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金型 120509.indd
金
型
金型
6.
6. 1 生産量
表 6.1.1 が機械統計による平成 23 年のわが国におけ
加で 3,166 億円となっている。数量では平成 13 年から 9
る金型の生産実績である。生産された金型の数量、
重量、
年続いた前年比減が 22 年にようやく止まっていたが、
金額について、金型の用途を 8 分類して実績値、前年
4 年連続の前年比減であった重量と金額でもやっとプ
比伸び率、構成比を示してある。
ラス成長になっている。
まず合計を見ると、生産数量では半数以上の用途で
機械統計は従業員 20 名以上の大手・中堅金型企業か
前年比プラス成長を示し、全体では 4.5 % 増であり、生
ら経済産業省が任意に抽出して実績を集計したもので
産重量でも 2.6 % 増えており、生産金額でも 0.6 % の増
あるが、平成 17 年以降の生産金額の前年比伸び率を用
表 6.1.1 平成 23 年の金型の用途別生産実績および前年比伸び率、構成比
生産実績
用途別
生産数量
数量
(組)
伸び率
(%)
生産重量
構成比
(%)
重量
(t)
伸び率
(%)
生産金額
構成比
(%)
金額
(百万円)
伸び率
(%)
構成比
(%)
型
131,516
5.6
17.9
80,827
− 0.8
59.9
124,156
− 0.9
39.2
鍛
造
型
111,902
− 6.7
15.2
7,106
14.5
5.3
18,135
4.4
5.7
鋳
造
型
6,692
31.2
0.9
3,229
21.5
2.4
8,109
12.6
2.6
プ
レ
ス
ダイカスト型
8,881
4.2
1.2
12,893
22.4
9.6
34,378
15.1
10.9
プラスチック型
35,208
− 10.5
4.8
27,362
0.8
20.3
115,555
− 3.4
36.5
型
362,635
7.9
49.4
1,770
− 1.7
1.3
3,840
− 2.4
1.2
型
8,106
− 6.3
1.1
1,164
− 0.3
0.9
5,793
− 2.3
1.8
粉 末 冶 金 型
69,740
13.8
9.5
512
25.5
0.4
6,644
18.3
2.1
734,680
4.5
100.0
134,863
2.6
100.0
316,610
0.6
100.0
ガ
ラ
ゴ
ス
ム
合
計
出所:経済産業省機械統計
表 6.1.2 平成 17 年∼平成 23 年の金型の用途別生産金額および前年比伸び率
生産実績 平成 17 年
伸び率
用途別
(%)
プ
レ
ス
平成 18 年
平成 19 年
平成 20 年
平成 21 年
伸び率
(%)
伸び率
(%)
伸び率
(%)
伸び率
(%)
平成 22 年
生産金額
(百万円)
平成 23 年
伸び率
(%)
生産金額
(百万円)
伸び率
(%)
型
2.2
9.2
1.9
− 10.2
− 21.0
125,288
− 9.2
124,156
鍛
造
型
12.0
19.5
− 2.7
− 0.8
− 39.6
17,363
41.0
18,135
4.4
鋳
造
型
25.0
11.2
− 9.8
− 5.0
− 42.4
7,200
− 3.4
8,109
12.6
ダイカスト型
29.4
37.0
− 8.3
− 1.9
− 47.8
29,859
20.6
34,378
15.1
プラスチック型
− 0.9
5.4
8.3
− 1.6
− 5.0
− 30.3
119,663
0.9
115,555
− 3.4
型
− 9.8
− 9.5
− 17.1
− 9.2
− 9.0
3,933
5.1
3,840
− 2.4
型
12.6
− 1.2
− 4.6
− 7.6
− 40.9
5,928
− 9.5
5,793
− 2.3
粉 末 冶 金 型
6.5
1.0
− 1.9
− 2.7
− 39.9
5,617
23.2
6,644
18.3
合
6.6
11.1
− 1.5
− 6.7
− 29.5
314,851
− 0.3
316,610
0.6
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計
出所:経済産業省機械統計
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素形材産業年鑑
途別に示した表 6.1.2 を見ると、半数の用途でマイナ
表 6.1.3 金型生産金額の推移
ス成長となったものの、3 用途で 2 桁の伸びがあった
機械統計
ことが全体のプラス成長に効いている。しかし、構成
年
生産金額
(百万円)
比の大きいプレス型とプラスチック型がマイナス成長
であることが気になるところである。
平成元年以降の生産金額について機械統計と工業統
平成元年
452,106
工業統計
伸び率
(%)
生産金額
(百万円)
伸び率
(%)
7.7
1,531,580
11.3
2
467,354
3.4
1,798,507
17.4
計(全国の全事業所の統計)を並べて表示したのが表
3
544,069
16.4
1,957,542
8.8
6.1.3 である。平成 3 年まで長年プラス成長が続き、
4
439,651
− 19.2
1,729,943
− 11.6
機械統計で 5,441 億円、工業統計では 2 兆円目前という
5
405,328
− 7.8
1,542,599
− 10.8
史上空前の金額に達したが、平成 4 年以降は数年おき
6
366,844
− 9.5
1,387,429
− 10.1
にマイナス成長とプラス成長を繰り返している。すな
7
417,989
13.9
1,517,884
9.4
わち、平成 6 年には両統計ともピーク時の約 2/3 の金
8
440,140
5.3
1,682,028
10.8
額にまで落ち込んだが、その後数年でピーク時の 90 %
9
506,755
15.1
1,828,817
8.7
以上にまで回復し、またマイナス成長になって機械統
10
488,118
− 3.7
1,895,446
3.6
計では平成 15 年に 3,800 億円台まで、工業統計でも平
11
437,614
− 10.3
1,637,307
− 13.6
成 14 年に 1.4 兆円台にまで落ち込んでしまった。その
12
424,336
− 3.0
1,686,419
3.0
後 3、4 年連続のプラス成長になって機械統計では 5,000
13
413,085
− 2.7
1,570,572
− 6.9
億円に近づき、工業統計では平成 18 年には 1.8 兆円近
14
391,619
− 5.2
1,463,165
− 6.8
くになったが、平成 19 年からは 4 年連続のマイナス成
15
384,088
− 1.9
1,557,750
6.5
長となり、機械統計では約 30 年以前の昭和 57 ∼ 58 年
16
412,263
7.3
1,624,023
4.3
の生産金額にまで落ちてしまった。22 年にようやく下
17
439,273
6.6
1,712,650
5.5
げ止まりかけ、23 年も 3 月の東日本大震災の影響があっ
18
487,956
11.1
1,787,459
4.4
たもののプラス成長となったが、まだとても回復した
19
480,422
− 1.5
1,701,469
− 4.8
とはいえない水準である。
20
448,298
− 6.7
1,697,984
− 0.2
機械統計による金型の生産数量、生産重量、生産金
21
315,921
− 29.5
1,159,035
− 31.7
22
314,851
− 0.3
23
316,610
0.6
額の数値から算出した、平成 22 年および 23 年の金型 1
組当たりの平均重量と平均価格、並びに平成 19 年以降
注)1.「機械統計」は工業統計の中の従業員 20 名以上の企業を
経済産業省が任意に抽出した統計、「工業統計」は全国
の全事業所の統計。
2. 本表の工業統計は、産業編の統計を使用している。ただ
し、平成 6 年の工業統計では従業員 3 人以下の事業所の
集計が省かれているため、平成 5 年の資料から算出。
の重量 1 トン当たりの平均価格の推移を示したのが表
6.1.4 である。平成 23 年の金型全体の平均値を 22 年と
比べると、金型 1 組当たりの平均重量は 3.3 kg(1.8 %)
の減少で 183.6 kg となり、1 組当たりの平均価格も 1.7
表 6.1.4 平成 19 年∼平成 22 年の金型の用途別平均価格の推移
平成 22 年
平成 23 年
生産実績 平成 19 年 平成 20 年 平成 21 年
平均価格
平均価格
平均価格
平均重量
平均価格
平均価格
平均重量
平均価格
平均価格
用途別
(万円 /t) (万円 /t) (万円 /t) (㎏ / 組) (万円 / 組) (万円 /t) (㎏ / 組) (万円 / 組) (万円 /t)
型
163.0
148.0
146.0
654.6
100.6
153.7
614.6
94.4
153.6
鍛
造
型
263.9
258.3
280.1
51.7
14.5
279.8
63.5
16.2
255.2
鋳
造
型
276.3
260.2
306.4
521.1
141.1
270.9
482.5
121.2
251.1
ダイカスト型
272.9
283.7
306.8
1,236.6
350.4
283.4
1,451.8
387.1
266.6
プラスチック型
477.1
453.3
441.7
690.6
304.3
440.7
777.2
328.2
422.3
ガ
型
224.3
210.7
223.7
5.4
1.2
218.4
4.9
1.1
216.9
型
461.6
468.3
468.9
135.0
68.5
507.5
143.6
71.5
497.7
粉 末 冶 金 型
1,464.3
1,356.4
1,530.2
6.7
9.2
1,376.7
7.3
9.5
1,297.7
249.6
235.9
226.2
186.9
44.8
239.6
183.6
43.1
234.8
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出所:経済産業省機械統計
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万円(3.1 %)減って 43.1 万円となり、重量 1 トン当
たりの平均価格でも 4.8 万円(2.0 %)減って 234.8 万
円となっている。平成 11 年までは重量 1 トン当た
り平均価格は 280 万円台、平成 13 年以降も 240 ∼
250 万円であったが、平成 20 年以降は 230 万円前後
に留まっている。
図 6.1.1 は昭和 62 年以降の機械統計による生産
金額と用途別構成の推移を棒グラフにしたもので
ある。生産金額は数年置きに上昇と下降を繰り返
しているが、平成 21 年の前年比約 30 % 減はかつて
なかった大幅減少であり、3,166 億円というのはこ
の図にもない昭和 50 年代の生産金額である。我が
国の自動車産業の海外生産の増加に伴って金型製
造業の海外進出が増えたこと、海外の金型メーカー
の技術も向上したこと、自動車部品の共通化が進
みつつあることなどを考えると、今後我が国の金
型生産額がピーク時に近い値まで復活するのは非
常に難しいように思える。
表 6.1.5 は機械統計による金型ユーザーでの金
型内製金額と、それが生産金額に占める割合(内
製率)の推移を用途別に示したものである。平成
23 年は金型全体では、内製金額が前年より 34.4 億
円(3.9 %)減って 842.9 億円となり、内製率は 1.3 ポ
イント減って 26.6 % となっている。統計では、内
製数量も前年より 3,507 組(4.4 %)減って 75,328 組
となっているので、内製金型全体の 1 組当たり平
均価格を算出してみると 111.9 万円となった。平成
15 年までは 80 万円台であり、平成 16 年に 90 万円
台、18 年に 100 万円台、19 年は 131.1 万円と大幅上
図 6.1.1 金型生産金額と用途別構成の推移
昇した後、20 年は 110.1 万円、21 年は 132.3 万円と
波動したが、22 年は 111.3 万円、23 年もほぼ同額
表 6.1.5 平成 17 年∼平成 23 年の金型の用途別内製状況の推移
生産実績 平成 17 年
内製率
用途別
(%)
平成 18 年
平成 19 年
平成 20 年
平成 21 年
内製率
(%)
内製率
(%)
内製率
(%)
内製率
(%)
平成 22 年
内製金額
(百万円)
平成 23 年
内製率
(%)
内製金額
(百万円)
内製率
(%)
型
23.7
27.6
31.9
27.2
28.8
36,382
29.0
30,036
24.2
鍛
造
型
61.9
56.5
58.4
59.2
55.0
9,351
53.9
10,141
55.9
鋳
造
型
24.5
22.1
24.8
18.1
23.5
1,648
22.9
1,711
21.1
ダイカスト型
29.3
24.9
23.9
24.3
28.9
7,775
26.0
9,634
28.0
プラスチック型
18.9
21.7
22.7
22.6
29.8
30,264
25.3
30,606
26.5
型
−
−
−
−
3.0
33
0.8
−
−
型
22.8
23.8
27.0
24.2
30.5
1,689
28.5
1,476
25.5
粉 末 冶 金 型
12.2
8.7
7.9
10.5
12.5
585
10.4
688
10.4
合
23.4
25.5
27.8
25.7
29.5
87,727
27.9
84,292
26.6
プ
ガ
ゴ
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ラ
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と落ち着いている。しかし、この数値は依然として表
月表によるもので、機械統計や工業統計とは集計方法
6. 1. 4 の金型全体の 1 組当たり平均価格 43.1 万円の約 2.6
や対象品目等がかなり異なっているが、金型に関する
倍と高価格である。
輸出入の推移が良くわかる。金型および関連部品の輸
表 6.1.6 は平成元年以降における金型および関連部
出金額は平成 9 年まで長年にわたりほぼ毎年プラス成
品の輸出入実績(金額)を示したものである。日本貿易
長をして、同年に 3,517 億円に到達した後、平成 10 年
からは約 2 年おきに増減を繰り返している。平成 16 年
には前年比 15.5 % の大幅増加で 3,719 臆円に達し、18 年
表 6.1.6 金型輸出入実績の推移
年
輸出
金額
(百万円)
には 3,816 億円と史上最高値を更新したが、19 年以降は
輸入
伸び率
(%)
金額
(百万円)
伸び率
(%)
3 年連続減少で 21年には 2,329 億円まで落ちている。22
年には 4 年振りに増え、23 年も 2 桁の伸びで 2,757 億円
平成元年
165,205
18.7
13,234
45.0
となったが、まだピーク時の約 72 % である。前述のよ
2
156,232
− 5.4
17,771
34.3
3
214,067
37.0
21,843
22.9
うに金型の海外生産が進んでいることから、輸出額の
4
215,381
0.6
19,321
− 11.5
5
214,604
− 0.4
13,872
− 28.2
6
240,726
12.2
14,525
4.7
7
258,687
7.5
18,445
27.0
円台、18 年に 800 億円台、そして 19 年には 911 億円と
8
283,923
9.8
25,869
40.2
9
351,762
23.9
36,819
42.3
史上最高値を更新し続けた。しかし、平成 20 年には 9
10
297,978
− 15.3
44,828
21.8
11
291,487
− 2.2
36,614
− 18.3
12
294,334
1.0
38,094
4.0
13
325,996
10.8
42,475
11.5
14
325,021
− 0.3
45,236
6.5
15
321,901
− 1.0
46,655
3.1
16
371,910
15.5
60,770
30.3
17
348,854
− 6.2
78,058
28.4
18
381,601
9.4
88,546
13.4
し、23 年度には 26.4 % と史上最高値を更新している。海
19
356,948
− 6.5
91,133
2.9
外進出企業製を含め、海外生産の金型が低価格であるだ
20
343,127
− 3.9
87,054
− 4.5
21
232,958
− 32.1
56,666
− 35.0
けでなく、品質も向上してきたため、今後我が国経済の
22
244,269
4.9
60,897
7.5
23
275,690
12.9
72,870
19.7
早期復活も難しそうである。
一方、輸入金額は前年比増加の年が多く、平成 10 年
に 400 億円台に達し、16 年に 600 億円台、17 年に 700 億
年振りのマイナス成長となって 870 億円に落ち、21 年
には大幅減で 566 億円まで落ち、
22 年に 3 年振りに増え、
23 年も 2 桁の伸びで 728 億円となっているが、これも
まだピーク時の約 80 % である。
平成 9 年までは輸入金額は輸出金額のせいぜい 10 %
程度であったが、平成 10 年以降は 12 % 以上となり、17
年には 20 % を超え、そして 19 年以降は 25 % 前後を維持
本格的復活とともに国内での金型需要が増えた場合に
は、輸入の比率がさらに上がることも考えられる。
(松野建一)
出所:日本貿易月表
6. 2 生産技術・研究
製造業のグローバル化に伴う空洞化が言われて久し
い。生産拠点を海外にシフトしている企業も少なくな
6. 2. 1 型技術誌
い。しかしながら、現地で技術開発を行うのはかなり
以下では、型技術誌で取り上げられたテーマを基に
の困難を伴う。今後も国内において、新素材の加工、
現在の金型技術・研究について紹介する 。
新形状の創製、従来技術の高度化に関する技術開発は
より一層促進しなければならない。例年ならばインター
1)
(1)高品質化・薄肉化が進むダイカスト生産技術の最
前線
モールド 2011 を中心に技術展開を紹介していたが、東
これまでダイカストは、自動車の足回りやボディ部
日本大震災の影響で開催が中止となったため、型技術
品のような要求品質の高い部品への適用は難しかった。
誌、型技術協会型技術セミナーを中心に金型関連新技
しかし、ここ十数年の間に高真空ダイカストや低速充
術のトレンドを紹介する。
填ダイカストなどの特殊ダイカスト技術が開発・実用
化されて難易度の高い製品への適用も進んでいる。さ
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金
型
らなる軽量化のための薄肉化、コストダウンのための
(8)最新・表面処理の選定と活用法
ハイサイクル化、環境負荷低減のための省エネ・省資
表面処理を施すことで母材の強度、靱性を損なうこ
源化への取り組みなどについて言及している。
となく、表層部の耐摩耗性や摺動性を向上させ、金型
(2)製品の高付加価値に向けた金型・成形技術の提案
の長寿命化や良好な離型性を実現できる。ここでは、
市場環境の変化に対応した製品競争力の強化には、
プレス・鍛造、ダイカスト、プラスチックなどの金型
製品を構成する部品づくりを変えて対応しなければな
に適した各種表面処理技術を紹介している。
らず、そのためには新たな金型・成形技術の開発が重
(9)ダイカスト金型のトラブル対策事例集
要になってくる。部品一体化、薄肉化、新材料、工法
ダイカスト金型に関する様々なトラブルの原因は、
転換などがキーワードとして挙げられる。これらを踏
材料や作業条件によって異なるものの金型設計・製作
まえて、樹脂成形やプレス・鍛造分野における金型・
に起因することが多い。ここでは、比較的発生頻度が
成形技術について言及している。
高いトラブルについて、その現象、発生状況、鋳造条件、
(3)部品の生産性を高める金型・成形法
原因、対策とその結果について解説している。
部品の生産性を高めるには、短時間、低コストでい
かに品質を維持して安定に量産するかが重要である。
生産スピードの向上、工程数の削減、自動化・省人化、
6. 2. 2 型技術セミナー
2)
歩留まり向上などをキーワードに金型・成形技術に言
以下は平成 23 年度に開催された型技術セミナーの
及している。
テーマとその講演テーマである。表面改質、金型加工
(4)計測データの活用による金型・部品づくりの変革
金型・部品製造の品質の均一化やリードタイムの短
縮、コストダウンのために 3 次元計測装置から得られ
たデータを製造プロセスに組み込む動きが高まってい
る。それらを踏まえて、金型設計・製作をはじめとし
技術、新素材、多軸加工技術に関する現状や開発技術
が紹介された。
(1)第 99 回 型技術セミナー
「冷間金型材の表面処理特性研究成果と表面処理
の諸特性」
た製造プロセスに組み込むための活用技術について言
・電子ビーム加工の表面改質への応用
及している。
・MSCoating による金型への表面改質技術
(5)最新 CAM ソフトの工具経路とシミュレーション
金型加工の品質と効率を両立させるには良好な CAM
データを作成することが大きなポイントである。CAM
ソフトによって得意な加工や設定機能、実際の精度、
処理時間などを熟知しなければならない。それらを踏
まえて、工具経路やシミュレーション機能およびその
活用のポイントについて言及している。
(6)ここまで来た! 5 軸加工機による金型づくりの最
前線
・冷間金型材料の表面特性評価結果の概要
・表面処理した冷間金型材料の密着性および摩擦摩
耗試験結果
・PVD 被膜処理した冷間金型材料の加熱による密着
性変化
・表面処理した冷間金型材料の摩擦摩耗試験結果
(2)第100 回 型技術セミナー
「金型加工における最新加工技術の現状」
・加工半減を可能にする最新切削工具とその活用方法
多軸加工の優位性を生かして 5 軸加工機による金型
・難削材加工用工具と加工方法
づくりを行っている金型メーカーが増えてきている。
・金型用工具の技術動向
ここでは、5 軸加工を用いた金型づくりのメリットに
・焼ばめホルダの活用方法と新シリーズのご紹介
ついて言及している。
・金型加工用工作機械の最新動向
(7)金型技術の課題を解決!実践大学活用法
(3)第101 回 型技術セミナー
金型市場のグローバル化が激化する中、海外メーカー
「自動車・航空機分野における先端材料と加工技術
よりも一歩先行く、高付加価値の金型成形技術を提案
の現状 ―東レ 技術開発拠点「オートモーティブ
するには、産学連携での共同研究開発に取り組みこと
センター」―」
も有効な手段の一つである。中小ものづくり企業で連
・炭素繊維複合材料とその成型技術の開発状況
携しやすい樹脂成形、プレス・鍛造、IT 活用などを研
・樹脂材料と設計 ―製品設計・金型設計―
究テーマとしている大学研究室を紹介している。
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(4)第102 回 型技術セミナー
・精度を追求した 5 軸加工機活用法
「ダイカスト金型の最新生産技術の現状
・鋳造金型製作での多軸加工機の活用
―最新成形技術と工場見学付き―」
・5 軸加工機の問題点(NC 制御など)と今後、金型
・
『D FLOW』ダイカスト金型へのディンプル加工に
加工に 5 軸加工機を導入する必要性
(6)第104 回 型技術セミナー
よる不良低減プロセス
・ダイカスト金型を対象としたサンプル加工評価
「ダイカスト金型の寿命安定化のための表面改質
・㈱アーレスティダイモールド浜松 会社紹介
技術」
(5)第103 回 型技術セミナー
・ピーニング技術の最新動向
「変革期を迎えた金型加工の現状と今後」
・ショットブラスト技術応用による金型の磨き技術
(加工実演見学付き)
・アルミダイカスト金型への高速冷却焼入れとハイ
パー窒化処理
・5 軸加工機の精度評価方法
― ISO における取組みと JIS 化―
・カーボン膜複合窒化「スーパーマルチナイト」処理
・薄肉精密成形金型に対応した同時 5 軸 MC 生産技
・放電被覆による金型の予防保全とレーザーによる
術の開発
金型の補修肉盛』
(安齋正博)
6. 3 学会・業界活動
6. 3. 1 型技術者会議・ワークショップなど
(1)型技術者会議
3)
とはなんなのかを議論できる場を提供している。
特別講演ではマツダ株式会社の金井誠太 取締役副社
長執行役員より「マツダの商品とモノ造り戦略」と題
東日本大震災の影響で開催が危ぶまれたが、2011 年
して講演があり、特別企画では「世界で活躍する型技
6 月 21 日(火)、22 日(水)の 2 日間東京大田区蒲田の
術者」をテーマに、各業界の型技術のリーダーと会場
大田区産業プラザ Pio で型技術協会主催の「型技術者
とのディスカッションを、特別セッションでは「型技
会議 2011」
が開催された。今年はメインテーマを
「グロー
術者を活かす金型経営戦略」
、
「生産革新を支える金型
バル化において型技術者が勝っていくためには」とし、
ならびに金型周辺技術」
、
「製品設計開発を支える金型
型技術に携わる一人ひとりが今後何をすべきかについ
技術」
、
「金型のトライレス / 修正レス / 品質保証に対す
て、考える契機となるような企画になっていた。
る 3 D CAD/CAE の有効利用」の 4 テーマで以下のよ
1000 年に一度の震災からの早期復興を目指して日本
うな話題提供があった。
の生産を革新しなければ、今後の日本のモノづくりは
「世界で活躍する型技術者」
危機的状況に陥ることが予想され、このような状況の
・異文化交流と金型
中でも製品の生産のみならず金型の急展開するグロー
・最近までは華の金型産業、今は・・・
バル化と現地調達はますます進展してきている。日本
・“アジアのものづくり”進出の実践と、
「人・物・金」
の金型技術と金型技術者が勝ち続けてゆくには、モノ
のパッケージ戦略
造りと型技術者の意識の変革が必要不可欠である。具
・新材料開発と海外への販路開拓への道のり
体的には新興国では真似のできない製品の開発と、そ
・パネルディスカッション
れをサポートする金型と型技術者の存在、さらには新
興国での金型の生産性をはるかに超える付加価値の高
い金型が強く求められるようになってきている。
「型技術者を活かす金型経営戦略」
・他人(ひと)のやらないことをやる“オンリーワン
企業を目指して”
そこで、「型技術者会議 2011」では、グローバルに
・ヒート&クールの新たなる世界
活躍し大きな成果をおさめている型技術者や、製品や
・和泉金型における加飾加工技術への取り組み
生産を革新する付加価値の高い製造革新を実践されて
いる人たちからの話題提供とディスカッションを通じ
て、日本の型技術者が勝ち続けてゆくために必要なこ
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「生産革新を支える金型ならびに金型周辺技術」
・キヤノンのものづくりを支える“金型技術と目指
す姿”
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・パルプ射出成形 ―その成形・金型技術の最新動向―
・11 月 22 日(火)
・生産革新を支える試作技術
工場見学会
「製品設計開発を支える金型技術」
A コース:大垣精工 ㈱ / ㈱ナガセインテグレックス
・超微細粒鋼とプレス加工への影響
B コース:ムトー精工 ㈱ / 岐阜車体工業 ㈱
・厚板の精密せん断技術開発への取り組み事例
C コース:メイラ ㈱ / ムツミ工業 ㈱
・商品の付加価値を高める“TOM 3 次元加飾工法”
D コース:岐阜県機械材料研究所(ぎふ技術革新セ
「金 型 の ト ラ イ レ ス / 修 正 レ ス / 品 質 保 証 に 対 す る
ンター)
/ 太平洋工業 ㈱
3 D CAD/CAE の有効利用」
・解析を用いた造型不良解消への取り組み
・自動車用プレス金型製造における板成形シミュレー
ションの活用
(3)型技術シンポジウム
2)
第 19 回型技術シンポジウムが 2012 年 3 月 21 日(水)
に開催された。今回は、現在注目されている医療産業、
・数学で金型を創ろう
航空宇宙産業、電子デバイス産業などにおいて活躍し
ているものづくり企業の金型業界とはやや異なった視
4)
(2)型技術ワークショップ 2011
点からの技術や経営の取組みを紹介した。主な講演テー
第 17 回「型技術ワークショップ 2011 in 岐阜」
(匠の
マは以下のとおりであった。
技の伝統−高品質製品を支える岐阜のものづくり)が
・“痛くない”マイクロニードルシステムの開発∼微
岐阜県岐阜市で 11 月 21 日(月)、22 日(火)の 2 日間開
細加工と精密射出成形技術の融合∼
催された。
・切削による超微細加工と先端医療機器開発
日本のものづくりの一大集積地である東海地方にお
・モノづくりとネットワークについて
いて、岐阜の金型関連企業は古くより質量ともにその
・ボーイング社との直接取引の獲得∼表面加工技術
土台を支えている。その岐阜を会場として型技術、も
のづくりの高度化および付加価値化等、関連分野の今
後の方向性について活発な意見交換が実施された。
と機械加工をコアに∼
・航空宇宙部品のジェットエンジン、ガスタービン
関連部品の難削材の精密加工
世界的な景気不安にともなう国内製造業の困難な現
状においても、今後の日本が元気にかつ明るくなるよ
(4)ラピッドプロトタイピングシンポジウム
5)
うな、ものづくりを支える型技術について議論をする
平成 23 年 11 月 11 日(金)ラピッドプロトタイピング
ため、第 1 日目にオープニング講演、特別講演、一般
シンポジウムが開催された。従来設計製造ソリューショ
講演を行うとともに、金型業界の海外展開についてテー
ン展の時期に開催されていたが、東日本大震災の影響
マセッションを設け、複数の講師による講演があった。
で延期されての開催であった。3 次元プリンタ造形の
また、第 2 日目には 4 コースの見学会が行われた。1
現実と可能性というテーマで 3 D プリンタメーカー各
日目の主な講演テーマと 2 日目の見学コースを以下に
社からの展示コーナーもあって盛会であった。主なプ
示す。
ログラムは下記のとおりであった。
・11 月 21 日(月)
1)招待講演
オープニング講演
① 3 D プリンタの顧客は、想像よりずっと進んでいる
「航空機に使用される材料と加工プロセスについて」
川崎重工業 ㈱ 航空宇宙カンパニー 後藤 淳 氏
特別講演
「関鍛冶における型技術のいまむかし」
尾上高熱工業 岐阜県技術アドバイザー 尾上卓生 氏
特別セッション
「日本の型技術の海外展開
∼“回転寿司”としての 3 D プリンタ市場誕生∼
②ソフトウェアから見た 3 D プリンタ
③ 3 D プリントの裾野を広げる∼最新のデザインツー
ルでラピッドプロトタイピング
2)プレゼンテーション
① RP と 3 D プリンタをめぐるマーケット&ビジネス
の変貌とトレンド
―今から“できること”と“できないこと”
―」
②医療分野での 3 D プリンタの可能性
一般講演 9 セッション 46 件
③製品紹介
④ ABS 樹脂モデリングの 3 D プリンタ Dimension/
uPrint 紹介とその活用法
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6. 3. 2 社団法人金型工業会
型技術の研究・開発および業界活動について型技術
日本金型工業会では、会員企業の競争力の強化や経
研究開発の成果発表は型技術協会の行事に集中してお
営体質の強化を図るために主に以下の事業を推進した。
り、大学等における基礎的な研究、現場ですぐに使え
6)
協会の行事を中心に言及した。以上のように型技術の
(1)日本金型工業会の活性化と業界地位の向上を目指
る技術、新しい機械・機器、ツーリングから今後の技
して、広く金型製作に携わる同業者や関係者に対し
術的、経済的トレンドの展望まで広範な情報交換をし
て工業会の存在意義と事業内容について PR して会
ている。
員の増強を図った。
新しい技術を日本国内にどんどん普及させ、わが国
(2)人材育成問題に関する事業
の型技術がさらに発展することを願うものである。ど
日本の国際競争力確保のためにも専門的な金型教
のような要求がユーザーからきても迅速・高精度でか
育を実施する機関の必要性を関係官庁に働きかけ、
つそれなりの価格で要望に応えられるような型技術の
金型に関する教育を行う大学等が徐々にではあるが
構築がますます重要になってくるであろう。
設立されている。
新技術の導入と併せて、従来の型技術の高度化も常
(3)金型工業会と関連の強い、プラスチック、プレス、
鋳物等の工業会と情報交換を行った。
に図っていかなければならない。この技術開発力が新
たな型技術の需要を産む原動力にもなる。
(安齋正博)
6. 3. 3 特定非営利活動法人アジア金型
7)
産業フォーラム
参考文献
1 )型技術:26,4(2011)
∼ 27,3(2012)
NPO アジア金型産業フォーラムでは、毎月「金型産
2 )型技術協会 HP:http//www.jsdmt.jp/03seminar/index.html
業未来塾」を開催し、日本金型産業として勝ち残り戦
3 )型技術者会議 2011 講演論文集(2011)
略策定をどのようにすべきか多くの提案やアクション
を起こした。講演テーマは http://npo-admf.org/ を参
照されたい。今後も多くの話題提供を通して中小金型
産業の海外進出への支援となろう。
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4 )型技術ワークショップ 2011 in 岐阜(2011)
5 )RP 産業協会 HP:http://www.rpjp.or.jp/sympo.html
6 )日本金型工業会 HP:http://www.east.jdmia.or.jp/
7 )NPO アジア金型産業フォーラム HP:http://www.npo-admf.
org/index.html
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