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「国際協力で村興し~中津江村とカメルーンとの交流と友情 ~~」
<公開講演会> 「国際協力で村興し~中津江村とカメルーンとの交流と友情~」 ■日時: 2008 年 11 月 29 日(土) 15:00~17:00 ■場所: gaga エイトコミュニティーホール(カリーノ宮崎8F) ■講演者: 坂本休 (中津江村地球財団理事長) ■主催: JICA 九州 & 宮崎大学教育文化学部政治学研究室 ■概要: 2002 年の日韓サッカーワールドカップのカメルーン代表チームの合宿地誘致で知られるようになった大分県中 津江村(現在は日田市)元村長の坂本氏をお招きし、国際協力と地域振興との結びつきについてご講演いただきます。大 分の山村が、ワールドカップを通じてどのように村興しをしようとしたのか、またワールドカップ終了後もカメルーンとの姉 妹都市を結び、自治体としての国際協力に取り組み続けてこられた経験を語っていただきます。 恵まれているとは言えない環境にありながらも、創意工夫と何よりも国を越えた友好への情熱によって、国際協力と地 域振興を共存させながら取り組んで来られた経験から学び、宮崎でも世界と地域の双方の発展に貢献できるような活動 を考える契機となれば幸いです。 1. 開会挨拶と講演者紹介 (15:00~15:20) 公開講演会の開催に先立ち、総合司会者(佐藤愛美、JICA 九州宮崎デスク)より開会の挨拶と当講演会 の趣旨説明、講演者の坂本休氏の紹介が行なわれた。次いで、ご講演をはじめるに際して、当講演会の趣 旨と講演テーマに関する背景の解説(岩田拓夫、宮崎大学教育文化学部)が行われた。 (開会時の様子①) (開会時の様子②) 1 2. 講演 (15:20~16:20) 開会挨拶に引き続き、坂本休氏による講演が行なわれた。 【講演内容概略】 中津江村村長としてカメルーン代表誘致によって、交流が始まった。 国際協力とは言っても、様々な形式がある。日本とカメルーンなどの途上国には、大きな環境の違いがあ る。国際交流といっても簡単に成果が上がるものではない。中津江村と縁のあるカメルーンの人々(立命館 APU 留学生、メヨメサラ市市長)の早すぎる死という悲しい別れもあった。駐日カメルーン大使が皇居、外務 省、JICA において中津江村の想い出を語っていただいたように、人間の絆も築くことができた。 現在でもカメルーンとの交流が続いている。カメルーン杯ジュニアサッカー大会、キリンカップでの日本代 表とカメルーン代表との試合は大分で開催されているが、これも中津江村との交流が契機となっている。堺 ブレイザーズ(バレーボール)にもカメルーン人選手が在籍しており、日田での試合の際に交流があった。駐 日カメルーン大使館の独立記念日の行事にも招待を受けている。JICA 青年海外協力隊がカメルーンに派遣 される際には、中津江村にも表敬訪問があった。東京のカメルーンレストランの経営者の方が中津江村を訪 問し、料理、民族衣装、カメルーンの話しをして下さった。 2 3年前の日田市との合併によって中津江村が閉村し、村長職を終えた。その後、中津江村地球財団理事 長を引き受けることになった。市町村合併において中津江村は「編入合併」であったが、実際は日田市に飲 み込まれた形であった。中津江村がこれまでに行ってきた活動が白紙になる可能性もあった。合併後も「中 津江村」の名前を残し、地域の産業を守ろうとした。当初、県も財団設置には消極的であったが、最終的に承 認していただいた。現在、中津江村地球財団は、筑後川水源保護、スポーツセンター、金山観光を運営、発 展させるための取り組みを続けている。 当初、キャンプ誘致の経済効果についてもそれほどの認識はなかった。フランス W 杯での盛り上がりを見 て、次回日韓共催の機会にと、村内でキャンプ誘致の話しが持ち上がってきた。誘致準備の中で芝の整備 の重要性を知った。その後、W 杯出場国の大使館を心細い思いで、イタリアを皮切りに15カ国を訪問した。 当初は、ジャマイカのキャンプ地に決まりかけていた。ジャマイカが予選落ちしたこともあり、カメルーンをタ ーゲットにした。しかし、カメルーンの到着が遅れに遅れ、その対応に右往左往した。当時の代表チームの 中津江村到着の瞬間まで肝を冷やし続ける状況について、臨場感溢れる説明をいただいた。 3 3. 質疑応答 (16:20~17:00) 講演の後、参加者から様々な質問が寄せられ、それぞれに対して講演者が回答を行った。 主な質疑応答の内容は、以下の通りである。 Q)中津江村地球財団の環境への取り組みに温暖化防止を取り入れてほしい。 A)カメルーン大使夫人(スイス人)に、中津江村が東洋のスイスと形容されたことに自覚的に取り組んでい きたい。 Q)自治体の財源が厳しい中で、国際交流は最もはじめに削減対象となるが、長期的な視野で行政の中で どのような価値が見いだせるのか? A)現在、国際交流への費用は財団の利益を充てている。その中で、行政活動において説得できるような 国際政策活動を心掛けてきた。一例として、鯛生スポーツセンターの利用者数が、年間8000人から32 000人に伸びた。九州の高校、中学の合宿利用の件数も増えた。 4 Q)市町村合併についての想いを教えて欲しい。 A)合併後、中津江村が日田市の支所になると独自性がなくなるので、振興局という位置づけにした。 合併はしなければ良かったという思いは今でもあるが、中津江村の規模(人口1300名)では、今後 の財政状況を鑑みて(交付税減額、水道起債の返却など)、国、県の要望には対抗できなかった。自立 が不可能な状況が明らかであったので、合併を受け入れる以外の道がなかった。合併後、多少の不便 はあっても、住民生活はそれほど変化していないと感じている。 Q)カメルーンに対する思い入れと、どのように周囲の人々を巻き込んで行けたのか? A)必ずしも戦略的にやったことではない。誘致合戦に成功すると、W 杯キャンプ地として、中津江村で合 宿を行う子ども達に大きな夢を与えることができる。中津江村に対するマスコミの取材を通して、住民が 積極的な姿勢に変化し(ときめきを感じたなど)、一体感を生みだした。 4. 総評 休日の中、30名の参加者が来場し、坂本氏の講演を熱心に聞き入った。さらに、同氏の体験を宮崎の国 際化、自治体としての国際協力の取り組みに取り入れるべく、活発な質疑応答が行われた。 本日のささやかな講演会が、今後の宮崎の国際化に貢献するところがあれば幸いである。 以上 (作成者: 岩田拓夫) 5