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e-NEXI 2012年03月号をダウンロード
e-NEXI
2012 年 3 月号
➠特集
外 国 公 務 員 に 対 す る 贈 賄 の リ ス ク - 求 め ら れ る リ ス ク マ ネ ジ メ ン ト ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1
東京青山・青木・狛法律事務所ベーカー&マッケンジー外国法事務弁護士事務所
弁護士
西垣建剛、立石竜資
贈賄防止への NEXI の取組・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
独立行政法人日本貿易保険
➠カントリーレビュー
リビア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
➠NEXI ニュース
平成 23 年度貿易保険協力円滑化業務~アジア ECA 招聘貿易保険研修業務~実施報告・・・・・・・・・・13
発行元
発行・編集 独立行政法人日本貿易保険(NEXI)
総務部総務・広報グループ
e-NEXI (2012 年 3 月号)
外国公務員に対する贈賄のリスク-求められるリスクマネジメント
東京青山・青木・狛法律事務所ベーカー&マッケンジー外国法事務弁護士事務所
弁護士
西垣建剛(にしがきけんごう)、立石竜資(たていしりょうすけ)
1. はじめに
「公務員に賄賂を提供してはならない」というルールは誰もが知る極めて当たり前のルールである。外
国公務員に対する贈賄の問題は、海外に展開する企業の多くが長年に渉って直面してきた問題であ
るが、このルールは当たり前に過ぎることもあり、実際の企業の取り組みとしては、法令遵守の包括的な
行動指針は示しながらも、現実の汚職防止は各従業員のモラルある行動に任せるという対応にとどま
ってきた企業が大多数であると思われる。しかし、後述するとおり、外国公務員に対する汚職防止は、
域外適用法により厳しい摘発が行われるようになってきている状況にあり、これまでのような各企業の企
業文化や従業員のモラルに頼るという段階ではなく、賄賂防止のための明確な社内体制を備えるという
制度的アプローチがグローバル企業の標準装備として求められる段階に入ってきている。裏を返せば、こ
れまでのような属人的なアプローチではコントロールが困難であった汚職リスクに対しても、一定の制度を
採用することにより、リスクを最小化してマネージすることが可能な状況になってきているということである。
しかも、法執行機関は、摘発を強化する一方で、いかにすれば法の適用を回避し、罰金の減額を受
けることができるかという指針を示しつつあり、これにより十分な根拠のある制度構築を進めることができ
るようになってきている。いわば、個人任せの守りの体制から早期に脱却し、積極的な贈賄防止制度を
早期に構築して足元を固めることが、企業のグローバルビジネス展開上、必須のものとなりつつあるので
ある。
2. 汚職リスクの評価
(1) 汚職防止法
まず、最初にリスクマネジメントにとって不可欠な前提となるリスクの評価という観点から、外国公務
員への贈賄にいかなるリスクがあるのかを正確に把握することが第一歩となる。日本企業に適用され
る法律としては、周知のとおり日本の不正競争防止法が存在し、同法により外国公務員に対する
贈賄が禁止されている。もっとも、罰金の上限は個人 500 万円、法人 3 億円であり、実際の摘発例
が極めて少ないことからも、同法自体のリスクは限定的である。しかし、仮に同法で摘発された場合
には、企業のレピュテーションや信用の毀損が避けられない。また、貿易保険の付保等の輸出信用
供与を受けられなくなる可能性により、将来的の輸出活動に多大な支障が及ぶことになる。
そして、さらに問題となるのは、米国海外腐敗行為防止法(Foreign Corrupt Practices Act。以
下「FCPA」という。)と英国贈賄防止法(Bribery Act)という二つの域外適用のある法律であり(後
述のとおり、日本の輸出企業についても広く適用される可能性がある)、これによりリスクが格段に高
まっている。そのリスクとは巨額の罰金であり、その金額たるや企業活動に重大な影響を与えかねない
レベルであり、非常に注意を要するものとなっている。
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e-NEXI (2012 年 3 月号)
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そこで、更なるリスクアセスメントのために、自社の活動が FCPA や英国贈賄防止法の適用を受け
ることがあるか、是非とも把握しておきたいところである。これらの海外法の適用があるか否かは、リスク
の大きさに関する重要な分かれ目になるからである。
(2) FCPA の適用範囲
FCPA の適用があるのは、(a)Issuer(証券発行体)、(b)Domestic Concern(米国法人、市民・住
民)、(c)Foreign Person Acting within the United States(米国内で行為の一部を実行した者)、
(d)Conspiracy / Aiding and Abetting(共謀・幇助)である。そのため、米国上場企業がまず FCPA
の範疇に入ることになり、また、米国企業とパートナーシップを組むビジネスに取り組む場合も適用可
能性が高いということになる。しかし、さらに問題があるのは、(c)である。一見、この要件は米国内での
物理的行為がなければ充足されないように思われるが、実際には、例えば米ドルの送金が米国のコ
ルレス銀行を経由して行われたにすぎない場合であっても、(c)の要件を満たす可能性があると解され
ている。そうすると、海外に展開する日本企業にとって、FCPA の適用可能性が無いと言い切れるケ
ースは殆どないということになるのである。
(3) 英国贈賄防止法
英国贈賄防止法が、日本企業に適用されるのは、「英国内で事業の一部を実施している」場合
である。そこで、まず英国に支店、駐在員事務所を有する企業に適用されることになる。また、英国
に現地法人を有する場合はケースバイケースであるが、英国子会社が親会社から完全に独立してお
らず、親会社の支配が及んでいる場合は、親会社自体が英国でビジネスを行っていると解されること
になるため、この場合も同法の適用を受けるケースが少なくないと考えられる(表 1)。
(表 1)
英国に子会
英国子会社に
社はあるか
贈賄防止懈怠
あり
罪の適用有り
なし
ループでコンプライアンス
必要
親会社等の支配強い
英国に駐在員
親会社等に贈
グループ全体でコンプラ
事務所・支店等
賄防止懈怠罪
イアンスの必要
はあるか
あり
なし
贈賄防止懈怠罪の
適用無し
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英国子会社傘下のグ
の適用有り
e-NEXI (2012 年 3 月号)
このように、(i)FCPA は適用範囲が広く、日本企業による贈賄行為の大半に適用される可能性が
ある、さらに(ii)英国で支店、駐在員事務所、子会社を有する企業は英国贈賄防止法の適用を受
ける可能性があるということであり、この両方に該当する場合にはリスクがダブルになる。
(4) 巨額の罰金
FCPA の近年の摘発件数をみると表 2 のとおりである。また、過去の罰金額は表 3 のとおりである。
(なお、英国贈賄防止法は、2010 年に施行されたばかりであり、執行の先例が殆どない。)
(表 2)
60
50
40
DOJ
SEC
30
20
10
0
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
※DOJ(Department of Justice):米国司法省
SEC(Securities and Exchange Commission):米国証券取引委員会
(表 3)
1. シーメンス (ドイツ): $800 million in 2008.
2. KBR (米国): $579 million in 2009.
3. BAE (英国): $400 million in 2010.
4. Snamprogetti/ENI (オランダ・イタリア): $365 million in 2010.
5. テクニップ (フランス): $338 million in 2010.
6. JGC (日本) $218.8 million in 2011.
7. ダイムラー (ドイツ): $185 million in 2010.
8. アルカテル/ルーセント (フランス): $137 million in 2010.
9. パナルピナ (スイス): $81.8 million in 2010.
10. ジョンソン・アンド・ジョンソン (米国): $70 million in 2011.
いずれも巨額な罰金であり、FCPA、英国贈賄防止法の適用を受ける企業は、非常リスク、信用
リスクに匹敵する重大なリスク(しかも、保険でカバーされるどころか、将来にわたって輸出信用を失う
可能性が高い)にさらされているわけである。
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3. コンプライアンス体制
FCPA は法制度上、汚職を防止するコンプライアンス体制を備えている場合に罰金の 95%まで免除
される可能性がある。また、英国贈賄防止法では、Adequate Procedure を備えることにより完全に刑
罰を免れるとされている。そのため、上記のような汚職リスクについては、汚職防止体制を構築すること
が最大のリスク軽減方法となる。
この点については、FCPA の法執行当局により、表 4 の体制が必須であるという考えが示されている。
また、英国贈収賄防止法に関しては、法務省が Adequate Procedure として 6 つの大綱的な原則を
発表している(表 5)。
(表 4)
【FCPA 当局が求める制度】
•
反汚職の明確なコーポレートポリシーをもつ
•
諸法令、会計標準、財務会計手続(公正、正確な会計の維持のための内部会計統制システムを
含む)の遵守
•
汚職を防止するためのコンプライアンスコード及び手続の制定
•
シニアオフィサーに、汚職防止ポリシー・手続の執行のための権限を与え、取締役会又は取締役会
の委員会、及びコンプライアンス委員会の委員長に直接報告させる
•
コンプライアンス手続の維持(定期的トレーニング、年次確認)
•
報告制度(内部通報等)
•
適切な懲戒手続
•
エージェントやビジネスパートナーに対するデューディリジェンスの要求
•
全てのエージェント及びビジネスパートナーとの間の取引における標準的な反汚職条項の約定
•
コンプライアンス手続の定期的なレビュー
(表 5)
【英国贈収賄防止法が求める Adequate procedure】
•
腐敗リスクの度合いに比例したふさわしい手続(Proportionate Procedures)
•
最高経営陣の腐敗防止への声明(Top-level commitment)
•
リスク・アセスメント
•
デューディリジェンス
•
伝達(トレーニング含む)
•
監視及び精査
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紙幅の関係上、詳細には入れないが、FCPA、英国贈賄防止法が期待する内容は決して異なると
いう訳ではなく、双方の期待水準を満たす体制構築を一度に図ることが可能と考えられる。大要、(i)
組織体制、(ii)ルール、(iii)トレーニングの 3 つの切り口からアプローチすることにより、適切な制度を構築
することができると考えられる。簡単にポイントを示すと、(i)については、米国司法省が示すとおり、経営
執行者から独立した監督機能を有するシニアオフィサーへの権限委譲がポイントとなる、(ii)については、
企業行動規範、社内規定の制定・見直しにより、贈賄防止ルール(経費管理、申請承認制度、ビジ
ネスパートナー・エージェント選定手続、会計・財務手続、内部通報、懲戒手続等)の確立が必要とな
る、(iii)については、自社、関連会社の定期的なトレーニングの実施が必要であり、さらには社外トレー
ニング(ビジネスパートナー)も必要となる場合がある。そして、忘れてはならないのは、上記の制度構築
においては、国内外のグループ会社を全て含める統一制度を設ける必要があるということである。
さらに、注意を要するのは、賄賂の提供は、社外の第三者(エージェント、ディーラー、ディストリビュー
ター等のビジネスパートナー)を通してなされることが多いということである。それ故、FCPA、英国贈賄防
止法も、第三者による贈賄を防止する体制構築を重視している。そこで、第三者を管理するためには、
(i)適切なデューディリジェンスを行う、(ii)第三者との間の契約において賄賂防止条項(反汚職の表明
保証、監査権、解除条項)を定める、(iii)必要に応じて第三者に対する定期的なトレーニングを実施
するという対応が非常に重要となっている。
なお、全般的な考慮要素として、これらの制度構築においては、英国贈賄防止法が認めるとおり、
Proportionate Procedure、すなわちリスクに応じた濃淡を付けた制度構築をすることが可能であるとい
うことも押えておきたい。最初から網羅的な制度を構築するのではなく、重点分野(汚職リスクの高い国、
業種、ビジネスモデル等から判断)や第三者対応(デューディリジェンスや契約対応等)を優先することが
合理的である。そこで、こうした重点分野を把握するためにも、まずは自社の汚職リスクがどこに集中し
ているのかを綿密にアセスメントする作業も重要となる。
4. まとめ
以上、概略した体制構築により、汚職リスクをマネージすることが可能である。海外でビジネス展開す
る日本企業には、贈賄リスクについて個人任せになっている現状を早期に脱却し、グローバル企業の標
準装備を備えた上で、さらなる海外展開を進めることが強く期待される。
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贈賄防止への NEXI の取組
独立行政法人日本貿易保険
NEXI は、日本の公的な輸出信用機関(ECA)として OECD 輸出信用・信用保証部会に参加し、
経済産業省等の関係省庁とともに、公的輸出信用分野における金融条件のみならず、環境保護
や贈賄防止等の社会問題についても議論や交渉を行っており、本部会での合意内容に従って活
動しています。NEXI は、本部会にて 2006 年 12 月に採択された「公的輸出信用と贈賄に関する
勧告」に基づき、下記のような取組を行っています。(上記勧告は、公的輸出信用の供与を対象と
するものですが、NEXI では海外投資保険、海外事業資金貸付保険、前払輸入保険についても、
自主的に同様の取組を実施しています。)
(1)誓約書の提出
保険のお申込みに際して、お申込企業が、保険申込の対象となる取引において贈賄行為に関与
していないこと、及び過去に贈賄に関する規定に違反した罪により起訴されていないこと、又は有
罪判決を受けていないことを誓約頂いています。
(2)国際金融機関の取引排除リストの確認
お申込企業が、企業世界銀行等の国際金融機関の取引排除リストの対象となっていないことを確
認し、これに該当する場合には厳格な審査を実施します。
(3)代理人に関する情報の取得
保険申込の対象となる取引に関連して、申込企業の代理を果たした者の素性、及びそれらの者
に支払った手数料等の金額と目的について、必要と判断する場合には、情報の開示を求めてい
ます。
(4)厳格なデューデリジェンスの実施
お申込企業が、贈賄に関する規定に違反した罪により起訴された場合は、厳格なデューデリジェ
ンスを実施し、適切な内部の是正措置や予防措置が取られていること、その措置が維持されてい
ること、文書によるルール化が行われていることを確認します。
●贈賄に関与したことが判明した場合
<保険契約締結前>
保険契約の承認を保留し、その上で贈賄に関与しているとの結論に至ったときは、保険引受の拒
絶などの適切な措置を取ります。
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<貿易保険の引受後>
保険金支払いの拒否、補償、又は支払済保険金の返還などの適切な措置を取ります。
詳細は、NEXI ウェブサイト「貿易保険の国際ルール:OECD における社会問題への取組」を御参
照ください。
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カントリーレビュー「リビア国」
本レビューは、2012年1月24日(火)~26日(木)に実施された「リビア官民合同経済ミッション」へのNEXI
からの参加者が現地で見聞した情報及び治安情勢も踏まえ、執筆したもの。
<Point of View>
 2012 年 6 月末に予定されている制憲選挙前後の治安・政治情勢
 新憲法制定を経た公職選挙法に基づく新政権の樹立及び行政機構等の整備
 一般市民に拡散した武器の回収及び警察、軍隊への武器保有の一元化
リビア解放宣言までの道のり
2011 年 2 月中旬、リビア第二の都市ベンガジで行われたデモに端を発し、反政府運動が急速に拡が
り、カダフィ政権と反体制派との間で本格的な武力衝突に発展した。カダフィ政権はデモ参加者への弾圧、
空爆による武力攻撃を繰り返し、一般市民に多数の犠牲者を出した。3 月 5 日には、ベンガジを拠点す
る反体制派が国民暫定評議会(カダフィ政権下の前法相アブドルジャリル氏が議長)を結成し、ベンガジ
を掌握した。
国際社会もこれらの動きに呼応し、3 月 17 日、国連安保理がカダフィ政権の国民に対する武力行使
を強く非難し、同政権に対する圧力強化を宣言。カダフィ指導者及びその関係者の資産凍結を行った。
その後、制裁対象は、リビア中銀、リビア石油公社等にも拡大された。3 月 19 日には、NATO 軍を中心と
する多国籍軍(英仏米)が軍事行動を開始。それから 5 ヶ月後、反政府勢力は 8 月 20 日に首都トリポ
リに進軍し、23 日には「カダフィ・キャンプ」と呼ばれるカダフィ指導者の居住区兼軍事基地を制圧。1969
年の革命以来、43 年に亘って強権政治を敷いてきたカダフィ政権が事実上崩壊し、9 月 16 日の国連総
会で、国民暫定評議会がリビアにおける正式代表として承認された。
その後もカダフィ指導者の出生地シルトなど一部地域で親カダフィ派の抵抗が続いたものの、10 月 20
日、シルトにおいて、国民暫定評議会の部隊によりカダフィ指導者が拘束され、死亡したことにより、2 月
以来続いた内戦が終結を迎えることとなった。これを受けて、23 日、国民暫定評議会がリビア全土の解
放を宣言した。
新憲法制定と新政府樹立までの行程
国民暫定評議会がトリポリを制圧する 2 週間前の 8 月 3 日付けで、アブドルジャリル議長が憲法宣言
を発布。カダフィ体制が奪取した全ての国民の権利の回復のために自らの生命を犠牲にした殉教者に対
する忠誠を表明し、イスラム法を主要な法源としつつ、民主化の推進、法治国家の建設を目指すことを
宣言している。
また、同憲法宣言において、国民暫定評議会は、国民投票による恒久的憲法の信任が行われるま
での間、リビア国民の唯一合法的な国の代表であるとともに、リビア国における最高機関であって、法律の
制定、国おける全般的政策の策定等の権力を行使すると規定している。
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さらに移行手続きとして、解放宣言から 30 日以内に暫定政府を樹立するとしており、実際、10 月 31
日に、アブドラヒム・キーブ氏(トリポリ出身で、米国の大学にて電子工学博士号を取得。米国、UAE で
教鞭を執った後、リビアの大学に教授として復帰。)が暫定政府の首相に任命され、11 月 24 日、暫定
政府の組閣を行った。
制憲選挙までの行程として、憲法宣言では解放宣言から 240 日以内に制憲選挙を実施するとしてお
り、すなわち 2012 年 6 月末までに制憲選挙が実施される予定。ただし、そのプロセスが遅れているとの声
もある。
制憲選挙ではリビア国民が 200 人の制憲議会議員を選び、当議会が首相を任命(首相は閣僚を指
名)、憲法起草委員会を設置する。憲法起草委員会が憲法草案を制憲議会に提出し、制憲議会の
承認を経た後、承認から 30 日以内に当憲法草案の諾否について国民投票にかけることとなる。
リビア国民の 3 分の 2 以上の多数により憲法草案は承認され、当該憲法草案を憲法起草委員会、
制憲議会がリビア国の新憲法として承認する。制憲議会は憲法の規定に従って 30 日以内に公職選挙
法を制定し、公職選挙法発布から 180 日以内に総選挙を実施。プロセスがスムーズにいけば、来年 1
月~2 月には総選挙が行われることになる。
なお、憲法宣言(法の下の平等、基本的人権、表現・集会の自由、私的財産権の自由等)に反し
ない限り、現存する法律の規定が引き続き効力を有する。
新生リビアの国旗。憲法宣言で、デザイン及び配色が定められ
ている(国旗の真ん中は、イスラムの象徴である三日月と星)。
また、国名は、「大リビア・アラブ社会主義人民ジャマーヒリーヤ
国」から「リビア国」に改められた。
治安情勢
内戦により、武器が市民に拡散されたままとなっており、銃、小火器を使った民兵同士の衝突が絶え
ない。トリポリ滞在中の 1 月 25 日(水)夜、南 170km にあるバニワリード州で民兵同士の武力衝突があ
り、民間人 5 人が死亡したとのアルジャジーラによる英語テレビ・ニュースが流れた。後に、親カダフィ派の民
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兵が同州を制圧し、暫定政府に自治権を要求。暫定政府が自治権を認めたことが一部で報道された。
また、トリポリ滞在中は、トリポリ市内で武力衝突や騒乱が起きたとの情報は聞かれなかったが、帰国
後の 2 月 1 日、滞在したホテルの 300m 先のビーチで、民兵同士の銃撃戦が発生したとの報道があった。
このように武器が拡散されたままになっている上、ある意味、カダフィによる強権統治のたがが外れ、地域、
部族、革命戦士(暫定政府のホワイトカラーに対する不満)等各々のアイデンティティが強まっているリビア
の国家再建には、相当な困難が生じるとの一部専門家の意見もある。6 月末の制憲選挙が公正かつ平
和裡に実施されるかどうかが国家再建に向けた一つの通過点になろう。
経済及び復興
リビアの 2010 年末の原油の確認埋蔵量は 471 億バレルとアフリカ第 1 位、世界第 8 位で、輸出の 9
割以上、歳入の 7 割以上を石油収入が占める石油に依存する経済構造となっている。内戦前の原油
生産量は日量 165 万バレルで、主な輸出先は欧州(伊仏独西)及び中国。内戦により 2011 年 8 月に
は日量 10 万バレルまで生産量が落ち込み、内戦前の生産量に回復するには 1 年半から 3 年はかかると
の見方が多いが、暫定政府は、2012 年第 1 四半期には日量 130 万バレル、年央にも日量 160 万バレ
ルに到達するとの見通しを示している。なお、既存契約に基づいて伊 ENI などが原油生産を再開している
が、リビア暫定政府は、暫定政府の下では石油開発にかかる新規契約を締結しない方針。
リビアのプライベートセクターに参画していく場合には、リビアの民間企業で構成する経済団体「Libya
Business Council」 を通じた、リビアにおけるビジネスパートナーとの関係構築が可能となっているようであ
る。
復興需要であるが、セメント、鉄鋼の生産能力がリビアでは限界に来ているようであり、また、内戦の影
響で一日 3~4 時間の停電又は断水が発生しており、発電設備などのインフラ設備の改修が急務となっ
ている。暫定政府から廃棄物、汚水処理施設の能力増強も必要との声も聞かれた。トリポリ国際空港
では、出発便のチェックイン・システムなどが全てストップしており、搭乗券は全て手書きであった。
このようにリビアの再建には外国企業の技術が必要不可欠かつ将来に亘って相当な復興需要が見込
まれる。また、リビアは資金が豊富なこと(2010 年度の外貨準備高は 1,050 億ドル 1:IMF予測値)から、
外国企業にとり魅力的な市場と考えられるが、ビジネスを行う上では混沌とした治安情勢がネックになる
ものと思われる。今後のリビアを見通す上で、差しあたり制憲選挙前後の治安・政治情勢がキーとなる。
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昨年 12 月の国連安保理、米英日等によるリビア中銀の資産凍結解除を受けて、この時点で 44
億ドルがリリースされた模様。また、これを受けて、昨年末、リビア中銀が外貨送金の自由化
を宣言。
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石油省が入っているビル。リビア石油公社の本
ゴミ、瓦礫があちこちで放置されたままになってい
社に同居。
る。
トリポリ国際空港ターミナル入り口に設置されて
右側の建物がトリポリ国際空港ターミナルビル。出
いる小火器。
発ロビー、到着ロビーの区別はない。
現地で見聞したトリポリの様子
トリポリ滞在中、移動中の車窓からのトリポリの昼間の様子ではあるが、ガソリンスタンド果物屋、コーヒ
ーショップ、ブティック、寝具屋、車修理店が営業しており、コーヒーショップで談笑する男性、ブティックに入
っていく女性、学校から下校する子供たちなどが見受けられ、トリポリでは通常通りの生活が営まれている
様子であった。ただし、警察機能が不十分かつ一般市民にも武器が拡散したままとなっており、夜の外出、
リビア人との揉め事、タクシーの利用は避けた方がよい。例えば、トリポリである外国人がタクシーを利用し
たところ、運転手に銃で脅かされ、金品を巻き上げられたとの現地情報もある。
既述の通り、武器が市民に拡散したままであるので、いつ何時小火器による衝突や事件に巻き込まれ
るか予見できず、リビア渡航にあたっては、外務省の渡航情報を確認することはもちろんのこと、現地セキ
ュリティ・ガードを利用するなどの安全対策が必要と思われる。
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「カダフィ・キャンプ」の破壊跡。そのまま放置され
カダフィの落書き。口から戦車をはき出している。カ
ている。
ダフィ体制であればあり得ない光景。
「Libya Free」と書かれた落書き。手前を走る白
営業中のガソリンスタンド。ガソリンを入れる車が列
と黒の車がタクシー。
を成していた。
営業中の商店。肩の空いたドレスを売っているブティックが印象的。
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e-NEXI (2012 年 3 月号)
平成 23 年度貿易保険協力円滑化業務~アジア ECA 招聘貿易保険研修業務~実施報告
独立行政法人日本貿易保険
1月30日(月)から2月9日(木)の約2週間の日程にて、平成23年度貿易保険協力円滑化業務が開催
されました。本事業は、アジア各国の輸出信用機関(ECA)または管轄省庁の管理職員を経済産業省
が招聘し、NEXI職員及び関係各機関による講義や双方向のディスカッションを通して、各参加国にお
ける貿易保険制度の更なる発展と、本制度が整備途上にある国・地域における職員の能力向上を目
的として、毎年度開催しています。
本年度は、香港(香港出口信用保険局:HKECIC)、インド(インド輸出入銀行:Export-Import Bank of
India)、インドネシア(インドネシア輸出保険公社:ASEI)、マレーシア(マレーシア輸出入銀行:MEXIM)、ミ
ャンマー(ミャンマー保険:Myanma Insurance)、台湾(台湾輸出入銀行:TEBC)、ベトナム(ベトナム財
務省)、及び特別招聘国としてブラジル(ブラジル輸出信用保険機関:SBCE)の8ヶ国が参加し、講義の
みならず、各国の貿易保険制度の紹介をはじめ、新規取組や今後の課題、アジア再保険協定*等の協
力関係構築の可能性などについて活発な情報交換を行いました。先月、8年ぶりに中長期の貿易保険
を再開したミャンマーの参加が初めて可能となったほか、貿易保険制度の確立を目指すベトナムより
同国財務省の制度設計担当者を初めて招聘しました。
講義の様子
NEXI 役員との意見交換会にて
本業務のような取組を通じ、アジア地域において日本がイニシアチブを取り、アジア各国の貿易保険
支援制度の発展に寄与し、各国関係機関との協力関係を構築することによって、日系企業の国際的な
事業展開支援につなげて参ります。
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*NEXIによるアジア再保険協定締結の取組について
近年、本邦企業の海外進出が加速し、海外(特にアジア地域)に生産拠点を設け、海外の現地法人か
ら第三国へ直接輸出を行うケースが増加しています。
NEXIは、アジア各国に所在する日系企業の第三国向け輸出支援を主たる目的として、アジア各国の
輸出信用機関(ECA)と再保険協定を締結しています。本協定の締結により、締結相手国が引き受け
た日系企業の輸出取引について、NEXIが再保険を引き受けることが可能となり、現地日系企業の輸
出取引に係るリスクの軽減を図っています。支援が可能な対象国の拡充を図るため、今後も同様の取
組を進めて参ります。
<アジア再保険協定締結国・地域>
シンガポール(シンガポール輸出信用保険会社:ECICS)、マレーシア(マレーシア輸出入銀行:
MEXIM)、インドネシア(インドネシア輸出保険公社:ASEI)、タイ(タイ輸出入銀行:THAI EXIMBANK)、
台湾(台湾輸出入銀行:TEBC)、香港(香港出口信用保険局:HKECIC)
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