80A/mm2 巻線取付軸 超電導界磁巻線 2 ベッセル スペーサ (上部流路) 巻線部 スペーサ (楔形状) 超電導導体 下部通路 回転子断面 界磁断面スロット部 図 2.3.2-2 界磁巻線スロット部の構成 - 204 - b. 超電導導体の構成 超電導巻線導体の基本諸元を表 2.3.2-8 に、構成を図 2.3.2-3 に示す。導体は、 平成 13 年度開発の導体を採用した。これは、平成 13 年度導体を用いた短尺導体要 素モデル及び単コイル要素モデルで、その性能が確認できたことによるものである。 尚、その後開発を進めた次年度以降の超電導導体でも、同等以上の性能が得られる と評価できる。 表 2.3.2-8 界磁巻線用超電導導体の諸元 項目 諸元 マトリックス比 NbTi:Cu:CuNi=1.0:2.0:0.4 臨界電流密度(Ic) 10,710A 3,900A 交流損失 200kW/m3以下 界磁電流 2600A at 5.4T (定格運転時) 3120A at 6.5T (フォーシング時) 導体電流密度 180A/mm2 導体サイズ 6.0×2.4mm 導体絶縁 カプトンテープ at 5.0T at 8.1T at 5.4T 6.0mm 2.4mm CuNi Cu CuNi CuNi/Cu/ NbTi Cu NbTi 22μm Φ1 33 (導体の断面例) Φ1.33 (素線/導体構成) 図 2.3.2-3 超電導界磁巻線導体構成 - 205 - c. 界磁巻線の負荷特性 高密度 20 万 kW 超電導発電機の界磁巻線部の磁場解析を行い、界磁巻線の負荷特 性を設定した。 図 2.3.2-4 は、20 万 kW 級実機の鞍型形状の界磁巻線の部分図と磁場分布の解析 結果を示す。発電機の定格運転条件(界磁電流:2600A)で、図中、赤く示した部 位で最大磁場 5.4T が発生する。なお、フォーシング時はこの 1.2 倍の 3120A で 6.5T となる。さらに、フェーズ I 技術も反映しフォーシング時の界磁巻線の負荷率を 80%となるように界磁巻線の負荷特性と超電導導体への要求特性(H-Ic 特性)を決 定した。図 2.3.2-5 に超電導導体に要求される H-Ic 特性と界磁巻線の関係を示す。 2.2.1 に示したように、要求特性を満足する超電導導体を開発し、これをもちい て実機相当の巻線断面構成と負荷特性を有する単コイル要素モデルを製作、試験し その基本性能を実証し、設計技術の妥当性を確認できた。 Bmax 5.4T 図 2.3.2-4 界磁巻線の 磁場解析結果 (定格時) 12000 10710A, 5T 電流 (A) 10000 超電導導体要求特性 8000 6000 フォーシング時:3120A, 6.5T 4000 3900A, 8.1T 定格時:2600A, 5.4T 2000 負荷特性 0 0 2 4 6 8 磁場 (T) 図 2.3.2-5 界磁巻線の負荷特性 - 206 - 10 d. 超電導安定性 ここでは、界磁巻線導体の超電導安定性に対して評価を行った。ここでは、系統 事故時の界磁電流変化に対応した超電導導体の温度マージンを安定性の指標とし た。図 2.3.2-6 に、系統事故時の界磁電流の変化、これに対応した分流開始温度の 変化と導体温度変化を示す。界磁電流の変動よる交流損失の発生等により、導体温 3500 8 分流開始温度 7 2500 2000 6 界磁電流 1500 1000 0 0.00 5 導体温度 500 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 温度(K) 界磁電流(A) 3000 4 3.00 時間(s) 図 2.3.2-6 系統事故時の超電導導体の安定性解析結果 度は上昇するが、超電導の壊れ始める分流開始温度と冷媒温度との差(温度マージ ン)は 1K 以上と十分な裕度が取れることで、設計的に安定であることが確認でき た。また、2.1.1(2)で示した単コイル要素モデルの実験でも、系統事故時に想定さ れる磁場変動(5T/s)の運転に対しても、クエンチの発生は無く安定であることを 検証した。 これらから、実機でも超電導状態が安定的に保たれると判断できる e. クエンチ挙動特性 一般に、クエンチ発生時は界磁巻線のもつエネルギーが、保護回路の抵抗(保護 抵抗)とクエンチして発生した界磁巻線の常電導部に振り分けられることとなる。 保護抵抗を低抵抗とした場合は、クエンチ部でジュール損失として消費されるエネ ルギーが大きくなるため界磁巻線での温度上昇が大きくなり最悪の場合は焼損の 恐れもある。一方、保護抵抗を高抵抗にした場合は、界磁巻線に発生する電圧が大 きくなるため電気絶縁性能上の問題が発生する恐れがある。場合によっては、温度 上昇や電圧ともに抑制しきれず、熱的、電気的に厳しくなる可能性もあり、絶縁構 成を含めた導体をはじめから再設計し直す必要がもある。従って、事前に界磁巻線 のクエンチ時の挙動を把握し、設計の妥当性を検証しておくことが重要ある。 保護抵抗を 0.1Ωから 1.0Ωの範囲で変化させ実施したクエンチ解析結果を、図 - 207 - 2.3.2-7 に示す。界磁電流の減衰と導体の最高到達温度から、保護抵抗 0.3Ωの場 合が良好であると判断できる。この時の発生電圧は 936V と 1kV 以下であり、絶縁 的にも問題ないといえる。 図 2.3.2-7 クエンチ時の導体温度上昇(保護抵抗) 図 2.3.2-8 クエンチ時の導体温度上昇(遮断時間) また、上記の保護抵抗の他、導体温度上昇を決めるパラメータとして、クエンチ 発生後から保護回路が動作するまでの遮断時間の設定がある。この時間は、短いほ ど界磁電流を迅速に遮断できるため導体(界磁巻線)にとって有利であるが、設定 - 208 - 時間が短ければノイズや、急峻な界磁電流変化による誘導電圧等で保護回路の誤動 作を誘発する懸念もあるため、事前に検討しておく必要がある。上記の保護抵抗の 検討結果をうけて、保護抵抗を 0.3Ω一定として、界磁電流変化と導体温度を計算 した結果を図 2.3.2-8 に示すが、いずれも導体最高到達温度は 150K 以下と低く、 クエンチ検出、保護の観点から 0.7sec が適当と判断できる。これらの結果より、 万一、クエンチが発生した場合でも、クエンチの迅速な検出と適切な保護回路によ り、導体(界磁巻線)にダメージを与えず、健全な状態で機器停止、再起動が可能 であると判断できる。 (3) 電機子の特性評価 a. 電機子巻線の基本構成 表 2.3.2-9 に、電機子巻線の諸元を示した。具体的な設計にあたっては、電流密 度の向上により、損失密度が大きくなる分の冷却改善、主磁束・電流増加による電 磁力増加に対する機械強度評価などが必要となるが、これは高密度化技術により確 認し、計画目標通りの性能が検証できた。これにより具体設計が可能となり、また、 設計の妥当性も確認出来た。 図 2.3.2-9 には、電機子巻線の諸元を基にしたスロット部の構成を示した。 表 2.3.2-9 20 万 kW 級機電機子巻線諸元 フェーズⅠ技術 (Xd=0.6) 20 万 kW 級機 MVA 223 223 kV 18 14.5 A 7153 8699 定格界磁電流 A 3000 2600 110 140 損失密度 W/cm3 1.8 2.4 主磁束密度T 0.64 0.86 48.2×73 39.9×83.5 発電機 出力 定格 電圧 電機子電流 電機子 巻線部電流密度 A/cm2 巻線 導体寸法 - 209 - 5.55 14.8 39.9 ストランド 3.9 5.55 0.8 83.5 素線: 2.5×0.9 14.8 図 2.3.2-9 電機子巻線 スロット断面構成 SUS 冷却管 b. 電機子巻線温度 高密度化により電機子巻線導体部での発熱密度が大きくなることを受けて、冷却 効率の向上を図った計画設計を実施した。電機子巻線では、交流損失を低減するた め、二重転位の細素線構造を採用している。細素線化は交流損失を抑制する一方そ の絶縁が熱バリアとなり、冷却管から離れた細素線部での温度上昇が厳しくなる。 従って、効率よく冷却管を断面内に配置する構成が必要となる。 20 万 kW 級機においては、表 2.3.2-9 に示した諸元を基に導体の設計を行った。 図 2.3.2-10 に、温度解析結果の一例を示す。解析としては、冷却水の温度を 46℃ 図 2.3.2-10 電機子巻線温度上昇解析例 - 210 - とした。この結果、最高温度は 102℃であり、56℃の温度上昇を示した。 高密度化技術において、温度上昇試験を実施し解析と実測が一致することを検証 し、また、130℃(B種絶縁)の温度制限値内に収まることを検証できたことで、基 本設計技術の確立が出来た。 c. 電機子巻線支持強度 電機子巻線の直線部支持では、回転磁界からの磁場の影響をさけるために支持材 としては、非磁性材が候補材となる。基本設計において SUS 材ティースによる直線 部支持構造を提案し、高密度化技術においてその検証を実施した。 SUS 材ティースは、金属製で導電性があることから交流損失をさけるため、0.5t の積層板構造とし、積層に際しては絶縁物の塗料を塗布することで、交流損失と温 度上昇を抑える構造とした。 図 2.3.2-11 には、SUS ティースの損失分布の例を示した。図 2.3.2-12 には、損 失分布に基づいた温度解析例を示した。電機子の端部では、磁場の軸方向成分が発 図 2.3.2-11 SUS ティース損失分布例 生するため損失が増加し、その分温度も高くなっているが、電機子巻線と同程度の 60℃ライズであり、支持技術として温度的な問題ないことが検証出来た。 図 2.3.2-13 には、電機子支持時の応力解析を示した。高密度化技術にて強度検 証を実施し、材料強度的に2倍の裕度を持ち問題ないことを確認した。 温度的、機械強度的に問題ないことが検証できたことで、基本設計技術の確立が 出来た。 図 2.3.2-12 SUS ティース温度解析例 図 2.3.2-13 SUS ティース応力解析例 - 211 - d. 電機子巻線端部支持構造 巻線端部の支持構造では、はじめに強度を検討する上で必要となる電磁力を検討 した。高密度化技術において検討した電磁力の例について図 2.3.2-14 に示した。 図は、電機子巻線に発生する電磁力を周方向分布として示したものである。この電 磁力と支持材の応力解析結果、及び、高密度化技術の電機子要素モデルにて計測し た電機子巻線の曲げ強度をもとに、最適構造の検討を進めた結果、当初設計では端 部の支持について巻線外径側に図 2.3.2-15 に示した3リングによるサポートとし たが、サポートを密にした5リング+スロット出口部のサポート付きの構成が有効 である事が分かった。この方式により、1.3 倍の高密度化により 1.7 倍となる電磁 力で発生する巻線端部応力を6割低減し、巻線に加わる応力レベルを抑制すること が可能となった。 13 14 15 - 30 0 43 42 41 40 16 39 38 37 36 35 33 32 31 30 29 28 25 27 26 24 23 50 51 48 47 46 45 44 54 52 53 1 三相突発電磁力(インボリュート終点側、Z座標:1664.1mm) 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 43 Fr(N/mm) Fθ(N/mm) 17 18 19 20 21 34 49 300 三相突発電磁力(インボリュート始点側、Z座標:1239.2mm) 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 0 1 0 48 47 46 45 44 54 52 53 300 51 13 42 41 14 15 - 3 00 49 50 40 16 39 38 37 36 35 34 22 (直線部スロット出口近傍) Fr(N/mm) Fθ(N/mm) 17 18 19 20 21 33 32 31 30 29 28 25 27 26 24 23 22 (巻線最端部近傍) 図 2.3.2-14 電機子端部に発生する電磁力解析例 ( ) 図 2.3.2-15 巻線電磁力によるリングサポート(3リング方式)発生応力解析例 (導体外径側の FRP 製リングサポート応力) - 212 - (4) 多重円筒回転子の特性評価 a. 多重円筒回転子の基本構成 表 2.3.2-10 に、多重円筒回転子の構成材を示した。高密度化技術にて解析評価 を実施し、最適設計を行った。 常温ダンパに関しては、ダンパに要求される電磁気的特性(後述)、機械強度の評 価を踏まえ、構成材を選定した。フェーズⅠ技術では、機械強度及び電磁気的特性 の良好であるが高価な NiCuAl 合金を採用することとしたが、より扱いやすい材料 であり電磁気的特性も最低限満たす A286 を採用することとした。 低温ダンパに関しても、電磁気的特性(後述)、機械強度の評価を踏まえ、構成材 を選定した。フェーズⅠ技術では、機械強度及び電磁気的特性の良好であるが高価 な SUS-Cu-SUS の三層のダンパを採用することとしたが、より扱いやすい材料であ り機械的特性も最低限満たす Al 合金を採用することとした。 ベッセルに関しては、低温での機械強度が要求される。これに関しては、フェー ズⅠ技術や機械的要求特性を踏まえ A286 材とした。 巻線取付軸材に関してもベッセルと同等に低温での機械強度が要求される。これ に関しては、フェーズⅠ技術や機械的要求特性を踏まえ A286 材とした。 高密度化技術にて解析評価を実施し、最適設計を実施することで、設計技術に反 映出来た。 尚、この巻線取付軸材に関しては、2.3.2(6)で後述するように 13%Ni 鋼材の適用 性も検討した。 表 2.3.2-10 20 万 kW 級機多重円筒回転子諸元 フェーズⅠ技術 (Xd=0.6) 20 万 kW 級機 MVA 223 223 kV 18 14.5 A 7153 8699 定格界磁電流 A 3000 2600 NiCuAl 合金 A286 SUS-Cu-SUS 三層構造 AL 合金 A286 A286 A286 A286 発電機 出力 定格 電圧 電機子電流 多重 常温ダンパ材 円筒 低温ダンパ材 回転子 ベッセル材 巻線取付軸材 - 213 - b. 磁気遮蔽特性 常温ダンパと低温ダンパで構成される超電導発電機ダンパシステムによる磁気 遮蔽率は、各々のダンパ材の導電率に依存する。同時に、ダンパは機械的特性も満 たす必要があり、これらを踏まえた上で材料検討や設計を進め、さらに数値解析に よって外部からの変動磁界に対するシールド特性を求めた。 図 2.3.2-16 には、A286 材の常温ダンパと Al 合金材の低温ダンパの構成によるダ ンパシステムの遮蔽特性の解析例を示した。図は、横軸に外部変動磁界の周波数を、 縦軸には遮蔽率を示すが、発電機定格周波数(60Hz)の倍周波(120Hz)では約 0.0005 倍に外部変動磁界を減衰することが可能であることがわかる。この結果を踏まえ、 大きな擾乱であるトランス高圧端突発短絡事故での界磁部磁場変化の解析を実施 した結果を図 2.3.2-17 に示した。この場合の変動磁界に対しても、ダンパシステ ムのシールド効果によって、界磁巻線部の損失は 1kW/m3 程度と評価でき問題とは ならず、十分なシールド特性を期待できる。 1 10 周波数(Hz) 100 1000 1.0000 遮蔽率 0.1000 0.0100 0.0010 0.0001 図 2.3.2-16 ダンパシステム磁場遮蔽特性 3.32 (95μΩ㎝) A286 材ダンパ材 界磁磁束密度 T 3.30 3.28 3.26 3.24 3.22 3.20 0.017 0.022 0.027 0.032 0.037 0.042 0.047 0.052 0.057 0.062 0.067 0.072 0.077 0.082 時間(s) 図 2.3.2-17 トランス高圧端突発短絡事故界磁部磁場変化 - 214 - (5) ヘリウム冷却特性 a. 初期冷却、昇温特性 界磁巻線の冷却特性と昇温特性の解析結果を、図 2.3.2-18 に示す。 なお、解析にあたっては、冷媒温度や温ガス温度は、機器の温度状態によって外部 からコントロールするものと仮定した。 図に示すように、冷却時間、昇温時間ともに 80 時間の解析結果が得られ、フェー ズ I での7万 kW 級超電導発電機の実証試験と同等の良好な結果を得た。尚、万一、 超電導発電機を短期間、停止させる必要が生じた場合は、図 2.3.2-18 の冷却特性 図に示すガスヘリウム冷却(GHe)の状態で待機し、運転再開する場合は液体ヘリウ ム(LHe)冷却を再度実施することで、10 時間程度で界磁巻線を超電導状態とし発電 機の再起動が可能である。 冷却特性 昇温特性 界磁巻線温度 冷媒温度 350 300 300 GHe LHe 250 温度(K) 250 温度(K) 350 200 150 100 200 150 界磁巻線温度 100 50 温ガス温度 50 0 0 0 20 40 60 80 100 時間(h) 0 20 40 60 80 時間(h) 昇温曲線 図 2.3.2-18 界磁巻線の冷却、昇温特性の解析結果 b. 液面とその制御 超電導発電機では、回転子が高速回転するため、大きな遠心力が発生する。この 遠心力は、一般に回転子の半径方向の距離と回転数の2乗の積に比例するが、今、 回転数を一定(定格時:3600rpm)とすれば、半径方向の距離に依存する。図 2.3.2-1 で示した界磁巻線部とヘリウム槽などに存在する冷媒ヘリウムは、この半径方向の 位置に依存する遠心力で圧縮力を受け、圧力の変化、すなわち温度変化が著しい。 さらに回転子内部は、圧縮力のため負圧状態となり、いわゆるセルフポンピング効 果が生じる。超電導界磁巻線の性能、安定性は冷媒温度に大きく依存するため、回 転子内部のヘリウム温度の分布を把握しておくことが重要である。 図 2.3.2-19 に回転子内部の半径方向のヘリウム温度分布の解析結果を示す。界 磁巻線の存在する位置では、ヘリウム温度は 4.2K から 4.5K の範囲で分布している - 215 - 100 ことがわかる。従って、2.3.2(1)に示した 20 万 kW 級機の基本設計においては、こ の結果を反映し、ヘリウム温度 4.5K をベース温度として、界磁巻線の十分な安定 性マージンを確保できるようにした。 また、液面の制御は、液体ヘリウムの送液圧力によって自動的に制御される事と なる。これは、回転子内部空間内の液体ヘリウム送液ノズル位置よりも液面が内径 側にある場合は、圧力がかかり送液が抑制され、一方、ノズル位置よりも液面が外 径側にある場合は負圧となり、上記セルフポンピング効果により送液が促進される ためである。この現象を利用し、界磁巻線部位での液体ヘリウム温度もコントロー ルできることになる。但し、回転子内部にもある程度の液体ヘリウムを保持してお く必要もある。 4.6 4.4 4.2 温 4 度 3.8 (K) 3.6 3.4 3.2 3 界磁巻線位置 0 50 100 150 200 半径(mm) 250 300 350 図 2.3.2-19 回転子内部ヘリウム温度分布 c. 熱負荷 熱負荷に関しては、表 2.3.2-11 の回転子の熱損失に示した。フェーズⅠ技術に 対して、高密度化でコンパクトとなりパワーリードからの侵入熱の低減が図られた。 その他に含まれる輻射熱が体格のコンパクト化により低減した一方で、常温ダンパ 材の見直し等により交流損失が増加することとなった。トータルで、ほぼ同等の熱 負荷に抑えることが可能である。 - 216 - 表 2.3.2-11 回転子の熱損失 (単位 W) 部位・種別 フェーズⅠ技術 Xd=0.6 20 万 kW 級機 1.外部トランスファーライン (液体ヘリウムの発電機までの送 液時の熱負荷) 15 15 2.HTC部損失等 ( 固 定 側 か ら 回 転 側 へ の Helium Transfer coupling(HTC) 等での熱 負荷) 13 13 3.フラッシュ損 (送液配管から回転子内部に放出 される時の圧力変化による断熱膨 張での熱負荷) 7 7 4.パワーリード (界磁電流通電用リードでのジュ ール発熱、熱伝導による熱負荷) 13 12 5.トルクチューブ侵入熱 (界磁巻線取付軸の端部で極低温 部と常温部を接続する支持構造で の伝熱負荷) 14 14 6.その他 (輻射熱、交流損等による熱負荷) 15 19 合計 77 80 (6) オプション設計(磁性界磁巻線軸材や冷却方式をサーベイした試設計) 設計技術の開発の成果や高密度化技術の成果を踏まえて、20 万 kW 級機を対象と して、13%Ni 鋼材を界磁巻線取付軸材に採用した場合や、回転子表面冷却、電機子 導体や磁気シールドの冷却法を変えた場合についてのオプション設計を実施した。 表 2.3.2-12(a)およびに表 2.3.2-12(b)に、それらの結果を示す。 a.磁性巻線取付軸を採用した試設計 磁性界磁巻線を採用した試設計は、その方針によっては出力を 30%向上する設計 も可能であるが、ここでは、機器のバランスを考慮して 223MVA 出力と同様の出力 とし、同期リアクタンスを下げつつ高密度化を図った方針の試設計とした。結果、 - 217 - 同期リアクタンスを 20%低下させつつ、出力密度が1割上げる設計が可能であるこ とが分かった。更に、効率も向上することが確認でき、オプション設計での大きな 成果と考えられる。 b.ガスヘリウム冷却による試設計 導入シナリオとして考えられるガスヘリウム冷却方式の試設計も実施した。ガス ヘリウムは水素に比較して取扱いが格段に容易なことから、補機類の簡略化が図れ る特長を持っている。 試設計の結果、体格的にも目標の 1.5pu を越えた 1.62pu、効率的にも水素冷却 機とほぼ同等の結果を得ることができた。効率の低下が殆ど無いため、補機の導 入・メンテナンス・運用コスト等を考えた場合、十分メリットのある設計であり、 オプション設計での大きな成果と考えられる。 設計技術の確立により、導入シナリオで要求される仕様の超電導発電機や、将来 的な多様なニーズに対するオプション的な超電導発電機設計を、技術的裏付けを持 つ高信頼性の設計で行なうことが可能となった。 - 218 - 表 2.3.2-12(a) 20 万 kW 級機超電導発電機の設計比較 項目\容量 最終基本設計 A 磁性巻線 軸設計A (13%Ni) 水&ヘリウム 冷却 A 容量(MVA) 223 223 223 電圧(kV) 14.8 14.8 14.8 電流(A) 8699 8699 8699 Xd(pu) 0.6 0.50 0.6 54 48 54 940 940 940 電機子電流密度(A/cm ) 140 140 140 電気装荷(A/cm) 2660 2400 2660 主磁束密度(T) 0.86 1.0 0.86 固定子・電機子 スロット数 導体電流密度(A/cm2) 2 界磁巻線 界磁電流(A) 2600 2600 2600 2 180 180 180 2 80 80 80 回転子外径(mm) 880 890 880 固定子外径(mm) 3250 3250 3250 磁気シールド長(mm) 1800 1560 1800 磁気シールド外径(mm) 2000 2050 2050 導体電流密度(A/mm ) 平均電流密度(A/mm ) 発電機体格 界磁巻線冷却 液体ヘリウム 回転子表面冷却 水素 電機子導体冷却 水 磁気シールド冷却 効率 出力密度 MW/m ガスヘリウム 3 水素 ガスヘリウム 99.33 99.35 99.29 35 39 34 (1.66pu) (1.82pu) (1.62pu) - 219 - 表 2.3.2-12(b) 20 万 kW 級機超電導発電機の設計比較 項目\容量 最終基本設計 水&ヘリウム 全ヘリウム B 冷却 B 冷却 B 容量(MVA) 223 223 223 電圧(kV) 17 17 19 電流(A) 7153 7153 19 Xd(pu) 0.6 0.6 6777 60 60 60 920 920 810 電機子電流密度(A/cm ) 140 140 140 電気装荷(A/cm) 2490 2490 2200 主磁束密度(T) 0.84 0.84 0.84 固定子・電機子 スロット数 導体電流密度(A/cm2) 2 界磁巻線 界磁電流(A) 3800 3800 3800 2 180 180 180 2 80 80 80 回転子外径(mm) 890 890 890 固定子外径(mm) 3250 3250 3250 磁気シールド長(mm) 1800 1800 2050 磁気シールド外径(mm) 2000 2000 2040 導体電流密度(A/mm ) 平均電流密度(A/mm ) 発電機体格 界磁巻線冷却 液体ヘリウム 回転子表面冷却 水素 ガスヘリウム 電機子導体冷却 水 ガスヘリウム 磁気シールド冷却 水素 効率 99.32 99.28 99.24 35 35 30 (1.66pu) (1.66pu) (1.4pu) 出力密度 MW/m 3 ガスヘリウム - 220 - (7) 開発成果の纏め 開発の成果を纏めると以下の通りである。 ① 基本設計(初期)により、基本計画目標に沿った設計を実施し、高密度 20 万 kW 級超電導発電機の個別自主目標や個別の要求仕様・諸元を明確とした。また、 基本設計の実施により、高密度化発電機の特性が明確なものとなった。 ② 2.1 に記載の「高密度化基盤技術の研究開発」により、基本計画目標、個別自 主目標、個別要求仕様・諸元の性能検証を行うことができた。高密度化技術では、 特に、基本計画目標を達成出来たことで、基本設計の技術的な確立が出来た。 ③ さらに、基本設計(最終)を実施し、 「高密度化基盤技術の研究開発」で裏打ち された設計を行うことができた。目標値である出力密度(1.5pu)、界磁巻線電流密 度(80A/mm2)、電機子電流密度(140A/cm2)の高密度化を満足し、また、超電導発電機 の大きな特長の一つである高効率化についても 99.33%の高効率の設計となった。 基本仕様、構造構成、構造材料、製作性、また、新規構造提案の反映も考慮した 設計技術が得られた。また、オプション設計等のバリエーション設計が可能となっ た。 以上から、高密度 20 万 kW 級超電導発電機の設計技術を確立した。 - 221 - 2.3.3 大容量 60 万 kW 級超電導発電機の設計技術 フェーズⅠにおいて、超電導発電機に対する総合的な技術検証を実施し、7 万 kW 級機の設計及び製作技術を確立した。フェーズⅡでは、この成果に基づいて「初期基 本設計」を実施した。「大容量化基盤技術の研究開発」により、表 2.3.3-1 に示す基本 計画の目標値(界磁電流 6000A 級、回転子径 1100mm 級、電機子電流 15000A 級) を達成できる技術を開発しており、「最終基本設計」において、これらの成果と、「高 密度化基盤技術の研究開発」の成果を総合的に反映させることで、目標値を満足する 超電導発電機設計技術を確立した。基本計画の目標値に対応して表 2.3.3-3∼表 2.3.3-7 に示す個別自主目標値を設定している。個別自主目標値は、60 万 kW 級機の 定常運転時、過渡運転時の運転条件から、超電導発電機として安定に運転するための 条件として設定した。 「大容量化基盤技術の研究開発」から「最終基本設計」へに反映した項目を以下に 示す。 ・超電導線の安定性向上のために Sn メッキを施工することで銅比を 2.4/0.4/1 に向上 させ、更に 10 本撚りとすることで電流容量を増加した超電導線とした。 ・超電導線の導体電流密度を 160A/mm2として、界磁巻線の最大磁界を低減し安定性 向上を図った。 ・強度余裕確保の観点から単層円筒形の常温ダンパを適用した。 ・電機子巻線の支持は、強度を確保可能な、単独ウェッジ構成とした。 「設計技術の研究開発」の成果を以下にまとめる。これより、基本計画目標、個別 自主目標ともに達成し、60 万kW 級機の設計技術を確立できたと判断する。 ①「初期基本設計」に関しては、「大容量化基盤技術の研究開発」にて界磁巻線、電 機子巻線、多重円筒回転子の特性評価を実施している。常温ダンパで設計裕度の小 さな設計であったが、他の特性は良好であることを検証した。 「設計技術の研究開発」では、発電機効率、出力密度、ヘリウムの冷却特性、熱負 荷、超電導巻線安定性、クエンチ時の挙動解析などの評価を実施した結果、突発時 の導体温度マージン、クエンチ時の温度上昇の裕度が小さいものの、超電導発電機 としての要求仕様を満足することを検証した。また、電機子支持部強度の評価を実 施した結果、裕度が小さいものの要求仕様を満足することを検証した。 ②「最終基本設計」に関しては、「大容量化基盤技術の研究開発」にて界磁巻線の特 性評価を実施し、良好な特性を検証した。 「設計技術の研究開発」にて、常温ダンパなどの回転子強度評価のほか、発電機効 率、出力密度、ヘリウムの冷却特性、熱負荷、超電導巻線安定性、クエンチ時の挙 動解析などの評価を実施した。突発時の導体温度マージン、クエンチ時の導体温度 上昇、クエンチ発生時の電圧が改善した。超電導線の導体電流密度を低減したこと - 222 - で出力密度が低下したが、これに対しては、巻線取付軸に磁性材(13%Ni 鋼)を 適用することで目標を達成できることを検証した。また、単層円筒形の常温ダンパ を適用することで発生応力を低減できることを検証した。以上から、「最終基本設 計」にて基本計画目標を達成できることを検証した。 さらに、固定子のヘリウム冷却を採用した設計も可能であり、水素関連補機削減、 保守性の向上、発電機システムとしてのコスト低減の目処を得た。 表 2.3.3-1 60 万 kW 機の基本設計結果 初期基本設計 最終基本設計 A 設計 B 設計 常温ダンパ かご形 単層円筒形 同左 低温ダンパ 単層円筒形 同左 同左 設計上 巻線取付軸 非磁性 同左 同左 の特徴 界磁巻線 180A/mm2 160A/mm2 同左 電機子巻線 空隙巻線 同左 同左 MVA 667 667 同左 kV/kA 25/15.404 27/14.262 同左 磁気シールド長 2800mm 3400mm 3300mm (導体電流密度) 主要 仕様 表 2.3.3-2 基本計画目標値 開発目標値 界磁電流 6000A 級 電機子電流 15kA 級 回転子外径 1100mm 級 表 2.3.3-3 個別自主目標と達成度 (発電機全体設計) 項 目 同期リアクタンス フォーシング時界磁電流 励磁速応度 開発目標値 0.6 pu 1.2 pu 0.1 pu /sec 達成度*1 (○)*2 (○) (○) 効率 99.45%以上 99.46 出力密度 45MW/m3 以上 37 *1:初期基本設計、最終基本設計を通じての総合評価 *2 :( )内は、設計仕様となっている項目を示す。 - 223 - 表 2.3.3-4 項 目 開発目標値 臨界電流 導体 界磁巻線の個別自主目標値と達成度 導体交流損 巻線 安定性 界磁巻線 達成度 ・8500A 以上 (8.2T) ・200kW/m3 以下(5T/sec) ・初回クエンチ電流 6840A 以上 9200A*2 93 kW/m3*2 9500A でクエンチ 発生せず*2 ・発電機至近端系統での突発短絡発生時に クエンチしないこと 温度マージン 1.3K*1 クエンチ時 ・クエンチ後最高温度 300K 以下 発生電圧、温度 ・クエンチ時発生電圧 3000V 以下 198K*1 2000V *1:最終基本設計での検討結果 *2 :大容量化技術で検討済 表 2.3.3-5 項 電機子巻線の個別自主目標値と達成度 目 開発目標値 導体温度 ・130℃(B 種絶縁)以下 達成度*1 91℃*2 コイル圧縮強度 ・突発短絡時の電磁力に耐えること ○*2 コイル電気特性 ・現用機と同等の破壊、非破壊絶縁特性を有すること ○*2 巻線支持部強度 ・端子突破短絡時の電磁力に耐えること (歯部応力 300MPa 以下) *1:条件の厳しい初期基本設計での検討結果 *2 :大容量化技術で検討済 表 2.3.3-6 項 He 冷却の個別自主目標値と達成度 目 開発目標値 冷却、昇温特性 ・各 4 日程度で終了すること 液面、He温度 ・界磁巻線位置の He 温度が 5.0K 以下 熱負荷 232MPa*1 ・液化機容量 200L/Hr 以下 達成度*1 ○ 約 4.5K 199L/Hr *1:最終基本設計での検討結果 表 2.3.3-7 項 目 常温ダンパ強度 低温ダンパ強度 巻線取付軸強度 フレキシブル ディスク強度 多重円筒回転子の個別自主目標値と達成度 開発目標値 ・端子突発短絡時の電磁圧縮力に耐える (発生応力 700MPa 以下) 同 上 (発生応力 300MPa 以下) ・フォーシング時電磁力に耐えること (発生応力 700MPa 以下) 達成度*1 ・端子突発短絡トルクに耐えること ・熱収縮 20mm 級を許容する(発生応力 830MPa 以下) 824MPa *1:最終基本設計での検討結果 - 224 - 626MPa 291MPa 535MPa (1) 60 万 kW 機の基本設計 a.基本構造 フェーズⅠにて開発済みの 20 万 kW 級パイロット機の基本構造を基に、大容量化 に伴う強度面の向上を考慮した設計を適用した。 表 2.3.3-8、表 2.3.3-9、図 2.3.3-1∼図 2.3.3-4 に回転子と電機子の基本構造を示す。 表 2.3.3-8 回転子の基本構造 20 万 kW 級 パイロット機*1 基本構成 60 万 kW 機 ・非磁性多重円筒回転子 界磁巻線・冷却 超電導線 界磁巻線 支持 ・三層構造 1 回撚線 ・素線径:1.6mm (交流損:50kW/m3 以下) 同左 ・三層構造 1 回撚線 ・素線径:2.0mm (交流損:200kW/m3 以下) 同左 (ベッセル肉厚増加) ・ベッセルで支持 回転子構成 熱負荷抑制 ・真空断熱、トルクチューブ熱 交換器による侵入熱抑制 同左 ヘリウム 液面制御 ・液体 He 供給圧力制御による He 液面自律制御 同左 (ヘリウム槽減圧調整) トルク伝達 ・トルクチューブによるトルク 伝達 同左 (トルクチューブ肉厚増加) 熱収縮吸収 ・フレキシブルディスクによる 熱収縮吸収 同左 (ディスク枚数増加) ダンパ ・かご型常温ダンパ ・単層低温ダンパ 同左 (常温ダンパスロット数増加) *1:「フェーズⅠ」にて設計を実施 表 2.3.3-9 電機子の基本構造 基本構成 巻線支持 コア端部構成 20 万 kW 級 パイロット機 60 万 kW 機 空隙電機子 同左 ・絶縁歯部+ウェッジで固定 テーパコア - 225 - ・絶縁歯部+ウェッジで固定 同左 ティース&電機子巻 空隙電機子巻線 磁気シールド テーパコア 磁気シールド 回転子 図 2.3.3-1 60 万 kW 機の発電機断面図 ヘリウム給排装置 スリップリング 常温ダンパ トルクチューブ フレキシブルディスク (1) 回転子縦断面図 巻線取付軸 円筒形常温ダンパ 常温ダンパ 超電導界磁巻線 低温ダンパ ベッセル ヘリウム槽 a.かご形常温ダンパ b.円筒形常温ダンパ (2) 回転子横断面図 図 2.3.3-2 回転子の断面図 - 226 - (1) フレキシブルディスク (2) 常温ダンパ(かご形) 図 2.3.3-3 回転子の基本構造 ウェッジ 絶縁歯部 磁気シールド 図 2.3.3-4 電機子巻線支持部の構造 - 227 - b.基本設計 表 2.3.3-10 の基本仕様に基づいて基本設計を実施した。界磁巻線と電機子巻線電流 密度を高密度化した設計とし、「最終基本設計」には下記の項目を反映した。 ・超電導線の安定性向上のために Sn メッキを施工した高銅比の 10 本撚り線とした。 ・超電導線の導体電流密度を 160A/mm2とし、巻線としての安定性向上を図った。 ・強度余裕確保の観点から単層円筒形の常温ダンパを適用した。 ・電機子巻線の支持は、強度を確保可能な、単独ウェッジ構成とした。 表 2.3.3-11 には基本設計結果を示す。発電機効率は「初期基本設計」99.45%、 「最 終基本設計」99.46%ともに個別自主目標値 99.45%を達成した。出力密度については、 「最終基本設計」で 140 A/mm2 となり、導体電流密度の低下により個別自主目標値 160 A/mm2 を下回ったが、(6)項で示す、磁性巻線取付軸の適用により目標値の達成 が可能である。 表 2.3.3-10 超電導発電機の基本仕様(定格負荷条件) 界磁巻線 電機子巻線 多重円筒回転子 20 万 kW 級 パイロット機 60 万 kW 機 界磁電流 3000A 6000A 級 電流密度 140A/mm2 160 A/mm2 電機子電流 5000A 級 15000A 級 電流密度 110A/cm2 140A/cm2 回転子直径 890mm 1100mm 級 - 228 - 表 2.3.3-11 初期基本設計と最終基本設計の比較 フェーズⅠ技 術(Xd=0.6) 初期 基本設計 最終基本 設計(A) 最終基本 設計(B) 667 27 14263 同左 25 15404 同左 27 14262 同左 27 14262 2.電気定数 同期リアクタンス PU 界磁巻線インダクタンス H 0.6 1.0 0.6 0.7 0.6 0.8 0.6 0.8 3.電機子巻線 導体電流密度 A/cm2 平均電流密度 A/cm2 損失密度 W/cm3 電気装荷 A/cm 主磁束密度 T 電気・磁気装化 A/cm・T 800 110 4 2590 0.78 2020 800 140 4 2770 0.93 2576 750 同左 4 2580 0.88 2270 940 同左 4 2602 0.84 2186 4800 140 60 1.1 4.5 5700 180 80 1.4 5.1 同左 160 77 1.25 4.8 同左 160 78 1.25 5.1 1.2 5760 168 5.4 0.1 65 同左 6840 216 6.1 同左 77 同左 同左 192 5.8 同左 72 同左 同左 192 5.8 同左 71 1100 4000 6500 8000 3600 1350/2390 12700 17.5 37 245 1100 4000 5400 6900 2800 1370/2520 11600 13.8 31 220 1100 4000 6000 7500 3400 1370/2460 12200 16.2 34 230 1120 3900 5900 7400 3300 1390/2470 12000 15.8 33 228 282 34 251 44 264 37 261 38 99.47 99.45 99.46 99.46 1.定格 容量 電圧 電流 MVA kV A 4.界磁巻線 定格出力時 界磁電流 A 導体電流密度 A/mm2 平均電流密度 A/mm2 ロータ表面磁束密度 T 最大磁束密度 T フォーシング時 最大界磁電流 p.u. 界磁電流 A 導体電流密度 A/mm2 最大磁束密度 T 電流変化率 pu/sec 負荷率 % 5.発電機体格・重量 回転子外径 mm 固定子外径 mm 回転子長(胴部)mm 軸受スパン mm 磁気シールド長 L mm 磁気シールド内径/外径 全長 mm 2 体格 πD L/4 m3 回転子重量 ×103 kg 固定子重量 ×103kg 発電機重量 ×103kg 出力密度 MW/m3 6.発電機効率 % D mm - 229 - (2) 界磁巻線の特性評価 表 2.3.3-4 に示す界磁巻線の個別自主目標の内、臨界電流、導体交流損、巻線安定 性については、「大容量化基盤技術の研究開発」にてモデル検証を実施済みである。 ここでは、解析により負荷特性を確認するとともに、クエンチ時の発生電圧、温度を 評価する。併せて、巻線安定性について、クエンチエネルギ、突発短絡時温度上昇を 解析評価する。 「初期基本設計」と「最終基本設計」について検討した結果を以下に示す。 a.界磁巻線の基本構成 表 2.3.3-12 に界磁巻線の主要な仕様を、また、図 2.3.3-5 には回転子の断面構成を 示す。導体電流密度の低下による界磁アンペアターンの低下に対し、スロット形状の 最適化により巻回数の減少を抑制した設計としている。 表 2.3.3-12 60 万 kW 機と界磁巻線の仕様 項目 発電機 定格 界磁 巻線 初期基本設計 最終基本設計 出力 667MVA 667MVA 端子電圧 25kV 27kV 電機子電流 15.404kA 14.262kA 定格界磁電流 5700A 5700A フォーシング時最大電流 6840A 6840A 巻線取付軸直径 800mm*1 800mm*1 スロット数 24 24 導体電流密度 180A/mm2 160A/mm2 巻回数/極 320 ターン 304 ターン *1:回転子の外形寸法はφ1100mm であり、基本計画の目標値に対応している。 上部ツメモ φ921 φ800 φ1100 コイル クサビ 直線部 (1) 巻線取付軸断面構成 下部ツメモノ 端部 (2) スロット内構成 図 2.3.3-5 界磁巻線の構成と主要寸法 - 230 - b.超電導線の構成 表 2.3.3-13、図 2.3.3-6 に超電導線の仕様を示す。 「最終基本設計」に適用した超電 導線は、界磁巻線部分モデルで特性を検証した最終導体である。「初期基本設計」か らの変更点を以下に示す。モデルによる検証は「大容量化基盤技術の研究開発」にて 実施済み。 ・素線外被の材質を CuNi から Sn メッキに変更することで外被の厚さを減少させ、 その分を Cu に置き換えることで、銅比の向上を図った。 ・撚り本数を 10 本として導体電流密度の低減を図った。銅比向上の効果と併せて高 磁界での臨界電流特性の向上を図った。 表 2.3.3-13 超電導線の特性 初期基本設計 最外層 CuNi 素線径 φ2.0 Cu/CuNi/NbTi 2.1/0.8/1 臨界電流密度 at 5T 2810 A/mm2 撚り本数 9本 導体外径寸法 3.5×9.1 定格導体電流密度 180 A/mm2 臨界電流 at 8.2T 6850 A 交流損 at 5T/sec 63.6 kW/m3 素 線 導 体 Cu 2 (0.56) CuNi Cu1 (0.40) CuNi1 (0.25) Cu 2 (0.78) CuNi 2 (0.01) Cu CuNi 2 (0.08) CuNi 3 (0.14) CuNi 3 (0.15) NbTi Cu 3 (0.85) 22.5µm Cu / CuNi / NbTi比 = 2.03 / 0.70 / 1 = 0.544 / 0.187 / 0.268 Cu1 (0.30) Cu 3 (1.55) CuNi1 (0.25) カプトンテープ CuNi 4 (0.22) 20µm 24.5µm 最終基本設計 Sn メッキ φ2.0 2.4/0.4/1 2960 A/mm2 10 本 3.6×9.9 160 A/mm2 9200 A 93.0 kW/m3 0.92mm 0.96mm NbTi 1.64mm 1.69mm 20.2µm 1.93mm 21.9µm 2.00mm 23.9µm プリプレグ 絶縁テープ 0.77mm H12年度 年度・ 年度開発素線 年度・ H13年度開発 年度開発素線 (1) 初期基本設計 0.73mm 表面高抵抗 メッキ処理 メッキ処理 1.49mm 1.54mm 2.00mm Cu / CuNi / NbTi比 = 2.41 / 0.40 / 1 = 0.633 / 0.105 / 0.262 H14年度開発 年度開発素線 年度開発素線 (2) 最終基本設計 図 2.3.3-6 超電導線の構成 - 231 - (3) 導体絶縁構成 c.界磁巻線の負荷特性 3 次元電磁界解析により界磁巻線の最大磁界を計算し、負荷特性を設定した。図 2.3.3-7 に、界磁巻線の磁界解析モデルと解析結果、界磁巻線の負荷特性を示す。 「最 終基本設計」では、導体電流密度の減少、スロット毎の巻回数の最適化などにより、 定格時の最大磁界を「初期基本設計」の 5.1T から 4.8T に低減した。 最大磁界 4.8T (1) 界磁巻線最大磁界解析結果(最終基本設計) 25000 定各時磁束密度を 5.1→4.8T に低減 20000 最終基本設計 電流[A] フォーシング 15000 初期基本設計 定各時 10000 6840A 5000 5700A 5.8T 6.1T 0 0 2 4 4.8T 6 磁束密度[T] 8 10 5.1T (2)「初期基本設計」と「最終基本設計」の負荷特性 図 2.3.3-7 界磁巻線の負荷特性 - 232 - 12 クエンチエネルギ (mJ) d.超電導巻線安定性 巻線の安定性に関し、クエンチエネルギーと突発短絡時導体温度を評価した。図 2.3.3-8 には、Sn メッキ線に対して界磁巻線最大磁界が変化した場合のクエンチエネ ルギー計算結果を示す。定格時の最大磁界を 5.1T から 4.8T に低減することで、クエ ンチエネルギーが約 30%向上することが分った。7 万 kW 級モデル機のクエンチエネ ルギーは定格電流通電時で 0.5mJ であり、 「初期基本設計」 「最終基本設計」ともにこ れを上回ることを検証した。なお、5.1T のクエンチエネルギーは 5.0T と 5.2T の平 均として算出した。 図 2.3.3-9 は、交流損失が 200kW/m3(個別自主目標値)の条件における、発電所 至近端系統事故時を想定した最過酷条件での界磁電流変化による導体温度上昇解析 結果を示す。温度上昇は、CuNi 外被線で 0.4K、Sn メッキ線で 0.5K であった。交 流損実測値は、それぞれ 64kW/m3、93kW/m3であったことから、実際の温度上昇は 0.1K、0.2K と考えられる。これを基に、温度マージンを算出するとそれぞれ 0.9K、 1.3K であり、「初期基本設計」、「最終基本設計」ともに、1K 程度の温度マージンを 確保できることを検証した。 定格 過渡最大 1 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 4.8T 5.0T 5.2T 定格磁界 図 2.3.3-8 クエンチエネルギーの比較 4.8T/5.7kA 3 損失:200kw/m (5T/s) CuNi 外被 9 本撚り 界磁電流 6000 6 Tcs 5000 導体温度 0.4K 5 4000 界 磁 電流 (A) 7000 温度 (K) 7000 界磁電流 (A) 8000 7 損失:200kw/m 3(5T/s) 導体:2mmφx10本 Sn メッキ 10 本撚り 界磁電流 6 6000 Tcs 5000 0.5K 導体温度 5 4000 ヘリウム温度 3000 7 0 1 時間 (sec) ヘリウム温度 4 2 3000 0 (1) 初期基本設計 (2) 最終基本設計 図 2.3.3-9 界磁電流変化時の導体温度上昇 - 233 - 0.5 1 時間 (sec) 温度マージン 0.067秒:6.16-5.06=1.10K 1.07秒:5.86-4.62=1.24K 4 1.5 温 度 (K) 8000 e.クエンチ時挙動 クエンチ時の発生電圧、導体温度上昇を評価した。図 2.3.3-10 には、界磁巻線の励 磁回路と、界磁巻線がフォーシング最大電流通電時にクエンチした場合の、導体温度 と界磁電流変化の解析結果を示す。「初期基本設計」では、クエンチ後の導体最高温 度を、300K 程度に抑制するには、0.44Ωの保護抵抗が必要であり、その時の発生電 圧は 3000V であった。図 2.3.3-6 に示す導体絶縁構成を適用した場合、絶縁耐力の点 で達成可能ではあるが、スロット内構成が複雑となるため、発生電圧の低減が望まし い。「最終基本設計」では、銅比を増加させることで導体の抵抗が減少するため、ク エンチ発生時の電圧を 2000V まで低減できることを検証した。また、 「最終基本設計」 ではクエンチ後の導体最高温度は 200K 程度まで改善された。 「初期基本設計」「最終基本設計」ともに、達成可能な発生電圧条件にて、最高温 度を 300K 以下に抑制できることを検証した。 400 6840A 6000 A-#4,C-#4 A-#5,C-#5 4000 200 遮断器1 2000 3kV 300 電源 0.43Ω 0 0 100 φ2mm Cu/CuNi/NbTi=2.1/0.5/1 1 2 3 Time (sec) 保護抵抗 0 5 4 (1) 初期基本設計 A-#6,C-#6 8000 界磁巻線の励磁回路 図4.3−11 界磁コイルの励磁回路(一括保護) 界磁電流 (A) Current 最大電圧 2000V 2mmφx10本撚線 Cu/CuNi/NbTi=2.4/0.4/1 4000 200 100 2000 0 0 1 2 Time (sec) (2) 最終基本設計 図 2.3.3-10 クエンチ発生時の電圧と導体温度上昇 - 234 - Tmax R=0.292Ω 6000 3 0 4 最高温度 (K) A-#3,C-#3 遮断器2 Current (A) A-#1,C-#1 A-#2,C-#2 1000V (R=0.146Ω) 2000V (R=0.292Ω) 3000V (R=0.438Ω) 4000V (R=0.584Ω) Temperature (K) 8000 (3) 電機子巻線の特性評価 表 2.3.3-14 に示す個別自主目標の内、電機子巻線の導体温度、コイル圧縮強度、コ イル電気特性については、「大容量化基盤技術の研究開発」にてモデル検証を実施済 みである。ここでは、巻線支持部の強度について、強度的に厳しい条件の「初期基本 設計」について解析評価する。 「初期基本設計」と「最終基本設計」について検討した結果を以下に示す。 a.電機子巻線の基本仕様 「最終基本設計」では、「大容量化基盤技術の研究開発」の成果を反映して、歯部 の強度余裕をスロット幅の拡大に振り向ける設計を適用した。表 2.3.3-14、図 2.3.3-11 には、電機子巻線に関連する仕様を示す。 表 2.3.3-14 電機子巻線基本仕様 発電機 定格 初期基本設計 最終基本設計 出力 667MVA 667MVA 端子電圧 25kV 27kV 電機子電流 15.404kA 14.262kA スロット数 42 42 細素線 0.8×2.7 mm 1.0×2.9 mm 素線 5.8×9.8 mm 6.5×10.4 mm 導体 36.5×91.6 mm 43.4×97.4 mm コイル(主絶縁含む) 49.1×104.1 mm 54.2×105.0 mm 電機子 巻線 冷却水管 コイル ウェッジ 主絶縁 主絶縁 ティース 104.1 素線 0. 2.7 コイル 0.8 細素線 導体 49.1 図 2.3.3-11 電機子巻線の構成(初期基本設計) - 235 - b.電機子巻線支持強度 「大容量化基盤技術の研究開発」にて実施した検証試験では、半径方向に作用する 電磁力が考慮されていないため、これを考慮した解析を行って、支持部の強度を評価 した。電機子巻線に作用する電磁力が最大になる端子突発短絡時の電機子巻線支持部 の強度評価を実施した。定格電流が大きく、また発電機次次過渡リアクタンスが小さ いために電磁力が大きな「初期基本設計」に対して解析を実施した。図 2.3.3-11 には、 端子三相突発短絡時の電磁力解析結果を、図 2.3.3-12 には、この電磁力を用いて解析 した支持部の発生応力解析結果を示す。支持部の最大応力は 232MPa であった。発生 部位が局所的であること、材料強度 300MPa 以下であることから強度上問題無いと評 価できる。 最大電磁力 を強度解析 に代入 [N/m3] 図 2.3.3-11 端子三相突発短絡時の電機子巻線電磁力分布 最大応力 232MPa 材料強度 300MPa (Pa) 図 2.3.3-12 電機子巻線歯部の応力解析結果 - 236 - (4) 多重円筒回転子の特性評価 「初期基本設計」に対する回転子強度は、「大容量化基盤技術の研究開発」にて解 析評価を実施済みである。ここでは、単層円筒ダンパを適用した「最終基本設計」に 対して、回転子強度を解析評価するとともに、特性が大きく変化する磁気遮蔽特性に ついても評価した。 a.多重円筒回転子の基本構成 「最終基本設計」では、常温ダンパの発生応力を低減する目的で、常温ダンパに単 層円筒形を適用した。これにより過渡時のリアクタンスを大きく設計できるため、常 温ダンパに作用する電磁圧縮力を低減できるとともに、ダンパスロットが無いために 応力集中部を排除できるという特徴がある。一方、常温ダンパに低抵抗部が無くなる ことで、常温ダンパを透過する磁束量が増大し、低温ダンパに作用する電磁圧縮力、 トルクが増大する。また、電機子側変動磁界による極低温部での発熱増加により熱負 荷が増加するため、これらの評価が必要である。 表 2.3.3-15 多重円筒回転子の構成 定格事項 初期基本設計 最終基本設計 出力 667MVA 667MVA 端子電圧 25kV 27kV 電機子電流 15.404kA 14.262kA 0.20 0.34 次次過渡リアクタンス 回転子 構成 寸法 回転子 材料 φ921 常温ダンパ p.u. 構成 かご形 外径 φ1100mm 低温ダンパ p.u. 単層円筒形 φ1110 mm φ921 φ926 外径 φ800 φ800 熱収縮量 17.2mm 18.6mm 常温ダンパ A286、銅 A286 低温ダンパ Al 合金 Al 合金 巻線取付軸/ベッセル A286 A286 巻線取付軸 φ800 560 φ1100 かご形 図 2.3.3-13 60 万 kW 級機の多重円筒回転子の構成(初期基本設計) b.磁気遮蔽特性 - 237 - 常温ダンパに単層円筒形を適用した場合、その材料は強度確保の点から A286 など 高抵抗材料に限られる。この場合、磁気遮蔽特性の低下が想定されるため、電磁界解 析により評価を行った。図 2.3.3-14 には、120Hz 変動磁界に対する磁界解析結果を、 図 2.3.3-15 には磁気遮蔽特性の解析結果を示す。単層円筒形とすることで、磁気遮蔽 特性は低下しており、常温ダンパの透過磁界増加による低温ダンパ作用電磁圧縮力と トルクの増加、電機子側変動磁界による極低温部での渦電流損失の増加が想定される。 電機子 界磁巻線 低 温 ダ ン常 温 ダ ン 図 2.3.3-14 磁界分布解析結果(初期基本設計、120Hz 変動磁界) 0.1 1 10 100 1 単層円筒型 磁気遮蔽効果(pu) 0.1 0.01 かご形 0.001 0.0001 すべり周波数[Hz] 図 2.3.3-15 磁気遮蔽特性解析結果 - 238 - 1000 c. 回転子強度 「大容量基盤技術の研究開発」にて、かご形常温ダンパを適用した「初期基本設計」 に対して回転子の強度評価を実施している。その結果、常温ダンパの強度は許容され ると判断されるものの、一部で耐力を超える結果となっている。この対応として、 「最 終基本設計」では、常温ダンパに単層円筒形を適用する。 検討を行った部位と検討条件を表 2.3.3-16 に示す。大容量化技術と同様、常温ダン パ、低温ダンパ、フレキシブルディスクに関しては、それらに作用する力(電磁圧縮 力とトルク)の合計が最大となる端子突発短絡条件にて強度を評価し、巻線取付軸に 関しては、作用する力の合計が最大となるフォーシング時にて強度を評価した。また、 低温ダンパに関しては、後述の通り変形時に内径側のベッセルと接触し、2次元でモ デル化が不可能なため、ベッセルもモデル化し3次元解析を実施した。 表 2.3.3-16 評価項目 部位 評価条件 常温ダンパ ・発電機端子での三相突発短絡 低温ダンパ 同 上 フレキシブルディスク 同 上 巻線取付軸 ・界磁電流最大時(フォーシング時) - 239 - 備考 2 次元解析 3 次元解析 2 次元解析 2 次元解析 (a) 常温ダンパ 「最終基本設計」では、単層円筒形常温ダンパの適用により、端子三相突発短絡時 に作用する電磁圧縮力が、かご形ダンパの場合の約 50%まで減少した。また、応力集 中部が無くなることで応力の低減を図った。図 2.3.3-16 に、過渡強度解析により求め た端子三相突発短絡時の電磁圧縮力による発生応力結果を示す。これに遠心力を考慮 して算出した最大応力は 626MPa であった。 A286 の耐力値 700Mpa 以下に低減でき、 強度上問題無いとの結果が得られた。 最大応力の推移 MAX 4.00E+08 MISES_最大値 3.50E+08 3.00E+08 応力(Pa) 2.50E+08 2.00E+08 1.50E+08 1.00E+08 5.00E+07 0.00E+00 0.0000 0.0050 0.0100 0.0150 0.0200 0.0250 時間(sec) 0.0300 0.0350 0.0400 0.0450 0.0500 (1) 常温ダンパのミーゼス応力の時間変化 MAX=341MPa 626MPa(遠心力考慮) 材料強度 700MPa (2) 常温ダンパの応力解析結果 図 2.3.3-16 突発短絡時の常温ダンパ強度の解析結果(電磁圧縮力分) - 240 - (b) 低温ダンパ 「最終基本設計」では、単層円筒形常温ダンパを適用したことで、常温ダンパの磁 気遮蔽特性が低下するため、低温ダンパへの透過磁界が増加する。このため、突発短 絡時に低温ダンパには渦電流が誘発され、低温ダンパに作用する電磁圧縮力が増加す る。3 次元電磁界解析により、端子三相突発短絡時に低温ダンパに作用する電磁圧縮 力を解析した結果、かご形常温ダンパの場合と比較して約 1.7 倍に増加した。60Hz、 120Hz の磁気遮蔽特性の低下割合と比較して、電磁圧縮力の増加割合が小さいのは、 電磁圧縮力が主に透過磁界の直流成分により発生しているためである。 この電磁力を用いて低温ダンパの応力解析を実施した。結果を図 2.3.3-17 に示す。 低温ダンパに電磁圧縮力が作用した場合は、内径側のベッセルと接触することで応力 を緩和している。従って、電磁力の増加比率と比較して応力の増加比率は低く、トル クによる応力を考慮した結果、最大応力は 291MPa となった。Al 合金材の 0.2%耐力 300MPa 以下であり、強度上問題無いと判断できる。 最大電磁圧縮力 5.1×108 N/m3 巻線取付軸 ベッセル 低温ダンパ (1)巻線取付軸 (2)電磁力解析結果 284MPa 291MPa 材料強度 300MPa (2) 外周面応力結果 (3) 内周面応力結果 図 2.3.3-17 低温ダンパの解析結果 - 241 - (c) 巻線取付軸 「最終基本設計」に対して、界磁電流が最大となるフォーシング時に界磁巻線に作 用する電磁力を 2 次元電磁界解析により求め、この力を用いて巻線取付軸の応力を解 析した。図 2.3.3-18 には磁束密度分布解析結果を、図 2.3.3-19 には巻線取付軸の応力 解析結果を示す。応力解析には、ベッセルの焼嵌め力を考慮した。最大応力はベッセ ルの内周で発生しており、535MPa であった。材料の耐力 700MPa 以下であり、強 度的に問題無いと判断できる。 最大電磁力位 最大磁界位置 電機子 巻線取り付け (1) 磁束密度分布 (2)電磁力分布 図 2.3.3-18 磁束密度分布と電磁力解析結果 535MPa 材料強度 700MPa 356MPa 図 2.3.3-19 巻線の応力解析結果 - 242 - (d) フレキシブルディスク 「最終基本設計」では、巻線取付軸長が増加するため、極低温部の熱収縮量が 18.6mm に増加する。この場合のフレキシブルディスクの応力を評価した。フレキシ ブルディスクには、トルク負荷、軸方向強制変位負荷、回転遠心力負荷が作用する。 これらに対して解析を実施し、端子三相突発短絡時の発生応力を求めた。図 2.3.3-20 には、フレキシブルディスクの発生応力解析結果を示す。これらの結果から、フレキ シブルディスクを 10 枚適用することで、最大応力は 824MPa と、材料の 0.2%耐力 830MPa 以下とできることを検証した。 「初期基本設計」の 30 枚と比較して、必要な フレキシブルディスクが減少したのは、「最終基本設計」では円筒形常温ダンパを適 用したために、過渡時のリアクタンスが増加し、結果として突発短絡時に回転子に作 用する電磁トルクが減少したためである。 突発短絡トルク及び、熱収縮量 20mm 級を許容するものと判断できる。 最大応力 367MPa 熱収縮量 拡大 a.回転遠心力負荷 最大応力 319MPa 最大ミーゼス応力(MPa) 1200 b.軸方向強制変位 最大応力 4384MPa 1100 0.2%耐力=830MPa 1000 0.2%耐力=830MPa 900 800 700 600 500 0 c.突発短絡時 (1)各場合毎の応力解析結果 図 2.3.3-20 5 10 15 20 25 30 35 フレキシブルディスク枚数(枚) 40 (2)フレキシブルディスク一枚当りの応力 フレキシブルディスクの発生応力の解析結果 - 243 - (5) ヘリウム冷却特性 a.冷却、昇温特性 回転子の初期冷却時の界磁巻線温度変化、昇温時の温度変化を検討した。 冷却時には、室温から 120K までは低温のヘリウムガスを供給して冷却し、引き続 き、送液モードに切り替えデュワーから液体ヘリウムを供給して 4.2K まで冷却する。 図 2.3.3-21 に 60 万kW 機回転子の初期冷却の予想曲線を試算した結果を示す。ガス ヘリウムの流量は 6g/s(120Nm3/Hr)、液体ヘリウムの供給速度は 150L/Hr として いる。室温から 4K に到達するまでのトータル所要時間は約 95 時間である。 昇温時には、液体ヘリウムの供給を停止して 50K までは自然昇温を行い、50K から 273K まではヘリウム冷凍機の初期冷却に用いた回路から加温用ヘリウムガスを 供給して強制的に昇温する。図 2.3.3-21 には上述の昇温を行ったときの昇温曲線を計 算により求めた。強制昇温中のヘリウムガスの流量は 6g/s(120Nm3/Hr)である。 昇温時間は約 80 時間である。 「初期基本設計」と「最終基本設計」で、冷却、昇温時間は同等である。初期冷却 時間は、7 万 kW 級モデル機の実績時間(約 70 時間)と比較して、約 25 時間増加す るものの、4日程度を満足し、実用上、問題無いレベルと判断する。 350 350 コイル平均温度 冷媒供給温度 300 300 250 250 ガスヘリウム 冷却 液体ヘリウム冷却 温度 (K) 温度 (K) ヘリウムガス流量:6g/s コイル平均温度 ヘリウムガス温度 流量 ガスヘリウム :6g/s 液体ヘリウム:150L/h 200 150 200 150 100 100 50 50 自然 昇温 0 0 20 40 60 80 100 120 時間 (h) 0 0 20 40 60 時間 (h) 60万KW級超電導発電機回転子の初期冷却曲線 60万KW級超電導発電機回転子の昇温曲線 図 2.3.3-21 冷却、昇温時間の検討(最終基本設計) - 244 - 自然 昇温 ヘリウムガス循環 80 100 b.液面とその制御 60 万 kW 機では、トルクチューブ径が増加することで、セルフポンプ効果によ り回転子内を 0.06MPa 前後に減圧できる。従って、界磁巻線は 4.3∼4.7K に冷却で きる。ここで、回転子内部のヘリウム回路の圧力損失低減、ヘリウム冷却系との組合 せを工夫することにより、ヘリウム槽の圧力を約 0.05MPa まで減圧が可能であれば 界磁巻線は 4.2∼4.4K に冷却できる。図 2.3.3-22 には、ヘリウム槽内の温度分布の評 価結果を示す。また、7万 kW 級モデル機の実証試験において巻線取付け軸のヘリウ ム回路内でサーモサイフォンによる均熱作用が働き、外周部はヘリウムの断熱圧縮に よる上昇温度より低くなることが確認できている。同様の作用が 60 万 kW 機回転子 でも働くようにできると界磁巻線は上述の温度よりさらに 0.1∼0.2K 低い温度に冷 却できることが見込まれる。 「初期基本設計」、 「最終基本設計」ともに、回転子の径方向寸法は同等であり、界 磁巻線位置のHe温度を 7 万 kW 級モデル機と同等の温度とすることが可能である。 界磁巻線位置の He 温度 5.0K 以下を満足する。 ヘリウム槽 巻線取付軸 常温ダンパ 低温ダンパ ベッセル ヘリウム液面 超電導界磁巻線 図 2.3.3-22 回転子内のヘリウム温度分布(最終基本設計) - 245 - c.熱負荷 単層円筒形常温ダンパでは、ダンパの磁気遮蔽特性が低下するため、電機子側の非 同期磁界が常温ダンパを透過して低温ダンパに鎖交し渦電流損が発生する。このため、 電機子巻線に規格で定められた逆相電流 6.9%(JEC2130-2000)が流れた場合は、 低温ダンパでの温度上昇によって低温ダンパ(熱シールド)からコイル取付軸への放 射熱が増加する。熱シールドの平均温度を 190K に仮定してコイル取付軸への放射熱 を計算すると約 46W の増加が見込まれる。 この他に、回転子内が 0.06MPa に減圧されることによるフラッシュロスの増加、 トルクチューブの厚肉化による室温端から極低温部への伝導熱の増加を考慮すると、 逆相電流が流れた場合の熱負荷は 139W と、かご形常温ダンパの場合に比べて約 1.5 倍に増加する。表 2.3.3-17 には、熱負荷の評価結果を示す。液化機としては 200L/Hr であり、200L/Hr 以下を満足する。なお単位の換算には、1W の熱負荷を蒸発潜熱の みで冷却するときの液体ヘリウム必要流量として、L/Hr=W×1.44 を用いた。 表 2.3.3-17 熱負荷の比較 (定格負荷運転時) 初期基本設計 最終基本設計 回転クライオスタット部(W) (伝導、輻射) 62 110 電流リード通電分(W) 10 10 HTC 部(W) 6 7 ヘリウムフラッシュロス(W) 12 12 90 139 合 計 (W) - 246 - (6) オプション設計 a.磁性巻線取付軸の採用 「高密度化基盤技術の研究開発」の成果を反映し、巻線取付軸に 13%Ni 鋼(磁性 材)を適用した設計を実施した。結果を「最終基本設計」と共に、表 3.3.3-18、 表 3.3.3-19 に示す。「最終基本設計 A」では界磁導体の電流密度を低減したため、出力密度が減 少したが、巻線取付軸に磁性材を適用することで出力密度の目標値を達成でき、更に、 磁気シールド長を 24%削減できる。 表 3.3.3-18 各基本設計一覧 項目\容量 最終基本設計 A 磁性巻線 軸設計A(13%Ni) 容量(MVA) 667 同左 電圧(kV) 27 26 電流(A) 14262 14811 Xd(pu) 0.6 同左 42 42 導体電流密度(A/cm ) 750 750 電機子電流密度(A/cm2) 140 140 電気装荷(A/cm) 2580 2640 主磁束密度(T) 0.88 0.94 固定子・電機子 スロット数 2 界磁巻線 界磁電流(A) 5700 同左 2 160 同左 2 77 77 回転子外径(mm) 1100 1100 固定子外径(mm) 4000 4100 磁気シールド長(mm) 3400 2600 磁気シールド外径(mm) 2460 2560 界磁巻線冷却 液体ヘリウム 液体ヘリウム 回転子表面冷却 水素 水素 電機子導体冷却 水 水 磁気シールド冷却 水素 効率 99.46 導体電流密度(A/mm ) 平均電流密度(A/mm ) 発電機体格 3 出力密度* MW/m 37(0.84PU) 3 *1PU は個別自主目標値 45 MW/m である。 - 247 - 99.46 45(1.02PU) b.ヘリウム冷却採用 従来の発電機システムでは、発電機内部の固定子表面及び、磁気シールドの冷却媒 体には水素ガスが使用されている。この水素ガスの代わりに界磁巻線冷却後のヘリウ ムガスを用いて、発電機内部を冷却することにより、水素ガスに関連する補機を発電 機システムから除くことが可能となる。「最終基本設計」結果と「ヘリウム冷却機設 計」結果を表 3.3.3-19 に示す。 表 3.3.3-19 各基本設計一覧 項目\容量 最終基本設計 B ヘリウム冷却B 容量(MVA) 667 同左 電圧(kV) 27 26 14262 14811 0.6 同左 42 同左 導体電流密度(A/cm ) 940 同左 電機子電流密度(A/cm2) 140 同左 電気装荷(A/cm) 2602 同左 主磁束密度(T) 0.84 同左 電流(A) Xd(pu) 固定子・電機子 スロット数 2 界磁巻線 界磁電流(A) 5700 同左 2 160 同左 2 77 同左 回転子外径(mm) 1120 同左 固定子外径(mm) 3900 4000 磁気シールド長(mm) 3300 同左 磁気シールド外径(mm) 2470 2560 導体電流密度(A/mm ) 平均電流密度(A/mm ) 発電機体格 界磁巻線冷却 液体ヘリウム 回転子表面冷却 水素 電機子導体冷却 ガスヘリウム 水 磁気シールド冷却 水素 ガスヘリウム 効率 99.46 99.46 38 36 出力密度 MW/m3 - 248 - (7) 開発成果のまとめ 「設計技術の研究開発」の成果を以下にまとめる。これより、基本計画目標、個別 自主目標ともに達成し、60 万kW 級機の設計技術を確立できたと判断する。 ①「初期基本設計」に関しては、「大容量化基盤技術の研究開発」にて界磁巻線、電 機子巻線、多重円筒回転子の特性評価を実施している。常温ダンパで設計裕度の小 さな設計であったが、他の特性は良好であることを検証した。 「設計技術の研究開発」では、発電機効率、出力密度、ヘリウムの冷却特性、熱 負荷、超電導巻線安定性、クエンチ時の挙動解析などの評価を実施した結果、突発 時の導体温度マージン、クエンチ時の温度上昇の裕度が小さいものの、超電導発電 機としての要求仕様を満足することを検証した。また、電機子支持部強度の評価を 実施した結果、裕度が小さいものの要求仕様を満足することを検証した。 ②「最終基本設計」に関しては、「大容量化基盤技術の研究開発」にて界磁巻線の特 性評価を実施し、良好な特性を検証した。 「設計技術の研究開発」にて、常温ダンパなどの回転子強度評価のほか、発電機 効率、出力密度、ヘリウムの冷却特性、熱負荷、超電導巻線安定性、クエンチ時の 挙動解析などの評価を実施した。突発時の導体温度マージン、クエンチ時の導体温 度上昇、クエンチ発生時の電圧が改善した。超電導線の導体電流密度を低減したこ とで出力密度が低下したが、これに対しては、巻線取付軸に磁性材(13%Ni 鋼) を適用することで目標を達成できることを検証した。また、単層円筒形の常温ダン パを適用することで発生応力を低減できることを検証した。以上から、「最終基本 設計」にて基本計画目標を達成できることを検証した。 さらに、固定子のヘリウム冷却を採用した設計も可能であり、水素関連補機削減、 保守性の向上、発電機システムとしてのコスト低減の目処を得た。 - 249 - 2.3.4 超電導発電機の導入シナリオ 超電導発電機を対象とした電力系統からの要求仕様・設計への反映事項と基本 計画目標を達成する高密度化 20 万 kW 級および大容量 60 万 kW 級超電導発電機を 設計することができた。 ここでは、電力系統に導入することにより系統特性を改善でき、低損失化によ る効率向上や Xd が小さいことによる電力系統特性の改善を期待できる超電導発電 機の導入シナリオについて検討する。 (1) 適用形態別要求性能 1)、2) 超電導発電機は電力系統に導入される形態として、ベース電源用、ミドル電源 用、ピーク電源用および調相機としての導入が考えられる。想定した各導入形態 別の特徴を表 2.3.4-1 に示す。 表 2.3.4-1 超電導機の適用形態別要求性能 ベース電源用 ミドル電源用 ピーク電源用 調相設備 適合設備 ・設置場所 (連系系統) ・石炭火力,原子力機 など大容量機 ・遠隔地(基幹系統) ・LNGなどのコンバイン ドサイクルなど中容量 機 ・都市周辺部(負荷供給 系統) ・ガスタービンなど小容 量機 ・都市近郊部(都市部供 給系統) ・同期調相機 ・重潮流・負荷地点変 電所,交直変換所 ユニット容量 /単機容量 100万kW以上 /60万kW以上 30~60万kW級 /20~30万kW級以下 20万kW級以下 /20万kW級以下 ±300MVA程度 運用上の特徴 ・高効率 ・燃料費が比較的安価 ・高効率(部分負荷効率 も高いこと) ・比較的負荷調整も容 易 ・頻繁な起動・停止 ・負荷調整が容易 ・応答性が良く,連続的 な電圧調整が可能 安定度 ◎ (限界送電電力の向上) ・過渡安定度大 ○ ー ◎ ・AQR能力大 ー ー ◎ ・進相運転範囲の拡大 ( 要 求 無効電力調整能力 ー 性 (電圧維持能力) 能 メ 逆相耐量(不平衡負荷, ◎ リ 再閉路運用) ・逆相耐量が大きい ッ ト ◎ ・逆相耐量が大きい ◎ ・逆相耐量が大きい ○ ・高調波吸収能力大 ) 起動・停止/DSS 適用の可能性 (経済性など) ー ○ ・効率の向上 ・単機容量の増大 ○ △ ー ○ ・部分負荷効率大 ・量産効果によるコスト低 減 △ ○ 運用する立場から見た超電導発電機のメリットは、下記が挙げられる。 Xd を小さくできることによる安定度向上により、限界送電電力が増加することに よる運用上、経済上のメリット 進相領域の運転を可能とすることによる AQR 能力の向上により、電圧維持能力 が向上し、超電導発電機を運転しておけば調相設備などの付帯設備削減による経 済上のメリット ダンパ強化による高調波吸収能力を活かした電力品質の向上による効果、逆相耐 量の増加による多相再閉路運用の適用など運用上のメリット −250− ただし、日本経済の低迷による電力需要の伸びの鈍化、分散電源や自然エネル ギー発電の増加により新規電源の開発を延期している状況では、老朽化した火力 (主にミドル電源)のリプレース時に経済性を含めた競争力が超電導発電機にあれ ば、超電導発電機の導入が予想される。 これらを考慮した適用形態別の超電導発電機のメリットは下記の通りとなる。 a. ベース電源 ベース電源は原子力や石炭などの安価な燃料を効率よく燃やし、一定負荷で連 続運転する。このため、大容量となり、設置点も需要地から遠方となり安定度も 厳しくなる。このベース電源を超電導化すると、以下の効果が期待される。 同期リアクタンスを現用機の 1/3∼1/5 と小さくできるため、過渡、定態安定度と も現用機の場合に比べ大きく改善できる。非撚架送電線の増大による常時逆相電 流は増大傾向となり、現用機では冷却の関係から逆相耐量面では厳しくなる。し かしながら、超電導機では、連続、短時間逆相耐量とも現用機を凌ぐ性能が期待 される。ベース電源として重要な高い効率が得られる。発電所立地難の対応とし て、単機容量の増大あるいはコンパクト化によるプラントとしてのスケールメリ ットと建設コスト低減も期待できる。 b. ミドル電源 ミドル電源は DSS 運転、部分負荷運転など運用の柔軟性が求められ、LNG など を燃料としたコンバインドサイクル発電が主流である。建設地点は比較的需要地 に近く、安定度面では問題とならない場合が多いため、低リアクタンス化せずに、 低コスト化を重視した超電導発電機の導入も考えられる。一方、都市部のケーブ ル系統の充電電流や軽負荷帯での余剰無効電力の吸収など系統電圧の適正維持の ために進相運転の可能性がある。このため、空隙電機子巻線とすることで、固定 子端部の温度上昇制約のない超電導機が適している。また、ケーブル系統近傍へ 適用し充電電流補償用のリアクトル削減も期待できる。また、DSS 運転では、貯 液状態での低速ターニングによる待機運転により、小型・軽量化によるターニン グ損失の低減も期待できる。逆相耐量面ではベース電源の場合と同様である。さ らに、老朽化火力のリプレースもあり、これを考慮すると量産化効果によるコス ト低減も期待できる。また、コンバインドサイクルでは、複数発電機で冷凍シス テムを共有し、建設コストを低減することも期待できる。 c. ピーク電源 ピーク電源は、一日の内に頻繁に起動・停止し、運転時間も限定されると特徴が ある。これにより、起動時間が短いものが適用されている。超電導機は待機時の 超電導維持のために冷凍システムは運転を継続する必要があり、現用機より冷凍 動力が追加となる。このため超電導機はあまり適さないと考えられる。 −251− d. 調相設備(同期調相機) 調相設備は、原則常時接続されており、昼間帯では無効電力の供給、夜間帯は 余剰無効電力を吸収する。これを超電導化すると低損失化および大容量化が期待 できる。また、超電導同期調相機を適用すると低リアクタンス化により無効電力 吸収能力や電圧安定性への寄与も現用機、静止型調相設備や無効電力補償装置よ りも改善される。さらに小型化により設置スペースの縮小も期待できる。 上述のように、超電導機はいろいろな使い方が可能と思われるが、適用形態に よって、適切な機器定数を設定する必要がある。これら定数の影響を定性的にま とめて表 2.3.4-2 に示す。 表 2.3.4-2 機器定数と影響の定性的検討 記号・名称 影響の概要 影響するポイント 機器体格 リアクタンス(が大きくなると): 建設コスト この項目ではXd,Xd',Xd'',Xd'''も 電圧変動率 対象となる時間領域が異なるだ 短絡電流 けで傾向は同じ 影響の方向 小さくなる 安くなる 大きくなる 小さくなる 安定度・電圧安定性 悪化する 励磁制御性能 悪化する 外乱時の内部電圧低下 あまり低下しない 次過渡時定数Td', Tq'' (が長くなると) 電力動揺 安定化の方向 次々過渡時定数Td''', Tq''' (が長くなると) 逆相・高調波耐量 大きくなる 界磁開路時定数Tdo' (が長くなると) 電機子時定数Ta(が長くなると) 故障電流直流分 大きく(減衰が遅く)なる (2) 超電導発電機の新規導入あるいはリプレース時のメリット 超電導発電機を電力系統に導入する場合、新規電源として導入する場合と老朽 化した発電機をリプレースする 2 つのケースが考えられる。一方、超電導発電機 は、表 2.3.4-3 に示すような構造的な特徴を有し、このような超電導発電機では 低損失化による効率向上、同一容量で比較した場合の小型・軽量化、製造限界の 拡大による大容量化、など機械としての基本性能などを改善するだけでなく、超 電導発電機の性能・特徴を活かして系統特性の改善(安定度向上、電圧安定性の向 上)、さらに進相運転範囲の拡大による調相容量の削減など系統導入による付加価 値を生むことが期待される。 −252− 表 2.3.4-3 回 転 子 固 定 子 超電導発電機と現用機との構造的な特徴比較 超電導発電機 現用発電機 種類 超電導線 常電導線 冷却媒体 液体ヘリウム(-269℃) 水素ガス(45~110℃) 材料 非磁性鋼 磁性鋼 構造 多重円筒真空断熱構造 単一軸構造 種類 常電導線 常電導線 構造 細線二重転位 平角銅線レーベル転位 冷却媒体 水 水 巻線方式 空隙巻線 鉄心スロット内巻線 磁気シールド 鉄心 界磁巻線 回転子軸 電気子巻線 電気子巻線外周 こうした超電導発電機の特徴を効果的に電力系統で生かす条件などを考察するた めに、新規電源としての導入およびリプレースという導入方法、また励磁制御を 低速応型あるいは超速応型とした場合に、どのような導入に対してより大きなメ リットをもたらすかを定性的に検討した結果を表 2.3.4-4 に示す。 表 2.3.4-4 超電導機を新規導入あるいはリプレース導入した場合のメリット 新規建設 現用機に対するメリット リプレース 低速応型 超速応型 低速応型 超速応型 高効率化(低損失),発電機効率0.5~1%向上 ◎ ◎ ◎ ◎ 小型・軽量化,重量・寸法ともに約50%減 ◎ ◎ ○a ○a 大容量化,単機容量の製造限界の拡大, 単機最大容量が約2倍に増加 ◎ ◎ △b △b 低Xd化による電圧安定性の向上 ◎c ○c ◎c ○c 低Xd化による安定度の向上 ○ ◎d ◎ ○d 進相無効電力容量の増大,調相容量の削減効果 ◎ ◎ ◎ ◎ [凡例] ◎:メリット大,○:メリット小,△:あまりメリットなし なお、表 2.3.4-4 中に記されている a∼d は次のような意味である。 添字 a は、発電機は小型化するが、冷凍設備の設置面積が別途必要となる。また、 設置面積のほとんどがボイラー、タービンで占めるため設置面積のメリットは小 さい。もちろん小型・軽量化による発電機単価の低下はメリットとなる。 −253− 添字 b は、ボイラーとタービンがリプレースされなければ、有効電力は増加でき ないため、大容量化はメリットとならない。 添字 c は、低 Xd 化による電圧安定性の向上は、励磁系が過励磁制限(OEL)にか かった後にそのメリットが発揮されるため、Xd が低いほど効果が大きい。 添字 d は、超速応型は低速応型に比べ、系統事故除去後に急激に発電機内部電圧 を上昇させることにより安定度は向上するが、シーリング電圧を大きくとる必要 がある。このためにより大容量の励磁用変圧器が必要となるためコストが若干高 くなる。 (3) 導入シナリオ検討のための評価軸 超電導発電機を現用機の代替として想定する場合の評価軸として、表 2.3.4-5 に示す経済性、運用性、安全性、発展性、保守性、環境調和性とした。 表 2.3.4-5 導入シナリオ検討のための評価軸 導入シナリオ検討のための評価軸 経済性 建設/運用コスト 運用性 操作性や使いやすさ【Xd小による電圧変動抑制・送電限界向上】 安全性 回転真空槽・クエンチ 発展性 増設等への対応の柔軟性 保守性 定期点検等の容易性 環境調和性 温暖化ガスの排出量 これをもとに導入形態別に現用機と大胆に比較する。前提として、ベース電源で は超速応型と低速応型を考慮する。安定度が問題となる遠隔地に設置する場合は、 超速応型を、それ以外は、低速応型の励磁制御が推奨される。 各導入形態別に、現用機を基準の 3 として 5 段階評価で大きいほど評価が高いと して超電導発電機を図 2.3.4-1 のように評価した。 ・経済性については 高効率化により発電機効率を 0.5∼1.0%向上することが可能となる。また、小 型・軽量化により発電機のコスト低減が期待できる。現用機の進相運転は、電機 子鉄心端部の加熱の問題から制限されているが、超電導発電機はこの制限がなく、 定格容量に等しい進相無効電力運転が可能であり、調相用リアクトルの削減効果 が見込める。ベース電源(超速応型)は、系統事故除去後に急激に発電機内部電 圧を上昇させることにより電力系統安定度が向上する。しかし大容量の励磁用変 圧器が必要となりコストが若干高くなる。ただし、事故直後に励磁系で消費され る電力エネルギーが安定度向上に多少効果がある。 −254− 超電導機(超速応型) 経済性 経済性 超電導機(低速応型) 5 超電導機 4 4 3 環境調和度 5 3 運用性 環境調和度 2 運用性 2 1 1 0 0 保守性 安全性 保守性 安全性 現用機 現用機 発展性 発展性 ベース電源 ミドル電源 経済性 5 超電導機 超電導機 4 経済性 5 4 3 環境調和度 運用性 2 環境調和度 3 運用性 2 1 1 0 0 保守性 安全性 保守性 安全性 現用機 現用機 発展性 発展性 ピーク電源 図 2.3.4-1 調相設備 導入形態別で見た超電導機と現用機の評価 ・運用性については 定格容量に等しい進相無効電力運転が可能となるため、高速かつ経済的な無効 電力の運用が可能となる。低 Xd 化による電圧安定性の向上は、励磁系が過励磁 制限(OEL)にかかった後にそのメリットが発揮されるが、Xd が低いほど効果が 大きい。発電機内部電圧を維持できるため静止形無効電力補償装置より系統電圧 の大幅低下時の無効電力供給能力が高い。また、ベース電源(超速応形)は、低 リアクタンス化と安定度向上が見込める。ピーク電源としては不向きである。 ・安全性については 超電導発電機は現用機にはない界磁巻線の超電導性保持のため回転子に真空部 分を持っており、また超電導機器特有のクエンチ現象がある。万一クエンチが発 生した場合には、急激に膨張するヘリウムガスを外部に逃すリリーフバルブによ り機器の安全性は確保される。また、従来の水素ガス冷却系をヘリウムガス冷却 系に変えると安全性を向上できる。 ・発展性については 現用機を超電導機へリプレースすると発電機が小型化する。冷凍設備の設置面 積が別途必要となるが、配置の工夫により設置が可能となる。リプレースはボイ ラーとタービンが同じであれば、有効電力は増加できないが、高効率化と小型・ 軽量化によるコスト削減効果はある。 ・保守性については、水素ガスをなくすことで現用機と同等の保守性をもつ。 ・環境調和性については、効率向上分により、燃料費の節減だけでなく CO2 排出 量の削減による地球環境面への貢献も期待されている。 −255− (4) 経済性 a. 製造コスト低減 超電導発電機製造コストは、現用発電機のように量産できる時点を想定し、フ ェーズⅠ技術を適用すると回転子部と固定子部を合わせた本体価格が 20 万 kW 機 で 1196.5[百万円]、60 万 kW 機で 1988[百万円]と想定していた。 ここからフェーズⅡの高密度化および大容量化基盤技術開発により、本体価格で 約 20%の製造コスト低減が見込める。さらに、回転子の高性能化につながる磁性 巻線取付軸を採用すると加工性も向上し回転子部の製造コスト低減が見込めるこ と、発電機内の冷媒を水素ガスからヘリウムガスへ変更すると水素ガスに関する 補機を削減でき付属機器を含めたコストの低減が見込める。 これらの技術開発の進展による超電導発電機の製造コスト低減の様子を表 2.3.46 と図 2.3.4-2 に示す。 なお、冷凍システムは、冷凍能力を 150[L/H]として設計した場合の製造コストが、 フェーズⅠ技術で 300[百万円]、精製・回収系の簡素化や配管の縮長によりフェ ーズⅡ技術で 280[百万円]と見込める。発電機が必要とする冷凍能力は 20 万 kW 機で 129[L/H]、60 万 kW 機で 241[L/H]であり、20 万および 60 万 kW 機の冷凍シス テムコストは冷凍能力の 0.7 乗に比例することから算出した。 表 2.3.4-6 超電導発電機の製造コスト見込み 発電機 発電機部分 種類 フェーズⅠ フ ェ ー ズ 磁 性 巻 線 固 定 子 の 技術適用 Ⅱ 技 術 適 取 付 軸 の He ガ ス 冷 用 採用 却 20万 本 kW 機 体 回転子部 0.65 0.50 0.44 0.50 固定子部 0.35 0.30 0.29 0.31 付 属 補機など 0.21 0.20 0.20 0.10 冷凍システム 0.21 0.21 0.21 0.21 1.43 1.21 1.13 1.12 合計 60万 本 kW 機 体 回転子部 0.67 0.55 0.46 0.55 固定子部 0.33 0.29 0.28 0.30 付 属 補機など 0.17 0.16 0.16 0.08 冷凍システム 0.21 0.20 0.20 0.20 1.38 1.19 1.09 1.13 合計 (注)フェーズⅠ技術適用の本体価格を基準とし、小数点3桁目を四捨五入した。 −256− 20万kW機 1.6 1.4 製造コスト [倍] 1.2 1 冷凍システム 補機など 固定子 回転子 0.8 0.6 0.4 0.2 0 フェーズⅠ 基本設計 13%Ni鋼 He冷却 60万kW 1.6 1.4 製造コスト [倍] 1.2 1 冷凍システム 補機など 固定子 回転子 0.8 0.6 0.4 0.2 0 フェーズⅠ 図 2.3.4-2 基本設計 13%Ni鋼 He冷却 フェーズⅠ技術を基準とした発電機製造コストの比較 b. 超電導発電機が 1 年間運転したときのコストメリット 超電導発電機は現用発電機より効率が高く、超電導線を冷却するための冷凍動 力を差し引いても省電力であり、運転によるコストメリットがある。 超電導発電機が 1 年間運転したときのコストメリットは、現用発電機からの効 率向上電力と冷凍動力の差を電力料金に換算した次式である。 −257− Cm=Am−Bm ただし、Cm;コストメリット/年、Am;効率向上分の電力料金/年 Bm; ;冷凍動力の電力料金/年 ここで、効率向上分の電力料金は、発電機の年間利用率などから次式である。 Am=Skw×ΔEf×Co×Or1×H ただし、Skw;発電機定格出力[kW]、ΔEf;効率向上分[%] Co;電力料金[円/kW]、Or1;発電機利用率[%] H;1 年間の時間(8760 時間) さらに、冷凍動力の電力料金は次式である。 Bm=Fkw×Co×Or2×H ただし、Fkw;冷凍システムの所要動力[kW] Or2;冷凍システムの利用率[%] 超電導発電機の設計で得られた超電導発電機の効率、運転に必要な冷凍動力と、 電力料金、発電機・冷凍システムの利用率を仮定することにより、超電導発電機 が 1 年間運転したときのコストメリットは表 2.3.4-7 のように算出できる。年間 のコストメリットは 20 万 kW 機で約 3 千万円あり、大容量の 60 万 kW 機になると 約 1.3 億円と多額のメリットを見込める。 表 2.3.4-7 検 討 条 件 超電導発電機の年間のコストメリット 20 万 kW 機 60 万 kW 機 発電機定格出力 Skw [kW] 200,000 600,000 発電機効率向上 ΔEf [%] 0.53 0.60 1060 3600 効率向上電力 電力料金 Skw×ΔEf [kW] Co[円/kW] 発電機利用率 5.9 Or1[%] 冷凍システム所要動力 冷凍システム利用率 1 年間のコストメリット 80 Fkw[kW] Or2;[%] Cm [円] 270 360 90 31,268,820 132,104,304 (注)発電機利用率はベース電源に超電導機が導入されると考え 80%と高い値と仮定し、電力料 金は平成 15 年 12 月 17 日電気事業連合会公表の利用率 80%、割引率 3%の石炭火力の値である。 (5) 運用性 超電導発電機を都市近郊の発電所に導入することを前提とした要求仕様をまと めたが、その性能や特徴によりいろいろな形態で適用できる可能性がある。ここ では、運用性の改善を日本の電力系統の特徴を有するモデル系統により示すとと −258− もに、今後の動向を踏まえ分散型電源として超電導発電機が低圧階級に導入され ることを想定し、そこでの付加価値について検討する。 a. 系統導入した場合の電圧安定性・過渡安定度の付加価値 現用機の代わりに初期基本設計の超電導発電機を系統に導入することにより、1 地点の負荷を増加した場合の送電可能な最大負荷が現用機より増加し、電圧安定 性が向上することを明らかとした。この一例として、図 2.3.1-1 のモデル系統の B 発電所を対象に、0.08 [pu/15 分]の大きさで負荷が増えた場合の電圧維持能力 の解析結果を図 2.3.4-3 に示す。また、同期リアクタンスをパラメータに選び、 これを変化させた場合の諸定数を想定して、現用機より過渡安定度が向上するこ とを明らかとした。この一例として、B 発電機を対象にその連系線の 1 回線 3LG(0.15 秒継続)-O 事故時の限界送電電力を図 2.3.4-4 に示す。 1 1.2 0.9 1 0.8 超電導発電機 0.7 0.8 0.5 0.6 現用機 負荷(pu) 電圧(pu) 0.6 超電導機は 大きな負荷 増加に耐え る 0.4 0.4 0.3 0.2 0.2 0.1 0 0 20 40 60 80 100 120 140 160 0 180 時間(分) 図 2.3.4-3 負荷増加時(0.08pu/分)の電圧低下 1200 BP/S(◇◇系)_重負荷 故障条件:3LG-O(0.15sec) 限界送電電力[MW] 1000 超電導機は 限界送電電 力が増加す る 800 超電導機 600 400 現用機(Xd=1.668[PU]) 200 0 0.2 0.3 0.3 0.4 0.4 0.5 0.5 0.6 0.6 同期リアクタンス Xd(pu) 図 2.3.4-4 同期リアクタンスを変化させた場合の限界送電電力 −259− b. わが国の基幹系統モデルによる導入効果の再評価 電気学会が作成した標準モデル系統の内、わが国の基幹系統の特徴を網羅した EAST10、EAST30 および WEST10、WEST30 系統により、限界事故除去時間 および大都市の負荷が増加した場合の電圧安定性に関して、超電導発電機を導入 した場合と現用機の場合を比較して解析した。標準モデル系統の例としてわが国 の 50Hz 系統の特徴を有する EAST30 機モデル系統を図 2.3.4-5 に示す。 図 2.3.4-6 に示すように、モデル系統で適切な地点の1発電機を超電導発電機 とした場合にはすべての発電機が現用発電機の場合より限界事故除去時間が延び、 電力系統が安定化される。末端にある大容量発電機を超電導とする場合に効果が 顕著である。とくに重要な限界事故除去時間の短い最過酷事故に対して、超電導 発電機の導入位置を適切に選定すると安定化を図ることができる。 また、電圧安定性については図 2.3.4-7 に示すように、大都市の負荷が一定の 割合で増加したと仮定し、モデル系統の1地点に超電導発電機を導入した場合と 現用機の場合とを比較した。これによれば、系統のほとんどの地点では超電導発 電機とした場合の方が電圧崩壊までの時間が延び、電圧安定性が向上する。系統 の中心に位置する発電機を超電導発電機とした場合にこの効果が大きい。 図 2.3.4-5 EAST30 モデル系統 −260− 0.25 現用機 SCG29 SCG10 SCG25 SCG4 限界故障継続時間 [sec] 0.20 0.15 0.10 0.05 0.00 0 A地点 1 C地点 3 D地点 4 E地点 5 6 限界事故除去時間(EAST30 ピーク断面) 13.0 図 2.3.4-6 B地点 2 1.15 現用機(Xd''=0.3060) 負荷有効電力 G10が現用機の場合の 負荷端の電圧 12.0 11.5 1.00 負荷の変化 11.0 0.95 G10が超電導発電機の場合の 負荷端の電圧 0.80 0 1000 2000 3000 4000 5000 10.0 0.85 10.5 0.90 負荷有効電力[pu] 1.05 負荷端電圧[pu] 12.5 超電導機(Xd''=0.3300) 1.10 6000 時間[秒] (EAST30 ピーク G10 を対象に負荷を 4%/15 分で増加) 図 2.3.4-7 電圧安定性の解析 c. 分散型電源が導入された系統への超電導発電機の導入効果 図 2.3.4-8 に示す分散型電源が導入された配電系統を対象に上位系統事故時の 電圧変動を解析して、超電導発電機の有効性を解析により示した。図 2.3.4-8 末 端のノードに置かれた G2、G3 が超電導発電機である場合と、従来から用いられて いる現用コジェネ機である場合を想定した。G1 は上位系統を表しており、ここか −261− らの連絡送電線で三相短絡故障(矢印)が発生したと仮定して、故障は瞬時復帰 するとした場合に変電所に設置された大形発電機 G4 の端子電圧がどのように変化 するかを解析している。結果を図 2.3.4-9 に示す。超電導発電機の場合(実線) には故障中の電圧ドロップ、故障除去後の変動ともに小さいことが分かる。 3 1 G1 10 12 14 9 11 13 5 6 7 G4 15 17 2 4 2GVA 11MVA 16 8 G2 625kVA G3 625kVA 図 2.3.4-8 電圧変動抑制効果検討に用いたモデル系統 1.4 1.2 VG4 [p.u.] 1 0.8 0.6 0.4 Cogenerator SCG 0.2 0 5 10 15 20 time[sec] 図 2.3.4-9 電圧変動抑制効果の例(上位系との連絡線 3LG-O で解列) さらに、図 2.3.4-10 に示すマイクログリッド系での超電導発電機の導入効果と して、電圧維持能力を解析により示した。図中で G3 の発電機近傍で断線が発生し てこれが脱落した場合について、図 2.3.4-11 に示すように系統中央部のノード 7 の電圧変化を調べた。ここでは図 2.3.4-8 とは異なりマイクログリッド系を想定 しているため、電源の容量が小さくなっている。G1 がコジェネレーション発電機 の場合では電圧が初期値に上がりきらず低いところで落ち着くが、超電導発電機 の場合では元の電圧に維持しようという働きをする。また、図には示さないが電 −262− 機子電流・有効電力出力についても、超電導発電機を導入した場合のほうが高い 出力を維持できる。この結果から、超電導発電機は単独配電系統において現用発 電機より電圧維持効果があることが判る。 また、東京大学既設のシミュレータを用いて、図 2.3.4-12 に示す回路を構成し、 高調波特性に関する測定を行った。超電導発電機の高調波耐量は界磁超電導性の 保持のために本質的に必要とする二重真空断熱構造を積極的に利用するものであ り、超電導発電機の基本的な構造が変わらないかぎり共通に具備されると考えら れる。高調波は関数発生器と電流アンプによって構成した高調波電流源から流し 込み、この電流を変化した場合に、超電導発電機へと流れ込んだ電流がどのよう に変化したかを調べた。その結果の一例を図 2.3.4-13 に示す。高調波電流は流入 点から電源側を見たインピーダンスと超電導機側を見たインピーダンスの逆比に よって分流するが、両者は流入量にかかわらず一定のため、結果には高調波次数 によらず明確な比例関係が見てとれる。ここで縦軸は基本波定格電流値 In によっ て規格化してある。現用機の高調波耐量は 0.08pu、超電導機の高調波耐量は 0.12pu であるので、現用機では 60mA 程度のアンプ出力まで耐えられるが、超電 導機では 80mA 程度まで耐えられることが分かる。つまり超電導機のほうが高調波 の多い電気的に劣悪な環境下でも運転可能であるといえる。 4 1 11 13 15 0.04921+j0.02405 0.04921+j0.02405 10 12 14 0.02996+j0.0255 0.02996+j0.0255 0.02996+j0.0255 0.05563+j0.02719 j0.09 5 CG or SCG 5000kVA 0.00386+j0.005 6 0.03373+j0.05619 7 2 8 9 0.03373+j0.05619 0.03373+j0.05619 0.04461+j0.07462 0.02996+j0.0255 0.04921+j0.02405 16 0.04921+j0.02405 j0.72 CG 625kVA 18 3 j0.72 17 CG 625kVA 図 2.3.4-10 マイクログリッド系統 1.2 1 V7[p.u.] 0.8 0.6 0.4 G1:CG 0.2 G1:SCG 0 0 10 20 30 40 50 time[sec] 図 2.3.4-11 マイクログリッド系における電圧維持能力の比較 −263− 上位系 180MVA 77kV母線 高 調 波 遠 電 方 流 負 荷 100MVA 高 調 波 近 電 傍 流 負 荷 分散電源 (分散電源=現用コージェネ機あるいは超電導機、近傍・遠方負荷=高調波電流源) 図 2.3.4-12 アナログシミュレータによる高調波吸収効果確認試験回路 5_Ig 0.18 0.16 超電導機 0.14 超電導機の高調波耐量 I2/In 0.12 0.1 現用機の高調波耐量 0.08 現用機 0.06 0.04 超電導機(2倍容量) 0.02 0 0 20 40 60 高調波電流[mA] 80 100 120 第 5 高調波 7_Ig 0.16 0.14 超電導機および現用機 (ほぼ重なっている) 0.12 超電導機の高調波耐量 I2/In 0.1 現用機の高調波耐量 0.08 0.06 超電導機(2倍容量) 0.04 0.02 0 0 20 40 60 高調波電流[mA] 80 100 120 第 7 高調波 図 2.3.4-13 超電導機と現用機に流れ込む高調波電流の大きさ (等価逆相電流換算値) −264− (6) 環境調和性 超電導発電機は現用発電機より効率が高いので発電電力量あたりの消費燃料が 少なくなり、これにより発電に伴う二酸化炭素排出量が現用発電機より削減でき る。つまり超電導発電機は現用発電機より環境調和性のある発電機である。 超電導発電機の導入量、年間稼働率、現用発電機に対する効率向上分を仮定す ると、表 2.3.4-8 のように1年間あたりの二酸化炭素排出削減量を試算できる。 二酸化炭素排出削減量は、超電導発電機の初期導入時に約1万[トン/年]、新規 や更新電源の 1/4 量に導入されて累積導入量が 1,450[万 kW]に達すると想定する 導入から10年後には約35万[トン/年]、新規や更新電源の半量に導入されて累 積導入量が 5,500[万 kW]に達すると想定する導入から20年後には約130万[ト ン/年]と見込める。 なお、試算に用いた二酸化炭素排出原単位は、超電導発電機が火力発電を対象 にすると考え、2001 年7月中央環境審議会地球環境部会「目標達成シナリオ小委 員会」中間とりまとめに使用された火力平均の需要端排出係数である。 表 2.3.4-8 二酸化炭素排出削減量(1年間あたり) 導入初期時 (2010 年以降) 導入から 10 導 入 か ら 2 0 年後 年後 超電導発電機導入 新規・更新 量 [万 kW] 累積 40 250 510 40 1450 5,500 年間稼働率 [%] 80 効率向上分 [%] 0.5 省電力量 [MWh] 二酸化炭素排出削減量 [トン] 14,016 508,080 1,927,200 9,671.04 350,575 1,329,768 年間稼働率;超電導発電機はベース電源に導入されると考え 80%を想定 省電力量;超電導発電機導入量(累積)×年間稼働率×効率向上分×年間時間 二酸化炭素排出削減量;省電力量×二酸化炭素排出原単位 二酸化炭素排出原単位;火力発電の平均で 0.69[トン-CO2/MWh] −265− (7)発電所に於ける保守性の向上 超電導発電機は系統に於いて顕著な安定化効果を示すことから、超電導発電機の 一般的な導入シナリオとしては発電機の効率向上以外は系統側に於ける導入効果 の検討に重点が置かれていた。しかしながら今日の超電導発電機の置かれた諸事情 を考慮すると、系統側だけでなく発電所に於ける導入メリットを見いだしこれを導 入促進の一方策とする必要がある。これを受けて火力発電所の立場に立って検討を 行った。 発電所側の導入効果としては、発電機効率向上による燃料費節減の効果、導入設 備のコスト削減効果、及び運転・保守の省力化による効果などが考えられるが、超 電導発電機を導入した場合、効率は増加するものの、発電機補機としてヘリウム冷 凍機が新たに増加するために初期設備コストは増加し、加えて運転・保守上に伴う 作業が増加する等のデメリットが発生する。 初期設備コストについては発電機の効率向上による燃料費低減によってこれを 補うこともできるが、運転保守作業の増加は、発電所において近年特に推進されて いる省力化と業務の簡略化の流れに逆行するものである。このため、運転保守面及 びこれに関連する初期設備コストに関するデメリットを克服することを目的とし た導入シナリオを検討した。 この結果、超電導発電機の冷却方式の変更により、性能を維持しつつ、発電機補 機の省略によって初期設備コストを削減し、且つ運転保守を従来機並とする設計が 可能であることを明らかにした。 a.超電導発電機を発電所に導入する場合の問題点 一般に事業用発電機には機内各部を冷却するために補機と呼ばれる周辺機器が 必要である。発電機の補機には、大きく分けてガスシステム、密封油システム及び 固定子冷却水システムの3種類がある。超電導発電機を導入する場合はこれらの補 機に加えてヘリウム冷凍システムが補機として必要となる。このヘリウム冷凍シス テムのために、初期導入コストは増加し(発電機本体コストの増加に加えて)発電 所に於ける運転保守の作業も増加する。 b.発電所のニーズの明確化 超電導発電機を導入する場合の問題点を明確化する一方で、発電所のニーズを明 らかにするために、実際の事業用発電機の運転保守を管轄する部門の意見を聴取し た。その結果、ニーズは以下のようにまとめられた。 ◎低コスト ◎高効率 ◎できるだけ少ない補機構成 ◎特に水素ガスFree 因に、水素ガスは空気と混ると爆発性を持つため、関連機器の取扱には細心の注 266 意が必要であり、運転保守の面ではできるだけ無い方がよい冷媒である。 これらの検討より、超電導発電機の導入に最も障害となるのは補機(ヘリウム冷 凍システム)の追加であることが分かったが、超電導線を使用する以上ヘリウム冷 凍システムは必須である。このため、ヘリウム冷凍システム以外の補機を省略削減 する可能性について、以下検討を行った。 c.発電機と必要な補機 ヘリウム冷凍システムを除いた3種類の発電機補機システムとその構成を表 2.3.4-9 に示す。 ガスシステムは発電機の機内冷却ガスに水素ガスを使用するために必要なもの で、配管、バルブステーションや各種ガスボンベ等が含まれる。密封油システムは 発電機内の水素ガスが軸受と軸の間からの漏洩を防止するためのもので、配管や密 封油装置等が含まれる。固定子冷却水装置は電機子巻線を冷却するための冷却水 (純水)を供給するためのもので、水配管や固定子冷却水装置等が含まれる。 表 2.3.4-9 ガスシステム (H2,CO2,N2) 密封油システム 固定子冷却水シ ステム 発電機補機とその構成(ヘリウム冷凍システム以外) 主な構成品 ①水素ガスボンベ ②炭酸ガスボンベ ③ボンベ室 ④バルブステーション ⑤H2,CO2,N2 配管システム ⑥窒素封入装置 ①密封油装置 ②密封油/軸冷水配管システム ①固定子冷却水装置 ②純水/軸冷水配管システム 備考 万一、水素ガスが漏洩した場合のために 緊急用窒素封入装置が設置されている。 密封油ポンプ停止はタービントリップ に至るために、AC、DCポンプ各1台 の他、タービン軸受油からの高圧油バッ クアップの冗長系を持つ。 DCポンプはバッテリー及び非常用ジ ーゼルの対象負荷。 密封油ポンプ停止はタービントリップ に至るために、ACポンプを複数台を備 える。 各補機は運転時又は定検時に於いてそれぞれに付随する運転・保守作業が必要で あり、その例を表 2.3.4-10 に示す。 表 2.3.4-10 補機と付随する運転・保守作業 運転時作業 ガスシステム (H2,CO2,N2) ①水素ガスボンベ 交換作業 ②水素ガス純度更 新操作 定検時作業(機器メンテナ ンスを除く) ①ガス置換操作(解放点検 時) H2→CO2→AIR AIR→CO2→H2 267 備考 H2 ガスを大気と混合 すると爆発性を持つた め、取扱に注意が必要 機内の点検には、必ず ガス置換操作が必要 密封油システム 特になし ①定検終了時オイルフラッ シング 固定子冷却水装 置 特になし フィルター交換 密封油システムが停止 すると(水素ガス漏洩 につながるので)ター ビントリップに至る 固定子冷却水ポンプ停 止でタービントリップ (タイマー)に至る d.補機削減可能な冷却方式の検討 ①プロジェクト基本計画対応超電導発電機の冷却方式 図 2.3.4-14 に、プロジェクトの基本計画に対応した超電導発電機の冷却方式と 補機構成の概略図を示す。この設計は、従来機の冷却方式を踏襲し超電導界磁巻線 のみ液体ヘリウムを利用したものである。 液体 He 冷媒;水+ヘリウム+水素 水 電機子巻線 液体ヘリウム 回転子巻線 水素 電機子鉄心、 回転子表面、他 発電機 水素 純水 密封油装置 図 2.3.4-14 圧縮機 他 コール ドボッ クス他 固定子冷却水 装置 ガスボン ベ室 バルブステー ション プロジェクト異本計画対応超電導発電機の冷却方式 ②水&ヘリウム冷却超電導発電機 上記①の冷却方式では鉄心や回転子表面の冷却には水素ガスが使用されている が、この代わりにヘリウムガスを冷媒としたもので、水素ガスシステム及び密封油 システムを削除することができる。 冷媒;水+ヘリウムガス+液体ヘリウム 水 電機子巻線 液体ヘリウム 回転子巻線 ガスヘリウム 電機子鉄心、 回転子表面、他 液体 He 発電機 圧縮機 他 ガス He 純水 密封油装置 (省略又は簡略化) 図 2.3.4-15 コール ドボッ クス他 固定子冷却水 装置 水&ヘリウム冷却超電導発電機とその補機構成 ③全ヘリウム冷却超電導発電機 上記②の冷却方式から、さらに電機子の冷却を水からヘリウムガスに変更したも ので、冷媒がヘリウムのみ(液体&ガス)となるので最小の補機構成とすることが できる。 268 冷媒;ヘリウムガス+液体ヘリウム 液体ヘリウム 回転子巻線 ガスヘリウム 電機子巻線 電機子鉄心、 回転子表面、他 液体 He 発電機 コール ドボッ クス他 圧縮機 他 ガス He 密封油装置 (省略又は簡略化) 図 2.3.4-16 全ヘリウム冷却超電導発電機とその補機構成 ④水&ヘリウム&空気冷却超電導発電機 上記②の冷却方式のヘリウムガスに換えて空気を使用したもので、補機構成は② と同様だが、ヘリウムガスの漏洩による消費を零にすることができる。 冷媒;水+空気+液体ヘリウム 水 電機子巻線 液体ヘリウム 回転子巻線 空気 電機子巻線 電機子鉄心、 回転子表面、他 図 2.3.4-17 液体 He 発電機 コール ドボッ クス他 圧縮機 他 純水 固定子冷却水 装置 水&ヘリウム&空気冷却超電導発電機とその補機構成 上記①∼④の各種冷却方式案について、実際に火力発電所に於いて発電機の運転 保守経験のある部門よりその意見を聴取した結果は次の通りとなった。 「③GasHe+LHe 冷却」>>「②水+LHe+GasHe 冷却」 >「④水+LHe+空気冷却」>>「①水+LHe+水素冷却」 ①のプロジェクト基本計画対応の冷却方式は最も補機が多くなるためやはり最 も順位が低くなった。 最も望ましい冷却方式は補機が最も少ない③の「全ヘリウム冷却」で、固定子冷 却水装置であっても無くせるものなら無くしたいとのことであった。また、②と④ の冷却方式については、超電導発電機にヘリウムが必須の冷媒である以上、特にこ れを空気にするメリットはないとのことであった。 e.超電導発電機の各種冷却方式による概略設計結果 今回検討した②∼④の各冷却方式を適用した 20 万 kW 級機の概略設計の結果を 表 2.3.4-11(a)に示す。また、参考として、60 万 kW 級機について冷却方式②を適 用した場合の概略設計結果を表 2.3.4-11(b)に合わせて示す。 この設計に於ける ポイントとなる水素ガスとヘリウムガスの冷却に関する物性値を表 2.3.4-12 に示 す。 269 表 2.3.4-11(a) 各種冷却方式による 20 万 kW 級超電導発電機の概略設計(H社設計) 20 万 kW 級機設計 参考 60 万 kW 級機設計 方式① 方式② 方式④ 方式① 方式② 発電機冷却方式 水&LHe&水素 水&LHe& 水&LHe&空気 水&LHe&水素 水&LHe& 冷却機 GasHe 冷却機 冷却機 冷却機 GasHe 冷却機 水 水 水 固定子巻線 水 水 冷媒 液体ヘリウム 液体ヘリウム 液体ヘリウム 回転子巻線 液体ヘリウム 液体ヘリウム 水素 ガスヘリウム 空気 その他/機内 水素 ガスヘリウム 発電機規約効率(%) 99.33% 99.29% 99.25% 99.46% 99.46% 固定子磁気シールド長(PU) 1.0 1 1.0 1.0 1 固定子磁気シールド外径(PU) 1.0 1.05 1.1 1.0 1.05 機内ガス圧(MPa gage) 0.2 0.2 0 0.2 0.2 水素ガス消費量(Nm3/day) 6 − − 6 − ヘリウムガス消費量(Nm3/day) − 6 − − 6 シールリング シールリング シールリング シールリング + ラビリンスパッ + 軸シール + + キン 真空処理式密封 真空処理式密封 軸受油 軸受油 油装置 油装置 注) 機内ヘリウムガスは冷凍機へ回収しない 表 2.3.4-11(b) 各種冷却方式による 20 万 kW 級超電導発電機の概略設計(M社設計) 方式① 発電機冷却方式 固定子巻線 冷媒 回転子巻線 水 その他/機内 発電機規約効率(%) 固定子磁気シールド長(PU) 固定子磁気シールド外径(PU) 機内ガス圧(Mpa gage) 水素ガス消費量(Nm3/day) ヘリウムガス消費量(Nm3/day) 軸シール 注) 水&LHe&水素 冷却機 20 万 kW 級機設計 方式② 方式③ 水&LHe& GasHe&LHe GasHe 冷却機 冷却機 水 ガスヘリウム 液体ヘリウム 液体ヘリウム 水素 ガスヘリウム 99.32% 99.28% 1.0 1 1.0 1 0.2 0.2 5 − − 5 シールリング + シールリング 真空処理式密封油 軸受油 装置 液体ヘリウム ガスヘリウム 99.24% 1.15 1.05 0.2 − 5 + シールリング 軸受油 + 機内ヘリウムガスは冷凍機へ回収しない 表 2.3.4-12 水素ガスとヘリウムガスの冷却に関する物性値 物性値 密度 kg/m3 比熱容量 J/(kg K) 熱伝導率 W/(m K) 水素ガス 0.1785 5193 0.152 ヘリウムガス 0.0899 14304 0.1815 ①プロジェクト基本計画対応設計の冷却方式 水素ガスは軽く伝熱効率がよいので、発電機の風損が小さく効率は高くなり、一 方で体格を最も小さくすることができる。 ②水&ヘリウム冷却 ヘリウムガスの密度は水素ガスの約2倍で、また冷却効率が水素ガスより低いた め、主に風損が増加して、発電機効率が僅かながら減少する。また、体格は若干増 加する。ヘリウムガスの漏洩を防止する軸シールには、軸受油を高圧にしてシール 270 部に流すことでガスの漏洩量を現用機の水素ガス消費量並みにできると想定され ている。尚、大容量化(60 万 kW 級機)すれば体格の若干の増加はあるものの効率 低下がほとんど無くなる。 ③全ヘリウム冷却 水素ガスよりも密度の高いヘリウムガスを固定子巻線の中に通すためにファン 圧力を増加させる必要があることからさらに風損が増加する。また、固定子巻線の 電流密度を低減させるために体格も増加する。 ④水&ヘリウム&空気冷却 機内を冷却する空気の密度は水素ガスよりも高く、冷却効率も水素ガスより低い ためファン圧力の増加など冷却を強化させる必要があることから風損が増加する。 また、固定子シールドコアの通風ダクトの増加などにより体格も増加する。機内ガ スが空気なので軸シール機構は不要である。 上記①の設計及び、②∼④の概略設計結果を踏まえた各方式の得失をまとめて表 2.3.4-13 に示す。 表 2.3.4-13 20 万 kW 級超電導発電機の各種冷却方式の得失 超電導発電機 各部の冷却媒 体 S コイル/R コイル/ 他 必要な補機 発電機効率 ガス消費 技術的難易度 発電所の評価 備考 ①プロジェクト基 本設計対応 水/液体ヘリウム /水素 ②水&ヘリウム冷 却 水/液体ヘリウム /ガスヘリウム × A ヘリウム冷凍シス テム B 固定子冷却水シス テム C 密封油システム D 水素ガスシステム ◎ 基準 ○ 水素ガス 数 Nm3/day ◎ 基準 ○ A ヘリウム冷凍シス テム B 固定子冷却水シス テム ◎ A ヘリウム冷凍システ ム ○ A ヘリウム冷凍シ ステム B 固定子冷却水シ ステム ○ -0.04% △ ヘリウムガス 数 Nm3/day ◎ 特になし △ -0.09% △ ヘリウムガス 数 Nm3/day △ ガス冷却電機子巻線 の開発 ◎ 補機数最小 冷媒はヘリウムのみ 水素ガス不要 ○ −0.08% ◎ 無し × 補機数最多 現プロジェクト標 準設計 ○ 水素ガス不要 ③全ヘリウム冷却 ガスヘリウム/液体 ヘリウム/ガスヘリ ウム ④水&ヘリウム& 空気冷却 水/液体ヘリウム /空気 ○ 冷却能力UP必要 △ 効率最小 水素ガス不要 ①プロジェクト基本計画対応設計の冷却方式 効率面は最も高い設計となるが、発電機補機数、初期設備コスト及び運転&保守 にかかる業務全ての面で最大となり、発電所の評価は最も低い。 271 ②水&ヘリウム冷却 補機はヘリウム冷凍機と固定子水冷却装置が残るが水素ガスは無くなるので、初 期設備コストと運転保守業務の負担は比較的小さい。但し、数 Nm3/day 程度のガ スヘリウム消費と僅かな効率低下が発生する他、発電機体格が若干増加するがこの 影響は小さい。また、大容量機ではほとんど効率低下の無い設計が期待できる。 ③全ヘリウム冷却 ヘリウム冷凍システム以外に一切外部補機を必要としないシンプルな構成とな り、初期設備コストは最低に運転保守の省力化が最も計れ、発電所の評価は最も高 い。簡素化を特に要求されるIPPなどや、発電機リプレースなどスペースが制限 されている場合には最適と考えられる。但し、ガスヘリウム消費量の増加、発電機 効率の低下、及び発電機体格の増加等のデメリットが発生する。また、電流密度の 高い電機子巻線のヘリウムガス冷却技術は現状では開発要素が多く実用機として の成立性の見通しが現時点では確立されていない。 ④水&ヘリウム&空気冷却 冷却方式②と同様に補機はヘリウム冷凍機と固定子巻線冷却水装置だけであり 初期設備コストと運転保守業務の負担は比較的小さい。 但し、ガスヘリウムに比 べて空気は冷却媒体としての性能が低いため、冷却方式②の場合に比べて発電機効 率の低下と、発電機体格の増加が大きくなる。 f.発電所に於ける導入シナリオに対応した超電導発電機の設計 発電機メーカーによる概略設計結果と発電所の意見を総合的に考慮した結果、現 時点に於いて最も導入に適しているのは②の水&ヘリウム冷却と判断される。 発電所の支持が最も高いのは③の全ヘリウム冷却であり、補機の省略に関しては 最も理想的であるが、電機子巻線のガス冷却に関して今後の技術開発が必要であり、 現状技術の段階では導入シナリオのメニューに加えるのは難しいと考えられる。 次に発電所に支持が高いのは②の水&ヘリウム冷却であり、固定子冷却水装置が 補機として残るものの慎重な扱いを必要とする水素ガスはなく、また技術的にも現 在の技術で問題なく対応可能であることから、現状において効率、補機構成、初期 コストおよび運転保守などの面で最も導入に適した設計であると考えられる。 ④の水&ヘリウム&空気冷却については、補機構成に関しては冷却方式②と同等 であるが発電機性能は②の水&ヘリウム冷却を下回っており、②の成立性に問題点 がない限り②と比べるとメリットは小さい。 ①のプロジェクト基本計画対応設計の冷却方式については、水素ガスが効率は最 高で体格も最小と発電機単体の性能としては最高でありプロジェクトの基本目標 としては最適であるが、水素ガスが必要で発電機補機最多のため発電所の支持が最 も低く、また初期設備コストも最高であり、導入促進のためのシナリオに適用する ことは難しいと考えられる。 272 (8) 電圧アンシラリー価値評価 3) 電気学会標準モデル系統のうち、EAST30 機モデル系統を使い、1地点の発電機 を現用機から超電導発電機とした場合の系統に対する電圧面での貢献度を既開発 の手法により求めた(図 2.3.4-18 参照)。これによれば、現用機から超電導機に置 き換えれば、発電機の無効電力供給能力が向上するため、電圧面での貢献度が大き くなる。この傾向は発電機容量が大きいほど顕著となる。 現状 (EAST30 機系統ピーク断面) EAST30PEAK系統モデル[SCG-G25] 0.35 指標1 指標2 合成指標値 0.30 0.25 指標値 指標が大き く改善 大容量機の 方が有効 0.20 0.15 0.10 0.05 0.00 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 発電機番号 G25 を超電導機とした場合 (EAST30 機系統ピーク断面) (注)指標値は発電機合計を1として、各発電機の貢献度を比較している 図 2.3.4-18 電圧面での系統に対する貢献度 なお、この手法を用いれば、系統構成、発電機、負荷が決まれば、各発電機の電 圧面での貢献度が客観的に求められ、現用機から超電導機に置き換える場合の効果 的な地点が明らかとなる。 273 (9) 超電導発電機の導入シナリオのまとめ 超電導機の導入について、フェーズⅠでの知見も加えて検討を加えた。その結果、 フェーズⅡ技術を元に超電導発電機を設計すると、現用機に対する効率向上による コストメリットと環境調和性向上に加え、電力系統の安定度や電圧変動抑制などの 運用性の向上と、電圧アンシラリー価値増加など付加価値も生まれる。 また、水素ガスに替えてヘリウムガスによる固定子側冷却が見込めるので、ヘリ ウム冷凍システムを加えても現用発電機並みの保守性の維持と水素ガス関連機器 の削減が見込める。 さらに、高密度化・大容量化技術開発や磁性巻線取付軸採用による初期コスト低 減を見込めるので、生涯コストは現用機と競争しうる範囲になる予想される。 以上より、フェーズⅡまでの技術開発により高密度化・大容量化した超電導発電 機をコスト低減して製造できる見通しが得られたので、電力需要の伸びの鈍化 や分散電源・自然エネルギー発電の増加により新規電源の建設が少なく、延期され る状況となっているが、電力系統の特性改善など付加価値を生むことができる地点 で新規電源やリプレースを検討する時点で、超電導発電機は十分に検討対象となり 電力系統に導入されるものと予想される。 参考文献 1)平成 7 年度研究成果報告書: 「超電導電力応用技術開発 トータルシステム分科 会編」、1996 年 3 月 2)谷口:「超電導発電機の導入評価と導入シナリオの調査」、電力中央研究所依頼 報告 T95523、 平成 8 年 5 月 3)永田、田中、山田、「アンシラリーサービスの価値評価手法の開発-電圧アンシ ラリーサービス価値の一評価手法の提案-」電力中央研究所研究報告 T02028, 平成15年4月 274 2.4 界磁巻線用超電導導体の回転場における安定性 タービン発電機において安定した運転を確保するには界磁巻線の安 定性は必須の条件であることは言うまでもない。超電導発電機では現用 機と異なり、発電による反作用トルクは直接界磁巻線に加わる。導体の 固定が不十分な場合、導体同士または導体と壁面との摩擦により発生す る熱は界磁巻線をクエンチさせるに充分な大きさとなる。そのため発電 時の高速回転中でも導体の動きが発生しないように、巻線取り付け軸上 に強固に固定する必要がある。同時に良好な冷却特性を得るための冷媒 通路の確保は欠くことが出来ず、開発開始当初より両者の整合をとった 設計法の確立が重要な課題の一つとして挙げられていた。 し か し 一 方 、高 速 回 転 は 導 体 安 定 性 向 上 の 要 因 と も な る 。運 転 時 の 回 転 数 は 最 高 3,600rpm に も 達 し 、 導 体 の 位 置 に も よ る が 遠 心 力 に よ り そ の 周 囲 に 約 5,000G の 強 い 重 力 場 が 形 成 さ れ る 。 そ こ で は わ ず か な 発 熱 によるわずかな冷媒の密度変化が強い自然対流の発生となって現れる。 即ち、超電導導体における常電導転移の芽が発生する熱は、強い自然対 流の発生を促して強い冷却効果を生む。結果として、直ちにその芽が摘 み取られて超電導状態に復帰することとなる。 ま た 、発 電 機 ロ ー タ 直 径 の 大 き さ と 回 転 数 の 高 さ は 、冷 媒 の 液 体 ヘ リ ウムを断熱圧縮して温度上昇を来すに充分なものがあり、界磁巻線の外 周部ではヘリウムは超臨界状態となる。この場合、飽和液体における密 度変化(液体−気体)ほど大きくないので、効果はその分だけ弱まる。 この安定度向上効果を定量的に把握して導体の安定性を評価することは 超電導発電機の開発上必須の過程であった。 以 上 の 状 況 を ふ ま え 、フ ェ ー ズ I に お い て 熱 伝 達 特 性 測 定 装 置 を 開 発 し て デ ー タ の 集 積 を 図 っ た 。し か し な が ら フ ェ ー ズ II で は 開 発 計 画 の 効 率化を図って、開発担当者は回転場における特性評価は実施せず、産業 技術総合研究所がその評価を担当することとした。 産 業 技 術 総 合 研 究 所 電 力 エ ネ ル ギ ー 部 門 超 電 導 応 用 グ ル ー プ は 、回 転 場における界磁巻線導体の安定性評価を可能にするため、必要な手法の 開発、装置の整備、基礎データの集積に努めた。最終段階において開発 導体の安定性試験を行い、その特性を明らかにした。 以下にその概要について述べる。 - 275 - 2.4.1 回 転 場 に お け る 冷 却 熱 伝 達 特 性 超 臨 界 ヘ リ ウ ム に よ る 冷 却 特 性 を 測 定 す る た め 、既 設 の 縦 軸 回 転 装 置 を改造して試料周辺の空間を囲う密閉容器を設けた。装置の大きさの制 限から、回転だけでは超臨界状態に達することができないため、外部か ら の 加 圧 す る 必 要 が あ っ た た め で あ る 。 図 2.4-1 に 装 置 概 念 図 を 示 す 。 この密閉容器にはロータ回転駆動軸が貫通しており、外部表面が液体ヘ リ ウ ム に 浸 漬 状 態 で 0.5MPaG の ヘ リ ウ ム を 蓄 え る こ と が で き る 。 ロ ー タ の 周 縁 部 は シ ー ル さ れ て い る が 、中 央 下 部 に 開 口 部 を 設 け ヘ リ ウ ム の 出 入 り は 自 由 で あ る 。こ れ に リ ン グ 形 状 の 供 試 超 電 導 導 体 を 納 め 、 超臨界ヘリウムで満たされた容器の中で回転させると、導体周囲のヘリ ウムは導体とともに回転して相対的に静止状態と見なすことができる。 即ち、発電機ロータ内の界磁巻線の冷却条件を再現できる。 冷 却 特 性 の 測 定 は 、導 体 と 同 じ 半 径 上 の 位 置 に 熱 流 束 測 定 素 子 を 設 置 Slip ring for data acquisition Collector rings for current supply Inverter controlled driving motor Driving shaft Power lead Ceramic bearing Rotor vessel Test sample 図 2.4-1 製 作 し た 導 体 評 価 装 置 . - 276 - 6 1,000rpm 5.3-5.5K 2 Heat Flux [W/cm ] 5 700rpm 5.5K 4 500rpm 5.53K 3 300rpm 5.51K 2 1 0 0 5 10 15 20 25 ∆T [K] 図 2.4-2 超 臨 界 ヘ リ ウ ム か ら 銅 板 へ の 熱 伝 達 特 性 (図中、赤丸と赤色実線は沸騰熱伝達特性−文献値−を示す) し て 行 っ た 。熱 流 束 測 定 素 子 と は 、磨 い た 銅 板 を FRP に 埋 め 込 み 、銅 板 の裏にはヒータを、そして銅板内に測温素子を設置したものである。ヒ ータに投入した熱と銅板の温度を測定することによって、銅板表面から 超臨界ヘリウムへの熱流束を測定できる。 し か し な が ら 、本 装 置 で は 回 転 が 高 く な る に つ れ て 軸 受 け シ ー ル 部 分 に発生する摩擦熱が密閉容器内に進入してヘリウムの温度が上昇する傾 向があり、これを防ぐために密閉容器の上部に熱交換用フィン付きチュ ーブを設けた。これにより一定の効果は見られたが、ヘリウム温度を自 由に制御可能とするには至らなかった。 図 2.4-2 に 測 定 結 果 の 1 例 を 示 す 。測 定 時 の 圧 力 は い ず れ も 0.3MPaG に維持したが、温度は回転数により変化した。ただし、それぞれの回転 条件下で強制クエンチ試験時の温度とほぼ一致し、試験結果の解析には これらの結果を用いることができる。 こ の 図 に お い て 、赤 丸 と 赤 実 線 で 示 し た の は 液 体 ヘ リ ウ ム の 沸 騰 熱 伝 達 特 性 で 、温 度 差 ∆T が 小 さ い 領 域 の も の は 核 沸 騰 領 域 で あ り 、も う 一 方 は膜沸騰領域の特性を示す。超臨界領域の熱流束は両者の中間にあり、 液体のような遷移特性を示さないことが特徴である。また、顕著な回転 - 277 - 30 数依存性のあることもわかる。発熱による温度上昇の結果引き起こされ た 密 度 変 化 が 自 然 対 流 を 発 生 さ せ る が 、回 転 数 が 高 い ほ ど 遠 心 力 が 強 く 、 発生する対流も強くなるためである。 2.4.2 導 体 特 性 測 定 結 果 以下に平成14年度開発導体(大容量機用)の試験結果を示す。ただ し試験装置の電流容量の制約から、試験には導体化加工前の素線を用い た。ちなみに諸元は下記の通りである。 項目 表 2.4-1 試 験 導 体 諸 元 ( 大 容 量 機 用 ) 特性 Cu/ CuNi /NbTi フィラメント径 x ツイスチピッチ Jc @ 5T @8.2T Ic @ 5T @8.2T 交流損失 本数 2.41 / 0.40 / 1 20.2µm x 2,574 本 22mm Jq = 2,960A/mm 2 1,156 A/mm 2 Iq = 2,453A 959A ヒステリシス損 失 16.3kW/m 3 結合損失 70.2 kW/m 3 全損失 86.5 kW/m 3 (1) 最 小 ク エ ン チ エ ネ ル ギ ー (MQE) 素線上に巻いたヒータにパルス電流を通電して強制クエンチ試験を 実施した。素線に常電導相が発生して伝播するために必要な最小熱エネ ル ギ ー( 最 小 ク エ ン チ エ ネ ル ギ ー:MQE)を 電 流 値 、回 転 数 な ど を パ ラ メータとして測定した。これは超電導線の安定性に関わる重要な指標の 一つである。 た だ し 、ヒ ー タ の 上 部 は 熱 的 に 絶 縁 を 施 し て あ る が 、 ヒ ー タ 入 力 の す べてが超電導線に伝わるとは限らない。産総研で行う試験では同じよう に製作するので結果の相互の比較は可能であるが、試験機関が異なれば 値自体を比較することは意味がない。 図 2.4-3 に 試 験 結 果 の 一 例 を 示 す 。 こ こ で 外 部 磁 界 は 4 T で あ る 。 回 転 数 500rpm の 場 合 と 1,000rpm の グ ラ フ は ほ ぼ 重 な り 、 冷 却 特 性 依 存 性 は 低 い こ と が わ か る 。ま た 、MQE が ゼ ロ と な る 電 流 値 を 外 挿 す る と 、 臨 界 電 流 Ic に ほ ぼ 等 し い こ と が わ か る 。な お 、既 に 述 べ た と お り 、試 験 実 施 時 に は ヘ リ ウ ム 温 度 が 上 昇 す る 。比 較 の た め 、NbTi の 臨 界 温 度 9.1K を 用 い て 通 電 電 流 を 臨 界 電 流 と の 関 係 に お い て 4.2K に 換 算 し て 示 し た 。 - 278 - (2) 常電導相伝播 強 制 ク エ ン チ 試 験 に お い て 、超 電 導 線 に 電 圧 タ ッ プ を 設 け 常 電 導 転 移 時に発生する電圧を観察することによって伝播の様相を知ることができ る 。 典 型 的 な 電 圧 発 生 パ タ ー ン を 図 2.4-4 に 示 す 。 電圧タップ間の長さはあらかじめ計ってあるので、常電導相の伝播の フロントがあるタップに到達してから次のタップに到達するまでの時間 を 測 定 す れ ば 伝 播 速 度 が 計 算 で き る 。 図 2.4.-5 に MQE と 同 様 に 通 電 電 流 と 回 転 数 を パ ラ メ ー タ に し て 示 す 。 こ こ で 、 通 電 電 流 と し て 4.2K へ の換算値を用いたのも同様である。 こ れ ま で に 蓄 積 し た デ ー タ を 元 に 定 性 的 に 表 現 す る と 、伝 播 速 度 の 回 転数依存性は低く、絶対値は大きい。これらのパターンは典型的な三層 構造線の特性を示している。しかし、三層構造線の場合によく見られる 伝播の進展に伴う超電導線の顕著な温度上昇を伴わないことが常電導抵 抗値の変化から推計できる。この意味は、フィラメント相互の結合が適 切に抑制されて交流損失を低下させている一方、外部に配置された銅は 常電導転移時の導体温度上昇を抑えて万一の焼損を避けると同時に、故 障除去時には直ちに超電導復帰可能であることを意味する。発生した熱 は伝導により長手方向に拡散するとともに、半径方向に伝わって表面か らヘリウムに急速に伝達された。導体温度上昇は強い回転数依存性を示 した。 開 発 導 体 は 目 標 に 設 定 さ れ た 臨 界 電 流 、交 流 損 失 を は じ め と す る 諸 元 を満足するとともに、回転場における良好な熱伝達特性を有効に活用し た安定な導体であることが評価できる。 図 2.4-4 常 電 導 相 伝 播 の パ タ ー ン - 279 - 50 45 40 Vp [m/s] 35 30 25 20 0 rpm 500 rpm 1000 rpm 15 10 5 0 0 500 1000 1500 換算電流 [A] 図 2.4-5 常 電 導 相 伝 播 速 度 2000 2500 2.4.3 ま と め 発 電 機 用 に 開 発 し た 導 体 の 安 定 性 を 、高 速 回 転 場 且 つ 超 臨 界 ヘ リ ウ ム 冷却条件で評価するために必要な手法の開発、装置の整備、基礎データ の開発を図った。まず大容量発電機用に開発された導体の試験を実施し て、その設計の妥当性を検証した。本年度終了前に高密度発電機用導体 の試験を実施する予定である。 - 280 - Ⅳ編 実用化、事業化の見通し 1. 実 用 化 、 事 業 化 の 見 通 し 1.1 成果の利用イメージ 日 本 の 電 力 系 統 は 、 約 100 年 間 で そ の 時 々 の 産 業 の 発 展 と と も に 拡 充 さ れ そ の 技 術 体 系 は 成 熟 し て き た 。近 年 30 年 間 の 高 度 経 済 成 長 に 伴 う エ ネルギー需要の急増に対して、発電機としては最新技術採用による大容 量化、タービン温度上昇技術、コンバインド発電技術等での効率向上と ともに高度情報化技術を駆使し効率運用を図ってきた。 今後のエネルギー利用確保を考えると熱効率の改善のみならず発電機 単体の変換効率を更に向上していく必要がある。 更に社会の高度情報化により電気の品質に対する要求は大変厳しくな ってきている。停電等が発生したときの影響は近年の諸外国の停電事例 からも明らかである。 国内の電力需要は最近伸び悩んでおり、ここ数年程度は発電機の新増 設は少ないと考えられる。しかし平成15年度の電力供給計画によると 需 要 は 年 率 1.2% 程 度 の 増 加 が 想 定 さ れ て お り 新 規 電 源 の 必 要 性 な ら び に高効率機器への取り替え需要はいずれ出てくると想定される。従って 発電機の取り替え需要や今後の需要増加に伴う電源導入に際して、効率 が高く、発電効率の高い超電導機器の利用が環境面から有利である。 更に分散電源増加により、電圧安定性、系統安定度の低下が懸念され るがその対策として超電導発電機は大変有利な解決策となる。 今回の研究開発により、超電導発電機の基本設計技術を確立した。ま た、開発成果としてコスト低減と低ランニングコストおよび系統面から 有利な性能が見込めるので現有機との比較でも優位になる可能性があり、 今 回 の 成 果 を も と に 図 1.1-1 に 示 す よ う に パ イ ロ ッ ト 機 で の 実 証 試 験 を 経たうえで実用段階に入ると考えている。 更 に 、 今 回 開 発 時 に 得 ら れ た 13%Ni 項 の 巻 線 取 付 軸 へ の 適 用 、 冷 却 系 における水素冷却の省略の知見を活用することによりより経済面、運用 面からメリットを得られると考えられる。 - 281 - 実 用 化 度 (完 成 度 ・経 済 性 ・信 頼性 ) 実 用 レベル 1000 MW パイロット機 200 ~ 300 MW 600 MW 高密度化 本研究開発 大容量化 70 MW 級 モデル機 (フェーズ1) 100 kW 級 機 技 術 レベル 図 1.1-1 今後の見通し ま た 、 CO2 発 生 量 で 圧 倒 的 に 有 利 な 原 子 力 発 電 所 は ベ ー ス 的 に 運 用 さ れており、効率の高い超電導発電機は大変有利となり、期待される。+ 今回プロジェクトでの開発技術は、下記の応用が考えられる。 ・超電導導体 ニオブチタンを使用した低温超電導発電機導体として仕様に応じた線 材設計が可能となった。 ・発電機関係 界磁巻線技術以外の設計、製造技術は今後開発予定の高温超電導回転 機等への応用が可能である。 更 に 界 磁 巻 線 取 付 軸 へ の 13%Ni 鋼 採 用 に つ い て は 高 温 超 電 導 回 転 機 で も高密度化が期待でき小型化が図れる・ ・ヘリウム冷凍機 100l/h( 20 万 kW 級 発 電 機 )∼ 200l/h(60 万 kW 級 発 電 機 )と 幅 広 い 超 電 導発電機への適用が可能である。 また、今回開発したヘリウム冷凍機は、中間負荷での効率低下が少な いので発電機のみならず他機器への応用が期待でき装置として高効率化 が図れる。 更に超電導関係機器開発による市場規模の増加を考えれば更にコスト - 282 - ダウンと高信頼度化が期待である。 1.2 関 連 分 野 へ の 波 及 効 果 超電導線材、超電導発電機、ヘリウム冷凍機関係の3方面での活用が 期待できる。 (1) 超電導線材 ニオブチタンを使用した低温超電導発電機導体として仕様に応じた 線材設計が可能となった。 また低交流損失、高臨界電流密度、もしくは大容量が要求される 機 器 ( SMES、 限 流 器 、 加 速 器 、 磁 気 浮 上 列 車 等 ) 他 の 低 温 超 電 導 機器用の金属系超電導線材に線材構成、時効回数、時効温度等の設 計、製作のノウハウが活用できる。 具 体 的 な 波 及 効 果 例 は 表 1.2-1 の と お り で あ る 。 表 1.2-1 超電導導体技術の波及効果例 時効熱処理回数の低減と熱処理間隔の最適化 応 用 例 : 各 種 高 性 能 NbTi 超 電 導 線 材 の 低 コ ス ト 化 ( NMR、 核 融 合 、 加 速器、磁気浮上列車等) NbTi 線 材 の 大 径 化 応用例:各種超電導磁石の巻数低減、超電導パワーリードの撚線数低 減 交流損失設計技術の高精度化 応 用 例: SMES 等 の 線 材 の 開 発 効 率 化 、磁 気 浮 上 列 車 等 の 線 材 の 量 低 減 (軽量化) さらに撚線導体製造技術については非超電導の平角撚線導体の実用化 にも活用できる。 (2) 超電導発電機 高温超電導回転機への設計ノウハウが活用できるとともに、シミュレ ーション技術等は現用機設計に活用できる。 また、金属系超電導線材の巻線設計、製造技術は他の超電導機器(回 転 機 、 SMES、 限 流 器 等 ) に 活 用 で き る 。 当該分野への波及効果、当該分野の研究開発促進効果 ・現用発電機の大容量化、高効率化が可能 - 283 - 超電導発電機ステータ技術の現用発電機への適用により、渦電流等の漂 遊損を低減したステータへ提供が可能 具 体 的 な 波 及 効 果 例 は 表 1.2-2 の と お り で あ る 。 表 1.2-2 超電導発電機技術の応波及効果例 くら型界磁巻線製作技術 加 速 器 の 生 成 粒 子 検 出 器 用 の 超 電 導 マ グ ネ ッ ト *1 の 製 作 へ の 応 用 13%Ni鋼の超電導機器への適用 応 用 例:1 3 % N i 鋼 は 極 低 温 で の 適 用 が 可 能 で あ り 、強 磁 性 材 ・ 高強度材の特徴を利用し現行技術に対して 2 割程度の超電導機器 のコンパクト化、高エネルギー密度化が可能 FEMによる電磁場シミュレーション技術 応用例:回転機、交流機器の電磁場シミュレーションへ応用し、 より精度の高い機械の研究・開発や設計製作が可能 高効率発電機への設計技術の適用 応用例:超電導発電機の設計技術を現用発電機に適用することに より高効率化・高密度化が可能 ステンレス製ティース構造の高磁場機器への適用 応用例:高磁場が要求される機器にて、低損失・高支持強度とな るステンレスティース構造の適用が可能 (3) ヘ リ ウ ム 冷 凍 機 関 係 冷凍負荷が変化しても高効率が維持できる冷凍機であり、低温超 電導機器で使用できる。また、高温超電導用冷凍機に開発技術を転 用することで広範囲な冷凍能力を持った機器を製作できる。 ・高 効 率 / 高 運 転 範 囲 / 高 信 頼 性 を 要 求 さ れ る 超 電 導 発 電 機 以 外( SMES、 核融合、超電導送電、超電導変圧器、加速器、等)の中型∼大型超電 導機器用ヘリウム冷凍機への適用が可能。 関 連 分 野 へ の 波 及 効 果 と し て 80K 圧 縮 機 駆 動 膨 張 タ ー ビ ン は 、 膨 張 タ ービンを高温ガス下で作動させる圧縮機駆動用発電膨張タービンへの応 用が期待できる。 - 284 - 具 体 的 な 波 及 効 果 例 は 表 1.2-3 の と お り で あ る 。 表 1.2-3 冷凍機技術の波及効果例 80K 圧縮機駆動用発電膨張タービン 応用例:膨張タービンを高温ガス下で作動させる圧縮機駆動用発 電膨張タービンへ応用 MATLAB に よ る シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 応用例:冷凍機のシミュレーションへ応用 高負荷軸受の設計技術 応用例:実際のタービン軸受への適応 キャンド式ヘリウム圧縮機 応用例:キャンド式圧縮機の開発・実用化 常温不純ガス除去システム 応 用 例: ヘ リ ウ ム 圧 縮 機 用 オ イ ル セ パ レ ー タ の 高 性 能 化・ 実 用 化 、 ヘ リ ウ ム 圧 縮 機 用 セ パ レ ー タ (吸 着 槽 )の 再 生 方 法 改 良 、 ヘ リ ウ ム 圧 縮 機 用 セ パ レ ー タ (吸 着 槽 )設 計 手 法 の 確 立 水分を非常に吸湿する現行油(UCON)から吸湿せずかつ不純 ガスを放出しにくい合成潤滑油(研究開発にて新規採用)を採用 107 セ ッ ト の 出 荷 ( 内 ; 32 セ ッ ト が 新 合 成 油 に 切 り 替 え ・ 30 セ ッ トははじめから新合成油で出荷) 高温側コールドボックス 応用例:吸着式冷凍機の高性能化,運転方法の改良、不純ガス計 測技術の確立・応用 低温側コールドボックス 応用例:高真空生成技術の確立 膨張タービン 応用例:高膨張比タービン翼設計技術、変位計測定技術の確立 (4)導 入 シ ナ リ オ 等 超電導発電機の導入地点における要求仕様、電力系統特性改善効果など の付加価値の高い地点の選定、効果等の検討に活用できる。 - 285 - 平成12年度 国内特許;1件 出願済;1件 件名 超電導回転電機の固定子 取得者 三菱電機 特許No. 特願平12-144198号 取得年月日 H12.5.17 掲載者 三菱電機 三菱電機 前川製作所 石川島播磨重工 業・前川製作所 電力中央研究所 刊行物名 電気学会論文誌B 低温工学 低温工学 掲載日 H12.6 H13.3 H13.3 低温工学 電気学会論文誌B H13.3 H12.11 Super-GM 日立製作所 Super-GM 関西電力 CIGRE Session2000 低温工学、Vol36、No.3 低温工学 低温工学 H12.8 H13.3 H13.3 H13.3 登録;0件 実施;0件 外国特許;0件 論文;19件 査読付き;9件 件名 70MW級超電導発電機の界磁巻線の熱的安定性の検討 高電流密度型低速応70MW級超電導発電機の開発 高信頼度冷凍システムの開発 -従来型冷凍システムの開発高信頼度冷凍システムの開発 -改良型冷凍システムの開発低速応型超電導発電機の等価回路モデリング RECENT DEVELOPMENT PROGRESS OF 70MW CLASS SUPERCONDUCTING GENERATOR 高安定型低速応超電導発電機の開発 -70MW級超電導発電機Super-GMにおける超電導発電機開発の概要 -超電導電力応用技術70MW級超電導発電機の系統連係試験 その他;10件 件名 掲載者 超電導発電機フレキシブルディスクの多軸疲労強度 平均応力のある場合の多 軸疲労強度の推定法 三菱電機 超速応型超電導発電機の等価回路モデリング 超電導発電機の現状と今後の展開 70MW級超電導発電機の界磁巻線の熱的安定性の検討 超電導発電機の展望 刊行物名 掲載日 日本材料学会第25回疲労 シンポジウム講演会 H12.11.21 電気学会超電導応用電力機 電力中央研究所 器・回転機合同研究会 H12.6 電力中央研究所 電気学会東海支部専門講習会 H12.11 三菱電機 春期低温工学・超電導学 H12.5 Super-GM 超電導応用研究会 H12.11 超電導電力応用技術(超電導発電機)の実用化を目指して Recent Activities of Superconducting Power Application inJapan 70MW級超電導発電機の実証試験 7万kW級超速応型超電導発電機の系統連係試験 ヘリウム膨張タービン 実用新案;0件 Super-GM OHM H12.11 電力中央研究所 韓国超電導応用低温工学 H13.2 Super-GM 火力原子力発電 H13.2 電気学会超電導応用電力機 Super-GM 器・回転機合同研究会 H12.6 前川製作所 ターボ機械 H12.9 平成13年度 国内特許;5件 出願済;5件 件名 超電導回転電機の電機子巻線 超電導発電機の電機子ティース 超電導発電機 超電導発電機の巻線取付軸及びその製造方法 超電導回転電機の回転子 取得者 日立製作所 日立製作所 日立製作所 日立製作所 三菱電機 特許No. 出願番号01-230025 出願番号01-230026 出願番号01-277773 出願番号02-018222 出願2001-241053 取得年月日 H13.7.30 H13.7.30 H13.9.13 H14.1.28 H13.8 掲載者 刊行物名 掲載日 日立製作所 Cryogenics, Vol. 42 H14.3 三菱電機 前川製作所 石川島播磨重工 業・前川製作所 Super-GM 関西電力 日本材料学会誌 Cryogenics H13.12 H14.3 Cryogenics Cryogenics, Vol. 42 電気学会論文誌B H14.3 H13.4 H13.10 三菱電機 電力中央研究所 Cryogenics 電気学会論文誌B H14.3 H13.10 掲載者 日立製作所 日立製作所 刊行物名 電気学会回転機研究会 電気学会全国大会 掲載日 H13.10 H14.3 登録;0件 実施;0件 外国特許;0件 論文;25件 査読付き;8件 件名 Development of superconducting generator having highly stabilized superconducting field winding –– 70Mwclass superconducting 超電導発電機フレキシブルディスクの多軸疲労強度 -平均応力のある場合の多 軸疲労強度推定法Development of a highly reliable helium refrigeration sysytem conventional type Development of a high reliable helium refrigeration system – R&D of a highly reliable helium refrigeration system (oil-free type) R&D project on superconductor power application technologies 7万kW級超電導発電機の電力系統における同期調相機運転試験 Reserch and development of slow response type 70MW class superconducting generator with high current density superconductor 超速応型超電導発電機の等価回路モデリング その他;17件 件名 高密度型超電導発電機の設計検討 高密度型超電導発電機の設計検討 超電導発電機用Nb-Ti超電導素線・導体の開発 高密度・大容量超電導発電機の開発 超電導応用機器の構造と材料、超電導発電機、超電導限流器 超電導発電機用導体の大容量化 超電導発電機用Nb-Ti超電導素線・導体の開発 日立電線 三菱電機 三菱電機 古河電工 日立電線 超電導発電機による電圧維持・調整効果の検討 都市近郊発電所への超電導発電機導入 – 短絡容量・安定度面の検討 超電導発電機に必要な励磁系頂上電圧の検討 身をもって感じとれる超電導に向けて 高密度及び大容量超電導発電機 基盤技術開発について 超電導回転機の各種用途への適用可能性に関する調査研究 超電導発電機の開発 超電導発電機プロジェクトの進捗状況 超電導発電機のリプレース対応検討 10MW級小型超電導発電機の設計検討 電力中央研究所 電力中央研究所 電力中央研究所 Super-GM Super-GM Super-GM Super-GM Super-GM Super-GM 東海大学 実用新案;0件 電気学会全国大会 電気学会全国大会 電気評論 電気学会全国大会 電気学会全国大会 電気学会電力技術・電力系 統技術合同研究会 同上 電気学会全国大会 低温工学 秋期低温工学・超電導学 秋期低温工学・超電導学 超伝導科学技術研究会 電気学会全国大会 電気学会全国大会 電気学会全国大会 H14.3 H14.3 H13.11 H14.3 H14.3 H13.10 H13.10 H14.3 H13.4 H13.11 H13.11 H14.1 H14.3 H14.3 H14.3 平成14年度 国内特許;0件 出願済;0件 登録;0件 実施;0件 外国特許;0件 論文;10件 査読付き;1件 件名 A New Project for Superconducting Generator (SCG) 掲載者 Super-GM 刊行物名 IEEE/ASC’02(Houston, USA) 掲載日 H14.8 その他;9件 件名 超電導発電機に対する電力系統からの要求仕様 超電導発電機による分散電源を含む配電系統の電圧変動抑制の基礎的検討 超電導発電機基盤技術研究開発 -要素技術開発― 10MW級小型超電導発電機の設計検討 掲載者 電力中央研究所 東京大学 Super-GM 東海大学 掲載日 H14.8 H14.8 H14.8 H14.10 10MW級小型超電導発電機の設計検討 超電導発電機基盤技術開発の現状 高調波電流流入時に超電導発電機のダンパ円筒に流れる渦電流 アナログ型シミュレーターを用いた高調波電流特性試験 A New Project for Superconducting Generator(SCG) 東海大学 Super-GM 東京大学 東京大学 Super-GM 刊行物名 電気学会電力・エネルギー部門大 同上 電気学会産業応用部門大会 2002年度秋期低温工学超電導学会 電気学会静止器・超電導応用電力 機器・リニアドライブ合同研究会 超電導Web21 平成15年電気学会電国大会 同上 IEEE/PES T&D(横浜) 実用新案;0件 H15.1 H15.2 H15.3 H15.3 H14.10 平成15年度 国内特許;1件 出願済;1件 件名 液体ヘリウム送給方法及び液体ヘリウム用トランスファーチューブ 登録;0件 実施;0件 取得者 前川製作所 特許No. 特願2004-050474 取得年月日 H16.2.25 掲載者 刊行物名 掲載日 東海大学 東海大学 Super-GM EUCAS 2003 H15.9 IEEE Trans.Appl.SuperconductivH15.10 IEEE Proc H16 東京大学 三菱電機 日立電線 三菱電機 IEEE 電気学会論文誌B 電気学会論文誌B 電気学会論文誌B 外国特許;0件 論文;20件 査読付き;7件 件名 Study on a design method and results of small-scale to large-scale superconducting generators Design study of small-scale superconducting generators Development Status of Rotating Employing Superconducting Field Theoretical and zeperimental study on characteristics of slow response type superconducting generator for high harmonic armature current 超電導発電機のかご型ダンパ構造の特性検証 高密度20万kW級超電導発電機・界磁巻線用Nb-Ti超電導素線・導体の開発 600MW級超電導発電機用界磁巻線の開発 その他;13件 件名 掲載者 ヘリウム液化・冷凍システム(設計シミュレーション手法の検討) 前川製作所 低温・高温超電導発電機の設計検討 東海大学 超電導発電機基盤技術 Super-GM 分散型電源を含む配電系統の単独運転における超電導発電機による安定度向上東京大学 超電導発電機用導体の大容量化 古河電工 石川島播磨重工 可変容量膨張タービンを用いたヘリウム冷凍システムの検討 Super-GM 発電機効率向上技術 小型超電導発電機の基本設計検討 東海大学 高温超電導モーターの基本設計検討 東海大学 超電導発電機の開発動向 Super-GM H16 H15.11 投稿中 投稿中 刊行物名 掲載日 2003年度春期低温工学超電導学会 H15.5 2003年度春期低温工学超電導学会 H15.5 日本工業新聞 H15.4.24 電気学会電力・エネルギー部門大 H15.8 2003年度秋期低温工学超電導学会 H15.12 2003年度秋期低温工学超電導学会 H15.12 火力原子力発電 H15.10 H16.1 電気学会超電導応用電力機器研究会 電気学会超電導応用電力機器研究会 H16.1 電気学会全国大会 H16.3 600MW級超電導発電機 界磁巻線の開発 三菱電機 単独配電系統における超電導発電機の電圧維持効果の検証 東京大学 高調波電流流入時に低速応型超電導発電機のダンパ円筒に生じるジュール熱の東京大学 実用新案;0件 電気学会全国大会 電気学会全国大会 電気学会全国大会 H16.3 H16.3 H16.3 ・産総研「界磁巻線用超電導導体の安定性」関連論文リスト 2000 年度 ・ 査読付き論文 0件 ・ その他 1 件 件名 刊行物名 掲載日 ノーマル相伝播速度測定について 電気学会研究会 2001.1 件名 刊行物名 掲載日 超電導技術は進歩している 電気学会誌 Vol.122、No.1 2002.1 変動磁界を考慮した界磁巻線の安定性 電気学会研究会 2002.1 2001 年度 ・ 査読付き論文 0件 ・ その他 2件 2002 年度 ・ 査読付き論文 2 件 ・ その他 1件 件名 刊行物名 掲載日 Discussion of heater length for normal zone propagation velocity measurement Physica C 2002.5 Binding evaluation of the combination between the superconductor and matrix by ultra sonic Ultrasonics、Vol.40, (2002) 313-316 2002.4 spectra 電流変動時における超電導発電機界磁巻線の安定性の検討 電気学会研究会 2002.6 2003 年度 ・ 査読付き論文1件 ・ その他 1件 件名 刊行物名 掲載日 Can’t matrix bindings to superconductor be evaluated by its ultrasonic spectrum? Physica C, Vol.386, p.451-456 2003.4 Stability of a superconducting field winding under changing magnetic field Proceedings of ICEC 19 2003.5 2.分科会における説明資料 本資料は、分科会において、プロジェクト実施者がプロジェクトを説明する際に 使用したものである。 2-2 超電導発電機基盤技術研究開発 事後評価 平成16 平成16年 16年4月8日 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 独立行政法人 産業技術総合研究所 概1 プロジェクトの概要説明 Ⅰ.事業の位置付け・必要性について Ⅱ.研究開発マネジメントについて Ⅲ.研究開発成果について Ⅳ.実用化、事業化の見通しについて 概2 1 事業の背景 事業の背景 ◎電気エネルギーの重要性 経済の健全な活動のためには、エネルギーの低廉でかつ安定した供給 は必須の命題であり、特に電気エネルギーは、クリーンで使い勝手が 良いため、もっとも有力なエネルギーとして必要不可欠である。 ◎地球環境面からの要請 化石燃料への依存度が高い電気エネルギーの二酸化炭素(CO2 ) 発生量の抑制が求められる問題に対して、発電効率を高くすることが 求められている。 ◎電力系統構成からの要請 電力系統に中小規模分散電源の導入が進み、電圧安定性や系統安定度 の低下などの悪影響が懸念される中、影響を軽減する方策が求められ ている。 「事業原簿」Ⅰ-2 P3 参照 概3 超電導発電機の特徴 超電導発電機の特徴 ◎効率向上 → 燃料とCO2量の削減 発電機サイズの比較 現用機 ◎機器の小型化・軽量化 (現用機の約半分) → 設置面積の低減 超電導機 ◎同期リアクタンスの低減 (現用機の約1/2~1/5) → 電力系統安定度、 超電導発電機 の運転可能範 囲 電圧安定性の向上 ◎進相運転能力の拡大 → 電圧調整能力の向上 リアクトル設備の削減 ◎出力密度向上 電圧調整能力の拡大 → 大容量機製作限界の拡大 「事業原簿」Ⅰ-2 P3 参照 概4 2 前プロジェクト「超電導電力応用技術開発 前プロジェクト「超電導電力応用技術開発 」 (フェーズⅠ)の目的 1988年から 1988年から1999 年から1999年まで「 1999年まで「超電導電力応用技術開発プロジェクト 年まで「超電導電力応用技術開発プロジェクト 」 (フェーズⅠ)を実施し、 (フェーズⅠ)を実施し、7 実施し、7万kW機にて実証試験を実施した。 kW機にて実証試験を実施した。 項目 内容 超電導線材の研究 開発 金属系超電導導体の開発および酸化物系高温超電 導材料の研究 超電導発電機の研 究開発 実用機、プロトタイプ機の前段階のパイロット機の設 計と製作に必要な要素技術を開発する。 トータルシステムの 研究 超電導発電システムの試験法、解析法、運用技術の 確立を目標とする。 冷凍システムの研 究 超電導電力機器に採用できる高信頼度冷凍システ ムを開発する。 検証試験 7万kW級モデル発電機の性能、信頼性を検証し、パ イロット機の設計と製作に必要なデータを取得する。 「事業原簿」Ⅰ- 2.4 P3.6参照 概5 フェーズⅠの成果 ①世界最高レベルの金属系発電機用導 体、および電力応用に適した酸化物薄膜 線材を開発 ②世界最大の79MW発電に成功 ③20万kW級換算で発電機効率99.3%と なり現用機に比べ約0.5%の効率改善が 可能 ④連続出力時間814時間、DSS(深夜起 動停止)運転44回を含めた世界最長の 連続運転時間1,500時間を達成 7万kWモデル機回転子 ⑤実系統試験を実施 評価: 実用機を数10 10万~ 万~100 100万 万kW程度と想定した 実用機を数10 万~100 kW程度と想定した 場合、それへの道筋はまだ明確になってい るとはいえない。実用化に向けては、開発し た7万kW kWモデル機で得られた種々な成果を た7万 kWモデル機で得られた種々な成果を もとにその道筋を明確にしつつ、低コスト化 と大容量化を目指した基盤技術を開発して いく必要がある。 7万kWモデル機 「事業原簿」Ⅰ-2.4 P3.6 参照 概6 3 超電導発電機の国内外開発実績 開発年 形式 1969 1970代 1977 1980代 1980代 1985 1997 1999 同期G 単極G 同期G 同期G 同期G 同期G 同期G 同期G 2001 同期G-M 容量 超電導体 冷却 国・開発メーカ等 米・MIT 45kW NbTi 3MW NbTi LHe LHe 400kW NbTi NbTi NbTi NbTi NbTi NbTi LHe LHe LHe LHe LHe LHe 韓・電気技術研究所 Bi GHe 独・Siemens 30MW 50MW 10MW 70MW 30kW 400kW 日・東芝 中・ 日・三菱、富士 日・日立 米・MIT 日・Super-GM 「事業原簿」Ⅰ- 2.4 P5参照 概7 超電導回転機(発電機以外)の国内外開発実績 開発年 形式 容量 超電導体 冷却 国・開発メーカ等 1970代 単極M 300kw NbTi LHe 米・NSWC、海軍 1982 調相機 20MW NbTi LHe 露・All Union 1995 単極M 90kW NbTi LHe 米・ AMSC、NSWC、海軍 1995 直流M LN2 日・イムラ 1996 同期M 150kW Bi GHe 米・ AMSC,Rockwell、EPRI 1997 同期M 150kW NbTi LHe 仏・CNRS 1998 同期M 0.6kW Bi LN2 韓・Yonsei大 1998 リラクタンスM LN2 独・Oswald、露・MAI Moscow 1999 同期M 1.5kW Bi 1999 同期M 750kW Bi GHe 米・ AMSC,Rockwell、EPRI 200kW Y系バルク LN2 独・Oswald 400kW Bi GHe 独・Siemens 3700kW Bi GHe 米・ AMSC,Rockwell、EPRI 2000 同期M 2001 リラクタンスM 2001 同期G-M 2001 同期M 2kW Y系バルク 9kW Y系バルク フィンランド・Tampere大 露・ 5MW Bi 「事業原簿」Ⅰ- 2.4 P5参照 概8 4 海外の動向 米国 ドイツ 高温超電導(以下HT Sという)発電機開発 がSPI/DOEプロジェク トとして推進中 (100MVA発電機をター ゲットに1.5MVA回転 子実証モデルの製作 検証) ジーメンスが主体となっ てドイツ政府機関の援 助を受け400KWてHT S同期機を開発中 海軍がALSTHOM社と 船舶用HTS回転機の 開発を推進中 韓国 韓国電気研究院、 DOOSANが協力して HTS回転機を研究開 発中 「事業原簿」Ⅰ- 2.4 P6 参照 概9 国・NEDOが関与することの意義 国・ が関与することの意義 社会的側面 ・電気エネルギーの有効的利用 ・二酸化炭素排出量削減に資する技術の ・二酸化炭素排出量削減に資する技術の開発 酸化炭素排出量削減に資する技術の開発 ・系統安定度、電圧安定性の維持 技術的側面 ・技術的ブレークスルーが必要で、研究に時間と多額の 資金がかかるため民間企業にはリスク大 ・主要国で公的支援による研究開発が進展中 国・NEDOが主導し、産官学の英知を結集して が主導し、産官学の英知を結集して 国・ 研究開発を推進する必要がある 「事業原簿」Ⅰ-1,2 P1-6 参照 概10 5 二酸化炭素排出量削減効果 【目的】 エネルギーの消費を抜本的に改善することにより二酸化炭素の排出抑制に資する技術 開発を、総合的、効率的かつ加速的に推進し、その導入・普及を促進することにより、環 境・エネルギー・経済のバランスのとれた持続可能な社会の構築を図る。 本プロジェクトで超電導発電機の導入量予測を行い、それに伴う 省エネルギー効果(二酸化炭素排出量削減効果)を試算した結果 は次のとおりである。 年度 導入初期 (2010年以降) 導入から 10年後 導入から 20年後 累積導入量(万kW) 40 1,450 5,500 省電力量 (MWh) 14,016 508,080 1,927,200 9,671 350,575 1,330,768 二酸化炭素排出 削減量(t) 「事業原簿」Ⅰ-1 P2 参照 概11 本事業の目的、位置付け フェーズⅠで開発した超電導発電機技術を基に、コスト低 減のための高密度化、ならびに適応箇所の拡大を目指し た大容量化の基盤技術を開発する。 高密度化は20万kW 級機を対象に開発し、 大容量化は電力会社 一般使用の大容量発 電システム等を考慮し て60万kW級機を開発 対象とする。 実 用 化 度 ( 完 成 度 ・ 経 済 性 ・ 信 頼 性 ) 実用レベル パイロット機 600 MW 1000 MW 200 ~ 300 MW 高密度化 本研究開発 大容量化 (フェーズ1) 70 MW級モデル機 100 kW 級機 技術レベル 「事業原簿」Ⅰ-2 P6 参照 概12 6 本事業「超電導発電機基盤技術研究開発」の基本計画 1.高密度化基盤技術の研究開発 20万kW級発電機を対象に、 ・導体の高電流密度化、支持構造、冷却強化の研究開発 ・高密度化に適した多重円筒回転子構造の研究開発 2.大容量化基盤技術の研究開発 60万kW級発電機を対象に、 ・大容量化にともなう大型化、大電流化の研究開発 ・高密度化基盤技術の研究成果を反映 ・導体の高磁界、大電流、大電磁力、高遠心力に耐える 支持構造の研究開発 ・大容量化に適した冷凍システムの研究開発 3.設計技術の研究開発 高密度20万kW級発電機、大容量60万kW級発電機を対象に、 ・設計技術の研究開発 ・超電導発電機の要求仕様と導入シナリオの作成 「事業原簿」Ⅱ-1 P7,8 参照 概13 研究開発目標(高密度化基盤技術) 20万kW級機を対象に、電機子 巻線電流密度を140A/cm2、界 磁巻線電流密度を80A/mm2、 とそれぞれを実現し、これらの 技術を合わせて出力密度を 「超電導電力応用技術開発」プ ロジェクトにおいて達成した超 電導発電機の1.5倍とする高密 度化基盤技術を確立する。 コスト∝発電機体格∝ 1/√出力密度 0.8 0.8 ≒1/ √1.5 出力密度∝電機子電流密度×界磁電流密度 1.5 ≒ 1.3 ≒ 1.3 プロジェクト-フェーズ1の各々の実績値から 電機子電流密度=110A/cm2×1.3 =140A/ cm2 界磁電流密度 = 60A/mm2×1.3 = 80A/mm2 「事業原簿」Ⅱ-1 P9 参照 概14 7 研究開発目標(大容量化基盤技術) 60万kW級機を対象に、電機子巻線電流を15,000A級、界磁巻線電流を 6,000A級、回転子外径を1,100mm級と、それぞれを実現し、これらの技術 を合わせて60万kW級超電導発電機の大容量化基盤技術を確立する。 超電導発電機は、性能、コストを考 えると初号機導入後早い時期に40 ~60万kWの大容量機が導入され る可能性が高い。 40~100万kWの大容量機を視野に 入れ、前プロジェクトでの対象機であ る20万kW機の3倍である60万kWを 対象とする 60万kW機のフェーズⅠでの設計 から 電機子電流 15400A 界磁電流 5700A 回転子外径 1100mm (at 端子電圧 25kV) 電機子電流 15000A級 界磁電流 6000A級 回転子外径 1100mm級 高性能冷凍機 大容量化に適した高効率、高信頼度 の冷凍システムの開発 「事業原簿」Ⅱ-1P9 参照 概15 研究開発目標(設計技術) 高密度20万kW級及び大容量化した高密度60万kW級超電導発電 機の設計技術を確立し、設計指針のために系統からの超電導発 電機への要求仕様や都市近郊発電所を想定した導入シナリオを 作成する。 ・設計技術の研究開発 高密度化、大容量化それぞれの基盤技術開発に必要な基盤技術 水準を初期基本設計により確認し、必要な仕様を決定する。 それに基づき各基盤技術開発を実施し、その研究開発成果および フェーズⅠの成果を統合して超電導発電機の設計技術を構築する。 ・超電導発電機の要求仕様と導入シナリオの作成 系統からの発電機に対する要求仕様を明確にし、超電導発電機の 電力系統への導入シナリオを作成する。 「事業原簿」Ⅱ-1P7 参照 概16 8 研究開発の概略スケジュール 研究開発 項目 H12年度 高密度化 基盤技術 H13年度 詳細設計 H14年度 H15年度 要素設計・モデル試作 (20万kW級機) 電機子部分モデル試作 大容量化 基盤技術 詳細設計 要素設計・モデル試作 (60万kW級機) 界磁巻線部分モデル試作 初期 基本設計 設計技術 最終 基本設計 系統からの要求仕様 導入シナリオ 界磁巻線用超電導 導体の回転場での 安定性(産総研) 研究開発費(百万円) NEDO/産総研 294/26 480/32 720/32 705/31 「事業原簿」Ⅱ-1-2.1 P12 参照 概17 研究開発体制 経 済 産 業 省 ・有識者等の客観的意見の反映 NEDO NEDO超電導技術委員会 NEDO超電導技術委員会 ・他プロジェクトとの整合 [プロジェクトリーダー 武居 秀実 武居 秀実] ] [プロジェクトリーダー 武居 秀実 超電導発電関連機器・材料技術研究組合(Super-GM) ) 超電導発電関連機器・材料技術研究組合( 産総研 情 報 交 換 高密度化基盤技術の研究 高密度化基盤技術の研究開発 研究開発 ・日立製作所 ・日立電線 大容量化基盤技術の研究 大容量化基盤技術の研究開発 研究開発 ・三菱電機 ・古河電工 ・石川島播磨 ・前川製作所 共 同 研 究 再委託 技術調査 ・テクノバ 設計技術の研究 設計技術の研究開発 研究開発 ・電力中央研究所 ・日立製作所 ・三菱電機 共同研究 導入シナリオ ・東京大学 「事業原簿」Ⅱ-1-2.2 P22 参照 概18 9 発電機の原理と超電導発電機 磁石(界磁コイルによ る電磁石)が回転する ことにより電機子コイ ルに電力が発生する。 電圧 超電導発電機は、界 磁コイルを超電導化 して強力な電磁石と する。 概19 研究開発の内容(高密度化・大容量基盤技術) 界磁巻線導体 ・素線外径の増加 ・臨界電流密度の 増加 ・低交流損失 巻線取付軸 ・安価で加工性の良 い磁性体の適用性 の検証 ヘリウム冷 却装置 電機子巻線支 持部 ・高効率・高 信頼度化 ・強度の電磁力 への機械的耐力 電機子巻線導 体 界磁巻線 ・適切な巻線方法の ・大電流に機械的、 開発 電気的、熱的に 耐えられる導体 「事業原簿」Ⅱ-1-2.1P13-21 参照 概20 10 研究開発の効率化 大容量60 大容量60万 60万kW級機 kW級機 高密度20 高密度20万 20万kW級機 kW級機 大容量化検討 電機子巻線 部分モデル 界磁巻線要素 モ デ ル 電機子巻線 要素モデル 高密度化要素技術 技術 移転 大容量化成果 活用(界磁巻線) 高密度化検討 界 磁 巻 線 部分モデル 高密度化成果 活用(電機子) 界磁巻線要素 モ デ ル 電機子巻線 要素モデル 大容量化要素技術 フェーズⅠ (要素技術開発、部分モデル検証、7万kW級モデル機製作・試験) 「事業原簿」Ⅱ-1-2.1P12 参照 概21 基本計画目標と個別自主目標 基本計画目標をより具体化するために個別自主目標を設定した。 高密度化基盤技術 1.界磁巻線超電導導体 ・界磁巻線の平均電流密度80A/mm2をフェーズⅠの130%としたので、 Jcも併せて130%を目指し、3300A/ mm2と個別自主目標を設定した。 ・交流損失は、素線構造の簡素化を図りつつ、フェーズⅠの成果を踏まえ、 200kW/m3 以下とした。 2.発電機 発電機として必要な電気的、機械的、熱的性能の個別目標を決定した。 大容量化基盤技術 1.界磁巻線超電導導体 大電流化、大径化を目指し、さらに高密度化と同じ個別自主目標とした。 2.発電機 界磁巻線・電気子巻線の大電流化を図って大容量化を行い、さらに高 密度化基盤技術の成果を取り入れ、極力高密度化を目指すことし、発電 機として必要な性能を個別自主目標とした。 「事業原簿」Ⅱ-1-2.1P13-20 参照 概22 11 高密度化基盤技術の研究内容 ・Jc 3300A/mm2 を目指す。 ・交流損失を 200kW/m3以下 とする。 ・平均電流密度 80A/mm2を達成 する ・平均電流密度を140A/cm2を達成する。 ・高密度化に適した多重円筒 回転子構造の技術確立する ・高密度化による電磁力、温度上昇、 ・13%Ni鋼の採用検討を行う 絶縁強度を確保する ・部分モデルにて検証する 「事業原簿」Ⅱ-1-2.1P13-15 参照 概23 大容量基盤技術の研究内容 ・大径2mmΦ、 Jc 3,300A/mm2 を目指す。 ・交流損失を 200kW/m3以下 とする。 ・界磁電流を 6,000A級とする。 ・部分モデルに て製作性、性能 検証を行う。 ・電機子電流15,000A級を達成する。 ・大電流化による電磁力増加、温度上 昇等に対し機械的強度、熱的強度、絶 縁強度を確保する。 ・直径1,100mm級とする ・大容量化に適した多重円筒 回転子構造の技術確立する。 「事業原簿」Ⅱ-1-2.1P15-20 参照 概24 12 冷凍システムの研究開発内容 ・システムとして連 続運転時間20,000 時間を確保する ・発電機の冷凍負 荷変動を考慮した 送液効率1.8~2.8 kW/(L/h)を確保 ・膨張タービンの可変容量化 ・軸受けの高負荷化 ・リプレースをも考 慮した超電導発電 機に最適したヘリウ ム冷凍システムの 構築 「事業原簿」Ⅱ-1-2.1P20 参照 概25 設計技術の研究内容 ・高密度、大容量超電導発電機の設計技術 高密度化基盤技術、大容量化基盤技術での研究開発を基礎に、 各種シミュレーション技術等を活用して仕様どおりの基本設計技術 を確立する。 20万kW級、60万kW級機を設計し下記表の値を満足し、コストを 従来より低減できることを確認する。 20万kW級機 60万kW級機 Xd 0.6 0.6 励磁速応度(pu/s) 0.1 0.1 99.30 99.45 効率(%) ・超電導発電機への要求仕様、導入シナリオ 電力系統に超電導発電機を導入するときの要求仕様を明らかに し、導入シナリオを作成する。 「事業原簿」Ⅱ-1-2.1P21 参照 概26 13 運営管理の体制図 各々の機器基盤技術開発の方向性、研究の進捗状況および計 画見直しの検討が実施できるように下記の体制にて運営 プロジェクトリーダー 武居秀実 発電機技術委員会 超電導発電機分科会 超電導発電機WG 超電導線材検討会 導入シナリオWG 技術調査委員会 冷凍システム検討会 「事業原簿」Ⅱ-1-2.1P23-24 参照 概27 情勢変化への対応状況 効率的運営による実施内容の変更 ・部分モデル作成については、極力検証 対象を明確にして直線部を縮小する等、 簡略部分モデル案 ①直線部縮長 ②鞍型コイルは片極のみ ③レーストラックコイルによるバイアスコイル ④中心に磁性材を挿入 コイル #2スロットコイル コイル #1スロットコイル バイアスコイル 最小限のモデルにて検証した。 最小限のモデルにて検証した。 ・13%Ni鋼 鋼の巻線取付軸への採用は、高 密度化の効果が高いので、製作性検証を 追加した。 ・最新の数値解析技術 最新の数値解析技術を駆使することに 数値解析技術を駆使することに 簡略部分モデル案 ①電機子巻線の簡略化 (1/3コイル+ダミーコイル) ②直線部の簡略化 (直線部の縮長) ③磁気シールドの簡略化 (直線部モデルの流用) ④支持の簡略化 (片側の支持簡易化) より、モデル作成を最小限にした。 ・運転メインテナンス面から、冷却系の ・運転メインテナンス面から、冷却系の 簡素化の検討を追加した。 簡素化の検討を追加した。 「事業原簿」Ⅱ-3 P23 参照 概28 14 高密度化発電機基盤技術開発の成果 超電導導体 ・Jc 3150A/mm2(個別自主目標 3300A/ mm2をほぼ達成) ・交流損失は素線構造の簡素化を図っ たにも関わらず、100kW/m3以下と目 標値200kW/m3以下に対し半減 ・発電機用導体としてバランスのとれ たものが完成 電機子導体 支持構造 ステンレス製薄 板の積層構造 を採用すること により、製作性 向上、強度確 保を達成 電機子巻線 巻線取付軸 冷却水管を挿 入した二重転位 導体を開発し、 適切な構造を 適用することで 140A/cm2を達 成 磁性材(13%Ni鋼)の適用可能性を大型鋼 塊作製等で確認した。 界磁巻線 ・上記導体採用およびスロット内構成を 適正化することにより、界磁巻線平均 電流密度80A/mm2を達成 ・多重円筒回転子の強度確認 「事業原簿」Ⅲ-1 P26-27 参照 概29 大容量発電機基盤技術開発の成果 超電導導体 電機子 支持構 造 FRP製 ティース で強度 を確認 電機子巻線 冷却水管を挿入した 二重転位導体を開発 し、適切な構造を適 用することで 15400A(基本目標 15000A級)を達成。 併せて平均電流密度 140A/cm2を達成 ・大径2mmΦ素線、 Jc 3130A/mm2(個別自主目標 3300A/mm2をほぼ達成) ・交流損失は大径化、素線構造の簡素 化を図ったにも関わらず約100kW/m3と 目標値200kW/m3以下に対しほぼ半減 ・発電機用導体としてバランスのとれた ものが完成 界磁巻線 ・上記導体採用および スロット内構成を適正化 することにより、5700A (基本目標6000A級)を達成。併せて界磁巻 線平均電流密度75A/mm2を達成 ・1100mm多重回転子の強度確認 「事業原簿」Ⅲ-1 P26-27 参照 概30 15 超電導導体の成果 10本撚り 本撚り (3.59× × 9.93) 本撚り 3500 自主開発目標 超速応 モデル 機 3000 Jc (A/mm 2@5T) 高密度化、大容量基 盤技術ともに 発電機用超電導導体 として ・高Jc、 ・低損失、 ・安定性 のバランスのとれたトッ プクラスの性能を得た。 2500 低速応 モデル A機 達成臨界電流密度 第I期プロジェクトの 超電導素線の特性ライン 2000 低速応 モデル B機 1500 1000 500 0 0.5 1 1.5 超電導素線径(mm) 2 「事業原簿」Ⅲ-1 P26-27 参照 概31 ヘリウム冷凍機の成果 ・ 発電機の冷凍負荷 変動を考慮した送液 効率1.8~2.8kW/(L/h) に対し2.0~2.5 kW/ (L/h) を達成した。 ・連続運転時間 20,000時間を達成す る見通しを得た。 ・既設発電所の発電機リプレースに対しても、発電機室高 さ等を配慮した設計で対応可能なことを確認した。 「事業原簿」Ⅲ-1P27 参照 概32 16 設計技術の確立 ・高密度化、大容量発電機ともに基本設計技術を確立し た。 ・更に巻線取付軸に13%Ni鋼を採用することにより更に小 型化あるいはインダクタンスXdを低減設計できることを確 認した。 ・水素冷却に変わり、ヘリウムガス冷却を採用することに より補機の簡素化、メインテナンスの簡素化が図れ且つコ スト低減することを提案した。 ・電力系統からの要求仕様を明確にした。 ・超電導発電機の導入効果を明確にした。 「事業原簿」Ⅲ-1 P27-29 参照 概33 各種解析技術の活用と設計技術の確立 多重円筒回転子 最大磁界 4.8T 4.8T 超電導界 磁巻線 ベッセル ベッセル 536MPa 536MPa 多重円筒 回転子 フレキシブルディスク強度 界磁巻線磁場分布 電機子巻線 356MPa 356MPa 界磁巻線取付け軸強度 電機子巻線支持 232MPa ( Pa ) 電機子巻線導体温度 MAX=341 MPa 常温ダンパ強度 多重円筒 回転子 電機子歯部強度 構造、材質、特性等に関して各種数値解析等を実施 → 基本計画目標&自主目標が達成可能な発電機の設計技術の確立を確認 「事業原簿」Ⅲ-1 P27 参照 概34 17 高密度化基盤技術の基本設計成果 (200MW) 項目\容量 フェーズⅠ 技術 最終設計 磁性巻線軸 設計(13%Ni) 水素→Gヘリ ウム冷却 電圧(kV) 18.0 14.8 14.8 14.8 電流(A ) 7153 8699 8699 8699 Xd(pu) 0.6 0.6[0.6] 0.5[0.6] 0.6[0.6] 電機子電流密度(A/cm2) 110 140(140) 140(140) 140(140) 界磁巻線平均電流密度 (A/mm2) 61 80(80) 80(80) 80(80) 回転子長(胴部)(mm) 5700 4400 4160 4400 効率(%) 99.29 99.33[>99.30] 99.35[>99.30] 99.29[>99.30] 出力密度 (MW/m3) 21.3( 1pu) 35.4( 1.66pu ) 38.9( 1.82pu ) 基本計画目標を達成し、効率も計画値以上であった。 磁性軸の採用により更に高密度化が図れた。 33.7(1.58pu) ( )内基本計画目標値 [ ] 内個別自主目標値 「事業原簿」Ⅲ-1P27-28 参照 概35 大容量基盤技術開発の基本設計成果 (600MW) 項目\容量 フェーズⅠ技術 最終設計 磁性巻線軸 設計(13%Ni) 電圧(kV) 27 27 26 電流(kA ) 14.263 14.262 (15kA級) 14.262 (15kA級) Xd(pu) 0.6[0.6] 0.6[0.6] 0.6[0.6] 電機子電流密度(A/cm2) 110 140 140 界磁電流(A ) 4800 5700(6000A級) 5700 (6000A級) 界磁巻線平均電流密度(A/mm2) 60 75 75 回転子径 (mm) 1100 1100(1100) 1100(1100) 効率(%) 99.47 99.46[99.45] 99.46 [99.45] 出力密度 (MW/m3) 34 (1PU) 37 (1.09PU) 45 (1.32PU) 基本計画目標を達成し、効率も計画値以上であった。 磁性軸の採用により更に高密度化が図れた。 ( )内基本計画目標値 [ ] 内個別自主目標値 「事業原簿」Ⅲ-1P27-28 参照 概36 18 製造コストの低減(20万kW級機) 高密度化 で本体の コスト減 1.6 1.4 13% %Ni鋼 鋼 で回転子 コスト減 H2ガス冷却 →Heガス冷 ガス冷 却で補機 コスト減 製造コスト [倍] 1.2 1 冷凍システム 補機など 固定子 回転子 0.8 0.6 0.4 0.2 0 フェーズⅠ 基本設計 13%Ni鋼 He冷却 技術開発によりフェーズⅠから20%以上コスト低減見込み更に 、磁性巻線軸の採用、冷却の簡素化でコスト減が図れる。 「事業原簿」Ⅲ-1P29-30 参照 概37 特許、論文の件数(H16年 特許、論文の件数( 年3月現在) 月現在) (件) H12 H13 H14 H15 計 特許 1 5 0 1 7 論文 20 (1) 21 計 (1) 27 (2) 32 (2) 13 22 82 (3) (2) (8) 13 23 89 (3) (2) (8) 注:( )内は産総研分で、内数 参考:新聞発表 1 参考:新聞発表 1 件 「事業原簿」別紙参照 概38 19 実用化、事業化の見通し ・20万kW級、60万kW級ともに基本設計技術を確立した。 (パイロット機にて実用化検証を行う必要は有) ・電力需要全体が伸び悩んでいるために新規発電機建設が少なく なっているが、現用機と十分競争できるコストレベルになっている ので必要時期には採用される可能性は十分高いと考える。 ・更に13%Ni鋼の巻線取付軸への適用、冷却系の簡素化による保 守の簡素化等の詳細技術開発を進めれば更に採用されやすくな る。 ・開発した技術は、他機器への今後の開発に資することが期待で きる。 ・超電導体 →NMR、加速器等へ ・機器 →加速器用超電導マグネット、超電導機器のコンパクト化 ・冷凍機 →中型、大型の超電導機器(核融合、加速器、他低温機器等) 「事業原簿」Ⅳ-1.1 参照 概39 実用化、事業化の見通し 実 用 化 度 ( 完 成 度 ・ 経 済 性 ・ 信 頼 性 ) 実用レベル パイロット機 1000 MW 600 MW 200 ~ 300 MW 本研究開発 高密度化 大容量化 70 MW 級モデル機 (フェーズ1) 100 kW 級機 技術レベル 「事業原簿」Ⅳ-1.1 参照 概40 20 波及効果-超電導導体 ニオブチタンを使用した金属系低温超電導発電機導体とし て仕様に応じた線材設計が可能となり、また今回の開発で 得られた設計、製造のノウハウは他の低温超電導機器用 金属系線材の製作に活用が期待できる。 時効熱処理回数の低減と熱処理間隔の最適化 応用例:各種高性能NbTi超電導線材の低コスト化(NMR、核融合、加速器、 磁気浮上列車等) NbTi線材の大径化 応用例:各種超電導磁石の巻数低減、超電導パワーリードの撚線数低減 交流損失設計技術の高精度化 応用例: SMES等の線材の開発効率化、磁気浮上列車等の線材の量低減( 軽量化) 「事業原簿」Ⅳ-1.2 参照 概41 波及効果-超電導発電機 今後、開発が期待されている高温超電導線材を採用した高 温超電導発電機、回転機に今回の設計、製作技術、ノウハ ウを活用できる。また、設計シミュレーション技術は現用機開 発に応用が期待できる。 くら型界磁巻線製作技術 加速器の生成粒子検出器用の超電導マグネットの製作への応用 13%Ni鋼の超電導機器への適用 応用例:現行技術に対して2割程度の超電導機器のコンパクト化、高エネルギー密度化が 可能 電磁場シミュレーション技術 応用例:回転機、交流機器の電磁場シミュレーションへ応用し、より精度の高い機械の研 究・開発や設計製作が可能 高効率発電機への設計技術の適用 応用例:現用発電機に適用することにより高効率化・高密度化が可能 ステンレス製ティース構造の高磁場機器への適用 応用例:高磁場が要求される機器にて、低損失・高支持強度となるステンレスティース構造 の適用が可能 「事業原簿」Ⅳ-1.2 参照 概42 21 波及効果-ヘリウム冷凍機 今回開発品は幅広い負荷変動に対し、高効率を維持できる 特徴があり、中型、大型の超電導機器(SMES、核融合、加速器、 等)に採用可能である。 今回開発技術は超電導機器だけでなく、低温機器一般に採 用可能である。 80K圧縮機駆動用発電膨張タービン 応用例:膨張タービンを高温ガス下で作動させる圧縮機駆動用発電 膨張タービンへ応用 MATLABによるシミュレーション 応用例:冷凍機のシミュレーションへ応用 高負荷軸受の設計技術 応用例:実際のタービン軸受への適応 キャンド式ヘリウム圧縮機 応用例:キャンド式圧縮機の開発・実用化 キャンド式圧縮機 他 「事業原簿」Ⅳ-1.2 参照 概43 本プロジェクトの成果の波及効果(まとめ) 発電機全体(設計技術含む) ・高温超電導発電・電動機に界磁 巻線技術以外は転用可能 ・現用機の改良に応用可能 超電導導体 ・金属系超電導導体については 仕様が決まればほぼ設計可能 ヘリウム冷凍装 置 ・各種超電導機 器に適用可能 ・数値解析技術 は他冷凍機設 計に応用可能 電機子 ・巻線構造、 支持構造 については 現用機でも 応用可能 巻線取付軸 界磁巻線 ・13%Ni鋼は、他 超電導回転機等 に採用可能 ・金属製超電導導体巻 線技術は特殊形状の コイル作製に適用可能 設計技術(導入シナリオ等) ・導入地点の要求仕様、電力系統特性の 改善など付加価値の検討に活用可能 概44 22 Super--GM GM Super 2.1 高密度化基盤技術の研究開発 2.1 高密度化基盤技術の研究開発 2.1.1 超電導導体および界磁巻線の高密度化技術 2.1.2 高密度化に適した多重円筒回転子構造 2.1.3 電機子巻線の高密度化技術 2.1.4 電機子部分モデルによる開発技術の実現性検証 と製作性検証 2.1.5 磁性巻線取付軸による界磁巻線高密度化の検討 2.1.6 開発成果のまとめ 2.1.7 波及効果 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1(31頁 2.1(31頁)参照 高-1 Super--GM GM Super 開発目標 開発目標 基本目標 対象:20 kW級超電導発電機 対象:20万 20万kW 級超電導発電機 出力密度を、フェーズIの 1.5倍に高密度化する 出力密度を、フェーズ の1.5 倍に高密度化する 基盤技術を確立する 基本計画目標値と達成度 基本計画目標値(界磁巻線80 基本計画目標値(界磁巻線80A/mm 電機子巻線140A/cm 80A/mm2,電機子巻線140 140A/cm2)を達成 基本計画 目標値 達成度 備考 フェーズⅠ技術 界磁巻線 電流密度 80A/mm 80A/mm2 80A/mm 80A/mm2 60A/mm 60A/mm2 電機子巻線 電流密度 140A/cm 140A/cm2 140A/cm 140A/cm2 110A/cm 110A/cm2 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1 (31頁 (31頁) 参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組合 高-2 Super--GM GM Super 高密度化技術の開発ステップ 基本計画目標値 界磁巻線: 界磁巻線:80A/mm 80A/mm2,電機子巻線:140 電機子巻線:140A/cm 140A/cm2(各々、フェーズIの 各々、フェーズ の1.3倍) 1.3倍) 高密度20 高密度20万 20万kW発電機の初期基本設計 kW発電機の初期基本設計 (基本仕様の明確化) 高密度化基盤技術開発 多重円筒回転子 個別技術要素の摘出と要求特性の明確化 (個別自主目標の設定と検証項目、検証方法) 超電導導体、 界磁巻線 電機子巻線 要素モデル、部分モデル実験、数値解析による検証 最終基本設計、オプション設計 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1 (31頁 (31頁) 参照 高-3 Super--GM GM Super 超電導導体及び界磁巻線の高密度化 個別自主目標と達成度 項 目 開発目標 超電導素線 (NbTi線 NbTi線) 臨界電流密度 臨界電流 超電導導体 交流損失 安定性 界磁巻線 冷却 開発目標 達成度 3300A/mm 3300A/mm2 at 5T △ 3150A/mm 3150A/mm2 at 5T (95%) 10710A 10710A at 5.0T 3900A at 8.1T ○ 11000A 11000A at 5.0T(103%) 4000A at 8.1T(103%) 200kW/m 200kW/m3以下 (at 5T, 5T/s) ○ 100kW/m kW/m3以下 100 定格運転時(2600 定格運転時(2600A) (2600A)およびフォーシン A)およびフォーシン グ運転時(3120 (3120A) グ運転時 (3120A)でもクエンチしない A)でもクエンチしない こと ○ (3600A 3600A以上を達成) 発電機至近端事故想定時の磁界変動 (5T/s) (5T/s)でもクエンチしないこと T/s)でもクエンチしないこと ○ (5T/s (5T/s以上の高速励磁を T/s以上の高速励磁を 達成) 達成) すかせ巻により冷却流路を確保する こと ○ 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1 (32頁 (32頁)参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組合 高-4 Super--GM GM Super 個別自主目標と達成度 多重円筒回転子 項 目 多重円筒 回転子 開発目標 達成度 常温・低温ダンパ・巻線取付 軸・トルクチューブ強度 突発短絡事故電磁力に耐え ること ○ 磁気遮蔽特性 界磁巻線への 交流磁場の遮蔽 ○ 電機子巻線 素線 導体 項目 交流損失 導体温度 導体強度 導体電気特性 導体製作性 電機子 直線部・端部支持強度 巻線 電機子製作性 電磁気的特性 機械特性 開発目標 設計値と同等であること 達成度 ○ B種温度(130 B種温度(130℃ (130℃)以下 突発短絡事故電磁力に耐えること 現用機並みの絶縁特性を有すること ○ ○ ○ 製作に関し問題ないこと 突発短絡事故電磁力に耐えること ○ ○ 製作に関し問題ないこと ○ 設計手法・設計結果と対比し問題ないこと 振動等機械に問題ないこと ○ ○ 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1 (33頁 (33頁)参照 高-5 Super--GM GM Super 2.1 高密度化基盤技術の研究開発 高密度化基盤技術の研究開発 2.1.1 超電導導体および界磁巻線の高密度化 超電導導体および界磁巻線の高密度化技術 導体および界磁巻線の高密度化技術 (1) 超電導導体の高密度化 超電導導体の高密度化技術 導体の高密度化技術 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.1(1) (34頁 (34頁)参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組合 高-6 Super--GM GM Super 全体 初期基本設計による高密度20 初期基本設計による高密度20万 kW機の主要諸元 20万kW機の主要諸元 主要諸元 9600 5500 1800 3000 3600 4.0 140 60 20 鞍型 φ 2000 2600 3120 5.4 180 80 20 鞍型 3300 φ 880 ヘリウム給排装置 2重軸受 磁気シールド 軸受 電機子巻線 発電機基本構造図 巻線取付軸 超電導界磁巻線 常温ダンパ 低温ダンパ ベッセル φ 62 0 出力 (MVA) 発電機 電圧 (kV) 定格 力率 体格 磁気シールド長(mm) 磁気シールド長(mm) 磁気シールド外径(mm) 磁気シールド外径(mm) 諸特性 Xd (pu) 効率(%) 効率(%) 出力密度(MW/m 出力密度(MW/m3) 電機子電流(A) 電機子電流(A) 電機子 電機子電流密度(A/cm 電機子電流密度(A/cm2) 界磁電流(A) 界磁電流(A) 定格 フォーシング時 最大経験磁場(T) 最大経験磁場(T) 界磁 導体電流密度(A/mm 巻線 導体電流密度(A/mm2) 巻線電流密度(A/mm 巻線電流密度(A/mm2) スロット数 スロット形状 フェーズⅠ 技術 223 18 0.9 3000 2000 0.6 99.29 21.2 7153 110 φ 3250 800 高密度 20 万 kW 級機 223 14.8 0.9 1800 2000 0.6 99.33 35.4 8699 140 φ 30 0 80 φ8 回転子断面図 ヘリウム槽 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.1(2) (50頁 (50頁) , Ⅲ-2.3.2 (201頁 (201頁)参照 高-7 Super--GM GM Super 回転子 超電導素線、導体への要求特性 界磁巻線用超電導素線、導体の基本諸元 項 目 諸 元 超電導素線 外径 1.33 mm NbTi 3300 A/mm2 at 5T 臨界電流密度(Jc) 臨界電流密度(Jc) NbTi:Cu:CuNi 1.0:2.0:0.4 超電導導体 構成 素線9 素線9本の平角成形撚線 臨界電流(Ic) 10710A at 5T 臨界電流(Ic) 3900A at 8.1T 定格電流 2600A at 5.4T (定格時) 3120A at 6.5T (フォーシング) 導体断面電流密度 導体断面電流密度 180A/mm 180A/mm2 at 5.4T 交流損失 200kW/m3以下 at 4.5T± 4.5T±0.5T (5T/s) 導体寸法 6.0× 6.0×2.4mm 導体絶縁 カプトンテープ 超電導発電関連機器・材料技術研究組合 ● 高電流密度 ● 高電流密度 高電流密度 1.3 1.3mm 1.3mm級太径素線で高 mm級太径素線で高Jc 級太径素線で高Jc !導体断面平均電流密度は フェーズI フェーズIの1.3倍 1.3倍 ● 低交流損失 ● 低交流損失 CuNi Cu NbTi 22μ 22μm Cu CuNi NbTi Φ1.33 Φ1.33mm 超電導素線 2.4 mm 6.0 mm 超電導導体 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.1(52 2.1.1(52頁 (205頁)参照 高-8 52頁) , Ⅲ-2.3.2 (205頁 Super--GM GM Super 回転子 超電導素線、導体の構成と開発要素 超電導素線、導体の構成と開発要素 安定化銅 安定化銅 CuCu-10%Ni 高安定化 (銅比, (銅比,配置の最適化) NbTi CuCu-10%Ni層 10%Ni層 NbNb-Tiフィラメント領域 Tiフィラメント領域 高Jc化 Jc化 1.33mm 素線 交流損失低減 交流損失低減 超電導素線 (加工条件の最適化) (CuCu-Ni比率、 Ni比率、 配置の最適化) 2.4mm 導体交流損失低減 (素線間接触抵抗、 撚りピッチの最適化) 6mm 超電導導体 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.1(1) (36頁 (36頁)参照 高-9 Super--GM GM Super 回転子 超電導素線・導体の作製法と高Jc 超電導素線・導体の作製法と高Jc化 Jc化 シングルビレット 銅パイプ ダイス NbTi/Cu/CuNi 伸線 押出し マルチビレット 押出し (押出径) ダイス 伸線 時効熱処理 (温度・時間 温度・時間) 温度・時間 (最終加工度) 伸線 (加工度) ツイスト 時効熱処理 (温度・時間 温度・時間) 温度・時間 伸線 (加工度) 時効熱処理 (温度・時間 温度・時間) 温度・時間 成形撚線(大容量化) 成形撚線(大容量化) 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.1(1) (38頁 (38頁)参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組合 高-10 Super--GM GM Super 回転子 超電導素線の高Jc 超電導素線の高Jc化 Jc化 2 自主目標:3300 自主目標:3300A/mm 3300A/mm2 (素線径1.3 素線径1.3mm 1.3mm) mm) 到達値:3150 到達値:3150A/mm 3150A/mm2 素線の作製条件の最適化 素線の作製条件の最適化 フェ ーズ 2 NbTiフィラメントJc(A/mm ) at 5T 3400 3200 3000 5回時効 3回時効 II 2800 (熱処理条件、時効熱処理回数、加工度、 熱処理条件、時効熱処理回数、加工度、 ツイストピッチ) 4回時効 2回時効 直径1mm以上の太径の 以上の太径の 直径1 2600 低速応A機用 超速応機用 2400 超電導素線(φ )で、 超電導素線(φ1.33mm) 低速応B機用 Jc= =3150A/ /mm2 at 5T 2200 (自主目標値をほぼ達成) 自主目標値をほぼ達成) フェーズI フェーズI 2000 0 0.5 1.3 1 素線径(mm) 1.5 2 Jcの Jcの時効回数依存性とフェーズI 時効回数依存性とフェーズI結果との比較 (平成15年度素線) 回転子 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.1(1) (40頁 (40頁)参照 高-11 Super--GM GM Super 超電導素線と導体の開発経過 H12年度 H13年度 H14年度 H15年度 超電導素線 (直径1.33mm) 超電導導体 (9本撚線) Jc (A/mm2) at 5T,φ φ1.33 Cu:CuNi: Cu:CuNi:NbTi 素線交流損失 (k kW/m3) at 5T, 5T/s 導体特性 導体特性 備考 2970 3190 3050 3150 1.77:0.43:1 1.77:0.43:1 2.01:0.36:1 2.01:0.36:1 2.2:0.51:1 2.2:0.51:1 66 35 117 Iq= =9500A Ic= =10700A kW/ /m3 93k kW/ /m3 153k 導体クエンチ 安定性低い 高銅 比化 大容量化 ロス増加 2.1:0.4:1 2.1:0.4:1 35 Ic= =9500A 64k kW/ /m3 導体のIc 導体のIc, Ic, 11000A(計算値) 計算値) 損失ともに 67k kW/ /m3 自主目標を 達成 ロス低減 高銅 比化 Jc: Jc:自主目 標をほぼ 達成 マトリックス 導体容量低下 比低減 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.1(1) 2.1.1(1) (48頁 (48頁)参照 高-12 超電導発電関連機器・材料技術研究組合 回転子 Super--GM GM Super 超電導素線と導体の開発経過 超電導素線と導体の開発経過 (銅比増加によると安定性向上) 最小クエンチエネルギー・MQE(mJ) 10 許容交流損失以内で 素線の銅比を増加 素線の銅比を増加 H14年度素線 (銅比;2.2) H15年度素線 (銅比;2.1) 安定性を 1.4倍以上に向上 1.4倍以上に向上 H13年度素線 (銅比;2.0) B=5T H12年度素線 (銅比;1.77) 定格時 フォーシング時 1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 通電電流/臨界電流(Iop/Ic) 0.7 0.8 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.1(1) 2.1.1(1) (47頁 (47頁)参照 高-13 Super--GM GM Super 2.1 高密度化基盤技術の研究開発 高密度化基盤技術の研究開発 2.1.1 超電導導体および界磁巻線の高密度化 超電導導体および界磁巻線の高密度化技術 導体および界磁巻線の高密度化技術 (2) 界磁巻線の高密度化技術 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.1(2) (49頁 (49頁)参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組合 高-14 Super--GM GM Super 回転子 短尺導体要素モデルによる導体性能の評価 臨界電流の評価 11000A 11000A @ 5.0T 15000 10710A 10710A @ 5.0T (自主目標) 電流〔 電流〔A A〕 短尺導体特性 (自主目標) 実測値 10000 4000A 4000A @ 8.1T 3900A 3900A @ 8.1T フォーシング時 ( 3120A, 3120A, 6.5T ) 定格時 負荷率 ( 2600A, 2600A, 5.4T ) 負荷率 80% 負荷曲線 66.7% 5000 測定サンプル 外部磁場コイル (直流) 0 平成13 平成13年度導体 13年度導体 交流損失の評価 電圧 V 外部磁場コイル (交流) 0 2 4 6 磁場〔T 磁場〔T〕 (自主目標) 8 10 0.9T±0.5T(5T/s)での損失測定 臨界電流、 4.5T±0.5T(5T/s)での損失評価 交流損失ともに 平成13 13年度導体: 年度導体:153 153kW/m kW/m3 平成13 年度導体:153 個別自主目標を達成 平成14 平成14年度導体 14年度導体: 年度導体: 64kW/m 64kW/m3 キャンセル コイル サーチコイル 平成15 67kW/m kW/m3 平成15年度導体 15年度導体: 年度導体: 67 測定サンプル (自主目標: 200kW 200kW /m3以下) 以下) 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.1(2) (53頁 (53頁)参照 高-15 Super--GM GM Super 回転子 界磁巻線への要求特性 界磁巻線の主要諸元 高密度20 高密度20万 20万KW機 KW機 界磁電流(A) 界磁電流(A) 定格 フォーシング時 最大経験磁場(T) 最大経験磁場(T) 導体電流密度(A/mm 導体電流密度(A/mm2) 巻線電流密度(A/mm 巻線電流密度(A/mm2) スロット数 スロット形状 2600 3000 (負荷率:67%) (負荷率:63% :63%) (負荷率:67%) (負荷率 :63%) 3120 3600 (負荷率:80% (負荷率:80%) 80% ) (負荷率:75% (負荷率:75%) :75%) 5.4 4.0 180 140 80 60 20 20 鞍型 鞍型 磁場解析結果(部分図) #2 低温ダンパ 4 r24 37 #4 r2 37 15° 超電導発電関連機器・材料技術研究組合 7.5 15 ° ° #5 ヘリウム槽 巻線部 スペーサ (楔形状) 超電導導体 15 ° r2 30 ベッセル スペーサ (上部流路) A286 r2 #3 0 30 r ベッセル 80 φ8 R310 常温ダンパ φ620 R=60mm #1 #2 #3 #4 #5 #1 巻線取付軸 超電導界磁巻線 φ 30 0 Bmax=5.4T Bmax=5.4T =5.4T 巻線最小 (定格2600 定格2600A 2600A時) 曲率 R1 50 15 ° 界磁 巻線 フェーズI フェーズI技術 下部流路 事業原簿Ⅲ 事業原簿Ⅲ原簿Ⅲ-2.3.2 (204頁 (204頁)参照 高-16 Super--GM GM Super 回転子 界磁巻線特性の検証(単コイル要素モデル製作) 単コイル要素モデル 高密度20 高密度20万 20万kW機相当の kW機相当の 界磁巻線部の電流密度、 負荷特性、巻線構造 15000 10710A 10710A @ 5.0T 短尺導体特性 (自主目標) 電流〔 電流〔A A〕 (平成13年度導体) 20万KW機と同じ 曲げR=60部に5.4T(2600A)発生 直列接続 10000 3900A 3900A @ 8.1T フォーシング時 ( 3120A, 3120A, 6.5T ) 定格時 負荷率 ( 2600A, 2600A, 5.4T ) 負荷率 80% 負荷曲線 66.7% 5000 単コイルモデル バックアップ コイル 0 0 2 4 6 磁場〔T 磁場〔T〕 8 10 単コイル要素モデルの負荷特性 (実機と同一) コイル構成、外観 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.1(2) (56頁 (56頁)参照 高-17 Super--GM GM Super 回転子 単コイル要素モデルによる性能検証( 単コイル要素モデルによる性能検証(評価結果) 静的励磁試験 3600A 3600A (負荷率:92.3%) 負荷率:92.3%) 静的励磁、動的励磁のいずれの試験も 静的励磁、動的励磁のいずれの試験も クエンチなしで達成し、基本目標を達成 クエンチなしで達成し、基本目標を達成 (電源容量による制限) 定格2600 定格2600A 2600A (負荷率:66.7%) 負荷率:66.7%) 15000 10710A 10710A @ 5.0T 短尺導体特性 (自主目標) 電流〔 電流〔A A〕 10A/s 10A/s 動的励磁試験 10000 3900A 3900A @ 8.1T フォーシング時 ( 3120A, 3120A, 6.5T ) 定格時 負荷率 ( 2600A, 2600A, 5.4T ) 負荷率 80% 負荷曲線 66.7% 5000 3120A(80%) 3120A(80%)まで A(80%)まで 400A/s 400A/s 2720A(69.7%) 2720A(69.7%) まで 2400A/s 2400A/s( A/s(5T/s) (突発短絡時相当) 定格2600 2600A(66.7%) A(66.7%)まで 定格2600 A(66.7%) まで 260A/s 260A/s( A/s(0.1pu/s) (速応励磁 0.1pu 0.1pu/s pu/sに相当) /sに相当) 超電導発電関連機器・材料技術研究組合 0 0 2 4 6 磁場〔T 磁場〔T〕 3600A 3600A @ 7.48T (負荷率:92.3%) 負荷率:92.3%) 以上 8 10 0.1pu/s(260A/s), 0.1pu/s(260A/s), 5T/s (2400A/s) を達成 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.1(2) (57頁 (57頁)参照 高-18 Super--GM GM Super 回転子 界磁巻線高密度化技術(まとめ) 項 目 臨界電流 基本目標 - 自主目標 10710A@5T 10710 A@5T [email protected] 達成率 11000A@5T 11000A@5T [email protected] 103% 153kW/m 153kW/m3 - 交流損失 成果値 200kW 200kW /m3以下 (平成13 平成13年度導体) 13年度導体) 平成14,15 平成14,15年度導体は 14,15年度導体は 100kW/m 100 kW/m3以下 100kW/m3以下 100 - 静的励磁 - 動的励磁 - 電流密度 80A/mm 80A/mm2(定格時) (巻線平均) 巻線平均) フォーシング電流に対 してクエンチしないこ と 3600A 3600A以上 (フォーシング時3120 3120A) A) フォーシング時3120 突発短絡(5 突発短絡(5T/s) T/s)時 5T/s でもクエンチしない ( 2400A/s 2400A/s以上 以上) 以上) こと 180A/mm A/mm2 180 (導体断面平均) 導体断面平均) 180A/mm 180A/mm2 (導体断面平均) 80A/mm 80A/mm2 (巻線平均) 115%以上 115%以上 100%以上 100%以上 100% (定格2600 定格2600A 2600A時) 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.1(2) (32頁 (32頁)参照 高-19 Super--GM GM Super 2.1 高密度化基盤技術の研究開発 高密度化基盤技術の研究開発 2.1.2 高密度化に適した多重円筒回転子構造 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.2 (59頁 (59頁)参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組合 高-20 Super--GM GM Super 回転子 高密度化に適した多重円筒回転子構造 多重円筒回転子構成部材 高密度20 高密度20万 20万kW機多重円筒回転子の設計諸元 kW機多重円筒回転子の設計諸元 高密度 20 万 kW 級機 A286 AL 合金 (単層) A286 A286 常温ダンパ材 低温ダンパ材 r440 ベッセル材 巻線取付軸材 パ ダン 常温 パ ダン 界磁巻線 常温ダンパ φ880/ 880/70t 低温ダンパ φ730/ 730/20t ベッセル φ680/ 680/30t 巻線取付軸 φ620 ボア(内部空間) φ300 A2 8 6 r370 r370 R365 R365 常温ダンパ 低温ダンパ ベッセル φ620 セル ベッ 0 R34 R340 超電導 巻線取付軸 R310 R310 多重円筒回転子の諸元寸法 低温 フェーズ I 技術 (Xd=0.6) NiCuAl SUS/Cu/SUS (3層) 3層) A286 A286 超電導界磁巻線 R345 R345 20万 20万kW級機 kW級機 223 14.8 8699 880 620 4400 φ 30 0 A286 80 φ8 r244 00 r3 37 r2 r2 37 付軸 巻線取 15 ° ° 15 ヘリウム槽 φ3 00 ヘリウム槽 7.5° ° 7.5 15° r2 3 0 15 ° 項目\容量 容量(MVA 容量(MVA) MVA) 電圧(kV 電圧(kV) 電流(A 電流(A) 回転子外径(mm) 巻線取付軸外径 回転子胴長(mm) 部分詳細図 回転子断面構成 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.2 (60頁 (60頁), Ⅲ-2.3.2 (213頁 (213頁)参照 高-21 Super--GM GM Super 回転子 高密度化に適した多重円筒回転子構造 (ダンパの検討) ダンパに働く力 ・遠心力 ・三相突発短絡事故時トルク ・電磁力によるクラッシング力 数値解析 Fr(0.01981s) 2.0E+06 340MPa 340MPa Fr(0.02016s) 電磁クラッシング力 電磁クラッシング力( (N/m3) 電 磁 ク ラ ッ シ ン グ 力 (N/m 2 ) Fr(0.02051s) 1.0E+06 Fr(0.02086s) Fr(0.02121s) 0.0E+00 Fr(0.02156s) Fr(0.02191s) -1.0E+06 Fr(0.02226s) 常温ダンパの応力解析結果 Fr(0.02261s) -2.0E+06 Fr(0.02296s) -3.0E+06 Fr(0.02331s) Fr(0.02366s) -4.0E+06 Fr(0.02401s) Fr(0.02436s) -5.0E+06 200MPa 200MPa Fr(0.02471s) Fr(0.02506s) -6.0E+06 0 30 60 90 120 150 180 Fr(0.02541s) 周方向角度(度) 周方向角度(度) 電磁クラッシング力の解析結果 低温ダンパの応力解析結果 常温ダンパ:最大応力340 常温ダンパ:最大応力340MPa 340MPa( MPa(材料許容応力700 材料許容応力700MPa 700MPa) MPa) 低温ダンパ:最大応力200 低温ダンパ:最大応力200MPa 200MPa( MPa(材料許容応力300 材料許容応力300MPa 300MPa) MPa) 材料要求強度を満足 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.2 (62頁 (62頁)参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組合 高-22 Super--GM GM Super 回転子 高密度化に適した多重円筒回転子構造 (ベッセル、巻線取付軸の検討) 界磁巻線の応力解析結果 ベッセル 巻線取付軸応力解析結果 ベッセル 巻線取付軸 最大応力は、20 最大応力は、20MPa 20MPaと十分に低い。 MPaと十分に低い。 (解析結果はベッセルの応力計算条件に付加) ベッセル最大応力 :480 ベッセル最大応力 :480MPa 480MPa 巻線取付軸最大応力:370 巻線取付軸最大応力:370MPa 370MPa 最大応力は材料の許容応力(700 最大応力は材料の許容応力(700MPa 700MPa) MPa)以下! 以下!材料要求強度を満足 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.2 (64頁 (64頁)参照 高-23 Super--GM GM Super 回転子 高密度化に適した多重円筒回転子構造 (磁気遮蔽特性、熱負荷の検討) 周波数(H 周波数(Hz) 1 10 (単位:W) 100 部位・種別 1.0000 0.1000 遮蔽率 1000 5/10000 (120Hz) (120Hz) 0.0100 20万 20万kW機 kW機 フェーズⅠ技術 Xd=0.6 Xd=0.6 15 外部トランスファーライン 15 HTC部熱損失等 HTC部熱損失等 13 13 フラッシュ損 7 7 パワーリード 12 13 14 14 その他 (輻射熱、交流損失等による熱負荷) 輻射熱、交流損失等による熱負荷) 19 15 総計( 総計(W) 80 77 トルクチューブ侵入熱 0.0010 0.0001 ダンパーの磁気遮蔽特性の解析結果 外部変動磁界に対する 十分な遮蔽特性を有する 熱負荷価結果 フェーズI フェーズIと同等のトータル熱負荷 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.3.2(5) (214,217頁 (214,217頁 )参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組合 高-24 Super--GM GM Super 2.1 高密度化基盤技術の研究開発 高密度化基盤技術の研究開発 2.1.3 電機子巻線の高密度化技術 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.3 (65頁 (65頁)参照 高-25 Super--GM GM Super 電機子 電機子巻線高密度化技術 二重転位導体の設計検討 項目 定格電流 定格電圧 細素線断面 素線断面 導体断面 素線本数 導体断面 冷却管 導体断面 冷却管本数 諸元 8699A 8699A 14.8kV 14.8kV エナメル被覆線 0.9 エナメル被覆線 0.9× 0.9×2.5 2.5 25本撚り細素線 25本撚り細素線 5.5 本撚り細素線 5.5× 5.5×14.8 18本 素線 18本 素線 SUS2 SUS2分割冷却管 12本 12本 ( 本 (2本×6組) 2本×6組) 14.8 5.5 2分割SUS水冷管 14.8 5.5 素線 ; 25本撚り細素線 細素線 0.9×2.5銅 エナメル被覆ガラス絶縁 フェーズⅠ技術に対して、 導体占有率を高め、かつ 冷却強化型の導体設計 とし、高密度化を図った ガラステープ絶縁 主絶縁 超電導発電関連機器・材料技術研究組合 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.3 (67頁 (67頁)参照 高-26 Super--GM GM Super 電機子 電機子導体要素モデルによる巻線基本性能の検証 1 導体温度の検証 1.80pu 温度上昇(DEG) 損失値(PU) 50 40 1.50pu 1.20pu △T= 43 ℃ 30 0.90pu 20 損失比率 温度上昇 (deg) 60 0.60pu 10 0.30pu 0 0 2000 4000 6000 電流A 8000 0.00pu 10000 定格電流点8,700 定格電流点8,700A 8,700A 実機運転時の温度評価 (△ △T=43 ×1.3( (交流損失増加分30%)+ 46℃(水ベース温度) ℃(水ベース温度)=102 ℃ T= ℃)× 交流損失増加分 ℃(水ベース温度) 温度モデル ①(最高温度点) Tmax= =102 ℃ [(△ △T: 56℃ ℃) + (水ベース温度:46℃ 水ベース温度: ℃)] 温度解析と要素モデルによる結果 がよく一致。 定格時導体温度: 102℃ 102℃ (< 130℃ 130℃(B種絶縁) 種絶縁)) 通電部 通水部 目標の140 目標の140A/cm 140A/cm2に対する温度的な検証 計測部 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.3 (68頁 (68頁)参照 実験状況 高-27 Super--GM GM Super 電機子 電機子導体要素モデルによる巻線基本性能の検証 2 導体の機械強度検証 導体電磁力 ( 導体電磁力 (N/mm) 要求値 ( 要求値 (解析値) 解析値) 圧 縮 強 度 導体圧縮強度 ( 導体圧縮強度 (N/mm) 許容値 許容値 (実測値) 実測値) 圧縮試験状況 事故時 周方向 30 2033 裕度 67 裕度 67倍 67倍 事故時 径方向 480 980 裕度 2 裕度 2倍 電機子導体 550 1400.0 ストレーンゲージ 1200.0 1000.0 応力(kg/cm2) 曲 げ 強 度 800.0 引張 圧縮 強度限界 600.0 200 設計点( 設計点(事故時) 事故時) 400.0 コイル 定 ス トロ ーク 負 荷 1 mm/min 200.0 4点曲げ試験状況 0.0 0 1000 2000 3000 4000 歪み(μS) 5000 6000 7000 曲げ試験結果 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.3 (69頁 (69頁)参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組合 高-28 Super--GM GM Super 電機子 電機子導体要素モデルによる巻線基本性能の検証 3 電機子導体要素モデルによる巻線基本性能の検証 3 全長モデル 素線 転位部 細素線絶縁検証 No,1コイル 3.0 2.5 端 部 ta n δ ( %) 直線部: 540°転位 540°転位 3500 2.0 1.5 絶 縁 試 験 例 tanδ tanδ 1.0 0.5 2130 0.0 0 2 4 6 8 10 12 印加電圧 (kV) 14 16 18 20 想定実機と同一寸法のフル導体により、 想定実機と同一寸法のフル導体により、製作性、絶縁性能を検証 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.3 (71頁 (71頁)参照 高-29 Super--GM GM Super 電機子 直線部支持要素モデルによる支持構造性能の検証 固有振動数、振動モードの検証 高密度化"高強度化、コンパクト化 薄板SUS 薄板SUS積層型ティースの採用 SUS積層型ティースの採用 (フェーズI フェーズI:FRPティース) FRPティース) 311Hz 倒れ込みのモード(1次) Y Z 実測結果 積層型SUSティース 積層型 ティース t 0.8 x 125枚積層 枚積層 直線部支持モデル外観(部分) X 振動モード実測例 モード 一次 周波数 311Hz 311Hz 備考 倒れ込みモード 二次 331Hz 331Hz 倒れ込みモード 三次 361Hz 361Hz 倒れ込みモード 四次 387Hz 387Hz 倒れ込みモード 五次 444Hz 444Hz 倒れ込みモード 固有振動数が発電機 倍周波数(120 倍周波数(120Hz) 120Hz) から離れていること を確認 固有振動点が120 固有振動点が120Hz( 120Hz(発電機倍周波 Hz(発電機倍周波) 発電機倍周波)より離れていること及び振動モードを確認 → 実機や部分モデルへ反映 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.3 (72頁 (72頁)参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組合 高-30 Super--GM GM Super 電機子 直線部支持要素モデルによる支持構造性能の検証 油圧装置 荷重点 荷重点拡大 311Hz 倒れ込みのモード (1次) (MPa) 実測例 試験状況 LINE-2 主応力分布 主応力分布 45 σ1(解析値) 40 三相突発短絡事故時のティース応力 解析例 計測 計測1 35 計測2 ( mm) MPa 30 解析 25 LINE-2 20 LINE-1 15 (MPa) 10 5 0 0 A点 試験条件におけるティース応力 解析例 20 40 60 mm B点 80 100 C点 C点 点 B B点 点 A A点 ・試験条件における解析と実測の傾向及び最大値が一致 → 実機電磁力での解析も妥当と考えられる ・最大応力100 100MPa MPaにて問題なし→モデル・実機への反映 ・最大応力100 MPaにて問題なし→モデル・実機への反映 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.3 (73頁 (73頁)参照 高-31 Super--GM GM Super 2.1 高密度化基盤技術の研究開発 高密度化基盤技術の研究開発 2.1.4 電機子部分モデルによる開発技術の実現性検証 と製作性検証 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.4 (75頁 (75頁)参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組合 高-32 Super--GM GM Super 電機子 電機子部分モデルによる開発技術の実現性検証と製作性検証 電機子部分モデル(実機のコイル数1/3 電機子部分モデル(実機のコイル数1/3、直線部長1/2) 1/3、直線部長1/2) 部分モデルと20 部分モデルと20万 20万kW機比較 kW機比較 項目 部分モデル 200MW級 定格容量 − 223MVA 電圧 14.8kV 14.8kV 電流 8699A 8699A (実試験通電3000A) 磁気シールド長 800mm 1800mm 磁気シールド外径 φ2000 φ2000 磁気シールド内径 φ1400 φ1400 スロット数 54 54 コイル数 36本 (1/3) 108本 電機子導体断面 25細素線/ストランド 18ストランド/導体 12冷却管/導体 25細素線/ストランド 18ストランド/導体 12冷却管/導体 導体電流密度 − 940A/cm2 平均電流密度 − 140A/cm2 トランスポジション(転位) 180° 540° 電機子冷却 水冷 水冷 ティース SUS材 SUS材 部分モデル外観 巻線端部外観 テーパーコア 付き 付き 端部コイルサポート リングサポート リングサポート 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.4 (77頁 (77頁)参照 高-33 Super--GM GM Super 電機子 電機子部分モデルによる開発技術の実現性検証と製作性検証 テーパー・コア部 磁束密度(T) 1 2 0.08 0.07 0.06 0.05 0.04 0.03 0.02 0.01 0.00 3 4 5 6 3500A通電 通電 Br : 実測 Br :FEM解析 Bz :FEM解析 Bz: 実測 0 1 2 3 4 5 6 7 度((T) 磁束密度 計測位置 0.08 0.07 0.06 0.05 Br (Position6) Bz (Position1) Br (Position1) 0.04 0.03 0.02 0.01 0 Bz (Position6) 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 通電電流 (A) 超電導発電関連機器・材料技術研究組合 試験により、設計時に検討した 磁界と同等の磁界が得られ, 磁界と同等の磁界が得られ,設計 の妥当性を検証 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.4 (81頁 (81頁)参照 高-34 Super--GM GM Super 電機子 電機子巻線の開発結果 項目 基本目標 自主目標 成果値 達成度 巻線製作性 - 製作技術確立・製作性 確認 製作技術の確立 ○ 導体温度 - 130℃以下 ℃以下 B種絶縁 種絶縁 110℃級 ℃級 ○ 巻線機械強度 - 3相突発短絡時強度 相突発短絡時強度 480N/mm 等 980N/mm 等 ○ 固有振動 (ティース ティース) ティース - 120Hzから から 離れていること 300Hz以上 以上 ○ 温度、機械特性、製作性 ○ 電機子電流密度 140A/cm2 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.4 (33頁 (33頁)参照 高-35 Super--GM GM Super 2.1 高密度化基盤技術の研究開発 高密度化基盤技術の研究開発 2.1.5 磁性巻線取付軸による界磁巻線高密度化の検討 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.5 (83頁 (83頁)参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組合 高-36 回転子 磁性巻線取付軸による界磁巻線高密度化の検討 13% Ni材磁性巻線取付軸使用時の3次元 Ni材磁性巻線取付軸使用時の3次元FEM 材磁性巻線取付軸使用時の3次元FEM解析結果( FEM解析結果(20 解析結果(20万 20万kW機) kW機) 巻線軸種別 非磁性軸 磁性軸 (出力一定設計) 出力一定設計) 磁性軸 (界磁電流一定設計) 界磁電流一定設計) 出力容量(MW 出力容量(MW) MW) (相対比) 200 (1) 200 (1) 264 (1.32) Xd (pu) pu) 0.6 0.66 0.5 界磁電流( 界磁電流(A) (相対比) 2600 (1) 2080 (0.8) 2600 (1) 界磁巻線最大磁場( 界磁巻線最大磁場(T) (相対比) 5.32 (1) 4.52 (0.85) 5.56 (1.05) 出力を維持しつつ 界磁電流を20%、 最大磁場を15%低減が期待 同一界磁電流で、 30%の出力向上が期待 巻線取付軸 超電導界磁巻線 非磁性軸(A286 非磁性軸(A286材) A286材) ・極めて高価 ・加工性が悪い(加工費高) 磁性 (Fe-13% Ni材)巻線取付軸 材)巻線取付軸 ・磁性体のため発生磁束増加 ・Ni含有量が低いため安価(半減) 製作条件(プロセス)を変え 複数サンプル(小型モデル)試作、 材料基礎特性、加工性等の検討 高出力密度化 高出力密度化 コスト低減 コスト低減 大容量化 大容量化 大型モデルを試作し製作性、材料 特性、加工性等の基礎検討を得、 適用可能性を検証した 安定性向上 安定性向上 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.5 (83頁 (83頁)参照 高-37 Super--GM GM Super 回転子 磁性巻線取付軸による界磁巻線高密度化の検討 小型モデルによる基礎検討 プロセス検討 溶解プロセスの候補 溶解プロセス ① 真空溶解(VIM炉)→ESR ② 電気炉溶解・VOD(*)精錬→ESR 偏析性調査 偏析回避条件の検討 Mo含有率、冷却速度、等 Mo含有率、冷却速度、等 → 大型化の条件の把握 ③ 電気炉溶解・VOD(*)精錬 VIM:vacuum induction melting ESR:electro slag remelting VOD:真空酸素脱炭炉 溶接性の検討 A286 小型モデル 試作 溶接感受性は SUS316LNと SUS316LNと同レベル → 溶接可能性大 SUS316LN 9%Ni 9%Ni 13%Ni Ni 13% インゴット(50 インゴット(50kg (50kg鋼塊 kg鋼塊) 鋼塊):φ150× 150×280 280 mm 小型モデル(50 小型モデル(50kg 50kgインゴット)による製作プロセス、材料特性、偏析性、溶接性等の基礎特性を検証 kgインゴット)による製作プロセス、材料特性、偏析性、溶接性等の基礎特性を検証 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.5 (84頁 (84頁)参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組合 高-38 Super--GM GM Super 回転子 磁性巻線取付軸による界磁巻線高密度化の検討 実機相当モデル(実機同径、軸長1/2 実機相当モデル(実機同径、軸長1/2)による検討 1/2)による検討 1 60 0 T.S .(MPa) T.S .(MPa) 0 .2 % Y.S .(MP a) 0 .2 % Y.S .(MP a) [外径:620 外径:620mm :620mm、 mm、内径:300 内径:300mm, :300mm,長さ mm,長さ:2 長さ:2m( :2m(実機の約 m(実機の約1/2 実機の約1/2), 1/2),重量 ),重量: 重量:約 2トン] トン] 切削加工試験結果: 切削加工時間はA286 A286の 切削加工時間は A286の1/2 0 .2 % 耐 力 、 引 張 強 さ ( M Pa) 1 40 0 1 20 0 1 00 0 引張強さ 80 0 60 0 0.2%耐力 40 0 Open : 非偏析部 Solid : 偏析部 20 0 :開発指標(0.2%耐力) 0 0 50 10 0 150 200 250 3 00 3 50 温度 (K) 加工コスト低減の可能性 切削加工試験状況 常温(300 常温(300K) (300K)、 K)、LN2(77K)、 (77K)、LHe(4K) LHe(4K)での (4K)での 材料強度を満足 ・製作性、材料強度、加工性を試験し、 超電導発電機の一層の高密度化、低コスト化の可能性を検証 ・オプション設計へ反映した 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.5 (88頁 (88頁)参照 高-39 Super--GM GM Super 2.1 高密度化基盤技術の研究開発 高密度化基盤技術の研究開発 2.1.6 研究開発のまとめ 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.6 (91頁 (91頁)参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組合 高-40 Super--GM GM Super 全体 高密度化基盤技術開発のまとめ ## 各種要素モデル製作、実験による性能検証や数値解析により、個別自 各種要素モデル製作、実験による性能検証や数値解析により、個別自 主目標を達成し、界磁巻線の高密度化、 主目標を達成し、界磁巻線の高密度化 主目標を達成し、界磁巻線の高密度化、 、電機子巻線の高密度化のため 電機子巻線の高密度化のため 主目標を達成し、界磁巻線の高密度化、 の基本計画目標を達成した。 の基本計画目標を達成した。 ## 加えて、モデル製作と基本性能評価を通じ、磁性材(13% 加えて、モデル製作と基本性能評価を通じ、磁性材( 13% Ni 加えて、モデル製作と基本性能評価を通じ、磁性材(13% 13%Ni Ni鋼)の界磁 鋼)の界磁 加えて、モデル製作と基本性能評価を通じ、磁性材(13%Ni 13%Ni鋼)の界磁 Ni鋼)の界磁 巻線取付軸への適用性と、一層の高密度化と製造コスト低減の可能性 巻線取付軸への適用性と、一層の高密度化と製造コスト低減の可能性 を明らかとした。 を明らかとした。 20万 20 kW 20万 万kW級超電導発電機の高密度化のための基盤技術を確立 kW級超電導発電機の高密度化のための基盤技術を確立 級超電導発電機の高密度化のための基盤技術を確立 20万 kW級超電導発電機の高密度化のための基盤技術を確立 得られた成果を、最終基本設計や磁性巻線取付軸を用いた 得られた成果を、最終基本設計や磁性巻線取付軸を用いた オプション設計に反映 オプション設計に反映 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.6 (91頁 (91頁)参照 高-41 Super--GM GM Super 全体 高密度化基盤技術開発の波及効果 #高密度超電導素線・導体、界磁巻線技術 $ 高電流密度で、静的・動的ともに厳しい運転条件に耐え得る超電導線・超電導コイル技術を 提供 #電機子巻線の高密度化技術 $ 二重転位型の高密度、低損失導体や積層薄板SUS 二重転位型の高密度、低損失導体や積層薄板SUSティース構造による電機子導体支持方法 SUSティース構造による電機子導体支持方法 ->高磁場・コンパクトが要求される機器の低損失・高強度支持構造を提供 ->現用機の電機子の渦電流損等の漂遊損低減、冷却性能向上(現用機の高効率化、大容量化) #多重円筒回転子、13% 多重円筒回転子、13%Ni 13%Ni磁性巻線取付軸技術 Ni磁性巻線取付軸技術 $ 一層の高密度化、コンパクト化、コスト低減を図った超電導発電機製作の可能性 $ 13%Ni 13%Ni鋼の高温超電導発電機・モータ等の回転機への応用や超電導機器一般への応用 Ni鋼の高温超電導発電機・モータ等の回転機への応用や超電導機器一般への応用 $ 現用発電機の回転子の超電導化による高効率化 #FEM等の数値解析技術 FEM等の数値解析技術 $ 数値シミュレーション技術の回転電機や交流機器への応用: 数値シミュレーション技術の回転電機や交流機器への応用: ->より高精度で迅速な電気機械の研究・開発 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.1.6 (92頁 (92頁)参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組合 高-42 Super--GM GM Super 2.2 大容量化基盤技術の研究開発 2.2 大容量化基盤技術の研究開発 2.2.1 超電導導体および界磁巻線の大容量化技術 2.2.1 超電導導体および界磁巻線の大容量化技術 2.2.2 2.2.2 部分モデルによる開発技術の実現検証と製作技術 2.2.3 大容量化に適した多重円筒回転子構造 2.2.3 大容量化に適した多重円筒回転子構造 2.2.4 電機子巻線大容量化技術 2.2.4 電機子巻線大容量化技術 2.2.5 大容量発電機開発成果のまとめ 2.2.5 大容量発電機開発成果のまとめ 2.2.6 大容量化に適した高性能冷凍システム 2.2.6 大容量化に適した高性能冷凍システム 2.2.7 研究成果の波及効果 2.2.7 研究成果の波及効果 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.1 P.94 P.94 参照 大- 1 Super--GM GM Super 超電導素線&導体 超電導導体の大容量化技術の個別自主目標 超電導導体の大容量化技術の個別自主目標と結果 個別自主目標と結果 大容量で低コストの超電導導体 大容量で低コストの超電導導体 → 高Jc → 高Jcで素線径が太く撚本数 Jcで素線径が太く撚本数の少ない で素線径が太く撚本数の少ない導体を開発 の少ない導体を開発 開発課題 個別自主目標 開発結果 主要技術 素線&導体 素線径 の大容量化 Jc at 5T Ic( Ic(導体臨界電流) at at 8.2T Φ2mm級素線 2mm級素線 3.3kA/mm 3.3kA/mm2 8.5kAat8.2T 素線径=2 素線径=2mm =2mm 3.13kA/mm2 9.2kAat8.2T ・押出径の大径化 (90mm 90mmΦ) mmΦ) ・3回時効熱処理 ・3回時効熱処理 ・加工工程の最適化 ≦200kW/m 200kW/m3 約100 100kW/m kW/m3 ・素線損失計算 ・CuNi配置 CuNi配置/ 配置/Snメッキ Snメッキ 銅比2.4 Cu-Ni量低減 Cu Ni量低減 ・断面構成比 ・Snメッキ 導体の低損 導体交流損失 失化 その他 導体安定性 導体の可とう性 Jc; Jc;素線NbTi 素線NbTi部分の臨界電流密度 NbTi部分の臨界電流密度 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.1(1) 2.2.1(1)P.97 (1)P.97 P.97 参照 大- 2 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 Super--GM GM Super 超電導素線&導体 大径素線と導体の概略構成と製作 大径素線と導体の概略構成と製作方法 概略構成と製作方法 材料 素線;Cu 素線;Cu/ Cu/CuNi/ CuNi/NbTiの NbTiの3層構造+Snメッキ Snメッキ Cu CuNi NbTi+Cu NbTi Cu+CuNi Cu CuNi Cu+CuNi Cu CuNi Cu 組立 2mmΦ mmΦ 大径素線 ビレット 大径押出 安定化銅 Snメッキ Snメッキ 加工 間隔 時効熱処理 間隔 加工 ECT ツイスト LASER 成形撚線導体(3.59×9.93) 導体; 素線×10本撚線 Snメッキ 成形撚線 CMM 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.1(1) P.98 P.98 参照 大- 3 Super--GM GM Super 超電導素線&導体 素線の電流密度の増加/Jcの増加 Jc@5 Jc@5T=3130A/mm @5T=3130A/mm2と自主目標の約95 と自主目標の約95%を 95%を 達成 3500 3000 Jc (A/mm2@5T) フェーズIに比べてJc フェーズIに比べてJcは約3割向上 Jcは約3割向上 素線を2 素線を2mmφ mmφに太径化しても、細線(1 に太径化しても、細線(1mm 細線(1mm級) mm級) と同等のJc と同等のJcを得ることができた。 Jcを得ることができた。 Jc増加のための熱処理と加工度に Jc増加のための熱処理と加工度に関する 増加のための熱処理と加工度に関する ノウハウが得られた。 ノウハウが得られた。 押出 90φ H15開発素線 (Jc@8T=1277) H14開発素線 (Jc@8T=1269) HT εtotal=9.21 断面構成(Snメッキ) εf=4.5 H13開発素線 (Jc@8T=1217) H12開発素線 (Jc@8T=1170) εtotal=9.21 最終加工度 εf=3.96 εtotal=9.21 0 1 2 3 4 2000 1500 自主開発目標 達成臨界電流密度 フェーズIの 超電導素線の特性ライン 低速応モ デルA機 低速応モ デルB機 1000 HT 1.7φ εf=4.39 εtotal=9.53 総加工度(銅メッキ) εf=4.5 HT 2500 超速応 モデル機 5 6 7 加工度 2.0φ 8 素線の時効熱処理と加工度と得られたJcの関係 9 500 0 0.5 1 1.5 フェーズIのJc フェーズIのJcレベルと今回の Jcレベルと今回の 開発目標、達成値 10 (注)Jc 注)Jc; Jc;NbTi部分の臨界電流密度) NbTi部分の臨界電流密度) 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.1(1) P.99 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 2 超電導素線径(mm) 大- 4 Super--GM GM Super 超電導素線&導体 素線の交流損失の抑制 素線の交流損失の抑制 交流損失許容値の見直し(フェーズⅠ;50 交流損失許容値の見直し(フェーズⅠ;50kW 50kW→ kW→本PJ;200 本PJ;200kW 200kW)& kW)&Snメッキ )&Snメッキの採用 Snメッキの採用に の採用に より、素線断面構造を簡素化し、CuNi量を従来より低減 より、素線断面構造を簡素化し、CuNi量を従来より低減 → ◎銅比の増加 → ◎銅比の増加( ◎銅比の増加(2.0→ 2.0→2.4)/安定性が 2.4)/安定性が向上 )/安定性が向上 向上 ◎導体の ◎導体の可とう性が 可とう性が向上 性が向上 素線の交流損失 → CuNiの配置見直しにより、太径化にも拘わらず、 → CuNiの配置見直しにより、太径化にも拘わらず、 素線の交流損失 素線の交流損失を約 損失を約80 を約80kW/m 80kW/m3に抑制できた に抑制できた 導体交流損失;100 100kW kW 導体交流損失;100 目標( 200kW/m 200kW/m3 以下) を達成 素線間交流損失 素線間交流損失 → Snメッキを適用しても約 → Snメッキを適用しても約20 Snメッキを適用しても約20kW/m 20kW/m3に抑制できた 1.6mm 1.6CmmΦ mmΦ u CuN i 太径化 簡素化 2.0mm 2.0mmΦ mmΦ Cu Cu CuNi Cu 2 (0.56) CuNi CuNi 2 (0.01) Cu CuNi 3 (0.14) Cu 3 (1.55) Cu1 CuNi1 (0.30) (0.25) CuNi Cu / CuNi / NbTi比 = 2.0 /0.7 / 1.0 = 0.54 / 0.19 / 0.27 8.8µm 1.61mm フェーズⅠ フェーズⅠ 開発素線 表面高抵抗 メッキ処理 0.73mm NbTi NbTi 0.77mm CuNi低減 CuNi低減 Snメッキ適用 Snメッキ適用 銅比増加 20.2µm 1.49mm 21.9µm 1.54mm 23.9µm 2.00mm Cu / CuNi / NbTi比 = 2.41 / 0.40 / 1 = 0.633 / 0.105 / 0.262 本プロジェクト開発素線 本プロジェクト開発素線 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.1(1) P.101 参照 大- 5 Super--GM GM Super 超電導素線&導体 超電導素線と導体の大容量化技術成果のまとめ 個別自主目標と成果(達成状況)、およびフェーズⅠ実績との比較 個別自主目標と成果(達成状況)、およびフェーズⅠ実績との比較 フェーズI 実績 素線径 (mm) NbTiフィラメント径 NbTiフィラメント径 (μm) 素 Cu/CuNi/NbTi比 NbTi比 線 Cu/CuNi/NbTi Jc (kA/mm2) 導体構成素線本数 導 臨界電流 Ic 臨界電流 Ic ( Ic (k (kA) 体 交流損失 (kW/m3) (低速応モデルB機) 個別自主目標 値 開発成果 1.61 2.0級 2.0級 2.00 8.8 ------ 20.2 2.0 / 0.7 / 1 ------ 2.4 / 0.4 / 1 2.44 @5T @5T 1.34 @7T ≧3.3 @5T @5T @5T T 3.13 @5 1.89 @7T/ @7T/1.16 @8.2T 9本 ------ 10本 10本 @5T T 12.06 @5 6.62 @7T ≧8.5 @8.2T @8.2T 23.64(Iq) 23.64(Iq) @5T 9.2 @8.2T 49.8 @4.6T, @4.6T, 5T/s ≦200 @5T, @5T, 5T/s 約100 @5T, @5T, 5T/s 個別自主目標をほぼ達成 大面積で高Jc・低損失な大容量導体を開発した 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.1(1) P.103 大- 6 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 Super--GM GM Super 回転子 回転子関係の開発目標と達成度 項目 界磁電流 回転子径 達成度 5700 A ○ 基本目標 6000A 6000A級 φ1100mm級 1100mm級 基本目標を達成するための十分条件として より細分化した個別自主目標を設定 項目 導体臨界電流 導体交流損 巻線 導体 安定性 界磁巻線 冷却、支持構成 耐電圧特性 9200 A 約100 kW/m3 9500A以上 初回クエンチ電流 6840A 発電所至近端系統での突発短絡発生時にクエンチしないこ と(界磁電流 1.5pu/s、4サイクルでクエンチ無し) 2.25 pu/s (6サイクル) でクエンチ無し ○ ○ すかせ巻絶縁適用と固定面圧向上による安定性向上 常温ダンパ強度 フォーシング時電流からのクエンチ発生時に絶縁が健全 φ 2mm 大 径 導 体 の 適 切 な く ら 型 巻 線 法 の 適 用 に よ る 安 定 性 確保 端子突発短絡時の電磁圧縮力に耐えること (発生応力700MPa以下) 650MPa 低温ダンパ強度 同上(発生応力300MPa以下) 200MPa 巻線製作法 多重円筒 回転子 自主開発目標 8500 A (8.2T) 200 kW/m3 (at 5T、5T/s) 以下 巻線取付軸強度 フレキシブル ディスク強度 フォーシング時の電磁力に耐えること (発生応力700MPa以下) 端子突発短絡時のトルクに耐え、熱収縮量20mm級を許容す ること(発生応力830MPa以下) ○ 525MPa 824MPa 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.1(2) P.104 P.104 参照 大- 7 Super--GM GM Super 回転子 界磁巻線導体の臨界電流 界磁巻線と同一導体絶縁構成の短尺導体モデルを製作し、臨界電流を計測 25 電流端子 ρ=10 超電導線 (導体絶縁付) Ic(kA) 通電電流(kA) 20 -14 Ωm基準 素線臨界電流値x10本 クエンチ電流実測値 15 最大電流 6840A 6840A、5.8T ● 10 5 × 実測値 9200A 実測値 9200A @8.2T 目標値 8500 目標値 8500A 8500A、8.2T 0 4 5 6 7 8 9 10 磁束密度(T) B(T) 臨界電流計測用短尺導体モデル 臨界電流計測結果 導体臨界電流;9200 導体臨界電流;9200A 9200A@ 8.2Tを達成 ≧ 自主目標 8.2Tを達成 ≧ 自主目標 8500 を達成 ≧ 自主目標 8500A 8500A@8.2T 運転時電流最大条件(6840 運転時電流最大条件(6840A (6840A、5.8T)の2倍以上の電流余裕を確保 5.8T)の2倍以上の電流余裕を確保 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.1(2) P.107 P.107 参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 大- 8 Super--GM GM Super 回転子 界磁巻線導体の交流損 導体交流損を短尺導体モデルにより計測 導体押え面圧による交流損の変化を計測 交流損計測 用短尺導体 モデル 交流損失の押え面圧特性 Snメッキ外皮 2mmΦx10本 50 固定台 Q(kW/m ) 40 3 巻枠 超電導線 EPGバンド EPGバンド 30 20 Bac=0.3T Bバイアス=5T 10 0 0 受け台 (中央部から引上げ) ①交流損;100 ①交流損;100kW/m 100kW/m3@(at @(at 5T、 5T、5T/sec) 5T/sec) ↓ 自主目標値 200 自主目標値 200kW/m 200kW/m3を達成 10 20 30 圧縮力 (MPa) 40 50 ②交流損は押え圧力により殆ど変化しない ②交流損は押え圧力により殆ど変化しない 交流損失は増加しない ↓ フェーズⅠより導体固定面圧を上げて安定性 を向上させることが可能 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.1(2) P.109 P.109 参照 大- 9 Super--GM GM Super 回転子 単コイルモデルの概要 ◎60万 60万kW機の界磁巻線スロット構成を模擬し、コイル長さを縮長した kW機の界磁巻線スロット構成を模擬し、コイル長さを縮長した レーストラック型コイルに実機相当の磁界を得るためにバイアスコイルを使用 ◎超電導安定性の向上のためにフェーズⅠの約2倍の面圧を巻線に印可 360 ①直流通電試験; クエンチ電流を計測 界磁巻線 単コイル モデル ②パルス通電試験; 系統の三相突発短絡故障に相当する界磁電流変 化を与えて安定性(クエンチの有無)を確認 面圧印加方向 単コイル バイアスコイル 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.1(2) P.111 P.111 参照 大- 10 Super--GM GM Super 回転子 単コイルモデルの試験結果 20000 臨界電流 通電電流 通電電流((A) 14000 短絡発生前 実測値 12000 10000 単コイルバイアス励磁 8000 定格電流 6000 ■ ■ × 運転時最大電流 4000 通電電流(kA) 16000 短絡除去後 電流 短絡中 端子電圧 (4.8T,5700A) 2000 端子電圧(V) 18000 60万 60万kW機ロードライン kW機ロードライン 0 0 2 4 6 8 10 磁束密度(T) パルス通電試験計測結果 (突発短絡を模擬) 直流通電試験計測結果 ① 初回クエンチ電流で、運転時最 大電流値(フォーシング時:6840 大電流値(フォーシング時: 6840A 6840 A) 以上を達成 ②最終負荷率はほぼ100 ②最終負荷率はほぼ100%を達成 100%を達成 ③系統の三相突発短絡故障時の界 磁電流変化相当の電流変化を加 えた場合でもクエンチ発生しな い 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.1(2) P.113 P.113 参照 大- 11 Super--GM GM Super 回転子 部分モデルの目的と概要 バイアスコイル 60万 60万kW機の直線部を短縮、 kW機の直線部を短縮、#1 #2スロットを 機の直線部を短縮、#1、 #1、#2スロットを 模擬したモデル 超電導安定性の向上のためにフェーズⅠの約2倍の 面圧を巻線に印可 #1スロット コイル 大径超電導線を用いたくら型界磁巻線製作法の確立 #2スロット 直流通電、パルス通電試験による巻線安定性の検証 コイル 部分モデルの 部分モデルの諸元 界磁 電流 定格 最大(フォーシング 取付軸外径 界磁 巻線 スロット数 #1スロット #2スロット 最大磁界 部分モデル 5700A 6840A 10本撚り線 φ800 mm 4 (2コイル) 60万kW機 5700A 6840A 10本撚り線 φ800mm 24 (12コイル) 5段×8列 4.8T 5段×8列 4.8T 構成 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.2 P.117 参照 大- 12 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 Super--GM GM Super 回転子 部分モデルの試験結果 短絡発生前 30000 短絡除去後 25000 最大通電電流 15000 モデルコイル 単独 モデル+ バイアス 短絡中 発生電圧 電流 (A) 20000 10000 定格電流 5000 60 60万kW機 60万kW機 運転時最大電流 5700A 5700A,4.8T 0 0 2 バイアス磁界 4 6 磁束密度 (T) 8 10 負荷特性と試験結果 運転時最大電流値(6840 運転時最大電流値(6840A) (6840A)に対して A)に対して 十分余裕のある9500 十分余裕のある9500A 9500A以上の通電を確認 時間(sec) パルス通電試験計測結果 系統の三相突発短絡に相当する界磁電流 変化に対して、クエンチ発生無し 耐電圧試験により絶縁の健全性を検証 大断面積(高剛性)導体の鞍型巻線技術の妥当性を検証 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.2 P.124 参照 大- 13 Super--GM GM Super 回転子 部分モデル試験結果のフェーズⅠとの比較 大容量化基盤技術の結果 クエンチ 電流(A) ) 電流( >9500 導体電流密度 (A/mm2) A/mm2) >267 負荷率(%) 負荷率 >85 フェーズⅠの結果 (モデル機ロータ静止試験) クエンチ 電流(A 電流(A) 初回 4330 最終 4730 導体電流密度 (A/mm2) A/mm2) 初回 202 最終 220 初回 85 最終 93 負荷率(%) 負荷率(%) ◎大電流化により、フェーズⅠの約2倍の通電が可能(クエンチ発生無し) ◎高電流密度化により、フェーズⅠに比べて、クエンチ時の電流密度が 30 30%以上向上 30%以上向上 ◎大面積、大電流の界磁巻線導体で、フェーズⅠと同等の負荷率を達成 要素モデル、部分モデルの試験結果及び解析検討から、定格電 流6000A 6000A級が可能な界磁巻線であることを確認 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.2 P.127 参照 大- 14 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 Super--GM GM Super 多重円筒回転子 大容量機に適したダンパ構成 大容量化による電磁圧縮力、トルク増加 → 常温ダンパ(かご型)、低温ダンパ(単層)の強度評価を実施 端子三相突発発短絡時のミーゼス応力解析を実施 最大応力発生位置 拡大図 最大ミーゼス応力 210MPa 210MPa 常温ダンパ応力解析結果 注)最終基本設計では、より 応力の小さい単層ダンパを採用 常温ダンパスロット底部の平均ミー ゼス応力は650 ゼス応力は650MPa 650MPaと材料の MPaと材料の0.2 と材料の0.2%耐 0.2%耐 力700MPa 700MPa以下 MPa以下 → 強度的に問題無し 低温ダンパ応力解析結果 低温ダンパ最大ミーゼス応力は 210MPa 210MPaと MPaと材料の0.2 材料の0.2%耐力 0.2%耐力300 %耐力300MPa 300MPa 以下 → 強度的に問題無し 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.3 P.131 参照 大- 15 Super--GM GM Super 多重円筒回転子 大容量機に適した巻線取付軸構成 界磁電流、電流密度の増加による電磁力増加に対応して、巻線取付軸の 強度評価を実施 電磁力最大となるフォーシング時のミーゼス応力解析を実施 解析例 磁束密度分布 巻線取付軸のミーゼス相当応力分布 電磁力分布 最大発生応力は535 最大発生応力は535MPa 535MPaと材料の MPaと材料の0.2 と材料の0.2%耐力 0.2%耐力700 %耐力700MPa 700MPa以下であり問題無い MPa以下であり問題無い 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.3 P.135 参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 大- 16 Super--GM GM Super 多重円筒回転子 大容量機に適したフレキシブルディスク構成 大容量化による突発短絡トルク増加 軸長の増加による軸方向熱収縮量の増加20 軸長の増加による軸方向熱収縮量の増加20mm 20mm に対応するフレキシブルディスクを設計 に対応するフレキシブルディスクを設計 フレキシブルディスク フレキシブルディスク 短絡トルク最大となる 端子線間突発短絡時の応力を評価 常温ダンパ フレキシブル ディスク1枚 当たりのミー ゼス相当応力 分布 端部軸 回転子断面 フレキシブルディスク10 フレキシブルディスク10枚適用 10枚適用(注)により、 ・突発短絡時最大応力は824 ・突発短絡時最大応力は824MPa 824MPaと材料の MPaと材料の0.2 と材料の0.2%耐力 0.2%耐力830 %耐力830MPa 830MPa以下を達成 MPa以下を達成 ・熱収縮量20 (注)単層ダンパ適用時。籠型ダンパ適用時は30枚。 30枚。 ・熱収縮量20mm 20mmを吸収可能 mmを吸収可能 (注)単層ダンパ適用時。籠型ダンパ適用時は30 多重円筒回転子(ダンパ、巻線取付軸及びフレキシブルディスク)の強度 解析から → 回転子外径φ 解析から → 回転子外径φ1100mm級が強度上問題ないことを確認 1100mm級が強度上問題ないことを確認 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.3 P.136 参照 大- 17 Super--GM GM Super 電機子 電機子関係の開発目標と達成度 項目 電機子電流 達成度 15.4kA 15.4kA 基本目標 15kA 15kA級 kA級 基本目標を達成するための十分条件として より細分化した個別自主目標を設定 項目 個別自主目標 達成度 導体温度 ・ 13 0℃(B 種絶縁温度)以下 9 1℃ コイル圧縮強度 ・ 端子突発短絡時の電磁力に耐えること ○ コイル電気特性 ・ 現用機並みの絶縁特性を有すること ○ 巻線支持部強度 ・ 端子突発短絡時の電磁力に耐えること ○ 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.4 P.139 参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 大- 18 Super--GM GM Super 電機子 電機子巻線の運転時の温度と絶縁性能 電機子巻線直線部を模擬した短尺モ デルを製作 定格電流通電時の素線温度、絶縁 特性を検証 通電短尺モデル 電気試験 中の短尺 モデル 15.4kA 15.4kA通電時、素線温度が kA通電時、素線温度が91 通電時、素線温度が91℃と 91℃と 130℃( ℃(B 130 ℃(B種絶縁温度)以下を確認 試験項目 結果 判定の目安 tanδ tanδ1(%) 0.84 1.0 tanδ tanδ2(%) 0.55 1.0 部分放電 試験 Qmax1( Qmax1(pC) pC) 2700 5000 Qmax2( Qmax2(pC) pC) 10.000 10000 耐電圧 試験 破壊電圧 (kV) kV) 160以上 160以上 2E+1( E+1(JEC) JEC) tanδ tanδ試験 耐電圧性能など規定値を満足す る結果が得られ、絶縁構成の妥 当性を確認 通電試験計測結果 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.4 P.142 参照 大- 19 Super--GM GM Super 電機子 電機子巻線の強度 電機子巻線直線部の断面構成を模擬した短尺モデルを製作 端子三相突発短絡時相当の荷重を印加して導体変形量を計測 面圧印加面 変位(mm) 変位(mm) 半径方向圧縮モデル 半径方向剛性試験結果 突発時面圧 2.4 突発時面圧 2.4MPa 2.4MPa 面圧( 面圧(MPa MPa MPa) ) 面圧( 面圧(MPa MPa MPa) ) 突発時面圧 17 突発時面圧 17MPa 17MPa 変位(mm) 変位(mm) 円周方向剛性試験結果 半径方向、円周方向ともに系統突発短絡時の面圧の2倍以上の強度がある ことを確認した 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.4 P.143 参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 大- 20 Super--GM GM Super 電機子 大電流電機子巻線の支持構造 電機子巻線直線部支持構造を模擬したモデルを製作 端子三相突発短絡時相当の荷重(450 端子三相突発短絡時相当の荷重(450t) (450t)に対する支持部の歪計測 t)に対する支持部の歪計測 3000 11000 ウェッジ (ガラスエポキシ積層板) 歯部 電機子コイル (同上) 材料強度10500 材料強度10500μ 10500μs 11000 2500 10000 歪( 歪(μ μStrain train) ) 突発短絡時相当の荷重を印加 ~ ~ 10500 2000 最大歪 材料強度 10500μ 10500μ strain 1500 ×▲◆ :実測結果 1000 歪計測素子取付け位置 空隙巻線支持構造 最大発生歪は約1700 最大発生歪は約1700μ 1700μsと材料強度の1/6以下 突発短絡時の支持部強度の健全性を確認 500 最大荷重 0 0 100 200 300 400 500 600 荷重(N) 支持部剛性試験結果 要素モデル試験結果と各種解析から、定格電流15 要素モデル試験結果と各種解析から、定格電流15kA 15kA級が可能な kA級が可能な 電機子巻線であることを確認 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.4 P.145 参照 大- 21 Super--GM GM Super 回転子、電機子関係のまとめ 定格電流6000 定格電流6000A級の界磁巻線について、要素モデル、部分モデルを作成し 6000A級の界磁巻線について、要素モデル、部分モデルを作成し 通電試験を実施した結果、定格運転時、系統事故時ともに安定性は良好で あることを検証し、個別自主目標の達成を確認した 基本目標;6000 基本目標;6000A 6000A級の界磁巻線を達成 回転子径φ 回転子径φ1100mm級の多重円筒回転子について、数値解析により強度評価 1100mm級の多重円筒回転子について、数値解析により強度評価 を実施した結果、強度上問題ない構造であることを検証し、個別自主目標 の達成を確認した 基本目標;1100 基本目標;1100mm 1100mmΦ mmΦ級の多重円筒回転子を達成 定格電流15 定格電流15kA 15kA級電機子巻線の要素モデルを製作し、各種試験を実施した結 kA級電機子巻線の要素モデルを製作し、各種試験を実施した結 果コイル温度、絶縁特性、コイル剛性、巻線支持強度は何れも良好である ことを検証し、個別自主目標の達成を確認した 基本目標;15 基本目標;15kA 15kA級 kA級の電機子巻線を達成 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.5 P.147 参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 大- 22 Super--GM GM Super 超電導線材、発電機開発技術の波及効果 超電導線材開発成果の波及効果 ①時効熱処理回数の低減と熱処理間隔の最適化応用例: 各種高性能NbTi NbTi超電導線材の低コスト化( 各種高性能 NbTi超電導線材の低コスト化(NMR 超電導線材の低コスト化(NMR、 NMR、核融合、加速器、磁気浮上列車等) ②NbTi線材の大径化応用例: NbTi線材の大径化応用例: 各種超電導磁石の巻数低減、超電導パワーリードの撚線数低減 ③交流損失設計技術の高精度化応用例: SMES等の線材の開発効率化、磁気浮上列車等の線材の量低減(軽量化) SMES等の線材の開発効率化、磁気浮上列車等の線材の量低減(軽量化) 発電機開発成果の波及効果 ①くら型界磁巻線製作技術の応用例 ①くら型界磁巻線製作技術の応用例 加速器の生成粒子検出器用の超電導マグネットの製作 ②ヘリウム冷却技術の応用例 高温超電導回転電機 ③電磁界解析技術応用例 現用回転電機の設計 突発短絡など故障時の発電機の状態解析 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.7 P.185 参照 大- 23 Super--GM GM Super 2.2 大容量化基盤技術の研究開発 2.2 大容量化基盤技術の研究開発 2.2.6 大容量化に適した高性能冷凍システム 2.2.6 大容量化に適した高性能冷凍システム 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.6 2.2.6 P.148 P.148 参照 大- 24 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 Super--GM GM Super 冷凍システム 開発目標と成果のまとめ フェーズⅠを基に、発電機熱負荷の変化に伴う冷凍システムの運転状態の変 動に追従可能な高性能タービンとオイルフリー冷凍システムを開発する 熱負荷の変化に対して高効率と高信頼性を維持する膨張タービンの開発 高性能化のための開発項目 個別自主目標 達成度 高効率化 広帯域での高効率化を 実現する可変容量膨張 実現する可変容量膨張 タービン 送液効率(150 送液効率(150l/h (150l/h級 l/h級) 1.8∼ 1.8∼2.8kW/(l/h) 2.8kW/(l/h) (運転領域50 運転領域50∼ 50∼120%) 2.0∼ 2.0∼2.5 高信頼化 熱負荷の変動を回転数 の変化により追従し、 同時に信頼性を低下さ せない高負荷軸受 せない高負荷軸受 冷凍システムとして の連続運転時間: 20000時間 20000時間 20328時間 20328時間 システム全体の信頼性 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.6 2.2.6 P.148 P.148 参照 大- 25 Super--GM GM Super 冷凍システム 可変容量膨張タービン技術(高効率化) タービン入口圧力の変化でなく、タービン容量を変化させて、低負荷運転に於 いても効率低下が小さくできる、可変容量膨張タービンを開発 制動ブロワ 冷却水 出口 スラスト軸受 ジャーナル軸受 軸 回転計 タービンインペラ 可変容量機構 パルスモータ スクロール面積可変機構の採用 1.1 タービン効率 η/ηdesign 入口 大気 低負荷に於けるタービン効率 1.0 0.9 0.8 0.7 0.6 低負荷運転時の 効率の向上 ■高温側可変容量タービン ◇バルブ絞り方式 0.5 0.4 0.3 0% 20% 40% 60% 80% 100% 120% 140% 流量比 定格の50% 50%流量に於いて、定格の 流量に於いて、定格の90% 90%の 定格の 50% 流量に於いて、定格の 90% の タービン効率の維持が可能 出口 入口 真空容器内 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.6 P.153 P.153 参照 大- 26 Super--GM GM Super 冷凍システム 膨張タービン用高負荷軸受技術(高信頼化) 急激な熱負荷変動(定格負荷→トリップ→ター ニング)の発生をタービンの回転数変化によっ て吸収可能な高性能膨張タービン (タービン回転数を可変にすると軸系の安定性が低下) 回転数の変動に対しても軸系を安定化させ信 頼性を損なわない高負荷(高剛性)軸受を開 発する 発する 気体軸受部の軸受隙間やその形状の 最適化 軸受を動圧型と静圧型を組合せたハイ ブリッド型軸受化 ブロワガス入口 ブロワ動翼 ブロワガス出口 回転計 φ 0.5 スラスト軸受 r ) θ 高負荷ハイブリッド 軸受設計例 ラジアル軸受 ノズル(静翼) β タービン動翼 タービンガス入口 タービンガス入口 タービンガス出口 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.6 P.163 P.163 参照 大- 27 Super--GM GM Super 冷凍システム 大容量化に適した高性能冷凍システム 高負荷軸受と可変容量機構の膨張タービン設計技術の成果をもとに、高性能ヘリウム冷 凍システムを構築・設計する。 効率低 効率高 可変容量機構により、 100~ 100~150L/h 150L/hの 負荷範囲 L/hの 負荷範囲 で液送効率;2 で液送効率;2~2.5と、自主目標を達成。 2.5と、自主目標を達成。 高負荷軸受等を考慮して信頼性を評価を行い、 MTBF( 平均故障間隔);20328 20328h MTBF(平均故障間隔); 20328hと、目標の 20000 と、目標の 20000h 20000h 達成の見通しを得た。 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.6 P.174 P.174 参照 大- 28 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 Super--GM GM Super 冷凍システム 既設火力へのリプレース導入への対応検討 超電導発電機の初期導入 → 既設火力機のリプレイス導入 制約された設置スペースへの冷凍システム設置を可能とする 制約された設置スペースへの冷凍システム設置を可能とする タービン建屋 3F 発電所タービン建屋3階面への設置 システム構成の簡略化 構成機器のコンパクト化 低圧段タービン 発電機ローター引き抜きエリア 発電機 通路 VB01 +CB02 10000 空きスペースへ の配置計画例 機器搬出 用ハッチ CB01 6300 機器メンテナンスエリア 制御盤等 ヘリウム供給/戻り配管 タービン建屋 1F (タービン建屋) (3Fより) 搬入口 機械室(2) コールドボックスのコンパクト化&横置化 8100 C00 機械室(1) 既設発電所に導入の際に、限られた空きス ペースにシステムが設置可能であることを 確認した ST02 7500 構内道路 緑地エリア タービン建屋に隣接して設置 グラウンド面 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.6 P.179 P.179 参照 大- 29 Super--GM GM Super 冷凍システム 冷凍システム開発成果のまとめ フェーズⅠを基に、発電機熱負荷の変化に伴う冷凍システムの運転状態の変動 に追従可能な高性能タービンとオイルフリー冷凍システムを開発した 熱負荷の変化に対して高効率を維持し、かつ信頼性を低下させない可変容量ター ビンおよびタービン用高負荷軸受を開発した 高性能化のための開発項目 個別自主目標 達成度 高効率 広帯域での高効率化を実現する 化 可変容量タービン 送液効率(150l/h級) 1.8∼ 1.8∼2.8kW/(l/h) 2.8kW/(l/h) (運転領域50∼120%) 2.0∼ 2.0∼2.5 高信頼 熱負荷の変動を回転数の変化で 化 追従可能で同時に信頼性を低下 させない高負荷軸受 高負荷軸受 冷凍システムとしての 連続運転時間: 20000時間 20000時間 20328時間 20328時間 システム全体の信頼性 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.6 P.148 P.148 参照 大- 30 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 Super--GM GM Super 冷凍システム開発技術の波及効果 超電導発電機以外の高性能/高信頼性を要求される超電導機器用ヘリウム冷凍機へ の適用が可能 対象機器; ①SMES 対象機器; ①SMES ② SMES ②核融合 ③超電導送電 ④超電導変圧器 ⑤加速器 ②核融合 ③超電導送電 ④超電導変圧器 ⑤加速器 各開発技術の応用例 ①80K ①80K圧縮機駆動用発電膨張タービン: 膨張タービンを高温ガス下で作動させる圧縮機駆動用発電膨張タービンへ応用 ②MATLABによるシミュレーション: MATLABによるシミュレーション: 冷凍システム一般のシミュレーションへ応用 ③高負荷軸受の設計技術: 一般の小型タービン軸受への適応 ④常温不純ガス除去システム: ヘリウム圧縮機用オイルセパレータの高性能化・実用化 ⑤高温側コールドボックス: 吸着式冷凍機の高性能化,運転方法の改良、不純ガス計測技術の応用 ⑥低温側コールドボックス 高真空生成技術への応用 ⑦膨張タービン: 高膨張比タービン翼設計技術、変位計測定技術への応用 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.2.7 P.186 参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 大- 31 Super--GM GM Super 2.3 2.3 設計技術の研究開発 2.3.1 超電導発電機に対する 2.3.1 超電導発電機に対する 電力系統からの要求仕様 2.3.2 高密度 2.3.2 高密度20 高密度20万 20万kW級超電導発電機の設計技術 kW級超電導発電機の設計技術 2.3.3 大容量 2.3.3 大容量60 大容量60万 60万kW級超電導発電機の設計技術 kW級超電導発電機の設計技術 2.3.4 超電導発電機の導入シナリオ 2.3.4 超電導発電機の導入シナリオ 2.3.5 設計技術のまとめと波及効果 2.3.5 設計技術のまとめと波及効果 設-1 Super--GM GM Super 2.3 2.3 設計技術の研究開発 2.3.1 超電導発電機に対する 2.3.1 超電導発電機に対する 電力系統からの要求仕様 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.3.1参照 2.3.1参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 設-2 SuperSuper-GM 超電導発電機への電力系統からの要求仕様 都市近郊発電所 (導入対象個所) BP/S 1001 40 j0.453 〔 重_1.0083〕 • 超電導発電機の導入 を想定する都市近郊 発電所を調査 • 要求仕様 ☆運転中の最過酷事象 に耐えること 設計へ反映 ☆電力系統の特性を改 善すること IS/S 60 10 1G 20 1002 1005 1007 0.014+j0.148 (j0.0033) 0.01+j0.065 (j0.0005) j0.453 〔重_1.0083〕 1008 0.004+j0.05 (j0.0012) 150 1003 230 1022 0.0022+j0.04091 (j0.013) 250 240 1030 j0.167 〔重_ 0.9500〕 〔軽_ 1.0500〕 j0.169 〔 重_0.9500〕 〔 軽_1.0500〕 100 260 1033 1032 j0.04925 j0.00125 〔重_ 1.000〕 〔軽_ 1.000〕 140 主系統 主系統 1015 1023 1009 1010 1012 0.01+j0.086 (j0.00) 0.02+j0.21 (j0.0037) 0.01+j0.155 (j0.0021) 110 30 GS/S 130 1014 j0.644 〔重_1.000〕 〔軽_1.000〕 1031 1006 0.014+j0.148 (j0.0014) 90 80 2G 120 50 1004 0.01+j0.081 (j0.00) 1011 1013 0.01+j0.08 (j0.0017) 0.01+j0.1 (j0.001) 160 1016 0.0022+j0.04091 (j0.031) j0.641 〔 重_1.000〕 〔 軽_1.000〕 HS/S 1018 190 0.01+j0.09(j0.007) 3G j0.643 〔重_1.000〕 〔軽_1.000〕 1017 j0.453 0.01+j0.09(j0.012) 1019 170 180 j0.644 〔重_1.000〕 〔軽_1.000〕 1020 1024 0.026+j0.353 (j0.01) j0.642 〔重_1.000〕 〔軽_1.000〕 1021 1025 CP/S 200 1026 220 1028 1G 0.026+j0.353 (j0.01) j0.644 〔重 _1.000〕 〔軽 _1.000〕 R+jX(Y/2)[p.u] [ ]内はタップ値 0.0037+j0.079(j0.046) j0.278 〔重_1.0513〕 210 1027 1029 2G 0.0037+j0.079(j0.046) j0.278 〔重_1.0646〕 〔軽_1.0780〕 モデル系統 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.3.1(1)( 2.3.1(1)(188頁) 188頁)参照 頁)参照 設-3 Super--GM Super 電力系統からの要求仕様 超電導発電機が電力系統で運転中に遭遇する可能性のある最過酷事象と 超電導発電機による電力系統特性の改善を要求 項目 過 渡 電 磁 トル ク 最過 界 磁 巻 線 電流 酷事 変化 象 短 時 間 電 圧上 昇(過励磁) 過渡安定度 系統 特性 改善 短絡容量 要求 発 電 所 高 圧 母 線 至 近 端 で の 三相 短絡 故障 、二 相短 絡故障の最大トルクに耐えること 定 格 出 力 ・ 遅 相 定 格 力 率 運転 で、 最過 酷故 障* 1 発 生による界磁電流変化でも超電導を維持すること 定 格 出 力 ・ 遅 相 定 格 力 率 運 転時 に負 荷遮 断さ れた 場合の過渡的な電圧上昇に耐えること ど の よ う な 発 電 機 の 出 力 で最 過酷 故障* 1 が 発 生し ても安定運転できること 現用発電機の場合の短絡容量を上回らないこと *1;最過酷故障;発電所高圧母線至近端の2回線送電線での1回線三相地絡故障‐開放(開放までの時間; 154kV系で0.1秒、77kV系で0.13秒)という、発生が想定しうる発電機にとって最も過酷な故障 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.3.1(2) (190190-197頁) 197頁)参照 頁)参照 設-4 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 Super--GM Super 電力系統からの要求仕様の検討結果 項目 検討結果 発 電 機 高 圧 母 線 至 近端 での 二相 短絡 故障 が最 電 磁過 渡ト 大トルク⇒設計へ反映 ルク 最 過 界 磁巻 線電 定 格 出力 ・遅 相定 格力 率運 転で の三 相短 絡故 障が最大界磁電流変化⇒設計へ反映 酷 事 流変化 象 短 時間 電圧 定 格 出力 ・遅 相定 格力 率運 転で の負 荷遮 断が 上 昇( 過励 最 大 電圧 上昇 ⇒低 速応 励磁 で過 励磁 (端 子電 圧V/周波数F)を120%以内に抑制可能 磁) 過渡安定度 す べての運転 出力範囲で安 定運転可能⇔ 現用 系統 機は進相運転で不安定となる 特性 短絡容量 遮 断器動作時 間には現用発 電機の場合の 短絡 改善 容量以下に抑制できる 過渡安定度はXdが小さいほど安定となり、短絡容量は が大きいほど抑制できる 過渡安定度は が小さいほど安定となり、短絡容量はXd’が大きいほど抑制できる が小さいほど安定となり、短絡容量は 超電導発電機は過渡安定度(Xdが現用機より小)、短絡容量( 超電導発電機は過渡安定度( が現用機より小)、短絡容量(Xd’ が現用機より小)、短絡容量( ’が現用機と同等) の要求を同時に満足することが可能 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.3.1 (2) (190190-197頁) 197頁)参照 頁)参照 設-5 Super--GM Super 電力系統からの要求仕様の検討例 過渡電磁トルクの検討 (二相短絡時) 負荷遮断後の短時間電圧上昇(過励磁)の検討 1.40 V V/f 1.5 高圧側相電圧[pu] 1 0.5 0 0 0.05 0.1 0.15 0.2 -0.5 -1 電圧 -1.5 電磁トルク[pu] 時間[秒] 6 5 4 3 2 1 0 -1 0 -2 -3 -4 -5 短絡事故発生 最大値 端子電圧(V),過励磁(V/f)の最高 [p.u.] 1.35 1.30 過励磁(V/F)の許容値 の許容値 過励磁( 1.25 1.20 1.15 1.10 1.05 超電導発電機はこれ以上の励磁で許容範囲に抑制できる 1.00 0.05 0.1 0.15 0.2 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 シーリング電圧 [p.u.] 低速応励磁 電磁トルク 超速応励磁 時間[秒] 事故発生直後に電磁トルクが最大 結果は電機子支持部設計などに反映 結果は電機子巻線絶縁設計などに反映 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.3.1 (2) (192,194頁) 192,194頁)参照 頁)参照 設-6 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 Super--GM Super 2.3 設計技術の研究開発 設計技術の研究開発 2.3.2 高密度20 高密度20万 kW級超電導発電機の設計技術 20万kW級超電導発電機の設計技術 2.3.3 大容量60 大容量60万 60万kW級超電導発電機の設計技術 kW級超電導発電機の設計技術 事業原簿Ⅲ-2.3.2&3参照 設-7 Super--GM Super 設計技術の確立、超電導機の設計、オプション提案 1. 超電導発電機の設計技術を確立 フェーズⅠ技術を基礎として、高密度化基盤技術、大容量化基盤技術での要素モ デル・部分モデルの製作・試験や各種解析技術等を組み合わせることにより超電 導発電機の基本設計技術を確立 2.設計技術で高密度20万kW、大容量60万kW超電導発電機を設計 得られた技術で超電導発電機の設計し、基本目標値、自主目標値、要求仕様を 満足する設計であることを確認 基本計画目標値 20万 万kW機;界磁巻線電流密度 機;界磁巻線電流密度80A/mm2、 、電機子巻線電流密度140A/cm2 機;界磁巻線電流密度 電機子巻線電流密度 万kW機;界磁電流 機;界磁電流6000A級、電機子電流 級、電機子電流15000A級、回転子外径 級、回転子外径1100mm級 級 60万 機;界磁電流 級、電機子電流 級、回転子外径 個別自主目標値 Xd 0.6pu、 、励磁速応度0.1pu/s、 、効率;99.30% %@20万 万kW機・ 機・99.45% %@60万 万kW機 機 励磁速応度 効率; 機・ 3.低コスト化にも寄与するオプション設計を提案 磁性巻線取付軸の適用により、さらに高密度化・低コスト化が可能 発電機内部冷却ガスを水素ガスからヘリウムガスに変更し、水素ガス関連補機の 削減と保守性の向上が可能 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.3.2& 2.3.2&3(1983(198-249頁 249頁)参照 設-8 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 Super--GM Super 各種解析技術の活用と設計技術の確立 最大磁界 4.8T 4.8T 多重円筒回転子 超電導界 磁巻線 ベッセル ベッセル 536MPa 536MPa 多重円筒 回転子 フレキシブルディスク強度 界磁巻線磁場分布 電機子巻線 356MPa 356MPa 界磁巻線取付け軸強度 電機子巻線支持 232MPa ( Pa ) MAX=341 MPa 電機子巻線導体温度 常温ダンパ強度 多重円筒 回転子 電機子歯部強度 構造、材質、特性等に関して各種数値解析等を実施 → 基本計画目標&個別自主目標が達成可能な発電機の設計技術の確立を確認 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.3.2& 2.3.2&3 (198(198-249頁 249頁)参照 設-9 Super--GM Super 20万 20万kW級機の基本設計 kW級機の基本設計 基本目標、個別自主目標を満足する設計が可能なことを確認 定 格 電 気 特 性 体 格 出 力 (MVA) 電 圧 (kV) 電 流 (A) 力率 Xd (pu) 定 格 負荷 界 磁 電 流 (A) 界 磁 巻線 電 流 密 度 (A/mm 2 ) 磁 気 装荷 (T) 電 気 装荷 (A/cm) 電 機 子巻 線 電 流 密 度 (A/cm 2 ) 磁 気 シー ル ド 長 (mm) 磁 気 シー ル ド 外 径 (mm) 効 率 (%) 出 力 密度 (MW/m 3 ) フェーズⅠ 技術 (Xd=0.6) 223 18 7153 0.9 0.6 3000 60 0.64 2 100 110 3000 2000 99.29 21.2 基 本 設計 ( 最 終) A 223 14.8 8699 0.9 0.6 2600 80 0.86 2600 140 1800 2000 99.33 35.4 基本設計 (最終) B 223 17 7153 0.9 0.6 3800 80 0.84 2490 140 1800 2000 99.32 35 個別自主目標値 0.6 pu 基本計画目標 値 80 80 A/mm2 基本計画目標 値 140 140 A/cm2 個別自主目標値 99.30 99.30 % 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.3.2(203頁) 2.3.2(203頁)参照 頁)参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 設-10 Super--GM Super 60万 60万kW級機の基本設計 kW級機の基本設計 基本目標、個別自主目標を満足する設計が可能なことを確認 定格 電気特 性 体格 容量 [MVA] 電圧 [kV] 電流 [A] 力率 Xd [pu] 定格界磁電流 [A] 界磁巻線平均電流密度[A/mm2] 電機子巻線電流密度[A/cm2] 界磁巻線導体電流密度 [A/mm 2 ] 磁気シールド長 [mm] 磁気シールド外径 [mm] 回転子外径[mm] 効率 [%] 出力密度 [MW/m 3 ] フェーズⅠ 最終基本設 最終基本設 技術による 基本目標 計A 計 B 設計 667 667 667 基本計画目標値 27 27 27 15,000A級 級 14262 14262 14262 15000A級 0.9 0.9 0.9 個別自主目標値 0.6 0.6 0.6 0.6 4800 5700 5700 6000A級 60 75 75 基本計画目標値 110 140 140 6,000A級 級 140 160 160 3600 3400 3300 基本計画目標値 2390 2460 2470 1,100mm級 級 1100 1100 1120 1100 99.47 99.46 99.46 個別自主目標値 34 37 38 99.45 % % 得られた超電導発電機設計技術を用いて、60万kW 得られた超電導発電機設計技術を用いて、60万kW級 kW級機を設計 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.3.3 (229頁) (229頁)参照 頁)参照 設-11 Super--GM Super 60万 60万kW級機 オプション設計 kW級機 オプション設計 得られた超電導発電機設計技術を用いて、導入促進のためのシナリオを 考慮したオプション設計を実施 最終基本設計 巻線取付軸 機内封入冷却ガス 容量 [MVA] 電圧 [kV] 定格 電流 [A] 力率 Xd [pu] 定格負荷時界磁電流 [A] 電気特性 導体電流密度 [A/mm 2 ] 磁気シールド長 [mm] 磁気シールド外径 [mm] 体格 効率 [%] 出力密度 [MW/m 3 ] 非磁性材 水素 667 27 14262 0.9 0.6 5700 160 3400 2460 99.46 37 オプション設計 ヘリウム冷却 磁性巻線取付軸 磁性材 非磁性材 水素 ガスヘリウム 667 667 26 26 14811 14811 0.9 0.9 0.6 0.6 5700 5700 160 160 2600 3300 2560 2560 99.46 99.46 45 36 磁性巻線取付軸の適用 → さらに高密度化&小型化した設計が可能であることを確認 ガスヘリウム冷却の適用 → 出力密度や効率を変えずに補機構成を簡素化した設計 が可能であることを確認 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.3.3 (247,248頁) (247,248頁)参照 頁)参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 設-12 Super--GM Super 2.3 設計技術の研究開発 2.3 設計技術の研究開発 2.3.4 超電導発電機の導入シナリオ 2.3.4 超電導発電機の導入シナリオ 事業原簿Ⅲ-2.3.4参照 設-13 Super--GM Super 超電導発電機を発電所に導入する場合のメリット 超電導発電機は、効率の向上、安定度の向上、進相運転範囲の拡大、 高調波吸収能力が大の特徴があり、年間の発電機利用率の高いベース 電源、ミドル電源および調相設備への適用が効果的である ベース電源用 ミドル電源用 ピーク電源用 調相設備 ・LNGなどのコンバイン ドサイクルなど中容量 機 ・都市周辺部(負荷供給 系統) ・ガスタービンなど小容 量機 ・都市近郊部(都市部供 給系統) ・同期調相機 ・重潮流・負荷地点変電 所,交直変換所 適合設備 ・設置場所 (連系系統) ・石炭火力,原子力機 など大容量機 ・遠隔地(基幹系統) ユニット容量 /単機容量 100万kW以上 /60万kW以上 30~60万kW級 /20~30万kW級以下 20万kW級以下 /20万kW級以下 ±300MVA程度 ・高効率 ・燃料費が比較的安価 ・高効率(部分負荷効率 も高いこと) ・比較的負荷調整も容 易 ・頻繁な起動・停止 ・負荷調整が容易 ・応答性が良く,連続的 な電圧調整が可能 運用上の特徴 安定度 (限界送電電力の向上) ◎ ・過渡安定度大 ー ○ ◎ ・AQR能力大 ー ー ー ◎ ・進相運転範囲の拡大 ( 要 無効電力調整能力 求 性 (電圧維持能力) 能 メ 逆相耐量(不平衡負荷, リ 再閉路運用) ッ ト ◎ ・逆相耐量が大きい ◎ ・逆相耐量が大きい ◎ ・逆相耐量が大きい ○ ・高調波吸収能力大 ) 起動・停止/DSS 適用の可能性 (経済性など) ー ○ ・効率の向上 ・単機容量の増大 ○ △ ー ○ ・部分負荷効率大 ・量産効果によるコスト低 減 △ ○ ◎;メリット大、○;メリットあり、△;メリットなし 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.3.4(1)(250頁) 2.3.4(1)(250頁)参照 頁)参照 設-14 Super--GM Super 超電導発電機の経済性の検討超電導発電機の経済性の検討-製造コスト低減 超電導発電機は、高密度化によりフェーズⅠ技術から本体で20% 超電導発電機は、高密度化によりフェーズⅠ技術から本体で20 %のコスト低減 さらに、磁性巻線取付軸の採用や発電機内の冷媒を水素(H2)ガスからヘリウム さらに、磁性巻線取付軸の採用や発電機内の冷媒を水素 ガスからヘリウム (He)ガスへの変更により一層コスト低減を見込める ガスへの変更により一層コスト低減を見込める 20万kW機 1.6 高密度化 で本体の コスト減 1.4 13% %Ni鋼 鋼 で回転子 コスト減 H2ガスから ガスから Heガスへ変更 ガスへ変更 で補機コスト減 製造コスト [倍] 1.2 1 0.8 冷凍システム 補機など 固定子 回転子 本 体 0.6 0.4 0.2 0 フェーズⅠ 基本設計 13%Ni鋼 He冷却 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.3.4( 2.3.4(4) 設-15 (257頁) 257頁)参照 頁)参照 Super--GM Super 超電導発電機の経済性の検討超電導発電機の経済性の検討-運転メリット 超電導発電機は、現用発電機より効率が高く、超電導線冷却の動力を差 し引いても省電力であり、運転によるコストメリットが見込める 例 20万kW機で約3千万円、 機で約1.3億円 例 20万 機で約3千万円、 60万kW機で約1 60万 機で約1 3億円 [1年間あたり 3億円 1年間あたり] 1年間あたり 一年間の運転メリットの試算例 検 討 条 件 発電機定格出力[kW] 発電機効率向上 [%] 効率向上分電力 [kW] 電力料金[円/kW] 発電機利用率[%] 冷凍システム動力[kW] 冷凍システム利用率[%] コストメリット[百万円] 20万kW機 200,000 0.53 1060 60万kW機 600,000 0.6 3600 5.9 80 270 360 90 31 132 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.3.4(4)(258頁 2.3.4(4)(258頁)参照 設-16 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 Super--GM Super 超電導発電機による電力系統の運用性向上の確認 超電導発電機は、Xdが現用発電機より小さいことにより電力系統の運用 超電導発電機は、 が現用発電機より小さいことにより電力系統の運用 性が向上することを解析により確認した 解析・実験 ・電圧安定性 ・過渡安定度 ・電圧変動抑制 ・高調波 解析対象モデル系統 ・都市近郊発電所モデル系統(電源系) ・電気学会標準モデル系統(基幹系) ・分散型電源導入モデル系統(配電系) 電圧安定性の効果を確認 電圧変動抑制の効果を確認 超電導機は現用機より大きな 超電導機の方が電圧変動を抑制する 負荷増加に耐えられる 13.0 1.4 1.15 現用機の場合の G10が現用機の場合の 負荷端の電圧 負荷端電圧 負荷の増加 負荷の変化 11.0 0.95 10.5 0.90 超電導機の場合 G10が超電導発電機の場合の 負荷端の電圧 の負荷端電圧 0.85 1000 2000 3000 4000 時間[秒] 実線;超電導機 0.8 点線;現用機 0.6 0.4 Cogenerator SCG 0.2 0 0.80 0 VG4 [p.u.] 11.5 1.00 5000 10.0 負荷端電圧[pu] 1 負荷有効電力[pu] 1.05 12.0 負荷有効電力 1.2 12.5 超電導機(Xd''=0.3300) 1.10 振幅が小さく減衰が早い 限界負荷が増加 現用機(Xd''=0.3060) 6000 5 10 time[sec] 15 20 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.3.4(5)(2582.3.4(5)(258-264頁) 264頁)参照 頁)参照 設-17 Super--GM Super 超電導発電機の環境調和性の検討 超電導発電機は、現用発電機より効率が高いので消費燃料が少なくなり、 二酸化炭素排出量の削減が見込める 例 超電導発電機の累積導入量と二酸化炭素排出削減量 導入量40万kWで約1万トン削減量 で約1万トン削減量 [1年間あたり 1年間あたり] 導入量40万 で約1万トン削減量 1年間あたり 導入量5,500万 500万kWで約130万トン削減量 で約130万トン削減量 導入量5 500万 で約130万トン削減量 一年間の二酸化炭素排出削減量の試算例 導入初期時 導入から10年 導 入 か ら 2 0 年後 (2010年以降) 後 超 電 導 発 電 機 新規・更新 40 250 510 導入量 [万kW] 累積 40 1,450 5,500 年間稼働率 [%] 80 効率向上分 [%] 0.5 省電力量 [MWh] 14,016 508,080 1,927,200 二酸化炭素排出削減量 9,671 350,575 1,329,768 [トン] 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.3.4(6)(265頁 2.3.4(6)(265頁)参照 設-18 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 Super--GM Super 保守性の検討 冷媒を水素ガスからヘリウムガスへ変更 発電所として望ましい発電機 → 補機ができるだけ少ない → 発電所ニーズに対応 発電機は冷却のための補機が必要 現用発電機 必要となる補機 冷媒 電機子巻線; 水 固定子冷却水システム 鉄心; 水素ガス 水素ガスシステム 界磁巻線; 水素ガス 密封油システム + 超電導機 追加 追加 ヘリウム冷凍システム 超電導界磁巻線; 液体ヘリウム 超電導発電機は現用発電機に必要な補機に加えてヘリウム冷凍機が追加 ・補機増加に伴い運転保守作業が増加 → 発電所に於ける省力化と逆行 <発電機本体より補機廻りの作業が多い> ・ヘリウム冷凍システムのコストが追加される 水素ガスは取扱いに注意を要し 発電機内の冷媒を水素ガスから 保護機器が必要 保護機器が必要 ヘリウムガスに変更し保守と補機を削減 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.3.4(7)(2662.3.4(7)(266-272頁 272頁)参照 設-19 Super--GM Super 超電導発電機の電圧調整能力の検討 ・わが国の東日本の基幹系統 の特徴を持つ電気学会作成の 標準モデル (EAST30機 EAST30機)系統で、 系統で、 発電機の電圧調整能力の貢献 度を検討 すべて現用機の場合 指標値 0.25 0.20 0.15 0.10 0.05 0.00 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 発電機番号 EAST30PEAK系統モデル[SCG-G25] 高 1機を超電導機に変更 変更地点 0.35 ・例えば図の 発電機を超 ・例えば図のNo25発電機を超 電導機に変更すると貢献度が 大きく向上 ・この手法により超電導機の電 圧調整能力面での効果的な導 入地点の選択が可能 指標1 指標2 合成指標値 0.30 指標1 指標2 合成指標値 0.30 0.25 貢 献 度 低 指標値 ・1地点の発電機を現用機から 超電導機に変更すると電圧調 整能力が向上し貢献度が増加 EAST30PEAK系統モデル[QGmaxs:定格値] 0.35 貢献度向上 0.20 0.15 0.10 0.05 0.00 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 発電機番号 発電機地点 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.3.4(8)(273頁 2.3.4(8)(273頁)参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 設-20 Super--GM Super 超電導発電機の導入シナリオ 1.超電導発電機は現用機より効率が高い 1.超電導発電機は現用機より効率が高いので、次のメリットがある 超電導発電機は現用機より効率が高いので、次のメリットがある ・環境調和面で優れ、導入量が40万kW kWで CO2を 年間約5千トン削減の見込 の見込 ・環境調和面で優れ、導入量が40万 kW でCO2 を年間約5千トン削減 ・効率向上電力と冷凍動力の差が20万 20万kW ・効率向上電力と冷凍動力の差が 20万kW機で年間3千万円 kW機で年間3千万円の見込み 機で年間3千万円の見込み 2.超電導発電機は現用機より構造が複雑なため製造コストで不利だが、 2.超電導発電機は現用機より構造が複雑なため製造コストで不利だが、 次の見込みを得た ・高密度化・大容量化の技術開発によりフェーズⅠから20%低減 フェーズⅠから20%低減の見込み の見込み ・高密度化・大容量化の技術開発によりフェーズⅠから20%低減 ・巻線取付軸材に磁性13 鋼使用の目処を得、一層のコスト低減 一層のコスト低減の見込み ・巻線取付軸材に磁性13% 13%Ni鋼使用の目処を得、 Ni鋼使用の目処を得、 一層のコスト低減の見込み ・発電機内の冷媒を水素ガスからヘリウムガスに変更可能の目処を得、これに より保守性の向上と水素ガス関連補機削減 より保守性の向上と水素ガス関連補機削減の見込み 保守性の向上と水素ガス関連補機削減の見込み 3.フェーズⅡの技術開発により超電導発電機のコスト低減の見通しを得られたの 3.フェーズⅡの技術開発により超電導発電機のコスト低減の見通しを得られたの で、開発した基盤技術による超電導発電機の製作検証と運転・保守の経験 超電導発電機の製作検証と運転・保守の経験を蓄 を蓄 で、開発した基盤技術による 超電導発電機の製作検証と運転・保守の経験 積した後には、新規・更新電源を検討する時点で、超電導発電機は現用発電機 超電導発電機は現用発電機 積した後には、新規・更新電源を検討する時点で、 と比較検討対象となり電力系統に導入されると予想 さらに、発電機による電力系統特性の改善など付加価値を生むことができる地 さらに、発電機による電力系統特性の改善など付加価値を生むことができる地 点では超電導発電機はより有利となる となる 点では超電導発電機はより有利 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.3.4(9)(274頁 2.3.4(9)(274頁)参照 設-21 Super--GM Super 設計技術のまとめと波及効果 設計技術のまとめ 1.超電導発電機は、 1.超電導発電機は、電力系統からの要求仕様 超電導発電機は、電力系統からの要求仕様( 電力系統からの要求仕様(最過酷事象に耐えること、電力系統の 特性を改善すること)を満足 特性を改善すること)を満足する を満足する 2.フェーズⅠ技術を基盤として、フェーズⅡで開発した技術を組み合わせることにより、 2.フェーズⅠ技術を基盤として、フェーズⅡで開発した技術を組み合わせることにより、 20~ ~60万 20 60万kW機の基本設計技術を確立 kW機の基本設計技術を確立し、基本計画目標・個別自主目標や電力系統か 機の基本設計技術を確立し、基本計画目標・個別自主目標や電力系統か らの要求仕様を満足する20 らの要求仕様を満足する20万 20万、60万 60万kW超電導発電機を設計 kW超電導発電機を設計した 超電導発電機を設計した 3.超電導発電機は現用機より高効率で、 の削減や運転コストの低減を見込める を見込める 3.超電導発電機は現用機より高効率で、CO2 超電導発電機は現用機より高効率で、CO2の削減や運転コストの低減 CO2の削減や運転コストの低減 4.超電導発電機は現用機より製造コストで不利だが、当初計画した 4.超電導発電機は現用機より製造コストで不利だが、当初計画した高密度化によるコ 超電導発電機は現用機より製造コストで不利だが、当初計画した高密度化によるコ スト低減と、磁性巻線取付軸や水素ガスからヘリウムガスへの変更により、 磁性巻線取付軸や水素ガスからヘリウムガスへの変更により、さらなるコ さらなるコ スト低減と、 磁性巻線取付軸や水素ガスからヘリウムガスへの変更により、 スト低減を見込める 設計技術の波及効果 1.高温超電導回転機への応用 高温超電導回転機への応用に界磁巻線以外の開発技術を活用可能 1.高温超電導回転機への応用 に界磁巻線以外の開発技術を活用可能 2.現用発電機の改良 現用発電機の改良へ開発技術を活用可能 へ開発技術を活用可能 2.現用発電機の改良 3.解析手法は、導入時の要求仕様や電力系統特性など付加価値の検討に活用可能 3.解析手法は、導入時の要求仕様や電力系統特性など付加価値の検討に活用可能 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.3.5(275頁) 2.3.5(275頁)参照 頁)参照 超電導発電関連機器・材料技術研究組 合 設-22 2.4 2.4 界磁巻線用超電導導体の 回転場における安定性 平成16年4月8日 産業技術総合研究所 電力エネルギー研究部門 超電導応用グループ 事業原簿Ⅲ事業原簿Ⅲ-2.4参照 2.4参照 要旨 • 超電導発電機の界磁巻線は強い回転重力場(最高で 3,600rpm、約5,000G)に晒され、周囲のヘリウムは超臨 界状態になる。 • 強い重力場では熱の発生に伴って発生する自然対流に よる冷却効果は極めて大きい。 • 上記冷却効果を有効に利用することにより、超電導導体 の安定性向上が見込める。 • 当グループは回転場中で超臨界ヘリウム冷却を可能に する装置を製作し、熱伝達特性を把握すると同時に開発 導体の安定性評価を行った。 • 開発導体は設計通りの安定性を示すことがわかった。 安ー2 1 回転重力場における導体安定性 浸漬冷却 超臨界冷却 浸漬冷却 静止場 回転場 回転場 冷却効果 普通 冷却効果 大 冷却効果 最大 安ー3 製作した安定性評価装置 Slip ring for data acquisition Collector rings for current supply Inverter controlled driving motor Driving shaft Power lead Rotor vessel Ceramic bearing Test sample 安ー4 2 超臨界ヘリウムへの熱伝達特性 6 y = 0.382x Heat Flux [W/cm2] 5 y = 0.2474x 700rpm, 700rpm, 5.51K K 5.51 4 y = 0.1965x 500rpm, 500rpm, 5.53K 5.53K 3 y = 0.1408x 300rpm, 300rpm, 5.51K K 5.51 1000rpm,, 1000 rpm,, 5.35.3-5.5K 5.5K 2 1 0 0 5 10 15 20 25 30 ∆T [K] 安ー5 最小クエンチエネルギー 大容量化導体 MQE[mJ] 70 60 超臨界500rpm 50 超臨界1000rpm 40 30 20 10 0 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 通電電流[A] 安ー6 3 最小クエンチエネルギー 大容量化導体 MQE[mJ] 70 60 超臨界500rpm 50 超臨界1000rpm 40 30 20 10 0 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4.2K 換算電流[A] 安ー7 伝播速度 60 伝 播 速 度 [m /s] 50 大容量化導体 超臨界1000rpm 超臨界500rpm 浸漬0rpm 40 30 20 10 0 0 500 1000 1500 2000 通電電流[A] 安ー8 4 伝播速度 大容量化導体 60 超臨界1000rpm 超臨界500rpm 浸漬0rpm 40 30 20 10 0 0 500 1000 1500 2000 2500 4.2K 換算電流[A] 安ー9 最小クエンチエネルギー 高密度化導体 40 35 MQE [mJ] 伝 播 速 度 [m/s] 50 浸漬0rpm 30 超臨界500rpm 25 超臨界1000rpm 20 15 10 5 0 0 500 1000 1500 2000 通電電流 [A] 安ー10 5 最小クエンチエネルギー 高密度化導体 35 浸漬0rpm 30 超臨界500rpm 25 超臨界1000rpm 20 15 10 5 0 0 500 1000 1500 2000 4.2K 換算電流 [A] 安ー11 伝播速度 高密度化導体 70 超臨界1000rpm 60 超臨界500rpm 浸漬0rpm 50 伝播速度 [m/s] MQE [mJ] 40 40 30 20 10 0 0 200 400 600 800 通電電流[A] 1000 1200 1400 安ー12 6 伝播速度 高密度化導体 70 超臨界1000rpm 60 超臨界500rpm 浸漬0rpm 伝播速度 [m/s] 50 40 30 20 10 0 0 200 400 600 800 1000 4.2K 換算電流[A] 1200 1400 1600 安ー13 まとめ • 発電機用に開発した導体の安定性を、高速回転場且つ 超臨界ヘリウム冷却条件で評価するために必要な手法 の開発、装置の整備、基礎データの集積を図った。 • 2種類の開発導体の安定性評価を行い、両者が回転重 力場における超臨界冷却条件で必要な安定性を有する ことを確認した。 • 今回開発した手法は、超電導回転機の界磁巻線安定性 評価に適用可能と考えている。 安ー14 7 参考資料1 評価の実施方法 ! 本評価は、「技術評価実施規程」(平成 15 年 10 月制定)に基づいて研究 評価を実施する。 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、独立行政法人産業 技術総合研究所における研究評価の手順は、以下のように被評価プロジェクト毎に分 科会を設置し、同分科会にて研究評価を行い、評価報告書(案)を策定の上、研究評 価委員会において確定している。 ! 「NEDO 技術委員・技術委員会等規程」に基づき研究評価委員会を設置 ! 研究評価委員会はその下に分科会を設置 国 民 産総研 評価結果公開 NEDO 理事長 産総研 評価部 評価結果の事業等への反映 推進部署 評価書報告 研究評価委員会 評価報告書(案)審議・確定 事務局 分科会A 研究評価部 分科会C 分科会B 分科会D 評価報告書(案)作成 プロジェクトの説明 参考資料 1-1 推進部署 実施者 1.評価の目的 評価の目的は「技術評価実施規程」において、 ! 業務の高度化等の自己改革を促進する。 ! 社会に対する説明責任を履行するとともに、経済・社会ニーズを取り 込む。 ! 評価結果を資源配分に反映させ、資源の重点化及び業務の効率化を促 進する。 としている。 本評価においては、この趣旨を踏まえ、本事業の意義、研究開発目標・計画の妥 当性、計画と比較した達成度、成果の意義、成果の実用化の可能性等について検討・ 評価した。 2.評価者 技術評価実施規程に基づき、事業の目的や態様に即した外部の専門家、有識者か らなる委員会方式により評価を行う。分科会委員選定に当たっては以下の事項に配 慮して行う。 ! 科学技術全般に知見のある専門家、有識者 ! 当該研究開発の分野の知見を有する専門家 ! 研究開発マネジメントの専門家、経済学、環境問題その他社会的ニー ズ関連の専門家、有識者 ! 産業界の専門家、有識者 また、評価に対する中立性確保の観点から事業の推進側関係者を選任対象から除 外し、また、事前評価の妥当性を判断するとの側面にかんがみ、事前評価に関与し ていない者を主体とする。 これらに基づき、分科会委員名簿にある7名を選任した。 なお、本分科会の事務局については、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合 開発機構研究評価部と独立行政法人産業技術総合研究所評価部が担当した。 3.評価対象 平成12年度に開始された「超電導発電機基盤技術研究開発」プロジェクトを評 価対象とした。 なお、分科会においては、当該事業の推進部署から提出された事業原簿、プロジ ェクトの内容、成果に関する資料をもって評価した。 参考資料 1-2 4.評価方法 分科会においては、当該事業の推進部室及び研究実施者からのヒアリングと、そ れを踏まえた分科会委員による評価コメント作成、評点法による評価及び実施者側 等との議論等により評価作業を進めた。 なお、評価の透明性確保の観点から、知的財産保護の上で支障が生じると認めら れる場合等を除き、原則として分科会は公開とし、研究実施者と意見を交換する形 で審議を行うこととした。 5.評価項目・評価基準 分科会においては、次に掲げる「評価項目・評価基準」で評価を行った。これは、 研究評価委員会による『各分科会における評価項目・評価基準は、被評価プロジェ クトの性格、中間・事後評価の別等に応じて、各分科会において判断すべきもので ある。』との考え方に従い、第1回分科会において、事務局が、研究評価委員会に より示された「標準的評価項目・評価基準」(参考資料1−7頁参照)をもとに改 訂案を提示し、承認されたものである。 プロジェクト全体に係わる評価においては、主に事業の目的、計画、運営、達成 度、成果の意義や実用化への見通し等について評価した。各個別テーマに係る評価 については、主にその目標に対する達成度等について評価した。 参考資料 1-3 評価項目・評価基準 1.事業の位置付け・必要性について (1)NEDOの事業としての妥当性 ・ 特定の施策(プログラム)、制度の下で実施する事業の場合、当該施策・制 度の選定基準等に適合しているか。 ・ 民間活動のみでは改善できないものであること、又は公共性が高いことによ り、NEDOの関与が必要とされる事業か。 ・ 当該事業を実施することによりもたらされる効果が、投じた予算との比較に おいて十分であるか(知的基盤・標準整備等のための研究開発の場合を除く)。 (2)事業目的の妥当性 ・ 内外の技術開発動向、国際競争力の状況、エネルギー需給動向、市場動向、 政策動向、国際貢献の可能性等から見て、事業の目的は妥当か。 2.研究開発マネジメントについて (1)研究開発目標の妥当性 ・ 内外の技術動向調査、市場動向調査等に基づき、戦略的な目標が設定されて いるか。 ・ 具体的かつ明確な開発目標を可能な限り定量的に設定しているか。 ・ 目標達成度を測定・判断するための適切な指標が設定されているか。 (2)研究開発計画の妥当性 ・目標達成のために妥当なスケジュール、予算(各個別研究テーマ毎の配分を 含む)となっているか。 ・目標達成に必要な要素技術を取り上げているか。 ・研究開発フローにおける要素技術間の関係、順序は適切か。 ・継続プロジェクトや長期プロジェクトの場合、技術蓄積を、実用化の観点か ら絞り込んだうえで活用が図られているか。 (3)研究開発実施者の事業体制の妥当性 ・適切な研究開発チーム構成での実施体制になっているか。 ・安易な業界横並び体制に陥ることなく、真に技術力と事業化能力を有する企 業を実施者として選定しているか。 ・研究管理法人を経由する場合、研究管理法人が真に必要な役割を担っている か。 ・全体を統括するプロジェクトリーダー等が選任され、十分に活躍できる環境 が整備されているか ・目標達成及び効率的実施のために必要な、実施者間の連携 and/or 競争が十 分に行われる体制となっているか。 参考資料 1-4 ・実用化シナリオに基づき、成果の受け取り手(活用・実用化の想定者)に対 して、成果を普及し関与を求める体制を整えているか。 (4)情勢変化への対応等 ・進捗状況を常に把握し、計画見直しを適切に実施しているか。 ・社会・経済の情勢の変化及び政策・技術動向に機敏かつ適切に対応している か。 ・計画見直しの方針は一貫しているか(中途半端な計画見直しが研究方針の揺 らぎとなっていないか)。 3.研究開発成果について (1)目標の達成度 ・成果は目標値をクリアしているか。 ・全体としての目標達成はどの程度か。 ・目標未達成の場合、目標達成までの課題を把握し、課題解決の方針が明確に なっているか。 (2)成果の意義 ・成果は市場の拡大或いは市場の創造につながることが期待できるか。 ・成果は、世界初あるいは世界最高水準か。 ・成果は、新たな技術領域を開拓することが期待できるか。 ・成果は汎用性があるか。 ・投入された予算に見合った成果が得られているか。 (3)特許の取得 ・特許等(特許、著作権等)は事業戦略に沿って適切に出願されているか。 ・外国での積極的活用が想定される場合、外国の特許を取得するための国際出 願が適切にされているか。 (4)論文発表・成果の普及 ・論文の発表は、質・量ともに十分か。 ・成果の受け取り手(活用・実用化の想定者)に対して、適切に成果を 普及しているか。 ・一般に向けて広く情報発信をしているか。 4.実用化、事業化の見通しについて (1)成果の実用化可能性 ・産業技術としての見極め(適用可能性の明確化)ができているか。 ・実用化に向けて課題が明確になっているか。課題解決の方針が明確になって いるか。 参考資料 1-5 (2)波及効果 ・成果は関連分野への技術的波及効果及び経済的波及効果を期待できるもの か。 ・プロジェクトの実施自体が当該分野の研究開発や人材育成等を促進するなど の波及効果を生じているか。 (3)事業化までのシナリオ ・コストダウン、導入普及、事業化までの期間、事業化とそれに伴う経済効果等 の見通しは立っているか。 ※ 基礎的・基盤的研究及び知的基盤・標準整備等の研究開発の場合は、適宜 5.を参照するものとする。 5.その他 (1)基礎的・基盤的研究開発 ・実用化イメージ・出口イメージが明確になっているか。 ・実用化イメージ・出口イメージに基づき、開発の各段階でマイルストーンを 明確にしているか。 (2)知的基盤・標準整備等の研究開発 ・成果の公共性を担保するための措置、或いは普及方策を講じているのか(J IS化、国際規格化等に向けた対応は図られているか、一般向け広報は積極 的に為されているか等)。 ・公共財としての需要が実際にあるか。見込みはあるか。 ・ 公共性は実際にあるか。見込みはあるか。 参考資料 1-6 標準的評価項目・評価基準 【本標準的項目・基準の位置付け(基本的考え方)】 本項目・基準は、研究開発プロジェクト及び課題設定型助成事業の中間・事 後評価における標準的な評価の視点の例であり、各分科会における評価項目・ 評価基準は、被評価プロジェクトの性格、中間・事後評価の別等に応じて、各 分科会において判断すべきものである。 なお、短期間(3年以下)又は少額(予算総額 10 億円未満)のプロジェクト 及び課題設定型助成事業に係る事後評価については、以下の「3. 」及び「4.」 を主たる視点として、より簡素な評価項目・評価基準を別途設定して評価をす ることができるものとする。 1.事業の位置付け・必要性について (1)NEDOの事業としての妥当性 ・ 特定の施策(プログラム)、制度の下で実施する事業の場合、当該施策・制 度の選定基準等に適合しているか。 ・ 民間活動のみでは改善できないものであること、又は公共性が高いことによ り、NEDOの関与が必要とされる事業か。 ・ 当該事業を実施することによりもたらされる効果が、投じた予算との比較に おいて十分であるか(知的基盤・標準整備等のための研究開発の場合を除く)。 (2)事業目的の妥当性 ・ 内外の技術開発動向、国際競争力の状況、エネルギー需給動向、市場動向、 政策動向、国際貢献の可能性等から見て、事業の目的は妥当か。 2.研究開発マネジメントについて (1)研究開発目標の妥当性 ・ 内外の技術動向調査、市場動向調査等に基づき、戦略的な目標が設定されて いるか。 ・ 具体的かつ明確な開発目標を可能な限り定量的に設定しているか。 ・ 目標達成度を測定・判断するための適切な指標が設定されているか。 (2)研究開発計画の妥当性 ・目標達成のために妥当なスケジュール、予算(各個別研究テーマ毎の配分を 含む)となっているか。 ・目標達成に必要な要素技術を取り上げているか。 ・研究開発フローにおける要素技術間の関係、順序は適切か。 参考資料 1-7 ・継続プロジェクトや長期プロジェクトの場合、技術蓄積を、実用化の観点か ら絞り込んだうえで活用が図られているか。 (3)研究開発実施者の事業体制の妥当性 ・適切な研究開発チーム構成での実施体制になっているか。 ・安易な業界横並び体制に陥ることなく、真に技術力と事業化能力を有する企 業を実施者として選定しているか。 ・研究管理法人を経由する場合、研究管理法人が真に必要な役割を担っている か。 ・全体を統括するプロジェクトリーダー等が選任され、十分に活躍できる環境 が整備されているか ・目標達成及び効率的実施のために必要な、実施者間の連携 and/or 競争が十 分に行われる体制となっているか。 ・実用化シナリオに基づき、成果の受け取り手(活用・実用化の想定者)に対 して、成果を普及し関与を求める体制を整えているか。 (4)情勢変化への対応等 ・進捗状況を常に把握し、計画見直しを適切に実施しているか。 ・社会・経済の情勢の変化及び政策・技術動向に機敏かつ適切に対応している か。 ・計画見直しの方針は一貫しているか(中途半端な計画見直しが研究方針の揺 らぎとなっていないか)。 3.研究開発成果について (1)目標の達成度 ・成果は目標値をクリアしているか。 ・全体としての目標達成はどの程度か。 ・目標未達成の場合、目標達成までの課題を把握し、課題解決の方針が明確に なっているか。 (2)成果の意義 ・成果は市場の拡大或いは市場の創造につながることが期待できるか。 ・成果は、世界初あるいは世界最高水準か。 ・成果は、新たな技術領域を開拓することが期待できるか。 ・成果は汎用性があるか。 ・投入された予算に見合った成果が得られているか。 (3)特許の取得 参考資料 1-8 ・特許等(特許、著作権等)は事業戦略に沿って適切に出願されているか。 ・外国での積極的活用が想定される場合、外国の特許を取得するための国際出 願が適切にされているか。 (4)論文発表・成果の普及 ・論文の発表は、質・量ともに十分か。 ・成果の受け取り手(活用・実用化の想定者)に対して、適切に成果を 普及しているか。 ・一般に向けて広く情報発信をしているか。 4.実用化、事業化の見通しについて (1)成果の実用化可能性 ・産業技術としての見極め(適用可能性の明確化)ができているか。 ・実用化に向けて課題が明確になっているか。課題解決の方針が明確になって いるか。 (2)波及効果 ・成果は関連分野への技術的波及効果及び経済的波及効果を期待できるもの か。 ・プロジェクトの実施自体が当該分野の研究開発や人材育成等を促進するなど の波及効果を生じているか。 (3)事業化までのシナリオ ・コストダウン、導入普及、事業化までの期間、事業化とそれに伴う経済効果等 の見通しは立っているか。 ※ 基礎的・基盤的研究及び知的基盤・標準整備等の研究開発の場合は、適宜 5.を参照するものとする。 5.その他 (1)基礎的・基盤的研究開発 ・実用化イメージ・出口イメージが明確になっているか。 ・実用化イメージ・出口イメージに基づき、開発の各段階でマイルストーンを 明確にしているか。 (2)知的基盤・標準整備等の研究開発 参考資料 1-9 ・成果の公共性を担保するための措置、或いは普及方策を講じているのか(J IS化、国際規格化等に向けた対応は図られているか、一般向け広報は積極 的に為されているか等)。 ・公共財としての需要が実際にあるか。見込みはあるか。 ・公共性は実際にあるか。見込みはあるか。 参考資料 1-10 参考資料2 評価に係る実施者意見 研究評価委員会(分科会)は、評価結果を確定するに当たり、あらかじめ当該実施者に対して評 価結果を示し、その内容が、事実関係から正確性を欠くなどの意見がある場合に、補足説明、反 論などの意見を求めた。研究評価委員会(分科会)では、意見があったものに対し、必要に応じ て評価結果を修正の上、最終的な評価結果を確定した。 以下に最終的な評価結果と、評価に対する実施者意見及びそれに対する評価委員の見解を示す。 評価に対する実施者意見 実施者意見に対する評価委員 の見解 【評価結果 1.1 総論 (1)総合評価】 なお、環境負荷の低減に寄与するが限定的ではないか、 【評価委員見解】 排出量の低減を相対比で評価 したとき、現状に比べて1%以 【実施者意見】 下との回答を得ていることか (下記文言に修正) ら、二酸化炭素削減の貢献度は また、発電効率向上とそれに伴う経済性の改善がなされ、 高いとは言えないとの意見が あった。 環境負荷の低減にも寄与している。 【理由】 電気事業の二酸化炭素(CO2)排出量は日本の排出総量の 1/4 を占めています。発電プロセスでの膨大な石油エネルギー消 費量を考えると、発電機の効率向上は、燃料費の削減のみな らず、CO2 排出量の削減による貢献にもつながり、無視でき ないものと考えます。 【評価結果 1.2 各論 (1)事業の目的・政策的位置 【評価委員見解】 付けについて】 【評価結果 なお、二酸化炭素削減については特段の効果は期待しがたい (1)総合評価】の見解と同様。 ものと見られ、地球温暖化対策としての位置付けについて 但し、この箇所は、強調し過ぎ は、誤解を招く可能性がなくはない。 るきらいがあるので削除する。 (注記)本文は、実施者側事実誤認実施前、評価コメントの 纏めの分科会案として、最後のセンテンスに記載し ていた。 【実施者意見】 (下記文言に修正) なお、発電効率向上とそれに伴う経済性の改善がなされ、環 境負荷の低減にも寄与している。 1 2-1 参考資料 1.1 総論 【理由】 電気事業の二酸化炭素(CO2)排出量は日本の排出総量の 1/4 を占めています。発電プロセスでの膨大な石油エネルギー消 費量を考えると、発電機の効率向上は、燃料費の削減のみな らず、CO2 排出量の削減による貢献にもつながり、無視でき ないものと考えます。 特に発電機単体のリプレースで総合的な効率向上を図れる ことはメリットがあると考えます。 【評価結果 1.2 各論(2)研究開発マネジメントにつ 【評価委員見解】 プロジェクトの開始段階で いて】 ただし、技術的に高度な目標に取り組むに当たって、経済 電力系統の質の向上を主眼に 的・環境負荷面からの効果が限られていることをも考慮し、 おけば、目標設定が集約でき、 系統の安定など、電力系統の質の向上の効果にもっと重点を 効率的なプロジェクト運営が おいても良かったのではないかとの意見があった。 出来たものと思われる。 但し、文言上の表現を和らげ 【実施者意見】 た。 (下記文言に修正) また、技術的に高度な目標に取り組むに当たって、経済 的・環境負荷面からの効果が限られていることをも考慮し、 系統の安定など、電力系統の質の向上の効果を視野に入れた 研究も行っている。 【理由】 超電導発電機の電力系統に対するメリットは高磁界とい う原理、空隙電機子巻線という構造に由来するもので、本プ ロジェクトでは、導入地点にかかわらない効率向上による経 済的・環境負荷面の効果を定量化しました。 電力系統の質の向上として、安定度、電圧安定性などについ ては、モデル系統を示し検討を行っており、地点などが決ま ったときの参考を示しています。 【評価結果 1.2 各論(4)実用化、事業化の見通しに 【評価委員見解】 限られた予算と期間の下で、 ついて】 なお、電力系統への実用に際し、ベース電源、ミドルない 実用化に結び付けようと言う しピーク電源のいずれで活用するかを明確にして取り組む 研究開発を省みて、出されてい ことも一案であった。 た指摘である。実施者意見では 2 2-2 参考資料 漠然としすぎている。 【実施者意見】 (下記文言に修正) なお、電力系統への実用に際し、ベース電源、ミドルない しピーク電源のいずれで活用するかを明確にして取り組む ことも一案であったかもしれない 【理由】 現用機のリプレースやコストメリットを考慮すると 60 万 kW 級等の大容量化基盤技術の確立は必要と考えます。大容量 化は高密度化基盤技術とも密接な関係にあり、相互に技術交 流を図ることで、限られた予算の効率的な活用、研究成果へ の相乗効果を図りました。 【評価結果 2.個別テーマに関する評価 2.2 大容量 【評価委員見解】 本プロジェクトの限られた 化基盤技術の研究開発】 しかし、部分モデルを用いて大容量界磁巻線の安定性を評 予算という制限内では、部分モ 価した手法は、有用な知見をもたらしているが、強い遠心力 デルを採用することになった と電磁力が同時に作用する実機の運転環境を模擬した条件 ことやむをえない。その範囲内 の下でデータを得る必要があったと思われる。計算機解析の でなされるべきことはなされ みでは十分な信頼度を得るものとなったと認めるのは難し ている。しかし、よく検討され く、実験による実証的な研究が求められる。また、大容量化 たとは言え、部分モデルにはお に伴う回転子の機械的強度も問題になる。熱歪みや繰り返し のずと限界がある。そのことを 応力による疲労をはじめ実機の運転環境を模擬した条件の 指摘するコメントとして文言 下での実証試験も必要であったと考える。 を選んだ結果である。 【実施者意見】 (下記文言に修正) また、部分モデルを用いて大容量界磁巻線の安定性を評価 した手法は、有用な知見をもたらしており、第一フェーズの 成果や計算機解析を合わせることにより、界磁巻線の安定性 は評価できた。 しかし、大容量化に伴う回転子の機械的強度、熱歪みや繰り 返し応力による疲労をはじめ実機の運転環境を模擬した条 件下での実証試験が実用化の前段階で必要であり、実施する 意義は大きい。 3 2-3 参考資料 【理由】 (1) 部分モデル試験は静止状態のみで実施していますが、今 回の静止結果から大容量化の界磁巻線の安定性は評価可能 と、下記の理由から考えています。 ・ 一般に、超臨界場では高い熱流束が得られ、高遠心力回 転場では対流による冷却効果があります。従って、回転 場の方が静止場より冷却特性は良好で、これは「界磁巻 線用超電導導体の回転場での安定性」の検証結果でも示 されています。 ・ 第一フェーズの「界磁巻線部分モデル」では、回転時と 静止時にクエンチ電流を計測、比較し、回転時の方が安 定性が良好であることを実証しています。 (2) 大容量化に伴う回転子強度の評価は、下記の理由から可 能と考えています。 ・ 7万 kW 級モデル機実証試験において突発短絡試験を実 施し、試験後の回転子分解調査により強度面の健全性を 確認するとともに、強度解析結果との対応を確認してい ます。 ・ 作用力解析に適用した FEM 電磁界解析、強度解析に適用 した FEM 強度解析は汎用的に使用されており、また、精 度も検証済みです。 (3) 制約された予算の範囲内において、大容量化に伴う遠心 力、電磁力、疲労等の評価を含む実証的な試験を実施するこ とはできませんでした。具体的な実用化の前段階では実機の 運転環境を模擬した条件下での実証試験は必要であり意義 も大きいと考えます。 4 2-4 参考資料 本研究評価委員会報告は、独立行政法人新エネルギー・産業技 術総合開発機構(NEDO技術開発機構)研究評価部が委員会 の事務局として編集しています。 平成16年8月 NEDO技術開発機構 研究評価部 部長 奥田 昌宏 主幹 高松 秀章 担当 中嶋 紀行 *研究評価委員会に関する情報はNEDO技術開発機構のホームページ に掲載しています。 (http://www.nedo.go.jp/iinkai/kenkyuu/index.html) 〒212-8554 神奈川県川崎市幸区大宮町1310番地 ミューザ川崎セントラルタワー(19F) TEL 044-520-5160 FAX 044-520-5162