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講演要旨 - 笹川平和財団
平成 27 年 6 月 17 日 第 122 回海洋フォーラム要旨 島と海のネット(IO ネット) 第 1 回総会の成果と今後の展開 公益財団法人笹川平和財団海洋政策研究所 所長 寺島 紘士 公益財団法人笹川平和財団海洋政策研究所 主任研究員 古川 恵太 公益財団法人笹川平和財団海洋政策研究所 研究員 小林 正典 【講演要旨】 1.今回の目的 今回の海洋フォーラムにおいては、平成 27 年 5 月 25-26 日に東京大学伊藤国際学術セン ターにおいて開催された「島と海のネット(IO ネット)」第 1 回総会(主催:公益財団法人 笹川平和財団海洋政策研究所、共催:オーストラリア国立海洋資源安全保障センター (ANCORS) 、東京大学海洋アライアンス、共同議長:寺島紘士 公益財団法人笹川平和財 団海洋政策研究所長、アリスター・マクイゴム オーストラリア国立海洋資源安全保障セン ター(ANCORS)教授、デイビット・シェパード 太平洋地域環境計画(SPREP)事務局 長)の成果と今後の展開について、寺島紘士 公益財団法人笹川平和財団海洋政策研究所長、 古川恵太 主任研究員、小林正典 研究員より報告が行われた。 2.島と海のネット(IO ネット)第 1 回総会までの経緯 はじめに、寺島所長より、海洋政策研究財団(現公益財団法人笹川平和財団海洋政策研 究所)とオーストラリア国立海洋資源安全保障センター(ANCORS)が発表した共同政策 提言「島と周辺海域のより良い保全と管理に向けて」を支援する機関や個人(以下「パー トナー」 )が自発的に協働して提言の実施推進に取り組むために立ち上げられた国際的な協 働ネットワークである「島と海のネット(IO ネット)」が設立された経緯が紹介された。 特に、平成 26 年 9 月 1 日-4 日にサモア独立国において開催された第 3 回小島嶼開発途上 国国際会議(SIDS 2014) (参加国:115 ヵ国、参加団体(NGO 他) :548 団体、参加者数: 約 3500 名)のサイドイベント「島と周辺海域のより良い保全と管理に向けて」 (主催:海 洋政策研究財団(現公益財団法人笹川平和財団海洋政策研究所) 、オーストラリア国立海洋 資源安全保障センター(ANCORS) ) (参加者数:約 80 名)において、国際的な協働ネッ トワークである「島と海のネット(Islands and Ocean Net) 」の設立宣言が採択されたこ 1 と、平成 27 年 1 月 19 日-20 日に東京で開催されたコアグループ会合において、海洋政策研 究財団(現公益財団法人笹川平和財団海洋政策研究所) 、オーストリア国立海洋資源安全保 障センター(ANCORS)、太平洋共同体応用地球科学技術委員会(SOPAC/SPC)、太平洋 島嶼フォーラム事務局(PIFS) 、に加え、太平洋地域環境計画(SPREP)および南太平洋 大学(USP)が新たにコアグループ メンバーとして参加し、島と海のネット(IO ネット) 規約が採択されたことが詳細に紹介された。 そして、開会式において、寺島所長が島と海のネットの趣旨説明を行い、アノテ・トン キリバス共和国大統領や中根一幸外務大臣政務官、笹川陽平公益財団法人日本財団会長、 スチュワート・ケイ ANCORS 所長、日比谷紀之東京大学海洋アライアンス機構長より祝辞 が寄せられ、 「島と海のネット」の立ち上げを歓迎するとともに、今後の取り組みに期待す る旨が表明されたことが紹介された。 3.各セッションの概要 寺島所長の紹介に続いて、小林研究員より、第 1 回総会で行われた各セッションの内容 紹介が行われた。総会においてセッション 1「共同政策提言の実現に向けた「島と海のネッ ト」の活動」においては、寺島所長より「IO ネットは自発的な国際協働ネットワークであ り、多様なステークホルダーとの連携による具体的な協働プロジェクトを通じて共同政策 提言の実現を目指す」ことが表明されたこと、古川主任研究員より「共同政策提言が掲げ る各課題について、IO ネットの枠組みで協働するパートナーを募り、試験的・実践的・実 証的なプロジェクトを通じて共同政策提言の実現を図る」ことが表明されたこと、小林研 究員より「暫定的な関心・ニーズ調査では、能力構築・制度強化、強靭性の向上、漁業、 鉱物資源と環境保全、海洋環境保全に高い関心が示されるなど、IO ネットはパートナーの 関心・ニーズに呼応した活動展開が期待されている」ことが報告されたことなどが紹介さ れた。また、セッション 2「島と海のネット活動計画の策定に向けて」の内容紹介が行われ、 小林研究員が第 1 部「島の保全と管理」の(1) 「管理戦略の策定とその実施」の概要を紹 介した。具体的には、島を大陸島、火山島、環礁島、隆起石灰岩島の 4 つの類型に分類し、 それぞれの特性・脆弱性を評価した上で、島の管理戦略を立案・実施する必要性やそのた めの方策が議論された旨の報告がなされた。 小林研究員の紹介に続いて、古川主任研究員より、第 1 部「島の保全と管理」の(2) 「サ ンゴ礁、マングローブ、生態系保全」 、 (3)「再生可能なエネルギーの推進」、(4) 「島嶼 間交通網の改善」 、 (5) 「廃棄物処理」や第 2 部「周辺海域の管理」の(1) 「境界の画定」 、 (2)「漁業資源管理と海洋生物多様性の保全と持続的利用」、(3) 「海洋鉱物資源開発と海 洋環境保全」 、第 3 部「気候変化・変動への対応」 、第 4 部「能力構築と制度的枠組みの強 化」 の概要が紹介されるとともに、セッション 3 にて、今後取り組むべき活動やプロジェ クトの案を元に太平洋島嶼国や日本、国際機関からの参加者が各々の議題について、活発 な議論が行われたことが紹介された。 2 4.第 1 回総会の総括と今後の展望 最後に寺島所長より、総括セッションの概要が紹介され、今後、本総会での発表および 議論を踏まえ、各プロジェクトへの参画を希望するパートナーが各種のプロジェクト提案 の具体化に努めるために、ネットワーク事務局(公益財団法人笹川平和財団海洋政策研究 所)が関連情報の収集・共有、プロジェクト候補リストの作成・回覧その他により、プロ ジェクト形成・実施の支援を行うことが確認されたことが紹介された。現在事務局にて検 討している、今後実施すべきプロジェクト案として、「島嶼管理戦略プロジェクト」、 「島嶼 国強靭性向上プロジェクト」、「沿岸域・海洋の総合管理」、「環境配慮型廃棄物管理プロジ ェクト」、「再生可能なエネルギーの推進プロジェクト」、「地熱・海洋温度差発電(Ocean thermal energy conversion, OTEC)プロジェクト」、島嶼間海上交通改善プロジェクト」 、 「海洋保護区と生態系ネットワークプロジェクト」、「持続可能な漁業推進プロジェクト」 、 「深海底地下資源の持続可能な管理プロジェクト」などが紹介された。 そして、今後の展望として、国際的な協働ネットワーク「島と海のネット」の活動を今 後着実に発展させ、共同政策提言を実施していくための具体的なプロジェクトを立ち上げ ていくとともに、太平洋島嶼国との連携の実現に向けて、日本の組織・個人(政府、研究 機関・大学、企業、NPO、各種団体等)との連携、島嶼国日本の優良事例の太平洋島嶼国 との共有、海洋国である太平洋小島嶼国が海守としての役割を果たし善良な利用者であり 続けられるような国際協力の推進などに積極的に取り組む方針が表明され、引き続き関係 各位の支援や協力を求めた。 以上の内容により「島と海のネット」第 1 回総会が成功裏に終了し、今後の IO ネット活 動の展開が図られていることが報告された。 【質疑応答・意見交換】 茅根創 東京大学大学院理学系研究科教授より、第 1 回総会で行われた政策提言や提示さ れたプロジェクトは非常に理想的であり、大変実りある総会であったことを評価した上で、 小島嶼国の経済が国外からの支援に大きく依存していることを踏まえると、小島嶼国が自 立的に行うこと以上に国際的な支援が不可欠なのではないかという指摘が行われた。 これに対し、寺島所長より、非常に難しい問題であるが、小島嶼国に求められているこ とは、小島嶼国自身が実施すべき取り組みや自身の限界を把握した上で、国際社会に支援 を求めていることではないかと応じた。その上で、国際社会による支援がアジェンダ 21 は もちろん、平成 6 年(1994 年)に開催された「SIDS の持続可能な開発に関する国際会議」 や平成 17 年(2005 年)に開催された「BPoA(バルバドス行動計画)の実施レビューのた めの国際会議」において採択された文書(BPoA(バルバドス行動計画)および MSI(モー リシャス実施戦略) )にも規定されていることに触れながら、これらの会議に出席した先進 国や国際機関の関係者が「小島嶼国関係者から具体的な意見が寄せられてこない」という 不満を有していたことを紹介し、小島嶼国の能力を踏まえると難しいが、小島嶼国自身が 3 意思を表明する必要があること、そのために財政支援のみならず、人的支援も必要であり、 島と海のネットを通じた人的交流を行い、それを基盤に小島嶼国への支援が行われること を希望する旨が表明された。 高瀬康夫 前ジャマイカ兼ベリーズ兼バハマ国駐箚特命全権大使からは、島嶼国に関する 問題提起を最初に行ったのはカリブ海諸国であるが、カリブ海諸国との連携については、 どのように考えているのかという意見が寄せられた。また、日本政府が政府開発援助での 算定方式について、これまでの人口を基準とするものから改めようとしているが、このよ うな動きも小島嶼国への支援のあり方を検討する際に参考になるのではないかとの指摘が なされた。 これに対し、寺島所長より、指摘に同意し、感謝するとともに、IO ネットが太平洋地域 に限定した活動ではなく、他地域との連携も将来的に視野に入れて活動していきたいとい うことが説明された。 4