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設備工事の概算手法(その1)(機械設備)
設備工事の概算手法(その1)(機械設備) 主席研究員 山崎 雄司 1. はじめに 機械設備のコスト管理について、「官庁施設の設計段階におけるコスト管理ガイドライン」では、 「概算工事費算定に使用する数量の算出は概略平面図からの拾い並びに類似施設の実績値より 算出される資器材の数量を使用する」と示されているが、設計の初期の段階ではシステムが確定し ていない等の理由により、妥当な概算価格を算定できず、過去の実績値(円/㎡)を使用することが 多かった。 本研究は、可能な範囲でシステム変更、管種変更、単価の異なる地域への対応、改修工事に おける数量の把握に利用可能なコスト管理手法について、国土交通省発注の完成工事(設計変 更含む)の内訳書の数量および複合単価(H24)を用いて検討を行った。 2. 概算手法としての必要事項 概算手法を検討するうえで考慮しなければならない必要事項については以下のとおりと考える。 (1)全体工事に占める金額割合が大きい項目を適切に捉える。 (2)設計により金額が大きく変動する項目を適切に捉える。 (3)効率的な算出を行える。(数量及び単価は大くくりにする) (4)仕様変更への対応が可能である。(例:配管、保温の種類) (5)システム間での比較が可能である。(例:ダクト方式、ファンコイルダクト併用方式) (6)各設計段階で必要な精度がある。 (7)特殊な工事、改修工事に準用が可能である。 (8)検証が可能である。 上記の事項を考慮のうえ、機械設備の概算算定方法についてまとめたものを表1に示す。 表1 機械設備における各設計段階の数量及び単価(例) コスト配分表 作成段階 項目 基本設計着手段階 基本設計審査段階 数量 企画設計図による 基本設計図による 実施設計図による 単価 実績or超概略見積り 実績or概略見積り 見積り(複数社が望まし い) 基本設計図による 実施設計図による 主要機器 数量 主要機器廻り 単価 その他の機器 SIBC統計分析に よる SIBC類似モデルによる 実績or合成単価 主要機器に対する比率 代表機器単価*台数 数量 延べ面積あたりの換算 概算数量(仕様ごとが望 数量 ましい) 単価 ダクト・配管付属品 数量・単価 SIBC統計分析に SIBC類似モデルによる 指標合成単価 よる 備考 段階が進むに伴いその他機 器より移行 検証等の必要に応じダクト・ 配管に移行 合成単価(対応する仕 様ごと) 数量・単価 ダクト・配管 共通費and税 実施設計審査段階 段階が進むに伴い主要機器 に移行 合成単価(対応する仕 様ごと) ダクト・配管に対する比 ダクト・配管に対する比 率 率 共通費積算基準(率)+積上げ - 55 - 経費率計算プログラムor早見 表による 3. 空気調和設備の概算手法 機械設備工事は空調設備(空気調和設備、換気設備、排煙設備、自動制御設備)と給排水衛 生設備(衛生器具設備、給水設備、排水設備、給湯設備、消火設備等)に区分される。 また、空気調和設備はさらに機器設備(熱源機器、空気調和機器)、ダクト設備、配管設備に区 分される。これらの工事費をどのように算出するかが、機械設備の概算算出の大きな課題である。 ここでは、空気調和設備の「概算算出担当者」が「基本設計審査段階」で算出する概算につい て、項目ごとに換算する手法について述べる。機械設備工事および空気調和設備の構成比率に ついて6000型の地方合同庁舎を例に図1、図2に示す。 【機械設備の工事構成割合(例)】 建物名称 地方合同庁舎(2006年) 構造規模 RC-5-1 4,764㎡ 熱源方式 中央熱源方式 (油だき吸収冷温水機) 直接工事費 約200,000,000円 図1 機械設備工事の構成割合 (1)機器 空気調和設備における機器類は工事費 に占める割合が大きい。(図2参照)また、空 気調和設備以外でも換気 設備の送風機、給水設備のタンク類、ポ ※熱源付属機器:TO、TOS、PO、CT、煙道、PCD、PCH、TE ンプ類 、給 湯設 備の給湯 器等の機 器類に 図2 空気調和設備の構成割合 ついても多くの割合を占めるため適切に把握することが必要となる。 これらの機器は、設備システム、付加仕様及び需給状況等によって大きく価格は変動することか ら、次のことを考慮する必要がある。 ①機器類は、仕様が若干変化しても設置台数は大きく変わらないため、数量は設計数量とする。 ②機器は付加仕様および需給状況等社会情勢による価格変動を考慮し、主要機器は設計の初 期より見積りによる。 ③熱源付属機器等のうち金額割合が小さいものは、主要機器に対する比率や過去の事例によっ てもよい。 (2)機器廻り 主要機器等と密接不可分な配管、基礎等の「機器廻り」の構成比率を図3に示す。 「機器廻り」は一般に項目数は多いが機器本体に比べると価格割合は低い。これらの項目は、 過大な手間をかけずに効率的に算出する必要がある。 図3に示すように基礎、搬入据付、計器類、ダンパー・弁類、ダクト・配管などは、「機器廻り」の 合成単価として計上することにより効率が図れることができる。 - 56 - 図3 「機器本体」と「機器廻り」の構成割合 ※仕様、数量及び価格は設計 VE 概算手法(平成12年)による。 (3)長方形ダクト ダクト設備は、保温、ダンパー、制気口等から構成されるが、空調方式により数量は変化する。 また、工事費に占める割合は比較的大きい(図2参照)ことから、ダクト設備の価格を適切に把握す ることが重要となる。 長方形ダクトは、ダクトの展開面積が積算数量の基準となるため、設計の初期の段階で詳細を 把握することは困難である。このため、基本設計審査時段階で利用できる数量および単価につい て、「実績値を利用したダクト数量の換算手法と基準となる単価の設定方法」について検討を行う。 (換気ダクトも保温を除くことにより同様に扱うことができる。) 1)換算方法と単価設定の条件 計算対象とするダクトの換算係数および使用する単価として設定可能となる条件を以下に示す。 換算および単価の条件 ①各板厚において実価格と換算値による価格が近似していること。 ②換算が容易である。 ③延べ面積、空調方式ごとに一定の比率が設定できる。 ④工種の全数量をイメージしやすいことが望ましい。 ⑤単価は、ダクト施工に伴い一般に必要となる全ての項目を含む合成単価とし、材料、労務費 の変動による板厚間の単価の比率の変化が少ないことが望ましい。 ⑥換算の指標となる単価は板厚ごとの価格割合が大きい単価または近い値で、設定が容易で あることが望ましい。 単価(円/㎡) 保温:天井内 GW(アルミガラスクロス) ) また、長方 形ダクトの板厚 毎 の 合 成 単 価 の 構 成 を図 4 13,600 による。 11,340 5,210 板厚 (㎜) ) 図4 長方形ダクトの板厚別合成単価の構成 - 57 - 2)換算方法によるコスト算出について a.手法1 ≪長方形ダクトの合計金額から換算する手法≫ ここでは長方形ダクトの合計金額(円)を特定の板厚の複合単価(指標複合単価)を用いて換 算ダクト数量を求め、ダクト関係の概算を算出する手法について述べる。 【換算式】 換算面積=長方形ダクトの合計金額(円)/(指標複合単価)(㎡) ※長方形ダクトの合計金額:Σ(面積×(複合単価)) ※指標複合単価:代表となるダクトの複合単価⇒0.5㎜を使用 【価格式】 ダクト関連価格=換算面積(㎡) × 指標合成単価(円/㎡) ※指標合成単価:代表となる板厚の合成単価(円/㎡)⇒0.5mm を使用 長方形ダクトの複合単価による換算の可能性について0.5mmの複合単価及び合成単価を 代表単価として過去の実績を用いて検証を行った結果を表2に示す。 計算例 ①実面積による価格の合計 Σ(各板厚毎実面積×複合単価)=686,560(円) ②換算面積 686,560 ÷ 複合単価(5,210(円/㎡) = 131.78 ≒ 132 (㎡) ③ダクト関連価格 132 (㎡) × 合成単価(11,340(円/㎡)) =1,494,421(円) 表2 長方形ダクトの複合単価による換算の検証(0.5mmの複合単価及び合成単価の場合) 建物規模モデル (実延べ床面積) ①Σ(実面積×複合単価) 750 形 (712 ㎡) 1500 形 (1,204 ㎡) 3000 形 (4,258 ㎡) 6000 形 (5,329 ㎡) 15000 形 (17,323 ㎡) 30000 形 (31,046 ㎡) 686,560 1,767,580 4,041,460 7,144,750 28,678,020 29,591,070 132 339 776 1,371 5,504 5,680 ③②×合成単価(11,340) 1,494,421 3,847,455 8,796,963 15,551,831 62,422,854 64,410,274 ④Σ(実面積×合成単価) 1,483,460 3,761,700 8,185,340 15,094,840 60,357,120 57,720,080 1.01 1.02 1.07 1.03 1.03 1.12 ②換算面積(÷5,210) ⑤比率(③/④) 各モデルの⑤比率(③/④)の値が1に近い値であることから、サンプルと同程度の構成比率 であれば、概算額の算定として使用可能であると考察する。 0.5mmの複合単価及び合成単価を代表単価とした場合の換算面積と延べ面積の関係を図5 に示す。 3,848 2,310 図 5 長方形ダクト 延べ面積あたりの換算面積 - 58 - (例)延べ面積 10,000 ㎡ の庁舎の長方形ダクト関連工事の直接工事費を求める。 ・延べ面積あたりの換算ダクト面積(空調方式 ファンコイルユニット・ダクト併用方式) 図6の近似線の計算式 Y=0.2017 × Ⅹ1.0147 より 長方形ダクトの換算面積は 約 2,310 ㎡ ・ダクト関連価格(換算面積×指標合成単価(0.5㎜)より) 2,310 ㎡ × 11,340 円/㎡ ≒ 26,200,000 円 ・延べ面積あたりの換算ダクト面積(空調方式 ダクト方式) 図6の近似線の計算式 Y=1.2718 × Ⅹ0.8702 より → 約 3,848 ㎡ 3,848 ㎡ × 11,340 円/㎡ ≒ 43,636,000 円 b.手法2 ≪長方形ダクトの数量から換算する手法≫ 数量だけが既知のデータでも、換算面積を算出し図5「延べ面積当たりの換算面積」を作成 することで概算額を算出することができる。ここでは、板厚毎の数量を特定の板厚(指標板厚)に 換算する換算係数として(板厚+Y)/(指標板厚+Y)を用いた手法について以下に述べる。 【換算式】 換算面積=Σ(板厚ごとの面積×換算係数) (㎡) ※換算係数:(板厚+ Y)/(指標板厚+ Y) 【価格式】 ダクト関連価格=換算面積(㎡) × 指標合成単価(円/㎡) ※指標合成単価:代表となる板厚における合成単価 Yは指標合成単価と(板厚毎の合成単価/換算係数)の比が一定になるよう設定する定数で、 指標板厚を価格割合が大きい板厚(0.5㎜)として試算した結果、Y=2が最も近似する数値とな った。試算結果を図6に示す。 (例)Y=2を代入して換算した 0.5㎜と1.0㎜換算の単価比較 =11,340:13,600/((1.0+2)/(0.5+2))=11,340:11,333≒1 : 1 使用割合が少ない 面積あたり(換算無し) 図6 長方形ダクトの板厚別合成単価比率 【換算計算例】 指標ダクトの板厚0.5㎜で0.8㎜厚ダクトの面積を換算する場合の例 換算面積算定 実面積13㎡ 13×((0.8+2)÷(0.5+2))=13×1.12=14.56(㎡) ダクト関連価格 指標合成単価 11,340円/㎡⇒14.56(㎡)×11,340=165,110円 - 59 - (4)スパイラルダクト スパイラルダクトを長方形ダクトに含めて算出する方法もあるが、スパイラルダクト特有の用途もあ るので長方形ダクトと区分して算出する。ここでは、長辺ダクトと同様に実績値を利用したダクト数 量の換算手法と基準となる価格の設定方法及び数量が明確になった段階での換算方法について 検討する。スパイラルダクトの合成単価の構成については図7による。 単価(円/㎡) 保温:天井内 GW(アルミガラスクロス) 5,200 2,970 口径 (φ) 図 7 スパイラルダクトの口径別合成単価の構成 1)換算方法によるコスト算出について a.手法1 ≪スパイラルダクトの合計金額から換算する手法≫ 長方形ダクトと同様に、ここではスパイラルダクトの合計金額(円)を特定の口径の複合単価 (指標複合単価)を用いて換算ダクト数量を求め、ダクト関係の概算を算出する手法について述 べる。 【換算式】 換算長さ=スパイラルダクトの合計金額(円)/(指標複合単価)(m) ※スパイラルダクトの合計金額:Σ(長さ×(複合単価)) ※指標複合単価:代表となる口径の複合単価⇒100φを使用 【価格式】 ダクト関係価格=換算長さ(m) × 指標合成単価(円/m) ※指標複合単価:代表となる口径の合成単価。 スパイラルダクトの複合単価による換算の可能性について100φの複合単価及び合成単価を 代表単価として過去の実績を用いて検証を行った結果を表3に示す。 表3 スパイラルダクトの複合単価による換算の検証(100φの複合及び合成単価の場合) 建物規模モデル (実延べ床面積) ①Σ(実面積×複合単価) ②換算面積(÷2,970) 750 形 (712 ㎡) 596,760 1500 形 (1,204 ㎡) 640,210 3000 形 (4,258 ㎡) 6000 形 (5,329 ㎡) 7,868,830 5,564,630 15000 形 (17,323 ㎡) 7,171,500 30000 形 (31,046 ㎡) 39,922,750 167 216 2,649 1,874 2,415 13,442 ③②×合成単価(5,200) 869,748 1,120,906 13,777,076 9,742,787 12,556,162 69,898,418 ④Σ(実面積×合成単価) 875,120 1,127,900 13,699,794 9,821,335 12,649,400 72,456,464 0.99 0.99 1.01 0.99 0.99 0.96 ⑤比率(③/④) 各モデルの⑤比率(③/④)の値が1に近い値であることから、サンプルと同程度の構成比率 であれば、概算額の算定として使用可能であると考察する。 100φの複合単価及び合成単価を代表単価とした場合の換算面積と延べ面積の関係を図8に示す。 - 60 - 換算長さ (m) 指標価格 100φ 3,030 延べ面積 (㎡) 図8 スパイラルダクト 延べ面積あたりの換算長さ(ファンコイルダクト併用方式) (例)延べ面積 10,000 ㎡ の庁舎のスパイラルダクト関連工事の直接工事費を求める。 ・延べ面積あたりの換算長さ 図または、近似線の計算式 Y=0.152 × Ⅹ1.0751 より スパイラルダクトの換算長さは 約 3,030 m ・ダクト関連価格(換算長さ、指標合成単価(100㎜Φ)より) 3,030 m × 5,200 円/m = 15,756,000 円 b.手法2 ≪スパイラルダクトの数量から換算する手法≫ 長方形ダクトと同様に、各口径のダクトの長さを特定の口径(指標口径)に換算する換算係数 として(口径+Y)/(指標口径+Y)を用いた手法について述べる。 【換算式】 換算長さ=Σ(長さ×換算係数) (m) ※換算係数:((ダクト口径+ Y)/(指標口径+ Y)) 【価格式】 ダクト関係価格=換算長さ(m)×指標合成単価(円/㎡) Yは指標合成単価と(口径毎の合成単価/換算係数)の比が一定になるよう設定する定数で、 指標口径を100㎜φとして試算した結果、Y=70が最も近似する数値となった。 試算結果を図9に示す。 (Y=0) 合成単価(円 /m)/換算係数 100φを 100 とした単価 比率 (Y=0) (口径+70) 参考(スパイラルダクトのみの価格) 口径 (φ) 図9 スパイラルダクトの口径別合成単価比率 - 61 - (5)冷温水配管 配管に関しては、これまで「トン単価」と言われる質量あたり単価が多く使用されてきたが、空調 システムによる数量の把握、管種を変更する際の対応等を考慮し、ダクトと同様に実績値を利用し たダ配管数量の換算手 保温:天井内 GW(アルミガラスクロス) 法と基準となる価格の設 定方法及び数量が明確 になった段 階 での換 算 方 法 について検 討 する。 冷温水配管の口径別合 成単価の構成について 図10に示す。 (A) 図10 冷温水配管の口径別合成単価の構成(SGP 白) 1)換算方法によるコスト算出について a.手法1 ≪冷温水配管の合計金額から換算する手法≫ ダクトと同様に、ここでは冷温水配管の合計金額(円)を特定の口径の複合単価(指標複合単価) により換算配管数量を求め、概算額を算出する手法について述べる。 【換算式】 換算長さ=冷温水配管の合計金額(円)/(指標複合単価)(m) ※冷温水配管の合計金額:Σ(長さ×(複合単価)) ※指標複合単価:代表となる口径の複合単価⇒50A を使用 【価格式】 冷温水配管の関係価格=換算長さ(m) × 指標合成単価(円/m) ※指標複合単価:代表となる口径の合成単価。 冷温水配管の複合単価による換算の可能性について、50A の複合及び合成単価を用いて 検証を行った結果(表は省略)、ダクトと同様に各モデルの⑤比率(③/④)の値が0.98~1.08と 1に近い値であり、利用可能であることが確認できた。50A複合単価及び合成単価を代表単価と した場合の換算長さと延べ面積の関係を図11に示す。 2,970 1,670 図11 冷温水配管 延べ面積当たりの換算長さ(SGP 白) - 62 - 【概算算出例(異なる空調方式)+(異なる管種) 管種:SGP(白)、SUS】 (例1) 延べ面積 10,000 ㎡ 空調方式 ファンコイルユニット・ダクト併用方式 ・延べ面積あたりの換算長さ: Y=0.297 × Ⅹ1 より → 約 2,970 m ・概算額:換算長さ×指標合成単価(50A)より→2,970× 10,095 ≒ 29,980,000 円 (例2)延べ面積 10,000 ㎡ 空調方式 ダクト方式、パッケージエアコン併用方式 ・延べ面積あたりの換算長さ: Y=0.025 × Ⅹ1.206 より → 約 1,670 m ・概算額: 1,670 m× 10,095 円/ m≒ 16,860,000 円 (例3) 延べ面積 10,000 ㎡ 空調方式 ファンコイルユニット・ダクト併用方式 ・延べ面積あたりの換算長さ: Y=0.297 × Ⅹ1 より → 約 2,970 m ・概算額:換算長さ×指標合成単価(SUS50A)より→2,970× 9,100≒ 27,030,000 円 b.手法2 ≪冷温水配管の数量から換算する手法≫ ダクトと同様に、各口径の配管の長さを特定の口径(指標口径)に換算する換算係数として (口径+Y)/(指標口径+Y)を用いた手法について述べる。 【換算式】 換算長さ=Σ(長さ×換算係数) (m) ※換算係数:((呼び径+ Y)/(指標呼び径+ Y)) 【価格式】 冷温水配管関係価格=換算長さ(m)×指標合成単価(円/㎡) Yは指標合成単価と(呼び径毎の合成単価/換算係数)の比が一定になるよう設定する定数 で、指標呼び径を50A として試算した結果、Y=10が最も近似する数値となった。 換算は屋内一般配 管を標準とする。機械 ① (呼び径+10)での加工した合成単価(円 /m)(①50A基準) 室内の配管は、図12 160 の①屋 内 一 般 配管 と 140 ②機械室配管の比率 120 がおおよそ1.1倍であ 128 114 115 104 104 120 108 70 71 (Y=0) ④ (呼び径+10)で加工した配管の複合単価(円 /m)(①50A基準) 110 111 111 104 99 100 62 63 65 40 50 65 100 69 116 119 108 97 99 101 60 62 64 80 100 125 124 108 106 70 68 150 200 142 118 121 75 77 250 300 60 を(呼び径+Y)×1.1/ 40 (指 標 呼 び径 + Y)と 20 して換算を行う。試算 0 結果を図12に示す。 ③ 呼び径で加工した合成単価(円/ m)(③50A基準) 139 80 ることから、換 算 係 数 ② 機械室(呼び径+10)で加工した合成単価(円/ m)(①50A基準) 合成単価(円 /m)/換算係数 50A(一般)を 100 とした単 価比率 20 25 32 呼び径 (A) 図12 冷温水配管の呼び径別合成単価比率(SGP 白) (6)共通費 共通費は概算単価に包含されて計算されることが多いが、共通費は直接工事費及び工期によ り変わること、内訳書を用いた検証のしやすさを考慮し、共通費は直接工事費とは区分して計上す ることが望ましい。 新営における機械設備工事の総合共通費率(%)について表4に示す。また、全体直接工事費 の違いによる内包される配管工事費に掛かる共通費率(%)の違いにつて試算例を以下に示す。 - 63 - (総合共通比率算出例) 直接工事費100,000,000円、工期12か月の工事の場合の総合共通費率の算出 共通仮設費(3.86%)、現場管理費(12.36%)、一般管理費等(9.13%) 1.0386×1.1236×1.0913=1.274 ⇒ 27.4% 表4 新営機械設備工事の主な総合共通費率(%) (積み上げ分を除く) P:直接工事費(千円) T:工期 (か月) 10,000 50,000 100,000 500,000 1,000,000 3 32.6 26.1 23.8 19.4 17.7 6 37.3 26.8 23.8 19.4 17.7 9 41.6 29.4 25.6 19.4 17.7 12 45.0 31.5 27.4 20.1 17.8 15 47.4 33.4 28.8 21.0 18.5 18 47.4 35.0 30.1 21.8 19.2 21 47.4 36.4 31.3 22.5 19.8 24 47.4 36.9 32.4 23.2 20.3 新営の機械設備工事における総合共通費率(%)使用例を以下に示す。 【条件】 機械設備(新営)工事 全体直接工事費 A工事 100,000,000円(配管の直接工事費 1,000,000円を含む) B工事 10,000,000円(配管の直接工事費 1,000,000円を含む) 工 期 12か月(A工事、B工事共) 【共通比率の比較】 上記工事に含まれる配管の直接工事費1,000,000円に掛かる共通比率の比較 A工事 1,000,000 × 1.274 = 1,247,000円 B工事 1,000,000 × 1.450 = 1,450,000円 上記より内包される配管工事に掛かる共通比率は A 工事と B 工事で1.274/1.450=1.16倍の違 いがある。このように、共通比率は、直接工事費および工期により変動することから、直接工事費と 共通費は区分して計上することが望ましい。 4.まとめ ここで紹介した空気調和設備の機器、機器廻り、ダクト、冷温水配管の換算方式による概算金 額の算出方法、設計の初期段階から設計の各段階において換算方法の使い分けを行うことで充 分使用できる事が可能である。 システムの違いへの対応については、ここで紹介した空調システムの違いによる分析結果より、 分析するサンプルを変更することで十分対応可能である。 材料および仕様の違いによる対応方法は、冷温水配管の概算算出例で示したが、換算面積お よび長さに乗ずる合成単価を構成する部材の単価を変更することで対応可能であり、地域等によ る単価の違いも同様の手法で対応可能と考えられる。 共通費については、直接工事費および工期により変動することから、直接工事費と共通費は区 分して計上することとした。 以上から、ここで紹介した手法は「2.換算手法としての必要事項」で設定した条件を、ほぼ満足 しているものと考える。 今回は空気調和設備について紹介を行ったが、今後他の項目についても検証を進めていきたい。 - 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