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Japanization は起こるか

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Japanization は起こるか
2010.11.17 (No.36, 2010)
米国のデフレのリスク:Japanization は起こるか
(財)国際通貨研究所
上席研究員
経済調査部
山口
綾子
[email protected]
<要
旨>
 米国が日本のように「景気の長期低迷とデフレ」に陥るのではないかという
懸念が高まっている。90 年代初頭の日本と今の米国の共通点としては、(1)
グローバリゼーションの進展を背景とした財価格の国際価格への収斂、(2)
バブル崩壊、その後の厳しい景気後退による GDP ギャップの存在、(3)家計
のバランスシート調整の重石という点がある。
 他方、当時の日本と今の米国の相違点として、(1)労働力人口の伸びがマイナ
スとなり潜在成長率が大きく低下した日本と、労働力人口の伸びは低下しつ
つあるものの引き続きプラスを維持している米国、(2)3 つの過剰の調整に長
い時間を要した日本企業に対し、バランスシートは健全な米国企業、(3)世界
経済をけん引する新興国の成長、(4)金融政策の積極的な対応等があげられる。
 日米とも足元ではゼロ金利政策に加え、
「包括緩和」
「量的緩和第 2 弾(QE2)」
と呼ばれる非伝統的金融政策がとられている。QE2 については、連邦準備理
事会(FRB)内部でもさまざまな議論があり、効果は限定的である一方で、
新興国にインフレや資産価格バブルをもたらすリスクがあるとの批判も出
ている。
 上記の 90 年代日本と今の米国との相違点に加え、FRB への信認からデフレ
期待が抑えられていること等を考慮すれば、米国が日本化する可能性はさほ
ど大きくないとみることができるのではないか。
1
<本
文>
米国が日本のように長期にわたる景気低迷と物価下落に陥るのではないかと
いう懸念が、日本化(ジャパナイゼーション:Japanization)という言葉でメディ
アでも多くとりあげられるようになった。たしかに、景気回復期に入って 1 年
以上が経過する米国だが、消費者物価上昇率は低下傾向が続いている。代表的
な物価指標の一つであり、FRB も重視している個人消費デフレータでみると、
実際に市場で取引される財・サービスのデフレータは 9 月に前年比 0.9%と 1%
を切る伸びにまで落ち込んできた。サンフランシスコ連銀のレポートでは日本
の 90 年代と現在の米国のインフレ率を並べたグラフを示し、長期にわたるディ
スインフレはデフレにつながるリスクがあると警告している(図表 1)。
図表1:
(出所)サンフランシスコ連銀
デフレの定義、デフレの弊害
デフレーション(deflation)とは、
「物価が継続的に下落すること」であり、国際
通貨基金(IMF)が 1999 年の世界経済見通し(WEO)の中で示した、少なくと
も 2 年間続けて下落というのが一般的なデフレの定義とみなされている。
デフレの弊害としては以下の点をあげられる。
(1)債務者から債権者への所得移転
債務を負っている者にとっては実質的な返済負担が増加する。この結果、債
務不履行が増え、金融機関の経営も悪化する。
(2)名目賃金の下方硬直性
一般的には名目賃金は下方硬直的なため、実質賃金が上昇し、企業にはコス
ト高になる。
(3)購入決定の先送り
企業も個人も将来価格がさらに下がるとみれば買い控えがおこる。その結果
2
需要が減退する。
(4)デフレ・スパイラル
以上の要因が合わさり、さらには資産価格のデフレも加わって、デフレが不
況を深刻化させ、さらにデフレを深刻化させる。
(5)ゼロ金利の制約
金融政策面では、政策金利は通常ゼロ以下には下げられないので、デフレ下
では実質金利(名目金利から物価上昇率を引いたもの)は高止まる。このため
金利面での政策効果が大幅に削られる。
90 年代初頭の日本と米国の共通点
(1)先進国共通のディスインフレ傾向:グローバル化進展に伴う財価格の国際価
格への収斂
90 年代以降のディスインフレーション傾向は先進国共通の現象である(図表
2)。この要因としては、グローバル化の進展による財価格の国際価格への収斂
という点があげられよう。米国の消費者物価(食品・エネルギーを除く)を財、
サービスに分けてみると、サービス価格上昇率が 90 年代半ば以降は概ね安定し
てきたのに対し、財価格は 90 年代に上昇率が大きく低下、2000 年代初めにはマ
イナスになっている(図表 3) 1。この背景には、東西ドイツ統一、ソ連崩壊などに
代表される旧社会主義諸国が資本主義社会に組み込まれるなかで、90 年代以降
に経済のグローバル化が急速に進展してきたことがあげられる。財輸入のGDP
比でみた米国の輸入浸透度は 90 年代に大きく上昇している(図表 4)。米国の財価
格は貿易財との厳しい競合のなかで価格の伸びが抑えられた一方で、国内で生
産されるサービス価格は概ね安定的に上昇を続けた姿がうかがえる。
1
なお、財価格は 2009 年に大きく上昇しているが、これは主として、たばこ税率引き上げによるたばこ価
格の上昇による一時的なもの。
3
6
図表2:各国消費者物価の推移 (食品・エネルギーを除く)
前年比%
米国
日本
ユーロ圏
5
4
3
2
1
0
-1
-2
1990
1995
2005
2000
2010
(資料)総務省、米国労働省、Eurostatより作成
図表4:米国財輸入のGDP比(名目ベース)
16%
図表3:米国消費者物価(前年比、%)
10
14%
財(除くエネルギー・食品)
サービス(除くエネルギー)
5
12%
10%
0
8%
-5
(資料)米国商務省データより作成
(2)バブル崩壊とその後の深刻な景気後退
日米の共通点の一つとして、バブル崩壊があげられる。
日本の株価は 1980 年台半ばから急騰し、1989 年末にピークをつけた後急落し、
その後も長期にわたる低迷が続いている(図表 5)。公示地価でみた不動産価格も、
1990 年代初頭にピークをつけた後、20 年近く下落が続いている。
米国でデフレが懸念されるのは今に始まったことではない。2000 年代初頭に
IT バブルが崩壊、その後の景気後退のなかで、消費者物価上昇率が低下し、デ
フレ懸念が高まった。当時は FRB が政策金利を急速に引き下げ、実質マイナス
金利を実現したことで、景気浮揚に成功した。他方でこの金利の低下は住宅市
場に次のバブルをもたらした。
住宅価格は、低金利と規制緩和による証券化商品取引の活発化など金融面か
らの押し上げもあって 2000 年代に大きく上昇した(図表 6)。2006 年半ばごろか
4
2008
2006
2004
2002
2000
1998
1996
1994
1992
1990
(資料)米国労働省データより作成
1988
2010
1986
2005
1984
2000
1982
1995
1980
6%
1990
ら価格が頭打ちとなると、そもそも住宅価格が上昇することを前提としていた
サブプライムローンの破綻が目立ち始め、証券化商品の価格下落を通じてサブ
プライム危機につながった。
なお、サブプライム危機を受けた今回の景気後退の中でサービス価格の上昇
率は大きく低下、足元のデフレ懸念を高めている(前掲図表 3)。これは主として
住宅市況の下落を受けて家賃が前年比で下落していることを反映したものであ
る。米国の CPI のなかでサービスは 6 割、うち家賃は 3 割とウエイトが大きい
ため、住宅市場の低迷長期化はサービス価格の押し下げにつながる可能性があ
る。
全米経済研究所(NBER)は今回の景気後退は 2009 年 6 月に終了したことを 9
月に公表した。長さでみても深さでみても大恐慌以来の厳しいものであった(図
表 7)。さらに今回の景気後退は世界的に広がりをみせ、先進国の GDP ギャップ
は過去に類をみない大幅なものとなった(図表 8)。各国の景気回復は緩やかなも
のと見込まれ、ギャップ解消には長い時間がかかるとみられている。
:日米株価の推移
45000
40000
15%
30000
10%
1000
25000
800
20000
600
15000
400
10000
200
5000
0%
-5%
20都市
-15%
-20%
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1988年
-25%
2010
2008
2006
2004
2002
2000
1998
1996
1992
1994
1990
1988
1986
1984
1982
10都市
-10%
0
1980
0
5%
1994年
1200
20%
35000
1993年
日経平均
(右)
1400
1992年
1600
ケース・シラー住宅価格指数
前年比
25%
1991年
SP500
:米国住宅価格の推移
1990年
1800
図表 6
1989年
図表 5
(資料)S&P社データより作成
図表7:米国の戦後の景気循環
ボトム
景気後退期
(月数)
11
10
8
10
11
16
6
16
8
8
18
Nov-48
Oct-49
Jul-53
May-54
Aug-57
Apr-58
Apr-60
Feb-61
Dec-69
Nov-70
Nov-73
Mar-75
Jan-80
Jul-80
Jul-81
Nov-82
Jul-90
Mar-91
Mar-01
Nov-01
Dec-07
Jun-09
(参考:大恐慌期)
Aug-29
Mar-33
43
(資料)NBER、商務省データより作成
一人当たりGDPの変化
名目
実質
-5.3%
-3.3%
-3.3%
-4.2%
-3.0%
-4.3%
-0.9%
-1.8%
3.5%
-1.4%
8.4%
-4.3%
1.7%
-2.8%
3.0%
-3.8%
-0.2%
-2.0%
1.3%
0.0%
-3.1%
-5.4%
-47.2%
-28.9%
5
%
6
図表8: GDPギャップの推移
IMF見通し
4
2
0
-2
-4
-6
-8
-10
USA
EURO
JAPAN
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
2000
2002
2004
2006
2008
2010
2012
2014
ピーク
(資料)IMF,WEOより作成
(3)毀損した家計のバランスシート
住宅価格の下落に伴い、米国家計のバランスシートは大きく毀損した。住宅
資産価格が落ち込んだことで、2007 年からの 2 年間で、家計の住宅資産は 6 兆
ドル、金融資産も合わせると 14 兆ドルもの評価減となった。IT バブル崩壊時の
2 兆ドルと比較すると、今回のバブル崩壊がどれだけ大きな影響を与えたかがわ
かる。1 年分の所得を軽く超えるキャピタルロスがでたことになる。純資産を可
処分所得対比でみると、6.5 倍だったものが、4.7-4.8 倍まで落ち込んだ(図表 9)。
もっとも、これでようやく過去の平均なみになった形である。
サブプライム危機を経て米国家計は急速にローンを縮小、厳しい調整を強い
られている(図表 10)。現在住宅ローンをかかえている家計の 4 分の 1 がネガティ
ブエクィティ(住宅時価がローン残高を下回る)といわれ、買い替えやローン
の借り換えは難しい状態にある。
10億ドル
80000
70000
60000
50000
40000
30000
20000
10000
0
-10000
-20000
10億ドル
図表9:米国家計のバランスシート
7
金融資産
不動産
負債
純資産/可処分所得比(倍・右)
1400
1200
図表10:米国家計の負債増加額の推移
消費者ロ ーン
ホームエクィティローン
0.14
0.12
住宅ロ ーン (除くHEL)
6
1000
800
5
4
3
2
80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 0810/Q2
その他
0.1
負債増加の可処分所得比
(右目盛)
0.08
600
0.06
400
0.04
200
0.02
0
0
-200
-0.02
-400
-0.04
80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08
(資料)FRBデータより作成
日米の相違点
以上のように、現在の米国には 90 年代の日本と共通する点が多いが、他方で、
相違点もある。
(1) 労働力人口の伸び低下、潜在成長率を低下させた日本 Vs 労働力人口・生産
性の伸びを維持、潜在成長率の大幅な落ち込みを避けられている米国
現在の米国の潜在成長率は 2.3%(議会予算局 CBO)~2.5%(大統領経済諮問
委員会 CEA)程度とみられている。これに対し、日本では 90 年代から 2000 年代
にかけて、労働力人口の減少に生産性の伸び率低下も加わり、潜在成長率は 1%
前後にまで低下したと言われている。景気に対して中立な均衡実質金利水準は、
6
潜在成長率にほぼ等しいと考えられるので、日米の均衡実質金利水準には 1%ポ
イント以上の差がある。日米は同じ名目ゼロ金利でも、実質金利の均衡水準か
らの乖離という意味では違いが出てくる。既にデフレ下で物価上昇率がマイナ
スになっていることを考慮すれば、名目ゼロ金利は、日本にとって、米国より
はるかに厳しい金融引き締めになっていることを意味する。
(2)比較的健全な米国企業のバランスシート
日本企業が 90 年代に、雇用、設備、債務という 3 つの過剰をかかえ、その調
整に長い時間がかかったことは日本経済の低迷の要因の一つとしてよく知られ
ている(図表 11,12)。米国企業はどうだろうか?米国企業は今回の金融経済危機
に際し、過去に例をみないほど厳しい雇用調整を行ってきた(図表 13)。この結果、
労働コストの増加とそれに伴う収益の大きな落ち込みを回避できている。通常
景気後退期には労働分配率が急上昇し、企業収益の分配は低下するが、直近で
は収益の分配率は急速に回復を示している(図表 14)。もっともこれは他方で、家
計にとり所得環境が厳しく、調整のコストが家計に集中していることを意味し
ている。さらに債務面でも米国企業のバランスシートは、諸外国と比較しても、
歴史的にみても比較的健全な様子がわかる(図表 15)。
図表 12:日本企業の債務
図表11:日銀短観 雇用・設備判断
DI %
30
20
過
剰
↑
10
0
↓
不
足
-10
-20
-30
雇用
-40
設備
-50
91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10
(注)債務は民間非金融機関における借入と株式以外の証券との和
(資料)日銀データより作成
(出所)日本銀行
景気のピーク=100
図表14:米国の国民所得の分配
図表13:米国の不況期の雇用者数の推移
120
70%
25%
雇用者報酬
115
73年
110
81年
105
90年
100
2001年
95
今回
90
0
5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 ピークからの
(資料)米国労働省データより作成
経過月数
65%
20%
60%
15%
55%
10%
50%
5%
1980 1983 1986 1989 1992 1995 1998 2001 2004 2007 2010
(資料)米国商務省統計より作成
7
企業収益(右)
図表 16:
図表15: 非金融法人企業の債務/金融資産比率、%
100
90
80
英国
70
ユーロ圏
日本
60
米国
50
40
00
03
06
09
(資料)IMF、WEOより作成
(出所)IMF
(3)世界経済の中でプレゼンスを高める新興国の成長
2000 年代以降の世界経済はアジアをはじめとした新興国によってけん引され
てきた(図表 16)。当面先進国経済が緩やかな景気回復にとどまるとみられる中で
も、世界経済は拡大を続けるとみられる。
(4)積極的な金融緩和
FRBのディスカッションペーパー 2では 90 年代の日本のデフレの教訓として、
「ひとたび物価上昇率がマイナスとなり、政策金利がゼロになると、金融政策
でデフレから脱却するのは大変困難となる。デフレのリスクが出てきたときに
は早めにベースライン予測が必要とする以上の積極的な緩和をするべき」とし
ている。FRBはこうした日本のデフレの教訓に学び、ITバブル崩壊時にもサブプ
ライム危機に際しても、積極的な利下げを行ってきた。こうして、現在先進各
国の政策金利は歴史的低水準となっており、日米の政策金利は事実上ゼロとな
っている(図表 17)。さらに金利政策だけでなく、先進国各国の中銀は量的緩和に
よりバランスシートを急速に拡大させている(図表 18) 3。
2 FRB International Finance Discussion Paper, “Preventing deflation: Lessons from Japan’s
Experience in the 90’s“ 2002/6
3 なお、
日銀のバランスシートは直近では拡大を示していないが、GDP 比でみれば、
約 25%と FRB 約 16%、
ECB 約 20%よりも大きい。
8
%
図表17:政策金利の推移
2003=100 図表18:各中銀のバランスシート
16
350
米国
14
日本
FRB
300
ユーロ圏
12
日銀
250
英国
10
200
8
150
6
100
4
50
2
0
ECB
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
0
(資料)各中銀データより作成
(資料)各中銀データより作成
量的緩和第 2 弾(QE2:Quantitative Easing 2)の評価
11 月の連邦公開市場委員会(FOMC)では 2011 年 6 月末までに 6,000 億ドル
の長期国債を購入するという量的緩和第 2 弾が発表された。既に FRB が保有し
ているモーゲージ担保証券(MBS)等の償還分による国債購入とあわせ、8,500
~9,000 億ドルもの額となる。さらに今後の景気動向次第で購入金額や買い取り
のペースを見直すとされており、FRB のデフレ阻止にむけての強い姿勢が鮮明
となった。こうした FRB の積極的対応を受けて、少なくとも米国ではデフレ期
待は抑えられており、買い控えにはつながっていない(図表 19)。
前述した直近の米国と 90 年代日本との差異に、FRB への信認に支えられてデ
フレ期待が抑えられていること等を考慮すれば、米国が日本型デフレに陥るリ
スクはさほど大きくないとみてよいのではないか。
図表19:米国のインフレ予想
14
%
ミシガン大学調査インフレ予想
12
コアCPI
10
8
6
4
2
(資料)米国労働省、ミシガン大学調査より作成
9
2010
2008
2006
2004
2002
2000
1998
1996
1994
1992
1990
1988
1986
1984
1982
1980
0
もっとも QE2 をめぐっては賛否さまざまな議論がある。FRB の量的緩和第 1
弾(QE1)は 2008 年末に始まり 2009 年 3 月に終了、資産担保証券等を購入する
信用緩和(2010 年 3 月終了)と合わせ、1.7 兆ドルもの資産を購入した。リーマ
ンショック後の緊張を高めていた金融市場を安定化させるのに貢献したとみら
れている。しかし、QE2 については FRB 内部でも意見が分かれている。ニュー
ヨーク連銀ダドリー総裁(0.5-0.75%ポイントの利下げと同様の景気浮揚効果が
あると言及)、シカゴ連銀エバンス総裁、セントルイス連銀ブラード総裁などが
積極的支持派とみられる一方で、リッチモンド連銀ラッカー総裁、フィラデル
フィア連銀プロッサー総裁、カンザスシティ連銀ホーニグ総裁(11 月 FOMC で
も反対票を投じた)は反対派と言われる。海外からも、新興国のインフレ・資
産価格バブルのリスクを高め、ドル安につながり、新興国通貨高圧力となると
の批判が根強い。11 月 15 日には WSJ 紙に複数の経済学者たちが「QE2 はイン
フレを招くリスクがある。米国にとって有益ではない。撤廃すべき」との FRB
批判広告を行っている。米国議会では QE2 に批判的な下院共和党から、FRB に
課されている「物価の安定と雇用」の 2 つの任務のうち雇用をはずす法改正の
動きも出ていると報道されている。
QE2 に一定の効果があるとしても、金融政策だけでは景気を安定的回復軌道
に乗せることは難しい。
「大きな政府」批判の逆風のなか、中間選挙で大敗した
オバマ政権にとっては財政支出の拡大は困難だが、税制改革・住宅市場対策な
どの面での支援策が望まれる。なお、これほどの量的緩和は過去の経験がない
だけに、安定的景気回復が現実のものとなった後には、その出口政策が内外の
金融市場に与える影響も無視できず、注意が必要であろう。
以上
当資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり、何らかの行動を勧誘するものではありません。
ご利用に関しては、すべて御客様御自身でご判断下さいますよう、宜しくお願い申し上げます。当資料は信
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