Comments
Description
Transcript
地図・地域区分でとらえる現代社会∼データマップは何を伝えるか∼
いきいき体験 授業実践 地理B編 地図・地域区分でとらえる現代社会∼データマップは何を伝えるか∼ 渋谷教育学園幕張高等学校 五 月 女 圭 三 ータに換算するよりことによって地域的な個人の 1.はじめに 豊かさをより表現することができる。また、p.237 ダイナミックに変化する現代社会を把握するに 「④階級区分をかえて表した1人あたりのGDP は、統計を分析することが必要である。統計デー (1999年) 」では、南南問題をさらにわかりやす タを地図化するとき、その目的にあった表現をす く表現できる。階級区分を変えることによって目 るとわかりやすいものになる。その表現方法を生 的に応じた表現方法が可能であることを生徒に確 徒に考えさせる授業とは何か。また、地域の特色 認させたい。 を把握するには、どの項目を選択し、どのような 3.主題図の見方とつくり方 表現方法を取り入れたデータマップが有効的かを 授業で考えさせる。 2.統計資料の選択と地図化の方法 主題図の表現方法には、ドットマップ、等値線 図、図形表現図、階級区分図などがある。ここでは 「新詳地理B」p.239「③生徒1人あたりの高校校 詳細な統計データも地図化することによって視 地面積(1998年) 」の階級区分図を完成させてみ 覚的で分かりやすいものになる。しかし、統計デ よう。階級区分図の区分と色は、生徒に考えさせ ータが信憑性に欠けたり、適切な資料を選択しな たうえで、下記の階級区分で面積の大きい方が寒 かったり、階級設定方法を誤ればできあがった地 色、小さい方が暖色でぬらせるのがよいであろう。 図は意味のないものや適切な表現のできな いものになってしまう。いかに適切な統計 を抽出し適切な方法がとれるかが鍵であ る。 抽出する統計データは、政府や国連など 信頼ある機関のまとめたものがよいであろ う。 「新詳地理B」p.236以降の「4章 地 図でとらえる現代世界」 「 5章 地域区分 、 でとらえる現代世界」の例では、世界銀行 や人間開発報告書などの国連機関や、中国 年鑑など信頼ある出版社が出版しているデ ータが使用されている。できれば生徒にも どのような機関・組織が発表している資料なのか 「新詳地理B」 説明しておく必要があるだろう。 p.239③ 生 徒 1 人 あたりの高校校地 「新詳地理B」p.236「③GDPの大きさを面 面積(1998年) 積におきかえた世界地図」のデータであるGDP 〈統計で見る県の は国家規模の指標になる。豊かな国と貧しい国の すがた 2000〉 差である南北問題を表現している。さらに、 「②1 人あたりのGDP(1999年) 」の1人あたりのデ −6− 生徒1人あたりの高校校地面積 青色 ① 130m2以上 緑色 ② 100m2∼130m2 黄色 ③ 70m2∼100m2 橙色 ④ 70m2未満 そして「新詳地理B」p.239②の「都道府県別 近は小麦生産地帯であるが、すぐ南のチンリン山 人口密度」の狢図と比較すれば、人口密度の高い 脈やホワイ川付近では米も栽培されている ( 「新詳 都道府県は生徒1人あたりの高校校地面積も大き 地理B」p.238のドットマップ) 。しかし、p.225の いことがわかる。しかし、適切な階級区分や色分 「狢中国の地形のようすと農業生産」の農業区分 けをしなければピントのずれた地図になってしま の境界は直線的である。実際には境界線付近では うのである。 両作物とも栽培されている。地域区分図には中間 地帯があることが特徴であり地域を大観すること 4.地域区分図の目的 に意味がある。チンリン山脈とホワイ川を結ぶラ 本校では毎年高校2年生の10月初旬に中国修学 インがほぼ小麦と米栽培の境界線であることで中 旅行にでかける。そのため事前に中国地誌を学習 国農業の特徴をつかむことができるのである。 している。もっぱら生徒の興味は、寒いのか、雨 5.どのような項目・表現方法を選ぶか は降るのか、どんな服装をしていけばよいのか、 どのような料理がでるかなどである。 「新詳地理B」p.248∼254では、アフリカとラ そこで訪問地である北京、西安、上海の気候を テンアメリカの地域の特色をつかむため様々なデ 地図帳の気候区分(ケッペンなど)で確認する。 ータマップが使用されている。アフリカでは、 理科年表などで調べて、気候表からもケッペンの p.248 「①1日あたり1ドル以下で生活している人 気候区分で計算すると、北京はDw、上海は東京 の割合と後発発展途上国の分布」 、 「②総人口に占 と同じCfaである。西安(年間降水量555.8mm) める黒人人口の割合」 、 「③アフリカ諸国のGDP はBSであるが、Cwとのほぼ乾燥限界の境界線上 に占める農業生産の割合とおもな資源」からは中 にあることがわかる。西安南部のチンリン山脈は 南アフリカの黒人国家で資源に恵まれず農業生産 もうCwである。Cwといえば、モンスーンの影響 割合が高い国が貧困であることがわかる。さらに を受けた同じ中国の香港(年間降水量2360.4mm) p.250「①1914年のアフリカの植民地分割」 、 「② や、インド北東部の世界最多雨丘陵地域(年間降 アフリカ諸国の公用語とヨーロッパとの貿易」か 水量10000mm以上)の降水をイメージするが、 ら独立後も旧宗主国の影響が大きいこともわかる。 西安南部地域や同じCwのインド・デリー(年間 ラテンアメリカは、p.252∼253「①ラテンアメ 降水量779.1mm)はこれほど雨は多くない。同じ リカの人口密度」 、 「②ラテンアメリカの植生と土 分類に属していても実際にはかなりの差がある。 地利用」 、 「③ラテンアメリカの人種・民族構成」 これは区分する基準が最寒月の平均気温と降水の から総合して「④ラテンアメリカの地域区分」に 季節的変化という2つの基準であるからである。 見られるような3つの地域に分類できる。さらに 年間降水量の差は表現できないが、これによって p.254「②ラテンアメリカの国・地域別総生産額」 世界の気候を大別することができるという利点が では1人あたりの国・地域別総生産額を基準に貧 ある。さらに、 「新詳地理B」p.244のアメリカ合 困地域を表現することができる。地図を組み合わ 衆国の気候区分を例に解説している「①各年ごと せることによって地域の特性が見えてくる。 の気温と降水量でみたケッペンの気候区分におけ 6.おわりに る境界線の変化と気候区分図」では、気候は同じ 地域でも毎年変化するもので気候区分は過去の一 データマップは地理学習をわかりやくするのに 定期間の平均であることも確認したい。 不可欠な資料であり、地図資料を組み合わせて共 また、西安では徳発長というギョウザ専門店で 通性や関連性を明確化することが考える地理学習 夕食をする機会がある。ギョウザやトウトウモウ につながる。グラフなどと合わせて大いに授業に とよばれるパンは西安名物である。確かに西安付 取り入れたいものである。 −7−