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を利用した高品質タンパク質結晶生成実験

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を利用した高品質タンパク質結晶生成実験
国際宇宙ステーション・「きぼう」を利用した
高品質タンパク質結晶生成実験
ココ!
国際宇宙ステーション
「きぼう」で
実験進行中!
木平清人⃝,和田理男,山田貢,太田和敬,松本邦裕
独立行政法人宇宙航空研究開発機構 有人宇宙ミッション本部 宇宙環境利用センター
1
2
タンパク質によって開かれる、
可能性の扉
私たちの体をつくっている、タンパク質。
人間の体内だけで10万種類以上、自然界全体では
実に約100億種類ものタンパク質が存在するとされています。
タンパク質はそれぞれが決まった働き(機能)をもち、
生命活動を支えています。たとえば、皮膚をつくる「コラーゲン」や、
全てのタンパク質は、それぞれが決まったカタチ(構造)
をもっています。コラーゲンにはコラーゲンの、
ヒトの体は
10万種類以上もの
タンパク質で
できています
ヘモグロビンにはヘモグロビンの構造があります。
その固有の構造をとることで、タンパク質はそれぞれの
機能を発揮します。つまりタンパク質の構造を正確に観察
酸素を運ぶ「ヘモグロビン」などもタンパク質の一種です。
いろいろな分野で進むタンパク質の研究
タンパク質はさまざまな働きをもつため、
幅広い分野で研究が行われています。
3
を解くカギは、
その構造にあり
すれば、その機能や仕組みまで知ることができるのです。
さらにそれが「タンパク質の機能を制御する」研究へと
つながっています。
新しい医薬品の開発
環境にやさしい
廃棄物処理の実現
一つひとつのタンパク質の構造と機能を解明すること。
バイオエネルギーの
発明
それがタンパク質研究の要なのです。
4
構造を解析するために必要な
「結晶の生成」
タンパク質の構造は千差万別
「重力」
が高品質な結晶生成のジャマをする?
タンパク質分子はとても小さいため、顕微鏡などでは詳細な構造まで観察できません。
高品質な結晶の生成は、とても困難です。一つのタンパク質の高品質結晶の生成に成功するまで
X線を照射して観察するという方法が用いられます。
結晶生成を難しくしている原因の一つが、
「対流」です。
数年かかるということも珍しくありません。
このことが大きな壁となって、
多くの研究者を悩ませてきたのです。
そのため、分子が一様に整列した「結晶」として取り出したタンパク質に、
結晶生成は、まず結晶核が生成した後に核周辺の分子を取り込んで成長していきます。
結晶の生成は、構造解析に欠かせないステップなのです。
この際、結晶成長はゆっくりと進行したほうが結晶の品質が良くなることが知られていますが、
構造解析の流れ
結晶
地上では重力の影響によって対流が発生します。対流に乗って分子が次から次へと結晶核近傍へ
回折斑点
X線回折実験
電子密度マップ
位相決定
その他・参考資料
運ばれてしまうと、結晶成長が加速してしまい、
品質の良い結晶が得られにくくなってしまいます。
原子モデル
モデル構築
結晶にX線を当てると、結晶の繰り返し単位の性質(長さと角度)や結晶を構成する分子の形
(立体構造)を反映した 点 が得られます。この点を「回折斑点」と呼びます。
結晶の様々な方向からX線を照射し、回折斑点の位置と強度(点の濃さ)を収集します。
得られた一連の回折斑点パターンを解析し、タンパク質分子の構造を決定します。
結晶を利用して分子の構造を調べる場合、結晶の品質がとても重要です。
結晶が高品質であればあるほど、より精密に構造を観察することが出来る からです。
5
重力のない宇宙で、
質の高い結晶を生成
タンパク質の構造と機能の関係について効果的な研究を行うためには、質の高い結晶、つまり構造を
詳細に把握できる結晶が必要です。構造と機能はワンセットのため、たとえば病気の原因となる
タンパク質の詳細な構造がわかれば、その働きを制御することも可能になります。
対流の影響を受けずに高品質な結晶を生成できる環境。
それが 国際宇宙ステーションでの結晶生成実験 です。
これまでにもさまざまなタンパク質が宇宙へ運ばれ、高品質な結晶となって地球へ帰ってきています。
微小重力環境の効果 ̶ ❷
微小重力環境の効果 ̶ ❶
地上実験
浮遊・沈降の抑制
クラスター化の
抑制
結晶の落下抑制
単結晶性の向上
結晶移動抑制
モザイシティの
改善
多結晶化の抑制
タンパク質欠乏層の
形成
界面撹乱抑制による
安定成長
物理的欠陥低減
高品質結晶生成
分解能の改善
不純物欠乏層の
形成
対流の抑制
界面過飽和度の
低下による
安定成長
化学的欠陥低減
分配係数1以上の
不純物取り込み抑制
宇宙実験
ツイン結晶の
解消
0.523
0.209
1.48Å
1.14Å
沈 殿
1.50Å
1.30Å
1.06Å
異なる空間群の結晶の生成
P21
P43212
P212121
65.5, 102.2, 75.4 50.2, 66.1, 131.9 67.0, 67.0, 270.0
103.8
さまざまなタンパク質を宇宙へ
国際宇宙ステーションと
「きぼう」
JAXAとタンパク質研究者が手を取り合って、
国際宇宙ステーションでタンパク質結晶の生成実験を行っています。
2009年からの第1期実験シリーズ
(計6回)
に続いて、
国際宇宙ステーションは、
地上から約400km上空に
2013年の後半から、
新たに6回の実験を行う第2期実験シリーズがスタートしました。
建設された巨大な有人実験施設です。
1回の宇宙実験は次のような流れで行われます。
アメリカ、
日本、
カナダ、
ロシアなど10数か国が
参加してさまざまな実験や研究を行っています。
プロジェクトの流れ
ct
Proje
Start
国際宇宙ステーション
日本実験棟「きぼう」
その中でJAXAが開発を担当した日本実験棟が
「きぼう」
です。
タンパク質の募集
実験を行う
タンパク質を決定
全国の大学・研究機関・
企業から、宇宙実験を
行いたいタンパク質を
募集します。
どのタンパク質を宇宙へ
運ぶのか、期待される
成果などを踏まえて
JAXAが選定を行います。
実験装置の紹介
「きぼう」
での実験には、
先進技術によってつくられた
結晶生成用の容器やその環境をコントロールする
装置が使われています。
これらの装置が宇宙での安定的な実験を可能にしています。
結晶の回収と引き渡し
生成された結晶を回収し、
それぞれの研究者に返却。
構造解析を行って
いただきます。
「きぼう」
は、
宇宙で日本独自の
実験条件の検討
タンパク質研究に携わる多くの
研究者とJAXAが協力して
検討を行い、実験条件を
決定します。
研究ができる実験室。
方に利用していただけるよう、
JAXAが全面的にサポートしています。
結晶化容器「JCB-SGT ※」
PET製シートでできた細長い筒状の袋で、
それぞれ個別に結晶化条件を設定することができます。
シンプルな構造・軽量・高密度という特徴があり、
宇宙実験に適しています。
※JAXA Crystallization Box - Sealbag Gel Tube
セルユニット
「きぼう」で実験を実施
結晶を回収して
引き渡し
約2か月間にわたって、
実験終了後、
タンパク質の
結晶生成実験を 結晶を宇宙船で回収。
行います。 日本へ運び、それぞれの研究者
に返却します。
結晶化容器を最大で12個搭載できるセルユニットです。
ユニット内の温度はリアルタイムで測定されていて、
地上からの確認とコントロールが可能です。
また打ち上げから回収までの温度が記録されます。
「きぼう」へ輸送
タンパク質結晶生成実験装置「PCRF ※」
ロシアの協力のもと、
宇宙船でタンパク質を
「きぼう」日本実験棟へ
運びます。
セルユニットを最大6個搭載でき、
各ユニットの温度を個別に制御することが可能な装置です。
一度にさまざまな結晶の生成実験を行うことができます。
※Protein Crystallization Research Facility
第1期実験シリーズでの実績例
工業的な機能性触媒への応用
地上結晶データ(1.8Å)
糖鎖の部分
宇宙結晶データ(1.1Å)
工業的な機能性触媒としての
応用が可能に
赤い部分が水素原子
ナイロンオリゴマー分解酵素:
ナイロンオリゴマー(プラスティック)を、
触媒反応により分解する酵素及び同酵素の
変異体と基質との複合体の詳細な構造を解明
薬剤候補化合物の設計への応用
産業用酵素
工業的な機能性触媒への応用
産業用酵素
○加水分解の逆反応を利用し、短時間の反応で
有用なナイロンオリゴマーを合成することが
可能。
○効率的で環境負荷の少ない化学合成系への
応用が可能。
医 療
食物を原料としないバイオ
エネルギーの生産に利用可能な
機能性触媒としての応用が可能に
結晶データ(0.92Å)
○化学処理を行なわず、環境負荷の少ない
機能性触媒を利用した反応系での
バイオエネルギーの生産法の開発が可能。
セルロース分解酵素:
植物細胞の細胞壁や繊維の主成分である
セルロースを、触媒反応により分解する酵素の
糖鎖を含む詳細な構造を解明
○タンパク質工学の技術を適用し、
より高効率で安定な機能性触媒の
開発に着手。
宇宙実験による分解能改善実績
宇宙実験による分解能改善
ペプチドが結合した様子
DAP BII:
アミノ酸を主たるエネルギーとする
多剤耐性菌が持つペプチダーゼと、
その分解産物の複合体の詳細構造を解明
(地上:3.4Å ー> 宇宙:1.95Å)
○化合物とタンパク質の結合状況を
宇宙実験で得られた結晶により、詳細に確認。
○多剤耐性菌等の病原性細菌に効果のある
阻害剤の設計及び化合物スクリーニングを
通じて、新規抗菌薬の開発を目指す。
構造が未知だった試料の
構造決定に貢献
6.0Å
宇宙実験後最高分解能
治療が困難な院内感染症の
原因となる多剤耐性菌に対する
新たな抗菌薬の設計が可能に
7.0Å
詳細構造の決定に貢献
5.0Å
4.0Å
3.0Å
2.0Å
その他、
クラスター化の
抑制による
データ取得成功事例
1.0Å
6件
0.0Å
0.0Å
1.0Å
2.0Å
3.0Å
4.0Å
5.0Å
宇宙実験前最高分解能
6.0Å
7.0Å
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