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同意能力がない患者の医療同意―ドイツ法を中心に1

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同意能力がない患者の医療同意―ドイツ法を中心に1
同意能力がない患者の医療同意―ドイツ法を中心に1)
Aufklärung und Einwilligung bei einwilligungsunfähigen Patienten
亀井隆太
KAMEI Ryuta
要旨 患者が、認知症など何らかの理由で医療者による治療に関する説明を理解すること
ができない場合、医療者はどのように対応するべきか。説明や同意(インフォームド・コ
ンセント)が不可能であるという理由で、患者に必要な医療が差し控えられるということ
があってはないが、他方で、医師による専断的医療行為も回避されなければならない。そ
こで、患者本人に代わって誰が説明を理解し、医療行為に関する意思決定を行うのかとい
うことが問題となる。この点、わが国の法制度は極めて不十分あり、法整備が急務となっ
ている。本稿は、ドイツの成年後見制度、医療同意制度(民法上の制度)について検討し、
わが国における医療同意のあり方について考察する。
第1 はじめに
現在、高齢者数の増加に伴い、認知症等により同意能力が低下した高齢者に対して、ど
のような場合に医療の提供が可能であるか、どのように医療を提供すべきかが大きな課題
となっている。医療行為を行うためには、医療を受けることについて患者の意思が問題と
されなければならない。しかし、患者の中には、そもそも自己の疾病を認識できなかった
り、医師らによる医療上の説明を理解できず、また医療を受けるかどうか、どのような医
療を受けるか判断できずその意思を表明できない者がいる。患者の医療を受ける権利の保
障という観点から、この問題(医療同意問題)に対する解決策が必要となる。
本稿は、認知症高齢者等、医療同意能力がない患者の医療同意問題を扱う。なお、本稿
は、同意能力がない成年(日本20歳以上、ドイツ18歳以上)の患者を対象としている(本
来であれば未成年者の場合も含めた一般的な制度論の枠内で論じるべきかもしれないが、
他日に期したい)
。
第2 医療同意問題
患者が医療を受けようとする場合、患者は医師や医療機関と医療契約(診療契約)を締
結することになる2)。そして実際の医療行為を受ける段階では、医療契約締結の際の申込
と承諾の他に、
医療行為に関する説明とこれに対する同意が必要であると解されている
(イ
ンフォームド・コンセント)
。また、この同意によって患者に対する医的侵襲の違法性が
阻却されると考えられている。インフォームド・コンセントの原則は、医療実務において
1 ) 本研究は、独立行政法人科学技術振興機構社会技術研究開発センター研究開発プロジェクト「認知
症高齢者の医療選択をサポートするシステムの開発」
(研究代表者:成本迅 京都府立医科大学)に基
づく研究成果の一部である。
2 ) 医療契約の法的性質については、岩志和一郎「医療契約・医療行為の法的問題点」実践成年後見16
号(2006年) 9 頁以下を参照。
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同意能力がない患者の医療同意(亀井)
浸透してきているが、法整備は整えられていない3)。
インフォームド・コンセントに関して、患者が、認知症等何らかの理由で医療者による
治療に関する説明を理解することができない場合、
医療者はどのように対応するべきか
(医
療同意問題)
。説明や同意が不可能であるという理由で、患者に必要な医療が差し控えら
れるということがあってはないが、他方で、専断的医療行為も回避されなければならない。
そこで、患者本人に代わって誰が説明を理解し、医療行為に関する意思決定を誰が行うの
かということが問題となる。
医療同意に関して、わが国の医療実務の慣行では、患者と並んでその家族(親族)が重
要な役割を果たしてきた。すなわち、本人に同意能力がない場合には、家族の同意は本人
の同意に代わるものとして位置づけられてきた4)。これには明確な法的根拠があるもので
はないが5)、裁判例もこれを認めてきた。患者に成年後見人が付けられている場合、成年
後見人が医療同意権限を有するかどうかについては様々な議論(解釈論)がある。立法担
当官はこれを否定するが6)、肯定説、限定的肯定説などがある7)。
成年後見の先進国であるドイツにおいては、患者の家族であるというだけで同意権限を
付与する(ないしは事実上の決定を許す)ということは認められていない。すなわち、同
意権限を有する者については法定されており、世話人(わが国でいう成年後見人)等が同
意権を有することになっている。近時、ドイツで「患者の権利の向上のための法律」が成
立し、施行され、同意能力がない患者の医療同意制度が整備された。
以下においては、ドイツにおいて同意能力がない患者の医療同意がどのようになされる
かを考察した上で、わが国における医療同意のあり方について若干の検討をしたい。
3 ) インフォームド・コンセントを含む患者の権利に関するわが国における取り組みとして、日本医師
会生命倫理懇談会「
『説明と同意』についての報告」(1990年)、患者の権利法をつくる会「患者の諸権
利を定める法律要綱案」
(1991年)
、厚生労働省「診療情報の提供等に関する指針」(2003年)、ハンセン
病問題に関する検証会議「最終報告書」における患者・被験者の諸権利の法制化の提言(2005年)
、日
本弁護士連合会「患者の権利に関する法律大綱案の提言」
(2012年)等がある。日本弁護士連合会人権
擁護委員会編『提言 患者の権利法大綱案−いのちと人間の尊厳を守る医療のために−』
(明石書店、
2013年)参照。
4 ) 小賀野晶一『民法と成年後見―人間の尊厳を求めて―』
(成文堂、2012年)153頁。
5 ) 医療同意における家族の同意の意義につき、永水裕子「医療同意における成年後見人と家族の位置
づけ」実践成年後見40号(2012年)11頁以下を参照。
6 ) 法務省民事局参事官室『成年後見制度の改正に関する要綱試案の解説』
「成年後見制度の改正に関
する要綱試案補足説明」
(金融財政事情研究会、1998年)43頁。
7 ) 詳細は、上山泰『専門職後見人と身上監護(第 2 版)
』(民事法研究会、2010年)119頁以下等を参照。
なお、千葉家庭裁判所が発行している「成年後見人・保佐人・補助人のしおり」(平成25年 5 月発行)
は成年後見人編Q15において、
「親族がいない場合、親族の協力が得られない場合、緊急を要する場合で、
病院から特に救命に必要な医療措置として手術や治療への同意を求められた場合には、治療の必要性等
を考えると同意をすることもやむを得ないこととして認められると思われます。ただし、そのような同
意をする権限があることを示す明確な規定はありません。
」
「一方、本人の病状が重い場合、延命治療の
中止や治療拒否をするかどうかの意見を求められることがあります。しかし、本来こうした事柄は、本
人自身の意向を重視して決めるべきであり、意向の確認ができない以上、第三者の後見人としては同意
すべきではありません」と説明している(下線部筆者)。
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人文社会科学研究 第 28 号
第3 同意能力がない患者に対するインフォームド・コンセントに関する規定(ドイツ)
1 患者の権利の向上のための法律
(1)患者の権利の向上のための法律の成立
2013年 2 月20日に、ドイツにおいて患者の権利の向上のための法律(Gesetz zur Verbesserung der Rechte von Patientinnen und Patienten)が成立し、同年 2 月26日に施行された。
これにより、ドイツ民法典(以下、BGBともいう)においてこれまで明示的に規定され
ていなかった医療契約(Behandlungsvertrag)が雇用契約(Dienstvertrag)の特別の形態と
して規定されることになった。条文でいうと、BGB 630a条∼630h条がドイツ民法典に新
たに挿入されることとなった8)。なお、この法律は、ドイツ民法典を含む諸法の改正から
成り立っている。
(2)医療契約とは
BGB630a条は、医療契約の定義付けを行なっている。BGB630a条によれば、医療契約と
9)
が、約束された処置の
は、患者の医療上の処置を約束した者(医療者)
(Behandelnder)
給付義務を負い、他方の当事者(患者)が、第三者が支払義務を負わない限り、合意され
た報酬支払い義務を負う契約をいう。
(3)医療処置の前提としての患者の同意
医療処置の実行の前、とりわけ身体または健康に対する侵襲の前には、医療者は患者の
同意を得なければならない。患者に同意能力がない場合、BGB 1901a条 1 項 1 文による患
者の事前指示書が処置を認めるか、または禁止するのでない限り、これについて権限を有
する者の同意を得なければならない。延期できない処置に対する同意が適当な時機に得ら
れなかった場合、処置が患者の推定的意思に合致しているときは、同意なしに処置を実施
しうる(以上、BGB630d条 1 項)。
BGB630d条は医療処置の前提として患者の同意を要求している。BGB630d条の規定の
目的は、患者の完全性の保護(Integritätschutz)および患者の自己決定権(Selbstbestimmungsrecht)の保護にある。患者は、疾病を抱えたままでいる自由を有しているのである。
患者は、医療処置を受け入れることを義務づけられない。それゆえに、患者の同意は必要
不可欠となる。医療契約の時点においては、医療上の説明(Aufklärung)も行われておらず、
医療処置も確定していないのであるから、医療契約それ自体は、通常は同意を含んでいな
い。BGB 630d条は、処置のための正当化の根拠のみならず、医療者の同意取得義務を根
拠付けている。複数の医療者によって実施される複数の処置に基づく処置の場合は、医療
者は各々処置をする部分について同意を取得しなければならない。この同意は、不法行為
責任(BGB823条)の枠内における医療処置の違法性を阻却させる同意の意味をも同時に
有する10)。同意がない場合、または瑕疵ある説明ゆえに同意が無効である場合、処置の実
8 ) Palandt, Bürgerliches Gesetzbuch, 73. Aufl, 2014, S.1009 [Weidenkaff]. 邦語参考文献としては、渡辺富久
子「【ドイツ】患者の権利を改善するための民法典等の改正」外国の立法(2013年)、村山淳子「患者の
権利の向上のための法律(Gesetz zur Verbesserung der Rechte von Patientinnen und Patienten)成立」年報医
事法学28号(2013年)214頁以下を参照。
9 ) 医療者(Behandelnder)とは医療上の処置を約束する者であり、医師の他に、歯科医師、心理療法士、
助産師、マッサージ師、言語聴覚士、自然療法士等が含まれる。
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同意能力がない患者の医療同意(亀井)
施は契約違反となり、その場合医療者はBGB280条 1 項11)の責任を負う12)。
同意は意思表示(Willenserklärung)ではなく、法律行為類似の行為(geschäftsähnliche
Handlung)である。一身専属的な法益に関する判断を含むことから、行為能力ではなく、
「同意能力」
(Einwilligungsfähigkeit)が必要であると解されている。同意は明示・黙示、
口頭・書面で表示されうる。すなわちBGB 630d条は同意の方法について特別の方式を要
求していない(BGB 1901a条が適用される場合には、同条従った書式が要求される[後述]
)
。
同意は、処置の実施前に得られなければならない。同意の解釈は意思表示の解釈に準じる。
手術に同意したからといって、当然に麻酔にも同意したものとは解されない13)。
(4)同意能力
同意能力があるといえるためには、処置の種類、必要性、意味、結果および危険に関す
る、自然の認識能力および判断能力が必要である14)。もっとも、いかなる要件の下である
者に同意能力がないとみなされるのかという点について法律上の定義は存在しない15)。成
年者(成人年齢は18歳)は、原則的に同意能力を有するとされる。
同意能力がない患者の同意は必要ではなく、かつ法的に意味を有しない。しかし、事前
配慮代理権(Vorsorgevollmacht)または彼が同意能力を有していたときに記した患者の事
前指示書による見込みの判断の方法において、将来における特定の医療処置を認めること
や拒否することは妨げられない16)。
医療者は、患者が自然の弁識能力および制御能力を有し、医療処置の種類、意味、効果、
危険を理解し、その意思を伝達しうることについて確信を得なければならない17)。
患者に同意能力がない場合には、権限がある者による代わりの同意が必要となる。権限
を有する者とは、法定代理人(世話人)または任意代理人(任意後見人)である。この場
合、重大な処置、収容および不妊手術の場合についてはBGB 1904∼1906条が適用される18)。
患者が成年であり、同意能力を有していない場合、医療者は、①法的拘束力のある患者
の事前指示書(Patientenverfügung)
(後述)が存在するか否か、②この患者の事前指示書
が問題となっている医療処置に真に関わっているか否かについて確認しなければならな
い。ともに肯定される場合、患者の事前指示書が直接的に適用される。患者の事前指示が
患者の同意を意味するからである。患者の事前指示書が適用される場合においても、さら
に患者に対する説明が必要とされるべきか否かは不明確である19)。
10) Palandt, a.a.O., §630d Rn1-2[Weidenkaff]
.
11) BGB280条(義務違反による損害賠償)
「
(1)債務者が債務関係に基づく義務に違反したときは、債
権者は、これによって生じた損害の賠償を請求しうる。債務者が義務違反につき責を負わない場合は、
この限りでない。
」条文訳は半田吉信『ドイツ債務法現代化法概説』(信山社、2003年)による。
12) Jauernig(Hrsg.)
, Bürgerliches Gesetzbuch, 15. Aufl, 2014, §630d Rn1[Mansel]; Palandt, a.a.O., §630d
Rn5[Weidenkaff]
.
13) Palandt, a.a.O., §630d Rn2[Weidenkaff]
.
14) Palandt, a.a.O., §630d Rn3[Weidenkaff]
.
15) Walter, Das neue Patientenrechtegesetz Praxishinweise für Ärzte, Krankenhäuser und Patienten,2013, Rn198.
同意能力判定基準に関して、黒田美亜紀「ドイツ世話制度における医療行為の同意」新井誠編『成年後
見と医療行為』
(日本評論社、2007年)240頁以下を参照。
16) Palandt, a.a.O., §630d Rn3[Weidenkaff]
.
17) Jauernig(Hrsg.)
, a.a.O., §630d Rn3[Mansel].
18) Jauernig(Hrsg.)
, a.a.O., §630d Rn3[Mansel].
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人文社会科学研究 第 28 号
(5)同意権限者の同意
患者の事前指示書が、処置を認めるか、または禁止するのでない限りは、権限を有する
者の同意を得なければならない(BGB 630d条 2 項)
。医療上の処置への同意を含む患者の
事前指示書は、事前指示に先立つ医療上の説明が存在する場合にのみ有効となる(説明を
放棄した場合は別である)
。先立つ医療上の説明がない場合は、患者の事前指示書は、推
定的意思(mutmaßlichen Willen)に関わる表示として評価されうる。その場合、世話人ま
20)
。患者が任意代理人または世話人に判
たは任意代理人の判断が常に必要となる(後述)
断を委ねた場合、BGB 1901b、BGB 1904∼1906条が遵守されなければならない21)。
(6)同意が不要な場合、同意の撤回
延期できない処置に対する同意が適当な時機に得られなかった場合、処置が患者の推定
的意思に合致しているときは、同意なしに処置を実施しうる(BGB 630d条 1 項 4 文)
。推
定的意思は、個人的な事情、個人的な関心、希望、要望、価値観に基づいて突き止められ
なければならない。平均的な理解力ある患者は普通判断するであろうというような客観的
な基準はここでは後退する22)。
同意は、いつでも、理由を述べることなしに、方式を問わず撤回されうる(BGB 630d
条 3 項)
。
(7)医療者の説明義務
医療者は、患者に対して同意に関する重大な事情をすべて説明することを義務づけられ
る。説明には、とりわけ種類、範囲、実施方法、予期される処置の結果および危険、並び
に診断または治療法に鑑みた必要性、緊急性、適切性、および成功の見込みが含まれる。
説明に際しては、処置の代替となる他の選択肢についても示されなければならない(以上、
BGB 630e条 1 項)。
医療者は侵襲やその危険性などについての説明を行わなければならない。説明の方法、
範囲、程度は個々の具体的な医療の状況、計画された医療処置、緊急性、成功の見込みに
従う。BGB 630e条 1 項 2 文は例示であり、通例説明が重要である事項をすべて網羅して
いるものではない。説明事項には、医療の代替的な他の選択肢もこれに含まれる(BGB
630e条 1 項 3 文)。たしかに、処置の方法の選択は、原則的に医師が先ず考えるべき事柄
である。しかし、医療上有意味な複数の処置がありうる場合には、自己決定権の保護の観
点から、処置の他の選択肢について患者に知らせなければならない。そして、いかなる方
法により処置がなされるか、いかなる危険を患者が受け入れるかについての判断が患者に
委ねられなければならない。説明は口頭する必要がある(BGB 630e条 2 項)23)。
19) Walter, a.a.O., Rn206.
20) Jauernig(Hrsg.)
, a.a.O., §630d Rn4[Mansel].
21) Palandt, a.a.O., §630d Rn3[Weidenkaff]
.
22) Jauernig(Hrsg.)
, a.a.O., §630d Rn6[Mansel].
23) Jauernig(Hrsg.)
, a.a.O., §630e Rn1-3[Mansel].
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同意能力がない患者の医療同意(亀井)
2 ドイツ世話法(Betreuungsrecht)
(1)概要
わが国における成年後見法にあたる、ドイツ世話法(Betreuungsrecht)は、ドイツ民法
典の一部を改正することにより、1992年 1 月に施行された。世話法は、その後 3 度の改正
を経ている。直近の世話法改正は2009年 9 月 1 日施行の第三次世話法改正法によるもので
あり、ここで患者の事前指示制度が導入された。
成年者が、精神疾患または身体障害、知的障害もしくは精神障害のため、自己の事務の
全部または一部を処理することができない場合、世話裁判所は成年者のために世話人を選
任することができる。選任は、本人の申立または裁判所の職権による(BGB1896条 1 項)
。
成年者の自由な意思に反して世話人を付することはできず、また、成年者の事務が任意代
理人やその他の援助により世話人によるのと同様に処理が可能な場合、世話人の選任は必
要ではない(BGB1896条 1 a項、BGB 1896条 2 項 2 文)
(必要性の原則、補充性の原則)
。
世話人は、世話が必要な範囲についてのみ設定される(BGB 1896条 2 項 1 文)
世話人は、被世話人の福祉に矛盾しない限り、被世話人の希望に沿わなければならない。
被世話人が世話人の任命の前に表明した希望についても同様である。世話人が、重要な事
務を処理する前には、被世話人の福祉に矛盾しない限り、被世話人と当該事務について話
し合わなければならない(BGB 1901条 3 項)
。世話人は、任務の範囲内において、被世話
人の疾病または障害を除去、改善し、悪化の予防、またはその緩和に寄与しなければなら
ない(BGB 1901条 4 項)。
(2)BGB 1901 a条、BGB 1901b条
BGB 1901 a条 患者の事前指示書
(1)同意能力がある成年が同意能力がなくなった場合のために、判断時にまだ差し迫っ
ていない特定の健康状態の検査、治療、医療介入に、同意するか拒むかどうかについて、
彼が文書に判断を定めた場合(患者の事前指示書)
、世話人はこの判断が現在の生活実態
および治療状況に合致しているかどうかを検討する。合致している場合、世話人は被世話
人の意思が実現されるよう世話をしなければならない。患者の事前指示書はいつでも方式
を問わず撤回されうる。
(2)患者の事前指示書が存在しない場合、または患者の事前指示書の判断が現在の生活
実態および治療状況に合致していない場合、世話人は被世話人の治療についての希望また
は推定的意思を突きとめ、これに基づき、 1 項により医療措置に同意または拒否するかど
うかを決定しなければならない。推定的意思は具体的な根拠に基づいて突き止められなけ
ればならない。特に、被世話人の過去の口頭または文書による発言、倫理上または宗教上
の信念、およびその他の個人的な価値観念が顧慮されなければならない。
(3) 1 項および 2 項は、被世話人の疾病の種類や段階とは無関係に適用される。
(4)患者の事前指示書は、作成を義務づけられることはない。患者の事前指示書の作成
または提示は契約締結の条件にしてはならない。
(5) 1 項から 3 項は、任意代理人に準用される。
91
人文社会科学研究 第 28 号
BGB 1901b条 患者の意思の確定に関する対話
(1)診療医は、患者の全体的な状態および予後に鑑み、どのような医療措置を必要とす
るか吟味する。診療医と世話人は、BGB 1901条aに適う決定のための基礎としての患者の
意思を顧慮して医療措置を議論する。
(2)1901条a 1 項に従った患者の意思、またはBGB 1901条a 2 項による治療についての
希望もしくは推定的意思の確定に際し、著しい遅滞を生じさせずに可能である限りは、被
世話人の近親者およびその他の信用できる人物は意見表明の機会が与えられるべきである。
(3) 1 項および 2 項は、任意代理人に準用される。
(3)患者の事前指示書
(a)患者の事前指示書(Patientenverfügung)とは、同意能力がある成年が同意能力がな
くなった場合のために、判断時にまだ差し迫っていない特定の健康状態の検査、治療、医
療介入に、同意するか拒むかどうかについて、前もって書面に指示を定めるものである
(BGB 1901a条 1 項)
。なお、患者の事前指示書の作成は義務ではない(同条 4 項)
患者の事前指示書の拘束力は原則として、事前の説明の有無に左右されるものではない
が、「患者の権利の向上のための法律」施行による影響はある。すなわち、明示的に患者
が説明を放棄した場合は別であるが、医療上の処置に対する同意(患者の事前指示書によ
る同意も含む)の有効性は、医療者による事前の説明を前提とする(BGB 630d条 2 項)
。
したがって、事前の説明に対する同意が存在しない場合においては、患者の事前指示書が
存在するときであっても、医療上の説明の後の患者ないしは同意権者による同意が必要と
なる。この場合における患者の事前指示書は、当事者の推定的意思を表示するものにすぎ
ない24)。
(b)患者の事前指示書が存在しない場合の世話人の任務
患者の事前指示書が存在しない場合、または患者の事前指示書の判断が現在の生活実態
および治療状況に合致していない場合、世話人は被世話人の治療についての希望または推
定的意思を突きとめ、これに基づき、 1 項により医療処置に同意または拒否するかどうか
を決定しなければならない。被世話人が、現在自ら同意または拒否について判断しえない
状況にあることは当然の前提である。推定的意思は具体的な根拠に基づいて突き止められ
なければならない。特に、被世話人の過去の口頭または文書による発言、倫理上または宗
教上の信念、およびその他の個人的な価値観念が顧慮されなければならない(BGB 1901a
条 2 項)
。
患者に同意能力がなく、患者の事前指示書も存在しない場合に、患者に医療処置を受け
させるべきとき、患者は、疾病や障害により自ら問題を処理できないのであるから、患者
の代わりに判断する世話人が選任されなければならない(医療処置に関する世話人の判断
が、世話人の職務の範囲に含まれていることが前提となる)
。世話人の判断は、被世話人
の「治療についての希望または推定的意思」の内に拘束される。もっとも、生命に危険が
迫っている場合においては世話人の選任は必要ではない。たとえば交通事故による意識不
24) Palandt, a.a.O., §1901a Rn13[Götz]
.
92
同意能力がない患者の医療同意(亀井)
明状態のような非常事態においては、患者の推定的意思に基づくだけで医療処置が許され
る25)。
世話人の判断が問題となる前に、医師はたえず患者が医療上の説明を理解し、同意に関
して判断できる状況にあるかどうかを吟味しなければならない。
患者の推定的意思の確定に際し、著しい遅滞を生じさせない限りは、被世話人の近親者
およびその他の信用できる人物による意見表明の機会が設けられるべきである(BGB
1901b条 2 項)
。これは「べき規定」である。意見表明の機会が設けられなくとも、世話人
により表示された同意・不同意の判断に瑕疵があるというわけではなく、医療処置が違法
となるわけでもない。少なくとも、被世話人の子や親、配偶者、登録されたパートナーは
「近親者」である。それ以外の親類は、現実にある者にとって個人的に近しい関係にある
場合は、「近親者」に属する。同棲相手、友人、牧師、里親、里子は、
「信頼できる人物」
となりうる26)。
世話人は世話人の名前で同意・不同意をし、被世話人を代理して医師の医療上の説明を
受け、診療記録の閲覧をする。この場合、医師の守秘義務違反は問題とならない。
被世話人に害を及ぼさず、被世話人の希望を捉えることに役立つ限り、被世話人は話し
合いに参加する。世話人に同意権限があっても、世話人は問題について被世話人と話し合
い(BGB 1901条 3 項 3 文27))、被世話人の希望を顧慮しなければならない。客観的に理解
される福祉と被世話人の希望との間に隔たりが存在する場合には、被世話人の主観が重視
されなければならない28)。
世話人は被世話人の「治療についての希望または推定的意思」を確定する。そして、世
話人は「これに基づき」判断する必要がある。
(c)患者の事前指示書が存在する場合の世話人の任務
患者の事前指示書が存在する場合、世話人は、患者の事前指示書が現在の生活実態およ
び治療状況に合致しているかどうかを検討しなければならない。合致している場合、世話
人は被世話人の意思が実現されるよう世話をしなければならない(BGB 1901a条 1 項)
。
被世話人が、自ら同意または拒否について判断しえない状況にあることが前提となる。患
者の意思の確定に際して、著しい遅滞を生じさせない限りは、被世話人の近親者およびそ
の他の信用できる人物による意見表明の機会が設けられるべきである
(BGB 1901b条 2 項)
。
(4)医師および世話人の役割
診療医は、患者の全体的な状態および予後に鑑み、どのような医療処置を必要とするか
吟味する。診療医と世話人は、同意能力のない患者の意思を顧慮して医療処置について議
論する(BGB 1901b条 1 項)。これは医療処置の時点で被世話人に判断能力のない場合に
25) Münchener Kommentar zum Bürgerlichen Gesetzbuch, Bd.8, 6.Aufl, 2012, §1901a Rn38[Schwab]
.
26) Münchener Kommentar zum Bürgerlichen Gesetzbuch, a.a.O., §1901b Rn9[Schwab]
.
27) BGB 1901条 3 項「世話人は、被世話人の福祉に矛盾せず、世話人に要求しうる限りにおいて、被
世話人の希望に沿わなければならない。このことは、被世話人がその希望に明らかに固執していない限
り、被世話人が世話人の任命の前に表明した希望についてもあてはまる。世話人が、重要な事務を処理
する前には、被世話人の福祉に矛盾しない限り、世話人は被世話人とそれについて話し合う」。
28) Münchener Kommentar zum Bürgerlichen Gesetzbuch, a.a.O., §1901a Rn39[Schwab]
.
93
人文社会科学研究 第 28 号
のみ問題となる。医師と世話人の議論の結果、世話人は患者の事前指示書や患者の推定的
意思により確定された患者の意思に従って行動する。このように、BGB 1901b条 1 項は、
被世話人の医療処置に関する判断に先行すべき医師と世話人の「対話の過程」について規
定している。
医師と世話人の間の話し合いでは、①被世話人に同意能力があるか否かがその対象にな
りうる。しかし、これについては世話人には専門知識がないため、診療医に最終的な決定
権限がある(場合に応じて、診療医に協力を求められた精神医学または神経心理学の専門
家と協働して決定する)
。また、②被世話人に判断能力がない場合に世話人に対してなさ
れなければならない医療上の説明や、③同意・不同意が患者の事前指示書または推定的意
思に合致しているか否かの評価が議論の対象となる29)。
患者の事前指示書が存在する場合でも、医師は患者の事前指示書を考慮して、どの医療
処置を勧めるのかを決定しなければならない。
世話人の役割は、①有効な現在の患者の意思または患者の事前指示書が存在する場合、
②患者の推定的意思次第である場合、③いずれでもない場合によって異なる。
①の場合において、世話人は、確定された患者の意思を実行することに力を尽くすこと
になる(BGB 1901a 1 項 2 文参照)。患者の意思の内容および範囲に関して医師と世話人
の意見の相違が生じた場合、世話人は医師に被世話人の治療から手を引かせて、他の医師
に委託することができる。②の場合においては、世話人の同意または不同意の判断に依存
することになる。③の場合においても、世話人は、医師によって提案された医療処置の同
意について判断することになる30)。
被世話人が医療処置により、死亡または重大かつ長期に及ぶ健康上の障害を受ける根拠
のある危険が存在する場合、健康状態の検査、治療行為または医療侵襲についての世話人
の同意は、世話裁判所(Betreuungsgericht)の許可を必要とする。遅延をすれば危険が生
じる場合のみ、許可なしに処置を行うことができる(BGB 1904条 1 項)
。
健康状態の検査、治療行為または医療侵襲についての世話人の不同意または同意の撤回
は、医学上、処置が適切あり、かつ、被世話人が、処置の停止または中断により、死亡ま
たは重大かつ長期に及ぶ健康上の障害を受けることの根拠のある危険が存在する場合、世
話裁判所の許可を必要とする(BGB 1904条 2 項)
。
(5)疾病の種類と段階
BGB 1901a条 1 項および 2 項は、被世話人の疾病の種類や段階とは無関係に適用される。
このBGB 1901a条 3 項は、死への経過がまだ直接生じていなかった場合にも、患者の事前
指示書に定められた臨死介助や治療の中止の意思が従うべき基準となるかいう議論に決着
つけた。患者の事前指示書に(推定的に)定められた患者の意思は、
「基礎疾患の不可逆
の死への経過」が予期されていない場合にも従う基準となる。生命維持の措置の中止は、
それに応じた患者の意思が存在する場合には、原則として認められる31)。
29) Münchener Kommentar zum Bürgerlichen Gesetzbuch, a.a.O., §1901b Rn6[Schwab]
.
30) Münchener Kommentar zum Bürgerlichen Gesetzbuch, a.a.O., §1901b Rn8[Schwab]
.
31) Münchener Kommentar zum Bürgerlichen Gesetzbuch, a.a.O., §1901a Rn48[Schwab]
.
94
同意能力がない患者の医療同意(亀井)
(6)任意代理人
BGB 1901a条 1 項から 3 項による患者の事前指示書および世話人の任務に関する規定は
任意代理人に準用される(BGB 1901a条 5 項)
。
BGB 1901b条 1 項、 2 項の患者の意思の確定に関する対話の規定は任意代理人に準用さ
れる(BGB 1901b条 3 項)。
医療処置についての世話裁判所の許可の規定(BGB 1904条 1 項∼ 4 項)は、任意代理
人に準用される。
(7)まとめ
「患者の権利の向上のための法律」により新たにドイツ民法典に設けられたBGB630d条
は、医療処置の前提として患者の同意を要求している。すなわち、患者に同意能力がない
場合の対応方法として、世話人などの権限を有する者の同意が必要であることが明文化さ
れた。医療上の処置に対する同意を含んだ患者の事前指示書は、事前指示に先立つ医療上
の説明が存在する場合にのみ直接的な拘束力を有するという扱いである。
この同意の前提として、医療者は、患者に同意に関する重大な事情をすべて説明しなけ
ればならない。説明には、とりわけ種類、範囲、実施方法、予期される処置の結果および
危険、診断または治療法に鑑みた必要性、緊急性、適切性、および成功の見込み等が含ま
れる。説明に際しては、処置の代替となる他の選択肢も示されなければならず、患者のイ
ンフォームド・チョイスが確保されることになっている(BGB 630e条 1 項)
。
ドイツ世話法において注目すべき点として、世話人に医療同意権限が与えられているこ
と(それを職務範囲としている場合)
、世話人が、重要な事務を処理する前には(医療行
為等)、世話人は被世話人と話し合わなければならないこと、医師と世話人の役割分担に
ついて明確化がなされていること、診療医と世話人は患者の意思を顧慮して医療措置につ
いて議論することとされていること、近親者や信用できる者による意見表明の機会が設け
られるべきとされていること、重大な医療行為については世話裁判所の関与が予定されて
いること等が挙げられる。
ここから見えてくることは、ドイツにおいては、世話人(代理人)
、医師(診療医)を
はじめとした医療関係者、近親者、信頼できる人物、世話裁判所等は協働する関係にある
といえることである。患者の意思を汲み取り、患者の最善の利益を確保するため、各々が
職分を果たすことができるような体制の整備が進められているのである。このように、ド
イツでは、度重なる法改正により制度の改良が加えられ続けており、患者の人権の尊重、
医療を取り巻く環境の整備が着実に行われていると評価できる。私法の一般法である民法
典を中心として患者支援の仕組みが整備されつつあることも注目すべき点である。
第4 医療同意システム
わが国において、同意能力がない患者に家族・親族がいないなどして同意を得られない
場合、同意をする者がいないために患者は十分な医療を受けることができないことになり
かねない。この場合、医療者の側からすれば、訴訟のリスクを背負って医療行為をするか、
そもそも必要と考えられる医療を断念するといった選択に迫られることになる。医療関係
者以外にも患者を取り巻く周囲の人々に心理的な負担が生じてしまうことも想像に難くな
95
人文社会科学研究 第 28 号
い。前述したように、成年後見人に医療同意権を認めるかどうかについて様々な議論があ
るが、解釈論の枠にとどまらずに、患者の権利が守られ、医療実務がうまく回って行ける
ような法制度整備が急務となっている32)。
成年後見制法が2000年 4 月に施行されてから十余年が経つ。成年後見制度の前身である
禁治産制度からその基本理念は大きく転換した。成年後見制度の基本理念は、自己決定権
の尊重、残存能力の尊重、ノーマライゼーションの実現にあると言われる。このような成
年後見制度は被保護者の財産管理制度をこえた身上監護制度として捉えられることが必要
ではないか。すなわち、
「成年後見制度は、財産管理を含む生活支援の制度、すなわち身
上監護制度として捉えられるべきである。身上監護能力の減退した者を支援するために、
(1)成年後見制度、
(2)地域福祉権利擁護事業、介護保険制度、その他の社会福祉制度、
(3)医療制度、
(4)その他の援助の制度が総合的システムとして位置づけられるべきであ
33)
。
る」
同意能力がない患者の医療同意問題を考える上では、患者と医療者を取り巻く環境の整
備、連携の方法が模索されなければならない。関係者の協働体制が整った医療同意システ
ム、患者支援システムの構築が求められることになる。
患者と医療者の目的は共通しているのであるから、医療関係の構造は対立構造ではなく
協働的構造として捉えられるべきであり、成年後見法は、患者の(推定的)意思を実現す
るため、患者と医療者の間に立ち、相互の信頼関係を取り持つ役割を果たすことが期待さ
れる34)。
身上監護制度としての医療同意システムにおいては、医療者、患者、第三者の協働的な
プロセスが重要となる。このプロセスは第三者によるチェックが可能なものでなければな
らない(プロセスの透明化)35)。
上述したように、ドイツでは、患者を取り巻く世話人(代理人)
、医師、医療関係者、
近親者、信頼できる人物、世話裁判所等が果たすべき役割が明確化されており、役割分担
がなされている。これらの者の連携と協働によって患者の利益を実現しようという体制が
整えられているのである。このような点に関しては、わが国の医療同意システムを考える
上でも参考にすべき点が多いのではないだろうか。
第5 おわりに
高齢化社会の急速な進展により、社会状況も大きく変化し、国家財政にも限りがある中
で、いかに高齢者福祉を図って行くべきかという問題が今後ますます顕在化してくるであ
ろう。認知症高齢者等、判断能力が低下した患者の支援の問題は、広い政策的視野に立っ
32) 岩志和一郎「医療同意システムのあり方―議論の整理と展望」実践成年後見35号(2010年)
。86頁
以下、小賀野晶一『民法と成年後見―人間の尊厳を求めて―』(成文堂、2012年)176頁以下参照。
33) 小賀野晶一『民法と成年後見―人間の尊厳を求めて―』
(成文堂、2012年)226頁。身上監護論につ
いては、同書第 6 章(197頁以下)を参照。
34) 小賀野晶一「医療契約と医療同意」植木哲編『高森八四郎先生古稀記念論文集 法律行為論の諸相
と展開』(法律文化社、2013年)320頁、小賀野晶一「成年後見制度の新しい展開―民法による支援と限
界」日本老年医学雑誌50巻 5 号(2013年)を参照。
35) 名倉勇一郎「医療行為の代行決定―成年後見実務の現場から―」実践成年後見40号(2012年)22頁
以下、および公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート医療行為の同意検討委員会の活動等を
参照。
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同意能力がない患者の医療同意(亀井)
て議論を進めて行くべき問題である。医療同意問題も同じで、各分野の専門家が有機的に
連携できるような制度づくりが求められる。また、それぞれのコミュニティー内で人々が
現実に協働して問題の解決にあたることが必要である。
支援を必要としている患者を生活全般にわたって総合的にバックアップして行くため
に、私人間の生活関係を規律する基本法である民法が果たす役割は大きいのではないか。
さらに言えば、民法が医療同意システムの要となることが正面から議論されるべきではな
いだろうか。
本稿は、成年後見の先進国ともいえるドイツ民法典における医療同意をめぐる法制度に
ついて、近時改正があった部分を中心に検討した。わが国においてかかる医療同意システ
ムを立ち上げるにあたっては、上で検討したドイツ民法に学ぶべき点が大きいものと考え
る。
本稿執筆にあたっては、引用した文献の他、特に、2013年度早稲田大学法学部横川敏雄
記念公開講座『成年後見法制の課題と展望』第 2 回「成年後見人と医療同意権」
(2013年
9 月28日)における岩志和一郎教授のご講演およびその配布資料、並びに下記文献を参照
した。
菅富美枝編著『成年後見制度の新たなグランド・デザイン』
(法政大学出版局、2013年)
田山輝明編著『成年後見制度と障害者権利条約』
(三省堂、2012年)
新井誠=赤沼康弘=大貫正男編『成年後見法制の展望』
(日本評論社、2011年)
富田哲「成年後見と医療同意―外国法を参照する試み」法政論集(名古屋大学)227号(2008年)
樋口範雄『医療と法を考える―救急車と正義』
(有斐閣、2007年)
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