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2013年研修旅行成果報告書 - 名古屋大学グローバル人材育成プログラム

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2013年研修旅行成果報告書 - 名古屋大学グローバル人材育成プログラム
グローバル人材育成プログラム
海外視察研究旅行
成果報告書
Sep.11~Sep.18 2013
名古屋大学経済学部
2
2013 年度
グローバル人材育成プログラム
海外視察研修旅行
成果報告書
2013 年 9 月 11 日~9 月 18 日
タイ・シンガポール
名古屋大学経済学部
阿
部
優
竹
林
佳
中
島
敦
岩
田 美
咲
河
合
直
哉
澄
棚
橋 美
月
谷
本
茂
人
也
中
村 直
樹
武
藤
雅
樹
3
4
目次
はじめに
名古屋大学経済学研究科
教授
佐野良雄
7
研修旅行日程
8
第1部
研修旅行感想文
9
第2部
研修レポート
27
第3部
現地大学での発表資料
57
第4部
成果報告会 (2013 年 11 月 7 日開催)資料
87
おわりに
96
5
6
はじめに
名古屋大学経済学研究科
教授
佐野良雄
名古屋大学経済学部グローバル人材育成プログラムは、2009 年に開講されてから本年で
5 年目を迎え、海外研修旅行も 4 回目となりました。前任の西村先生の後を継ぎ、私とし
ては初めての研修旅行引率でした。
東南アジアは 1990 年代末の通貨危機を乗り越え、2000 年以降、従来の「日本の輸出製
品市場」や「安価な労働力の供給地」という位置付けから、グローバル・サプライ・チェ
ーンの一翼を担う一大生産基地へと変貌し、経済的な重要性を益々発揮しつつあります。
特に円高や不況による自国市場の縮小の為、海外への生産シフトを続けてきた日本企業に
とっては、”China plus One”から”The one and only”へのパラダイムシフトが確固た
るものになっている印象を受けました。
新興国から、中進国さらには先進国への国の発展過程に於いては、人材育成が何よりも
重要な戦略であることは論を待ちません。毎年訪問しているタイのチュラロンコン大学や
シンガポール・マネジメント大学では、近い将来国の未来を背負って立つ同世代の学生と
の交流が今年も行えることを期待して、訪問を楽しみにしていました。チュラロンコン大
学では 50 人を超える学生がプレゼンテーションに参加してくれ、プレゼンの後も多くの
学生が残って交流を行い、今後のコンタクトを約束できたことは大きな収穫でした。シン
ガポール・マネジメント大学では一転して 5-6 名の学生精鋭がプレゼンテーションに聞き
入り、中身の濃いディスカッションを行いました。その後シンガポールの街と一体となっ
たキャンパスを案内してもらい、学生がよく行くという、大学近くのフードコート(屋
台)で昼食を共にしたことも学生の生活の一端に触れ、より一層親しみを感じました。
今回訪問した企業の多くで、現地採用社員(National Staff)との交流の場を設けて頂き
ました。各位のお心遣いに感謝しております。
「グローバル化」とか「グローバル人材」
という言葉が一人歩きして、今回の研修旅行参加者も漠然とした想像しかしていなかった
のではないかと思いますが、結局「グローバル化」とは、人と人との結びつきのことであ
り、「グローバル人材」とは海外や異文化の人たちと普通にコミュニケーションできる人
のことだということを、身を持って学んでくれたと思っています。
このような機会を与えて頂いたグローバル人材育成協議会参加企業、および今回お邪魔
した現地企業の方に改めて厚く御礼申し上げると共に、未来に向かってグローバルな舞台
で活躍できる Actor, Actress を育てることを大学の使命として実践して行く意を強く致
しました。ありがとうございました。
2013 年 10 月
7
海外視察研修旅行
日程
日付
内容
9/11(水) 全日
〇
名古屋→バンコク移動、到着後ホテルへ移動
午前
●
豊田通商タイランド講義
9/12(木) 午後
●● トヨタサムロン工場
講義・見学
タ イ
夜
●
午前
●● チュラロンコン大学講義・ディスカッション
9/13(金) 午後
タイ伝統舞踊見学
●● 大同特殊鋼
講義・工場見学
夜
●
タイ新東工業の方と夕食
午前
●
バンコク市内観光
午後
〇
バンコク→シンガポール移動、到着後ホテルへ移動
9/15(日) 全日
●
シンガポール観光(自由散策)
9/14(土)
●● 野村證券(シンガポール)講義・ディーリングルー
午前
シンガポール
9/16(月)
午後
午前
9/17(火) 午後
9/18(水) 朝
ム見学
●
アジア・大洋州三井物産シンガポール支店講義
●
ナョナルスタッフの方と昼食
●
PSA コンテナヤード見学
●
シンガポールマネジメント大学・ディスカッション
●
キャンパス見学・昼食
●● ブラザー工業(シンガポール)講義・販売店訪問
●
ブラザー工業の方と夕食
〇
シンガポール→バンコク移動
〇
バンコク→名古屋到着、解散
(乗換)
凡例:●=講義・ディスカッション、●=現場見学、●=交流、●=観光、〇=移動
8
第1部
研修旅行感想文
9
研修旅行を終えての考察
阿部
優
今回のグローバル人材育成プログラムの研修旅行では一週間にわたりタイ、シンガポー
ルを訪問した。短い日程ではあったが、タイトなスケジュールの中で大きな学び、発見が
あった。ASEAN の拠点である両国をリードする企業で活躍されている方々、また将来その
ような舞台で活躍するだろう学生と時間を共にできたことは非常に刺激的であった。ま
た、この研修旅行は自分の視点に大きな変化を与えてくれた。ここではその内容について
詳細を報告する。
最初に訪れたタイでは、そのとどまることを知らない成長を肌で感じることができた。
訪問させていただいた各企業の説明をお聞きする中で、通貨危機、リーマンショック、大
洪水を乗り越えたタイ経済の堅実な成長ぶりを実感した。その堅実な成長は比較的安定し
た政治状況、多種多様な産業の蓄積などの強みによるものだと考えられる。しかし、その
順調な成長を実感すればするほど、今後この成長を維持することができるのかという疑問
を抱えるようになった。特に労働集約的な産業は、タイに優位性を見いだせなくなると、
より人件費の安いベトナムやバングラデシュなどへとシフトしてしまうであろう。その流
れに対抗できるようなタイの強みは何なのか。それはタイの学生の学びへの姿勢やコミュ
ニケーションであると、チュラロンコンを訪問した際に感じた。チュラロンコン大学の学
生は私たちのプレゼンに輝いた目で向かい、様々な角度から鋭い質問をし、プレゼンのあ
とも私たちと積極的に交流しようとしていた。タイをリードする大学の学生の力強さを肌
で感じ、これからもタイの成長は止まることはないだろうと考えた。私たち日本人の学生
はどうだろうか。日本人の学生は私も含め全体的に積極性が足りていないと思う。1つで
も多くのことを吸収しようとする気概に満ち溢れたタイの学生には多くのことを考えさせ
られた。
続いて訪れたシンガポールでは、多様な民族が共存しながらも統制のとれた国家として
成功していることに感心した。交通渋滞を解消する取り組みなどを目にすると、単に規制
で縛るのではなく、規制を効果的に利用して確実に成果につなげられていると感じた。し
かし、これを日本でもすぐに導入できるかというと必ずしも一筋縄にはいかない。野村證
券シンガポールの縣さんがリー・シェンロン首相とお話する機会があったそうたが、その
時の首相の言葉が印象的だった。「シンガポールは例えるならば Bonsai Tree であり、少
し手を加えるだけで整う。日本は Super Big Tree であり、少し手を加えただけではそう
変わることはない。」国土、人口、一国の経済規模を考えるとシンガポールはコンパクト
にまとまった都市国家であり、単純に日本と比較はできないということであろう。ただ、
この言葉を聞いて Super Big Tree をもコントロールして Bonsai Tree のように操れるよ
うな人材や政策、また Super Big Tree に手入れを続ける地道な努力が必要なのではない
10
かと考えた。それは安倍首相の唱えるアベノミクスであるのかもしれないし、それでは不
十分なのかもしれない。
両国に共通して感じたことは、ASEAN の拠点としてこの地域をリードする企業の力強さ
だ。今回の研修旅行では様々な企業を訪問させていただいたが、それぞれの企業に独特の
空気、文化を感じた。それは世界各地に拠点のあるグローバル企業が、その企業のアイデ
ンティティを失わずに世界全体で意識統一を図ろうと努力されているからなのかもしれな
い。企業ごとに雰囲気の違いは感じられたものの、全体としてどの企業にもアクティブな
雰囲気を感じることができた。現地で働かれている方々は一人残らずいきいきとしてお
り、自分の仕事に対する誇りとプロ意識がひしひしと伝わってきた。私自身も海外で働く
ことに対する興味が一層膨らみ、そのようなアクティブな空気の中で社会に貢献できる仕
事をしたいと強く考えるようになった。
今回の研修旅行では、「日本から世界を捉える」という視点が、「世界から日本を捉え
る」という視点、さらには「世界から世界を捉える」という視点を持つきかっけとなっ
た。また、アジア地域をリードする国の企業や学生に触れて多くの刺激を受けた。今まで
の日本での自分自身のやり方を完全に否定しようとは思わないが、この刺激を自分の軌道
修正、追い風にしていかなくてはいけない。この旅行で学んだことや感じたことをこれか
らの人生の糧にできるかということは、これからの自分自身の行動にかかっている。グロ
ーバル人材としての自覚を持ち世界の舞台で羽ばたけるよう、これからも努力を重ねてい
きたい。
最後になるが、この研修旅行に多大なお力添えをいただいた協賛企業、佐野先生、共に
学んだメンバー、その他関係者に御礼を申し上げたい。本当にありがとうございました。
11
「グローバル人材」とは何だろう
岩田 美咲
「グローバル人材」とは何だろう。これは、私がまだ 2 年生だった頃、このプログラムの
講義を受け始めた時からのぼんやりとした疑問だ。もちろん、「グローバル人材育成プログ
ラム」という名前がついているからでもあるが、ニュースなどでもたびたび取り上げられて
おり、日本全体が考えるべき課題の一つとして認識されているように感じている。私が大学
生になってもっとも耳にするようになったワードといっても過言ではない。
そんな中、今回海外視察研修旅行の機会を与えていただき、「グローバル」を肌で感じる
ビッグチャンスが訪れた。日本の一流企業を見学させていただいたり、企業の方のお話を伺
ったり、現地の大学生と交流したり、と日本にとどまっているだけではできない貴重な体験
をたくさんすることができた。その中から学んだことは、言葉にするのが難しいほど私の心
や体に染み込んでいる。
「グローバル人材」から連想されることといえば、おおよその人が英語を流暢に話せる人
だと答えると思う。実際に海外に行ってみると、やはり会社内で飛び交うのも英語であり、
英語力の重要性を痛感した。もちろん英語が飛び交う中で会話に参加しているのは英語が
母国語だという人ばかりではない。タイのチュラロンコン大学で交流した学生の母国語は
タイ語。三井物産で一緒にお昼ご飯を食べた社員の方の母国語はマレー語。そして彼らから
してみれば、私たちも普段は日本語を話すノンネイティブだ。そのような母国語が違う人た
ちにとっての交流ツールとなる“ハブ言語”としての英語を身に着けることがどれだけコミ
ュニケーションをとるうえで大切なのかを再認識し、今まで「話せるようにならなければな
らない」であったのが「話せるようになりたい」という意識に変わった。この違いは大きい。
しかし、英語さえできればいいのかというと決してそうではないということも学んだ。ト
ヨタ工場見学の際、社員の方が「英語ができて仕事ができない人より、仕事ができて英語が
できない方がずっとましだ。」とおっしゃっていたのがとても印象深い。英語だけできても
肝心の仕事ができなければ、ただただ英語だけが先行してしまい、内容の間違ったコミュニ
ケーションをとることになる。人生は総合力、何か一つが突出していても、他の柱となるべ
き重要な力が欠落していては意味がない。英語力を磨くことはもちろん、それだけではいけ
ないということも肝に銘じていきたい。
では、英語力以外に「グローバル人材」に必要なことはなんだろう。今回の企業訪問をし
て思ったことは、
「物事を世界でとらえられるか」ということだ。日本単位で考えていると、
せいぜい何県だ、何市だというレベルでとらえがちだ。通学のため、県境の川を渡るだけで
も冒険だったかつての私は、外国のことというのをどうしても遠い世界のことのように感
じていた。ところが、海の向こうではそこを拠点として働く人々がおり、世界をまたにかけ
ている企業がたくさんある。自分の意識の中に外国が存在している。外国のことも、自分に
12
関係のあるものとしてとらえることができる。そのような人が「グローバル人材」に匹敵す
るのではないかと、企業の方々の姿を見て感じた。
今回の視察研修旅行で、私もほんの少しではあるが、「グローバル人材」に必要な世界レ
ベルの観点で物事をとらえる感性を身につけられたように思う。タイ、シンガポールという
国を見物し、その活気に触れて「経済成長というものはこういうものなのか」と理解できた
ような気がする。景気がよくないと言われる日本にはない空気感で、とても新鮮だった。一
方、これから大きな発展が見込まれるということは現状に課題が多いというのも確かだ。タ
イで目の当たりにした貧富の格差。タイ・シンガポール両国で異常に低く設定されたクーラ
ーは、日本のクールビズ政策とは相反する、環境問題に対する意識の低さが表れていた。こ
れらは気づいたことの一例ではあるが、タイ・シンガポールの魅力を肌で感じ、もう一度行
きたいと思う一方、日本という国の良さを客観的に捉えるきっかけにもなった。
まだ「グローバル人材」になれたとは到底言えないが、
「グローバル人材」とは何かを自
分なりに考え、その人材像に一歩近づくことができたことに喜びを感じている。最後にはな
りましたが、このような素晴らしい機会を与えてくださった企業の皆様、事前特訓や引率で
温かく指導してくださった佐野先生をはじめお世話になった先生方、そして共に支え合い
実りある経験を共にした 8 人のかけがえのない仲間に、心から感謝申し上げます。ありがと
うございました。
13
グローバル研修旅行を終えて
河合 直哉
私は高校生の時に修学旅行でシンガポールに訪れたことがあります。ですから今回の海
外研修旅行では、一度訪れたことのあるシンガポールはもちろん、先進国ではないタイに訪
れて果たして何か真新しいものがあるのかと心の中では思っていました。しかし、実際に行
ってみると全くそんなことはありませんでした。ただクラスメイトと楽しむ為だけに行っ
た修学旅行とは違い、現地大学でのプレゼン・大学生とのコミュニケーション、工場・企業
見学といった企画のあった今回の研修旅行では、見たもの触れたもの全てが新鮮でした。私
はこの8日間で色々なものに触れ、本当に多くのことを学びましたが、ここでは特に印象に
残ったことを書き記したいと思います。
今回訪問させて頂いた企業で何度か話題に上がったのが「外国人をマネジメントする日
本人の重要性」です。海外進出する企業にとって有能な人材が必要なことは言うまでもあり
ません。しかし、日系企業が抱えている大きな課題の一つに人材不足が挙げられます。
日本で働く有能な社員がいても海外で働くことを避ける人が多く、その結果必要とされて
いるにもかかわらず海外での人材不足が起こってしまうのです。また、自分が部下をまとめ
る年齢になって会社から海外へ赴任するように言われても、それまでに日本でしか働いた
ことがないため言語や文化の違いから部下と上手く仕事が出来ない人が多いようです。ま
た、社員の海外赴任に対する考え方が昔と今とでは変わってきて、海外赴任に対する魅力も
会社に対するロイヤリティも以前と比べて希薄になっていることも原因となり、特に今後
その会社の牽引していくべき中堅クラスにその傾向が顕著に表れています。一方、東南アジ
アの人々の持つハングリー精神と比較すると、圧倒的に日本人に対する物足りなさを感じ
るそうです。日本の少子化と海外派遣人件費の削減の観点から、若手社員であっても赴任後
は直ぐに責任者としての職務に就くことも珍しくなく、強いリーダーシップとマネジメン
ト能力が期待されています。このように、日本人の意識と急速な企業活動のグローバル化に
は大きな溝があり、日系企業が海外でその存在感を高めて他のアジア諸国とマーケットで
戦うためには、海外に目を向ける人材の育成が非常に重要な課題であることがわかりまし
た。
今回の海外研修旅行で私達は、今後の人生においてターニングポイントとなるであろう
とても貴重な経験をすることが出来ました。最後に、佐野先生、西村先生、支援して頂いた
企業の方々、タイ・シンガポール大学の方々、その他お世話になった全ての方々に感謝を申
し上げます。本当にありがとうございました。
14
研修旅行を終えて
竹林
佳澄
「実感にまさるものはない」私が今回の研修旅行を振り返ったときに一番に感じることが
この点である。実感するということが何より自分の意識に響き、視野を広げるものであると
いうことに研修旅行全体を通して気づかされた。
私は今回の研修旅行まで海外へ行ったことがなかった。今は何故これまで海外へ踏み出
そうとしなかったのかと後悔すると同時に、学生であり、さらに就職活動を控えるこの時期
に世界の面白さに気付く機会をいただいたことに深く感謝している。私が何を実感したか。
日本に留まりつづけることがいかに世界を知らないままに生きていくことか、そして、やは
り英語を学ぶことの重要性である。
海外を経験したことのない私にとって、今回の旅行は見るもの、聞くもの全てが新鮮に自
分の中に入ってきた。チュラロンコン大学、SMU、訪問企業での体験のみならず、道を歩い
ているだけで新しいことが感じられる。旅行に参加する前の私であれば、海外に行けば当然
日本との違いに溢れているだろう。そこまでの考えで止まっていた。しかし今はその違いか
らどんな面白みが感じられるのかということを、実感を伴って考えることができる。違いを
見つけると同時に同じ点も見つけることができるのである。違いが合ってもやはりどこか
で分かりあうことができる。さらに、海外で違う点に巡り合うことで日本とどう違うのか、
それは何故かと自然と自分の国について考えることができる。海外を知ることは、なにも将
来海外で働くためだけに求められることではなく、日本で働くとしても外の世界を知り、そ
の上で日本というものを考えながら働くことと、内側からしか日本を見ずに働くことは考
え方、視野の広さが全く異なってくるのではないかと感じた。海外に目を向けることの重要
性は日本でも様々な所で説かれているが、「実感」することにより何十倍も強く意識するこ
ととなった。
また英語を身につけることの必要性もこの研修旅行により再認識することとなった。今
回の研修では訪問先の大学や企業で現地の方々と交流する機会を設けていただいた。実際
の交流においては、私の拙い英語で話しても嫌な顔一つせず、頷きながら真剣に聞いていた
だけて、伝えようとすれば完璧な英語を使うことができなくても伝えることができるのだ
なと感じることができた。最も大切なことはコミュニケーションを取ろうとする姿勢であ
るので、自分の持てる力で伝えようとすることは本当に重要なコミュニケーションの第一
歩であると感じる。しかし、今回の交流を通じて、自分と違う環境にいる方たちとより深い
話をしてみたいと思うようになった。そのときツールとしての英語はやはり必須となる。ま
たビジネスにおいてももちろん必要である。日本で学生生活を送る中で何度となく英語の
必要性を言われてきたが数日間の経験が最も意識を変えることになった。
私は今回の研修旅行で日本にとどまっていたら得ることができなかった「実感」をするこ
15
とができ、それは私の意識を大きく変え、視野を広げることとなった。学生という自分の将
来をこれから自由に考えることができ、またそれに向けて何にでも挑戦できるこの時期に
このような経験を得られたことは非常に意味深く、貴重な体験であると感じる。すばらしい
機会を与えてくださった先生方、企業の皆様、関係者の方々、そして経験を共にした8人の
仲間に心から感謝を申し上げたい。ありがとうございました。
16
研修旅行を終えて
棚橋 美月
グローバル人材育成プログラム研修旅行を終えて、行く前と行った後で私の気持ちに大
きく 2 つの変化がありました。
1 つめは海外で働くことに対する見方です。研修旅行に行く前の私は、海外で働くなんて
考えられない、自分とは無関係のことだと考えていました。これは、言葉の違い、価値観の
相違、治安や衛生面での不安など海外勤務の大変な面ばかりを想像してのことでした。しか
し、今回の研修旅行でタイやシンガポールに進出している日系企業を訪問し、駐在員の方々
のお話を伺い、これまでの気持ちが変わりました。駐在員の方々は皆、海外で働くことにや
りがいや面白味を感じ、仕事を心から楽しんでいるようでした。事実、「みんなが今日より
明日のほうが良くなると信じている。活気がある国で働くのは前向きな気持ちで仕事がで
きて楽しい」
「最初はどうなることかと思ったが来てよかった」などとおっしゃっていまし
た。私もタイ・シンガポールの人々・国全体から発せられる活気に触れ視野が広がったこと
で今までの考えが覆されました。そして、駐在員の方の姿は私に非常に魅力的に映りました。
駐在員の方々は、言葉や文化の違いを超えて、企業や国ひいては世界をよくしていこうとし
ていらっしゃいました。その姿は、私がこれから働いていく中で何かのヒントをもたらして
くれるように思います。
2 つめは英語の必要性です。世界共通語である英語はコミュニケーション手段としてかね
てから必須だと言われ学んできました。しかし、私は、上述のようにグローバル化に対して
あまり実感がなく自分とは関係がないことだと思っていたため、英語に対してあまり危機
感を持っていませんでした。訪問企業の中には、英語で説明してくださった企業もありまし
た。丁寧にわかりやすく説明してくださったのである程度は聞き取ることができましたが、
聞き取ることができない個所も多々ありました。非常に貴重なお話をしてくださったので、
聞き取ることができなかったのはとてももったいなく感じました。また、チュラロンコン大
学や SMU の学生との交流においても、私の拙い英語にもかかわらず、各大学の学生ともに私
の伝えたいことを理解しようとしてくれたため、なんとかコミュニケーションをとること
はできましたが、英語力不足のために歯痒い思いをしました。もっと自分の思いを伝えたい、
より深く交流したい、相手のことを理解したいと思い、英語が話せることの必要性を痛感し
ました。英語の勉強を開始しようと思います。しかし、勉強するにあたって、手段の目的化
が起きないように気を付けなければなりません。つまり、コミュニケーション手段である英
語を話せるようになることが目的になってしまって、本来の目的であるコミュニケーショ
ンをうまくとることが置き去りにされてしまっては意味がないのです。タイトヨタの方が
「一番いいのは英語もできて仕事もできる、次にいいのは英語はできないけど仕事はできる、
最悪なのは英語はできるけど仕事はできない」だとおっしゃっていました。グローバル化時
17
代に求められるコミュニケーション・スキルは、英語ではありません。文字どおりコミュニ
ケーションそのもののスキルです。そこを取り違えないように注意しつつ、英語の学習に力
を入れていきたいと思います。
この研修旅行を通して、急成長するアジアの熱気・活気を肌で感じ取り、また、多くの日
本人が駐在員として海外で働いているという事実を目の当たりにし、グローバル化の波は
身近なところにまで確実に押し寄せてきていると改めて実感しました。これからは、広い視
野を持ち、もっと世界に目を向けていこうと思います。そして、日々精進し、残りの大学生
活を有意義なものにしていきたいと思います。最後に、このような二度と経験できないすば
らしい機会を与えてくださった、企業の皆様、佐野先生、一緒に行ったメンバー達、研修に
関わってくださったすべての方々に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
18
研修旅行を終えて
谷本 茂人
今回のグローバル研修旅行は非常に有意義なものであった。海外へ行くことが初めてで
あったので、見るものすべてが新しいもの尽くしで普段の生活よりも何倍も濃い時間を過
ごしたような気分になった。その中でも私が非常に印象に残ったことが 2 つ存在する。
1 つ目は、タイ・シンガポールと日本の違いである。移動中のバスから外の景色を見ると、
ビルの建設工事が絶え間なく進行し、中心街では人の活気がこれでもかと言うくらい伝わ
ってきた。私は日本の高度経済成長期を経験した世代ではないが、タイ・シンガポールでの
景色を見て、日本の昔の姿を見ているような気がした。そして、その活気はタイ・シンガポ
ールの学生にもしっかりと表れていた。彼らは活発でありながら、学問の話になるとしっか
り相手側の意見を聞いて積極的に質問していた。大学の中の雰囲気も若干違っており、タ
イ・シンガポールの方が学習するために大学があるという印象がより強かった。日本の世界
における学力が低下傾向にあるのも頷けるくらいだ。「よく遊び、よく学べ」と日本ではよ
く言われる。当然私も小学校のころから事あるたびに言われてきた。今思えば、タイ・シン
ガポールの学生こそ「よく遊び、よく学ぶ」人の典型例だと感じた。私は彼らとはかけ離れ
た不器用な人間で、これまではあこがれの対象として見ていたが、この研修旅行をきっかけ
に意識して彼らに近づいていこうと思うようになった。そして、今度は対等に関わることが
できればと感じた。
2 つ目は、海外において日本企業が頑張っている様である。タイでは自分の想像以上に日
本車が多く、シンガポールのビル群では日本企業の看板をいくつも見つけることができた。
さまざまな企業を訪問させていただいて、どの方も海外で働くことに対してすごく前向き
にとらえていたのが印象的であった。大変な部分も聞いたが、それ以上に活き活きと海外の
楽しさを気さくに語ってくださった。お話を聞くうちに、やはり視野は広く持っておいた方
がいいと実感した。日本で長く暮らしているとどうしても視野が日本だけになってしまい
がちだが、この研修旅行のおかげで自分の固定観念や内向き志向が幾分か是正されたよう
である。大学生になって初めて親から離れて 1 人暮らしを経験し行動範囲も広くなったが、
これから社会に出れば大学生以上に新しい経験が増え行動範囲もさらに広くなるだろう。
そうなれば、前向きな考えは余計必要となる。この経験を無駄にせず、自分の殻を破って成
長していきたいと感じた。
最後に、協賛してくださった企業の方々、佐野教授、大学の関係者の方々、8 人のメンバ
ーに感謝申し上げたい。本当にありがとうございました。
19
グローバル視察研修を終えて
中島 敦也
今回の視察研修では、グローバルにビジネスを展開している企業を訪問し、その現状や戦
略、現地スタッフとの関係の構築などについて学ぶことができた。また、タイでは
Chulalongkorn University、シンガポールでは Singapore Management University の学生
たちと、プレゼンテーションを通してディスカッションを行うとともに、会話や意見交換も
行い、大変楽しく有意義な時間を過ごした。その一方で、日本では経験できなかった異文化
社会での生活やコミュニケーションなど、新たな「発見」と「学び」の連続だった。それら
が今後の自分の可能性や選択肢を広げてくれたと確信している。
タイやシンガポールの日系企業の方々の講義から学んだことはとても多かった。特に、日
本とは異なる職場環境や企業文化などは、日本国内では学ぶことのできない貴重な体験だ
った。例えば、タイの国民性は日本人と似て優しい気質であるため、相手が忙しければ邪魔
をしないように気遣ってくれる。しかし、そのために、(特に都合の悪い)報告や連絡が早
く届かなくなる場合もあり、かえって問題が深刻化してしまう危険性もあるという。「グロ
ーバル」と言っても、国際的にビジネスを展開するには、やはり各国の歴史・文化・国民性
など社会的な事情とその背景に関する知識を持っていなければならない。それは裏を返せ
ば、その国や地域に対してどれだけ「ローカル」にマーケティングを進められるかというこ
とを意味している。まさに「グローカリゼーション(glocalization)」という言葉(造語)が
それを如実に表しているといえるだろう。
現地の大学生は、明確な目的を持って学業に取り組んでいた。ディスカッション後の交流
においても、彼らは自らの専門分野の奥深さについて熱く語りかけ、学問(専門性)に対す
る意識の高さが随所に感じられた。そんな中、私もがんばって自分の専門領域の一つである
ゲーム理論(Game Theory)について、現地の優秀な学生たちとかなり議論できたことは大変
有意義だった。今後も研究を深め、自分の軸となる学問的専門性をしっかり高めていきたい。
また、彼らとのやり取りの中で、異文化コミュニケーションの基本にも気づいた。それは、
相手と誠実に向き合い、文化的な違いを尊重しながら、互いに理解しようとする姿勢があれ
ば、友好的に意思が通じ合うというものである。
タイでは、2011 年の大洪水によって産業界も深刻な被害を受け、また同国は電子・自動
車部品等の主要供給国であるため、世界の供給網にも混乱が生じた。現地企業の方々のお話
によると、バンコク市内ではもう 8~9 割は復旧しているが、地方によってはまだ 5~6 割
程度という場合もあるという。タイは周辺諸国に比べ、道路や電力といった基本的な産業イ
ンフラが比較的整っていることが同国の経済発展の要因となっているため、その復旧と整
備は最も重要な事業の一つであることは間違いない。そのような状況の中、実際にインフラ
20
の限界といった面も感じられた。それはバンコク市内を中心に深刻化する渋滞である。私た
ちが宿泊していたホテルから約 5km先のレストランまでチャーターバスで 1 時間 30 分ほ
どもかかったのである。これでは人の移動ばかりでなく、産業にとって大切な物流にも影響
モ ー ダ ル
シ フ ト
が出ると言わざるを得ない。脆弱な鉄道の整備と合わせて(modal shiftの考え方とともに)、
今後の同国の課題であろう。
一方、シンガポールは、アジアにおけるビジネスの統括拠点としての地位が確立されつつ
あり、日本企業も金融・証券、商社、物流関連企業などの進出が活況を帯びてきた。現地視
察の印象としてもそれが明らかに感じられ、金融街には近代的な高層ビルが建ち並び、街を
行き交う多くの人々は(アジア系が多いながらも)活気のある多民族国家としての様相を呈
していた。そこで気になったのが、予想以上の物価の高さである。滞在当時シンガポール・
ドルの対円レートはS$1=78円台であったが、あるレストランで食べたトムヤンクンは14ド
ル。日本円に換算すると、1,100円程度になり、日本国内の相場と比べると割高感が否めな
い。実際に、シンガポールの消費者物価指数(CPI)の推移をみても、2009年を基準年として
2012年は113.1という数字が出ている。また、同国の不動産相場を左右するとまでいわれて
いる新富裕層の投機的売買や、彼らと一般市民との経済的格差の広がりが社会的問題にな
っていることも気になる動向である。
いずれにしても、製造業の生産拠点が中国からタイへ、そして金融・証券業のアジアの拠
点が香港からシンガポールへそれぞれシフトしつつあると考えられる。中国における経済
の不透明感や、日中間に潜在する地政学的なリスクなどを考慮すると、アジア戦略における
これまでの「中国プラスワン」という状況から、
「ASEAN+中国」という発想に変わってき
たといえるのではないだろうか。
以上のように、今回のタイ・シンガポールでの視察研修は大変充実した機会となった。今
後も諸外国の政治・経済、文化・社会的習慣などを謙虚に学びながら、国際的に活躍できる
社会人を目指して努力していきたい。最後に、ご協力いただいた企業の関係者の方々、ご指
導くださった佐野先生、そしてこの研修に参加した8人の素晴らしい仲間たちに対し、心か
ら感謝の気持ちを申し上げたい。本当にありがとうございました。
21
タイ・シンガポール研修旅行を振り返って
中村 直樹
今回のタイ・シンガポール視察研修旅行を通して、普段の生活では経験出来ない様々なこ
とを体験することが出来た。まずタイでは日本のような成熟国ではあまり感じることの出
来ない新興国ならではの街や人々の活気が印象的だった。バンコクの道路は車で溢れ、中心
部には高層ビルが立ち並んでおり、まさに現在進行形で国が発展しているということを肌
で感じることが出来た。またバンコクの人々や街全体に「明日は今日よりも良くなる」とい
う前向きな雰囲気が漂っており、現在の日本全体に漂う閉塞感とは対照的に感じた。しかし
一方でバンコクの街をよく見てみると高層ビルの眼下には未だに多くのスラムが残されて
おり、急速な経済発展の裏にある格差という問題も垣間見ることが出来た。次にタイで印象
的だったことはタイの国民性である。各企業への訪問やチュラロンコン大学での学生との
交流の際に感じたことであるが、タイの人々はみんな陽気で人懐っこくて非常に親しみや
すかった。特に「微笑みの国」と呼ばれるだけあって、タイの人々は笑顔がみんな素敵でこ
ちらの笑顔には必ず応えてくれた。このように相手のことを思いやり、調和を保とうという
意識が日本の国民性と似通っており、そのため日本人にとってタイの国民性というのが親
しみやすく感じるのではないかと思った。
次にシンガポールであるが、こちらはバンコクの異国情緒あふれる新旧混在した街並み
とはまた違っており、高層ビルが立ち並び、交通網も整備されている完全な都会であった。
シンガポールの街を歩いてみてまず初めに驚いたことが道路に落ち葉以外のゴミがまった
く落ちていないことであった。このようにシンガポールは国家による統制が全体に行き届
いており、バンコクの少しのんびりとした雰囲気とのギャップもあって少し息苦しく感じ
られる程であった。しかし企業を訪問して企業の方々からシンガポールでのビジネスの話
を聞くにつれて、シンガポールという国の凄さを痛感した。シンガポールは国全体で統制が
とれているため政府の機動力が高く、国のトップを先頭にビジネス環境を迅速に整えてき
た。その結果が現在のシンガポールの発展であり、あの小さな国のなかに様々なものが実に
効率よく配置されており、これが世界でもっとも先進的な国家の形であるのだと感銘を受
けた。そしてシンガポールのビジネスパーソンは誰もが最先端のビジネス環境に身を置い
ているという自負の下でエリートの雰囲気を纏っており、自分の仕事に誇りを持って仕事
をしているように見えた。
タイ・シンガポールという 2 か国を訪問してみて、日本にいては感じることのできない新
興国の活気や最先端ビジネスの雰囲気を肌で感じることが出来た。そしてこの経験を通し
て、自分も海外の活気あふれる土地で仕事をしてみたいと強く感じるようになった。しかし、
それと同時に海外で働くツールとして不可欠な「英語」の重要性も痛感した。タイ・シンガ
ポールで英語を介したコミュニケーションをとる機会がいくつかあったが、まだまだ自分
22
の実力では考えや思いをスムーズに相手に伝えることが出来なかった。ビジネスにおいて
は相手に対して自分や自分の会社のことをわかりやすく伝えることが基本となるので、そ
のためにもまずは英語力の上達が自分にとって必要であると強く感じた。また海外で働く
ということは海外のエリートたちとの競争に晒されることにもなるので、その競争に負け
ないように自分の能力を高める努力を怠らないことも必要であると感じた。今回のタイ・シ
ンガポール研修視察旅行という貴重な経験を無駄にせず、自分の成長の糧として生かして
いけるように今後も努力していきたいと思う。
最後に、この研修旅行を通じて我々を引率してくださった佐野教授、現地で訪問の機会を
与えてくださったプログラム協賛企業の方々、現地で我々を温かく迎えてくださったチュ
ラロンコン大学・SMU の先生、生徒の方々に心より感謝を申し上げます。またこの研修旅行
を通じて互いに支えあった8人の仲間との出会いにも心より感謝します。この研修旅行は
自分の今までの人生の中でも最も刺激的でかけがえのないものとなりました。この経験を
一生忘れることなく、これからの自分の人生において強みとしていきます。
23
海外視察研修旅行を終えて
武藤 雅樹
私にとって初めての海外経験となった今回の視察研修旅行は、大変刺激のあるものとな
りました。それは、学習面・生活面など多岐にわたるものです。まず初めに、今回の素晴ら
しい学びの機会を与えてくださった企業各方面の皆様や先生方、ともに研修旅行に赴いた 8
人のメンバー等多くの人の御蔭様で良き経験ができたこと、感謝申し上げたいと思います。
本当に有難うございました。
実際に海外での生活を短い間でも経験してみて、自信が持てた反面、反省すべき点を確認
することができたことは大変有意義でした。
前者については、自分が学んでいる会計学について英語を用いても海外の方と簡単なコ
ミュニケーションが取れたこと、チュラロンコン大学の学生と E-mail を用いて連絡を取り
合えるという環境を築けたことでした。学習というのは世界共通の楽しみであり、つながる
力を持ったものだと感じております。ビジネスの場において将来彼らと対等に渡り合い、プ
ライベートでも交流できることを楽しみの一つとすることができました。
一方、後者については大変多くの事があり、一つには知識量の無さであり、また一つには
各国の人々と比較してのコミュニケーション力の欠如が挙げられます。知識量の無さとい
うのは、主に企業訪問させていただいた時のお話の内容の理解度、各国の学生との交流にお
ける日本の説明力不足から感じられたことです。日頃それなりには知識を整理し、使えるよ
うには心がけているものの、一歩現場へと出るとそのうちのいくらかしか活用できていな
い自分に恥ずかしさも感じるほどです。また、各国の人々は、積極的にコミュニケーション
を取ろうとどんどん前に前にと出てくる姿勢が窺われました。国の発展にはやはりヒトの
力が重要であり、豊かになっていこうと懸命に努力する様がひしひしと感じられました。
世間で最近よく言われる「グローバル人材」という言葉について、一部では英語が絶対的
条件のように伝えられて他の面が見落とされがちでありますが、果たしてその考えは合っ
ているのでしょうか?否、そうではないでしょう。トヨタ自動車の方が仰せられた言葉を借
りれば、「英語と仕事ができる人は素晴らしい。英語はあまりでも仕事ができる人はまだよ
ろしい。しかし、仕事ができないのに英語だけできるものは駄目だ。
」というように、ビジ
ネスの場において必要とされるものについて我々日本人は今一度考えを改めるべきではな
いかと思われるのです。英語はあくまでもコミュニケーションをとるための道具であって、
重要なことは基礎として仕事に対して真摯に取り組み、他者に対して良い影響を与えてい
くことであると。海外の方は、ある人にとっては母国語が英語というのも要因の一つかもし
れませんが、そのあたりの事をよく理解しておられるのではないでしょうか。
世界の人々を見ると様々な刺激を受け、自身を見つめなおす切っ掛けにもなります。この
度での研修旅行でも、自身の現状について及び将来の事についてメンバーと軽く意見を言
い交す機会もありました。こうした経験を積み重ねていくことによって、「真グローバル人
24
材」となっていけるのだと振り返りあらためて思います。多くの人が同様の経験をして意識
をお互いに高めていける関係にあれば、これほど嬉しいことはないでしょう。
25
26
第2部
研修レポート
Toyota Tsusyo (Thailand) Co., Ltd.
Toyota Motor Thailand Co., Ltd.
Chulalongkorn University
DAIDO PDM (THAILAND) CO., LTD.
Thai Sintokogio Co., Ltd.
Nomura Singapore Limited
MITSUI & CO. (ASIA PACIFIC) PTE LTD.
PSA International Pte Ltd.
Singapore Management University
BROTHER INTERNATIONAL SINGAPORE PTE. LTD.
27
お世話になった皆様
Toyota Tsusyo (Thailand) Co., Ltd.
Executive Management Coordinator
Human Resource & General Affairs Department
門田 淳一様
Toyota Motor Thailand Co., Ltd.
Executive Managing Coordinator Samrong Plant
Executive Managing Coordinator Corporate Affairs Division
Senior Division Coordinator Corporate Planning Dept
Coordinator Plant Administration (SR) Dept
Coordinator Corporate Planning Dept
小曽根 弘様
岡村 忠明様
大槻 訓也様
古田 敏之様
西村 優 様
Chulalongkorn University
Dean, Assoc. Prof. Faculty of Economics
Chayodom Sabhasri, Ph.D.
Associate Dean, Assistant Professor of Economics
Somprawin Manprasert, Ph.D.
Assistant Dean, Faculty of Economics
Panutat Satchachai, Ph.D.
Faculty of Economics
Touchanun Komonpaisarn, Ph. D.
Faculty of Economics.
Nipit Wongpunya, Ph. D.
DAIDO PDM (THAILAND) CO., LTD.
General Manager of Factory
General Manager of Marketing & Technical Dept
General Manager of Sales & Marketing Dept
安藤 智彦様
森川 秀人様
瀧澤 祥一様
Thai Sintokogio Co., Ltd.
General Manager
Manager Sales Center
Manager Operation Center
28
芳賀 清 様
久納 達也様
望月 康明様
Nomura Singapore Limited
President/CEO
Associate Director of Wealth Management
縣 清志様
熊谷 恵太様
MITSUI & CO. (ASIA PACIFIC) PTE LTD.
General Manager, Singapore Branch
Manager/Economist Strategic Planning Dept, Planning Division
Manager of Strategic Planning Dept, Planning Division
村上 雄二様
新谷 大輔様
工藤 俊之様
PSA International Pte Ltd.
Senior Corporate Communications Executive
Mr. Marc Sim Kok Heng
Singapore Management University
Associate Professor, School of Law
Eugene TAN Kheng Boon
Head, Centre for Scholars’ Development
Ms. Ong Siying
Senior Assistant Manager, Centre for Scholars’ Development Ms. Phyllis Pang
Manager, Centre for Scholars’ Development
Ms. Sumathi Nair
BROTHER INTERNATIONAL SINGAPORE PTE. LTD.
Managing Director
Director
Regional Senior Marketing Manager
Regional Product Manger
Assistant Manager, Human Resources Dept
島津 武男様
藤本 智之様
平野憲之介様
宮川 克博様
Ms. Joyce Tan
29
豊田通商タイランド(Toyota Tsusho (Thailand) Co., Ltd.)での研修
中島 敦也
◆はじめに
今回の約 1 週間の視察研修旅行において、最初(9 月 12 日)に訪問させていただいた企業
Toyota
Tsusho
Thailand
が、バンコク市内のディンデーン区に位置する「豊田通商タイランド」だった。清潔感があ
り、設備も整っている研修室において講義を拝聴し、タイの「ローカル」な特徴と「グロー
バル」に展開する企業の実情について学んだ。また、昼食時には現地スタッフの方々と懇談
できる機会を設けていただき、大変貴重な体験をさせていただいた。その際、社員全員が、
出身国(地域)の言語や文化の垣根を越えて、
家族のような関係であることに感銘を受け
た。さらに、同社の社員の方々との交流の中
で、タイが急成長により、近い将来アジア経
h u b
済の「ハブ」としてそのトレンドを牽引する
potential
大きな潜在力 があることをあらためて認識
した。
◆講義の内容
講義の主な内容としては、以下のとおりである。
(1)タイの国の概況(人口、民族、宗教、国民性、政権、統治体制など)
経済指標(GDP、消費者物価指数、資本市場、利率、為替レート、輸出入額など)
(2)豊田通商タイランド(TTTC)について
会社概要(1957 年設立、従業員数 701 名〈NS:650 名、日本人駐在員:51 名〉)
取締役(9 名)、組織図および各事業部門の概要(金属、機械、生産部品・物流、化学、
食品・農作物、顧客製品・サービスの各部門について)
(3)豊田通商タイランド(TTTC)のグループ企業について
総従業員数 約 7,400 名(2013 年 8 月時点)
その分野は、倉庫、運送、鉄加工、タイヤ組立、部品の製造・取り付けなどに及ぶ。
(4)駐在員に求められること
5ヵ条:
「何のために働くのか、という自覚」、
「絶対にやってやるぞ、という気概」、
「グ
ローバルコミュニケーション力」、
「周囲を巻き込む動員力、人間性」
、
「national staff
(NS)に活躍の場を提供するマネジメント力」
上記の点について具体的なデータに基づいて考察し、タイの国の概況や経済指標を把握
するとともに、同社の組織力や事業の展開力の強大さを知ることができた。タイは約 6,440
30
万人という人口の 94.6%が仏教徒であり、親日的な国民感情を持つことから、日本との親
和性が感じられた。また、比較的安定したタイバーツ対円の為替レート(THB1=3 円台前半
を推移)や、堅調な GDP 成長率(2012 年:5.49%)(最新のデータではやや下方修正されてい
る)といった経済指標と合わせて考えると、製造業の生産拠点としてはもちろんのこと、マ
ーケットとしても今後魅力が増してくると思われる。
様々な産業界を支える「重要な黒子役」といったイメージを持っていた商社の業務は、実
際には商品開発から材料・素材の調達、製造設備の確保、工場進出地の選定、販路の開拓、
物流の整備に至るまで多岐に及び、その供給網づくりには予想以上のスケールの大きさと
きめ細かさを感じた。また、「駐在員に求められること」の5ヵ条は、グローバル人材に必
要不可欠な素養として特に心に残った。
「グローバルコミュニケーション力」というと、世間的には英語(外国語)が話せること
と思われがちかもしれないが(確かに国際的なビジネスではしっかりとした語学力が必要
であるが)、しかし本当に求められることはその先にある。すなわち、自分の考えや意見を
明確に伝達する論理的な説明力や、価値観や行動規範の違いの原因となる異文化(宗教や社
会的慣習など)の理解である。それらを習得するためには、やはり日常生活からそのような
意識を持って言動し、まさに人間力を磨くことが大切だと強く感じた。また、その培った人
間力を発揮することにより、しっかりとした人間関係が構築され、結果としてそれが「周囲
を巻き込む動員力、人間性」に結びつくのではないだろうか。
さらに、
「NS に活躍の場を提供するマネジメント力」についてだが、これは現地のスタッ
フ(NS)が活躍できるような仕事の機会を供与することを優先し、あえて自分は一歩引いた
立場から見守るという意味を表している。駐在員は、
(特に初めのうちは)NS と比較してそ
の業務の知識量が多いため、自分で仕事をこなしてしまう傾向があるという。しかし、自ら
が仕事を完結するのではなく、NS に仕事を教え、人材を育成することが重要なのである。
海外進出した企業にとって、現地スタッフの成長こそがビジネス成功の大きな鍵を握って
いるといえるだろう。また、このことが NS の士気を高めることにもつながり、企業イメー
ジにとってもプラスに働くのである。近年、タイの経済成長やグローバル企業の流入に伴い、
より良い賃金を求めて転職する NS が増えている(データによると、タイの製造業従業員の
平均賃金は中国と同レベルに達した)。そこでキーワードとなるのが、仕事に対するやりが
いである。人材の流出を防ぐためにも、NS の育成と職場環境の整備には力を入れなければ
ならない。NS と駐在員の間で良き信頼関係が構築されることにより、結果として現地の
人々と日系企業の両者に利益がもたらされることになるだろう。
◆グローバル人材の活用
豊田通商タイランドでは、vice president (VP)を日本人から自社で育成したタイ人に変
更するといった将来的な目標を掲げ、グローバル化に適応した人事の取り組みを行ってい
る。今回の研修でも、講義において NS の方に英語で説明していただいたばかりでなく、個
31
人的に昼食を共にした NS の方々とも交流を深めることができた。彼らはみんな生き生きと
した口調で自らの業務に向上心を持って取り組んでいることを語り、また日本や豊田通商
i
d
e
n
t
i
t
y
のアイデンティティを理解しようと真摯に努力している姿も印象的であった。さらに同社
では、マネージャークラスのグローバル人材の育成や登用を推進していることに加えて、上
司とのコミュニケーションの機会がしっかりと確保されているなど、行き届いた支援およ
び協力体制が形成されていると感じた。
◆おわりに
今回の豊田通商タイランドにおける研修では、講義を通じて同社のビジネスの現状につ
いて考察するとともに、現地スタッフの生の声を聞けたことが非常に貴重な体験となった。
また、タイと日本の文化的な類似・相違点に
も深い関心を持ったが、それらをしっかりと
理解した上で、コミュニケーションを図る大
切さも学んだ。やはり、日本国内において間
接的に調べるだけではなく、現地に赴き、自
らの肌で感じることができたことは大変有
意義であった。私は今回の研修により、海外
で働き、日本と現地の「橋渡し的」業務に従
事することで、社会貢献を果たしたいという
思いが一層強くなった。今後の学生生活では、経済学の専門知識を深めるとともに、国際教
養と語学力を身につけ、真の「国際人」を目指して努力を続けていきたい。末筆ながら、こ
のような貴重な機会を設けていただいた豊田通商タイランドの関係者の皆様に、心から感
謝の気持ちを申し上げたい。
32
トヨタ自動車(Toyota Motor Thailand Co., Ltd)
谷本 茂人

タイの自動車産業の推移
最初に担当の方からタイの自動車事情について講義をしていただいた。1997 年から 1998
年にかけてのアジア通貨危機によって、タイの自動車生産は減少した。続けて 2009 年にお
いても、リーマンショックで生産は減少した。しかし、2012 年タイで 30 万バーツ還元の減
税政策がとられたことにより生産規模が 2011 年比で約 2 倍になった。これによって、タイ
は自動車生産の世界トップ 10 に躍り出たそうである。自分自身もタイ人は日本人よりも自
動車に熱中していることを現地で実感した。また、各国の自動車保有割合を教えていただい
たのだが、それによるとタイは 8.5 人に 1 台である。私は最初意外に低い割合であるとい
う印象を受けた。実はこの数字には続きがあり、バンコクだけで見ると 2.2 人に 1 台に上
昇するのである。私たちはタイ一番の都市バンコクに滞在していたので、自動車社会が進ん
でいるとなおさら思ったのである。実際に、生産された自動車の 44%がバンコクで売れて
いるらしい。
今回訪問させていただいたタイトヨタはタイの自動車シェア第 1 位の非常に有名な企業
である。道路を走っている自動車のエンブレムを確認してもやはりトヨタのものが多かっ
たと感じた。しかし、近年では他社の参入も激しくなっており、2012 年のトヨタはトップ
であることは変わらないがシェアは前年より低下した。その理由の 1 つとして、トヨタは先
ほど述べた 30 万バーツ還元の減税政策を反映した 1.3ℓ自動車をまだ生産していないから
である。他社はほとんど 1.3ℓ自動車を生産しているのにトヨタだけ政策に合わせなかった
のはなぜか。それは、リスク・リターンを考えたうえで今生産すべきではないと判断したか
ら、と担当の方がおっしゃっていた。言われてみれば確かに当たり前のことだが、単純にメ
リットがあるだけで新しく生産したりしないのが企業なのだと実感した。他社と比較して
自社はどの立ち位置にいるのか。タイトヨタについて言えばトップであるから、新規市場開
拓者のようにチャレンジングな行動を必ずしも必要としない。そういった他社との駆け引
きのお話がこの講義で聞くことができ非常に興味深かった。

工場見学
この研修旅行に行く前に事前学習としてトヨタの
高岡工場を見てきたのだが、タイと日本両方を見学
して共通する部分もあれば違った部分もあった。一
番驚いたのが、タイのサムロン工場のタクトタイ
ム、つまり 1 台生産するのにかかる時間が 55 秒で
世界最速であるということである。トヨタは日本発
33
の企業であるから当然タクトタイムについても日本の工場が最も早いのではと思い込んで
いて、まさかタイの工場がそうであるとは全く思っていなかった。それだけトヨタの技術力
が国境を越えてもうまく伝達できているということなのかと感じた。実際に、タイの工場の
従業員に対する教育もしっかりとされていて、聞いたところによると、1 週間で基本技能を
覚えさせそこでの習熟度によって作業の複雑な工程から簡単な工程へと振り分けていくよ
うである。そしてプラス 3 週間の教育で実際のラインで働ける人材が生まれるのである。ま
た、タイトヨタの工場はタクトタイム世界最速であるばかりでなく、安全性・品質も高く不
良品も少ないそうである。早くて、品質も良い。片方だけ極めるのは簡単でも、スピード・
安全性の 2 つを高レベルに上げるのは至難の業である。品質が良く、万が一故障してもすぐ
に対応できる体制が整っているから、タイトヨタの顧客満足度が高いのだと実感した。

自動車におけるタイと日本の違い
タイと日本の自動車はベーシックな部分は全く変わらないが、細かい部分についてタイ
人と日本人の嗜好の違いが現れるようである。例えば、タイ人は光るものが好きらしく、車
にも蛍光系の装飾が日本よりも付くそうである。日本の一部の若者が自家用車を自分でカ
スタマイズするのと似ているとおっしゃっていた。確かに最近の日本人は車に興味を持た
ないという。さらに、経済の状態もアベノミクス効果があるとはいえ、これからどうなるか
は見当もつかない。日本をマイナスとするとタイは完全にプラスだ。タイは今かつての日本
のごとく高度経済成長の真っ盛りである。街は活気にあふれ、みなが今日は明日より良くな
ると思っているのであろう。車のデザインひとつとってもそこには景気が反映されている
と感じた。プラスとマイナスがくっつくように、日本とタイのような成長著しい国が繋がり
あって、日本にいい化学反応をもたらしてはくれないかと思うばかりである。

学んだこと
まず今回の工場見学のために小曽根さんをはじめとした社員の方々が貴重な時間を作っ
てくださったことに感謝申し上げたい。学ぶことが多かった工場見学のなかで、これから社
会に出ていく私たちに向けて忘れもしない言葉をいただいた。それは、海外などの高いステ
ージであろうと結局仕事のできるやつならやっていける、という助言である。下の表は海外
で必要とされるスキルをまとめたものである。
当然、1 番良いのは仕事力もあり語学力もある人材だ。ただ、意外なのは 3 位に仕事も語学
もできない人材が入っていることである。普通の人なら、どちらもできない人より語学がで
34
きる人の方が良い、と感じるに違いない。実際、私も当初はそう思っていた。しかし、担当
の方が思うには、語学しかできない人はそもそも仕事を本当に理解してないから間違った
情報を部下や上司に流してしまい、その会社を悪くしてしまう。仕事も語学もできない人材
は、逆に変なことを伝えるほどの語学力がないから、その会社の現状より悪くしてしまうこ
とはない。この発想は自分にはなかったのでかなり新鮮だった。これまで、海外で勤務する
ため前提条件として語学力が必須だと思っていたが、今回のお話で、重要なのは仕事がどれ
だけできるかということだと実感した。英語は世界のビジネスツールとされるが、それ以上
に仕事力は万国共通であることを感じた。つまり、仕事ができる人に語学力も付けば完璧な
ビジネスマンになるということである。この言葉を忘れることなく、これからの人生を送っ
ていきたい。
35
Chulalongkorn University
阿部
優
●概要
3 日目に行われたチュラロンコン大学訪問では、英語でのプレゼンテーション、将来国や世
界をリードするであろう学生との交流など、非常に刺激的な体験をすることができた。島国
で単一民族国家である日本では海外の学生とコミュニケーションをとる機会はそう多くは
ない。しかしグローバル化の進む今日においては、異なる言語や文化を持つ人々とコミュニ
ケーションをとることは避けては通れず非常に重要なスキルである。それは単なる英語能
力ではない。総合的なグローバルコミュケーション能力を磨き実践する機会として、タイの
トップ校であるチュラロンコン大学への訪問は貴重な経験となった。ここではその詳細を
報告する。
●プレゼンテーション
最初に簡単なチュラロンコン大学の紹介の
がされたあと、私たち名古屋大学の学生9
名のうち4名が「農業分野におけるタイと
日本との将来的な関係」というテーマでプ
レゼンテーションを行った。増え続ける世
界人口の中で食糧の確保は差し迫った課題
である。気候や土地の観点から農業にアド
バンテージを持つタイの農業の問題点を指
摘し、そのソリューションを提案した。また、
それによる日本や世界の食糧の安定供給な
どのメリットを示した。詳しい内容はプレゼンテーション発表資料のページをご覧頂きた
い。
このプレゼンテーションは夏休み開始直後から多くの時間を割いて準備を重ねてきた。テ
ーマに関する知識不足や、慣れない英語でのプレゼンテーションということもあり非常に
苦労は多かった。しかしデータ集めとその分析のサイクルの中で少しずつ形が見え始め、最
終的には自信を持って発表できるプレゼンをつくり上げることができた。最初は着地点の
見えないようなテーマでもデータ集めと仲間との協力により、これだけのプレゼンテーシ
ョンを作り上げられたことは大きな自信となった。まずは協力して共にプレゼンテーショ
ンを作り上げた仲間に感謝したい。
本番の発表でも皆緊張することなく、自信を持って発表することができた。しかし質疑応答
のセクションでは苦労した。「私たちは食料自給率に馴染みがないが、どのように計算して
いるのか」、
「日本で農業に導入されている IT テクノロジーにはどのようなものがあり、そ
36
れはタイにおいても導入することができるのか」という質問など、チュラロンコン大学の教
授陣や学生たちから次々と質問が上がった。日本語で説明するのでさえも難しいような内
容について英語で回答するのには非常に苦労した。ただ、拙い英語や図を用いることで何と
か意見を伝えることができた。これは自信になったのと同時に、英語能力の未熟さに悔しい
思いを強く抱いた。この悔しさを残りの学生生活を過ごす上での原動力にしたい。
●学生との交流
プレゼンテーション、質疑応答のあ
とは教授や学生とフリーに交流を
した。特に学生との会話は非常に刺
激的であった。ある学生は将来の夢
について自分自身で会社を設立し
たいと言っていた。またそのために
海外の大学で学ぼうと考えている
ことも話してくれた。なぜ自分で会
社を設立したいのか尋ね
ると、そのほうが儲かるからと即答された。短い会話ではあったが、確固たる自分の考えを
自信に満ちた表情で発言していることに感心した。それと同時に、いわば殻にこもっている
ような自分の考え方を改めるきっかけとなった。この時間に交流した学生の一部とは帰国
後も連絡をとり合っている。その他、教授とは日本を訪れた際の様子のお話をするなど、楽
しくも実りのある時間を過ごすことができた。
●まとめ
チュラロンコン大学ではプレゼンテーションや交流のほか、キャンパスツアーやタイ料理
のランチなど楽しい時間を過ごすことができた。発展さなかにあるタイのトップ校で学ぶ
いきいきとした学生の表情や、主体的に学ぼうとする意欲や環境など、全てが新鮮で刺激的
な経験となった。単に英語を話せることがグローバルなコミュニケーション能力ではなく、
相手のことを理解しようとし、自分の意見を分かりやすく伝えようとする気持ちを持つこ
とがグローバルなコミュニケーション能力なのではないかということを考えた。その手段
が日本であれば日本語、グローバルな場面であれば英語に変わるだけである。しかしながら
グローバルな場面において英語は切り離すことができず、英語の能力の向上はコミュニケ
ーションを円滑にする上で非常に重要である。またその重要性は、ビジネスの場面では特に
重要になるだろう。この大学訪問を単なる刺激的な経験として終わらせるのではなく、これ
からの大学生活や将来仕事をする上での原動力に変えていきたい。
最後に、このような素晴らしい機会を設けてくださった関係者の方々にお礼を申し上げた
い。
37
38
タイ・シンガポール研修視察旅行
大同特殊鋼
中村 直樹
【タイ国の概要・事業説明】
大同特殊鋼への訪問の際には、まず初めにタイ国の概要の説明を受けた。その中ではタイ
の国民性やタイでの生活についての興味深い話をしていただいた。特にタイでの物価につ
いては、身近な生活必需品などを例に用いてわかりやすく説明していただきとても参考に
なった。次にタイでの自動車産業の状況と会社事業の説明をしていただいた。タイはアジア
のデトロイトと呼ばれるほど自動車産業が発達していて、特に日系企業の進出が進んでい
ることが特徴に挙げられていた。またタイでは BOI(タイ投資委員会)が海外企業の進出を奨
励しており、近年ではエコカー奨励政策などが計画されていることも自動車産業にとって
追い風となっているとのことであった。次に大同特殊鋼タイ法人の業績についてだが、タイ
国内での業績は 2011 年の洪水被害を除けば右肩上がりで好調であった。そのため生産能力
増強のために人員の確保が必要となっておりここ数年での現地スタッフ数は急激に増加し
ており、タイのような新興国のビジネスにおいては人材の確保を含めてスピード感が求め
られるものなのだと感心させられた。
【工場見学】
次に工場内を見学させていただいた。鋼材の工場というと大きな作業用機械がいくつも
あって、鉄を加工する音で騒がしいところだとイメージしていたが、実際は意外と静かで整
えられたきれいな工場であったので少し驚いた。作業は手作業によるものが多く、現地のス
タッフを採用して技術指導するまでの流れなども説明していただいた。また作業工程の見
学の最後には完成した部品も見させていただいた。これらの部品が一つでも欠けると自動
車などの最終製品は完成されないという話を聞き、他の産業を縁の下で支える素材メーカ
ーの重要性を強く感じた。
【現地スタッフとの交流】
工場見学のあとには現地スタッフとの交
流の場も提供していただいた。タイの国民は
陽気で親和性がある民族であると説明を受
けていたが、実際に交流をしてみてまさにそ
の通りだと感じた。タイの人々にも日本人の
ような「おもてなしの心」があり、また「微
笑みの国」と呼ばれるようにどの方も笑顔が
素敵なのが印象的だった。その中でも、日本
39
人スタッフと現地スタッフの方たちがとても打ち解けていて、互いに冗談を言ったりニッ
クネームをつけて呼び合ったりして強い信頼関係を結んでいることが何よりも印象的だっ
た。
【感想・まとめ】
今回の企業訪問ではタイ国の概要や自動車産
業、そして素材メーカーの重要性について工場
見学などの実際の体験を通して詳しく学ぶこ
とが出来た。またタイの方々との交流の場を提
供していただいたことによってタイの国民性
を肌で感じることが出来るとても良い経験に
なった。タイの
人々はみんな陽気で人当たりが良く日本人にとってとても馴染みやすい国民性を備えてい
ると感じた。また訪問した最初の段階で現地スタッフの方々が部屋の前で出迎えてくれた
ことにはとても感動した。タイの方には日本人と同じように「おもてなしの心」が備わって
おり、このことも日本人がタイに親しみを持てる一つの理由であるのではないかと感じた。
40
新東工業
棚橋 美月

会社概要
タイ新東工業は自動車部品製造に関わるお客様へのメン
テナンス、設備据付、部品及び機械販売の提供を目的とし、
1996 年に設立されました。2013 年 1 月時点で 65 人の従業
員が働いています。タイ人スタッフの製造スキルと日本人エ
ンジニアの技術力が 1 つになり、競合との差別化、質の高い
サービスが提供することを目指しています。2013 年には、
ASEAN 市場の重要な製造のハブとしての役割を果たすため、
新たな工場もでき、さらなる発展を遂げています。

会食
チュラロンコン大学で学生たちと交流し、大同特殊
鋼の工場を見学させていただいた後、新東工業の方 4
人と会食をご一緒させていただきました。新東工業の
方々は温かい笑顔で迎えて下さり、和やかな雰囲気で
会食はスタートしました。美味しいタイ料理に舌鼓を
打ちながら、為になるありがたいお話から楽しい雑談
まで幅広く会話し、楽しいひと時を過ごさせて頂きま
した。新東工業の方とのお話の中で印象に残ったの
は、表情がいきいきとして楽しそうに仕事をされてい
るということです。タイは 1980 年代後半から工業製
品の輸入などにより経済成長を遂げ ASEAN 諸国への
輸出拠点として、低い失業率の下、発展を続けていま
す。このような急激な成長を遂げているタイで働くこ
とは楽しく、刺激的でやりがいを感じるとおっしゃっていました。活気に加え、私はそのよ
うに楽しく働けることはタイの国民性によるところもあると思いました。これは新東工業
の方々だけでなく他の多くの企業の方もおっしゃっていたことですが、タイは微笑みの国
と言われるほど、ホスピタリティがあって、正直で親しみやすい国民性です。日本人と似て
いてシャイなところもありますが、とても優しいです。新東工業の方も「タイでの生活は快
適で日本と変わらない」とおっしゃっており、そのような国民性がタイでの仕事を楽しくし、
雰囲気の良い職場につながっていくのではないかと思いました。
新東工業の方とは学生生活の過ごし方の話に花が咲きました。学生時代には勉強したり
41
海外に出ることが大切で、アルバイトで学生生
活を終わりにしてしまうのはもったいないとお
しゃっていました。金銭的な理由でアルバイト
をしなければいけないなら、奨学金などを利用
すればよく、アルバイトをするよりも奨学金を
利用して勉強をしたり海外に出ることのほうが
ずっと価値があることだともおっしゃっていま
した。今回の研修旅行で、急成長するアジアの
勢いを体感することができ、日本や自分自身に
ついて今一度深く考える機会となり、海外に出ていくことの大切さを私自身実感しました。
また、英語や自らの専門分野についてさらに学ばなければならないということに気づかさ
れました。就職活動が終わってからの過ごし方が大事になると思います。バイトするもよし
遊ぶのもよしですが、勉強したり海外に出たりして経験を積みことにこれからの時間を使
っていきたいと思います。

最後に
新東工業の方の温かさ、雰囲気の良さのおかげで、楽しく有意義な時間を過ごすことができ
ました。改まった席では聞くことができないような、海外で働くことについての率直な質問
に答えてくださり、人生の先輩としてのアドバイスもしてくださいました。また、新東工業
の方のお話を伺って、海外で働くことの魅力が高まりました。次回はぜひ実際の生産現場も
見学させていただけたらと思います。このような貴重な機会を設けてくださった新東工業
の方々に感謝申し上げます。ありがとうございました。
42
野村証券
岩田 美咲
■シンガポールと金融
ご講義の初めに、シンガポールという国についてと、その金融が絡んだ政策について伺っ
た。シンガポールは東京が抜かされてしまうかもしれないというほど重要なハブ拠点であ
り、東南アジアで最も成功した国だと言える。その背景の一つに、税制上のメリットがある。
法人税は安く、相続税・贈与税はない。キャピタルゲインにも課税はないため、株取引を行
う個人・法人にとってはとても魅力的な国だ。
ご講義の中で印象に残ったのは、
「シンガポールはアメとムチの使い方が上手い」と言わ
れたことだ。いいなと思った企業には基本的な税制優遇から更に優遇措置がとられること
もある一方、規制は日本よりも大変厳しいそうだ。国土が狭く、資源も乏しいシンガポール
がここまで発展できたのは、そのような政府の臨機応変な政策が功を奏しているのだと思
った。
■日本企業のグローバル化
私は初め、海外に派遣される日本人は増えてきており、十分なくらいなのではないかと思
っていた。しかし、シンガポールに派遣されている日本人は 3%であり、更なる企業のロー
カル化のためにももっとシンガポールに派遣したいと考えているそうだ。やはり若いうち
から外国に慣れなければならず、「グローバル人材」の育成が大切である。
「日本とグローバルをつなげる事業をしたい」というお言葉にあった通り、野村証券だけ
でなく、様々な企業がグローバル化を進めていくだろう。グローバル化をする上でのメリッ
トは、上でも述べたように、日本では得られないローカルのお客さんとのコミュニケーショ
ンであり、一方でデメリットは本社とのコミュニケーションがとりにくい、英語が必須だと
いうお話を聞いた。そのようなデメリットを抱えながらもグローバル化が進んでいく時代
に生きていく私たちは、やはり英語力
が求められているし、現地のお客さん
との良好な関係を築くため、その国の
文化や価値観、政治や法律も理解して
いくことが大切だと思った。
→野村証券のオフィスビル。とてもき
れいな建物で、様々な国の人たちが働
いていた。
43
■ディーリングルーム
野村証券を訪問した日がちょうど日本では敬老の日であったため、残念ながら活発な取
引を見ることはできなかった。しかし、部屋いっぱいに並べられたデスクの上に株取引のモ
ニター画面が所狭しと置かれており、平日の取引が想像できた。日本とシンガポールでは 1
時間の時差があるため、それに合わせてシンガポールでは 1 時間早く取引が始まり、1 時間
早く終わるのだそうだ。
■感想
今回のご講義は、金融という面はもちろん、金融を含んだシンガポールの政策について考
えるきっかけとなった。相続税や贈与税など、あらゆる税金が課されていないことに驚いた
が、どうしてこのような大胆な政策が行われうるのかというと、その理由の一つに長期同政
権があるのではないかと思う。日本は、総理大臣の交代が約 1 年ごとに起き、この 5 年間で
2 度の政権交代を経験した。もちろん国民がノーを政権に突きつける機会は必要だが、国民
の顔色を窺いながらの政治では思い切ったことができないし、あまりに短期の政権交代で
は長期的なビジョンで政治に取り組みにくくなる。慣習や価値観の面から、シンガポールの
ような政治が必ずしも理想的かと言われればそういうわけでもないだろうが、これだけの
発展を可能にした政策から学ぶべき点は多いと思う。
また、シンガポールをはじめとしたアジアの国々がこれからどのように発展していくか
がとても気になった。経済発展の段階として、まず銀行が企業にお金を貸し、それから資本
市場ができていき証券業が活躍する段階になるというが、そのような資本市場が整備され
るだろう国々がアジアにはまだたくさんある。発展にはまだまだ時間がかかるそうで、その
発展の一端を私たち世代が担っていくことになる。今回の研修で得たグローバルな視点で、
今後の展開を見ていきたいと思う。
44
45
三井物産
河合
直哉
武藤
雅樹
■概要
・1876 年日本初の総合商社として、旧三井物産設立
・1947 年 GHQ の解散指令により、旧三井物産を解散し、現在の三井物産を設立
・67 カ国/地域に 148 の事業所を持つ
・資本金約 3400 億円、当期純利益約 3000 億円、総資産約 10.3 兆円
・従業員数 6000 人(連結従業員数約 45000 人)
・2006 年 4 月より、海外市場を「米州」、
「欧州・中東・アフリカ」、
「アジア・太洋州」に分
け、地域毎に独立性を持たせた「海外三極地域本部制」を導入
・主な事業内容…鉄鋼製品、金属資源プロジェクト機械・輸送システム、化学品、エネルギ
ー、食糧、食品事業、コンシューマーサービス、次世代・機能推進の各分野において、全世
界に広がる営業拠点とネットワーク、情報力などを活かし、多種多様な商品販売とそれを支
えるロジスティクス、ファイナンス、更には国際的なプロジェクト案件の構築など、各種事
業を多角的に展開。
■シンガポール支店
今回私達が訪問させて頂いた三井物産シンガポール支店は、1891 年に旧三井物産シンガポ
ール駐在員事務所として設立され、2013 年 7 月 1 日現在では 283 名のスタッフと 13 の関係
会社を持つ会社です。今回私達は、アジア・大洋州本部の事業概要と三井物産戦略研究所に
よるご講義を受け、その後現地職員の方々と一緒に昼食を取りながらコミュニケーション
を取らせて頂きました。
46
■グローバル化の中でのシンガポール
シンガポールは人口約 520 万人、その内の約 200 万人が移民という特殊な国家です。マ
レー半島の先端に位置し、マレーシア国境までは車で約 30 分という非常に近い距離にあり、
マレーシア、タイへの交通が可能です。そのため、両国へ毎日のように国境を越えて通勤し
ている人も少なくありません。シンガポールに本社を置く企業は、アジアの中では最低レベ
ルである法人税、シンガポールが 50 以上の国と締結している租税条約、シンガポールが
多くの国々と結んでいる自由貿易協定(FTA)および 多くの国と合意している投資保証協定
のメリット等、様々な恩恵を享受しています。これらの FTA 締結により、シンガポールは
世界の GDP の少なくとも 60% に相当する国々とのネットワーク構築を実現しました。ま
た、シンガポールの強力な知的財産法の厳格な施行により、企業は常に自社のアイデアや技
術革新が確実に保護されています。更に、公用語が英語だということがシンガポールという
国を際だたせています。グローバル企業として世界で戦うために必須と言っても過言では
ない英語を国民がみんな使うことが出来るというのは、非常に大きなアドバンテージとな
っています。
■これからの日本
現在日本企業の直面している課題の克服は容易ではありません。しかし、法人税等のいわゆ
る六重苦の解決を他人任せに待つこともできません。だからといって、グローバルな事業の
成長なくして未来がないのも明らかです。その中で、成功の鍵はグローバル化を断固進める
というリーダーシップにあると私は思います。グローバル化を進める際に、どんな企業でも
正しい絶対の答えはありません。そのため、まずリーダーが自分自身を信じ、自社独自の正
解を出すことが重要になります。グローバル化の正解がなんであろうとも、現在の停滞して
いる状況からは変革なくして事業成長は起こりません。六重苦を業績不振の言い訳にせず、
グローバルな事業成長を目指して行動を起こせるかどうかが、これからの日本経済の未来
を切り拓いていく鍵になると私は思います。
47
48
PSA Corporation Ltd
武藤 雅樹
はじめに
今回の視察研修旅行において、我々一同は PSA Corporation Ltd に伺わせていただいた。
同社は、運輸通信省(現在は運輸省)管轄下のシンガポール港湾庁(Port of Singapore
Authority)から、港湾ターミナル・付帯施設等の運営及び関連事業等部門を引き継ぎ、政府
が資本の全てを保有の下、1997 年に企業化し発足したものである(現在は政府系投資会社
テマセク・ホールディングが全ての株式を保有)。積極的に海外展開を図っており、身近な
ところでは、北九州港ひびきコンテナ・ターミナルに世界的メガターミナルオペレーターと
して日本港湾の運営に初の資本参入を行った。
シンガポールのコンテナ・ターミナルには、PSA 社が運営する PSA ターミナル(4地
域)とジュロン公社が運営するジュロンターミナル(1地域)があるが、うち、PSA ター
ミナル(4地域)が全取扱量の 99%を占める(現在コンテナ取扱容量 35 百万 TEU1)。実際
にマイクロバスに乗り見学させていただいたが、広大な敷地、数多くのコンテナ・クレー
ン等、それらは我々に非常に大きなインパクトを与えた。また、コンテナの側面には世界
各国企業のネームが数多く書かれているのが確認できた。取扱量の 8 割以上が自国ではな
く海外向けということがよく分かり、貿易の中継拠点としての役割を担ってきたシンガポ
ールは今なお健在、いや発展し続けている姿に感銘を受けた。
最先端技術活用
アジア最大級のハブ港2として、1980 年代後半から港湾業務の IT インフラ化を進め、利
便性の高い港づくりに力を入れている。
中央制御室による集中管理により、生産管理において重要な役割を担うコンピュータシ
1
TEU(Twenty-foot equivalent unit 長さ 20 フィート(約 6.1m)コンテナ換算)はコンテナ船の積載能力やコ
ンテナ・ターミナルの貨物取扱量を表す単位。FTU(Forty-foot equivalent unit = 2TEU)という単位もあ
る。
2
ネットワークの中核を担う港。放射線状の航路網を車輪のスポークに見立てると、港部分が車軸(ハブ)
にあたるため、ハブ港と呼ぶ。ハブ空港などと同様。
49
ステム CITOS®、9200 もの統合利用者に役立ち、年間 210 百万もの取引を容易にする世界初
の船舶企業間電子商取引システム
PORTNET®、陸上運送業者が世界最速の 25 秒で通過する
ことができるようになったペーパーレス・フロースルー・ゲートシステムといった数多くの
システム導入により、世界を相手にできる港へと成長を遂げた。その成果は、2005 年以降 8
年間“Best Global Container Terminal Operating Company”に選出されていることなど
から明らかであろう。
(IT インフラについてより詳しくは参照を確認していただきたい)
シンガポールという国とこれからを考えて
シンガポールは東京 23 区に匹敵するほどの小さな島国(近年埋め立てが進み、面積は拡
大中)であるが、自国領土の狭さという弱みを物ともせず、むしろ知識集約的な戦略で世界
と対等に渡り合おうとしている。それには人的資源の最適活用、緻密な計算による税制改革
など多岐にわたる。港湾業務も例外でなく、先に述べた IT インフラ化推進、補助金政策、
コンテナ・ターミナルの建設方法(大型
船舶の事を考慮した straight line)な
ど、日本も見習うべき点が多くあるよ
うに感じる。
港湾事業は今もなお拡大を続け、近年
新たにセントーサ島より西部でバース3
増設により 50 百万 TEU、さらに 30~40
年後には 65 百万 TEU と取扱量の目標を
掲げていると伺った。
(右図は PASIR PANJANG のフェーズ3,フェーズ4として、16バース増設予定の場所。取
扱容量 14 百万 TEU(40%拡大))。前項 LAYOUT 上、赤で位置表示。)
現在は中国・上海港に取扱量で抜かれ全世界では 2 位となっているシンガポール港であ
るが、PSA の更なる活躍により世界一の座を奪還するのも夢でない。対して、日本は以前の
面影は感じられず、5大港(東京、横浜、名古屋、神戸、大阪)の合計を見ても 13.7 百万
TEU(2011)と大きく世界と差をつけられている状態が続く。かつて、日本は東南アジアに
とって模倣の対象となりえたが、現在はシンガポール港に代表されるように、日本が学ぶと
ころが多いのではないだろうか。
参照:http://www.mlit.go.jp/common/000999892.pdf
http://www.mlit.go.jp/kowan/minatodayori/47/18.pdf
3
船舶を係留できる施設を施した所定の停泊場所。一般的には「船席」と称されている。
50
Singapore Management University (SMU)
竹林 佳澄

はじめに
SMU は 2000 年に創立された非常に新しい大学であり、シンガポールの中心部に位置す
る。6 つの学部で構成され、約 8000 名の生徒が所属している。今回の視察旅行では最終日
の日程であり、プレゼンテーション、現地学生との交流などを控え大きな期待、そして
少々の不安を抱きながらの訪問であった。ここでは SMU 訪問において私たちがどのような
ことを体験し、そして何を感じたのかについて報告したい。

学生によるプレゼンテーション
ディスカッションルームへ案内されると、互いの大学の学生が対面した。それぞれ簡単
に自己紹介をしたが、SMU の学生はニコニコと挨拶をし、こちらの自己紹介も笑顔で聞
き、名古屋大学の学生を迎えてくださった。
自己紹介でいくらか緊張感がやわらいだところで、SMU の学生の1人がプレゼンテーシ
ョンを行ってくださった。シンガポールの概要についての内容であり、地理や宗教など学
問的な内容から、シンガポールのローカルフードの紹介まで全体的なことを説明していた
だいた。
そして私たち名古屋大学からのプレゼンテーションへと進む。日本のエネルギー問題に
ついて取り上げた。シンガポールも日本と同じくエネルギー資源に乏しい国であることを
挙げ、互いに真剣に取り組むべき課題であることを提示。化石燃料に頼らない新エネルギ
ーも開発されているが、実用性について難があり、現状でも新エネルギーによる電力はわ
ずか数パーセントにとどまる。また、福島の原発事故以来、原子力エネルギーに頼ること
もできなくなり、新たなエネルギー政策が急務となっているのが実情である。SMU の学
生、教授もエネルギー問題の重要性、そして解決困難性について同様に感じられたよう
だ。地理、天候などの点を考慮し、それぞれの国に合った新エネルギーが必要であるとい
った意見をいただいた。また、SMU の学生から、東日本大震災を経て、エネルギー問題に
関して私たちの実生活に影響はあったのかという質問を受けた。やはり日本の震災につい
51
てはシンガポールの学生も関心があるようだ。実際に日本で生活している私達が感じてい
ることに興味を持ってくれた。SMU の教授、学生は第二言語としての英語で行った私たち
のプレゼンテーションを温かく労ってくださった。

キャンパスツアーと昼食
プレゼンテーションの後、SMU の
アンバサダーをしている学生がキャ
ンパスツアーへ私達を案内してくだ
さった。地下やジム、キャンパス内
のガーデン、図書館などの紹介を受
けた。SMU のキャンパスは地下で
MRT(シンガポールの地下鉄)と連
結しており、地下には一般客も多
く、フードコートやショップが並び
街中に位置するキャンパスならでは
のにぎわいが感じられた。
キャンパス内のガーデンへ行くと左右にシンガポール国立博
物館と、シンガポールアートミュージアムが見えた。アートミュージアムは夜ライトアッ
プされ、とても美しいという。
キャンパスツアーの後は街中の地元料理店での昼食へ案内していただいた。シンガポー
ルの有名なローカルフードであるチキンライスを食べながら学生との交流をすることがで
きた。

SMU 訪問を終えて感じたこと
SMU 訪問を振り返って最も感じることは、国籍の違う学生との交流に臆する必要はな
い、自分の英語の拙さを理由に消極的になることは非常にもったいないということであ
る。同じ年代である学生とは驚くほどすぐに打ち解けることができる。シンガポールの学
生は日本について、私たちの日本での生活にとても興味を持って話しかけてくれ、また私
たちが話すことに真剣に耳を傾けてくれる。私が文法などまるで合っていないたどたどし
い英語で話しても一言一言頷きながら笑顔で聞いてくれる。もちろんグローバルなビジネ
スにおいては流暢な英語は必須であるが、コミュニケーションの第一歩として肝心なこと
は相手に興味を持って接すること、そして相手を受け入れることであると感じた。SMU の
学生との会話は、一つ一つが自分との文化、考え方の違いに気付かせ、また反対に同じ部
分を見いだせるものであった。このように非常に新鮮であり、面白みを感じることができ
る交流はとても貴重な体験になったと感じている。今回の訪問での交流はごく短い間では
あったが、学生との交流に限らず、自分と違う環境にいる人々と交流し、互いを知ること
の面白さに気付き、これからはもっと積極的に外の世界へ目を向けたいという意識を持つ
52
ことができた。最後になったが、私たちを温かく迎えてくださったシンガポール・マネジ
メント大学の教授、学生、関係者の皆様に心から感謝を申し上げたい。
53
ブラザー工業
岩田 美咲
今回、ブラザー工業では会社の概要についてのプレゼンテーションやオフィス見学、また
現地の電器店で案内をしていただいた。さらに、その後社員の方との交流の場を設けていた
だき、楽しいシンガポール最後のひと時となった。
■プレゼンテーション
まず、ブラザー工業の概要について説明をいただいた。現在はプリンターを製造している
イメージの強いブラザー工業だが、もともとは兄弟がミシン業を営んでいたそうだ。そこか
ら「ブラザー」という名前が付けられ、業種も拡大し、今に至る。その業種についてだが、
ブラザー工業はプリンターやミシンはもちろん、カラオケの JOY SOUND の通信システムも
製品として提供している。どうしてこのような幅広い業種が実現可能なのだろうか。「実は
このカラオケ通信は、失敗した事業から始
まったのです」そう社員の方がおっしゃっ
ていたことが耳に残っている。失敗、と聞
くと、どうしても悪いイメージが付きまと
うが、
「失敗は成功のもと」を見事実現し、
業種の一部にできるほどに育てられる組
織力が、多業種にわたり成功を収める企業
をつくっているのだと思った。
■オフィス見学
ブラザー工業の社内の雰囲気を見て感
じたことは、何より「楽しそう!」ということだ。社員同士が仲良く手を振りあっている光
景は、私がイメージする気を許すことのできないような社風ではなく、まさに親しみやすさ
に満ちた「ブラザー」そのものだった。
■現地の電器店にて
シンガポールの電器店は、日本の家電量販店と違って各企業が独立して店舗を持ってい
るようなイメージを受けた。日本の企業の名前もあちこちに看板が掲げられており、日本企
業の海外進出が進んでいることを実感した。また、日本の家電量販店は展示品のみが並べら
れ、商品は倉庫などにしまわれていることが多く、なかなか大量の段ボール箱が積まれた光
景を見ることはない。しかし、シンガポールではあちこちに段ボール箱が積まれており、そ
の箱には凝ったデザインがなされ、目が引きつけられた。そのデザインも製品の宣伝効果の
54
一部になっており、ないがしろにできないそうだ。国によって販売形態が違うので、段ボー
ル箱一つとっても柔軟に対応する必要があるのだと感じた。
社員の方とお話ししていて気付いたのは、メーカーは製品、アフターサービス両方に万全
を期していかなければならないということだ。展示されていた新製品のプリンターの中に、
ブラザー工業が初めて考案したデザインが組み込まれているものがあった。A4 サイズを横
向きに入れることによってコンパクト化し、かつ A3 も印刷できるという優れものだ。確か
に今までそのようなプリンターを見たことがなく、すごく使いやすそうで、私も欲しくなっ
た。常に新しいものを作るという意識が、製品の常識を変えていくのだと思った。さらに、
グローバルと言う視点から見ると、求められている製品の機能やアフターサービスは国ご
とに違う。特にアフターサービスは国の法律や慣習も関わってくるため、日本の常識のみで
考えることは不可能だ。例えばアメリカでは、一度使ってみて不満だと感じたら返品が可能
なのだそうだ。よって、その返品を申し出
る電話をなくそう、つまり消費者が不満を
持たないような製品づくりという点で「ノ
ーコール、ノーリターン」をモットーにさ
れている、と教えていただいた。
製品について自信を持って熱く語ってくだ
さった社員の方の姿を見て、このように誇
りを持って仕事ができたらどんなに素晴ら
しいだろうと思った。
■感想
ブラザー工業を見学させていただいてもっとも強く印象に残っていることは、社員の
方々が生き生きとして幸せそうだったことである。そんなに仕事が楽しいのだろうか、と疑
問に思い、つい「どうしてそんなに幸せそうなのですか」という質問をしてしまった。する
と、「もちろん仕事は大変ですが、同僚たちといるのが楽しいし、環境そのものが好きなの
です」という答えが返ってきた。確かに仕事そのものも大切だが、よい環境があってこそ仕
事もはかどる。そして、その環境づくりにはコミュニケーション力や英語力が欠かせないと
身をもって知らされた。私がここで何度も書いている「楽しそうな職場」はもちろん英語で
冗談が飛び交っているし、会話に国籍は関係ない。仕事を充実させる環境、その環境づくり
に必要な英語力・コミュニケーション力を身につけることの大切さを気づかせていただけ
たと思う。そんな理想的な職場だと感じた。
55
56
第3部
現地大学での発表資料
Chulalongkorn University
57
Singapore Management University
Contents of Presentation
September 13th
Chulalongkorn University
Future Relation between Thailand and Japan in the
Agricultural Field
September 17th
Singapore Management University
Energy Issues and Solutions
58
Future Relation between Thailand and Japan in
the agricultural Field
Suguru Abe
Kasumi Takebayashi
Naoya Kawai
Naoki Nakamura
School of Economics
Nagoya University
59
60
61
62
Abstract
Today, the world population is growing fast and it has the risk that could cause food crisis.
Especially in Japan, food security is an argent issue. In the situation, Thailand can play an
important role as a food supplier in the world because Thailand has a good advantage in
agriculture. However Thai agriculture has weaknesses as well. Low productivity is one of
them. Thailand has vast extent of agricultural land but it is not used effectively. On the other
hand, Japan’s productivity is twice as high as Thailand’s. Taking it into account, we offer to
set up a joint venture between Japan and Thailand which can complement weaknesses
each other. In addition, trade agreements such as TPP can be fair winds which improve
food security in the world.
1. Introduction
Why we choose agriculture as the topic? World’s population is growing fast (*Chart1) and
now the world’s population is nearly three times larger than that in 1950. Furthermore, in
2050, it is estimated that world’s population will reach to ten billion in the near future. This
matter has the risk that could cause food crisis. So today, food security in the world is an
urgent issue. In the situation, Thailand can play an important role as a food supplier
because Thailand has a good advantage in agriculture.
*Chart1
World Population [million]
10,000
9,000
8,000
7,657
7,000
6,896
5,306
5,000
4,453
4,000
2,000
9,306
6,123
6,000
3,000
8,321
8,874
2,532
3,038
3,696
1,000
0
1950
1960
1970
1980
1990
2000
2010
2020
2030
2040
2050
63
2. Current Agricultural Situation in Thailand and Japan
Please look at the *Chart2 below. It shows the Grain Self-Sufficiency rate (SSR) on calorie
basis in FY 2009. SSR of Japan is under 30% and about 70% of grain is imported. This
extremely low SSR is mainly because of the Westernization of Japan’s eating habits. Due
to the increase of bread consumption instead of rice, wheat consumption increased and
almost all of wheat is imported from abroad. On the other hand, SSR in Thailand is about
150%. It means Thailand has plenty of grain to export. Japan is in the serious situation.
*Chart2
Japan
Thailand
0
20
40
60
80
100
120
140
160
In 1993, Japan faced a rice crisis. In the year, Japan’s rice production fell sharply because
of cool weather damage (*Chart3). Then Japan imported huge amount of rice from abroad
(*Chart4). Thailand played a very important role then (*Chart5). Thailand saved Japan’s crisis.
*Chart3
14000000
12000000
10000000
8000000
6000000
4000000
2000000
0
1980
1981
1982
1983
1984
1985
1986
1987
1988
1989
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
Yield [t]
Rice Yield (Japan)
Year
64
*Chart4
Rice Import (Japan)
Import [t]
2000000
1500000
1000000
500000
1980
1981
1982
1983
1984
1985
1986
1987
1988
1989
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
0
Year
*Chart5
Amount of Rice Import in Rice Crisis (1993) [ton]
Australia, 180,000
U.S.A.,
540,000
China,
1,070,000
Thailand,
750,000
As this matter shows, the agricultural connection between Thailand and Japan is essential
for Japan’s food security and Thai agriculture as well. Japan strongly depends on Thailand
from standpoint of food security and Thailand can make foreign currency on export to
Japan. So, this connection is very important for both countries. To make it more stable,
what should we do?
65
3. SWOT of Agriculture in Each Country
Let’s think about agriculture of Thailand and Japan with SWOT analysis. First, think about
Thai agriculture. We list three strengths. The first is the vast extent of agricultural land.
About 40% Thailand is farmland. The second is natural conditions suitable for agriculture.
Warm and wet climate is good advantage. The third is geographical location. Thailand’s
location is ideal for export in terms of good access to China and India which are already
huge markets and to ASEAN countries which have potential market. On the other hand, it
has weak points as well. The most serious weakness is low productivity. The details of this
point will be mentioned later. Plus, the lack of fund and knowledge is also a problem.
Opportunity is tapping into global markets with trade agreements. Capturing new market
can be a big chance for the development. As threats, we list four points. The first is
competition with other countries. For example, China, Vietnam and India can be strong
opponents for Thailand mainly in point of low price. Agriculture sometimes suffers damage
from natural disaster. Catastrophic flood in 2011 is typical example. Plus, climate change
and fluctuation in price should also be concerned.
*SWOT analysis (Thailand)
Next is as for Japan’s agriculture. The strongest point is high productivity which is backed
by technology. High level of safety of Japanese products is also strength. On the other
hand, limited agricultural land is a weak point. Furthermore, wage is relatively high and it
leads to high cost of production. Also, lack of successors is a serious problem (*Chart6).
Japanese agriculture is facing serious aging. However, there is also an opportunity. Today,
safety conscience about food is rising in the world, so it can boost the demand for
Japanese product. Then, the points which should be worried are the threats of cheap
agricultural products from abroad, natural disaster, climate change and fluctuation in price.
66
In particular, Japan has substantial risk of earthquake. Great East Japan Earthquake on
March 11th in 2011 made us renew our awareness of threats of nature. This earth quake
caused harmful rumor as well as damage on farmland.
*SWOT analysis (Japan)
*Chart6
Rate of The Number of Farmers over 65 by Years (Japan)
%
50
40
30
20
10
0
1985
1,990
1995
2000
2005
2010
Year
Let’s have a closer look at productivity of both countries. Assume that productivity is
calculated by dividing gross production by planted area. In Thailand gross rice production is
20,500,000,000 kg, and planted area is 11,000,000 ha. So, productivity is 1863.6 kg/ha. In
the same way, Japan’s productivity is 4841.8 kg/ha. Thus, planted area in Thailand is about
7 times as large as that in Japan. However, Japan’s productivity is more than twice as high
as that of Thailand. It shows that the vast extend of farmland in Thailand which is a big
strength is not used effectively.
Gross Production [kg]
Planted Area [ha]
Productivity [kg/ha]
Thailand
20,500,000,000
11,000,000
1863.6
Japan
7,650,000,000
1,580,000
4841.8
67
So, we would like to offer a solution in which Thailand’s and Japan’s strong points are given
full play and each weakness is complemented.
As a solution, we propose joint venture in the agricultural field between Thailand and
Japan. There is a regulation about foreign business in Thailand. That is why we offer to set
up a joint venture. To sum it up, Juristic person with half or more its capital shares held by
foreigners is not permitted to engage in farming. Setting up a joint venture is beneficial for
Thailand from the viewpoint of economy of scales, expertise, IT technology, and financial
stability.
Then, we introduce a joint venture Shinsen-gumi as a precedent. Shinsen-gumi is
Japanese company and it cooperates with Singha Corporation which is Thai company. It
started to produce rice in northern part of Thailand, and Singha established an output
company. Shinsen-gumi guide technique and receive share of stocks of the output
company as a pay back.
If we set up the joint venture, both countries can gain many merits. For Thailand, improve
productivity, improve the quality of agricultural products, create jobs and stabilize income.
Especially, improvement of productivity and the quality of agricultural products can boost
competitiveness in overseas markets. On the other hand, Japan can improve food security,
solving the problem of decreasing numbers of farmers and get business opportunity.
Japanese agricultural market is already saturated, so getting business opportunities abroad
is essential.
4. Positive Effects of Trade Agreements
Next, we make mention of main trade agreements involving Thailand.
Japan - Thailand Economic Partnership Agreement (JTEPA), ASEAN Free Trade Area
(AFTA), ASEAN – China Free Trade Agreement (ACFTA), ASEAN– India Free Trade
Agreement (AIFTA), these 4 trade agreements were set out to eliminate most of tariffs.
Each agreement has sensitive items, but some of these tariffs will be reduced in the near
future. Cheap agricultural products from abroad are threat, however, at the same time,
reduction and elimination of tariffs can be a good chance to expand the products into global
markets. So it is necessary to bring both low price and high quality into reality to gain
international competitiveness.
Next, we make mention about Trans-Pacific Partnership (TPP), in which 12 countries; –The
U.S., Canada, Australia, Mexico, Japan, Singapore, Malaysia and so on are trying to
participate. Thailand is showing interest in participating in TPP as well. Thailand is involved
in many trade agreements but Thailand doesn’t have FTA or EPA with The U.S. So TPP can
be a good chance to conclude a trade agreement with the U.S. because the U.S. is
68
participating in TPP negotiation.
The chart below (*Chart7) shows the ratio of GDP in TPP participating countries. The United
State has accounted for the rate more than half. As a graph shows, in TPP, the U.S. presence
is very large. For Thailand, one of the biggest meanings of participating in TPP negotiation
is building a relation with the U.S. This will lead to boost the existence of Thai products in the
global market.
*Chart7
GDP of Countries Participating in TPP Negotiation
Mexico
Australia 4%
Others
5%
5%
Canada
7%
Japan
22%
U.S.A
57%
It is true that there are some problems in connecting a free trade with the U.S. for Thailand.
However, we think the positive side of participating in TPP negotiation is larger than the
negative side. There are two key points about it.
First, between Thailand and the U.S., the competition of trade goods is comparatively low.
Thailand exports tropical products (ex. Crude rubber, shrimp, fruits, vegetables) and the U.S.
exports temperate products (ex. Cotton, grain, soybeans). Under the present circumstances,
high custom duty is applied mutually. So if a custom duty is abolished, the trades become
more active and the industries can boost their existence because competition is low as
mentioned above.
Second, joint venture with Japan can boost international competitiveness. If Thailand
participate in TPP negotiation, it is inevitable that the products of Thailand are exposed to
competitions with other countries. Then, joint venture with Japan can be a great chance. If
productivity is improved and the competitiveness of products boost, a share of Thai products
in the world is expandable. By combining mutual strong points, Thailand and Japan can gain
69
big profits in the world market.
To sum up, we would like to tell you following points. Joint venture can be beneficial for both
Thailand and Japan; from Thai side, development of agriculture, from Japanese side, food
security. And from both side, we can gain big profits in the world market.
Furthermore, trade agreements can contribute to boosting presence of Thailand as a food
supplier in the global market.
As mentioned above, both countries can gain big merits with cooperation between both
countries.
Hope to build much better relationship between Thailand and Japan, in the future.
*References
Statistics Japan
http://www.stat.go.jp/data/sekai/0116.htm
Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries
http://www.maff.go.jp
http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/zyukyu/index.html#l
http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_kome/index.html#l
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/pdf/komebusoku.pdf
Ministry of Foreign Affairs of Japan
http://www.mofa.go.jp/mofaj
JETRO
http://www.jetro.go.jp/indexj.html
Low and Legal Services Missions in Thailand
http://asialaw.tripod.com/database/foreign.html
Statistical Handbook of Japan
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001047487&cycode=0
70
Energy issues and solutions
Shigeto Tanimoto
Atsuya Nakashima
Masaki Mutoh
Mitsuki Tanahashi
Misaki Iwata
School of Economics
Nagoya University
71
72
73
74
75
76
Abstract
The issue of energy is one of the most important issues in Japan. We cannot live without
energy, but we rely on import from foreign countries for energy resources. In addition, after
Tohoku Earthquake, the accident of nuclear power plants caused considerable damages
and nuclear power, which has been the main energy resource stopped, then energy supply
issue stood out in despair. This situation is also applicable to Singapore. The total supply
amount of primary energy against the GDP is low worldwide along with Japan. And
Singapore also stopped the introduction of the nuclear power. We thought Japan and
Singapore are in similar situation.
To solve the energy supply issue, of course to try to save on electricity is important, but
Japan also needs alternative energy sources because of the stopping of the nuclear power
plants. Today, thermal power has increased, though it causes environmental problems.
Then, renewable energy is attracting attention. The resource is unlimited and environment
load is low. But it is impossible for any renewable energy to become main energy resource
immediately in terms of costs and technology. As students of school of economics, what we
can do is not to develop but to consider how to spread the use of renewable energy. Then,
we propose two ideas.
First, we make the system in which the government and banks call for investment for
development of new technology like interest reduction or increasing loan volume. Second,
to spread the use across consumers, we propose to sell equipment of renewable energy in
a bundle at lower prices. These ideas will promote development and cause expansion of
renewable energy.
We would like to suggest a solution of energy problems from the viewpoints of Singapore
and Japan, both of which are in a similar situation on energy issues.
1. Introduction
There are two reasons why we would investigate an energy problem of Japan.
The first is the Tohoku earthquake and tsunami. Japan experienced the great earthquake
and tsunami in March 2011. The recovery of the devastated area is far from over, and all
the nuclear power plants in Japan were forced to close down temporarily by the earthquake
disaster for fear of safety.
The second is drying up of primary energy. Although our generation may not have critical
influences, life of the future generations will be directly affected.
Therefore, we thought that we have to earnestly face the energy problem of Japan.
77
Index Japan=1
Total supply amount of primary
energy per GDP in major countries
(2008)
20
15
10
5
0
16.7
7.8 7.8 8.4
4.9 6.3 6.7
3.2
3.1
3.2
2.6
2.0
1.8
1.8
1.7
0.14 1.0 1.2
Graph1
The numerical value of a vertical axis is an index when Japan is indexed as 1.0 (Graph1)
and the numerical value of Japan is low due to little fossil fuel in Japan and the third-largest
GDP in the world. Japan and Singapore are in a similar situation if analyzed from this
graph.
We will verify the current state of energy procurement. Now, Japan depends on the Middle
East, Southeast Asia, Australia and so on for the import of energy resources. You can
understand that it is risky to depend only on few choices and that it is preferable to diversity
energy resources from the energy security viewpoints.
First of all, how does Japan generate electricity? Graph2 shows percentage of each power
source to the total power generation in Japan (2010).It turns out that power generation of
Japan is dependent on the fossil fuels of coal, oil, and gas. However, this balance is
changing a lot after the earthquake disaster.
Percentage of each power to total power
generation in Japan
26%
3%
27%
Coal
Oil
Gas
7%
9%
Nuclear power
Other
28%Source:IEA, Energy Balances 2012
Graph2
78
Hydraulic power
2. The energy of Singapore
Easy access to the sea and a strategic location near the Strait of Malacca has enabled
Singapore to become one of the Asia's main energy and petrochemicals hubs and one of
the world's top-three oil trading and refining centers. Many global energy companies have
regional headquarters in Singapore.
The refinery and petrochemical industry is critical to Singapore economy, which continues
to benefit from strong growth in the regional demand for oil products. Almost 90 percent of
Singapore's primary energy consumption comes from oil use, mostly for refining.
Singapore's government stated it would promote long-term growth in refining capacity in
order to maintain its market position as a refining and oil trading leader. Imported natural
gas fuels most of Singapore's power generation, with small amounts of coal and renewable
resources fueling the rest. Natural gas use made up nearly 10 percent of the country's total
primary energy consumption in 2011. As natural gas demand continues to grow, the country
seeks to augment gas imported via pipeline with LNG imports.
Singapore has world-class refining, storage, and distribution infrastructure. However, the
country has no domestic oil reserves and must import all its crude oil.
The petrochemical industry is the backbone of Singapore's economy and features
Singaporean infrastructure. Several elements have made the city-state an important oil
trading and refining hub. Singapore is strategically located between the Indian and Pacific
Oceans, allowing companies to have easy access to large regional markets. The
government has encouraged the use of natural gas in the power generation, and the
domestic liquids consumption has fallen in recent years.
Singapore government promotes use of natural gas. Malaysia and Indonesia currently
supply all of the country's natural gas. The government is building import terminals for
liquefied natural gas and diversify its supply. The government expects Singapore's first
LNG import terminal to begin operating in second-quarter 2013.
Since 2001, it has provided subsidies to commercial and residential vehicle owners who
shift to natural gas-powered vehicles. That year, the government set a target that 60
percent of the country's electricity would come from natural gas by 2012.
79
Graph3
Natural gas fuels almost 80 percent of Singapore's electricity generation (Graph3). The
government has set out to add 3 Giga Watts by 2017. Singapore plans to fuel the additional
capacity with the LNG. The government has also considered whether it could import
electricity from the proposed ASEAN Power Grid, particularly from Malaysia and Indonesia,
to supplement its internal electricity generation. According to the PFC Energy, the
manufacturing sector and household power use accounted for the 39 percent and 17
percent, respectively, in 2011. Other groups accounted for 44 percent of electricity demand.
3. After 3.11
Next we would like to talk about the movements of Japan after the accident. There are
three points mainly. First: the nuclear power plants, second: solutions from supply and
demand side, third: the basic point of the alternative energy resources.
So first, we will talk about the nuclear power plants.
Since the accident, the nuclear power plants in Japan have come to a stop in series.
Then, eventually there were temporarily no running nuclear power plants last year.
Here, let us begin by looking at a point about the environment. Large amount of release of
the radioactive materials is a big problem. There was also polluted water outflow to the sea.
Then, various kinds of living things may suffer from dangers through food chain. We think
countries must look for solutions of these problems for security.
Then, we also face the difficult situation about politics. Some people say that the nuclear
power plants are necessary because they generate electricity at lower costs and they will
provide job opportunities. On the other hand, it is said that they are not necessary because
they may put people’s lives at risk. We have to consider seriously from now on also what
the best decision is.
By the way, do you wonder why electricity shortage does not happen frequently in Japan
80
in spite of the hot weather and the decrease of number of the nuclear power plants? We
will give an outline for the reason for that. One is energy conservation. We want to talk
about this point with numerical example later. Another is power transfer. Electric power
companies transfer surplus electricity each other considering power conditions though it is
difficult to do so between the East and the West Japan. It is because there is difference
between the East and the West Japan in periodicity, so frequency to voltage converter is
necessary. Third reason is running of thermal power plants. They cover a loss of nuclear
power generation. We also want to talk about thermal power plants later.
We think it worthy of praise that there is no electricity shortage frequently. However,
measures are not well prepared. Stable supply and the problem of costs are still urgent
issue.
Let’s have a look at the nuclear power plants in Singapore.
Prime Minister Lee Hsien Loong declared in 2010 "A nuclear power plant is a choice that
we cannot exclude". However, he claimed the technology of nuclear power generation is
not yet suitable for the use in the country after the accident of the Tokyo Electric Power
Fukushima Daiichi nuclear power plant.
The newest nuclear power plant technology is markedly safer than the plants built with
former technology as a result of a preliminary survey. However, it suggests that it cannot
take refuge of 5.3 million people corresponding to the population of the central Tokyo when
an accident occurs. The Singapore government decided not to introduce nuclear power
plants for the time being. The government thought risks exceed profits in Singapore.
Now let’s move onto the second point: Solutions from supply and demand side.
Japan depends on foreign counties for the import of energy resources and this state of
things are risky.
As one of the solutions to the problem, Japan will start to import shale gas from the United
States of America. As you can see, Japan can import LNG at lower cost from the U.S. from
2017 onwards if the U.S. Department of Energy approves the export. However, there is a
problem. Japan is not in a position to enjoy the benefits of lower costs because the longterm contracts which are linked with the importing prices of crude oil in the transaction of
the LNG.
Although we talked about supply side solution so far, we also have to consider demand
side solution, that is, energy conservation. Let us suppose that we allocate the amount of
electricity consumption decreased by energy conservation for reduction of thermal power
generation made by petroleum which is most expensive as unit price of all fuels. If we save
one percent from the amount of 2012, we can reduce the cost of fuel about one hundred
and sixty billion yen equivalent to 1.6 billion US Dollars.
81
Enterprises and households are more and more conscious of how important energy
conservation is. For example, they introduce energy control system called the “HEMS”
which enables us to know where and how much we use electricity and stimulates us to
save energy.
It may be vitally important to focus on what factors will be observed about energy policies
from now on.
So finally, we want to move onto the third point: the basic of the alternative energy
resources.
Please remember what we mentioned. Japan depends on the thermal power generation
by purchasing energy resources from other countries and the rise of the importing price of
the LNG and the other energy resources become more of a burden due to weaker yen
nowadays.
Please look at Graph4. The cost of fuel has risen sharply in recent few years. In 2013,
compared with 2010, LNG will be about 2.5 times and petroleum will be about three times.
So Japan has recorded trade deficits recently. You can understand why the increase of
fuel prices explained as a main factor of this.
hundred million
100,000
90,000
80,000
70,000
60,000
50,000
40,000
30,000
20,000
10,000
0
LNG
Petroleum
Coal
Sum
2010
2011
2012
2013
https://www.jri.c
o.jp/MediaLibrar
y/fire/report/rese
archfocus/pdf/67
52.pdf
Graph4
Under those circumstances, the alternative energy has become more important. We can
expect that the alternative energy resources will improve power of supply and they will play
an important role as a key to price negotiation.
However, there are some demerits naturally. One of the demerits is difficulty of stable
supply and another is that an alternative energy is still expensive due to lower efficiency of
energy utilization.
82
4. Renewable energy
Both Japan and Singapore promote renewable energies. Clean energy policy in
Singapore gives priority to solar power generation. Besides, it puts in resources in biomass
power generation and wind power generation. In Japan, in addition to these, geothermal
generation and hydropower generation are performed because Japan has abundance of
volcanos and water. Next, let us move on to the merits and demerits of the renewable
energy.
Renewable energy has many merits. Firstly, resources are not exhaustible. Fossil fuels is
said to be exhausted because they have a limit to resource reserve, but renewable energy
is safe for it. Secondly, renewable energy contributes to increase energy self-sufficiency
ratio because it doesn’t rely on import from foreign countries. Thirdly, it can disperse the
risks. By using the diverse energy sources, you can prepare for unexpected situation such
as a disaster.
On the other hand, there are demerits that supply is not stable and that cost of power
generation is high. But, there is a prospect that these problems can be overcome by
advance in technology. We point to two measures to solve the demerits.
First, to provide stability, we advance smart grid technology with the aid of battery. Smart
grid is the next generation power network and it can supply electricity automatically from
extra to necessary point.
Secondly, to lower the cost of power generation, technical development and expansion of
the market scale are needed. To achieve these, Japanese government implements
introduction and expansion policies of renewable energy as follows. First of all, Japanese
government has started the support by subsidy since 1997. Next, government implemented
the Renewable Portfolio Standards, RPS for short from 2003 to 2012. The RPS requires all
electric power suppliers to obtain a certain amount of electricity from renewable energy.
Then, Japanese government has started feed in tariff, FIT for short in 2012. The FIT
requires all electric power suppliers to buy electricity from renewable energy sources at
fixed prices.
Before the start of the FIT, residential uses held a majority of the market of solar power
generation. After the start of the FIT, the market for business use is growing and introduction
of 1000kW and over of mega solar is increasing. In addition, installed capacity increased
from 990,000kW to 1,552,000kW.
83
The ratio of
renewable energy
to total generated
energy
2.0%
1.5%
solar
1.0%
geothermal
wind
0.5%
baiomass
0.0%
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
Graph5
Graph5 shows that the ratio of the renewable energy to the total generated energy in
Japan is getting higher year by year. Especially, after the start of the system of purchasing
surplus electricity and the FIT, you will realize that the introduction of renewable energy
mainly from solar power generation is increasing steadily by government’s policies.
5. Conclusion
Singapore faces feedstock constraints on renewable resources, which limit the amount of
biofuels it can consume. However, the government has invested in developing the solar
industry. Singapore is located under the equator what is called the Sun Belt. It is blessed at
the point with more about 50 percent amounts of sunshine rather than the countries of
temperate locations. If the price of solar power generation falls even on the same level as
the present electric power, the Sun Belt places will serve as the first solar power generation
platform in the world, and it will accomplish with big growth. Norwegian Renewable Energy
Corporation established the world's largest solar panel manufacturing complex in
Singapore, and companies Solar Energy Power and Eco-Solar set up their Asia-Pacific
headquarters in Singapore.
To advance the economy, consuming a good deal of energy is necessary.
But centering on the energy source, there are two big problems: Environment and safety.
At one time, to solve the environment concern, nuclear power was promoted. But because
of the Tohoku earthquake, nuclear power plants were almost completely shut down for the
safety of the lives of people.
If we mistake the relation of the environment and the use of nuclear power, the terrible
accident may happen again. People who live as usual if it were not for nuclear power may
get away from their home.
On the other hand, if we rely on thermal power, we increase the effects on the
environments. Then, renewable energy has a possibility to go together. Of course, because
84
it has many problems about costs and technology, renewable energy cannot be major
energy resource soon. But we must make effort to spread the use of renewable energy.
Then, what can we do? We can do something to expedite the use of renewable energies
through shaping policies. As our former presenter explained, shaping policies is good for
invitation. So we propose two ideas.
First, investment must be increased because development of new technology needs large
amount of money. We would like to suggest system in which government and banks call for
investment of new technology like interest reduction or increasing loan volume. Then
investment will increase and development will advance.
But only development is not the sole solution. Second, we must spread the use of new
technology across consumers. Nowadays, equipment for the renewable energies is still
expensive. Then, if equipment of the renewable energy including solar panel, accumulator,
fuel battery, and so on is sold in a bundle at lower prices, consumers have incentives to buy
them. These policies lead the birth of new major energy source.
As my teammates said, Japan and Singapore are alike because we do not have energy
resources and that we make efforts to spread the use of renewable energy. As two of a
kind, let’s think about the solution of energy problem together!
*References
IEA「Energy Balances of OECD Countries 2010 Edition」
IEA「Energy Balances of Non-OECD Countries 2010 Edition」
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/13th/13-7.pdf
IEA, Energy Balances 2012
http://eneken.ieej.or.jp/news/trend/pdf/2011/1_15Singapore.pdf#search='%E6%97%A5
%E6%9C%AC+%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC
+%
E4%BE%9B%E7%B5%A6+site%3Aeneken.ieej.or.jp'
http://eneken.ieej.or.jp/news/trend/pdf/2011/1_15Singapore.pdf#search=%27%E6%97%
A5%E6%9C%AC+%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%
BC+%E4%BE%9B%E7%B5%A6+site%3Aeneken.ieej.or.jp%27
U.S. Energy Information Administration (EIA)
Singapore - Analysis
www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=SN
JPEC レポート 2011 年度 第 14 回「資源のない国、シンガポールのエネルギー政策と
産業」www.pecj.or.jp/japanese/minireport/pdf/H21_2011/2011-014.pdf
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/ber/pdf/6275.pdf
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/13th/13-7.pdf
85
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchfocus/pdf/6752.pdf
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/sougoubukai/4th/4th2.pdf#search='%E5%86%8D%E7%94%9F%E5%8F%AF%E8%83%BD%E3%82%A8
%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC+%E5%89%B2%E5%90%88'
86
第4部
成果報告会資料
2013 年 11 月 7 日
於 名古屋大学経済学部
87
88
89
90
91
92
93
94
95
おわりに
名古屋大学経済学部経済学科
岩田美咲
私たち 9 人がそろって「グローバル人材」へのスタートラインに立ってから、半年と数か
月が経ちました。マニファクチャリング、ファイナンス、ロジスティクスという三分野をそ
れぞれ履修し終えたばかりで、世界に対して大きく門戸が開かれた状態であるという認識
はあったものの、具体的に自分たちがどのように適応していけばいいのか、どのような人材
を目指したらいいのかという想像すらつかなかったあの頃。海外研修視察旅行という大き
な山を登り終えた今、思い返すとどこか懐かしいくらいに、私たち自身の内面の変化をひし
ひしと感じています。
その変化の中で大きな土台となっているのが、視野の広がりです。日本で暮らしていれば、
自分の世界のすべてが日本で収まってしまいます。視点の出発が日本のみであれば、その価
値基準で物事をとらえ、狭い視野で思考判断をすることになります。今回タイ・シンガポー
ルを訪れ自分の目で外国というものを確かめることによって、日本ではない世界を知り、ま
た自分の世界そのものであった日本という国を少し遠くから俯瞰することができました。
メンバーがタイの熱気やシンガポールの発展を感じ、また日本の素晴らしさを再認識でき
たのも、今回の海外研修視察旅行の大きな成果です。帰国してからタイやシンガポールのニ
ュースを見たりすると、自分の世界の問題のような気がして、以前との違いを感じました。
日本にいて外国を語ることの空虚さを痛感した今、飛び立つことを恐れず様々な世界を見
ていきたいと思います。
実際に足を運ぶことの意義は、もちろん視野の広がりという側面だけではありません。英
語に対しての認識も大きく変わりました。英語が全てではないとはいえ、多国籍の社員の
方々が集まる職場で英語を使って流暢にコミュニケーションをとる日本人社員の方々を見
ていると、やはり憧憬の念を抱かずにはいられませんでした。さらに、タイやシンガポール
の学生との交流で、母国語ではない英語を使って分かり合えることの喜びと、もっと自分の
英語力があったなら話したいことも思いのままに話せるのに、と感じることが多々ありま
した。印象に残っているのは、シンガポールの大学で現地学生との交流のあと、英語で話す
ことの楽しさを忘れられないあまり日本人同士で英会話が始まったことです。日本企業で
も社内公用語が英語のところもあると聞いて辟易していた以前のことを思えば、英語を話
すということに対しての壁が低くなったような気がします。実際に英語力をあげていくと
いう作業は参考書を見ながらでもできますが、英語を話すことの楽しさ、喜び、大切さを痛
感できたことは、やはりその土地で過ごすことで得られる経験だと思います。
とはいうものの、メンバー同士で今回の海外研修視察旅行で得られたものを話している
と、もちろん上記のような共通した認識はありますが、それぞれが描くグローバル人材は少
しずつ異なっているような気がしました。英語の重要性を痛感し、もっと話せるようになり
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たいという思いが強くなったメンバーもいれば、英語だけ話せても意味がなくコミュニケ
ーション力や専門知識を磨く必要があると感じたメンバーもいます。何を最重要と認識し、
自分をどのような長所を持った人間にしていくかは最終的にはそれぞれの考えによって変
わってくるのだとわかりました。それは決してよくないことではなく、むしろ自分はこうな
りたい、という理想像を持ち、それが他人と違っていても固く信じることができるほど、そ
れぞれがグローバル人材について熟考し答えが出せたことは何よりの今回の経験の賜物で
はないかと思います。
私たちは今、大きな分岐点に立っています。共に学び、共に貴重な経験をした 9 人それぞ
れが選ぶ道は 9 通りに分かれていくことでしょう。しかしたどる道は違っても、全員がグ
ローバル人材という大きな目標に向かって歩んでいくことに変わりはありません。そして、
いつかまたどこかで、同じスタートラインに立ったメンバーとそれぞれが描いていたグロ
ーバル人材という姿で出会えることを楽しみにしています。そのような未来に向けて努力
をし続けなければいけないという決意を新たにするとともに、私たちの心に多大な変化を
もたらしてくれた貴重な機会にご支援・ご協力くださった企業関係者の皆様、大学関係者の
皆様、コーディネーターの佐野良雄先生に心から感謝申し上げます。また、グローバル人材
や将来について熱く語り合える仲間を得られたことに大きな喜びを感じています。
今回の海外研修視察旅行でお世話になった皆様、本当にありがとうございました。
2013 年 11 月
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