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2013 日薬学術大会ハイライト
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-お薬手帳、87%が今後も利用したい 箕面市薬の実証実験結果 7 ・処方箋電子化、事務負担軽減や服薬指導にメリット グリーン薬局・山本氏 8 【ジェネリック医薬品使用にあたって薬剤師の果たす役割 ―ジェネリック医薬品への理解を深める―】 ・後発品分科会 厚労省城経済課長、「安いだけが価値なのか」 8 ・日薬・高橋氏 後発品「薬剤師が舵取りをしていかないと進まない」 9 コラム ・学術大会開会式で拍手呼んだ伯井大阪府医会長 鈴木日医常任理事のバッシング発言と明暗 10 一般演題(口頭発表) ・残薬確認で年間医療費 18 億円削減に みらい・石井氏 11 ・残薬、200 万円近くの麻薬回収事例も 武田薬局・奥田氏 11 ・トマト・石元氏 在宅移行時や初回診療時に処方間違い生じやすく 12 一般演題(ポスター発表) ・ラッキーバッグ タブレットで吸入指導、時間短縮・理解度向上 12 ・地域保健企画 7 割以上の人が「残薬あり」 、半数近くが「自宅に放置」 13 ・残薬調整への働き掛け、処方変化に効果 ツルハ・小野寺氏ら 13 ・望星薬局 タブレット使用し、糖尿病患者に事前聞き取り 14 ・霧島市民薬局 残薬整理で疑義照会 364 件、年 69 万円の医療費削減 14 ・お薬手帳カバーなどで持参率向上 エルムアンドパーム・西村氏ら 14 ・3 カ月の残薬日数調整で月平均 8 万円超の薬剤費削減に フォーラル・村井氏ら 15 ランチョンセミナー ・箱出し調剤で調剤時間は 1 分短縮 名城大・坂巻教授 2 15 2013 日薬学術大会ハイライト 開会式 日 第 46 回日薬学術大会、1 万 3000 人超が参加 大阪で 2 日間の日程で開催 本薬剤師会(児玉孝会長)は 22 日からの2 れた「人のた 日間、大阪国際会議場(大阪市)などを会 めに生活をし 場に「第 46 回日本薬剤師会学術大会」を開催した。 て、自分のた 1893 年に薬剤師会が創立し、今年で 120 年を迎え めに生活しな ることから、今大会を「日薬 120 周年記念大阪大会」 いことが医 と位置付け、メーンテーマには「薬剤師の新たな使 業の本分であ 命~ 120 年の歴史を踏まえて~」を掲げた。 る。安楽に生 初日の午前 11 時 15 分現在の大会参加登録者数は 活することを 1 万 3771 人に上り、学生も 202 人が参加した。 思わず、また 22 日に開かれた学術大会の開会式で、児玉会長 名声や利益を は「薬剤師会創立 120 周年を経て、薬剤師の大きな 求めることな ターニングポイントが来ている」と挨拶。「われわ く、ただ自分 れの先達が、薬剤師が将来、医療や健康に必ず役立 を捨てて人を つという思いで薬剤師会をつくった原点を、まさに 救うことのみ 見直す必要がある」との認識を表明した。 を願うべきで 児玉会長は「先達はこれまで、医薬分業の推進を ある。人の生 はじめ薬剤師職能を確立しようと努力してきた」と 命を守り、人の疾病を回復させ、人の苦しみを和ら 説明。その結果、現在の薬剤師はそれぞれの職域で げる以外の何ものでもない」との言葉を紹介。 「ま 薬剤師らしい仕事ができる環境が整ってきたとした。 さに、 われわれに問われている非常に大切な言葉だ」 ただ、一般用医薬品(OTC)のインターネット販 と述べ、将来の国民や薬剤師のために新たな使命の 売の問題や調剤報酬をめぐる問題など、さまざまな 下で前進すべきだと訴えた。 課題が指摘されていると指摘。一方で、超少子高齢 児玉・日薬会長 藤垣・大阪府薬会長 薬剤師の新たな使命は国民の期待に応えること 化時代に向けた社会保障制度改革では、地域医療や 在宅医療、健康づくりなどの面で、薬剤師に対する 一方、大会実行委員長を務めた大阪府薬剤師会の 社会からの期待が高まっているとの認識を示した。 藤垣哲彦会長は、今大会のテーマとして掲げた「薬 その上で、江戸時代に大阪で開かれた「適々斎 剤師の新たな使命」とは、 「国民の期待に応えるこ 塾」 (てきてきさいじゅく)の教科書の最初に書か とだ」と指摘した。 3 2013 日薬学術大会ハイライト 開会式 田 医療現場で通用する「実践力を持った薬剤師が必要」 田村厚労相 村憲久厚生労働相は 22 日、大阪市内で開か さま方と協力して国 れた「第 46 回日本薬剤師会学術大会」の開 民の健康をしっかりと 会式で来賓挨拶し、在宅医療患者の増加やチーム医 守っていきたい」と 療の推進など薬剤師を取り巻く環境が大きく変化す 語った。 る中、現場の医療に通用する実践力を持った薬剤師 スイッチ直後など 28 品目の対応 「しっかりとした 取り扱い方法を 確立したい」 が必要とされていると指摘。こうした状況下、全て の薬剤師が日ごろから向上心を持ち、国民が望む質 の高い、安心・安全な医療の提供に貢献するよう求 めた。 田村厚労相は、近年の医薬分業の促進や在宅医療 田村厚労相 患者の増加、チーム医療の推進など薬剤師を取り巻 く環境は大きく変化していると指摘。こうした中で さらに一般用医薬品(OTC)のインターネット 「高い倫理性、医療人としての専門的な知識、教養 販売にも言及。田村厚労相は今年 6 月に閣議決定し を持ち、医師や看護師などの多くの医療スタッフと た「日本再興戦略」を踏まえ、OTC の新たな販売 協力し、現場の医療に通用する実践力を持った薬剤 ルールの策定に向け「国民の安全を確保しつつ、安 師が必要とされている」との認識を示した。その上 心して医薬品を購入できるようなルールをしっかり で、在宅医療や介護サービスの提供体制の確立に向 と作っていきたい」とした。 け「薬局や薬剤師が医療の拠点として地域で期待さ 厚労省の専門家会合で安全性を検証している「ス れている」と述べた。 イッチ直後」と「劇薬指定」の計 28 品目への対応 田村厚労相はまた、2014 年度予算概算要求では に関しては「医学・薬学の専門家に入っていただき 「薬局・薬剤師を活用した健康情報拠点の推進」を 検討会を開催している。この中でしっかりとした取 盛り込んでいることを示し、「(厚労省としても)皆 開会式 大 り扱い方法を確立していきたい」と述べた。 伯井・大阪府医会長 OTC ネット販売を疑問視、フロアから拍手 阪府医師会の伯井俊明会長は 22 日、大阪国 にわたる厳しい状況を背景に、経済を優先した施策 際会議場で開催された「第 46 回日本薬剤師 が次々と打ち出されている。医療においても大胆な 会学術大会」の開会式で来賓挨拶し、一般用医薬品 規制緩和が行われ、国民生活の基礎である社会保障 (OTC)のインターネット販売の原則解禁が日本経 をないがしろにした制度が推進されてきている」と 済に与える効果につい 指摘。政府が経済成長戦略の一つとして打ち出した て懐疑的な見方を示 OTC ネット販売の原則解禁についても「どれほど日 し、フロアから拍手を 本経済に効果があるか甚だ疑問だ。楽天やアマゾン 浴びた。また、かかり がもうかるだけではないか」との認識を示し、安全 つけ医が在宅患者に必 性について心配していると述べた。 要な医学管理を遂行す また薬剤師の新たな使命として、在宅医療への関 るため、薬の専門家で 与に期待感を示したほか、東日本大震災で薬剤師が ある薬剤師の関与に期 大きな役割を果たしたことを踏まえ、 「いつ起こる 待を寄せた。 か分からない大災害に備え、薬剤師がその職能を十 伯 井 会 長 は「 長 年 分に発揮する覚悟を求める」との認識を示した。 伯井・大阪府医会長 4 2013 日薬学術大会ハイライト 記者会見 日 医薬分業、患者・国民の理解を得ることが重要 日薬・児玉会長 本 薬 剤 師 会 の 児 玉 孝 会 長 は 22 日、 大 阪 国 のため。その糧になるべく分業という制度を目指し 際会議場などで開幕した学術大会で記者会 てきたが、その目的を達しているかというと、まだ 見し、医薬分業の現状について、「120 年前に医薬 課題があるのは事実」と指摘。そうした現状を踏ま 分業を実現するためにつくったのが日本薬剤師会。 えた上で、分業を推進していく必要があるとの考え 120 年を経てようやく(分業率が)65%になった。 を示した。 任意分業なので、数字だけを見ればよくここまで来 分業率が 70%に近づいていることについては、 たなと思うが、中身はどうなんだと言われたとき、 「65%なので、(70%まで)あと 5%だが、そう簡単 いろいろと批判や意見があるというのは事実」と述 にはいかないと考えている。今、指摘されているこ べ、分業に対する患者や国民の理解を得ることが重 とにきちんと対応していかないと 70%はいかない 要との認識を示した。 のではないか」と強調。その上で、 「 (分業推進のた 児玉会長は「何のため、誰のため(に分業を進め めには)患者、国民の理解が今、一番大事だ」と述 るの)かと言えば、患者や国民のため、日本におけ べた。 る医薬品の適正使用のため、そして正しい薬物療法 特別講演 医薬分業の推進に対する妥当性の検証を 日医・鈴木常任理事 日 鈴木・日医常任理事 本医師 の伸び率などを説明。医科や歯科はいずれも低調な 会 の のに対し、 保険薬局は好調に推移していると述べ 「今 鈴木邦彦常任 や診療所よりも、門前にある薬局の方が売り上げが 理事は 22 日、 多い。まるで、母屋でおかゆをすすっているのに、 日薬学術大会 離れではすき焼きを食べているようだ」 と揶揄した。 で「医薬分業 また、院内で薬剤師が行う調剤技術基本料と薬局 の在り方と地 における調剤基本料の差が大きいと指摘。 「院内調 域包括ケアシ 剤と薬局調剤における薬剤師の調剤技術に、どのよ ステムにおけ うな差があるのかという疑問を持たざるを得ない」 る連携について」と題した特別講演を行い、当初、 とした。 医薬分業のメリットとされた薬剤師による薬学的管 さらに、医薬分業率の推移を示しながら、地域差 理などの成果が明らかになっていないなど分業にお が大きいことや門前薬局が多いことなどを指摘。当 ける現状を指摘。 「このまま医薬分業を推進するこ 初、挙げられた医薬分業のメリットが成果としてほ とが妥当なのか」と疑問を呈し、国は(1)分業に とんど上がっておらず、院内調剤に戻す医療機関も 対する経済的インセンティブ(2)分業による医療 出始めているとした。 費抑制効果(3)患者への影響─などを総合的に 日薬は強力なリーダーシップの発揮を 検証し、必要に応じて見直しを行うべきだとの考え を示した。 一方で、高齢化社会への対応については、他職種 具体的には、院内調剤と院外調剤の格差是正や、 協働ネットワークに、薬剤師が積極的に参加するこ 患者による院内調剤と院外調剤の選択、診療報酬改 とへの期待感を表明。また、日本薬剤師会に対する 定率(医科:歯科:調剤)の比率の見直しを挙げた。 エールとして「日本の薬剤師を代表する団体として 鈴木常任理事は医科(病院、診療所)、歯科、保 強力なリーダーシップを発揮していただきたい」と 険薬局ごとの医療費の推移や伸び率、受診延べ日数 述べた。 5 2013 日薬学術大会ハイライト 分科会 大 【地域包括ケアの実現を目指して】 在宅訪問の残薬解消効果は約 680 万円 大阪薬科大・恩田氏 阪薬科大臨床実践薬学研究室の恩田光子氏は 1890 薬局(5447 人の患者データ)の回答を集計した 22 日、日薬学術大会分科会「地域包括ケアの もの。調査結果から、残薬整理を実施した患者は全 実現を目指して」の基調講演「薬剤師による訪問業 体の 45%で、残薬整理の内容は、 「廃棄」21.8%、 「投 務の現状と展望―厚生労働科学研究からの報告を中 与日数調整」73%、 「両方」0.6%、 「無回答」4.6%だっ 心に―」で、薬剤師在宅訪問業務による残薬解消効 た。これらの事例対処前の残薬の総額は約 850 万円、 果は総額で約 680 万円、患者 1 人当たりでは約 4000 患者 1 人当たりでは約 5000 円だったが、対処後の残 円との調査結果を発表した。同調査は、2013 年 1 月 薬の総額は約 170 万円、患者 1 人当たり約 1000 円と 15 日から 2 月末日までに在宅訪問業務を実施した なり、残薬総額が大幅に減少した。 分科会 厚 【医薬分業の完成を目指して】 厚労省・中井企画官 薬局薬剤師は社会ニーズへの対応を 生労働省医薬食品局総務課の中井清人企画官 であり「薬剤師は何をやっているか分からないでは は 22 日の日薬学術大会・分科会「医薬分業の なく、薬剤師が何をやっているかを見せる必要があ 完成を目指して」で講演し、これからの薬局薬剤師 る」と強調した。その上で「薬剤師が何をやってい に対して「今のシステムの中で調剤だけやっている るかというときに必要なのは、一つは OTC であり、 のは一番簡単。でも変化に耐えうるためには社会の 一つは在宅医療だと思う」 との個人的な見解を示し、 ニーズに応えて変わっていくことが必要だ」と指摘。 薬局薬剤師が OTC や在宅医療に積極的に関わるこ 個人的な意見とした上で、薬局薬剤師の将来に必要 とに期待を込めた。 中井企画官 なものとして「一般用 また、薬剤師の間でバイタルサインに関する活動が 医薬品(OTC) 」 「チー 広がっていることにも触れ、最初は医療現場で薬剤師 ム医療」 「在宅医療」 によるバイタルサインに関する取り組みが始まり、そ の 3 つを取り上げた。 れを在宅医療で取り入れ、現場でのニーズが出てきて 中井企画官は講演の いることを紹介。 「まさに現場が変わったと思う。良 中で、時代は情報公開 かったものをどんどん発信していくことだ」と成功事 と自由競争の流れにあ 例の一つとして取り上げ、現場からの情報発信が変化 り、古いやり方だけで への原動力になることを強調した。成功事例を広げる は対応が困難と指摘。 上でも、薬局薬剤師に日常の活動実績をエビデンスと 医療も情報公開の時代 して積極的に論文化するよう提案した。 【医薬分業の完成を目指して】 分科会 N COML・山口氏 薬剤師の役割の“見える化”を、薬歴管理や疑義照会で PO 法人ささえあい医療人権センター COML 定で薬剤服用歴管理指導料の算定要件にお薬手帳に の山口育子理事長は 22 日の日薬学術大会・ 関する項目が追加され、点数が 30 点から 41 点に引 分科会「医薬分業の完成を目指して」で講演し、薬 き上げられたことについて「私は算定要件と点数が 局・薬剤師には役割の“見える化”に取り組むよう 変わったときに、とても大きく期待した」と指摘。 期待を示した。 その理由としては、薬剤師が薬歴管理を行っている 山口理事長は講演の中で、2012 年度調剤報酬改 ことや、お薬手帳に関して説明してくれることを期 6 2013 日薬学術大会ハイライト 待していたという。 歴のことを説明してくれないのか非常に残念に思っ しかしながら、COML には「薬剤師から『この ている」と打ち明けた。 4 月からお薬手帳を持ってきてもらうことが義務に 疑義照会についても、全処方箋の 3%程度に疑義 なったんです』あるいは『法律で決まったのでお薬 照会があると聞くが「この 3%は決して少ない数で 手帳を持ってきてください』と言われましたが、何 はないと思う。ところが、疑義照会をしていること か法律が変わったのですか」という相談がいくつも を患者はあまり知らない」と指摘。その理由として 届いたことを紹介。山口理事長自身も「薬局でお薬 調剤室の中で行われていることを挙げ、 「 (薬剤師は) 手帳を今日は持っていないと言うと、薬剤師から 『お この疑義照会をしていることを患者に知らせていた 家にはありますよね。このシールを貼っておいてく だきたい」と呼び掛けた。その上で、薬剤師には疑 ださい』と一方的に言われてシールを渡されること 義照会や具体的な専門性について“見える化”を進 がある」との体験談を語り、「なんでお薬手帳と薬 めてもらいたいと要望した。 【薬剤師によるセルフメディケーション支援】 分科会 オ 不正オンライン薬局 ネット解禁で OTC をターゲットに 岡沢氏 サイトの 44% が「ベストケンコー」 「ロイ ユニオン」 ンライン薬局に関する世界最大のデータベー 「RxCash.biz」の 3 つのネットワークに所属してい スを持ち、世界規模でオンライン薬局に関す る調査を展開している、レジットスクリプトの岡沢 たとした。 宏美アジア政策・執行部長は 22 日の日薬学術大会・ 岡沢執行部長は、具体的な不正オンライン薬局の 分科会「薬剤師によるセルフメディケーション支援」 現状も紹介。あるサイトでは「以前はトップページ で講演し、日本国内での一般用医薬品(OTC)の にバイアグラなど処方箋薬を掲載していたが、今 インターネット販売解禁が打ち出される中、すでに 週になってバファリンなどの OTC に替えてきた」 世界規模の不正なネットワークが OTC をターゲッ と説明。 「これは明らかにネット販売解禁に合わせ トに動き出していることを明らかにした。 て OTC をターゲットにしてきている」と述べた。 同社の 2013 年日本市場調査によると、グーグル OTC のネット販売解禁を契機に、OTC をトップ とヤフーで処方箋医薬品に関する 50 の検索語を用 ページに出し、OTC を買い求めてきた人に対し処 いて関連ウェブサイトを検索し、そのサイトの不適 方箋薬を紹介し販売に結び付けたり、OTC や処方 正を調査した結果、2345 件の検索結果の 66% に当 箋薬をセットで販売するなど国内市場を狙った動き たる 1553 件がオンラインや実店舗での処方箋薬の が出てきていることに警鐘を鳴らした。 販売や販売を促すサイトで、うち 94% が国内法規 不正オンライン薬局は、組織的で多国籍で活動す を逸脱する違法な運営で、厚生労働省の法規に従っ るという特徴を挙げ、国際的な解決に向けて「多面 ていたのは 0.1% のみだったと指摘。さらに不正な 的、国際的なアプローチが必要だ」と強調した。 【次世代型医療情報システム ―薬剤師業務における ICT 活用―】 分科会 大 大阪 e -お薬手帳、87%が今後も利用したい 箕面市薬の実証実験結果 阪府の箕面市薬剤師会の藤本年朗会長は 22 を発表した。 日に開かれた日薬学術大会の分科会「次世代 大阪 e -お薬手帳事業は、お薬手帳に記載した内 型医療情報システム―薬剤師業務における ICT 活 容を患者のスマートフォンや携帯電話に取り込むこ 用―」で、大阪府薬が主体となって進めている「大 とによって、患者の薬識を高め、健康増進を図ると 阪 e -お薬手帳事業」の実証実験の結果について報 ともに、災害時などに活用することで患者の安全・ 告。電子版お薬手帳を利用した患者の 87%が今後 安心を確保するのが目的。実証実験は大阪府薬が 9 も利用したいと考えているとのアンケート調査結果 月から大阪府下全域で運用をスタートさせるのに 7 2013 日薬学術大会ハイライト 箕面市薬剤師会の藤本会長 先駆けて、箕面市薬の ド数が実証実験終了時の 6 月末までで 6897 件となっ 48 の会員薬局のうち、 たことを報告。今月 20 日には 1 万 3392 件になった 34 薬 局 が 参 加 し て 2 ことも紹介した。 月から 6 月にかけて実 利用者や参加薬局の薬剤師を対象にしたアンケー 施した。 ト調査の結果では、利用者は比較的若い層が多く、 藤本会長は講演で、 圧倒的に女性が多いと指摘。その上で、 「ほとんど 実証実験の結果につい の人が協力的で、アプリをダウンロードした人の中 て説明し、大阪 e -お で、これからも利用したいという人がなんと 87% 薬手帳を活用するため もいた」と述べ、予想に反して肯定的な利用者が多 のアプリのダウンロー かったとの認識を示した。 【次世代型医療情報システム ―薬剤師業務における ICT 活用―】 分科会 大 処方箋電子化、事務負担軽減や服薬指導にメリット グリーン薬局・山本氏 分県の別府市薬剤師会に加盟しているグリー 情報をモニターで見ながら調剤・投薬する。調剤実 ン薬局の山本泰弘氏は 22 日、日本薬剤師会 施情報は薬局からサーバーに送られ、医師はその情 学術大会の分科会で「電子処方箋実証事業を踏まえ 報を確認し、次回の処方に役立ててもらうという仕 た、薬局―医療機関の情報連携について」をテーマ 組みだ。 に講演し、別府市で今年 2 月から 3 月にかけて実施 山本氏は、実証事業で医療機関から 814 件の処方 した処方箋の電子化に向けた実証事業の結果につい 情報が電子化され、そのうち 733 件を薬局で参照。 て報告。電子化によって、薬局の事務負担の軽減に 薬局からは 719 件の調剤実施情報が送信されたこと つながることや服薬指導の向上にも役立つとした。 を報告。患者を対象にしたアンケート調査の結果 実証事業には、別府市内の医療機関 4 施設と近隣 では、好意的な意見が約 30%と最も多かった一方、 の 6 薬局が参加し、2 月 1 日~ 3 月 28 日にかけて 個人情報が漏れることを懸念する意見や、薬局には 実施。処方箋の電子化による利便性や安全性、現場 医薬品情報とアレルギー情報以外は知られたくない での運用性などについて検証した。 という意見などもあったことを紹介した。 患者には「ゆけむり医療カード」と名付けた IC 実証実験の結果を踏まえて、山本氏は処方箋の電 カ ー ド、 医 師 や 薬 剤 子化について「処方箋の偽造が防げるということ 師には資格を証明す がまず第一のメリット。調剤情報の医療機関への る HPKI カ ー ド を 配 フィードバックなどで薬局側の事務処理の負担が軽 布。医療機関で処方情 減されることも大きなメリットだ」と指摘。病名や 報を患者の IC カード 検査データなどの付帯情報が見られるようになれ と結び付けてサーバー ば、服薬指導などにも役立つと強調した。 に送付。薬局では患者 一方、課題としては操作における手数の多さや複 の IC カードを使って、 雑さを改善する必要があることや、カードを紛失し 患者の処方情報をサー た場合やシステムトラブルが発生した場合の対応な バーから取得し、その どを挙げた。 グリーン薬局の山本氏 【ジェネリック医薬品使用にあたって薬剤師の果たす役割 ―ジェネリック医薬品への理解を深める―】 分科会 日 後発品分科会 厚労省城経済課長、「安いだけが価値なのか」 本薬剤師会学術大会で 22 日、ジェネリック 厚生労働省医政局経済課の城克文課長はジェネリッ 医薬品に関する分科会が行われた。講演した ク医薬品について「安いだけが価値なのかというと 8 2013 日薬学術大会ハイライト してやっていかなければならないというのを今日の ころには疑義がある」 (他の人たちの)話を聞いて感じた」と語った。 とし、日本薬剤師会・ 医療保険委員会委員の 同氏は「 (ジェネリック医薬品の新たな数値目標 高 橋 寛 氏 は「 ジ ェ ネ である)60%まで上げていくのは日本の中では相当 リック医薬品の制度は 厳しいハードルかもしれない。流れができてくれ 育薬。この制度をうま ば、早いのかもしれないが、そこに至るまでの立ち く使えば、薬を生かす 上げをもう 1 回新たな気持ちでやらないといけない ことができる」と強調 と思っている」と強調。その上で「こうしたシンポ した。 ジウムでもお互い共有できるところがあるので、こ 「ジェネリック医薬 こで出てきたことも含めてさらにそれぞれの持ち場 品使用にあたって薬剤師の果たす役割―ジェネリッ で進めていくこともあるだろうし、われわれの方も ク医薬品への理解を深める―」と題したこの分科会 できることをやっていく」とした。 厚労省医政局経済課の城課長 では厚労省、薬局薬剤師、病院薬剤師、メーカーの 日薬・高橋氏「ジェネリック医薬品の制度は育薬」 4 人が登壇した。 このうち厚労省の城課長は「ジェネリックは安い 一方、日薬の高橋氏は「 (ジェネリック医薬品は) だけが価値なのかというところには疑義がある。安 みんなでやる時代に来ている。ジェネリック医薬品 いということは比較優位ではあるが、高い方が価値 の制度は育薬。この制度をうまく使えば、薬を生か があると感じる文化があると行き詰まる。安いだけ すことができる。成分は同じで剤形を変えることが が意味なのかということではないだろう」と指摘。 できる。そういう特徴のある制度なので、そこをう 「 (ジェネリック医薬品は)日本の産業の一つに育っ まく利用して、国民に合うものをつくっていく。そ てほしいということがあるが、こういう形で進めて のリソースがわれわれの手の中にある」 と強調した。 いくにはやはり実現したい価値があるわけなので、 ジ ェ ネ リ ッ ク 医 薬 品 の 新 た な 数 値 目 標である この中でどうしていくかということだと思って、こ 60%に関しては「今のままで 60%は無理」と述べ、 れから取り組んでいこうと思っている」と述べた。 患者の声を同制度に反映させることの必要性を指 また今後に関しては「行政だけでなく、保険者、 摘。 「結果として、国民が選ばなかったら、しょう それから専門職として医療機関、薬局の提供側も努 がないが、われわれがやるべきことをやっていない 力しているが、これからはさらに連携して、何をやっ のであれば、 非難されても仕方ないと思う」と語り、 ていけばいいのかというところをお互い情報を共有 推進に向けた尽力を求めた。 【ジェネリック医薬品使用にあたって薬剤師の果たす役割 ―ジェネリック医薬品への理解を深める―】 分科会 日 日薬・高橋氏 後発品「薬剤師が舵取りをしていかないと進まない」 本薬剤師会・医療保険委員会委員の高橋寛 をしていかないと進まない」と強調した。 氏は 22 日、日薬学術大会で開催されたジェ 「ジェネリック医薬品使用にあたって薬剤師の果 ネリック医薬品の分科 たす役割―ジェネリック医薬品への理解を深める 会で「保険薬局におけ ―」と題した同分科会に登壇した高橋氏は、ジェネ るジェネリック医薬 リック医薬品の推進に関して 「医学生、 医師、 看護師、 品使用の現状と課題」 病院薬剤師にも理解してもらう。それから薬の教室 をテーマに講演した。 ということで中・高校に学校薬剤師が説明するとい ジェネリック医薬品の う機会がある。こういう機会にジェネリック医薬品 推進に関しては社会全 がどういうものであるかを説明する必要がある」と 体で取り組むことの必 し、「一番は国民。国民がこれに乗ってこないと、 要性を指摘し、「その われわれの努力も値しない」と指摘。その上で「社 中心で薬剤師が舵取り 会全体で取り組み、その中心で薬剤師が舵取りをし 医療保険委員会委員の高橋氏 9 2013 日薬学術大会ハイライト ていかないと進まない」と強調した。 り議論して置いておく」ことの必要性も指摘した。 またジェネリック医薬品への取り組みに関して ジェネリック医薬品を調剤した後に関しては「新 は「ジェネリック医薬品に変更して調剤することは 薬同様に情報を集める。 『効き目はどうでしたか』 『何 原則。先発医薬品にジェネリック医薬品がある場合 かありませんでしたか』など(の問い掛け)は新薬 はジェネリック医薬品に変わる可能性があるので、 だけでなく、医薬品そのものに関わることなので、 ジェネリック医薬品は置きましょう、あるいはなる こういったことをやって、不安なく使用できるよう べく置くように考えてください」と会場の薬局薬剤 にしていきたい」 と語った。このほか、 希望しなかっ 師らに呼び掛けた。 た患者についても情報提供を行うことの重要性を指 また「患者に合った剤形があるので、自分の患者 摘した。 をイメージして、どういうものがいいのかをしっか 「一 般用医薬品のネット販売がどれほど日 会長協議会では、協議時間の制約で発言を止めら 本経済に効果があるのか甚だ疑問だ。 れることに反発する声が複数の県薬会長から上が 楽天やアマゾンがもうかるだけではないか」 ―。 り、児玉孝会長自身が語る「会員のフラストレー 22 日に行われた第 46 回日本薬剤師会学術大 ションの鬱積」が図らずも浮かび上がった。そん 会開会式で来賓挨拶した大阪府医師会の伯井俊明 な中での伯井会長の発言に来場していた多くの薬 会長の発言に会場から大きな拍手が湧いた。伯井 剤師会関係者が溜飲を下げたのも無理のないこと 氏は、 「経済を優先した施策が次々と打ち立てら だろう。 れている。医療界においても大胆な規制緩和に 伯井会長の発言が、同じく来賓として出席して よって社会保障をないがしろにした制度が推進さ いた田村憲久厚生労働大臣を意識してのものであ れている。薬局での対面販売をインターネット販 ることは容易に想像できる。学術大会の来賓とし 売促進に切り替えることにより経済成長より医療 て大臣本人に出席してもらった手前もあり、主催 の安全性が問われることを心配している」と安倍 者にすれば「くれぐれも失礼がないように」と丁 政権の医療政策を正面から批判した。 重に終始するのもわかるが、政府の社会保障政策 学術大会前日に開かれた日本薬剤師会都道府県 に堂々と反対意見を表明する伯井会長の姿がこと コ ラ ム 学術大会開会式で拍手呼んだ伯井大阪府医会長 鈴木日医常任理事のバッシング発言と明暗 「在宅患者に対する医学的管理というかかりつけ のほか凛々しく見えた。 一方、学術大会で特別講演した日本医師会の鈴 医の責務を遂行するためにも、専門家である薬剤 木邦彦常任理事は、医薬分業の現状に批判的な立 師が在宅医療に関与していただくことが、薬剤師 場をあらためて表明。講演後の質疑が行われな の新たな使命になる」と学術大会のテーマである かったことに参加者から不満の声も出るなど、日 「薬剤師の新たな使命」への具体的メッセージも 医と大阪府医という医師会代表の 2 人の発言に 表明。東日本大震災における薬剤師の貢献にも言 対する評価が見事に明暗を分けたことも印象に 及し、 「いつ起こるかわからない大災害に備えて 残った。 薬剤師がその職能を十分発揮する覚悟を求める」 さて、伯井氏の発言への拍手は実は一度だけで とも語った。 はなかった。 そして挨拶が終わった時には、この日の式典で 薬学教育 6 年制の実施に触れて、「医療を担う 最大の拍手が鳴り響いた。それは、政府への批判 専門家が養成されている。医師やその他の医療職 だけでなく、医療担当者としての自負と展望の一 同様に患者中心のチーム医療に貢献してほしい」 端を示したことへの同意の声にも聞こえた。 との発言の際にも賛同の拍手が起きた。伯井氏は、 10 (NM) 2013 日薬学術大会ハイライト 一般演題 口頭発表 株 残薬確認で年間医療費 18 億円削減に みらい・石井氏 式会社みらい・みらい湖南薬局の石井陽介氏 相互作用防止加算により削減された薬剤費につい は 22 日、日薬学術大会の一般演題で重複投 て調査した。2012 年 4 月から 12 月に実施した調査 与・相互作用防止加算の算定要件に残薬調整が含ま は、同社の保険薬局 81 店で応需された処方箋 117 れたことに伴う残薬確認によって国民医療費ベース 万 4322 枚から、重複投与・相互作用防止加算を算 で年間約 18 億円の削減効果が見込まれるとの推計 定した処方箋を抽出し、薬剤数と薬価から削減した 結果を発表した。石井氏は、調剤医療費総額に比べ 薬剤費を集計したもの。その結果、重複投与・相互 れば小さい数字との見方もあるとしながら、「国民 作用防止加算を算定した処方箋全体の薬剤費削減額 医療費の抑制に対して薬剤師に求められる役割は決 は 304 万 6911 円で、これから加算点数の金額 27 万 して小さくない」と述べ、こうしたエビデンス構築 3200 円を差し引くと 277 万 3711 円が医療費の削減 の意義を指摘した。 額となる。この金額を、12 年の処方箋受け取り枚 石井氏は、薬剤師が疑義照会によって薬剤費の減 数約 7 億 6000 万枚に換算すると 17 億 9243 万円の 少にいかに寄与できたかを把握するため、重複投与・ 医療費が削減されるとの粗推計値を示した。 一般演題 口頭発表 日 残薬、200 万円近くの麻薬回収事例も 武田薬局・奥田氏 薬学術大会 2 日目となる 23 日に開かれた一 近くの残薬を回収した例も紹介。奥田氏は「金額は 般演題「在宅医療・介護」では、武田薬局の もちろんだが、これだけの麻薬が処方されていなが 奥田徳子氏が「薬剤師主導の残薬管理がもたらす在 ら、適正に使用されているかどうかなどの検証が 宅医療近未来像の提案」と題した講演を行い、同氏 もっと前に行われてしかるべきだ」と指摘し、 「在 が自施設を含む全国から収集した残薬回収事例やイ 宅ターミナルという貴重な一日一日を適正な QOL ンシデント事例を紹介し問題点を検証した。残薬回 を保って過ごしたのかどうかを考えると胸が痛む」 収事例の中には、在宅ターミナルにおける麻薬 200 と述べた。 万円近くの残薬回収事例もあり、奥田氏は「退院支 外観さまざま、患者は同一成分と認識せず 援でも医療費削減策でも、在宅医療環境の充実には 医療チームへの薬剤師参加が大きなメリットにな 一方、同薬局に在庫しているアムロジピン製剤を る」との認識を示した。 例に挙げ、 「同じアムロジピンでも外観がさまざま 奥田氏は、在宅医療に薬剤師が関与することで効 なので、患者や家族は同一成分だと認識していない 果を挙げた実例を列挙。約 10 万円分のインスリン ことが多い」と説明。最近は、ジェネリックの薬剤 が残薬として回収された例では、「コンプライアン 名が「一般名+メーカー名」に統一されつつあり、 スの悪い患者が多い薬剤。冷所保存や用時振とう リスク回避としては前進していると述べ、さらなる だったり、単位のメモリ合わせなどが適正使用しに 進展を期待した。 くい一因だ」と指摘した。とりわけ、視力が低下し 奥田氏は、 「残薬の奥にある金額、背景、患者心 た高齢者などは細かなメモリ操作が相当困難だとし 理などにあらためて薬学的な目を向けることで、取 た。また、患者自身で塗り薬を塗れない生活保護受 るべき対処の方向性が見えてくる」と指摘。 「それ 給者に軟膏剤を処方し、23 万 5000 円分の残薬が確 は大きな患者利益であり、薬剤師の職能でもある」 認されたケースを紹介。患者によると、おおむね 1 と強調した。また「残薬分を調剤報酬の技術料に振 年分をまとめて廃棄しており、奥田氏は「適正十分 り替えられれば、患者サービスがいっそう充実する な処方だとは考えにくい」とコメントした。 とともに、医療者への評価にもつながる」との考え さらに、在宅ターミナルにおける麻薬約 200 万円 も示した。 11 2013 日薬学術大会ハイライト 一般演題 口頭発表 ト トマト・石元氏 在宅移行時や初回診療時に処方間違い生じやすく マト薬局大島店の石元秀和氏は 23 日の日薬 トマト薬局大島店では今年 2 月から 4 月にかけ、 学術大会で「在宅医療で起こりやすい処方に 在宅医療に関する処方箋で起こったヒヤリハット事 関するヒヤリハット事例」をテーマに講演し、独自 例を集計。薬剤師が処方の間違いに気がついた時点 の調査で、退院から在宅療養への移行時や初回訪問 や処方間違いの内容、発生した理由を調査した。 診療時に処方間違いが生じやすい可能性が示唆され 処方箋 1889 枚中、処方間違いは 12 件。薬剤師が たことを報告した。 これらの処方の間違いに気がついた時点は「初回訪 初回訪問服薬指導時には必ず、前医による処方薬 問服薬指導」が 8 件、「処方監査」が 4 件で、処方 や薬剤情報提供書を確認し、処方薬との照合を行う 間違いの 67%は初回訪問服薬指導時に発覚した。 トマト薬局大島店の石元氏 一般演題 ポスター 発表 ラ ことがアクシデント予 処方間違いの内容は「退院処方との用量違い」5 防に重要である可能性 件、 「退院処方との用法違い」4 件、 「医薬品間違い」 も示唆された。 2 件、 「併用禁忌」1 件となり、処方間違いの 75% 同氏は「退院前共同 は退院処方との相違によるものだった。 指導への参加や薬薬連 処方薬と退院処方薬との相違が生じた理由につい 携などにより、薬局薬 ては「処方医のミスによる処方間違い」が 9 件中 5 剤師が処方内容に関す 件、 「診療情報提供書の記載内容と実際の退院処方 る情報を事前に把握し 内容との相違」が 4 件となった。処方医のミスによ ておくことも重要」と る処方間違いが発生した時点は「初回処方」4 件、 「初 みている。 回処方以降」 4 件と半数が初回処方時に生じていた。 ラッキーバッグ タブレットで吸入指導、時間短縮・理解度向上 ッキーバッグ(山形県)のスマイル薬局(岩 マット」 「エアゾール吸入薬」 「ディスカス」 。 手県)は日薬学術大会で「タブレットによる タブレット端末を用いた取り組みによって、投薬 吸入指導の導入」について発表し、タブレット端末 時の吸入指導時間は短縮した。特にこうした傾向は を用いた吸入指導で、吸入指導時間の短縮、吸入方 若い患者に顕著だったという。 法に対する患者の理解度の向上につなげていること また高齢の患者の吸入方法に対する理解度は向 を報告した。 上。積極的に吸入剤を使用してもらえるようにな 同薬局は投薬時の吸入指導に費やす時間の短縮、 り、吸入剤のコンプライアンスも向上した。特に昨 吸入方法の理解度の向上を目的に、タブレット端末 年 10 月から今年 3 月までのインフルエンザ流行時 を用いた吸入指導を始めた。患者には投薬までの待 期のタブレットによる吸入指導は「効果覿面(てき ち時間に吸入方法の動画を見てもらい、投薬時には めん) 」だったという。 再度説明を行っている。 吸入指導時間の短縮に伴う待ち時間の短縮、吸入 タブレット端末は iPad を使用。吸入指導の動画 方法の理解度向上に伴うコンプライアンスの向上に は全てフリーソフトからダウンロードした。用いた つながったことから、同薬局では「費用対効果も十 動画は「パルミコート(シムビコート)タービュヘ 分期待できる投資であり、他の店舗へも容易に普及 ラー」 「リレンザ」「イナビル」「スピリーバ レスピ させることができるシステム」とみている。 12 2013 日薬学術大会ハイライト 一般演題 ポスター 発表 株 地域保健企画 7 割以上の人が「残薬あり」、半数近くが「自宅に放置」 式会社地域保健企画は、大阪市内で開かれた 「多めに処方」5%、 「体調不良」4%、 「備蓄」3%、 「多 日薬学術大会のポスター発表で「残薬の実態 くて分からない」 「中止指示」 (ともに 2%) 、 「飲み 調査」の結果を紹介した。 づらい」 「飲みたくない」 (ともに 1%)だった。症 それによると、7 割以上の人が何らかの原因で残 状改善では風邪薬や吸入薬・喘息治療薬などが多く、 薬の経験があると答え、半数近くが自宅に放置して 自己調節では NSAIDs などの痛め止めが多かった いるという結果が判明した。 という。 調査は、同社の多摩薬局の来局患者 195 人(無作 残薬の処理方法(141 人)では、 「そのまま」が 為)を対象にアンケート形式で実施。調査期間は 46% と半数近くに上り、「廃棄」21%、「症状再出現 2012 年 8 月 7 日から 1 カ月間。「性別・年齢」「残 時服用」15%、 「処方の日数調節」4%、 「他者への譲渡」 薬の有無」 「薬が残る理由」「残薬の処理方法」 「医 1% が続いた。残薬の多くは患者宅に放置されてい 師から患者へ残薬の有無が確認されているか」 「残 るという結果だった。 薬があることを医師に伝えているか」を聞いた。 医師から患者へ残薬の有無が確認されているかど 調査結果によると、回答者 195 人のうち、「残薬 うか(195 人)では、 「確認あり」が 58%、 「確認なし」 あり」141 人の 72% に上り、 「残薬なし」が 54 人の が 42%。残薬があることを医師へ伝えているか (141 28% で、年齢による残薬率に大きな差はなかった。 人)では、 「報告あり」が 60%、 「報告なし」が 40% で、 薬が残る理由(回答者 141 人)では、「飲み忘れ」 医師からの確認がなく、医師への報告もない人は が 34% と最も多く、次いで「症状改善」18%、 「自 31 人、22% に上った。 己調節」15%、 「検査のため」9%、「処方変更」6%、 一般演題 ポスター 発表 ツ 残薬調整への働き掛け、処方変化に効果 ツルハ・小野寺氏ら ルハが運営する調剤薬局ツルハドラッグ小樽 調査の結果、残薬があると回答した患者の割合は 店(北海道)の小野寺純也氏らは、日薬学術 13%。このうち、残薬があることを医師に伝えてい 大会で、服薬指導時の残薬の確認と残薬調整への働 る患者は 33%、自分で残薬の量を把握している患 き掛けの効果をポスター発表した。 者は 47%だった。 残薬があると回答した患者に対し、薬剤師が服薬 残薬があると回答した患者に薬剤師が残薬調整を 指導時に患者に残薬調整を医師にしてもらうよう働 医師にしてもらうよう指導し、次回来局時に処方に き掛けたところ、次回の処方に変化があったのは 影響したかを追跡調査したところ、次回の処方に変 21%で、薬剤師による指導の効果があることが分 化があった割合は 21%だった。 かった。 アンケートを実施した全ての処方の中で残薬調整 小野寺氏らは薬剤師が服薬指導時に残薬調整を働 が行われた割合を見ると 2.8%で、減量・削除され き掛けることによって、医療費の削減に貢献できる た薬剤は 15 品目、1 万 5694 円分だった。 かを調べるため、ツルハドラッグ小樽店・双葉店を これらの結果から、小野寺氏らは「薬剤師の指導 利用している患者に対し、2011 年 9 月から 1 カ月間、 によって、残薬があると回答した患者の 21%の処 残薬の状況などをアンケート調査した。対象とした 方に変化があったということは、薬剤師の指導が医 のは定期処方で、同じ内容の処方が最低でも 3 回継 療費削減に有意義なものと考えられる。患者の服薬 続されている患者。 意識の向上にもつながるのではないか」 としている。 13 2013 日薬学術大会ハイライト 一般演題 ポスター 発表 望 望星薬局 タブレット使用し、糖尿病患者に事前聞き取り 星薬局は日薬学術大会で「タブレット端末を 今回は調査期間が短かったため、タブレットを使 使用した糖尿病患者への事前確認の取り組 用した事前聞き取りの HbA1c 変化量への影響は確 み」を発表し、タブレットは事前聞き取りのツール 認することができなかったが、指導項目は有意に改 として評価でき、他の疾患での運用についても十分 善したことから、同薬局では「長期的には良い影響 期待できるとした。 につながるのではないか」と見ている。 同薬局はタブレットによる事前確認調査の方法に タブレットを使用した患者に行ったアンケート結 関して、患者がタブレット上で操作するためのアプ 果では、タブレットの操作性について 52 人中 37 人 リケーションを作成した。 が「問題ない」と回答。 「タブレットを使用した聞 タブレット調査期間は昨年 11 月 1 日から今年 1 き取りは受け入れられる?」との問いには 45 人が 「思う」 「大いに思う」と回答した。 月 31 日まで。調査対象患者はインスリン未使用者 で同薬局で処方頻度の高い DPP - 4 阻害剤エクア タブレットによる聞き取りに対して肯定的な意見 錠・ネシーナ錠を服用していた患者。聞き取り項目 が多かったことから、同薬局では「事前聞き取りの は HbA1c、血圧、低血糖の有無など。聞き取った ツールとして評価でき、他の疾患での運用について 内容は電子薬歴上に反映させ、薬剤師はこれらの情 も十分期待できることが示唆された」と見ている。 報を得た上で服薬指導を行った。 一般演題 ポスター 発表 霧 霧島市民薬局 残薬整理で疑義照会 364 件、年 69 万円の医療費削減 島市民薬局(鹿児島県)は、日薬学術大会の 別では、 最も多いのが後期高齢者医療制度の患者で、 ポスター発表で「残薬整理による医療費削減 次いで国民健康保険、社会保険の本人の順だった。 効果と課題」について紹介した。2012 年度調剤報 自己負担のない患者の場合、残薬について薬剤師に 酬改定で薬剤師が残薬確認を行う枠組みが設けられ 申し出ないケースが多いという。 たのを機に、各薬剤師が残薬整理に関する疑義照会 同薬局では 12 年度調剤報酬改定以降、各薬剤師 を積極的に行った結果、年間 69 万 1080 円の医療費 が残薬整理の疑義照会を積極的に実施した結果、以 削減効果につながったことを報告した。 前に比べ医師から「次回残薬整理するので、今回は 同薬局では、2012 年 4 月から 13 年 3 月までの過 処方変更なし」との回答がほとんどなくなり、残薬 去 1 年間の処方箋から、残薬整理による医療費削減 整理がしやすくなったと指摘。さらに、訪問看護師 効果を集計。残薬整理による疑義照会件数は 364 件 と連携して残薬を持参してもらい、同薬局で日数調 に上った。 整するなど他職種との連携も深まっていることを挙 疑義照会件数を年代別で見ると、80 歳代の患者 げた。医療資源の有効活用という面からも、薬剤師 が 94 件と最多で、70 歳代(76 件)、60 歳代(75 件) 、 は残薬確認を積極的に行う必要があると提言してい 50 歳代(42 件)、90 歳代(21 件)が続いた。保険 る。 一般演題 ポスター 発表 株 お薬手帳カバーなどで持参率向上 エルムアンドパーム・西村氏ら 式会社プリスクリプション エルムアンド 術大会で「お薬手帳を活用してもらうための使用推 パーム(宮城県)の西村朋起氏らは、日薬学 進活動―手帳持参率から見た成果―」をテーマにポ 14 2013 日薬学術大会ハイライト スター発表し、お薬手帳のデザインを選択できるよ た患者にはシールとともに持参を促す一文を記載し うにしたことや手帳カバーの提案など新たな取り組 た台紙などを配布した。 みの結果、手帳の持参率が高まったことを報告した。 お薬手帳の持参状況も毎回確認。記録を残し、持 同社はこれまでもお薬手帳を身近なものとして活 参忘れが続いている患者には重点的に説明するなど 用してもらうため、疾患の情報や服用時の注意点を 声掛けを徹底。お薬手帳と保険証や受給者証、診察 記載した手帳シールを作成していたが、再来局時の 券など受診の際に必要なものをまとめて収納できる 持参率向上にはつながりにくかったことから、お薬 カバーも提案した。 手帳を持参しなかった患者を対象に 16 店舗で新た 西村氏らは「まず、声掛けの徹底によりお薬手帳 な取り組みを実施。 の持参率が上昇。加えて、デザイン選択やお薬手帳 受付カウンターに手帳の一覧を掲示し、好みのデ カバーの提案を実施することで、より一層の効果が ザインの手帳を選べるようにしたほか、手帳を忘れ 得られた」としている。 一般演題 ポスター 発表 株 3 カ月の残薬日数調整で月平均 8 万円超の薬剤費削減に フォーラル・村井氏ら 式会社フォーラルの村井淳氏らは 22、23 日 合計 8 万 5283.49 円、11 月が 36 件(同 286 枚)で の両日開催された日薬学術大会のポスター発 平均 2064.8 円、合計 7 万 4331 円となった。全体の 表で、在宅医療での薬剤師の介入による医療費削減 13%の処方について薬剤の日数調整を行うことで、 について、2012 年 9 月から 11 月までの 3 カ月間の 月平均 8 万円を超える薬剤費の削減が実現できた。 在宅訪問で実施した残薬の日数調整によって月平均 考察では、残薬に対する積極的な日数調整によ 8 万 4774.9 円の薬剤費を削減したとする調査結果を り薬剤費が抑制できるとの認識を示し、医療機関 発表した。 との連携に加え、患者の飲み残しが出ないようコ 調査期間中の薬剤費削減額は、12 年 9 月が 33 件 ンプライアンスの向上に薬剤師が介入する必要性 を指摘した。 (総処方箋枚数 264 枚)で平均 2870 円、合計 9 万 4710.2 円、10 月が 40 件(同 286 枚)で平均 2132.1 円、 ランチョン セミナー 名 箱出し調剤で調剤時間は 1 分短縮 名城大・坂巻教授 城大薬学部の坂巻弘之教授は 22 日、日薬学 の満足度を調べた。小包装品は、同セミナーを主催 術大会のランチョンセミナーで「国内におけ した日医工が生産し、調査協力卸を通じて調査薬局 る箱出し調剤の効果に関する研究とわが国における に供給した。調剤時間の短縮は、ピッキングで 47 今後の方向性」をテーマに講演した。 秒台、調剤監査で 18 秒台、合計で 66 秒の効果が確 2012 年 8 月に実施した模擬処方箋によるシミュ 認された。 レーション調査の結果、調剤時間が 1 分程度短縮さ 坂巻氏は今後の箱出し調剤の方向について、 (1) れたとのデータを示し、「小包装品を用いた調剤は、 メーカー、卸の製造、流通コストの対応(2)医師 調剤時間の短縮に加え調剤ミス防止につながる可能 の処方日数のばらつき、処方品目数の多さへの対応 性が高く、薬剤師業務の効率化につながる」との見 (3)薬剤師の「自動販売機化」への対応(4)患者 解を示した。 用説明書の必要性―を挙げながら、薬剤師業務の 模擬処方箋による調査は、長野県上田薬剤師会の 効率化の観点から、 「メリットは大きく、今後小包 会員薬局のうちタイムスタディー実施に協力が得ら 装品供給の拡大が望まれる」と総括した。 れた 8 薬局を対象に、調剤時間、調剤ミス、薬剤師 15