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PDF形式 - 国土交通省
【様式1】-3
道路政策の質の向上に資する技術研究開発
【研究状況報告書(FS研究対象)】
氏
①研究代表者
所
名 ( ふりがな)
なからい
半井
属
役
広島大学大学院
けんいちろう
健一郎
工学研究院
職
准教授
名称 非破壊試験を用いたコンクリート構造物の表層品質検査システムの構築
②研究
テーマ
政策 [主領域]領域8:道路資産の保全
公募
領域 [副領域]領域4:コスト構造改革
タイプ
③研究経費( 単 位:万 円 )
タイプⅡ
ハード分野
平成26年度
※受託金額を記入。
990万円
(研究代表者以外の主な研究者の氏名、所属・役職を記入。なお、記入欄が足りない場合は適
宜追加下さい。)
④研究者氏名
氏
岸
利治
名
所属・役職
東京大学生産技術研究所・教授
酒井
雄也
東京大学生産技術研究所・助教
舌間
孝一郎
前橋工科大学・准教授
上田
洋
鉄道総合技術研究所・室長
西尾
壮平
鉄道総合技術研究所・副主任研究員
⑤研究の目的・目標 (提案書に記載した研究の目的・目標を簡潔に記入。)
本研究では,これまで直接的な検査が不可能とされてきた,コンクリート構造物の耐久性を支配
する表層品質を,非破壊試験の組み合わせによって定量的かつ合理的に評価する新たなシステムを
構築し,耐久的な新設道路構造物の建設に資することを目的とした.
本目的を本格研究で確実に達成するためのFS研究として,次項を本年度の目標とした.
(A)新設コンクリート構造物の表層品質に関する基礎データの収集と分析
(B)耐久性ポイントを活用した表層品質の評価の検証の試行
これにより,簡易法の有効性を具体的に示すとともに,3段階の検査システムの構成を明確化し,
次年度以降の判定基準を含む試験方法の確立の準備とする.
⑥FS研究の結果
A.新設コンクリート構造物の表層品質に関する基礎データの収集と分析
1.詳細法における標準的判定基準の決定に向けた基礎データの収集と分析
本研究で詳細法のひとつとして位置付けた表層透気試験(トレント法)を用い,国内の新設構造物を対
象に面的に複数のデータの取得を行った.FS研究として,群馬県および国土交通省中国地整の協力を
得て,これまでに計9現場の構造物の測定を実施し,本格研究において国内基準値を検討するための基
礎データの収集と分析を行った.手法の有効性を示し,FSとしての目的を十分に達成した.
測定は,スイス標準規格SIA 262/1:2013を参考に,材齢約3ヵ月で行った.表面水率が5.5%を超えて乾
燥が十分ではなく測定条件を満たさないものを除くと,これまでに,群馬県では7現場17か所(PC上部工
4,RC上部工4,下部工4,ボックスカルバート5),中国地整では1現場4か所(RC下部工1,ボックスカルバ
ート3)の計測を行った.基本的には高さ1m程度の位置で6点の計測を行い,対数平均値を求めた.1箇
所6点の測定には1時間を要したが,平均化処理により精度を向上できることを確認した.
図-1.1に,今回の測定結果を,スイスでの計測値(Jacobs & Hunkeler, 2007)に追加して示す.ここで,
一部のコンクリートのW/Cについては情報照会中であるが,暫定的に概算値を示した.今回得られたRC
構造物の透気係数の平均値は0.17×10-16m2となり,5段階評価の並(moderate),スイスの平均透気係数
から逆算されるW/Cは45%となり,RC構造物としては比較的良好な品質であると評価できた.暫定基準値
としては,スイス規格を準用できる可能性がある.一方で,最大値は4.4×10-16m2と大きく,また,構造物に
よって大きな品質差があることが示された.すなわち,耐久性の観点からは表層品質に大きな差異がある
ことが確認され,表層品質の検査の確立を目指す本研究の重要性が示された.
図-1.2には,2現場のボックスカルバートの内壁で行った測定高さの検討結果を示す.いずれにおいて
も最下段や上段の一部において,透気係数が大きくなる傾向があった.最下段での締固めの困難さや上
段打込み途中での昼食休憩時の作業中断が影響している可能性が考えられた.研究項目Bにおける施
工要因の根拠・検証データとして,本手法の測定結果が活用できることを示した.
群馬県内
中国地整
40
50
BB_3M
3000
60
測定高さ(mm)
30
3500
OPC_3M
2500
2000
1500
1000
500
0
0.001
0.01
0.1
1
透気係数(x10‐16m2)
図-1.1 透気係数と水セメント比の関係
図-1.2 測定高さと透気係数の関係
<引用文献>Jacobs, F and Hunkeler, F: Air permeability as a characteristic parameter for the quality of cover
concrete, An International Conference in honour of Prof. A. Long and Prof. J. Bungey, Concrete Platform 2007
2.簡易法における試験方法の確立に向けた基礎データの収集と分析
表層品質を評価するための簡易法(主に散水試験)を対象に,1次検査手法としての活用を目指し,結
果への影響要因を検討するための測定を行った.簡易法としての散水試験の有用性を確認するととも
に,検査手法としての確立に向けた課題を具体的に抽出でき,FSとしての目的を十分に達成した.
館林に新設されたボックスカルバートおよび附属試験体(詳細は後述)および広島大学で作製した室
内試験体において,表層透気試験とあわせて散水試験を実施し,両者の関係を分析した.表層透気試
験の1箇所6点の測定に対して,散水試験では,24点または48点の計測が可能であった.図-2.1は,測定
された透気係数と流下までの散水回数の関係である.館林の現場計測および大学での室内試験のそれ
ぞれでは両者に高い相関が確認され,簡易法としての有効性を示した.ただし,相対評価ではなく,数値
そのもので評価を行うためには,試験体種別ごとに異なる近似線が得られた要因の分析が必要である.
館林の現場では,散水試験の結果に及ぼす影響要因の分析も行った. まず,2材齢での計測を行
い,脱型後に気中暴露した試験体については,1か月から3か月の間に,表面水率が大きく減少して散水
回数が増加することを確認した(図-2.3).また,附属試験体の作製時に,新品および転用3回目のコンパ
ネを型枠として用いて両者の比較を行い,今回の測定では型枠の転用回数の影響は大きくないことを確
認した(図-2.3).
なお,現場での実務者からのヒアリングより,現場の品質管理への導入の期待が高いことを確認した.
20
BB_1M
OPC_1M
16
BB_3M
OPC_3M
14
室内試験
※散水回数の
上限値は20回
16
12
10
y = 43.801x + 2.5163
R² = 0.6831
8
6
4
2
1日脱型
7日脱型
14
12
10
BB_1M
5日脱型
8
OPC_1M
6
BB_3M
4
y = 3.0947x + 1.7927
R² = 0.8092
0
0.001
※散水回数の
上限値は20回
1日脱型
18
散水回数(回)
18
封緘養生
封緘養生
OPC_3M
2
封緘養生
封緘養生
0
0.01
0.1
1
10
2.5
3.5
4.5
透気係数(x10‐16m2)
20
80
平均値
最小値
最大値
標準偏差
平均値
最小値
最大値
標準偏差
15
散水回数(回)
70
60
50
40
30
10
5
20
10
0
0
BB_1日脱型
(転用3回目の型枠面)
6.5
図-2.2 表面水率と散水回数の変化
100
90
5.5
表面水率(%)
図-2.1 散水回数と表層透気係数の関係
散水回数(回)
散水回数(回)
20
BB_1日脱型
(新品の型枠面)
BB_封緘養生
(転用済みの型枠面)
BB_封緘養生
(新品の型枠面)
図-2.3 型枠に用いたコンパネの転用回数が散水試験に及ぼす影響
7.5
3.採取コアにおける試験方法の基礎的検討とデータの収集
3.1 吸水試験方法の検討
最終検査としての採取コアを用いた吸水試験手法を確立するため,まず,室 内 吸 水 試 験 方 法 の検
討を行った.すでに規格化 されている試験 を収集し,表 -3.1に示 すように比較分析 を行った.その
うえで,① ASTM規格を中心 に,② RILEM基準 ,④BS規 格を具体的 に検討し,ASTM規格 による
吸 水 試 験 を採 用 することとした.現 時 点 では,直 径 100mmの試 験 体 を中 心 とした検 討 に留 まって
おり,当初に開発目標とした径コアの吸水試験については検討途上にある.試験手法の開発の方
向性は明らかになったことから,FS研究の目的はおおむね達成されたと考える.
表-3.1 コンクリートコアまたは試験体等の吸水試験の例
試験名
①
ASTM
Measurement
Absorption
of
of
供試体寸法の標準
前乾燥方法の概要
吸水試験方法の概要
C1585-13:
直径100m,厚さ 50mm の円
50℃,80%RH にて 3 日間の乾燥。その後,
下面からの鉛直上向き吸水。側面はシ
Rate
of
柱試験体
23℃にて 15 日間の密封。(内部相対湿度が
ール,上面はカバー。6 時間までの初
Water
by
50%程度で平衡となり,実構造物における下限
期吸水速度係数に加え,その後 9 日ま
値とほぼ一致)
での 2 次吸水速度係数を算出.
40℃にて,14 日間の乾燥。
下面からの鉛直上向き吸水。シールは
Hydraulic Cement Concretes
②RILEM CPC11.2: Absorption
角柱の一辺または円柱の直
of water by capillarity (暫定基
径が 100mm以上,高さは一
準)
辺または直径の 2 倍以上
③
RILEM
TC116-PCD:
Permeability of Concrete as a
なし。
直径150m,厚さ 50mm の円
50℃にて,あらかじめ設定した質量減少量
下面からの鉛直上向き吸水。側面はシ
柱試験体
(20℃,75%RH に相当)が得られるまで乾燥。
ール,上面はカバー。
その後,50℃にて 27 日間(または 14 日間)の
Criterion of its Durability
密封。
④ BS 1881-122: Method for
直径 75mm,長さ 75mm
乾燥炉にて 72 時間の乾燥。その後,室温にて
水中に完全浸漬。
24 時間の密封。
determination of water absorption
⑤JIS A 1404「建築用セメント防
40mm×40mm×160mm ( モ
水剤の試験方法」
ルタル)
80℃で一定の質量になるまで乾燥
下面からの鉛直上向き吸水。
(1) 円柱供試体を用いた吸水試験の比較検討
比 較 試 験 のため,直 径 100mm×高 さ200mmの円 柱 供 試 体 (高 炉 セメントB種 ,W/C=50%)を広
島 大 学 で作 製 した.養 生 条 件 は3水 準 を設 定 し,材 齢 1日 ,7日 ,または28日 に脱 型 後 ,いずれも
室内にて気中暴露とした.材齢90日程度で吸水試験前の乾燥を行った後 ,それぞれの吸水試験
を開始した.なお,ASTM規格では乾燥前に高さを50mmに切断した.
各 吸 水 試 験 の 前 に 実 施 し た 乾 燥 処 理 後 の 供 試 体 の 単 位 体 積 質 量 は , ASTM 規 格 の
2.21×10 3 kg/m 3 に対 し,BS規 格 では2.20×10 3 kg/m 3 とほぼ同 程 度 の値 になったが,RILEM基 準 で
は,2.27×10 3 kg/m 3 とやや大きな値となり,寸法や乾燥温度・時間の影響が確認された.
各 吸 水試 験の吸 水 量 と時 間 の平方根 の関 係 から得 られた吸 水 速度 係数 を図 -3.1に,一 例 とし
て,ASTM規 格 における吸 水 量 の経 時 変 化 を図 -3.2に示 す。吸 水 速 度 係 数 については,吸 水 表
面 積 あたりとした.いずれの試 験 においても,高 い相 関 によって吸 水 速 度 係 数 が算 出 できた.ま
た,養 生 期 間 が長 いものほど吸 水 速 度 係 数 が小 さくなり,養 生 条 件 の違 いが評 価 された.中 でも
ASTM規格による測定結果が最も明確に養生の違いを検出した.これは,相対的に大きな寸法の
供試体を乾燥させるRILEM基準やBS規格では,内部の含水状態が不均一であることや高温によ
るマイクロクラックなどの発生が原因であると考えられた.このため,本研究では,ASTM規格による
手法をベースにすることに決定した.
(2) 吸水試験による水分供給が吸水速度係数に与える影響
本 研 究 では,ASTM規 格 に定 められた事 前 の飽 水 処理 を行 わずに計測 を行 った.そこで,同 じ
供 試 体 を用 い計 3回 の繰 返 し吸 水 試 験 を行 い,吸 水 試 験 中 の水 の供 給 の影 響 を検 討 した.吸 水
試 験 前後 での供 試 体 の単 位 体積 質量 の変 化 を図 -3.3,初 期 吸 水速 度係 数 の変化を図 -3.4に示
す。28日 脱 型 と養 生 を十 分 に行 った供 試 体 については,吸 水 試 験 回 数 に関 わらず,試 験 前 後 の
質 量 および吸 水 速 度 係 数 にほとんど変 化 がなく,吸 水 試 験 の再 現 性 が確 認 された。一 方 ,1日 お
よび7日脱 型の供 試体 については,吸 水試験 の繰 り返 しによって,試験開 始前 の質量 が増加 する
とともに,吸水速度係数が小さくなる傾向がみられた。養生が不十分な場合には,吸水試験におけ
る水 の供 給によって,セメントの水 和反 応 が追加的 に生 じたためと推 察できる。ただし,1日脱型の
ように極 端 に養 生 が不 足 した場 合 には,水 分 供 給 による改 善 効 果 は限 定 的 であった.よって,養
生 の良 否 を含 めた施 工 を評 価 するためには飽 水 処 理 をしない方 が良 いと考 えられる.なお,本 結
果は,追加養生を行った場合の品質改善の程度を評価するものとしても活用できる.
40.0
25
7日脱型
28日脱型
35.0
20
30.0
10
5
y = 0.018x + 13.822
R² = 0.90
20.0
15.0
y = 0.051x + 4.013
R² = 0.99
10.0
5.0
0.0
0
ASTM規格 (初期)
図-3.1
RILEM基準
200.0
BS規格
吸水速度係数の比較
図-3.2
2.20
y = 0.014x + 6.933
R² = 0.98
1日脱型
7日脱型
y = 0.037x + 3.243
R² = 0.98
0.0
28日脱型
400.0
600.0
√時間 (s1/2)
800.0
1000.0
ASTM規格による吸水量の経時変化
0.18
1日養生
7日養生
28日養生
2.15
吸水速度係数 (g/s1/2)
単位体積質量(x103kg/m3)
y = 0.003x + 35.078
R² = 0.90
y = 0.151x + 3.298
R² = 0.99
25.0
15
質量増加量 (g)
吸水速度係数(g/m2/s1/2)
1日脱型
2.10
2.05
2.00
0.16
1日脱型
0.14
7日脱型
0.12
28日脱型
0.1
0.08
0.06
0.04
0.02
0
1
1.95
1回目(前) 1回目(後) 2回目(前) 2回目(後) 3回目(前) 3回目(後)
図-3.3
繰返し吸水試験による質量変化
図-3.4
2
吸水試験回数 (回)
3
繰返し試験による吸水速度係数の変化
4.各種表層品質評価手法の相互比較
4.1 室内試験による検討
1次 検 査 (散 水 試 験 による簡 易 法 ),2次 検 査 (表 層 透 気 試 験 による詳 細 法 ),3次 検 査 (ASTM
C1585-13によるコアの吸水試験)の3段階システムの成立性を検討するため,室内試験により,3手
法 による測 定 結 果 の相互 比 較を行った.ブリーディングによる品 質 変動やコアの小 径 化 など,シス
テム構築のための課題を明確にできたことから,FS研究としての目的はおおむね達成された.
測定対象は,700×700×200mmの壁状供試体(高炉セメントB種,W/C=50%)で,養生を3水準
とし,材齢1日,7日,28日の脱型後に室内で気中暴露し,材齢120日程度で計測を行った.なお,
測 定 高 さの影 響 が無 視 できなかったことから,上 段 と下
20
段の2水準の高さに分けて平均値を算出した.
18
散 水 試 験 で得 られた散 水 回 数 と表 層 透 気 試 験 で得
は,図-2.1でも示 したように,両 者 の高 い相 関 が確 認 で
きた.ここでは特 に,上下 の品質 の差 異 についても同様
散水回数(回)
られた表層透気係数の関係を図-4.1に示す.全体として
試験体上段
16
試験体下段
14
12
10
8
6
4
に評価されることを確認した.一方,標準コア供試体(直
2
径 100mm)を用 いた吸 水 試 験 から得 られた初 期 吸 水 速
0
0.001
0.01
図-4.1
気 試 験 の方 がより顕 著 な影 響 を受 けた.表 層 透 気 試 験
(トレント法)ではダブルチャンバー法によってスキンの巻
き込 み空 気 の影 響 を低 減 しているものの,完 全 ではな
く,ごく表 層 の脆 弱 層 が影 響 したと考 えられた.鉄 筋 を
標準コアの吸水速度係数(g/s1/2)
定 高 さごとには高 い相 関 を示 したが,全 データを対 象 と
試 験 では,ブリーディングの影 響 程 度 が異 なり,表 層 透
y = 0.0601x + 0.032
R² = 0.9902
0.08
y = 0.0058x + 0.0517
R² = 0.2595
0.06
0.04
と標準コア供試体の係数との比較を示した.小径コアの
結 果 は16倍 することによって,供 試 体 寸 法 の違 いを考
慮 した.両 者 には相 関 がほとんどなく,多 くの試 験 体 で
は小径コアの吸水速度係数が大きくなった.これは前乾
燥 を同 一 条 件 で行 ったために小 径 コアの方 が乾 燥 した
0.02
試験体下段
0
0.001
0.01
0.1
1
10
透気係数(x10‐16m2)
図-4.2
吸水速度係数と透気係数
0.1
試験体上段
0.08
試験体下段
0.06
0.04
0.02
0
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
小径コアの吸水速度係数(g/s1/2)
ためであり,ASTM規 格 を小 径 コアに準 用 するためには
乾燥条件の見直しが必要であることが明らかになった.
y = 0.0089x + 0.0392
R² = 0.9817
試験体上段
標準コアの吸水速度係数(g/s1/2)
図-4.3には,小 径 コア供 試 体 から得 た吸 水 速 度 係 数
10
散水回数と透気係数
吸水速度係数がより直接的な物性値であるので,ブリー
験の測定結果の評価には注意が必要と考えられた.
1
0.1
保護するかぶりコンクリートの物質移動性評価としては,
ディングによる品 質 変 動 が大 きい場 合 には,非 破 壊 試
0.1
透気係数(x10‐16m2)
度 係 数 と表 層 透 気 係 数の関 係 (図-4.2)については,測
すると相関が低かった.すなわち,表層透気試験と吸水
y = 3.0947x + 1.7927
R² = 0.8092
図-4.3
吸水速度係数とコア寸法
4.2 実構造物および附属試験体による詳細検討
群馬県発注のボックスカルバートおよび附属試験体(表-4.1,写真-4.1~3)に関して,簡易法(散
水 試 験 ,流 水 試 験 ),詳 細 法 (表 層 透 気 試 験 ,表 面 吸 水 試 験 ),コアの吸 水 試 験 を実 施 し,各 試
験 手 法 によって計 測 される表 層 品 質 の比 較 分 析 を行 った.耐 久 性 評 価 を目 的 とした各 種 非 破 壊
試験の測定値間には相関があることが確認され,複数の手法を組み合わせたシステム構築が可能
であることを示したが,コアの吸水試験は準備中であり,FS研究としての目的達成は途上である.
図-4.3には,計測した全データの平均値に対する各測定値の比を示す.図-4.4(左)の附属試験
体では,物質移動抵抗性の観点からは,養生期間が長くすることによって表層品質が向上すること
が,各手法によって概ね良好に検出をすることができた.また,いずれの養生においても,OPCの方
がBBよりも表 層 品質 の測 定 値 が良くなった.一方 で,テストハンマーで計 測 した反発 度 はほとんど
変 化 しておらず,養 生 の違 いは力 学特 性 にはほとんど影 響せず,耐 久性 への影 響が大 きいことが
明 確 に示 された.今 後 ,含 水 状 態 を制 御 した室 内 吸 水 試 験 や細 孔 構 造 分 析 によって,非 破 壊 試
験 結 果 の分 析 を行 う.図 -4.4(右 )の実 構 造 物 については,シートによる封 緘 養 生 を継 続 中 で表 面
水率が平均で5.9%と高く,養生終了後にあらためて詳細な調査を行う必要があるが,同一養生条
件(シートによる封緘養生)の附属試験体と同程度の高い表層品質であることが示された.図-4.5
表-4.1
現場
表層品質の測定を行った実構造物および附属試験体の概要
呼 び
セメント
水セメント比
単位水量
強度
種類
(%)
(kg/m )
3
分割11
24
BB
52.5
159
分割12
24
N
55.0
162
附属試験体
(ボックスカルバート)
(縦1500×横1500×厚さ400/600mm)
厚さ400mm,2ブロック,
1 日
7 日
1日脱型後からシー
シート封緘養生
脱型
脱型
トによる封緘養生
厚さ600mm,3ブロック,
1 日
5 日
1日脱型後からシー
シート封緘養生
脱型
脱型
トによる封緘養生
写真-4.2 附属試験体
8
8
7
7
6
全体平均値に対する比
全体平均値に対する比
写真-4.1 施工状況
実構造物
5
4
3
2
1
6
5
4
3
2
1
0
透気係数
図-4.4
写真-4.3 ボックスカルバート
散水回数
流下距離
水位低下量
BB_封緘養生
BB_7日脱型
BB_1日脱型
OPC_封緘養生
OPC_5日脱型
OPC_1日脱型
反発度
0
透気係数
BB_BOX1
散水回数
BB_BOX2
流下距離
OPC_BOX1
水位低下量
OPC_BOX2
反発度
OPC_BOX3
各種非破壊試験の測定結果(左:附属試験体,右:ボックスカルバート)
には,附属試験体を削孔 して計測した内部含水率 の分布を示 す.養生期間 が短いものは表面近
傍の含水率の低下が大きいが,全体として,OPCの含水率が高く,これにより表層品質が高く評価
されたと言える.詳細分析により,研究課題Bによる耐久性ポイントの確立に展開する.
10.0
10.0
BB_封緘養生
9.0
BB_7日脱型
BB_1日脱型
9.0
8.0
含水率(%)
含水率(%)
8.0
7.0
6.0
7.0
6.0
5.0
5.0
4.0
4.0
3.0
OPC_封緘養生
OPC_封緘養生
OPC_封緘養生
3.0
0
20
40
60
80
100
120
140
160
端子中間位置(mm)
図-4.5
0
20
40
60
80
100
120
140
160
端子中間位置(mm)
内部の含水率分布(左:分割11(BB),右:分割12(OPC))
B.耐久性ポイントを活用した表層品質の評価の検証
構造物において達成された表層品質に及ぼす設計や施工の要因を定量的に分析するために,
耐 久 性 ポイントを用 いることとし,データシートを作 成 するとともに群 馬 県 内 の関 係 者 の協 力 を得
て,内容の検討と試行を開始した.ただし,現時点では十分な情報が集約できておらず,FS研究と
しての目標達成は必ずしも十分ではない.これは,耐久性ポイントの計算には,工事を担当する実
務者の協力が不可欠であるが,業務量の増加となるため,非破壊試験を行ったすべての現場のデ
ータを収集することは難しい.耐久性ポイントの有効性を早期に実証し,協力者に直接的なメリット
があることを明示する必要があるとともに,入力項目の簡素化が要望された.
まず,図-5.1に示す自動計算用データ入力シートを作成した.本シートは,山口県が作成・公開
図-5.1
耐久性ポイントの自動計算用データ入力シート
している,「コンクリート施工管理記録」のファイルに新たなシートを追加 し,項目を連動させることと
した.これにより,温 度 ひび割 れ抑 制 対 策 を主 目 的 とした山 口 県 の取 り組 みを包 含 した分 析 へ展
開できるようにした.次に,群馬県のコンクリート構造物の品質確保 WGに本シートを提供・説明し,
発注者(県の土木事務所)および施工者(建設業協会および群馬会幹事)に対し,項目の入力の
可否 ・難易度 についての調査依 頼を行った(次回 ,2月のWGにて回答を入手 予定).また,2月に
群馬県で実施する群馬会の講習会において,参加者から同様の情報収集を行う予定である.これ
までに,館 林 のボックスカルバートの施 工 現 場 にてデータの試 験 入 力 が行 われ,発 注 者 と施 工 者
の双方による情報の入力が必要ではあったものの,入力に支障がないことを確認した.追加項目と
して,スランプについては土 木 学会から新 たに示 された最 小 スランプの概 念 を反 映させ,出 荷時 ,
受入れ時,筒先でのスランプを区別して記録することなどの提案があり,反映させることとしている.
⑦本格研究の見通し
A.非破壊試験を用いた表層品質検査システムの構築
(1)詳細法における標準的判定基準の決定と参照データの蓄積【確実に実現可能】
FS研 究 によって,スイス標 準 規 格 を準 用 した表 層 透 気 試 験 (トレント法 )の有 効 性 が示 され,検
査 システムの核 である詳 細 法 を確 立 する見 通 しが立 ったと考 えられる.本 格 研 究 では,FS研 究 の
継 続 ・拡 大 によってさらなるデータを蓄 積 し,日 本 版 判 定 基 準 の提 案 を行 うとともに,表 層 品 質 検
査 システムの必 要 性 を示 す根 拠 とする.また,研 究 課 題 Bで提 案 を目 指 す,表 層 品 質 の確 保 ・向
上 のための設計・施工技術に関 しても,詳細法によって達成品質を評価することによって,内容の
検証と改良が可能となる.なお,FS研究においては限られた計測しか行えなかったものの,表面吸
水 試 験 も有 効 な手 法 と考 えられるため,あわせてデータの蓄 積 と手 法 の検 証 を進 める.最 終 的 に
は,1次~3次のすべてにおいて水の移動に着目した一気通貫のシステムとする.
(2)簡易法における試験方法の確立と標準的判定基準の決定【確実に実現可能】
FS研究によって,簡易法としての散水試験の可能性を示すことができた.あわせて明らかになっ
た,表 面 水 率 の影 響 や測 定 対 象 による透 気 係数 との異 なる相 関 についての分 析 を進 めることで,
試 験 方 法 の確 立 が可 能 となる見 通 しである.1次 検 査 としての判 定 基 準 の決 定 においては,散 水
量によって流下までの散水回数を変化させることができるので,表層透気係数との関係 から決まる
散 水 回 数 を数 回 程 度 に設 定 することができれば,数 分 で結 果 判 定 を行 うことが可 能 となる.ここで
の判 定 基 準 は,絶 対 値 としての設 定 が望 ましいが,表 面 水 率 などの影響 が排 除 ・考 慮 できない場
合 には,標準試験体 との比較などの相対的な評価手法 の構築も検討することで,本格研究 の3年
以 内 に確 実 に実 務 展 開 を開 始 できるようにする.いずれの場 合 においても,達 成 された表 層 品 質
が明らかに合格していることを検査することが1次検査の目的であり,簡便性の保持を優先する.
以 上 の検 査 のための研 究 開 発 に加 え,簡 易 な品 質 管 理 としての活 用 も期 待 される.群 馬 県 で
平成27年度から開始する品質確保の試行においては,散水試験による計測結果を合わせて記録
し,研究課題Bと連動させることで,設計・施工のPDCAサイクルを実現する.
なお,流水試験についても検討を進め,1次検査として,複数の簡易手法の提示を目標とする.
(3)採取コアにおける試験方法の確立と標準的判定基準の決定【ほぼ確実に実現可能】
FS研究により,直径100mmの標準コアを用いた吸水試験については,ASTM C1585-13規格に
よる実 施の見 通 しが立ったが,今 後の本 格研究では,実 構造 物 における実効 性を高 めるため,小
径 コアを用 いた吸 水 試 験 手 法 の確 立 に重 点 を移 すことが目 的 達 成 のために求 められると認 識 し
た.FS研 究で明 らかになった前 乾 燥 条 件 や作業 の簡 略 化を検 討 することにより,評 価 精 度 と実用
性を向上させた試験手法の確立が可能になると見込んでいる.あわせて簡易法や詳細法との相関
分析を行うことによって,非破壊試験の測定結果の検証を行うとともに,3次検査としての判定基準
の決定を行う.
B.耐久性ポイントを活用した表層品質の確保・向上のための設計・施工技術の提案【課題の解決
が必要】
FS研究では,実構造物からのデータ収集が限定され,検証としては十分ではなかったことから,
現 時 点 では,課 題 が多 いことが明 らかになった.ただし,新 設 された群 馬 県 のWGとの連 携 によっ
て,試 行 での試 験 導 入 ,入 力 項 目 の簡 素 化 の検 討 が可 能 となったことから,部 分 的 であっても着
実 にデータ蓄 積 を進 められることが見 込 まれる.なお,FS研 究 で示 唆 された昼 食 休 憩 による作 業
中断の影響のように,当初の耐久性ポイントにはないが影響が大きいと考えられる項目も積極的に
追 加 する.このために,非 破 壊 試 験 によるデータの蓄 積 と分 析 を先 行 して進 めるとともに,対 象 構
造物の打込みに立会い,第三者の客観的視点により施工上の主要パラメータを明らかにする.
⑧特記事項
本 FS研 究 の実 施 により,1次 検 査 としての簡 易 法 (散 水 試 験 ),2次 検 査 としての詳 細 法 (表 層
透気 試験),3次 検査としてのコア分析(室内吸水試 験)の有効 性と課題 が明確 となり,3試験によ
るシステムの構築の実現性については,大いに自信を得た.
群 馬 県 では,本 FS研 究 と連 携 し,2015年 1月 に「コンクリート構 造 物 の品 質 確 保 WG」を設 置 し
た.県 職 員 が座 長 を務 め,現 場 ・設 計 ・契 約 ・検 査 ・維 持 管 理 などの県 担 当 職 員 ,建 設 技 術 セン
ター職 員 ,工 事 を請 け負 う施 工 ・生 コン・材 料 ・ポンプ圧 送 の各 実 務 者 に加 え,本 研 究 課 題 を担
当する半井・舌間が委員として参加している.本WGでは,品質確保システムの確立と施工レベル
の向上を目的とした具体的な施策の検討を行っている.本申請課題の項目Bで開発する設計・施
工技術 の知見を反映 させるとともに,項目 Aで開発 する検査手法を(まずは検査ではなく)品質評
価 手 法 として活 用 し,施 策 の有 効 性 を検 証 することが期 待 される.ひび割 れや美 観 の観 点 からコ
ンクリートの品質を評価した事例はすでに数多くあるが,物質移動抵抗性 から表層品質を直接的
に評価する初めての本格的な実務展開となる.
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