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新たなる油圧の可能性にチャレンジ

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新たなる油圧の可能性にチャレンジ
2008年10月1日
株式会社トキメックは に 社名変更いたしました。
〒144-8551
東京都大田区南蒲田2-16-46
TEL.03-3732-2111 FAX.03-3736-0261
http://www.tokyo-keiki.co.jp/
2004 No.106
トキメックは、
社会の「新しい豊かさ」を創造していきます。
物の豊かさの追求と、それを実現する技術に最大限の価値をおいた世紀のあとに、真に社会、環境、人々の
生活の質を向上させること = Quality of Life に大いなる価値を見いだす時代が始まっています。
トキメックは、新しい時代の要請にこたえる技術開発力と応用力にさらに磨きをかけ、お客様とともに
Front Report/ヘリTV中継システム
「新しい豊かさ」を実現する商品やサービスを提供してまいります。
Interview
新たなる油圧の可能性にチャレンジ
情報通信技術
画像処理技術
Information
&
communications
Technology Focus
進化する慣性センサ MESAG
慣性センサ応用技術
Information
Inertial sensor
Image processing
・次世代型運航支援システムに、トキメックのAIS陸上基地局用トランスポンダが採用
・洋上から保安警報を発信!船舶警報通報装置「TT-3000SSA」
・超音波流量計UFB-10 UFR-10A
・電子海図情報表示装置がEC型式承認に合格
超音波応用技術
油空圧技術
Quality
of
Ultrasonic
Hydraulic Pneumatic
Life
ジャイロ応用技術
ソフトウエア技術
Gyroscope
Software
超精密加工技術
マイクロ波応用技術
High-precision machining
Microwave
〒 144-8551 東京都大田区南蒲田 2-16-46 TEL.03-3732-2111( 代表 ) FAX.03-3736-0261
URL:http://www.tokimec.co.jp/
TOKIMEC Report Views(通巻 106 号) 平成 16 年 9 月発行
●本誌に対するご意見、お問い合わせは下記までお願い致します。
株式会社トキメック 社長室
TEL.03-3730-7013 FAX.03-3733-3690
Mail:[email protected]
・出発進行! 日本初のハイブリッド型超音波レール探傷車が運用開始
ヘリ
中継システム
T
V
取材現場と基地局の中継回線で活躍する最新テクノロジー
かつて「三種の神器」の1つと謳われ
放送やハイビジョンは言うまでもなく、取
たカラーテレビは、いまやブラウン管から
材現場と基地局とを結ぶ中継回線にもさま
液晶やプラズマの時代に変わりつつあり
ざまな最新技術が活かされています。特に、
ます。その魅力は何と言っても高精細画面
現場の臨場感を余すことなく伝える生中継
による圧倒的な表現力。いながらにして現
のネットワークには、各放送局が最新技術
場の臨場感を味わえる高画質には、誰もが
を駆使して凌ぎを削っているのです。
目を奪われてしまうことでしょう。もちろ
ここにご紹介するニュースヘリや移動中
ん、その背景には、テレビ局の高度な放送
継車は、トキメックのマイクロ波技術、ジャ
技術があることも忘れてはいけません。昨
イロ技術、メカニカル制御技術を駆使した
年 12 月からスタートした地上ディジタル
各種放送機器が採用されています。
図1 移動体通信システム
通信衛星
方探受信システム
地上取材スタッフから送信される放
送波を遠距離からキャッチし、その
到来方向をディスプレイに表示する
システムです。現場に一直線に駆け
つけることができるので、素早い中
継回線を結ぶことが可能です。
取材ヘリコプタ
移動体衛星通信
アンテナスタビライザ
一刻も早い回線確保と、映像電波を最適な状態で中継するために
方探受信システム
ニュースヘリは単独による空撮映像取材
ム内にあるアンテナの方向を自動制御し、
はもちろん、地上取材スタッフからの映像
ニュースヘリと基地局との回線を最適な状
電波を確実にキャッチし、それを基地局に
態に保ちます。
送信する役割も担っています。三次元を自
一方で、一刻一秒を争う緊急報道の現場
由自在に飛び回ることが可能なニュースヘ
においては、まず、現地と基地局との中継
リは、空からの中継取材に欠くことのでき
回線をスピーディに構築することが求めら
ない存在です。
れます。そのためには、ニュースヘリが地
しかし、それだけに飛行中の姿勢変化も
上スタッフの取材現場に一直線に急行しな
移動中継車が走行しながら通信衛星
大きく、中継回線の安定確保が難しいとい
ければなりません。しかし、上空からピン
に向けて電波を送信できるよう、中
う欠点がありました。TV中継で使用され
ポイントの現場を見つけ出すことは非常に
置です。走行中の車両という悪条件
る電波は指向性が強いため、アンテナを
困難です。こうした緊急取材時に役立つの
常に最適な状態で基地局に正対させないと
が方探受信システム。地上スタッフからの
回線が乱れてしまうからです。こうした問
信号を遠方からキャッチし、その到来方向
題を解決したのが、アンテナ自動指向装置
をディスプレイに表示するので、最短時間
です。ジャイロ技術の応用によってレドー
で現地に向かうことを可能にします。
アンテナ自動指向装置
移動体衛星
通信装置
継アンテナを超高精度に制御する装
のもと、上空36000kmの宇宙空
間に静止する通信衛星に向けて正確
基地局
中継車
カメラマン
に中継波を送信します。
協力:(株)東京放送殿
図 2 追尾防振カメラ
機体の振動を抑え、撮影対象を自動追尾する事で、シャープな映像を
的確に届ける
TVACSは、飛行中のヘリコプタから撮影目標を
カメラの向き
ヘリコプタのエンジンから伝わる振動と
ります。
空気抵抗に晒される空撮用カメラ。そこに
たとえば、住宅街の一角などを上空高
は万全の防振対策が施されているのは言う
くから捉えるような取材では、しばしば撮
までもありません。高精細なディジタル映
影ターゲットを外してしまうことがありま
像の世界では、ほんの僅かな振動でさえ
す。一度ターゲットを見失うと再び見つけ
画像の滲みの原因となってしまうからで
るのは難しく、カメラクルーの大きな負担
す。トキメックの防振カメラ「TVACS
となっていました。TVACSなら、ニュー
(ティーバックス)
」なら 3 軸ジャイロと
スヘリがどのように姿勢変化してもカメラ
6 軸の振動緩衝装置によって微細な振動ま
が自動的に追尾するので、ターゲットを見
でも制御します。しかし、TVACS の最大
失うことがありません。
目標
自動追尾できる画期的な防振カメラです。ヘリコ
プタの機動性を活かした、ダイナミックな空撮映
像の提供に貢献しています。
飛行軌跡
協力:(株)
フジテレビジョン殿
の特徴は、撮影ターゲットの追尾機能にあ
関連情報 本ページの関連情報をホームページで公開しています。併せてご覧下さい。 → www.tokimec.co.jp/report/no106/t10.html
1
2
新たなる油圧の可能性にチャレンジ ︻油圧技術プロジェクト︼
「ものづくり」とは、単に生産技能を指すものではありません。
社会に役立つ商品を開発する技術力、それをカタチあるものにする生産能力、市場
提にしています。また、回転数制御を導
02 システム設計
に届ける販売能力の全てを含んでこそ、真の「ものづくり」と言えるのではないで
技術部 システム設計課
入しても、油圧システムが省エネ設計に
兵藤 訓一
なっていなければ効果が少なくなってし
しょうか。
へ
まいます。そのためにも油圧機器の1つ
「システム設計者としては、もっとシン
1つに精通する必要性を強く感じていま
プルでユーザーフレンドリーな油圧シス
す」。
テムを実現したいと考えています。たと
回転数制御は、油圧システムと電動シ
えば、標準的な用途の油圧システムであ
ステムの双方を最適に制御していかなけ
ればコンピュータのプラグ&プレイのよ
ればなりません。油圧回路と電気回路の
うに、特別な知識がなくても、簡単に油
整合が重要となります。特に、サーボモー
圧動力を取り出せるようなものです。そ
の仕様書だけを頼りに開発設計し、試作
タの駆動電流などを制御するドライバー
のためには、油圧の既成概念を突き破る
技術部 機器設計課
品を納入しました。しかし、お客様から
や、可変油圧ポンプの傾転角制御に必要
ような発想の転換が必要でしょうね」
。
川上 敬芳
クレームを頂戴してしまったのです。あ
なコントローラなど、油圧回路と電気回
技術において新領域を切り開くには、
わてて現場に駆けつけた時、初めて機械
路の接点となるインターフェイスをどの
設計者各自が持つ「油圧の常識」をどこか
トキメックは、生産、販売、技術が一体となってより良い商品とサービスをお届け
するためにチャレンジを続けています。今号では、油空圧事業に携わる中堅技術者
にインタビューしました。次号からシリーズで生産、営業・サービスを取り上げて
まいります。どうぞお楽しみに。
01 サーボ弁設計
が作動している状況を目の当たりにしま
地球環境保護という観点から「省エネ」
ようにシステムアップしていくかがポイ
で取り払うことも必要になります。その
した。正直言って、自分が想定した状況
に対するニーズも急速に高まってきてい
ントと言えます。兵藤は最適なユーザ・
ため、※ 2 設計評議会などを利用して、さ
とのあまりの違いに驚きました」。
る。油圧システムも、もちろん例外では
インターフェイスに仕上げるため、現
まざまな事例やエンジニアの豊富な経験
実際の使い方は、直径1mを越す巨大
ない。※ 1 油圧ならではのメリットを活か
場での使用状況を自分の目で確認する共
を引き出し参照していくことが、非常に
なハンマーで、大きな釘を力任せに打ち
しながら省エネを実現する様々な開発が
に、客先でのちょっとした会話などを通
重要な意味を持ってきます。
「『油圧技術
付けるようなものでした。川上は、爆発
進められている。そのチャレンジの成果
じて情報をキャッチしていくことを心掛
が先にありき』ではなく、お客様が望む
的な大音量と激しい振動に、思わず腰が
としてトキメックが提案するのが、回転
けています。
仕様にマッチした油圧システムを構築す
引けてしまったと言います。
数制御だ。回転数制御とは、油圧ポンプ
「お客様からはこんな製品では使い物に
を駆動するモータ ( 以下サーボモータ )
ならないと叱られました。内心“仕様書
の回転数を最適制御してエネルギー効率
には書いてなかったじゃないか”と思っ
を高め、その消費電力を節約するという
油圧の大きな特徴は、高密度なエネル
たものの、確かにこれでは使用できない
ものである。サーボモータのトルクと速
ギーの制御に適しているということがあ
だろうなと認めざるを得ませんでした」。
度を制御することによって、油圧ポンプ
げられる。つまり、大きな力の高速制御
が可能ということだ。しかしその実現の
ためには、サーボ弁に代表される大容量・
高応答のバルブが必要となる。近年、高
速制御へのニーズが高まってきており、
■
顧客満足を得られる開発設計とは?
その後、川上はお客様の現場に何度も
る。これによって油圧システムの大幅な
省エネを実現するのである。
■
システム全体の設計で求められる
トータルでの信頼性
足を運びながら、お客様と共にマシンの
ある。こうしたニーズを満たすシステム
性能と機能を高めていきました。バルブ
は、まさに油圧ならではのものであり他
構造や制御方式を何度も見直し、使用
のシステムでは実現が困難な分野だ。
方法に対する対策変更を繰り返すことに
造工程を支える重要な動力源です。万一
よってようやくご満足いただける製品に
深刻なトラブルが生じれば、製造ライン
仕上がりました。
の停止といった甚大な損失を顧客に与え
仕様書に書かれていない、リアルな
現場を知ることの大切さを学ぶ
※ 1 油圧ならではのメリット
1台のサーボモータと油圧ポンプで複数アクチュエータを駆動できることが油圧シ
ステムの大きな特徴だ。また、システムのコンパクト化や高速制御が容易に行える
という利点もある。従来の油圧システムに回転数制御システムを加えることで、低
騒音、高再現性、低流量制御、低損失流量(漏れ)といった新たなメリットも生み
出せる。
油圧システムは、エンドユーザーの製
「自分の目で確認することの大切さ、現
てしまうことになります。そのため、兵
場における真のニーズを把握することの
藤は油圧システムの設計要件として、長
川上は数年前から、金属成形加工機
大切さを学びました。仕様書だけを見る
く安定して使って頂けるよう“シンプル
械応用のサーボ弁の開発に取り組んでい
のではなく、これらのことを開発設計に
かつタフ”であることを主眼に据えてい
ます。金属成形加工機の場合、複雑な形
反映させてこそ顧客満足が得られるのだ
状をした型の中に金属を注入するのです
なと痛感しました」
。
が、それをごく短時間において、隅々ま
お客様にご満足いただくことによって
よいシステムは設計できません。個々の
で均一に注入しなければなりません。そ
築かれた信頼関係は、トキメックのかけ
エレメントに精通していると同時に、そ
こで、油圧システムが重要な役割を果た
がえのない財産です。川上は、お客様と
れらを組み合わせてアプリケーションと
しているのです。
の信頼関係をより強固にしていくために
して構成した際の特性を考慮すること。
開発から市場投入に至るまでは様々な
も、いっそう踏み込んだ積極的な提案を
そして、システムアップしたときに信頼
困難がありました。
「開発当初はお客様
行っていきたいと考えています。
性の高いシステムを作ることを開発の前
3
るのが、我々設計者の務めだと思います」。
の吐出圧力と流量を最適な状態に維持す
サーボ弁の活躍の場も大きく広がりつつ
■
■
シンプルで使いやすい油圧システム
ます。
「とはいえ、机上の知識だけでは本当に
川上 敬芳
4
兵藤 訓一
03 ピストンポンプ設計
技術部 機器設計課
吉成 考正
ンテナンス性などに配慮した設計を追求
しています。
このうち技術に関して言えば、設計評
特徴を活かしながら、ベーンポンプの価
技術部 機器設計課
議会等を積極的に活用し、メンバーの設
値を最大化するような方向で開発へと取
大木 孝夫
計技術力をさらに底上げしていくことも
り組んでいます。たとえば、ベーンポ
品質向上には欠かせない取り組みになり
ンプはその機構上、低回転域における安
ます。一方で、
定した出力が難しいものですが、こうし
04 べーンポンプ設計
「システムをブラックボックス化してし
まった方が設計者としては安心できま
す。しかし、ある程度までお客様にも見
「現状の油圧市場、油圧の動向だけを見
えるようにして、お客様ご自身がメンテ
た部分も技術的には必ず解決策がありま
ナンスできる方が使いやすいシステムに
ていれば良いとは思っていません。
新
す。そしてそれは、ベーンポンプがより
なると考えています。もちろんそれは、
しい市場における油圧の可能性、あるい
広い回転数領域で利用可能になってくる
お客様と私たちとの間に強い信頼関係が
は空圧など隣接市場でのビジネスなど、
なければできないことです」
。
幅広い視野の中で開発を考えて行く事も
「将来的には、ピストンポンプに負けな
大事でしょう。それは、油圧本来の魅力
いような高効率なベーンポンプを実現さ
をいかに引き出せるかにかかります。ひ
せたいと思っています。もちろん、製品
とつの動力源で複数のアクチュエータを
としてお届けする以上、お客様にご満足
作動させ、さまざまな仕事を実行できる
いただけるものでなければいけません。
■
開発業務における設計評議会の効用
※3
ことを意味します。
油圧に限らず、機器の一部だけを担当
ベーンポンプは、ベーンと呼ばれる羽根
油圧の省エネルギー性、高効率特性につ
油圧各機器の設計者やシステム設計者が
トンが軸の回転に伴ってシリンダ内を往
しているとシステムの全体像は見えにく
車が水車のように回転しながら油を送り
いて、まだまだ追求できると思っている
緊密にやりとりしながらノウハウを集約
復することで油を送り出す油圧ポンプで
くなります。そこで担当の異なる技術者
出す仕組みの油圧ポンプである。コンパ
んです」。
し、トキメックらしいモノづくり目指し
ある。他の構造のポンプに比べ高圧時の
同士が一堂に会し、お互いに設計評価を
クトな形状ながら、大容量,低騒音,低
漏れが少なく効率が良いこと、また、可
行うのが「
脈動,安価がベーンポンプの特徴である。
変容量形と呼ばれる吐出し量を変えられ
まな視点による多角的な検証が、油圧シ
数多くの産業機械で使われており、トキ
る構造によりポンプ単体で流量と圧力を
ステムをより深く理解することに役立っ
メックのポンプ製品群において中心的な
制御できる特徴をもつ。工作機や射出成
ています。
位置を担っている。
形機などの複雑な制御への適用や、プレ
たとえば、圧力に対する耐久性が求め
ス機や建設機械などの高圧での使用等、
られる部品において、その隅が鋭角なま
多様な用途に用いられる。
まになっていると、局所的に高い応力が
ピストンポンプは、7∼9本程度のピス
■
高性能化とシンプルさの両立
※2
設計評議会」です。さまざ
かかった場合、強度不足で亀裂や破断を
■
ていきたいと思います」。
ンポンプの改良
ベーンポンプは長い歴史をもつ製品で
品質における国際的な競争力を強化
生じる恐れがあります。こうした場合、
「近年、アジア諸国をはじめ海外勢の追
油圧機器単体の設計者は通常、コーナー
い上げが厳しくなっています。だからこ
部分を丸くして応力が分散するようにし
そ、メーカーの原点に立ち返り、高品質
「可変容量ポンプ自体は新しいものでは
ておきます。しかし、騒音・振動といっ
化と信頼性の向上に改めて力を注がなけ
ないのですが、高応答性、大流量、さら
た配管までを含めた油圧システムとして
ればならないと思います。つまり、品質
なる安定性の向上に向けて改良を進めて
考えると、それが最適な設計でない場合
における国際競争力の強化です。これこ
おり、現有市場以外にも拡販できるよう
もあります。図面をもとに検討を進めて
そが最も大きな差別化要素になるのでは
にアプリケーションを増やしていきたい
いく過程では、そういった多角的な視点
ないでしょうか」。
と考えています」
。そう語る吉成は、可
が導入されてきます。
ベーンポンプの製造では、ベーンとそ
変容量ポンプの斜板の角度制御などに必
また、それぞれの設計者の考え方や手
れを受ける部分のクリアランスが数μ m
要となる制御回路も設計しています。
法が明らかになってくると、設計段階
( 1 μ m は 1/1000mm) と い う、 非
近年、要求される仕様は高度化、複合
におけるミスの早期発見、修正にもつな
常に厳しい高精度が求められます。これ
化してきており、制御システムについて
がっていきます。もちろん、他設計者の
はスムーズな回転や流量の制御に不可
も高機能化が進んでいます。このうちコ
よい手法を取り入れることは、新しいア
欠な仕様です。加工における様々なノウ
イデアを得る良い機会にもなります。
ハウを維持し、タイムリーな部品供給を
ントローラでは、ポンプの圧力信号など
■
低回転で吐出圧が発生しにくいベー
を見ながらフィードバック制御を行うた
「ふだん自分では使わない部品に着目し、
実現するためには、製造工程の内製化を
め、仕組みが複雑になりがちです。吉成
それが担当製品のブラッシュアップにつ
基本とすることになります。そのため、
は、少なくとも操作性を簡便にしていく
ながったこともありました。技術者同士が
ISO9001 の認定継続をはじめ、生産、
ために、ユーザーインターフェイスやメ
横でつながる大切さを実感しています」。
販売、そして技術が一体となって品質管
あり、既に成熟したという捉えられ方を
されることもあります。そこで、本来の
※ 3 新しい市場における油圧の可能性
「小さな力で大きな仕事をさせられる」という特性を活かし、高精度の成型機やダイ
カスト分野に加えて、暮らしに密着した分野、例えば油圧式介護ベッドやホームエ
レベータといった活用が検討されている。
理により力をかけていくことが一層重要
になってきます。
吉成 考正
※ 2 設計評議会
設計手法の改善やナレッジマネジメントの強化を主眼としている。記事中の4人を
含む、中堅の設計担当者を中心に構成。
大木 孝夫
関連情報 本ページの関連情報をホームページで公開しています。併せてご覧下さい。 → www.tokimec.co.jp/report/no106/t20.html
5
6
進化する慣性センサ
ON
PA R T
指先より小さいマイクロ慣性センサ「MESAG」
MESAG は超精密加工技術とジャイロ
(静電力)で浮上させて非接触の状態で高
応用技術を駆使して開発が進められている
速回転させることにより、測定対象の上下・
慣性センサです。最大の特徴は、指先に乗
左右・前後方向にかかる加速度と、前後・
るほど小さい=マイクロサイズという点に
左右方向の傾斜に関わる角速度の、合計5
あります。
種類のデータを同時に計測し、出力するこ
従来、加速度や角速度といった慣性デー
とができます。
タを計測するには、比較的大きな装置が必
MESAG の超小型化、高精度、省電力
要でした。ところが MESAG では、その
という特性によって、従来では考えられな
コアとなる部品が直径数ミリのリングに過
かった、慣性センサの新しい用途が見えて
ぎません。このリングをわずかな電気の力
きました。
● 指先よりはるかに小さいサイズ
1
● MESAG 構造図
● 回転体の拡大写真
デバイス部外観
期待される「ウェアラブル・モーションセンサ」の実用化
M
E
S
A
G
MESAG は直径数ミリのリングを静電力で浮上させ、これを超高速で回
転させることによって 3 方向の加速度と 2 方向の角速度を同時に計測しま
す。角速度の検出は船舶や航空機向けの高精度ジャイロと同じ原理の「回
MESAG の応用で期待されているのが、
ル名やテナントとして入っているショップ
モーションセンサのとしての応用です。
情報などを重ねて表示するようなシステム
検出も高精度なサーボ型で、かつ 3 方向の加速度を同時に計測できる特長
モーションセンサとは、動く物体の進行方
です。この時、
MESAG を使うことで、ディ
を持っています。
向や、前後、左右の傾斜変化などのデータ
スプレイを付けた利用者の頭部の動きをリ
を測定する装置です。これを超小型化すれ
アルタイムで測定し、この情報によって重
ば、人間の体の一部に装着して使用できる、
ね合わせる画像データの位置や向きを補正
ウェアラブルな各種デバイスを開発するこ
します。
とができます。
ずれのない映像の重ね合わせにはこうし
例えば、MESAG を内蔵したゴーグル
たモーションセンサが不可欠ですが、現実
型ディスプレイにおける応用などが挙げら
に利用するためには、実際のデバイスが装
れます。これは、
ゴーグルのスクリーン(視
着を負担に感じない=ウエアラブル・サイ
野部)越しに見える現実の建物などに、ビ
ズであるということも必要条件なのです。
転式」ですが、機械支持部を全く持たないのが特長です。また、加速度の
MEMS技術を使った回転型ジャイロとしては世界初であり、
1つで3方向の
加速度、2方向の角速度を計測できるMEMSセンサは他に例のないものです。
● MEMS による超微細構造の製作
● ヘッドマウントディスプレイ
ト キ メ ッ ク で は、 静 電 力 で 浮 か せ た 回 転 ロ ー タ に よ り、 物 体 の 加 速 度 と
︵ Micro Electrostatically Suspended Accelerometers and
MESAG
角速度を同時に計測できる世界初の仕組みを搭載したマイクロ慣性セン
サ﹁
︶﹂を開発中。これを核に、様々な社会的ニーズを満たす製品・サー
Gyro
ビス化に向けた挑戦を進めています。
シリコンウェハにミクロンの三次元構造体を作りこむ
MESAG の 開 発 に お け る キ ー テ ク
れ、大学や企業、国の研究機関などが連携
ノ ロ ジ の 一 つ が MEMS(Micro Electro
して推進してきました。現在、世界でも非
Mechanical System)です。MEMS とは、
常に高い水準に到達しているテクノロジー
シリコンウェハと呼ばれる半導体にμ m
領域です。
(1000 分の1mm)レベルもしくはそれ
この微細加工技術が MESAG の開発に
以下の、超微細な三次元構造体を作り出す
活かされています。MESAG の製造にお
半導体製造技術を指します。
ける特殊な装置や設備などの利用、生産技
製造といっても、電子顕微鏡で見なけ
法の研究にあたっては、オープン志向の研
れば分からないほどの小さなサイズですか
究体制と、マイクロマシニング技術の実績
ら、ピンセットなどでつまんで部品を組み
で国内外からの高い評価で知られる東北大
立てるような作り方はできません。ガスや
学に支援を仰ぎました。その上で、複雑な
液体などでシリコンウェハを溶かしたり、
形状に素材を溶かし、削り取っていく「反
分子やプラズマなどをぶつけて削り取った
応性イオンエッチング」や、上下のガラス
りすることで、彫刻のように立体的な形を
蓋を接着するための「陽極接合」といった、
作っていきます。これらは日本では 80 年
MEMS 技術をトキメック内部に蓄積して
代頃からマイクロマシニング技術と呼ば
きたものです。
7
MEMS 技術を使えば、一枚のシリコンウェハから複数の小さな構造体を一度に
たくさん生産することができます。MEMS は超微細構造物を作り出せる技術であ
るというほか、極めて高い生産効率を実現する技術、という側面もあります。
MESAG を内蔵したゴーグル
型ディスプレイ ( ヘッドマウン
トディスプレイ ) は、現実の視
覚と仮想の CG 映像とをミッ
クスして映し出すことができま
す。マンナビや観光案内といっ
た実用的な利用のほか、現実の
映像を取り込んだ CG ゲームと
いった活用も考えられています。
関連情報 本ページの関連情報をホームページで公開しています。併せてご覧下さい。 → www.tokimec.co.jp/report/no106/t30.html
8
次世代型運航支援システムに、トキメックの AIS 陸上基地局用トランス
ポンダが採用
第三管区海上保安本部では、去る 7 月 1 日から我
AIS 情報も全てディスプレイ上に表示されます。こ
が国初となる「東京湾 AIS 情報処理システム」の運
れによって適切な管制指示が行えるようになり、安
用を開始しました。これは、AIS ( 船舶自動識別装置 )
全航海に向けた相互連絡もリアルタイムかつ緻密に
を活用した次世代型の運航支援システムであり、AIS
行えるようになります。
を搭載した船舶から送信されてくる各種データを自
「東京湾 AIS 情報処理システム」の基幹部には、
動的に収集し、安全航海に必要となる情報を陸上の
トキメックの AIS 陸上基地局用トランスポンダ
管制センターから的確に提供するというものです。
R-30 が採用されています。船舶搭載用の「ユニバー
AIS は、識別符号や船名、船位、船速、針路、行
サル AIS」TRA-2000 と共に、トキメックは航海の
き先などの船舶情報を近隣の船舶同士、あるいは
安全確保に陰ながら貢献しています。
船舶と陸上との間で自動的に送受信する装置で、
SOLAS 条約 ( 海上における人命の安全を確保する国
■「東京湾AIS 情報処理システム」は沖電気殿の製品です
際条約 ) で平成 14 年 7 月から船舶への搭載が順次
洋上から保安警報を発信!船舶警報通報装置「TT-3000SSA」
船舶警報通報装置 (SSAS:Ship Security Alert System) は、海賊やテロなど船舶に危害行為が発生した場合、陸上機関に船舶保安警
報を発信するシステムです。万一の際、乗組員が SSAS のスイッチを押すと、船舶の識別情報、行き先、現在位置、船速などが海上
保安庁などに送信され、解除ボタンを押すまで一定間隔で送信し続けます。船内においては警報ランプの点滅やブザーなどの警報音
が生じませんので、犯人を刺激せず隠密裏に通報することが可能です。また、通報スイッチはブリッジ ( 船橋 ) およびそれ以外の任意
の場所に設置できるので、とっさの事態にも対応できるようになっています。
トキメックの船舶警報通報装置「T T-3000SSA」は、欧州市場で実績を持つトラネ&トラネ
社(デンマーク ) のインマルサットミニC技術をベースに開発された新製品です。既に代表的な
船級協会の承認を取得していますので、改正 SOLAS 条約*の発効に基づいてすぐにご入用な場
合でも対応が可能です。船舶警報通報装置をお求めの際は
「TT-3000SSA」
をぜひ用命ください。
*船舶警報通報装置は、改正 SOLAS 条約 ( 海上人命安全国際条約 ) によって、2004 年 7 月 1 日以降、国際航海に従事する一定条
件の船舶に対して本装置の装備が順次義務付けられています。
● 問い合わせ先
第1制御事業部 船舶港湾事業 電話:03-3737-8611
義務付けられています。
「東京湾 AIS 情報処理システ
ム」は、こうした AIS の機能を活用して船舶交通の安
全確保と海上交通路の効率化を推進するために開発
された、次世代型海上運航支援システムなのです。
従来、海上保安本部の交通センターでは、レー
ダーで船舶の位置を確認していましたが、東京湾は
世界有数の船舶交通輻輳海域であり、船舶の特定が
難しいのが現実でした。そのため、無線連絡で確認
を取りながら指示することが多く、迅速な対応が難
しかったのです。
「東京湾 AIS 情報処理システム」なら、東京湾内
を行き来する船舶のレーダ画像に加え、それぞれの
AIS 陸上基地局用トランスポンダ R-30
超音波流量計 UFB-10 UFR-10A
電子海図情報表示装置が EC 型式承認に合格
新発売の「UFB-10」
「
、UFR-10A」シリー
ズは、中小規模な農業用水事業での水管
理に最適な超音波流量計です。農業用水
ならではの使用方法を考慮したユーザー
フレンドリーな設計思想が随所に活かさ
れています。
発売以来ご好評いただいている電子海図情報表示装置 EC − 7000 /
EC-7500 が、2004 年 6 月 8 日、デット・ノルスケ・ベリタス (DNV:Noified
Body)によって、EC 型式承認《舵輪マーク》
(注1)の検定に合格しました。
従来機種に比べ、
新たにAIS ターゲット重畳機能、
EC-7500 および EC-7000は、
航海情報表示機能を持った新商品であり、新たな自動航行機能として注目されて
いるトラック・コントロール・システム(注2)を実現可能な製品となっています。
大きな特徴として、UFB-10 は 5 年間
メンテナンスフリーのバッテリータイ
これらの機能は安全航行に寄与するものとし
て活用が期待されています。
プ、UFR-10A は拡張性の高い2線式を採
用しています。農業用水は混流物が多い
ため、従来の羽根車式流量計では定期的
な清掃が必要でしたが、超音波方式はセ
ンサが接液していないのでメンテナンス
が不要です。また、新開発の超音波伝搬
位相差方式の採用によって低消費電力と
リーズナブルな価格を実現し、ランニン
グコストとイニシャルコストの低減にも
貢献します。農業用水の合理的な水管理
に、
「UFB-10」
、
「UFR-10A」シリーズを
ぜひご採用ください。
● 問い合わせ先
第1制御事業部 流体管理事業
電話:03-3737-8621
(注1)舵輪マーク
EU( 欧 州 連 合 ) の 舶 用 機 器 指 令(Marine Equipment
Directive = MED)に適合していることをあらわすマークの
こと。
(注2)トラック・コントロール・システム (TCS)
航路誤差や速度をフィードバックした自動航行システムの
機能名称。トキメックでは、電子海図情報表示装置 ECDIS
EC-7500 または EC-7000 とヘディング・コントロール・シス
テム -HCS(PR-6000 シリーズ)と組み合わせることによって
トラック・コントロール・システムを実現。現在デット・ノルス
ケ・ベリタス(DNV:Notified Body)にて型式検定受検中であり、
近く EC 型式承認を取得予定。
出発進行! 日本初のハイブリッド型超音波レール探傷車が
運用開始
東日本旅客鉄道株式会社殿では、在来線の保線車両としてトキメックレール
テクノの超音波レール探傷車 RIC-N をご採用いただき、その運用が今年度から
開始されました。新型レール探傷車の特徴は、タイヤ式と摺動式の探触子をハ
イブリッドした探傷方式にあります。それぞれの方式の長所を活かすことによっ
て探傷性能の向上を目指しました。
既に首都圏地区を中心に保線検査が
実施されていますが、
「傷の検出性能が
アップした」と、たいへんなご好評を
いただいております。通勤、通学の足
として毎日安心して利用できる鉄道を
守るため、超音波レール探傷車 RIC-N
は今日もどこかで走り続けています。
A I S の運用イメージ
東京湾 AIS 情報処理システムは、東京湾周辺の海域に設けられた 7 個所の AIS 基地局 ( 観音埼、本牧、浦安、勝浦、野島、石廊埼、大島 )
をネットワークし、観音埼にある東京湾海上交通センターの AIS 情報処理装置と既存のレーダ情報処理システムを連携させることにより、
ディスプレイ上にさまざまな情報を表示できます。
今まで以上に海上交通路の安全性を高め、効率の良い運航管理に貢献するシステムとして期待されています。
協力:東日本旅客鉄道株式会社殿
写真は UFB-10
関連情報 本ページの関連情報をホームページで公開しています。併せてご覧下さい。 → www.tokimec.co.jp/report/no106/t40.html
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