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公開研究会の閉会式挨拶(お礼)をお届けします。
駒草のこころで №13 信大附属松本小校長室 平成23年 11 月 1 日(火) 公開研究会の閉会式挨拶(お礼)をお届けします。 1 はじめに 大地が動き、忘れていた「畏れ」を覚えた3月。気がつけ ばもう、美しい紅葉も一気に里まで下りて、学校園を囲む9 00本近い木々が、秋を演出しています。 東日本大震災の深い悲しみと苦境にあっても、天を恨まず、 運命に耐え、助け合って生きていく日本人の美しい倫理観・精神性がクローズアップされ、私自 身、生かされている自分をこれ程までに自問したことはありませんでした。そして、耳慣れぬ言 葉「津波てんでんこ」「シーベルト」「深層崩壊」等に接し、私たちの根っこにある、自然・いの ち・人への畏敬の念を蘇らせなければならないと思いました。 2 講演・対談のお礼 さて、本日ご覧いただいた本校園の子どもたちの姿はいかがだったでしょうか。発達段階と教 科の違いはありますが、子どもたちの学び続ける姿は確固たるものとして参会者の皆さんの記憶 に残ったでしょうか。 ただ今は、 「学び続ける子どもを育てるために ―系統性を考えた子ども観・指導観― 」と題 して、秋田先生と柴崎先生のご講演と対談を、拝聴させていただきました。 「遊びの充実がもたらす自分の世界の広がりとは」 「幼小リレーゾーンでの学びのあり方」、そ して「学びの本質を学び続けるとは」の問いに、正面から答えていただきながら、本校園研究の 価値と課題について、ご指導いただきました。本当にありがとうございました。 3 しっかりせよ信州教育 この7月、ご承知のとおり「信州教育の将来」をテーマに実施した、県民世論調査の結果が公 表されました。教育県と思わない人は約6割にも上り、 「信州教育」とか「教育県」という言葉は、 長く長野県のイメージの一つとされてきましたが、多くの県民が実感を持てなくなっていること が浮き彫りになりました。 そして、その教育県と思わない理由に、4割以上の県民が「教員の教える力が低下」を挙げる など、学校教育に厳しい視線が向けられました。 数字の裏には、常に期待も入っています。私は、県民の多くが「しっかりせよ信州教育」と応 援をしてくれていると思っています。長野県の先生方は、どこの研修会でも「熱心さとねちっこ さ」では負けない風土がありました。 本日も、ご参会の先生方から多くのご示唆とご批正をいただいたように、今再び、その長所を 取り戻したいものです。 4 本校園の指導観について 本校園は「寄りそうということ」を大切にしています。「寄りそうということ」は、簡単そう ですが、いざとなると難しいものです。子どもの気持ちに寄りそうとは、変な言い方かもしれま せんが、 「目で聞き、耳で見る」、そのようなことを言うのだと思います。技術だけでなく、私た ち教師の生き方の問題であると思っています。 作家の筒井康隆さんの作品に「愛のひだりがわ」がございます。小学校6年生の主人公「愛」 は、左手に軽い障害を持っていました。その「愛」の左側に、愛犬が常にぴったりくっついてい ます。主人公「愛」は、愛犬とともに父親を捜す旅に出掛けます。愛犬と話ができる主人公「愛」 は、残念ながら自分の成長と共に、次第に愛犬の言葉が分からなくなっていきます。 本校園の子どもたちも、泥団子やアイガモさん、お蚕さんに寄りそい、会話しながら生活を共 にし、対象と言葉を交わしています。本来、子どもたちが持っているこのような「学びの本質へ の芽生え」を、体に蓄えています。 ここからも私は、 「感じる」ことが大切なものだということを心から信じています。若い時代に、 美しいものがわかり、未知なものに驚き、素晴らしいものに畏敬の念を持つことで、豊かな情緒 の土壌が育ち、そこに蒔かれた事実の種が、知識に開花していくと信じています。 本校園の大切にしてきた指導観は、ここにあると思っています。 5 金子みすゞの視点(いま、附属校園に必要なもの) さて、東日本大震災で被災した方々の心に、唯一届いた言葉は、 「嘘じゃない本当の言葉」だと 報じられていました。そして、今でも被災地に流れているのが、金子みすゞさんの詩だそうです。 ボランティアの読み聞かせで響く「こだまでしょうか」を、被災した子どもたちが聞き入ってい ました。優しい言葉の中に深い愛他の心がしっとり滲む詩が、被災された方々の心に響いている ようです。 その金子みすゞさんの、静かな中にも真実に対するむき出しの表現が、私たちに「思わぬ視点」 を教えてくれました。それは、作品「積もった雪」の、目に見えない「下の雪」や「中の雪」へ の着眼であり、作品「昼の星」のように、目に見えぬ昼間のお星様への問いかけであります。 このように、目に見えなくても実在するものへの洞察が、嘘じゃない本当の言葉として人々の 心に届く所以があると思われます。 いま附属学校園は、内外から厳しく存在意義を問われています。国立大学の附属校として、地 域の中で愛される学校として、これからも存在し続けるために「思わぬ視点」で過去と未来を点 検し、試金石を積み直していかなければなりません。 昇降口に掲げられているメッセージを引用するならば、4年生の高野さんが言うように「夢に 向かって生きていきたい」。そして、6年生の内山さんが言うように「今が一番幸せだ」と感じら れるような本校園であり続けたいと願っています。 どうぞ、これからも変わらぬご支援とお力をお貸しください。 6 最後に 最後になりましたが、秋田喜代美先生と柴崎正行先生には本研究の「根っこの部分」を、長野 県教育委員会と信州大学教育学部の先生方には、 「幹の部分」を親身になってご指導いただきまし た。本当にありがとうございました。 そして本日、ご参会の先生方からは「太陽や北風」になっ ていただきご意見をいただきました。私たちは、本当に幸せ だと感じています。 これから、すばらしい葉っぱを繁らせ、本校園研究の「根 っこや幹」をしっかり太らせ、清らかさと活力のある子ども たちを育ててまいりたいと思っています。 ご後援をいただきました関係機関各位、ご来賓の皆様、運 営にご協力いただいた信州大学・学生の皆さん、同窓会・PTAの皆さん、本研究会をお支えい ただいたすべての皆様に心より感謝申し上げ、閉会の挨拶といたします。 ※ 同窓会、育英会、後援会、PTAの皆さんのご協力に深く感謝いたします。ありがとうございました。 ※ 吹奏楽部は、第15回東海小学校バンドフェスティバルに長野県代表として出場し銅賞を受賞しました。