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3−5.別府ハットウ・オンパク(大分県別府市) 1)概要
3−5.別府ハットウ・オンパク(大分県別府市) 1)概要 (1)地域: ・大分県別府市の「別府八湯(べっぷはっとう) 」と呼ばれる八つの温泉郷(浜脇・別府・ 亀川・鉄輪[かんなわ] ・観海寺[かんかいじ]・堀田・芝石・明礬[みょうばん] ) (2)ハットウ・オンパクの概要: ・別府八湯温泉泊覧会・通称オンパクは、NPO 法人ハットウ・オンパクを運営母体とし、 春と秋の年 2 回、1 ヶ月ほどの期間、「天然温泉力の体験」「散策で地域文化の体験」「温 泉と健康(癒しと美)」 「自然の体験・広域」「地元ならではの日常の食の掘り起こし」を テーマに 100 種程度の温泉地体験型プログラムを実施している。 ・このプログラムは地域固有の文化や資源を生かした地域の持続的な成長を目指し、温泉 を核にしたウェルネス産業を起こすことを目的とし、以下課題の解決を図ることで事業目 的の達成を図る。 1)地域資源の発掘と商品化 2)人材・組織の育成 3)パブリシティ・地域イメージの向上 4)多彩な事業者にる地域横断的まちづくりプラットフォームの確立 5)収益力強化による持続性の確保 ・ハットウ・オンパクは平成 17 年に NPO 法人化し、自主事業を多く実施している。 ・平成 16∼18 年度にかけて経済産業省「サービス産業創出支援事業」の下、「オンパクモ デル」を事業化し、北海道函館市において「はこだて湯の川オンパク」が開催されている。 ・こうした活動を通じて現在は、オンパクプログラムの事業化が進み 1 年を通じた体験交 流型プログラムや、ウェルネス産業が提供されるようになり、長期滞在型の観光客が増加 しつつある。 - 128 - (3)実施体制 ・オンパクは NPO 法人ハットウ・オンパクが主催し企画・運営・パブリシティなどを行う。 ・オンパクにおける各プログラムの実施は「オンパク・パートナー」と呼ばれる、各地域の NPO 団体、観光事業者、個人事業者、中小企業、その他別府周辺地域の事業者により行 われる。 ・自治体・業界団体・企業などから事業協賛金や助成金などを得ている。 ・参加者の会員組織「オンパク・ファン倶楽部」があり、約 5,000 人が加入している。多 くにリピーターが訪れている。 ・ 協賛金 スポンサー (自治体・業界団体・企業) 活性化 オンパク・パートナー ・プログラム提供 ・会場提供 ・広告出稿 プログラム提供 ガイドブック 掲載料 広告料 主催者:NPOオンパク ・オンパクの運営 ・プログラム企画支援 ・ガイドブック作成 ・HP制作 ・パブリシティ ・・など企画運営 企画支援 集客支援など プログラム提供 会員サービス プログラム参加費 地域住民・観光客 オンパクファン倶楽部・会員 プログラムへの参加 お金の流れ サービスの流れ オンパク事業の資金とサービスの流れ (4)主な取り組み内容 ・別府八湯温泉泊覧会(ハットウ・オンパク)の開催 ・オンパク・パートナーの活動支援、オンパク・ファン倶楽部への情報提供 ・オンパク・ガイドブックの発行、web サイトの管理・運営 ・オンパク・プラットフォームの形成 ・ウェルネス産業(エステ・スポーツ療法・マッサージなど)の人材育成 ・食の魅力の掘り起こし ・別府の地域資源、温泉資源の情報発信(温泉本の発行、HP・別府なびの管理運営) ・散策による地域文化の体験プログラム実施 ・広域連携によるエコツーリズムと体験交流プログラムの開発 ・将来に向けた医療的エビデンスづくり ・指定管理者として市営温泉施設の運営と健康増進講座の実施 ・地域通貨サポートセンター業務 ・商業活性化・まちづくりなどの調査業務受託 - 129 - オンパクガイドブック (2007 年秋) Web サイト「ハットウ・オンパク」 (プログラムの予約も可能) 別府八湯温泉本 (温泉ガイドブック) (5)今後の展開・課題 ○ジャパン・オンパク事業の展開 ・平成 19 年度より経済産業省「地域新事業活性化中心支援機能強化補助事業」によりオン パクモデルを活かした地域活性を担う人材育成事業「オンパク(地域の輝き見本市)人づ くり事業」を開始。全国で「ジャパン・オンパク事業」が展開される。 ・現在、全国 20 カ所程度の地域活性を行う 3 カ年計画を立案している。 ○新しい地域連携モデルづくり ・ジャパン・オンパク事業の展開とともに各地にまちづくりプラット・フォームが形成さ れる。各地域にできたプラットフォームの更なる連携を推進する。 ○地域旅行エージェント事業の推進 ・株式会社大分県旅館ホテルサービスに資金提供を行い、第三種旅行業免許を取得。地域 資源を生かした旅行サービスの開発と提供を行い、旅行市場に展開する。 ・滞在型宿泊商品の開発と滞在支援スタッフ「オンパク・コンシェルジェ」の人材育成プ - 130 - ログラムの実施による旅行サービスの向上webサイト「別府なび」による旅行サービス 流通モデルづくり流通力向上などを行い、長期滞在保養型旅行市場の形成を期する。 ジャパン・オンパク事業 別部観光協会委託事業 「オンパク人づくり事業」リーフレット Web サイト「別府なび」 - 131 - 2)特色 (1)まちづくり運動のなかから発生した民間主導によるプロジェクト ・ハットウ・オンパクは、別府八湯のまちづくり運動の過程において誕生した取り組みで ある。 ・別府八湯地区では、平成 10 年頃から各地で小規模なグループによるまちづくり運動が発 生した。それぞれに実践的な取り組みを行っていたが、人的にも財政的にも基盤が弱くな りがちなことから、地域の継続的な発展のために別府まちづくり活動の支援を行い、持続 的な地域再生を実現するための事業・組織体制を考えた結果である。 ・各地域にはそれぞれの地域特性がある。それぞれ自立可能な部分に関しては、地域の活 動団体において実施。その動きを別府八湯メーリングリストなどを活用した情報交換やオ ンパクイベントでの連携、テーマによる連携(別府八湯トラスト運動、地域通貨・湯路、 移住プロジェクトなど)を通じて自然発生的な連携をとる。NPO 法人ハットウ・オンパク では各種の連携・協力・支援を行っている。 ○まちづくり運動に関わったメンバーが立ち上げた団体など ・NPO 法人 鉄輪(かんなわ)ゆけむり倶楽部 (鉄輪地区のまちづくり事業・資料編においてヒアリング記録を掲載) ・NPO 法人 別府八湯トラスト (歴史的建造物の保存・活用、環境など) ・NPO 法人 自立支援センターおおいた (障害者の自立支援) ・BORRDIC(別府温泉資源研究調査事業組合) (温泉泥の美容・医療活用) ・NPO 法人 別府八湯竹瓦倶楽部 (竹瓦地区のまちづくり事業) ・NPO 法人 わくわく・らくだ (移住者サポートと別府への移住促進サービス) ・NPO 法人 別府湾地球倶楽部 (エコツーリズムの事業化) ・NPO 法人 アチチ中央銀行 (地域通貨湯路発行を通じたアダプトプログラムの普及) ・オンパクにおいて、 「散策」プログラムは重要な取り組 みである。活動当初から各地域において続けられており、 現在は定期的に毎日・毎週実施しているものもある。こ うした散策を続けることで、自然にメンバーが集まり、 外部とも交流を持つことで日常的に地域資源の活用につ いて研鑽を重ね、ネットワークを拡がることとなり、ま ちづくり運動の活性化につながっている。 竹瓦ゆうぐれ散歩の様子 ・竹瓦温泉には散策コースのなかにまちづくりサロン的な 喫茶店「岸」があり、まちづくりに関わる人が自然と立 ち寄る場所となり、日常的に交流・遊び・研鑽・ネット ワークづくり・企画会議が行われる場が形成されている。 サロン岸 - 132 - (2)オンパク・プログラムについて オンパク・プログラムは主に以下のようなものがある。 ○天然温泉力の体験プログラム ・温泉マニア向けの温泉講座から湯治、女性向けの入浴法講座など EX)温泉入浴法講座、めざせ温泉道名人、温泉ソムリエと温泉めぐり、温泉活用増進プ ログラムなど ○散策で地域文化の体験プログラム ・地域ボランティアなどガイドによる地域資源フィールドワーク。現在は市内で定期化さ れ、10 コースが日常的に運営されている。 EX) 「別府八湯ウォーク」竹瓦界隈路地裏散歩、鉄輪湯けむり散歩など ○温泉と健康(癒しと美)のプログラム ・オンパクの中枢を担うテーマ。現在はエステ・スポーツ療法やマッサージ、ヨガ、ダイ エットなどが中心。将来的な展開を見据えて大分大学医学部や医師会と協働で医療的エビ デンスづくり(ストレス検査やQOL検査など)を実施している。 EX)100%天然温泉泥を用いたエステ「別府八湯ファンゴティカ」、温泉健康施設での「大 腰筋エクササイズ」など ○自然の体験プログラムと広域プログラム ・別府郊外・市街地域と連携したエコツーリズム「エコバス」企画を実施。国東半島や阿 蘇と連携し広域観光連携を推進している。即日満員となる人気企画になった。 EX)城下町臼杵地区で有機カボス採りと南蛮文化の歴史を伝える郷土料理を食べる「臼 杵で伝統料理とカボスを味わう」、トレッキングと温泉を楽しむ「モール系つるつる温 泉と奇岩景勝をめでる」など ○日常の食の掘り起こし ・集客交流人口を増やすに「食」は必須だが、オンパクでは別府市民が日ごろ食べている 食を提供している。 ・今後食の魅力の商品化を検討中。 EX)鉄輪温泉地区の「地獄蒸し屋台」 鉄輪の湯治宿に残る温泉の噴気で食材を蒸す伝統 料理法。ざるに野菜・魚介類を入れて蒸す。実施し ている宿は「地獄蒸しの食べられる宿」として日常 的な集客や立ち寄り先として集客を得ている。 「路地裏・足湯とB級グルメのぶらぶら散歩」や「商 店街のB級グルメと路地裏散歩・足湯を組み合わせ 鉄輪地区の湯治宿と て散策」 ・・などのプログラムが実施されている。 地獄蒸し屋台 - 133 - (3)オンパク・プログラムの顧客層について ・オンパクの参加者は 9 割以上を女性が占める。 ・顧客の年代別構成比ではオンパク全体をみると、20∼60 代までの年代層が顧客としてま んべんなく参加している。顧客層の平均年齢は、44.9 才。 2004 年春・秋のオンパク参加者アンケート「年代別の参加者層」 (出典:NPO 法人ハットウ・オンパク HP「データでみるオンパク」 ) ・プログラムを6つのジャンルに分けた際の参加者の年代別構成比率では、20∼30 代の層 は特にメンタルケア・SPA エステ・運動系のプログラムに関心が高く、50∼60 代の層は 散策系のプログラムに関心が高い。40 代の層は比較的どのプログラムにも平均した関心 をしめしている。 2004 年春・秋のオンパク参加者アンケート 「各ジャンルごとのプログラム参加者比率」 (出典:NPO 法人ハットウ・オンパク HP「データでみるオンパク」 ) - 134 - (4)事業評価手法について ○定量的評価指標 ・プログラム種類数 ・プログラム実施数 ・参加事業者数 ・集客数参加率 ・プログラム満足度 ・累積会員数 ・Web でのプログラム予約率 ・顧客満足度 ・プログラム単価 ・市場規模 ・参加事業所の数 ・ファン倶楽部人員数と構成・・・など ○評価指標の事例 ・オンパクの規模や集客力を評価する指標⇒プログラムの種類と集客実績から ・プログラムの質の管理の指標 ⇒オンパク・ファン倶楽部会員へのプログラム満足度調査から ・まちづくりプラットフォームの形成力の指標 ⇒オンパク・パートナーの満足度「参加継続意欲調査」から ・オンパクの目的「まちづくり活動や人材育成の目的」を管理する指標 ⇒プログラムを開催目的別「開発型」 「まちづくり支援型」 「営利事業支援型」 に分類し、構成比率を確認する 3)健康長寿観光と地域の連携について (1)地域の連携について ・中間支援組織においては哲学・感性が必要、それをもつ人材の存在が重要。 ・地域再生手法を考えるうえでは、長期的な視点でみても方向性がぶれない地域の歴史や 伝統の検証を行う必要がある。 ・場当たり的なまちづくり計画ではなく、できるだけ多くの住民や専門家と議論を重ねて 地域の文化や伝統に根付いたソフト重視のまちづくり哲学の浸透を諮ることが重要。 ・ビジネス感覚と非営利活動の感覚を併せ持つ人材の存在。 ・一部に利益が集中しすぎないこと。 ・行政は人育てに資金と力を注ぐ支援の施策・制度づくりに取り組んでほしい。若い人材 に新しいビジネスやまちづくりに取り組もうとする熱意ある若い人材に時間とお金を提 供する奨学金制度など。 「健康長寿観光」について (2) ・健康をテーマにした観光は直接一般消費者に向けたマーケットが大きくない。流通コス トも高くなる課題がある。ビジネスモデルとしては BtoBtoC、企業に販売する。福利厚生 としてメタボリック対策やエビデンスなどを提供する。産業医との連携などが有効ではな いか。 ・健康長寿には一般消費者への周知浸透に時間がかかる。現地に行くことへのメリット、 商品力のわかりやすさや必然性、説得力が必要。 - 135 - ・ウォーキングなどの運動面だけでなくリラックスや傾聴といったメンタル面の要素も重 要。旅行でぐらいはゆっくりしたいというニーズも高いと考える。 ・5市町村は自然豊かな場所が多いので環境活動への取り組みを検討しては。今後排出権 取引についても日本でも導入されると考える。上士幌町でいえば従来の生業「林業」と環 境を重視することで地域資源のPRにもつながる。スギ花粉リトリートは目的が明確であ る。伝わりやすい。 ・健康長寿観光の取り組みを考える場合、地域のPR宣伝素材ツール・地域ブランドづく りの話題性として考え、ツアーは赤字になってもいいという割り切りも必要。 ・地域づくり・人材育成・産業づくりが目的であることが重要だと思う。 - 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