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資料4-1
資料4-1 日本がリードする21世紀の革新素材 − 低炭素社会に貢献する炭素繊維 − 2009年4月21日 炭素繊維協会 吉永 稔 1.炭素繊維とは 強さ (重さ当たり) (106cm) 30 1.軽い・・・比重は鉄の1/4 2.強い・・・強さは鉄の10倍 (重さ当たり) 3.錆びない 4.その他 25 高強度 20 炭素繊維 15 10 ・X線透過性、耐薬品性 5 ・耐熱性、耐低温性 ・繊維状(加工性) 径=5μm 0 高弾性率 炭素繊維 ガラス繊維 チタン合金 アルミ合金 スチール 5 10 15 20 変形しにくさ 25 (108cm) (重さ当たり) <炭素繊維の製造方法> 炭素繊維(グラファイト構造) 原糸(アクリル繊維) C 焼 成 C C C C C≡N C≡N C≡N (弱:セーター・毛布) (強:構造体) 1 2.炭素繊維の歴史:日本発 PAN系炭素繊維の登場 (ポリアクリロニトリル) <開発歴史> 1881 炭素繊維の発明(竹使い電球用発熱フィラメント:エジソン) 1958 米国ユニオン・カーバイト社(UCC): レーヨン系炭素繊維の開発を開始 宇宙機材・耐熱構造材への適用開始 炭素繊維工業化に到らず マーキュリー3号 (1961) 耐熱材 エグジットコーン 1961 通産省工業技術院大阪工業試験所 進藤昭男博士が PAN系炭素繊維製造の基本原理発見、特許化 国内T社:ライセンス許諾を受け、進藤博士と連携して 開発(産官連携スタート:長期の研究開発支援) 1964 英国 炭素繊維開発プログラム(国家プロジェクト) スタート 成功に到らず 1971 T社:世界で最初にPAN系炭素繊維生産を開始 2 3.「研究者の夢」=「 黒い 飛行機を世界の空に飛ばす」 2次構造材 ボーイング 767 737 CFRP比率 ∼1% (内装材が主) (量) (0.1 トン) 1970-1980 CFRPの大量採用 1次構造材 777 3% (1.5 トン) 787 12% (10 トン ) 1980-1990 50% (35 トン ) 1990-2000 2000-2010 炭素繊維の高弾性・高強度化 引張強度(GPa) 7.0 6.0 ボーイング社 要求 5.0 T800S ( 00年) T800H ( 85年) 4.0 3.0 2.0 T300 100 200 300 400 引張弾性率(GPa) ①高性能化技術 ②厳格な品質管理体制 ボーイング787 オール複合材航空機 主翼 垂直尾翼 水平尾翼 胴体 中央翼 胴体 複合材料使用 部材 翼胴フェアリング ・2010年3月就航予定 T社材のみボーイング社1次構造認定取得 3 4.「世界有力企業が夢に挑戦」→「日本企業が世界を制覇」 参入企業 1975 1980 1985 1990 1995 東邦テナックス 三菱レイヨン X DuPont 台湾プラスチック Cytec Hexcel 東レ 欧 米 東邦テナックス <高性能炭素繊維市場> 日本メーカー:シェア80% (圧倒的シェア) ア ジ ア 現社名 2000 東レ 東レ 日 東邦レーヨン 本 三菱レイヨン 日本カーボン/旭化成 炭素繊維メーカー の消長 三菱レイヨン 1970年 X Hercules Great Lakes / Akzo Celanese / BASF UCC / BP Amoco Grafil Courtaulds Sigri / Hoechst Enka / Akzo 台湾プラスチックス 韓国製鉄化学 泰光(韓国) Hexcel X X Cytec X X SGL Carbon X 台湾プラスチックス X X :買収による規模縮小 X :撤退または売却 1.欧米企業は技術革新競争で脱落 −航空機メーカーの高度な性能向上要求への対応− 日本企業が世界を 制覇した理由 2.長期間に亘る研究開発投資を継続 −経営の強固な意志− (ex. T社累計1,400億円/40年間) 3.日本政府からの継続的な支援 −20年以上に渡る研究開発支援− (航空機用構造部材創製 等 200億円超/20年間) 4 導入期 (1971−2000) 自動車用途本格化 ボーイング 787 用 途 エアバス A380 0 1970 産業用途本格化 20 1次構造材 40 ロケット 60 本格拡大期 (2001− ボーイング777 1次構造材 80 人工衛星 100 エアバスA320 120 テニスラケット & ゴルフシャフトブーム 140 炭素繊維国産開始︵T社︶ 世界の炭 素 繊 維 需 要 (千トン/年) 5.炭素繊維の本格需要拡大 産業用途 産業用途 航空宇宙用途 航空宇宙用途 スポーツ用途 航空機用途本格化 1980 限定分野 1990 2000 2005 用 途 拡 大 人工衛星 テニスラケット 釣竿 ゴルフシャフト 航空機 航空機 1次構造材 2次構造材 産業機械 圧力容器、船舶 土木建築 補修補強 スポーツ用途 2010 2015 2020 全市場本格拡大 航空機,自動車,船舶 エネルギー(風力発電,ウラン濃縮,海底油田) 産業機械,コンポジット 5 6.自動車への展開 ルーフ フード シートバック FRカウル ドアフレーム・ピラー フェンダーサポート ラゲッジパーティション エンジンカバー CFRP化 平均的普通乗用車 ラジコアサポート エンジン部品 ラゲッジサイドパネル ドア クラッシュボックス 車体重量の大幅軽減 アンダーカバー FRダッシュ 1,400→1,000kg (▲30%) ・電池重量と航続距離 250 CO2排出量削減 次世代電気自動車の普及促進 ①航続距離:150km→200km(+33%) (充電一回当たり) <小型乗用車> 航続距離(km) 燃費向上 ②リチウム電池重量:400kg→250kg(▲35%) (リチウム資源枯渇緩和) 200 軽量化後 (CFRP化) 150 ② 軽量化前 100 50 0 ① (東京大学 高橋教授試算) 0 100 200 300 400 500 電池重量(kg) 6 7.炭素繊維のCO2削減効果 軽くて強い構造素材 = 省資源・省エネルギー 製造時のCO2排出量 << 製品寿命に亘る大幅CO2削減 (LCA:Life Cycle Assessment) 環境改善素材拡大が地球環境に貢献 CFRP化 <例> 炭素繊維製造時の CO2排出量 CFRP化 CFRP化 ライフサイクル CO2削減効果 炭素繊維製造時の CO2排出量 ライフサイクル CO2削減効果 ▲1400トン ▲70トン 20トン 20トン 航空機 自動車 (炭素繊維1トン当たり) (ライフ:10年間) (ライフ:10年間) 1機当たり炭素繊維 使用量(トン)(重量比%) 1機・1年当たり CO2削減効果(トン) (将来普及時) 1年当たりの CO2削減量(トン) 自動車 0.1 (10) 0.5 3,700万台(500万円以上) 0.2億 航空機 20 (40) 2,700 15,000機(100席以上) 0.4億 13,000 1万機 (大型 5MWクラス) 1.3億 風車 3 (10) 世界の機数 7 8.今後の課題 (1) 政府による長期的な研究開発支援 −高性能化:超高強度炭素繊維、超耐熱樹脂 −革新プロセス:超低エネ、超高速成形、革新リサイクル 等 (2) 初期市場形成のための環境・インフラ整備 −軽量エコカー税制優遇 −リサイクル制度整備 等 (3) 低炭素社会に貢献する革新素材の振興支援 −LCA(製品寿命に亘るトータルCO2削減効果)によるCO2排出量管理 −LCAに基づく環境改善素材産業振興策の整備 等 (LCA:ライフサイクルアセスメント) 8