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仲間、再会そしてハーモニー
被災 地復 興に係る児童生徒の活動事例 「仲間、再会そしてハーモニー」 1.活動の概要 私たち秋田市立山王中学校吹奏楽部は、 昨年(2011年)の5月1日に岩手県花 巻市にある花巻市文化会館大ホールにおい て、東日本大震災チャリティー・コンサー ト「集まれ!吹奏楽のなかまたち」~春の スペシャルコンサートⅣ~に参加させてい ただきました。このコンサートは私たち山 王中学校吹奏楽部と岩手県各地の中学校吹 奏楽部との合同演奏会で、毎年花巻市文化 会館において開かれています。昨年は初め て岩手県沿岸部の中学校の吹奏楽部も招い て行われました。 そのきっかけとなったのは次のような経 緯からです。 このコンサートは3月27日に行われる 予定でした。大震災直前の3月5日~6日 には岩手県の花巻市立湯本中学校、盛岡市 立大宮中学校、宮古市立宮古第一中学校の 3校が本校での合同練習を行いました。 「それじゃ、本番よろしく!」と言って 別れてからわずか5日後に、あの大震災が 東北を襲いました。幸いにも東北の中では 被害の少なかった私たちですが、岩手・宮 城・福島の惨状を知るにつれて激しく心を 揺 さ ぶ ら れ る 衝 撃 に 襲 わ れ ま し た 。ま し て 、 数日前に一緒に練習し仲良く語り合った仲 間のいる宮古市のようすがテレビで放映さ れた時、私はもちろん山王中吹奏楽部員全 秋田県秋田市立山王中学校 式 を 行 い ま し た … 。」 と い う ア ナ ウ ン サ ー の声が聞こえてきたのでした。テレビに釘 付けになった私の目と耳に次に入ってきた のは、宮古第一中学校吹奏楽部が演奏する 『ありがとう』 ( い き も の が か り )で し た 。 な ん と 、あ の 生 徒 た ち は 大 災 害 を 乗 り 越 え 、 練習も満足にできない状況においても健気 にそしてしっかりと演奏していたのでし た。 この直後、花巻でのコンサートを担当し ていた菅原広人先生(大宮中)から電話が 入 り ま し た 。「 宮 古 一 中 頑 張 っ て い る ん で す!私たちもやらなければ!彼らを招いて コンサートやりましょう!」もちろん私も 生徒たちも大賛成でした。それまで沈み込 んでいた部員に明るい表情とやる気に満ち た笑顔が戻りました。すぐに計画が練り直 され、宮古一中以外にも津波で大きな被害 を受けた大槌町立大槌中学校と野田村立野 田中学校も参加することが決まりました。 曲目はそれぞれの岩手県沿岸部の中学校 が活動再開できないため、その学校が演奏 できる曲を他の学校が演奏するスタイルに し ま し た 。 宮 古 一 中 の 「 あ り が と う 」、 野 田 中 の 「 キ ュ ー テ ィ ー ハ ニ ー 」、 大 槌 中 の 「春よ、来い」が加えられ、他の合同演奏 曲とともに参加校全てが懸命に練習に取り 組みました。 員が言葉を失いました。 とても現実のこととは思えないような映 像を目にしているうち瞬く間に1週間が過 ぎました。当然のことですが、3月のコン サートは中止となり、他にも私たちが計画 していたイベントやコンサートが次々に中 止となっていきました。何かしなければい けない、しかし何が出来るのだろうか、こ んな重苦しい思いが毎日交差していまし た。 そんな時テレビで「被災した宮古第一中 学校では、電気もつかない中で立派に卒業 支援活動はそれだけではなく、各企業か らも続々と続きました。被災した学校へ楽 譜や記念品、さらに「沿岸部の楽器はすべ て無償でリペアします」と地区の楽器屋さ 巻でした。全員で350人にもなったメン んが修理を申し出てくれました。 それぞれの学校がたくさんの苦労を乗り バーでしたが、人数が多いことよりも演奏 しているメンバーの気持ちが一つになった 越え本番の日を迎えました。 本番のためのリハーサルは午前中しかな ことが感動でした。それぞれの曲のリハー サルはわずか10数分しかできなかったと く日程もかなりハードだったのですが、リ ハーサルの開始から最後の演奏と片付けま はとても思えないほどのすばらしい演奏が 続きました。指揮もそれぞれの先生が交代 で、私たちは中学生の力のすごさを感じ続 けていました。 で務め、その持ち味を存分に出してくれま し た 。「 あ り が と う 」 は 宮 古 一 中 の 佐 香 先 ステージセッティングから楽器・楽譜の 準備、演奏の確認等々、生徒たちは自らが 生が指揮をしました。あの卒業式で流れた 演 奏 が 再 び 響 き 渡 っ た の で し た 。違 う の は 、 進んで動いていきました。リハーサルでは 久しぶり会えた仲間はもちろん、初めて会 満員のすばらしいホールで350人という 最高の仲間達と一緒だったことです。 ったメンバーも「コンサートを成功させよ う」という一つの思いの下に一致団結し、 私たちは感動の中で会場を後にしたので すが、何よりもうれしかったのは仲間との 一人一人が積極的に動いていました。 開演前にも、その気持ちと行動は全開で 再会でした。会った瞬間お互いの無事を喜 び合う姿、共に一つの演奏のために力を合 した。 たくさんのお客様が列を作るホールの階 わせる姿、別れるときに涙しお互いの無事 を願い合う姿、これらは出会えた事への感 段では盛岡市立北陵中による手話合唱「あ すという日が」が披露され、ロビーでは大 宮中、湯本中、北陵中が次々に演奏し、オ 謝と喜びのエネルギーだったと思います。 同時に音楽を続けていることの意義を新た に見いだした瞬間でした。私たちはこれか ープニングでは追悼の意味もこめて「ふる さと」も演奏されました。 らも何かできることを探して努力していき たいと強く思っています。 2.活動の成果等 〔生徒たちの言葉から〕 「花巻での演奏会ができる、と聞いたとき はとにかくうれしかったです。そして当日 知っている顔を見たときは、心からホッと し ま し た 。」( 山 王 中 ・ 生 徒 A) 「コンサートで私が一番うれしかったのは、 みんなで演奏できたことです。ステージに 立って演奏ができたこともたくさんの方々 第一部の山王中の演奏にも超満員のお客 様と出演者が舞台袖や花道から熱い視線を 送ってくれました。会場には関係者や各校 の保護者の他に、山王中が移動に使ったバ スを利用して花巻温泉へ避難されていた方 にもおいでいただきました。会場全体が熱 いエネルギーに包まれていたことで、それ ぞれの演奏はさらによくなっていきまし た。 そして、メインの大合同合奏はまさに圧 が支えてくれたからだと思います。今度は 私たちが音楽でみんなを元気にしなければ い け な い と 思 い ま し た 。」 ( 大槌 中 ・ 生 徒 B) 「練習不足でできないところもありました が、リハーサルでは不思議に楽に吹くこと が で き ま し た 。」(宮 古 一 中 ・ 生 徒 C) 「本番はすごかったです。自分たちだけで ない力を感じました。音楽の力・人間の力 っ て す ご い な と 思 い ま し た 。」( 大 宮 中 ・ 生 徒 D)