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イヌワシを頂点とする生態系の解明 --DNA解析を利用したノウサギの

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イヌワシを頂点とする生態系の解明 --DNA解析を利用したノウサギの
電中研報告
環
境
03−031
イヌワシを頂点とする生態系の解明
−DNA 解析を利用したノウサギの生息数推定法の開発−
背
景
環境アセスメントにおける生態系の調査手法を開発・提案することを目的に,イヌ
ワシを頂点とする生態系の食物連鎖を解明するための研究を実施している。ノウサギ
はイヌワシの主要な餌動物であるが,捕食─被食関係を定量的に解析するためには,
ノウサギの生息数をできるだけ正確に把握する必要がある。しかし,従来の生息数の
推定方法は精度に問題があることが指摘されている。
目
的
従来の方法より精度の高いノウサギの生息数推定法を開発する。
主な成果
糞には排泄個体の腸管細胞が微量であるが含まれているため,そこから抽出した
DNA を用いて個体識別 1)を試みた。その結果,糞から排泄個体を識別でき,特に積雪
期に雪上から採取した糞は保存状態が良いため,良好な解析が可能であった 2)。そこ
で,DNA 解析を利用した 2 つの新しい生息数推定法を考案し,イヌワシの営巣地であ
る秋田駒ケ岳山麓において調査を実施した。
1. DNA メッシュ法によるノウサギの生息数推定
DNA メッシュ法は調査地を 100m メッシュに区切り,各メッシュから採取した糞の
DNA 解析から生息数を推定する方法である。融雪期に行うことにより,雪中に蓄積さ
れた糞が解析でき,積雪期間に調査地を利用した個体数が把握できる。この方法でス
ギ林が優占する 1km2 の範囲を調査したところ,48 個体の存在が確認できた。本方法
では時間の経過した古い糞も解析に使用するため,後述する DNA 足跡識別法と比べ個
体識別の成功率は低かったが,複数のメッシュで確認された個体の分布から積雪期間
中の行動圏の推測にも有効であることが示された。
2. DNA 足跡識別法によるノウサギの生息数推定
降雪の翌日には,足跡のそばに糞を発見でき,糞の個体識別と足跡からその個体の
前夜の活動が追跡できる。そこで,メッシュ法と同じスギ林に 18.5ha の調査地を設
定し,調査を実施した。本方法は気象条件に左右されるものの,降雪翌日に採取した
糞は新鮮なためすべての糞で解析が可能であり,前夜にこの調査地を利用した個体が
15 頭であることが確認できた(図)。また,調査地の出入りの追跡から調査地内にあ
るノウサギの寝場所の数が推測でき,寝場所の数からこの調査地の生息密度は 40.5
頭/km2 と推定された。
DNA 解析を用いた 2 つの方法は,生息個体そのものを特定しているため,従来の調
査地の利用頻度を指標とした糞粒法注 1)や INTGEP 法注 2)と比べ,はるかに信頼性が高
い。特に,DNA 足跡識別法はすべての個体が識別でき,密度推定の対象範囲を限定で
きることから,生息密度の推定には,実際のノウサギの生息状況を最も良く反映した
有効な方法と考えられた。
今後の展開
糞 DNA を用いた解析は生息数推定のみならず,行動調査や集団構造,遺伝的多様性
などの解析にも利用できる可能性が高い。DNA 解析を利用して,行動圏の推定などの
新しい生態調査手法を開発するとともに,他の野生動物への適用を図る。
注 1)糞粒法:一定の面積内に排泄された糞の数を定期的に計数し、一頭一日の平均排泄糞粒数から、その
調査地の生息密度を求める方法
注 2)INTGEP 法:雪上に残された足跡の調査から、一定の面積内の足跡総延長を推定し、一頭一夜の平均移
動距離から生息密度を求める方法
「ノウサギ糞からの STR 多型解析による個体識別. DNA 多型」(2003) 11:42-44
「秋田駒ケ岳山麓における糞粒法と INTGEP 法によるノウサギの生息密度の推定」哺乳類科学(2003) 43:99-112
図 DNA 足跡識別法による個体識別結果 調査地外周を調査ルートとし,ルート
と交差する全ての足跡の出入りを記録し,対応する糞を採取する。その後,
調査地内からランダムに糞を採取し,各糞の DNA から排泄個体を識別した。
研究報告
U03066
キーワード:ノウサギ,糞,DNA 解析,個体識別,生息数推定
関連研究報告書
「DNA 多型を利用したノウサギの個体識別」 U00016
担当者
連 絡 先
[非売品・不許複製]
松木
吏弓 (我孫子研究所・応用生物部)
(財)電力中央研究所 我孫子研究所 事務部 研究管理担当
Tel. 04-7182-1181(代)
E-mail : [email protected]
c
財団法人電力中央研究所
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