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講演資料 - 一般社団法人 日本航空宇宙工業会
日本コスト評価学会 JSCEA (Japan Society of Cost Estimating Analysis) 平成25年12月17日 特定非営利活動法人 日本コスト評価学会 理事長 堀川 康 1 経歴 1973 事 業 団 入 社 G M S 担 当 1978 ロ ス ア ン ゼ ル ス 駐 在 員 G M S 2 担 当 1983 GJ ME SR 3 S 担1 当担 当 計 画 管 理 ・ 地 球 観 測 衛 星 担 当 宇 宙 ス テ ー シ ョ ン ・ 運 用 担 当 1993 宇 宙 ス テ ー シ ョ ン ・ 企 画 担 当 宇 宙 ス テ ー シ ョ ン ・ J E M 担 当 1998 2003 宇 宙 ス テ ー シ ョ ン プ ロ グ ラ ム 担 当 2009 利 用 本 部 事 業 担 当 技 術 参 与 2012 国 連 宇 宙 空 間 平 和 利 用 委 員 会 ( COPUOS 計 画 管 理 ・ 研 究 開 発 担 当 ( 衛 星 ) 1988 ) 議 長 2 宇宙開発におけるシステムズエンジニアリング、 プロジェクトマネージメントとコスト評価 • • • ミッションサクセスに向けた取り組み プロジェクトマネジメント 研究開発のコストマネジメント 3 宇宙開発の特徴 大規模で複雑 開発が長期にわたる 一発勝負 極限環境に対応 需要が不明確 » 部品数: 280,000(H2A) 250,000(衛星) 1,000,000(宇宙ステーション) (自動車 20,000-30,000) » 開発費: H2 2,700億円(試験機#2まで) » 衛星 470億円(だいち) » 9 年 (H2) » 7-10 年(大型衛星) (自動車 2.5 年) » 実環境での事前確認ができない » 軌道上での故障発生時には、一般に修理不 能 » 単品生産(全く同じものはないに等しい) » 使用温度環境 - 150℃~+120℃ » 放射線 地上の100倍以上(宇宙ステーション) » 高真空、無重力、打上時の音響・振動 » 日本では、民間市場が小さい (官需が75%以上) » 官の中でも、大きなユーザが存在しない 4 JAXAにおけるプロジェクトマネジメントの背景 導入 変化? 連続失敗 (2003) 自 主 開 発 火星探査機 のぞみ H2Aロケット6号機 N-I ロケット1号機 (1975) 地球観測衛星 みどり2 5 ミッションサクセスレイト(JAXA開発の利用・実証衛星) 技術試験衛星 実用衛星 通信実験衛星 観測衛星 ETS-I GMS CS BSE ECS ISS IGS-K1 ALOS ETS-II GMS-2 CS-2a BS-2a ECS-2 ISS-b IGS-R1 GOSAT ETS-III GMS-3 CS-2b BS-2b COMETS MOS-1 IGS-K2 GCOM ETS-IV GMS-4 CS-3a BS-3a DRTS MOS-1b IGS-R2 (GPM) ETS-V GMS-5 CS-3b BS-3b LDREX JERS-1 IGS-K2 (Earthcare) ETS-VI LDREX-2 (TRMM) IGS-R2 ETS-VII OICETS ADEOS IGS-J1 IGS-J2 F. Rate ETS-VIII WINDS ADEOS-II MDS-1 QZSS (AMSR-E) 1/9 ミッション達成 0/5 0/5 運用中 開発中 2/5 4/9 機能不全 打ち上げ失敗 3/9 ( IGS-K,R3,4 2/12 )ミッション機器のみ 0/3 12/ 57 6 失敗の本質 • Question; – ベストを尽くしたのに、なぜ失敗したのか? • Answer; – 想定していない事象が起こった – 兆候を甘く見た、あるいは見過ごした • Findings; – 結局はプロジェクトチームの「人」の洞察力不足、技術力不足 の問題 – 一方、プロジェクトの支援や意思決定に係る組織体制にも脆 弱性 7 衛星開発における反省 ・衛星開発技術の遅れ(10-15年) :日本の宇宙開発(衛星)が世界にキャッチ アップ したと見るのは幻想(コスト、軽量化、 高性能化) ・スーパー301の制約 :ユーザが世界最先端を選択 企業が国の技術開発を選択 ・ロケット失敗 :打上げスケジュールの遅れ ・宇宙ステーションへの予算の流れ :年間平均300億円~400億円 ・衛星失敗 :新規技術への挑戦(TRLの欠如) ・PM/SE/R&QA標準化の立ち遅れ :井の中の蛙(学問の不在) ・利用ユーザの不在 ・実証衛星と実用衛星の違い ・企業との役割分担 :地球観測全体を所掌する機関がない :継続性無担保、信頼性確保の意識差 :売上重視、自助努力の欠如 : 技術能力欠如のコンプレックス ・ビジョン、戦略とリーダーシップの欠如 8 衛星の質量規模 4.5 地球観測衛星 4.0 技術試験/実証衛星 だいち 3.5 科学衛星(地球周回/長楕円) みどりⅡ みどり 小型実証衛星 3.0 ETS-VIII 重量 [t] おりひめ・ひこぼし WINDS 2.5 みちびき 2.0 かけはし すざく 1.5 GOSAT GCOM-W GCOM-C ◆ ◆ 災害監視衛星 (光学、SAR) 今後の地球観測極軌道衛星 こだま あかり 1.0 SOLAR-B ひさき はるか きらり つばさ 0.5 DASH 0.0 μ -LabSat1 れいめい 2007 20072008 200820092009201020102011 20112012 2012 19961996 19961997 19971998 19981999 19992000 20002001 20012002 2002200320032004 20042005 20052006 2006 ※惑星探査機を除く 打上げ時期 9 衛星開発の基本方針 • • 利用推進に重点化 ミッションの実利用実証に重点化するとともに、短期開発による成果の早期獲得を目 指す バス技術開発の考え方 高信頼性、低コスト化を目指し、バス機器は当面従来技術を活用する。 特に、フライト実績、開発実績のある国産既存技術を継続的に使用し、繰り返し使 用による高信頼性を達成するとともに、技術の成熟化と低コスト化、スケジュールの短 縮、並びに技術情報の蓄積と活用を図る。 新規開発技術の採用は、「ミッション要求を達成するために最小限必要なもの」、「不 具合対策や部品/コンポーネントの入手困難等に対応するために必要なもの」に絞 り込む 単一故障点の削減、ロバスト性・サバイバビリティの強化、地上試験の確立 新規バス技術開発 衛星バスの陳腐化と停滞を回避するため、10年サイクル(暫定)で以下のとおり計 画的に新規バス技術の開発を進める。 – 目標は、既存技術をあらゆる面で上回るレベルに設定。 – 事前の軌道上実証(併載)を経て採用。 – 構体、推進系、電源系などの世代交代は併載困難なため、技術試験衛星 により、一挙に軌道上実証を行い採用 10 衛星開発の改革 (A)我が国の衛星技術力の結集 JAXAの組織、分野別にばらばらであった技術開発、科学衛星開発、利用衛星開発、企業の戦 略など我が国の衛星技術に関する戦略を総合し、我が国の衛星技術力を結集する。 (B)技術開発による国際競争力の獲得 結集した力により、戦略的、計画的な技術開発を効率的に行い(技術ロードマップの作成)、 国際競争力を持つ技術を獲得する。(機器の統合化、モジュール化、共通化) 5年後から開発着手する衛星においては、信頼性の向上・長寿命化(静止15年以上、周回7年 以上)、開発期間の短縮(新規開発4年、再製造2年)、コスト低減化を図る 。 (C)社会の要求するミッションの実現 この技術により、利用及び科学分野のより高度な要求に応えて、新しいミッションを提案、 実現し、国民の期待に応える。(ミッション機器開発のフロントローディング) (D)産業基盤の確立 ①国が調達する衛星への対応 JAXAと我が国の衛星企業が共同して、国が発注する衛星システムは、公開調達となる場合 を含め、全て受注する。 ②商業衛星への対応 我が国の衛星企業が、国内商業通信衛星の衛星システムおよびそのコンポーネントを継 続して使用し,受注する。更に、海外の商業衛星システムを受注し、世界の宇宙産業の一翼を 担う。(5年以内にシェア10%) 11 衛星開発の改革(続き) (E)開発の効率化 ① システムが異なっても、コンポーネントを共通かつ継続的に使用できるインターフェース の標準化を含め、開発プロセス(設計、製造、試験)の標準化を図る。 ② 新しい設計手法、3Dモデル、シミュレーションを更に活用する。 例 ・3Dモデルの活用によって従来誤差の大きいハーネス設計の誤差削減 ・機器配置変更に対する設計検討の効率化 ・シミュレーションでの可視化による姿勢系ソフトウェア検証試験・製造検査の確実化 ③ 1年以上かかっているPFT試験内容の短縮を目指して試験内容の再検討を行う。 (試験実施/データ評価の自動化の徹底、新しい手法等) ④ フライト構体系の先行製造と構造モデル試験への使用 (F)プロジェクトを超えた設計情報、試験データの蓄積により技術の向上を図る 試験設備の拡充と情報システム整備 (G)衛星設計の初期段階からの運用を考慮する ① 衛星運用の自動化、自律化、故障の自動発見、故障の分離、故障後の冗長系による 機能復旧等の高機能化を発展させる。 ② 衛星運用の省力化を目指した衛星機能を考慮する。 ③ 衛星と地上設備(追跡管制設備固有部、ミッション運用系設備、地上実験局)を開発当 初から一体として開発する。 12 開発当たっての基本的取り組み ・システムズエンジニアリング: ミッション要求をトレードオフ解析し、システム、サブシステム、コンポーネ ント、部品の各レベルの技術要求にフローダウンさせ、その要求設定の根 拠、妥当性に責任をもつ活動・・・lessons learnedの蓄積 ・ミッション保証: 設計、製造、試験の結果がそれぞれ設定された技術要求に満足している ことを確認をすることに責任を持つ活動・・・信頼性/品質保証(不具合処置) ・プロジェクト管理: 設定された要求を定められたコスト、スケジュール、リスクの範囲で実現する よう管理する活動・・・EVM(実績管理) ・技術レベルの評価( TRL)と能力開発・・・In Sight能力、自主開発 ・企業契約(プライム契約制、世界戦略、調達)・・・技術開発(業務委託)と分離 13 ミッションサクセスに向けた取り組み ミッション サクセス プロジェクト 支援 • • • • • • チーフエンジニア・オフィス SE プロセス PM プロセス チェック&バランス 知識共有 専門技術の強化 フロント ローディング • ミッションデザインセンター • ミッション定義審査 • プリプロジェクトチーム 技術戦略 • 技術ロードマップ • 技術成熟度 • 戦略重視の研究 技術者育成 • 人材育成委員会 • SE/PM 研修 14 ミッションサクセスに向けた取組み プロジェクトを支えるしくみ 信頼性推進評価室 ・外部専門家の能力を 活用し、信頼性向上の 取組につき独立評価 報告 SE支援 (システムズ・ エンジニアリング) ・SEプロセスの整備 ・プロジェクトの独立評価 ・ミッションデザインセンター (MDC)の運営、 インフラ整備 経 営 チェック & バランス プロジェクト活動 S&MA支援 プロジェクト管理 組織的支援 組織的支援 SE活動 S&MA活動 専門技術活動 組織連携 人材交流 チェック & バランス 組織的支援 (安全・開発保証) ・ 安全信頼性基準 ・ 安全信頼性審査 組織連携 人材交流 専門技術支援 ・技術基準の作成 ・マトリクス制 ・プロジェクトの専門審査 15 衛星開発プロセス JAXAの衛星開発では、段階的プロジェクト開発手法(Phased Project Planning) により段階的で確実な開発を行う。各段階(フェーズ)で、設計解析・試験・評価 を行い審査会で次フェーズへの移行可否を判断する。 研究 開発研究 研究 概念設計 予備設計 MDR SAC SRR 開発 基本設計 詳細設計 評 価 要素モデル試験 維持設計 射場作業 運用 初期機能確認 定常運用 RFP/企業選定(プライム契約) SAC SDR プロジェクト 開発移行前 PDR 移行前審査 審査 設計 解析 打上げ 設計 解析 評 価 BBM 試験 JAXA内審査 メーカ主催審査(JAXA参加) 設計 解析 評 価 PQR 開発完了 打上前 審査 審査 CDR 設計 解析 EM 試験 評 価 設計 解析 定常運用 移行前審査 評 価 PFM 試験 PDR:Preliminary Design Review CDR:Critical Design Review PQR:Post Qualification test Review 評 価 反 映 定常運用 完了審査 評 価 軌道上運用 BBM:Breadboard Model EM :Engineering Model PFM:Proto-Flight Model 後続衛星への反映 16 技術ロードマップ 第2期中期計画 第1期 △高精度光学#1 △SAR衛星#1 災害監視プログラム 通信・測位プログラム 宇宙科学 △準天頂#1 ①天文観測 ②月太陽系探査 ③小型科学衛星 1.技術実証の充実 ①技術試験衛星(ETS) /工学実験 ②事前実証衛星(SDS) △はやぶさ2 △PLANET-C △ △GCOM-W2 △GCOM-C2 △GCOM-W1 △GCOM-C1 △GOSAT 地球環境観測プログラム 第3期中期計画 △ △ △DRTS後継機 △高精度光学#2 △SAR衛星#2 △次世代DRTS △危機管理通信 △準天頂#2,3 △ASTRO-G △NeXT △SELENE2 △Solar-Sail △ △ △JASMINE △SPICA △SELENE3 △Bepi-Colombo (繰り返し利用による信頼性向上) △ETS △SDS △SDS △ETS(静止観測実証) △ETS △SDS ・・・・・ 2.システムレベル ・信頼性向上/長寿命化 ・開発期間短縮 ・ペイロード比率向上 ・より遠く、より極限、高精度 ・多様なミッションへの対応 3.コンポーネント・部品 ・戦略的に重要な機器開発 「Sバンドトラポン」 「ホイール」 ・長寿命化 「電源系」 ・軽量化、長寿命化 など 各衛星プログラムに対応したロードマップ(例) 17 技術マネジメント・プロセス 政策 プロジェクト プリプロジェクト チーム編成 ミッション定義 ミッションロードマップ プロジェクト 承認 実行 プロジェクト準備 運用・利用 打上げ メーカ選定 ミッション要求 プロジェクト計画 システム要求 試験 システム仕様 コンポーネント仕様 技術ロードマップ 製作 設計 技術モデル試験 研究 萌芽 先端 先行 重点 芽出しの研究 システム/ミッション研究 搭載機器研究 基盤研究 重点 化 18 プロジェクトマネジメント・プロセス 予算要求等 決定 総合事業計画 プリプロジェクトチーム長 プリプロジェクトチーム ミッションを提案する者 (ワーキンググループ等を含む) 定義 経 営 の 視 点 予算要求等 Approval 準備 Definition プロジェクト チームの解散 Implementation 初期要求条件とリスク等の認識を共有 プロジェクト移行審査 プロジェクト準備審査 主な審査事項 プロジェクト目標の見直し 資源の追加投入 プロジェクトの中止 主な審査事項 • プロジェクト、次フェーズへの移行 • プロジェクト終了までの活動 • 上記に必要な体制及び資金 ミッションの定義 計画決定フェーズ終了までの活動 上記に必要な体制及び資金 ミッション プロジェクト総経費の上限値 要求書 コスト・リスク評価 ミッション達成に関わる重要な 問題が発生した場合 プロジェクト 計画書 コスト・リスク評価 提案 提案 概念検討 概念設計 Concept Studies プ ロ ジ ェ ク ト の 視 点 Completion 実行 Preparation 初期要求条件とリスク等の認識を共有 • • • • 終了 総合事業計画 プロジェクトマネージャ プロジェクトチーム 計画決定 Concept Development ミッション定義審査 (MDR) Project Formulation システム要求審査 (SRR) 主な審査事項 主な審査事項 ミッション意義・達成基準 資金規模 システムの実現可能性 システム要求の妥当性 検証方針の妥当性 計画決定フェーズへの 技術的準備、体制・計画 ミッション 要求書 (案) システム 要求書 運用 コンセプト 開 発 ・ 製 造 企 業 の 選 定 ( R システムズエンジF ニアリング P 計画書 ) 基本設計 詳細設計 製作・試験 Preliminary Design Final Design Production & Testing システム定義審査 (SDR) 主な審査事項 システム仕様の妥当性 検証計画の妥当性 基本設計フェーズへの 技術的準備、体制・計画 システム 仕様書 プロジェクト 計画書(案) 運用 Operations 基本設計審査 詳細設計審査 開発完了 ・・・ ・・・ ・・・ (PDR) (CDR) 審査 ...... ...... ....... 審査後にベースライン化 される技術文書 ...... ....... ....... 審査後にベースライン化 されるプロジェクト文書 19 JAXAのプロジェクトチーム コアチーム プロジェクト マネージャ サブ・プロジェクト マネージャ システムズ エンジニア マネジメント スタッフ ミッション マネージャ センサ/ミッション エンジニア 信頼性・安全・ 品質管理スタッフ システムズエンジニア (マトリクス参画) 専門技術者 (マトリクス参画) ミッションエンジニア (マトリクス参画) 20 プログラム/プロジェクトの支援体制 • プロジェクトチームを含めたミッションに関わるすべての組織及び役職員は、当該 ミッションの達成に向け努力しなければならない(プロジェクトマネジメント規程) チェック & バランス SE (システムズ エンジニアリング) ・SEプロセス整備 ・独立検証 ・ミッション検討 プログラムマネジメント チェック & バランス S&MA (安全・開発保証) プロジェクトマネジメント 組織的支援 ・安全信頼性基準 組織的支援 プロジェクト活動 組織連携 人材交流 組織的支援 ・安全信頼性審査 組織連携 人材交流 専門技術 ・技術基準の作成 ・マトリクス制 ・プロジェクトの専門審査 21 プロジェクトライフサイクルにおけるJAXAと企業の役割分担 終了 決定 定義 準備 実行 プロジェクト移行審査 プロジェクト準備審査 概念検討 概念設計 MDR 計画決定 基本設計 SRR SDR PDR 詳細設計 製作・試験 CDR 従来のアプローチ 運用 開発完了 ・・・ ・・・ ・・・ 審査 JAXAの役割 検討グループ プロジェクトチーム(インテグレータ) インタフェース調 整 企業の役割 新しいアプローチ 各装置の企業 企業選定 JAXAの役割 検討グループ 企業選定 企業の役割 プロジェクトチーム(マネジメント) 専門技術者の支援 プリプロジェクトチーム 協力 調達管理(EVM 含む) プライム企業 22 ミッション要求の設定=最終的成果=成功基準 アウトプットを意識して、初期段階から「システム思考」 と「リスク識別」を実践 出典:Advisory Commission for Mission Success, November 10, 2004 ミッション定義 プロジェクト準備 実行 Time 運用・利用 23 企業との連携 ・企業の技術力評価 ・コストの見積もり基準(要求vs売上げ)作成 ・世界戦略のための連携 ・国際規格による標準化推進 ・企業との交流(駐在) ・設計手法、解析ツール、製造設備、試験技術の更新 ・実績評価(EVM)によるリスク管理 ・SE/PM/S&MA分立と能力向上 ・競争意識の高揚 プライム化に向けて ・企業が責任を持てる開発(バス機器、ミッション機器、利用)・・企業の自在性確保 ・技術未熟部分の克服・・・・・・・・・既開発品の採用 ・技術情報開示・・・・・・・・・・・・・・・守秘義務、倫理規定、法的処置 ・不具合、トラブルの責任分担・・・過失責任の保護 ・コスト管理(コスト削減)・・・・・・・コスト半減、競争力 24 ミッションデザイン・センター(MDC) • 衛星・ロケット・航空機などのミッション創出に際し、システム技術・デー タ・ツールを駆使して、ミッションの実現性を検討する場 顧客・ユーザ • 漠然とした要望 • 曖昧なアイデア 専門技術者 MDC 集結 システムエンジニア • ミッションの明確化 • 実現可能な システムの提案 解析ツールなど 25 システム開発における価値の伝達 価値情報 伝達 におい て誤解が生じる ミッション定義 【例】価値情報受信者の 錯誤 妥当性確認 (上位のシステムの要求者) 要求 価値情報伝達が暗黙的 で曖昧である 価値 顧客価値情報の 伝達が困難 (下位のシステムの設計者) システム 検証・妥当性確認 システム設計 要求 価値を当初から予測 できない 評価基準が 異なる 【例】顧客価値が設計進捗や環境 の変化に起因して変化 価値 見ている顧客が 異なっている サブシステム 検証・妥当性確認 サブシステム設計 要求 【例】サプライヤは必ずしもユーザの 価値を理解することなく,システ ムメーカの要求に合致した設計 活動を行うことが可能 価値 組織に依存する顧客価値 以外の基準がある (さらに下位のシステムへ) システムズエンジニアリングのVモデル 【例】国家プロジェクトを公的機関と 企業が実施する場合,企業には利 益という基準が存在 価値(=評価基準) の相違要因 26 サクセスクライテリア • ミッション目標の設定 – エンドユーザ特定 – 複数ある場合は優先順位付け • 成功基準の設定 – フルサクセス:100点(優)のイメージ • 予定したミッション要求を満たし、計画どおり成果を得る – ミニマムサクセス:60点(可)のイメージ サクセスレベル • 最低限のミッション要求を満たす。 – エクストラサクセス:120点(秀)のイメージ • フルサクセスを超える成果を得る ミ ッ シ ョ ン 目 標 ミニマム サクセス フル サクセス エクストラ サクセス ①・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・ 達成判断時期: 実施主体: ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・ 達成判断時期: 実施主体: ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・ 達成判断時期: 実施主体: ②・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・ 達成判断時期: 実施主体: ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・ 達成判断時期: 実施主体: ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・ 達成判断時期: 実施主体: 27 • 宇宙プロジェクトのコストの経験則 – – – 材料費 x 3倍 • 内訳 材料費、工数:設計・製造(材料調達・加工・組立・調整)・試験、GCIP しかし、これは技術リスクが小さい場合 初期段階におけるTRLの冷静な見極めと向上方法の見通しが重要 技術成熟度の評価 TRL9 TRL8 TRL7 TRL6 TRL5 TRL4 TRL3 TRL2 TRL1 実際のモデルの宇宙環境でのミッションの成功を通じた『フライト・プルーブン』 Actual model “flight proven” through successful mission operations (space) 実際のモデルの地上ないし宇宙環境での試験ないし実証を通じた『フライト認定』 Actual model “flight qualified” through test and demonstration (ground or space) フライトモデルの宇宙環境(*1)での実証 Fight Model demonstration (space) プロトタイプモデルの地上ないし宇宙環境(*2)での実証 Prototype Model demonstration (ground or space) エンジニアリングモデルの相当環境での検証 Engineering Model validation (in relevant environment) ブレッドボードモデルの実験室環境での検証 Breadboard Model validation (in laboratory environment) クリティカル機能や特性の分析的及び実験的なコンセプト証明 Analytical and experimental critical function and/or characteristic proof-of-concept テクノロジーコンセプトやアプリケーションの明確化 Technology concept and/or application formulated 基本原理の観察と報告 Basic principles observed and reported (*1)実運用で想定する宇宙環境に近い環境(軌道、機器の使用条件等) (*2)熱真空環境等の宇宙との類似環境が最低確保されるレベル(長時間の微小重力等、宇宙でしか確保 できない環境は宇宙環境が必要) (注)レベルの判定は、そのレベルの活動が完全に完了して初めてそのレベルが付与されるものとする。 28 プロジェクト進捗報告会 • 目的:プロジェクトの状況について、経営層への透明性を確保し、意思決定を 支援 • 四半期毎に実施 • プロジェクトマネジャが経営層に直接報告 • 報告内容 – – – – – 進行状況 プロジェクト資金状況 ミッション基本要求達成見込み 課題 経営層への要望事項 29 知識共有システム LINKS Lessons, Intelligence and Knowledge Sharing System 30 コストオーバーランの例 • • • • • • 国際宇宙ステーション 早期警戒衛星(SBIRS) 極軌道気象衛星(NPOSE) 赤外線望遠鏡(JWST) H-II JAXA: GX 民間: NASA: 8B➔32B DOD: 4B➔12B NOAA/DOD: 4B➔6B NASA: 1B➔6.5B 2000億円➔2700億円 450億円➔2000億円 キャンセル • 宇宙ステーション補給機(HTV) JAXA: 400億円➔700億円 • セントリフュージ JAXA: 300億円➔700億円 キャンセル 31 History of ISS Assembly Schedule 2010 コロンビア号事故 Columbia Accident 組立てスケジュール(年) A 2009 s 2008 s 2007 e 2006 m 2005 b 2004 l 2003 y 2002 S c h e d u l e 2001 2000 1999 Assemby 組立開始 start 1J/A 打上 1J 打上 2J/A 打上 Assembly 組立完了 NASA Cost Overrun NASAコスト超過問題 プロトンロケット打上げ失敗 Launch Failure of Proton Redsign リデザイン(redesign) Russian Problem ロシア財政問題 complete リストラクチャリング(restructuring) Restructuring リフェージング Rephasing 1998 Rev.D Rev.E Rev.F Rev.C Rev.A Rev.B 打上げ開始 Assembly Start 1997 1996 Rev.F改 Rev.G 1995 1994 1993 1992 Worked for JEM Development <=============================== '87 == '88 '89 '90 '91 '92 '93 '94 '95 '96 '97 '98 '99 '00 '01 '02 '84 '85 '86 S.59 S.60 S.61 S.62 S.63 H.1 H.2 H.3 H.4 H.5 H.6 H.7 H.8 年度(年) '03 '04 '05 '06 '07 H.9 H.10 H.11 H.12 H.13 H.14 H.15 H.16 H.17 H.18 H.19 32 Budget and Cost Trend for JEM Development 2500 1500 Expenditure Target Cost Contractor Estimate Budget 1000 500 02 20 01 20 00 20 99 19 98 19 97 19 96 19 95 19 94 19 93 19 92 19 91 19 90 19 89 0 19 1 0 E 8 Ye n 2000 Year 33 コストエスティメイトの必要性 ● 事業計画、プロジェクト計画の成功を支援 ● 構想、立案、競合等の評価を提供 ・ 経済分析、対費用効果分析、代替案分析等 ● リスクに対する評価と影響の排除を提供 ・ リスク分類法(プログラム/技術/コストリスク、コンティエンジェンシー等) ・ マージン換算、3点見積法、サクセスクライテリア設定等 ● 価格/コスト設定と予算獲得プロセスの支援 ● (目標コストに対する)要求/システム/品質/工期等の評価を提供 ・ マトリクス表等による各種トレードオフ、その他評価手法等 ● 提案書、見積書、実績/決算の評価を提供 ● 新規採用(技術、手法、プロセス、体制等)の評価を提供 等 「計画立案能力」、「計画実行能力」の向上に有効 コストの価値は組織内で理解、共有されているだろうか? 客観的、科学的で、一貫したコスト体系があるだろうか? 34 コストエスティメイトの種類 ● コスト見積りの種類 ・ ライフサイクルコスト見積り、独立コスト見積り ・ 超概算見積り、フェルミ推定(オーダー見積もり) ・ 経済性見積り、対費用効果見積り、予算見積り、契約見積り ・ 1点見積り、3点見積り 等 ● コスト見積りの品質 「ロジカルで」 包括的で、再利用性があり、追跡が可能で、評価が可能なもの。 「コンセンサスを持つもの」 正確で、信頼性/相場感があり、時期にかなっているもの。 ● コスト見積り方法論 ・ 類推法 ・ パラメトリック法(プロセス例 : データ収集 → コストドライバー → 関係式 → モデル) ・ 積み上げ法 ・ 専門家の意見 等 ライフサイクル、独立、超概算見積り等が、システムとしてあるだろうか? 積み上げだけではないだろうか? パラメトリック見積りをしているだろうか? 勘だけに頼っていないだろうか? 分析が共有化されているだろうか? 35 コストエスティメイトの戦略性 リスクをどのように評価し、影響を排除するか。 日本は従来より、1点見積りが中心。 → それは楽観値なのか、標準値なのか、上限値なのか。 → マージンの有無は。フェーズによって異なることはないのか。 3点見積り/サクセスクライテリア、フェーズによる段階的マージン/コスト精度等。 ・ 多く要求したものの勝ち。 ・ 楽観値で設定して、後から追加を繰り返す。 ・ 余った資金は使い切る。 これらを排除し、頑張ったものが報われるシステムへ 事業及びプロジェクトの成功。戦略性の向上。モチベーションの向上。 リスクは可視化されているだろうか? 影響評価のシステムがあるだろうか? マージンの考え方、3点見積りやサクセスクライテリアはあるだろうか? 36 コストエスティメイト WBSコスト データ収集 分析 データベース ● WBS(Work Breakdown Structure)コスト ・ 体系化、目標/ベースライン/スコープの明確化。可視化、見える化、共通言語化。 ● データ収集 → 正規化/分析(以下、手法の例) ・ 散布図、標準偏差、孤立値、経験値、標準指標、過去データ比較分析 等 ● データベース ・ ・ ・ ・ 9つの知識エリアの中のコスト。 コミュニケーションツール。ナレッジマネジメント、能力向上に役立つもの。 基準というより、スタンダード(標準モデル化)であり、知識体系。 再利用性、持続性があり、常に更新、改善、フィードバックがあるもの。 事業が体系化、見える化、WBS化されているだろうか? ナレッジマネジメント/データベースはあるだろうか? そのためのプロセスは? 37 コスト評価トラッキング(EVM) - コストエスティメイトの前提 - 「エスティメイト」を中心とした「計画立案能力」に加えて、以下が必要。 ・ 計画実現能力 ・ 正しく、共通的なデータ取得の考え方 実績を正しく評価する仕組みが必要。 その有力な一つが、 PLAN EVM DO EVM : WBSを設定し、全WBSに対してQ(品質)、C (コスト)、D(納入)を統合化して、実績管理や早期リス ク回避等のマネジメントを行う国際標準手法。 = Earned Value Management CHECK コストマネジメント、実績評価のシステムを持っているだろうか? データ収集のシステムを持っているだろうか? ACT 38 米国IPCEAとの連携 米国(ICEAA) (旧SCEA) ・米国政府および産業界のコスト評価能力の向上をめざしたNPO ・米国DOD、GAO、NASA、FAA、NGA、産業界等から2045名(2010)の会員 ・1990年コスト関連組織が統合され、SCEAを設立 ・政府および産業界におけるコスト見積もりの評価、解析の標準を作成し、訓練を提供 日本コスト評価学会(JSCEA)の設立 ・目的 プロジェクトのコストをシステム要求とWBSをベースに積算・見積もりを行い、執行上のリスク 評価に基づき分析し、適切なコスト管理を行うことにより、コスト削減及びコスト超過の防止に 寄与する。このための手法を研究し、標準化を目指す。 ・事業内容 ・日本におけるコスト評価手法の確立と標準化 ・コスト評価のためのデータ蓄積と教訓の集積 ・上記のための研究会、シンポジューム等の実施 ・コスト評価の専門家の育成と認定 ・Web情報の充実と広報 ・参考とするテキスト ・CEBOK(有償配布) ・GAO Cost Assessment Guideline(翻訳有償配布) ・WBS Standard ・EVM Guideline 39 設立趣旨 政府、公共機関、企業における開発や調達などのプログラムは、構想・開発から運用、終了まで数 十年という長期間に及び、そのライフサイクルコストは数億円から数千億円に及びます。 初期段階から所要コストを適正に見積ることは非常に難しく、また楽観的な見積りを行うことにより、 事業着手後に予算の不足や追加投資、スケジュールの超過、当初目的の達成失敗など、様々な問 題が生起しています。 信頼性の高いコスト見積り、分析等について、共通の知識として、システム・エンジニアリングやプロ ジェクト・マネジメントなど、既存の手法と関連つけ、コスト見積りに必要な知識体系の研究を促進し、 管理手法、積算方法を開発することが求められています。 このため、欧米の広く活用されているコスト評価手法や事例を参考にし、コスト見積り、評価に関す るガイドの作成、セミナーによる公開、事例や研究の報告会の開催、教育資料の開発などを通じ、もの づくり、あるいはプロジェクト・マネジメントやシステム・エンジニアリングの視点に立ったコスト評価手法の確 立のために、研究開発要素を持つプロジェクトのコスト見積りにおける客観的で科学的な新しいコスト評 価手法の確立を推進し、広く社会に啓蒙普及し、社会経済に寄与することを目的として設立します。 40 JSCEA活動 航空、宇宙、防衛、建設その他の分野のコストの見積り及び分析等の活動を行 う。 ミッション ・コストの見積り、分析の専門能力を増進、促進する。 ・コストの見積り、分析、関連分野の専門家として、会員を養成する。 ・コストの見積り、分析、関連分野の理解、把握を一般に理解増進させる。 ・コストの見積り、分析、関連分野において、教育及び訓練の機会を提供する。 ・コストの見積り、分析の用語、行動、活用の標準を構築する。 ・構築された標準を達成、あるいは測定するための手段を開発する。 ・認定と認証の適切なプログラムをとおして、達成を確認する。 ・公共の利益に役立つものとして、セミナー、ワークショップ、シンポジウムでの報告また は公開、あるいはメディアや出版等を通じて、コスト見積り、分析の技術と原理の提供を 行う。 ・コストの見積り、分析に対する研究を、育成、増進、指揮する。 ・熟練と倫理に対する規範を構築、維持する。 ・公共の利益に役立つものとして、共通あるいは関連した目的を持つ、外部の組織や個 人と連携する。 41 組 織 図 日本コスト評価学会 米国コスト評価学会(SCEA) 理事長 理事会 副理事長 連携 プロジェクトマネジメント協会(PMI) 理事 総会 幹事 一般会員 賛助会員 国際会員 =SCEA会員 * SCEAとの連携 JSCEAは、米国コスト評価学会(SCEA: Society of Cost Estimating and Analysis)と提携。SCEAは非営 利団体であり、政府、産業、学術関係者により組織され、コストの見積りやコスト分析あるいはそれらの関 連分野に対して、知識体系、倫理、標準、ガイド、教育などを通じ、その専門的な研究、提供、理解促 進に努めている。 42 JSCEA成果と今後 ○ 平成23年2月 東京都より特定非営利活動法人(NPO)として正式認可(2月1日) 日本コスト評価学会(JSCEA)設立(2月2日) ○ 平成23年3月 「第1回 JSCEA & PMI-EVM-CoPジャパンカンファレンス2011」@ホテルグランドヒル市ヶ谷(3月2日、3日) ○ 平成23年11月 「第2回 JSCEA & PMI-EVM-CoPジャパンカンファレンス2011」@ホテルグランドヒル市ヶ谷 ○ 平成24年6月 「第3回 JSCEA & PMI-EVM-CoPジャパンカンファレンス2011」@ホテルグランドヒル市ヶ谷 ○ 平成24年8月 第1回CEBOKセミナー と第1回PCEA認定(8/18) ○ 平成24年11月 第2回CEBOKセミナー と第2回PCEA認定(2/5) ○ 平成25年3月 第3回 CEBOKセミナーと第3回PCEA認定(1/1)/第1回CCEA認定(1/5) GAO翻訳・販売・・・・・・・・・約20部 (1万円) CEBOK翻訳・販売・・・・・・・約20部 (英文CD・・・・・5部) (和文/英文各2.5万円) 43 • • • • • Unit Index Unit I – Cost Estimating 1. Cost Estimating Basics 2. Costing Techniques 3. Parametric Estimating Unit II – Cost Analysis Techniques Unit III – Analytical Methods Unit IV – Specialized Costing Unit V – Management Applications 44 おわりに • ミッションサクセスに向けたワールドクラスの宇宙開発: 高度なミッション要求、高信頼性,長寿命、低コスト • 技術能力の向上:体系化された開発プロセス、標準化 された規準、教訓を踏まえた評価、審査の徹底 • 産業基盤の確立 • 国際競争力の確保 • 国際協力とリーダーシップ 45 ご静聴ありがとうございました 46