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情 報 報 告
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シカゴ
●最近の米国経済について
○年末商戦、売り上げ伸び率は前年よりやや拡大か
2013 年の年末商戦売り上げ予測が出そろった。各機関の発表によると、伸び率は前年から拡大
が見込まれるものの、大きな伸びとはならないという慎重な見方が多いようだ。住宅価格や株価
の上昇による資産効果で消費の伸びに期待が高まる一方で、今後も政治の混乱が消費に影響を与
えるのではないかとの懸念が残る。年末商戦に伴う臨時雇用についても、前年並みか微増にとど
まるとの見方が強い。
<政治の安定回復が好影響との声も>
米国では感謝祭とクリスマスを含む 11 月と 12 月は、年間で最も売上高が増加する「年末商戦」
期間として売り上げ動向に注目が集まる。全米小売業協会(NRF)は、例年この期間の売上高が、
年間小売売上高の 20%に当たると推計している。2013 年の売上高は伸び率が前年より拡大する
ものの、大幅な伸びとはならない、と小売業界団体などの各機関はみているようだ。
NRF は、2013 年の年末商戦期間(11~12 月)の小売売上高は、前年(前年同期比 3.5%増)
よりもやや伸び率が大きい 3.9%増の 6,021 億ドルと予測している(NRF プレスリリース 10 月 3
日)。NRF によると、好調な住宅市場、自動車などの単価の大きい商品に対する購買意欲の高さ
などの要因から、小売業界は 2013 年の年末商戦を慎重ながらも上向きにみていると指摘する。
一方で、NRF 理事長のマシュー・シェイ氏は、10 月前半に閉鎖していた政府機関の再開の見通
しが立ったことと、連邦債務上限引き上げ問題が先送りとなったことについて、
「年末商戦に入る
時期となり、小売業者も消費者も政情の安定を必要としている。今後、政策担当者の行動によっ
て経済が混乱しないという保証が必要だ。
(先行きへの懸念から)消費者が支出を減らせば、さま
ざまな産業の雇用にも影響が出る」と述べている(NRF プレスリリース 10 月 16 日)。
国際ショッピングセンター協会(ICSC)も NRF と同様に、年末商戦の売上高は前年よりもや
や上回る伸びとなるとみている。ICSC は、2013 年の年末商戦期間(11~12 月)の売上高の伸び
を、前年(前年同期比 3.0%増)よりやや高い 3.4%増と予測している(ICSC プレスリリース 9
月 30 日)。チーフエコノミストのマイケル・P・ニエミラ氏は 10 月 16 日、ジェトロの取材に対
して 2013 年の売上高増加を予測する理由として、
「ホリデーギフトとして多く購買される衣料品
の価格が下がらずに安定していること、商品の在庫を前年よりも少なめに維持することによって
売れ残り商品の大幅値引きが少なくなること、住宅価格や株価の上昇による資産効果で引き続き
消費者の購買意欲が高いこと」を指摘した。また政府機関の閉鎖や、債務上限の引き上げ問題な
ど一連の政治問題が消費者の購買意欲に影響するかについては、
「先行きへの懸念から一時的な落
ち込みはあるだろうが、問題が解決の方向に向かえば短期間で回復するだろう」と述べた。
10 月 17 日には、民主、共和両党の合意により、債務上限引き上げと政府機関の閉鎖解除を含
む関連法が成立し、債務不履行(デフォルト)は辛くも回避された。このことが消費者の購買行
動にも今後、好影響を与える可能性がある。ルネサンス・マクロ・リサーチのニール・ダッタ氏
は、今回の政府の動きが「株式市場の反発とともに、消費者信頼感の持ち直しにもつながる」と
指摘している。
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一方、店頭への客足の数から消費者の動向を調査・分析するショッパートラックは、2013 年は
年末商戦期間中の週末が前年よりも 1 週分少ないこと、感謝祭翌日の「ブラックフライデー」か
らクリスマスまでの間の日数が 25 日と前年より 6 日少ないことから、消費者が買い物に出掛ける
回数が減る可能性を指摘している(9 月 17 日)。同社は 2013 年の年末商戦期間(11~12 月)の
売上高は前年同期比 2.4%増と、前年(前年同期比 3.0%)よりもやや小幅な伸びになると予測し
ている。
この見方に対して、ICSC のニエミラ氏は、近年小売店が営業時間の延長や、祝日の開店など
によって購買の機会を増やしていることや、祝日にもギフトカードを使用した購買が増加してい
ることから、日数が前年から少ないことが必ずしも売り上げの減少にはつながらなくなってきて
いると指摘している(10 月 16 日)。
なお、同期間中のオンライン売上高について、NRF のオンライン小売業担当部門の Shop.org
は前年同期比 13~15%増、ICSC は 13%増と前年よりもやや弱い伸びを予測している。商務省の
データによると、2012 年第 4 四半期(10~12 月)のオンライン小売業の売上高は 15.5%増だっ
た。オンライン小売業の売上高は他業種に比べ好調で、2009 年第 4 四半期から 2013 年第 2 四半
期まで前年同期比で 2 桁の増加が続いている。
<年末商戦に伴う雇用は前年並みまたは微増の見込み>
買い物客が急増する年末商戦期間に、小売業は例年、大量の人員を臨時採用する。労働市場に
与える影響も大きい。ただ、雇用については前年ほどの増加は見込めないとする向きが多い。10
月 16 日に連邦準備制度理事会(FRB)が発表した地区連銀経済報告(ベージュブック)でも、
複数の地区が、小売業の臨時雇用は前年並みになると見通している。
NRF は、2013 年の年末商戦期間で 72 万~78 万人の臨時雇用が生まれると予測している。2012
年の実績は 72 万人と、2000 年以来の高水準だった。2013 年もそれと同水準かそれ以上という見
通しだが、増加幅は縮小する見込みだ。
米雇用コンサルティング会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスも、2013 年 10~
12 月の臨時雇用者数は最大でも前年並みと予想(9 月 23 日発表)。消費者の心理が不安定なほか、
小売業の経営効率化が進んでいることから、採用を手控える企業が多いと考えられるためだ。同
社のジョン・チャレンジャー最高経営責任者(CEO)は「2012 年は記録的高水準であり、これ
が 2013 年も続くとは思えない」とコメントした。
年末商戦に備えての臨時雇用は、9 月半ばから始まり 10 月中旬に加速する。個別企業の雇用計
画として発表されているものとしては、以下のようなものがある。
○ディスカウントストアのウォルマート・ストアーズが 5 万 5,000 人を雇用(前年同期比 1 割増)。
○ディスカウントストアのターゲットが 7 万人を雇用(2 割減)。
○百貨店メイシーズが 8 万 3,000 人を雇用(4%増)。全米の店舗、コールセンター、配送センタ
ーなどに配置。
○百貨店コールズが店舗や配送センターなどで 5 万 3,000 人を雇用(微増)。
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○玩具チェーン店大手トイザらスが店舗と物流センターで計 4 万 5,000 人を雇用(前年並み)
。
いずれの例をみても、2012 年と比べて大幅に雇用を拡大する動きはなさそうだ。雇用が伸びな
い要因としては、前述のとおり消費者心理の不安定さや、小売業の経営効率化があるが、特に後
者に関してはインターネット利用の拡大が指摘される。顧客サービス改善のためにインターネッ
トによる業務効率化に取り組む企業は多く、IT への依存が高まる分、人の雇用は減少する。消費
者としても、交通費節約や利便性を重視してオンラインショッピングにシフトする傾向にある。
<オンライン企業の動きは活発化>
それを裏付けるのが、オンライン企業の動きだ。オンライン通販大手のアマゾンは年末商戦に
向け、臨時常勤社員 7 万人の採用計画を発表。これは前年の 4 割増しに当たる。採用した人員は
物流施設での商品配送業務に充てられる。同社はとりわけ、2013 年 9 月末に発表した電子書籍端
末の最新モデル「キンドルファイア HDX」による売上高増加に期待を寄せているとみられる。そ
のほか、8 万 3,000 人の雇用を発表したメイシーズが採用した人員のうちの 1 割をオンライン注
文用の管理、配送拠点に配属するなど、従来型の小売店の中でもオンライン部門に人員を充当す
る動きが活発化している。
○9 月の新車販売台数は前年同月比 4.2%減
9 月の新車販売台数は、前年同月比 4.2%減の 113 万 9,050 台と 27 ヵ月ぶりの減少となった。
レーバーデー(9 月第 1 月曜日)直前の週末の売り上げが前月分に計上され、販売日数が前年同
月より 2 日少なかったことによって、多くの主要メーカーの販売台数がマイナスとなった。その
中でフォードは大きく増加した。
<前年同月比減少は 27 ヵ月ぶり>
9 月の全米新車販売台数は、前年同月比 4.2%減の 113 万 9,050 台となった(オートデータ 10
月 1 日)。年率換算台数は 1,528 万台と市場の予測(1,540 万台、ブルームバーグ)を下回り、1,600
万台を超えた前月から減少した。
オートデータによると、販売台数は 2011 年 6 月以来初めての前年同月比減となった。自動車
情報提供のエドモンズ・ドット・コム(10 月 2 日)は、好調だったレーバーデー直前の週末の売
り上げが 8 月分に計上され、販売日数が前年同月よりも 2 日少なかったことを減少の主な要因と
している。米国トヨタ自動車販売のビル・フェイ副社長は「9 月はカレンダー要因によって統計
的に良い結果となることが難しいと予想されていた」と述べている(同社コンファレンスコール、
10 月 1 日)。
一方、四半期でみると、2013 年 7~9 月は前年同期比 9.1%増と、2013 年の 1~3 月、4~6 月
から伸びが加速している。なお、10 月 1 日からの連邦政府閉鎖によるビジネスへの影響について、
フォードのマーケティング担当副社長ケン・スーズベイ氏は「われわれは皆懸念している。政府
閉鎖がいつまで続くのか見極める必要があり、それに応じて適切な処置を行うことになるだろう」
としつつ、
「基礎的な経済要因が景気を支えている限り、この混乱を切り抜けられるだろう」と述
べている(同社コンファレンスコール、10 月 1 日)。また、ゼネラルモーターズ(GM)の営業担
当副社長カート・マクニール氏は「(政府閉鎖が)短期間である限り、われわれのビジネスや自動
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車業界への影響はないだろう」と述べている(同社コンファレンスコール、10 月 1 日)。政府閉
鎖が長期となった場合は、政府向けなど大口のフリート販売の減少、関連機関職員の減給による
新車の買い控えなどの可能性が考えられる。
<大型・高級乗用車以外は全て減少>
販売台数を部門別にみると、大型・高級乗用車(前年同月比 8.7%増)以外の部門では全て減少
した。中でも小型乗用車が 8.6%減、中型乗用車が 7.2%減、ミニバン・フルサイズバンが 6.7%
減と大きく減少した。
<大手ではフォードが大きく増加>
販売台数をメーカー別でみると、ゼネラルモーターズ(GM)が前年同月比 11.0%減の 18 万
7,195 台(シェア 16.4%)、フォードが 5.7%増の 18 万 4,452 台(16.2%)、トヨタが 4.3%減の
16 万 4,457 台(14.4%)
、クライスラーが 0.7%増の 14 万 3,017 台(12.6%)となった。
GM は、小型トラック部門が 6.5%減の 11 万 3,404 台、乗用車部門は 17.1%減の 7 万 3,791 台
となった。同社のシボレーブランドでは、小型セダン「クルーズ」が 50.6%減の 1 万 2,730 台、
フルサイズセダン「インパラ」が 24.9%減の 1 万 1,462 台、ピックアップトラック「シルベラー
ド」が 10.8%減の 3 万 2,506 台となった。
フォードは、小型トラック部門が 2.5%増の 12 万 6,868 台、乗用車部門は 13.6%増の 5 万 7,584
台となった。中型セダン「フュージョン」が 62.4%増の 1 万 9,972 台、ピックアップトラック「F
シリーズ」が 9.8%増の 6 万 456 台となった。
クライスラーは、小型トラック部門が 0.5%減の 9 万 9,530 台、乗用車部門が 3.4%増の 4 万
3,487 台となった。同社ではダッジブランドの小型車「ダート」が 51.3%増の 7,922 台、中型乗
用車「チャージャー」が 48.6%増の 8,713 台、ジープブランドの中型スポーツ用多目的車(SUV)
「グランドチェロキー」が 18.9%増の 1 万 4,906 台と伸びが目立った。
なお、現代は 8.2%減の 5 万 5,102 台、現代傘下の起亜は 21.0%減の 3 万 8,003 台となった。
フォルクスワーゲンは 7.4%減の 4 万 5,294 台となった。
<日系大手メーカーのシェアも低下>
日系メーカーでは、トヨタのシェアが前年同月から 0.1 ポイント低下の 14.4%、販売台数は
4.3%減の 16 万 4,457 台となった。小型トラック部門が 5.1%減の 7 万 477 台、乗用車部門が 3.8%
減の 9 万 3,980 台となった。ハイブリッド車「プリウス」が 16.1%減の 1 万 5,890 台、中型セダ
ン「カムリ」が 7.0%減の 3 万 1,871 台、中型 SUV「ハイランダー」も 20.7%減の 8,661 台とな
った。
ホンダのシェアは前年同月から 0.6 ポイント低下の 9.3%、販売台数は 9.9%減の 10 万 5,563
台となった。小型トラック部門は 10.6%減の 4 万 8,790 台、乗用車部門は 9.4%減の 5 万 6,773
台となった。ミニバン「オデッセイ」が 32.1%減の 7,714 台、中型セダン「アコード」が 13.7%
減の 2 万 5,176 台となった。
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日産のシェアは前年同月から 0.1 ポイント低下の 7.6%、販売台数は 5.5%減の 8 万 6,868 台と
なった。小型トラック部門は 4.6%減の 3 万 3,361 台、乗用車部門は 6.1%減の 5 万 3,507 台とな
った。小型セダン「セントラ」が 16.6%減の 7,798 台、中型セダン「アルティマ」が 13.2%減の
2 万 1,221 台となった。
一方、スバルの販売台数は前年同月比 14.7%増の 3 万 1,755 台と、9 月としては過去最高の販
売台数となった(同社プレスリリース、10 月 1 日)。
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