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認定技能士三冠王の挑戦~廃プラスチック材料のリサイクル率向上に
集中連載 ∼認定技能士三冠王の挑戦∼ 廃プラスチック材料の リサイクル率向上に向けた技術開発 第1回 廃プラから良品を成形するプロセス を同業者や若年層の方々に継承できれば幸いである。 高尾 信二 Shinji Takao ゼビオプラスト㈱ 製造部 機械成形課 〒329−1412 栃木県さくら市喜連川 2994 TEL : 028−686−5351 1972 年生まれ。24 歳で転職した企業でプラスチック成形を 担当して以来、その奥深さの虜になる。2008 年に 1 級プラ スチック成形技能士取得。2014 年には厚生労働省から「もの づくりマイスター」の認定を受け、栃木県認定の「とちぎマイ スター」 、宇都宮市認定の「宮のものづくり達人」の“三冠”を 達成する。ゼビオプラスト㈱で廃プラスチック材料を用いた射 出成形に従事するかたわら、押出成形の技能も習得中。 プラスチック製品製造/再生利用の動向 プラスチック製品は、現代の生活になくてはならな い存在である。しかし、製造現場はどうだろう。いわ ゆる 3 K(きつい、汚い、危険)が現状であり、離職 率も高い部類に入る。製造においては、高品質は当然 ながら、コストが最重要課題であり、プラスチック産 業のグローバル化は加速し、日本での製造の空洞化が 進んでいるのは言うまでもない。 プラスチック成形技術の継承を目指して プラスチック製品の需要は、右肩上がりの傾向が見 られる。その根拠として、例えば自動車産業などは鉄 「認定技能士三冠王の挑戦」という連載タイトルを 物からプラスチック部品に変更し、低コストまたは軽 見ると相当な技術やスキルをもった人物なのか? と 量化で鉄物より優れたスペックを徹底している。実際 感じてしまうだろう。だが実際は、学歴は高卒の普通 に 2014 年の国際プラスチックフェアでは、プラスチ 科。学年でも最低の成績で三冠どころではなく 5 科 ック製ボディのプロトタイプが展示されるところまで 目、特にプラスチック成形に重要な理数系が毎回赤点 きている。 で、学力でいえば中卒レベル以下。そんな人物がなぜ プラスチック製品の製造、いわゆる量産過程では、 プラスチック射出 1 級国家試験を突破し、翌年には 大きく 3 つに分けて材料、成形機、金型が必要にな 職業訓練指導員の試験に独学で合格し、最終的に厚生 る。3D プリンタが注目を集めており、量産に活用さ 労働省認定の「ものづくりマイスター」まで登りつめ れるのもそう遠い未来とは思えないが、まだまだいろ ることができたのか。 1 つだけ裏づけがある。小学生時代に遡るが、図工 の授業でほかの子供がつくらないような工作品をつく り評価された。その少年時代の心は、時間が経過し大 人になった今でもまったく変わらない。私が執筆する 根幹は、モノづくりの楽しさ、アイデア、そして難し さにある。 私の勤めるゼビオプラストは水処理用機器や空調機 器などのメーカーであり、 「廃プラスチック材料」を 用いたプラスチック成形を得意とする。当社にしかで きない「独自の技術」 、 「コストパフォーマンス」で顧 客に満足してもらうことが私の課題である。ここでの 経験を踏まえ、数回にわたり、 「廃プラスチック材料 のリサイクル率向上に向けた技術開発」について執筆 する機会を得た。この場を借りて、私の技術やスキル 筆者近影(宇都宮市立東図書館にて) 型技術 第 31 巻 第 9 号 2016 年 8 月号 069