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第 36 回 「環境賞」 - 日刊工業サービスセンター

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第 36 回 「環境賞」 - 日刊工業サービスセンター
平成 21 年6月 10 日
第 36 回「環境賞」
財団法人 日
立環境財団
株式会社 日 刊 工 業 新 聞 社
−−
平成 21 年度(第 36 回)
「環 境 賞」表 彰 式
日 時 平成 21 年6月 10 日(水)午前 11 時 30 分から
会 場 東京プリンスホテル(東京・港区芝公園)2階 サンフラワーホール
式 次 第
開 会
式 辞
財団法人 日 立 環 境 財 団
理 事 長
金 井 務
株式会社 日 刊 工 業 新 聞 社
審 査 経 過 報 告
取 締 役 社 長
千 野 俊 猛
審 査 委 員 長
横 山 榮 二
環 境 大 臣
斉 藤 鉄 夫 殿
贈 賞
来
賓
祝
辞
受賞者代表あいさつ
閉 会
記念パーティー
−−
ご 挨 拶
財団法人 日立環境財団
理事長 金
井 務
平成 21 年度(第 36 回)
「環境賞」表彰式の開催にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
財団法人日立環境財団は、国連の「人間環境宣言」が発せられた 1972 年に設立され、主
たる事業として、
「環境賞」の表彰事業、機関誌「環境研究」の刊行事業に加え、2002
年度より「環境 NPO 助成事業」
、2005 年度より「環境教育シンポジウム」を実施し、持
続可能な循環型社会の構築に微力ながらも貢献するべく、活動を進めてきました。
本表彰事業は、1974 年、当時の環境庁ご支援のもと、日刊工業新聞社との共催事業と
して創設し、今回で 36 回目を迎えるに至りました。これまでの授賞件数は今年度分を含
め 169 件に上り、斯界から「高い権威と実績ある賞」との評価をいただいております。
これもひとえに関係各位のご支援、ご協力の賜物と厚く御礼申し上げます。
今年度は、環境技術に対して、優秀賞2件、優良賞2件が授与されることとなりました。
さらに優秀賞を授与された IDC フロンティアのテーマに対しては、
「環境大臣賞」が授与
されることになりました。受賞者各位の日頃の真摯な取り組みに対して敬意を表すとと
もに、横山審査委員長をはじめ審査にあたられた委員各位のお力添えに対して深く感謝
申し上げる次第です。
環境問題は、今や人類が直面する最も重要な課題の一つです。二酸化炭素をはじめと
する温室効果ガスによる地球温暖化の問題をはじめ、生物多様性の問題、エネルギー問題、
資源循環問題、地球規模での水および食料の不足など多くの課題があります。これらの
課題は私たちのライフスタイルや事業活動に深く関わっており、さらに相互に関連して
いるため、複雑な様相を呈しております。
しかしながら、今回受賞した案件のみならず、ご応募いただいた案件はどれもこうし
た課題に果敢に挑戦するものであり、明るい未来を感じさせてくれるものでした。
みずみずしい地球環境を次の世代に橋渡しするのは私たちの使命であり、21 世紀を真
に「環境の世紀」とするべく、技術開発をはじめ、持続可能な社会の構築に向けた実践
活動の環が大きく膨らんでいくことを願っております。
こうした活動の促進のためには、法整備を含めた国・地方自治体の活動、企業におけ
る CSR 活動や市民参加の NPO 活動・ボランティア活動、さらには各家庭でのゴミ削減な
ど、多くの人々による地道な活動が極めて重要です。さらに、
「クールビズ、ウォームビズ」
などのようなライフタイルの提案・実施、本環境賞の受賞に繋がるような環境技術のイ
ノベーションなど、新しい時代を切り拓く英知を期待するものであります。
当財団は、今後とも持続可能な社会の構築に向け、微力ながらも貢献するべく、努力
する所存であります。本日ご列席いただきました皆様方の変わらぬご指導、ご支援をお
願い申し上げ、財団を代表してのご挨拶と致します。
−−
審査概評
審査委員長
横山 榮二
(元国立公衆衛生院長)
「環境賞」は環境保全に関して具体的な成果をあげた調査、研究、技術開発、実践活動
などに毎年贈呈されるもので、本年は第 36 回にあたります。
今回の応募は 31 件で、廃棄物・リサイクル、エネルギー、地球環境、環境保全に関す
るものが比較的多く見られました。これらについて多くの専門委員が一次評価を行い、
その結果に基づいて審査委員がヒアリングまたは実地調査を行って慎重審議をつくし、
優秀賞2件、優良賞2件を選び、その中から環境大臣賞が選定されました。
環境大臣賞・優秀賞に選ばれた IDC フロンティアの「外気活用によるデータセンター
の空調動力削減」は、わが国の総消費電力の5%を超えて増加する IT 機器の消費電力量
を抑制するため、サーバやストレージ機器を集中管理運用するデータセンターに外気空
調を併用して省電力化に取り組んだものです。
候補者らは建物の建築様式を基本的に見直し、センターの建物自体が呼吸するような
仕組みを日本で初めて実現してモジュール化した北九州市の環境配慮型データセンター
コンプレックス「アジアン・フロンティア」を 2008 年 10 月から運用開始しました。こ
れによって従来型に比べ約2割強の空調電力削減と約1割弱の CO2 削減効果が期待され
ます。
優秀賞に選ばれた新日本石油基地および新日本石油の「原油中継備蓄基地におけるタ
ンカー排出ガス処理設備」は、中東など産油国からの原油中継基地において、備蓄原油
を製油所に運ぶタンカーに積み替える際、船倉内のガスが押し出されて大気中に放出さ
れ、臭気汚染を引き起こす問題を解決して周囲の住環境を改善したものです。
この放出ガスには大量の有機化合物が含まれていますが、候補者らはこれらの 99%以
上を圧縮・冷却して原油で吸収・回収する世界初のプロセス設備を実用化しました。現
在このシステムは鹿児島市の喜入にある世界最大級の原油中継備蓄基地で稼動しており、
回収ガスを有効利用することによって、年間数億円のコスト削減にも役立っています。
優良賞に選ばれた神戸製鋼所の「薄板全製品のクロメートフリー化」は亜鉛メッキ鋼
板の防錆皮膜として一般的に用いられているクロメート処理で生じる6価クロム廃液に
よる環境汚染をクロメートフリー化によって防ぐ技術を開発し、薄板全製品に適用した
ものです。
−−
クロメート皮膜は電気亜鉛メッキ鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、塗装鋼板などさま
ざまな鋼板で使われていましたが、候補者らは独自の極薄皮膜を塗布する技術を開
発し、全クロメート処理鋼板を代替することに成功しました。これによって削減さ
れたクロメート処理廃液は年間数百㌧にのぼります。
同じく優良賞に選ばれた北海道旅客鉃道と日立ニコトランスミッションの
「ディーゼル・電動パラレルハイブリッド鉄道車両の開発」は自動車で利用されて
いるハイブリッドシステムをディーゼル鉄道車両に適用したものです。候補者らは
自動車と違い鉄道には慣性走行が多く、予測運転が可能である特長を生かして、一
台の小型モーターを変速機の制御、車両の駆動、バッテリーへの充電の3機能に用
いる独自のパラレル方式を考案しました。従来の気動車に比べて燃料消費量を 15
~ 20%低減して環境負荷を減らすことができるほか、駆動性能の向上により、車両
の高速化も期待できる技術です。
今回も多くの優れた環境技術が寄せられました。世界的な経済不況と石油をはじ
めとする天然資源の枯渇が懸念される時代にあって、わが国の環境技術が世界経済
に貢献する期待はますます高まっているといえます。惜しくも今回は入選を逸しま
したが、選外にするには惜しい提案がいくつもありました。環境技術は実績を重ね
てはじめて評価されることを改めてお伝えして、審査員一同提案者の地道で継続的
な努力を期待しております。
−−
第 36 回 「環境賞」受賞者一覧
(敬称略)
【環境大臣賞・優秀賞】
◇ 外気活用によるデータセンターの空調動力削減… ……………………………………
株式会社 IDC フロンティア
【優 秀 賞】
◇ 原油中継備蓄基地におけるタンカー排出ガス処理設備… ……………………………
新日本石油基地株式会社
新日本石油株式会社
【優 良 賞】
うすいた
◇ 薄板全製品のクロメートフリー化… ……………………………………………………
株式会社神戸製鋼所
加古川製鉄所 技術研究センター 表面処理研究開発室
加古川製鉄所 薄板部 表面処理室
加古川製鉄所 薄板部 薄板技術管理室
薄板商品技術部
薄板営業部
◇ ディーゼル・電動パラレルハイブリッド鉄道車両の開発… …………………………
北海道旅客鉃道株式会社
柿沼 博彦
井原 禎之
株式会社日立ニコトランスミッション
小田 哲也
柄沢 亮
小野 貴博
−−
環境大臣賞・優秀賞
外気活用によるデータセンターの空調動力削減
株式会社 IDC フロンティア
データセンターはデジタル情報革命に
より情報通信分野がボーダレス化しつつ
ある中で、IT 立国としての情報基盤の中
核として大きな役割を担っている。現在、
データ処理、伝送、アーカイブなど高集
積化した技術面向上の対応とともに、そ
の管理および運用能力の維持向上と環境
配慮が急務とされている。
このような情報データの高集積化に伴
い、室内高負荷熱処理による電力消費お
よび二酸化炭素(CO2)の増大が深刻と
されている中、これまで蓄積した技術ノ
ウハウや実績を生かし、外気冷房技術と
低搬送抵抗型冷暖分離建築構造の融合化
に成功した。本システムは、グリーン IT
を意識した次世代型データセンターとし
て構築化された最新鋭の施設である。
目指すべき外気冷房技術のポイントは
①地域における外気条件特性の把握②
サーバ機器などの熱負荷特性③各季別に
おける最適外気導入量の把握④室内導入
量増減におけるエアバランスの確立化⑤
結露対策-などが挙げられる。
また、低搬送抵抗型冷暖分離建築構造
化技術のポイントについては①完全分離
(冷熱ルート分離化)による効率化②外
気導入量を考慮した天井+床面の最適化
工法の確立化-などである。
従来型のデータセンターと比較して最
大空調消費電力量約 20%の削減が可能
となり、CO2 など温室効果ガスの排出量
では約 10%の削減を実現化している。
−−
規模的には、チームマイナス6%で呼
びかけている 「 一人一日 CO2 排出量1㌔
㌘の削減 」 に換算仮定した場合、約 270
万人分の1日に達成すべき削減量に相当
する内容である。
さらに、当該施設そのものをモジュー
ル化することで、従来の課題であった過
剰設備、待機設備の極小化にも成功して
いる。日本にデータセンター事業者が登
場して 10 年余り経つが、日本のデータ
センターは常に欧米諸国の先進事例を手
本として設備、運用、サービス構築をし
てきたといっても過言ではない。また、
データセンターは非特性の高い事業特性
から各社実態については公にされること
が少ない状況である。
IDC フロンティアでは、エネルギー管
理装置(BEMS)によるエネルギー分析
を行い、省エネ継続・推進を目的とした
環境対応型次世代データセンター構築が
社会的使命として考えている。今後は高
集積サーバ化(高負荷)に対する環境に
配慮した重要な要素技術として普及が期
待される。
施設の概要
・場 所 福岡県北九州市八幡東区
・面 積 約 7,500 平方㍍×2棟
・対象品目 サーバ他
設備の概要
・外気冷房空調システム(PAC 空調方式+
外気冷房用ファン+外気制御システム)
・低搬送抵抗型冷暖分離建築構造
Asian Frontier 敷地内配置イメージ
(将来増設・最終 12 棟)
データセンター施設の外観
外気取り込む外壁(外壁ルーバー)
−−
優 秀 賞
原油中継備蓄基地におけるタンカー排出ガス処理設備
新日本石油基地株式会社
新日本石油株式会社
九州の南端、鹿児島湾に面した地に世
界最大級の原油中継備蓄基地がある。こ
の基地は、中東などの産油国から超大型
タンカーで輸入した原油をいったん大型
タンクに受け入れ、その後、国内の製油
所に払い出す物流機能を有している。原
油を製油所に転送するために 10 万㌧級
の大型タンカーに積み込む際、タンカー
の船倉内に充満していたガスが排出され
る。
このガスには光化学オキシダントな
どの原因物質である揮発性有機化合物
(VOC)のほかに臭気物質が含まれ、基
地周辺の住民から悪臭に関する苦情も出
ていた。また、ガスを分析した結果、液
化石油ガス(LPG)に相当する有用なエ
ネルギーも含まれていることが判明し
た。
大気汚染防止法の改正に伴い陸上施設
から排出される VOC は規制の対象とな
り、排出量の 30%削減を目標に既に官
民一体となった対策がスタートしてい
る。一方、船舶から排出される VOC は
海洋汚染防止法で規制する方針は出され
たが、具体的な対策は示されていない状
況にある。
大型タンカーから排出されるガスの量
は膨大で、従来の燃焼法による処理では
温室効果ガス(二酸化炭素)の排出量増
加につながるため、新たな処理技術を開
発する必要性があった。そこで、原油か
ら排出されたガスは原油に戻せるという
発想に基づき、地元鹿児島大学の協力を
仰ぎながら、30 種類を超える原油で評
価試験を実施した結果、吸収性に優れる
原油を見つけ出すことができた。
排出ガスの吸収に、灯油などを使用し
た事例はあるが、直接原油で吸収させる
システムとしては世界初となる。タン
カー排出ガスを加圧・冷却し、同様に冷
却した原油と接触させることにより、ガ
ス中のエネルギーの約 70%を原油に吸
収させることができる。吸収できなかっ
たガスは、燃焼設備で完全に分解処理さ
れる。また、最新技術を活用し、安全性
と運転性に優れたシステムを構築した。
年間約 300 隻ものタンカーから排出
される3100万立方㍍の排ガスを処理し、
VOC と臭気物質の 99%以上を削減する
とともに、原油換算で約 1 万㌔㍑のエネ
ルギーを回収した。本設備の導入によ
り、VOC の削減、臭気問題の解決に加え、
従来廃棄していたエネルギーを回収し利
用することにより経済的にも有効なシス
テムであることが実証された。
この設備については、近年、環境意識
の高まりつつある中東などの産油国も関
心を示し設備見学の実施や一部産油国の
原油出荷基地をターゲットとしたフィー
ジビリティー調査も進展している。原油
起因による最大の VOC 排出源である産
油国の、積極的な採用により、地球環境
影響緩和への期待が広がる。
−−
基地設備の全景
タンカー排出ガス処理設備概要
タンカー排出ガス処理設備プロセスフロー図
−−
優 良 賞
う す い た
薄板全製品のクロメートフリー化
株式会社神戸製鋼所
加古川製鉄所 技術研究センター 表面処理研究開発室
加古川製鉄所 薄板部 表面処理室/薄板技術管理室
薄板商品技術部/薄板営業部
近年、世界的に環境問題への関心が
高まる中で、EU では廃車(ELV)指令、
国内では PRTR(環境汚染物質排出移動
登録制度)など環境に対する特定化学物
質の関与が注目されている。一方、企業
では ISO14001(環境 ISO)などの導入
やグリーン調達など環境にやさしい製品
開発や工場内廃棄物の削減などさまざま
な努力がなされるようになった。
これまで、薄板製品には一次防錆を目
的としてクロメート処理が汎用的に使用
されてきた。このクロメート処理には特
定化学物質である6価クロムが含まれて
おり、その有毒性から作業環境や排水処
理などのさまざまな対策が必要であり、
最近ではクロメート処理製品のリサイク
ルや廃棄処理によって製品に含まれる6
価クロムの溶出による土壌や河川への汚
染の問題がクローズアップされてきた。
このクロメート処理を工場内から全廃
すべく研究開発を進め、1998 年8月に
鉄鋼業界で初めて電気亜鉛メッキ製品
のクロメートフリー鋼板「コーベジン
ク GX 処理」を商品化した。以降も継続
的なクロメートフリー表面処理技術の研
究開発によって、2005 年4月に電気亜
鉛メッキ全製品のクロメートフリー化を
達成し、同工場からクロメート処理の全
廃に成功した。この研究開発においては
極薄皮膜中にナノ粒子の防錆添加剤など
を均一分散させる独自の特殊化成処理技
術および亜鉛メッキ表面に高速で1㍃㍍
以下の極薄皮膜を塗布・乾燥させるコー
ティング技術などを活用することによっ
て、従来のクロメート処理製品と同等以
上の耐食性(防錆性)
、塗装性、導電性
などの機能を付与することに成功した。
一方、塗装鋼板については、2002 年
より研究開発に着手し、下地クロメート
処理およびプライマーコートの塗料に含
まれるクロム酸を含む黄色顔料(ストロ
ンチウムクロメート)などに替わる処理
技術を見いだしてクロメートフリー化を
達成した。
また、
溶融亜鉛メッキ鋼板については、
樹脂メーカーと共同で特殊化成処理技術
のベースとなる樹脂の開発を行い、通常
の樹脂エマルションの粒子径
(数十㍃㍍)
に対して、ナノ粒子樹脂エマルションの
開発に成功した。
この樹脂を用いて、溶融亜鉛メッキ
鋼板(GI)と合金化溶融亜鉛メッキ鋼板
(GA)の両者に適用できる特殊化成処理
皮膜を見いだし、0.5 ㍃㍍以下の薄膜で
処理できるコーティング技術を確立・量
産化して、2008 年2月に電気および溶
融亜鉛メッキ鋼板および塗装鋼板の薄板
全製品のクロメートフリー化を業界で初
めて完了した。
これによって、薄板工場で製品に使用
していたクロメート処理の全廃とこれに
付随する廃液やスラッジなどの環境負荷
物質の発生を大幅に削減するとともに、
クロメートフリー製品の製造・顧客への
供給によって環境負荷物質の低減と地球
環境改善活動の推進に協力できるものと
考える。
− 10 −
◆クロメートフリー特殊化成処理鋼板
◆クロメートフリー化の対象ライン図(EGL,CGL,CCL)
− 11 −
優 良 賞
ディーゼル・電動パラレルハイブリッド鉄道車両の開発
北海道旅客鉃道株式会社 柿沼 博彦/井原 禎之
株式会社日立ニコトランスミッション 小田 哲也/柄沢 亮/小野 貴博
地球環境保全は世界共通の課題であ
り、鉄道事業においても省エネ、排気エ
ミッションの低減に継続的に取り組む必
要がある。一方、鉄道事業における列車
の高速化は、利用者の利便性の観点から、
輸送サービスの質的向上に貢献するとと
もに他交通機関に対する競争力を維持・
強化できる有効な手段であるが、車両の
動力性能の向上が必要となり、エンジン
出力向上、エンジンの増設などが必要と
なり、環境負荷低減との両立が非常に困
難である。
今回開発した車両は、新開発のアク
ティブシフト変速機(HAST)を用いた
駆動システムにより、駆動効率を向上し、
さらに付帯するバッテリ・インバーター
などの電気機器を小型化することで、動
力性能の向上と省エネ・環境負荷低減の
トレードオフを解決したコストパフォー
マンスの高いパラレル式ハイブリッド鉄
道車両である。
この駆動システムはディーゼルエンジ
ン、HAST、モーター、コンバーター/
インバーター、バッテリーなどで構成さ
れている。開発した HAST は、噛み合い
クラッチのみを使用しているため、従来
のトルクコンバーター、湿式多板クラッ
チを使用した変速機よりも駆動効率の向
上が図れるとともに、モーター単独での
駆動、エンジン単独による駆動および両
者を併用した駆動が可能となる。この車
両の特徴は次の通りである。
①駆動、発電、変速の三つの機能を1
台のモーターで実現でき、エンジンの出
− 12 −
力を直接的に高伝達効率で動力として使
用することから、小さなモーター出力で
ハイブリッド化が可能となり、電気装置
の小型・軽量化、イニシャルコスト低減
が期待できる。
②エンジン動力にモーター動力を付加
できることからエンジン動力以上の駆動
力を発生でき、従来の気動車と比較する
と燃料消費量を 15 ~ 20%低減できる。
③燃料消費量の低減に伴い、CO2、窒
素酸化物(NOx)
、粒子状物質(PM)な
どの排気エミッションを低減でき、環境
負荷低減に貢献できる。
④モーター制御によりエンジンと車輪
駆動軸を同期させて、円滑な速度段の
切り替えを可能にした独創的な技術によ
り、乗心地改善が可能である。
⑤駅停車中にエンジンを停止し、バッ
テリーのみをエネルギー源として発車で
きることから駅騒音を低減できる。
この駆動システムには、将来的に2つ
の活用方法があると考えている。ひとつ
は、エンジン動力にモーター動力を付加
できる特徴を生かして、エンジン出力を
抑制し、燃料消費量を低減することで省
エネ性能を重視した活用である。もうひ
とつは、エンジン出力以上の駆動性能を
実現できることから、列車のさらなる高
速化を目的とした活用である。いずれの
活用方法も、従来技術では実現できない
高いレベルでの動力性能と環境性能の両
立が可能になると考えており、早期の実
用化を目指している。
開発したパラレルハイブリッド駆動システム
䝔䝇䝊䝮䞀
䜨䝷䝔䞀䝃䞀
䝦䞀䝃䞀
システムを搭載した試作車両
䝦䞀䝃䞀
− 13 −
「環境賞」審査委員
(敬称略・順不同)
◇ 委員長 元国立公衆衛生院長
横山 榮二 ◇ 委 員 もったいない学会会長 東京大学名誉教授
石井 吉德 東京大学名誉教授
大井 玄
自然環境研究センター理事
大塚 柳太郎 筑波大学監事
合志 陽一 環境省総合環境政策局長
小林 光
元工業技術院公害資源研究所長
高多 明 日本工業大学教授 工業技術博物館長
松野 建一 理化学研究所知的財産戦略センター特別顧問
丸山 瑛一 日刊工業新聞社 日刊工業産業研究所長
山下 郁雄
− 14 −
「環境賞」事務局
財団法人 日
立 環 境 財 団
〒 101− 8010 東京都千代田区外神田四丁目 14 番 1 号
株式会社 日
(秋葉原 UDX ビル 21 階)
TEL 03(3257)0851 FAX 03(3257)0854
担当:「環境賞」事務局
刊工業新聞社
〒 103− 8548 東京都中央区日本橋小網町 14 番 1 号
TEL 03(5644)7113 FAX 03(5644)7294
担当:日刊工業産業研究所
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