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インドネシアのLNGプロジェクトにプロジェクト
INTERVIEW インドネシアのLNGプロジェクトに プロジェクトファイナンス 日本企業主体のアジア3か国協力プロジェクトを支援 資源ファイナンス部門 石油・天然ガス部 第2ユニット 池原 学志 調査役、中尾 恒二郎 調査役に聞く 国際協力銀行(JBIC)は、2014年11月、三菱商事(株)(最 大株主44.9%)、韓国ガス公社、インドネシア国営石油会社PT. Pertamina (Persero)(プルタミナ)、インドネシア法人PT. Medco Energi Internasional Tbk(メドコ)の4社が出資するイ ンドネシア法人PT. Donggi-Senoro LNG(ドンギ・スノロLNG 社)と、融資金額約7億6,300万米ドル限度(JBIC分)のプロジ ェクトファイナンス(PF)による貸付契約に調印しました。本 プロジェクトは、ドンギ・スノロLNG社が、スラウェシ島で液 化天然ガス(LNG)プラントを建設・操業し、生産したLNGの うち、6割超を日本の電力会社などが引き取る予定です。 日本にとって最大の LNG輸入国だったインドネシア 池原 調査役 中尾 調査役 ドンギ・スノロLNGプロ ジェクトへのPF JBICは、2014年11月、三菱商事(株)、 韓国ガス公社、インドネシア国営石油 会社PT. Pertamina (Persero)、 インドネ シア法人PT. Medco Energi Internasional Tbkが出資するインドネシア法人 PT. Donggi-Senoro LNG(ドンギ・スノ ロLNG社) と、融資金額約7億6,300万米 ドル限度(JBIC分)のPFによる貸付契約 に調印しました。本融資は、 (株)三菱東 京UFJ銀行、 (株)みずほ銀行、 (株)三井 住友銀行を含む民間金融機関と、韓国 輸出入銀行との協調融資で、民間金融 機関融資の一部には(独) 日本貿易保 険による保険、 または韓国輸出入銀行 による保証が供与されます。 (参考) 上流のスノロ・トイリガス田 の開発資金などを融資 JBICは、2015年1月、三菱商事に対 し、 ドンギ・スノロLNGプロジェクトに天 然ガスを供給する上流ガス田の開発及 びドンギ・スノロLNGプロジェクトに必 要な資金として、それぞれ、5,880万米ド ル限度、2億5,490万米ドル(いずれも JBIC分)の2件の貸付契約を結びまし た。本融資は、民間金融機関との協調融 資です。 *上記、両案件ともJBICの「海外展開支援融資 ファシリティ」案件です。 インドネシアの首都ジャカルタがあるジャワ島の北東、 「K」の形をした島がスラウェシ島です。 この東岸中央部で インドネシア、 日本、韓国の3か国による初の合同プロジェ クトであるLNGプラントが動き出そうとしています。 本プロジェクトは、 ドンギ・スノロLNG社が、 スラウェシ島 の2つの中小規模ガス田から天然ガスの供給を受け、年 産200万トンのLNGプラントを建設・操業するものです。 「JBICは、 これまでもインドネシアのLNG開発を金融面 で支援してきました。天然ガスは発電や都市ガスなどに使 用される重要な資源ですが、 とりわけ、2011年3月の東日 本大震災後、 日本の電源構成における天然ガスの割合は4 割超に急増しています。 一方、インドネシアは、2000年代前半まで日本にとって最 大のLNG輸入国で全量の40%以上を占めた時期もありま した。 しかし、近年は、インドネシア政府が国内産業育成の ための国内消費を優先していることもあり、2013年には日 本の国別輸入シェアで5位、構成比で7.2%にまで低下して います。それだけに、本プロジェクトは日本の天然ガスの安 定確保にとって大きな意義があります」 と、池原調査役は背 景を説明します。 「上・中流分離」の事業形態に応える JBICにPF組成の要請があったのは、事業の枠組みが固 まった2011年3月でした。 「一般的にLNGの開発プロジェクトは、上流のガス田開 発、中流の液化、下流の輸送・販売に至るLNGバリューチ ェーンで構成されます。今回は、一般的なLNG案件とは違 い、上・中流が分離され、中流プロジェクトのみに対して融 資を行うというのが特色です。そのため直接的な対象とは ならない上流のリスクをどのように評価し、その低減策を どのように契約書に反映させるかを検討する必要があり ました」 と池原調査役は語ります。 本プロジェクトでは、LNGのプラント建設は実績をもつ 日本企業が担当し、 ドンギ・スノロLNG社の運営の主体も 日本企業です。下流も日本の電力会社と韓国ガスが引き 取る予定なので大きな課題はありません。ポイントとなっ たのは、上流のガス田から長期・安定的に天然ガスが供給 されるように、上流ガス田の開発プロジェクトのスポンサ ーからサポートを得ることでした。 「天然ガスの供給元となる2つのガス田も、 ドンギ・スノ ロLNG社の出資4社が関わっていますが、中流プロジェク トとは別の事業主体となっており、経営的にも分離されて います。JBICは中流のLNGプロジェクトに対し、PFベースで の融資を行うことになりますが、 この場合融資契約書の中 に、上流からのガスが足りなくなった場合などを想定した リスク・コントロールの仕組みを組み込んでいく必要があ ります。 こうした上・中流分離型のLNGプロジェクトのスキ ームは、インドネシアでは初めての試みということもあり、 交渉は難航し、契約書の構成も複雑になりました。 さらに、 長期にわたる事業となるため、インドネシアのポリティカル リスクに係る対応も重要なポイントとなりました」 と中尾調査 役は語ります。 「JBICは、2010年2月にインドネシア政府との間で、重点取 組分野や、JBICが支援する個別プロジェクトに関する緊要性 の高い諸課題等を包括的に協議する財務政策対話の枠組を 発足しています。以降、毎年、JBICとインドネシア政府は政策 協議を継続していますし、LNG開発に対する長年の支援を通 じて密接な関係を築いています。そうした政府との関係を通 じて、ポリティカルリスクの軽減を図ることがJBICに求められ る役割だと考えます」 と池原調査役。 「スポンサー側との協議や、インドネシア政府との交渉に は時間を費やしましたが、 ドンギ・スノロ社や、エージェント、 弁護士等がスポンサー・レンダー間の調整を粘り強く行って くれたこともあり、2014年11月に遂に融資契約の調印を迎え ることができました」 と中尾調査役は振り返ります。 なお、JBICは、三菱商事との間で、上流ガス田の開発及び ドンギ・スノロLNGプロジェクトに必要な資金として、2015年 1月に合計3億1,370万米ドル(JBIC分)の貸付契約を結んで 上流ガス田開発も支援しています。 今後に向けて 「油・ガス田の開発では、圧倒的な実績を持つ国際メジャー が主導するケースが多いのですが、今回は、国際メジャーは 参画しておらず、インドネシア、日本、韓国の『オールアジア』 でプロジェクトを進めたことももう一つの特色です。世界的に 開発が容易な油・ガス田が減少する中、今後は、中小規模、深 海、非在来型、高ポリティカル・リスクといった、開発・事業化 がより難しい油・ガス田案件が増え、 ファイナンス面でも多様 な対応が求められると思われます。本件では、 『上・中流分離』 型という特殊性がありましたが、今後ともこのような日本企業 が参画するプロジェクトにおいてチャレンジングな課題に応 えていければと考えています。 」 と池原調査役は総括します。 中尾調査役も 「今回、初めてLNGプロジェクトへのPF融資 を経験しましたが、今後も今回の経験を活かして、他のLNGプ ロジェクトへの支援にも取り組んでいきたいと思います」 と語 ります。 ドンギ・スノロLNGプラントは、2015年中に稼働し日本に初 出荷される予定です。