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こ わくさいガキ待望論

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こ わくさいガキ待望論
1.もてなすということ
とが難しいようですが、あえていいますと富山だから
それで当たり前なんですから、何も子供に自分たちで
僕は僕でいい音楽を与えるように音楽プロデューサ
同じ料理でも、自分で作るよりも人が作ってくれ
という特別な調理は何もいらないんじゃないでしょう
すべてを決めて自由にやれとは言わないにしても、も
ーという仕事に邁進しているのですが、それも子供た
た料理のほうがおいしく食べられます。喜ばせたいと
か。たとえば特定の企業の経営理念について考える
う少し大人が考える子供の世界という概念は捨てた
ちに向かって音楽の可能性を知らしめたいという思い
いう作り手の気持ちも一緒にいただくからです。も
のではなく、この時代に経営理念というものがどう
方がいい気がしてます。未来は子供たちのためにある
だけが支えになっているような気がします。経験から
てなしたいという気持ちがなければ、どんなごちそう
あるべきかを論じなくてはいけないということです。
べきですし、彼らに危機感を持たせて、自分たちで
来る知恵は伝授する必要がありますが、その経験の
考えるということをさせるべきです。
プロセスを同じように踏ませようとする教育には疑問
も相手の心を暖かくすることはできないはずです。今
はエンターテインメントの時代ですが、そもそもエン
2.それぞれのルール
2,
それぞれのルール
4,4.志は高く、視点は低く
志は高く、視点は低く
ターテインメントとは「もてなす」という意味合いの
家庭の中でのルールは家族の間では時間をかけて
英語です。ならば愛を持って、もてなしの気持ちで
成熟はしていきますが、いったん外に出るとまったく
僕が富山県に望むことは、その意味ではひとつで
富山に一言いわなくてはいけません。同じ考え方も
効力を発しないことがあります。例えば、ある家で
す。子供に選択肢を多く与え、自分たちで選択させ
部外者がいうと説得力があるかもしれません。料理
は食事の後にお母さんだけが片付けをしているとお父
るチャンスを与える教育方針を持ってほしいというこ
世の中に折り畳み傘が出てきたときの驚きを、僕は
と一緒です。
さんが子供たちに手伝えと怒ったとします。最初は
とです。延々と続く荒野のまっただ中に立ち、車を
はっきりと覚えています。それまで傘は子供には重
面倒くさそうに手伝っていた子供たちも早く片付く
一台与えられた人間はひたすら走り続けて街を探し
く、肩で支えてさしていた記
それは錯覚です。僕があれこれ手を加えるまでもなく
し、そのあとの一家団欒がより楽しく感じられるよ
人生を模索するでしょう。仮にパソコン一台を与え
憶があります。金髪に
富山というごちそうは美味ですから、その素材はそ
うになり、毎食後はさっさとみんなで片付けるように
られた子供は、自分で情報の波に溺れそうになりな
染めた髪で日本髪
のままで食欲をそそられます。出る杭は打たれるし、
なったとします。それはその家庭では順次成長して
がらも必死で大海を渡ろうとするはずです。投資する
を結った花嫁が出
出過ぎた杭は抜かれるし、ちょうどいいというこ
いったいきさつがあるから全員にとって快適なんで
べき対象は子供です。
すが、そのルールを別の家で同じように当てはめるこ
事放談めいた意見を自由に話していて感じることは、
いいのかもしれません。時代は常に新しくなります。
とは出来ないと思います。ある家庭では、食事を終
放送媒体に若者の影が見えないということです。も
まず視点を子供の視点に合わせること、これが僕の
えた者から順に自分で片付けるようにしていたり、ま
っといえば子供たちが見えない。放送媒体に限らず、
提案です。こわくさいガキが未来を変えるんです。も
た別の家庭では食事の後に片付けをせずに、まずは
新聞や雑誌などの紙媒体にしても、ターゲットに大
てなし上手の富山県民気質を、将来を担う子供たち
くつろいだりするというケースもあるわけです。それ
人しか見えてきません。海外旅行や温泉旅行やグル
に向かって惜しみなく発揮してください。
ぞれの事情があり、それぞれの習慣ができていて、一
メなどは、すべて大人の興味です。村上龍さんが
概に自分たちの狭い世界でのルールがベストだとは言
『13歳のハローワーク』を書いていますが、僕は情
新鮮な素材も見慣れていると新鮮さを失いますが、
い兼ねるのではないでしょうか。
報を求めているのは実は子供たちではないかとつくづ
く思っているんです。世の中に退廃の香りが充満し
3.世界の中心で子供が叫ぶ
3,
世界の中心で子供が叫ぶ
ができないでいるんじゃないでしょうか。温泉に行く
ます。地元の気候や風習、伝統に基づいた独自のル
ことは余暇の楽しみ方としては有効でしょうが、何
ールがあっていいはずです。
も新しいことは産み出さないですから。
を持たせてもらっています。音楽をかけながら時
との釣り場に子供を連れて行き、ここで釣れといって
いるようなものです。次の釣り場探しは彼らに任せる
べきです。
てきたって
PROFILE
須藤 晃(すどう あきら)
1952年8月6日 富山県生まれ
1977年 東京大学英米文学科卒業
1977年 CBS・ソニー
(現(株)ソニー・ミュージックエンタテインメント)入社
1996年 (有)カリントファクトリー設立
1998年 (株)ジャコベッティー設立
音楽プロデューサーとして、浜田省吾、尾崎豊、村下孝蔵、玉置
浩二等を手がける一方、作家、ラジオ番組のパーソナリティとい
った幅広い分野で活動中。
昨年は尾崎豊トリビュート企画のプロデューサーとしてアルバム
「BLUE∼A TRIBUTE TO YUTAKA OZAKI」がオリコン1
位を獲得。
街の散策とジョギングが趣味。
ているから、子供たちは未来に対して夢を持つこと
地方にとっての政策というものもそんな気がしてい
ここ二年ほど、僕は地元の放送局で30分の番組
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を感じます。自分たちがさんざん大物を釣り終えたあ
近著:「みんなノイズを聴きたがる」(TBSブリタニカ/刊)
ラジオ番組「続・おかしな惑星」
(北日本放送/制作)
http://www.karinto.co.jp
子供の教科書は大人が作るものだという発想は、
もう強調するべきことではないと思います。それは
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