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OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
香川大学農学部紀要 第48号1∼60,1986
サツマイモ塊根組織のチトクロムP−450系酵素に関する研究
藤
田
政
之
StudiesonCytochromeP−450−DependentMixedFunCtion
OxygenaseinSweetPotatoRootTissue
MasayukiFuTITA
目
次
2
9
3 3 4 5 8
1 1 1 2 2
第2節 材料および実験方法
第3節 実験結果
第4節 考 察
第5章 サツマイモ塊根組織のチトクロムP−450系酵素の酵素化学的性質
第1節 序 紛
第2節 材料および実験方法
第3節 実験結果
第4節 考 察
第6車 総合討論
第7章 要
献
ABBREVIATIONS
A
蒜BS諾
cytidine diphosphate
Car.boxymethyl
2
ipomeamarone15−hydroxylaseとcirmamicacid4−hydroxylase一間の細胞内局在性の相違
第1節 序 論
2
第4節 考 察
第4章 病傷害サツマイモ塊根組織における2種のチトクロムP−450依存水酸化酵素−
2
第3節 実験結果
bovineserumalbumh
3
第4節 考 察
第3章 サツマイモ塊根組織におけるチトクロムP−450の外的刺激による
第1節 序 論
第2節 材料および実験方法
adenosine diphosphate
adenosine monophosphate
adenosine triphosphate
0
第3節 実験結果
文
9
第1節 序 論
第2節 材料および実験方法
9
第1車 序 論
第2章Ipomeamarone15−hydroxylaseの同定とその性質
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
− 2 −
CoA
DEAE
DTT
EDTA
FAD
FMN
ITLC
coenzyme A
mRNA
NADH
messengerribonucleicacid
reducednicotinamideadeninedinucleotide
oxidizednicotinamideadeninedinucleotidephosphate
NADP十
NADPH
NMR
POPOP
PPO
SDS
TLC
Tris
UDPG
diethylam血)ethyl
dithiothreitol
ethylenediaminetetraacetate
aavinadeninedinucleotide
且avinmononucleotide
instantthin−1ayer・Chromatography
r・educednlcotinamideadeninedinucleotidephosphate
nuclearmagneticresonanCe
l,4−bis[2−(5−phenyloxazolyl)]benzene
diphenyloxazole
sodiumdodecylsuhte
thin−1ayerchromatography
tris(hydroxymethyl)aminomethane
ulidine5′−diphosphatea−D−glucose
第1章 序
〔病傷害サツマイモ塊根組織における二.次代謝系〕
高等植物には多彩な二次代謝系1▼2)が存在しており,これらの代謝系によって生産される非常に多種にわたる
二次代謝産物は薬物・毒物・香料・染料等の形で人間生酒と深いかかわりあいをもっている.これらの二次代謝
産物は,勿論こうした人類社会における利用という点で重要ではあるが,それ以上に生産者たる相物自身の生命
現象にいかにかかわりあっているかが極めて重要な問題であり,多くの科学者の興味の対象となってきたけ 高等
植物における二次代謝系は,その生活環において恒常的に存在している場合も勿論あるが,物理的ないし化学的
刺激,さらには生物的刺激等の環境因子によって誘導されたり,植物体自身の成長段階と関連した内的要因等に
よって制御されている場合も極めて多い.こうした誘導・制御を解析することによって,これらの二次代謝産物
の植物体における生理的役割が明らかにされてきている.
サツマイモ塊根組織においても,正常な組織には存在しないが,ひとたび外的刺激を与えると顕著に誘導され
る2種の特有な二次代謝系が存在することが知られているその一つはテルペノイド合成系で,黒斑病薗の感染
により著しく誘発される3・4).この代謝系は,病菌の感染以外でも,HgC12やCdSO4等の重金属塩での処理5),オ
クラトキシン等のマイコトキシンでの処理(予備実験による未発表データ),アリモドキゾウムシによる食害6)等
によっても誘導される.この二次代謝系はイポメアマロン7)をはじめとする種々の抗菌性フラノセスキテルペ
ン類を産生し(図1),かつ生成されたテルペン類は被害組織部にのみ蓄積する.このように,健全な植物体に
は存在しないが,病菌の感染に即応して植物が能動的に被害部に蓄積する抗菌性物質を総称してフィトアレキシ
ン8)とよんでいる.例えば,ジャガイモのリシチン910),エンドウのピサチン1112),コショウのカブシジオー
ル1314)等がそれに当たる.これらのフィトアレキシンは構造的共通性に乏しく,イソフラボノイドやモノ,セ
スキ,ジルテルペン等種々様々である.従ってまた,それらの抗菌性を示す機構も様々であろうと考えられてい
るイポメアマロンが抗菌性を示す一つの理由として,黒斑病菌の呼吸括性を抑えることが報告されている15)
サツマイモ塊根のテルペノイド合成系は,他のイソプレノイド合成系と同様に,まずアセチルCoAを出発物
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
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− 4 一
質とし,律速酵素と考えられている3−hy血0Ⅹy−3−me−
Acetyl CoA
thylglutarylCoAreductaseによる還元反応を経由し,
J
プレニルピロリン酸を合成する(図2)。こうした共
J.
3一日ydroxy−3−methJ′1glutarylCoA
通した代謝経路で合成されたプレニルピロリン酸は,
J
その後極めて複雑でかつサツマイモに特有な経路に
J
よって代謝される(図1).その複雑さは,特有の炭
Mevalonate phosphate
素骨格が形成されることは勿論,種々の部位で酸素原
J
子や二重結合が導入されることにも起因している.ア
Mevalonate pyrophosphate
セチルCoAからファルネシルピロリン酸までの経路
1
IsopentenylpyYOPhosphate
については,組織レベルだけでなく無細胞抽出系を用
J「
い,放射性炭素で標識された中間体を気質として酵素
J
学的に確かめられている.アセテルCoAの産生に関
与する酵素も含めると,pyruVatedecarboxylase16),
acetaldehyde dehydrogenase17),aCetylCoA synthe−
3−Hydroxy−3−meth)′lglutaYylCoA reductase
Mevd10nate
J
Farnesylpyrop110SPhate
Fig.2.Possiblemetabolicpathway血’OmaCetylCoAto
farneSylpyrophosphateinsweetpotato
tase18),ATP−Citr・atelyase19),アセチルCoAから3−ヒ
ドロキシー3−メチルグルタリルCoAへの反応に関与する酵素20),3−hydroxy−3−methylglutarylCoAreductase21),メ
バロン酸からイソペンテニルピロリン酸への反応に関与する酵素22)等が,この代謝系に関与することが確かめ
られており,かつまたこれらの酵素の活性がフラノテルペンの産生に先達って誘導的に増加することも確かめら
れているい ファルネソ・−ル以後のイポメアマロンをはじめとする種々のフラノテルペンヘの返換に関しては,放
射性炭素で標識された中間体を用いた組織レベルでのトレーサ一実験による結果にとどまっており,デヒドロイ
ポメアマロンをイポメアマロンに還元するdehydroipomeamaronereductase23)滴性のみが無細胞抽出系で検出さ
れているにすぎない.そこで,ファルネソ1一ル以降のテルペン生成に関与する酵素の一つとして,イポメアマロ
ンからイポメアマロノールヘの水酸化反応を触媒する酵素を無細胞抽出系にて検出し,その酵素学的性質を明ら
かにすることを本研究の一つの目的とした
サツマイモ塊根組織で知られているもう一つの二次代謝系はフユニルプロパノイドを含むポリフェノ・−ル化合
物の合成系24)である.本合成系も,テルペノイド合成系と同様に,黒斑病菌の感染によって強く誘発されるが,
その外にも,切断傷害の様な単なる物理的刺激によっても誘導される… フユニルプロパノイド代謝系は高等植物
全般にわたって幅広くその存在が知られているが,その最終産物としては,褐変化の要因となっているクロロゲ
ン酸,木化や癒傷に重要な役割を担っているリグニン,植物性色素として蛋要な位贋を占めるフラボノイド類な
ど,その構造でも生理的役割でも多種多様である.これら多様な代謝産物は,フユニルプロパノイド代謝系,す
なわちフユニルアラニンからシナピン酸までの代謝経路から分枝して産生される(図3).サツマイモ塊根にお
いては,そのフユニルプロパノイド代謝系の初期段階に関与している2種の酵素について詳しい研究がなされて
いる一つはこの代謝系の律速酵素と考えられているphenylalanineammonialyaseであり,もう∼つはそのすぐ
後に位■置するcinnamicacid4−hydroxylaseである..両者とも,組織が切断傷害を受けた後,ポリフェノール化合
物の産生に先立って顕著にその活性が高まる誘導酵素である25).そしてともに,切断傷害後1日を墳にして,
その痛性が現象する25)前者には可溶性酵素であり高度に精製され26),それに対する抗体を用いて,その活性
上昇が酵素タンパク質の合成誘掛こ起因していることが証明されている27).後者は,膜結合酵素であり,チト
クロムP_450関与の一原子酸素添加酵素であることが示唆されている25).
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− 5 −
◎
/ YCOOH
NH2
L-Phenylalanine
J
′ COOH
Flqvonoids
◎∼
Cinn(】mic oc【d
†
l
/
H。耶;00日 Lイ
yrosine
L←1。愈∼COO”∴音感ド/’C竺
P−Coumcric ccid p−CoumclrylcIco
_ニー∴l ̄
J
.∴−こ∴−1‥‥‥二 F
Ch】orogenic
OCid
erulic く】Cid
_
警HO′〉
:郡/■C「
↓
Li9∩】nS
Conifery】qlcohol
H慧軒COOH
5一日ydroxyfe「ulic qcid
-1
H慧瞥 ’
COOリ慧率/ ゝ ′/CH20H
OCH3
Sin8Ple qCid Slnqpylq】cohoI
Fig..3.Metabolicpathwayofphenylpr−OpanOidsynthesisl
〔病傷害サツマイモ塊根組織の二次代謝系とチトクロムP−450〕
生物代謝は大別するとエネルギー代謝と物質代謝とに分けられようが,それら両者のうちに占める酸化反応の
比重は極めて大きいと言えよう.例えば,前者においてはミトコンドリア内膜での酸化的リン酸化があげられ,
後者においてはミクロソ・−ム膜での薬物の酸化的代謝があげられるミクロソ・−ム膜での薬物代謝が今世紀後半
になってにわかに注目されるようになったのは,動物肝における代表的誘導酵素として知られるチトクロムP−
450の発見によるところが大きい“これは,Garhke128)とKlingenberg29)とにより,1958年独自に発見され,
1964年,大村と佐藤30・31)によりヘムタンパク質であることが証明され,還元状態下でCOを結合させると450
mで特異なSor・et帯を示すことからその名がつけられたミクロソ・一ムのチトクロムP−450はミクロソ1−ムの
電子伝達系の末端酵素であり,分子状酸素のうちの1個の酸素原子を直接薬物等の基質に導入し,同時に残りの
酸素原子を水に還元するmixedfunctionoxidaseである。チトクロムP−450は動物や微生物で活発に研究が進め
られてきており,薬物代謝という点からのみならず,酵素化学,代謝調節,膜酵素の生合成,遭伝子解析など,
いろいろな観点から多くの研究者の注目を集めているその理由として,特異なヘム吸収スペクトル,幅広い基
質特異性,臓器特異性と分子多様性,フユノパルビタール,メチルコラントレンをはじめとする特定物質による
著しい誘導性,癌化への関与等があげられる.このように,チトクロムP−450は生理・生化学という立場から
は勿論,物理化学的にも細胞生物学的にも,さらには遺伝学・比較生物学的にも極めて興味深い酵素である.
これまで数多くの種類のチトクロムP−450が動物や微生物から単離,精製されている.こらのチトクロムP−
450は,研究方法や研究目的が相違していることもあって,種々の見方で分類さている.最も妥当と考えられる
分類は,細胞内局在性の違いによって2群に大別することであろう.すなわち,ミクロソーム型とミトコンドリ
ア内膜(または細菌)型に分類することである(図4).前者は一・般にNAD(P)H−−一十NAD(P)H−CytOChromeP−
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− 7 −
450reductase−・・CytOChromeP−450で表されるミクロソINムの電子伝達系を構成する十九 後者はNAD(P)H
一−−NAD(P)H−ferredoxinreductase一十terredoxin−−−−cytOChromeP−450で表わされるミトコンドリア内膜(また
は細菌)型電子伝達系を構成する.ミクロソ・−ム型チトクロムP−450は,さらに,NADPHまたはNADHのい
ずれかのみを電子供与体とする単一電子伝達系型と,NADPHとNADHの両者を電子供与体として要求する複
合電子伝達系型に分類されている(図4).
近年,高等植物の二次代謝系にチトクロムP−450に依存した一層子酸素添加酵素が関与しているという実験
結果が報告されつつある.例えば,未成熟のMaYaChmacrocaゆ紘Sの種子におけるent−kaur−16−eneとその酸化的
誘導体の酸化反応32),エンドウ33),SOrghum幼酋34),Jerusalemartichoke塊茎35),切断傷害サツマイモ塊根25)
における桂皮酸のパラ位の水酸化反応,梢舶′び紹幼常におけるゲラニオ−ルとネロールの10位の水酸化反
応36・37)などである.
これらの報告は,それらの酸素添加活性がミクロソ−ム画分に局在し,NADPHと酸素分
子せ要求し,COにより阻害を受け,その阻害が光により抑制さることを明らかにしている.
高等植物のチトクロムP−450については,その含量が極端に少ないため,単にその存在が示唆されているに
すぎない‖ ただごく最近になって,チ、ユ・−リップ球根からチトクロムP−450を精製したとの報告が発表され
た38)また,NADPH−CytOChromec(P−450)reductaseについてさえも,ミクロソームの標識酵素としてよく使
われているにもかかわらず,電気泳動的に完全に単一・に精製されたという報告はまだみあたらない=Madyastha
とCoscia39)は,CaihaYm肋鵬YOSeuSから部分精製したNADPH−CytOChromec(P−450)reductaseと,同じ材料か
ら部分精製したチトクロムF−450を用い,この両酵素をミクロソ−ムからの脂質に親みこませて,モノテルペ
ンの水酸化酵素系を再構成することに成功している.ノ この結果は,高等植物のミクロソーム画分で検出されてい
る二/次代謝系に関与するいくつかの水酸化酵素系もまた,動物肝ミクロソ−ムで証明されているようなNADPH
→NADPH−CytOChromeP−450reductase−・・・CytOChromeP−450という電子イ云連系を構成していることを示すよ
り直接的な証明として興味深いしかし,以上のことからわかるように,高等植物のチトクロムP−450系の酵
素化学的研究は,動物や微生物の場合に比べて著しく立ち遅れている従って,今後こうした研究が強力に進め
られる必要がある.
前述したように,動物肝の場合には3−メチルコラントレン,フユノパピタール等の薬物が,それぞれに対応
する複数種のチトクロムP−450を顕著に誘導することがよく知られているしかし,高等植物の場合には,こ
のようなチトクロムP−450の誘導に関する研究はきわめて数少なく,従ってまた,有効な誘導剤もまだ見いだ
されていない.ノ 高等植物のチトクロムP−450含意があまりにも少なく,その測定が容易でないことが,こうし
た誘導に関する研究を遅らせているものと考えられる.これまでに報告された高等植物のチトクロムP−450の
誘導に関する研究としては,ジャガイモ塊茎40)やJeruSalemartichoke塊茎3S)における切断傷害に伴う誘導があ
げられる程度にとどまっている”JeruSalemartichoke塊茎においては,ユタノ1−)t/,フユノパルビタ1−ル,
MnCl2および除草剤であるモニュロンやジクロペニルがチトクロムP−450を誘導することも見いだされてい
る4142) .しかし,これらの誘導物質と誘導されるチトクロムP−450の生理学的関係に関しては全くわかってい
ない.このように,高等植物におけるチトクロムfし450の誘導については,系統だった解析が全くなされてい
ないといっても過言でない.既に概説したように,サツマイモ塊根組織では,2種の特有の二次代謝系(テルペ
ノイド合成系とポリフェノール化合物合成系)が種々の外的刺激により顕著に誘導される.それらにより産生さ
れる極めて多様な代謝産物は,全て含酸素化合物であるけ そのうち,前述したように,ポリフェノール化合物の
合成系では,その中間体であるクマール酸のベンゼン環のパラ位の酸素原子は,チトクロムP−450関与のch−
namicacid4Thydroxylaseによって,酸素分子より導入されたものであることが示唆されている.Cirmamicacid4−
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− 8 −
hydroxylaseは高等植物に広範に存在しており,1971年のRussellによる報告を境にチトクロムP−450関与の水
酸化酵素として活発に研究さてきている.これらの研究は,本酵素がミクロソ−ム,つまりendoplasmicr・eticu−
1umに局在することを示してきている.一方,テルペノイド合成系については,Burkaら43)が,HgCl2で処理し
たサツマイモ塊根組織を用い,1802とH2180でのトレーサ1一美験によって,イポメアマロンに含まれる3個の
酸素原子は,全て分子状酸素から由来したものであることを証明した.言い換えれば,イポメアマロン中の3佃
の酸素原子は,全でチトクロムP−450によって導入されている可能性が示唆されたわけである.この結果から
演えきすると,イポメアマロンからイポメアマロ・−ルへの水酸化反応もチトクロムP−450が関与しているので
はないかと仮定することができよう..サツマイモ塊根組織においては,これらの酸素導入反応の他にも極めて多
数の酸素導入反応が広く存在し,代謝産物の構造的,機能的多様性を生み出すのに−・役を担っていることがよく
知られている.そこで,これらの酸素が酸素分子から由来したものかそれとも水から導入されたものかが問題と
なる‖ もし,オキシゲニトーゼ反応によって導入されるのであれば,ニ原子酸素添加酵素によるものなのか,それ
とも仙原子酸素添加酵素によるものなのかが問題となる.そして,もし−原子酸素添加酵素によるものであれば,
チトクロムP−450関与のものなのかフラビン系酵素によるものなのかが問題となる.もしチトクヒムP−450関
与により導入されることがわかったとすれば,そのチトクロムP−450は分類上ミクロソ・−ム型なのかミトコン
ドリア内膜型なのかそれとも全く新しい型に属するものなのかを明らかにする必要がある..そしてさらには,同
一・植物組織内で起こる複数の酸素添加反応が1種のチトクロムP−450によるものなのか,それとも複数種のチ
トクロムP−450によるものなのかを明らかにする必要もある.現在のところ,以上のような問題に関しては,
全く不明のままになっている..チトクロムP−450の誘導に関する問題も含め,サツマイモ塊根組織は高等植物
チトクロムP−450の研究にとって興味ある材料であると考えられる
〔本論文の内容〕
本論文は,以上のような背景をふまえて行ってきたサツマイモ塊根組織のチトクロムⅠし450系酵素の性質や
誘導に関する研究の結果をまとめたものである.すなわち,サツマイモ塊根組織が病傷害刺激を受けた時に誘導
される二次代謝系に着目し,この代謝系に関与するチトクロムP−450系を酵素学的に研究した結果やこの組織
でのチトクロムP−450の誘導に関して検討した結果を記述したものである
まず第2車では,近年高等植物における二次代謝系にチトクロムP−450関与の水酸化反応が含まれているこ
とが明らかになるにつれて,病害サツマイモ塊根組織のテルペン合成系中の酸素導入反応がチトクロムIL450
関与かどうかを検討する必要性がでてきたので,このことをイポメアマロンの酸素添加反応について検討した結
果について述べる.すなわち,イポメアマロンからイポメアマロノ・−ルヘの反応がチトクロムP−450関与の水
酸化酵素−ipomeamarone15−hydroxylase−によって触媒されていることを説明する.そしてさらに,この酵素活
性が病傷害刺激によって誘導出現すること,病傷害刺激には複数種のチトクロムfし450が存在するらしいこと
についても述べる。
次に第3章では,サツマイモ塊根組織でのチトクロムP−45Pの誘導について調べた結果を説明する第2章
でチトクロムP−450関与水酸化酵素Mipomeamarone15−hydroxylaseとcinnamicacid4−hydroxylase一括性が組織
が病傷害刺激を受けると誘導的に出現増加することを説明するが,このことはチトクロムP−450それ自体が病
傷害刺激で誘導される可能性があることを示唆している.そこで,サツマイモ塊根組織で,どのような刺激に
よっでチトクロムP−450が誘導されるのかを調べた結果を説明するり そして,チトクロムP−450の誘導とテル
ペン蓄積屋の間に相関関係がみられたことについても述べる
第4車においては,ipomeamarOne15−hydroxylaseとcinnamicacid4−hydroxylaseの両チトクロムP−450関与の
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− 9 一
水酸化酵素の,サツマイモ塊根細胞内での局在性について調べた結果について説明する。そして,Cinnamicacid
4−hydroxylaseの細胞内局在内の特殊性を強調すると共に,これら両水酸化酵素のチトクロムP−450が互いに異
なる証拠が得られたことについても述べる.
第5章においては,サツマイモ塊根組織のチトクロムP−450系酵素の酵素化学的諸性質を明らかにするため
に,NADPH−CytOChromec(P−450)reductaseとチトクロムP−450を可溶化し精製することを試みた結果につい
て説明する・前者を完全に精製することは成功したが,後者についてはその可儀化のみが成功したにすぎなかっ
た。従って,NADPH−CytOChromec(P−450)reductaseの性質を中心にして説明する…
第2章Ipomeamarone15−hydroxylaseの同定とその性質
第1節 序
サツマイモ塊根組織は黒斑病菌の感染やHgC12での処理を受けると,イポメアマロンをはじめとする多量の
抗菌性フラノセスキテルペンを雁病部に蓄積すがサそれらの生合成経路に関しては,瓜谷を中心とするグ
ル1−プとBuI・kaを中心とするグル・−プにより,精力的に研究が進められてきたけ その結果,サツマイモ塊根組
織におけるフラノセスキテルペンの生合成経路は,解糖系やトリカルボン酸サイクルのような−㌧次代謝系でみら
れる根幹のはっきりした経路ではなく,経路の途中で様々に分岐し,さらには合流する網状の代謝系であること
がかなり確実になってきた44)(図1参照)..この複雑多岐に分岐した代謝系に含まれている多種のフラノセスキ
テルペンは,フラン環の酸素以外にも複数個の酸素原子を保毒した含酸素化合物である‥ これらの酸素原子が,
どの段階でどのような機構で挿入されるのか,またこうした酸素原子の挿入が,生理学的にどのような意味を
持っているのかについては,酵素学的知見が極めて乏しい現在,まだ推論の域を出ていないのが現状である…
1982年,BurkaとThorsen43)は,同位体酸素(180)で標識した分子状酸素を水とHgC12で処理したサツマイ
モ塊根組織に与え,組織で合成され蓄積されたイポメアマロンのマススペクトルを解析した.そしてその結果か
ら,イポメアマロンに含まれる3個の酸素原子は分子状酸素から由来したものであって,水やフラノセスキテル
ペンの前駆体であるフ・7ルネソ−ルの酸素原子から由来したものではないと結論した.つまり言い換えれば,イ
ポメアマロンの3個の酸素原子は,チトクロムfし450に依存した一原子酸素添加酵素かそれに類似した酸素添
加酵素によって導入されることを示唆した.なお,ファルネソ−ルの1位の水酸基の酸素原子が,フラン環が形
成される際単純にそのまま組みこまれるのではなく,その前にいったん離脱し,新たに分子状酸素から別の酸素
原子が導入されて,フラン環を構成する酸素原子となるという事実は極めて興味深い“すなわち,この−\見静的
にもとれる酸素原子は,実際は生体内において,酵素反応と密接にからみ合った離脱と添加の産物であることを
示していて興味深いものがある‖
一方,1982年,大羽ら45)は14cで標識した放射性イポメアマロンを用いてトレーサ・一美験を行い,サツマイ
モ塊根組織におけるイポメアマロンの代謝変換に関する結果を報告した.それによると,イポメアマロンは切断
傷害のみを受けた組織において効率よく代謝され,切断後HgC12で処理した組織や黒斑病菌を感染させた組織
では,その代謝病性はむしろ弱いという.また,切断傷害組織に黒斑病菌を感染させた後,その組織でのイポメ
アマロンの代謝活性とテルペン蓄積の経時変化を調べた実験で,イポメアマロンの代謝活性が減少するとともに,
テルペンの蓄積が増大していくことが観察されている.大羽らは,これらの結果から,以上のような加∽加で
観察されるイポメアマロンの代謝はテ)L/ペンの分解に関係するものであり,その酒性は,3−hydroxy−3−methyl−
glutarylCoAreductase活性と共に,テルペン蓄積の調節の一・方の要となっているのではないかと推論した.なお,
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ー10−
マススペクトルなどでの解析によって,イポメアマロンの代謝での最初の産物はイポメアマロノ1−ルであること
が証明された‖
近年,高等植物における二次代謝にチトクロムP−450に依存した水酸化酵素系が関与しているとの研究成果
が報告されつつある病傷害サツマイモ塊根親織におけるポリフェノ・−ル化合物の合成に一・役を担っているcin−
namicacid4−hydr・0ⅩylaseがチトクロムP−450関与の水酸化酵素であることが示されたのもその1例である25).
しかし,病害サツマイモ塊根組織における二次代謝系としてポリフユノ1−ル化合物合成系と並び称されるテルペ
ノイド合成系に関しては,酸素添加反応が多いにもかかわらず,何ひとつ酵素学的知見が得られていなかった.
そこで本研究では,まずこのテルペノイド合成系にチトクロムP−450関与の酸素添加反応があるかどうかを探
ることにした
前述したように,BurkaとThorsen43)はイポメアマロンの3個の酸素原子は,分子状酸素から由来したもの
であることを示した.そこで,おそらくイポメアマロノ−ルの15位の酸素原子もまた分子状酸素から由来するの
であろうと考えた.そして基質であるイポメアマロンが容易に調製できることを考慮し,この酸素添加反応がチ
トクロムP−450関与によるものかどうかを検討することにした.本章では,こうした研究の結果を記述する‖
すなわち,大羽らによって報告されたサツマイモ塊根組織でおこるイポメアマロンからイポメアマロ・−ルへの変
換が,無細胞抽出系で酵素的に起こることを証明し,本酵素をipomeamarone15−hydroxylaseと命名したこと,
ipomeamarOne15−hydroxylaseはチトクロムP−450が関与した−∵原子酸素添加酵素であると確認したこと,
ipomeamarone15−hydroxylaseに関与するチトクロムP−450はcinnamicacid4−hydroxylaseに関与するそれとは別
種のものであり,したがってサツマイモ塊根組織には複数種のチトクロムP−450が存在することを明らかにし
たことについて述べる.
第2節 材料および実験方法
〔植物材料〕
静岡県伊藤農場で収穫されたサツマイモ塊根(々♂椚♂紹おおぬゞ,品種」農林1号)を使用した小 便用直前まで,
12−140cで貯蔵しておいた
〔租ミクロ・−ム画分の調製〕
サツマイモ塊根を流水で十分洗い,005%の次亜塩素酸ナトリウムで15分間消毒した後,再度流水で十分洗浄
したその某組織より,厚さ3mmのスライス40gを調製し,290cの湿潤条件下で24時間インキエペ・−卜した..
次に,それを05Mスクロ−ス,1mMEDTA,1%(w/v)イソアスコルビン酸ナトリウム,ポリクテールAT
(新鮮組織重最の5分の1畳)と05%(w/v)BSAを含んだ100mlの50mMTris−HCl緩衝液(pH85)中で
ウオ−リングプレンダ・一により最高速度で15秒間,6回ま砕した.ま砕液を2重のナイロンか−ゼでこし,ろ液
を10,000×g,15分間遠心した上晴を05Mスクロ1−ス,1mMEDTAと1mMDTTを含んだ50mMTris−HCl
彼衝汲(pH85)で前もって平衡化させておいたゼファデブクスG−25カラム(全ペソド容:500mJ)にかけ,同
じ薇衝液で溶出した.溶出したタンパク質画分を2時間100.000×gで遠心し,沈殿は05Mスクロースと0.3
mMDTTを含んだ5mlの50mMTris−HCl薇衝液(pfI&5)に懸濁し,それを粗ミクロソ1−ム画分とした.後述
するが,イポメアマロンのイポメアマロノ・−ルヘの代謝活性は,ミクロソ・−ム画分に局在することから,本租ミ
クロソーム画分を酵素液として用いた.
切断傷害または黒斑病菌感染後の酵素活性の経時的変化を見る実験では,酵素液は以下のように調製した.ま
ず,柔組織から厚さ10∼15cmの輪切り切片を調製した.切断傷害に関する実験では,そのまま290cで目的
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−11−
の時間インキュ.ベ・−卜した黒斑病菌感染組織に関する実験では,輪切り切片の表面に黒斑病菌(Cβ和わ叩Sぬ
jmbYiataEuandHalst)の内生分生子(約1×107個/ml)を接種後,同様に一億時間インキ、エペ1−トした,.イン
キエペ−ション後,切断傷害の場合は10−15Il皿の厚さで表面の組織を,黒斑病菌感染の場合は雁病部に隣
接した健全組織を10−15mmの厚さで切り取った“切り取った組織より,上記の方法で酵素液を調製したが,
膜画分全体の酵素活性をみるために,10,000×g,15分間の遠心を300×g,10分間の遠心に変更して行った.
以上の操作のうち,組織のま砕以降の操作は0−40cで行った…
〔租テルペン画分の調製〕
サツマイモ塊根を水で十分洗い,その某組織から輪切り切片(厚さ10−15cm)を調製したその切断面に
黒斑病菌の内生分生子懸濁液(約1×107個/mJ)を塗布し,290cの湿潤条件下にて3日間インキエペ・−トした.
黒斑病菌の感染により褐変化した雁病部をカミソリで切り取り,それより租テルペン画分を抽出した.まず,雁
病組織をクロロホルムーメタノ・−ル(1:1,Ⅴ/v)中でウオ・−リングブレンダーにより最高速庶で約3分間ま砕し,
そのま砕物をグラスフィルタ−(3G)で減圧ろ過した“残さについてこの操作をさらに2∼3固練り返した,次
にろ液を合わせ,その約04倍容の蒸留水を加え激しく振とうした.それを2,500rpm,15分間の遠心にかけクロ
ロホルム層を分取し,減圧蒸留によりクロロホルムを除去した.最終的に得られた油状物質を租テルペン画分と
した.
〔イポメアマロンの精製〕
小国ら46)の方法に多少改変を加え精製した小 まず,租テルペン画分をTLC板に付与し,乃−ヘキサンー酢酸
エチル(8:2,Ⅴ/v)で展開し,イポメアマロン画分をかき取り,クロロホルムメタノ1−ル(1:1,Ⅴ/v)で抽出し
た.同じ操作をさらに2回行った..最後に,光一ヘキサンー酢酸エチル(9:1,Ⅴ/v)の展開溶媒を用いたTLCに
より精製を完了した.
〔14c−標識イポメアマロンの調製〕
“租テルペン画分の調製”の項で述べた方法により,サツマイモ塊根組織に黒斑病菌の内生分生子を接種し,
290cの湿潤条件下で36時間インキエペ1−卜した.次に,それより,片面に雁病部を含むように20個のディスク
(20×2mm)を切り出した.蒸留水を湿らせたろ紙を敷いたベトリ皿にステンレスの金網を置き,その上に雁病
組織が下になるようにディスクを載せた..ディスクの上面にむらなく 卜14c一酢酸ナトリウム水溶液(50/JCi/
血sc)を塗布し,ただちにベトリ皿でふたをし,それをプラスチソク製の密封容器に入れ30◇cでインキエペ1−
卜した,.インキエペ・−ト中に発生する14co2を捕獲するために,ベトリ皿とプラスチック容器の両方に20%
KOH水溶液を入れた器を入れておいた.6時間インキエペ・−卜した後,“租テルペン画分の調製”の項において
記述した方法により,雁病組織から放射病性をもつ租テルペン画分を調製したり この画分より“イポメアマロン
の精製”の項で述べた方法とおなじ方法で14cで標識されたイポメアマロンを精製した‥ 精製標品の比放射活
性は55×1011dpm/molであった..
〔イポメアマロノ1−ルの3,5一ジニトロベンゾイル誘導体の調製〕
イポメアマロノールの3,5−ジニトロベンゾイル誘導体の調製は加藤ら4‘7)の方法に従った‥部分精製したイポ
メアマロノ・−ルをシリカゲルを入れた減圧状態のデシケ一夕・−内で−・昼夜乾燥した次に,それを乾燥させたジ
エチルエ−テルに溶かし,乾燥させたビリジン中で3,5−ジニトロベンゾイルクロライドと室温で4時間反応さ
せた反応液を2NHClで3回,蒸留水で2回,1MNaHCO3で3回,蒸留水で2回順次洗い,さらに飽和
NaCl水溶液で水を取り,最終的にNa2SO4で脱水した.減圧蒸留してジュチ)L/エーテルを除去し,シリカゲル
カラムクロマトグラフィ1−,TLCを経てその残留物からイポメアマロノ1−ルの3,5−ジニトロベンゾイル誘導体
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−12−
を精製し不定形結晶を得た..それを370cのジエチルエ1−テルに飽和状態になるように溶かし,室温にまでゆっ
くり冷却して無色透明の針状結晶を得た.精製標品のNMRスペクトルは加藤ら47)の報告と一徹した‖ また,
融点は820cであり同報告よりもむしろ1度高く,純粋なイポメアマロノ・−ルー3,5−ジニトロベンゾエイトであ
ると判断した.
〔Ipomeamar・One15−hydroxylase反応の解析〕
痛憶測走d50mMTris・HCl(pH80),05Mスクロ−ス,1mMDTT,62pM放射性イポメアマロン(約
50,000dpmのイポメアマロンを前もって01mlの蒸留水−アセトン〈50:1,V/v〉に溶かしたもの),087mM
NADP+,15mMグルコ・−ス6−リン酸,glucose6−phosphatedehydrogenase(03酵素単位)および酵素液(1−
4mgpr・Otein)を含んだ全容15mlの反応液を調製し,300cで一・定時間反応させた”反応は酵素液の添加により
開始し,35mJのクロロホルムーメタノ・−ル(1:1,Ⅴ/v)の添加により停止した..反応の停止の際,少量の粗テ
ルペン画分を添加し,反応生成物の非酵素的な分解を防ぐとともに,それを分離する時の示標とした。2,500
rpmで1時間遠心してクロロホルム層を分取し,残りの水−メタノ・−ル層からさらに15mJのクロロホルムで
再度反応生成物を抽出したい 分取したクロロホルムを合わせ窒素気流によりクロロホルムを気化させた‖ 残留物
は汀LC紙に付与し,乃−ヘキサンー酢酸エチル(6:4,Ⅴ/v)で6cm,次に乃−ヘキサンー酢酸エチル(9:1,Ⅴ/v)
で15cm多重展開し,冨的とする画分を切り取り,5mlのシンチt/一夕一(008gPPOと4mgPOPOPを5ml
のトルエンに溶かしたもの)中で放射活性を測定した.
反応生成物の同定−(TLCによる同定)125mgの放射活性をもたないイポメアマロンを基質として用い,
標準のipomeamarone15−hydroxylase酒性測定の10倍の規模で反応させた.300c,1時間のインキエペ・Rション
後,35mJのクロロホルムーメタノール(1:1,Ⅴ/v)で反応を停止した.2,500rpmで1時間遠心しクロロホル
ム層を分取し,残りの水−メタノ−ル層をさらに15m上のクロロホルムで処理した.分取したクロロホルム層を
合わせ減圧蒸留した残留物をクロロホルムーメタノ・−ル(1:1,Ⅴ/v)に溶かしTLCプレートにスポットした..
それをn−ヘキサンー酢酸エチル(1:1,V/v)で8cmまで,次にn−ヘキサン一散酸エチル(8:2,V/v)で16cm
まで多重展開し,そのプレートにEh点ch,sreagent48)を噴霧して発色させた.
(結晶による同定)放射性イポメアマロンを\基質として得られた放射活性を持った反応生成物を,上記の方法
により,3.5−ジニトロベンゾイルクロライドと反応させ,その誘導体を調製した.それを放射酒性を持たない既
知のイポメアマロノ−ルー3,5−ジニトロベンゾエイトと混合し,ジュチルエーテル中で3度再結晶化を繰り返し,
そのたびに結晶の比放射活性を測定した
気相および光の調節一酵素反応におよぼす反応系におけるガス組成の影響を調べるために,以下のように密
封系にて目的の気相に調節した小 反応液を入れたスピッツ遠心管をシリコン栓で封じ,それに三方コックを継い
だ注射針を刺し込んだ三カコックの注射針に継いだ口とは反対の口のうち−・方を封じ,他の一・方をロ・一夕リ・−
ポンプに継ぎ,1分間遠心管内の空気を排出した.次にロータリ・−ポンプ側の口を封じ,それと同時に開封され
る口から窒素ガスを注入した.この操作をもう一・回行い,3度目にロ・一夕リ1−ポンプで1分間引いて減圧したも
のを無酸素状態とし,目的とするガス組成となるようにガスを注入した反応は遠心管をアルミホイルでおおい,
光の当たらぬ条件下で行った,ただし,光の効果を見る場合には,アルミホイルではおおわず,遠心管の下に銃
を敷き,遠心管より30cmの距離から500Wの写真撮影用ランプを照射して反応を行った.
〔その他の酵素活性の測定〕
Cinnamicacid4−hydroxylase−田中ら25)の方法Ⅰに多少修正を加えて測定したイポメアマロンの変わりに
3−14c−桂皮酸を基質として使用した以外は,ipomeamarone15−hydroxylaseの楕性測定の場合と同じ反応で1時間,
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l−13 −
300cで反応させた“反応は6NHClを04ml添加して停止し,その際10/JmOlのP−クマ1−ル酸を添加した
酸変性したタンパク賀は2,500rpm,30分間の遠心で沈殿させ,上滴を分取した沈殿したタンパク質を15mJ
の蒸留水で洗い,2,500rpm,30分間の遠心にかけ上摘を取る操作を2回線り返し行った.分取した上清を合わせ,
5mJの酢酸エチルで3回抽出し,減圧蒸留により酢酸エチルを除き,残留物をエタノ−ルに溶かし,それをク
ロマトグラフィ1−用ろ紙(ToyoNo51)に載せた.そのろ紙をベンゼンー酢酸一蒸留水(2:2:1,Ⅴ/v/v)を撹
拝後の上層液を用いて20cm,25−300cで展開し,目的画分を切り取った放射病性の測定はBray,ssolution49)
を用いた
NADPH−CytOChromecreductase−Masters50)の方法により測定した.222mMNaN3,028mMNAI)PH,
333pMアンチマイシンAおよび011mMEDTAを含む56mMリン酸緩衝液(pH77)027mlに9mg/mlチ
トクロムc20〟Jと酵素液10/JJを添加して250cで反応させた.括性はチトクロムcの還元による550nmの吸
収の増加により測定した.
NADH−CytOChromecreductaseLMackler51)の方法により測定した”222mMNaN3,027mMNADHおよび
333FLMアンチマイシンAを含んだ22mMリン酸緩衝液(pH75)027mlに9mg/mlチトクロムc20iLlと酵
素液10/JJを添加して250cで反応させた.病性はチトクロムcの還元による550nmの吸収の増加により測定
した
〔タンパク質の定義〕
Lowry52)らの方法に従い,BSAを標準タンパク貿として定量した
第3節 実験結果
〔Ipomeamarone15−hydroxylaseの同定〕
イポメアマロンの代謝活性は切断後1日を経た傷害
サツマイモ塊根組織において最も高いという大羽
ら45)の報告に従い
,その組織より粕ミクロソーム画
分を調製した“これを酵素液と仮定し,14cで標識し
た放射性イポメアマロンを基質として300cで3時間
反応させた 反応液より抽出した粕テルペン画分を
ITLCにかけ,1cmごとの放射活性を測定したところ,
未反応のイポメアマロンによる高い放射活性の他に,
比較的極性の高いイポメアマロノ一ルと考えられる領
域に高い放射活性が検出された。その他の画分にはほ
とんど放射清′性は検出されなえった
反応生成物の同定に2種の方法を用いた第1の方
法は,反応生成物をTLCにかけ,EhrLich’sreagentで
発色し,直接その展開状況と色を判断して同定する方
法であるり 図5のレーン3は,放射病性を持たないイ
ポメアマロンを基質として用い,300cで1時間反応
させたもののクロマトグラムを示したものである肌
色を呈するイポメアマロン以外に,イポメアマロノ・−
Fig‖51Thin−1ayer chromatogr・amS Of the substances
extracted with chloroform after incubation
Lanesl,2,3,4and5:withoutsubstrate,with
heated(1000c,forlOmin)enzyme,withenzyme
(complete),ipomeamarOne(Ip)itself(without
incubation)andcrudesesquiterpenesextracted
fr’Omin毎cted root tissue(withoutincubation),
respectivelySpotsin1anelwereal1upidsin
the enzyme PreparationVisua上zed colors of
Ip,ipomeamaronol(IpOH)andlipidsweresahon
Orange,purpleandblue,reSpeCtively,andeffbc−
tive for distinction of thelI substances A and
DHIp:COmpOnentAanddehydroipomeamarOne,
r−eSPeCtively
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一14−
ルの位置にそれ特有の紫色のスポットが観察された・なお,図5のレーン1から3にかけて共通してみられる青
色と黄緑色のスポットは,ミクロソームに由来する脂質が発色したものである・1000cで10分間熱処理したミク
ロソ・−ムを用い同様に反応させた場合には,反応生成物(イポメアマロノ・−ル)に相当するスポソトは検出され
なかった(図5のレーン2)”データは示さないが,NADPH再生系を反応液から除去した時または00cで反応
させた時にも,紫色のスポソトは検出されなかった・以上の結果より,切断傷害サツマイモ塊根組織より抽出し
た粗ミクロソ・−ム画分とイポメアマロンをインキエペ・−卜するとイポメアマロノ・一ルが生成すること,その生成
にはミクロソ−ムに存在する酵素が関与している可儲性が極めて高いことがわかった
上述の結果をさらに確実にするために,第2の方法を用いて反応生成物の同定を行った,14cで標識した放射
性イポメアマロンを基質として反応を行い,それによって得られる放射性反応生成物を3.5−ジニトロベンゾイ
ル化し,既知のイポメアマロノ−ルー3,5−ジニトロベンゾエイトを担体として再結晶化を繰り返し,その比放射
活性を測定した(表1)..担体にするために合成したイポメアマロノールー、3,5−ジニトロベンゾエイトはNMRス
ペクトル,融点(820c)の結果から純品であることを確認した“3回再結晶化したにもかかわらず,その比放射
活性に減少がみられなかった(表1)このことから,反応生成物の3,5−ジニトロベンゾイル誘導体は,イポメ
アマロノ”・・−−・ルーL3,5−ジニトロベンゾエイトであると判断した..よって,この放射性反応生成物はイポメアマロ
ノ一ルであると判断した
次に,租ミクロソーム画分の義および反応、時間と反
応生成壷の間の関係を調べた.粕ミクロソ1一ム画分量
および反応生成義との間に直線関係を示すことが確認
−・・−− \
1pOmeamarOne
された(データ省略)..
以上の結果をもとに,イポメアマロンからイポメア
J
マロノ・−ルヘの水酸化反応は,酵素的に触媒されるも
Tablel.SpeciLic radioactivities ofthe product by
recrystallizationof3,5−dinltrobenzoylde−
rivative
Recrystallization
1pOmeamarOne
15−hydroxylase
畔凡⊥OH
Specificradioactivity
lpOmeamarOnOI
(dpI血g)
Fig.6Enzymic conversion fromipomeamarone to
lpOmeamarOnOIcatalyzedbyipomeamarone15−
hydroxylase丘Om Cuトir如r’ed and CeYatOqγStis
Pmbnaia−inLectedsweetpotatoroottissues
のと結論し,本酵素をipomeamarOne15−hydroxylaseと命名した(図6).なお,以下でのべる酵素活性は,反応
生成壷と酵素量,反応生成量と反応時間の間に直線性が成り立つ範囲内で測定した
〔Ipomeamarone15−hydroxylaseの性質〕
Ipomeamarone15−hydroxylase晒性はミクロソ1−ム,特に粗面ミクロソ−ム画分に分布していた.これに関し
ては第4章で詳細に述べる.
IpomeamarOne15−hydroxylaseの低温における安定性を調べたところ,T800cにおいては10日間ほとんど失清
が見られなかった.よって,酵素液は−800cにて凍結保存することにした.
Ipomeamarone15−hydr・0Ⅹylase病性におよぼす反応液のpHの影響をpH65からpHlO Oにかけて,3種類の
緩衝液を用いて調べた(図‘7)その結果,本酵素の活性の至適pHは80であることがわかった
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−15 −
50%
l
合名き忘A竜 一 む 出
l
︵占竜dU M ■ ○ − × ︶ 音 名 ぷ
100
∞
7.0
80
9.0
10‖O
6 5 4 3
−Log[NADH]
Fig”8lEffectofcombinationsofNADPHwithNADHon
pH
Fig7・EffectofpHonipomeamarOne15−hydroxylase
activity. The enzyme activity was assayed as
describedin“MaterialsandMethods”infol10W−
ing buffer solutions:(○),50mM potassium
phosphate;(□),50mM Tris−HCl;and(△),
50mMglycine−KOH・・
lpOmeamarOne15−hydroxylase activity… Reac−
tionswerecarTiedoutasdescribedin“Materials
and Methods”in rnixtures containing both
NADPH and NADH which were in various
concentrations asfonows:(●),OM NADPH;
(○),1FLMNADPH;(△),5/‘MNAI)PH;(ロ),
10FLMNADPH;and(×),1mMNADPH… The
concentrationofNADPHisexpressed,aSSumng
Table2.E鮎ctsofpyridinenucleotidesonlpOme−
thatNADP+addedis血mediatelyreducedto
amarOne15−hydroxylaseactivity
NADPHbyglucose6−phosphatedehydrogenase
Relative
Addition
Deletion
activityb
The activityis expressed as per’Centage Of
activitywith1mMNADPHandnoHADH
(%)
4
とはしなかった.ただし,1mMのNADPHよりも1
mMのNADP+を含んだNADPH再生系の方が高い
活性を得ることができた.NADHだけでは活性が得
5
4
8
NADPH rgs
NADPHrgs
3
NADPH rgs
NADP十(1mM)
NADPH(0…5mM)
NADH(0い5mM)
NADPH(0.5mM)+
NADH(0.5mM)
ジンヌクレオチドの効果を調べた(表2).本酵素は
3
NADPH rgs
NAl)PHtgS
Ipomeamarone15−hydr・0Ⅹylase活性におよぽすビリ
活性発現にNADPHを必要とするが,NADP十を必要
3
NADPH(1mM)+
NADH(1mM)
8
NADPH柑S
7
None
NADPH(1mM)
NADH(1mM)
1 3
0 6
1
O
None(complete)
NADPH rgsn
NADPHr■gS
None
aNADPH rgs,NADPH regenerating system(1
mMNADP+,2mMglucose6−phosphateandOl3
られなかったが,NADPHに併用して用いた場合には
NADPHだけの活性よりも高い活性を得ることができ
たこの関係について詳しく調べた結果を図8に示す
unltglucose6−phosphatedehydrogenase)l
上述したように,NADPHが存在しない時は,NADH
bThe activityis expressed as percentage ofthe
activityofthecompletesystem,Whichisdescribed
を投与しても活性は無視できるほどであった.しかし,
under“MaterialsandMethods.”
1/∠MのNADPHが存在する時には,1〟Mを臨界点
としてそれを越える濃度のNADHは著しく活性を増
大させた.しかし,NADPHの濃度が増加するに伴い,NADHによる酵素の活性化効果は減少したl・NADPHの
濃度を1mMにまであげると,NADHによる活性化効果はほとんどみられなかった・以上のことを要約すると,
NADPHの濃度が本酵素の最大活性を与えるのに十分でない時には,共存するNADHは最大活性の範囲内で活性
化するといえよう”これらの結果は,ミクロソームにおけるNADPHを電子供与体とした電子伝達系とNADH
を電子傾与体とする電子伝達系との間で起こるsynergisticな相互作用を反映するものと思われる・他の高等植物
においても,類似の結果がknureneoxidaseについてHassonとWest53・54)によって報告されている”
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ー16−
イポメアマロンとNADPHの濃度の逆数に対するipomearnarOne15−hydroxylase活性の逆数をプロソトし,そ
れよりKm借を求めた.イポメアマロンに対するKm値は約60/∠M,NADPHに対するKm値は約2FLMであっ
た…
IpomeamaIOne15−hydroxylase病性におよぼす種々の化学物質の影響を調べた(表3)lチトクロムP−450以外
のヘム酵素の典型的阻害剤であるKCNは酵素活性を阻害せず,むしろ約15倍に増大させた.表には示さない
が,1rnMNaN3は活性に影響を与えなかった.エンドウ幼酋のcinnamicacid4−hydroxylase活性を27%阻害する
と報告されているα,α′−ジビリジル33)は,最終濃度1InMにおいても活性にほとんど影響を与えなかった.SH
酵素の典型的阻害剤であるP−クロロマ・−キュリl一安息香酸は,低濃度で楕性を著しく阻害したIHgC12,CuC12
の重金属塩を同様な意味で使用してみたところ,これらも顕著に活性を阻害した.対照としてMgC12を使用し
たが,これは活性にほとんど影響を示さなかったミクロ1−ムの電子伝達系から電子を奪うと考えられるチトク
ロムcとP−ベンゾキノンは本酵素活性を著しく低下させた“Pottsら34)はsorghum幼苗のcirmamicacid4−hy一
血・0Ⅹylaseが♪−ベンゾキノンによって効果的に阻害されることを報告している“表には示さないが,02%(Ⅴ/v)
トリトンX−100で晒性は74%失活した.以上の結果は,ipomeamar・One15−hydroxylaseがミクロソームの電子イ云
達系よりなる酵素であることを強く示唆しているす
Table3”E鮎ctsofreagentsonipomeamarOne15− なわち,イポメアマロンが水酸化されてイポメアマロ
hydroxylase activity DTT and EDTA
wereremoved血・OmreaCtionmixtures.
Addition
ノ・−ルになる反応は,ミクロソ・−ムのチトクロムP−
Final
Relative
concentration activitya
(mM)
450に依存した−原子酸素添加酵素により触媒される
ことを示唆している
(%)
8 8 6
4
0 4 0 0
1
1
1 1
1
0
1
0
None(complete)
KCN
1
a,α′−Dipyridyl
0
1
Gasm玩ture
(%)
0
A止
0
N2(100%)
5 0 6 0
0 2 9 3 7
1
0
1
MgC12
Cytochromec
P−Benzoquinone
2 4 1 5 8
1 1 9 1 2
1
HgC12
CuC12
Relative
aCtivitya
9
1
benzoic acid
9
P−Chloromer’Curi−
1
α,a′−Dipyridyl
Table4.Ⅰnl1ibition oflpOmeamarOne15−hydro−
Xylase activity by car’bon monoxide and
itsr’eVerSalbylight
aThe activitylS eXpreSSed as per’Centage Oithe
aThe activityis expressed as percentage ot the
activity of the complete system.
activityofakircont]rOl.
5
♪−Benzoquinone
02(15%)+N2(85%)
CO(15%)+02(15%)+N2(70%)
CO(15%)+02(15%)+N2(70%)+hght
2
5
上記の示唆をより確かなものとするために,ipomeamarone15−hydroxylase活性における分子状酸素の役割,
活性におよぼすCOの影響,その影響におよぼす光の効果について検討した(表4).反応系の気相の02/N2
比を025(つまり空気の組成)から0略0へと減少させると,気相が空気の時の活性に対する相対酒性は,
それぞれ,90%,25%と減少した.この実験では,02/N2比が0の時25%の相対活性が検出されたが,これは
反応系中の02をN2で完全に置換できなかったためと思われる.反応系中の02をより注意深くN2で置換し
た別の実験では,全く活性がないことが確かめられたよって,イポメアマロンからイポメアマロノ・−ルへの水
酸化反応には,分子状酸素が必要であることがわかった.15%02,85%N2からなる気相の場合の酵素活性を
100とした時,15%のN2をCOで置換することでその相対活性は40に減少した。しかし,反応時間中反応液に
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−17一
光を照射しておくと,COによる阻害効果は緩和されその相対活性は78となった.この顕著なCOによる阻害と
光による阻害の綾和現象は,イポメアマロンからイポメアマロノ−ルへの水酸化反応にヘム酵素が直接関与して
いることを示している.以上の結果により,ipomeamarOne15−hydroxylaseはフラビン系の一\原子酸素添加酵素
ではなく,チトクロムP−450関与の一層子酸素添加酵素であると判断した.
〔IpomeamarOne15−hydroxylaseとc血amicacid4−hydroxylaseの関係〕
Ipomeamar・One15−hydroxylaseがチトクロムP−450関与の一風子優素添加酵素であったので,同じくチトクロ
ムP_450関与の一原子酸素添加酵素であるchamicacid4−hydroxylase25)と同じ酵素であるかどうかを調べた。
すなわち,ipomeamarone15−hydroxylase活性におよぼす桂皮酸の効果とcimicacid4−hydroxylase活性におよ
ぼすイポメアマロンの効果を調べ,それぞれ括抗的阻害を示すかどうかを調べた(表5と6).反応液がipo−
meamarone15−hydroxylaseの基質として36FLMの放射性イポメアマロンを含んでいる時,基質の28倍の濃度に
相当する桂皮酸(1mM)を同時に添加してもほとんど酵素痛性に影響を与えなかった(表5).一方,Cinnamic
acid4−hydroxylaseの場合には,基質である放射性桂皮酸の濃度(36pM)の約30倍以上の濃度のイポメアマロン
で,その括性が阻害されることが観察された(表6).しかし,添加したイポメアマロンの濃度が基質の約300倍
(1OmM)の時でも,その阻害度はわずか30%以下であった‖以上の結果は,チトクロムP−450が関与するこれ
ら2種類の水酸化酵素は,互いに異なる酵素であり,同じタンパク質種ではないことを示唆している.言い換え
れば,サツマイモ塊根組織には少なくとも2種類以上のチトクロムP−450が存在することを示唆しているとい
える
Table5… EffectofcinnamicacidonlpOmeamarOne15−hydroxylaseactivity‖ Thereac−
tion m反ture contained36FLM[14c]ipomeamarOne aS the substrate ofipo−
meamarOne15,hydroxylase。The reaction conditions ar’e describedunder
〃MaterialsandMethods…”
Relativeactivitya
Addition
Experiment 1
Experlment2
(%)
(%)
7 5 4
0 9 9 9
1
0
None(complete)
Ci皿amicacid
Cinnamic acid
Cinnamic acid
a Theactivityisexpressedaspercentageoftheactivityofthecompletesystem.
Table6.E鮎ctofipomeamarOneOnCinnamicacid4−hydroxylaseactivity。Ther・eaCtion
mixtur・eCOntained3‖6FLM[14c]cirmamicacidasthesubstateofcinnamicacid
4−hydroxylase.0therwise,theincubationconditionswerethesameaSthose
fortheexperimentsdescribedinTable5
Addition
Relativeactivitya
Fhd
concentr・ation
Experiment 1
(mM)
Experiment2
(%)
O‖1
O.5
l。0
a Theactivityisexperessedaspercentageoftheactivityofthecompletesystem
0 8 8 7
Ipomeamajrone
Ipomeamajr’One
0 8 8 3
1
IpomeamarOne
0 9 6 5
0 8 7 7
1
None(complete)
(%)
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ー18一
〔病傷害サツマイモ塊根組織におけるipomeamaIOne15−hydroxylase活性の変化〕
切断傷害を与えたサツマイモ塊根組織(傷害組織)および黒斑病菌を感染させた親織の雁病部に隣接する健全
部位(病害組織)において,ipomeamarone15−hydroxylaseおよびその他のミクロソ−ムの酵素滴性が切断後お
よび感染後経時的にどのように変化するかを調べた(図9A,B).IpomeamarOne15−hydr・OXylaseとcinnamicacid
4−hy血・0Ⅹylaseの両活性は,共に新鮮組織では検出できなかった.しかし,雨滴性は病傷害両組織でほとんど潜
伏基質なしに急激に増大した..そしていずれの組織,いずれの活性の場合でも,1∼15日で最大値に達し,それ
以後は減少した.この減少速度は雨滴性の場合とも,病害組織の方が顕著であったぃ 病害組織におけるipo−
meamarOne15−hydroxylase滴性の最大値は傷害組織におけるそれの約5倍であった。.この結果は,大羽ら45)に
よって報告された結果,すなわちよ〝〝よ〃0でのイポメアマロンの代謝活性は病害組織よりも傷害組織のカが高い
という結果と相反していた.この実験では,Cinnamicacid4−hydroxylaseの極大活性は,病傷害両組織でほとんど
相違がみられなかった.しかし,実験によっては,病害組織の方が傷害組織よりも約3倍高い結果も得られてい
る..第4章で述べる実験においては,後者の実験結果と符合する結果が得られているので,前者の実験結果はむ
しろ異例な結果であったのかも知れない.
5
S聖︼l≧︼Uく
の
q)
}
長5 U
■く
0
0 1 2 3 4 5
0 1 2 3 4
(Days)
(Days)
Fig.9。Timecoursesofdevelopmentofactivitiesofipomeamarone15−hydroxylaseandcertainmlqrOSOmal
enzymeSandpr・Oteincontentintissuesinresponsetocut一画ury(A)andCerabcystisjmbriaklhdbction
(B).TheenzymeSOlutionwaspreparedandtheactivitieswereassayedasdescribedin“Materialsand
Methods..”(●),ipomeamarone15−hydroxylaseactivity(nmol/gtissueweight瓜);(○),Cinnamicacid
4−hydroxylase activity(rmol/g tissue weightnl);(△),NADPH−CytOChr’Ome C r’eductase activity
(△A55。/gtissueweight/min);(ロ),NADH−CytOChromecrIeductaseactivity(△A55。/gtissueweight/
min);(×),prOteincontent(mg/gtissueweight).
高等植物を含め種々の真核生物で,NADPH−CytOChromecreductaseおよびアンチマイシンA一非感受性
NAI)H−CytOChromecr・eductaseの両酵素は,ミクロソ1−ムの示標酵素として取り扱われており,実際またはミク
ロソ・−ムにおける電子伝達系を構成する主要な成分である.この両酵素の活性は,病傷害両組織共に,10−15
日で極大に達し,その後徐々に減少した..Ipomeamarone15−hydroxylaseおよびcinnamicacid4−hydroxylase雨晴
性は新鮮組織では検出されなかったが,NADPH−CytOChromecreductaseとアンチマイシンAT非感受性NADH−
cytochromecr・eductaseの両酵素については,比較的高い括性が検出された”なお,膜画分のタンパク質含量は
病傷害両組織で増加し,その増加率は傷害組織よりも病害組織の方が高かった.
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−19 −
第4節 考 察
〔イポメアマロンの代謝に関与する酵素としてのipomeamarOne15−hydroxylaseの同定〕
切断後1日間,300cでインキエペ−卜したサツマイモ塊根組織切片より調製した租ミクロソ1−ム画分を用い,
イポメアマロンが代謝されるかどうかを調べたところ,加=戒閃で観察された代謝速度(3−4nmol/gtissue
weight・h)に匹敵する速さ(2−3nmol/gtissueweight・h)で代謝変換されることがわかったIIサツマイモ塊根組
織に直接放射性イポメアマロンを投与し,−・定時間彼の放射活性の行く方を見る加=油川でのトレーサ・一美験か
ら,BurkaとKulmert55)は4−ハイドロキシマイオボロン,大羽ら45)はイポメアマロノ−・)t/に変換されると報告
している。また最近,Sclmeiderら44)は,病害サツマイモ塊根組織からあたらしく9種のセスキテ)t/ペンを検出
し,そのうちのイポメアマロノライドがイポメアマロンの代謝変換物質であるという可能性を示唆している小切
断傷害サツマイモ塊根組織より調製した租ミクロソ・−ム画分を用いた本実験においては,反応生成物はTLCに
よる分画および誘導体の結晶化による同定からイポメアマロノ−ルと断定され,4一ハイドロキシマイオボロンや
イポメアマロノライドなどのその他の生成物は検出されなかった‖
このよ乃ぬわでのイポメアマロンからイポメアマロノ1−ルへの代謝変換は,熱処理した租ミクロソ1−ム画分,
NADPHを除去した反応系や00cでのインキュベーションでは起こらなかった.また,反応生成量と反応時間,
反応生成量と租ミクロソ−ム画分量の間には,それぞれ定量性が成り立った..以上のことから,本実験において
検出したイポメアマロンからイポメアマロノ−ルヘの転換反応は酵素反応であると判断した.そして,この反応
ではイポメアマロンの15位の炭素が水酸化されることから,これを触媒する酵素をipomeamarone15−hydrox−
ylaseと命名した
イポメアマロンがinvivoITC4−ハイドロキシマイオボロンに代謝されると報告したBurkaとKuhnert55)の実
験と本実験を比較し,本実験で4−ハイドロキシマイオボロンが検出できなかった理由を考えてみると,次の4
点が考えられる.第1に,BurkaとKuhnertはHgC12で処理した組織切片を使用しているのに対し,本実験で
は切断傷害組織を用いたということであるh 前者の組織では,3−hydroxy−3−methylglutarylCoAreductaseをはじ
めとするテルペン合成に携る諸酵素群が誘発されており,また実際にテルペンが蓄積する(第3章)… これに対
し後者の組織では,数種のテルペン合成に関与する酵素が検出されてはいるものの,テルペン自体は全く蓄積し
ない.このように違った外的刺激を与えられた組織の間で,イポメアマロンの代謝に関与する酵素群に相違が
あったとしてもそれほど驚くには催しない.後述(第3章)するが,各種の外的刺激によって誘導蓄積されるテ
ルペンは,単に盈的のみならず,その組成の面においても違いがあることから考えても当然納得できることであ
る‖ 第2には,BurkaとKuhnertの実験では,イポメアマロンを組織切片に投与してから5日間もの長い間イン
キエペ・−卜していることである.しかも投与したイポメアマロンの約1%のみが4−ハイドロキシマイオボロン
に変換されたにすぎないすなわち,この代謝酒性は極めて弱いものと推論されるい 第3には,イポメアマロン
を4−ハイドロキシマイオボロンに変換する酵素が租ミクロソ・−ム画分に局在するという可能性も否定できない..
第4には,本実験で用いた反応条件が4−ハイドロキシマイオボロンに変換する酵素には適切でなかったという
ことも考えられる.たとえば補酵素の欠如,至適pHのずれなどが考えられるい
いずれにせよ,本実験でイポメアマロンを代謝する酵素の一つが初めて同定されたい 次章で詳述するが,種々
の外的刺激によってサツマイモ塊根組織にイポメアマロノールが誘導蓄積されることからみて,本研究で同定し
たipomeamarone15−hydroxylaseがihvivo7?のイポメアマロンの代謝で重要な働きを果たしていることは間違い
ない.また,本酵素はサツマイモ塊根組織のテルペン合成系でのファルネソ・−ル以降の代謝に関与する酵素とし
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−20−
ては,dehydroipomeamaronereductase23)についで2番目に同定された酵素である
〔Ipomeamarone15・hydroxylaseの性質〕
本実験は,ipomeamarOne15−hydroxylaseがチトクロムP−450関与の−原子酸素添加酵素であることを実証し
たといえる.
まず,ipomeamarone15−hydr・0Ⅹylase活性におよぼすビリジンヌクレオチドの効果を調べた実験で,本酵素が
チトクロムP−450関与の酵素であることが強く示唆された小 本酵素はNADPH単独で酵素活性を十分発揮した。
ただし,反応系に最終濃度1mMのNAI)PHを投与するよりも1mMNADP+を含んだNADPH再生系を投与
した方が高い活性が得られた.このことはイポメアマロンの水酸化による消費によってNADPHが不足したた
めではないい なぜならば,イポメアマロン1分子の水酸化に1分子のNADPHが消費されるものと考えると,
1mMのNADPHは反応生成量の約1,000倍に相当するからである“おそらく,租ミクロソ−ム画分中に混入し
ていたミトコンドリアの断片によって酸化されたためであろう”一・方,NADHは,単独ではipomeamarone15−
hydroxylaseに全く利用されなかった,しかし,NADPHの量が酵素活性を最大限に発揮させるほど十分でない
場合には,NADHは本酵素活性をたかめる効果を示した.Cohenら56 ̄58)ぉよびHudebrandtら59)は,ウサギ
肝ミクロソ−ムのチトクロムP−450関与のaminopy血eN−demethylaseがNADPHで十分活性を示すが,NADH
によって括性化されることを報告している.またHassonとWest5354)は,高等植物であるMaYtlhmacYVCaゆ従S
の未成熟種子のミクロソ−ムに局在するKaureneoxidaseについて,同様な結果を報告している.
第1章で述べたように,チトクロムP−450依存性電子伝達系は,ミクロソ・−ム型とミトコンドリア内膜型
(または細菌型)の2種に大別されていて,前者はNAD(P)H−→・・NAD(P)H−CytOChromeP−450reductase−−一十
cytochromeP−450,後者はNAD(P)H−−−−NAD(P)H−f6rTedoxinreductase→tbrredoxin−+CytOChromeP−450と
いう電子伝達系を形成している.上述のビリジンヌクレオチドの必要性および効果から判断して,ipomeama−
rone15−hydroxylaseはミクロソ−・ム型に属するものと想定される“ミクロソl−ム型電子伝達系は単一電子伝達系
と複合電子伝達系にわけられる(図4)。IpomeamarOne15−hydroxylaseがNADHによって活性化されるという
事実は,この酵素がミクロソ・−ム型複合電子伝達系に属するということを示唆している“複合電子伝達系に関す
る概念は最初Estabrookら60)によって提唱されたものである.その模式図を図10に示す,チトクロムP−450が
基質,ついで02と結合し,反応生成物と水を放出するまでの1回のcatalyticcycleでは2個の電子が必要であ
る.このうち,最初に受けとる電子はNADPH一−−−NADPH−CytOChromePT450reductase一−−−を経由する電子で
あり,次に受けとる電子はNADH−−−−NADH−CytOChromeb5reductase→・CytOChromeb5→を経由する電子で
ある.ただし,2番目の電子については前者の系
からも供給される“また,NAI)PH−CytOChrome
2nd
NADH→fp】→Cy=)5
P−450reductaseとチトクロムb5との間で両電子
伝達系間のsyner・gisticな相互作用があることも
イ p−450
。2
報告されていが6).今回の実験で,NADPHは単
Fe之!s
〔
独で電子供与体となり得るがNADHは単独では
なり得ず,またNADPHが存在する時にNADH NADPH■→fp2
が酵素活性を高める効果があるという結果が得ら
れているが,このことは以上詳しく述べた複合電
子伝達系という機構でよく説明できる結果であ
る
eユ±㍉Feさ・イ
S
SO
Fig.10Modelofelectrontransportr’eactionsassociated
withm反edfunctionoxidaseinmammalian1iver
microsomes”S:0Ⅹygenatable substrate;わ1:
NAI)H−CytOChromeb5reductase;わ2:NADPH−
CytOChromeP−450reductase‖
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−21−
Ipomeamarone15−hydroxylaseにミクロソl−ム型電子イ云達系が関与しているということは,種々の化学物質の
酵素滴性への影響を調べた実験によりなお劇層明らかとなった..チトクロムP−450が関与する水酸化酵素の極
めて一般的な特徴として,KCNでは阻害されないという性質がある.これはヘム酵素では例外的な性質である‖
本酵素はKCNで阻害されず,かえって約15倍に活性化された.この酒性化は,おそらく租ミクロソ1−ム画分
に混入していたミトコンドリア破片による02消費が抑えられたことと,それに伴うNADPHの減少の抑制によ
るであろう..さらに,本酵素はSH酵素の典型的阻害剤である♪−クロロマー・キュリ1一安息香酸によって強く阻
害されたすなわち,019mMのこの阻害剤で86%阻害された..同じくSH酵素の阻害剤である2種の重金属
塩も1mMで♪−クロロマ1−ヰユ・リ1p安息香酸と同程度の阻害を示した=1mMのMgCl2がほとんど活性に影響
をおよぼさなかったことから,この重金属塩の阻害作用はイオン強度によるもの・ではないものと判断できる.こ
れらのSH酵素阻害剤はNADPH−CytOChromeP−450reductaseとチトクロムfし450の両方を阻害しているものと
考えられる.西本と柴田61)はウサギ肝ミクロソ−ムのNADPH−CytOChromeP−450reductaseがその活性に密接
に関連のあるSH基を有することを示しており,羽生ら62)はブタの同還元酵素を使いSH基がNADPHの結合
に関係していることを示し,かつそのイ寸近のアミノ酸配列を決定している..また,チトクロムP−450の活性中
心であるヘム鉄の第5配座はペプチド鎖中のシステイン側鎖からくるチオレート基によることが,種々のモデル
錯体を用いた研究により明らかとなっている63一∼65).さらに,芳香族化合物を基質とする水酸化反応の研究に
よって,鉄−イオウ結合の存在が反応に必須であることも明らかにされている66).さらに,NADPH−CytOChrome
PT450r’eductaseから電子を奪う非生理的電子受容体であるチトクロムcとP−ベンゾキノンは,ipomeamarOne
15−hydroxylase活性を抑制した.このことは,本酵素酒性に,NADPH−CytOChromeP−450reductaseからチトク
ロムP−450への電子伝達系が必要であることを示している.
チトクロムP−450関与の酸素添加反応は,分子状酸素の1個の酸素原子を基質に取り込みもう1個の酸素原
子を水に還元する本実験では,反応系中の酸素量を調節することによって,イポメアマロンに取り込まれる酸
素原子は分子状酸素に由来することを示唆することができた.反応系中の酸素分子を注意深く窒素分子で置き換
えると,ipomeamarOne15−hydroxylase活性はほとんど検出されなかった.また15%の一酸化炭素により活性が
著しく抑制され,かつこの抑制は光照射により回復された‖ これらの事実は,ipomeamarone15−hydroxylase活
性がチトクロムP−450関与によることをより一層明確に示している.
以上のように,ipomeamarOne15−hydroxylaseはチトクロムP−450関与の酵素であることがわかったので,以
下,本酵素の諸性質を他のチトクロムP−450関与の酵素と比較しながら説明していくことにする‖ まず,本酵
素の至適pHは80であった‖ これは田中ら25)によって報告された,切断傷害サツマイモ塊根組織のcinnamic
acid4−hydroxylaseの至適pHと等しかった一・九エンドウ幼蘭33)とswede根67)のcinnamicacid4−hydrox−
ylase,発芽侮iaカbaの16−ハイドロキシバルミテン酸のmidchainhydroxylase68)はともにpH75である.発芽
Ihciabbaのpahniticacida・−hydroxylaseはTrisTHCl薇衝液ではpH80,リン酸綬衝液ではpH70と緩衝液の種
類によって異なった至適pH示す69)。本酵素の場合には,同じpHにおいてはTris−HCl媛衝液よりリン酸媛衝
液での活性の方がやや高いものの,至適pHに関しては両者でほとんど差異はみられなかった..
次に,ipomeamarOne15−hydroxylaseのイポメアマロンとNADPHに対するKm値はそれぞれ約60FLMと約2
FLMであったh 同じ切断傷害サツマイモ塊根組織におけるcinnamicacid4−hydroxylaseのNADPHに対するKm
借は1紬Mと報告されている25).この値は本酵素のそれにかなり近い値である..したがって,両水酸化酵素に
同じまたはかなり性質の類似したNADPH−CytOChromeP−450requctaseが関与しているものと推察される.動物
肝における基質の水酸化の多様性はチトクロムPT450の分子種の多様性によるものであるNADPH−CytOChrome
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−22−
P−450reductaseには多様性はなく,単一・種の酵素であるということが−・般的見解となっている
重要なことに,ipomeamarone15−hydroxylaseにおいてもcinnamicacid4−hydroxylaseにおいても,イポメアマ
ロンと桂皮酸は互いに括抗し合わなかった“このことは,両水酸化酵素は互いに独立したものであることを示し
ている‖ すなわち,雨水酸化酵素には,互いに異なるチトクロムP−450が関与しているものと決論できよう=
チトクロムP−450関与の水酸化酵素の基質特異性に関しては,動物や微生物を材料として極めて数多くの実験
的事実が示されているい 叫・般的傾向として,ステロイドホルモンの生合成をはじめとする生物本来の生合成に関
与する酵素は基質特異性が狭く,薬物代謝をはじめとする生体外物質の代謝に関与する酵素は比較的それが広い
IpomeamarOne15−hydroxylaseとcinnamicacid4−hydroxylaseはいわば前者に属しているものであり,このことか
らみてもこの実験結果は安当なものであると考えられる.BurkaとThorsen43)によれば,イポメアマロンが合
成されるためには少なくとも3段階の酸素添加反応を経なければならないし,またBurkaとKuhnert55)によっ
て示唆されたイポメアマロンから4−ヒドロキシマイオボロンへの反応もチトクロムP−450関与の−・原子酸素添
加反応である可能性が強い“その他にも,病傷害サツマイモ塊根組織において生合成される酸素含有化合物は極
めて多彩であり,それだけにそれらの生合成に関与する酸素添加反応,特にチトクロムP−450が関与する反応
は多様に存在するものと推論できる.従って,病傷害サツマイモ塊根組織においては分子多様な数多くのチトク
ロムP−450の存在が十分期待できるといえ.よう‖ 近年,チトクロムP−450の精製方法が進歩し,種々の動物の
種々の臓器より複数個のチトクロムP−450が単離されている‖ 特に,ウサギをはじめとする哺乳動物の肝臓に
おいては,20種を越えるチトクロムP−450の存在が示唆されるまでになった‖ 高等植物においては,チュー
リップ球根38)で単離されたチトクロムP−450以外はその存在が示唆されているにすぎず,チトクロムP−450
の分子多様性に関する正確な情報は今後の研究に委ねざるを得ないのが現状である.ただ,基質特異性や補酵素
の要求性の遠いによって,Benvenisteら70)はエンドウ幼蘭のIauricacidw−hydroxylaseとcinnamicacid4−hydrox−
ylase,Hagmannら71)はパセリの培養細胞のflavonoid3′・hydroxylaseとcinnamicacid4−hydroxylaseがそれぞれ独
立した酵素であることを報告している..
〔病傷害刺激をによるipomeamarone15−hydroxylaseの誘導〕
Ipomeamarone15−hydroxylase活性は新鮮サツマイモ塊根組織では検出されなかった”組織が切断傷害または
黒斑病菌の感染を受けると,この活性が出現し,かつ著しく増大した..病傷害両組織とも,10−15日で最大に
達しその後減少したい 病害組織での活性は傷害組織での活性を常に上まわっており,前者の最大活性に対して後
者の最大活性は約5倍であった.
イポメアマロン等のテルペンが全く合成されない傷害組織でも,テルペン代謝に関与する酵素の活性が誘導的
に出現することは興味深い… イポメアマロンの合成の最終反応を触媒するdehydroipomeamaronereductase23)の
活性も,同じように傷害組織で出現増大することがわかっている。.傷害組織では,このようないくつかのテルペ
ン合成系の酵素がある程度誘導されていて,病原菌の感染やHgCl2での処理のようなより過酷な刺激に対する
準備態勢がとられているのかも知れない.つまり,こうしたより過酷な刺激に直ちに反応して,すみやかにイポ
メアマロンなどを合成啓積できるようにしているのかも知れない..言い換えれば,テルペンの合成蓄積は,上述
のようなより過酷な刺激によって誘導される限られた種類の酵素(例えば,3−hydroxy−3−methylglutarylCoAre−
ductase21))によって抑制されているのであろう.
Ipomeamarone15−hydroxylaseは,ポ.)フユノ1−ル化合物の合成系の酵素やdehydroipomeamaronereductase23)
のように,切断傷害刺激によって誘導的にその活性が出現増大し,病原菌感染のようなより過酷な刺激によって
その増大が助長される酵素である.ただし,他のテルペン合成系の酵素の傷害組織での誘導と比べてみると,
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−23 −
ipomeamarone15−hydroxylaseはほとんど遅延時間を待たずして活性が出現し増加する点で特徴があった”これ
はチトクロムP−450系の酵素に特徴的なことなのかもしれない..というのは,同じ傾向の誘導がc血Iamicadd
4−hydroxylaseやNADPH−CytOChromeP−450r・eductaseなどの活性でもみられるからである
大羽ら45)は,黒斑病菌を感染させるかHgC12で処理したサツマイモ塊根組織でのイポメアマロンのイポメア
マロノ−ルヘの玩涙〃0転換速度は,傷害組織での速度よりも遅いと報告している.そしてその結果から,イポ
メアマロンの水酸化反応は,テルペンの分解に重安な役割を担っているのではないかと緒論している‖ 黒斑病菌
を感染させたサツマイモ塊根組織においては,最も多畳に蓄積されるテルペンはイポメアマロンであるが,イポ
メアマロノ・−ルも相当量蓄積される.イポメアマロンは黒斑病菌に対してだけではなく,サツマイモ塊根組織そ
れ自身にも毒性があるとされている15)“+・一一・方,イポメアマロノールもまたフィトアレキシンである47).本実験
でのipomeamarone15−hydroxylase橘性が傷害組織よりも病害組織の方が高いという結果を考えあわせると,イ
ポメアマロンからイポメアマロノ−ルヘの反応は,テルペンの分解に関与しているというよりは,イポメアマロ
ンと同時にイポメアマロノー・ルも積極的に蓄積させることに関与していると考えた方がよいように思われる‖
第3章 サツマイモ塊根組織におけるチトクロムP−450の外的刺激による誘導
第1節 序 論
サツマイモ塊根組織は黒斑病菌の感染3・4)ヤアリモドキゾウムシによる食害等の生物的刺激6)やⅡgC12処理
をはじめとする化学的刺激72)を受けると,フラノセスキテルペン合成が誘発され,その被害部にイポメアマロ
ンやイポメアマロノ・−ル等のサツマイモに特有なフィトアレキシンを蓄積する.このサツマイモ塊根組織に特有
な,外的刺激により誘発的に出現し増大する二次代謝系を,酵素レベルで研究を進めるうえでHgC12処理は黒
斑病菌の感染等のような生物間相互の作用からなる刺激に比べてはるかに単純でかつ簡便な,しかも走盈性のあ
る実験系として頻繁に用いられてきた.というのも,HgC12処理は,切断傷害を与えた後1日間インキュベ・−
した組織で行うと,潜伏期を経ずにフラノセスキテルペンを蓄積するからである72)い
HgC12で処理したサツマイモ塊根組織を用いてBur・kaとThorsen43)はイポメアマロン中の3個の酸素原子は
分子状酸素由来であると報告した.また前章で述べたように,病傷害サツマイモ塊根組織でおこるイポメアマロ
ンの15位の水酸化はチトクロムP−450が関与していることが証明された.従って,イポメアマロノ・−ル中の酸
素原子は全てチトクロムP−450により分子状酸素より導入されることが想定される。.一方,ipomeamarOne15・
hydroxylaseは,dehydroipomeamaronereductase23〉をはじめとするテルペン合成系に携わっている多くの酵素と
同様に,切断傷害や黒斑病菌の感染によって誘導される‖ これらのことを考えると,チトクロムP−450も同株
な刺激によって誘導される可能性が強い.
動物では3一メチルコラントレン73∼77),フユノバルビタ1−ル75∼紬,β−ナワトフラボン8283)をはじめとする
薬物処理でチトクロムP−450が顕著に誘導され,それゆえにチトクロムP−450は誘導酵素として数多くの研究
がなされている.最近になって,また新たに抗生物質であるトリアセテルオレアンドマイシン8卜86)がチトクロ
ムP−450の強力な誘導剤として脚光を集めつつある.しかし,高等槽物では,その二.次代謝系でチトクロムF−
450が重要な役割を演じていることが示唆されているにもかかわらず,チトクロムP−450の誘導に関する研究
例は極めて数少ない高等植物の二次代謝系は必要に応じて出現し増大する場合が多いが,動物におけるチトク
ロムP−450のように,果たしてそれに携さわる高等植物のチトクロムP−450も必要に応じて誘導されるのかど
うかを検討することは極めて重要であると思われる.このことは,動植物間でのチトクロムP−450の−・股的性
ト
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−24一
状の比較のみならず,高等植物自身の生理学的立場に立ったチトクロムP−450の存在意儀を知るうえでも興味
深いものである
本章では,サツマイモ塊根組織を用い,外的刺激によってチトクロムP−450が誘導されることを述べる..外
的刺激として,切断傷害,黒斑病菌感染および薬物処理を用いた..また,このチトクロムP−450の誘導とフラ
ノセスキテルペンの合成誘導の関連を解析した結果についても記述する
第2節 材料および実験方法
〔植物材料〕
香川大学農学部附属農場で収穫されたサツマイモ塊根(伽仰βα∂αねぬs,品種.高系14号)を使用した.使用
直前まで12∼150cで貯蔵しておいたい
サツマイモ塊根を流水で十分洗い,005%の次亜塩素酸ナトリウムで15分間消毒した後,再度流水で十分洗浄
した.その柔組織から厚さ10∼15cmの輪切り切片を調製し,黒斑病菌(Ce7ViooLSEisPmbriahzEuandHalst)
の内生分生子を接種し,湿潤条件下で290cにて1日間インキエペ・−卜した.インキエペ−ション後,雁病部に
隣接した健全組織を10−15mの厚さで切り取り,これを病害組織とした… 黒斑病菌を接種せず,同様にイ
ンキエペ−ション後,厚さ10∼15mmで切り取った表面雑織を傷害親織としたまた,インキエペ・−トする
前の乗組織を新鮮組織と称した.
薬物処理は以下のようにして行ったサツマイモ塊根某組織から調製したディスク(16×3nml)を300cの湿
潤条件下で24時間,プラスチックの密封容器の中でインキエペ・一卜した.次に,40〟Jの29mMフェニルイソシ
アニドまたは蒸留水をディスクに施し,300cの湿潤条件下で1時間インキエペ・−卜したり その後,種々の濃度
に調製された50plのHgC12またはCdSO4水溶液を付与し,さらに同じ条件下で24時間インキエペー卜した.
〔ミクロソーム画分の調製〕
租ミクロソーム画分の調製は第2車で述べたように行い,精製ミクロソ・−ム画分の調製は以下のように行った..
上記の方法で薬物処理した40個のディスクを蒸留水で表面を十分洗い,04Mスクロ−ス,1mMEDTA,10mM
KCl,1%(w/v)アスコルビン酸および2gポリクラ1−ルATを含む80mlの50mMTris−HCl緩衝液(pH85)
中でおろし金を用いてま砕した.次に,それを2垂のナイロンか−ゼでこし,300×gで10分瀾遠心した.その
上晴を100,000×gで15時間遠心にかけ,生じた沈殿を1mMEDTA(pH85)を含んだ7mlの14%(w/v)ス
クロ・−ス溶液に懸濁した その懸濁液を1mMEDTA(pH85)を含んだ6mlの40%(w/v)スクロ1−ス溶液の
上に載せ,日立RPS40−Tロ1一夕l−で25,000rpm,1時間遠心した.14%と40%(w/v)スタロ・−スの間の膜画
分を分取し,これをミクロソ・−ム画分とした以上の操作は0−40cで行った.
〔チトクロムP−450の定量〕
ミクロソ1−ム懸濁液に少産のジチオナイトを添加して還元し,対照セルと試料セルに分注した… 500−400nm
間を自記分光光度計(日立556型)で走査することにより基本線を決定した..次に,試料セル内溶液に2分間
COガスを通気した後,同様に500∼400nm間で差スペクトルを記録した‥ 以上の操作は室温で行った.
差スペクトルからのチトクロムP−450鼠の決定は大村と佐藤87)の方法に従い,モル吸光係数を91mM ̄1
cm ̄1として算出した.
〔租テルペン画分の調製〕
上述の方法で薬物処理した10個のディスクを20mJのクロロホルムーメタノ・−ル(1:1,Ⅴ/v)中で乳鉢と乳棒
でま砕し,ろ紙で自然ろ過した.残さは10mJの上記のクロロホルムーメタノ・−ルで洗った.ろ液を合わせ,そ
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−25 −
れに10m上の蒸留水を加えて激しく振とうした.その後,クロロホルム層を分取し,それを減圧蒸留して租テル
ペン画分を得た
〔テルペンの定量〕
テルペン量は大羽ら72)の方法に従い,イポメアマロンを標準物質として測定した.粕テルペン画分を2mJの
ユタノ・−ルに溶かし,それに1mJの10%♪−ジメチルアミノベンズアルデヒドのエタノール溶液と2mJの40%
(v/v)H2SO。を添加した‖300cで15分間インキエペ1−ションした後,527nmの吸収を測定した
〔タンパク貿の定量〕
LoⅥyら52)の方法に従い,BSAを標準タンパク質ととして定量した
第3節 実験結果
〔ミクロソ−ム画分のCO一差スペクトル〕
まず,サツマイモ塊根組織から抽出した租ミクロソ−・ム画分にCO結合性の色素が存在するかどうかを検討
したすなわち,健全な組織(新鮮組織),切断傷害を加えた組織(傷害組織)および切断直後その表面に黒斑
病菌を感染させた組織の雁病部に隣接する健全部位(病害組織)より粗ミクロソ・一ム画分を調製し,これに還元
剤(NADPHまたはジチオナイト)を加え,この還元
型とこれにCOを結合させたものの問わ400−500nm
間の差スペクトルを測定した..図11に病害組織の
/ ̄\
.
CO一差スペクトルを示した.NADPHで還元した試料
にCOを通したのちただちにCO一差スペクトルを測
定したところ,453nmにのみ吸収極大が検出された小
同じ試料について,COを通してから数分後もう一度
CO一差スペクトルを測定したところ,453nmの外に,
423nmにもう一つの吸収極大が検出され,この吸収
極大の吸光度はCOを通してから時間が経つにつれ
て増大した.図11はCOを試料液に通してから約5
分後に測定したものであるい 423nmの吸収極大は
453nmの吸収極大の15倍に達している… ジオナイト
を還元剤として使用した場合には,453nmの吸収極
大の吸光度はNADPHを還元剤として使用した場合
とあまり変わらなかったが,423nmの吸収極大はCO
処理後ただちに出現し,その吸光度はNADPHを還
元剤として加えた場合に比べ著しく大きかったまた,
500nm以上の長波長領域を調べたところ,540nmと
573nmに弱い吸収極大が検出された(デー・夕省略).
423nmでの低い吸収極大は,他の植物種からのper・0−
xidaseのCO,差スペクトルでみられる吸収極大と非
常によく対応している8889).サツマイモ塊根組織に
per・0Ⅹidaseが存在することは,川島と瓜谷9091)に
400
450
Wavelength(nm)
500
Fig.11.COdi鮎rencespectraofareducedmicr’OSOmal
良■aCtion丘Omdiseasedsweetpotatoroottissue.
A crude microsomalfraction(10,000Ⅹg for
15min;100,000将for2h)wasprepared血rom
diseasedtissuetaken丘■omnOninfectedreg10nS
(1.0−15mmthick)adacenttoinfectedregions
Of tissue blocks(1.0−1.5cm thick)which had
beeninoculatedwithCeYaわ¢Stis^mbriahland
incubated for24h at290c.Themicrosomal
fraction(3.6g tissue/mi,2.4mgmicrosomal
protein/mi)addedbyNADPH−regeneratingsys−
tem(1mMNADP十)wasdividedequal1yinto
twoceus.Baselineofequallightabsor’banCe
WaSfirst plotted,then CO was bubbledinto
Sample ceu for2minanddi鮎rence spectrum
(−−−)was recorded”Afterrecordingdi鮎r−
ence spectrum,a Smal1amOunt Of solid
dithionitewasaddedtobothcellsanddi鮎rence
SpeCtrum(−)wasagainrecorded
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一26−
よって既に報告されている..いずれにせよ,CO一差スペクトルにおける453nmの吸収極大はチトクロムP−450
のSor・et帯によるものと結論される,すなわち病傷害サツマイモ塊根組織にチトクロムP−450が存在すること
が確認された.
上述のように測定したCO一差スペクトルでの453nmの吸収極大の高さから,チトクロムfし450の含量を大
村と佐藤87)の方法に従い算出したところ,新鮮組織,傷害組織,病害組織で1g新鮮重当りそれぞれ12,78,
16pmolであった.ただし,これらのチトクロムP−450含意の絶対値には多少問題があり,やや低めの借となっ
ているものと考えられる.というのは,これらの租ミクロソ・−ム画分のCO一差スペクトルには,440nmに極小
が存在するからである‖ この極小は,perOXidaseや混入しているミトコンドリア破片中のチトクbムに由来して
いるものと考えられる88)..しかし,新鮮親織,傷害租織,病害組織の服でチトクロムP−450含量が大きくなっ
ていることは間違いないようである小
以上のように租ミクロソ・−ム画分を用いてチトクロムP−450を定見することには多少問題があったので,租
ミクロソ−ム画分を不連続スクロ・−ス密度勾配遠心にかけ,ミトコンドリア破片などを含まない精製ミクロソ・−
ム画分を調製し,これを用いることにした.図18は病害組織の場合のCO一差スペクトルを示したもので,租ミ
クロソ・−ム画分で観察された420Imでの吸収極大や440nmでの吸収極小はほとんどみられないようになった..
また,453nmの吸収極大波長は450nmにかわっていた‖ 以上のことから,精製ミクロソ−ム画分のCO一差ス
ペクトルから討馨した方が,より正確なチトクロムP−450含量を求め得ると判断した。.
〔薬物処理によるテルペンの誘導蓄積〕
生物全般に強い毒性を示すことが知られているHgC12とCdSO4を,種々の濃度で,切断後1日間300cでイ
ンキエペー卜したサツマイモ塊根組織切片に与え,こうした薬物処理によってどの程度テルペンが蓄積するかを
調べた(図12,実線).また,それらの薬物にフェニルイソシアニド92)を併用した場合についてもテルペン蓄積
料を調べてみた(図12,点線)..
HgC12またはCdSO4を単独で与えた場合には,同じ濃度では,常にCdSO4よりもHgC12処理の方でテルペン
蓄積量が大きかった.HgC12の場合には,1mMではほとんど未処理の場合と変わらなかったが,それを臨界点
として濃度を大きくしていくと著しいテルペンの蓄積が起こることが観察された‖ しかし,38mMでは,19mM
での場合よりもテルペンの蓄積義が少なかった..これはHgC12の濃度があまりにも高いために組織の生命力自
体が弱まったためであろう‖ CdSO。の場合には,約5mMまでは未処理とほとんど変わらず,それを境として
テルペンの蓄積が増加していた‖
CdSO.処理に際してフユニルイソシアニドを併用しても,併用の効果は全くなかった。しかしながら,HgC12
の場合には,フェニルイソシアニドの併用は,HgC12が低濃度の時にテルペンの蓄積量を著しく高める効果が
あった.HgC12の濃度が約3mMの時には,フェニルイソシアニドを併用すると,併用しない場合に比べて約4
倍のテルペンが蓄積した一そして,フユニルイソシアニドを併用しなかった場合と同様に,約20mMのHgC12
処理でテルペンの蓄積屈は最大に達したが,その畳はフユニルイソシアニドを併用しなかった場合に比べてはる
かに多かったなお,フユニルイソシアニドのみで処理した組織切片にはテルペンは集積しなかった.
次に,こうした薬物処理で誘導形成されたテルペン組織をTLCにより調べた(図13).比較のため,病害組
織からの租テルペン画分もTLCにかけた(図13,G).この場合には,既に報告されているように,イポメアマ
ロンとイポメアマロノ−ルをほじめとして多数のフラノセスキテルペンのスポットが検出されたまた傷害組織
では,全くフラノセスキテルペンが検出されなかった(図13,A).前にフユニルイソシアニドだけで処理した
組織ではテルペンが蓄積しないことを述べたが,TLCでもテルペンが全く検出されなかった(図13,B).1%
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−27 −
︵盲 こ こ 忘 ぎ ︶ s 賀 む 已 む ↑
lpOmeamarOne
I:弓 冒
−− 0
8B888
0 10 20 30 40 50
HgC120r・CdSO4(mM)
0
1pOmeamarOnOl
A B C D E F G
Fig.12.Terpene accumulationinsweet potato root Figl13‖ ThinLlayer・Chromatographyoffurano−terpeneS
tissue discs treatedwith HgC120r CdSO4
insweet potato r・00t tissue discs received
together・with or−without phenylisocyanide
Oneday−incubateddiscstr’eatedwithorwithout
di鮎rent treatments.A,COntr・01discs which
phenylisocyanlde were applied byligC120r
CdSO4attheindicatedconcentrationsasde−
scribedinthetext‖(●),HgC12;(○),HgC12+
phenylisocyanide−(▲),CdSO4;(△),CdSO4
+phenylisocyanlde
(w/v)のHgC12で処理した組織の場合には,病害組
織の場合に比べてスポットの数が極めて少なかった
(図13,C).相当量のイポメアマロノ・−ルが蓄積して
wereincubatedfbr・2dayswithouttreatment;B,
discs applied by phenylisocyanide;C,discs
apphedbyHgC12(3”7mM);D,discsappliedby
bothHgC12(3.7mM)andphenylisocyanide;E,
discs applied by CdSO4(41・4mM);F,discs
appuedbybothCdSO。(4l4mM)andphenyl
isocyanide;G,CeYaioqstis jmbYiahl−infected
tissue‖ The crude terpene obtainedf【Dmlg
discswereappliedtotheTLCplateforATF,
andO.15mgoftheoilwasforG‖ Theplate
いるのに対して,イポメアマロンの蓄積が極めて少な
wasdevelopedwithn−hexane−ethylacetate(8:
2,V/v)andspr・ayedwithEhrhch’sreagent”○,
いことは注目に催する..1%(w/v)CdSO4,1%
weakly
spots colored strongly;<l,SpOtS COlored
(w/v)CdSO4とフユニルイソシアニドの場合には,
この傾向が顕著であり,イポメアマロンはほとんど検出されなかった(図13,EとF).−・方,1%(w/v)
HgC12にフユニルイソシアニドを併用して処理した組織では,病害組織の場合とよく似ていた(図13,D).す
なわち,イポメアマロンなどの比較的疎水性の高いテルペン成分も顕著に蓄積していた
〔薬物処理によるミクロソ−ムタンパク質およびチトクロムP−450の誘導増加〕
種々の外的刺激を加えたサツマイモ塊根組織からの精製ミクロソ1−ム画分におけるタンパク質量,チトクロム
P−450含量およびその比含量について調べた結果を表7にまとめて示した.病害組織については,その被害部
(この部分でテルペンを定畳)と隣接健全部(この部分から精製ミクロソ・−ム画分を調製)を適切に区別するこ
とが困難で,テルペン蓄積量とチトクロムP−450含量の関係を調べるには不適当な組織であると考え,これを
除いた.すなわちこの組織では,病菌がインキエペ・−ションの日時とともにより内部に侵入してゆき,再現性あ
る確実なデータを得るためには,顕微鏡観察を伴う微細な検討を必要とするためである.
新鮮組織からの精製ミクロソ−ム画分のタンパク質量は,1g新鮮組織重当り0213mgであった.切断後2
日間インキエペ、一トした傷害組織では,このタンパク質量が23倍に増加していた.切断彼のインキエペ・−ショ
ンの途中でフェニルイソシアニドで処理した組織では,そのミクロソームタンパク質はこの薬物処理をしなかっ
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−28−
Table7.E8=ectsoftreatmentsoftissuediscswithchemicalsonincreasesincytochrome
P−450andmicrosomalproteinduringlnCubation ofsweet potato r・00t tissue
discs
Microsomal
pr■Oteh
Cytochrome
P−450
(mg/gfr■Wt) (pmol/g丘■Wt)
Specific
CytOChrome
P−450
contentd
(pmol/mg
protein)
Freshlyprepareddiscs
0り213
Incubated discsa
0…500
9
6
8
1
0
8
4
5
りム
5
1
a
nW
5
7一〇
4
1
5
O
4
1
4
6
a
5
7
5
O
CdSO4Candphenylisocyardde
1
CdSO4‘
ハu
Discs treated Withb
phenylisocyanide
HgC12C
HgCI,C and phenyl isocyanide
2.74
37い0
79,2
165
198
119
107
3
O
a Thediscswereincubatedfor2dayswithouttreatments
12.9
74.1
9
bThediscspre−incubatedfor・1daywer・eappliedbythechemicalsindicatedandfurther
8
6
incubatedfbrldayasdescribedinthetext
‘Theconcentrationwas368mM
dThespeciAccontentsinthemicrosomes
た組織,つまり上記傷害組織のそれよりも僅かに高かった.同様の傾向がHgC12やCdSO4で処理した組織でも
観察された…
新鮮組織のチトクロムP−450含畳は,1g新鮮組織患当たり274pmolと極めて少なかった(表7).そして,
切断傷害刺激により極めて顕著に増加し約13倍になった(表7)。.薬物処理組織では,その含量はさらに大きく
なり,特にHgC12にフユニルイソシアニドを併用した場合には,新鮮組織の含量の約43倍に達していた(表7).
ただし,フユニルイソシアニドのみで処理した組織の含量は傷害組織のそれとほぼ同じであった一.またHgC12
で処理した組織では,フユニルイソシアニドを併用しようとしまいと,CdSO4で処理した親織よりも高い催を
示したこれらの傾向は上述したテルペン蓄積量に関する傾向と非常に類似していた精製ミクロソ・−ム画分の
チトクロムP−450の比合墓に関してもまた,テルペン蓄積量との間に有意な相関性がみられ,フェニルイソシ
アニドの単独処理を除いては,薬物処理によって顕著に高くなった.
第4節 考 察
〔薬物処理によるテルペンの誘導蓄積について〕
種々の高等植物においてフィトアレキシンの合成の誘室削こHgC12がエリシターとして用いられている.例え
ば,ジャガイモ塊茎のリシチン93),大豆子乗のグリセロリン94),インゲン子兼のファゼオリン95),エンドウ子
葉のピサチン9596)がHgC12で誘導されることが報告されている‖サツマイモ塊根においてもHgC12処理により,
イポメアマロンをはじめとするフラノセスキテルペンに分類される種々のフィトアレキシンの形成が誘導される
が44),この処理は本実験における有力なstrategyとなった“さらに周期表においてHgと同じ族に位置し,生
物学的に強い毒性を持った重金属であるCdの塩も,チトクロムP−450の阻害剤であるフェニルイソシアニド
を併用し,HgC12やCdSO.を用いると両者のテルペン形成の誘導におよぼす影響に明らかに差がみられ,前者
の場合には著しいテルペン形成の誘導が観察された薬物を複数併用させる処理は一・般には実験結果の解析を複
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一29 一
雄にしがちであるが,本実験で併用させたフユニルイソシアニドは単独ではテルペンの形成を誘導しなかったの
で,比較的に解析しやすい実験系となった.以上のように,これらの3種の薬物を組み合わせた処理はサツマイ
モ塊根組織に種々の程度のテルペン形成の誘導を起こしえた.
HgCl2およびCdSO4によって誘導苗穂するのはイポメアマロノ−ルを主とする比較的極性の大きいテ)t/ペン
であった・ところが,HgC12処理にフェニルイソシアニドを併用してテルペンの誘導蓄積屈を増加させると,イ
ポメアマロンをはじめとする比較的極性の小さいテルペンの蓄積が顕著になり,黒斑病菌の感染により蓄積した
テルペンの親成と類似するようになった・おそらくこれらの処理の違いからくる蓄積テルペンの細成の違いは,
アセテルCoAからイポメアマロンの合成速度とイポメアマロンからイポメアマロノ−ルヘの代謝速度のバラン
スの違いによるのであろうつまり,HgC12またはCdSO4単独で処理した組織では前者の速度が律速になって
いるが,HgC12にフユニルイソシアニドを併用して処理した組織や病害鶴織では前者の速度が後者の速度を僅か
に上まわるのであろう,
これらの薬物による種々の程度のテルペン形成の誘導の差および蓄積するテルペンの組成の違いがいかなる理
由によるかについては,それらの誘導機構に関する知見があまりにも乏しいために解釈が極めて困難である.今
後これらの誘導の程度の差および生合成産物の組成の遠いを考慮しつつ,テルペン合成に係わる酵素の誘導の度
合を調べてゆけば,テルペンの合成と蓄積の調節機作を酵素レベルで理解することが可能になるであろう..
〔チトクロムP−450のCO一差スペクトル〕
動物肝ミクロソームから単離されたチトクロムP−450のCO一差スペクトルでのSoI・et帯の吸収極大は,447−
451nmであることが示されている小 サツマイモ塊根組織からの粗ミクロソ−ム画分を用いた実験においては
453nmで吸収極大が観察された..しかも,その吸収スペクトルは対称性を欠き,ジチオナイトで還元した時に
は440nmに強い負の吸収がみられた.これは先にも述べたように,試料中にミトコンドリア破片が混入してい
たためと思われる… スクロ−ス密度勾配遠心で精製したミクロソ−ム画分を用いると,450nm付近に吸収極大
をもち,しかもその吸収スペクトルは大体対称で,440nmでの負の吸収も無視できる程度となった‖従って,
チトクロムト450を正確に定鼓するためには,こうした精製ミクロソーム画分を用いる必要があると結論でき
る.
租ミクロソ1−ム画分をNADPHで還元して,CO一差スペクトルをとってみたところ,423nmに吸収極大が出
現し,その強度は時間が経つにつれて徐々に大きくなっていった“一方,
ジチオナイトを還元剤として用いた場
合には,NADPHの場合に比べて極めて高い吸収極大が観察された.また,540と573nmにも小さな吸収極大
が検出できた.これらの吸収極大は他の生物で報告されたper・OXidaseの吸収極大に相当する小 以上の結果は,
NAI)PHで還元されるperoxidaseが存在する可儲性を示唆している8889).サツマイモ塊根組織のperoxidaseに
ついては川島と瓜谷90{91)が詳しく研究し,その存在は疑う余地がない.また,MuIphyとWest32)は,上記と
よく似た結果を報告している.CO一差スペクトルでのこうした per・0Ⅹidaseの関与も,精製ミクロソIpム画分を
用いると無視できるようになった.
〔外的刺激によるチトクロムP−450の誘導〕
粗ミクロソ−ム画分を用いてチトクロムP−450含量を調べたところ,病害組織が最も高く,次いで傷害組織
が高く,新鮮組織が最も低かった.これはipomeamarone15−hydroxylaseの各組織における活性と高い相関性を
示した・しかし,これらの組織におけるチトクロムP−450含量はipomeamarone15−hydroxylaseに関与したチト
クロムP−450を直接反映しているとは言い難く,BurkaとThorsen43)の報告から推測されるイポメアマロン合
成に関与する三つの酸素添加酵素やポリフユノ1−ル合成系に含まれているcinnamicacid4−hydroxylaseに関与す
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−30−
るチトクロムP−450の総和を反映しているものと考えられる.ただし,次章で述べるがcinnamicacid4−hydrox−
ylaseはendoplasmicreticulumには局在しておらず,粗ミクロソ・−ム画分で占める割合は小さいと考えられる.
サツマイモ塊根組織におけるテルペンの合成とチトクロムP−450の関係を見る場合,黒斑病菌の感染後の経
時的変化を見る方法を用いるのは必ずしも適切ではないと考えた… なぜならば,黒斑病菌の菌糸は随時内部組織
に伸長していくので長期間の経時的変化を見る場合には催病部とそれに隣接する健全組織の区別が困難になるか
らである.そこでそれに代わる方法としてHgCl2をはじめとする薬物処理を用いた.
テルペンの合成を伴わない切断傷害処理によってもチトクロムP−450は有意に増加したが,HgC12及び
CdSO4による処理,さらにそれらにフユニルイソシアニドを併用させた処理は著しくチトクロムP−450を誘導
した‖ 薬物処理による高等植物チトクロムP−450の誘掛こ関しては,JeruSalemartichoke塊茎でマンガン,ユタ
ノ1−ル,フェノバルビタ1−ルおよび除草剤がミクロソ・−ム画分のチトクロムP−450畳を増加させるという報告
がある4l・42).特に,25mMMnC12と10pMFeCl2で処理すると,268pmol/mgproteinにまでチトクロムP−450
の比含畳が増加しており,これは水処理の約77倍の億で,極めて顕著な誘導であるといえよう‖ サツマイモ塊
根組織を用いた本実験においては,HgC12にフユニルイソシアニドを併用させて処理した場合がもっともチトク
ロムP_450含畳が高くなったが,そのミクロソ・−ムタンパク質1mg当りの含量は約200pmolであった… これ
は高等植物で最高値を与えているチエl−7)ップ球根97)の200∼400pmol/mgpr・Oteinと上述したJeruSalemaIti−
choke塊茎41)の268pmol/mgproteinに次ぐ値であったl
新鮮組織において僅かではあるがチトクロムP−450が検出され,テルペン合成を伴わない傷害組織において
も有意なチトクロムP−450が確認されたが,薬物処理によってより顕著に誘導されたチトクロムP−450畳は,
それぞれの細線に蓄積するテルペン畳と極めて高い相関性を示した.このことはテルペン合成にチトクロムfし
450が密接に関与していることを物語るものである..そして,動物のみならず植物においてもチトクロムP−450
の誘導性は共通な特質であると考えられる一ノ そしてこの誘導性がそれの関与する代謝系の調節で−L役を担ってい
ることを想像させるものである
チトクロムP−450の特異的阻害剤であるフェニルイソシアニド92)のHgC12との併用がチトクロムP−450量
だけでなく,テルペンの蓄積量を著しく増加させたことについてはまだ正確な解釈ができない.しかし一つの可
能性として,フェニルイソシアニドによってHg2+がHgに還元され,このHgがHg2+よりもより強い誘導性
を示したためとも考えられる.なぜならば,フェニルイソシアニドはCdSO4に関してはなんら影響を示さな
かったためである.一方,フェニルイソシアニド処理によってミクロソームのチトクロムP−450のCO一差スペ
クトルのパタ・−ンになんらの変化ももたらさなかった.このことを考えると,フェニルイソシアニドが細胞内に
取り込まれたとは考えにくい‖従ってまた,大羽ら72)が報告したシクロヘキシミドの効果のようにテルペンの
分解系の抑制も考えがたい.もし,フユニルイソシアニドの影響がHg2十をHgに還元することによるのであれ
ば,Hg2+とHgの間にはテルペンおよびチトクロムP−450の誘導機構においていかなる違いがあるのか,今後
の興味深い課題となるであろう.
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ー31−
第4章 病傷害サツマイモ塊根組織における2種のチトクロムP−450依存水酸化酵素
−ipomeamarone15−hydroxylaseとcinnamicacid4−hydroxylase一間の細胞内
局在性の相違
第1節 序 論
チトクロムP−450とそれが関与する水酸化反応などを触媒する酵素活性が,哺乳動物,魚類,甲殻類,細菌
類,カビ類,高等植物等広く生物界全般にわたって検出されてきている.哺乳動物などでの研究から,チトクロ
ムP−450のほとんどはendoplasmicreticulumに存在することがわかっているが,より詳細な臓器特異性や細胞
内局在性に関する研究によって,この外にも原形質膜(小腸の微絨毛膜),核膜,ゴルジ装置膜,ミトコンドリ
ア内膜,ペルオキシゾ−ム膜など種々の細胞オルガネラの膜に存在することも判明してきている98・99)い 高等植
物においては,チトクロムP−450の含畳が動物に比べてかなり低いこともあって,その細胞内局在性について
の精密な研究は少なく,ほとんどの研究は粗雑な細胞分画による実験からそれがミクロソ・−ム画分に存在するこ
とを示唆している程度にとどまっている目 しかも,こうした研究でのミクロソ・−ム画分とは,必ずしもミクロ
ソ・−・ムのみを含む画分を意味するのではなく,むしろその他のオルガネラ膿も含むものである.従って,高等植
物細胞内におけるチトクロムP−450の局在性については,より精密な研究が必要であるといえる‖
切断傷害サツマイモ塊根親織のcinnamicacid4−hydroxylaseもやはり上で述べた意味でのミクロソ−ム画分に
存在する.田中ら25)は,このミクロソ・−ム画分のスタロ・−ス密度勾配遠心後のこの活性の分布がNADPH−
cytochromecr・eductase活性のそれと必ずしも−・致しないことを見出し,この水酸化酵素はendoplasmicreticulum
とは逼ったオルガネラに存在するものと想定した.−方,その他の高等植物を用いた研究では,Cinmicacid4−
hydroxylase活性を含め,チトクロムPd450関与と考えられている酵素活性のほとんどは,種々の細胞画分で
NADPH−CytOChromecr・eductase痛憤の分布と類似していることが示されてきた35・68・100∼1O3)..こうした研究結果
および動物肝のチトクロムP−450およびその諸関連酵素活性が一般にendoplasmicreticulumに局在しているこ
とが考えあわされて,田中ら25)の結果はその信びょう性に大きな疑問がもたれたままになっていた..最近に
なってCaaarmLh紘SrOSe従SのチトクロムP−450関与の酵素であるモノテルペン水酸化酵素はendoplasmicreticu−
1um以外の細胞内オルガネラの膜に局在することが示された104)い 田中らがオルガネラの標識酵素として
NADPH−CytOChromecreductaseとcytochromecoxidaseのみを調べているのに対し,Ca肋α7unthusYDSeuSの場合
には9種のオルガネラの標識酵素が参照されており,かつまた細胞分画彼の活性画分のオルガネラの形態が電子
顕微鏡によって観察されていて,その信びょう性は極めて高いものである.ただ,Cα助α和乃助昭和.Sg揖のモノテ
ルペン水酸化酵素はプロパキュオ・−ルに局在していると報告されているが,この点に関しては確実だとは言いき
れない..
第2章において,病傷害サツマイモ塊根組織には,チトクロムP−450関与の水酸化酵素であるipomeamarOne
15−hydroxylaseが存在することを述べた。この車では,本酵素と同じ組織に存在するもう一つのチトクロムP−
450関与の水酸化酵素であるcinnamicacid4−hydroxylaseの細胞内局在性について調べた結果について述べる.
第2節 材料および実験方法
〔植物材料〕
名古屋大学附属農場で秋収穫されたサツマイモ塊根(郎㈹0βα∂αぬぬS,品租高系14号)を使用直前まで13∼
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−32−
160cで貯蔵しておいた.使用に際して,サツマイモ塊根を水で十分洗い,その菜組織から輪切り切片(厚さ5
m)を調製したその切断面に第2章で述べたように黒斑病菌の内生分生子懸濁液を塗布し,湿潤条件下300c
にて目的時間インキエペ1−卜した‖ 輪切り切片より雁病表面を除去し,残りを病害組織として使用したり 黒斑病
菌を接種しないで同様に調製した組織を傷害鶴絶として使用した
〔細胞分画〕
100gの輪切り切片を05Mスクロ1−ス,1mMEDTA,10mMKCl,3mMMgCl2,1%(w/v)イソアスコルビ
ン酸と7gのポリクラ一ルATを含む130mLの50mMTris−HCl緩衝液(pH85)中でプラスチック製のおろし
金により擦り下ろした.そのま砕液を2垂のナイロンか一ゼでこし,ろ液を300×g,10分間遠心した.上清を
05Mスクロpス,1mMEDTA,10mMKCl,3mMMgC12と1mMメルカプトユタノ−ルを含む50mMTris−
HCl横衝液(pH85)で前もって平衡化させておいたセファデックスG−25カラム(仝ベyド容:500ml)にかけ,
同じ緩衝液で溶出した.溶出したタンパタ質画分を租抽出液とした
病害細織からの租抽出液を10,000×gで10分間遠心し,沈殿を先に述べたセフ・アデックスG−25の平衡化緩
衝液で5mJに懸濁した(10K沈殿画分)り 上酒はさらに100,000×gで2時間遠心し,その沈殿を同様に懸濁し
た(10K−100K沈殿画分)..
スクロース密度勾配遠心で分画する場合に,傷害または病害組織からの租抽出液を100,000×gで2時間遠心
し,その沈殿を1mMEDTAを含む5mlの16%(w/v)スクロl−ス液に懸濁した(100K沈殿画分)。この100K
沈殿画分を1mMEDTA(pH85)を含む3mlの70%(w/v)スクロー・ス液(クッション)の上に,1mMEDTA
(pH85)を含む28mJの16から60%(w/v)直線密度勾配スクロ・−ス液をのせた遠心溶液上にのせ,日立RPS
27−2ロ一夕−を用いて24,000rpmで5時間遠心した.その後この遠心溶液を等量に分画した.
以上の操作は0から40cで行った.
〔酵素活性の測定〕
Cinnamicacid4−hydroxylase満性一第2章で述べた方法に従って測定した.ただし,反応生成物の分離には
ペ1−パ1−クロマトグラフィ1−の代わりにITLC−SA板によるクロマトグラフイ−を行った.その展開にはベンゼ
ンー酢酸(1:4,Ⅴ/v)を用いたい
IpomeamarOne15−hydroxylaseとNADPH−CytOChromecreductase活性−それぞれ第2章で述べた方法に従っ
て測定した.,NADPH−CytOChromecr・eductaseはendoplasmicreticulumの標識酵素とした‖
Cytochromecoxidase病性一前島と旭105)の方法により測定した.01%(w/v)トリトンⅩ−100を含む30
mMリン酸カリウム緩衝液(pH70)150plに1mg/mLの還元型チトクロムclOOFLlと酵素液50plを添加し,
25◇cで反応させたい 活性は還元型チトクロムcの酸化による550nmの吸収の減少により測定した.本酵素はミ
トコンドリアの標識酵素とした.
Phosphorylcholine−glyceridetransferase−Lordら106)の方法に従い測定した100mMTris−HCl緩衝液(pH
70),20mMMgC12,10mMl,2−ジバルミチンおよび01pCi[メチルー14c]CDPコ7)ン(40Ci/mol)を含む反応
液に酵素液を加え,液終容畳を05mJとし,300cで1時間反応させた“2mJのユタノ1−ルを加えて反応を停止
させ,ユタノ・−ル可■溶物を回収した.不溶物をユタノ・−ルで2回洗浄し,完全にエタノ・−ル可溶物を回収したい
このエタノール溶液に3mlのクロロホルムを添加し,5mlの2MKClと5mLの蒸留水でそれぞれ2回ずつ洗浄
した.減圧蒸留によりクロロホルムを除去し,残留物における放射活性をBray,ssolution49)中で測定した.本
酵素はendoplasmicreticulumの標識酵素とした.
GlucansynthetaseI−RaylO7)の方法に従い測定した,200mMMgC12と17.5Ci[14c]UDPG(260Ci/mol)を
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−33一
合んだ50mMTris−HCl緩衝液(pH80)40plに100iLlの酵素液を添加し,250cで15分間反応させた…1mLの
70%エタノ1−ルを加えて反応を停止させた後,50mMMgCl2を50pl,熱処理した10−100K沈殿画分150pl(4g
の組織からの画分に相当)を添加し,激しく撹拝し,ついで1分間煮沸した,.一層夜40cで静置後,1,000×g
で5分間遠心した。沈殿を1mlの70%ユタノ−ルで4回洗い,その沈殿をBray,ssolution49)に懸濁して放射活
性を測定した.本酵素をゴルジ装置の標識酵素とした小
GlucanSynthetaseII−RaylO7)の方法に従い測定した.175mMの放射性を持たないUDPGと175nCi
[14c】UDPG(260Ci/mol)を含んだ50mMTris−HCl緩衝液(pH80)40pLに100FLlの酵素液を添加し,250cで
15分間反応させたr その後glucansymthetaseIの場合と同株にして反応生成物を抽出し,その放射活性を測定し
た.本酵素は原形質膜の標識酵素とした..
Catalase−Ltick108)の方法に従い測定した,67mMのリン酸カリウム緩衝液(pH72)248mlに20〟lの酵
素液と625倍に希釈した特級のH202を500FLl添加し250cで反応させた.括性はH202の分解による240nm
の吸収の減少により測定したい 本酵素はミクロボディ・−の標識酵素とした.
〔チトクロムP−450の定量〕
チトクロムP−450は,大村と佐藤87)の方法に従って第3章で述べたようにして定量した小
〔タンパク質の定量〕
タンパク貿はLoⅥyら52)の方法に従い,BSAを標準タンパク質として定量した小
〔RNAの定量〕
RNA量は,以下のように調製したRNA抽出液の260nmの吸光度から貸出した‥ 蒸留水で容量を1mJにし
た試料に1mJのフェノールを添加し,撹拝後3,000Ipmで25時間遠心し,水屑を分取した.これに蒸留水を加
えて2mLにし,5mlのユタノ・−ルを添加して1昼夜40cで静置した.60mgのNaClを添加し,・−200cで4時
間放置後3,000rpmで15分間遠心して沈殿を得た… この沈殿を風乾し,さらにN2気流にて完全に乾固させた.
この乾固物を2mlのSSC(015MNaCl,0015Mクエン酸ナトリウム)に溶解し,そのうちの1mlをとり,こ
れに25mJのユタノ−ルを加えた.−200cで一・夜放置後,沈殿を上述のように遠心で集め,N2気流にて乾固
した.この最終沈殿を1mlのSSCに溶解し,この溶液の260nmでの吸光度を測定したRNAの濃度はFleck
とMunroら109)の方法に従いRNA(pg)=132A26。により睾出した.
〔電子顕微鏡による観察〕
まず,KarnOVSkyllO)の方法に従って固定した試料の薄片を2%ウラニル酢酸で染色した。その後Reynoldsl11)
のクエン酸鉛液で2垂染色を行い,日立HU−12A電子顕微鏡により観察した.
第3節 実験結果
〔細胞分画の条件決定〕
まず,病害サツマイモ塊根組織からミクロソ1−ムを分離するための細胞分画法について検討七た,この組織を,
pHが85と75の2種のま砕液(“材料および実験方法”参照)を用い,ウオ1−リングブレンダーにて最高速
度で30秒間,2回ま砕し,300×glO分間の遠心上清を100,000×gで2時間遠心し,膜画分を調製した.そして
この膜画分を直線スクロース密度勾配遠心(“材料および実験方法”参照)にかけた.いずれのpHのま砕液を
用いても,70%(w/v)スクロ−スタノション上に茶褐色の凝集体(おそらく膜の凝集物),が沈降していた‖
Endoplasmicreticulumの標識酵素としてNADPH−CytOChromecreductase,ミトコンドリアの標識酵素として
CytOChromecoxidaseの両活性分布を調べたところ,前者の活性は35%(w/v)以上の濃度のスクロ・一ス画分に,
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−34一
後者の活性は40−50%(w/v)のスクロース濃度の画分に,それぞれ比較的に広く分布していたぃ すなわち,こ
うした条件ではミクロソ・−ムなどのオルガネラは相当破損されるようであった..そこでこうした破損を極力抑え
るために,江坂と旭112)がミクロボディ・−・の分離に際して使用した組織ま砕法(おろし金によるま砕法)を適用
してみた“この方法で調製した膜画分を前述のようなスクロ1−ス密度勾配遠心にかけたところ,褐色の凝集体は
観察されず,またNAI)PH−CytOChromecreductaseとcytochromecoxidaseの両活性は,それぞれ20−35%およ
び45−50%(w/v)のスクロース濃度の画分に集在していた..すなわち,この組織からミクロソームを分離する
に当たっては,組織をウオ・−リングプレンダ−よりもおろし金でま砕する方がよいことがわかった
一方,ミクロソ−ムから結合型ポリソームが脱落するのを防ぐ目的で,スクロ・−ス密度勾配中に3mMの
Mg2+を存在させてみた.しかし,こうしたMg2十添加はかえって非特異的なオルガネラ間の凝集をひきおこ・
し,不適当であることがわかった。そこで以下の実験では,Mg2+を含まず,1mMEDTAのみを含むスクロー
ス密度勾配を用いることにした。後述するが,少なくともこの材料の場合には,スクロ・−ス密度勾配中にMg2+
が存在していなくても,ミクロソ一ムからのポリソ・−ムの離脱はほとんど起こらないようであった
〔病害組織の10Kと10K−100K沈殿画分におけるipomeamarIOne15−hydroxylaseとcinnamicacid4−hydroxylase
活性の分布における違い〕
病害組織のま砕物の300×glO分間の遠心上晴を,分画遠心によって,10Kと10K−100K沈殿画分に分画し
た」そしてipomeamarone15−hydroxylaseとcinmicacid4−hydroxylase滴性の蘭画分への回収状況を調べた(表
8)。Ipomeamarone15−hydroxylase活性は10Kと10K−100K沈殿画分に1:16の割合で分布していた。これ
に対し,Cinna血cacid4−hydroxylase病性は1:037で分布していた“こうした分布の違いから,雨水酸化酵素
は細胞内局在性を異にしているものと考えられたい
Table8.Distributions ofipomeamar’One15−hydroxylase andcinnamicacid4−hydroxylaseac−
tivitiesbetweenthelOKandlOK−100Kpellet丘・aCtionsfromdiseasedtissue
Fraction
10K pellet
10K−100Kpe丑d
Ipomeamarone CirLnamicacid Cytochromec
15−hydroxylase 4−hydroxylase
oxidase
(pmo仙/g丘・Wt) (pmoUh/g丘・Wt)(nmol/nh/gfrwt)
lO3
167
770
283
Protein
(mg/g丘Wt)
1‖01
0..72
022
1.12
〔病害組織の100K沈殿画分の直線スクロ1−ス密度勾配遠心後のipomeamarOne15−hydroxylaseとcinnamicacid
4−hydroxylase病性の分布の違い〕
1pomeamarone15−hydrox河aseとcizmamicacid4−hydroxylaseが互いに細胞内局在性を異にしていることを立証
するために,病害組織から得た100K沈殿画分を直線スクロース密度勾配遠心にかけて分画し,両酵素活性の
分布を比較検討した‖
まず,タンパタ質に関しては,スクロ・−ス密度勾配遠心後二つの主要なピークが存在していた(図1甘その
一つは密度が109から114g/cm3にかけてかなり広い画分に分布しており,もう一・方は密度が119g/cm3の
所に鋭いピ・−クとして分布していた・RNAは軽い方のタンパク質のピ・−クとほぼ同様な分布をしていた(図1軋
また,NADPH−CytOChr・OmeCreductase活性も軽い方のタンパク質ピ・−ク,つまりRNAピークと非常によく似た
分布をしていた(図15).これらの結果から,軽い方のタンパク質ピ1−クはリボソームが結合したミクロソ・−ム
(租面ミクロソ、−ム)の画分であると考えられた.興味深いことに,典型的なミクロソ・−ムの標識酵素と考えら
れているphosphoryJcho肋e−glyceridetransferase活性のピ−クは,軽い方のタンパク質ピークとは−L致せず,こ
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35
0
40
20
density gradient centrifugation of thelOOK
l朗召曇已s∈吋烏口
⊥
Figl14lDistributionsofproteinandRNAa杜ersucrose
−1詔芯至巨S烏Un一︺
2
10
30
0
駕篭○︶占
30
訟○︼UnS
3
u電︼Ohd
4
舅盲点基・〓 己
7 50
5
霊N亘
10
20
FractionNumber
ュ
pellet丘aCtion丘・Om diseased tissue‖(○),
proteininmghnl;(●),A260;(+),SuCrOSein
w/v
10
Table9。Phosphorylcholine−glyceride tr’anSferase
activityina mixtur・e O董thelightand
heavymicrosomalfractions
Frationa
Experlmentl Experiment2
bmol瓜)
8
3
2
1
5
5
Fraction12(10iLl)
0 7 7
7 2 2
3 1 5
FI■aCtion8(10/Jl)
(pmol瓜)
Fr’aCtion8(10/‘1)+
8
Fraction12(10FLl)
4
3
a Fractions after sucrose density gradient
20
FLractionNumber
Fig。15。DistributionsofenzymeaCtivitiesaftersucr’OSe
density gr・adient centrifugation of thelOOK
pe11et fraction血・Om diseased tissue”(○),
Cinnamic acid4−hydroxylase activityinnmol/
h/0。5mi;(●),ipomeamarOne15−hydroxylase
activityinnmoJJh/0.5mi;(□),CytOChrome c
oxidaseactivityinFLmOl/min/10pl;(□),Cata−
1aseactivityinFLmOl/min/20FLl;(■),NAl)PH−
CytOChromecreductaseactivityinnmol/min/10
pl;(△)and(△),glucansynthetaseIandII
activities,reSpeCtively,inpmoUmin/50FLl;(㊥),
proteininmg/mi;(+),SuCrOSeinw/v
centri−
fugation ofthelOOK peuet fr’aCtion丘’Om diseased
tissue(cf。Fig..15).
のタンパク質ピ−クの軽い方の半分(密度が109−111g/cm3)にかたよって存在していた(図15).このよう
に,phosphorylcholine−glyceridetransferase括性がかたよった分布をしているのは,タンパク質ピ・−クの塞い方半
分にこの酵素の阻害物質が存在して−いるためとも考えられる.そこで,このタンパク質ピ・−クの軽い方と重い方
の両画分を混合し,その活性を測定してみたところ,両画分のそれぞれの活性の和に等しかった(表9).つま
り,阻害物質が存在するという可能性は否定された.これらの結果から,病害サツマイモ塊根組織のrough−
surtAcedendoplasmicreticulumは不均一で,少なくとも2種類が存在するものと推定した。−・方,重い方のタン
パク質ピ1−クはcytochromecoxidaseの活性分布と−・致しており,ミトコンド.)ア画分であると判断した‖
IpomeamarOne15−hydroxylase活性は密度が110から114g/cm3の位置にピ・−クを形成していた(図15)lつ
まり,軽い方のタンパク質のピ1−クの重い方半分に偏在していたこのことから,ipomeamarone15−hydroxylase
活性に関するチトクロムP−450は,phosphorylchohe−glyceridetranSferaseをもっていないrough−Surfacedendo−
plasmicreticulumに局在しているものと考えた.一甥,Cinnamicacid4−hydroxylase活性は,密度が117から
119g/cm3の位置に大きなピl−ク,112から114g/cm3に小さなピークとして検出された(図15)」・小さい方
の活性ピークはipomeamarone15−hydroxylase活性ピ1−クとほぼ一億していたr 一・方,大きな活性ピークは,
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−36−
phosphorylcholine−glyceridetranslerase,CytOChromecoxidase,glucansymthetaseIとⅠⅠ,Catalaseのいずれの活性分
布とも一優していなかったただし,この活性ピl一クは,NADPH−CytOChromecreductase痛性の分席での肩に
相当しているように見えた.
〔傷害および病害組織の100K沈殿画分の直線スクロl−ス密度勾配遠心後のci皿amicacid4−hydIOXylase痛性の
分布〕
Cirmamicacid4Thydroxylaseは,黒斑病菌の感染だけではなく,切断傷害によっても誘導されることが知られ
ている.そこで,病傷害両親織でこの酵素の細胞内局在性に相違があるかどうかを検討した(図16)“傷害組織
からの100K沈殿画分をスクロース密度勾配遠心に
O O O O O O
65432⊥6
5432⊥
000000
かけたところ,Cinnamicacid4−hydroxylase楢性は,病
害組織の場合の主要活性ピ−クの部分にのみ存在して
むSOhUコS
ピ・−クの総括性は両病害組織でほとんど変わらないの
0000000
654321
細胞内局在性を比較検討した.その結果,主要な活性
1
目の病害組織について,Cinnamicacid4−hydroxylaseの
0
あることが示唆されたそこで感染後05日目と1日
2
ピ1−クは病害刺激によってのみ出現する活性ピ・−・クで
0
台−Aモ亘訳書旨○壱hH・博司U
いた.すなわち,病害組織の場合の小さい方の活性
に対↓,小さい方の括性ピ・一クの総領性は感染後1日
目の親織の方が05日目の組織よりも2倍以上に大き
10
激によって誘導されるものであるという想定をますま
す強めさせた.
〔IpomeamarOne15−hydroxylaseおよびcinnamicacid4−
hy血0Ⅹylaseの両活性画分の電子顕微鏡による観察〕
直線スクロース密度勾配遠心彼のcinnamicacid4−
20
30
Fraction Number
かったこのことは,小さい方の滴性ピ−クが病害刺
Fig…16.Distribution of cinnamic acid4−hydroxylase
activity after sucrose density gr’adient centri−
fugation of thelOOK penet丘■aCtions from
diseasedtissuesincubatedforlday(A)andO.5
day(B)after inoculation with Cera叫γStis
jmbYiaklandwoundedtissue(C).(○),aCtiv−
ityinnmoJAl/0”1mi;(+),SuCrOSeinw/v
hy血0Ⅹylase痛性の主要など−ク画分を蒸留水にて約4倍に希釈し,遠心によって膜を回収したところ,その沈
殿は茶褐色と白色の二つの部分に分かれていた.そこでそれぞれを分取し,電子顕微鏡で膜の形態を観察したい
茶褐色の沈殿の場合には,発達したクリステ構造をもつミトコンドリアが多数混在していた(図17B)・・一方,
白色沈殿部においては,1重膜で,大きさが不均一・な顆粒が観察できた(図17C)・
スクロース密度勾配遠心後のipomeamarone15−hydroxylaseの活性画分を同じように電子顕微銃で観察したと
ころ,表面にリボソl−ムが多数付着している顆粒が多数認められたl・従って,この画分はr■Ough−Su血cedendo−
plasmicr・eticulum由来の粒子画分であると判断した(図17A)
以上の結果はipomeamarone15−hydroxylase活性画分とcinnamicacid4−hydroxylase摘性の主要活性画分に存在
する股は,互いに形態を異にしていることを示している.すなわち,この形態観察によって両酵素が互いに細胞
内局在性を異にしていることが確認された.
〔直線スクロース密度勾配遠心彼のチトクロムP−450の分布〕
直線スクロース密度勾配遠心によって得られた租面ミクロソ・−ム画分は,典型的なチトクロムP−450のCO一
差スペクトルを示した(図18)”450nmでの吸収極大は対称的な形を示し,かつ420nmにおける吸収は450nm
の吸収に比べて僅かであった.このチトクロムP−450による吸収は租面ミクロソt−ム画分に相当するタンパク
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Fig.17,Electronmicr・OSCOPicpictur’eSOfthepeak蝕aCtionsofipomeamarOne15−hydroxylase(A)andcinnamicacid
4−hydroxylase(BandC)activitiesa托ersucrosedensitygradientkcentrifugationofthelOOKpe11et丘■aCtion
血OmdiseasedtissueBar−SShowO・5FLm
質ピ−ク領域全般にわたって存在していた(図19)一・方,Cinnamicacid4−hydroxylase活性の主要ピ1−ク画分に
おいては,その存在を確認することができなかった(図19)“このことは,チトクロムP−450含鼠が極めて少な
いことにも起因しているが,同時に混在するミトコンドリアによってCO一差スペクトルからのチトクロムⅠし
450の定量を不確実にさせているためとも考えられた
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− 38−
O
4
O
3
2
450
Wavelength(run)
中SOhUnS
O
400
500
10
20
FractionNumber
Fig1& Differ・enCe SpeCtrumOfCO−boundminus CO−
unboundformsofdithionite−r・educedmicrosomal Fig・19・DistributionofcytochromeP−450aftersucrose
fractionfromdiseasedtissue”Themicrosomal
density gradient centrifugation of thelOOK
fraction was prepared by centrifugation at
pe]et fr・aCtion from diseased tissue‖(○),
24,000rpmlorlh of thelOK−100K pellet
cytochromeP−450innmol/mi;(△),prOteinin
fr・aCtion on a discontinuous sucrose density
mg/mi;(+),SuCrOSeinw/vl
gradientcomposedof14mieachof16and40%
(w/v)sucrosesolutionscontaininglmMEDTA
(pH8.5)ina HitachiRPS27−2rotor‖ The
fractionusedfortakingthespectrumCOntained
82mgprotein/mi
第4節 考 察
〔サツマイモ塊根組織からのミクロソ・−ムの分離とその特性〕
ある酵素の細胞内局在性を検討するに当たっては,第1に,組織からの細胞オルガネラの抽出および分画法が
妥当なものであるかどうかが問題となる.本研究では,まず病害サツマイモ塊根組織一新鮮組織よりも細胞オ
ルガネラの抽出・分離が困難な組織−からミクロソ・−ムを分離する方法を確立したい この方法の最大の特徴は,
他の植物材料の場合と違って,スタロ・−ス密度勾配中にMg2+を加えなかったという点にある.他の植物材料
の場合には,スクロ・−ス密度勾配中のMg2十の存否はミクロソ・一ムの密度変化をもたらす103106113)
.すなわち,
Mg2十が存在しない場合には,リボソ1−ムの離脱が起こり,ミクロソ・−ムの密度が減少するしかし,病害サツ
マイモ塊根組織の場合には,スクロ1−ス密度勾配中にMg2十を存在させるとミクロソ1−ムを含むオルガネラ間
の凝集が起こり,かつまた,Mg2十を存在させない場合にもリボソ1−ムの離脱−ミクロソ・−ムの密度変化−
は観察されなかった.この理由については,今のところ不明のままになっている・
病害サツマイモ塊根組織からの租面ミクロソ・−ムは,スタロ1−ス密度勾配遠心後,タンパク質,RNAおよび
NADPH−CytOChromecr・eductase滴性の分端から判断して,密度が109から114g/cmにかけてかなり広く分布
していた.この粗面ミクロソl一ムの軽い方(密度が1.09−111g/cm3)はphosphorylcholine−glyceridetransferase
を,重い方(密度が110−114g/cm3)はipomeamarone15−hydroxylaseをもっていた・こうした結果からみて,
この組織のroughTSurfacedendoplasmicreticulumは不均二で,少なくとも2種存在するものと想定できる・Endo−
plasmicreticulurnは,核膜,原形質膜,液胞膜等の種々のオルガネラ膜の前駆体であり,またタンパク質の細胞
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ー39一
内輸送においても重要な役割を演じている.従って,必ずしも均一・なオルガネラであるとは断定しえず,細胞内
の位層によってかなりの相違がある可能性がある.現在までのところ,endoplasmicr・eticulumの不均一L性を立証
した論文は見あたらないが,これを示唆する論文はいくつか存在する小例えば,ShoreとTatal14・115)は,ラ,
ト肝からの租面ミクロソ・−ムを,ミトコンドリアに親和性をもった粕面ミクロソ・−ムとポストミトコンドリア上
清から得られる租面ミクロソ・−ムに分けて考えている..この両者に含まれるm−RNAをま乃ぬ加タンパク質合成
系で読ませ,ミトコンドリアタンパク貿をコ−ドしたmRNAは後者の租面ミクロソ1−ムにかたよって分布して
いることを見出している“また,植物においては,Lor・dら106)はヒマ種子の胚乳よりスクロ、−ス密度勾配遠心
を用いて108と112g/cm3の2種のミクロソ−ムを分離し,前者にphosphorylcho血e−Cytidyltransferase,後者
にphosphorylcho血e−glyceridetransferaseがそれぞれ局在することを報告している.病害サツマイモ塊根組織の
場合には,その2種の粗面ミクロソ・−ムがその密度を異にしているため,このようにスクロ・−ス密度勾配遠心で
互いに分離されたに違いないぃ この2種の粗面ミクロソ・−ムは,機能の面からみると,少なくとも脂質代謝で異
なっているのであろうすなわち,密度の軽い方はリン脂質の合成を,重い方はテルペン代謝をつかさどってい
るのかも知れない‖
〔サツマイモ塊根組織でのcinnamicacid4Thydroxylaseの細胞内局在性について〕
前に述べたように,田中ら25)は,傷害サツマイモ塊根組織を用いた結果から,Cimicacid4−hydroxylaseが
endoplasmicreticulum以外のオルガネラ膜に局在するものと想定したが,この考えは一・仮には受け入れられない
ままになっていたSaundersら103)は,田中らのスクロl−ス密度勾配遠心後のNADPH−CytOChromecreductase
活性の分布が非常に幅広いことを指摘し,その遠心条件が不適当であったためにcinnamicacid4Thydr・0Ⅹylaseの
局在性について誤った判断がなされたのではないかと考察している彼らは,Sorghum幼苗のcinnamicacid4−
hydroxylaseが細胞分画でNADPH−CytOChr・OmeCreductaseと挙動を共にすることを示した,例えば,この両酵素
活性は共に,スクロ1−ス密度勾配なかに10mMのMg2+が存在するときは密度が117g/cm3の位置に,存在
しないときには112g/cm3の位置にピークを形成することを示し,Cimicacid4−hydroxylaseがendoplasmic
r・eticulumに局在するものと結論した.
本研究によって,病傷害サツマイモ塊根組織のcinnamicacid4−hydroxylase,少なくともその大部分はendoplas−
micreticulum以外のオルガネラに局在していることが明らかにされた電子顕微鏡による観察から,Cinnamic
acid4−hydroxylaseが局在するオルガネラは単一膜で囲まれた不均一Lな大きさの顆粒であることが示唆された
この顆掛ま,その密度から判断して滑面ミクロソ1一ムであるとは考えられない今のところこのオルガネラが何
であるかは不明のままになっている…
Madyasthaら104)は,Caiharanぬs7VSelLSの黄化幼苗を用い,チトクロムP−450関与のモノテ)t/ペンの水酸化
酵素がプロパキュオ−ル膜に存在することを示唆している‖サツマイモ塊根組織のcinnamicacid4−hydroxylase
もプロパキュオールないし液胞膜(トノプラスト)に局在している可儲性が十分考えられる.この可能性を検討
するために,Cinnamicacid4−hydroxylase活性を有するカルスからセルラーゼオノヅカRSによりプロトプラスト
を調製し,それより液胞を単離することを試みた‖ このようにカルスを用いたのは,塊根組織とは違ってデンプ
ン顆粒が存在しないことから,より液胞の分離に適していると考えたからである.しかし,液胞の単推は遂に成
功しなかったlまた,病傷害サツマイモ塊根組織の細胞分画で,液胞の標識酵素であるacidphosphatase活性が
どのように挙動するかについても検討してみた‖ しかし,その活性は,ほとんど100K沈殿画分に回収されな
かった‖ ただし,スクロ1−ス密度勾配遠心後,Cinnamicacid4−hydr・0Ⅹylaseの活性画分に僅かではあるが検出され
た従って,現在までのところ,Cirmamicacid4−hydroxylaseがプロパキュオールないし液胞の膜に存在するとい
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ー40−
う考えは否定もできないし,肯定もできないもし,プロパキュフトールないし液胞の膜に局在するとすれば,細
胞生物学的にみて極めて興味深いことである.というのは,一般にポリフユノ1−ル化合物は液胞中に集在してい
るからである116)∴すなわち,Cinnamicacid4−hydroxylaseによって,桂皮酸が♪−クマ・−ル酸に代謝されると同時
に,その代謝産物が細胞質側から液胞へと移行されるという可能性が生まれるからであるこうした意味で,
cinnamicacid4−hydroxylaseが局在するオルガネラの同定およびL)Tクマール酸やその後の代謝系の細胞内局在性
についての今後の研究が注目される‖
サツマイモ塊根組織のcinnamicacid4−hydroxylaseの局在性について興味深いもう一つの事実は,病害組織で
は少量活性が租面ミクロソーム画分にも存在するということである小 このことについては,まずこの少畳の活性
と主要な活性が存在する2種のオルガネラ間になんらかの関係があるのかどうかが問題となる.黒斑病菌感染後
05日目と10日目の舶織を比較してみると,05日目の組織よりも10日日の組織の方がこの少量画分の活性が大
きい.このことからみて,少なくとも,endoplasmicreticulumで合成されたcinnamicacid4−hydroxylaseが膜とと
もに主要な活性が存在するオルガネラに移行していくことの反映とは考えにくい.むしろ,この少盈活性画分は
病害刺激によって特異的に出現するものだと考えた方が妥当のように思われる..この少量活性画分のcimic
acid4−hy血oxylaseは,主要活性画分のそれとは細胞内局在性の上でも機能の上で異なっているのかもしれない小
例えば,同じ桂皮酸を材料とする別々の種類のポリフェノール合成系(例えば,クロロゲン酸合成系とリグニン
合成系)が細胞内局在性を異にしているという可能性も考えられよう.
〔サツマイモ塊根組織におけるチトクロムP−450の機能と細胞内局在性の多様性について〕
本研究でipomeamarOne15−hydr・0Ⅹylaseとcinnamicacid4−hydroxylaseが細胞内局在性で異なることが明確と
なった.このことはまた,両酵素活性に関与しているチトクロムP−450が互いに異なるものであることも示し
ている.さらに,ipomeamarone15−hydroxylaseは,租面ミクロソ1−ムの−・部のみに存在しているのに射し,チ
トクロムP−450は租面ミクロソ1−ム全体にわたってほぼ等しい比含量(タンパク質当りの含量)を示した.こ
れらの事実は,病傷害サツマイモ塊根組織には,多種多様なチトクロムP−450が,細胞内局在性も異にしなが
ら存在していることを示している.,ちなみに,ipomeamarone15−hydroxylase活性画分のチトクロムP−450が全
てこの活性に関与しているものとすると,その回転回数は毎分1以下となる.チトクロムP−450の反応回転数は,
その種類によって異なるが,およそ毎分1−600回で,上の回転回数が例外的に小さすぎるとはいいきれない..
しかし,高等植物におけるチトクロムP−450関与の水酸化酵素を例にとると,切断後96時間25mMMnCl2で処
理したJeruSalemaItichoke塊茎のcinnamicacid4Thydroxylaseは約1942),切断傷害後32時間目のジャガイモ塊茎
のcinnamicacid4−hydroxylaseは約2040),CadwmndluSrOSeuS幼苗の10,000×g,15分から15,000×g,15分の沈
殿画分のgeraniolhydroxylaseは17439)である.これらのことからみて,毎分1以下という回転回数は小さす
ぎるといえよう”従って,ipomeamarone15−hydroxylase活性画分のチトクロムP−450も極めて多様なものだと
考えた方が妥当であるといえる.
第5章 サツマイモ塊根組織のチトクロムP−450系酵素の酵素化学的性質
第1節 序 論
1975年,RichとBendan97)は,分光学的および磁気学的実験手法を用い,種々の高等植物組織においても,
哺乳動物肝等で詳しく研究されているチトクロムP−450をはじめとするミクロソ・−ム電子伝達系の成分が広範
に存在することを示した.−・方これと相前後して,高等植物の二次代謝系には,チトクロムP−450が関与して
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−41−
いる反応が存在することが示唆されたそしてその後,つぎつぎと類似した数多くの研究結果が報告され,高等
植物におけるチトクロムP−450の存在意義が日増しに強くなってきている・・しかし,こ・れらの研究はミクロ
ソ・−ムを用いてチトクロムfし450の存在ないしその関与を示唆する程度にとどまっている‖ そして,これらの
チトクロムP−450が関与していると思われる反応が,哺乳動物肝と同じような電子伝達系によって起こってい
ると直接的に確証づけるまでにはいたっていない.
1979年,MadyasthaとCoscia39)は,Ca伽ranthusrose錐S幼苗のチトクロムPT450関与のgeraniolhydroxylase
に着目し,まず高等植物としては初めて,NADPH−CytOChI・OmeCreductaseを,その租ミクロソ1−ム画分より界
面酒性剤で可溶化し,部分精製した.−・方,チトクロムP−450も同じ租ミクロソ・−・ム画分より可溶化し,
DEAE一セ)t/ロpスカラムクロマトグラフイ一により分画した(ただし,この画分はger・ami01hydroxylase活性を
僅かながら呈している)..さらに,クロロホルムーメタノ−ル(2:1,Ⅴ/v)で粗ミクロソ1−ム画分より脂質を抽
出し,これら3者を混合することにより,有意なgeranl01hydroxylase活性の出現を観察しているlこれは,高
等棉物におけるチトクロムP−450に関する研究としては画期的な再構成実験として注目に催する・・しかし,理
想的にはそれぞれ完全に精製した酵素標品が用いられるべきである・最近,東らはチューリップの球根より,電
気泳動的に単・一・なまでにチトクロムP−450を精製した,また,BonnerotらI17)はジャガイモより,ミクロソ−
ムの電子伝達系の構成成分の一つであるチトクロム∂5を電気泳動的に主要なバンドを呈するまでに精製した‖
前章までに述べたように,病傷害サツマイモ塊根組織には,基質特異性を異にする2種のチトクロムP−450
関与の水酸化酵素−ipomeamarone15−hydr・0Ⅹylas与とchmicacid4−hydroxylase−が存在し,それらは細胞
内局在性においても明白な違いを示し,前者はendoplasmicreticulumに,後者は未知のオルガネラ膜に局在して
いることが示された∴ 高等相物の同一組織において,複数種の区別されるチトクロムP−450関与の水酸化酵素
が同時に検出されている例はまだ少なく,しかも局在性において相互に異なっている例はまだない..そこで,こ
れらの水酸化反応の分子機構を明らかにし,ひいては両水酸化反応に関与している電子伝達系の相同相違性を明
らかにすることは高等植物におけるチトクロムト・450関与の水酸化酵素の研究に新しい方向性を与えるものと
考えられる.そこで,NADPH−CytOChromecreductaseとチトクロムP−450を分離精製し,その性質を明らかに
することを試みた.,チトクロムP−450の精製については成功しなかったが,NADPH−CytOChromecr・eductaseは
電気泳動的に均一・なまでに精製することができた.本研究によって,サツマイモNADPH−CytOChromecreduc−
taseは,哺乳動物において詳しく研究されているNADPH−CytOChr・OmeP−450reductaseと酷似していることが示
された..例えば,この酵素は分子量が約6,000の膜結合ドメンと分子鼠が約75,000の親水性ドメンからなってい
ることが示唆された.こうしたことから,本酵素は本来チトクロムP−450を還元する酵素であると判断され,
高等植物としては初めて,NADPH−CytOChromeP−450r・eductaseを完全精製したとみなすことができる‖
第2節 材料および実験方法
〔植物材料〕
名古屋大学附属農場で秋収穫されたサツマイモ塊根(Ipomoeabatatas,品種.農林1号)を使用直前まで13∼
150cで貯蔵しておいたり使用に際して,サツマイモ塊根を水で十分洗い,その乗組織から輪切り切片(厚さ5
m)を調製した.その切断面に第2章で述べたように黒斑病菌の内生分生子懸濁液を塗抹し,湿潤条件下300c
で1日間インキエペ・−卜したこの輪切り切片より感染部を除去し,残りの非感染部を病害組織として使用し
た.
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ー42−
〔ミクロソ・−ム画分の調製〕
病害組織(12Kg)●を04Mスクロース,1mMEDTA,10mMKCl,1%(w/v)アスコルビン酸および80gの
ポリクラ−ルATを含んだ16Lの50mMTris−HCl緩衝液(pH85)中でプラスチック製のおろし金を用いてま
砕した.このま砕液を2垂のナイロンガ−ゼでこし,ろ液を300×gで10分間遠心した.その上清を100,000×g
で1時間遠心し,沈殿を1mMEDTA(pH85)を含んだ04Mスクロl−ス溶液72mlに懸濁した(100K沈殿画
分)‖ 5mlの100K沈殿画分を1mMEI)TA(pH85)を含んだ3mlの70%,14mlの40%,14mlの60%(w/v)
スクロ・−ス溶液から成る不連続スクロ1−ス密度勾配にのせ,日立RPS27−2ロ一夕一にて24,000叩m,1時間遠
心した.16%と40%のスクロース溶液の境界領域の画分をミクロソ−ム画分として分取した以上の操作は2−
40cで行った.
〔チトクロムP−450の可溶化〕
08mlのミクロソーム画分(115mgprotein/ml)に,最終的にリン酸カリウム(pH75)が50rnM,DTTが1
mM,EDTAが1mM,グリセロ−ルが40%(v/v),コ1−ル酸カリウムが目的とする濃度になるよう加え,その容
量を2OmLに調整した.そして,40cで60分間放置した小 その後,1mMDTTと1mMEDTAを含む50mM7)
ン酸カリウム緩衝液(pH75)で2倍に希釈し,100,000×gで2時間遠心した.この上清を可層化画分とし,沈
殿は1mMDTT,1mMEDTAおよび20%(v/v)グ.)セロ−)t/を含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH75)4
mMに懸濁して不溶画分とした.
〔NAl)PH−CytOChromecreductaseの精製〕
ミクロソ1−ム画分を3倍に希釈し,最終的にTIis−HCl(pH77)が50mM,EDTAが1mM,DTTが1mM,グ
リセロ−ルが20%(Ⅴ/v),タンパク繋が35mg/mJになるように調整した.その後,最終濃度が2%(Ⅴ/v)にな
るようにエマルゲン913を添加し,15分間マグネチ・yクスタ・−ラ・−で撹拝した.そして,100,000×gで1時間遠
心し,上晴を可溶化画分とした..
上清画分を,20%(v/v)グリセロl−)t/,1mMEDTA,01mMDTTと05%(v/v)エマルゲン913を含む
50mMTris−HCl横衝液(pH77)で前もって平衡化させておいたDEAE−セルロ1−ス(DE−52,Whatman)カラム
(4×105cm)にかけた.そのカラムを270mlの平衡化緩衝液と同じ緩衝液で洗い,03MKClを含んだ同じ緩
衝液で酵素を溶出し,活性画分を回収した(DEAE−セルロ1−スカラムからの溶出画分)
この溶出画分を,20%(v/v)グリセロ一)L/,002mMEDTA,01mMDTTおよび02%(v/v)エマルゲン913
を含む10mMリン酸カリウム横衝液(pH77)に対して透析し,続いて透析に使った緩衝液と同じ緩衝液で平
衡化させておいた2′,5′−ADP−セファロ1−ス4Bカラム(2×67cm)にかけた”酵素の溶出はYasukochiと
Mastersl18)の方法に多少改変を加えて行った.まず,20%(v/v)グリセロ・−ル,04mMEDTA,01mMDTT
および02%(Ⅴ/v)エマルゲン913を含む200mMリン酸カリウム薇衝液(pH77)200mJで洗い,次に平衡化耗
衝液150mLで洗った後,5mM2′−AMPを含んだ平衡化緩衝液で酵素を溶出した(アフィニティ1−カラムからの
溶出画分).
このアフィニティ1−カラムからの溶出画分を,20%(v/v)グリセロ1−ル,002mMEDTA,01mMDTT,01
MKClおよび02%(v/v)エマ)t/ゲン913を含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH77)で前もって平衡化させ
ておいたセファデックスG−100カラム(09×53cm)にかけ,同じ緩衝液で酵素を溶出させた.
以上の操作は2−40cで行った.
〔100K沈殿画分の直線スクロ・−ス密度勾配遠心〕
100gの病害組織より調製した5mLの100K沈殿画分を1mMEDTA(pH85)を含んだ3mLの70%(w/v)ス
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ー43 −
クロ1−スクッションと16−・60%(w/v)までの直線スクロ−ス密度勾配よりなる溶液上にのせ,日立RPS27−2
ロ一夕−中で24,000rpm,4時間遠心した.遠心後その密度勾配を等量に分画した
以上の操作は2∼40cで行った.
〔ポリアクリルアミドゲル電気泳動〕
非変性条件下での電気泳動は,Da−鹿119)の方法に従い,01%(w/v)トリトン‰100を含んだ56%(w/v)
ポリアクリルアミドスラブゲル中で40cにて行った…電気泳動後,ゲルはクマシープリリアントブル1−Rによ
るタンパク質染色またはFanとMasteIS120)の方法によって満性染色したすなわち,028mMNADPHと飽和
浪度の塩化ネオテトラゾリウムを含む56mMリン酸援衝液(pH77)中で室温にてインキエペ1−トし,滴性染
色した‖
01%(w/v)のSDSの存在下での電気泳動は,Laemmh121)の方法に従い,10%(w/v)ポ7)アクリルアミド
スラブゲル中で行った.電気泳動の前に,試料を2%(w/v)SDS,5%(w/v)メルカプトエタノ1−)t/と10%
(w/v)スクロ−スを含んだ65mMTris−HCl綾衝液(pH68)中で1000c,2分間加熱した”電気泳動後,ゲルは
上述のようにタンパク質染色した‖
〔NADPH−CytOChromecreductase活性の測定〕
NADPH−CytOChromecreductase活性は2章で述べたように測定した..
〔タンパク質の定蚤〕
タンパク質はLoⅥyら52)の方法に従い,BSAを標準タンパク質として定量した‖ タンパク質定量時生じる
エマルゲン913による白濁を㌧抑えるために,SDSを最終濃度が05%(w/v)になるように添加して測定した.
〔チトクロムP−450の定量〕
第3節 実験結果
〔ミクロソ−ム画分からのチトクロムP−450の可溶
化〕
病害サツマイモ塊根組織からのミクロソ・−ム画分を
用い,pH80での各種界面活性剤(コ1−ル酸,デオ
へ□■■ .〇︶○等よじ己P月UOまU
3章で述べた方法により定量した.
キシコ−ル酸,ルブロールPX,エマルゲン108,810,
950,トリトンⅩ−100,N−101)によるチトクロムP−
0
1.00
2,.O
Cholate(%,V/v)
450の可溶化状況を比較検討した非イオン性界面病
性剤であるルブロ1−ルPXとトリトンⅩ−100は,デ
Fig20SolubilizationofcytochromeP−450fr・OmSWeet
potatorootmicrosomes・Fourmnlilitersofthe
オキシコ1−ル酸などのイオン性界面活性剤に比べて,
microsomalf【aCtionataproteinconcentr’ationof
ll5mg/mi血・Om diseased tissue was treated
可溶化率でややよい結果をもたらした.しかし,哺乳
with the indicated concentrations of potassium
動物ではチトクロムP−450の可溶化によるコ−ル酸
が用いられており,高等植物でもデオキシコ・−ル酸や
コ−ル酸が用いられていること,またコ・一ル酸のミセ
ルは他に比して小さいことを考慮し,コ・−ル酸によっ
cholateinthepresenceof40%(v/v)glycerolas
describedin“Materials and Methods,”then
centrifugedatlOO,000xg for2h小(△),prO−
tein in the supernatant in mg/mi;(○),
cytochromeP−450inthesupematantinpmoV
て可溶化することとし,さらにその詳しい条件につい
rnl;(●),CytOChromeP−450ina4−misuspen−
sionofthepr・eCipitateinpmol血;(ロ),SumOf
cytochr・Ome P−450contentsinthe supernant
て検討した
andprecipitate
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ー44 −
コ1−ル酸による可溶化は,40%(v/v)グリセロIpル,1mMDTT,1mMEDTAを含んだ50mMリン酸媛衝液
(pH75)中で行うと可溶化率,可溶化彼のチトクロムP−450の安定度に関して共によい結果をもたらした..こ
の条件下で,種々濃度のコ・−ル酸による可溶化率を調べた(図20)‖1%(Ⅴ/v)のコ1−ル酸によって,ミクロ
ソ1−ム画分に存在していたチトクロムP−450の60%以上を可溶化することができたい ただし,他の膜タンパク
質もチトクロムP−450と同じように可溶化され,いわゆる選択的可音容化はできなかったい 可溶化画分のCO一差
スペクトルは典型的なチトクロムP−450のそ・れを示し,450nmでの吸収極大ピークは左右対称性を示した.ま
た,420nmでの吸収極大は棲めて′トさかったので,可溶化の過程で,チトクロムP−450の変性はほとんどおこ
らなかったものと判断した.
可溶化画分をDEAE一セルロ1−スかラムクロマトグラフィ1−にかけてみたが,チトクロムP−450は変性のため
か回収率が極めて悪かった= また,チトクロムP−450はCM−セルロ−・スには吸着しなかったい さらに,哺乳動
物のチトクロムP_450の精製でよく使用されるアミノヘキシルーセファロ1−ス4B122)についても検討してみた
が,僅かにしか吸着されず,大半はカラムを素通りした.
〔NADPH−CytOChromecreductaseの可溶化〕
NADPH−CytOChromecreductase病性は,新鮮および傷害両サツマイモ塊根組織にくらべ,病害組織の力が高
いので,病害組織を抽出材料として用いた.
ミクロソ−ムからのNADPH−CytOChromecreductaseの可溶化のための界面活性剤としては,非イオン性界面
活性剤であるエマルゲン913を用いた.病害組織からのミクロソ・−ム画分を2%(Ⅴ/v)のエマルゲン913で処理
すると,ミクロソ1−ム画分の全てのNADPH−CytOChromecreductase活性が可Li容化画分に回収された.,Madyastha
とCosia39)は,CadlWanuluSrOSe甚Sの場合に,コl−ル酸によって可潜化している小 しかし,コpル酸によって可
501
き≡︼U<
00
50
100
Fr・aCtionNumber
150
Fig。.21.DEAE−Ceuulosecolumnchromatographyofthesolu−
bilized丘・aCtion.The丘action(0..53mgprotein)was
applied to a DEAE−Ceuulose(DE−52,Whatman)
COlurrm(2×67cm)preequuibratedasdescribedfor’
theenzymepuriacationin“MaterialsandMethods,”
then the proteins were elutedwith a血ear KCI
COnCentrationgradient&’OmOtoO4Min200mlof
the buEer used for preequ山brating the column
Fractions of 2mi each wer・e COneCted.(●),
NAl)PH−CytOChromecreductaseactivityinunits/mi;
(○),prOteininmg/5ml;(−−T),KClinM…
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一45一
溶化した酵素は著しく不安定であった特に,イオン交換クロマトグデフイ−,ゲルろ過に際しては著しい活性
減少がみられ,その活性減少はFMNの共存によって抑えられた・このことはコ・−ル酸によって可層化した
NADPH−CytOChromecreductaseは補欠分子族と考えられるFMNが遊離しやすくなることを示唆している・
〔NADPH−CytOChromecreductaseの精製〕
NADPH−CytOChromecreductaseの精製法を検討する目的で,まず可溶化した画分をDEAE−セルロ−スカラム
にかけ,直線KCl濃度勾配によって酵素を溶出してみた.015MKClに相当する領域にNADPH−CytOChromec
reductase活性の大きなピ−クが検出されたが,同時に少量の病性が主要ピ−クの前後に幅広く存在していた
(図21)。主要活性ピ−ク画分(Noい116画分)をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ,活性染色したところ,
三つの活性バンドが検出された(図22)主要活性ピ−・ク画分よりも低い濃度のKClで溶出される活性画分
(No.95画分)は,主として,移動度の最も小さい成分を含んでいた(図22)‖ これに対し,主要活性ピ−・ク画分
よりも高い濃度のKClで溶出される活性画分(No.137画分)は,主に,移動度の最も大きい成分を含んでいた
(図22).三つの成分のうち,中間の移動度を示す酵素成分は常に検出されるとは限らなかった.また,検出され
た場合にも,図22に示すように,その活性バンドは非常に薄いものであった.
このように,可溶化画分にはポリアクリルアミドゲル電気泳動で互い
に区別しうる3種のNADPH−CytOChrome
cr・eductaseが存在していたが,この3種の成分を区別することなしに,材料および実験方法で述べたように可
溶化,精製した.精製の最終段階であるゼファデックスG−100カラムクロマトグラフィ1一においては,二つの
活性ピ−クが得られた(図23)早く溶出される活性のピ−ク画分(No11とNo.12画分)は,ポリアクリルア
ミドゲル電気泳動での移動度が最も小さい酒性画分のみを含んでいた.−・方,後の方で溶出されるピ1一ク画分
(No.17とNo18画分)は,主として,移動度の最も大きい病性画分を含んでいた(図24),.前者の画分につい
ては,タンパク質に関しても,ポリアクリルアミドゲル電気泳動後1本のバンドしか存在せず,そのバンドの位
置は活性染色バンドの位置と一致していた(図25)り このことから,この画分は,移動度が最も小さいNADPH−
cytochromecreductaseの均一精製標品であるとみなした。
表10は精製の結果をまとめたものである.セファデブクスG−100カラムクロマトグラフイ・−後の両方の病性
0.5
0.4
き03
Jコ U
亘0.2
0い1
00
◎
12 3
Fig22”Electrophoresis of elutefractions丘・Om the
DEAE−Cellulose cohm(cfFig.21.)inthe
nondenaturingbu鮎ronthepolyacrylamidegel
Thegelwasstainedforactivityh Lanesl・2
and3had50FLleachoffr・aCtionsNo95,116and
137inFig.21,reSpeCtively
10
20
30
も。FractionNumber t
Fig.23”SephadexG−100gel丘Itr’ationoftheeluate丘■Om
the a航nity columnNADPH−CytOChrome c
reductase activitylS eXpreSSed as units/ml.
Vo,thevoidvolume丘aCtion;V,thetotalbed
volume丘・aCtion,
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ー46−
12 3 4 5 6 7 8
Fig.,24… Electrophoresis of elute 丘aCtions 丘−Om the Fig25 Electrophoresisofthemostpurinedpreparation
Sephadex G−100column(cf.Fig.23.)inthe
(丘actionNo・11inFig”23l)inthenondenaturing
nondenaturingbufEeronthepolyacrylamidegel
bu8=eronthepolyacrylamidegel.Theam0umt
A20−iLlportionofeachfr■aCtionwasapphedto
OfproteinapphedtothegelwasO.76jLgeaCh
thegel,Whichwassubiectedtoelectrophoresis
forlanesland2and5.OFLgiorlane3“Lanel,
Stained fbr activitywithout NADPH;1ane2,
Stainedforactivity;lane3,Stainedforprotein
and then stained fbr activityLanesl−8;
fractionsNo.1l−18inFig23.,reSpeCtively
TablelO.PurificationofNADPH−CytOChr’OmeCreductase血OmSWeetpOtatOr−00tmicro−
SOmeS
prep血step
1
1
5
2
1
5
▲h
7・
3
0り175
278
3
7
0
A山
8
O 049
1
5
0“018
O 034
0
1﹂
6
7
0,014
FractionNo“18b
4
Fr・aCtionNo,11b
8
5
2
Eluate血OmDEAE−Cellulosecolumn
Eluatefromannltycolumn
Eluatefr・OmSephadexG−100column
6
Solubilized丘・aCtion
(。dtt。in,
2 0 0 nW
7 6 7
6 4 3
1
1
Microsomal血aCtion
paa
28い6
29.0
a Theamountoractivityfroml6kgoftissue
2
bThefr・aCtionsindicatedinFig.23
ピ一ク画分とも,そのNADPH−CytOChromecr・eductaseの比活性は約29units/mgpr・Oteinであった・
〔’3種のNADPH−CytOChromecreductaseの性質〕
ポT)アクT)ルアミドゲル電気泳動で互いに移動度が異なる3種のNADPH−CytOChromecreductaseについて,
それらの性質を比較すると共に,それらの相互関係について調べた
まず,これらの3分子種の比活性が同じであるかどうかを検討してみた2′,5′−ADP−セファロ−ス4Bカラム
を用いたアフィニテイ・−カラムクロマトグラフイ¶・・−一後の活性画分をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ,タ
ンパク質と活性の両染色を行った(図26)この画分は,これら3種のNADPH−CytOChromecreductase以外のタ
ンパク質は含まず,極めて高度に精製されていた“中間の移動度を示す分子種は,タンパク質染色でははっきり
と現れているのに対し,酒性染色では極めて薄いバンドを示した.このことから,この分子種は比活性が極めて
′トさいものと判断した山方,セファデックスG−100カラムクロマトグラフイ一後の遅く溶出される活性ピ・−
ク画分は,ポリアクリルアミドゲル電気泳動での移動度が最も大きいNADPH−CytOChromecreductaseの外に,
比活性が極めて小さいと思われる中間の移動度を示す分子種も含んでいる.それにもかかわらず,この遅く溶出
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−47 −
される活性ピーク画分の比活性は,早く溶出される画分のそれとほほ同じである..このことから移動度が最も大
きい分子種が−・番比括性が高く,ついで移動度が最も小さい分子種が高いものと推論される.
ついで,これら3種のNADPH−CytOChromecr・eductaseの分子量について検討した.精製の最終段階であるセ
ファデックスG−100かラムクロマトグラフィ1−の溶出パタ・−ンから,それぞれの分子量を求めようと考えた.
しかし,このカラムクロマトグラフイ・−での分子量標準タンパク質の溶出速度は,通常のゲルろ過での規則性を
示さなかったこれは,おそらく緩衝液中に存在していたエマルゲン913によるのであろうと推定した“そこで,
2′,5′−ADP−ゼファロ−ス4Bカラムクロマトグデフイ一後の活性画分をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ,
三つの晒性バンドを切り出して,それぞれSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけて,変性条件下での分
子量を求めた(図27)その結果,非変性条件下でのポリアクリルアミドゲル電気泳動で最も早く移動する分子
種は75,000,中間の移動度を示す分子種は72,000,最も遅く移動する分子種は81,000の分子量であることがわ
かった.
3種のNAI)PH−CytOChromecreductaseのうち,分子量の小さい力の2種が,分子量の最も大きい分子種のプ
ロテアーゼによる部分分解産物でないかどうかを検討した..2′,5′−ADP−セファロ1−ス4Bカラムクロマトグラ
フイ・一後の活性画分をトリプシンで処理したのち,SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけたところ,こ
の画分はもともと3種のNADPH−CytOChromecreductaseを含んでいたにもかかわらず(図26および図28,レー
ン1;図28で用いた試料では,中間の移動度を示す分子種は検出されなかった),分子義が75,000のポリペプチ
ドのみが検出された(図28,レーン2).また,セフ・アデックスG−100カラムクロマトグラフイ・−で早く溶出さ
れる画分,すなわち分子義が81,000の分子量のみを含む画分(図28,レーン3)をトリプシンで処理したところ,
分子届が75,000のポリペプチドが生成された(図2室,レーン4)・これらの結果は,少なくとも分子遍75,000の
分子種は,分子量81,000の分子種が親織中に存在して
いたプロテア−ゼの作用を受けた結果生成されたもの
であることを示唆している‖ このことは,病害組織か
94−・−
らの100K沈殿画分の直線スクロ−ス密度勾配遠心
67一 疇・−■
彼の3種のNAI)PH−CytOChromecreductaseの分布状
○
1 2 3 4
−−−−
や
Fig・27lSDS−pOlyacrylamidegelelectrophor・eSisofthe
thr・eeNADPH−CytOChromecreductasespeciesl
The eluate丘romthe aBinitycolumnwas sub−
jected to polyacrylamide gelelectrophoresis
under nondenaturmg conditions”The three
i・−“二・・鵬…・㊦
Ⅰ
activebandswereseparatelycutout,heatedat
lOOOcinthe presence of SDS and mercap−
toethanolas describedunder“Materials and
2
Fig.,26‖ Electrophoresis ofthe elute丘omthe a飽血y
COlunninthe nondenatu血g buffer on the
polyacrylamidegel.Lanel,appliedwiththe
eluatecontaininglい6iLgprOteinandstainedfo
activity;1ane2,apphedwiththeeluatecontain−
mg9“6FLgprOteinandstainedfor’prOtein
Methods,”and applied to the SDS−
polyacrylamidegel.Lanel,mOlecular’Weight
markers(moIwtXlO ̄3valuesareirKlicatedon
theleftsideofthephotograph);1ane2,themost
slowiymigratingbandfor’Fig.22,;lane3,the
middle band for Fig‖22.;1ane4,the most
rapidlymigratingbandfbrFig22
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−48一
態を調べた実験でも示唆された(図29)..このスク
ロ1−ス密度勾配遠心後,NADPH−CytOChromecreduc−
ねSe活性は,遠心管の最上部層から下層にかけて広
く分布していた(図29A)“可溶性タンパク質が存在
していると想定される最上層部には,分子量が75,000
の分子種が存在していた(図29B).一・方,分子量が
81,000の分子種は,密度勾配中に広く分布し,オルガ
ネラ膜に結合した状態にあることが示された(図29
B)‖ なお,これらの実験では分子塵が72,000の分子
種が検出されなかったので,この分子種は分子量
1 2
Fig・28”Electrophoresis of trypsin−digested NADPH− 75,000の分子種がさらにプロデア・−ゼの作用を受けて
cytochrome c reductaseinthe nondenatu血g
生成されたものであろうという想定については検討す
buffer on the polyacrylamide gel The eluate
f[・Omthea疏血tycolumn(1anesland2)andthe ることができなかった
most purified preparation(丘aCtion No・11in
以上の結果から,分子量81,000の分子種がintactな
Fig.23”;lane3and4)were digestedwith
trypsinatafinalconcentrationof25FLg/miatNADPH−CytOChromecreductaseであって,他の分子
OOc,andthedigestionwasstoppedbyaddingof 種はプロデア一ゼによる分解産物であることがわかっ
trypsininhibitortoafinalconcentrationoflOOFL
g/mL SamplesoflOOFLleachwereappliedto たので,分子量が81,000の分子種についてのみ基質に
thegelwhichwassu切ectedtoelectrophoresis
andthenstainedfbrenzymeactivity.LaneSl
対するMichaelis定数(Km)を求めた.NADPHおよ
and3,digestedlor Omin;1anes2 and4,
びチトクロムcの両基質に対して,Lineweaver−Burk
digestedfb30min
プロットはともに直線性を示し,この酵素がMト
chaelis型の酵素であることを示した(図30).このプ
ロットより,NADPHおよびチトクロムcに対する
Kmは,それぞれ77,2−3/ノMであると算出された.
70
B
6060
50
q〉
40≡
U 30(完
20
10
-O
10
Fr・aCti。nNumber
20
I2 54567 8 910
Fig29.Distributionsofthediffer’entNADPH−CytOkchlOmeCreductasespeciesafterlinearsucrosedensitygradient
CentrifugationofthelOOKpellet丘’aCtion”A:distributionsofNAI)PH−CytOChromecreductaseactivity(●,
mits/mi)and protein(○,mg/mi)after centrifugation.(△),SuCrOSe COnCentrationin%(w/v)。B:
Electrophoresisof血aCtionsaftercentrifugationinthenondenaturingbu鮎ronthepolyacrylamidegel.Each
丘■aCtion(0.5mi)wastr’eatedwithEmulgen913asdescribedlbrsolubilizationoftheenzymein“Materialsand
Methods,”then50−FLIsolubnized血■aCtionswereappliedtothepolyacrylamidegelThegelwasstainedfor
activityLanesl−10,丘■aCtionsNo2,4,6,8,10,12,14and16,reSPeCtively
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ー49−
第4節 考
15
察
〔チトクロムP−450の可溶化〕
?,
高等植物のチトクロムP−450の町溶化に関する報
音10
くっ
告例は極めて少なく,チエ・−リップ球根38),Cα励r
U
む ≧
an助usraseus幼苗39),JeruSalemartichoke塊茎41)な
5
ど数例にすぎないハ これらの可溶化には界面活牲剤と
0
0,0 0.1 02 0い3 0.4 05
(Substrateconcentration)NI
Fig30‖ Lineweaver−Burkplots ofthe activityofthe
してデオキシコール酸,リネックス690,エマルホゲ
ンBCがそれぞれ用いられているが,本研究では,哺
乳動物のチトクロムP−450の可1容化で最も頻繁に用
most purified preparation(丘−aCtion No”11h いられているコ1−・ル酸を用い,病害サツマイモ塊根ミ
Figh23.).Theinitialvelocity and substrate
concentr・ationareexpressedasunits/mienzyme
preparation and FLM,reSpeCtivelyl(○)and
(○),NADPHandcytochromecasthevariable
concentrationsotsubstrate,reSpeCtively
クロソ−ムからチトクロムP−450を可溶化した.チ
トクロムP−450を変性なく可溶化することは,単に
その精製のための第1段階となるばかりではなく,そ
のCO一差スペクトルを解析する上で試料の濁りによ
る影響を解消できる面でも重要であると考えられている哺乳動物に比べてチトクロムP−450含量が極端に低
い高等植物においては,変性なくチトクロムP−450を可溶化することは,後者の理由で極めて意義深い.本研
究では,可溶化チトクロムP−450標品のCO一差スペクトルは,精製ミクロソ・一ム標品のそれと同じであること
が確認された
可溶化したチトクロムP−450の精製には成功しなかった.チトクロムP−450の多様性を考慮し,今井と佐
藤80)がウサギ肝チトクロムP−450の精製に用いたアミノオクチルーセフ・7ロ−スのようなアフィニテイ・−カラ
ムを用いるのも,一・案かもしれない
〔NADPH−CytOChromecI・eductaseの精製と性質〕
MadyasthaとCoscia39)は,Ca肋annthusYOSeuSのNADPH−CytOChromecreductaseの可層化にコ1−ル酸を用い,
2通りの方法によりその精製を試みている..その結果,精製に用いる全ての緩衝液中に1/JMFMN,1/JMFAD
を添加することと,2′,5′−ADP−セファロース4Bカラムクロマトグラフイ・−を行うことがより高い比活性の
NADPH.cytochromecreductaseの部分精製標品を得るのによいと報告しているl本研究ではコール酸の代わり
に非イオン性界面活性剤であるエマルゲン913を用い,2′,5′−ADP−セファロ・−ス4Bかラムクロマトグデフイ・−
を精製の1段階として採用し,電気泳動的に単一・なNADPH−CytOChromecreductaseを得ることができた.エマ
ルゲン913の使用は,1FLMFMN,1/JMFADを精製中に常時存在させておく必要性をなくすだけでなく,より高
い回収率を与えた”また,精製過程で終始グリセロールを存在させることによっても,NADPH−CytOChromecre−
ductaseの失括を大いに防止することができた.本研究で得られた精製標品の比活性は286mits/mgproteinで
あった.MadyasthaとCoscia39〉の部分精製標品の比活性は171units/mgpr・Oteinであり,本精製標品は有意に
高かったが,精製度から考えると両者のNADPH−CytOChromecreductase本来の比活性は近いものと推定できる.
しかし,ラ,ト肝(58−70units/mgprotein118123 ̄125)
)や酵母(132units/mgprotein126))などの場合に比べると,
本精製標品の比活性は明らかに低かった.このことが,精製中の酵素の失暗によるのか,それとも高等植物酵素
の比活性がもともと低いのかについては,未解決のままになっている‖
本研究での可溶化標品には,ポリアクリルアミドゲル電気泳動で互いに移動度が異なる3種のNADPH−
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−50 −
cytochromecreductaseが存在していたこれらは互いに,その比酒性においても異なるようであった.SDS−ポ
リアクリルアミドゲル電気泳動によって,これらの3種の分子種の分子量は,それぞれ81,000,75,000および
72,000であると決定された.ただし,これらのNADPH−CytOChromecreductaseが非変性条件下においてそれぞ
れのポリペプチドの単量体として存在するか否かについては決定できていない.
トリプシン処理実験(図28)および100K沈殿画分のスクロ・−ス密度勾配遠心彼の3種の分子種の分布を調
べた実験(図29)から,分子量が81,000の分子億がintactなNADPH−CytOChromecreductase(つまりNADPH.
CytOChromeP−450reductase)であり,分子屋が75,000の分子種は(おそらく分子量が72,000の分子種も)親織
中に存在していたプロテア−ゼの作用によっでできた分解産物であると判断した.MadyasthaとCoscia39)の
Ca肋α7an助usroseusからのNADPH−CytOChromecreductaseの部分精製標品は,ポリアクリルアミドゲル電気泳
動で78,000と63,000の2分子種のNADPH−CytOChromecreductaseを示しているが,これらはそれぞれ,本研究
における81,000と75,000のNADPH−CytOChromecreductaseに相当するものと思われる.図31は,分子量が
81,000と75,000の両分子種の関係についての考えを模
式的に示したものである.すなわち分子量81,000の分
(Cytoplasm)
子種は75,000の親水性領域と6,000の疎水性領域から
なる両親媒性な分子形態をとっており,両領域間はプ
ロテアーゼの作用を受けやすく容易に切断されるフレ
クシブルな構造になっていると考えられる‖ 両領域は
機能的に分業がなされていて,前者は病性ドメンとし
て,後者は膜結合ドメンとして機能しているすなわ
ち,プロデア・−ゼの切断によって生じる75,000の分子
種は膜には結合できないが可溶性である非生理的な基
質のチトクロムcを還元できるものと考えられる
しかし,生理的には膜結合ドメンも極めて重要であり,
この酵素本来の基質であり,かつまた膜内在性タンパ
ク質であるチトクロムP−450を還元するためには,
(Lumem)
Fig。31Schematicillustrationofa possible struCture Of
SWeet pOtatO NADPH−CytOChrome c(P−450)
reductase。MW;mOlecularweight
膜結合ドメンは必須なものであると考えられる”そういう意味で,分子墓81,000のintactなNADPH−CytOChrome
Creductaseを精製したということは,NADPH−CytOChromeP−450reductaseを精製したと言い直すことができよ
う・以上の考えは動物肝のNADPH−CytOChromeP−450reductaseの研究結果から考察したもので,以下に具体的
にその対比を試みる”VermihonとCoon124)はラット肝より76,000のNADPH−CytOChromeP−450reductaseを精
製し,これをトリプシン処理するとチトクロムcの還元活性にして25%高い69,000のreductaseに変換すると報
告している‖ また,この処理により得られたNADPH−CytOChromecreductaseの分子量は,トリプシンまたはブ
ロメラインで処理後ミクロソームより可潜化したこのr・eductaseの分子畳(それぞれ68,000127)と71,000128))に
近い借となっている小以上の結果は,本研究における81,000のNADPH−CytOChromecreductaseのトリプシン処
理がより比活性が高いと考えられる75,000の膜結合部位を欠損した酵素を与えたとする推論を指示するものと言
えるIGumとStrobel129)はNADP=−CytOChromeP−450reductaseの膜結合ドメンを単推し,その分子量を6,400
と報告している・本実験より推定されるサツマイモ塊根組織のNADPH−CytOChromeP−450reductaseの膜結合ド
メンは上述したように6,000であり,非常に近い値である。Cα肋α和光娩紘S和.Sg紘Sの場合のこのドメンの推定分子
量は15,000となり,有音に大きい値となっている39).ミクロソームの電子億達系の構成成分において,両親媒
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−51一
性な分子形態をとる酵素はNADPH−CytOChrome P−450reductaseだけでなくNADH−CytOChrome b5reduc−
tase130r131)
,CytOChromeb5132133)もそうであると報告されている.言い換えれば,電子伝達系の末端酵素以外は
全て両親媒性酵素であるこれは,電子伝達系が直接膜電位の形成につながるミトコンドリア内膜や葉緑体のチ
ラコイド膜とは明らかに区別できる特徴であり,原形質側だけで電子伝達がまかなえるミクロソ−ム電子伝達系
の合目的特性であるといえよう.
分子量81,000のNADPH−CytOChromeP−450r・educta$eに対して,サツマイモ塊根に存在するプロデア−ゼが組
織のま砕時およびま砕彼のみに作用したのか,それともま砕以前に査循Sよ如で作用したのかについては,決定
的な証拠はまだ得られていない..セリンプロデア・−ゼの特異的阻害剤であるフユニルメチルスルホニルフルオラ
イドが01mM存在した状態でま砕および精製を行ったが顕著な違いはみられなかったい 本研究に使用したフユ
ニルメチルスルホニ)t/フルオライドの濃度がプロデアl−ゼの阻害に十分であったかどうか,また8l,000reduc−
taseの切断にはセ.)ンプロテアl−ゼ以外の,例えば金属依存プロデア・−ゼが作用しているかもしれないという
疑問は残るが,酵素の合成・分解消性の高い病害サツマイモ塊根組織においてはdenovoに合成されるreduc−
taseとともに分解されてゆくreductaseも多いものと考えられる‖ NADPH−CytOChromeP−450rIeductaseの活性
ドメンと膜結合ドメンを継ぐ領域はフレクシブルになっていて,特にプロテア1−ゼの影響を受けやすいことが想
像される.田中ら25)は,サツマイモ塊根組織に切断傷害を与えると,租ミクロソ−ム画分のNADPH−CytO−
chromecreductaseは一度急増し,切断後2∼3日を墳にして減少していくことを示した‖ しかも,この活性減
少と平行して,可溶化画分のNADPH−CytOChromecreductase活性が増大することも示した.,この組織切断後2
∼3日以降に起こる現象は,おそらく組織中のプロデア1−ゼ量の増加に伴い起こる現象と考えられ,分子量
81,000の分子種が75,000の分子種に変化していくことを意味しているものと思われる,.一方,Cinnamicacid4−hy−
droxylaseとipomeamarone15−hydroxylaseは1−115日で減少しはじめるわけであり,NADPH−CytOChromeP−450
reductaseのプロテア−ゼによる切断が,組織のま砕以前に起こるにせよ以後で起こるにせよ,雨水酸化酵素の
減少に連接関係しているとは考え難いい
第6章 総 合 討 論
病害サツマイモ塊根組織における抗菌性セスキテルペンの生合成に関する研究は,今日まで活発になされてき
たが,その中で頻繁に存在すると考えられる酸素添加反応に関する知見はなにも得られていなかった.この代謝
経路において非常に近い位置関係にあると推定でき,しかもその間には酸素添加反応が関係していると考えられ
る,二つの主要蓄積テルペンのイポメアマロンとイポメアマロノ・−ルに関与する酵素を検出し,その酵素学的研
究を行うことは,サツマイモ塊根親戚のテルペノイド代謝のみならず,高等植物の二次代謝全般に存在する酸素
添加反応に関する知見を得るうえで最もよい研究対象となりえた.そういう音味でイポメアマロンからイポメア
マロノ1−ルへの転換が1段階で起こり,それがipomeamarone15−hydroxylase(本研究により命名)によって酵
素的に触媒されることを証明できたことは,本研究の目的遂行の確かな礎となった..
Ipomeamarone15−hydroxylaseは,その酵素学的諸性質により,チトクロムP−450関与の水酸化酵素であるこ
とが判明したこれは,サツマイモ塊根組織のテルペン代謝におけるその他の酸素添加反応にも,哺乳動物肝と
同じ性質をもったチトクロムP−450が関与している可能性を高くする事実である.特に,NADHによる本酵素
の活性化は,サツマイモ塊根組織のミクロソ、一ムにおいても,哺乳動物肝のミクロソ1・・・−ムと同じような2種の電
子伝達系が両立していることを示すものであり,両者間でsynergisticな相互作用があることとして興味深い。.
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−52一
高等植物のテルペノイド代謝において,モノテルペンおよびジテルペンの水酸化にチトクロムP−450が関与し
ていることが確かめられているが,セスキテルペン代謝にチトクロムP−450が関与しているとの報告はなかっ
た.高等植物のテルペノイド代謝における酸素添加反応に幅広くチトクロムP−450が関与していることを支持
する事例として,ipomeamarOne15−hydroxylaseがチトクロムP−450関与の水酸化酵素であると証明できたこと
は意義深い..
Ipomeamarone15−hydrIOXylaseとcinnamicacid4,hydroxylaseは新鮮組織には存在しないが,切断傷害,黒斑病
菌の感染を受けると出現し,著しい活性上昇がみられた.またこれに伴い,チトクロムP−450含量も増加する
ことが立証できた.高等植物におけるチトクロムP−450に関する研究で,その誘掛こ関する研究は少なく,動
物と同じようにサツマイモ塊根組織においてもチトクロムP−450が誘導性タンパク質であると証明できたこと
は重要である“その誘導効果がその関与する水酸化酵素括性,ひいてはその関与する代謝系の速度の増大に大き
な影響をおよぼすことが証明できたことは,高等植物の二次代謝系の速度調節機構に関する新しい知見を与えた
といえようい
IpomeamarOne15Nhydroxylaseとcimicacid4−hydroxylaseは細胞内局在性,基質特異性について厳密に区別
できた.このことは両水酸化酵素に関与しているチトクロムP−450が相互に独立したヘムタンパク質であるこ
とを意味し,さらには分子的に多様なチトクロムP−450が病傷害サツマイモ塊根組織に複数個同時に存在して
いることを意味する。噛乳動物においては同一・種の同一・組織から複数個の分子多様なチトクロムP−450が単離,
精製されるまでになったが,高等植物においては単離はおろかチトクロムP−450の分子多様性に関する知見も
ほとんど得られていない.まして,同山種の同一蘭織おいて,細胞内局在性を異にする2種のチトクロムP−450
関与の水酸化酵素が確認されたことは,チトクロムP−450の細胞生化学からみても重要な意義があるといえよ
う.Ipomeamarone15−hydroxylaseとcinnamicacid4−hydroxylaseの基質特異性は狭いように思われた”動物にお
いて考えられているように,生体成分の合成に関与するチトクロムP−450は基質特異性が概して狭いという傾
向が,植物においても共通して存在することが推測される.
チトクロムP−450の精製は成功しなかったが,分光学的に変性なくミクロソ1−ムから可溶化できたことは意
義あるといえよう.なぜならば,高等植物において,精製の第1段階である可潜化の研究はほとんどなく,また
チトクロムP−450の分光学的研究においても,濁度の大きいミクロソ1−ムの状態で比含量が極めて低いチトク
ロムP−450を測定するのが現状であるからであるサツマイモ塊根組織におけるチトクロムP−450のCO一差ス
ペクトルは,動物肝のそれと極めて類似した吸収スペクトルを示した−方,病害サツマイモ塊根組織には,分
子畳,極性を異にする3分子種のNADPH−CytOChromecreductaseが存在していたが,そのうち分子儲が81,000
の酵素を電気泳動的に単一なまでに精製することができた.これは高等植物では初めてのこととして意義深い.
その酵素は分子多形体であると推定でき,哺乳動物のNADPH−CytOChromeP−450reductase(intactなNADPH−
cytochromecreductase)に関する研究で報告されているように,親水性の活性ドメンと疎水性な膜結合ドメンか
らなる両親媒性酵素であると判断できた.両親媒性であることはとりもなおさず,NADPH−CytOChromecreduc−
bseが細胞内において,ミクロソ・−ムの電子伝達系の構成成分として,言い換えれば本来のNADPH−C舛0−
chromeP−450reductaseとして機能するための必須条件である.すなわち,本研究によって精製した両親媒性な
NADPH−CytOChromecreductaseはNADPH−CytOChromeP−450reductaseであると言い直すことができるlそれゆ
えに本酵素の精製は高等植物におけるチトクロムP−450関与の水酸化酵素系の分子レベルでの解明の一・助とし
てさらに音義が深まるものといえよう.
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−53−
第7章 要
約
1サツマイモ塊板組織におけるイポメアマロンからイポメアマロノ1−ルへの転換が酵素的に起こることを立
証し,この転換に関与する酵素をipomeamarone15−hydr・0Ⅹylaseと命名した。
2.病害サツマイモ塊根組織からのミクロソ1−・ム画分を用い,ipomeamarOne15−hydroxylaseの性質を検討し
た。本酵素は補酵素としてNADPHを要求した。NADPHの濃度が低い時にはNADHによる滴性化がみられた‖
また,本酵素活性はKCNでは阻害されず,♪−クロロマ1−キュリ一安息香酸をはじめとするSH酵素阻害剤に
よって顕著に阻害された.さらに,チトクロムcやP−ベンゾキノンも活性を顕著に阻害した”またipomeama−
r・One15−hydroxylaseは分子状酸素を要求し,COによって顕著に阻害された.このCO阻害は光によって抑えら
れた.以上の結果により,ipomeamarone15−hydroxylaseはチトクロムP−450関与の1原子酵素添加酵素である
と判断した..
3還元したミクロソ−ム画分のCO一差スペクトルは,哺乳動物肝のチトクロムP−450と同じスペクトルを
示し,Soret帯の極大は450nmに位置していた‖ ミクロソ1−ム画分のチトクロムP−450含畳は,新鮮サツマイ
モ塊根組織の場合には非常に少なかったが,傷害組織でやや多く,病害組織では非常に多かった.また,組織を
HgCl。やCdSO4などで処理すると,ミクロソ1−ム画分のチトクロムP−450の含量が増大したHgCl2とフユニ
ルイソシアニドの両方で処理した組織においては,その含量が顕著に多くなり,198pmoJ/mgmicrosomalprotein
であったい この値は高等植物において最も高い比含量であると報告されているチエ・−リップ球根におけるそれに
匹敵する借であった.
4サツマイモ塊根組織を種々の条件で処理(切断傷害を与えたり,種々の薬剤で処理)し,その際蓄積する
テルペン畳とチトクロムP−450含量を比較した.その結果,蓄積テルペン患とチトクロムP−450含量の問には
正の相関関係がみられた..なお,イポメアマロンの水酸化に関して,その猶性画分におけるチトクロムP−450
の回転回数を求めたところ,その借は1に滴たなかった.このことは分子的に多様なチトクロムP−450がこの
画分に存在していることを示唆している.
5Ipomeamarone15−hydroxylaseとcinnamicacid4−hydroxylaseの間では,両者の基質の間で括抗関係はみら
れなかった.黒斑病菌感染後の両者の経時的活性変化をみたところ,前者は15日で最大になるのに対し,後者
は10日で最大になったまた,傷害組織における活性に対する病害組織の活性の比は,前者が1:4∼5,後者
が1:25−35であった
6 Ipomeamarone15−hydroxylaseとcinnamicacid4−hydroxylaseの細胞内局在性は明らかに異なっていた。直
線スクロース密度勾配遠心と電子顕微鏡による観察の結果より,前者はrough−Surhcedendoplasmicreticulumに
局在し,後者は単一・膜からなる不均一な大きさの小胞に局在していることが確認された..病傷害組織のr・Ough−
suriacedendoplasmicreticulumには,密度および局在化する酵素が異なる2種があり,ipomeamarone15−hydrox−
ylaseはその−方のみに局在しているようであった”また,Cirmamicacid4−hydroxylaseが存在する小胞は,少な
くとも,endoplasmicreticulum,ミトコンドリア,原形質膜,ゴジル装置およびミクロボディー由来のものではな
かった。なお,病害組織においては,僅かなcinnamicacid4−hydroxylase活性がipomeamarone15−hydroxylase活
性画分にも検出された
7病害サツマイモ塊根組織のミクロソl−ム画分よりNADPH−CytOChromecreductaseを電気泳動的に均一・な
状態にまで精製した.その分子菜は81,000であり,比活性は286unlts/mgproteinであった‖ 哺乳動物の
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−54−
NADPH−CytOChr・OmeCreductaseと比べるとその比活性はやや低かった”一方,分子量はほぼ同じであった.ミ
クロソ・−ムからの可溶化画分には,分子量が81,000の酵素タンパク質以外にも,分子量がそれぞれ75,000と
72,000の2種の酵素タンパク質が存在していた“これら3種の酵素タンパク質は,互いに比活性においても異な
るようであった‖ 分子遍が75,000の酵素タンパク質は,分子量が81,000の酵素タンパク繋がプロテア−ゼにより
切断され,その膜結合ドメンを欠落した親水性の酒性ドメンであると考えられた… すなわち,本酵素の膜結合ド
メンは分子意が約6,000であると推定された.分子量が72,000の酵素タンパク質も,おそらく分子患が81,000の
intactNADPH−CytOChromecreductase(NADPH−CytOChromePL450reductase)がプロテアIpゼによる切断を受け
て生じたものであると考えられる.しかし,これに関しては,決定的証拠が得られなかった.
文
献
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Studies on Cytochrome P-450-Dependent Mixed Function
Oxygenase in Sweet Potato Root Tissue
Summary
1.. An enzyme catalyzing the hydroxylation of ipomeamarone to ipomeamaronol was found to exist in
the microsomal fractions prepared from cut-injured (wounded) and Ceratoqstis ,fimbriata-infected (diseased) sweet potato root tissues, The enzyme was named ipomeamarone 15-hydroxylase.. The enzyme
required NADPH as a cofactor for the activity.. When NADPH was too scanty to bring out the full
enzyme activity, simultaneous addition of NADH stimulated the activity. The enzyme activity was markedly depressed by inhibitors for sulfhydryl enzymes such as p-chloromercuribenzoic acid but not by KCN..
Cytochrome c and p-benzoquinone were also potent inhibitors for the enzyme.. Ipomeamarone 15-hydroxylase required molecular oxygen for the activity.. CO strongly inhibited the activity and the inhibition was
partially reversed by light.. These results indicate that ipomeamarone 15-hydroxylase is a cytochrome
P-450-dependent, mixed-function oxygenase.
2.. CO-difference spectra of the reduced microsomal fractions from intact, wounded and diseased
sweet potato root tissues showed a Soret band at 450nm like those for mammalian liver microsomes..
Cytochrome P-450 content in microsomal fraction was very low for intact tissue, but was high for
wounded tissue and extremely high for diseased tissue.. Provided that all the cytochrome P-450 in the
fractions from wounded and diseased tissues participated in ipomeamarone 15-hydroxylation, the turnover
number of cytochrome P-450 for the hydroxylation would below one, suggesting that multiple cytochromes P-450 exist in the fractions.. Treatment of wounded tissue with either HgC12 or CdS04 resulted
in an increase in cytochrome P-450 content in the microsomal fraction.. Treatment with both HgC12 and
phenylisocyanide caused a marked increase in the content (198 pmoYmg microsomal protein); this content
is very similar to that of tulip bulb microsomes, which has been shown to contain cytochrome P-450 in the
highest level among higher plants. Such treatments that induced cytochrome P-450, except for cutinjury, brought about accumulation of terpenes.. The larger the content of cytochrome P-450, the more
the amounts of terpenes..
3. Ipomeamarone 15-hydroxylase was compared with cinnamic acid Chydroxylase, a cytochrome P450-dependent, mixed-function oxygenase, with respect to their properties and intracellular localization..
The latter enzyme has also been shown to exist in the rnicrosomal fractions from wounded and diseased
sweet potato root tissues. No substrate competition was observed between the two enzymes.. The
activities of ipomeamarone 15-hydroxylase and cinnarnic acid 4-hydroxylase became maxima at 1..5 days
and 1 . 0 day, respectively, after Ceratocystzs,fimbriata-infection
of the tissue.. The ratios of the former and
latter enzyme activities in diseased tissues to the respective those in wounded tissues were 4-5 and
2..5-3..5, respectively. Ipomeamarone 15-hydroxylase and cinnamic acid 4-hydroxylase were separated
from each other through cell fractionation. After linear sucrose density centrifugation of the microsomal
fraction from wounded or diseased tissue, the former was localized on the rough-surfaced microsomes,
whereas the latter on various sizes of particles with a single membrane.. A low activity of cinnarnic acid
4-hydroxylase was also detected in the fraction containing ipomeamarone 15-hydroxylase activity in disaesed tissue. At least in diseased tissue, there were two kinds of rough-surfaced microsomes, which
were distinguished from each other in the density and carrying. Ipomeamarone 15-hydroxylase seemed
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to be localized in only one of them, that is one of two rough-surfaced endoplasmic reticulumn species.
The particles containing cinnarnic acid 4-hydroxylase were not endoplasmic reticulumn, mitochondria,
plasma membrane, Golgi apparatus, and microbodies..
4. NADPH-cytochrome c (P-450) reductase, a component of cytochrome P-450-dependent, mixedfunction oxygenase, was isolated in a pure form from the microsomal fraction of diseased sweet potato root
tissue.. The molecular weight and the specific activity were 81,000 and 28.6units/mg protein, respectively. The specific activity was somewhat lower than that of the mammalian enzyme though the molecular
weight was very similar to that for mammals.. Besides the enzyme protein with this molecular weight,
two kinds of the enzyme proteins with molecular weights of 75,000 and 72,000 were also existed in the
microsomal fraction. The three enzyme species appeared to be diierent from one another in the specific
activity. Experimental results were obtained to suggest that the enzyme protein was hydrophilic active
domain which was proteolytically released from the 81,000-mol-wt enzyme protein. Therefore, the intact
enzyme protein was proposed to consist of two domains; the hydrophilic and active domain and the
membrane-binding one with molecular weights of 75,000 and 6,000, respectively. The 72,000-mol-wt
enzyme protein was also suggested to be an artificial product by the proteolysis of the intact 81,000-molwt NADPH-cytochrome c (P-450) reductase protein.
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