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池田院長の発表内容はコチラをクリックしてお読みください。
第14回 アクセス研究会セミナー
2012年7月15日(日)
PTA治療がバスキュラーアクセスに与える影響
ーOCT画像からの新たな知見・臨牀症例ー
池田バスキュラーアクセス・透析・内科クリニック
池田 潔
背景と目的
1) VAIVTが繰り返す治療であることを認識し、より良い開存期間を得る
ための器材の選択や拡張方法などのVAIVT全体を考慮してきた。
2) 2004年完全拡張と不完全拡張では、開存期間に有意差がないことか
ら、治療方法のエンドポイントを2005年以降、透析血流量の確保として
VAIVTを行ってきた。
3) VAIVTの開始は、閉塞もしくはスコアリングを使用して絶対的な狭窄と
判断しVAIVTを行った。
4) 拡張方法の違いによる開存期間の有意差を解析した。
5) 超高耐圧バルーンの使用前後における血流量、R.I.の改善度と開存
期間の検討を行った。
方法と解析
1) VAIVTのエンドポイントは、VAの拍動がスリルに変化した状態で
終了し、バルーンの完全拡張は、目的としなかった。VAIVT後に透
析時の脱血不良例は不成功群とした。
2)
AVF群2010年以降は、VAIVT前後に超音波による血流量を評
価に用いた。血流量500ml/min以下とResistanse index>0.6 を
VAIVTの基準とした。
3) Balloonの加圧方法による開存期間を検討した。
4) AVF群を2004年~2010年まで978例で解析した。解析方法は、
Kaplan-Meier 法を用い log-rank 検定を行った。
対象
1群 979例で2004年から2010年までのVAIVTを施行したAVF症例
M:F
Average age
Original disease
Average pressurization
595:384
63.1±12.3 ys. (mean±SE)
DM 228 non-DM 750
8.9±2.99 atm (mean±SE)
2群 187例で2010年から2012年までに超高耐圧バルーンを使用した症例
M:F
Average age
Original disease
Average pressurization
75 : 108
63.2 ± 11.2 ys. (mean±SE)
DM 77 non-DM 106
8.27±3.2 atm (mean±SE)
*Cases of narrowing of veins were assessed by converting to a
Vascular Access Trouble Score (hereafter,V.A.T.S)(Table 1),and
for patients who obtained a score of 3 or more ,PTA was performed
only when it was deemed necessary by DSA test and ultrasound.
(Table 1.)Scoring of vascular access trouble
1) nothing
0
2) hearing high tone sounds at the stenosis area
1
3) a palpable stenosis area
2
4) increased venous pressure
(AVF:1、AVG:3)
5) extension of hemostatic time
2
6) blood flow failure after veinpuncture toward the
5
direction of the anastomotic site
7) vascular failure one hour later
8) decreased the sound of vascular access
9) decreased pillor pressure
10) arrythmia
1
(AVF:2、AVG:3)
2
1
【 DSA : over 3 points, PTA: over 6 points】
(Fig.1)
Primary patency
from 2003 to 2010
Cases :AVF 979
(%)
100
90
80
70
60
50
40
30
n.s.
20
10
0
0
50
100
150
200
250
300
(Wks.)
Full dilation
: 567 cases
incomplete dilation : 412 cases
(Fig.2) FIG.2: Comparison of patency time. 244
cases below 6 atmospheres compared to 735cases
below 7 atmospheres.
From 2003 to 2010
(%)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
0
Under 6 atm :244 cases
Over
7 atm :735 cases
n.s.
100
200
300
400
500
(Wks.)
Primary patency
(Fig.3)
(%)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
(%)
*
100
200
300
(Fig.4)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
*P<0.01
0
From 2004 to 2010
400
500
*P<0.01
*
0
100
200
300
(Wks.)
500
(Wks.)
Under 5 atm
: 140 cases
Under
4 atm
Over
: 839 cases
Over
5 atm
6 atm
400
: 54 cases
: 925 cases
(Fig.5)
Flow volume ; F.V.
F.V(ml/min)=Vm-mean(cm/s)×area(㎠)
×60(s)÷100
Brachial artery
Resistance index;R . I .
R.I.=
PSV-EDV
EDV
PSV
EDV
(Fig.6)
(Fig.7)
Flow volume
Resistance Index(R.I.)
ml/min
0.9
0.8
0.7
0.6
0.65
0.57
0.5
916
0.4
649
0.3
0.2
0.1
*
*
P<0.001
*
0
*
P<0.001
(Fig.8)Primary patency period of ultra-high-pressure balloon and others
From 2010 to 2011
100
90
80
Atomosphers of mean
ultra-high-pressure 8.3±0.37
others
7.3±0.27
70
60
50
P<0.01
40
30
n.s.
20
10
0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
Ultra-high-pressure: 94 cases
Others
: 89 cases
結果)
1郡
1)完全拡張群と不完全拡張群に開存期間の有意差はなかった。
2)この2郡において、VAIVT終了時におけるバルーンの加圧に有意差
はなかった。
3)図3:バルーン加圧7気圧以上群と6気圧以下では、開存期間に統
計学的有意差はなかった。
4)図4:バルーン加圧5気圧以下と6気圧以上の群では、開存期間に
統計学的有意差があった。
2群
1) 超高耐圧バルーンとnon-compliance balloonの比較では、拡張
圧と開存期間に相関はなかった。
2) 超高耐圧群において、3ヶ月を境として低下傾向を認めた。
(まとめ)
1) AVFにおけるVAIVTでの5気圧以下の拡張で
は、開存期間が6気圧以上と比較して有意に延
長した。
2) VAIVTを行ったAVFにおける狭窄部位では、完
全拡張したケースと不完全拡張に終わったケー
スで開存期間に有意差はなかった。
(結語)
AVFの脱血における透析量を確保するために
VAIVTで狭窄部を拡張するには、完全拡張の必
要性はない。より低圧で透析血流量を確保する
手技で行うことが重要である。
新生内膜増殖による再狭窄
Hemodynamics
Graft
Dialysis
Surgical
needles
stress Angioplasty
Roy-Chaudhury P et al, J Am Soc Nephrol 2006より引用、改変
はじめに
#1 VAIVTは、再狭窄の誘因である。内膜の損傷と
治癒による内膜肥厚を繰り返す。
PTA→拡張→組織損傷は、治癒行為→内膜肥厚→
再狭窄という結果を生じている。
#2 PTAのendpointに、血管径の拡張を重視(complete
dilation)するのは、血管内皮への強い損傷となり、
治癒 = 再狭窄を促進する可能性が考えられる。
検討方法
#1.狭窄を繰り返すバスキュラーアクセスに対するPTAの
endpointを、透析に必要な血流量を確保する事とした。
#2.Ultra high pressure balloonを使用する事で、低圧で血管
内皮への侵襲を抑制し、充分な拡張効果が得られる事を、
他のSemi-compliant balloonと比較検討した。
#3.拡張前後の血管径の変化と血管内膜の損傷を比較検討
するのにOCTを使用した
PTAバルーンの拡張効率の計測
JOHN E Abele:
‘Ballooon Catheters and Transluminal Dilatation’
Technical Considerations:
AJR 135:901-906 Nov.1980
American Roentgen Ray Society
パスカルの原理
バルーンの表面積
過拡張部位
ATM
表面積
= ニュートン(押し上げ力)
表面積が増加したため、インデフレーターの圧表示が同じであっても
狭窄局所の一定の面積を押す押し上げ力は減じている。
拡張効率 = 拡張圧ごとの狭窄部への圧力変化
50
45
CQ
35
UTD
30
シンメトリー
25
スラロームTH
20
シナジー
15
10
5
バルーン拡張圧(ATM)
30
28
26
24
22
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
ATM
狭窄部への圧力(N=ニュートン)
40
OCT(Optical Coherence Tomography)
imaging systemとは、
① OCT(光干渉断層法) = 光ファイバーから近赤外線を照射
することにより、現存する血管内イメージングモダリティー
の中で高解像度(約15μm = 血管内超音波(IVUS)装置よ
り10倍の解像度)の血管断層画像を得ることができる。
② 明るく見える部分⇒内膜肥厚などの組織
③ 暗く見える部分⇒脂肪、血栓
OCT Case observation
OCT観察方法
#1.術前の狭窄部全長の内膜観察と共に、最
も径の細い部位で内径を計測
#2. PTA後の同じ部位の内膜観察と共に、内
径を計測
#3. 上記ポイント以外のPTA後の内膜の状態
と、透析に必要な血管径の確保の観察
症例①
主訴:脱血不良
PRE PTA
狭窄部位
2011年6月
前腕AVF
狭窄部位:2ヵ所
術前OCT画像 = 最も径の細い狭窄部
前回のPTAによる内膜損傷の治癒が進み、内膜表面には乖離等はあまり見ら
れない。また、内膜は治癒の為に肥厚している。
狭窄の強い部分の径は
最大3.23mm
最小2.69mm
mean = 2.91mm
①拡張
狭窄部
2011年6月
conquest
5x40mm
4atm
OCT画像 (第一回目の拡張後)
CONQUESTの
5mm×4cmを使用。
4atm×60sec.
Max 4.71mm
Minimum 3.81mm
Mean =4.23mm
であった。
4atmでも十分な拡張が
得られた。
血管内膜の損傷は、
一部に微小な乖離を認
めた。
②拡張
狭窄部
2011年6月
conquest
5x40mm
6atm
同一部位術後画像 (第二回目6atmの拡張後)
Conquest 5mm×4cm、 6atm×60sec.
Max 4.12mm Minimum 3.35mm Mean =3.67mm
狭窄部の径はMean 2.91から3.67と血流量確保の為に必要な径を確保しているが、
一回目の4atmよりは全体的に内膜の乖離は多くなっている
6atm.
4 atm.
Mean =3.67mm
Mean =4.23mm
症例②
64歳 male
主訴:脱血不良
VA:左前腕内AVF
狭窄部位:吻合部、吻合部近傍の2ヶ所
使用器材:Ultra high pressure balloon 4mmX4cm
DSA
Point A
狭窄部位
Case 2 - Point A 術前 OCT 画像
Maximun 2.94mm, minimum 2.50mm, mean = 2.73mm
拡張:
3atm X 30sec.
Case 2 - Point A 術後 OCT 画像
第一回目の拡張 super non-compliant balloon 4mm×4cm 3atm
血管径はMaximum 3.20mm Minimum 2.52mm Mean 2.86mm
一部に血管内膜の損傷が見られ、乖離の発生を認める。
拡張
8atm X 30sec.
Case 2 - Point A 術後 OCT画像
第2回目の拡張 super non-compliant balloon 4mm×4cm 8atm
血管径はMaximum 3.45mm, Minimum 2.81mm, Mean 3.09mm。
狭窄部の拡張は第一回目と比較して、あまり変わらない。
3atmでの拡張と比較して、バルーンは、full dilation しており血管内膜の損傷と
乖離が全周性に認められる。
pre
3atm
8atm
症例③ (2012年2月18日)
1)VA:
左前腕内AVG
2)狭窄部位:AVGの drainage vein
(stent内再狭窄)
3)使用器材:Super-non-compliance balloon
6mmX4cm
4)拡張術:
6atm X 1 min X 2 回
DSA
Point A
Case 3 - Point A 術前 OCT 画像
ステント内への内膜増殖が,前回のPTA後の内膜増殖と前々回のPTA後の内膜増殖との境界
線が確認出来る。
狭窄部位の内腔は、前回のPTAによる内膜損傷によって、全体的に真円ではない。乖離も多
く見られる。
狭窄部の径はMaximum 3.23mm, Minimum 2.65mm, Mean 2.80mm.
POST PTA
拡張:
6atm X1min X 2回
Case 3 - Point A 術後 OCT 画像
コンクエストの6mm×4cm 6atm×1min.×2回.
拡張後の内腔はMaximum 4.26mm, Minimum 3.25mm, Mean 3.68mm
低圧拡張で、内腔は十分確保でき狭窄部の拡張は十分と思われ
乖離もほとんど見られない。
結果
#1. 低圧での拡張で、Ultra –high pressure balloonにより、4atm
~6atmの拡張で、内腔は透析に必要な径を確保できた。
#2. 低圧による拡張で、1分間の拡張を複数回行い、ほとんど
の狭窄は解除される。
#3. ステント内再狭窄で、 Ultra –high pressure balloonによる、
低圧拡張で、充分な拡張が得られた。
#4. 4atmでの拡張と、その後の6atmでの拡張では内腔の広が
りに差は無く、より高い加圧での追加拡張により、血管内膜
の損傷・乖離の発生が上昇した。
結語
#1.PTAにおける加圧後の内膜状態を、OCTによって内膜の
損傷程度を確認した。
#2.OCTによって、透析血流を確保できるが狭窄を残す段階
から、バルーンのくびれが消失する段階で、内膜の損傷は
増加し内膜の修復による再狭窄が起こりやすい状態を確
認できた。
#3. Complete dilation による内膜損傷が、再狭窄を早期に
惹起することが画像上で示唆された。
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