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高齢者のパソコン入力支援 高齢者のパソコン入力支援

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高齢者のパソコン入力支援 高齢者のパソコン入力支援
高齢者のパソコン入力支援
1.はじめに
キーボード操作やマウス操作ができない高齢者がパソコンへの入力を行う手
段として、パソコンの画面上にキーボードを表示させ、入力を行う方法が用い
られるようになってきた。この方式の入力インタフェースの設計により、高齢
者にもパソコン利用が広く可能になり、特に電子メールや掲示板への書き込み
など、以前より格段に幅広いコミュニケーションの可能性が開かれることにな
った。今後、今以上に多くの高齢者にとり、パソコンは日常生活に不可欠のツ
ールになるだろう。
しかし、通常のキーボードを簡略した横型の画面キーボードでは、入力画面
との並行作業を行うと、変換、確定、削除などのキー操作の上下の移動操作が
多くなり、利用者への負担も大きくなることが分かった。この問題を軽減する為
に、自由な構成の文章入力やパソコン操作で利用者の入力負荷を軽減するには、
キーボード配置を縦型にした入力方式の採用が有効と考えられる。
本レポートでは、日本語入力にはフリーソフトの自由定義可能画面キーボー
ドを使用して、高齢者の入力支援ツールとしてのインタフェースの機能性と課
題をについて考察する。
2.自由定義画面キーボードの機能性
自由定義可能画面キーボードは、「ソフトウェアキーボード」という種類のツー
ルで、ハードウェアとしてのキーボードが使えない状況でも、画面にキーボード
のようなボタンの並んだものが表示され、そのボタンをクリックすることにより、
マウスやタブレットで文字入力ができるようになる。様々なアプリケーションに
使用可能の Windows 用のフリーウェア。
さらに、画面上の仮想キーボードをマウスで操作して文字入力をするもので、
同時にマウスの練習を行っている。また、設定ファイルを変更することにより、
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キーボードのレイアウトは自由に変更が可能となる。 ダウンロード・解凍して
起動すると、デフォルトでは図 1 のようなキーボード画面が表示される。
デフォルトのままでは画面上で
場所を取りすぎること、また、メモ
帳などアプリケーションを並行し
て活用する為に、図2-a のような日
本語入力画の小型画面キーボード
の縦型に変更をした。
画面キーボードが表示されてい
る状態で、入力する側のメモ帳など
のアプリケーションやテキストエ
ディタなどにフォーカスを移すと、
図1:画面キーボード
画面キーボードがアクティブにな
り(グレイアウト状態ではなくな
る)、ボタンクリックで目的のアプ
リケーションに文字入力を渡すこ
とができる。
設定ファイルを書き換えること
で、自由にキーの並びを変更するこ
とができる。フォントは見やすい
24 ポイントに指定した。
その他の変更・提案
・ かな・英字
・ 半角・全角
・ 矢印キーの導入
・ 変換・確定キーの位置
・ スペースキーやエンターキー
の機能を分離すべきかどうか
・ 縦書き→横書き
図 2-a:右からタテ型画面
ひらがなを「右
右」から「タテがき」に変更
2
「左
左」からタテがきに変更
使用方法は、下方に移動させた
「×SHIFT」ボタンがオンになっ
ている時は Shift、Ctrl、Alt の修
飾キーを押しても、その後「画面
キーボード」上からポインタが出
た時に、修飾キーが解除される。
「LOCK」がオンになっていると、
修飾キーのあとにひらがなを押
しても、修飾キーが解除されずに
残る。
「ON」が押し下げ状態の時、
画面キーボードが動作対象にし
ないタスクバーその他にはポイ
図 2-b:左からタテ型画面
ンタが移動した時ときも、画面キ
ーボードが画面から消えなくな
る。メモ帳 や ワードパッド な
どを起動して、画面キーボード上
のボタンを押すと、入力される。
また、文字配列は、コンピュー
タ上の表記が、全て左からヨコが
左からヨコが
きであること、また、視野の導線
視野の導線
を考慮し、以下のように変更・決
定した。
タテがき→
→ヨコがき
あ
あいうえお
い
かきくけこ
う ⇒ さしすせそ
図 2-c:左からヨコ型画面
3
え
たちつてと
お
なにぬねの
3.利用事例と利用者からの評価
自由定義可能画面キーボードの
作成過程では、ボランティアで開催
したIT講習会で、実際に利用し
て、様々な意見や評価をいただい
た。参加した高齢者は、ほとんどが
初心者であり、講習会で初めてパソ
コンを利用した(写真1)
。
画面キーボードを試用した結果、
ほとんどの初心である参加者が、文
写真1:IT講習会
字入力に有用と評価は高かった。
参加者から見た入力支援ソフトとしての画面キーボードの有用性は、参加者
のパソコン利用環境やパソコン操作への習熟度等、様々な要因により左右され
る。しかし、従来の初心者特有であるキーボード入力の「難しい」、
「つまづき」
を全く感じない程、スムースな講習が進められた。
今後、利用者それぞれの好みも強く影響するが、入力インタフェースが大き
な効果を発揮するケースがあるということは、IT講習会の参加者の使用結果
から確かめることができた。
4.入力インタフェースの多様化と高齢者支援への応用と課題
入力インタフェースの設計にあたって重要な要素は、操作性と操作感である。
特に初心者の場合、操作性が悪いとコンピュータのその後の活用へ大きな影響と
なり、作業の効率に響くことになる。また、操作感が良くなければ長時間の作業
に支障が出る。道具として使いやすく、親しみやすく、馴染みやすい、直感的な
操作感を持つことが望まれる。
市場には、自由定義可能画面キーボード以外にも、入力インタフェースを供え
た高齢者向けソフトウェアが多く登場している。さらに、一般の情報機器に目を
転じると、ここ数年、携帯電話の普及を背景として、入力操作の負荷を軽減する
ための入力インタフェースの研究が進み、様々なタイプの入力インタフェースが
提案されるようになった。その中には、高齢者の入力支援技術として有用と考え
られるものが多く含まれている。
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そのようななか、一般的といわれるタッチタイピングによる文字入力の環境下
でコンピュータを操作することは、高齢の初心者にとり決して容易ではなく、初
めにキーボード入力をマスターしなければならないという壁がある。情報通信機
器の活用に意欲のある高齢者が、気軽にコンピュータの持つ能力を利用するため
には、簡単な入出力で操作可能な新しいインタフェースの開発が必要になると考
えられる。その意味からも、この自由定義可能画面キーボードが短期的なIT講
習会には汎用の道具となりえると考えられるが、長期的な活用となると多くの課
題があり不明である。その為、現在、高齢者の数人へ、IT講習会終了後の活用
を調査、分析を行う予定で検討中である。
情報通信技術の進展は、製品やサービスとして高齢者の目に見える形で具体化
してきた。しかし、情報通信の急激な技術進歩は便利さを与える一方で、高度化
が初心者への敷居をむしろ高くしたり、ITによる業務の効率化が強調されたこ
とで、高齢者にとりITは「難しいもの」、「親しみにくいもの」「何が便利なの
か分からない」として映る場合があった。高齢者から見て親しみやすく、身近で
個人の要望に対応してくれる優しいインタフェースの要望に応えられることが
大きな課題である。
今回のインタフェース設計における目標は、インタフェースが高齢者の努力に
対してプラスになるよう支援をすること。また、作業を実行する際、高齢者にそ
の機能を意識させずに、効率的で満足のいくもの、使っていて楽しいものである
ことを痛感した。
参考文献
[1] 自由定義可能画面キーボード:Windows 95,98,NT4 用の マウスで操作する
(画面に表示される)キーボード。設定ファイルを変更することにより、キーボー
ドのレイアウトは自由に変更できる。 http://0ban.com/araken/skey.htm
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