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1Pa107 超高圧印加によるポリイミド薄膜の光吸収スペクトル変化[3] ~ 特異な吸収ピークを有する半脂肪族ポリイミド ~ 東工大院理工 ○莇 昌平・安藤 慎治 F O O [緒言] ジフルオロピロメリト酸無水物(P2FDA)から合成される半脂肪族ポ H N C N リイミド (PI) は,λ=500 nm 付近に P2FDA 部分の凝集体に由来すると考え O O F られる特異な光吸収ピークを示す[1].本研究ではこの PI 薄膜に超高圧を印 Fig.1 P2FDA/DCHM PI. 加し,光吸収及び IR スペクトルを測定することによって PI 分子鎖の 2 三次元構造を含めた凝集状態と吸収ピークの関係について考察した. [実験] 測定に用いた PI の分子構造を Fig.1 に示す.測定には膜厚 約 9.21 GPa 1.5 1 及び 5 µm,一辺 約 140 µm の薄膜を測定に用いた.圧力媒体には シリコーンオイル (光吸収測定),KBr (IR 測定)を用いた.加圧装置と 1 してダイヤモンドアンビルセルを用いた.試料室内の圧力は Ruby 片 1 atm (約 5 µm 径) の蛍光のシフト値から算出した[2].各試料に約 10 GPa 0.5 までの超高圧を印加し,光吸収・IR スペクトルの測定を行った. [結果・考察] 300℃で熱処理した P2FDA/DCHM 薄膜に約 10 GPa まで 0 の超高圧を印加し光吸収スペクトルを測定したところ,約 500 nm に 300 400 500 600 700 800 位置する吸収ピークの吸光度は圧力上昇に伴って増加した(Fig.2).こ Wavelength / nm Fig.2 Variations in optical absorption れは,加圧により分子間距離が短縮することで P2FDA 凝集体の分率 spectra of P2FDA/DCHM by pressure. が増加したためと考えられる.また,加圧実験後に吸収ピークの短波 2 長シフトが観測された(Fig.3)が,このスペクトル形状は 350℃で熱処 理した試料の大気圧下の形状に良く似ており,300~350℃の熱処理過 1.5 (a) 程で光吸収ピークの形状が変化したと考えられる.そこで,前駆体の ポリアミド酸シリルエステルからの熱処理過程における光吸収スペ 1 クトル変化を調べたところ,200℃より高温で波長約 500 nm で光吸収 ピークが出現し,300℃までピーク形状を変化させることなく吸光度 (b) 0.5 が増大した.一方,温度可変 IR スペクトルからイミド化は 200℃で ほぼ完結することが確認され,ガラス転移温度(Tg=219℃)以上で分子 0 鎖の並進運動が可能となり,P2FDA 凝集体の形成が促進されると考 300 400 500 600 700 800 Wavelength / nm えられる.また 300℃以上になると吸収ピークの短波長側での吸光度 Fig.3 Optical absorption spectra of 増大が観測された.これらの加圧実験や加熱実験で観測された光吸収 P2FDA/DCHM. (a) before and (b) after ピークの形状変化は,PI 分子鎖の配列が酸無水物部分同士がパッキ the pressure experiment. 8.03GPa ングした Preffered layer packing (PLP)配列から酸無水物部分とジアミ 7.54GPa 7.18GPa ン部分が交互にパッキングした Mixed layer packing (MLP)配列へ変化 6.52GPa 6.00GPa し,P2FDA 部分のパッキング形態が変化したと考えると説明できる. 5.65GPa 次に,加圧による PI の立体構造(コンホメーション)変化を調べるた 5.12GPa 4.49GPa めに IR スペクトルの圧力変化を調べた.DFT 計算によるとイミド C 4.00GPa -1 3.53GPa -N 結合の伸縮振動(1342.3 cm )は,シクロヘキシル環に対する結合 3.07GPa 2.60GPa 様式(axial (ax)と equatorial (eq))でピーク位置が異なる.実際の測定で 2.08GPa 1.53GPa は,加圧により ax ピークに比べて eq ピークが増大した(Fig.4)が,こ 1.12GPa 0.52GOa れはシクロヘキシル環のイス型構造の反転に対応すると考えられる. 1 atm また,加圧実験前後で IR のピーク位置と C−N 結合の ax, eq ピーク相 1600 1550 1500 1450 1400 1350 1300 1250 1200 対強度にヒステリシスが観測された.これらは高圧下における PI 分 Wavenumber / cm -1 Fig.4 Variations in IR spectra of 子鎖の不可逆な配列構造変化(PLP→MLP)を反映したと考えられる. P2FDA/DCHM by temperature. 以上,光吸収・IR スペクトルの圧力変化から P2FDA/DCHM の光吸収 (red arrow: equatorial C−N bond, スペクトルにおいて約 500 nm に観測される光吸収ピークは P2FDA 凝 blue arrow: axial C−N bond) 集体の 2 種のパッキング形態が関与したものであると考えられ,超高 圧印加による PI の光物性制御の可能性が示された. 2 Absorbance Absorbance n [1] H. Sekino, S. Ando. Polym. Prep. Japan, 2005:54;4337 [2] G. J. Piermarini, S. Block, J. Appl. Phys., 44, 5377 (1973). Variations in Optical Absorption Spectra of PI Thin Films under Very High Pressure [3]. Semi-aliphatic PIs which have absorption peak at visible range in optical absorption spectra. Shohei AZAMI, Shinji ANDO*, (Dept. Organic & Polymeric Mater., Tokyo Institute of Technology, Ookayama 2-12-1-S1-21, Meguro-ku, Tokyo 152-8552, Japan) Tel: +81-3-5734-2137, Fax : +81-3-5734-2889, E-mail : [email protected] Abstract : For investigating the peculiar absorption peak observed at ca.500 nm in the optical absorption spectra of semi-aliphatic polyimide (PI : P2FDA/DCHM), optical absorption spectra and IR spectra of the PI films have been observed at high pressures up to 10 GPa using a diamond anvil cell as a pressure device. With applying pressures, the increase in the absorbance at the absorption peak was observed, indicating the increase in P2FDA aggregates due to the decrease in the intermolecular distance. Changes in the shape of the absorption peak were also observed after pressure experiment. These phenomena indicate that the local ordered structure of PIs is changed by pressure and there are at least two kinds of packing states in the P2FDA aggregates. Polymer Preprints, Japan Vol. 57, No. 1 (2008) 1241