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PDFファイル - ソフィアコンサルティング

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PDFファイル - ソフィアコンサルティング
日には消滅するかもしれない程
度のものだ。
これに対して,長期的なモチ
Key Word 1 モチベーション
え,特段の新鮮さは感じられない。
ベーションは,一時的な感情の起
■「モチベーション3.0」の鮮度
では,現実の組織において,モ
伏とは異なる。何らかの価値に裏
チベーションの何が問題なのか。
付けられたものだ。例えば,音楽
キルを身につけても,やる気がな
1.0∼3.0という分類より,内発的
の道を志す人が一生をかけて目標
ければ仕事の成果は生まれない。
モチベーションそのものの質を掘
とする音楽家がいて,その人に追
従って,モチベーションは人材の
り下げる必要がありそうだ。
いつくまで修練を続ける気持ちを
どのような素晴らしい知識やス
能力において欠かせない要素であ
■内発的モチベーションの中身
持っているとする。その場合の目
一口に内発的モチベーションと
的意識は,モチベーションの根拠
いってもいろいろあり,マネジメ
になる明確な価値といえよう。こ
だから,モチベーションに関す
ント上の重要性にも差がある。そ
れは音楽家に限らず,経営者でも
る考察は人材マネジメントでの古
れを測るうえで注目すべきポイン
営業マンでも同じことだろう。
くからのテーマである。ところが,
トは“時間”である。
る。ここまでは前回(【能力モデ
ル】)確認したところだ。
もっとも,こうしたモチベーシ
最近「モチベーション3.0」とい
時間とは,モチベーションが長
うキーワードも登場したことか
く持続するかどうかということに
うが,それは特段重要ではない。
ら,改めて話題に上ることが多く
加えて,その動因(根拠)が長い
強固な目的意識を持った人は,感
なってきた。ダニエル・ピンクに
時間をかけて形作られたものかど
情が落ち込んでいるときさえも,
よれば,その1.0∼3.0とは次のよ
うかという, 2 つの意味を含む。
モチベーションを持続しているか
図に示したように,内発的モチ
らだ。例えば職人や芸術家の仕事
ベーションは,大きく 2 つのタイ
ぶりを見れば,ほとんどは淡々と
プに分けられる。 1 つは,その
繰り返し作業を続けている。そこ
─2.0:高額報酬で転職を促した
エネルギーが長く持続する長期
には,少なくとも表面上は,歓喜
り,業績貢献を讃えたり
的モチベーションである。もう 1
や高揚感があるわけではない。
する外因的動機付け
つは,短期的モチベーション,ま
うな分類になるという。
─1.0:人間に生存に関わる基本
的な欲求
─3.0:個人の人格的欲求に対応
する内発的動機付け
たは一時的なモチベーションだ。
一時的なものは,強いてモチベ
ーションというよりは,単なる感
動機付ける成果主義(モチベーシ
情の起伏に近い。上司にほめられ
ョン2.0)の時代は終わり,これ
嬉しいのでやる気が高まったと
からは内発的動機付けを重視した
か,個人的にいいことがあったの
マネジメントが重要だという議論
で仕事にも気分が乗るというよう
だ。これ自体は有名なマズローの
なことだ。いずれも内発的モチベ
欲求 5 段階説の焼き直しともい
ーションには違いないが,その翌
図:短期的/長期的モチベーション例
短期的モチベーションはテクニカルに創り出すこと
も可能だが,長期的モチベーションには「裏付け」
(組
織バリュー等)が不可欠。
短期的モチベーション
高額報酬を獲得しようとする意気込み
● プロジェクト目標への達成意欲
● チームの団結がもたらす高揚感
● 仕事の成功をほめられた喜び
●
…
要は,業績貢献型報酬で人材を
ョンには感情の高まりも伴うだろ
長期的モチベーション
価値観・仕事観の共有による貢献心
信念に基づく目的意識
● 長い時間をかけて熟練する
“技”
への探究心
● 家族や仲間への愛情
●
●
…
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人事マネジメント 2011.7
www.busi-pub.com
たぞえ ただひこ ソフィアコンサルティング株式会社 代表取締役社長。
立命館大学文学部卒。大手電子部品メーカー人事部,国内コンサルティングファーム2社の取締役,パートナーを経て現職。上
場・中堅企業を対象とした組織人事体制改革,人材マネジメント,人材育成戦略,評価・報酬運用に関するコンサルティング実績
多数。診断・戦略立案・政策提言から制度定着・運用,教育研修,組織・業務改革まで一貫したサポートが特徴。
http://www.philosophia.co.jp
[email protected]
このように整理すると,一般に
モチベーションの持続には,何
「感情」と考えられるモチベーシ
らかの価値観の裏付けが欠かせな
ョンだが,ポイントはむしろ個々
い。一つの仕事に深く打ち込む人
本音を語り合うこと。しかも,そ
人の価値観に基づく「意思」もし
は,それが言葉として意識されて
れを双方向で行うことだ。そこか
くは「選択」という側面にあるこ
いるかどうかにかかわらず内面に
ら,付加価値が生まれてくる。こ
とが見えてくる。その意味で組織
強固な価値観を持っている。それ
れに対して,組織のなかで毎日の
がマネジメントすべきは,内発的
はあるときは信念,信条というも
ように行われている会議やミーテ
モチベーション一般ではなく長期
のかもしれない。また,人によっ
ィングは,対話とはいえないケー
的モチベーションといえよう。
ては,仲間や家族への愛情,仕事
スも多い。極端な場合は,上席者
要なカギになる。
対話には, 2 つの要素がある。
そのものへの愛着でもある。要
の指示命令を下達するだけのコミ
Key Word 2 組織バリュー
は,その人独自の揺るぎない確信
ュニケーションしか行われないこ
■「クレド」の有効性
的な価値だ。
ともある。また,双方向ではあっ
組織や集団が長い時間をかけて
■組織バリューマネジメントの可能性
ても,論理的レベルの「議論」に
共有してきた価値観を「組織バリ
では,人はどのようにして,そ
終始し,本音を共有できた実感が
ュー」という。企業組織では,経
うした確信的価値観を抱くに至る
伴わないことも多いものだ。こう
営理念,行動規範等として具現化
のか。それを解明する一つのカギ
したコミュニケーションの繰り返
されていることが多い。ただ,経
は,「共有化」にある。
しだけでは,価値観の共有は進ま
営理念だからといって,それがそ
一般に価値観は,自分だけが持
ないか,
時間を要することになる。
のまま組織バリューとは限らな
っているよりも,他者と共有され
結論として,
価値観の共有には,
い。近年組織バリューを「クレド」
たほうが確信の度合いが強い。こ
組織コミュニケーションに関与す
等と称して明確化しようとする試
れは,仕事に自分だけで満足して
る者同士の関係の豊富化(または
みが一部で盛んだが,文字にした
いるよりも,他者や会社から評価
変革)が必要になる。関係を変化
からといって直ちに価値が生まれ
されたほうが満足感が高まるのと
させるなかで初めて新たな価値観
るわけではない。もっとも,クレ
同じことだ。もっとも,芸術家の
が組織メンバーのなかに少しず
ドに関する施策を実施している企
ように,孤高な仕事を持続するな
つ,しかし着実に根付いていく。
業では,文字化するだけでなくミ
かで偉大な作品を作り上げるよう
そこには,理屈レベルでの「共有」
ーティング等によるその共有化の
なケースもある。ただ,それはや
を越えて,感情レベルでの「共感」
作業も行われている。ただ,その
はり天才におけるレアケースと考
さえも伴うはずだ。
場合もやはり問題は時間(=歴
えるべきで,経営の帰趨を,
天才の
対話の継続,そのなかでの価値
史)にある。組織で共有される価
出現に委ねるわけにはいかない。
観の共有・共感。こうしたいわば
値観は,それが共同のビジネス展
次に,共有化はどう進めればい
組織的なインフラが確保されるな
開のなかで繰り返し実践され再共
いか。それは何らかの組織コミュ
かでこそ,固有の価値観は明確に
有化が繰り返された結果,構成員
ニケーションで行うしかない。問
なり組織に深く根差していくこと
の意識に泌み透っていくものだ。
題は,そのコミュニケーションの
になるだろう。構成員全体にモチ
短期間の議論や会話のレベルだけ
質にある。ここで,本シリーズ 1
ベーションを持続させられる強い
で共有できるものではない。
回目に登場した「対話」が再び重
組織力の可能性がそこにある。
2011.7 人事マネジメント
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