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- 157 - chap 8 第8章 内装下地(石膏ボード)材料 8−1 本章の目的と

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- 157 - chap 8 第8章 内装下地(石膏ボード)材料 8−1 本章の目的と
chap 8
第8章 内装下地(石膏ボード)材料
8−1 本章の目的と研究方法
新金物構法棟においては,内装下地ならびに天井仕上げ材として石膏ボードが使用されている。
住宅の解体性能を考える場合,内装下地材料はきわめて重要な位置を占めている。それは最終の解
体時だけではなく,リフォーム時において,この内装下地の解体性能が重要なポイントとなるから
である。たとえば加齢対応型のバリアフリーを考えてみよう。もともと高齢化や事故による肉体的
なハンディキャップの出現形態はさまざまである。そのため,あらかじめ手すりなどをつけておい
たとしても,かならずしも適切な場所に設置できているとは限らない。そのため,症状の出方に応
じて改造できれば,それにこしたことはない。バリアフリーのための改造には,内装の仕上げ材だ
けではなく,下地材料の解体性能が高いことが望ましい。
しかしながらひとたび取り付けられた石膏ボードの解体は困難なケースが多く,
リサイクルとい
う視点からも問題が多い。そこで本章においては,石膏ボードのリサイクルの現状を把握するとと
もに,中間実験(2003 年度)
,最終実験(2005 年度)の2度にわたって実施された石膏ボードの解
体性能の検証実験の結果を取りまとめた。
8−2 石膏ボードとリサイクル
(1) 石膏ボードの概要
石膏ボードは中高層ビルや住宅全般に用いられる建材で,平ボード,普通ボードとも呼ばれてい
る。化粧ボードやラスボード,穴あきボードの原板としても使用されている。主な使用部位(仕上
げ)は内壁及び天井下で,
・防火構造・準耐火構造用(ペイント・壁紙など)内装材として用いら
れている。
石膏ボードは他の建材と比較して,経済的であり,防耐火性にも優れており,切断の容易さ,施
工の簡便さとあいまって,建築内装材として広く利用されており,以下のような特徴がある。
・建築物の壁,天井として広範囲に普及
・3大性能は防火,遮音,断熱性
・施工性が良く,安価
・ボード原料の石膏には排煙脱硫石膏,紙には新聞紙などが使用されており,すぐれた再生資材で
もある。
・なお 12.5mm 厚以上の石膏ボードは,耐力壁としても認められている。
(2) 廃石膏ボードの概要
(a)
廃石膏ボードの分類とリサイクル状況
廃石膏ボードは,排出プロセスと排出時の形状などから「製造時廃材」
,
「新築時廃材」
,
「解体時
廃材」の 3 つに区分することができる。廃石膏ボードの排出及びリサイクルの現況を整理すると,
図 8-1,表 8-1 のとおりである。
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「製造時」
「新築時」「解体時」という3つの発生源別の処理の現状は,次のようになっている。
①石膏ボード工場・加工場・流通倉庫等で発生するもの
・工場・加工場・流通倉庫等で発生する石膏ボードの端材等については,1990 年以降資源の有効
利用を目的に全量回収,再利用が目指されている。石膏と紙に分離した後,石膏は再利用,紙
は一部再利用,一部は管理型処分場で処分されている。工場で発生する廃材については,各企
業とも目標を達成し問題の解決は図られている。
②新築建築現場等で発生するもの
・新築建築現場で発生する廃石膏ボードは,建築会社の大口建築現場(ビル等)では,かなり分別,
回収が図られているが,小口散在建築現場
(住宅等)では建設混合廃棄物として産業廃
棄物最終処分場等で処分されているものが多
い。1996 年 4 月以降石膏ボード業界は,再生
資源の利用の促進に関する法律の主旨に基づ
き,広域再生利用指定制度の再生資源活用業
者の指定を受け(11 社 24 工場)大口建築現
場等で発生する廃石膏ボードの回収,再利用
等を個別企業間の契約に基づいて実施されて
いる。今後も関係需要業界等の協力と支援を
図 8-1 廃石膏ボードの排出及び処理の流れ
得て新築現場から発生する廃石膏ボード問題
の解決が目指されている。
・新築現場で発生する廃石膏ボードの絶対量を
表 8-1 廃石膏ボードの排出及びリサイクルの状況
減らすためには,建築の設計段階から施工段
階まで総検証し,管理を強化する必要があ
る。製品については,標準常備品の使用促進,
発注段階での製品寸法の明確化と発注数量の
検証,端材の有効利用の促進,目的外用途へ
の使用自粛,残材の他用途への転用等が考え
られてる。これらの問題については,関係需
要業界の協力と支援が望まれるところで,現
状の発生量 8% 程度を 5% 以下にまで削減する
ことが必要であり,実現は可能と考えられて
いる。
③解体現場で発生するもの
・ビル,住宅等の解体時に発生する廃石膏ボー
ドの回収,再利用は技術的,経済的に未解決
の問題が多い。建設資材リサイクル法の施行
に伴い分別解体が促進されることにより,分
別回収が推進されるが,分別回収される廃石
リサイクル状況
石膏ボード工場内で紙と石膏に分離
された後,石膏は石膏ボード原料と
して全てリサイクルされ,微量の石
膏が付着している紙は,一部たい肥
等の原材料等としてリサイクルされ
ているが,残りは焼却処理又は管理
型最終処分場で処分されている。
建築物の新築に伴い,新築現 石膏ボード製造業者は,環境大臣に
場で端材(施工に伴って発生 よる広域再生利用指定制度の指定を
する切れ端)と余剰材が発生 受けて,一部の建設業者の新築現場
する。端材として発生する廃 から排出される廃石膏ボードを受入
石膏ボード量は張り面積の5∼ れ,製造時に発生する廃石膏ボード
8%,余剰材の排出量は張り面 と同様にリサイクルしている。
積の2∼3%と言われている。 (社)石膏ボード工業会は,リサイ
クルのための受入可能量を,出荷総
新
量の5%以内としている。
築
一部の中間処理業者は,地盤改良材
時
等としてリサイクルしている。
廃
一部の建設業者は余剰材を他の現場
材
で使用することにより,廃石膏ボー
ドの発生を抑制している。
新築時廃材の処理に係わる費用は基
本的に1万円/t(広域再生利用及び
中間処分業)
広域再生利用指定制度を活用した廃
石膏ボードの平成12年度の回収量は
107千トンとなっている。
建築物の解体工事やリフォー 多くの場合,排出に当たり他の廃棄
ム工事に伴い発生する。通
物と分別されておらず(分別解体、
解 常,湿式工法で施工された場 異物除去が困難),ほとんどリサイ
体 合は,石膏ボードに左官材料 クルされていない。
時 である石膏プラスターが付着
廃 した状態で発生する。乾式工
材 法の場合は、石膏ボードには
ビニールクロス等の仕上げ材
が付着した状態で発生する。
製
造
時
廃
材
排出状況
石膏ボードの生産に伴い,石
膏ボード工場内で発生する。
(社)石膏ボード工業会によ
ると,昭和58年以降の廃石膏
ボードの排出量は生産量の5%
程度である。
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膏ボードに付着している下地材,仕上材を分離する技術開発は急務である。特に仕上材料等も関
係するので関連業界の連携が必要である。
・現時点では,分別回収が図られていない事や,品質の安定性等の面で,解体系廃石膏ボードの受
入,再利用は試行的にしか行われていない。長期的には解体時に発生する廃石膏ボードが主流と
なるので,石膏ボードへの再利用へ技術面での検証や受入体制の整備について検討されている。
・石膏ボードへの再利用の面ばかりでなく,多量に用いる新たな用途,活用について関係する業界
との連携の基に検討,検証の段階から実用化に向けた開発が急務になっている。
・石膏ボード業界は,解体廃石膏ボードの問題について経済産業省の指導と支援を得て,新エネル
ギー産業技術総合開発機構より,廃石膏ボードに含まれる夾雑物の除去,石膏の改質,廃石膏の
用途開発等をテーマとした「解体廃石膏ボードの再資源化技術開発」の委託を受け,平成 13 年
3 月に第一段階の検討を終了している。
(b) 石膏ボードの製造量と廃石膏ボードの排出量
(社)石膏ボード工業会の試算(1998 年 11 月 1 日現在)によれば,石膏ボードの生産量及び廃石
膏ボードの排出量は,今後増加すると報告さ
れている。この試算では石膏ボードの生産量
を基に廃石膏ボードの排出量が算出されてい
る。石膏ボードの生産量および廃石膏ボード
の排出量の年次別の状況は,図5−2のとお
りである。
(c)
廃石膏ボード回収に当っての問題点
①排出プロセス別の問題点
<新築系廃石膏ボード>
廃石膏ボードの発生を抑制する事が必要で
図 8-2 石膏ボードの生産量と廃石膏ボードの排出量
あり,
その上で発生したものについては充分に管理すれば異物が混入しない形で分別回収すること
は可能である。乾燥状態で保管した上で,石膏ボード工場・中間処理場等に持ち込み,再資源化す
ることが行われている。新築系の廃石膏ボードの回収率は,現在約 50%である。
<解体廃石膏ボード>
分別解体を行った場合でも廃石膏ボードは下地材,断熱材,金物,仕上材等が付着している場合
が多く,単体として取り出す事は技術的・経済的に問題が多い。しかしながら,今後分別解体が義
務付けられる事により排出量が増加する事から,
一定の条件を満たしたものについては受入れる方
向で進められている。
<回収した石膏の利用>
回収した石膏の利用範囲は現状では限られており,石膏ボード用として再生活用する場合は,品
質性能の担保及び生産性の面から混入量を 10%程度と制約している。混入量を増すことについて
の調査研究がなされている。
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②廃石膏ボードの排出・処理の現状と課題等
・2000 年度における石膏ボードの年間生産量は 468 万トンで,このうち,実際の建築物に使用され
るものが 426 万トン,新築時廃材 42 万トンとなっている。また,
(社)石膏ボード工業会の試算
によると2000年度における建築物の解体時に排出する廃石膏ボードは53万トンと推計されてい
る。
・廃棄物中間処理業者等による廃石膏ボードの破砕・粉砕,紙の分離を経て,石膏ボード製造業者
によるリサイクルが行われるルートが確立されており,2000 度時点で 16 万トンがリサイクルさ
れている。このうち,広域再生利用指定制度を活用した廃石膏ボードの平成 12 年度の回収量は
11 万トンとなっている。また,セメント製造者等へのリサイクルの動きもみられる。
・解体時は,中間処理業者等による廃石膏ボードの破砕,紙の分離を経て,一部は石膏ボード原料
へのリサイクルが行われているが,解体時の分別・選別の困難性,リサイクル市場の不足等から,
大部分は埋立処分されている。
③ 石膏ボードの施工法による問題点
解体時における廃石膏ボードについては,
建築時の石膏ボードの施工が湿式工法か乾式工法かに
より排出形態が異なる。湿式工法で施工された場合は,石膏ボードに左官材料が付着した状態で排
出されるので,リサイクルを行うためには,石膏ボードと左官材料を分離する必要がある。表5−
2に排出形態とリサイクルの必要条件を整理してものを示した。
④廃石膏ボードのリサイクルの推進方策
・新築時の廃石膏ボードは,現状のリサイクルシステムの拡大・普及及び新たなリサイクル用途・
技術の開拓を行い,リサイクルの拡大を行う方向がめざされている。
区分
排出形態
リサイクルの必要条件
・解体時の廃石膏ボードは,
「建設リサイクル法」による特定建設資材廃棄物の分別解体等及び再
湿式 ①石膏ボードに左官材料である石膏プラス 石膏ボードと左官材料
ター,土塗仕上材,砂壁仕上材が塗られて の分離が必要である。
資源化等の義務化に伴い,
解体時におけるその他の建設資材廃棄物である廃石膏ボードについて
いるもの。
も,分別・選別の徹底はもちろんのこと,新築時廃材のリサイクルシステム,ルートを活用する
乾式
②木材・鋼製の下地材,断熱材などが付着し 石膏ボードと他の材料
などし,リサイクルの拡大がめざされている。また,リサイクルシステムの活用を促進するため
ているもの。
の分離が必要である。
には,リサイクルのための受入基準に対応した分別解体基準の確立等が必要である。
③パーティション,サイディング,パネルな 仕上げ材として広く使
用されているビニール
どの芯材・表面材となっているもの。
(注)本節の記述は,環境省 廃棄物・リサイクル対策部「廃石膏ボードのリサイクルの推進に関する検討調査」
④壁紙,ペイント,繊維板,吹き付け材が付 クロスをボードから除
2002・12 社団法人 石膏ボード工業会 HP 「環境問題への取組」を参考にして要約したものである。
着しているもの。
去する必要がある。
表 2.1-4 解体物の湿式と乾式工法による廃石膏ボードの排出形態とリサイ
表 8-2 湿式・乾式の違いによる廃石膏ボードの排出形態とリサイクルの必要条件
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8−3 中間実験(2003 年度)における石膏ボードの解体性能の検証
2003 年度には,1・2階間の吹き抜け空間の増床ならびにホームエレベータの後付,階段手す
りの後付などの大規模リフォーム実験が行われた。増床にあたっては,梁を挿入する周辺部分の石
膏ボードをはがす必要があり,また手すりの後付においても,補強板をとりつけるために内装下地
材料である石膏ボードをはがす必要がある。
このようなリフォーム需要に柔軟に対処するためには
内装下地材料の解体性能は重要なポイントとなる。
解体実験は,2003 年 10 月 7 日,9 日,16 日にかけて行われた。解体の対象となったのは,Y社
「ハイクリーンボード」でビス留め施工をしたものと,メルトプレート工法で接着したものの2タ
イプである。
(1)
ビス留め施工の解体
中間実験におけるビス留め施工された石膏ボードの解体にあたっては,S2(部分的再利用)レ
ベルのリサイクルを想定して行われた。
(a)
ビス留め施工の検証箇所
写真 8-1 リフォーム前の壁の状態
化粧梁の上に足場床が貼られている
写真 8-2 壁紙表層部分の剥離作業
T社のリサイブル壁紙は塩ビ部分と裏打ち紙の分離がたやすく
行える。
大規模リフォーム実験では1・2階吹き抜け部分に新たに梁をかけ,2階床を貼る(増床)実験
を行った。この施工にあわせ,吹き抜け時に梁の接合金物を隠す処理がなされていた1階部分の壁
下地(石膏ボード)の解体実験を行った。ここで用いられた壁紙はT社のリサイブルを使用してい
たので,表層の塩ビ部分を剥離することは極めて容易で,裏打紙のみがボード表面に残った状態か
ら解体作業を行った。
(b)
ビス留め施工の解体方法
壁紙の裏打紙が貼られた状態でビス頭を探すため,指で下地処理(石膏ボードに埋没したビス頭
をパテで埋める)を行われた部分をなぞってみたが,凹凸が感じられなかった。そこで一度裏打紙
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写真 8-4 電動ドリルでビスを抜く
写真 8-3 金槌でビスの頭を探した
写真 8-6 ビスを抜いた痕
写真 8-5 火打ち部分ではカッターで横に切
れ目を入れたが・・ボードを割ることはでき
なかった
写真 8-7 火打材があり,ボードがきっちり
と施工されていたので,バールを用いて剥ぎ
取った
写真 8-8 矢印に合わせてバールを叩き入れた
作業人数:2 人
作業道具:金槌,バール,電動ドリル,カッター
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を剥し,再度指でなぞってみたが,壁紙を貼る前の下地処理が必要箇所より広い範囲で行われてお
り,ビスの位置を発見するのは困難であった。
目視では発見するのが不可能に近いため,金槌を用いて石膏ボード表面を叩き割り,ビスを探し
た。最初のビスの位置が分かってからは,叩き壊す面積は少なくなった。とはいえ仕上げ化粧処理
を行った石膏ボードからビスを探すのは難しく,この段階で破損部分が大きすぎる。そのため再利
用は不可能と考えられる。
(写真 8-3)
次に,電動ドリルを用いてビスを抜き取った後,石膏ボードにカッターで切りこみをいれ,金槌
やバールで叩き割るのを試みたが,時間も労力もかかり容易に割れるものではなかった。石膏ボー
ドの裏が梁であり,空洞ではなかったので,一層困難となっていた。
叩き割ることが無理であったため,
バールやヘラを用いて石膏ボードを手前に引っ張り取ること
を試みた。化粧梁の間や火打材に石膏ボードが隙間無く施工されており,また壁紙施工時のシーリ
ングが残っていたので,まずバールやヘラを材に沿わして叩き込み,石膏ボードと材に隙間をつく
ることにした。その箇所から石膏ボードを手前に引き剥がした。火打材がある場所では,石膏ボー
ドが途中で割れて残ったので,ヘラなどで少しずつ剥ぎ取る方法を行った。
(c) ビス留め施工の解体検証結果
石膏ボードに壁紙を施工した場合,
下地処理としてビス頭や石膏ボードの目地はパテで埋められ
ており,その上から探し当てるのは予想外に困難であった。今回の解体では,ビス位置を探すため
に金槌でボード表面を叩き割ったため,破損面積が大きく,当初S2(部分的再利用)の可能性を
考えていたが,分別回収を図りM1(中間処理場における同一用途再利用で,すでに技術的には可
能となっている)
,もしくは最終処分と考えられる。
検証前,ビス留め施工であれば,釘による施工よりも比較的損傷が少なく解体できると考えられ
たが,仕上げ処理をした石膏ボードの解体の困難性が示された。また,ビスを探し出した場合,ビ
スの頭がパテで埋まり,電動ドリルを使用するのも通常より労力が必要となった。
(d)
ビス留め施工の解体上の問題点
壁紙は石膏ボードの施工法としては乾式工法に入るが,リサイクルの必要条件としては,石膏
ボードと他の材料の分離が必要となり,
仕上げ材として広く使用されているビニールクロスをボー
ドから除去する必要がある。今回壁紙に使用したT社のリサイブルは,下地を残して,上のビニー
ル部分だけを容易に剥離できるため,
この問題がクリアされているが,
石膏ボード自体の解体には,
大きな問題が残る。
ただし壁紙施工前の下地処理を行っていない場合,石膏ボードを留めるビスを 2,3 箇所のみ少
し緩めた状態で抜き取らずに残しておけば,石膏ボードを外す際,そのビスを持って手前に引っ張
ることにより解体は容易に行えることがわかった。
これにより下地処理を除けばビス留めによる施
工は,ビスを施工した際にできる穴のみで,欠損はみられなかった。
現在の内壁化粧材としては壁紙が多数を占めるため,今後のリサイクル促進には,どのようにし
てパテで埋められたビスを探し出すかが解体技術上の課題となる。
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写真 8-9 上から楔をかませる
写真 8-10 ボード剥離後に残るメルトプレート
写真 8-11 手前にひきながら接着剤をはがす
(2)
メルトプレート工法の解体
メルトプレート工法(第7章参照)の特徴から,石膏ボード自体の破損は少ないと考え,S1
(完全再利用)
,S2(部分的再利用)レベルを想定して解体実験を行った。
(a)
メルトプレート工法の検証箇所
ビス留め施工の検証と同様,増床に伴い2階梁を通すため,化粧梁の下に施工されている壁下地
(石膏ボード)の解体を行った。壁紙はビス留め同様,T社のリサイブルを使用したので,表層の
塩ビ部分を剥離し,裏打紙のみがボード表面に残った状態で行った。
(b)
メルトプレート工法の解体方法
解体する石膏ボードの上1枚は,すでにビス留め施工の解体で取り外してあるので,上から順に
ホットメルターをあて,溶剤を溶かし,クサビをかませて剥離を行った。上部を留めている部分か
ら剥離し,クサビが入らないところまで進むと,手を使ってボードを手前に引っ張りながら,下に
向かって接着剤を溶かし剥していった。
(写真 8-9)∼(写真 8-11)
垂直方向の目地はカッターで切断したが,目地を切断する際,接着面をほぼ剥し終えて(下まで
接着を溶かして)から,剥離しようとする石膏ボードを手前に引き,隣の石膏ボードを躯体側に押
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写真 8-12 水平方向の目地を切断
写真 8-13 水平方向の目地を切断後
作業人数:4 人 作業道具:ホットメルター,クサビ,カッター
写真 8-14 梁下の目地を切断
写真 8-15 コーナー部分のボードを横に引く
図 8-3 目地部分分離のモデル図
写真 8-16 石膏が割れてプレート側に残存
写真 8-17 左写真における石膏ボード側の剥離
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さえ付けて目地を浮かせ,カッターで切り離した。水平方向の目地は,石膏ボードを上から全て剥
した後,壁紙の下地だけが残るので,それをカッターで切断して外し取った。コーナー部分は,垂
直に交わる石膏ボードによって抑えられているので,横に引っ張るようにして抜き取った。
(写真
8-12)∼(写真 8-15)
(c)
メルトプレート工法の解体検証
最初,垂直方向の目地を先に切断しようと考えカッターを入れたが,谷型に目地埋めされている
(埋めている量が多い)ので,カッターで切断するのが困難であった。また,石膏ボードが梁下で
継いであったため,上から目地の位置を確認できず,位置を特定するのが困難であった。
しかし,石膏ボードの表面はボール紙で被われているため,剥離したい石膏ボードにうまく力を
加えれば,目地を埋めているパテだけが簡単に浮き割れを起こすことがわかり,石膏ボードをある
程度剥した後に目地部分を切断する方が良いと考えられる。
水平面や石膏ボードの切断面は,つき付け施工となっているので,目地の位置が特定できれば,
カッターで切りこみを入れることで,比較的容易に外すことができた。
コーナー部分では,メルトプレート全体にホットメルターを当てることができなかったので,施
工時にメルトプレートを少し内側に入れるほうが良いと考えられる。
メルトプレート工法による石膏ボードの解体は,ビス留め工法に比べ,表面的な破損は無いが,
パテ処理や解体時の損傷でS1は不可能と考えられる。
とはいえ裏面の損傷が無ければS2は可能
である。また,ビス留めより回収状態が良いのでM1は促進されると考えられる。
今回行った箇所は,吹き抜け部分で天井が無い状態で解体を行ったので,従来の施工方法と較べ
ると容易に行うことができたと考えられる。
(d)
メルトプレート工法の解体上の問題点
解体にあたって,メルトプレート工法では,プレートが石膏ボードの高さと同じ長さのものを
使って施工されていることが問題となった。
それは溶剤を溶かすためにホットメルターを当てるこ
とで,メルトプレートに熱が伝わり,接着をしていない部分まで新たに接着剤がとけてしまうこと
である。また,メルトプレートが施工してある箇所では,ホットメルターが全てに反応するので,
施工時に,どの部分で接着しているかが分からないといった問題もでてきた。さらに石膏ボードを
剥離する際,接着剤が完全に溶かせていない部分があると,手前に引き剥がす力が強い場合,石膏
ボードの一部が割れてメルトプレート側に残るという問題もみられた(写真 8-16,写真 8-17)
。
これらの問題のうち前2つの問題を解決するためには,メルトプレートをチップ化し,必要に応
じて事前に貼付ルールを決めたうえで,そこに照射・溶融するということが有効であると考えられ
る第14章のメルトプレート工法という新しい接着方法についての検討には,
ここで得られた教訓
を生かした実験がなされた。
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8−4 最終解体時(2005 年度)における石膏ボードの解体性能
2003 年度に実施された大規模リフォーム時の石膏ボードの解体実験(中間実験)において,
解体後の石膏ボードを現場で再利用することは難しいことがすでに確認されている。
そこで再
生利用が可能なかたちで,どのように分別解体するかが課題となるが,その際,解体手間をい
かに少なくすることができるかが大きなポイントとなる。
また中間実験においてみられた石膏
ボード同士ならびに他の部材との接合部分の取り合いがうまくいっていない箇所が,
どの程度
存在しており,どのような改善策が考えうるのかを検討することも最終解体時に残された重要
な課題である。
解体実験は 2005 年 3 月 5 日,26 日,6 月 10 日,7
月 2 日,22 日,8 月 8 日,9 日,10 日,11 日,29 日
にかけて行われた。解体の対象となったのは,Y社
「ハイクリンボード」で,ビス留め施工したものと,
メルトプレート工法で接着したものの 2 タイプであ
る。
解体時にはあらかじめ内装仕上げ材である「リサ
イブル」の表層面を剥がした上で作業を行った。こ
こで用いられた壁紙は一部はがれにくい部分があっ
たが,全体的には表層の塩ビ面を剥離することは容
写真 8-18 ビニル壁紙を剥がしている様子
易であった。そこで裏打ち紙のみがボードに残った
状態から石膏ボードの解体作業を行った。作業にあ
たっては,すべてのパネルに番号を付け,大きさや
破損状況などを記録した。
解体作業はビス留め施工,メルトプレート工法の
それぞれ何箇所かを完全再利用(S1),部分再利用
(S2)の可能性を再確認しながら進めた。次に作業
効率を優先し完全・部分再利用が不可能な場合は,分
別回収をした上で再生利用(M1)をすると想定した
写真 8-19 ビス止め
解体作業を行った。とりまとめにあたっては,再利
用を重視する場合と,作業効率を重視する場合の違
いに着目して分析を進めた。
(1)
ビス留め施工の解体検証
石膏ボードのビス留め施工の解体においては,現
場再利用が難しいことが既に確認されている。しか
しまず再利用の可能性を確認するために部分再利用
レベル(S2)のリサイクルを想定して行った。再利
用を優先した解体はビスを一本ずつ抜き,できる限
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写真 8-20 ビニル壁紙の下地処理された状況
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り部材を傷つけないようにした。効率優先の解体では
ボードの損傷は考えずにバールや金槌を用いて作業を
進め,少しでも早く解体できる方法を探した。またどち
らも分別回収性能の確認も同時に行った。
(a)
ビス留め施工の解体方法
石膏ボードのおおまかな取り外し方は次のような手順
である。
①ビスの位置を特定する
写真 8-21 ①ビスの頭をさがす
②電動ドライバーでビスを外す 石膏ボードのビス留め施工は,
ビスの頭が見えている
場合と,下地処理(石膏ボードに埋没したビス頭をパテ
で埋める)がされた場合の二種類がある。ビスの頭が見
える場合はそのビスを抜くだけでパネルを外すことが
できるが,隠れている場合はまずビスを探す。
下地処理が行われた表面を指で触ってもビスの感触は
なく,下地材を剥がしてみてもやはりビスの位置を発
見するのは困難であった。目視で探すのは不可能に近
写真 8-22 ビスの頭が出た状態
いため,ヘラやバールで表面を削りビスを探した。ビス
の位置はほぼ等間隔であるので,予想をしつつ削る。こ
の段階でボードの表面に少なからず傷が付き,完全再
利用(S1)は不可能となった。部材寸法を小さくして
再利用(S2 , S3)するしかなくなった。
効率優先の解体(M1)はバールや金づちなどで強引に
はがし,後からボードの残骸とビスとを選別した。様々
な工具を使い分けたり,作業の開始部分を変えたりし
ながらより早く解体できる方法を探した。ビスを探す
作業が無くなるのでかなりの時間短縮につながったが, 写真 8-23
粉々になった残骸の中からビスを探すのに苦労した。
②電動ドライバーを用いてのビス抜き
<方法1:再利用重視の解体手順>
①表面にビスが確認できる部分 この場合はビスを抜くだけで解体できる。
実験住宅ではほとんどがこの確認できるビスであった
が,実際はこの上から壁紙が張られることになり④,⑤
の工程が必要となる。
②下地材の表面を削りビスの頭を探す 下地処理がしてある部分は目視でビスの頭を見つける
ことは不可能であったので,まずその頭を探した。
(写
真 8-21)
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写真 8-24 ④ビスをぬいた跡形
chap 8
バールやへらなどで表面の下地材を削った。
③表面をバールで削った跡 バールやへらを使ってボードの表面を削った際にできた跡。
時間をかけて丁寧に作業をしても傷
は残ってしまい,この段階で再利用は不可能である。
(写真 8-22)
④ビスを抜く 電動ドライバーでビスを抜く。ビスは容易に抜けた。
(写真 8-23)
高い部分や天井の解体は二人以上必要。
天井部はビスの数が少なくなるとボードの自重で落下する可能性がある。
手で支えながら作業を進めた。
⑤ビスを抜いた跡 ビスを抜く際にボードが欠けたりする
ことはなく,ビス施工時にできた穴のみ
が残った。(写真 8-24)
<方法2:効率重視の解体手順(M1)>
①バールを差し込む ボードの端からバールの先を差込み,
てこの力でボードを浮かす。このときで
きるだけバールを奥のほうまで差し込ん
でから浮かすと割れにくい。
(写真8-25)
②ボードをはがす ボードが浮いたら徐々にバールでボー
ドをはがしていく。この時少しでも乱暴
に扱うとボードが割れる。
ビスの近くはビスが抵抗になり割れや
すい。何本かビスを抜いてからだとはが
しやすい。
③ボードをはがしたあと ボードがうまくはがせるとビスだけが
写真 8-25 効率重視の解体(バール使用)
残り,後はビスを抜くだけである。分別
写真 8-26 ボードを剥がした跡
- 169 -
chap 8
も簡単である。一部ボードのかけらが残るが,それも割ってしまえばビスのみが残る。
④ボードの残骸の中からビスを分別する
写真 8-26 は割れたり,欠けたりした例である。
<補足>
石膏ボードの取り付け位置が特殊な場合(EV・階段・窓など)はバールや金づちを使って石膏ボー
ドの一部を破壊して取り外した。
上で記した工程のほかの工程が必要になる箇所が出てきた場合は臨機応変に対処する。
(b)
ビス留め施工の検証評価
石膏ボードのビス留め施工は再利用重視と,作業効率重視の解体の二種類を行った。
再利用重視ではS2レベルで解体できるか確認し,
何とかうまく解体できる方法がないか探して
みたが結局解決策は見つからなかった。壁紙のための下地処理がしてあり,ビスを探して表面を
削っているうちにボードを傷付けてしまった。この段階でS2は不可能となり,M1もしくは最終
処分となってしまった。また全てのビスを探し出すのにかなりの時間がかかり,効率の悪い作業で
あった。おそらくビスの位置はある程度決めて使用しているのであろうが,下地材の上からでは全
く変化がわからず特定できなかった。
せめてビスの位置だけでもパテの色を白色以外にして目視で
確認できるようにすると良い。
パテがビスの頭の溝に詰まり電気ドライバーが滑ってしまい通常よ
りも労力が必要となった。
ビスがまだ残っているにもかかわらずビスが全て抜けたと思って外そう
とすると,ビスが引っかかって割れてしまった。
効率重視の解体ではS2をあきらめてM1を想定することにした。
回収性能の向上ができればM
1が促進されると考えた。解体方法はバールでボードを引き剥がすのみであり,同一工具で単純な
作業なので作業効率はよかった。
さらにボードを剥がすときにビスのみが壁に残ってくれるので分
別作業の手間が省けるというメリットも見つかった。
しかしむやみやたらに剥がせばボードが割れ
て散らかってしまい,集積作業に時間がかかってしまった。そこで一部のビスの周辺をバールで叩
き割ってボードを浮きやすくしてからバールで引き起こすと,
大きく割れることなくかつ早く解体
することができた。
これがビス留め施工の石膏ボードを解体するのに最も早く剥がす方法であると
考えられる。
結果的にはビス留め石膏ボードの再利用は難しいことがはっきりした。
それは仕上げ材の下地処
理の影響が大きいからである。解体まで見越した工夫をすることが望まれる。また効率を優先して
作業が雑になればなるほどボードが割れて周囲に散らかり,
その後の集積作業に時間がかかること
になる。必要最低限の破壊を心がけることで余計な労力と時間を使わなくて済むのである。
現場再利用が不可能であるとわかったが,分別回収性能があることからM1,M2などを想定し
た廃石膏ボードのリサイクルシステムの更なる進歩が望まれる。
石膏ボードをより容易に取り外す
ためには,取り外す時に初めて方法を考えるのではなく,やはり施工時あるいは設計時に何らかの
工夫をして取り付ける必要がある。
特に他の部材との関係の問題は施工時にひと工夫をすることで
大きく改善できると思われる。
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chap 8
(c) ビス留め施工の問題点
「現場再利用は不可能である」ことが確認された。これ以外の問題点は以下のように整理するこ
とができる。
・壁紙の下地処理として目地がパテで埋められた部分は,
その上から探し当てるは大変困難である。
・ビスを見つけるために表面を削った跡が残る,または割れる。
・基本的にビスは等間隔であるが,例外も多く結局時間がかかる。
・ビスのピッチが細かく抜く作業自体は容易だが,大量にビスがあるためすべて抜くのに時間がか
かる。
・施工の順番によりボードの上から他の部材が施工されている場合があり,その場合上の部材を取
り除かなければボードの解体は不可能である。
・ビスが一個でも残っていると取り外せず,力を入れるとボードがビスを残して割れる。
・ビスを抜かずに端の部分をバールでこじ開けると,力がかかった部分が割れる。
・バールを使った手解体ではボードが細かく割れかなり散らかってしまう。
・作業が少しでも乱暴になると欠けてしまう。
・天井のボードを外す際に,ビスの数が残り1,2本になるとボードの自重で落下する可能性があ
り危険である。
・電動ドリルによる長時間の作業は手に負担がかかる。
・少なからず周囲にボードの破片が散らばる。特にバールで解体する場合は当たり一面ボードのか
けらとなるのでビスの分別が大変である。
(2)
メルトプレート工法の解体検証
石膏ボードをメルトプレート工法を用いて接合した場合の解体については,中間実験において,
現場完全再利用(S1)は難しいものの,
状態により部分的再利用(S2)は可能である事がすでに確
認されている。
またビス留め施工より回収状態もよいので同一用途再利用(M1)性能の効果が期待
できる。解体は再利用を優先し,部分的再利用(S2)レベルを想定した作業と,作業効率を優先し
た作業を行った。再利用優先の解体ではホットメルターでプレートの接着剤を溶かしながら,でき
るだけ傷をつけないように慎重に作業を進めた。
効率優先の解体ではバールや金槌を用いて作業を
進め,
少しでも早く解体できる方法を探した。
またどちらも分別回収性能の確認を平行して行った。
壁紙はビス留め施工同様,T社のリサイブルを使用したので,表層の塩ビ部分を剥離し,裏打ち
紙のみがボード表面に残った状態で行った。
(a)
メルトプレート工法の解体方法
解体する石膏ボードの上に張ってある壁紙の下地材は,
すでにビス留め施工の解体で取り外して
あるので,上から順にホットメルターをあて,接着剤を溶かし,バールやへらなどをかませて剥が
した。上部を留めている部分から剥がし始め,バールが入らない部分まで進むと,手を使ってボー
ドを手前に引っ張りながら,下に向かって接着剤を溶かし剥がしていった。メルトプレートはボー
ドの左右と中央の三箇所に入っていたが,
どのボードもほぼルール通りに入っていたため探しやす
かった。最初の一枚を取り外す際,ボードを浮かすためにバールやへらでこじる。そのためボード
が割れたり欠けたりした。この一枚目さえ取り外すことができれば,次のボードの端が見えるので
- 171 -
chap 8
そこから順番に取り外していく。ゆえに一枚目をどこから外し始めるかがポイントとなる。ボード
の切れ端が見えていればまずそこから始めていった。
垂直方向の目地はある程度剥離した後に手前に力を加えながら引くことで,
目地を埋めているパ
テだけが簡単に浮きわれをおこすので,それをカッターやへらで切断した。水平方向の目地は,石
膏ボードを上から全て剥離する。その後,
,壁紙の下地だけ残るので,それをカッターで切断した。
コーナー部分は,垂直に交わる石膏ボードによって押さえつけられているため,横に引っ張るよう
にして抜き取った。一枚目のボードを取り外す際に,ボードを傷つけないように引っ張り出す点に
注意した。
効率優先の解体は,メルトプレートの下側にバールを差し込み,てこの要領で引き起こすだけで
剥離できた。ボードを全て取り外したあとプレート
を分別した。メルトプレートがボードのサイズに合
わせてあり,長尺だったので分別の際に確認が容易
だった。ボードの端が見えていないところは,つな
ぎ目にバールを差し込んで引き起こしたり,金づち
で穴を開けたりして対応した。
<方法1:再利用重視の解体手順>
①ホットメルターをあてる メルトプレートが入っている部分の上にホットメ
写真 8-27 ①ホットメルターをあてる
ルターをあて剥がしていく。どの部分の接着剤が溶
けて,どの部分がまだくっついているのかを見極め
るのが困難であった。(写真 8-27)
②ボードを浮かす ホットメルターでボードを剥がすのと同時に,剥
がれた隙間にバールやへらなどを差し込み,ボード
を浮かしておく。一度剥がれた部分を浮かしておか
ないと他の部分に当てる熱に反応して接着剤が溶け,
再度くっついてしまうからである。バールやへらを
写真 8-28 ②ボードを浮かす
差し込むときにボードを割らないように気をつけた。
(写真 8-28)
③残りを剥がす ボードがある程度浮いてきたら,接着剤が残って
いる部分にホットメルターをあて剥がしていく。常
にボードを手前に引いているのがポイントである。
この際接着剤が完全に熔かしきれていないと,手前
に引き剥がす力が強い場合,石膏ボードの一部が割
れてメルトプレート側に残るという問題も見られた。
写 8-29 残りをはがす
(写真 8-29)
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chap 8
⑥取り外したボード 取り外したボードの状態である。ボード
にホットメルターを当てた際にできたこげ
が見られるがそれ以外に損傷はなかった。
ボードとプレートがきれいに分かれるため,
このあとの分別が非常に楽である。
(写真830)
⑦メルトプレートを分別する ボードを取り外したらメルトプレートと
分別する。比較的きれいに簡単に分別する
写真 8-30 ⑥取り外したボード
ことができた。多くの場合ボードを剥がす
段階で壁側にプレートのみが残るのでそれ
を剥がすことになった。分別回収性能は高
いと言える。(写真 8-31)
<方法2:効率重視の解体手順(M1)>
①バールを差し込む ボードの端からバールの先をメルトプ
レートの下に差し込み,てこの要領でボー
写真 8-31 ⑦メルトプレートの分別
ドを浮かす。このときできるだけバールを
奥のほうまで差し込んでから浮かすと割れ
にくい。最初の一枚を取り外す際にバール
でこじるため,ボードが割れたり欠けたり
する。この一枚目さえ取り外すことができ
れば,次のボードの端が見えるのでそこか
ら順番に取り外していく。ゆえに一枚目を
どこから外し始めるかがポイントとなる。
ボードの端が見えていない場合はボードと
ボードのつなぎ目にバールを差し込んで引
写真 8-32 ①バールを差し込む
き起こしたり,金づちで穴を開けたりした。
(写真 8-32)
②ボードを剥がす バールでボードを浮かしたら隙間に手を
差し込み,ボードを手前に引いて剥がす。力
を強く加えるとボードが割れたり,プレー
ト側に残ったりした。今回の目的は早く解
体することと,きれいに分別をすることな
写真 8-33 ②ボードを剥がす
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chap 8
のでその点はあまり意識せずに作業を行ったが,
それでも比較的きれいな状態で取り外すことがで
きた。(写真 8-33)
③メルトプレートを分別する ボードを取り外したらメルトプレートと分別する。
比較的きれいに簡単に分別することができた。
多くの場合ボードを剥がす段階で壁側にプレートのみが残るのでそれを剥がすことになった。
一部
ボードが欠けてプレートにくっついた部分があったが簡単に取れた。
分別回収性能は高いと言える。
<補足>
石膏ボードの取り付け位置が特殊な場合(EV・階段・窓など)はバールや金づちを使って石膏ボー
ドの一部を破壊して取り外した。
上で記した工程のほかの工程が必要になる箇所が出てきた場合は臨機応変に対処する。
(b)
メルトプレート工法の検証評価
石膏ボードのメルトプレート工法は再利用重視の解体と,
作業効率重視の解体の二種類を行った。
2003年の解体実験で石膏ボードのメルトプレート施工は現場完全再利用(S1)は難しいものの,
ビ
ス留め施工に比べて再利用の可能性(S2)が高いこと,回収状態が良いことが確認されている。ビ
スと同様にS2レベルを想定した解体で再利用の可能性の確認と,
回収状態を意識しながら効率重
視の解体を行った。
再利用重視の解体では,ホットメルターを使った。ホットメルターを当てた際にできた焦げは見
られたが,剥がし取る際に裏面の損傷が見られなければ S2 は可能であるといえる。ビスのように
解体作業による割れや大きな損傷は見られなかった。
しかし溶かす作業に時間がかかりすぎという
問題が発生した。ホットメルターをあてて接着剤を溶かすのと同時に,手前に引っ張りながら溶か
していくと早く剥がすことができた。
また接着剤が溶けて浮かび上がったところにバールやへらを
差込み,常にボードを浮かせておく必要があった。これはメルトプレートがボードと同寸の物を採
用していて,一度剥がした部分も他の部分に当てたホットメルターの熱に反応して,再びくっ付い
てしまうことがあったためである。
効率重視の解体はバールのみを使ってM1を想定した解体を行った。
バールをボードの切れ目に
差込み強引に引き剥がした。
メルトプレートの下に差し込めばボードが割れることなく効率よく剥
がすことができた。最初の一枚はバールを差し込む際に,バールの先でこじるため割れたり欠けた
りした。
しかし二枚目からはボードの端が見えるのでそこにバールを差し込むことでうまく剥がし
ていくことができた。ある程度ボードが浮いてきたら手を差し込み,手前に引いて引き剥がしてし
まった。接着剤の力が強いところでは裏面が割れて剥がれてしまうこともあったが,大きな割れは
見られず比較的良い状態で解体することができた。
プレートにボードのかけらがくっ付いて残った
場合も手で簡単に剥がせるので素材分別に問題はない。
またプレートが壁側に残るため分別作業の
手間が省かれたのは大きな利点である。
メルトチップと呼ばれるチップ化されたメルトプレートが
入っている部分の解体では,ホットメルターがプレートの真上に来ないと反応せず,プレートの位
置がなかなかわからず探すのに時間がかかり苦労した。この工法では,ホットメルターを当ててい
る部分の接着剤しかとけず,他の部分が同時に反応してしまうという問題点が解消されるが,プ
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chap 8
レートを探す問題が大きい。プレートの位置が表から目視で確認できるような工夫をするか,ホッ
トメルターにセンサーを取り付けプレートの位置に反応するような機能が必要とされる。
メルトプレート工法の解体で作業効率,
分別回収性能から考えるとバール一本での解体が最も有
効な方法であるといえる。
ただし再利用を優先するとやはりホットメルターを用いた解体が望まれ
る。
ビス留め施行に比べて作業現場に部材の散らかりが少なく,
再利用可能な状態で解体できるメル
トプレート工法は,有効な工法であるといえる。
(c)
メルトプレート工法の問題点
以下にメルトプレート工法の解体の中で見られた問題点をまとめる
・ホットメルターで接着剤を溶かす作業に時間がかかる
・ホットメルターの作業で,接着剤の溶けているかどうかの見極めが難しい
・一度溶かした部分も浮かしておかないと他の部分の熱が伝わり,再度くっついてしまう
・接着剤の力が強い部分は手前に引き剥がす力が強いとボードの一部が割れて残る
・チップ化されたプレートをボードの上から探し当てるのに時間がかかる
・取り外したメルトプレートが回収時にかさばる
問題点の多くはホットメルターの性能にかかわることである。これらを改善していくことで,さ
らに有効な工法へ進化させられると考えられる。特に再利用の可能性を残したままで,作業効率の
よい解体法を考えることが望まれる。
(3)
石膏ボードの解体全体に見られる問題
石膏ボードの解体作業の中で,ビス留め施工・メルトプレート工法に関らず見られた問題点があ
る。それは次の2点である。
・階段や建具枠,下地材などとの取り合い
・釘の使用
一つ目の取り合いの問題は,階段や建具,骨組みなどを石膏ボードを貼った上から施工するケー
スがあるということである。
石膏ボードを取り外すためにはこれらの部材を先に取り外す必要があ
り,ボードのみを取り外すことができなかった施工時に施工順序を変える工夫をするか,ボードを
取り外したのちに施工するという方法を採用ことが必要とされる。
もう一つは,各種受け材(木材)の取り付けに釘が多用されていたことである。これら受け材の
解体には多大の時間がかかったまた。
取り外した後で部材と釘を分別する作業もたいへんであった。
ビス留め施工に比べ,メルトプレート施工は比較的容易に,きれいに剥がすことができることか
ら有効な工法であるといえる。とくにS1,S2が現実的に可能であると考えられるので,問題点
を改善した上で一般化されることが望まれる。
また素材の分別回収性能も良いことから同一用途再
利用(M1)を想定した解体時に,作業効率が促進されることも期待される。
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