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ユビキタスネットワークコンピューティング・プラットフォーム

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ユビキタスネットワークコンピューティング・プラットフォーム
FIT(情報科学技術フォーラム)2003
M-027
ユビキタスネットワークコンピューティング・
プラットホームの応用
An Application of the ubiquitous network computing platform
津久井 陽司†
Yoji Tsukui
林 佳津男†
Kazuo Hayashi
似鳥 寧信†
Yasunobu Nitadori
青木 由直‡
Yoshinao Aoki
1. まえがき
札幌 IT カロッツェリア構想プロジェクトの研究テ
ーマの一つとして,「環境指向型 PC ユビコン(ユビ
キタス・コンピュータ)デザイン技術開発と化身話に
よる利用法の標準化」の研究が 2002 年度より開始さ
れている.札幌 IT カロッツェリアは,文部科学省の
「知的クラスター」創生事業として 2002 年度に採択
された全国 12 地域 10 クラスターの一つとして採択
されたものである[1][2].
上述の研究テーマの一環として 2002 年度にユビコ
ン基板が試作された.これはユビキタスコンピュー
ティングのためのプラットホームとして活用するこ
とを目的として試作された基板である.ユビコン基
板に搭載されたイメージセンサの画像データが LCD
ディスプレイに出力され,写真の撮影を行うことが
できる.またストリーミングサーバの機能を有する.
本年度は「ユビキタスコンピューティング」とい
うキーワードに基づき,ユビコン基板を屋外でのコ
ンピューティングシステムとして導入することを課
題とした.省電力性や短時間でのシステム起動とい
ったユビコン基板の特長を活用し,電池で長期間動
作する市民農園監視システムの応用開発を行ったの
で報告する.
2. 市民農園監視システム機能
図1に示す 2002 年度試作のユビコン基板は ,
撮影画像をネットワークに配信する機能,また,ス
トリーミングサーバ機能を有する.ユビコン基板を
屋外で使用するシステムに応用することが本年度の
課題である.
ユビコン基板に搭載しているカメラはイメージセ
ンサであり,アナログ接続のカメラに比べると消費
電力は少ないため,屋外でのカメラ機器の利用にお
いて有利である.しかしながら,屋外で使用できる
ようにバッテリーや電池でシステムを常時動作させ
られる程にはユビコン基板の消費電力は低くはない.
本研究では間欠動作によってシステムの長期動作を
可能とする.ユビコン基板は OS に µITRON が採用
されているいわゆる組み込み機器であり,短時
†(株)ビー・ユー・ジー
‡ 北海道大学工学研究科
93
図 1. 2002 年度試作ユビコン基板
間でシステムが起動するため,間欠動作に向いてい
る.
インターネットへの接続は,PHS を用いることに
よりコードレスで長期動作する屋外用のネットワー
クカメラシステムが実現できる.
本研究では,温度,湿度,土壌水分等を取得する
センサインターフェースを作成し,自宅や職場から
遠方の市民農園の情報をネットワーク経由で入手で
きるシステムの開発を行った.
本システムは以下の機能を実現する.
i) 静止画の自動撮影とメール送信機能
設定された日時に自動的に起動し,農園の様
子を JPEG 画像に記録してメールで配信する.
ii) 気象センサ情報の取得とメール送信機能
設定された日時に自動的に起動し、気象セン
サの情報を取得しメールで送信する.接続可能
な気象センサは温度センサ,湿度センサ,土壌
水分センサ等とする.
iii) 映像変化によるモーション検知機能
設定された時間間隔で起動し、簡易画像認
識によって動きを検出する.簡易画像認識は現
在の画像と前回起動時に記録した画像との
RMSE をとり,閾値を定めて変化を検出するこ
とにより行う.動きを検出したら JPEG 画像を
FIT(情報科学技術フォーラム)2003
処理が終了したら H8 に終了通知を行う.
メールで送信する.
EV-DSC3-S
iv) システムの盗難検知機能
センサ異常値検出等により,本システムが移
動されたものとみなしメールで通知する.
MMC Card
I/F
CF I/F
Serial
I/F
DSC3
data bus
32
v) メールによる設定機能
ユーザがメールを送信することで本システム
の起動時刻等の設定が行える.
SDRAM
SDRAM
128Mb
x2
128Mb x 2
Image sensor I/F
GPIO Port
Serial I/F
16
FlashROM
64Mb
拡張コネクタ
3. 市民農園監視システム内部構成
図 2. に本システムのハードウェアブロック図を示
す.本システムは EV-DSC3,EXTSNCDSC3 の2
枚の基板から構成される.
以下ではそれぞれの基板の機能について述べる.
電池BOX
1.8V
3.3V
GPIO
CMOSイメージセンサ
5.0V
H8S/2238
EV-DSC3:
CPU はメガチップス社製 DSC3 が搭載され,メ
ール送受信,画像処理等のアプリケーション層の
動作を実行する.
・イメージセンサの入力信号を処理する.
・コンパクトフラッシュスロットのインターフェ
ースを制御する.本システムでは PHS カード
を使用する.
・MMC メモリカードにアクセスする.
操作スイッチ
DC-DC
DC 12V
Serial I/F
EXTSNC-DSC3
1600x1200
Serial
I/F
ADC I/F
図 2. ハードウェアブロック図
EXTSNCDSC3:
CPU はルネサステクノロジ社製 H8 が搭載され,
通常は低消費電力モードで動作し,スケジュール
管理と電源の制御を行う.
・EEPROM にスケジュールを登録する.
・タイマーを監視し設定されたスケジュールに従
って EV-DSC3,および,気象センサの電源を
制御する.
・気象センサのデータを EV-DSC3 に通知する.
本システムが提供する i) ∼ v) の各機能は EVDSC3 と EXTSNCDSC3 が以下の手順で通信しなが
ら処理を行うことで実行される.
1. H8 が低消費電力モードで動作し,設定された
スケジュールを監視する.
2. あらかじめ設定された時刻になったら H8 は気
象センサの電源を on にする.
3. 起動すべき時刻になったら H8 は自分の CPU
クロックを高速化し,DSC3 の電源を on にす
る.
4. DSC3 のシステムが起動したら H8 に実行する
機能の種類を問い合わせる.
5. H8 は DSC3 からの問い合わせに応答する.i)
∼ v) のうち現時刻で実行すべき機能を通知する.
6. DSC3 は H8 から通知された機能を実行する.
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7. 他に現時刻で実行すべき機能があれば,4.∼6
の処理を繰り返す.
8. H8 は全ての機能の実行終了を確認したら,
DSC3,および,気象センサの電源を off にし,
H8 の動作クロックを下げ,1. の状態に戻る.
以上に述べたように本システムは,通常は消費電
力の低い CPU だけがタイマー管理のみを行ってお
り,必要が生じたときだけネットワーク機能の実行
や画像処理を行うための CPU を起動し処理を行う.
この処理系は常時基板を動作させた時と比較して大
幅に電力を節約でき,電池で長期動作するシステム
を実現する.
4. まとめ
本報告では屋外で長期に渡って使用できる農園監視
システムの実現について述べた.植物の成長記録が
自動的に作成できることや,遠方にある市民農園の
気象情報等をリモートで取得できる利点がある.ま
た,モーション検出,システムの盗難検知機能は,
農作物やシステムの盗難対策となりうる.
起動時間の削減等で電力消費を節約し,動作時間を
更に長期化することが今後の課題である.
文
献
[1] (社)北海道地域総合研究所「北海道地域の知的
クラスター構想実現可能性に関する調査」,
2002-01
[2] 成沢,片桐, 青木, "ユビコン環境デザインモデル作成の
ための基礎調査" 電気関連学会道支部連合大会, 200210
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