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「黄金のリンゴ」
「黄金のリンゴ」 「・・・昔々、天国の庭に黄金のリンゴが実る木がありました。 1人の庭師がその木の手入れを神様からまかされることになりました。 「充分に根を張り、枝を張り、葉を茂らせ、美しい花が咲いたあと、 秋には黄金のリンゴが実るから、それまで大切に育てておきなさい。 」 庭師は神様からの言いつけを大切に・・・ 守りませんでした。 「そんなもん、手入れなんかしなくたってリンゴが実る頃には実るって!」 ときが経ち・・・ 庭師はすっかり黄金のリンゴの木のことを忘れていました。 「そういえば、あれから随分長い間ほったらかしにしてたけど・・・ ちょうど秋だし・・・たまには黄金のリンゴの木を見に行ってみっか?」 庭師はウキウキ気分で出かけました。 すると・・・ 「うわ!?何じゃ~こりゃ~!!」 そこには黄金のリンゴどころか・・・ 恐ろしく、感じの悪い果実がたわわに実っていました。 よく見ると、一つ一つの果実はみんな違っています。 根っこが腐り、土が汚染され、水不足と栄養不足が原因の様です。 ©「黄金のリンゴ」川畑 律子 ところがこの庭師・・・ 不良庭師だけに、木の手入れ方法をまるで知りませんでした。 「・・・とりあえず、殺虫剤でもぶっかけておくか!」 「どりゃ~!!」 こうして葉っぱに殺虫剤をバンバン振りかけましたが・・・ 根っこが腐り、土が汚染され、水不足と栄養不足が原因なので、 事態は何も変わりませんでした。 庭師は神様からさんざん怒られ雷、天国の庭師をクビになりました」 お終い。 さて、このお話で何を言いたいかと言うと・・・、 さすが、鋭いですね! 黄金のリンゴはあなたのこころ、庭師はあなたです。 こころをほったらかしにしていたら、感じの悪い果実が実ります。 根っこが腐り、土が汚染され、水不足と栄養不足だったら、 腐った根っこを切り落とし、きれいでミミズのたくさんいる土と入れ替え、 適度な水と栄養を与えてあげなければいけません。 木の手入れをするには専門の知識が必要なように、 こころのお手入れも専門の知識が必要です。 この黄金の木のお話は心理学のアイスバーグ・モデルを基にしています。 ©「黄金のリンゴ」川畑 律子 「アイスバーグ・モデル」 よく、 「この問題は氷山の一角である」というたとえにも使われるとおり、 海上に浮かぶ氷山は全体の氷山から見ればほんの一部分で、 海中には巨大な氷山が沈んでいます。 愛の無い、冷たい家族で育ち、 「本来の自分は存在してはならない」という 「見捨てられ不安」を抱えたこどもは、こころに大きな空虚感を抱え、 大人(アダルト・チルドレン)になっても生き辛さに悩まされることになります。 この生き辛さはあらゆる症状、たとえば依存症や共依存症、 各種人格障害、引きこもり、うつ、過食症に拒食症、リストカット、 慢性の肩こりや腰痛、頭痛、腹痛、耳鳴りといった身体症状と なって外側(海上部分)に現れてきます。 しかしこの空虚感は普段は潜在意識=海中に封印したままなので、 外側の症状だけを見ている人には原因を特定するのが難しくなります。 これがアイスバーグ・モデルです。 「マジック・セラピー」 「フォーカシングの研究をしている内に、 いろいろ問題点があることが分かってきたんです。 1つは、誰でもが簡単に使えるようなものではないこと。 私は1年間、合気道の道場で毎朝1時間、 修行の一環で瞑想を行っていました。 だから、 「内面に意識を向ける」という訓練が自ずとできていたんですね。 でも・・・普通の人に「これから毎朝1時間、瞑想しなさい」とは、 とても言えないでしょう?」 ©「黄金のリンゴ」川畑 律子 「んだな~。オラ、正座苦手だし、 足がビリビリしびれてヨレヨレになっちまうだ」 「私もそんなに正座は得意では無いんですが・・・ 本当の意味で瞑想ができたのも、やりだしてから半年目のことでした。 やったことが無い人には分からないかも知れませんが、 本当の意味の瞑想とは、身体感覚が全て無くなって、 ただ意識だけが宙に浮く感覚なんですよ。」 「ふぇ~。こにゃさん、やるっぺな!オラにはとてもムリだっぺ。 瞑想している内に居眠りしちまうのがオチだな~」 「多分、それが普通の感覚だと思います。 もう1つのフォーカシングの問題点は、 ダイレクトに問題を解決するものではないこと。 気持ちが軽くなるのは確かなんですが・・・もっとこう、 ピンポイント的に悩みを解決できないものかなぁ、という不満がありました。 そこで、フォーカシングをベースにして、 これら2つの問題点を克服するために研究に取り組むことにしたんです。 こうして研究に取り組んでから2ヶ月目にして完成したのが、 私の知っている限りでは完全なセルフセラピー・テクニック、 マジック・セラピーです」 「準備」 「お!待ってました! ©「黄金のリンゴ」川畑 律子 こにゃさんってば、 オラのこと忘れてんじゃねっぺか? ってヤキモキしてたっぺ」 「ちゃんと覚えていますよ。ただ、私のセラピーを受けて頂くからには、 私がどういう気持ちでこのセラピーを考案したか・・・ それを知ってもらいたかったんです。 何事も、基礎が大事ですからね。 近頃の人は・・・って言うと年寄りくさいですけれど、 基礎をしっかり固めないで、性急に結果ばかりを出したがるよう気がします。」 「くっ・・・耳が痛いっぺ」 「さっき、お腹が空いていらしたみたいだったので、 良かったら庭師さんがいらっしゃる前に焼いたクッキーをいかがですか? 初めてセラピーを受けるときは、食べすぎで眠くなったり、 お腹が空きすぎて集中できなくてもいけませんから。」 「おぉ~ありがとう!ちょうど、お腹が空いてたんだっぺ。 んぐんぐ・・・はぁ~。やっぱ、お菓子は手作りに限るなぁ」 「平日の夜寝る前はやっている内に眠くなってしまうといけないので、 休日の午前10時~とか、午後2時~辺りがベストですね。 慣れれば、電車の中でもできるし、仕事中でもできますよ。 ©「黄金のリンゴ」川畑 律子 始める前はTVも携帯の電源も切って、椅子に座って楽にして下さい。」 「えぇ~!電車の中に仕事中も?そんなにお手軽なんだっぺ?」 「もちろん、仕事に支障をきたさない程度にして下さいね。 慣れれば、たったの5分しかかからないし・・・ 感情も一切乱れないので、そういうことが可能なんです。 但し、あくまで完全に使いこなせるようになってからにして下さい。 」 「何か、用意しなきゃいけねぇもんはあるっぺか?」 「ノート1冊とペン、それだけです。このノートを使って下さいね。 自分の成長の記録にもなるし、手を使ってノートに書き込むと、 それだけ潜在意識に浸透するので、より効果が上がるんです。」 「Step1.問題を特定する」 「それでは始めましょうか。 まず、ノートに「現在の問題」を書き込んで下さい。 庭師さんの場合は、 「都会育ちの友達ができない」ですね。」 「カキカキ・・・メモ「都会育ちの友達ができない」・・・と。書けたっぺ。」 「これとは別に、小さいノートをいつも持ち歩いて下さい。 そして、自分ではなかなか気が付かないけれど、 ©「黄金のリンゴ」川畑 律子 「あ・・・そういえばこの口癖、しょっちゅう言ってるな・・・」って 気が付いたら、そのノートに書き込むんです。 たとえば庭師さんの場合、 「都会の人間はおっかねぇ」ですよね。 それで、どういうときに自分はこの言葉を口にするのか、 気が付いたときで良いので、書いてみて下さい。 これは、普段庭師さんの潜在意識が何を考えているのか、 自分で気が付くためのヒントとなりますよ。 」 「んだなぁ~。そう言われてみれば、口癖ってあるよなぁ~。 フトしたときに出ちゃうから、す~ぐ忘れちゃうけれども」 「このノートは別名「デス・ノート」と呼んでいます。 映画の「デス・ノート」はノートに名前を書かれた人が死んでしまいますが、 このデス・ノートは庭師さん自身の可能性を殺すノートなんですよ。 」 「ひゃぁ~!おっかねぇっぺ~。何でなんで~?」 「庭師さんの場合、子供の頃にお母様が口にした「都会の人間はおっかねぇ」 を耳にしたことで、何の根拠も無いのにその言葉を信じ切っていました。 そのために、せっかく都会の学校に出てきていても、 いざ都会育ちの人間を目の前にすると、 その言葉が庭師さんの潜在意識で鳴り響いて、 こころの中で一線を画してしまうんです。 そうやって、知らず知らずのうちに自分で 自分の可能性の芽を摘んでしまっているんですよ。 」 ©「黄金のリンゴ」川畑 律子 「んだよなぁ~。 「好きこそものの上手なれ」って昔から言うもんなぁ~。 オラ、だっぺ村でにゃんこもわんこも飼ってたから、 通りでにゃんこやわんこを見かけると、あいつらの方からしっぽ振って 近寄ってくるけども、犬嫌いの人には犬は吠えるって言うし、 猫嫌いの人には猫もそばには寄らないって言うよなぁ~。」 「そのとおりですね。できれば、人でも物でも、 食わず嫌いは治した方が人生が豊かになりますね」 ©「黄金のリンゴ」川畑 律子