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不動産開発事業と リアルオプションアプローチ - 応用金融工学
不動産開発事業と リアルオプションアプローチ 川口有一郎 明海大学不動産学部教授 京都大学金融工学センター客員研究員 なぜ不動産開発事業か? 不動産開発事業の投資収益率は約20%である. 例)デフレスパイラルの日本経済の中にあっても,首都圏のマ ンション分譲事業の粗利益率は今期約20%(前期約16%), 東京建物など. (タイプを問わず,また,国を問わず開発事業の投資収 益率は非常に高い) なぜか? 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 2 リアルオプション・アプローチの適用事例 ー全産業ー 産業 対象 エネルギー発電所(Enron) 油田調査・評価 油田開発・生産 電力遮断契約 原資産 行使価格 ボラティリテ行使期間 スパークスプレッド発電コスト 不明 不明 ー 調査(評価)コスト ー 5年 原油価格 開発・生産コスト 不明 32年 不明 電力価格 オンピーク価格(需要量) 不明 スイングロード時の使 ピークブロック契約の上 用電力 電力スイングロード契約 限供給電力 投資額 情報技術 SCM戦略(待機,HewlettPackardNPV 「ごたまぜ」戦略(Amazon.com) ケーブル会社(拡張) NPV(潜在的) マージナルコスト 医薬品 バイオ 売上×ロイヤリテ 開発コスト 新薬開発(Amgen) 販売利益 開発コスト 新薬開発(Merk and Biogen) (特許) 不動産 不明 不明 不明 不明 不明 不明 45% 10年 10-15年 10-12年 知的財産権(pl-x) 技術の市場価値 製品化コスト 不明 更地開発 不動産価格 開発コスト 18-37% 再開発(スイッチ) 賃料収入 既存賃料収入 20-25% 再開発(タイミング) 不動産価格 再開発コスト 20-25% 賃貸契約 市場賃料 賃貸家賃 住宅リニューアル 総合収益 リニューアルコスト 2% 売却 不動産価格 NPV(収益還元価格) 10% (出典:経済産業省資料を筆者が加筆修正したもの) 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 製品化に必 要な期間 永久 永久 永久 2年 永久 永久 割引率 評価モデル リスク中立 不明 不明 不明 WACC 柔軟性DCF 仮定せず 無リスク金利バイノミアル仮定 不明 不明 不明 不明 不明 修正BSモデ仮定 不明 不明 無リスク金利BSモデル 仮定 仮定せず WACC(市場レDDCF 不明 柔軟性DCF 仮定せず 無リスク金利BSモデル 仮定 仮定 無リスク金利解析解 仮定 無リスク金利解析解 無リスク金利解析解 仮定 無リスク金利モンテカルロ仮定せず 無リスク金利有限差分 均衡モデル 無リスク金利モンテカルロ仮定せず 3 リアルオプション・アプローチの適用 ー理論的・技術的な課題ー 1.状態変数が十分に達成(複製)可能ではない. ①無リスクヘッジポートフォリオを組めない. ②通常の無裁定機会を仮定できない(他の均衡モデル). ③リスク中立確率が積極的な意義をもたない(非完備). 2.オプションの構造が複雑である. ④複合オプションとしてのモデルが必要である. ⑤競合の存在を考慮する必要がある(ゲーム論). 3.リスクの構造が複雑である. ⑥原資産の収益率分布に正規性を仮定できない. 4.パラメータの推定が難しい. ⑦ボラティリティなどの推計が難しい. (原資産の市場価格が存在しないか,観測できない) 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 4 ROAの研究の現状 1.リスク・プロセスを外生的に与えるアプローチ ①CCA(無裁定均衡,その他の均衡アプロー チ) ②確率動的計画法(複合オプション) ③決定木分析(実用手法) 「伝統的ROA」 1)モデル構築は出尽くした感がある. 2)実証,および実務への適用などが目下の課題. 2.リスク・プロセスを内生的に与えるアプローチ 戦略的な不確実性を内生化(行使戦略ゲーム) 3)投資決定理論,契約理論などの体系化が目下の課題 4)実証ができないため実務への適用は困難であろう. 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 5 伝統的なROAの知見 1) 不確実性の下では,後戻りできない投資について は投資を延期することが最適な意思決定になる. 2) 将来の不確実性に対応が可能であるという意味で 柔軟性をもったプロジェクトの方が好まれる. 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 6 不動産開発事業評価と伝統的ROA 条件付請求権分析アプローチ 複製ポートフォリオx dx = µ xdt + σ xdz 仮定 µ = r + φρ xmσ , δ = µ − α > 0 無リスクポートフォリオΦ=投資オプション−複製ポートフォリオ Φの収益 dF-F’(V)dV-δVF’(V)dt 無裁定条件 Φの収益= rφdt = r[ F − F ′(V )V ]dt 1 2 2 σ V F ′′ (V ) + ( r − δ )V F ′ (V ) − rF = 0 2 (Eq.23:151) 無リスク金利(r) 解(延期する価値) β1 = F (V ) = A1V 1 − (r − δ ) / σ 2 2 β1 + [( r − δ ) / σ 2 − 1 2 ] + 2r / σ 2 2 >1 ★CCAは無リスク金利(r)を用いる(DPとの違い) 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 7 不動産開発事業評価と伝統的ROA SM公式 開発を行使すべき臨界不動産価値V*:ハードルレシオ V = * β β −1 I ここで, I :開発コスト(土地代含まず) β:オプション弾力性 β = { y − rf + σ 2 / 2 + {(rf − y − σ 2 / 2) 2 + 2rf σ 2 }1/ 2 } / σ 2 y:不動産CFのイールド rf:無リスク金利 σ:不動産価値のボラティリティ 7%-10% (US) 4%-6%(US) 10%-25%(US) 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 4%-6%(Japan) 0%-2%(Japan) 17%(Japan:Ikoma) 8 不動産開発事業評価と伝統的ROA 動的計画法 ベルマン方程式 ρFdt = ε (dF ) Eq.7:140 1 2 2 σ V F ′′(V ) + ( ρ − δ )VF ′(V ) − ρF − 0 2 F (V ) = 解 AV 境界条件:F(0)=0, β (投資機会の価 値) 1 F(V*)=V*-I, F’(V*)=1 投資の臨界値 V * = β β 1 1 − 1 A = (V * I > I − I ) /( V * ) β 1 割引率ρの決め方? 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 9 不動産開発事業評価と伝統的ROA 無裁定条件以外の市場均衡アプローチ ■市場均衡: 属性に対する期待収益率=資本のユーザーコスト ΨVt − ρ tVt + π t = 0. (3.10) K 1 ∂ ∂ ∂ ∂2 1 2 ∂2 1 2 ∂2 Ψ = tr[σ xσ ′x ] 2 + σ ρ . + σ + α + α + α ∑ σ ρ σ xk 2 2 ∂ρ 2 2 ∂σ 2 k =1 ∂π k ∂ρ ∂σ ∂π 境界条件: lim Vt (π t , ρ t , σ t ) = 0, ρ t →∞ Vt (0, ρ t , σ t ) = 0, (3.11) 資本のユーザーコストが無限大になると無価値となる. レンタルフローの吸収壁はゼロ,そこでは無価値となる. (3.12) 解(証明:概要Duffie(1996),詳細Karatzas and Shreve(1991)): ∞ s Vt = Et ∫ π s exp( ∫ ρν dν )ds. t t (3.13) 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 10 ROAによる不動産開発事業評価の知見 不確実性の下では,後戻りできない投資については投資を延期することが最適な意思決定になる. 種類 更地開発 プレミアム(%) 0.95 ∼ 53.97 タイミング 5.68 ∼ 6.56 Switch 再開発 タイミング(段 階) 賃貸契約 住宅リニューアル 更新(複合オプショ ン) 17.02 ∼ 30.97 約 10 約 70 タイミング 実務者からの疑問「本当か?」 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 11 資本投資計画における戦略問題 【再帰方程式による最適戦 略】 Ft (i, ω ) = sup u t (c) + ∑ qij Ft +1 ( j , Wt +1 ( j )) c ,θ j =1 投資機会 k θ C:内部留保等 Θ:投資(ポートフォリ オ) W (θ ; j ) =< 富 S t +1 ( j ) + δ t +1 ( j ) + f t +1 ( j ),θ > A + B + f ( j ) = f {( S ( j ) − I ) ; f ( S ( j ) − I ) } リアルオプション t +1 t +1 t +1 A t +1 t +1 B t +1 ②複数オプション の連鎖,相互作用 ③行使のタイミング (例:延期の価値) ①ライバルの行動 市場構造(独占,共有) 【投資戦略】 ライバルの存在の下では延期する価値はゼロ. 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 12 企業価値の最大化(動的計画法による整理) 標本空間(集合) σ加法族(Ωの部分集合) 確率空間 (Ω,F,P) 情報構造の変化(k項分岐) 確率測度 【t期の資産価格S(stochastic Euler equation)】 1 k Z = {1,2, Λ , k} St ( j) = Ω = Z × Z × Λ × Z = Z T +1 点 ω = (ω 0 , ω1 ,Λ , ω T ), ω t ∈ Z Z-値の可測関数(確率変数) {ω | X t (ω ) = i} ∈ F , for ∀i ∈ Z パス ω (i0 ) = (i0 , i1 , Λ , iT ) に対する確率 Pi 0 (ω (i0 )) = qi 0i1 qi1i 2 Λ qiT −1iT Pi 0 ( X t +1 = l | X t = j ) = q jl D = { A, B, y} Θ = {θ 1 ,θ 2 , Λ ,θ m } a.s. π t ( j) ∑q l =1 jl {π t +1 (l )( S t +1 (l ) + δ t +1 (l ))} state price deflator 【再帰方程式による最適戦 k 略】 Ft (i, ω ) = sup u t (c) + ∑ qij Ft +1 ( j , Wtθ+1 ( j )) c ,θ j =1 Wt +1 (θ ; j ) =< S t +1 ( j ) + δ t +1 ( j ) + f t +1 ( j ),θ > f t +1 ( j ) :リアルオプション Θ:投資(ポートフォリ オ) C:内部留保等 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 13 競争均衡とリアルオプション -P=YD(Q)の場合Q:固定 dY=αYdt+σYdz 価格の上限(反射 壁) v( P) = 企業価値V(P)は < P/δとなる P P δ − 1 δβ1 v( P ) = I → ∴P = dP=αPdt+σPdz β1 β1 − 1 P δ P β1 P 1− β1 − 1 δβ1 P β1 P 1− β1 = I δI 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 14 競争均衡とリアルオプション -延期する価値f(p)=0f ( P) = AP 参入オプション価値 臨界値 A= P = 1 β1δ f(P)=0 f ′( P * ) = v′( P * ) f ( P* ) = v( P* ) − I , 等値条件,連続条件 * β1 β1 β1 − 1 δI P* = P (eq.10:257) [( P * )1− β1 − P 1− β1 ] P /I = A=0 β1 β1 − 1 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) δ 15 オプション行使ゲーム 現実には,最適行使戦略が孤立して定式化されることはありえない.ある人が smooth-pasting condition付きの偏微分方程式を解くときには,そのライバルも同 じようにする.不動産開発の場合,戦略均衡の一部分としてこれらの計算が行 われる.そして,市場の状況の違いにより,ある市場においてシーケンシャルな 再開発事業が見られたり,あるいは同時開発がみられたりする. オプション行使ゲームの解はビルの所有者(投資家)に直接役に立たない. 実際の市場でみられる行動の理解に役立つ. 例:不動産開発オプションは常にsmooth patternで行使されない.建設活動が全 く無い状態があるかと思えば,大量のビルが一時期に集中的に建設されること もある. ビルの供給過剰は非合理的とみられがちであるが,本研究のモデルはそうした 行使パターンは合理的な均衡を基礎にしていることを明らかにした. 戦略行使モデルは,新薬競争開発,競争的R&D,同様な新製品の開発競争な どにも適用可能である. 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 16 オプション行使ゲームの例 Grenadier, Steven R., 1996, The Strategic Exercise of Options: Development Cascades and Overbuilding in Real Estate, JF, LI-5; 1653-1679. ①連続的なビル建設があるときの建設着工の平均期間の決定を分析する. 結果:需要のボラティリティが大きいほど建設期間が短くなる. ②“recession-induced construction boom(RCB)”を分析する. (RCB=需要が減退するにつれて同時開発が起こる) X(t)がトリガー上限値を超えるか,トリガー下限値を下回るときLとF は同時にオプションを行使する. 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 17 ビルの供給過剰現象(RCB)の分析 RCB現象 不動産市場では空室率が高く需要が急激に下落するときに建設ブームとなる ことが再発する. RCB=景気後退が誘発するビル供給過剰. Figure2(Grenadier1996:p1670) 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 18 「Dual Option exercise problem」モデル ◎不動産市場は2つのビルからなる. ビル c c レント R R 所有者 A B 建設費 I I 新ビル >R >R (再開発した場合) レントの流列Pは (1) P(t)=X(t)D[Q(t)] ここで,Q(t):新ビルの供給量 D():逆需要関数,微分可能,D’<0 X(t):multiplicativeな需要ショック 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 19 需要ショック (2) dX=μXdt+σXdz μ:需要の平均成長率 σ:需要のボラティリティ ◎開発オプションの特徴; オプション行使により即座にペイオフが生じるわけではない. 建設期間を要する. デベロッパーは最適時期を決定するために需要・供給に関し て現在の情報を用いる. δ:建設期間(年) τ:建設開始時点=オプション行使時点 賃料を受領できるようになる時点は τ+δ である. 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 20 ◎均衡 Leader 最初に再開発する所有者 Follower 遅れて再開発する所有者 仮定;どちらがLeaderになるかはランダム(くじをひく)とする. ◎Dual Option exercise problemの戦略性 開発オプションの行使は双方のオプション保有者にrepercussionをもたらす. #Leaderのオプション行使の影響;Leaderは今日の建設費を払い,古いビルの賃料 を失うがδ年後に新ビルのmonopoly rent,X(t)D(1)を得る. Followerにとっては,ライバルのオプション行使により古いビルの需要が減るという 影響をうける.例えば,古いビルのテナントは賃料の再検討や部屋の改良などを要 求する.Leaderのオプション行使による既存ビルへの「被害」の度合いを古いビルの 賃料下落(1−γ)R γ∈(0,1)と仮定する. #Followerのオプション行使の影響; 二つのビルが出現するので,各ビルは複占状態の賃料X(t)D(2)を得る. 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 21 ◎「標準的な?」リアルオプションアプローチ 均衡アプローチによる価格評価; リスク中立性を仮定. この仮定はドリフトμをリスクプレミアムで調整するこ とで緩和できる(Cox and Ross 1976のアプローチ). 裁定アプローチを否定する理由; ・ Underlying assetと無リスク資産がinstantaneouslyに取引されて いてオプションが複製できると仮定している. ・ しかし,ビルは空売りできない ・ 取引コストが大きい ・ ビルは分割して取引できない. 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 22 ◎モデル作成の手順 #ステップ1(下記II):Leader, Followerの役割を所与として各プレイヤーにとっての不動産 価値を記述. Backward in a dynamic-programming fashion. 1) eaderは既にオプションを行使しているとして,先取りされる恐れが無い状態で Followerは開発オプションを行使する(つまり,オプション価値を最大化する均衡戦略におけ る標準的なオプション価格評価). 2) Leaderの価値は次のオプション・ポートフォリオで複製可能である. ① 永久配当レートX(t)D(1)をもつ資産のコールオプション.このコールオプションの 行使価格はゼロであり,確定的な満期τをもつ. ② 永久配当レートX(t)[D(2)-D(1)]をもつ資産のコールオプション.このコールオプ ションの行使価格はゼロであり,確率変動する満期TF+δをもつ. #ステップ2(下記III):これらの価値を所与として,Leader, Followerのidentityを決定する行 使戦略の集合を決定. 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 23 Followerの価値 F のオプション価値は,上記の解として, (7) I + (1 − γ ) R / r X β if X < X F , β −1 X F W (X ) = D(2) e −( r − µ )δ X − (1 − γ ) R − I if X ≥ X . F r − µ r ここで, − ( µ − 1 σ 2 ) + ( µ − 1 σ 2 ) 2 + 2rσ 2 2 2 > 1, β= 2 σ β r − µ ( r − µ )δ (1 − γ ) R e X F = I+ r β − 1 D(2) で与えられる.従って,F の価値は F(X ) = (1 − γ ) R +W (X ) r で与えられる. 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 24 Leaserの価値 β e −( r − µ )τ β D(2) − D(1) (1 − γ ) R X , if X < X F XD(1) + I + r−µ D(2) r β −1 X F (9) L( X ,τ ) = e −( r − µ )τ Xe −( r − µ )δ XD(1) + [D(2) − D(1)], if X ≥ X F r−µ r−µ (需要水準と F のトリガー値の関係によって L の価値が異なる) 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 25 オプション行使ゲーム2(simultaneous行使均 衡) X(0)≧XFの場合,一方が行使すると下記のproposiotion1から他方もすぐに行使する. (10) (11) (11) (11) 1 0 = σ 2 X 2 G ′′( X ) + µXG ′( X ) − rG ( X ) + R 2 1 G( X F ) = e −( r − µ )δ X F D(2) − I , r−µ 1 G( X J ) = e −( r − µ )δ X J D(2) − I , r−µ G ′( X J ) = 1 e −( r − µ )δ D(2). r−µ 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 26 (12) R α β + + A X A X for X ∈ ( X F , X J ), 1 2 r G ( X ) = − ( r − µ )δ e XD (2) − I for X ∈ ( X F , X J ), r−µ ここで, − ( µ − 1 σ 2 ) − ( µ − 1 σ 2 ) 2 + 2 rσ 2 2 2 < 0, α= 2 σ − ( µ − 1 σ 2 ) + ( µ − 1 σ 2 ) 2 + 2 rσ 2 2 2 β= > 1, 2 σ また,A1,A2,および XJ は次の非線形方程式 α β α β A1 X F + A2 X F (13) A1 X J + A2 X J α −1 αA1 X J R e − ( r − µ ) δ X F D ( 2) + = − I, r r−µ R e − ( r − µ ) δ X J D ( 2) + = − I, r r−µ β −1 + βA2 X J R e − ( r − µ ) δ D ( 2) + = r r−µ 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 27 RCBの定義 T1 ( x) = inf{ω ≥ 0 : X (t + ω ) = X F , X (t ) = x, x ∈ [ X F , X J ], T2 ( x) = inf{ω ≥ 0 : X (t + ω ) = X J , X (t ) = x, x ∈ [ X F , X J ], T ( x) = min[T1 ( x), T2 ( x)]. RCB は, T1(x)<T2(x) のとき起こる.また,RCB 確率は需要の初期水準を条件として, Ψ(x)=Pr[T1(x)<T2(x)] (18) Ψ ( x) = x − 2 ( µ −(1 / 2 )σ ) /σ 2 − 2 ( µ − (1 / 2 ) σ 2 ) / σ 2 XF Ψ ( x) = 2 −2 ( µ − ( 1 / 2 ) σ 2 ) / σ 2 − XJ − 2 ( µ − (1 / 2 ) σ 2 ) / σ 2 − XJ ln( x) − ln( X J ) ln( X F ) − ln( X J ) 1 when µ ≠ σ 2 2 1 when µ = σ 2 2 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 28 Comparative Statics モデルによる予想. (1)工期の影響 Figure3A:工期―RCB 確率の関係 需要水準 x=0.10 の場合; 6 ヶ月工期の RCB 確率=50% 6.5 年工期の RCB 確率=75% 需要の水準が高くなると RCB 確率は小さくなる. (2)ボラティリティの影響 Figure3B:需要のボラティリティ―RCB 確率の関係 需要水準 x=0.14 の場合; ボラティリティ 0.05 の RCB 確率=0% ボラティリティ 0.16 の RCB 確率=50% 需要の水準が高くなると RCB 確率は小さくなる. 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 29 Empirical Implications (1)工期の影響 オフィスの工期は約 2.5 年,工場の工期は約 6 ヶ月.Figure2bの工場とオフィ スの空室率パターンと Figure2a の着工数のパターンを合わせてみると,オフィスのほう が高い空室率のときに着工数が多い. (2)ボラティリティの影響 ・立地・・・経済活動の種類が分散されていない都市の方が RCB の傾向が強い. 例えば,Denver や Huston は石油産業に特化してる.1982 年から 1985 年にかけて大量の ビルが供給された.空室率は約30%であった. ・ タイプ・・・ 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 30 不動産開発事業評価のための ダイナミックDCF法と リアルオプション評価モデル 川口有一郎 本論文ではKawaguchi and Tsubokawa(2001)が開発した不動産評価のための離散型リアルオ プションモデルを一般化し,不動産事業―土地開発事業(いわゆる更地開発),ビルの建て替 え事業,および再開発事業など−を評価し,賃料キャッシュフローおよび不動産価格のキャピ タルゲインのリスク分析を可能にする分析的な枠組みを不動産金融工学的な視点から与える. (別紙参照) 明海大教授 川口有一郎(京大客 員) 31