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平成 20 年度 農林水産省委託事業 農林水産物・食品 輸出オリエンテーションの会 輸出促進セミナー(北海道会場)の要約 ○主催者挨拶/北海道開発局 次長 菊地弘美氏 今年の最もうれしいニュースは、7 月に北海道洞爺湖サミットが開催され、G8およびその他世 界各国の首脳やそのご婦人、そして世界のジャーナリスト、報道関係の方々に北海道の農林水産 物・食品が提供され、好評を博したことだ。北海道のおいしい食材を世界に情報発信できたよい 機会となった。また、その北海道の農林水産物の食材が、現在開催されている札幌オータムフェ ストでも大変注目を浴びていることも併せて報告したい。本日の会は、このような北海道の大変 おいしく、すばらしい農林水産物や食品を、日本国内はもとより海外の事業者の方に知っていた だき、輸出促進につなげることが目的だ。プログラムとしては、午前中は輸出促進セミナーとい う形で、講師の方々にお話をいただき、午後は展示・商談会、夕方は輸出産品発掘会を予定して いる。なお、セミナーに関しては、より具体的な実務に関する講演要望があるため、アジアおよ びロシア極東への農水産物の輸出に関する現状と、輸出検疫に関する情報提供の3点に関して行 うこととした。本日の会が参会の皆様方、さらに輸出促進サポーターの皆様、双方にとって、有 意義なものになることを強く念願している。 ○講演-1/「ドバイ・タイマーケット最新情報」/Daisho(Thailand)Co.,Ltd. 加藤秀樹氏 <事業経緯とタイの最新状況> タイで北海道の物産展を、ここ 3 年連続でやっており、昨年もこの場で商談会を行ったあと、物 産展に直結した例があるので、本日も非常に楽しみにしている。私は昔、トーメンという商社に おり、1993 年にタイに赴任後、独立し今の会社を 1999 年に立ち上げた。タイは日本食材の大切 な加工拠点であり、日本の大手の食品・水産の加工メーカーはほとんど拠点をもっている。そう した重要拠点のタイで、輸入を中心に日本食材をタイで販売する仕事をしていたが、その延長線 上で、2 年前にドバイへ行く機会あった。将来性を見込んでドバイに会社を去年つくったという のが簡単な経緯だ。 タイの最新の状況だが、日本食はこの5年ぐらいで完全に地元に定着したマーケットになったと 言える。日本食レストランはタイ全土で 850 店舗(内、約 650 店舗がバンコック)、市場規模は 約 200 億円だが、タイの場合はほとんど原材料が現地でそろうので、どうしてもそろわない物や 1 高品質を求めるものについて日本から輸入しているというのが現状だ。小売一般では、日系のデ パートやスーパーマーケットだけでなく、それ以外の現地系のデパートやスーパーマーケットに も日本食コーナーが設置されており、フードコートには必ず日本食のコーナーが1店舗はあると いう状況である。この5年くらいでここまで拡大した理由は、一つには、物産展をやって浸透さ せてきたこと。例えば一番売上のある北海道物産なら 10 日間の売上で約 3 千万円ぐらい(タイの 国民1人あたりのGDPは日本の約10分の1以下)の大きなマーケットになっている。もう一 つの要因は、輸入制度が非常に明確化・簡素化されたこと。タイは独自の衛生ルールを持ってい たが、それが明文化、国際化され、日本とタイの間で JIEPA 経済連携協定を去年締結し、主に農 産物中心に関税が軽減化されたことが大きい。例えばリンゴ、ナシ、カキ、モモについての関税 は 0%、加工食品もこれから5年間のうち軽減する予定であり、非常に輸出促進にはプラスにな っていくと思う。そんな状況下で、私どもが商売として考えていく上では、やはり他にないもの や、ターゲットを富裕層に絞っていきたいと考えている。そのためにも、今まで以上に食材の発 掘に力を注ぎたい。その一つのいい機会が、物産展であり、今年は3月に行ったが、来年は9月 を予定している。時期にあった商品を商談会等で教えていただきたい。 <ドバイの最新状況> ドバイのあるアラブ首長国連邦(以下、UAE)の全人口は 449 万人で、首都は最大の首長国であ るアブダビだ。1人当たりのGDPは去年の数字で4万 3,000 ドルであり、日本より高い。この UAE の中でドバイは規模、人口、総収入的にはアブダビに次いで2番目になるが、石油で発展し た地域ではない(アブダビは UAE の石油の9割以上を産出)。中継貿易、投資の促進をするため のフリーゾーンの開発や、関税を非常に低く抑えたり、自由貿易政策や、昨今では流入する資金 を、観光やサービス産業に活用することで発展してきた。我々、食の世界で言うと、アラブとい うとイスラムでハラルにもとづいた非常に厳密な制限があるが、ドバイはかなり例外的に外国人 に対して開放している。ちなみにドバイの人口 130 万~140 万人のうち、8割が外国人で、その 8割の中の8割が、実際はインド・パキスタン人の労働者だ。特筆すべきは年間 600 万人の観光 客で、多くが富裕層という点である。こういった富裕層の多くの観光客、他のアラブ地域と比べ て輸入販売等についての政策的な障害が少ないこと、何よりも、アブダビやバーレーン、クウェ ート、イラクやイランなど、非常に国力のある人口の多い国を周辺に抱えているので、こうした 国への販売拡大をねらいドバイに会社をつくるに至った。 2 だが、現状では正直言って苦戦している。その原因は、アジアの国と違って、ベースに日本食や 日本の文化を受け入れる土壌がないからだ。ようやく日本食レストランが、特に欧米人が使うよ うな高級ホテルの中にここ数年増えており、今は 30 店舗か 40 店舗あるという状況にまでなった が、スーパー等に日本食の売り場があるまでには至っていない。だが、タイなども最初は同様で あり、今はこうした土壌を育てるのが我々の課題だ。そのために、まず現地に駐在している日本 人やそのご家族(ドバイで約 3000 人、湾岸全部を含めると約1万人)に日々の食材を提供する ことを近々の課題としている。ただ、最終的には小売の世界に大きく売場がとれないと、目に触 れる機会もないので、日系の小売がいない現状では、現地の資本、韓国系のスーパーに日本食の コーナーをつくっていただくべく話をしている。ドバイのいい点は、所得が高く、高いものを厭 わないというところなので、高級食材に近いもの、例えばくだもので言うとメロンやモモ、カキ といったものをスーパーに販売している。今後、どれだけスーパーに食い込めるかは、どれだけ アピール度の高い品物を紹介できるかということがポイントだと考えている。 <質疑応答> 質問者A 輸入にあたって規制されている商品はあるか。 加 藤 氏 基本的にはイスラムの国なので、お酒(直接的・間接的に法律上は 0.05%以下)や豚 や蓄肉関係の食材には制限がある。豚や蓄肉関係の場合、例えばエキスなどを含んでいる場合は、 すべてハラル証明だが、豚や酒の輸入ができるライセンスを持っている会社もあるので、そうい うところにアプローチすればノンハラルの食品でも輸入はできる。外国人が8割の国だからこそ、 例外的な市場もあるということだ。 ○講演-2/「台湾マーケット最新事情」/友士股份有限公司 中村知義氏 <台湾の経済・食品状況> 私が台湾に移った 10 年前は、日本食品というのは、台湾に駐在している日本人向けの販売が多か ったが、今はだんだん現地の台湾人への販売が増えてきている。その理由は、まず一つは、台湾 に駐在している日本人の数が減少していること(中国駐在へのシフト)。第2に、台湾人の所得の 上昇。第3に日本への観光ブーム、日本ブーム(若い人を中心としたファッションや芸能、歌、 ドラマ関係など)が挙げられる。 また、日本で発生した汚染米事件、メラミン入りミルクの問題は、台湾でも大きな問題となり、 3 今後、輸入に対する検査等々の規制が厳しくなると思われる。特に粉ミルク入り事件の問題が大 きくなったが、その理由は、実際に死者が出たこと、一人っ子が非常に増えており、極端に子ど もを大切する地域柄などに起因する。逆にいえば、子どもが食べる食品は台湾で非常に伸びてお り、品質に非常に敏感で、多少高額な商品でも購入する人が増えるなど、今後、成長していく市 場だと思われる。台湾人は、もともとあまり運動をしない国民であり、健康を食品から求める傾 向が強い。そういった意味で、健康をうたった商品も売れる傾向がある。 また、経済・景気面では、昨今、日本・アメリカ同様に非常に不景気で、台湾の場合、株価が下 がると一気に景気が下がるというのが顕著な地域だが、富裕層は、確実にこういう時代でも高額 消費をしている。この傾向は台湾に限らず中華圏は同じであり、日本と違い、所得格差が非常に あるのが特徴だ。そのためにも、日本とは違うマーケット戦略が必要である。 <台湾における北海道食品の現状と課題> 台湾における北海道商品に関しての情報だが、数年前までは、持ってくれば何でも売れたという 状況があった。しかし、そういう時代は終わりつつあると思う。その理由としては、まず1つは、 台湾各地で北海道の産品物産販売会、いわゆる販売イベントというのが各地で行われ、消費者に はもう珍しいものではなくなったこと。もう1つは、台湾の人はかなり日本や北海道を訪問して おり、その方たちが少しずつ日本でもあまり有名でないところに行きたがる傾向が出て、そうい うところの商品が売れる傾向が出ていることだ。とはいえ、北海道というのは、やはり都道府県 の中では一番人気であり、まだまだ販売というのは有利な位置にある。そういう点を考えて、今、 関係者すべてが台湾に対する販売戦略の見直しをする時期だと思う。一番難しいのは、販売を開 始して、いかに定期的にきちんと売れていく、売っていけるか。そのためには、できるだけ現地 の方に足を運び、現地にいる流通関係者、長期駐在者など様々な方々にいろいろ相談するなり、 話を聞くなり、貿易パートナーをつくるということが、私のおすすめだ。もう一度皆様方、日本 ではなく台湾での、商品の実力というのを見直してみたらよい。また、もっと北海道の特徴を全 面的に出した商品展開をされる方が有効であり、地元では当たり前のものが我々にとっては魅力 的といったギャップもあるので、現地の方とよく相談されてやる方がよい。 <質疑応答> 質問者B 台湾では、北海道でつくっていないようなものが結構売られているのを目にしたが、 偽造防止等に関して、販売側の取り組み、今後の課題を教えて欲しい。 中 村 氏 北海道というのは台湾では非常にブランド力がある。ブランド名が北海道というブラ ンドの商品が出ているくらいだし、実際、 「北海道」と書いてあって、北海道でつくっていない商 品、原料も北海道産をまったく使っていない商品もたくさん出回っている。例えば去年、沖縄の 「泡盛」や「さぬきうどん」なども台湾で商標登録されてしまっているが、企業・メーカーだけ でなく、道の方が一度見直しをして、例えば「北海道」という登録商標等々の面から一度検討さ 4 れてはどうか。 質問者C 日本には健康食品の販売にあたって薬事法等の表示規制があるが、台湾での規制はど ういう風になっているのか。 中 村 氏 数年前から非常に健康表示に関しては厳しくなった。日本の健康食品認可でも、認可 証明を台湾の政府の衛生局等に提出をして、認可がおりてやっと「健康」という文字をラベルに 貼れるという状況だ。例えば「健康にいい」とか「健康に優しい」 「胃腸にいいとされる何々の原 料を使用している」というあいまいな書き方も、全て基本的には禁止されており、 「健康」という 言葉は漢字、英語、中国語で入っていると、その場で罰金扱いになるので注意が必要だ。 司 会 者 例えば、切花のようなものの輸出の可能性はあるのか。 中 村 氏 オーストラリア、ニュージーランドの方からかなり入っていると聞いている。夏と冬 が逆なので台湾が夏の時期には冬の花々を入れているようだ。検疫の難しさ等々というのは手元 に資料がないのでわからないが、可能性は十分あると思う。 ○講演-3/「道内のロシア極東向け農水産物輸出の取り組み」/(社)北海道総合研究調査会 富樫巧氏 <ロシア・極東地域の情勢および経済状況> 最近になって、インターネットや航空網の発達により、北海道からでも海外を視野にして仕事が できるような状況になっていると感じている。そうしたこともあって、現在、私自身いろいろな 地域や国と仕事をするようになっているが、最初に向き合ったのがロシア・極東地域だ。ロシア・ 極東は、正直言って一番手ごわい相手だ。それは、極東地域はロシアの首都からも遠く、人口4 ~600 万人で非常に市場も小さいこと。中央とは異なる規制があり、スムーズに国際社会のルー ルが通らない市場だからだ。 ロシアのマーケットをまず説明すると、人口 1 億 4,000 万人でサンクスペトロブルグ、モスクワ などは世界有数の都市であり、富裕層が拡大し、物価の高い地域と言われている。今でこそ、ア メリカの景気の影響で冷え込んでいるが、石油をもっており、ある程度の富裕層は今でも残って いる。彼らをねらったファッションや自動車業界の動き、観光地でのロシア語併記を見ても、世 界的にロシアの市場や富裕層が注目されていることは確かだと思う。 ロシア・極東地域のマーケットとして考えられるのは、サハリン、ウラジオストック、ハバロフ スク。人口が少ない分、購買力は低いが、今、石油開発がサハリンで動いており、来年にはサハ リンで開発したLNGが日本にも入ってくる予定で、ロシア政府でも集中的に予算をつけている。 その象徴が 2012 年のウラジオストックでの APEC の開催だ。人口の内訳としては、沿海地方に 200 万人。ハバロフスクが約 140 万人。残りのサハリン州は石油開発の予算である程度潤っている。 昔と比べて違うのは、富裕層が増えてきたこと。観光に関しても、オーストラリア人のように、 極東地域の人たちもニセコや、飛行機の関係で新潟のスキー場などにも足を運んでいる。 5 <ロシア・極東地域の日本食を取り巻く環境と最新状況> ロシア全体の日本食イメージだが、日本食イコールダイエットというイメージがあるらしく、い ろいろなものが混入している中国産や、太るイメージのある米国産の食品に対する信用の低下も あり、日本食には非常に関心が高い。モスクワだけで約 1000 軒の日本食レストランがあり、うど んや焼き鳥のチェーン店はどんどん広がっている。ただし、味や食文化などは現在発展中で、こ れについては日本の大使館を中心に、味・文化・食品の衛生管理などに関して、啓蒙活動をやっ ている状況にある。ロシアでは、本当に1つの物がいいと思うと、すごく人気が集中する。例え ばイチゴでも、日本のものなら何でもいいのではなく、モスクワではあまおうがリッチな人の間 で人気となるなど、ブランド力のある食品が出てきている。 このような中、ロシアにおいて、モスクワを中心に、大手スーパーが日本食の常設展を開催して いる。また、寿司ブームの台頭にあって、衛生管理できなかったために食中毒でもおこされたら、 日本食自体のイメージが悪くなるということで、モスクワの大使館は、今、日本食の管理のPR をし、外務省の管轄である日本センターで、寿司職人を育成サポートする動きもあるなど、日本 の政府としても、他の国と同様にロシアも大きな市場の1つだとして動き始めたと言える。 ロシア・極東地域という観点から、一番進んでいるのは新潟県で、ハバロフスク地方、沿海地方 に対して航空路を持っており、イチゴ、ナシ、花、野菜、最近ではキノコなどの輸出も始めてい る。出荷して翌日には向こうのマーケットで販売することが可能な状況だ。航空機のスペースさ えあればもっと売れるのだが、航空機のスペースが限られているので、これぐらいしか売れない というような現状らしい。また、新潟県でも常設の物産展で、県が主催する商品を紹介する場所 をつくっている。隣の富山県は沿海地方にはフェリーで食材を運び、ハバロフスク、ウラジオス トックなどの市場に関しては、モモ、ブドウ、リンゴなどを販売している。これらの商品は、飛 行機で行く場合は新潟経由、船で行く場合は中古車と一緒に運んでいるという状況だ。 人気商品は新高梨で、ロシアではとにかく大きいものが好まれる。あまおうに関してはハバロフ スク、ウラジオストックでも販売されている。これは北九州空港から、夏場だけウラジオストッ クに定期航路がある関係であり、航空路と商品の関係が非常に深いと思う。 北海道でも、貨物船や漁船を活用した小口の輸出(小樽、稚内、紋別等)などが定期的に行われ ており、稚内の企業と契約しているロシアの企業が、日本食を広げる動きも行っている。また、 札幌や小樽からモスクワの見本市に参加している企業もある。一方、サハリンにはカレーやラー メンなどのレストランチェーンが進出し、輸出拡大の意味では非常にいいスタートだと思う。 <今後の課題と対応策> こうした中、北海道の一番の課題は、やはり安定した物流ルートの確保である。今は、持ってい けば売れる時期だからこそ、ルートの確保が重要だ。また、ディストリビューターの育成も大事。 新潟の場合は、官民が一緒になって、かなり前からロシアに特化した人脈づくりをしていた。 また稚内市は青年会議所、商工会議所を中心に研修生を何十年と受け入れ続けており、稚内の一 6 部の企業者が、ロシアの人たちのために、例えば宮崎駿の映画の上映会を開催するなど、日本の 紹介などを通して、信頼を醸成してきたという事例があり、そういう動きがまだまだ必要であり、 こうしたものを全北海道的な動きにしていくべきだと思う。 国際戦略の中でロシアだけをマーケットにするのは、リスクがあるので、いろいろな国や地域に 商品を出す中で、ロシアも一つに加えるという形で考えた方がよい。また、継続的な仕組みづく りに長いスパンで取り組む必要がある。さらには、あまり助成を頼らないこと。新潟や稚内の事 例もそうだが、行政があとからサポートしてくるというような感じで動くのがベスト。プロパガ ンダを持って、民間で連携して何か一つの動きをつくることが、ロシア・極東地域を考える上で は必要ではないかと思っている。 <質疑応答> 質問者C 極東地方の方にも日本食料理店は増えているのか。またそれらは日本資本か。 富 樫 氏 モスクワでは最初の方は日本人の経営だったものが、今はだんだんロシア人経営とな り、日本人のコックをお金にまかせて連れてきているパターンが増えてきている。極東地域は日 本食と韓国食と中華とが混ざったようなレストランが多いが、サハリンに関しては、日本人経営 のいいレストランは結構ある。彼らは例えば寿司ネタは地元調達だが、米に関して、一時期はア メリカから入れていたものの問題があり、今は日本の米を輸入するための対策を講じている。北 海道からも輸出できないかということを、今、我々も含めて実証実験等をやっているところだ。 ○講演-4/「輸出における植物検疫の知識」/横浜植物防疫所札幌支所次長 龍嶋義治氏 今日は、植物防疫と植物検疫、日本の植物検疫の制度、輸出検疫、輸出促進に向けてという 4 項 目に分けて説明していきたい。 まず、植物防疫と植物検疫がなぜ必要かというと、病害虫の発生を予測し、それを防除するため に植物防疫が、また、植物が地域を移動することによっておこる病害虫の新天地へ侵入を防止を するために植物検疫が必要である。 日本の植物検疫制度には国際検疫と国内検疫がある。この国際検疫の中に輸入検疫と輸出検疫が ある。輸入検疫は、輸入植物類を海空港で検査し、日本の国内への病害虫の侵入防止をするため の検疫であり、今回、主題になっている輸出検疫は、相手国の食物検疫上の規制、要求を満たす ために行う検疫である。 この輸出検疫であるが、輸出する相手国には様々な検疫上の要求内容があり、それぞれの国がそ の国の農業や緑資源を守るための保護水準を満たすために基準を作っているので、輸出国側では それに対処する必要がある。例えばリンゴの例なら、生の果物、苗、加工して缶詰めになったも の等、その植物の部分や、加工の程度によって、相手国の要求があり検査方法もおのずと変わっ てくる。 7 輸出検査には、栽培地検査と集荷地検査(基本的には輸出する港において検査を実施)ことがほ とんど)、相手国検査官との合同検査等のケースがある。輸出検査の流れは、まず輸出に先立ち、 検査希望日、輸出相手国、輸出数量等を植物防疫所へ事前に連絡し打合せをする必要がある。実 際、輸出の作業をするにあたって、輸出検査申請書等の書類を提出していただくが、輸入許可書 を取得している場合はその写しを添付して植物防疫所に検査の申請を行うことになる。このよう な輸入許可証が必要な国や、植物等は、事前に相手国によく確かめて、許可の必要なものは許可 証をとっていただき、その許可内容にあわせて輸出検疫をすることになる。その許可証の内容に 適合している場合は、植物検疫合格証明書が発行される。植物検疫は、基本的に物流を阻害しな いというのを原則としているが、輸出国や植物の種類によって検査方法が異なり時間が必要なも のもある。したがって、迅速・効率的な検査実施のためには、輸出相手国と植物の種類を明確に することが重要なポイントとなる。 相手国が輸入を禁止しており、日本から輸出ができない植物は、かなり高度な手続きを行うこと になるが、輸出が可能になるというケースもある。その手順は、まず、その相手国に輸入解禁の 要請を行い、相手国で病害虫の危険度の解析が行われ二国間で輸出検疫の条件を協議する。全て の条件が整えば、晴れて解禁となる。例としては韓国への梨やアメリカの柿、オーストラリアの 温州ミカン、ブドウ、桃などが危険度解析中で、現在協議中のものには韓国へのりんごなどがあ る。輸出が解禁されたとしても、その後の輸出が順調にいかなければ意味がないということにな る。かなり厳しい条件で輸出するわけなので、何か1回でも問題をおこすと、その時点で約束を 取り消されてしまうことになりかねない。 輸出促進に向けて重要なことは、①輸出国情報の充実、②生産地・地域との連携、③集荷地検査 の推進、④検査技術の高度化などで、輸出解禁措置により輸出するとなると、かなりの準備手続 きが必要であることが理解できることと思う。 円滑な輸出を継続するために、植物検疫条件に関する照会や質問があれば、とにかく植物防疫所 に問い合わせていただきたい。最終的には輸入業者を通じて、相手国の植物検疫当局に最新情報 を確認することが大事なことである。植物防疫所は、常に相手国の情報を仕入れて、それに合わ せた検査をしようという体制をとっているが、輸入国の検査要求内容の変更もあることから、よ く相手国に確認していただきたい。 なお、植物検査申請は、10 月 12 日からインターネットを使ってもできるようになる。植物防疫 所としても、積極的に輸出促進には協力したいと考えているので、相談事があったら、手元にあ る連絡先にご連絡いただきたい。 <質疑応答> 質問者D 干しイモや干しシイタケなど、加工程度の低い農産加工品は、こういった輸出植物検 疫の対象となるようなものがあるのか。 龍 嶋 氏 相手国の要求に基づいて行うことが基本だが、非常にあいまいな表現になって、どこ 8 まで検疫が必要なのか、我々も判断はつかない場合がある。やはり輸出者が相手の輸入者を通じ て、検疫のシステムについて、具体的に証明書がいるのか要らないかも含め確認する流れが必要 だと思う。ただ、加工頻度が進んでいるもの、瓶詰めや御菓子の類で個々に袋に入っているもの などは基本的に検査の対象とはならないが、それをつくるための材料で、一次加工したものにつ いては検査が必要になる場合もある。 ○ 情報提供/「北海道国際ビジネスセンターについて」/北海道ビジネスセンター事務局長 (社団法人北海道貿易物産振興会専務理事) 大原 嘉弘氏 北海道国際ビジネスセンターは、先月 9 月4日、北海道経済センタ-ビルの 1 階にオープンした。 ジェトロさんと同じフロアに入り、これからワンストップで、各企業の相談に応じていく予定だ。 母体は行政あるいは金融機関、経済界を含めた組織である北海道経済国際化推進会議と、北海道 国際貿易促進協会を発展的に改組し、今回新たにセンターとしてスタートすることになった。現 在、正会員は 45 会員でスタートしているが、コーディネーターや、特に最近ニーズの高い中国案 件に対応する専門のアドバイザーも配置し、個別の相談に応じている。具体的業務は、セミナー の開催や人材育成事業、個別相談などのほか、海外のビジネスパートナーとのマッチング、東ア ジア地域の情報収集、あるいは調査研究なども手掛けていく予定だ。当面、このセンターのPR も含めて、市町村あるいは商工会議所など地域の方々と連携しながら、セミナーや相談会等をや っていくつもりである。今日はセンター加入のための資料を入れているが、公式HPも立ち上げ、 バナー広告なども募集しているので、後程じっくりご覧いただきたい。なお、来年の1月に北京 で北海道産品販路拡大フェアを開催予定である。ぜひこれにも皆様方のご参加をお願いしたい。 以上 9