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ハマダ予想 in ASAHIKAWA 2016 – Last –Run
ハマダ予想 in ASAHIKAWA 2016 – Last –Run 2016.12.21 公益財団法人はまなす財団 理事長 濱田 康行 <振り返る> 今年を振り返る。そういう季節になりました。 日本では大きな自然災害があった。東日本の震災から 5 年目だが、今度は西日本・九州 で揺れた。地震列島であることを思い知らされた。 災害は北海道でも。一週間のうちに三つの台風が来て道東方面に大きな被害が出た。人 的には小さくて済んだが、1,200 ヘクタールという耕地が水びたしになり、被害総額は 2,700 億円になるという。 私は先日、鹿追町に出かけた。列車はトマムが終点で、来客はそこからバスに乗りかえ る。帯広方面との人流・物流は大きな影響を受けている。 地震も台風も、それ自体は止められない。予知と予測を科学的にやって、事前の対策を 怠りなくするより他にない。そして、復旧。時間とお金がかかるけど公民の力を合わせて 急速に進める。それでなくては地方創生も始まらない。 <JR> 春と秋では対照的になった。3 月には新幹線が北海道に上陸。春、来たるで様々なイベン トで盛り上がった。札幌延伸への期待は大いに高まっている。 そんな盛り上がりも、JR の先日の路線見直しでいっぺんに冷え込んだ。総延長 1,200km 以上の路線が維持できない、という。乗客が減っているのは事実。傾向的にはクルマ社会 に追われ、短期的には先に述べた台風で寸断・不通で影響を受けた。札幌と千歳空港の間 だけは座れない程、混んでいるが、それは外国(アジア諸国)からの特需だ。2016 年 3 月 の決算は赤字必至という。JR 九州が証券取引所に株式公開を果たしたのとは対照的だ。 地図の上でさえ、予定された 1,200km を消し去ってみると、寒々としてくる。函館から 札幌、そして旭川と帯広方面しか残らない。 乗客が少ない。一日に数往復で、乗るのは高校生が数人~数十人ではね。これは理解で きる話ではある。お客の少ない商売は遠からず閉店になる。民営化したときからこの原則 の下にあるわけだ。 でも少し言いたい。乗客が減らないようにどんな努力をしたのだろう。線路という、つ ながっていて価値のあるものが、あちこちでブツブツと切れ、車輌もあちこちのお古でし かもつぎはぎ、そしてやがて一両となり、という一連のプロセスをみていると、乗客減に ただ対応してきただけのようだ。 1 廃線がいやなら地元が協力をということだが、こうなる前に働きかけてきたのか。小さ な駅の存続を願って地元が陳情にいっても、ケンもホロロの対応しかしなかった。地元民 はそれこそ民で、JR は官、そんなイメージが残る。近所の老人がボランティアで駅の掃除 をする。そんな一方通行の映像だけが印象に残っている。 せっかく外国人が来ているのに。また、北海道のすみずみまで出かけたことのある人は 少ないのだ。九州みたいに(あれは値段が高すぎるかな)一周まわれる路線をどうして維 持しておかなかったの。それぞれ駅前を整備して、JR なら何度でも途中下車できるキップ をつくるとか、考えればいろいろありそう。料金は距離で算出、全国一律なんていってた ら北海道は割高になるに決ってる。私鉄という競争相手がいなかった分、競争のない世界 に慣れ、いわゆる“ユデガエル”なのかな。 市民が多くのお金を出したいという旭川駅前も一工夫していい。駅は立派だけど周辺は なにか足りない。裏側も入れたならかなりの面積があるのだから、ここにレストラン、ア ミューズメント、スポーツ施設、シネコン、そして大学、専門学校を総合したら。もちろ んホテルも、三六のネオン街も少し近づける。酔ってる人はタクシー半額なんていうのも ある。 このままでは JR はなくなるか、どこかに売却される。しかし Hokkaido と称するものは もうなくせない。官民で、本当に知恵と金を出すときだ。それでないと台風がきっかけで “風とともに去りぬ”だ。 <世界> 日本は災害だったが、世界はサプライズだ。イギリスの国民投票の結果は世界を驚かせ た。イギリス人は温健な人々というのが私達の認識。それは、世界史の教科書に名誉革命 が印象深く書かれているからだ。その国で、経済的には損と思われる判断が示された。中・ 下階層級の反発だという。離脱運動を唱導した張本人が政治家をやめてしまうとかの混乱 もあるが、離脱はくつがえらない。EU はイギリス抜きに向けて着々と事を進めている。 事前の予想は“離脱はない”、イギリス人は最後は常識的な判断をする、などと言ってい た多くのイギリス通の学者が自分の言ったことは忘れて“今後の EU は”などの議論を始 めている。なぜこのサプライズが起きたのか?その現代的な意味を考えてもらいたい。 11 月のアメリカにはもっと驚いた。かなり乱暴な言動。政治経験なし。所得の少ない人 からみれば雲の上の大金持ちの不動産王…。対立候補とは多くの点で対極。その人があっ けなく勝った。白人のブルーワーカー、女性の支持が多かったという。女性への問題発言 より、女性層のヒラリー嫌いが勝ったのか。 <証券市場のサプライズ> ついでのサプライズは日本の証券市場でおこった。ニュースが流れたとき開いていたの は東京市場。勝手にひとりで驚いて 1,000 円以上も日経平均株価を下げた。日本のビック リに欧州も連動したが、ニューヨークが開いてみると案外冷静、やがて急騰。それをみて 2 翌日の東京は前日とはうって変って急騰、前日の 1,000 円を埋め戻しておつりが来た。外 国為替市場ではトランプさんの“強いアメリカ”から強いドルが連想され円安となった。 .... これが日本の輸出産業株の上昇をもたらし、現状ではトランプさまさまで推移している。 しかし、世界と日本の株価の上昇には共通のある要因がある。それは金余りと低金利だ。 2008-9 年の金融危機に端を発した経済危機に対応して主要国の中央銀行はいわゆる量的 緩和政策を実施した。当初、そのお金は市中にまわらず中央銀行に滞留していたが、この 数年、既発行の国債を買うにつれ少しずつ市中に浸透した。これに加えて金利効果もあっ た。株式の利回りが相対的に高くみえる程、預金金利は低く、そのため満期になった定期 性預金が更新されないという現象がおきた。つまり大量の資金がキャッシュのままで滞留 し、有利な投資先をうかがうことになった。この種の資金はもともとリスクを嫌うのだが、 倒産確率が低く価格が安定していれば株式でも購入の候補になるし、そういう銘柄を多く 組み込んだ投信も出現した。預金から少しずつ株式市場に資金が移動しはじめた。トラン プ現象はそれにきっかけを与え、ムードをつくったのである。 大衆の資金が株式市場に向かったときは暴落前夜であるという市場の格言もある。過熱 感を伴い、少しずつ放熱しつつ上昇しているのが 12 月上旬の状況だ。株価については後に 再論する。 <共通項> イギリスの離脱とトランプ現象には共通した要素がある。 人々には内心、そう思っているが口にはださないということがある。潜在していて普段 は自分でも気がつかないこともある。そういうことの典型的な例は差別する心だろう。 選挙は公的な行事だが、その中味は個々人が囲われたボックスで秘密裏に投票用紙に誰 かの名前を書く、あるいはマークをつけるという極めて私的な行為の集合だ。人々・人間 は合理的であるけど、時としてそうでない。選挙は一瞬であるが、その時が多くの人に同 時におこる。まさに選挙はみずものだ。人々の心、考えが、ホンネとタテマエに分かれて いる時は特にそうである。政治学者は間違いの方を選んでしまう人々の状況をポピュリズ ムと呼ぶが、それは人々の側にのみ原因を求めた一方的な表現である。 共通の要因とは人々の迷いである。A も B も選択肢だが、A は公然としたもので B は私 的なもの。しかし、B も人々の意見なのである。 ポピュリズムのままならそんなに害はない。人々は自分の事だけを考えているのだから、 戦争にはいきたくないし死にたくないのだ。しかし歴史の教えるところは重大だ。ポピュ リズムはファシズムにつながる。もともと、安定した考えなどないから扇動されやすい。 ... そして、秀れた 扇動者によって人々の自由が奪われるような状況が一挙にあらわれる。現 代でいえば、扇動者とそれを好意的に報道するマスコミの存在が危険なのだ。国民の政治 への関心が薄い。ひとりの指導者に権力が集中する。批判者がいなくなる。そしてポピュ リズムは変質してしまう。 3 <心配> 二つの大国が、まず自分の国のことを第一とすると、一見、それはそれで平和を帰結し そうだが、そうでもない。一方は拡張主義的自国優先だし、もうひとつは、まだよくわか らないが好戦的であることは予想されている。軍事的膨張は国内に不満が高まり批判が強 まったとき権力者がしばしば用いる手段だ。 偶発的衝突が広い世界の海のどこかで生じる可能性はある。困ったことに、多くの場合 “偶発”は戦争をしたい勢力によって仕掛けられた必然なのだ。世界史をみれば多くの人 を犠牲にした戦争が実にささいな事から始まっていることに気づく。戦争はいつも準備さ れたものだった。 ポケモン GO に熱中し歩きまわる若者、ネットカフェにたむろする高校生に、日本の反 戦派がメッセージを伝えられるとは思えない。日本の左翼は無力化している。誰がやるか? <2017> サプライズが多いとなると、あらゆる面で予想を立てることは難しい。過去からの延長 線を引いて、一定の許容範囲の内側で考えるという方法が通用しない。とりあえず、サプ ライズは除外しておこう。 ①株価 前述したように世界の株高(アジアはそうでもない)はトランプ現象が主な原因ではな い。それはマネーの需給面、リスク分野へのマネーの浸透量で説明できる。とすれば、資 金はあまりに膨大だから、まだこの先があることになる。事態が平和に推移すればだが。 支えはアメリカの好景気(失業率の低下→給与総額の増大→消費の増大)、日本のゼロ金利 (マイナスはいずれ是正される…後述・別稿)。ヨーロッパの安定(極右の抑制)。中国の 回復は望めないが、上の条件があれば保てる。 日本についていえば、いつ出口戦略に転換するのか不安であるが、これも後述。日銀は ETF による株買いを続ける。余地は少ないとも思えるが、18,000 円の近辺で少し売ってい るはずだから、現状で資金の余裕はあるはずだ。REIT 買いも続けるし、東京の中心部が所 有対象のほとんどだから、これも一時的な値下げ(質の悪いものの参入のため)はあるが 有望だ。もちろん地震がなければ、そして急な金利の高騰がなければの話だ。 大衆の資金の本格的な流入は、あるとすればこれから。世界の投資家は円安の進行で参 入し易くなる。アラブも原油価格が原産合意の効果で持ち直せば、余裕資金を日本に投資 する。韓国の政治的混乱、中国の減速で日本しかない。しかし、それも日本株の相対的安 さが目立つうちだ。 債券は株式とは対照的に軟調になる。金利の動向が焦点だが、12 月のアメリカの利上げ は境目となる可能性がある。わざと日本だけおいてきぼりにして、充分時間がたってから、 あとを考える。このシナリオはありそうだが、危うい。 ②為替 購買力平価は 100 円近辺にある。そして起点をどこにとるかによるが、10 年間の日本と 4 アメリカの物価の動きを勘案するとやはり 100 円近辺が妥当値となる。日本はずっとデフ レ状況だが、アメリカは少しずつインフレだから、通貨の購買力は日本円➚ドル➘となっ ている。こういうことはアメリカに旅行にいってみれば実感できる。飲食については税や 人件費の違いもあるが、1$=100 円でもまだドルの過大評価だ。 この観点でいくと北欧の通貨の割高はひどいものだが、それが維持されているのはそれ なりの事情がある。ドルの場合は、なんといっても基軸通貨で世界中で使える、払えると いう特権だ。通貨の価値を決める要因は他にもあるが、経済的には景況、政治的に安定、 そしてアメリカの場合は軍事力もある。個別要因として大きいのは原油価格だ。先日の OPEC の総会で減産が決まり、アメリカのシュールガスには有利な状況となったこともド ル高を支持する。 日本の景気回復の兆しが見えればドル高は是正され購買力平価の示すあたりに、そうで なければとんでもない円安が一度ぐらいはあるだろう。ともかく為替は要注意。他の通貨 についても同様。ブラジルとか南アとかの国の情報は極めて少なく判断できない。オセア ニアの通貨は資源価格に連動するが購買力平価でいくと高い。ドル以外は交換の手数料が 極めて高いので注意。FX などを使う人はかなり安いが、それでもドルに比べると交換は高 くつく。ついでに言えば、外国株・債券の購入では為替を念頭におく。そして債券でも金 利によって大きく変動するから、利下げが近い通貨は買わないように。ドル債を買って、 通貨ではプラスでも本体価格が利上げで下がるから計算は難しくなる。 <金利> 12 月のアメリカの利上げが分水嶺になるか注目している。アメリカが恐れるのはインフ レ。ドルの信認もかかっているからハイパー型は事前に止めたいが、急速冷凍もやらない。 1 年かけて 1%水準に戻すあたりがシナリオだ。というのは、このあたりまでなら投資減を 引きおこさないからだ。同じことは日本でも言えるのだけど、国債の値下りという問題が ある。日本銀行の損害は大きくなるのでやらない、というよりやれない。むやみな低金利 の長期債を乱発し、自分で保有しているツケが払えない。日本の利上げは総裁交代の少し 前、2018 年の始め頃になる。つまりアメリカに 1 年遅れというシナリオがみえる。もし為 替が大きく円安に振れていたら、この頃に戻りはじめる。金利と為替の動きにつれて株価 も変動するはずだ。 <日本経済> 地方創生は、かの大臣が閣外に去ってからさっぱり聞かなくなった。安倍総裁の三選で さらに影は薄くなっている。地方政府も似たり寄ったりのプランを並べて補助金を取った ものの成果はさっぱり。政府も個別の成功例を吹聴してみるものの、“これが地方創生政策 です”というようなものは示しようがない。地方の衰退は、まさに目にみえる型で、例え ば駅前のデパートが閉店する、商店街がさびれる、飲み屋街の客が減る、タクシーに乗ら なくなる等々で進行している。旭川も例外ではないだろう。 5 <ハマダ流地方創生> ・あきらめるものはあきらめ、可能性のあるものに資金・時間・知恵を集中。 例:夕張が再生すると思いますか? ・小さな町だけではどうしようもない。近隣と連携。 ・観光ルートを資源をつないでつくる。そして外国に発信! ・高校・大学、高等教育機関は維持する。方法はいろいろ。 ・町のひとが集まる、使う、買う場所をつくる。(ふらのマルシェ) ・冬対策をしっかり。 ・若年雇用を守る。 ・東京にうって出る。 ・新規企業より既存企業。 ・ベンチャーは言うが易し。小都市には無理。 ・一次産業は望みあり。 ・鉄路は死守すべし。 肝心なのは、人々発、お役所手伝いの構図と、持続力と哲学のあるリーダーと仲間が必 要。 <アメリカとヨーロッパ> アメリカの景気はしばらく持ちそう。クリスマス商戦はかなり期待。多くはインターネ ット商戦だが。シェールガスは復活でエネルギー事情は好転し輸出国へ。軍需産業は、よ くないことだけど、アメリカの稼ぎ頭で宇宙産業と一体で独壇場。TPP がダメになっても 農業は最強で各国に攻勢を強めるのは必定。 オーストリア?で極右の元首の出現が心配されたが回避。しかし、イタリアでは改革を 訴えた首相が辞任、スペイン、ギリシアも不安定が続く。しかし一時に比べヨーロッパの 安定感は増し、イギリス離脱後のシナリオもできつつある。為替もかなり戻っている。130 円はありそう。もともと売られすぎだから。 <補足> 心配は偶発的な軍事衝突、そして世界経済危機、後者にはハイパーインフレを伴う新型 のスタグフレーションも予想される。 2008 年の文献を読んでみると、危機が再発しそうな要素も多い。最大の問題は実物経済 が回復していない、日本ではこれに加えて労賃が上がらずデフレ状況なこと。 いつも最後は同じことになるが、やめるか①、進むか②。①ならよく準備して従業員に 取引先に迷惑がかからないように。慎重かつ着実に。誰にも知られないように。②なら結 構。次の 2 次会で大いに議論しましょう。 6