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固体熱物性標準整備の現状と開発計画

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固体熱物性標準整備の現状と開発計画
平成25年度 固体熱物性クラブ全体会合(第9回)@秋葉原、Feb. 7, 2014
はじめに
固体熱物性標準の
新整備計画について
平成25年度 固体熱物性クラブ全体会合(第9回)@秋葉原、Feb. 7, 2014
●これまでの標準整備計画(2000年頃~2014年度)
●知的基盤整備特別委員会において審議され、提示された。
2010年度までにどの様な標準を開発・供給してゆくべきかが示さ
れ、平成18年度見直し版においては、2010年までに物理標準334
種類、標準物質314種類を整備する計画。
• 第1期中期:2001年度-2004年度
– 目標(第1期末までに):340種類の計量標準の整備
• 第2期中期:2005年度-2009年度
– 目標(第2期末までに):500種類の標準計量の整備
●産総研第3期中には新たに、 グリーンイノベーション、ライフイノ
ベーション、産業の国際展開を支える 62種類の標準供給を開始
する計画を策定。既に開発した国家計量標準、 または、計量ト
レーサビリティ体系の高度化・合理化にも取り組む内容。
https://www.nmij.jp/info/planning/
2
平成25年度 固体熱物性クラブ全体会合(第9回)@秋葉原、Feb. 7, 2014
●熱物性標準供給項目の整備状況(2014年1月時点)
品目
供給範囲等
供給形態
1)
標準物質
/
単結晶シリコン
NM IJ CRM 5803-a; 適用温度範囲:20 K~300 K
2)
依頼試験
/
レーザ干渉法
(特殊)校正温度範囲:15 K~320 K (標準物質値付け実施のため)
3)
依頼試験
/
レーザ干渉法
校正対象:単結晶シリコン(Si)およびガラス状炭素(GC)
校正温度範囲:Si 293 K~-1000 K, GC 293 K~1100 K
4)
標準物質
/
単結晶シリコン
NM IJ RM 1101-a; 適用温度範囲:293 K~1000 K
5)
標準物質
/
ガラス状炭素
NM IJ RM 1102-a,(1104-a); 適用温度範囲:293 K~1100 K(1400 K)
6)
依頼試験
/
レーザ干渉法
校正対象:ゲージブロック(20 mm-100 mm); 校正温度範囲:5 ℃~35 ℃
依頼試験
/
レーザフラッシュ法
校正温度範囲:300 K~ 1500 K
標準物質
/
等方性黒鉛
NM IJ CRM 5804-a; 適用温度範囲:300 K~ 1500 K
標準物質
/
等方性黒鉛
NM IJ RM 1401-a; 適用温度範囲:300 K~ 900 K
依頼試験
/
断熱法
適用温度範囲:50 K~300 K
標準物質
/
単結晶シリコン
NM IJ CRM 5806-a; 適用温度範囲:50 K~350 K
12)
依頼試験
/
示差走査熱量測定法
適用温度範囲:300 K~900 K
13)
依頼試験
/
サーモリフレクタンス法
熱拡散時間範囲:100 ps~6500 ps
依頼試験
/
サーモリフレクタンス法
熱拡散時間範囲:40 ns~1000 ns
標準物質
/
窒化チタン(TiN)薄膜
NM IJ RM 1301-a; 700nm厚(ガラス基板上), 熱拡散時間 ~140ns
7)
8)
9)
熱膨張率
熱拡散率
熱伝導率
10)
11)
14)
15)
比熱容量
薄膜
熱拡散時間
3
平成25年度 固体熱物性クラブ全体会合(第9回)@秋葉原、Feb. 7, 2014
●新たな標準整備計画の設定
■H23.8に閣議決定の第4期科学技術基本計画において、新たな知的基盤整
備計画の策定が求められ、知的基盤整備特別委員会により今後の新たな整
備・利用促進方針及び具体的方策を盛り込んだ中間報告が取りまとめられた。
( http://www.meti.go.jp/committee/summary/0003843/report_01.html )
■計量標準の整備及び利用促進に関する検討会(H24.12から5回開催)
具体的な検討課題;(1)物理標準の整備・拡充、(2)標準物質の整備・拡充、
(3)計量標準の利用促進方策
■計量標準に関する新たな整備計画及び利用促進方策(H25.7)
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sangi/keiryo_hyojun/report_01.html
・計量標準整備計画(物理標準);資料3-3
・計量標準整備計画(標準物質);資料3-5
(新たな知的基盤整備計画及び具体的な利用促進に関する検討会
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sangi/chiteki_kiban/001_haifu.html)
平成25年度 固体熱物性クラブ全体会合(第9回)@秋葉原、Feb. 7, 2014
■物理標準(依頼試験)
供給計画
項目(単位)
校正器物
測定器
熱流密度
熱伝導率
熱流センサー
熱伝導率標準試料
熱流計
熱伝導率測定装置
熱膨張率
熱膨張率標準試料
熱機械分析器(TMA)
各種膨張計
供給範囲
室温
・2014年度まで: 熱流密度校正
(10 W/m2~数100 W/m2)
・2022年度まで: 新規標準物質(数W/(m・K))
中高温(300 K以上)
・2014年度まで:アルミナ(300 K~1700 K)
・2022年度まで:石英ガラス(300 K~1000 K)
2014 2017 2022
年度 年度 年度
まで まで まで
◎
○
○
○
○
○
中高温(300 K~1500 K)
・2014年度まで:黒色セラミックス
熱拡散率
熱拡散率標準試料
レーザフラッシュ法による熱 (~10-5 m2s-1; 1000 Kまで)
拡散率測定装置(周期加熱 ・2022年度まで:新規標準物質
法による装置にも適用可)
(10-6 m2s-1~10-5 m2s-1
もしくは10-4 m2s-1~10-3 m2s-1)
比熱容量
比熱容量標準試料
示差走査熱量計(DSC)
他各種熱量計
・2022年度まで:断熱法の温度範囲拡大
絶対測定法開発による高度化
熱膨張率
ゲージブロック
固体ブロック
ゲージブロック
熱膨張率基準試験片
室温付近(5 ℃~35 ℃)
・2014年度まで:温度範囲拡大(-10 ℃~+60 ℃)
・2022年度まで:器物範囲拡大
○
○
○
平成25年度 固体熱物性クラブ全体会合(第9回)@秋葉原、Feb. 7, 2014
■標準物質
物質・項目等
想定される利用分野
2014
年度
まで
供給計画
2017
年度
まで
2022
年度
まで
熱膨張率測定用
高熱膨張材料標準物質
TMA装置等の校正および参照試料
熱拡散率測定用
黒色セラミックス標準物質
レーザフラッシュ法、光交流法等の装置の精度確認
◎
熱拡散率測定用
金属薄膜標準物質
ピコ秒サーモリフレクタンス装置の校正, サーモリフレクタンスを用いた計測器用
の薄膜標準物質
◎
熱膨張率測定用
アルミナ標準物質
TMA装置等の校正および参照試料
◎
熱膨張率測定用
石英ガラス標準物質
TMA装置等の校正および参照試料
低膨張を評価する熱膨張計に対する材料の熱膨張率の評価
◎
熱伝導率測定用
金属薄膜標準物質
ピコ秒サーモリフレクタンス装置の校正
◎
◎
今後、本標準整備計画は定期的にローリングをする予定。
整備内容、供給形態などへのご意見、ご要望は随時歓迎。
平成25年度 固体熱物性クラブ全体会合(第9回)@秋葉原、Feb. 7, 2014
固体熱物性標準整備の現状と開発計画
-熱膨張率産業技術総合研究所
山田修史
・熱膨張率標準の整備状況報告
・今年度のトピック
平成25年度 固体熱物性クラブ全体会合(第9回)@秋葉原、Feb. 7, 2014
熱膨張率標準供給項目 詳細(2014. 1現在)
供給形態
※
標準物質
名称
適用範囲等
不確かさ等
標準物質名
適用温度範囲
参照値の不確かさ/頒布形状
単結晶シリコン
(NMIJ RM 1101-a)
293 K ~ 1000 K
ガラス状炭素
(NMIJ RM 1102-a)
293 K ~ 1100 K
ガラス状炭素
(NMIJ RM 1104-a)
293 K ~ 約1600 K
熱膨張率測定用単結晶シリコン
(NMIJ CRM 5803-a)
試験名
20 K ~300 K
校正温度範囲他
相対拡張不確かさ: < 1.2 %
頒布形状:4.5角×L60 mm3 , 9.0角×L60 mm3
相対拡張不確かさ: < 3.3 %
頒布形状:6.0角×L10 mm3 , 6.0角×L20 mm3
相対拡張不確かさ: 0.91 %~1.7 %
頒布形状:6.0角×L10 mm3
拡張不確かさ: 5.0×10-9 K-1 ~ 8.0×10-9 K-1
頒布形状:10.0角×L30 mm3, 10.0角×L60 mm3
校正・測定能力(k =2)
・単結晶シリコン
もしくはガラス状炭素の
熱膨張率校正
・25×25×t6の単結晶シリコン
もしくはガラス状炭素試験片
・校正温度範囲は293 K~1000 K
2.0×10-8 K-1
・固体ブロックの
熱膨張率校正(特殊)
・20×20×t8の固体ブロック
・校正温度範囲は15 K~320 K
5.8×10-9 K-1~4.2×10-7 K-1
・短尺ブロックゲージの
熱膨張率校正

 A × α 2 + B2
・JIS B7506で定めるブロックゲージ
+ C ⋅ α  × 10− 9 K −1 ;

∆T


もしくは同等な形状精度をもつ固体
2
2
試験片
 6.3 
 5.9 
39




A = 4.3 + 
・呼び寸法の範囲:
 , B = 0.38 + L , C = 0.020 +  L 
0
 0
 L0 − 23 
20 mm以上100 mm以下
・校正温度範囲:
尚、L 0<40の場合はA =2.0とする。また、入力量の
5 ℃以上35 ℃以下
単位はαが10-6K-1, L 0がmm, ΔT がKとする。
依頼試験
平成25年度 固体熱物性クラブ全体会合(第9回)@秋葉原、Feb. 7, 2014
今年度のトピックス
■1:NMIJ CRM 5803-aの有効期限延長
(熱膨張率測定用単結晶シリコン(低温))
■2:新熱膨張率測定用認証標準物質
NMIJ CRM5805-a 高純度銅の開発
平成25年度 固体熱物性クラブ全体会合(第9回)@秋葉原、Feb. 7, 2014
■1: CRM5803-aの概要
標準物質母材インゴット(単結晶シリコン)
標準物質頒布形状
有効期限:2015.3.31
母材情報:
・物質名: 単結晶シリコン
・製造元: 信越半導体株式会社
・製法: 浮遊帯域溶融法 (FZ法)
・形状: 直径125 mm×129 mm,
<100>
・純度: 99.99995%以上
平成25年度 固体熱物性クラブ全体会合(第9回)@秋葉原、Feb. 7, 2014
■1:安定性モニタリングの結果
CRM 5803-a
0.015
[2006. 8]
[2007. 1]
0.005
/10-6K-1
Deviation form CV
0.01
[2010. 7]
0
-0.005
-0.01
-0.015
[2009. 8]
[2013. 12]
特性値の変動は見られない→
有効期限を2020.3.31までに延長予定
平成25年度 固体熱物性クラブ全体会合(第9回)@秋葉原、Feb. 7, 2014
■2: 新規熱膨張率標準物質の開発
●標準値の範囲拡張を目的としてとして銅に
よる新たな熱膨張率標準物質の開発を開始
-6
Thermal expansivity /10 /K
20
16
12
731(Borosilicate Glass)
732(Sapphire)
736(Copper)
NIST SRM
737(Tungsten)
738(Steinless steel(AISI446)
739(Fused Silica)
NMIJ RM1101 (Single crystal Si)
NMIJ RM 1102 (Glass-like carbon)
NMIJ CRM 5803 (Single crystal Si)
8
4
※RM1104 (GC;~1400 K)
0
0
500
1000
Temperature /oC
1500
平成25年度 固体熱物性クラブ全体会合(第9回)@秋葉原、Feb. 7, 2014
■2: 標準物質母材の選定
均質で高純度な銅インゴットを入手
・高純度銅ブロック(400 ℃1 hアニール)
・形状:(150×150×62) mm3; 重量12.4 kg
成分
Cu
Ag
Al
As
Bi
Ca
Co
Cr
Fe
K
Mg
Mn
定量値
/wt.ppm
balance
0.15
<0.01
<0.01
<0.01
<0.01
<0.01
<0.01
<0.01
<0.01
<0.01
<0.01
成分
Na
Ni
P
S
Sb
Sn
Th
U
Zn
N
C
O
定量値
/wt.ppm
<0.01
<0.01
<0.01
<0.01
<0.01
<0.01
<0.0001
<0.0001
<0.01
<1
<1
<1
不純物量0.0014 at%未満
(純度99.9985 at%以上)
比較データ:米国NIST;SRM736
・ 素材;OFHC(無酸素銅;多結晶)/Shape; 1/4inch rod
・ RRR(273K/4K):62.53
・811 Kの真空中でアニール(→SRM736の適用温度上限;800 K)
・ Purity:99.99 at%, 0.012 at%の不純物
・ 評価用試験片数は5(70feetsのrodからsampling)
From J. Appl. Phys. 41. 5096. 1970
平成25年度 固体熱物性クラブ全体会合(第9回)@秋葉原、Feb. 7, 2014
■2: 評価用試験片の熱膨張率校正
4個の評価用試験片についての測定結果(各2回/試験片)
20
Copper
CTE /10-6K-1
15
10
5
Sample No.
1-1
3-1
1-2
3-2
0
0
50
100
150
200
Temperature /K
250
300
平成25年度 固体熱物性クラブ全体会合(第9回)@秋葉原、Feb. 7, 2014
Deviation from CODATA /10 -6K-1
■2: 認証値のCODATAの推奨値などとの比較
0.2
Copper
CRM 5805
SRM 736
TPRC
0.1
0
-0.1
-0.2
0
50
100
150
200
Temperature /K
250
300
※CODATA(Committee on Data for Science and Technology): 国際科学会議(ICSU)によって
1966年に設立された学際的な科学委員会。科学と技術に関するデータについて、その品質、信頼
性、管理、検索性の向上を行っている。
平成25年度 固体熱物性クラブ全体会合(第9回)@秋葉原、Feb. 7, 2014
まとめ
■1 NMIJ CRM5803-a 熱膨張率測定用単結晶シリコン
・有効期限 2015.3.31 → 2020.3.31 (5年間延長)に
・認証値などの変更は無し
■2 NMIJ CRM 5805-aの供給仕様(予定)
・物質名: 高純度銅
・適用温度範囲: 20 K~300 K
・頒布形状:10 mm×10 mm×30 mm
・認証値
温度の5次多項式セットによる提示
拡張不確かさ(k=2):
0.029 ×10 −6 K −1~0.051×10 −6 K −1
CTE
Temp.
T /K /10-6K-1
20
40
60
80
100
120
140
160
0.28
2.26
5.46
8.33
10.49
12.04
13.18
14.02
CTE
Temp.
T /K /10-6K-1
180
200
220
240
260
280
293.2
300
14.67
15.17
15.59
15.93
16.22
16.48
16.64
16.71
→来年度からの供給開始を目標に開発を進めている。
次世代を担う若手熱物性研究者の最近の研究
光通電ハイブリッド・パルス加熱法による
高速多重物性測定装置の開発
渡辺 博道
高温機器の設計や材料開発に必要な 500 ∼ 2500℃超における固体の複数の熱物性値を 1 台の装置で
短時間測定する方法を開発した.本方法は,パルス通電加熱とパルス光加熱を高速制御して試料を物性
測定する際に必要な境界条件(温度・熱流環境)に瞬間的に保持するとともに試料の温度,電流,電圧,
形状,光学特性を測定することで熱伝導率,熱拡散率,比熱,全放射率,分光放射率,電気抵抗率,熱膨
張率を 1 秒以内で測定可能である.
力関連施設のような高温・高圧の極限環境で使用
はじめに
される機器・システムの開発でも生じている.これ
らの機器の開発では機器・システムの十分な安全
地球温暖化問題の高まりから,広範な産業分野
性を確保するため大規模な実証機の開発が欠かせ
においてエネルギー効率の向上が社会的に強く求
ない.そのような実証機開発では,コストの面から
められている.それゆえ,1700℃級高効率ガス・
大きな失敗は許されない.それゆえ,事前に CAE
タービンや核融合実験炉(ITER)の開発を始めと
を活用して可能な限り最適な設計方針を得ること
する省エネや二酸化炭素排出抑制を目的とする
が必須である.それゆえ,CAEに必要なシステム・
様々な技術についての研究開発が一層活発になる
器機に含まれる物質の熱物性値(熱伝導率,比熱,
と考えられる.これらの研究開発の成否を握る大
全放射率,熱膨張率,電気抵抗率等)
とそれらの温
きな技術課題として次の 2 点が挙げられる.
度係数が益々重要なデータとなる.
1. 計算機支援工学(CAE)を活用した効率的・効
また,発電用ガス・タービンの入口温度を上昇さ
せるために耐熱合金の飽くなき開発 2)が続けられ
果的な器機・プロセス設計の実現,
2. 新規な材料の開発と実機への応用.
ていることが示すように,省エネ機器の開発には
省エネ効果の高い高温機器・プロセスの開発に
新規な耐熱材料(Ni基超合金,金属間化合物,複合
おいて CAE の一種である伝熱解析の活用は今後
材料等)の実用化が欠かせない.また,太陽電池,
益々必要となる.鋳造を例とすれば,精密鋳造部品
燃料電池,熱電発電等の化石燃料を消費しないク
の品質や製造時の生産性・効率性を向上させるた
リーンなエネルギー源の開発においても,材料開
めには伝熱解析の活用はもはや必要不可欠である.
発が実用化の成否の鍵を握る.材料開発において,
実際,ジェット・エンジン等に使われるタービン翼
物性値は材料の性能評価や開発方針を決定する際
を精密鋳造する場合,従来の試行錯誤的な手法に
の重要な指標であるとともに,材料の実用化を促
より操業条件を探索する限り,生産歩留まりが 50
すために必要な情報でもある.新規な耐熱材料の
%以下になることがよくある1).今後,柱状晶や単
実製品への応用が進まない原因は,コストの問題
結晶組織を有する新規な耐熱合金のタービン翼を
の他に従来材料と比較して基礎的な物性データが
精密鋳造することが求められており,伝熱解析に
圧倒的に欠如しているためでもある.一般に,装置
より鋳型内の熱流をこれまで以上に精度良く予測
メーカが新規な耐熱材料を既存部品に応用するた
する必要がある.このような状況は,航空機や原子
めには熱設計もやり直す必要があり,新規材料の
18
金属vol.84, No. 2, (2014), pp.112-116より転載、
(株)アグネ技術センターより転載許可取得済み。
(112)
金属 Vol.84 (2014) No.2
特集 次世代を担う若手熱物性研究者の最近の研究
熱物性値を大量に必要とする.それゆえ,新規材料
の高温での熱膨張率を短時間で測定することを可
が従来材料に取って代わるためには,従来材料と
能にする改良 6),比熱・全放射率・電気抵抗率測定
質・量ともに同等以上の基礎的な物性データを装
の不確かさ低減のための改良 7),全放射率測定規
置メーカに提供する必要がある.
格の制定 8)等を行っている.本解説ではこれらの
上述したように高温の熱物性値に対する潜在的
研究の概要を紹介する.
なニーズは高いが,軍需や原子力といった特殊な
光通電ハイブリッド・パルス加熱法
産業分野以外の企業にとって妥当なコストで高温
物質の熱物性値を取得することは非常に困難であ
る.その理由は,十分な精度で高温物質の熱物性を
筆者らが開発した光通電ハイブリッド・パルス
測定できる低コストで使いやすい市販装置が普及
加熱技術を利用した高速多重物性測定システムの
していないからであり,その原因として以下のこ
概要を図1に示す.測定では,最初に大容量コンデ
とが挙げられる.
ンサから1000A以上の大電流を平板状試料に流し
1. 試料・装置の汚染,
て,1 秒以内に試料温度を 1000℃以上の目標値に
2. 理想的な試料境界条件(断熱状態等)の実現の
到達させる.次に,加熱回路中の電界効果トランジ
スタのゲート電圧を高速フィードバック制御する
難しさ.
一般に,高温において試料・装置の健全性や必要
ことで試料温度を数100ミリ秒間一定に保持する.
な境界条件を実現するためには,分厚い断熱材,冷
次に,この瞬間的な定常状態にある試料の片面に
却水設備,長い待機時間,ヒーターや温度センサー
Nd ガラス・レーザーにより光パルスを照射する.
等の頻繁な交換・再校正等を必要とする.それゆ
この光パルス加熱により生じる反対側試料面の温
え,高温用の熱物性測定装置の価格,設置スペー
度変化が終了した後,通電加熱を停止して試料温
ス,運用コストは大幅に増加するにもかかわらず,
度を迅速に室温に戻す.この 2 段階のパルス加熱
得られる測定結果の再現性は装置の顧客の期待値
中の試料温度,試料を流れる電流,試料の電気抵抗
より低いことが多い.結果として,顧客にとっては
を連続測定する.試料温度は放射温度計と高速エ
低い費用対効果しか得られないため装置の需要が
リプソメータを組み合わせて非接触測定する.測
少なくなり,装置の価格はさらに上昇する.装置の
定した3つの物理量の時間変化から,熱伝導率,比
普及の遅れは,測定法の標準化の遅れ及びに測定
熱容量,全放射率,電気抵抗率を導出する.
規格の不在を招く.経済的な見地に立てば,測定規
図 2 には,放射温度計により測定された 1 回の
格が存在しない測定装置を導入することによるメ
光通電ハイブリッド・パルス加熱時のモリブデン
リットは少ないため,民間企業への装置の普及が
益々遅れる悪循環に陥っている.
こういった状況を鑑み,筆者らは,大電流による
通電加熱とパルス・レーザーによる光加熱を巧妙
なタイミングで組み合わせた光通電ハイブリッ
ド・パルス加熱法により高温における導電性物質
の 6 種類の物性(熱伝導率,熱拡散率,比熱,全放
射率,分光放射率,電気抵抗率)を 1 秒以内に同時
測定する画期的な高速多重物性測定装置を世界で
初めて開発3)4)するとともに,装置の実用化開発5)
も行った.最近では,この方法にシャドーグラフ法
図 1 光通電ハイブリッド・パルス加熱法による高速多
重物性測定装置の概略図
を原理とする熱膨張率測定技術を組み込み,固体
金属 Vol.84 (2014) No.2
(113)
19
特集 次世代を担う若手熱物性研究者の最近の研究
試料の輝度温度の時間変化を示す.時間 t の原点
熱前後の温度変化の拡大図を図 3 に示す.レー
は加熱開始時を表しており,加熱開始から約 180
ザー照射範囲(7×5mm)に比較して放射温度計の
ms 後に試料温度は最高値に達している.そして,
測定範囲(φ 0.7mm)及び試料厚さ(0.3mm)は十分
実線で囲まれた最高温度近辺でのデータから比熱
に小さいため,光パルスの熱は試料の厚み方向へ1
容量と電気抵抗率が決定される.その後,t = 300
次元的に拡散するとみなせる.そのため,レーザー
∼500msの時間域において試料温度はゲート電圧
照射後の温度変化から LF 法の原理により熱拡散
のフィードバック制御により一定に保持される.
率を導出できる.こうして得た熱拡散率と比熱容
この時,試料中で発生するジュール熱は試料表面
量の値から熱伝導率も算出できる.本方法により,
からの放射熱損失とほぼ釣り合うため,点線で囲
我々は世界で初めて2600K以上におけるモリブデ
まれた定常温度におけるデータから全放射率を決
ンの熱拡散率を測定した 3).
定できる.その後,t=480ms の時点で試料に光パ
熱膨張率測定機能の開発
ルスを照射する.一点鎖線で囲まれたレーザー加
1950
熱膨張率は高温で使用する機器の設計を行う際
比熱・電気抵抗率
熱伝導率
1900
には必要不可欠の熱物性値である.そこで,筆者ら
は光通電ハイブリッド・パルス加熱法の要素技術で
輝度温度(K)
1850
あるフィードバック制御パルス通電加熱技術によ
全放射率
1800
り所定の高温で短時間定常状態に保持した試料の
画像を解析することで熱膨張率を測定するシステ
1750
ムの開発を行った.開発した装置の概略図を図4 に
1700
示す.このシステムでは,薄板試料に流す電流を高
速フィードバック制御して試料を目標温度に短時
レーザー照射
1650
間一定に保持する.この短い定常状態にある板状試
1600
0
200
400
600
時間(ms)
料の画像を CMOS カメラで撮影することにより,
800
室温状態に対する高温時の試料の熱膨張率を決定
図2 高速多重物性測定におけるモリブデン試料温度の
時間変化例
した.試料のエッジ検出を明瞭に行うため,緑色
LEDとテレセントリックレンズ系を組み合わせた
平行光バックライトシステムを用いた.放射温度計
1880
輝度温度(K)
1875
1870
1865
1860
479
481
483
485
時間(ms)
図 3 レーザー加熱前後の温度変化の拡大図
20
図 4 高温試料の熱膨張率の高速測定システム
(114)
金属 Vol.84 (2014) No.2
Pt
1
0.5
標準偏差:
0.25 %
800 1000 1200 1400 1600 1800
1
Pd
1
標準偏差:
0.37 %
800
1000
1200
1400
試料温度分布の影響の低減
0.6
光通電ハイブリッド・パルス加熱法による高速多
0.4
重物性測定法においては,試料の温度分布は一様で
標準偏差:
0.36 %
0.2
0
600
試料から周囲への熱移動は熱放射が支配的である
800 1000 1200 1400 1600 1800
Temperature (K)
温度(K)
1
1.5
0.5
Ta
0.8
温度(K)
2
0
600
(%) (%)
Thermal熱膨張率
Linear Expansion
1.5
0
600
Thermal 熱膨張率
Linear Expansion
(%)(%) 1.2
2
Thermal熱膨張率
Linear Expansion
(%) (%)
Thermal熱膨張率
Linear Expansion
(%)(%)
特集 次世代を担う若手熱物性研究者の最近の研究
と見なし,下記の単純な熱収支関係式から比熱容量
Mo
0.8
と半球全放射率を熱量法の原理から導出する.
mc p ( dT / dt ) = VsmVst / Rst − Aε tσ SB (T 4 − T04 )
0.6
(1)
0.4
標準偏差:
0.38 %
0.2
1600
ここでmは試料の有効質量,cp は比熱容量,Tは試
0
600
料の温度,Vsm と Vst は試料及びに回路中の標準抵
800 1000 1200 1400 1600 1800
Temperature (K)
温度(K)
抗におけるそれぞれの電圧降下,Rstは標準抵抗の
Temperature (K)
温度(K)
図 5 熱膨張率の測定結果例(試料:白金,タンタル,パ
ラジウム,モリブデン)
値,A は試料の表面積,ε t は試料の半球全放射率,
σ SB は Stefan-Boltzmann 定数,T0 は試料周囲の温
度である.式
(1)
を変形することで次式が得られる.
と試料の間に配置したコールド・ミラーを用いて試
料撮影用の背景光の照射と放射温度測定を両立す
Y = cp X + εt
ることにより,試料を目標温度に短時間一定に保持
Y = Vsm Vst
(2a)
{Rst Aσ SB (T 4 − T04 )}
X = m ( dT dt ) {Aσ SB (T 4 − T04 )}
した際の試料シルエットの撮影を可能にした.
(2b)
(2c)
開発したシステムでは,試料のみが瞬間的に加
上記の式は,温度 T において測定された V sm, Vst,
熱されるパルス通電加熱の利点を最大限活用して,
dT / dt の値から算出できる 2 組以上の X と Y の値
試料を真空チャンバー中で加熱するにもかかわら
が線形関係を有することを利用して温度 T におけ
ず,試料と CMOS カメラ間の距離をわずか 30mm
るcpとε t を導出できることを示している.しかし,
にした.また,試料の真温度は試料の側面の中心に
実際の試料の熱収支関係は,試料表面の温度Ts と
スポット溶接した線径 50µm の R 型熱電対の熱起
試料全体の温度分布を考慮した実効的な温度Teと
電力測定値から決定した.
の偏差,試料から周囲への伝導熱損失∆ E,試料及
開発した熱膨張率測定システムの性能評価の
びに標準抵抗の電圧降下測定値の誤差 ∆ V を考慮
ため,12種類の金属について熱膨張率測定を行っ
した次式で表すべきである.
mc p ( dTe / dt ) = (Vsm − ∆V )(Vst − ∆V ) Rst
6)
た .図 5 には,その中から白金(Pt),タンタル
− Aε tσ SB (Ts4 − T04 ) − ∆ E
(Ta),パラジウム(Pd),モリブデン(Mo)の熱膨
(3)
式(3)は以下のように変形することができる.
張率の測定結果を示す.各金属について各温度で2
回の測定を行っており,図中の○と△の印は 1 回
Ye = c p,e Xe + ε t,e
目と 2 回目で得られた測定値を示す.図中には比
Ye = (Vsm − ∆V )(Vst − ∆V )
{
9)
較として TPRC ハンドブック に掲載された各金
{Aσ SB (Ts4 − T04 )}
属の熱膨張率の推奨値も実線として掲載した.各
Xe = m ( dTs dt )
金属の測定結果を最小二乗法により 2 次または 3
c p,e = ( dTe dTs ) c p
次の温度多項式を導出し,その多項式に対する実
ε t,e = ε t +
測データの標準偏差を導出した.その結果,これら
∆E
Aσ SB (Ts4 − T04 )
(4a)
(
Rst Aσ SB Ts4
}
− T04 )
(4b)
(4c)
(4d)
(4e)
4種の金属の測定結果の標準偏差は0.4%以下と非
上述の式からは温度 Ts における Vsm, Vst, dTs / dt,
常に小さいとともに推奨値と良い一致を示した.
∆ V の値から算出できる Xe と Ye の値の間には,次
金属 Vol.84 (2014) No.2
(115)
21
特集 次世代を担う若手熱物性研究者の最近の研究
に述べる 2 つの条件下では近似的な直線関係が成
料以外は加熱されないため,試料チャンバーに断
り立つことが判る.第1の条件は,dTe / dTs が一定
熱材や冷却水配管等を設ける必要がないため,装
であることであり,第 2 の条件は式(4e)の右辺第
置全体を小型化することができる.そのため,光パ
2 項の値が半球全放射率の値に比較して無視しう
ルスの照射可能距離が短いキセノン・フラッシュ
るほど小さいかほぼ一定の値を持つことである.
ランプをレーザーの代わりに光パルス光源として
この 2 つの条件がともに成立する場合,Xe と Ye の
使用できる利点がある.
近似直線の傾きとYe切片はそれぞれ見かけの比熱
終わりに
容量cp, e と半球全放射率 ε t, e を表している.前述し
た従来の解析においては,∆ Vは無視できるほど小
さく,dTe / dTs は 1 であり,式(4e)の右辺第 2項の
本測定方法の適用可能物質は,現段階では導電
値が半球全放射率の値に比較して無視しうるほど
性物質のみであるが,将来的には,半導体・絶縁体
小さいという条件を満たした場合のみ正確なcp と
の高温熱物性測定への応用が期待されている.金
ε tの測定が可能となる.しかし,急速に試料の温度
属や炭素材料の導電性薄板に試料とする非導電性
分布が悪化する冷却時において上記の条件を成立
物質を密着させ,上記導電性薄板を通電加熱させ
させることは困難である.そこで,筆者らは冷却時
ることで試料を間接的に加熱し,その熱収支から
の測定値を用いずに全て急速加熱中に得られる
比熱や全放射率を測定するための装置の改良・手
データにより比熱,半球全放射率,電気抵抗率を解
法の開発を行っている.今後,このような方法によ
7)
析する方法を新たに考案した .
り,耐熱コーティングや鋼板上に生成する酸化ス
ケールの高温熱物性測定を試みる予定である.
測定法の標準化・実用化
参考文献
本測定方法を普及させる上で測定法の標準化を
推進することは非常に重要である.特に本測定法
1)
Auburn 大学材料工学科の Overfelt 教授のコメント
2)
原田広史ら:日本ガスタービン学会誌,34 (2006),
49.
が扱う半球全放射率に関しては測定規格が存在し
3)
ないため,本測定法を基にした測定規格の提案は
H. Watanabe and T. Baba: Appl. Phys. Lett., 88 (2006),
241901.
十分に意義がある.そこで,日本ファインセラミッ
4)
渡辺博道:セラミックス,42 (2007), 930.
クス協会を事務局として放射率測定に関する JIS
5)
渡辺博道:熱測定,37 (2010), 118.
規格制定に向けた原案作成及びに委員会審議にお
6)
H. Watanabe and Y. Yamashita: Proc. 32nd. Jpn. Symp.
いて本測定法を基にした測定規格案を提案し,
2012 年 3 月 6 日に開催された JISC 窯業技術専門委
Thermophys. Prop., Yokohama (2011), pp.30-32.
7)
H. Watanabe and Y. Yamashita: Rev. Sci. Instrum., 83
(2012), 014904.
員会において「JIS R 1693-3ファインセラミックス
8)
及びセラミックス複合材料の放射率測定方法−第
JIS R 1693-3 ファインセラミックス及びセラミック
ス複合材料の放射率測定方法−第 3 部:直接加熱熱量
3 部:直接加熱熱量法による半球全放射率」として
法による半球全放射率,JIS R 1693-3, 2012/03/06
9)
制定することが了承された.
Y. S. Touloukian et al: Thermophysical Properties of
Matter-Volume 12, (IFI / Plenum, NY. 1976).
測定法の普及において,測定装置の低コスト化
は非常に重要である.そこで,熱拡散率測定に必要
わたなべ・ひろみち WATANABE Hiromichi
1999 東京工業大学大学院博士課程金属工学修了,同年 計量研究
所(現 産業技術総合研究所)入所,現在 計測標準研究部門材料
物性科熱物性標準研究室主任研究員.高温熱物性測定方法及びに
標準物質の開発に従事.
な光パルス光源として高価な単パルスレーザーの
代わりに低廉なキセノン・フラッシュランプを導
入した装置を開発し,単パルスレーザーと同等の
結果を得られることを確認した.本測定法では,試
22
(116)
金属 Vol.84 (2014) No.2
平成25年度 固体熱物性クラブ全体会合 2014. 2. 7
於:秋葉原コンベンションホール
固体熱物性標準整備の現状と開発計画
熱拡散率/熱伝導率
(独)産業技術総合研究所
計測標準研究部門 熱物性標準研究室
阿子島めぐみ
Contents
• NMIJにおける熱拡散率・熱伝導率の標準整備状況
熱拡散率 熱伝導率 標準整備状
• 熱拡散率・熱伝導率の標準に関する国際動向
• 熱拡散率RRについて
国内の熱拡散率 熱伝導率の標準( ルク材料)
国内の熱拡散率・熱伝導率の標準(バルク材料)
【固体材料】産業技術総合研究所(NMIJ)
【断熱材】 建材試験センター
依頼試験 (thermal diffusivity)
JCSS校正(国際MRA対応JCSS校正)





対象 : 等方性黒鉛
形状:φ 5 or φ10 mm × 1.0 mm - 4.0 mm
温度範囲 : 300 K – 1500 K
測定方法 : レ
レーザフラッシュ法
ザフラッシュ法
不確かさ : 3.1%以上
NMIJ CRM 5804a (thermal diffusivity)





材質 : 等方性黒鉛 (IG-110)
形状:φ10 mm×1.4, 2.0, 2.8, 4.0 mm
温度範囲 : 300 K – 1500 K
物性値 : 熱拡散率
不確かさ : 5 % – 7 %
……NMIJ RM1201a before Mar. 2011
NMIJ RM 1401a (thermal conductivity)
材質 : 等方性黒鉛(IG-110)
形状 10 mm × 1.0,
形状:φ10
10 2
2.0
0 mm
温度範囲 : 300 K – 900 K
物性値 : 熱伝導率
(熱拡散率・比熱容量・密度)
 Uncertainty
U
t i t : 7.2
7 2 % – 9.8
98%




    cp  
 対象:熱伝導率0.020~0.23(W/m・K)の断熱材
 形状:□300 mm or □200 mm
厚さ15~30mm
 温度範囲 : 平均温度10
平均温度10~40℃
40℃
 測定方法 : 保護熱板法 (JIS A1412-1)
 不確かさ : 1.3 % 以上
熱伝導率校正板
 材質 : 高密度グラスウール
 形状:形状:□300 mm or □200 mm x 25 mm
 国際MRS対応JCSS校正で値付け
関連する国内外の標準
一般的な固体材料(主にレーザフラッシュ法)
 IRMM BCR-724 ((Glass Ceramics))
 JFCC TD-AL (Alumina)
低熱伝導材料(主に保護熱板法)




NIST SRM 1450d (Glass fiber board)
IRMM 440 (Resin
(Resin-bonded
bonded glass fiber board)
IRMM BCR 39 (Pyrex glass)
測定機関: NIST, LNE, NPL, KRISS, ….etc.
NMIJの熱拡散率・熱伝導率の標準整備の取り組み
NMIJの熱拡散率
熱伝導率の標準整備の取り組み
主にレーザフラッシュ法を用いた熱拡散率の精密測定により標準整備を進めています。
FY
2001
2003
2005
2007
2009
2011
2013
2015
熱拡散率 依頼試験
300 K – 1200 K
Φ10 mm
等方性黒鉛
300 K – 1500 K
熱拡散率 標準物質
RM 1201a
熱伝導率 標準物質
+ Φ5 mm
CRM 5804a
+黒色セラミックス
CRM 5804b
RM 1401a
熱流密度標準
4
NMIJが提供する熱拡散率の標準のコンセプト
• インヒレントな熱拡散率
“インヒレント” = 測定条件に依存せず、材料固有であること
熱拡散率は温度に依存する物性値であるため、測定時の温度上昇の影響
を考慮
を考慮した測定方法を開発・実施しています。
測定方法を開発 実施
ます。
• SI トレーサブルな熱拡散率測定
熱拡散率 = 長さ、時間、温度の組立量
長さ 時間
度 組立量
測定システムも、『長さ』『時間』『温度』毎に校正・不確かさ評価が可能
SI(国際単位系)にトレーサブルな熱拡散率の評価を確立し、実施していま
す。
• GUMに沿
GUMに沿った不確かさ評価
た不確かさ評価
ISO Guide 98 -- Uncertainty of measurement -- Part 3 –
“ Guide to the expression of uncertainty in measurement (GUM:1995) “
GUM沿った不確かさ評価を確立し、実施しています。
5
JIS R 1611 附属書JA
測定条件に依存しない
材料固有の熱拡散率を求める手順
測定中=試料温度が上昇
熱拡散率:温度に依存する物性値
温度上昇曲線:有限の温度幅内の変化
⇒ 見かけの熱拡散率は、測定条件に依存
Deviation Temperrature (K)
レーザフラッシュ熱拡散率測定の概要
ザ ラッシ 熱拡散率測定の概要
Temperature of sample rises
during the measurements
Steady Temp. Ts
Time (ms)
『Tsにおける温度上昇ゼロ時の熱拡散率』
(定義)インヒレント(
イ
ト(inherent)な熱拡散率
更に、試料厚さに依存しない熱拡散率の確認
2
-1
1.2
1.15
-4
一定温度のもと、
i
i.
パルス加熱強度を変えて熱拡散率を測定
ii. 見かけの熱拡散率をパルス加熱強度
(最高温度上昇幅)に対してプロット
i. ゼロ外挿値 を求める
The
ermal
diffusiv
vity
/ 10/ 10m-4 m
s 2 s-1
Thermal
T
diffu
usivity
温度上昇ゼロ時の測定結果が厳密な値
1.1
IG-110
1.10
1.4mm
2 0mm
2.0mm
Thickness = 1.4 mm
2.8mm
Temperature = 299
K
4.0mm
1 05
1.05
1.0
1.00
Inherent value
09
0.9
0.95
Inherent
e e t value
a ue
00
22
4 4
3
5
Amplitude
of outputrise
signal
Temperature
/ K / K
1
6
6
レーザフラッシュ熱拡散率測定の概要
ザ ラッシ 熱拡散率測定の概要
• 熱拡散率: (T) = d2 / 
• 長さ・時間・温度の組立量
• 測定装置の校正(長さ、時間、温度)
SIトレーサブルな熱拡散率
• GUMに沿った不確かさ評価
• ISO 17025(JIS Q 17025)に沿った運営
Mode Mixer
Pulse
Laser
Optical fiber
Detector
PC
解析ソフトウエア
0
Vacuum
chamber
SI Units
Length
Frequency
Uniform Heating
熱損失低減
S
Sample
l
Voltage
A/D
Fixed point
Thermo couple
converter
Gauge Block
F
Function
ti
Generator
(Calibrated)
DMM
(Calibrated)
Thermocouple
(Calibrated)
DMM
Ice point
Amplifier
< Thickness >
Linear Gauge
< Time >
A/D Combater
< Temperature >
Thermocouple
Laser Flash system
Reference material (Sample)
Temperature
Time
より正確な測定
0
Linear
Gauge
Length
Infrared radiation
thermometer
高速応答、温度目盛(遅れ、非線形性の低減)
7
レーザフラッシュ熱拡散率測定の概要
ザ ラッシ 熱拡散率測定の概要
熱拡散率測定の不確かさ評価
<不確かさ要素>
Length:
1. 試料厚さの不確かさ:u1
Time :
2. サンプリング時間の不確かさ:u12
For LF:
3 放射計の応答速度の遅れ
3.
放射計の応答速度の遅れ・不確かさ:
不確かさ:u3
4. 有限幅のパルス加熱による不確かさ:u4
5. 不均一加熱による不確かさ:u5
6 熱損失効果による不確かさ:u6
6.
7. 定常温度のドリフトによる不確かさ:u7
8. 温度履歴曲線のデータ解析の不確かさ:u8
9. ゼロ外挿による解析の不確かさ:
外挿 よる解析の不確 さ u9
Temperature : 10. 試料温度測定の不確かさ:u10
u1~u9
熱
拡
散
率
u10
温度
<不確かさの合成>
• 組立量なので、各項目を相対不確かさで算出して合成
組立量なので 各項目を相対不確かさで算出して合成
• 温度依存性を利用して、 u10を熱拡散率の不確かさu10aに換算して合成
合成相対不確かさ:
合成相対不確
さ
2
u  u12  u22  u32  u42  u52  u62  u72  u82  u92  u10
a,
相対拡張不確かさ:
U  2u.
(coverage factor k=2 [ 95 % ] )
8
Contents
• NMIJにおける熱拡散率・熱伝導率の標準整備状況
熱拡散率 熱伝導率 標準整備状
• 熱拡散率・熱伝導率の標準に関する国際動向
• 熱拡散率RRについて
計量標準 おける熱物性分野 関係する組織
計量標準における熱物性分野に関係する組織
メートル条約
CGPM 【国際度量衡総会】
(General Conference on Weights and Measures )
関連国際機関
CIE, CIGRE, IAU, ICRU, IEC, IFCC, ILAC, IMEKO, ISO, IUPAC,
IUPAP NCSLI
IUPAP,
NCSLI, OIML,
OIML UNIDO
UNIDO, VAMAS,
VAMAS WHO
WHO, WMO,
WMO WTO
CIPM 【国際度量衡委員会】
(International Committee of Weights and Measures)
BIPM 【国際度量衡局】
(International Bureau of Weights
and Measures)
CC 【諮問委員会】
CCAUV,
CCEM
CCEM,
CCL,
WG1, WG2,
CCM,
WG3, WG4,
CCPR,,
WG5, WG6,
CCQM,
WG7, WG8,
CCRI,
WG9, TG-SI
CCT,
Thermophysical
CCTF
CCTF,
Quantities
CCU
NMI 【国家計量標準機関】and
【国家計量標準機関】
DI
・日本:NMIJ/AIST, NICT, CERI, JEMIC
・濠国:NMIA, ANSTO, ARPANSA
・中国:NIM
・韓国:KRISS
:
・ロシア:VNIIM, VNIIR, VNIIMS, ・・・
:
・独国:PTB, BAM, BVL, UBA
・仏国:LNE
・英国:NPL, LGC, NMO, TUVNEL
・伊国:INRIM, ENEA-INMRI
:
・米国:NIST, CANNON
・カナダ:NRC, TCC
:
・南ア:NMISA
南
:
RMO 【地域計量組織】
APMP【アジア太平洋計
量計画】
TC: TCAUV, TCEM,
TCFF, TCL, TCM, TCPR,
TCQM, TCQS, TCRI,
TCT, TCTF, TCMM
COOMET
【欧州・アジア国家計量
【欧州
アジア国家計量
標準機関協力機構】
EURAMET 【欧州国家
計量標準機関協会】
TC: ・・・TC-T
TC T ・・・
SIMT 【アメリカ大陸計量
システム】
AFRIMETS 【アフリカ内
計量システム】
赤字:熱物性WGがあるTC
10
CCT-WG9 測温諮問委員会 熱物性
熱物性WGの概要
概要
参加機関
NMIJ(JPN), LNE(FRA), NIST(USA), PTB(DEU), NPL(GBR), VNIIM(RUS),
KRISS(KOR), NIM(CHN), IMGC(ITA), CENAM(MEX), IPQ(PT)
これまでの活動
–
–
–
–
–
2003年から活動開始(初代Chair
003年から活動開始(初代C a Dr. Redgrove(NPL)
edg o e(
) 現在は
現在はDr. Baba(NMIJ)
aba(
J) )
Meeting 1回/年 程度(2013年は、10月開催予定)
熱物性分野の計量標準に関する議論(NMIの所有するActivity調査、サービスカテゴリー決定
話題: 断熱材
断熱材・固体材料の熱伝導率・熱拡散率、分光放射率、ガス熱量計…
固体材料の熱伝導率 熱拡散率、分光放射率、ガス熱量計… etc.
国際比較:International Comparison (2005-2012)
• 保護熱板法を用いた断熱材の熱伝導率測定 (Pilot: LNE)
• レ
レーザフラッシュ法を用いた固体材料の熱拡散率測定
ザフラッシュ法を用いた固体材料の熱拡散率測定 (Pilot: NMIJ)
• 固体の分光放射率測定 (Pilot: NIST)
* Thermal Conductivity 30
Int J.
Int.
J Thermophysics June 2012(online) に論文掲載。
に論文掲載
今後の予定
– CMC登録のシステム構築 (ex. Review Protocol作成)
– 国際比較(Key
国際比較(
or Supplementary comparisons)
– 関連するRMO国際比較のサポート
11
CCT-WG9 レーザフラッシュ熱拡散率測定
ラッシ 熱拡散率測定 国際比較
● 参加機関: 4機関
LNE(FRA), NIM(CHN), NMIJ(JPN), NPL(GBL)
● 測定試料: 2種類
Armco Iron, 等方性黒鉛
● 試料形状: 直径10 mm 厚さ1.0 mm – 4.0 mm
● 測定温度範囲: 300 K – 1200 K
● 測定結果:

d2
0
温度
変化
観測
Int.
d2
 0 .1388 
t1 / 2
温度変化
0 t1/2
 Time
1 2 10-4
1.2
2 5 10-5
2.5
Lab1(1)
Lab1(2)
Lab1(3)
Lab1(4)
Lab1(5)
Lab2(1)
Lab2(2)
Lab2(3)
Lab2(4)
Lab2(5)
Lab3(1)
Lab3(2)
Lab3(3)
Lab3(4)
Lab3(5)
Lab4(3)
Lab4(4)
Lab4(5)
fitting curve
2.0 10-5
1.5 10-5
1.0 10-5
Thermal diffusivity / m2s-1
Thermal diffusivity / m2s-1
<レーザフラッシュ法>
断熱真空下の平板試料について
表面を光でパルス加熱し
表面を光でパルス加熱し、
裏面の温度変化から、
厚さd方向の熱拡散率を得る。
5.0 10-6
400
600
800
1000
Temperature / K
1.0 10-4
8 0 10-5
8.0
6.0 10-5
4 0 10-55
4.0
2.0 10-5
Isotropic graphite
CCT-WG9 LF-Comparison
p
Armco Iron
p
CCT-WG9 LF-Comparison
0 0 100
0.0
200
Lab1(1)
Lab1(2)
Lab1(3)
Lab1(4)
Lab1(5)
Lab2(1)
Lab2(2)
Lab2(3)
Lab2(4)
L b2(5)
Lab2(5)
Lab3(2)
Lab3(3)
Lab3(4)
Lab3(5)
Lab4(3)
Lab4(4)
fitting curve
1200
1400
0 0 100
0.0
200
400
600
800
1000
1200
1400
Temperature / K
12
APMP-TCT 測温技術委員会の概要
測温技術委員会 概要
アジア太平洋計量計画(APMP)の測温技術委員会
・ Chair:Dr.
Chair:Dr Kim(KRISS)
Kim(KRISS), Vice chair: Dr.
Dr Ishii(NMIJ)
・ WG: SPRT & Fixed Point / Radiation Thermometry / Humidity /
Industrial Thermometers / Comparisons / Thermophysical properties
・ Meeting: 1回/年 (例年11月-12月)
熱物性WG (2010
(2010~))

–
–
–
活動
熱物性分野の計量標準に関する議論
Workshop: 2011年12月
年 月 at 神戸
神
国際比較 Supplementary comparison (実施中)
• APMP T.S-9 「レーザフラッシュ法を用いた固体材料の熱拡散率測定」
(Pilot: NMIJ)
• APMP T.S-10 「保護熱板法を用いた断熱材の熱伝導率測定」(実施中)
(Pilot: KRISS)
13
国際動向 ま
国際動向のまとめ:CCT-WG9およびAPMP-TCT
お
2003年
CCT-WG9
活動開始
2005年-2006年
Activity調査
S i Li
Service
Listt
2005年~2012年
国際比較 Pilot comparison
(熱伝導率 熱拡散率 分光放射率)
(熱伝導率・熱拡散率・分光放射率)
2010年
APMP TCT WG
活動開始
2013年(予定)
CMC登録への準備
R i
Review
P
Protocol作成
t
l作成
2011年~
2011年
国際比較 SC
(熱拡散率・熱伝導率)
CCT-WG9
CCT
WG9
・ 2003年に活動開始、2005年頃から国際比較(3件)を実施し2012年完了(結果は良好)
・ 取扱量(サービスカテゴリー)を決定
・ 次のステップへ移行中!(CMC登録に向けて取り組み, Key Comparison, …etc.)
APMP TCT WG
・ 国際比較(Supplementary comparison) 2件を開始
将来的に、
熱物性分野でもCMC(C lib ti and
熱物性分野でもCMC(Calibration
dM
Measurementt C
Capabilities)登録が可能になる見込
biliti )登録が可能になる見込
⇒ CIPM相互承認, 信頼性がきちんと評価された熱物性値の流通に期待
14
Contents
• NMIJにおける熱拡散率・熱伝導率の標準整備状況
熱拡散率 熱伝導率 標準整備状
• 熱拡散率・熱伝導率の標準に関する国際動向
• 熱拡散率RRについて
ラウ
ラウンドロビンテスト:
•
熱拡散率/熱伝導率 測定のラウンドロビンテスト
1. レーザフラッシュ法のラウンドロビンテスト
• JIS R1611改訂版の附属書を元にした精密測定
– インヒレントな熱拡散率を求める測定方法
– 不確かさ評価
• 試料:黒鉛(比較的熱拡散率が大きい材料)
• スケジュール: 2013年 2月末まで 参加者募集 (済)
2014年
年 4-5月
試料 布 測定開始
試料配布・測定開始
2014年 11月
測定結果返信
2. 熱拡散率・熱伝導率測定のラウンドロビンテスト
• 様々な材料の熱拡散率・熱伝導率を幾つかの測定方法で測定
– 測定方法:レーザフラッシュ法、周期加熱法、細線法、定常法…..
測定方法 レ ザフラ シ 法 周期加熱法 細線法 定常法
• 候補試料:セラミックス(マコール)、金属(SUS)、高分子材料(アクリル)
• スケジュール: 2013年2月末まで 参加者募集 (済)
2014年 夏以降
測定開始
レーザフラッシュ法のラウンドロビンテスト
ラッ
法 ラウ
– JIS R1611改訂版の附属書を元にした高精度測定
• インヒレントな熱拡散率を求める測定方法
– 一定温度で、パルス加熱強度を3段階以上変化させた測定
– 同一パルス強度で繰り返し2回以上
上記を、厚さが異なる試験片に対して行う。
• 不確かさ評価
– 不確かさ評価を試行(雛型は産総研で用意します。)
– 不確かさ要素:試料厚さ、熱拡散時間、温度 etc.
– 試料:黒鉛
• 基本的に、直径10
基本的に 直径10 mm円板 厚さ1.0~4.0
厚さ1 0~4 0 mmの3~4枚セット
– 測定条件
• 室温
まとめ
• NMIJにおける熱拡散率・熱伝導率の標準整備状況
– 熱拡散率
• 依頼試験(SIトレーサブル・インヒレントな値、不確かさ評価)
*2014年4月から黒色セラミックスも対称となる予定
• 認証標準物質 NMIJ CRM-5804a(旧NMIJ RM 1201-a)
– 熱伝導率
• 標準物質 NMIJ RM-1401a
RM 1401a
– 熱流密度標準
• 2014年度末までに開発完了予定で準備中
•
熱拡散率・熱伝導率の標準に関する国際動向
散
際 向
CCT-WG9及びAPMP-TCTにおいて、国際比較を実施中。
信頼性がきちんと評価された熱物性値の国際的な流通に期待。
信頼性がきちんと評価された熱物性値の国際的な流通に期待
•
熱拡散率RRについて
2014年4-5月に試料配布・測定開始予定。よろしくお願いいたします。
2013.2.1 固体熱物性クラブ
薄膜熱物性
計測標準研究部⾨
熱物性標準研究室
⼋⽊貴志
材料物性科
概要
新しい標準薄膜の開発状況について
 頒布中(RM1301-a):TiN膜700
頒布中(RM1301 ) TiN膜700 nm
 開発中:Mo⾦属薄膜400 nm
 TiNよりも1桁程度⼤きな熱拡散率
 膜厚をより⼩さく
薄膜材料の熱物性値の重要性
LSI
Power device
Lighting
Flat panel display
薄膜は、エレクトロニクス製品の基本材料です。
電気をためる、電気を流す、情報を記録する、光る、光を遮る、
などの機能はすべて薄膜材料をうまく使うことで発現します。
などの機能はすべて薄膜材料をうまく使うことで発現します
• 熱伝導率(熱エネルギーの流れ⽅)
• 熱拡散率(温度の伝わり⽅)
• ⽐熱容量(温度の上がり⽅)
熱物性がわか
れば、製品の発
熱や熱の流れ⽅
を計算すること
ができます。
4
パ
パルス光加熱サーモリフレクタンス法
加
(Rear Heating Front Detection)
(Rear Heating Front Detection)
時間分解能 = 測温用のレーザパルス幅→ピコ秒、ナノ秒
T
熱拡散の特性時間
:膜厚
f
:熱拡散率
熱拡散率
Pump pulse
Probe pulse
α大
α小
t
Thin film
0
d
Transparent substrate
x
バルク材料に対するレーザーフラッシュ法と同一の幾何学的配置
ザ
•
•
薄膜熱物性標準の概要
パルス光加熱サーモリフレクタンス法による薄膜の熱拡散率計測技術の普及
標準により実用測定器の信頼性を担保し、信頼できる薄膜熱物性データを供給
できる国内の仕組みを作る
できる国内の仕組みを作る。
Heat diffusion time
time, 
Pulse heating
d
Thin plates
10-2

Plate, Film
Bulk materials
熱拡散距離 / m
(≒試料厚さ)
Thermal diffusivity
10-44
10-3
d2

Thin films
10-66
10-5
10-88
10-7
高速レーザフラッシュ法
レーザフラッシュ法
標準物質
標準薄膜
RM1301-a
開発中標準機
新規開発中
M 薄膜
Mo薄膜
等方性黒鉛
熱拡散時間 / s
(熱拡散率 1×10-5 m2 s-1のとき)
100
10-2
10-4
10-6
10-8
10-10
10-12
パルス光加熱サーモリフレクタンス法
 薄膜の⽚⾯を瞬間加熱(ピコ秒〜ナノ秒).
 反対⾯の温度変化(温度履歴)をサーモリフレクタンス法で測定
 温度履歴曲線を解析し、熱拡散率(JIS1689)、界⾯熱抵抗(JIS1690)
を得る。
を得る
Film
Laser
pulse
t=τ
Transient
surface”
Transienttemperature
temperatureat
at“heated
“rear surface”
Tempera
aturerise,,arb.unit
arb.unit
Temperraturerise,
Temperature
12
1.2
14
1.0
12
0.8
10
0.6
8
0.4
6
0.2
0
42
2
0.0
0
‐0.2
0.0
0
000
0.0
0.2
0
022
0.2
0.4
0
044
0.4
0.6
0
066
0.6
time,t/

time,t/
Thickness
0.8
0
088
0.8
1.0
1
100
1.0
開発中 標準器
開発中の標準器
 ErファイバMLパルスレーザ(0.5
ps パルス間隔50 ns)を加熱と
ps,
TR測温に使⽤.
 ⾼精度信号源でレーザパルスを
ロック。パルス間隔のフルスケー
ク パル 間隔
ル ケ
ルで遅延が可能
1x2 fiber
coupler
Pump laser(RF)
1550 nm, 0.5 ps
Optical fiber
Collimator
PBS
EDFA
1/2λ
W.P. Collimator
140.3 kHz
Modulator
Pump laser
Sine, 19.9957 MHz
Optica
al fiber
Standard signal generator
Probe laser
775 nm, 0.5ps
SHG
Thin film
Lock-in amp.
Differential photo
detector
EDFA
Probe laser
標準薄膜
名称
薄膜
膜厚
熱拡散時間
熱拡散率
RM1301-a
(2009FY~)
窒化チタ
ン(TiN)
*700 nm
139.7 ns
±6.9 ns
(k = 2)
*3.3×10-6 m2s-1 10 mm×10
mm/石英ガラス
開発中*
モリブデ
ン(Mo)
400 nm
6 ns
2.5×10-5 m2s-1
*数値は参考
赤字は校正値
外形/基板
1.5 in.(38.1
mm)径ウェハ/
石英ガラス
開発中M 薄膜
開発中Mo薄膜
 大型マグネトロンスパッタリング法によりMo薄膜を作製。
大型マグネトロンスパッタリング法によりM 薄膜を作製
<基板>
信越化学製VIOSIL合成石英
サイズ 1 5インチ径(約38 1 mm)×0.5
サイズ:1.5インチ径(約38.1
) 0 5 mm
<薄膜>
Mo薄膜400 nm
中央にラインパタ ン(左写真とは異なる)
中央にラインパターン(左写真とは異なる)
Phase-Baseline
6
5
Phase /degree
4
3
1-6
1-11
2-6
2-11
3-6
3-11
4-6
4-11
2-6re
2
1
0
-1
1
*事前テストサンプル
0
2e-9
4e-9
6e-9
Time /s
9サンプルを抜き出した測定データ
8e-9
Mo薄膜の熱拡散率
 9サンプルを抜き出した事前評価
プ
熱拡散率
膜厚
4.10x10-7
Thickness, m
4.05x10-7
4.00x10-7
Mo 400nm
Stddev
Mean
3.95x10
3
95 10-77
3.90x10-7
Therm
mal diffusivity, m s
2 -1
3.0x10-5
2.8x10-5
2.6x10-5
2.4x10-5
Mo 400
M
400nm
Stddev
Mean
2.2x10-5
2.0x10-5
1-6 1-11 1-19 2-6 2-19 3-6 3-19 4-6 4-11
1-6 1-11 1-19 2-6 2-19 3-6 3-19 4-6 4-11
Wafer No.
Wafer No.
平均:400.5 nm
標準偏差:2.5 nm
平均:2.72×10-5 m2s-1
標準偏差:0.04×10-5 m2s-1
今後、経年劣化の検討(1年間)を実施し、2014年度に頒布を予定。
まとめ
新たにMo薄膜の標準物質を開発中です。2014年
新たに 薄膜 標準物質を開発中 す
年
度に頒布開始予定。
測定装置の校正だけでなく、⼤学・研究機関に
おいての測定技術開発を⾏う際のベンチマーク
にも。
標準薄膜・薄膜熱物性の評価・規格整備の活動などにご興味をお持ちい
ただいた場合には、お気軽に固体熱物性クラブ窓⼝までご連絡ください。
(独)産業技術総合研究所
(独)産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJ)
計量標準総合センター(NMIJ)
NMIJ計測クラブ事務局
NMIJ計測クラブ事務局
〒305-8563
〒305
茨城県つくば市梅園1-1-1
〒305 8563
〒305-8563
8563 茨城県つくば市梅園1
茨城県つくば市梅園1 11 11 中央第3
茨城県つくば市梅園1-1-1
中央第3
TEL:029-861-4975
FAX:029-861-4190
TEL:029-861-4975 FAX:029-861-4190
E-Mail
E-Mail [email protected]
[email protected]
固体熱物性標準整備の現状と開発計画
-比熱容量-
容
(独)産業技術総合研究所
産 技
研究所
計測標準研究部門 材料物性科 熱物性標準研究室
阿部陽香
1
NMIJ比熱容量標準の整備状況
NMIJ
比熱容量標準の整備状況
パルスチューブ冷凍機式
断熱型熱量計
入力補償型示差走査熱量計
(入力補償型DSC)
依頼試験(2006年)
依頼試験(2008年)
比熱容量標準物質(2011年)
熱流束型示差走査熱量計
(熱流束型DSC)
依頼試験(2013年)
熱伝導率標準物質の比熱容量
評価(2009年)
NMIJ CRM 5806-a
NMIJ RM 1401-a
50K
300K 350K
Temp.
900K
1600K
2
比熱容量 依頼試験(低温)
◆校正装置 パルスチューブ冷凍機式断熱型熱量計
◆校正範囲 制限なし (温度 50 K ~350 K )
◆参照標準 比熱容量標準物質(NISTSRM720,
比熱容量標準物質(NISTSRM720 合成サファイア)
◆校正方法 断熱法による比熱容量測定
◆相対拡張不確かさ
0.6 ~ 8.2 % (k=2)
◆測定対象条件 ・比熱容量校正用の固体材料であること。
・サンプルセルに収まる形状であること。
◆サンプルセル
・材質:無酸素銅
・容積:4.16 cm3
・総質量:18
総質量:18.8
8g
・シール材:インジウム(0.5 mm, 約0.1 g)
・温度計:白金抵抗温度計(Minco社製 S1059)
・ヒーター:ストレインゲージ
・試料封入:ヘリウムガス
3
NMIJ比熱容量認証標準物質
NMIJ
比熱容量認証標準物質
Si_A1
Si_A2
Si_A3
Si_A4
0.8
-1
cp / J K g
-1
0.6
0.4
02
0.2
NMIJ CRM 5806-a
Material:
M
t i l Single-crystalline
Si l
t lli silicon
ili
Size: 5 mm×1.0 mm,
Certified value:Specific heat capacity
Temperature
p
range
g :50-350 K
0
50
100
150
200
250
300
350
Temperature / K
T (K)
50
100
150
200
250
300
350
-1
cp / J K g
0.0786
0 2 83
0.2583
0.4253
0.5562
0.6480
0.7119
0.7568
-1
-1
U/JK g
0.0032
0 0049
0.0049
0.0065
0.0075
0.0080
0.0081
0.0081
-1
4
比熱容量 依頼試験(高温
依頼試験(高温・
・超高温
超高温)
)
◆校正装置
入力補償型示差走査熱量計 Diamond
Di
d DSC (P
(Perkin
ki El
Elmer 社製)
熱流束型示差走査熱量計 DSC404C (NETZSCH 社製)
◆校正範囲 制限なし(温度 300 K ~900 K )
制限なし(温度 900 K ~1600 K )
◆参照標準 比熱容量標準物質(NISTSRM720, 合成サファイア)
◆校正方法 JJIS
S R 1672
67 「長繊維強化セラミックス複合材料の示差走査熱量法
長繊維強化セラミックス複合材料の示差走査熱量法
による比熱容量測定方法」を準用した校正方法
◆相対拡張不確かさ 1.8 %~2.1 % (k =2)
3 9 %~6.9
3.9
%~6 9 % (k =2)
◆測定対象条件 ・比熱容量校正用の標準試料となる固体材料であること。
・形状は直径5 mm~5.5 mm、厚さ0.9 mm~1.1 mmの円盤状で
円板の両面は平坦かつ平行であること。
・窒素又はアルゴンガス雰囲気中でも熱的・機械的・化学的
に安定であり、試料容器であるアルミナとも反応しないこと。
◆サンプルパン
アルミナ (直径約6 mm, 高さ約1.6 mm)
5
示差走査熱量測定
物質及び基準物質の温度を調整されたプログラムに従って変化させながら、その
物
物質と基準物質に対する単位時間当たりの熱エネルギーの入力差を温度の関数
基準物
す 単位時
熱
ギ
差を 度
数
として測定する技法。
温度制御部
試料部
試料部
R
S
Ts , TR及び∆T
び 測定回路
定 路
S
R
測温部
加熱炉部
●
●
測温部
温度制御部
●
熱抵抗体
Ts 及び∆T 測定回路
データ処理部
加熱炉部
熱量補償回路
制御システム部
データ処理部
熱流束型DSC(Heat Flux DSC)
試験側と参照側との温度差が単位時間あたりの熱エネ
ルギーの入力差に比例.
制御システム部
入力補償型DSC(Power Compensated DSC)
試料側と参照側との間に⽣じた温度差が常にゼロになるように
両者に加えた単位時間当たりの熱エネルギーの⼊⼒差を測定.
6
DSCによる比熱容量の算出(
DSC
による比熱容量の算出(JIS
JIS R 1672)
1672)
等温
昇温
等温
Tem
mperature T / K
T1
T
T = T0 + t2 – t1)
 Heating rate
ct T  
tc  bc mc

 cc T 
cc  bc mt
T0
Time / min
H
Heat
flow raate  / W
cc
tc
bc
t0
t1
t2
Time / min
t3
ct (T ) : 温度 T での対象試料の比熱容量(J K-1 g-1)
cc (T ) : 温度 T での基準物質の比熱容量(J K-1 g-1)
tc - bc : 空容器測定を基準とした対象試料測定の
DSC曲線の信号変位 (mW)
cc - bc : 空容器測定を基準とした基準物質測定の
DSC曲線の信号変位 (mW)
mt : 対象試料の質量 (g)
mc : 基準物質の質量 (g)
t4
7
CRM5806--a を使った比熱容量測定
CRM5806
◆Sample
◆Calibration Materials (RM)
Material : Alumina
((Traceable to NIST SRM 720 )
Size :5 mm × 1 mm
Mass: 81.65 mg
- Alumina
Molybdenum
Heat Flow / mW
Material : Molybdenum
(NIST SRM781D2)
Size :5 mm × 1 mm
Mass: 203.60mg
CRM5806a
Blank
Material : Single-crystalline silicon
(NMIJ CRM5806-a)
Size :5 mm × 1 mm
Mass: 46.90 mg
Relative Expanded Uncertainty: 1 % at RT
Time (min)
◆Measurement : Stepwise-scanning method
◆Heating rate: 20 K / min
◆Purge gas: Nitrogen 20 ml / min
◆Sample pan : Aluminum
◆Temperature: 270 K - 340 K
8
比熱容量標準のまとめ
◆ 断熱法による比熱容量標準(温度範囲:50 K~350 K)
– 依頼試験による標準供給を実施中
– 比熱容量認証標準物質を頒布中
◆ 示差走査熱量法による比熱容量標準(温度範囲:300 K~900 K)
– 依頼試験による標準供給を実施中
◆ 示差走査熱量法による比熱容量標準(温度範囲:900 K~1600 K)
– 依頼試験による標準供給を今年度から開始
– 相対拡張不確かさは3.9~6.9 % (k = 2)
◆ 比熱容量標準物質CRM5806-aを用いたDSC測定
– 不確かさ評価の簡便化
– 不確かさの低減
9
2014年2⽉7⽇
H25年度固体熱物性クラブ全体会合
分散型熱物性データベース進捗報告
(独)産業技術総合研究所 計測標準研究部⾨
材料物性科 熱物性標準研究室
⼭下雄⼀郎
物質・材料の開発と利⽤を結ぶ物性データベース
⾦属・合⾦
セラミックス
ガラス
半導体
⾼分⼦
物質・材料情報のハブ
物質・材料の利⽤
物性データベース
物質・材料の開発
エネルギー
エレクトロニクス
プロセス制御
環境・建築・⽣活
⾷品・医療・バイオ
<⽬的>固体、⾼温融体、流体の信頼性の⾼い熱物性デー
タを広範に収録するとともに、利⽤の促進を図り、科学技
術の知的基盤整備に寄与する。
2
分散型熱物性DB概略
• 同⼀プログラムで動作する複数の熱物性DBを閲覧システムから
シームレスに利⽤可能
• Web上で無償にて提供
• データの体系的整備を機関横断的に実施
(各機関が得意な分野に集中し、データ整備を担当)
•熱物性データの
体系的整備
•機関横断的連携
の実施
3
ユーザーインターフェース
⽤途に応じた2つのインターフェースを準備
•TPDS-web –ウェブブラウザ⽤閲覧システム -グラフ上のデータ⽐較、 横断検索、物質名による簡易検索
•InetDBGV –専⽤ブラウジングアプリケーション(フリーウェア)-100件程度のデータを1グラフに描画、相関関係を利⽤した物性推算等-
TPDS-web
InetDBGV
4
コンテンツ提供状況
流体=7,477件、固体&融体=3,710件、
薄膜=281件
合計10,928件の熱物性データを収録
5
産総研 物質・材料ポータルサイトとの連携
物質・材料データのワンストップサービス提供プラットフォーム
基礎物理データ
CODATA、IUPAC
推奨値等の⾼信頼
データ
AIST材料データ
産総研研究者と
連携
データ連携
SDBS、熱物性DB等との横断検索
オープンデータ
周期律検索、物性/特性検索、物質名検索
SDBS
NMR、MS、Raman、
ESR等
熱物性DB
熱物性、電気特性、
光学特性等
<材料ポータル特徴>
•ポータルを介したDB間のデータ連携
•周期律表をベースとした材料検索
•元素グループに対応した検索
•材料特性の代表値を収録
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まとめ
・コンテンツ整備
>約3,600物質・材料について合計10,928件の
熱物性データを公開(グラフ1本が1件に対応)
・システム開発
>Webブラウザ版閲覧システム、デスクトップアプ
リ版InetDBGVを提供中。
>産総研物質・材料ポータルを介した他DBとの
データ連携機能を開発中
7
参考資料
分散型熱物性データベースポータル
(独)産業技術総合研究所が開発・運営(無料)
http://tpds.db.aist.go.jp/
分散型熱物性データベースTPDS-web
Web版閲覧システムTPDS-web
http://tpds.db.aist.go.jp/tpds-web/
熱物性標準研究室
http://www.nmij.jp/~mprop-stats/thermophys/homepage/index_j.htm
産総研物質・材料データバンクポータル
http://materialportal.db.aist.go.jp/
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