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第2回京都リハビリテーション医学研究会学術集会プログラム

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第2回京都リハビリテーション医学研究会学術集会プログラム
プ ロ グ ラム
講演 会場:国立京都国際会館 アネックスホール(アネックス2)
9:00 〜 9:50
教育講演 1 「脳卒中治療ガイドライン 2015 から読み解く新しい
脳卒中リハビリテーションの流れ」
………… 116
演者
藤原 俊之 東海大学医学部リハビリテーション科学 准教授
座長
水野 敏樹 京都府立医科大学大学院神経内科学 教授
9:55 〜 10:45
教育講演 2 「肩挙上困難の治療と運動器リハビリテーション」…………… 117
演者
今井 晋二 滋賀医科大学整形外科学 教授
座長
佐浦 隆一 大阪医科大学総合医学講座リハビリテーション医学教室 教授
10:50 〜 11:40
教育講演 3 「急性期病院で必要とされるリハビリテーション医療」… … 118
演者
中村 健 横浜市立大学医学部リハビリテーション科学 教授
座長
道免 和久 兵庫医科大学リハビリテーション医学教室 教授
11:55 〜 12:55
教育講演 4 (ヌーンタイムレクチャー)
… ………… 119
「回復期リハビリテーション病棟のあるべき姿」
演者
園田 茂 藤田保健衛生大学七栗サナトリウム 病院長
座長
久保 俊一 京都府立医科大学 副学長
14:10 〜 14:30
…………………………………… 120
ミニレクチャー「よくわかる摂食嚥下障害」
演者
巨島 文子 京都第一赤十字病院リハビリテーション科 部長
座長
川上 寿一 滋賀県立成人病センターリハビリテーション科 科長
14:30 〜 15:30
………………………… 115
特別講演 「地域を元気にするリハビリテーション」
演者
田島 文博 和歌山県立医科大学リハビリテーション医学講座 教授
座長
三上 靖夫 京都府立医科大学大学院リハビリテーション医学 教授
ポスター演題 会場:国立京都国際会館 アネックスホール(アネックス1)
13:05 〜 14:00 ポスター 1 …………………… 座長 池口 良輔
「運動器リハビリテーション」
P1 − 1
人工膝関節全置換術後の疼痛と可動域改善に難渋した 1 症例
住谷 協
P1 − 2
P1 − 3
123
短期リハビリ目的入院でマッケンジー法を応用した指導を行い歩行機能が向上した 1 症例
眞砂 望
公立南丹病院リハビリテーション科……………………………
社会医療法人祐生会みどりヶ丘病院リハビリテーション科 他…
… 123
当院で施行した膝周囲骨切り術後におけるリハビリテーション時の工夫
田中 宏典
市立福知山市民病院リハビリテーション科 他…………………
― 108 ―
124
P1 − 4
両側 TKA 症例における両側同時手術と両側段階的手術との比較
寺田 央
P1 − 5
宇治武田病院リハビリテーション科 他…
…………………… 124
副神経麻痺症例の代償的な上肢側方挙上動作における筋電図学的特徴
島津 昭人
第一岡本病院リハビリテーション科 他…
…………………… 125
13:05 〜 14:00 ポスター 2 「脳血管リハビリテーション 1」…………………… 座長 高橋 守正
P2 − 1注意障害を含めた前頭葉機能障害は近赤外分光法を用いたニューロフィードバック
(NIRS-NFB)の治療効果に影響するのか?
藤本 宏明
森之宮病院神経リハビリテーション研究部 他…………………
125
P2 − 2当院における慢性期脳卒中者の麻痺側上肢に対するボツリヌス毒素 A 療法と集中的
リハビリテーションの併用効果について 益田賢太朗
P2 − 3
P2 − 4
京都桂病院リハビリテーションセンター 他……………………
126
下肢麻痺患者に対する下肢装具効果についての検討
向井 裕貴
13:05 〜 14:00
和歌山県立医科大学リハビリテーション医学 他… ……………
127
ポスター 3「脳血管リハビリテーション2・神経疾患のリハビリテーション」
126
当院における脳卒中診療体制拡充後の脳卒中急性期リハビリテーション患者動向
西田 毅之
京都大原記念病院 他…………………………………………
… …………………………………………… 座長 近藤 正樹
P3 − 1右被殻出血後に意識障害の遷延や重篤な合併症を発症し離床に難渋したが、長期的な
経過が良好であった 1 症例を振り返って 北 久世
京都桂病院リハビリテーションセンター 他……………………
127
P3 − 2集中的なリハビリテーション介入により学業復帰が可能となったインフルエンザ脳症
の1例
原田宗一郎
P3 − 3
……… 128
多巣性運動ニューロパチー 1 症例の歩行における運動学的特徴
高橋 孝多
京都府立医科大学附属病院リハビリテーション部 他…
京都府立医科大学附属病院リハビリテーション部 他…
……… 128
P3 − 4発症から 15 年が経過した慢性期脳出血症例に対し ST 介入なしに tDCS で失語症改善
が得られた 1 症例
森脇 美早
P3 − 5
社会医療法人祐生会みどりヶ丘病院リハビリテーション科 他…
回復期リハビリテーション病棟に転院後パーキンソン病と診断された 1 例
兼松まどか
洛和会音羽リハビリテーション病院……………………………
13:05 〜 14:00 ポスター 4 「回復期・生活期のリハビリテーション」
P4 − 1
129
座長 石野 真輔
当院における FIM 低下の要因
田中 佑樹
… 129
京都大原記念病院…
………………………………………… 130
P4 − 2回復期リハビリテーション病棟に FIM40 点以下で入棟された脳血管疾患の自宅復帰
とその要因について
宮本 一恵
十条武田リハビリテーション病院リハビリテーション科………
― 109 ―
130
P4 − 3立ち上がりテストによる「ロコモ度 1」判定は地域在住高齢者の運動機能および要介
護リスク関連指標を反映するか?
中村 雅俊
P4 − 4
131
介護支援専門員とリハビリテーション職種との連携について
土井 博文
13:05 〜 14:00
同志社大学スポーツ健康科学部 他……………………………
居宅介護支援事業所博寿苑 他………………………………
ポスター 5 「がんのリハビリテーション・言語聴覚療法」
131
座長 中馬 孝容
P5 − 1中枢神経原発性悪性リンパ腫に対する継続的なリハビリテーションの経験
~ Performance Status(PS)の維持を目的として~
白岩 陽一
P5 − 2
……………… 132
当院におけるがん患者リハビリテーションの現状と課題
岡田 裕介
京都桂病院 リハビリテーションセンター 他…
市立福知山市民病院リハビリテーション科 他…………………
P5 − 3全てのがん患者の“生活の質の向上”を目指した Cancer
132
Rehabilitation Candidate
Recruitment システム導入の試み
鈴木 拓弥
P5 − 4
新百合ヶ丘総合病院リハビリテーション科 他…………………
133
気管食道シャント症例における音声リハビリテーションの有用性
塩見 潤
13:05 〜 14:00
京都府立医科大学附属病院リハビリテーション部 他…
……… 133
ポスター 6 「摂食嚥下リハビリテーション・スポーツのリハビリテーション」
座長 宮㟢 博子
P6 − 1
鼻つまみ嚥下が有効であった重症延髄外側梗塞
森 静香
京都第一赤十字病院リハビリテーション科 他…………………
134
P6 − 2おうみ食べてもらい隊 EST 活動報告 〜地域で暮らす人の「食べること」を支援す
るために〜
厚見さやか
P6 − 3
P6 − 4
丸太町リハビリテーションクリニック 他…
13:05 〜 14:00
丸太町リハビリテーションクリニック 他…
………………… 135
ポスター 7 「リハビリテーションにおける新しい試み・
ロボットリハビリテーション」
P7 − 1
………………… 135
女性シニアソフトテニス選手おける身体特性 : 反復横とびと筋力の関係から
芦分 咲紀
134
第 3 中足骨基部疲労骨折を呈した陸上中長距離選手の 1 例
奥野 貴司
滋賀県立成人病センター・滋賀県立リハビリテーションセンター 他………
座長 伊藤 慎英
Balance Exercise Assist Robot を用いたバランス練習における安全性
〜心拍数を指標として〜
清水 直人
P7 − 2Balance
京都府立医科大学附属病院リハビリテーション部 他…
……… 136
Exercise Assist Robot を用いてリハビリテーションを実施した大腿骨近位部
骨折術後の 1 例
岡田 貴文
P7 − 3
綾部市立病院医療技術部リハビリテーション科 他…
………… 136
脊椎症性脊髄症術後症例に対する Balance Exercise Assist Robot の使用経験
山口 正喜
京都府立医科大学附属病院リハビリテーション部 他…
― 110 ―
……… 137
P7 − 4
座位から臥位までの動作における筋電図学的検討
石濱 崇史
P7 − 5
田辺記念病院リハビリテーション部 他…
…………………… 137
上肢回旋運動時の肩関節三次元動態:挙上角度による違い
佐原 亘
大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学(整形外科) 他……
138
共 催 プ ロ グ ラム
日本リハビリテーション医学会近畿地方会
専門医・認定臨床医生涯教育研修会
京都府リハビリテーション教育センター
京都リハビリテーション医学研究会
共催プログラム
15:35 〜 16:10
研修講演 1 ………………………………………………… 141
「障害者とスポーツ」
演者 伊藤 倫之 京都府立医科大学大学院リハビリテーション医学 講師
座長 徳永 大作 京都府立城陽リハビリテーション病院 院長
16:15 〜 17:00
研修講演 2 … ……………………………… 142
「脳疾患のリハビリテーション」
演者 橋本 直哉 京都府立医科大学大学院脳神経機能再生外科学(脳神経外科)教授
座長 藤原 浩芳 京都府立医科大学大学院運動器機能再生外科学(整形外科)准教授
17:05 〜 17:50
研修講演 3 … …… 143
「神経筋疾患・脊髄損傷の呼吸リハビリテーション」
演者 花山 耕三 川崎医科大学リハビリテーション医学 教授
座長 堀井 基行 京都府立医科大学附属病院リハビリテーション部 准教授
― 111 ―
特別講演・教育講演
特 別 講 演
教 育 講 演
地域を元気にするリハビリテーション
―和歌山県立医科大学スポーツ・温泉医学研究所での経験―
田島 文博
和歌山県立医科大学 リハビリテーション医学講座 教授
那智勝浦町立温泉病院内にスポーツ・温泉医学研究所を開設して以来、8 年間を経た。当時、町立温
泉病院は「必ず崩壊する」と言われていた。しかし、整形外科医とリハ科医が着任し、町立病院は存続
している。
我々の本務は研究・教育を行う医学部教員である。したがって、教育・研究を犠牲に出来ない。研究
所という場をここに設置し、英文論文 15 編、修士 4 名、博士 3 名、専門医 7 名を世に送り出した。これ
は、単なる医師不足に応えるためにこのプロジェクトを推進したわけではなく、大局的にみて、魅力あ
る地域医療を構築し、ひいては若い医師に、資格や実績を積ませることが出来たと考えている。この研
究所勤務者から教授を排出することができた。
このプロジェクトを推進した他の理由は、リハ科がいかに地域医療に貢献する診療科であるかを示す
ことであった。具体的には、和歌山医大で実践した急性期からの高負荷長時間のガシガシリハを徹底し
た。理学療法士作業療法士を増員していただき、勉強会をし、リハの質を担保した。リハ科医は整形外
科と内科と協力し、シームレスに診療した。もちろん、手術も手伝い、救急を受け、内科的管理も行っ
た。リハ科病棟も一般病床の中で新設し、リハ科医 1 人で 30 人もの患者を診なくてはならないほど患者
であふれた。訪問の実施、頚動脈エコー検診の開始により、新規患者の開拓にも力を入れた。
以上のようにわずか 8 年だが、研究面では運動と温泉療法について、そして、教育を行い、結果とし
て、医師の育成と地域医療の発展に尽力出来たなら、わたくしどもの試みは成功したと言える。
講師略歴
田島 文博(たじま ふみひろ)
1984 年
産業医科大学医学部医学科 卒業
1990 年
同 大学院博士課程卒業
1992 年
ニューヨーク州立大学バッファロー校医学部 リハビリテーション科 Assistant Professor
1994 年
産業医科大学 リハビリテーション医学教室 講師
2000 年
浜松医科大学医学部附属病院 リハビリテーション部 助教授
2003 年
和歌山県立医科大学 リハビリテーション医学講座 教授 2008 年
和歌山県立医科大学スポーツ・温泉医学研究所所長 兼任
2009 年
文部科学省先端科学研究所指定 和歌山県立医科大学げんき開発研究所所長 兼任
2014 年
和歌山県立医科大学附属病院 副院長 兼任
文部科学省認定 共同利用・共同研究拠点 和歌山県立医科大学みらい医療推進センター センター長 兼任
学 術 活 動: 日本リハビリテーション医学会評議員・監事、日本脊髄障害医学会理事(第 46 回学術集会会長)、日本障
害者スポーツ学会常任理事、日本体力医学会評議員(第 70 回日本体力医学会会長)
社会的活動: 財団法人日本障害者スポーツ連盟医学委員会副委員長、同メディカルチェック委員会委員長
― 115 ―
特別講演・教育講演
特別講演
特別講演・教育講演
教育講演 1
脳卒中治療ガイドライン2015から読み解く新しい
脳卒中リハビリテーションの流れ
藤原 俊之
東海大学医学部専門診療学系リハビリテーション科学 准教授
脳卒中診療ガイドライン 2015 改訂により、脳卒中リハビリテーションにおいてもいくつか大き
な変更がなされた。
脳卒中リハビリテーションに際して重要な 3 つの要素として 1)量依存性(dose dependent)、2)
課題特異性 (task specificity)、3)神経可塑性(neural plasticity) がある。
運動障害、ADL に対するリハビリテーションでは、早期からの積極的なリハビリテーションを
強く行うことが勧められ、さらに、量依存性の考え方に従い、訓練量や頻度を増やすことが強く勧
められている。下肢機能や日常生活動作に関しては課題特異性の考え方より、課題を繰り返す、課
題反復訓練が勧められている。上肢機能障害、歩行障害に対するリハビリテーションにおいても量
依存性と課題特異性に従い、日常生活での使用量や歩行訓練の量を増やすことが勧められ、さらに
神経可塑性を誘導するための、neuromodulation として電気刺激や非侵襲的脳刺激がある。
本講演では、脳卒中ガイドライン 2015 で述べられている、主に運動障害、ADL 障害、上肢機能
障害、歩行障害に対するリハビリテーションにつき概説するとともに、今後の流れとしての新しい
脳卒中リハビリテーションについても解説することとする。
講師略歴
藤原 俊之(ふじわら としゆき)
1993年3月 福井医科大学卒業
1993年4月 慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室入局
2002年4月 Institute of Neurology (London, UK) Research Fellow (Prof. John Rothwell)
2005年9月 慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室専任講師
2014年4月 東海大学医学部専門診療学系リハビリテーション科学准教授
主な学会活動等
日本リハビリテーション医学会(代議員、脳卒中治療ガイドライン委員会委員長、)
American Society of Neurorehabilitation、Society for Neuroscience、日本臨床神経生理学会 ( 認定医試験問題作成委員 )、
日本脊髄障害医学会、日本脳卒中学会、日本義肢装具学会、日本神経科学会、日本運動療法学会、日本バイオメカニズ
ム学会(理事)
― 116 ―
肩挙上困難の治療と運動器リハビリテーション
今井 晋二
滋賀医科大学 整形外科学 教授
運動器分野での症候と診断については、色々バリエーションがあります。間欠跛行では腰部脊柱
管狭窄症と閉塞性動脈疾患の鑑別が要求され、トレンデレンブルグ歩行では変形性股関節による中
殿筋機能不全や筋ジストロフィーによる骨盤帯筋群の筋力低下が鑑別されなければなりません。
数ある運動器の症候の内、肩関節挙上困難は頻回に遭遇する症状・症候であるにも拘わらず、こ
れを一まとめに解説している総説や教科書はあまり遭遇しません。肩関節挙上困難の原因疾患は、
中枢神経系疾患、末梢神経系疾患・損傷、腱板断裂、肩関節構成軟部組織の疾患など多岐にわたり
ます。
中枢神経系疾患では脳血管障害や頚髄症が肩挙上困難の原因となり、末梢神経損傷では腕神経叢
損傷や翼状肩甲などが原因となります。脳血管障害は神経内科医やリハビリテーション医が担当す
ることが多く、腕神経叢損傷は手外科・マイクロサージャリー医の分野です。腱板断裂、肩関節周
囲炎は、肩関節外科医に紹介されるでしょう。担当のサブ・スペシャリティーが大きく異なる為に
「肩関節挙上困難」を横断的に総説することは困難と思われます。
私はアムステルダム自由大学での留学から滋賀医大整形に帰学した 2000 年から手・上肢外科を
担当し、特に 2006 年からは上肢の中でも肩関節外科に特化してきました。また、平成 14 年から
2013 年まで滋賀医科大学リハビリ部准教授として回復期リハビリ病棟で脳血管患者の治療に携わ
りました。脊椎外科については、我が国の草分け的存在であった福田眞輔名誉教授から手術指導を
受け、滋賀医大整形外科教授に就任する昨年まで脊椎外科も執刀しておりました。
思い起こせば「肩関節挙上困難」は常に私の頭から離れたことのない症候かつ、解決しなければ
ならない問題であり続けました。そのような私の小経験の中から、皆さまの臨床にすこしでも役立
つものがあればと考え、ご紹介させていただきます。
講師略歴
今井 晋二(いまい しんじ)
1989年6月
滋賀医科大学医学部附属病院 整形外科・研修医
1990年4月
滋賀医科大学大学院医学研究科博士課程入学
1996年1月
滋賀医科大学医学部 解剖学第一講座・助手
1996年6月
ヘルシンキ大学医学部 整形外科にて留学・研究
1998年11月
日本学術振興会・特別研究員(PD)
2000年7月
アムステルダム自由大学 歯学部にて留学・研究
2001年7月
滋賀医科大学医学部 整形外科学講座・助手
2004年11月
滋賀医科大学医学部 附属病院 リハビリテーション部・助教授
2012年5月
滋賀医科大学医学部 整形外科学講座・准教授
2015年8月
滋賀医科大学医学部 整形外科学講座・教授
― 117 ―
特別講演・教育講演
教育講演 2
特別講演・教育講演
教育講演 3
急性期病院で必要とされるリハビリテーション医療
中村 健
横浜市立大学医学部 リハビリテーション科学 教授
近年、急性期病院における急性期リハビリテーション(リハ)が重要であることは広く認識され
ている。脳卒中治療ガイドラインにおいても、グレード A で急性期リハは推奨されている。急性期
リハは、リハ必要期間を短縮するのみではなく、最終的な身体能力も向上させることが報告されて
いる。急性期リハは、まず廃用を防止するために可能な限り早期より離床を実施する事が重要であ
るが、身体機能そのものを改善するために高負荷の運動を行う事も重要である。当然、運動負荷に
は筋力や心肺能力を向上させる重要な効果があるが、運動そのものが認知機能や麻痺の改善や創傷
治癒の促進にも効果がある事が分かってきている。さらに、離床を行い座位や立位負荷などの重力
負荷をかけるだけで、意識障害を改善させる事も分かってきている。
我々は、大学病院において発症急性期から積極的に離床と運動負荷を実践し成果をあげている。
人工呼吸器管理が必要な重症 ICU 患者においても、ほぼ全症例に対し入院直後よりリハを開始し
早期離床を進めている。また、重度の片麻痺を伴う重症脳卒中患者でも、発症直後からリハの介入
を行い発生当日から離床を開始する事もある。さらに、食道癌や膵臓癌など高侵襲の手術を要する
周術期の患者に対しても、手術前より心肺能力の向上を図り、手術翌日からの離床を実践してい
る。当施設のデータから、重篤な ICU 患者や脳卒中患者においても、発生 1 − 2 日以内の超急性期
からリハ介入する事で、退院時の身体能力が有意に高く改善する事が判明している。ただ、病状が
安定していないこの様な重症患者を超急性期より離床し、運動負荷をかけるためには厳密な医学管
理が必要であり、リハスタッフへの教育も重要である。
急性期病院では、重篤疾患の患者に対しても積極的に超急性期よりリハ介入し、厳密な医学的管
理のもと離床を進め高負荷の運動を行う事が、リハ医療として治療効果を上げるためには必要であ
る。
講師略歴
2007 年
中村 健(なかむら たけし)
1993 年
産業医科大学医学部卒業
ニュージャージー医科歯科大学 神経外科 研究
留学
2009 年
産業医科大学リハビリテーション医学教室入局
那智勝浦町立温泉病院リハビリテーション科
1994 年
三井大牟田病院リハビリテーション科
1996 年
愛媛労災病院リハビリテーション科
1997 年
産業医科大学リハビリテーション医学 助手
2000 年
門司労災病院リハビリテーション科 副部長
2005 年
和歌山県立医科大学リハビリテーション医学
講座 教授
講師
現在に至る
部長
2012 年
和歌山県立医科大学リハビリテーション医学
准教授
2016 年
― 118 ―
横浜市立大学医学部リハビリテーション科学
回復期リハビリテーション病棟のあるべき姿
園田 茂
藤田保健衛生大学七栗サナトリウム 病院長
回復期リハビリテーション ( 以下、リハ ) 病棟は 2014 年度のうちに 7 万床を超えて増え続けてい
る。地域医療構想の区分、超急性期、急性期、回復期、維持期のなかで、回復期は将来に向けさら
に増床の必要性が説かれ、そのなかに含まれる回復期リハ病棟は過当競争の時代に突入する。
一律に 9 単位 3 時間の訓練を行うことへの疑念も中央社会保険医療協議会提示され、今、回復期
リハ病棟に必要なのはリハの質の担保・向上である。Donabedian による structure-process-outcome
model に当てはめて回復期リハ病棟を検討することは有用である。病棟専従の療法士数は、最小限
の数名の病棟から、40 名を超える病棟まで非常に幅が広く、それだけでも提供する医療の質が大
きく異なってくる。さらに、同じ 20 分の訓練を行った時の訓練効果の検証も必要であり、そのた
めのシステムをどう組み上げるかが運営のポイントとなる。
療法士のみならず多職種チームをいかに有効に機能させるかも重要である。患者の個別性に配慮
しつつ、野放図にならないようにしなければならない。学習の概念はとても大切で、患者への直接
的な治療に関しても、運営システムにおいても、フィードバックをいかになし得るかが向上の鍵を
握る。
時代は情報公開を行っていく流れにあり、病院機能評価認定、地域医療構想での今後の公開項
目、回復期リハ病棟協会実態調査での個別施設情報公開などに乗り遅れないようにすべきであろ
う。
講師略歴
園田 茂(そのだ しげる)
1985 年 慶應義塾大学医学部卒業、同大学リハビリテーション科入局
1995 年 東京都リハビリテーション病院医長
1997 年 慶應義塾大学月が瀬リハビリセンター専任講師
2000 年 藤田保健衛生大学医学部リハビリ医学講座助教授
2002 年 同教授
2003 年 藤田保健衛生大学七栗サナトリウム病院長(現職)
学会活動:回復期リハビリテーション病棟協会会長、日本リハビリテーション医学会代議員、日本脳卒中学会幹事
― 119 ―
特別講演・教育講演
教育講演 4
特別講演・教育講演
ミニレクチャー
よくわ か る 摂 食 嚥 下 障 害
巨島 文子
京都第一赤十字病院 リハビリテーション科 部長
このレクチャーでは嚥下の基礎と嚥下障害の評価および対応について、症例を用いてわかりやす
く解説する。
嚥下とは「食事」という日常の大きな楽しみを支える機能であり、食塊運搬機能と気道を防護す
る機能を併せ持つ。嚥下運動は多数の嚥下関連筋群による、高い再現性を持った運動である。先行
期は食物を認識し、口腔に取り込むまでの行動を指す。口腔内で咀嚼して食塊形成し、咀嚼した食
物を口腔から咽頭へ移送する。咽頭期では嚥下反射により喉頭挙上、喉頭閉鎖、咽頭収縮、食道入
口部開大などの運動がある。呼吸、発声などの機能と関連する。食道期は蠕動により食物を食道入
口部から胃に送る運動である。
摂食嚥下障害に対しては、診察、評価、スクリーニング、検査などを行って治療計画を立てる。
評価には反復唾液嚥下テスト、水飲みテスト、フードテストなどを用いる。必要に応じて嚥下内視
鏡検査、嚥下造影検査などを行う。
嚥下障害の治療とは、水分・栄養管理、阻害因子の除去、口腔ケア、食品調整、体位の調整、リ
ハビリテーション訓練、手術治療などがある。残存機能を生かした生活の工夫や環境調整、精神的
サポートなど広いアプローチである。嚥下関連筋の筋力トレーニング、嚥下反射の誘発、呼吸リハ
ビリテーションなどの基礎訓練を行いながら、姿勢調整・食品調整により誤嚥を予防して直接訓練
を進める。近年、電気刺激治療や磁気刺激治療などの治療もある。重症例ではボツリヌス毒素注入
療法や手術療法を検討する。
嚥下障害は誤嚥や栄養障害、肺炎を引き起こし、予後を決定する因子となる。誤嚥を予防してリ
ハビリテーションを行い、安全な経口摂取を目指すことは重要である。
講師略歴
巨島 文子(おおしま ふみこ)
2012 年 4 月
1989 年 3 月
浜松医科大学 医学部 医学科卒業
学会及び社会活動:
1989 年 6 月
浜松医科大学 第一内科
日本神経学会 専門医 指導医
1990 年 6 月
東京都健康長寿医療センター 感染症科
日本静脈経腸栄養学会 認定医 評議員
1992 年 6 月
横浜労災病院 神経内科
日本嚥下医学会 理事
1996 年 6 月
京都第一赤十字病院 神経内科
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 評議員
― 120 ―
同院 リハビリテーション科
ポスター演題
ポスター演題
13:05 ~ 14:00 ポスターセッション(55 分)
ポスター 1 運動器リハビリテーション 座長 池口良輔
P1-1
人工膝関節全置換術後の疼痛と可動域改善に難渋した 1 症例
住谷 協(PT)、林田達郎、村上幸治
公立南丹病院 リハビリテーション科
【はじめに】 人工膝関節全置換術(TKA)は変形性膝関節症に対する手術として良好な成績が報告されてい
るが、15%の症例で術後に疼痛が慢性化するという報告がある。今回、TKA 後に疼痛が長期間持続し可動域
【症例】
67 歳、女性。5 年前頃から特に誘因なく左膝関節部痛を自覚し、近医で保存療法を施行されていた。
疼痛が徐々に増強し歩行障害を生じるようになってきたため、当院を紹介され受診した。当院にて左 TKA を
施行されたが、術後 1 週頃から創部を中心とした著しい疼痛を自覚し、その後も疼痛が持続した。消炎鎮痛
剤の投与や理学療法により疼痛は徐々に軽減し、術後 5 週で退院したが、退院直後から創部周囲の疼痛が再
発し、さらに臀部から下肢全体に疼痛が拡大してきたため、外来通院リハビリテーションを開始した。超音
波療法、関節ファシリテーション、自動運動を中心とした ROM 運動、ADL 指導、歩行訓練、心理的な不安
に対するケアを施行し、術後 6 カ月で疼痛は軽減し ROM も改善した。
【考察】 TKA 後の疼痛が膝関節部に限局せず腰部、下肢全体にまで拡大しており、その要因として不良姿
勢、跛行による腰椎関節内運動機能障害、疼痛持続による心理的影響も考えられた。
【まとめ】 著明な術後疼痛に対しては運動療法、物理療法、薬物療法のみならず心理的サポートなど多方面
からのアプローチが必要である。
P1-2
短期リハビリ目的入院でマッケンジー法を応用した指導を行い
歩行機能が向上した 1 症例
1)
1)
2)
眞砂 望(PT) 、森脇美早 、成田 渉 、長谷 斉
1)
2)
)
2)
社会医療法人祐生会みどりヶ丘病院 リハビリテーション科、 同 脊椎脊髄外科センター
【はじめに】 間欠性跛行を呈する腰部脊柱管狭窄症に約 1 週間の入院での運動指導を中心とした理学療法を
行い、連続歩行距離の改善がみられた症例を経験した。
【対象】 73 歳、男性。既往に脊椎側弯症、高血圧症を有する。数年前から腰部脊柱管狭窄症を認め 1 年前
に L2/3、3/4、4/5 の除圧術を受け連続歩行距離が術前約 30m から約 300m に拡大した。その後、社会復帰
したが徐々に腰痛と右下肢痛が再発し、灼熱感の範囲が拡大し当院入院した。入院時連続歩行距離は 500m。
JOABPEQ は疼痛関連障害 28.5、腰椎機能障害 75.0、歩行機能障害 28.6、社会生活障害 51.4、心理的障害 24.3
であった。
【方法】 今回、症状改善目的に入院し 1 週間のマッケンジー法を実施した。運動指導では 1 日 5 回の自主練
習をとりいれた。当初は伸展のみ行ったものの効果が少なかったが、側弯を矯正する運動を加えることで
症状が軽減した。入院中の薬物療法は入院前からのノイロトロピン、エチゾラム、トラムセットを継続し
NSAIDs は使用しなかった。
【結果】 退院時 JOABPEQ は心理的障害が 45.6 と有意に改善し、連続歩行は 25 分間で 1400m と大きく改善し
た。
【考察】 難治性である腰部脊柱管狭窄症の改善に、薬物療法内容を変更することなく短期間の理学療法での
運動指導が有効だった。側弯を矯正する運動を加えて体幹伸展を行うことで可動域が向上して効果が得られ
たと考える。腰部脊柱管狭窄症にマッケンジー法をとりいれた理学療法を考慮すべきである。
― 123 ―
ポスター演題
(ROM)の改善に 6 カ月を要した症例について検討した。
13:05 ~ 14:00 ポスターセッション(55 分)
P1-3
当院で施行した膝周囲骨切り術後における リハビリテーション時の工夫
1)
1)
1)
2)
2)
2)
田中宏典(PT) 、田和靖成 、平山宏史 、金村 斉 、木田圭重 、佐々木健太朗 、中村紳一郎
1)
2)
2)
市立福知山市民病院 リハビリテーション科、 同 整形外科
【はじめに】 変形性膝関節症(以下膝 OA)や特発性大腿骨内側顆骨壊死症(以下膝 ON)に施行した骨切り
ポスター演題
術に対して、早期から ROM 訓練および立位、歩行訓練を行っている。当院における膝周囲骨切り術後のリ
ハビリ時の工夫について報告する。
【対象と方法】 H27 年 1 月以降、膝周囲骨切り術を施行した 7 例を対象とした。内側型膝 OA が 4 例、膝 ON
が 1 例、 外 側 型 OA が 2 例 で あ っ た。opening wedge high tibial osteotomy ( 以 下 OWHTO) が 4 例、oblique
rotational high tibial osteotomy ( 以下 ORHTO) が 1 例、distal femoral varus osteotomy ( 以下 DFO) が 2 例であっ
た。年齢は 37 歳から 73 歳であった。OWHTO、ORHTO は術翌日から部分荷重を開始し、術後 2 週で全荷重
歩行を施行した。DFO は術後 3 週間免荷とし、術後 6 週で全荷重歩行を施行した。
【結果】 全例で骨切り部の矯正損失は認めず、計画どおりの荷重訓練をすすめることができた。
【考察】 膝周囲骨切り術におけるリハビリの目標は、ROM 制限を作らないこと、筋力を維持すること、骨
切り部の疼痛を出さずに荷重訓練を行うことである。OWHTO は伸展制限が生じやすく、完全伸展の獲得が
重要となる。一方 DFO は屈曲制限が生じやすい。また早期荷重を獲得するためには、臥位・座位にて術側へ
の体重移動を促すことが重要であった。
P1-4
両側 TKA 症例における両側同時手術と両側段階的手術との比較
1)
2)
2)
2)
2)
2)
2)
寺田 央(MD) 、清水長司 、河合生馬 、斎藤令馬 、吉田敦彦 、岸田愛子 、勝見泰和 、道免和久
1)
2)
3)
3)
宇治武田病院 リハビリテーション科、 同 整形外科、 兵庫医科大学 リハビリテーション医学教室
【目的】
人工膝関節形成術後の歩行能力獲得時期などを調査し、両側同時 TKA(以下同時 TKA)群と両側段
階的 TKA(以下段階 TKA)群とで比較検討した。
【対象】 2015 年 3 月 1 日から 2015 年 8 月 31 日までの間に両側 TKA を施行した 12 例 24 膝(同時 TKA7 例、段階
TKA5 例)、男性 3 例、女性 9 例、平均年際 73.67 ± 6.06 歳で全例変形性膝関節症であった。
【方法】 年齢、Body Mass Index、手術時間、入院日数、歩行機能(平行棒内歩行、T 字杖歩行、階段昇降が
見守りでできるまでの経過期間)、POD1 日目と 3 日目の体動時術後急性疼痛、JOA スコア(術前、術後 1 カ
月後の変化)を調査し 2 群間の比較には Mann-Whitney’sU Test を有意水準 5%未満で用いた。
【結果】 両群間比較で入院日数(P < 0.004)、T 字杖歩行訓練(P < 0.0409)と階段昇降訓練(P < 0.0206)
の開始時期、JOA スコアの階段昇降能力(P < 0.0202)と腫脹(P < 0.0073)の改善で有意差が認められた。
また、入院費については同時 TKA 群は 322481 ± 36155.16 点、段階 TKA 群で 360935 ± 4747.021 点と段階 TKA
群の方が約 38154 点高いが有意差は認めなかった。
【考察】 両群間比較で、入院日数が短くなり、術後急性期疼痛では段階 TKA 群と差が無く、JOA スコアが段
階昇降能力と腫脹で有意に改善し、医療費は有意差は認めなかったが同時 TKA の方が約 40 万円安い結果と
なり同時 TKA は有用な方法であると考えられた。
― 124 ―
13:05 ~ 14:00 ポスターセッション(55 分)
P1-5
副神経麻痺症例の代償的な上肢側方挙上動作における筋電図学的特徴
1)
1)
1)
島津昭人(PT) 、三浦雄一郎 、福島秀晃 、森原 徹
1)
2)
2)
第一岡本病院 リハビリテーション科、 京都府立医科大学大学院 スポーツ障害予防医学講座
【はじめに】 副神経麻痺では僧帽筋機能不全による肩甲骨運動障害を生じ、肩関節外転が困難となる。しか
し代償機能により上肢側方挙上が可能となる症例も経験する。副神経麻痺による僧帽筋機能不全症例におい
【症例】 68 歳男性、平成 X 年 1 月に右頸部郭清術後に右副神経麻痺を生じ肩関節外転が困難となった。同年 4
月にリハビリ目的で当院外来受診した。肩関節には他動可動域制限を認めなかったが自動肩関節外転可動域
は 90°であった。しかし肩関節外旋を強調させた外転では肩甲骨面方向へ軌道が変化しながら 150°まで可能
であった。僧帽筋の収縮は触知できなかった。
【筋電図評価】 ①外転、②外旋を強調させた上肢側方挙上時の筋活動を表面筋電図で比較した。被検筋は大
胸筋鎖骨部、三角筋全線維、前鋸筋、棘下筋とした。三角筋後部線維は①で過剰な活動を認めたが②では挙
上に伴い活動漸減を認めた。大胸筋鎖骨部は②で挙上に伴い活動漸増を認めた。また②において三角筋後部
線維の活動漸減は大胸筋の活動漸増と同期していた。
【考察】 本症例の上肢側方挙上では挙上に伴い大胸筋鎖骨部の活動増加と三角筋後部線維の活動抑制によっ
て肩関節水平内転を伴う上肢側方挙上になったと考えた。挙上初期から肩関節を外旋させることで上腕骨大
結節稜を上方にし、大胸筋鎖骨部活動による側方挙上を獲得できたと考えた。副神経麻痺症例では肩関節外
旋を強調させるリハビリテーションが有効となる可能性がある。
ポスター 2 脳血管リハビリテーション 1 座長 高橋守正
P2-1
注意障害を含めた前頭葉機能障害は、近赤外分光法を用いた
ニューロフィードバック(NIRS-NFB)の治療効果に影響するのか?
1)
1, 2)
1)
1)
1)
1)
藤本宏明(MD) 、三原雅史 、服部憲明 、畠中めぐみ 、矢倉 一 、河野悌司 、
1)
1)
1)
2)
1)
長廻倫子 、吉岡知美 、角田渓太 、望月秀樹 、宮井一郎
1)
2)
森之宮病院 神経リハビリテーション研究部、 大阪大学 神経内科・脳卒中科
【はじめに】 以前、われわれは NIRS を用いたニューロフィードバック(NIRS-NFB)システムを開発し、脳卒中後上
肢麻痺の改善促進を報告した。今回は姿勢バランスに着目した。これまでに姿勢バランスと補足運動野(SMA)との
関連が示唆され、NIRS-NFB を用いた SMA 活動の賦活が、姿勢バランス障害の改善に有効か検証を始めた。しかし、
前頭葉機能障害例ではリハ効果を減弱させることがあり、NIRS-NFB にも影響する可能性がある。
【対象と方法】 回復期リハ中の脳卒中後患者 10 名(女性 3 名、59.8 ± 9.5 歳、発症後 115.7 ± 18.6 日)を対象に、
FAB を用いて High 群(FAB ≧ 15)と Low 群(FAB < 15)に 5 名ずつに分けた。通常リハに加え、姿勢関連運動想
像を併用し、NIRS-NFB を 2 週間で計 6 回行った。臨床評価は 10m 歩行と TUG とし、介入直前値を 100%とした。
【結果】 両群の介入前値に有意差はなかった。両群とも介入前後で SMA 活動が上昇した。介入直後と 2 週間後で、
10m 歩行は High 群が 68.5%、57.5%、Low 群が 77.0%、71.7%となり、TUG は High 群が 72.8%、66.3%、Low 群が
85.6%、73.6%となったが交互作用(群×時間)はなかった。
【考察】 今回のフィードバック法では、軽度前頭葉機能障害例も課題に対して注意を向けさせられた可能性がある。
【まとめ】 少数例ではあるが、SMA をターゲットとした NIRS-NFB は軽度前頭葉機能障害例にも効果が示唆された。
― 125 ―
ポスター演題
て上肢側方挙上の筋電図学的分析をおこなったので報告する。
13:05 ~ 14:00 ポスターセッション(55 分)
P2-2
当院における慢性期脳卒中者の麻痺側上肢に対する ボツリヌス毒素A 療法と集中的リハビリテーションの併用効果について
益田賢太朗(PT)、中井秀典、増田 剛、垣田清人
京都大原記念病院
ポスター演題
【はじめに】 2014 年 4 月∼ 2015 年 4 月の期間にボツリヌス毒素 A(以下 BoNT-A)療法と集中的リハビ
リテーション(以下集中リハ)を行った患者に対し効果の調査を行った。
【対象と方法】 対象は当院で肘・手関節屈筋群への BoNT-A 施注と直後の集中リハ目的で入院した患者
20 名(年齢 62.3 ± 9.3 歳、男 13・女 7 名、罹患期間 4.1 ± 2.5 年)である。集中リハは 120 分 / 日実施。入
退院時に肘関節伸展・手関節背屈の可動域(以下 ROM)、肘・手関節屈筋群の Modified Ashworth Scale
( 以 下 MAS)、Fugl-Meyer Assessment( 以 下 FMA) を 評 価 し た。ROM は 対 応 の あ る t 検 定、MAS・
FMA は wilcoxon 符号付順位検定にて分析した。評価値は厳重管理のもと個人が特定されないよう個人
情報保護に注意し、倫理的配慮に関しては委員会の承認を得た。
【結果(入院時→退院時の平均値・t 値または P 値)
】 肘関節伸展 ROM は -10.0 →− 2.5°t=-3.17・MAS
は 1.7 → 1.1 P=0.000、 手 関 節 背 屈 ROM は 30.0 → 48.5°t=-6.18・MAS は 2.0 → 1.4 P=0.001、FMA は
19.0 → 22.3 P=0.008 の結果が得られた。
【考察・まとめ】
今回、BoNT-A 投与後 4 ∼ 8 週で抗痙縮効果が最大になるとされている期間よりも短
期入院であったが ROM・MAS・FMA で改善が得られた。要因としては BoNT-A 療法による痙縮軽減に
伴い、ROM・FMA の状態に合わせた入院中の集中リハ実施によるものと考えられる。今後、症例数を
増やし調査を続けていきたい。
P2-3
当院における脳卒中診療体制拡充後の 脳卒中急性期リハビリテーション患者動向
1)
1)
1)
1)
1)
西田毅之(PT) 、亀位 芳 、白岩陽一 、北 久世 、小藤大樹 、
1)
2)
2)
3)
宮﨑博子 、冨井康宏 、山本康正 、宮本淳一
1)
2)
3)
京都桂病院 リハビリテーションセンター、 同 神経内科、 同 脳神経外科
【はじめに】 2014 年 4 月に脳血管障害患者の診療拡充のため、常勤の脳神経内科医が増員された。2014 年 4
月から 2015 年 9 月末日まで(18 ヶ月間)にリハ依頼のあった脳卒中患者の動向を調査した。
【対象と方法】 対象は、脳神経内・外科からリハ依頼のあった脳卒中患者(SAH 除く)133 例である。年齢、
性、脳卒中病型、在院日数、入院からリハ開始までの日数、入院から初期離床(端座位以上)までの日数、
入院時 NIHSS、mRS(発症前・退院時)、FIM(リハ開始・終了時)および転帰を後方視的に調査した。また、
退院時の転帰より自宅群・回復期群および施設療養群の 3 群に大別し、統計学的手法を用いて評価した。
【結果】 脳卒中病型は脳梗塞 / 脳出血 96/37 例、男性 / 女性 69/64 人、転帰は自宅 60、回復期 42、施設療養
22、死亡 9 例であった。自宅 / 回復期 / 施設療養群の順に、平均年齢 71 ± 13/75 ± 11/86 ± 8 歳(p<0.01)、在
院日数 19 /33 /34 日(以下中央値)(<0.01)、初期離床 2.0/4.5/4.0 日(<0.01)、入院時 NIHSS3/7/13(<0.01)、
発症前 mRS0/1/3(<0.01)、退院時 mRS1/4/5(<0.01)、開始時 FIM98/45/26(<0.01)、終了時 FIM122/58/27
(<0.01)、FIM 獲得効率 1.0/0.4/0.0(<0.01)であった。群間で差があった(<0.05)主な項目は、年齢は自宅・
回復期および療養群間、初期離床は自宅・回復期および療養群間、入院時 NIHSS は自宅・回復期および療養
群間、発症前 mRS は療養・自宅および回復期群間、FIM 獲得効率は療養・自宅および回復期群間であった。
【まとめ】 当院は地域の基幹的中心的な急性期の医療を担うことを基本理念として掲げており、脳血管障害
患者の急性期医療の充実は必須である。今回、診療拡充後の急性期脳卒中患者の動向、急性期リハの成績を
振り返り、今後の更なる展開に繋げたい。
― 126 ―
13:05 ~ 14:00 ポスターセッション(55 分)
P2-4
下肢麻痺患者に対する下肢装具効果についての検討
向井裕貴(MD)1)、西村行秀 1)、中村 健 2)、荒川英樹 1)、石田和也 1)、尾川貴洋 1)、田島文博 1)
2)
1)
和歌山県立医科大学 リハビリテーション医学、 横浜市立大学医学部 リハビリテーション科学
【はじめに】 下肢麻痺に対する治療法の一つとして装具療法がある。脳血管障害の患者に対する装具療法の
報告は多数あるが脊髄障害や末梢神経障害による下肢麻痺患者に対する装具療法の報告は今だ少ない。今
【対象と方法】 自立歩行可能な脳血管障害による片麻痺患者 49 名、末梢神経障害による単麻痺患者 13 名
を対象とし、ともに短下肢装具を用いた状態と装具を外した状態で 6 分間歩行距離、10m 歩行速度、Berg
Balance Scale(バランス評価)を行い比較検討した。
【結果】 両群ともに装具を装着したほうが 6 分間歩行距離、10m 歩行速度、Berg Balance Scale(バランス評価)
いずれも有意に装具を外した状態よりもよい結果が得られた。しかし、その改善率は脳血管障害者群のほう
が末梢神経障害者群よりよかった。
【考察】 両群とも装具を使用したほうが装具を使用しない場合より結果が良かったが、脳血管障害者群の改
善率のほうが末梢神経障害者群より良かった。これは末梢神経障害による下肢麻痺患者は麻痺部以外の健常
部での代償がしやすいことが考えられる。しかし、末梢神経障害者による下肢麻痺患者に対しても装具を用
いることにより有意に 6 分間歩行距離、10 m歩行速度、Berg Balance Scale(バランス評価)が改善した。
【まとめ】 脳血管障害による片麻痺患者に対してだけでなく末梢神経障害による下肢麻痺患者に対しても下
肢装具を使用することは有効であることが判明した。
ポスター 3 脳血管リハビリテーション 2・神経疾患のリハビリテーション 座長 近藤正樹
P3-1
右被殻出血後に意識障害の遷延や重篤な合併症を発症し
離床に難渋したが長期的な経過が良好であった 1 症例を振り返って
1)
1)
1)
1)
1)
北 久世(PT) 、西田毅之 、亀井 芳 、白岩陽一 、宮﨑博子 、冨井康宏
1)
2)
2)
京都桂病院 リハビリテーションセンター、 同 神経内科
【症例】 72 歳 男性
【診断】 #1 右被殻出血 + くも膜下腔穿破 #2 誤嚥性肺炎 #3 急性腎不全 #4 消化管出血 #5 肝機能障害
【経過】 右被殻出血(推定血腫量 24ml)発症後、第 2 病日に誤嚥性肺炎を発症し 4 日間の人工呼吸器管理を
実施。さらに、急性腎不全(Cre4.9)、急性腎不全のため保存的に治療された消化管出血、薬剤性肝障害(被
疑薬 : ニカルジピン、LDH816)を発症した。理学療法初期評価では、JCS Ⅱ -10、modified Rankin Scale(以
下 mRS)5、左上下肢の中等度弛緩性麻痺(BRS: 上肢・手指Ⅱ , 下肢Ⅰ ~ Ⅱ)であったが、JCS Ⅲで意識障害
が遷延した。人工呼吸器離脱後からギャッジアップを開始、全身状態・意識障害の改善に伴い、第 17 病日よ
り離床を開始、段階的に拡大し、立位訓練まで実施した。第 44 病日に、JCS Ⅰ -1、mRS5、左上下肢重度弛
緩性麻痺(BRS: 上肢・手指Ⅰ , 下肢Ⅱ)、mRS5 の状態で回復期病院に転院となった。約 5 か月間のリハビリ
テーション(以下リハ)を実施され、JCS0、mRS3、左上肢軽度麻痺(BRS: 上肢Ⅳ , 手指Ⅲ , 下肢Ⅴ)となり、
屋内独歩、屋外杖歩行で自宅退院された。
【考察】 出血部位から考えて運動機能の改善が見込めると予測し、急性期から段階的なリハを開始した。超
急性期から最大限の機能回復を図り、廃用障害を最小限に抑えたことが、回復期リハ病院における機能拡大
につながったと考える。意識状態や全身状態が悪く合併症の治療に難渋しても、長期的な改善が皆無ではな
いと考えて、急性期に必要なリハを実践することの大切さを改めて実感した。
― 127 ―
ポスター演題
回、我々は下肢麻痺に対する下肢装具の効果を検討したので文献的考察を加え報告する。
13:05 ~ 14:00 ポスターセッション(55 分)
P3-2
集中的なリハビリテーション介入により学業復帰が可能となった インフルエンザ脳症の 1 例
1)
原田宗一郎(OT) 、板東秀樹
1, 2)
1)
1)
、阪下英代 、宮崎哲哉 、堀井基行
1, 3)
、久保俊一
1, 3)
1)
京都府立医科大学附属病院 リハビリテーション部、2)京都府立医科大学大学院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学、
3)
同 運動器機能再生外科学(整形外科)
ポスター演題
【はじめに】 小児の急性脳症の 25%をインフルエンザ脳症が占め、その 25%で後遺症が残存する。今回我々
はインフルエンザ脳症例に対し急性期から介入し小学校復学を果たした症例を経験した。
【症例提示】 10 歳女児。感冒症状で他院受診、意識障害と異常行動を認め当院へ搬送。MRI で小脳皮質等に
高信号を認めインフルエンザ脳症と診断。ステロイドパルス 2 クール施行後、17 病日に thyrotropin-releasing
hormone 療法と OT・PT・ST 開始。傾眠、注意障害、四肢体幹の筋緊張低下・筋力低下・失調、無動・無
言症、嚥下障害を認め、座位保持全介助で定頸困難。上肢の物品操作困難。WeeFIM35/126 点。遊びの要素
も含み座位・立位バランスや体幹・上肢機能への段階的な OT アプローチを展開。37 病日に有意味語の発語
あり、ナースコールが可能。62 病日に静的立位で持続的な筋収縮が得られ軽介助でトイレ可能。100 病日に
簡易上肢機能検査で右 50 点 / 左 61 点まで改善。小学校教諭らとの会議で復学可能と判断し 109 病日に自宅退
院。WeeFIM91/126 点に改善。174 病日には独歩で来院可能。
【考察】 国立感染症研究所によると本症での入院日数は 2 ∼ 134 日(中央値 9 日)と報告している。本症例
では回復に時間を要する小脳症状を中心に多彩な症状を合併し比較的長期の入院期間を要したが、家族指導
も並行した集中的なリハ介入により、身体機能の現状に即した離床と課題設定を行った結果、ADL 改善を認
め学業復帰が可能となった。
P3-3
多巣性運動ニューロパチー 1 症例の歩行における運動学的特徴
1)
1, 2)
1)
1)
高橋孝多(PT) 、近藤正樹 、奥田求己 、瀬尾和弥
2, 3)
1, 4)
2)
1, 4)
武澤信夫 、堀井基行 、水野敏樹 、久保俊一
1)
2)
京都府立医科大附属病院 リハビリテーション部、 京都府立医科大学大学院 神経内科学、
3)
4)
京都府リハビリテーション支援センター、 京都府立医科大学大学院 運動器機能再生外科学(整形外科学)
【はじめに】 多巣性運動ニューロパチー(Multifocal Motor Neuropathy:MMN)とは感覚障害を呈さず、左
右非対称性遠位筋優位の筋萎縮や筋力低下を示し、臨床上は下垂足を示す疾患である。MMN 患者は国内で
は非常に稀な疾患であり、歩行の特徴に関する報告は少ない。今回は MMN 患者の歩行における運動学的特
徴を明らかにすることを目的とした。
【対象と方法】 発症 34 日経過した 19 歳女性 MMN 症例。下肢 MMT(右 / 左)は腸腰筋 4/4 大殿筋 5/5
大腿屈筋群 4/4 大腿四頭筋 3/3 前脛骨筋 2/2 下腿三頭筋 2+/2+ であり遠位筋優位の筋力低下を示
した。感覚障害は認めなかった。三次元動作解析装置(VICON)を使用して 8m 歩行路での自由歩行を測定
した。健常女性(19 ∼ 20 歳)を対照群として、運動学的特徴を検討した。
【結果】 対照群と比較した運動学的特徴は、足関節では立脚終期に足関節最大背屈角度が増大、遊脚終期に
は底屈位であり、その状態で立脚初期を迎えた。膝関節では立脚期を通して過伸展位であり、踵離地時の膝
関節屈曲角度は減少していた。股関節では踵離地時の伸展角度は増大、遊脚終期から伸展した。
【考察】 遊脚終期での股関節伸展運動は前脛骨筋の筋力低下による下垂足に対する代償と大腿四頭筋筋力低
下に対する膝関節過伸展での代償が生じていると考えた。踵離地時の股関節伸展角度増大、膝関節屈曲角度
減少は下腿三頭筋の筋力低下による踵離地時の遅延によって生じていると考えた。本症例は遠位筋優位の筋
力低下を示したが、足関節・膝関節周囲筋力低下を股関節の運動、特に伸展運動で代償していると示唆され
た。
― 128 ―
13:05 ~ 14:00 ポスターセッション(55 分)
P3-4
発症から 15 年が経過した慢性期脳出血症例に対し
ST 介入なしに tDCS で失語症改善が得られた 1 症例
1)
1)
1)
1)
1)
2)
森脇美早(MD) 、寺山小百合 、谷崎健太 、小田美奈 、眞砂 望 、甲斐史敏 、道免和久
1)
2)
3)
3)
社会医療法人祐生会みどりヶ丘病院 リハビリテーション科、 同 整形外科、 兵庫医科大学 リハビリテーション医学教室
P3-5
回復期リハビリテーション病棟に転院後 パーキンソン病と診断された 1 例
兼松まどか(MD)
、呉 雅美、藤田なつき、三好光男、橋詰みなみ、福井康秀、中田沙希、木村 透
洛和会音羽リハビリテーション病院
【はじめに】 急性期治療終了後、回復期へという患者の流れは定着する一方、他方では、急性期病院でリハ
ビリテーション(以下リハ)経過に大きく影響する併存疾患の精査・加療が不十分になりやすい傾向にあ
る。今回我々は、脊椎手術後、回復期リハ病棟に入院されたが、未診断のパーキンソン病が動作障害に強く
影響していると考えられ、転院後の診断を基に、アプローチの再考を要した症例を経験したので報告する。
【症例】 症例は 66 歳女性。徐々に進行する歩行障害のため、前医にて、約 1 年前に頸部脊柱管狭窄症の診断
で頸椎椎弓形成術を施行された。その後痙性歩行障害は改善したが、次第に腰部および下肢の疼痛のため歩
行困難増強、車いす移動となり、画像上も脊椎後弯変形が急激に増強したため、腰椎前方固定術、胸腰椎骨
盤固定術を施行された。術後 1.5 ヶ月で当院回復期リハ病棟に転院された。入院前情報上、既往歴はなく、
服薬中の薬も疼痛緩和目的の処方のみであった。しかし、入院時にはパーキンソン症状が見られたため神経
内科を受診し、パーキンソン病がつよく疑われた。
【考察】 パーキンソン病では術後症状増悪を認める事があり、転院時には症状が顕在化していた可能性があ
る。パーキンソン病では多彩な神経症状を呈するため、運動器リハとは異なった、多職種による包括的リハ
を要するため病状に関する認識をスタッフが共有することが重要であり、改めて障害診断の重要性を認識し
た。また、筋固縮や姿勢異常により、術後局所経過が不良となり易く、注意を要すると考えられた。
― 129 ―
ポスター演題
【はじめに】 tDCS による失語症改善の報告が散見されるようになってきた。脳出血発症から 15 年が経過し
た慢性期の右片麻痺、失語症患者に外来で 15 回の tDCS と作業療法を行い、言語聴覚療法(以下 ST)なしに
失語症の改善がみられた症例を経験した。
【対象と方法】
47 歳、女性。15 年前に脳出血を発症し開頭血腫除去術を受けた。右片麻痺、失語症が残存し
回復期リハ病院入院を経て自宅退院後は他院にて長年にわたり外来作業療法と言語療法を受けていた。3 年
前に外来リハを終了され今回、かかりつけ医より機能改善の可能性はないかと当科に紹介された。当科初診
時、FMA30 点。SLTA は「聴く」、「読む」で正答率が高かったが、「話す」では呼称など 3 項目が正答率 6 割
で語の列挙が 5 割であり、「書く」では全体的に正答率が低く、仮名・単語、短文の書き取りの項目が 0 割と
低かった。tDCS の設定は左一次運動野からブローカ野にかけて陽極、右一次運動野領域に陰極をおき 1 回に
つき 2mA,20min 通電した。1 週間毎に 15 回の tDCS を行い、tDCS 後は作業療法で右上肢動作練習を行った。
【結果】 FMA43 点と上腕から前腕の機能改善が大きく日常での右手参加が増えてきた。SLTA は「話す」で
はまんがの説明、文の説明で改善がみられ、「書く」では書字や説明、単語や短文の書きとりで大きく正答
率が改善し、計算課題の正答率も改善した。
【考察】 今回以下の二つが示唆された。①発症後 15 年と長時間経過した失語症患者でも tDCS が有効である。
② tDCS 単独でも慢性期失語症の改善に効果がある。今後は ST を組み合わせた場合の効果も検討していきた
い。
13:05 ~ 14:00 ポスターセッション(55 分)
ポスター 4 回復期・生活期のリハビリテーション 座長 石野真輔
P4-1
当院における FIM 低下の要因
田中佑樹(PT)、垣田清人
京都大原記念病院
【はじめに】 今回、当院の回復期病棟入院期間中に Functional Independence Measure(以下 FIM)が低下し
た患者の入院中生じた合併症を後方視的に検討した。
ポスター演題
【対象と方法】 平成 26 年度 10 月∼ 3 月までに当院の回復期病棟退院患者(366 名)のカルテより、FIM の
入退院差が -1 点以下の者から入院中生じた合併症、移動能力、転帰先を抽出した。FIM は入退院時の結果を
Wilcoxon の符号付順位検定にて検定を行った。データは個人が特定されないよう配慮し、研究終了後、使用
したシートなどは破棄した。倫理的配慮について委員会の承認を得た。
【結果】 FIM 入退院差が低下していた者は全退院者の 4.9%(18 名)。FIM 平均点(入院時 / 退院時)は 48.3
± 18.3 点 /37.4 ± 18.7 点と低下(P=0.003 < 0.01)した。入院中に生じた合併症は誤嚥性肺炎 7 名、尿路感染 1
名、認知症増悪 1 名などであった。最終移動様式は歩行 0 名、リクライニング型車椅子 13 名、標準型車椅子 5
名。最終の転帰先は転院 7 名、死亡 5 名、施設 5 名、自宅 1 名であった。
【考察】 当院では、誤嚥性肺炎予防の為にチームで様々な対策を行っている。しかし FIM が低下した要因
の多くは誤嚥性肺炎だった。誤嚥性肺炎への治療の必要性から、活動性が低下、様々な廃用症候群を呈し合
併症の悪化を招く悪循環へ陥る。これらの事から誤嚥性肺炎のリスクが高い方への対策の優先性が示唆され
た。
【まとめ】 誤嚥性肺炎に対しての危険性を再認識し、合併症リスクに対する注意喚起につながった調査で
あった。
P4-2
回復期リハビリテーション病棟に FIM40 点以下で入棟された
脳血管疾患の自宅復帰とその要因について
宮本一恵(PT)、若狭幸博、石野真輔
十条武田リハビリテーション病院 リハビリテーション科
【はじめに】 FIM40 点以下で回復期リハビリテーション病棟に入棟となった脳血管疾患の重症患者の自宅復
帰とその要因について検討を行った。
【対象と方法】 2015 年 4 月∼同年 9 月の 5 ヶ月間に回復期リハ病棟を退院した患者 75 例のうち、入院時 FIM
が 40 点以下であった 27 例について後方視的に分析を行った。
【結果】 FIM40 点以下で入院した患者の転帰先は、自宅 29.7%、老健施設 14.8%、転院 33.3%、急変 22.2%
であった。急変転院を除いた患者 21 例の退院時 FIM は、19 ∼ 35 点が 5 例、36 ∼ 53 点が 6 例、54 ∼ 89 点が 9
例、90 ∼ 126 点が 1 例であった。平均在棟日数は、135.5 日、リハビリの 1 日あたりの平均単位数は 7.2 単位、
平均 FIM 効率は 0.18、内訳は自宅復帰群 0.31、老健では 0.20、転院では 0.09 であった。小山らにより報告さ
れた自宅復帰 Index によると、自宅復帰群は平均 73、老健は、7.8、転院は 26.3 であった。自宅復帰群では、
自宅 Index が 30 を下回るケースが 2 例、転院群では自宅復帰 Index が 60 を上回ったが転院に至ったケースが 2
例みられた。
【考察】 FIM40 点以下の脳血管疾患の重症例において、自宅復帰群と転院群では在棟日数・リハの提供単位
数に大きな差はみられなかった。自宅復帰群では、FIM 効率、家族協力度などが影響を与えた。
【まとめ】回復期リハ病棟において、近年、重症脳血管疾患例は増加している。自宅復帰に向けて、情報提
供を含めた家族支援体制が重要であると考える。
― 130 ―
13:05 ~ 14:00 ポスターセッション(55 分)
P4-3
立ち上がりテストによる「ロコモ度 1」判定は地域在住高齢者の 運動機能および要介護リスク関連指標を反映するか?
1)
3)
4, 5)
1)
1)
1)
中村雅俊(PT) 、西口 周 、武内孝祐 、田中誠智 、藤堂 萌 、山田桃子 、
2)
2)
2)
2)
1)
石濱崇史 、川尻英貴 、小川博之 、野村嘉彦 、北條達也
1)
2)
3)
同志社大学スポーツ健康科学部、 医療法人社団石鎚会、 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻、
5)
4)
びわこ成蹊スポーツ大学スポーツ学部、 筑波大学大学院人間総合科学研究科
P4-4
介護支援専門員とリハビリテーション職種との連携について
1)
土井博文(PT/CM) 、三橋尚志
1)
2)
2)
居宅介護支援事業所博寿苑、 京都大原記念病院
【はじめに】 介護支援専門員(以下、ケアマネ)は、医療福祉職種経験を前提に資格取得がなされ、実働の
多くは非医療系である。支援計画作成には、生活動作の検討、残存能力の活用が重要となるが、非医療系の
経験のみで習得することは難しい。京都大原記念病院グループでは、ケアマネへのリハビリテーション(以
下、リハ)領域の知識・技能強化を目的に、理学療法士を配属している。今回、ケアマネとリハとの連携に
ついて調査・検討を行った。
【対象と方法】 2015 年 9 月に居宅介護支援事業所または地域包括支援センターで支援計画を作成しているケ
アマネを対象とした「必要とするリハ支援」「リハとの連携」についての無記名アンケート調査とした。
【結果】 32 名から回答を得た。連携の優先職種に医師 62.5%、連携不足に医師 50.0%として挙げられたが、
リハ職種を挙げるものは少なかった。また、訪問リハ 93.5% / 通所リハ 68.8% / 入所リハ 56.3%で支援計画が
反映されているとした。リハ職種の不十分な支援を、動作方法 15.6% / 福祉用具 31.3% / 住宅改修 34.4% / 家
族指導 25.0%で経験していたが、多くはケアマネ自身で解決していた。
リハ職種ケアマネとの事例検討や同行を経験したうち 92.3%で視野やスキルに良好な変化があったと回答さ
れた。
【まとめ】 リハ領域の知識や連携は、居宅介護支援のための重要な要素の一つであるが、現状では必ずしも
重要視されていなかった。リハ職種ケアマネとの事例検討や同行はスキルアップに有効な手段となってい
た。
― 131 ―
ポスター演題
【はじめに】 ロコモティブシンドローム(通称,ロコモ)の危険度の基準の一つとして,40cm の高さの台か
ら片脚で立ち上がれない状態は「ロコモ度 1」と判定する基準の一つである.そこで本研究の目的は,日常
生活動作の一部である立ち上がりテストによる「ロコモ度 1」という判定が,地域在住高齢者の運動機能お
よび要介護リスク関連指標を反映しているか否かを明らかにすることとした。
【対象と方法】 対象は地域在住高齢者 45 名とし,運動機能は立ち上がりテスト,10m 最大歩行速度,片脚立
位時間,握力を測定した。また,要介護リスクの指標として,介護予防基本チェックリスト(厚生労働省)
を自記式にて調査し,総該当数と運動機能低下リスク該当数を算出した。統計は立ち上がりテストにより非
ロコモ群とロコモ度 1 群に群別けし,各項目を比較した。
【結果】
ロコモ度 1 群は非ロコモ群と比較して,年齢と基本チェックリスト総該当数および運動機能低下リ
スク該当数は有意に高値を示し,10m 最大歩行速度と片脚立位時間,握力は有意に低値を示した。
【考察】 本研究の結果,ロコモ度 1 に判定された高齢者は非ロコモと比較して,運動機能が低く,要介護リ
スクが高いことが示された。立ち上がりテストは下肢を中心とした運動機能を反映する指標であるため,地
域在住高齢者の運動機能や要介護リスクを反映したと考えられる。
【まとめ】 立ち上がりテストにおける「ロコモ度 1」の判定は,高齢者の運動機能および要介護リスクを判
定するための簡便な指標として有益であることが示唆された。
13:05 ~ 14:00 ポスターセッション(55 分)
ポスター 5 がんのリハビリテーション・言語聴覚療法 座長 中馬孝容
P5-1
中枢神経原発性悪性リンパ腫に対する継続的なリハビリテーションの経験
~ Performance Status(PS)の維持を目的として~
1)
1)
1)
白岩陽一(PT) 、宮㟢博子 、西田毅之 、植田知代子
1)
2)
2)
京都桂病院 リハビリテーションセンター、 同 血液内科
【はじめに】
中枢神経原発の悪性リンパ腫(以下、PCNSL)は、組織診断に難渋することが多く、浸潤性に増大
ポスター演題
するため再発率が高い。標準的治療は化学療法とそれに続く放射線療法であるが長期入院による活動性低下を
招き、廃用症候群を来たしやすい。このような疾患に対して継続的なリハビリテーション(以下、リハ)の実施
により、体力や ADL の改善を得てPSを維持することができ、原疾患治療の継続に貢献できたと考えられる症例
を経験したので報告する。
【症例】
64 歳女性、左上下肢の協調性低下、浮動性めまい。初期評価(PS:2、FIM:117 点、屋外独歩レベル)
【経過】
2014/X 月:めまい・ふらつきを主訴として入院し、右小脳腫瘍摘出術を施行。再発を繰り返し、X+2 ヶ
月に右前頭葉腫瘍摘出術、X+6 ヶ月に右小脳腫瘍再摘出術を施行。それぞれの手術では術前から周術期リハを開
始し、早期離床を促進して ADL 拡大に努めた。3 度目の組織診断で PCNSLと確定、X+7 ∼ 15 ヶ月に8回の入院
で 8コースの化学療法を施行された。それぞれの入院毎にリハを実施したことにより化学療法終了後であっても
PS:2、FIM:123 点、屋外杖歩行レベルと維持することができた。
【考察】
本症例では外科的治療後に寛解を目的として化学療法が繰り返し施行された。化学療法の継続には充
分なPSを維持する必要がある。したがって、この時期は回復的リハの適応と考える。治療内容や全身状態に応
じてリハの内容を調整し継続していくことは、PSを維持する上できわめて重要であり、次の化学療法に繋げる事
ができるため生命予後ならびにQOL 向上に有用と考える。
P5-2
当院におけるがん患者リハビリテーションの現状と課題
1)
1)
1)
1)
岡田裕介(PT) 、上田裕美 、倉橋宏明 、前田幸弘 、
1)
1)
2)
2)
池澤正晃 、田和靖成 、金村 斉 、中村紳一郎
1)
2)
市立福知山市民病院 リハビリテーション科、 同 整形外科
【はじめに】
2010 年からがん患者リハビリテーション(以下、がんリハ)が算定されるようになった。当院
2011
では
年度からがんリハを開始したが、当院におけるがんリハの現状と課題を検討した。
【対象と方法】 統計を取り始めた 2012 年度以降、当院リハ科において、がんリハとして取り扱った 432 例の
年度別推移、疾患名、1 症例における依頼回数、予後等を調査した。
【結果】 当院において、がんリハの依頼があった新規症例数は 2012 年 49 例、2013 年度 82 例、2014 年度 178 例、
2015 年度 4 ∼ 9 月 123 例、合計 432 例であった。対象となった疾患名は消化器系の癌 157 例 造血器悪性腫瘍
79 例、肺癌 67 例、泌尿器系の癌 43 例、乳癌 33 例、頭頸部癌 12 例、婦人科癌 10 例、脳腫瘍 8 例、その他 23 例
であった、1 例当たりの依頼件数は 1 回から 7 回(平均 1.32 回)であり、肺癌で多い傾向であった。何らかの
手術施行例は 93 例、化学療法施行例は 142 例、放射線治療施行例は 81 例であった。死亡例は把握できた範囲
で 135 例であった。
【考察】 当院は地域がん診療拠点病院であり、リハビリを含めたさらなるがん治療の充実が望まれる。新規
症例数は増加傾向であり、スタッフが充実してきたことも関係しているが、院内の研修会等で積極的に啓蒙
活動を行っており、院内のがんリハに関する認知も進んできていると考える。がんの種類によって入退院の
頻度もかなり異なるため、今後は臨床各科とのコミュニケーションを深めて、対象となるがんの種類に応じ
たきめ細かなリハを目指す必要があると考えた。
【まとめ】 当院のがんリハ開始以降の推移と今後の課題を検討した。
― 132 ―
13:05 ~ 14:00 ポスターセッション(55 分)
P5-3
全てのがん患者の“生活の質の向上”を目指した
Cancer Rehabilitation Candidate Recruitment システム導入の試み
1)
1)
1)
1)
1)
鈴木拓弥(OT) 、古川広明 、力武祐子 、森 久晃 、小杉 剛 、
2)
3)
4)
4)
原島宏明 、笹沼仁一 、角田 亘 、安保雅博
1)
2)
新百合ヶ丘総合病院 リハビリテーション科、 南東北グループ首都圏リハビリテーション部門、
3)
4)
新百合ヶ丘総合病院 脳神経外科、 東京慈恵会医科大学 リハビリテーション医学講座
P5-4
気管食道シャント症例における音声リハビリテーションの有用性
1)
塩見 潤(ST) 、板東秀樹
1, 2)
1)
、阪下英代 、堀井基行
1)
1, 3)
、久保俊一
1, 3)
2)
京都府立医科大学附属病院 リハビリテーション部、 京都府立医科大学大学院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学、
3)
同 運動器機能再生外科学(整形外科)
【はじめに】 喉頭全摘出術後の患者における代用音声として、人工喉頭を用いた発声と新声門と呼ばれる食
道入口部を音源とする食道発声や気管食道シャント発声がある。当院では喉頭全摘出術後の患者に対して、
気管食道シャント発声のため Provox 挿入術を施行している。今回、シャント発声での発話が困難だった症例
に対してリハビリを実施したので報告する。
【症例】 症例 1:78 歳男性。日常会話として発声はほとんど困難で筆談を使用していた。シャント発声と食
道発声が混在しており、発声時の呼吸の乱れが特徴的であった。症例 2:79 歳女性。気管孔閉鎖位置が安定
せず呼気が漏れるため声量が乏しく、また気管孔閉鎖と呼吸のタイミングが合わず無声になることもみられ
た。いずれの症例も Provox の自己管理ができていなかった。ST 介入により①気管孔閉鎖の訓練②発声と呼
吸の調整③日常を想定した発話訓練④ Provox のメンテナンス指導を実施し、ぞれぞれの問題点が改善し、日
常生活でのシャントの使用、発声が可能となった。
【考察】 シャント発声はこれまでの自分の声とは違う新たな声であるため「どのような声が良好な発声なの
か」を症例に対して明確にしていく必要があった。症例らに対しては、適宜フィードバックを行い音声の実
現状況の理解を促した。発声が困難となる要因は症例によって異なり、個々に応じた ST による指導が必要
であった。今回のようにシャント発声が困難な症例における ST による音声リハビリテーションは有用と考
える。
― 133 ―
ポスター演題
【はじめに】
がん患者に対して適切なリハビリテーション(以下、リハビリ)を提供することで、Activity
of Daily Living(以下、ADL)の低下が予防され生活の質が向上する。しかしながら、がん患者に対するリ
ハビリの提供を、病院全体で組織的に試みた報告はない。我々は、当院に入院するがん患者全員に“必要
があれば、漏れなくリハビリを供給する”というシステムを考案、それを Cancer Rehabilitation Candidate
Recruitment(以下、CRCR)システムと名付け、病院全体に広く導入した。
【対象と方法】
対象は、平成 27 年 5 月 7 日から 9 月 30 日に、“がん”という診断で当院に治療目的で入院した
全患者である。全対象について療法士が入院直後に診察を行い、リハビリの必要性があると判断された場合
には、迅速にリハビリを開始した。
【結果】 上記の期間内に“がん”の治療目的で入院した患者は 586 人であったが、これのうち 162 人に対し
てリハビリが介入された。入院時と退院時に評価した Barthel 指数、Performance Status、EORTC QLQ C-30
は、いずれもリハビリ介入により改善した。また、リハビリを施行した患者においては、有害事象はなかっ
た。
【考察】 CRCR システムにより、入院早期からがん患者に漏れなくリハビリを提供できた。これにより、廃
用性変化が予防され、ADL が維持され、ついには生活の質が改善したと考えられる。
【まとめ】 CRCR システムの導入により、がん患者に対するリハビリが安全に院内で徹底され、がん患者の
生活の質にも好影響を与えた。
13:05 ~ 14:00 ポスターセッション(55 分)
ポスター 6 摂食嚥下リハビリテーション・スポーツのリハビリテーション 座長 宮㟢博子
P6-1
鼻つまみ嚥下が有効であった重症延髄外側梗塞
1)
1)
2)
1)
森 静香(ST) 、池渕寿美 、今田智美 、大橋良浩 、巨島文子
1)
1)
2)
京都第一赤十字病院 リハビリテーション科、 同 看護部
【はじめに】 延髄外側梗塞による Wallenberg 症候群では重症の嚥下障害症例が散見される。重症例では延髄
病側のみならず、延髄健側で食道入口部の開大が困難となる Passage pattern abnormality をきたすことが多
ポスター演題
い。バルーン法が有効な症例が多いが、嘔吐反射が強い場合には経鼻にてバルーンを行う方法がある。しか
し、実際に訓練を施行できる患者は少ない。今回、我々は経鼻バルーン法が自立し、有効であった症例を経
験したので報告する。
【症例】 40 歳男性、X-1 年 2 月くも膜下出血後に右延髄外側・小脳梗塞を発症して気管切開され、Wallenberg
症候群をきたし嚥下障害が重度で嚥下訓練にても経口摂取に至らず、胃瘻造設を施行された。X 年 8 月当院
に紹介受診された時点では右顔面麻痺・軟口蓋麻痺・カーテン徴候、開口困難、右失調症状、体幹失調をみ
とめて介助下で立位が可能であった。右声帯麻痺をみとめ、喉頭感覚は保たれていたが座位では慢性誤嚥で
あった。嚥下反射の惹起遅延、咽頭収縮不全(右<左)、両側食道入口部開大不全をみとめ、呼吸および嚥
下訓練を行い、気管切開孔の閉鎖が可能となった。左―側嚥下・頭部回旋の姿勢調整による直接訓練を施行
するも経口摂取には至らず、バルーン訓練を指導した。しかし、嘔吐反射が強く経口では困難であったが、
経鼻でのバルーン法が可能となり、ミキサー食の摂取が可能となった。経鼻バルーンの有用性について報告
する。
P6-2
おうみ食べてもらい隊 EST 活動報告
〜地域で暮らす人の「食べること」を支援するために〜
1)
2)
3)
1)
1)
厚見さやか(ST) 、小澤惠子 、石黒幸枝 、乙川 亮 、澤井のどか 、
4)
5)
1)
村西加寿美 、小幡鈴佳 、川上寿一
1)
2)
滋賀県立成人病センター・滋賀県立リハビリテーションセンター、 滋賀県立大学人間文化学部生活栄養学科、
3)
4)
5)
地域包括ケアセンターいぶき、 セント・パウロ光吉歯科医院、 滋賀県健康医療課
【はじめに】 おうみ食べてもらい隊 EST の EST は Eat(食べる)Support(支える)Team(チーム)の略である。
平成 22、23 年度に滋賀県湖南地域の病院や介護事業所における嚥下食の提供状況や内容について調査した結
果、湖南地域でも介護事業所で提供されている食事が同じ名称でも形態が異なることや、嚥下について相談
できる窓口がないことなどの問題が判明した。調査の協力施設を対象に報告会を行い、職場や職種を超えて
摂食嚥下について考える場をとの要望もあり、病院・事業所も含めて顔の見えるネットワークづくり、食支
援を目指して会が始まった。
【対象と方法】 対象は、摂食嚥下について興味や関心のある者。活動内容は①勉強会や症例検討会、②研修
会の講師の派遣、学会発表、③病院や事業所の支援(出前式)。
【結果】 ①症例や議題を持ち寄り、実習なども織り交ぜて職種や職場の垣根を超えて学んでいる。 ②顔の
見えるネットワークづくりも視野に入れ、嚥下を診る体制づくりを進めている。③嚥下評価を希望している
現場に出向き、その場で多職種で問題点を抽出して現場のスタッフに改善方法などを提案している。
【考察】 ①②は取り組みが進んでいるが、③は運営面での問題点があり、今後改善していくべき必要があ
る。
【まとめ】 全国にも嚥下に関する多職種・他職場のサポートチームは数多く存在するが、地域に根差し、嚥
下で困っている人を支援するために、顔の見える関係づくり・支援する人材の育成・嚥下だけにとどまらず
食べることに対して相談できる窓口づくりが今後の課題と考える。
― 134 ―
13:05 ~ 14:00 ポスターセッション(55 分)
P6-3
第 3 中足骨基部疲労骨折を呈した陸上中長距離選手の 1 例
1)
1)
1)
1)
1)
奥野貴司(PT) 、東 善一 、松井知之 、竹本裕樹 、芦分咲紀 、
1)
1)
1)
2)
出口真貴 、三木茂樹 、盛房周平 、辻原隆是
1)
2)
丸太町リハビリテーションクリニック、 洛和会丸太町病院 整形外科
P6-4
女性シニアソフトテニス選手おける身体特性 : 反復横とびと筋力の関係から
1)
1)
1)
1)
1)
芦分咲紀(PT) 、東 善一 、松井知之 、竹本裕樹 、奥野貴司 、
1)
1)
2)
1)
出口真貴 、三木茂樹 、来田宣幸 、盛房周平 、森原 徹
1)
3)
2)
丸太町リハビリテーションクリニック、 京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科、
3)
京都府立医科大学大学院 スポーツ傷害予防医学講座
【はじめに】 ソフトテニスにおいてフットワークは重要とされているが、シニア層において左右の敏捷性を
表す反復横とびやそれに伴う下肢筋力は不明である。本研究では、女性シニアソフトテニス選手(以下選
手)の身体特性について検討した。
【対象と方法】 対象は選手 21 名(平均年齢 58 ± 9.2 歳)であった。反復横とびの回数を同年代平均値と統
計学的に比較検討した(t-test、有意水準 5%)。等速性筋力測定機器を用いて膝伸展・屈曲筋力を角速度
60deg/s、300deg/s で測定し、反復横とびと最大筋力値の相関を検討した。
【結果】
反復横とびでは、同年代の 38.4 回と比較し平均 40.5 回と有意に高値であった。反復横とびと下肢筋
力では膝屈曲 300deg/s のみ有意な相関を認めた(r=0.64)。
【考察】 ソフトテニスでは左右の動きが多く、敏捷性が必要な競技である。左右の動きが必要な反復横とび
では同年代の測定値より有意に高値であったと考えた。本研究では、反復横とびと高速域での屈曲筋力に相
関を認めた。高速域での膝屈伸筋力は高速のスクワット動作とジャンプ動作に正の相関があると報告されて
おり、左右への敏捷性は高速域でのトレーニングによって向上する可能性がある。
【まとめ】 女性シニアソフトテニス選手では、左右への敏捷性を向上するために高速域での膝伸展・屈曲筋
力トレーニングが重要と考えた。
― 135 ―
ポスター演題
【はじめに】 走動作における足部の疲労骨折を引き起こす原因は、オーバーユースの他に knee in toe out
(KI,TO)での接地などの局所にストレスが増大する不良な動作が報告されている。今回、難治例の多い第 3
中足骨基部疲労骨折の症例に対しリハビリテーション(リハ)を行うことで、走動作の改善を認め,良好な
結果を得たので報告する。
【症例】 16 歳女性、陸上の中長距離選手であった。平成X年 7 月中旬から左前足部に運動時痛を認め、近医
を受診し、左第 3 中足骨基部疲労骨折と診断された。8 月中旬に当院でリハを開始した。
【初期評価】 第 3 中足骨基部に運動時痛、圧痛、叩打痛を認めた。体幹、腸腰筋の筋力は MMT4 レベルと低
下していた。また右片脚立位時に左足部外転を認めた。走動作解析では左遊脚期において骨盤の左回旋角度
3°、左立脚期の足部外転角度 4.4°であった。
【経過】 骨折の原因を体幹、腸腰筋の筋力低下によって生じる足部外転位の振り出しと KI,TO での接地動作
と考え、下肢体幹の筋力強化によって走動作の改善を行った。リハ開始 4 週後に疼痛の消失を認めた。また
体幹、腸腰筋の筋力改善、右片脚立位時の左足部外転も改善し、ジョギングを開始した。走動作では、左遊
脚期における骨盤の右回旋角度が 5.4°と増大、左立脚期足部外転が 0°と減少し、動作の改善を認め、8 週後
には競技復帰が可能となった。
【考察】 本症例では体幹、腸腰筋の筋力低下によって引き起こされた、不良な走動作での接地動作が骨折の
原因と考え、リハを実施した。その結果、走動作の改善によって、患部にかかるストレスが軽減し、競技復
帰できたと考えた。
13:05 ~ 14:00 ポスターセッション(55 分)
ポスター 7 リハビリテーションにおける新しい試み・ロボットリハビリテーション 座長 伊藤慎英
P7-1
Balance Exercise Assist Robotを用いたバランス練習における安全性
〜心拍数を指標として〜
1)
2, 3)
3)
1)
1)
1)
清水直人(PT) 、伊藤慎英 、三上靖夫 、久保秀一 、平本真知子 、宮崎哲哉 、
1)
3)
3)
3)
3)
戸枝 葵 、大橋鈴世 、伊藤倫之 、沢田光思郎 、前田博士 、
3)
3, 4)
1, 5)
1, 2, 3, 5)
相良亜木子 、池田 巧 、堀井基行 、久保俊一
ポスター演題
1)
2)
京都府立医科大学附属病院 リハビリテーション部、 京都府立医科大学大学院 リハビリテーション先進医療開発講座、
3)
4)
5)
同 リハビリテーション医学、 京都府立城陽リハビリテーション病院、 京都府立医科大学大学院 運動器機能再生外科学(整形外科)
【はじめに】 生活期の脊椎症性脊髄症(以下:脊髄症)を対象に、Balance Exercise Assist Robot(トヨタ自
動車社製)を用いたバランス練習(以下:BEAR 練習)を実施し、心拍数を指標として、本法における安全
性について検討した。
【対象と方法】 対象は、頚椎椎弓形成術後 3 年以上を経過し、バランス障害が残った脊髄症高齢者 3 例とし
た。BEAR 練習は 8 日間実施した。1 回の練習は、ウォーミングアップ 2 分、前後の重心移動練習のテニスゲー
ム 4 回、休憩 3 分、左右の重心移動練習のスキーゲーム 4 回、休憩 3 分、外乱対処練習のロデオゲーム 4 回で
構成した。1 ゲームは 90 秒である。練習中、モニター心電図(携帯型テレメータ受信機 PW-8000、フクダ電
子社製)を患者に装着し、連続して心拍数を記録した。Anderson の基準(土肥変法)に基づき、練習開始前
の安静座位時と練習中の心拍数から安全性を検討した。
【結果】 3 例の練習開始前の安静座位時心拍数(回 / 分)は、63.0 ± 2.2、62.0 ± 1.5、58.9 ± 4.6 であった。各
ゲーム時の心拍数は、ロデオ、スキー、テニスの順で高かった。また、各ゲームでは、レベルが上がるにつ
れて、心拍数も上昇した。全施行中において、最高心拍数が 120 回 / 分を超えることはなかった。
本研究の結果から、バランス障害が残った脊髄症術後高齢者に対する BEAR 練習は、運動を中断す
【考察】
ることなく、安全な運動負荷で実施できると考えた。
P7-2
Balance Exercise Assist Robot を用いて リハビリテーションを実施した大腿骨近位部骨折術後の 1 例
1)
2, 3)
1)
1)
4)
4)
岡田貴文(PT) 、伊藤慎英 、岡田絵美 、田主篤司 、徳川誠治 、小池宏典 、
4)
4)
3)
3)
2, 3, 5)
大石久雄 、鴻巣 寛 、沢田光思郎 、三上靖夫 、久保俊一
1)
2)
綾部市立病院医療技術部 リハビリテーション科、 京都府立医科大学大学院 リハビリテーション先進医療開発講座、
3)
4)
5)
同 リハビリテーション医学、 綾部市立病院 診療部、 京都府立医科大学大学院 運動器機能再生外科学(整形外科)
【はじめに】 大腿骨近位部骨折術後の症例に対し、Balance Exercise Assist Robot(以下:BEAR)を用いた
バランス練習を行ったので報告する。
【対象】 大腿骨近位部骨折術後 29 日目の 78 歳女性。
【方法】 BEAR を用いたバランス練習(以下:BEAR 練習)は、重心移動練習のテニス(前後)・スキー(左
右)、外乱対処練習のロデオの 3 種類のゲームで構成されており、習熟度に応じた難易度調整が自動で行わ
れる。1 回の練習は 1 ゲーム 90 秒を各 4 回、予備練習を含めた計 20 分間とした。BEAR 練習は 1 日 2 回、週
4 日 2 週間実施した。加えて、PT・OT を 1 日 1 単位ずつ実施した。評価は、重心動揺計による静止立位、
Functional Reach Test( 以 下:FRT)、Time Up and Go test( 以 下:TUG)、Berg Balance Scale( 以 下:
BBS)、10 m歩行、タンデム歩行、下肢筋力、下肢の関節可動域を練習前後に動画撮影しながら実施した。
【結果】
TUG、BBS、10 m歩行、タンデム歩行、下肢筋力、下肢の関節可動域に向上がみられた。重心動揺
計の総軌跡長、外周面積、矩形面積は増加した。画像より静止立位での前傾位の改善を認めた。
【考察】 動的なバランス能力、下肢筋力と下肢の関節可動域に改善を認めた。さらに、下肢の協調性の改善
により、姿勢戦略の自由度が上がり、重心動揺が増えたと考えた。以上より、本症例では、BEAR 練習によっ
て歩行およびバランス能力が向上したと考えた。
― 136 ―
13:05 ~ 14:00 ポスターセッション(55 分)
脊椎症性脊髄症術後症例に対する
Balance Exercise Assist Robotの使用経験
P7-3
1)
2, 3)
3, 4)
1)
1)
1)
1)
3)
山口正喜(PT) 、伊藤慎英 、池田 巧 、久保秀一 、平本真知子 、宮崎哲哉 、小森帆高 、大橋鈴世 、
3)
3)
3)
3)
3)
1, 5)
1, 2, 3, 5)
伊藤倫之 、沢田光思郎 、前田博士 、相良亜木子 、三上靖夫 、堀井基行 、久保俊一
1)
2)
京都府立医科大学附属病院 リハビリテーション部、 京都府立医科大学大学院 リハビリテーション先進医療開発講座、
3)
4)
5)
同 リハビリテーション医学、 京都府立城陽リハビリテーション病院、 京都府立医科大学大学院 運動器機能再生外科学(整形外科)
た。BEAR を用いたバランス練習(以下:BEAR 練習)は、重心移動練習のテニス(前後)・スキー(左右)、
外乱対処練習のロデオの 3 種類のゲームがある。1 回の練習は、1 ゲーム 90 秒で、各ゲームを 4 回、予備練習
を含め計 20 分間で構成した。BEAR 練習は 1 日 3 回、週 4 日 2 週間実施した。練習前後で、静止立位時の重心
動揺、Functional Reach Test(以下:FRT)、Timed Up and Go test(以下:TUG)、10 m歩行、タンデム歩行、
Berg Balance Scale、下肢筋力を測定し、効果検証を行った。また、BEAR 練習の満足度を調査した。
【結果】 FRT、TUG、タンデム歩行で改善を認めた。また、BEAR 練習の満足度は 3 例とも良好であった。
【考察】 BEAR を用いたバランス練習は ankle/hip strategy のバランス戦略に対し高い転移性を持ち、コン
ピュータにより個人の習熟度に応じた難易度に調節され、バランス能力の数値化によるフィードバックを行
う特徴を有す。今回の動的バランスの改善は、意欲的に、運動学習に準拠した BEAR 練習を行ったことよる
ものと考えた。
P7-4
座位から臥位までの動作における筋電図学的検討
1)
1)
2)
3)
石濱崇史(PT) 、木津彰斗 、國枝秀樹 、小川博之 、野村嘉彦
1)
4)
2)
田辺記念病院 リハビリテーション部、 介護老人保健施設やすらぎ苑 リハビリテーション部、
3)
4)
田辺中央病院 リハビリテーション科、 田辺記念病院 リハビリテーション科
【はじめに】 今回、座位から臥位までの動作における一側上肢前腕支持から反体側下肢挙上時に生じる体幹
の側屈に伴う骨盤の挙上について、胸腰椎側屈筋群を対象に筋電図にて検討を行った。なお、対象者には本
研究の目的および方法について説明し、同意を得た。
【対象と方法】 対象は健常男性 1 名の座位から臥位までの動作とした。筋電図評価には、使用機器として表
面筋電計 MQ − Air(キッセイコムテック社製)を用いた。測定方法は双極導出法とし、電極貼り付け位置は、
一側上肢前腕支持側と反体側の内腹斜筋斜走線維・外腹斜筋・多裂筋・最長筋・腸肋筋とした。
【結果】 座位から臥位までの動作における一側上肢前腕支持から反体側下肢挙上時に生じる体幹の側屈に伴
う骨盤の挙上について、胸腰椎側屈筋群のうち腸肋筋の筋活動が最も大きく生じていた。
【考察】 腸肋筋は肋骨と腸骨を近づける胸腰部側屈作用を持ち合わせており、一側上肢前腕支持後、胸郭と
骨盤間の距離を短縮させるとともに、反体側下肢を空間に保持するための体幹の安定性を得るために、より
積極的に関与しているのではないかと考えた。
【まとめ】 座位から臥位までの動作は、脳血管障害片麻痺患者において介助を要する動作の一つである。そ
の要因としては、麻痺側体幹筋の筋緊張異常に起因する胸腰椎側屈に伴う骨盤の挙上が困難である場合が多
く、理学療法においては、胸腰椎側屈筋群のうち腸肋筋の活動を積極的に促していくことが重要であると考
えた。
― 137 ―
ポスター演題
【はじめに】 生活期の脊椎症性脊髄症(以下:脊髄症)術後の高齢者 3 例に対し、Balance Exercise Assist
Robot(以下:BEAR)を用いたバランス練習を行ったので報告する。
【対象と方法】 対象は、頚椎椎弓形成術後 3 年以上を経過し、バランス障害が残った脊髄症高齢者 3 例とし
13:05 ~ 14:00 ポスターセッション(55 分)
P7-5
上肢回旋運動時の肩関節三次元動態:挙上角度による違い
1, 3)
佐原 亘(MD) 、菅本一臣
1)
2, 3)
2)
大阪大学大学院医学系研究科 器官制御外科学(整形外科)、 同 運動器バイオマテリアル学、
3)
大阪大学医学部附属病院 リハビリテーション科
ポスター演題
【はじめに】
上肢回旋運動の三次元動態が挙上角度の違いによってどう変化するかは投球障害などの病態を考え
る上で重要である。我々は様々な肢位での上肢回旋運動時の肩関節三次元動態を解析したので報告する。
【対象と方法】
正常男性 5 名10 肩(平均 36 歳)を対象に、立位で肩関節外転 0 度、90 度、135 度、最大外転位で
自動内外旋運動を行い、一方向 X 線透視装置で動態撮影した。その透視画像にCT 画像から作成した3D 骨モデ
ルを重ね合わせ三次元動態解析を行った(2D/3D registration 法)
。体幹に対する上腕骨及び肩甲上腕関節での
内外旋角度、回旋範囲を算出し、各外転位で比較した。
【結果】
体幹に対する上腕骨の外旋角度は外転 0 度から135 度では63 度から103 度に有意に増加したが最大外転
位では有意な増加はなかった。一方内旋角度は外転するに従って66 度から-62 度に有意に減少し、回旋範囲も
129 度から49 度に有意に減少した。肩甲上腕関節では、外転角度が増加しても外旋角度は約100 度でほぼ一定で
あったが、内旋角度は15 度から-50 度に有意に減少し、回旋範囲も113 度から42 度に有意に減少した。また、上
肢の回旋運動は肩甲上腕関節で 85 ∼ 95%を占めた。
【考察】
Codmanは挙上するに従って上腕が回旋できる角度は0 度に近づくと述べたが、本研究結果では最大外
転位でも49 度と比較的大きな回旋運動が可能であることが明らかとなった。投球動作時の回旋運動と関連付けて
今後検討が必要である。
【まとめ】
上肢回旋運動は外転するに従って主に内旋角度が減少し回旋範囲も減少するが、最大外転位でも約
50 度回旋できることが明らかとなった。
― 138 ―
共催プログラム
研 修 講 演
日本リハビリテーション医学会近畿地方会
専門医・認定臨床医生涯教育研修会
京都府リハビリテーション教育センター
京 都リハビリテーション 医 学 研 究 会
研修講演1
障 害 者と ス ポ ーツ
伊藤 倫之
京都府立医科大学大学院 リハビリテーション医学 講師
障害者は日常生活で活動性が低いことが多く、健常者に比しエネルギー消費量が少なく、生活
習慣病の合併の多いことが報告されている。障害者の健康増進のために運動習慣を持つことやス
ポーツに取り組むことが推奨されている。
して始まった。そして、障害者がスポーツを楽しみ、社会参加を目的とする生涯スポーツへと発展
してきた。さらに、全国障害者スポーツ大会やパラリンピックに代表されるような競技性の高い競
技スポーツへと変遷してきた。英国のグッドマン卿は、スポーツを積極的に取り入れ、車いす患者
のアーチェリー大会を行った。これが障害者スポーツの基礎となり、現在のパラリンピックに発展
した。車いすや義足など一般的に医療現場で使用される器具が、競技の特性に合せて改良されてい
る。
障害者の競技スポーツの発展に、医学・医療が関わってきた。循環動態が健常者とは異なる脊髄
損傷者がスポーツに取り組むことについて生理学的な研究が行われ、その安全性が証明されてい
る。また、障害者スポーツ特有のクラス分けには、競技についての知識とともに選手の障害を理解
している医療関係者が携わっている。さらに、障害者スポーツでは、健常アスリートと比較すると
高齢の選手が多く、基礎疾患を持ち薬物療法を受けている選手も多い。そのため、健常者と同様に
行われるメディカルチェックやドーピング検査の重要性は高い。
障害者が生活習慣病や廃用症候群に罹ることなく元気に生活を送るために、障害者スポーツは大
切な役割を担っている。日本障がい者スポーツ協会では、障害を理解してスポーツに携わる障害者
スポーツ医を認定し活動を推進しているが、認定医は 330 人に留まっている。今後、障害者スポー
ツに関する研究が発展し、障害者にスポーツを普及させていくために、関心を持つ医療者が増える
ことが期待される。
講師略歴
伊藤 倫之(いとう ともゆき)
1997年
京都府立医科大学卒業
1998年
京都府立医科大学第一生理学 助教
2001年
国立伊東重度障害者センター
2002年
浜松医科大学附属病院リハビリテーション部
2007年
和歌山県立医科大学リハビリテーション科 助教
2008年
和歌山県立医科大学観光医学講座 講師
2009年
阪南市立病院リハビリテーション科 医長
2009年
和歌山県立医科大学みらい医療推進学講座 講師 (みらい医療推進センターサテライト診療所兼務)
2015年
京都府立医科大学大学院医学研究科 講師
― 141 ―
研 修 講 演
障害者のスポーツの歴史は、筋力や持久力の能力向上を目的とするリハビリテーションの一環と
研修講演 2
脳疾患のリハビリテーション
橋本 直哉
京都府立医科大学大学院脳神経機能再生外科学(脳神経外科)教授
神経内科医や脳神経外科医が扱う脳疾患は多岐にわたり、その病因も様々である。多くの脳疾患
で後遺障害を残すことがまれでなく、リハビリテーションが患者の予後に大きな影響を及ぼすこと
は間違いない。一般的に脳疾患のリハビリテーションは早期に開始することが望ましく、そのこと
研 修 講 演
により廃用性障害他が予防されると考えられている。しかし脳卒中を例にとれば、脳出血とくも
膜下出血では急性期病態の違いから、リハビリテーションの開始時期は大きく異なる。さらに脳
外傷においては、その重症度や急性期の症候により、その開始時期は個々の患者により慎重に決
定されるべきである。国内の現状ではリハビリテーション専門病院への転院を伴うことが多いこ
とから、急性期に後遺障害の可能性や重症度を綿密に予測し、早い時期から治療チームとリハビリ
テーションチームが協働し、急性期から回復期リハビリテーションへのスムーズな移行を心がける
べきである。これらには、医師、看護師、セラピストのみでなく、幅広い職種によるチーム医療が
重要であると考える。本講演では、急性期・回復期・維持期のそれぞれのリハビリテーションの実
際と特徴について触れるとともに、それぞれの時期のスムーズな移行に焦点をあてて、その重要性
を強調する。脳疾患に特徴的なリハビリテーションである摂食・嚥下訓練、言語訓練や高次脳機能
訓練の現状と展望について述べ、脳卒中治療ガイドライン 2015 で取り上げられた新たな脳疾患リ
ハビリテーションについても総括することとする。
講師略歴
橋本 直哉(はしもと なおや)
1990年3月31日
京都府立医科大学 卒業
1996年3月31日
京都府立医科大学大学院博士課程卒業
1996年3月31日
医学博士(京都府立医科大学 甲第635号)
1996年7月1日
テキサス大学医学部脳神経外科臨床フェロー
2003年11月1日
大阪大学大学院医学系研究科助手
2010年4月1日
大阪大学大学院医学系研究科講師
2010年11月1日
大阪大学大学院医学系研究科准教授
2015年7月1日
京都府立医科大学大学院医学研究科教授
学 会 役 員 等:日本脳神経外科学会代議員、日本脳腫瘍学会理事など
学会の認定医等:脳神経外科学会専門医、がん治療認定医、脳卒中専門医
― 142 ―
研修講演 3
神経筋疾患・脊髄損傷の呼吸リハビリテーション
花山 耕三
川崎医科大学 リハビリテーション医学 教授
呼吸リハビリテーション(以下、呼吸リハ)は、「呼吸器の病気によって生じた障害を持つ患者
に対して、可能な限り機能を回復、あるいは維持させ、これにより、患者自身が自立できるように
継続的に支援していくための医療である。」と定義されている。呼吸リハにはその患者がもつ呼吸
広くとらえる必要がある。
神経筋疾患・脊髄損傷などで呼吸筋力低下を呈する症例は、多くは歩行能力を喪失している。ま
た、その呼吸障害の程度によっては、呼吸の維持に機械のサポートが不可欠な場合がある。した
がってこのカテゴリーの患者については、慢性閉塞性肺疾患患者と異なり、その運動機能の維持・
改善よりもその呼吸機能維持が重要である場合が多い。
神経筋疾患・脊髄損傷における呼吸障害では、吸気筋、呼気筋、咽喉頭筋の筋力低下についてそ
の治療・管理手段が数値目標をもって設定されており、この体系を最初に提唱した John Bach の功
績は大きい。これらの目標を達成、維持するための呼吸リハを行うためには多くの技術や細かい配
慮が必要であり、さらに多職種によるチームアプローチが有効である。現在推奨されている治療方
針については、2014 年に発刊された日本リハビリテーション医学会監修のガイドラインに述べら
れているが、その治療体系を各施設に根付かせることは必ずしも容易ではない。しかし、希少疾患
であるこれらの疾患の患者の ADL、QOL を向上させるためには、病態に応じた呼吸リハが不可欠
である。最終的には、それらの手段を患者・家族が習得し自立できるようにし、さらにそれを継続
することをめざしていく。そのうえで、生活の質の維持・向上を果たすことがこれらの疾患の呼吸
リハの最終目標であると考える。
講師略歴
2013 年
花山 耕三(はなやま こうぞう)
1984 年
1993 年
1995 年
2003 年
慶應義塾大学医学部を卒業し、同リハビリ
川崎医科大学リハビリテーション医学教室 教
授(現職)
テーション科入局。
主な所属学会:
米国ニュージャージー医科歯科大学リハビリ
日本リハビリテーション医学会(専門医、認定臨床医、
テーション科に留学。John Bach 教授のクリ
指導責任者、代議員、神経筋疾患・脊髄損傷の呼吸リハ
ニックで、呼吸リハを学ぶ
ビリテーションガイドライン策定委員会委員長)、日本
国立療養所東埼玉病院リハビリテーション科
臨床神経生理学会(認定医(神経伝導・筋電図分野))、
医長。筋ジストロフィー病棟を中心に呼吸リ
日本摂食嚥下リハビリテーション学会(理事、認定士)、
ハを実践
日本義肢装具学会、日本呼吸ケア・リハビリテーション
東海大学医学部専門診療学系リハビリテー
学会、日本脊髄障害医学会、など
ション科学 助教授のち准教授
― 143 ―
研 修 講 演
障害を改善、管理し、生活の質の維持・向上に結びつくあらゆる手段が含まれており、呼吸リハを
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