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p. 2 マグネシウムの吸収が促進されることが知られています。 作物により
H2803 市民農園講習会資料(池田) マグネシウムの吸収が促進されることが知られています。 作物により好適な土壌酸度は異なります。中性に近い条件を好むホウレンソウ やエンドウなどでは石灰資材を十分に施す必要があります。反対にじゃがいも など酸性土を好む作物では石灰資材の過剰施用は避けます。 図1.養分間の拮抗作用と相乗作用 図2.土壌 pH による 肥料成分の溶解度の 模式図 p. 2 H2803 市民農園講習会資料(池田) 好適pH範囲 作物名 6.5~7.0 (微 酸性~中性) 野菜 えんどう、ほうれんそう 花き ガーベラ、カスミソウ、スイートピー、あじさい(赤) 果樹 野菜 6.0~6.5 (微 酸性) 花き 果樹 5.5~6.5(微酸 野菜 性~弱酸性 花き の広領域) 果樹 野菜 5.5~6.0(弱酸 花き 性) 果樹 アスパラガス、いんげん、えだまめ、オクラ、かぼちゃ、カリフラワー、 さといも、しゅんぎく、すいか、スィートコーン、セルリー、そらまめ、タマ ネギ、とうがらし、トマト、なす、にら、ねぎ、はくさい、パセリ、ピーマ ン、ブロッコリー、みつば、みょうが、メロン、落花生、レタス カーネーション、グラジオラス、シクラメン、スターチス、ストック、ゼラ ニウム、パンジー、フリージア、ポインセチア、 キウィフルーツ、さくらんぼ、ぶどう、もも イチゴ、カブ、キャベツ、きゅうり、ゴボウ、コマツナ、ダイコン、チンゲ ンサイ、フキ、ニンジン、レンコン キク、コスモス、スイセン、マリーゴールド、ユリ、バラ イチジク、ウメ、カキ、ナシ、ミカン、リンゴ サツマイモ、ショウガ、ニンニク、ジャガイモ、ラッキョウ セントポーリア、プリムラ クリ、パイナップル 野菜 5.0~5.5(酸 性) 花き シダ、ベゴニア、リンドウ、シャクナゲ、ツツジ、ツバキ、あじさい(青) 果樹 ブルーベリー 表1.野菜ごとの好適土壌酸度(pH 値) 【生物性】 土壌中にはさまざまな生物が生息していて、それらがお互いに対抗したり共生 したりしながら生存しています。植物に害を及ぼす生物が増殖しにくくするに は土壌中に様々な生物が生息できるように管理することが重要です。 土壌伝染性の病害(ナス科の青枯れ病やアブラナ科の根こぶ病など)、ネコブセ ンチュウやネグサレセンチュウにいったん汚染されると完全な防除は非常に 困難です。 これらの病害虫の侵入や持ち込みには十分に注意するとともに、良質な堆肥の 施用による生物相の多様化、輪作、対抗植物の栽培などにより特定の生物だけ が増殖することのない土にすることは安定生産の面からとても重要です。 【堆肥】 堆肥は炭素源として稲ワラ、麦ワラ、すすき、もみ、米ぬか、落ち葉、バーク (木の皮)、おがくずなどと窒素源としての家畜糞尿などの有機物を原料として 腐熟させたもので、家畜糞尿を使わない場合は微生物による炭素源の分解を 促すために窒素肥料を加える事もあります。 微生物の働きにより、分解されやすい有機物の分解が終わった完熟堆肥は腐植 を多く含み、 p. 3 H2803 市民農園講習会資料(池田) ① 保肥力を高める ② 団粒化促進効果が高い ③ 土壌中の微生物のエサとなり土壌構造の維持や土壌病害の抑制に効果が ある ④ 微生物により徐々に分解され肥料成分を少しずつ放出していく、などの 優れた能力を持っていて、物理性、化学性、生物性の改善に大きな効果が あります。 完熟堆肥は異臭・腐敗臭はしませんが未熟な堆肥は異臭・腐敗臭がしますので、 異臭がする場合は施用を見合わせ完熟してから施用します。 堆肥で作物の成育に必要な養分(特に窒素)をすべて与えようとするのはカリや リン酸の過剰施用や土の保水性が過度に高くなったり土が膨軟になり過ぎて 軽くなりすぎる危険があり、避けた方が無難です。完熟堆肥といえども過剰な 施用は慎んだ方が良いです。堆肥は一時に大量に投入するのではなく、毎作 あるいは毎年小分けして継続的に施用していくのが無難です。 有機物に含まれる炭素の量を窒素の量で割った C/N 比という指標があります。 (窒素炭素比、 窒素率とも言います)この数値が大きいと炭水化物が多く含まれ、 低いと窒素の含量が多いことになります。 完熟堆肥の C/N 比は 15-30 程度で、 この数値よりも大きいと土中での有機物 の分解は進みにくく分解に時間を要し たり微生物により分解される時に土中の 窒素が使われるため作物が一時的に窒素 不足になることもあります。 小さいと土中で急速に分解が進み分解時に アンモニアガスを生じます。油かすや鶏糞 は堆肥ではなくて肥料の一種といえます。 また、土壌病原菌が含まれるカビや細菌は 10 以下です。 市販の堆肥には C/N 比が必ず記載されて いますので購入時の参考にします。 p. 4 各種資材のC/N比の例 資材名 C/N比 油かす 7 鶏ふん 5~7 豚ぷん 10~13 牛ふん 15 完熟堆肥 15~30 モミガラ 75 稲ワラ 60~80 麦稈 120 バーク 100~1300 オガクズ 150~1100 土壌中のカビ 9 土壌中の細菌 5 H2804 市民農園講習会資料(池田) <春夏野菜の栽培> ナス、トマト、キュウリ、オクラ、ニガウリ(ゴーヤ)など春に植えつける野菜は果 菜類(実もの)が多くあります。キュウリは梅雨明けころまでですが、その他は適切に 管理すれば秋まで収穫することができます。 1回限りの収穫になりますがスイートコーンやエダマメも夏の野菜に欠かせません。 果菜類は茎を伸ばしある程度大きくした株に花を咲かせその実を太らせる必要がある ので、肥料の効かせ方には注意が必要です。 キュウリ、ナス、トマトなどでは接ぎ木苗と接ぎ木していない自根苗の両方が売ら れています。接ぎ木苗は自根苗よりも土壌伝染性病害に強い反面、吸肥力が強く生育 が旺盛になる傾向にあります。このため、窒素肥料のやり過ぎに注意します。 接ぎ木苗を植えつける時には接ぎ木部分が土中に埋もれないように注意します。 春から夏にかけての果菜類はナス科(ナス、トマト、とうがらし・ピーマンなど)、 ウリ科(キュウリ、スイカ、ニガウリ、カボチャなど)などがあり、ナス科、ウリ科と もに連作すると土壌病害が発生しやすくなるので連作を避けるか接ぎ木苗を植える 様にします。 ホームセンターでは 3 月下旬から苗が店頭に並び始めますが、4 月中旬までは夜間 の気温がかなり下がることがありますので 4 月 20 日以降の植え付けが無難です。 早く収穫するために植えつけを早くする場合はトンネルやホットキャップで夜間の 保温をします。オクラ、ニガウリなどの高温性の野菜はもう少し気温が高くなる連休 中の植え付けや播種が無難です。苗の植え付け後はたっぷりと水を与えるか、降雨の 天気予報が出ている前に植えつけます。 【トマト】 トマトの原産地は南米のアンデス高地で、日当たりを好みます。 果実の大きさは大玉、中玉(ミディ)、ミニ、マイクロと様々で、果実の色も赤、黄、黒 紫など多様な品種が販売されています。好みの品種を植えれば良いでしょう。 ミニトマトは放任でも育てやすいのでトマトを初めて栽培する人に良いでしょう。 1 ㎡あたり堆肥 2-3kg、苦土石灰 120g、緩効性化成肥料 100g 程度を土に良くすき 込んでおきます。ホームセンターで良くみかける細粒の化成肥料には速効性のものが ありますが、その場合は元肥量をやや減らして追肥で補うようにします。 トマトは本葉が 8~10 枚目くらいの節間に第一花房がつきます。苗の植え付け適期 は第一花房の開花期です。この第一花房の果実が受粉して肥大を始めるまでに窒素肥 料を多く吸収させると葉が大きくなり過ぎたり、茎が太くなり過ぎます(過繁茂)。 ホームセンターで売られている苗は花房が見えないか小さいのも多いです。その様な 苗を買い求めた場合は植えつけを遅らせたり、一回り大きなポリ鉢に移し替えてなる べく適期に近づけて植えつけるか、植えつけ・活着後は水やりを控え目で管理し、窒素 の吸収をなるべく抑えます。そして、第一花房の果実が大きくなり始めたら徐々に 追肥などで肥料を効かせて果実を大きくしていきます。 p. 1 H2804 市民農園講習会資料(池田) 茎の伸長にあわせて支柱に誘引します。支柱の高さの 10cm 下くらいまで茎が伸びて きたら晴天日に花房の上に葉を 1 枚以上つけて摘心します(210cm 支柱で 6 段くら い)。 わき芽は小さい間に摘み取ります。ミニトマトやマイクロトマトでは 4-5 段目よりも 上のわき芽は伸ばして花房の上に1-2 葉で摘心を繰り返すと秋まで連続して収穫する ことができます。 【ナス】 インド原産の野菜で、生育適温は 25-30℃と高く日当たりを好みます。和洋中の いずれの料理にも合い、夏を代表する野菜の一つです。 1 ㎡あたり、堆肥 3-4kg、苦土石灰 150g、化成肥料(8-8-8)150g 程度を土に良く すき込みます。苗の植付適期は一番花の開花直前で、株間は 50cm 程度とします。 これよりも若い苗を植えると定植後の樹勢が強くなりすぎて初期生育の制御が難しく なります。また、密植すると果実が葉に隠れて果皮色が悪くなったり(ぼけナス)、 落蕾・落花することがあります。 主枝の 8-11 節に一番花がつきます。一番花の下の 2 本のわき芽か、一番花をはさ む上下のわき芽を伸ばして 3 本仕立てにします。それよりも下のわき芽は早めに摘み 取ります。3 本の主枝から出るわき芽は斜めに挿した支柱に誘引してそのまま伸ばし 果実をならせます。 苗の植え付けが早過ぎて低温時に開花した花の受精がうまく行われず、果実が肥大 しないまま硬くなる事があります(石ナス)。このような果実は早めに摘果して正常な 果実の肥大を促します。 【キュウリ】 インドのヒマラヤ山麓が原産地と言われ、トマト、ナスとともに夏の代表的な野菜 となっています。 1 ㎡あたり堆肥 2-3kg、苦土石灰 120g、化成肥料 120g 程度を土に良くすき込んで おきます。キュウリやキュウリの台木に使われるカボチャは地表近くに根を張るので、 地表から 20cm くらいまでをよく耕しておきます。 本葉が 4-5 枚の葉色が濃い緑色で元気な苗を株間 50cm で定植します。 支柱に誘引し、必要に応じてネットを張ります。気温の上昇とともに茎はどんどん 伸びます。 親づるの下位 6-8 節のわき芽は小さい間にすべて摘み取ります。それよりも上位の 小づるは 1-3 節で摘心、孫づるは放任して伸ばします。表土の乾燥防止と降雨時の 土はねを防ぐために稲わらなどでマルチをするとよいでしょう。 実が肥大し始めたら 80-100g 程度のものを収穫していきます。5 月中旬以降の 適温期には果実が旺盛に肥大するので、朝夕の両方に収穫できます。取り忘れたり 食べきれないからと取らずにおいておくと果実に同化物を奪われて株疲れするので p. 2 H2804 市民農園講習会資料(池田) 注意します。 果実を収穫し始めたら株もとから15-20cm 離して追肥します(半月に1 回くらい)。 キュウリは肥料切れすると株の勢いが低下しやすいので早めに追肥していきます。 果実が曲がったり、先の方が太くなったり、中央部が細くなるのは株疲れのしるしで す。老化した葉や病気にかかった葉は取り除いて風通しを良くするとともに新しい 葉の展開をはかります。 【ニガウリ(ゴーヤ、つるれいし)】 熱帯アジア原産の野菜で、沖縄や南九州では以前から栽培されていた野菜です。 1990 年代初頭に沖縄県でウリミバエの駆除が成功して沖縄県外への青果の出荷が 可能になり、健康・長寿野菜として全国で消費されるようになりました。 1 ㎡あたり、堆肥 2kg、苦土石灰 100g、化成肥料 100g 程度をよくすき込んでおき ます。定植前に支柱を立ててネットを張り、株間 100-150cm で定植して伸びた つるはネットに誘引します。親づるは 5-6 節で摘心し、子づるを 3-4 本伸ばして ネットに誘引します。ネットの最上部に達した子づるは摘心して孫づるを出させます。 株元にわらや枯れ草でマルチをすると表土の乾燥防止になります。 追肥は一番果の肥大が始まれば化成肥料を株間にばらまき、2-3 週間ごとに繰り返し ます。窒素肥料をやり過ぎると葉は茂るものの実のなりが少なくなるので(つるぼけ)、 1 回の施肥量は控え目とし、樹勢を見ながら追肥間隔を調整します。 【オクラ】 原産地はアフリカで、水と肥料を欠かさずにやると初秋まで収穫できます。オクラ のぬめりは食物繊維と多糖類で整腸作用があると言われます。 ベータカロテン、ビタミン類、カリ、カルシウムも多く含み、栄養価の高い野菜です。 角のある品種と角のない品種(丸オクラ)があり、角のある品種は長さ 7cm くらいまで の若いさやを収穫し、角の無い品種は収量が少し落ちますがもう少し大きいさやでも 食べられます。 1 ㎡あたり堆肥 2kg、苦土石灰 100g、化成肥料 80g 程度を土に良くすき込んで おきます。吸肥力が強いので窒素肥料は控え目にし、足りないようであれば追肥で 補っていきます。連作はできる限り避けます。 株間 50cm。オクラの種は硬実性で発芽しにくいので 1-2 日間水に浸けて吸水させ た種子を播くか、種皮をやすりやコンクリートでこすって吸水させやすくしてから 播くと発芽勢が良くなります。高温性なので露地では 4 月中旬下旬以降に播種します。 ポットに播いて育苗した苗を植えるときは主根を傷めない様に注意します。 収穫開始時に追肥を始め、生育状況をみながら追肥していきます。 下の方の古くなった葉は適宜に摘み取っていくと風通しが良くなります。 p. 3 H2804 市民農園講習会資料(池田) 【スイートコーン】 トウモロコシにはいくつかの種類がありますが、必ずスイートコーン用の種子・苗 を買い求めます。家庭菜園で栽培される野菜の中では数少ないイネ科で、輪作体系の 中にうまく組み込めば連作障害の発生を抑えることができます。 1 ㎡あたり堆肥 2-3kg、苦土石灰 100g、化成肥料 100g 程度を土に良くすき込んで おきます。吸肥力が強いので、前作の窒素肥料が残っていると思われる時は化成肥料の 施肥量を減らし、不足する場合は追肥を早めに行って調整します。 幅 100-120cm の畝に条間 50cm、株間 25-30cm で種を播きます。ポリ鉢で育苗 した苗を植えても構いません。3-4 枚の葉が展開した時に株の倒伏を防ぐため株元に 周りの土を寄せて倒れにくくします。本葉 6-8 枚と雄穂が見えてきた時に株間に追肥 します。地際にできるわき芽は摘まなくても構いません。 1 株に 3 本ほどの雌穂を付け、そのうち一番上の穂がもっとも良く肥大します。 下の穂は放任しておいてよく、若い内に収穫するとベビーコーンとして利用できます。 雌穂の先端から絹糸のような雌しべが出てくると土を極端に乾燥させないようにしま す。乾燥しすぎるとせっかくの雌穂内部の実が大きくならなかったり、硬くなって 食味が低下したりします。収穫後は急速に甘みが低下しますので収穫後はなるべく 早く食用に供します。 【エダマメ】 ダイズの若い実を食用にするもので、たんぱく質が豊富に含まれます。ダイズの 品種には秋にならないと開花しない品種がありますので、必ずエダマメ用の品種を 使います。 1 ㎡あたり、堆肥 2-3kg、苦土石灰 100g、化成肥料 80g 程度を良くすき込んで おきます。畝幅 80-100cm、条間 40cm、株間 25cm 程度とします。1 箇所に 3 粒ず つ播くか、ポリポットで育苗した苗を定植します。種を播いた場合はハトなどの鳥害 に気をつけ、本葉 1 枚くらいの時に 1 箇所 2 本に整理し、発芽しなかった場所には ていねいに補植します。なお、マメ科は連作障害が発生しやすいので、一度栽培した 区画は 2-3 年はマメ類の栽培は避けるようにします。 追肥は花が咲き始めた頃とその半月後に条の間に与えます。マメ科は根に寄生する 根粒菌のおかげで空中の窒素を供給されますので、控え目の量とします。 開花後は土が極端に乾燥しないように注意します。わらや枯れ草でマルチを行い、 晴天が続く場合は灌水します。 さやが膨らんできたら収穫適期です。適期は 1 週間ほどと短く、適期を過ぎると 硬くなり品質も低下します。 p. 4 H2805(33-36 番農園)市民農園講習会資料(池田) <土作り> 作物の栽培に適した土にする作業を一般に土作りと呼んでいます。 トマトやナスと水を好むイネやレンコンでは適した土が違うので土作りも異なる 点があることは理解しやすいと思います。厳密に言えばトマトに適した土とナス に適した土は違うはずで、それぞれの作物ごとに土作りは変えるのが最善なので しょうが、そんなことをしていては土の管理作業が大変になります。 連作被害の防止のために輪作することも考慮して、野菜全般に共通する土壌環境 を整え、作物ごとには施肥や灌水による調節で対応するのが一般的です。 土はすぐれた栽培資材で、物理性、化学性、生物性を良好な状態に管理・維持 すると普段の栽培管理が楽になり、不良環境に対する耐性も高まります。 【物理性】 物理性は、土の硬さ、水はけ、保水性、土の微細構造の改善などを指します。 土が硬いと根張りが十分にできないため成育が遅れたりすることがあります。 また、降雨後の雨水が土に浸透しにくくなります。根を収穫するダイコンなど の根菜類は播種前に数回耕起して栽培土を膨軟にしておくと地中にまっすぐに 根が伸びてよい物が収穫できます。 雨降り後に水が 1 日以上たまる所では、砂を混ぜて下方への排水を良くしたり 畝を高くして根が長時間水に浸からない様にします。年に 1 回程度は地表から 30cm くらいの深さまで丁寧に土起こしをすると、下方への排水が良くなり 根が張れる土の量が増えて栽培が安定しやすくなり、作土層の下にできる 耕盤層という硬い土の層を破壊する効果も期待できます。 土のこまかい粒子が一団の塊となっているのを団粒構造と言います。 団粒内には多くのすき間があり、そのすき間が水はけと保水性という一見する と相反する特性をもたらしてくれます。 【化学性】 土の中の養分の量や組成比、土の酸性度などが含まれます。 養分の量は播種や植えつけ前に基肥を入れるので、栽培期間の短い葉菜類では 追肥はあまり必要ありませんが栽培期間が長い根菜類や果菜類では栽培期間中 に追肥を与えることが多いです。養分の組成比で注意すべきなのは、ある特定 の肥料成分を与えすぎないようにすることです。土中にカルシウム(石灰)が 多すぎるとカリやマグネシウム(苦土)、カリが多すぎるとカルシウムやマグネ シウムの吸収が抑制されます(拮抗作用と呼んでいます)。ある養分を施用する と他の養分の吸収を促す場合もあります(相乗作用)。例えばリンを施用すると マグネシウムの吸収が促進されることが知られています。 p. 1 H2805(33-36 番農園)市民農園講習会資料(池田) 作物により好適な土壌酸度は異なります。中性に近い条件を好むホウレンソウ やエンドウなどでは石灰資材を十分に施す必要があります。反対にじゃがいも など酸性土を好む作物では石灰資材の過剰施用は避けます。 好適pH範囲 作物名 6.5~7.0 (微 酸性~中性) 野菜 えんどう、ほうれんそう 花き ガーベラ、カスミソウ、スイートピー、あじさい(赤) 果樹 野菜 6.0~6.5 (微 酸性) 花き 果樹 5.5~6.5(微酸 野菜 性~弱酸性 花き の広領域) 果樹 野菜 5.5~6.0(弱酸 花き 性) 果樹 アスパラガス、いんげん、えだまめ、オクラ、かぼちゃ、カリフラワー、 さといも、しゅんぎく、すいか、スィートコーン、セルリー、そらまめ、タマ ネギ、とうがらし、トマト、なす、にら、ねぎ、はくさい、パセリ、ピーマ ン、ブロッコリー、みつば、みょうが、メロン、落花生、レタス カーネーション、グラジオラス、シクラメン、スターチス、ストック、ゼラ ニウム、パンジー、フリージア、ポインセチア、 キウィフルーツ、さくらんぼ、ぶどう、もも イチゴ、カブ、キャベツ、きゅうり、ゴボウ、コマツナ、ダイコン、チンゲ ンサイ、フキ、ニンジン、レンコン キク、コスモス、スイセン、マリーゴールド、ユリ、バラ イチジク、ウメ、カキ、ナシ、ミカン、リンゴ サツマイモ、ショウガ、ニンニク、ジャガイモ、ラッキョウ セントポーリア、プリムラ クリ、パイナップル 野菜 5.0~5.5(酸 性) 花き シダ、ベゴニア、リンドウ、シャクナゲ、ツツジ、ツバキ、あじさい(青) 果樹 ブルーベリー 表1.野菜ごとの好適土壌酸度(pH 値) 【生物性】 土壌中にはさまざまな生物が生息していて、それらがお互いに対抗したり共生 したりしながら生存しています。植物に害を及ぼす生物が増殖しにくくするに は土壌中に様々な生物が生息できるように管理することが重要です。 土壌伝染性の病害(ナス科の青枯れ病やアブラナ科の根こぶ病など)、ネコブセ ンチュウやネグサレセンチュウにいったん汚染されると完全な防除は非常に 困難です。 これらの病害虫の侵入や持ち込みには十分に注意するとともに、良質な堆肥の 施用による生物相の多様化、輪作、対抗植物の栽培などにより特定の生物だけ が増殖することのない土にすることは安定生産の面からとても重要です。 【堆肥】 堆肥は炭素源として稲ワラ、麦ワラ、すすき、もみ、米ぬか、落ち葉、バーク (木の皮)、おがくずなどと窒素源としての家畜糞尿などの有機物を原料として 腐熟させたもので、家畜糞尿を使わない場合は微生物による炭素源の分解を 促すために窒素肥料を加える事もあります。 p. 2 H2805(33-36 番農園)市民農園講習会資料(池田) 微生物の働きにより、分解されやすい有機物の分解が終わった完熟堆肥は腐植 を多く含み、 ① 保肥力を高める ② 団粒化促進効果が高い ③ 土壌中の微生物のエサとなり土壌構造の維持や土壌病害の抑制に効果がある ④ 微生物により徐々に分解され肥料成分を少しずつ放出していく、などの 優れた能力を持っていて、物理性、化学性、生物性の改善に大きな効果があり ます。 完熟堆肥は異臭・腐敗臭はしませんが未熟な堆肥は異臭・腐敗臭がしますので、 異臭がする場合は施用を見合わせ完熟してから施用します。 堆肥で作物の成育に必要な養分(特に窒素)をすべて与えようとするのはカリや リン酸の過剰施用や土の保水性が過度に高くなったり土が膨軟になり過ぎて 軽くなりすぎる危険があり、避けた方が無難です。完熟堆肥といえども過剰な 施用は慎んだ方が良いです。堆肥は一時に大量に投入するのではなく、毎作 あるいは毎年小分けして継続的に施用していくのが無難です。 有機物に含まれる炭素の量を窒素の量で割った C/N 比という指標があります。 (窒素炭素比、窒素率とも言います)この数値が大きいと炭水化物が多く含まれ、 低いと窒素の含量が多いことになります。 完熟堆肥の C/N 比は 15-30 程度で、 この数値よりも大きいと土中での有機物 の分解は進みにくく分解に時間を要し たり微生物により分解される時に土中の 窒素が使われるため作物が一時的に窒素 不足になることもあります。 小さいと土中で急速に分解が進み分解時に アンモニアガスを生じます。油かすや鶏糞 は堆肥ではなくて肥料の一種といえます。 また、土壌病原菌が含まれるカビや細菌は 10 以下です。 市販の堆肥には C/N 比が必ず記載されて いますので購入時の参考にします。 p. 3 各種資材のC/N比の例 資材名 C/N比 油かす 7 鶏ふん 5~7 豚ぷん 10~13 牛ふん 15 完熟堆肥 15~30 モミガラ 75 稲ワラ 60~80 麦稈 120 バーク 100~1300 オガクズ 150~1100 土壌中のカビ 9 土壌中の細菌 5 H2805(33-36 番農園)市民農園講習会資料(池田) <春夏野菜の栽培> ナス、トマト、キュウリ、オクラ、ニガウリ(ゴーヤ)など春に植えつける野菜は果 菜類(実もの)が多くあります。キュウリは梅雨明けころまでですが、その他は適切に 管理すれば秋まで収穫することができます。 1回限りの収穫になりますがスイートコーンやエダマメも夏の野菜に欠かせません。 果菜類は茎を伸ばしある程度大きくした株に花を咲かせその実を太らせる必要がある ので、肥料の効かせ方には注意が必要です。 キュウリ、ナス、トマトなどでは接ぎ木苗と接ぎ木していない自根苗の両方が売ら れています。接ぎ木苗は自根苗よりも土壌伝染性病害に強い反面、吸肥力が強く生育 が旺盛になる傾向にあります。このため、窒素肥料のやり過ぎに注意します。 接ぎ木苗を植えつける時には接ぎ木部分が土中に埋もれないように注意します。 春から夏にかけての果菜類はナス科(ナス、トマト、とうがらし・ピーマンなど)、 ウリ科(キュウリ、スイカ、ニガウリ、カボチャなど)などがあり、ナス科、ウリ科と もに連作すると土壌病害が発生しやすくなるので連作を避けるか接ぎ木苗を植える 様にします。 ホームセンターでは 3 月下旬から苗が店頭に並び始めますが、4 月中旬までは夜間 の気温がかなり下がることがありますので 4 月 20 日以降の植え付けが無難です。 早く収穫するために植えつけを早くする場合はトンネルやホットキャップで夜間の 保温をします。オクラ、ニガウリなどの高温性の野菜はもう少し気温が高くなる連休 中の植え付けや播種が無難です。苗の植え付け後はたっぷりと水を与えるか、降雨の 天気予報が出ている前に植えつけます。 【トマト】 トマトの原産地は南米のアンデス高地で、日当たりを好みます。 果実の大きさは大玉、中玉(ミディ)、ミニ、マイクロと様々で、果実の色も赤、黄、黒 紫など多様な品種が販売されています。好みの品種を植えれば良いでしょう。 ミニトマトは放任でも育てやすいのでトマトを初めて栽培する人に良いでしょう。 1 ㎡あたり堆肥 2-3kg、苦土石灰 120g、緩効性化成肥料 100g 程度を土に良くすき 込んでおきます。ホームセンターで良くみかける細粒の化成肥料には速効性のものが ありますが、その場合は元肥量をやや減らして追肥で補うようにします。 トマトは本葉が 8~10 枚目くらいの節間に第一花房がつきます。苗の植え付け適期 は第一花房の開花期です。この第一花房の果実が受粉して肥大を始めるまでに窒素肥 料を多く吸収させると葉が大きくなり過ぎたり、茎が太くなり過ぎます(過繁茂)。 ホームセンターで売られている苗は花房が見えないか小さいのも多いです。その様な 苗を買い求めた場合は植えつけを遅らせたり、一回り大きなポリ鉢に移し替えてなる べく適期に近づけて植えつけるか、植えつけ・活着後は水やりを控え目で管理し、窒素 の吸収をなるべく抑えます。そして、第一花房の果実が大きくなり始めたら徐々に 追肥などで肥料を効かせて果実を大きくしていきます。 p. 4 H2805(33-36 番農園)市民農園講習会資料(池田) 茎の伸長にあわせて支柱に誘引します。支柱の高さの 10cm 下くらいまで茎が伸びて きたら晴天日に花房の上に葉を 1 枚以上つけて摘心します(210cm 支柱で 6 段くら い)。 わき芽は小さい間に摘み取ります。ミニトマトやマイクロトマトでは 4-5 段目よりも 上のわき芽は伸ばして花房の上に1-2 葉で摘心を繰り返すと秋まで連続して収穫する ことができます。 【ナス】 インド原産の野菜で、生育適温は 25-30℃と高く日当たりを好みます。和洋中の いずれの料理にも合い、夏を代表する野菜の一つです。 1 ㎡あたり、堆肥 3-4kg、苦土石灰 150g、化成肥料(8-8-8)150g 程度を土に良く すき込みます。苗の植付適期は一番花の開花直前で、株間は 50cm 程度とします。 これよりも若い苗を植えると定植後の樹勢が強くなりすぎて初期生育の制御が難しく なります。また、密植すると果実が葉に隠れて果皮色が悪くなったり(ぼけナス)、 落蕾・落花することがあります。 主枝の 8-11 節に一番花がつきます。一番花の下の 2 本のわき芽か、一番花をはさ む上下のわき芽を伸ばして 3 本仕立てにします。それよりも下のわき芽は早めに摘み 取ります。3 本の主枝から出るわき芽は斜めに挿した支柱に誘引してそのまま伸ばし 果実をならせます。 苗の植え付けが早過ぎて低温時に開花した花の受精がうまく行われず、果実が肥大 しないまま硬くなる事があります(石ナス)。このような果実は早めに摘果して正常な 果実の肥大を促します。 【キュウリ】 インドのヒマラヤ山麓が原産地と言われ、トマト、ナスとともに夏の代表的な野菜 となっています。 1 ㎡あたり堆肥 2-3kg、苦土石灰 120g、化成肥料 120g 程度を土に良くすき込んで おきます。キュウリやキュウリの台木に使われるカボチャは地表近くに根を張るので、 地表から 20cm くらいまでをよく耕しておきます。 本葉が 4-5 枚の葉色が濃い緑色で元気な苗を株間 50cm で定植します。 支柱に誘引し、必要に応じてネットを張ります。気温の上昇とともに茎はどんどん 伸びます。 親づるの下位 6-8 節のわき芽は小さい間にすべて摘み取ります。それよりも上位の 小づるは 1-3 節で摘心、孫づるは放任して伸ばします。表土の乾燥防止と降雨時の 土はねを防ぐために稲わらなどでマルチをするとよいでしょう。 実が肥大し始めたら 80-100g 程度のものを収穫していきます。5 月中旬以降の 適温期には果実が旺盛に肥大するので、朝夕の両方に収穫できます。取り忘れたり 食べきれないからと取らずにおいておくと果実に同化物を奪われて株疲れするので p. 5 H2805(33-36 番農園)市民農園講習会資料(池田) 注意します。 果実を収穫し始めたら株もとから15-20cm 離して追肥します(半月に1 回くらい)。 キュウリは肥料切れすると株の勢いが低下しやすいので早めに追肥していきます。 果実が曲がったり、先の方が太くなったり、中央部が細くなるのは株疲れのしるしで す。老化した葉や病気にかかった葉は取り除いて風通しを良くするとともに新しい 葉の展開をはかります。 【オクラ】 原産地はアフリカで、水と肥料を欠かさずにやると初秋まで収穫できます。オクラ のぬめりは食物繊維と多糖類で整腸作用があると言われます。 ベータカロテン、ビタミン類、カリ、カルシウムも多く含み、栄養価の高い野菜です。 角のある品種と角のない品種(丸オクラ)があり、角のある品種は長さ 7cm くらいまで の若いさやを収穫し、角の無い品種は収量が少し落ちますがもう少し大きいさやでも 食べられます。 1 ㎡あたり堆肥 2kg、苦土石灰 100g、化成肥料 80g 程度を土に良くすき込んで おきます。吸肥力が強いので窒素肥料は控え目にし、足りないようであれば追肥で 補っていきます。連作はできる限り避けます。 株間 50cm。オクラの種は硬実性で発芽しにくいので 1-2 日間水に浸けて吸水させ た種子を播くか、種皮をやすりやコンクリートでこすって吸水させやすくしてから 播くと発芽勢が良くなります。高温性なので露地では 4 月中旬下旬以降に播種します。 ポットに播いて育苗した苗を植えるときは主根を傷めない様に注意します。 収穫開始時に追肥を始め、生育状況をみながら追肥していきます。 下の方の古くなった葉は適宜に摘み取っていくと風通しが良くなります。 【エダマメ】 ダイズの若い実を食用にするもので、たんぱく質が豊富に含まれます。ダイズの 品種には秋にならないと開花しない品種がありますので、必ずエダマメ用の品種を 使います。 1 ㎡あたり、堆肥 2-3kg、苦土石灰 100g、化成肥料 80g 程度を良くすき込んで おきます。畝幅 80-100cm、条間 40cm、株間 25cm 程度とします。1 箇所に 3 粒ず つ播くか、ポリポットで育苗した苗を定植します。種を播いた場合はハトなどの鳥害 に気をつけ、本葉 1 枚くらいの時に 1 箇所 2 本に整理し、発芽しなかった場所には ていねいに補植します。なお、マメ科は連作障害が発生しやすいので、一度栽培した 区画は 2-3 年はマメ類の栽培は避けるようにします。 追肥は花が咲き始めた頃とその半月後に条の間に与えます。マメ科は根に寄生する 根粒菌のおかげで空中の窒素を供給されますので、控え目の量とします。 開花後は土が極端に乾燥しないように注意します。わらや枯れ草でマルチを行い、 晴天が続く場合は灌水します。 さやが膨らんできたら収穫適期です。適期は 1 週間ほどと短く、適期を過ぎると 硬くなり品質も低下します。 p. 6 H2805 市民農園講習会資料(池田) 春夏野菜の管理(2) 【サツマイモ】 中米から南米が原産の作物です。高温や乾燥に強く、肥料もほとんどやらなくて 良く土質適応性も幅広いことから救荒作物として栽培されてきた歴史があります。 ○品 種:100 以上ありますが栽培が多いのは 10 品種ほどです。 高系 14 号:栽培は容易。肥大性がよく早掘りが可能で、早掘り時の食味は 非常によい。ネコブセンチュウに弱い。掘り上げて貯蔵すると甘 みが増す。 鳴門金時はこの品種の選抜系統。日本で最も栽培が多い。 べにあずま:西の高系14号に対し東のべにあずまと言われ、関東で多く作ら れている。繊維が少なく食味がよい。 べにはるか:外観が優れ、食味も優れる。蒸しいもにした時の糖度が高く、 美味。焼き芋も美味。麦芽糖が占める比率が高く、強い甘さにも かかわらず後口はすっきりした感じの上品な甘さが残る。 ネコブセンチュウに強い。 べにまさり:多収で早掘りに適し、貯蔵性も良好。黄色でやや粘質の肉質で、 食味が優れる。 パープルスイートロード: 紫さつまいもの品種。機能性成分のアントシアニンを 多く含む。紫さつまいもは一般的に甘くないがその中ではもっと も甘く、蒸したり焼いてもおいしく食べられる。 ○栽 培:日当たりが良く、水はけが良くて軟らかい通気性の良い土が適してい る。吸肥力が非常に強く、前作の肥料、特に窒素質が残っているとつるは旺盛に 伸びるが、いもは少ないつるぼけになりやすいので、注意します。 肥料は前作で野菜などを栽培していなかった場合以外はやらなくてもよく育ち ます。弱酸性土が適しているので石灰資材もやらないか、少量にとどめておき ます。土の中に残っている肥料成分を吸い尽くさせる作物として栽培するとよ いでしょう。 なるべく深く耕し土を膨軟にしておきます。 畝幅は50cmはほしいところです。 地温確保と雑草防除を兼ねて黒マルチを張ると芋の肥大開始が早くなります。 黒マルチを張る場合、葉がマルチの上にあると晴天時に葉やけすることがあり ますので植え付け時はマルチの上に土を少し置いて葉がマルチに触れにくい ようにします。 5 月の連休頃からつるが店頭に並ぶので好みの品種を求めます。つるの善し悪 しがその後の生育や収量に影響するのでなるべく良いつるを求めます。 25-30cm の長さで葉数が 7-8 枚程度あり葉が厚くてしっかりしていて緑色が 濃く元気なつるが良く、つるが細かったり間延びしたり葉色が薄いのは避けま す。 p. 1 H2805 市民農園講習会資料(池田) つるの植え方はいくつかの方法がありますが、水平植えが基本です。 水平植えはつるを地表から 3-5cm に浅く水平に植える方法で一般的な植え方 です。いもが育ちやすく数が多く、収穫したいもはやや小ぶりで家庭で食べる のにちょうど良い大きさのいもがとれやすいと言われています。 船底植えはつるの中心が地表から 3-5cm の深さになるようにくぼませて植え る方法で長いつるが必要です。いも数が多く、揃った大きさのいもがとれると されています。 直立植えはいもの数は少ないですが肥大が良く早掘りに適した植え方です。 直立植えの変形として斜めに植える方法もあり、マルチ栽培に向いています。 いずれの植え方でも芽の先端は地表に出るようにし、葉も地表に出るように植 えつけます。 植え付け後 1 週間程度は水をやりますが、新しい葉が瑞々しくなってつるが 活着したら水はやる必要はありません。 いもが肥大しやすいのは植えつけたときのつるの先端から 3-6 枚めくらいの 節から出た根で、7-8 節以降に出る根は細くて肥大が劣ります。同じ節から 出る根では早く出た根ほど太りがよく、遅いほど細くなります。このため、植え つけ時につるの先端から 3-6 節の葉の付け根から根が出ていたら傷つけない よう注意して植えます。 水平植え 船底植え 直立植え ○つる返し:つるがどんどん伸びていくと伸びたつるの地面に接した葉の付け根か ら根が出ますが、ほとんどの品種ではこの根は収穫できるほどに肥大すること はありません。そのまま放っておくとこの小さな芋の肥大のために養分をさら に多く吸収しようとします。それによって葉は過剰に茂り、食用になるいもが 大きくならないつるぼけになる事があります。つるぼけ防止のため、つるが畝 を完全に覆うようになったらつる返しを行います。 伸びたつるを持ち上げて葉をひっくり返すようにして畝の上の葉に被せるよう にのせます。マルチをしている場合はつるが畝の通路を覆うようになってから 行います。 ○収 穫:さつまいもは寒さに弱いので 9 月下旬か 10 月上旬になれば試し掘り していもの大きさを見て掘りあげ時期を判断します。 p. 2 H2805 市民農園講習会資料(池田) ≪果菜類の生育診断≫ 5 月になればきゅうりは収穫がはじまり、 なすも小さな実を付けるようになります。 実が着果し始めると養分が実に多く蓄積されてしまうため、樹勢の衰える事があり ます。 【きゅうり】 4 月の資料でもふれましたが、実が先細、中細、尻太などになるのは樹勢が衰えてい るしるしです。幼果にこのような形のものがあれば、追肥を与え灌水量を増やして 実は小さめに収穫し着果負担の軽減を図り樹勢の回復につとめます。 【な す】 4 月の資料でもふれましたが早植えした場合に、1 番果が着果後に肥大しないこと があります(石なす)。このような実はなるべく早く摘み取り、残りの幼果の肥大を はかります。 本格的な開花が始まると花の形態や着花状態を観察することにより樹体の栄養状態 を推定することができます。 花の雌しべが雄しべよりも長い(長花柱花)と雌しべに花粉がつきやすく、栄養状態 が良好なしるしです。逆に雌しべが雄しべよりも短い(短花柱花)と受粉が行われに くく、栄養状態がよくないしるしです。 長花柱花は枝の先端から 15-20cm 離れた位置で開花し 4-5 枚の葉が着生していま す。 中花柱花や短花柱花では枝の先端から 10cm 程度で開花し、葉数 1-2 枚程度です。 植物体が自らの栄養状態に応じて結実数を調整しているといえます。 短花柱花が多くなるのは肥料不足、日照不足、土壌の乾燥などが原因ですので、幼果 は早めに収穫して、追肥、灌水などを行い樹勢の回復を図ります。 長花柱花 中花柱花 短花柱花 <かぼちゃやにがうりの人工授粉> かぼちゃやにがうりは虫が授粉してくれることも多いですが、確実に実をつける には人工授粉を行います。 その日に開花した雄花を花柄を付けて取り、花弁を手で取り去って雄しべを雌花 の柱頭の先端にこすりつけます。雄花はできれば別の株から取りますが、植えて いる株数が少ない場合は同じ株でもかまいません。人工授粉は午前 8 時頃までに は終えるようにします。人工授粉がうまく行われると、早いと午後、遅いと翌日に p. 3 H2805 市民農園講習会資料(池田) 雌花の花弁が萎れ始め花弁の色も褪せてきます。 <害虫防除> 5-7 月は年間を通しての害虫活動の大きなピークです。捕殺、あるいは農薬や 粘着性資材を利用して防除します。特に、アブラムシはウイルス病を媒介します ので早めに駆除しましょう。 ≪4 月の相談内容から重要と思われる質問についてあらためて説明します≫ Q.果菜類の接ぎ木苗にはいろいろに台木の苗が販売されているがどの台木の苗を 選べばよいか。 A.ホームセンターで売られている果菜類の接ぎ木苗は主に土壌伝染性病害に対する 耐性を高めるのが目的です。台木の種類により耐病性の程度や低温時の生長に 差がありますが、適温期・栽培適期に栽培する市民農園では台木の種類の違いは あまり気にしなくても良いと思います。 一般に接ぎ木苗は生育が旺盛で吸肥力も強いので、窒素肥料はやや控え目の施肥 量とします。 Q.かぼちゃの整枝法 A.食用かぼちゃには西洋かぼちゃと日本かぼちゃがあります。現在、日本で流通して いるかぼちゃの大部分は西洋かぼちゃです。西洋かぼちゃは果実と茎の連結部分 が丸くて柔らかいのに対して、日本かぼちゃはその部分が角張っていて浅い溝が あります。 西洋かぼちゃは親づるにも着果しますが、日本かぼちゃは親づるにはあまり着果 せず小づるによく着果する習性があります。西洋かぼちゃは親づるとよく育った 子づる 2 本を伸ばし着果させます。日本かぼちゃは親づるを 5-6 節で摘心し、 子づる 4 本を伸ばして着果させます。 ズッキーニは大きなきゅうりみたいですが、葉を見れば簡単にわかるとおりかぼ ちゃの 1 種です(西洋かぼちゃ、日本かぼちゃとは別の種です)。 Q.にんじんにネコブセンチュウの被害が見られた。対策を知りたい A.①輪作、 ②マリーゴールドなどの対抗植物の導入、 ③太陽熱消毒、 ④完熟堆肥の投入による土中の生物相の多様化、 ⑤薬剤消毒、 などがありますが畑状態では完全な撲滅は難しい。 p. 4 H2806 市民農園講習会資料(池田) 堆肥の種類と病害虫防除 【堆肥】 堆肥とは天然の植物性(落ち葉、枯れ草、稲わら等)もしくは動物性(動物の糞等)、 あるいは両者を混合した有機物の易分解性物が微生物により分解され腐熟させたも のです。微生物による一次分解が終わっていて分解時に発生する熱により病原菌は ほぼ死滅しています。肥料成分が含まれているので土壌に施用すると肥料としての 効果があるだけでなく、土の物理性や生物性の改善に効果があります。 堆肥は原料の違いからいくつかの種類に分けることができます。現在広く出回って いる堆肥は主材料の違いから植物性堆肥(バーク堆肥、腐葉土など)と動物性堆肥(家 畜糞を使った牛ふん堆肥、馬ふん堆肥、豚ぷん堆肥、鶏ふん堆肥など)に分けられま す。種類ごとに特性が異なりますので、使用目的にあった堆肥を使うと栽培の持続 性が高くなります。 ≪植物性堆肥≫ 炭素と窒素の比率を示す炭素窒素比が 15~30 くらいで、土質改良資材として 優れています。 ① 腐葉土 腐葉土は落ち葉を腐熟させた物です。ケヤキ、カシなどの広葉樹の葉が腐葉土 の材料として優れていています。針葉樹やサクラ、イチョウ、カキなどの落ち葉 には植物の成育を阻害する物質が含まれているので、腐葉土を自作する時には これらの葉は使わないように注意します。落ち葉だけでは微生物の分解が進み にくいので、窒素を含む化成肥料(硫安、石灰窒素など)を少し加えて作るのが 一般的です。 肥料成分の含有率は低いので、施肥は普通に行います。 ② バーク堆肥 バークは樹木の皮のことです。2-3 年間風雨に当てたバークを機械で砕片し、 家畜糞尿や窒素を含む化成肥料を混合して数ヶ月かけて腐熟させたものです。 バーク片の中心部までは腐熟が進んでいないことが多く、このため土の中の すき間を作る能力が長く続く特性があります。一度に多量施用すると土の中の すき間が多くなりすぎて土が乾きやすくなることがあるので注意が必要です。 市販堆肥の中では最も多い堆肥と言われています。 ※植物性堆肥には上記の他に稲わら堆肥、もみがら堆肥などがありますが市販 されているのは少ないです。食品残渣を腐熟させて作った堆肥を販売している ホテルもあります。 p. 1 H2806 市民農園講習会資料(池田) ≪動物性堆肥≫ 植物性堆肥と比較すると肥料成分の含有率が高いので堆肥中の成分量に応じて 施肥量を減らすのが良いでしょう。また、肥料成分が含まれているにもかかわら ず通常の施肥を行ったために病害虫が発生しやすい事例も知られているので、 多量施用には注意が必要です。家畜に与える飼料が違うと肥料成分が変わること がありますので注意が必要です。 ① 牛ふん堆肥 牛の糞尿と飼育時に使った敷きわら、おかくずなどを混合した後に腐熟させた 堆肥です。牛の餌は牧草や稲わらが主のため繊維質が多く含まれ、土壌改良効 果が長く続く特徴があります。また、堆肥中の肥料成分の効きが緩やかです。 牧草に含まれていた種子が牛の体内で消化されずに排出され、堆肥を施用した 畑で発芽することがあります。 ② 鶏ふん堆肥 牛ふん堆肥よりも肥料成分を多く含みます。リンが多く、産卵鶏のふんはカル シウムの濃度も高めです。このため、多量に施用する場合は施用量に応じて これらの施肥量を減らす様にします。土中での分解も牛ふん堆肥より早く進み ます。土壌改良効果よりも肥料としての効果が高い堆肥と言えます。 肥料で施肥したリンは土中で固定され植物体が利用しにくい形態に変化する ため植物体が必要とする量よりも多く施用されています。長年にわたりこのよ うな状態が続くとリンが土中に蓄積し、ついにはリン過剰害が発生する事例が 報告されています。症状としてはマグネシウム欠乏、鉄欠乏、カリ欠乏などの 発生する事があり、病害の誘因となる事もあります。また、カルシウムが過剰に なると土がアルカリ化するため、マンガン、鉄、亜鉛、ホウ素などの吸収が阻害 されこれらの欠乏症が発生しやすくなります。さらに、酸性土を好む野菜類で は生育が悪くなるなど栽培が不安定になります。 ③ 豚ぷん堆肥 肥料成分は牛ふん堆肥と鶏ふん堆肥の中間です。鶏ふん堆肥ほどではありませ んが牛ふん堆肥と比較すると分解が早く、肥料としての効果も早く現れます。 (注意)鶏ふん堆肥や豚ふん堆肥には肥料成分が多く含まれています。このため、 これらの堆肥を施用し、かつ通常の施肥を行った場合には養分欠乏症や 過剰症、病害虫が発生した事例も知られていますので、多量施用には注意 が必要です。 ※先月の資料でも触れましたが、堆肥の購入にあたっては袋に記載されている 成分保証票の成分濃度や炭素窒素比を良く見て、使用目的に適った堆肥を使う ようにしましょう。 p. 2 H2806 市民農園講習会資料(池田) 【病害虫防除】 6 月は年間を通しても病虫害の発生の多い時期です。4 月から丹精を込めて栽培し てきた野菜が収穫時期を目前に収穫皆無になる事も珍しくありません。発生が多く 見られる病害にはうどんこ病、モザイク病、ナス科の青枯れ病、ナス科の萎ちょう病 などがあります。また、害虫ではアブラムシ、ヨトウムシ、ネキリムシ、ナメクジな どがあります。 ① モザイク病 モザイクウイルスに感染することにより発生する病害で、アブラムシの吸汁に より伝染していきます。ウイルスの種類によってはアブラムシの吸汁ではなく 土壌伝染するのもあります。若い葉に黄色の小斑ができ、緑色の部分とモザイク 状になります。モザイク病にかかった植物は薬剤などで快復させることはできま せん。また、わき芽摘みなどの管理作業により感染株から非感染株に伝搬する事 もありますので感染株は見つけ次第、撤去するようにします。 <対策>アルミニウムを蒸着したシルバーフィルムのマルチやシルバーテープに よりアブラムシの飛来を抑える、アブラムシの駆除などがあげられます。 発生畑では翌年のナス科野菜の栽培は見合わせます。 ② ナス科の青枯れ病 晴天日の日中は萎れるが夜間は回復する状態が数日続き、やがて萎れが戻らなく なる。病気の進行が早く、気づいた時には手遅れの事が多い。土壌伝染性の細菌の 感染により発生する。降雨や灌水など土壌中の水の移動にあわせて被害株の発生 が拡大していく。 被害株は速やかに撤去する。発生が予想される場合は抵抗性台木に接ぎ木した 苗を植える様にします。また、土壌の pH を低め(5~6)にすると発生が抑えられ ますので、石灰質資材の施用を少なめにすると良いでしょう。 ③ アブラムシ 種類は様々で、中にはモザイク病などのウイルス性病害を伝搬するものもありま す。繁殖が非常に早いので、見つけ次第防除します。目の細かいネットによる被覆 も有効です。 ④ ヨトウムシ 幼虫が夜間に活動して葉や生えたばかりの幼植物を食害する蛾の仲間をヨトウム シと総称しています。1 匹で 1000~3000 くらいの卵を葉の裏側に産み付け、 幼虫にかえると大きな被害が出ます。葉の裏側を良く観察して卵が集団で産み付 けられている場合はその部分ごと葉を切り取って処分します。また、被害が出た 株の周囲の土を 1cm くらいの深さで丁寧に掘り返すと発見できることがあります。 米ぬかが好物なので雨水に当たらないような容器に米ぬかを入れて置き、誘殺す る方法もあります。一部の野菜では登録農薬があります。 などがありますが畑状態では完全な撲滅は難しいと言えます。 p. 3 H2807 市民農園講習会資料(池田) 京阪神地域では例年 7 月中下旬に梅雨が明け、本格的な夏の猛暑が到来します。 5 月頃から収穫してきたナスなどの夏野菜も暑さで生育が落ちがちです。その様な場合 には一時的に着果負担を少なくして生育の回復を図り、8 月中下旬以降に再び収穫でき るようにするとよいでしょう。また、7 月は秋冬野菜の準備を始める時期にもなります。 【にんじんの種まき】 カロテンを多く含む野菜の一つです。カロテンは人体内でビタミン A に変わります。 また、食物繊維や各種のミネラルも多く含み、利用価値、用途の広い野菜です。 近年は根の色が黄や黒の品種も発売され、バラエティーが豊富になりました。 原産地は中央アジアで、日本には 2 つのルートで伝来しました。 一つはシルクロード、中国を通して伝わった東洋系の長根種で金時などがあります。 もう一つはヨーロッパに伝わって改良され日本には江戸時代後期に伝わった西洋系 の短根種です。 東洋種、西洋種ともに冷涼な気象を好み、夏播き秋冬どりの栽培は最も適した栽培 です。播種時期は 7 月から 8 月中旬までです。ニンジンは栽培期間が長く、播種が 遅れると根が十分に肥大する前に地温が低下してしまいますので、遅くとも旧盆く らいまでには播く様にします。 根菜類の栽培には「十起こし」という言葉があります。根が土中でまっすぐに伸びて いくように何回も土起こしをして、土を膨軟にすることを言います。金時などの 長根種を栽培する場合は特に重要な作業で、深さ 30cm くらいまでを 2-3 回掘り返 します。 最後の土起こしの時(播種1 週間前まで)に㎡あたり、 苦土石灰100g、 化成肥料100g、 (あれば)ようりん 100g、完熟堆肥 2kg を施用して、土と良く混ぜておきます。 混ぜ方が不十分だったり、未熟堆肥を施用すると、根が曲がったり岐根になること があるので注意します。土中の小石も取り除いておきます。 条間 30cm で深さ 1cm 程度の溝をつけ、そこへ播きます。にんじんは発芽に光が 必要ですので播種後にかける土はごく薄くします。播種後は土を乾かさないように 気をつけます。高温期なので遮光資材などを用いると効果的です。 発芽まで 7-10 日ほどかかります。発芽を斉一に行わせることが夏播き栽培の重要 なポイントです。高温期の発芽をスムーズに行わせるには吸水種子あるいは催芽種 子を播くのがオススメです(ペレット種子やシードテープは不可)。種子を薄い布で 包み半日程度水をかけ流して種子を十分に吸水させてから播くか、そのままビニル 袋に入れて冷蔵庫で 1 週間ほど保存して発芽し始めた種子を播くと発芽が揃いやす p. 1 H2807 市民農園講習会資料(池田) くなります。種子を新聞紙に広げ、付着している余分な水分を取り除いてから播く と播きやすくなります。 発芽したら遮光資材は取り除きますが、土の乾燥には注意します。本葉 2-3 枚時に 混み合った所、5-6 枚で 10cm 間隔に間引きします。初期の生育が緩慢で株間が 広すぎると雑草との競争に負けることがあるので 1 回目の間引きは遅めとします。 間引きが終わったら条間に化成肥料を施し、2 回目の間引きの後には土寄せして 根の上部の緑化を防ぎます。 播種後 110 日くらいから収穫できます。土の乾燥と湿潤が繰り返されると根の表皮 や皮相が裂ける裂根が発生しやすくなります。 【ナスの切り戻し(更新剪定)】 7 月下旬から 8 月上旬になると成り疲れや梅雨明けの急激な気温上昇により生育が 緩慢になる事があります。このような場合は更新剪定を行い新しい枝を出させると おいしい秋ナスが収穫できます。 長く伸びた枝を先端から 1/3-1/2 のところで切ります。短い枝は切らずにそのま ま残しておきます。そして化成肥料か液肥を追肥します。 株元にスコップを差し込んで断根をするように書いている資料もありますが、断根 すると根に傷が付き、そこから土壌伝染性病害が入る怖れがありますので、病害の 発生した区画ではやらない方がよいでしょう。 切り戻しをすると新しい枝が伸びて結実するまでの間、一時的に収穫が少なくなり ます。株元にマルチをしていない場合はコマツナなどの生育の速い葉菜類をバラ播 きしておくとナスが収穫できるようになるまでの間に収穫できます。 あまり株元まで播かないようにします(株元の風通しをよくするため)。 【その他管理】 ・トマト、オクラなどの収穫が終わった節位の葉は順次切り取り、株元の風通しを 良くするようにします。また、生育状況や葉色を見て、随時に追肥を与えます。 ・さつまいもはつるが伸びて栽培区画全体を覆う様になったらつるを持ち上げて 反転させるつる返しをします。 ・キャベツ、ブロッコリなどを種から育てる場合は 7 月中旬から 8 月上旬に播種し ます。8 月中旬以降に出回るポット苗を購入して栽培するのもよいでしょう。 いろいろな品種が発売されていますが、品種ごとに適した播種時期がありますの でそれを守るようにします。 p. 2 H2809 市民農園講習会資料(池田) 秋野菜の栽培ポイント(ハクサイ等) 秋から冬の野菜はキャベツ、大根、はくさい、カブや各種の漬け菜などアブラナ科が 大きな比率を占めることになります。また、リーフレタスはキク科野菜で栽培も容易で、 秋から春にかけて連続的に収穫でき、緑や赤の葉は彩りがよく家庭菜園では栽培したい 野菜の一つです。 【ハクサイ】 日本では生産と消費の多い野菜のひとつです。地中海沿岸が原産で、古い時代に 中国に伝わりました。日本に入ったのは明治初期と言われています。 日本で栽培が本格化したのは日清戦争で出征した兵士達がいろいろなはくさいの品種 の種子を持ち帰った明治中期以降と言われています。 くせが少なくいろいろな調理法で食することができる野菜です。ヨーロッパでもここ 20 年くらいの間にチャイニーズキャベジ(中国キャベツ)と呼ばれて人気のある東洋 野菜の一つになりました。 8 月中旬頃から 9 月中旬にかけて種子を播いて育てます。 早生の品種を使うと 8 月播きでは 11 月中旬、9 月上旬播きで 12~1 月、9 月中旬播 きで 1~2 月に収穫できます。 直播きしても良いし、ポットで苗を育てても構いません。ホームセンターでは 8 月 下旬になると苗が並び始めます。はくさいの根は傷めるとその後の生長が悪くなるの で鉢苗を植えつける時は根を傷めない様に気をつけます。 大きすぎる苗は根が鉢内に回っていて新しい根が出にくいので本葉が 4-5 枚の若苗 を買い求めます。 植え付け時には鉢土の表面と植えつける畑の土面が同じ高さになるようにし、深植え は禁物です。根こぶ病が発生したことのある畑ではポットで育苗した抵抗性品種の苗 を植えると根こぶが形成されるまでにある程度の大きさに達し、そこそこの大きさの はくさいを収穫できます。 種まきあるいは定植前に 1 ㎡あたり、 ・堆肥 2kg ・苦土石灰 100g ・化成肥料(8-8-8)150g を散布し、土に良くすき込んだ後、幅 90-120cm の畝をたてます。 株間 40~50cm くらい、2 条植えでは条間 50cm で植えつけます。種子を播く時は 1 か所に 3 粒程度を播きます。 p. 1 H2809 市民農園講習会資料(池田) 本葉 5-6 枚になれば化成肥料(8-8-8)を 1 ㎡に 80g 程度与え、さらに 2 週間後に 同量を追肥します。はくさいは根が弱く肥料切れすると生育が衰えて結球しない事が あるので、結経開始まで肥料は絶えず効かせるようにします。 キャベツと同じく生育初めは葉が外側へ広がります。そして結球開始期になると新し い葉が次第に立ち上がるようになり、より若い葉には光が当たりにくくなり外側の葉 が大きく伸びて結球し始めます。結球開始までに広がる葉が結球開始時の光合成の 中心になりその後の結球の肥大やしまりに大きく影響するので、定植時から肥料を 効かせて外葉をなるべく大きくするようにします。外葉が小さかったり病害虫の被害 を受けると結球が小さくなったり球のしまりが悪くなり、ひどい場合は結球しません。 重要病害の一つに根こぶ病があります。市民農園でも発生している様です。根に こぶができて生育が悪くなります。一度発生すると防除が困難な土壌伝染性病害です。 大根では被害はあまり出ませんが、その他のアブラナ科野菜ではひろく被害が出るの で注意が必要です。 対策としては、連作を避ける、抵抗性品種を用いる(根こぶ病抵抗性の英語の頭文字の CR のついている品種など)、先にも述べたように無病土で育成したポット苗を植える、 石灰資材を多い目に施用して土壌酸度を中性近くにする、植えつける土に土壌消毒剤 を混和してから定植するなどがあります。 高温期に発生しやすい重要病害に萎黄病があります。古い葉が黄色くなって落葉し、 株の半分が黄化します。発生株の茎や葉は褐変し生育が衰え、欠株の原因となります。 気温が高い夏まきの栽培で発生しやすい病気です。病原菌の土中での生存期間が長く、 一度発生すると翌年以降も発生しやすいので気をつけます。 対策としては、連作を避ける、抵抗性品種を使う(萎黄病抵抗性の英語の頭文字の YR のついている品種など)などがあります。土壌消毒剤もありますが、毒性があるため 人家が近い市民菜園での使用は勧められません。 害虫としてはアオムシ、ヨトウムシ、ハイマダラノメイガ(シンクイムシ)などに注意 し、発生した場合は早めに駆除します。 【リーフレタス】 レタスは収穫時の形状・利用部位から、結球性の品種、ゆるやかに結球し葉が柔らか いサラダ菜、リーフレタスのように結球しないかほとんど結球しない品種、茎を食べ るステムレタス、はくさいの孫くらいの形のコスレタスなどがあります。 リーフレタスの代表例はサニーレタスと呼ばれる赤色の非結球レタスです。その他 にもサンチュ、葉が樫の木の葉の様に切れ込みが入るオークリーフ、葉の縁が波打つ フリルレタス、ゆるやかに結球するバタビアなどいろいろな品種が販売されています。 p. 2 H2803 市民農園講習会資料(池田) §土作り 作物の栽培に適した土にする作業を一般に土作りと呼んでいます。 トマトやナスと水を好むイネやレンコンでは適した土が違うので土作りも異なる 点があることは理解しやすいと思います。厳密に言えばトマトに適した土とナス に適した土は違うはずで、それぞれの作物ごとに土作りは変えるのが最善なので しょうが、そんなことをしていては土の管理作業が大変になります。 連作被害の防止のために輪作することも考慮して、野菜全般に共通する土壌環境 を整え、作物ごとには施肥や灌水による調節で対応するのが一般的です。 土はすぐれた栽培資材で、物理性、化学性、生物性を良好な状態に管理・維持 すると普段の栽培管理が楽になり、不良環境に対する耐性も高まります。 【物理性】 物理性は、土の硬さ、水はけ、保水性、土の微細構造の改善などを指します。 土が硬いと根張りが十分にできないため成育が遅れたりすることがあります。 また、降雨後の雨水が土に浸透しにくくなります。根を収穫するダイコンなど の根菜類は播種前に数回耕起して栽培土を膨軟にしておくと地中にまっすぐに 根が伸びてよい物が収穫できます。 雨降り後に水が 1 日以上たまる所では、砂を混ぜて下方への排水を良くしたり 畝を高くして根が長時間水に浸からない様にします。年に 1 回程度は地表から 30cm くらいの深さまで丁寧に土起こしをすると、下方への排水が良くなり 根が張れる土の量が増えて栽培が安定しやすくなり、作土層の下にできる 耕盤層という硬い土の層を破壊する効果も期待できます。 土のこまかい粒子が一団の塊となっているのを団粒構造と言います。 団粒内には多くのすき間があり、そのすき間が水はけと保水性という一見する と相反する特性をもたらしてくれます。 1月に紹介しましたが寒起こしには土を団粒化させる効果があります。 【化学性】 土の中の養分の量や組成比、土の酸性度などが含まれます。 養分の量は播種や植えつけ前に基肥を入れるので、栽培期間の短い葉菜類では 追肥はあまり必要ありませんが栽培期間が長い根菜類や果菜類では栽培期間中 に追肥を与えることが多いです。養分の組成比で注意すべきなのは、ある特定 の肥料成分を与えすぎないようにすることです。土中にカルシウム(石灰)が 多すぎるとカリやマグネシウム(苦土)、カリが多すぎるとカルシウムやマグネ シウムの吸収が抑制されます(拮抗作用と呼んでいます)。ある養分を施用する と他の養分の吸収を促す場合もあります(相乗作用)。例えばリンを施用すると p. 1 H2809 市民農園講習会資料(池田) 葉の色には赤と緑があります。赤の方が冬季の霜害に強いというか被害が目立ちに くく、高温にも強い様です。 リーフレタスはレタス類の中では暑さや寒さに強く、生長も早いので家庭菜園向きの レタスといえます。最短で種まきから 60 日、苗からだと 30 日ほどで収穫できます。 秋作では 9 月中旬までには播くようにします。苗は 8 月下旬から出回ります。種を 播く場合、ポリポットやセルトレーに播いて 4-5 枚になった苗を植えつけるのが良い でしょう。もちろん、直播きでもかまいません。レタス類は好光性で覆土を多くすると 発芽しないことがあるので注意します。 本葉 4-5 枚の苗を植えつけます。植え付け前に 1 ㎡あたり、 ・堆肥 2kg ・苦土石灰 100-150g ・化成肥料(8-8-8)150g を散布し、土に良くすき込んだ後、幅 60-80cm の畝を作ります。黒マルチを張ると 降雨により微細土が葉の間に入るのを少なくできます。苗は株間 25~30cm、条間 30cm で植えつけます。植え付け後は十分に水をやります。 植え付け後 30 日ほどしたら収穫できます。下の葉から順次に掻き取って食べても 良いし、株を地際で刈って食べても良いです。 害虫としてはヨトウムシ、オオタバコガ、バッタなどがあります。見つけたら早めに 防除します。 【その他】 ・ニンジンの播種 本年の 8 月は記録的な高温の年であったため、ニンジンの種子を播いても発芽 しなかったという話をよく耳にしました。ニンジンは種子を播いてから本葉が出る 頃までの乾燥に弱いので土を乾燥させないように晴天日には水やりを欠かさない ようにします。 発芽してからも極端な乾燥に遭うとせっかく発芽した苗が消失してしまいます。 本葉 2 枚くらいまでは遮光資材を活用して暑さから守ります。 先月に紹介した吸水・低温催芽をすると発芽がスムーズに行えます。 p. 3 H2809 市民農園講習会資料(池田) <8 月の講習会の質問から> (質問)海苔の缶に入っている乾燥剤の石灰は肥料として使えるか。 (答)乾燥剤に使われている石灰は生石灰といい、水と反応すると高熱を発する ことがあり、そのまま使うことは避けます。 室内に放置しておくと空中の水分を吸収して次第に粉状になり消石灰に変化 します。 肥料として使う場合は、乾燥剤の入った袋を指で触ってみて粒が無く粉状に なっているのを確かめてから使います。 p. 4 H2810 市民農園講習会資料(池田) ≪秋野菜の栽培ポイント(たまねぎ、えんどう、そらまめ)≫ たまねぎ、えんどう、そらまめはいずれも栽培期間は長いですが、播種時期や品種選択 を間違えなければ比較的手間のかからない野菜です。 【たまねぎ】 ① 地域と栽培時期に応じた品種を選ぶ。 たまねぎは播種から収穫までの日数が短い方から、極早生、早生、中生、晩生の 品種があります。関西で一般的な秋まき春どり栽培では極早生から中生までの 品種が適しています。 たまねぎの結球開始には気温と 1 日の夜の時間の長さが関係し、晩生になる ほど結球開始時の気温が高く、また夜の時間は短く(昼の長さは長く)なります。 結球を始める時の日長(1 日の明るい時間の長さ)は早生品種で 12 時間(2 月下旬 ~3 月上旬)、中生品種で 13 時間(3 月中旬~下旬)といわれています。 結球開始は低温ほど長い日長を必要とし、高温になるほど短い日長でも結球を 始めます。 なお、極早生や早生の品種は長期保存には向きません。長期保存(秋~冬)したい 場合は中生あるいは中生のうちで晩生の品種を栽培するようにします。また、 赤たまねぎも長期保存が難しい品種が多く、9 月頃までには食べきる様にします。 ② 植え付け準備と植え付け 苗の植え付け時期と収穫時期の目安は下記のとおりです。 極早生 早生 中生・晩生 植え付け 収穫 10 月下旬~11 月上旬 4 月下旬~5 月上旬 11 月中下旬 5 月中旬 11 月下旬~12 月上旬 6 月上旬~ 種子から苗を作る場合、たまねぎの種子は発芽率が低下しやすいので購入した 種子はなるべくその年に播ききるようにし、必要な種子を毎年買い求めた方が 良いでしょう。 植え付け時期になるとホームセンターや園芸店に苗が出回るので、苗を買って 植えつけるのが簡便です。 苗を買うときの注意として、茎基部の白い部分の太さが 6-8mm くらいのが 多いのを求め、これよりも太いのや細いのが多いのは避けます。たまねぎはある 程度の大きさに達した苗が冬季の低温に当たると花芽ができて花が咲きやすく なります。 苗の茎径が 10mm を越えると抽台率が一挙に高まることが知られています。 p. 1 H2810 市民農園講習会資料(池田) 太すぎる苗は花が咲いて玉が肥大しなかったり、玉が二つ以上に割れて分球 しやすく、小さい苗は冬季の寒さで傷みやすくひどい場合は枯死することが あります。 たまねぎの栽培では植え付け時の苗の大きさはとても重要な意味をもって います。 植え付け前に 1 ㎡あたり 完熟堆肥 2-3kg 苦土石灰 150g 化成肥料(8-8-8) 100g を施用し、土にすき込んでおきます。酸性土に弱いので土の pH が低い場合は 石灰資材を多めに施用します。りんの施肥効果がありますので、ようりんや 過りん酸石灰があれば 50g 程度を施用します。 湿害を受けやすいので排水不良の畑では高畝にするか、排水を良くするようにし ます。 冬季の地温確保と雑草防除を兼ねて黒マルチを張るのも良いでしょう。 苗は根と茎の基部の 2-3cm が土中に完全に入るように垂直に植えつけます。 浅植えにすると根が冬季の寒害を受けやすく、深植えにすると玉の肥大が悪く なり病害も発生しやすくなります。株間、条間はともに 12-15cm くらいと します。株間が広すぎると生育が旺盛になり分球しやすくなります。 植え付け後 10 日間くらいは土が乾燥したら水をやって苗の活着を促します。 ③ 植え付け後の管理 マルチをしていない場合は植え付けから半月後に化成肥料を㎡あたり 40g 程度 追肥します。 1 月中旬と 2 月中旬(早生品種)~3 月上旬(中生品種)に化成肥料を㎡当たり 40g 程度追肥します。最後の追肥が遅れると窒素吸収が遅くまで行われ、裂球したり 貯蔵性が低下するので追肥時期は守るようにします。3 月から 4 月の降水が 少ないと与えた追肥が吸収されず追肥が遅れたのと同じ事になるので、晴天が 続くときは時々水を与えて吸肥を促します。 ④ 収穫 収穫時期の目安は②に書いたとおりです。 80%程度の株の茎が倒伏した頃が収穫の目安とされています。晴天が続く日に 収穫し、収穫後に球が速やかに乾燥するようにします。収穫時や収穫後に雨に 当たると貯蔵性が低下します。 吊りたまねぎにする時は風通しの良い、直射日光の当たらない場所で貯蔵します。 p. 2 H2810 市民農園講習会資料(池田) 収穫時に分球していることがありその原因として、 a) 植え付け時の苗が大き過ぎた b) 種まき時期が早すぎたり暖冬で苗の生育が進みすぎた c) 植え付け後の活着が順調ではなかった d) 株間が広すぎた などがあげられます。 ⑤ 病虫害 今春は全国的にべと病が多発して問題になりました。秋に感染していたのが春先 になって発病したのではないかと思われます。葉のつやがなくなり感染部位は 黄緑色ないし黄色になって、葉が折れ曲がったり垂れ下がります。病原菌は土壌 中で 10 年以上生存可能と言われ、昨年にべと病が発生した畑では要注意です。 【えんどう】 11 月上旬に播種し、11 月下旬~12 月上旬に定植します。主根が切れるとその 後の生育が著しく悪くなるので、植える場所の都合が付くのであれば直まきしても 良いです。浅播きでは根が地表に浮き上がりやすいので 1cm 程度覆土をします。 発芽ちかくなると鳥害を受けることがあるので、ネットをかけておいた方が良いで す。 植える場所の都合がつかない時はポリポットか播種箱に播き、1 箇所に 2 本程度 をまとめて定植します。本格的な寒さが到来した時に株が大きすぎると寒害を受け やすいので極端な早播きは避けた方が無難です。 基肥は 1 ㎡あたり 完熟堆肥 2-3kg 苦土石灰 150g 化成肥料(8-8-8) 70g 畝幅 100cm マメ科は酸性土に弱いので、pH が低いときは石灰資材を多い目に施用します。 湿害にも弱く、水がたまりやすい場所では排水を良くしたり高畝にして栽培します 根の根粒で空中の窒素を固定しますので基肥の窒素肥料は控え目とします。 なお、マメ科は連作障害を生じやすいので一度栽培した区画では 3-4 年は作付けを 控えます。 植え付けは株間 30cm 程度。 寒さが厳しい期間には敷わら、もみがら、トンネルなどで防寒します。 2 月に㎡当たり化成肥料 100g を追肥します。つるありの品種では、2 月中旬以降 になってつるが伸び始めたら支柱をたてネットを張って誘引します。 p. 3 H2810 市民農園講習会資料(池田) 主な病虫害は、アブラムシ、ハモグリバエ(通称エカキムシ)、うどんこ病などです。 うどんこ病は通風が悪いと発生が助長されます。発生初期に「アーリーセーフ」 、 「カリグリーン」 、重曹などを葉上の白い粉状の菌を洗い流すように丁寧にかけて 蔓延を防ぎます。 【ソラマメ】 10 月中旬~11 月上旬に播種します。生育を揃えるため箱播きあるいは 9cm 鉢 に播くのが良いです。オハグロ部を下にして縦に 2/3 くらいが土に埋まる様に、 また種子のくぼみのある方が上方になるようにやや斜めに播きます。鉢では 1 鉢 に 2 粒播きます。播き時を失念した場合は直播します(11 月上旬まで) 。 発芽前後に鳥害に遭いやすいのでネットのトンネルをかけた方がよいでしょう。 土の表面 芽の伸びる方向 根の伸びる方向 基肥は 1 ㎡あたり 完熟堆肥 2kg 苦土石灰 150g 化成肥料(8-8-8) 80g 程度を施用し、土にすき込んでおきます。えんどうでも触れましたが、酸性土に 弱いので土壌 pH が低い時は石灰資材を多い目に施用します。えんどうと同様、 連作障害がでやすいので一度栽培したら 3-4 年は植えつけないようにします。 霜よけと土の乾燥防止のために、植え付け後は株元に稲わら、もみがら、堆肥など を敷くと効果があります。また、厳寒期から早春にかけて鳥の食害を受けやすい ので防鳥ネットを張るか、防寒をかねてトンネルを張るようにします。 土の乾燥に弱いので乾燥していたら晴天が続いた日に株元に水をやると良いです。 茎が伸び始めてきたら倒伏防止のため株元に畝の端の土を株元に土寄せし、株の周 りにひもを張るか倒伏防止用のネットを張ります。 地際から多数の茎が伸びてくるので、遅く出てきた貧弱な茎は切り取り 1 株 7~8 本仕立てとし、風通しをよくします。 開花し始めたら根を傷めない様に畝の端か、株の周囲に化成肥料を追肥します。 (1 ㎡あたり 100g 程度) 病虫害としては、アブラムシ、ハモグリバエなどに注意します。いずれも発生初期 に防除します。 p. 4 H2810 市民農園講習会資料(池田) 《9 月の講習会の質問から》 Q.肥料の中には混ぜて施用してはいけない組み合わせがあると聞いたが、基肥 施用時に一つの肥料を施用したらその都度に土にすき込まないといけないか。 A.肥料の種類によっては同時に施用してはいけない組み合わせがあるのは事実で す。避けるべきとされている組み合わせには、アンモニア態窒素肥料と石灰肥 料、過りん酸石灰と石灰肥料などがあります。 生産者の施肥実態をみると、化成肥料、石灰肥料、りん肥料などを別々に施用 したのちに、まとめてすき込んでいますので、神経質にならなくても良いと 思います。ただし、基肥を施用したら直ぐか、遅くても翌日くらいには土に すき込む様にします。 p. 5 H2811 市民農園講習会資料(池田) ≪晩秋から初冬の栽培管理≫ 11 月に入ると気温も次第に下がってきます。さつまいもや落花生をまだ収穫して いない場合は中旬頃までには収穫してしまうようにします。8 月から 9 月にかけて 植えつけたり播種した秋野菜はこれから収穫期を迎えます。 来春に収穫するいちごやたまねぎなどは植え付けの時期になります。 【さつまいもや落花生の収穫】 まだ収穫していない場合は晴れた日に収穫します。 さつまいもは寒さに弱いので 11 月中旬には掘り終えます。掘り上げた後は 2-3 日陰 干ししてから付着している土をざっと落とした後に新聞紙で包んで発泡スチロール の箱など保温性のある容器に入れておくと室内でかなり長い間保存できます。 時々箱を開けて中の水分を取り除きます。水洗いすると貯蔵性が低下するといわれて いるので保存する場合は食べる 前に洗うようにします。 ・9℃以下の低温で保存すると苦みが出たり腐ったりしやすくなります。 ・13℃以上の温度が確保できるのであれば 2 か月程度貯蔵すると収穫直後よりも 甘みが増すことが知られています。 貯蔵による甘みと肉質の変化(千葉県資料) p. 1 H2811 市民農園講習会資料(池田) さつまいもの貯蔵炭水化物はでんぷんで、掘りたてよりも数日乾燥させてから食べる 方がおいしいと言われています。 さつまいもを収穫したらいもがほとんどとれなかったがなぜかという質問がよく あります。その原因として主なのは以下があげられます。 ① 前作の肥料が残っていた 日当たりが良い場所でいもがとれなかった場合、大半の場合で土中の肥料が 多すぎたためです。さつまいもを植えつける前の作の窒素肥料が土中にかなり 残っていたといえます。 さつまいの植え付けを予定している区画は前年の秋作から施肥量をやや減らし 窒素肥料が少ない状態にしておきます。 ② 日当たりが悪い さつまいもは日当たりを好む作物です。1 日に 4 時間以上直射日光が当たる 場所が好ましい栽培場所です。 ③ 土が固い 土が固いと根の肥大が悪く、最悪の場合は収穫皆無ということもあります。 栽培していなかった場所は土が固くなっていますので、植え付け前によく耕起 して土を膨軟にしておく必要があります。これは他のいも類や根菜類にも当て はまります。 落花生は遅くまで畑におくと収穫時に莢が茎から離れやすくなって収穫の手間が かかるので 11 月中旬までには収穫したいものです。 収穫したての落花生を殻付きのままで塩ゆでしたおいしさを味わえるのは家庭菜園 の醍醐味の一つといえるでしょう。 収穫直後は苦みやえぐみを感じることがありますが、その時は数日陰干しすると 和らいだ味になります。 p. 2 H2811 市民農園講習会資料(池田) 【秋野菜の管理】 早生品種を適期に植えつけ生育が順調に進んでいれば 11 月には収穫が始まります。 晩生の品種を栽培している場合はこれから結球(はくさい、キャベツなど)、根の肥大、 発蕾(ブロッコリ、カリフラワー)が始まります。 生育状況を観察し、必要があれば追肥を与え、生育を促します。 気温の低下にともなって害虫の活動も低下していきますが、ハイマダラノメイガ (シンクイムシ)、アオムシ、ヨトウムシ、カブラヤガ(ネキリムシ)、コガネムシなど の幼虫の食害が見られたらなるべく早く防除します。 ハイマダラノメイガやアオムシが寄生すると中心部の芽が被害を受け結球不良など をおこすことがあるので注意します。 寒さに当たると植物は葉などに糖を蓄積して低温による凍結を防ぐ防御反応を示し ます。秋冬野菜が寒さに当たると甘みを増すのはこのためです。 【来春に収穫する野菜の植え付け】 来春に収穫するいちご、たまねぎ、えんどう、そらまめなどの野菜の植え付け適期に なります。たまねぎ、えんどう、そらまめは 10 月の資料でくわしく説明しましたの でそれを見て下さい。 いちごやたまねぎを植えつける時は深植えにならないように気をつけます。 また、いちごはランナーの親株側の反対側に花芽ができる性質があるので、2 列植え にする場合はランナーの親株側が内側になるように植えると果実が通路の外側に なり、収穫しやすくなります。 1 列植えでも株の向きを揃えると一方向に実がなり収穫が容易になります。 ここに花が咲き実がなる 親株側 p. 3 H2812 市民農園講習会資料(池田・安堂) ≪根こぶ病の対策≫ 野菜を収穫する時や収穫後に根を掘りあげてみたら根にこぶがあったという経験を 持った方があるかもしれません。経験していない人は栽培を終えて後片付けをする時に 根にこぶがないか観察して下さい。軽度の感染では地上部の生育はほぼ正常なため株の 片付け時にはじめて感染に気づくこともあります。 根にこぶができる原因として多いのが土中の病原菌による場合と、センチュウ(線虫)と いう微小動物による場合です。いずれも一度発生すると根絶がむずかしく厄介です。 アブラナ科の根こぶ病 (ミズナ) ネコブセンチュウのよる根こぶ病 <アブラナ科の根こぶ病> 病原菌による場合の代表例がアブラナ科野菜で広くみられる根こぶ病です。 秋から春に栽培する野菜にはアブラナ科が多いですが、この病気はキャベツ、白菜、 ミズナ、ブロッコリ、カリフラワー、かぶら、なばななどほとんどのアブラナ科野菜で 発生することが知られています。ダイコンではあまり発生しません。雑草のナズナでも 発生します。残念ながら市民農園でも発生している区画があります。 根が病原菌に感染するとこぶができて養水分の吸収が抑えられ、晴天日の日中には しおれたり生育が遅れたりします。ひどい場合は生育の途中で枯死することもあります。 後述のネコブセンチュウによるこぶと比較するとこぶが大きいのが特徴です。 発生はさまざまな環境要因の影響を受けます。 土壌水分が多い、土の pH が 6.5 以下の酸性である、月間の平均日長(昼の長さ)が 12 時間以上あるなどです。このため、発生は 5 月から 11 月に多く見られます。 p. 1 H2812 市民農園講習会資料(池田・安堂) 対策には以下があげられます。 ① 発生した区画の土の持ち出し、使用した資材、作業靴などによる汚染土の拡散を 避ける。 ② 被害株の根は外部に持ち出して廃棄する。 ③アブラナ科野菜の連作はなるべく避ける。 ④pH を 7 近くにする。石灰資材を多いめに投入します。石灰窒素の施用も効果が ありますが、施用後半月程度は栽培できません。 ⑤抵抗性品種を栽培する。キャベツ、白菜、カブラなどでは抵抗性の品種が発売され ているので利用します。 ⑥太陽熱を利用した土壌消毒を行う。 適期は梅雨明けごろです。元肥を施肥、畝立てし、十分にかん水した後、透明な ビニルまたはマルチを畝全面に土面とフィルムの間にすき間ができないように ぴったりとかけます。 フィルムの周囲にも土をかけ、フィルム内が高温になるようにします。20-30 日 処理した後、フィルムを取り除くと直ちに播種できます。元肥に有機肥料を使って いる場合は土から異臭がしないことを確認してから播種して下さい。 ⑦おとり植物を利用して土壌中の菌密度を低下させる方法もあります。 おとり植物とは、根こぶ病菌に感染するが感染した植物体内では菌が増殖できない 植物のことです。そのため、土壌中の病原菌密度を低下させる効果があります。 根こぶ病のおとり植物の例として葉だいこんがあります(「コブ減りだいこん」 (タキイ種苗)、 「Cr-1」(ナコス)など)。 栽培したい野菜の作付けの 2 か月前までに葉だいこんを播種します。病原菌は 地表から深さ 15cm までに多く、この層に根を多く張らせるためによく耕して から播種します。1 か月ほど栽培した後、葉だいこんはすき込みます。 すき込む時に石灰窒素を使うと石灰窒素の殺菌効果が期待できます。 その後 1 か月放置して葉だいこんを土中で完全に腐敗させてから栽培を始めます。 腐敗期間が短いと葉大根に感染した病菌が死滅していないおそれがあるので必ず 1 か月以上経ってから栽培します。 おとり植物を使う時に注意する点は、休眠胞子の発芽を抑制するタイプの農薬 (ネビジン等)を使用している場合は効果が得られないことです。使用中止後 2-3 年 してから利用するようにします。 おとり植物で土中の病原菌を完全に無くすことはできませんが、病原菌の密度を ある程度減らすことができます。 ⑧化学農薬としては、休眠胞子の発芽を抑制するタイプ(ネビジン等)と胞子から発芽 した病原菌を殺すタイプ(オラクル粉剤、オラクル水和剤等)があります。 休眠させるタイプの農薬は毎作ごとに施用する必要があります。発芽した病原菌を 殺すタイプの農薬は、植える前に苗に所定の倍率に希釈した水和剤の薬液をジョロ 等で頭上からかけ地下部に十分に行き渡らせてから植え付けても良いですし、植え p. 2 H2812 市民農園講習会資料(池田・安堂) 付ける土壌に粉剤を所定量混和しても良いです。土中の病原菌の濃度が高い場合は 両方を併用できます。 (タキイ種苗資料より) <ネコブセンチュウ> センチュウは土の中にいる微小動物(長さは 1mm 以下で土中のセンチュウを肉眼で 観察するのは困難)でとても種類が多いのですが、農業で被害を及ぼすのは数種類で す。その中に根に寄生した幼虫により根にこぶが形成されるネコブセンチュウがあり、 関西ではサツマイモネコブセンチュウが主です。 ネコブセンチュウは寄生する植物の種類が非常に多く、500 種類とも 700 種類とも 言われています。野菜だけでなく多くの花や雑草にも寄生し、寄生しない植物をあげ る方が早いくらいです。 寄生する植物はいも類、まめ類、きゅうり、すいか、にがうり、メロンなどのうり科 野菜、トマト、なす、ピーマンなどのなす科野菜、にんじん、ごぼう、オクラ、 p. 3 H2812 市民農園講習会資料(池田・安堂) ほうれんそう、レタス、つるむらさきなど、花ではきく、ききょう、クレマチスなど です。 オクラは寄生していても被害が目立ちにくく、収穫後に根を掘りあげて感染に気づく こともあります。寄生しないのは落花生、スイートコーン、マリーゴールドなどです。 活動期は地温が高くなる 4-10 月です。地温が 15℃を越えると土中の卵がかえり 始め被害を及ぼします。 市民農園で行える対策には以下があります。 ① 太陽熱消毒 アブラナ科根こぶ病と同様に行います。地温が十分に上がらないと効果が得られ ないので注意します。石灰窒素を施用してから消毒すると防除効果が高くなりま す。米ぬかを併用して太陽熱消毒を行うと消毒効果が高くなるという報告もあり ます。 ② 連作を避ける。同じ種類の野菜を毎年栽培するとその種類の野菜の病虫害が 発生しやすくなります。栽培面積が限られる市民農園では難しい点もありますが、 異なった野菜を栽培する輪作は他の病虫害予防の点でも有効な対策ですので、 ぜひ心掛けて下さい。 ③ 対抗植物を利用して密度を低下させます。対抗植物とは有害センチュウの密度 を低下させる植物のことで、いね科、まめ科、きく科などで知られています。 ペパーミントやスイートマジョラムにも対抗作用があるという報告もあります。 サツマイモネコブセンチュウでは落花生やいちごも対抗植物です。これらの中で 市民農園で取り入れやすいのはきく科のマリーゴールドです。 (長崎県資料) p. 4 H2812 市民農園講習会資料(池田・安堂) (水久保,2005) マリーゴールドにはアフリカン種、フレンチ種、メキシカン種などがあり、 ネグサレセンチュウではアフリカン種の中の一部の品種は効果が小さかったと いう報告があります。ネコブセンチュウでは効果が安定しないという事例も報告 されていますので気をつけて下さい。根や茎葉などを細かく切って土にすきこん でも抑制効果があります。マリーゴールドは土中での腐敗に時間がかかり、すき こんだ後にだいこんやにんじんなどの根菜類を栽培すると岐根が多かったと いう試験結果もありますので注意が必要です。 マリーゴールドにはすきこんでからの効果持続時間が長い、薬剤では消毒できな いかなり深い土中まで消毒できるなどの効果が報告されています。 いちごや落花生を作付け体系の中に組み込むことも有効な対策の一つです。 ④ 良質な有機物を施用する。完熟堆肥をすき込むと土壌中でいろいろな種類の 微小生物が繁殖し、有害微生物の繁殖が抑えられます。 米ぬかを土に混ぜると分解時に生成されるリノール酸などの脂肪酸類や米ぬか を栄養源とする微生物が生成するアンモニアがセンチュウに対する防除作用を 示すという報告もあります。ビニル等で被覆しないとアンモニアが空中に揮散し てしまい効果が出にくい様です。 ⑤ ネコブセンチュウが寄生する植物は放置しない。ネコブセンチュウは寄生する 植物が多く、雑草の中にも寄生する植物があります。寄生可能な植物の生きた 根があるとそこで増殖し、せっかくの防除を台無しにします。 ⑥ 化学農薬としてはネマトリンエース粒剤があります。播種あるいは定植前に 所定量を均一に播き、土にすきこみます。使える野菜や使い方は商品の適応作物 欄を見て下さい。 p. 5 H2812 市民農園講習会資料(池田・安堂) アブラナ科の根こぶ病はアブラナ科の植物にしか発生しないのに対して、ネコブ センチュウによる根こぶはアブラナ科も含め多くの植物で発生します。根の太さと 比較すると、アブラナ科の根こぶ病はこぶか大きく、ネコブセンチュウによるこぶ は小さめな事が多いですが、判定の難しい場合もあります。 いずれもいったん発生すると抑えることが難しく、複数の対策を数年間継続して 行い発生原因の菌やセンチュウの濃度を次第に下げていくしかありません。 ≪じゃがいもの栽培≫ じゃがいもの原産地は南米のアンデス高地で、冷涼な気候を好みます。 関西の平坦地では 2 月中下旬植付、5 月下旬から 6 月にかけて収穫します。 2 月初めに種いもを見て芽がはっきりしないなら浴光育芽(浴光催芽ともいいます)を 行うと発芽が揃います。霜の当たらない日のよく当たる場所に新聞紙を広げ、その上 に種いもを並べ、数日に一度上下を反転します。半月もすると芽が 5mm 程度に 伸びてくるので、大きな種いもは一片が 40-60g 程度になるように切り分けます。 種いもを切り分ける時に注意する点は ① 切り分けたいもに芽が 2 つ以上あるように注意する。 ② 縦方向に切り分ける。 です。切り口には灰か苦土石灰をまぶす、あるいは数日間日光にあてて切り口を完全 に乾かしてから植えつけます。 植付前に化成肥料(8-8-8)を 100g/㎡程度施用し、土にすき込みます。土の pH が 高いとそうか病が発生しやすくなるので、石灰資材は投入しない方が無難です。 70cm 幅程度の畝に株間 30cm で種いもを植えつけます。切り口を下にして植える のが一般的ですが、切り口を上にして植える人もいます。黒マルチをすると地温が 高くなり発芽が早くなります。 1 か月ほどすると芽がでてきます。黒マルチをした場合は芽の伸びてきた箇所が盛り 上がりますのでマルチフィルムを破って穴を開けます。 芽が伸びて 15cm くらいになったら 1 つの種いもからの茎数を 1-2 本に整理し、 残りの芽はかきとります。それと同時に追肥を与え、土寄せをします。じゃがいもの いもは茎が肥厚したものです。このため、土寄せを行わないと新しくできるいもに 太陽光があたり、いもが緑色を帯びることがあります。土寄せはしっかり行います。 マルチをしている場合は土寄せは必要ありません。 1 回目の土寄せから 2 週間後に 2 回目の土寄せを行います。 5 月下旬以降に葉が黄化してきたら、晴天の日に収穫します。 なお、じゃがいもの緑になった部分や芽の周辺にはソラニンというアルカロイドが 含まれ、これらの部分を大量に食べると食中毒(吐き気やおう吐、下痢、腹痛、頭痛、 めまいなど)を起こすことがあります。緑色のじゃがいもは皮を厚くむくか、食べな いようにします。また、大人の親指よりも小さいいもも食べない方が無難です。 p. 6